説明

前面支持壁を有する自動注射機構

本発明は、シリンジの遠位端を基準に位置合わせして、より正確な針の挿入深度を実現する自動注射器を提供するものである。この自動注射器は、シリンジの遠位端またはシリンジの肩部に位置合わせされた自動的に展開可能な前面支持壁を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許法第119条(e)項のもと、2008年6月20日付けで出願された米国特許出願第61/074253号に基づく優先権を主張し、この出願の開示内容全体を参考に一体のものとして統合する。
【0002】
(技術分野)
本願は、自動注射デバイス(「自動注射器」ともいう。)に関する。とりわけ本願は、自動的に展開可能な前面支持壁(前面バットレス)を有する自動注射器に関する。
【背景技術】
【0003】
自動注射器のメカニズムは、皮下注射針を患者の筋肉に挿入し、液体の薬剤をシリンジから注射する手動による作業を自動化された機構に置き換えるものとして商業的に開発されてきた。いくつかの実施形態では、自動化機構は、商業的に普及している事前充填されたシリンジを用いるように設計されている。事前充填シリンジは、通常、製薬会社で製造され、あるいは第三者により製造される場合もある。そして製造業者は、事前充填シリンジを自動注射器に組み込んで商品流通させる。こうしたデバイスの具体例として、テネシー州のブリストルにあるメリディアン・メディカル・テクノロジーズ株式会社が製造する「EpiPen(登録商標)」、英国のオックスフォードにあるオーウェン・マンフォード株式会社が製造する「Humira(登録商標)」、ニュージャージー州のフローハムパークにあるスカンジナビア・ヘルス株式会社から市販されている「SureClick(登録商標)」がある。注射剤を受けることに精神的パラノイアを示す患者(たとえば注射針を病的に怖がる人や子供)や、従来式の注射器を用いて自分で注射を打つ必要があって、手が器用でない人や視力の弱い人にとって、自動注射器は有用であることが確認されている。
【0004】
従来式の自動注射器は、一般に、シリンジをハウジング(ハウジングがシリンジを内包する。)内で遠位方向に押し出いためのばね式の圧縮メカニズム、および自動注射手順を支援するための手段を有する。作動させるとき、圧縮されたばねが、端と端をつないだ規制状態から解放される。ばねは、通常、その圧縮された付勢力が解放されると遠位方向に延びるように、ハウジングの近位端付近の内側表面に当接する状態で付勢されている。ばねは、通常、1つまたそれ以上のサロゲート(代理)部品を介して、シリンジおよび/または弾性ピストン部品を押圧し、シリンジを含む皮下注射針がハウジングの遠位端を越えて突出するまで、シリンジを遠位方向に移動させる。
【0005】
突出した針の長さは、薬剤を注射したい送達位置の深さにより決まる。露出した針の長さ(すなわち針が突出したときに自動注射器のハウジングから外側にある針部分)は、「針の挿入深度」として知られている。突出した針の長さと挿入深度との間の関係から、自動注射器の作動時において、自動注射器の遠位端が注射位置に達していることが確認される。ほとんどの治療用途において、たとえば皮膚層および筋肉組織の間に存在する皮下組織などの特定の組織体に薬剤を送達できるように、針の挿入深度は正確に制御される。したがって、針の長さを一定に再現性よく挿入することは、自動注射器の望ましい属性である。
【0006】
上述のような事前充填式シリンジがホウケイ酸ガラスを用いて、年間ベースで何十億も製造されている。ガラス製シリンジの近位端には、半径方向に延びるディスク状フランジが形成されている。すなわちフランジは、シリンジ容器本体に隣接する2つの側面において平行に切除され、楕円状の対向するフィンガ把持部が形成されている。このガラス製シリンジの形態は、切除フランジ形態として知られている。ガラス製シリンジ、とりわけ切除フランジのシリンジは、自動注射器に採用するときに、寸法のばらつきが比較的に大きいことから、割れやすく壊れやすいため、数多くの課題を有する。寸法のばらつきが大きいことから、ガラス製シリンジの遠位端およびシリンジの全体の長さを越えて露出する皮下注射針の長さに生じるばらつきが大きくなる。さらに、シリンジ容器本体の中心に沿った中心軸および中心軸に対して垂直な面において、ガラス製シリンジの切除フランジが、不均一で非対称となり、ばらつきが生じてしまう。
