前駆細胞を認識するモノクローナル抗体を産生するための方法
前駆細胞を認識するモノクローナル抗体を酸性するための方法。上記方法は、13.5日齢マウス胚の嗅球から得たニューロスフィアによるアルメニアンハムスターの免疫、それに続くヨウ化プロピジウムの存在下でのニューロスフィアフローサイトメトリーを用いた抗体の選択を含む。このように得られた抗体は、前駆細胞、主として神経前駆細胞の細胞培養組織の濃縮に使用され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NILO1およびNILO2と称されるモノクローナル抗体の利用に関する。当該抗体は、中枢神経系の前駆細胞を含む前駆細胞を有する集団を同定、単離および濃縮することを目的として、細胞表面マーカーと結合される。また、本発明は、抗体を取得するための特異的な方法、上記抗体を含有する薬学的組成物、およびその利用(例えば、前駆細胞集団における分子または薬剤の作用を特定する方法)に関する。
【背景技術】
【0002】
わずかな例外はあるが、中枢神経系(central nervous system:CNS)の神経集団は、基本的に有糸分裂後の集団と考えられており、それらの死後に置換される能力を有さずに分化している。主に、全哺乳動物の成熟CNSの2つの領域において活発なニューロン新生プロセスが確認されており、それは自己再生に対する脳の潜在能力(ヒトの脳を含む)を示唆する(Altman and Das, 1965. J Comp Neurol 124: 319-35; Alvarez-Buylla et al., 2000. Prog Brain Res 127: 1-11; Bedard and Parent, 2004. Brain Res Dev Brain Res 151: 159-68; Bonnert et al., 2006. Eur J Neurosci; Lennington et al., 2003. Reprod Biol Endocrinol 1: 99)。このことは、細胞代償療法、ひいては未だ有効な治療方針のない神経変性疾患にとって見込みのある将来を与える。
【0003】
神経幹細胞はすべての脳細胞の起源、すなわちニューロンおよびグリアを構成する。初期には支持細胞であると考えられるグリア細胞は、様々な機能に関与する星型細胞のアストロサイト、およびミエリンによって軸索を取り囲むことによって当該軸索を保護しているオリゴデンドロサイトを含む。ニューロン新生は、マウスの生涯、そしておそらくヒトの生涯にわたって維持されるが、神経幹細胞の数は成体の脳に極めて少ない。
【0004】
神経幹細胞は、特に、歯状回の下に位置する側脳室の脳室下帯(subventricular zone:SVZ)(Doetsch et al., 1999. Cell 97: 703-16)および海馬の顆粒細胞下帯にある中枢神経組織の所定のニッチに主に集中している。終脳脳室下帯(SVZ)は、嗅球ニューロン(olfactory bulb:OB)を産生している成体マウス神経幹細胞の主な供給源である(Alvarez-Buylla et al., 2000. Prog Brain Res 127: 1-11; Bedard et al., 2002. Eur J Neurosci 16: 1917-24; Doetsch et al., 2002. Neuron 36: 1021-34; Dutton and Bartlett, 2000. Dev Neurosci 22: 96-105; Pencea et al., 2001. Exp Neurol 172: 1-16)。SVZは、成体年齢において活発に増殖しており、側脳室の壁を覆っている細胞の薄層からなる(Doetsch et al., 1999. Cell 97: 703- 16)。これら前駆細胞のいくつかは脳室前縁に集中しており、吻側遊走性流(rostral migratory stream:RMS)を生み出す。
【0005】
また、神経幹細胞は、吻側遊走性流による上衣下星細胞の移動の結果として生じる嗅球由来であり得る(Alvarez-Buylla and Lim, 2004. Neuron 41: 683-6)。これらの領域は、所定の神経性細胞、またはニューロスフィアとして知られる細胞の凝集体として規定される。当該所定の神経性細胞は、自己再生増殖を維持することが可能なインビトロにおいて、もしくは組織によって被覆された基質の単層において取得することができる。EFGおよび塩基性FGFが補われた適切な培地において神経幹細胞を生育する場合、神経幹細胞は増殖し、自己再生能力を維持し得る。これらの因子を培地から除去すると、主要な神経種であるニューロンおよびグリア細胞(アストロサイトおよびオリゴデンドロサイト)への分化をもたらす。
【0006】