【0007】
従来式の自動注射器は、シリンジのフランジを基準とした注射針の挿入位置である所望の前方位置でシリンジを係止するように構成されている。すなわち、シリンジのフランジは、事実上の位置合わせ位置となり、自動注射器のシリンジ部品と他の部品との間の軸方向の相関関係を示す基準面となっている。こうした構成において、シリンジの全体の長さ、露出した針の長さに起因するばらつき、あるいはフランジ自身に起因するばらつきは、突出する針の長さおよび針の挿入深度に直接的にばらつきを生じさせる。さらに、シリンジ/キャリアアセンブリを急激に減速させると、衝撃負荷が割れやすいシリンジに加わることになる。すなわちシリンジを遠位方向に押し出すときに自動注射器により加えられる力により、接触の位置合わせ位置において、フランジに対抗力が形成されることになる。さらにフランジは、ピストンの中心線とフランジの中心線との間に半径方向の距離が生じるため、屈曲モーメントに耐えることになる。屈曲モーメントは、割れやすいフランジに与えるストレスを大きくし、損傷のリスクを増大させる。
【0008】
さらに従来式の自動注射器は、通常固定されたストローク長さを有するように構成されている。すなわち従来式の自動注射器は、シリンジのプランジャを自動注射器の固定された基準位置から固定された距離だけ押し出すように設計されている。よって、こうした自動注射器のガラス製シリンジの全体的な長さのばらつきが大きくなると、固定されたストローク長さにより、注射された後に残る薬剤量にばらつきが大きくなってしまう。薬剤を製薬するために用いられる薬品が比較的に高価であるため、このように残余の薬剤量にばらつきが生じると、実質的な費用が無駄になってしまう。
【0009】
すなわち従来式の自動注射器は、従来式の事前充填されたガラス製シリンジ(針刺しシリンジ)に適応させて、割れやすく、不均一な構成部品を有することに起因した問題を効果的に対処することができず、ガラス製シリンジの製造時に生じる寸法のばらつきに起因して、針を適正な位置に配置し、正確な量の薬剤を送達することができないという課題がある。よって、針を適正な位置に配置し、正確な量の薬剤を送達することができる自動注射器に対する要請がある。
【0010】
さらに従来式の事前充填されたガラス製シリンジは、通常、皮下注射針を封止して包囲する手段を提供するために弾性部品を有する針シールドを含む複合体として供給されている。図2Aは、従来式の事前充填されたガラス製シリンジ46を示し、シリンジは容器本体51を含む。針シールド60は、針61に対して滅菌バリアとして機能し、シリンジ46の流体内容物は工場において事前に滅菌処理されている(図2B)。事前充填シリンジは、製薬会社に出荷された後、滅菌充填工場で薬剤が充填される。針の損傷をさらに保護し、針シールド60を手動で取り外すための適当な手段を設けるために、針シールド60自体を固定部品で包囲する。すなわち針シールド60は、固定針シールド(Rigid Needle Shield:RNS)として広く知られている。こうしたRNSにおいて、開口端部によりエラストマ内部に操作可能となり、これを介して針61をエラストマ内部に導入する。RNSは、対応するRNSのエラストマ部品と補完部品との間の周辺圧縮嵌合により、シリンジに対して着脱自在に取り付けられている。さらにこうしたRNSは、シリンジ46と外形とほぼ同じ外形を有する。
【0011】
こうした従来式のシリンジ46は、独立型の手動操作式シリンジ46として、あるいは適当な自動注射器とともに利用することができる。こうした自動注射器は、注射を行う前に、RNSを取り外す手段を有する。それは通常、最終組み立て時に針シールドに係合させ、ユーザが針シールドを軸方向、すなわち遠位方向に引き出すために掴むことができる把持可能ハンドルを提供する自動注射器の一部として実現される。ただしRNSを取り外すためにこうしたハンドルを用いると、自動注射器の遠位端付近において環状の空隙または開口端が形成される。さらに、RNSを取り外すためのハンドルが自動注射器の遠位端においてスペースを占有するとき、シリンジ46が係合するバットレス表面に対してこうしたスペースを設けることが阻害される。
【0012】
したがって、RNSを含むガラス製切除フランジシリンジに適応可能な自動注射器は、手動で設定するシリンジ、または自動注射器とともに用いられるシリンジに事前充填シリンジを用いることができるという点において、製薬会社に実質的な利点を提供するものである。
【発明の概要】
【0013】
本発明によれば、
従来式のガラス製事前充填シリンジを用いる自動注射器の針の挿入深度におけるばらつきおよび信頼性に関する問題を、自動注射器内のシリンジの係止位置をシリンジの前面端部に基づいて位置合わせすることにより解決するものである。
【0014】
好適な実施形態において、本発明は自動注射器を備える。自動注射器は、ハウジングと、ハウジングの遠位端に接続された前面支持壁とを有する。シリンジは、ハウジング内に収容され、遠位端付近に肩部を含む容器本体を有する。注射アセンブリは、シリンジに作動可能に接続され、シリンジがハウジングにより包囲された初期位置から、シリンジの一部がハウジングを越えて突出した突出位置に付勢するように構成されている。前面支持壁は、シリンジが初期位置にあるときの第1の開口位置から第2の閉口位置まで移動して、突出位置にあるときのシリンジの肩部に係合するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好適な実施形態に係る自動注射器のウィンドウチューブ・サブアセンブリおよび注射アセンブリの分解正面図である。
【図2A】図1の自動注射器で利用可能な硬い針シールドを有する従来式のガラス製シリンジの斜視図である。
【図2B】硬い針シールドを省略した図2Aのシリンジの断面図である。
【図3】本発明の好適な実施形態に係る自動注射器を完全に組み立てた状態にあるときの正面断面図である。
【図4A】図3の自動注射器において、ハンドルが完全に組み込まれた状態にあるときの遠位端部を示す拡大正面断面図である。
【図4B】図3の自動注射器において、ハンドルが部分的に取り外された状態にあるときの遠位端部を示す拡大正面断面図である。
【図4C】図3の自動注射器において、ハンドルがさらに部分的に取り外された状態にあるときの遠位端部を示す拡大正面断面図である。
【図5A】図3の自動注射器において、ハンドルが完全に取り外された状態にあって作動前状態にあるときの遠位端部を示す拡大正面断面図である。
【図5B】図3の自動注射器において、シリンジガイドが当初前面支持壁に係合した状態にあるときの遠位端部を示す拡大正面断面図である。
【図5C】図3の自動注射器において、シリンジガイドが前面支持壁の可撓性部材の外側表面に係合した状態にあるときの遠位端部を示す拡大正面断面図である。
【図5D】図3の自動注射器において、シリンジの肩部が前面支持壁により形成される支持面に係合するときの遠位端部を示す拡大正面断面図である。
【図6】図3の自動注射器の側面図である。
【図7】図6の自動注射器からハンドルを省略したときの側面図である。
【図8】図6のハンドルの拡大側面図である。
【図9】図8のハンドルの断面斜視図である。
【図10】図3のハンドルの拡大側面図である。
【図11】図10のノーズの断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述の発明の概要、および以下に説明する本発明の好適な実施形態は、添付の図面を参照するとより十分に理解することができる。本発明を例示するために、現在のところ好適な実施形態が図面に示されている。ただし本発明は、ここに図示された通りの構成および手段に限定して解釈すべきではない。