多能性細胞はこれらの増殖領域から単離され、培養組織においてクローン化されて伸張される。インビトロの環境、すなわち移植後において、これらの細胞は中枢神経系の3つの主要な細胞種を産生する能力を有しているため、神経多能性細胞に分類される。
【0007】
神経組織の移植による特異的な神経集団の機能的置換は、神経変性疾患の治療にとって魅力的な治療法を示す。しかし従来、神経幹細胞は、組織生体検査または検視によって脳組織から得られるものであり、倫理的問題および免疫適合性の問題をもたらす。したがって、以前として、上記問題を解決する神経幹細胞の供給源を提供する必要がある。
【0008】
この意義において、モノクローナル抗体は細胞内に存在する抗原(細胞質内抗原)によって神経幹細胞を同定することが知られている。当該抗体が細胞内に存在する抗原と結合し得るためには、結果的に細胞死を伴う原形質膜の透過処理が必要となることから、生存細胞集団の選択に使用され得ないという欠点を有する。ネスチン、Sox2、ビメンチン、またはGFAP(極めて未発達な前駆細胞のための)およびダブルコルチン、PSA−MCAM、Ki67、ならびにβIII−チューブリン(増殖性の前駆細胞および神経幹細胞のための)などの神経前駆細胞を特徴づける、多くの細胞質内モノクローナル抗体が存在する。しかし、今日まで、神経前駆細胞の表面抗原に対するわずかな抗体を特徴づけられているに過ぎない。
【0009】
神経組織の損失は、脳応答および個々の死において進行性損失を伴ういくつかの神経変性疾患の原因であると提議されている。現在、これらの疾患を治す治療法はなく、ある程度緩和する治療が当該疾患の一時的な改善を成し得るのみである。一次的な治療という現状の一つの理由には、新たな神経幹細胞の移植という手法によって、当該細胞を患者に提供することの困難性に起因する。この手法は、損傷された組織の少なくとも一部を再生することが可能であり、おそらく断定的に病状を改善することができる細胞治療である。
【0010】
しかし現在までに、後述する濃縮、選択および治療剤としての研究または使用のために幹細胞を精製する手段を得ることは実質的に不可能であり、神経細胞に対する新規の表面マーカーを見出す必要があることを明白に示している。
【発明の概要】
【0011】
このように、幹細胞集団の濃縮に関する前駆細胞、および初期の前躯体を検出することができる手段を見出す必要性がある。それにより、前駆細胞および初期の前躯体の研究および治療薬としての利用が可能になる。
【0012】
この意義において、および本発明の第1の態様によれば、以下:
a.13.5日齢マウス胚の嗅球から神経幹細胞(neural stem cells:NSC)を含むニューロスフィアを産生する工程と、
b.生存ニューロスフィア細胞によって4ヶ月齢アルメニアンハムスターを免疫する工程と、
c.上記動物の脾臓を抽出してリンパ球を取得する工程と、
d.リンパ球と、非産生マウスミエローマ細胞とを融合して、ハイブリッド細胞またはハイブリドーマを生み出す工程と、
e.ヨウ化プロピジウムの存在下で、死細胞が分析から除外されるニューロスフィア細胞フローサイトメトリーを用いて、ハイブリドーマによって産生される抗体の決定および/または選択を行なう工程とを含む、前駆細胞の膜抗原を特異的に認識するモノクローナル抗体を産生する方法を提供する。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、モノクローナル抗体は:
a)国際寄託当局デュスチェ サムラング フォン ミクルールガニスメン ウンド ゼルクルツレン GmbH(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH:DSMZ)、ブラウンシュワイク、ドイツにアクセスDSM番号No.ACC2887で2008年3月12日に寄託されたハイブリドーマによって産生される、NILO1(クローン1 B6.2.13)と称されるモノクローナル抗体、および、
b)国際寄託当局デュスチェ サムラング フォン ミクルールガニスメン ウンド ゼルクルツレン GmbH(DSMZ)、ブラウンシュワイク、ドイツにアクセスDSM番号No.ACC2881で2008年2月4日に寄託されたハイブリドーマによって産生される、NILO2(クローン2 B7.10)と称されるモノクローナル抗体、
などから提供され、上述の処理によって取得される。
【0014】
本発明の第3の態様は、神経誘導細胞の任意のモノクローナル抗体の活性フラグメントからなる。
【0015】
本発明の別の態様によれば、RNAまたはDNAの遺伝子構造は、上記請求項のいずれかに記載の本発明の抗体、または本発明の抗体フラグメントに転写する能力を提供する。
【0016】