【0017】
好適な実施形態において、本発明は、シリンジを位置合わせすることができる自動的に展開可能なバットレス(支持壁)を有する自動注射器デバイスを提供するものである。図1、図3,図6および図7に示すように、自動注射器10は、通常、注射アセンブリ(または電池パック・サブアセンブリ)12と、ウィンドウチューブ・サブアセンブリ14とからなり、たとえば内側ハウジング20、中間ハウジング28、ウィンドウチューブ32,ノーズ40等のさまざまな構成成分を有する。本実施形態は、好適には、注射アセンブリ12を有するが、自動的に展開できるか、またはシリンジを用いて自動的に注射できるすべての注射アセンブリが本発明の意図および範疇に含まれる。たとえば、本発明に適応可能な例示的な自動注射デバイスが、ギレスピ3世に付与された米国特許第6,387,078号に開示され、その全体の開示内容はここに参考として一体のものとして統合される。一般に、自動注射器10は、モジュール組み立て式の自動注射器として構成されている。注射アセンブリ12およびウィンドウチューブ・サブアセンブリ14は、使用に際して、従来式のシリンジを用いて容易に組み立てることができる。こうした従来式のシリンジは、プラスティック製のシリンジやカートリッジ式のシリンジを含むものであってもよい。
【0018】
好適には、注射アセンブリ12は、図1および図3に示すように、キャップ16、作動ボタン18、内側ハウジング20、注射ばね22、ピストン47を含むプランジャロッド24、ばねレスト(ばね載置台)26、中間ハウジング28、および任意的なシリンジリング30を有する。図3および図6に示す注射アセンブリ12は、ウィンドウチューブ・サブアセンブリ14に組み立てられ、使用準備完了状態にある。上述のように、遠位方向とは、自動注射器10の針側の端部に向かう方向であり、近位方向とは、自動注射器10の作動ボタン18に向かう方向である。
【0019】
組み立てられた状態にあるとき、ばねレスト26は、協働するデタント(戻り止め)によりプランジャロッド24の中央付近に着脱可能に接続されている。プランジャロッド24およびばねレスト26は、内側ハウジング20の内側表面とばねレスト26の外側表面との間であって、その近傍にある注射ばね22とともに、内側ハウジング20内に配設されている。プランジャロッド24の近位ヘッドを保持する内側ハウジング20上のキャッチ(捕獲部)21により、注射ばね22は圧縮された状態で維持される。作動ボタン18は、内側ハウジング20およびキャップ16の近位端の上部に配置され、キャッチ21を解放して、ばね22を圧縮状態から解放するように機能する。上記アセンブリは、中間ハウジング28およびキャップ16の内部に設置されている。
【0020】
再び図1を参照すると、ウィンドウチューブ・サブアセンブリ14は、ウィンドウチューブ32、シリンジクッション34、シリンジガイド36、復帰ばね38、ノーズ40、ハンドル42およびハンドルキャップ42aを有する。図3は、ハウジング13内に収容されるシリンジ46を図示する。シリンジ46は、容器本体51と、その遠位端付近に形成された肩部52とを有する(図2A)。図3および図6は、ウィンドウチューブ・サブアセンブリ14は、注射アセンブリ12に組み立てられ、使用準備完了状態にある。
【0021】
シリンジガイド36は、ハウジング13内に収容され、一般的には円筒形状を有し、シリンジ46の容器本体51を受容するように構成されている。シリンジ46に組み立てられたとき、シリンジ46のフランジ62は、クッション34の上であって、シリンジガイド36の近位端の上に載置されており(図3参照)、シリンジ46のノーズ54は、シリンジガイド36の遠位端を部分的に越えて突出する(図3および図4A参照)。その結果、シリンジ46は、シリンジガイド36が遠位方向に移動するのに伴って、シリンジガイド36といっしょに移動する。
【0022】
図1、図3、図4A〜図4C、図6、図8および図9に示すように、ハンドル42は、ハウジング13の遠位端に着脱自在に接続されている。ハンドル42は、ほぼ円筒形状を有し、ウィンドウチューブ32、シリンジクッション34、シリンジ46、シリンジガイド36、復帰ばね38およびノーズ40からなるアセンブリを受容するように構成された本体部63を有する。またハンドル42の遠位端は、針シールドリムーバ49(図9)を有し、取り外し部の最も近位側の端部に略円筒形状本体部65およびラッチ50が形成されるように構成される。針シールドリムーバ49は、ハンドル42の遠位端と一体成形され、これに接続されている。なお択一的には、針シールドリムーバ49は、ハンドル42に固定された別部品であってもよい。針シールドリムーバ49は、ノーズ40の内部であって、針シールド60の上方に収容されるように構成されている。すなわち、針シールドリムーバ49は、図4値に示すように、可撓性部材44の内径(D2)より少なくとも多少小さい外径(D1)を有し、完全に開いた位置にあるとき、針シールド60の外径(D4)より少なくとも多少は大きい内径(D3)を有する。すなわち針シールドリムーバ49は、半径方向に配置され、周方向に離間した可撓性部材44が第1の位置(すなわち開いた位置)に維持されるように構成されている。
【0023】
ラッチ50(図9)は、半径方向内側に延びたフランジを有し、このフランジが針シールド60の近位端と係合する。その結果、ハンドル42を取り外したとき、ラッチ50が針シールド60と係合することにより、針シールド60がシリンジ46から取り外される。さらにラッチ50は、好適には、針シールド60の上方に組み立てやすくするように、面取りした近位表面を有するように構成されている。
【0024】
図3に示す組み立てられた状態において、ハンドルキャップ42aがハンドル42に固定され、ノーズ40がウィンドウチューブ32内に組み込まれている。復帰ばね38がノーズ40内に配設され、シリンジガイド36が復帰ばね38上に載置されている。復帰ばね38、シリンジガイド36、シリンジクッション34は、ノーズ40と係合するウィンドウチューブ32の内部に配設されている。シリンジ46(たとえば図2Aおよび図2Bに示すような事前充填ガラス製シリンジ)は、シリンジガイド36内に挿入され、シリンジリング30がシリンジ46のフランジ62の近位端上に当接し、プランジャロッド24がシリンジ46の容器本体の中に挿入される。シリンジ46の外側がシリンジガイド36のボアの内側に連続的に環状に当接しているため、シリンジ46は半径方向においてシリンジガイド36内に保持される。1つまたはそれ以上の構成部品を介して、シリンジ46に作用する注射ばね22を用い、シリンジ46の近位端に力を加えることにより、シリンジ46はシリンジガイド36に対して軸方向に保持される。すなわち図5Dで説明するように、シリンジ46が前面支持壁43により形成される扶壁に係合するまで、シリンジ46およびシリンジガイド36は一体となって移動する。
【0025】
注射アセンブリ12を作動させるためには、ユーザは、ハンドル42を取り外し、注射位置に対してノーズ40を押圧し、作動ボタン18を押下することにより、プランジャロッド24を内側ハウジング20から解放する。プランジャロッド24を解放すると、通常圧縮された状態にある注射ばね22が延びて、プランジャロッド24に接続されたばねレスト26に駆動力を与え、その結果、シリンジ46を遠位方向に移動させる。要するに、注射アセンブリ12は、作動可能にシリンジ46を接続され、シリンジ46がハウジング13により包囲された初期位置(図4A)から、シリンジ46がハウジング13を越えて突出する突出位置(図5D)に、シリンジ46を付勢するように構成されている。
【0026】