本発明の上記遺伝子構造は、抗体(NILO1および/またはNILO2)、または当該抗体フラグメントの配列の、インビトロまたは細胞内における転写を方向づけるとともに、下記の配列型:a)少なくとも本発明の抗体の符号化配列、または当該抗体の転写のための、本発明の抗体フラグメントの符号化配列を少なくとも含むヌクレオチド配列(好ましくは二重鎖)、b)遺伝子発現系またはベクターと関連があるヌクレオチド配列(好ましくは二重鎖)、の少なくとも1つを含む。b)のヌクレオチド配列は、少なくとも1つのプロモーターと、また、他の配列と操作上で結合する、本発明の抗体の配列または抗体フラグメントの配列の符号化配列を含んでいる。このプロモーターは重要な上記ヌクレオチド配列の転写を方向づけており、当該他の配列は適切な転写および適切な時間および的確な形態での調節に必須であるか、またはふさわしい配列である。この他の配列としては、例えば、開始シグナルおよび停止シグナル、切断部位、ポリアデニル化シグナル、複製起点、エンハンサー、サイレンサーなどが挙げられる。これら複数の発現系またはベクターは当業者に知られる従来の方法(Sambrook et al., 1989)によって取得され得、本発明の一部を形成する。
【0017】
本発明の別の態様は、国際寄託当局デュスチェ サムラング フォン ミクルールガニスメン ウンド ゼルクルツレン GmbH(DSMZ)、ブラウンシュワイク、ドイツにアクセス番号DSM No.ACC2887およびDSM No.ACC2881で寄託された、モノクローナル抗体NILO1およびNILO2を産生するハイブリドーマからなる。
【0018】
本発明の別の態様では、以下:
a)細胞集団と、モノクローナル抗体NILO1および/またはモノクローナル抗体NILO2によって認識される細胞表面マーカー中のエピトープまたは抗原決定基を認識する試薬とを接触させる工程と、
b)上記試薬と、上記エピトープまたは抗原決定基との接触がある細胞を選択する工程と、
を含む、幹細胞または前駆細胞が非常に豊富な集団を産生する方法について述べる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、幹細胞はニューロスフィアを先導し得るヒト中枢神経系からの幹細胞である(NS−IC)。
【0020】
本発明に係る本態様のより好ましい実施形態において、神経細胞または神経誘導細胞を含んでいる集団はニューロスフィアの培養組織から取得される。
【0021】
本発明に係る本態様のより好ましい実施形態において、試薬は下記のリスト:
a)モノクローナル抗体NILO1によって認識される細胞表面マーカー中のエピトープまたは決定基を認識可能な、抗体またはそのフラグメント、
b)モノクローナル抗体NILO2によって認識される細胞表面マーカー中のエピトープまたは決定基を認識可能な、抗体またはそのフラグメント、
c)NILO1抗体またはそのフラグメント、
d)NILO2抗体またはそのフラグメント、
e)抗体NILO1によって認識される細胞表面マーカーと結合するリガンドまたは分子、
f)抗体NILO2によって認識される細胞表面マーカーと結合するリガンドまたは分子、
g)蛍光色素接合体、および、
h)磁性粒子を有する接合体
から選択される。
【0022】
本発明に係る本態様のさらに好ましい実施形態において、試薬は、発色団、化学発光材料、放射性核酸またはナノ粒子などのマーカーと結合されるモノクローナル抗体NILO1および/またはNILO2を含む。
【0023】
本発明のさらに好ましい実施形態において、前駆細胞の選択は、フローサイトメトリー技術、すなわちFACSフローサイトメトリー(蛍光標示式細胞分取器)、もしくは顕微鏡検査を用いて、免疫細胞化学技術(細胞)もしくは免疫組織化学(組織)を用いて、または磁性選択法もしくは任意の他の陽性選択法によって行なう。
【0024】
本発明の別の態様は、幹細胞または神経前駆細胞が豊富な集団を提供する。上記豊富な集団は、上述した方法によって得られる。
【0025】
本発明に係る本態様の好ましい実施形態において、幹細胞または前駆細胞が豊富な集団は、薬物として使用される。
【0026】
本発明に係る本態様のより好ましい実施形態において、幹細胞または前駆細胞が豊富な集団は、変性疾患または組織破壊過程に生じる疾患の治療に使用される。これらの疾患としては、限定されないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病、循環器壊死、造血性欠乏が挙げられる。
【0027】
本発明の別の態様によれば、薬剤のスクリーニング法および発見法は、以下の工程:
a)モノクローナル抗体NILO1および/もしくはモノクローナル抗体NILO2と結合される神経細胞または神経誘導細胞を含む集団から選択し、神経細胞または神経誘導体の集団と比較した場合、ヒトニューロスフィア開始細胞(neurosphere initiator cells:NS−IC)に関する濃縮された集団を産生する工程と、
b)上記濃縮された集団を非ヒト哺乳動物に接種する工程と、