図5A〜図5D、図9および図10は、ハウジング13の遠位端に接続された前面支持壁(前面バットレス)43を図示するものである。前面支持壁43は、互いに周方向に離間し、半径方向に配置された複数の可撓性部材44を有する。可撓性部材44は、通常、ビラミットのような形状に成形され、閉じた位置にあるとき(図5D)、可撓性部材44通常、近位側に近づくにつれて小さくなる断面を有する円錐台形状を形成する。互いに周方向に離間し、半径方向に配置された複数の可撓性部材44は、ハウジング13の内面上に配置され、ハウジング13の遠位端から近位方向に延び、全体として、シリンジ46の肩部(ショルダ部)52に当接する支持壁面45を構成する。
【0027】
この実施形態において、ノーズ40は、支持壁43を有するように構成されている。各可撓性部材44のベース部48は、図5Aおよび図11に最も分かりやすく図示されているように、ノーズ40の内側遠位端に沿ってノーズ40に接続されている。可撓性部材44は、(図4Aに示すように)第1の開口位置/状態、すなわち互いに開いた位置/状態と、(図5Dに示すように)第2の閉口位置/状態、すなわち互いに接近した位置/状態との間で変形できるように、ノーズ40に対して撓みやすいように接続されている。当初、閉口位置としてモールド成形・構成された後、ハンドル42により開口位置に広げられた可撓性部材44から付勢力が生じる。その結果、前面支持壁43の張力特性により、可撓性部材44は半径方向内側の付勢力を維持する。すなわち可撓性部材44は、閉口位置にあるとき、半径方向内側に湾曲している。
【0028】
要するに、前面支持壁43は、シリンジ46が初期位置にある第1の開口位置から(図4A)、第2の閉口位置(図5D)に移動して、突出位置にあるシリンジ46の肩部52を支持(係合)するものである。可撓性部材44は、硬いプラスティックまたは熱可塑性エラストマなどの任意のポリマで形成することができる。可撓性部材44は、好適には、ポリアセタールまたは熱可塑性エラストマで形成されている。
【0029】
図4A〜図4Cに示すように、ノーズ40がハンドル42に組み込まれる。完全に組み立てられた状態において、ハンドル42のシールドリムーバ49が可撓性部材44を開口位置に押し広げるように、ノーズ40をハンドル42内に十分に挿入する(図4A)。図4Bおよび図4Cは、自動注射器10からハンドル42を取り外した際のさまざまな状態を示すものである。図4Bおよび図4Cにおいて最も分かりやすく図示されているように、ハンドル42を取り外した際、針シールドリムーバ49のラッチ50が針シールド60を同時に取り外す。ハンドル42を取り外した後、可撓性部材44は、その付勢力により、最初、中心線(A)に向かって移動し、ベース部48で湾曲することにより、可撓性部材44の近位端がシリンジガイド36の内径より内側の位置(すなわち図5Aに示すように作動前状態または使用準備完了状態)に再配置される。
【0030】
ハンドル42を取り外した後、自動注射器10を作動させるとき、注射アセンブリ12がシリンジガイド36およびシリンジ46の複合体を押圧して、前面支持壁43に当接させる。図5A〜図5Dに示すように、シリンジガイド36およびシリンジ46の複合体が遠位方向に移動するとき、シリンジガイド36の遠位端が可撓性部材44の外側表面に係合する。好適には、可撓性部材44の外側表面は、半径方向内側に傾斜した面取りまたは傾斜した表面56を有する。シリンジガイド36およびシリンジ46の複合体がさらに遠位方向に移動すると、シリンジガイド36の遠位端が可撓性部材44に係合し、可撓性部材44を全体的に自動注射器10の中心線(A)に向かって内側に湾曲させる(図5D)。好適には、シリンジガイド36およびシリンジ46の複合体は、可撓性部材44が完全に内側に湾曲する前に、シリンジ46のノーズ54が自動注射器10のノーズ40の中を通過するように構成される。シリンジ46が完全に展開すると、可撓性部材44が半径方向においては規制され、コラム強さを有することから、好都合にも、可撓性部材44の近位端がシリンジ46の肩部52に対する有効な支持面45を提供する。さらに、針を挿入する際、(図5Dに示すように)シリンジ46が支持面45に当接すると、シリンジ46は、液体薬剤がシリンジ46から注射位置に注射される間、支持面45に当接した状態で維持される。
【0031】
好適には、図5Dが最も分かりやすく示すように、可撓性部材44は、閉口位置にあるとき、中心線(A)に対して実質的に平行に配向した平坦な外側表面58を有するように構成されている。実質的に平行な外側表面58により、可撓性部材44とシリンジガイド36とが互いに滑動しつつ係合し(すなわち自由に動き)、このときシリンジガイド36は、シリンジ46の全体的な長さの大きなばらつきに対応し、前面支持壁43のベース部48が底に達することなく、可撓性部材44を閉じる機能を維持することができる。さらに、滑動するような関係を有することにより、シリンジフランジ62に歪み(ストレス)を与えるリスクを負うことなく、シリンジ46を前面支持壁43に確実に当接させることができる。
【0032】
要するに、本発明は、好都合にも(事前充填式ガラス製シリンジなどの)従来式のシリンジに適応できる自動注射器を提供することができる。針挿入時に、シリンジ46のフランジ62からではなく、肩部52からの針の挿入深度を基準に位置合わせした位置で停止させることにより、前方への(遠位方向への)移動を自動的に停止させ、より安定的で正確な前方位置(すなわち針の挿入深度)まで移動させて、薬剤を送達する高信頼性の手段を提供することができる。
【0033】
シリンジフランジ62に対して負荷が加わらないようにしたので、シリンジフランジが割れるというリスクも実質的に低減することができる。さらに、正確な量の薬剤を送達し、注射後にシリンジ内に残存する流体の量を低減することができ、ひいては事前充填シリンジの製造に要するコストを実質的に削減することができる。同様に、本発明は、好都合にも、シリンジ46の前方端部が負荷を支える面または基準面となるように構成して、シリンジフランジ62に対する負荷を低減し、ガラス製シリンジの全体的な長さおよびフランジ寸法におけるばらつきの影響を排除することにより、針の挿入深度のばらつきを縮小することができる、自動的に展開可能な前面支持壁43を有する自動注射器を提供するものである。
【0034】
さらに本発明は、ガラス製の針刺しシリンジ、プラスティック製シリンジ、ニードルハブを有するカートリッジ式シリンジなどの従来式の事前充填シリンジを利用するように構成されており、事前充填シリンジ内の薬剤が滅菌された環境下で保持されていた場合、自動注射器が滅菌されているか否かによらず、事前充填シリンジを組み込んだ後において、自動注射器を追加的に滅菌する必要がない。このため、自動注射器の製造に係る全体的コストを削減することができる。さらに本発明により組み立て式に構成したことにより、自動注射器の構成部品を別々の場所で異なる時間に作製して、事前充填シリンジを1つの場所で組み立てて、用意することができるので、製造態様を多様化することができる。さらに本発明に係る自動注射器は、従来式の事前充填シリンジを使用時において組み込むことができるので、両方のデバイスの使用期限が一方の使用期限の制約を受けることはない。すなわち自動注射器の事前充填シリンジ以外の構成部品の使用期限が、事前充填シリンジの使用期限に左右されることはない。
【0035】
当業者ならば理解されるように、広い発明的着想から逸脱することなく、上述の実施形態を変形することができる。したがって本発明は、ここに開示された実施形態に限定するものではなく、添付図面で定義された本発明の精神と範疇に含まれる変形例をカバーするものと理解されたい。
【符号の説明】
【0036】
10…自動注射器、12…注射アセンブリ、13…ハウジング、14…ウィンドウチューブ・サブアセンブリ、16…キャップ、18…作動ボタン、20…内側ハウジング、21…キャッチ(捕獲部)、22…注射ばね、24…プランジャロッド、26…ばねレスト(ばね載置台)、28…中間ハウジング、30…シリンジリング、32…ウィンドウチューブ,34…クッション、36…シリンジガイド、38…復帰ばね、40…ノーズ、42…ハンドル、42a…ハンドルキャップ、43…前面支持壁(前面バットレス)、44…可撓性部材、45…支持壁面、46…シリンジ、47…ピストン、48…可撓性部材のベース部、49…針シールドリムーバ、50…ラッチ、51…容器本体、52…シリンジの肩部、54…シリンジのノーズ、60…針シールド、62…シリンジフランジ、63…本体部、65…略円筒形状本体部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動注射器であって、
ハウジングと、
ハウジングの遠位端に接続された前面支持壁と、
ハウジング内に収容された、遠位端付近に肩部を含む容器本体を有するシリンジと、
シリンジがハウジングにより包囲された初期位置から、シリンジの一部がハウジングを越えて突出した突出位置に付勢するように構成され、シリンジに作動可能に接続された注射アセンブリとを備え、
前面支持壁は、シリンジが初期位置にあるときの第1の開口位置から第2の閉口位置まで移動して、突出位置にあるときのシリンジの肩部に係合するように構成されていることを特徴とする自動注射器。
【請求項2】
請求項1に記載の自動注射器であって、
前面支持壁は、ハウジングの遠位端に接続された、半径方向に配置され、周方向に離間した複数の可撓性部材を有し、
各可撓性部材は、開口状態にあるときの第1の位置から、閉口状態にあるときの第2の位置に変形することを特徴とする自動注射器。
【請求項3】
請求項2に記載の自動注射器であって、
各可撓性部材の少なくとも近位端が、閉口状態にあるとき半径方向内側に湾曲することを特徴とする自動注射器。
【請求項4】
請求項2に記載の自動注射器であって、
半径方向に配置され、周方向に離間した複数の可撓性部材は、全体としてシリンジの肩部に係合する支持面を形成するように、ハウジングの内側に配置され、ハウジングの遠位端から近位方向に延びることを特徴とする自動注射器。
【請求項5】
請求項2に記載の自動注射器であって、
ハウジング内に配設されたシリンジガイドをさらに有し、
シリンジは、シリンジガイド内に配設され、シリンジガイドが遠位方向に移動するとき、シリンジガイドとともに移動し、
シリンジガイドの遠位端が、各可撓性部材に係合して、内側に変形させることを特徴とする自動注射器。
【請求項6】
請求項2に記載の自動注射器であって、
ハウジングの遠位端に着脱自在に接続されたハンドルをさらに有し、
ハンドルは、円筒状本体部と、これに接続された、針シールドを取り外すための針シールドリムーバとを有することを特徴とする自動注射器。
【請求項7】
請求項6に記載の自動注射器であって、
針シールドリムーバは、略円筒状本体部と、針シールドの近位端に係合するラッチとを有することを特徴とする自動注射器。
【請求項8】
請求項6に記載の自動注射器であって、
針シールドリムーバは、複数の可撓性部材を第1の位置に保持することを特徴とする自動注射器。
【請求項9】
請求項1に記載の自動注射器であって、
シリンジは、針刺しシリンジであることを特徴とする自動注射器。
【請求項10】
請求項1に記載の自動注射器であって、
シリンジは、事前充填シリンジであることを特徴とする自動注射器。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−524792(P2011−524792A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514743(P2011−514743)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/047483
【国際公開番号】WO2009/155277
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(510194080)ウエスト・ファーマシューティカル・サービシーズ・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】WEST PHARMACEUTICAL SERVICES, INC.
【Fターム(参考)】