c)上記哺乳動物、および上記集団を接種されている別の非ヒト哺乳動物(対照被験体)に対して、薬学的に陽性な組成物を投与する工程と、
d)両哺乳動物における上記投与の作用を比較する工程と、
を含むことが説明される。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、非ヒト哺乳動物はげっ歯動物である。
【0029】
本発明の別の態様によれば、薬剤のスクリーニング法および発見法は、以下の工程:
a)モノクローナル抗体NILO1と結合される神経細胞または神経誘導細胞を含む集団から選択し、モノクローナル抗体NILO2と結合される、神経細胞または神経誘導細胞のさらなる選択によって上記集団をさらに濃縮し、神経細胞または神経誘導体の集団と比較した場合、ヒトニューロスフィア開始細胞(NS−IC)に関する濃縮された集団を産生する工程と、
b)ヒトニューロスフィア開始細胞(NS−IC)となり得るヒトCNS−SCに関する上記濃縮された集団を、非ヒト哺乳動物に接種する工程と、
c)上記哺乳動物、および上記集団を接種されている別の非ヒト哺乳動物(対照被験体)に対して、薬学的に陽性な組成物を投与する工程と、
d)上記投与の作用を比較する工程と、
を含むことが説明される。
【0030】
本発明に係る方法の本態様の好ましい実施形態では、上述したように、非ヒト哺乳動物がげっ歯動物である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】NILOハイブリドーマの起源を示す図である。
【図2】モノクローナル抗体の選択方法を示す図である。
【図3】免疫細胞化学の手法を用いたNILO1およびNILO2によるニューロスフィア細胞の標識を示す。
【図4】NILO、およびマトリゲル(登録商標)上のニューロスフィア細胞中の神経集団を規定する抗体の二重発現を示す。
【図5】SVZ神経帯において神経前駆細胞を検出するNILO1を有する脳切片の標識を示す。
【図6】SVZ神経帯において神経前駆細胞を検出するNILO2を有する脳切片の標識を示す。
【図7】ニューロスフィア由来の細胞、およびC2C12細胞株中のNILO2によって免疫沈降させた表面タンパク質を示す。
【図8】ニューロスフィア細胞増殖におけるNILO1およびNILO2の作用を示す。
【図9】ニューロスフィア細胞分化におけるNILO1およびNILO2の作用を示す。
【図10】骨髄に存在する間葉前駆細胞を同定する能力があるNILO1を示す。
【図11】3次元乳房構造を再構築する能力があるNILO1を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔定義〕
本明細書において用いられる用語“抗体”は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち表面マーカーまたはエピトープに対して特異的に結合する(免疫反応を伴って)抗原固定部位を含んでいる分子に関する。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部位としては、例えば、ペプシンなどの酵素による処理抗体を産生し得る、フラグメントF(ab)およびF(ab’)2を含む。
【0033】
本明細書において用いられる表現“モノクローナル抗体”または“モノクローナル抗体組成物”は、前駆細胞の特定のエピトープと免疫反応することが可能な抗原固定部位を1種類のみ含んでいる抗体分子の集団を示す。よって、モノクローナル抗体組成物は免疫反応する前駆細胞に対して特有の結合親和性を示す。従来の抗体、すなわち“ポリクローナル抗体”は、典型的に、様々な決定基(エピトープ)に対して方向づけられる、異なる抗体を含む。一方、モノクローナル抗体は、それぞれ抗原の単一のエピトープに対して方向づけられる。
【0034】
本明細書における用語“エピトープ”は、免疫システム、具体的には抗体、B細胞またはT細胞によって認識されるマクロ分子の一部に関する。通常、エピトープは自己のものとは異なるタンパク質由来であると考えられているが、ホスト由来の配列が認識され、エピトープとして分類されてもよい。
【0035】
組換えDNA技術を用いることによって、可変領域または抗原認識領域をバインドする抗体を、ヒト抗体の枠組みに構築することができる。このように、モノクローナル抗体は、遺伝子操作によって生化学的に改変されてもよいし、またはできる限り前駆細胞の認識に必須ではない部分全体または一部の抗体を欠いており、また、当該抗体にさらなる有利な性質を移す別の抗体によって人工的に置換されてもよい。
【0036】
“組換え抗体”は、抗体をコードする核酸によって形質転換されるか、もしくは核酸導入されているホスト細胞に産生されるか、または相同組換えの結果として同じものを産生するものである。
【0037】
“形質転換”および“核酸導入”は、細胞に核酸を導入する処理に関して、同義的に用いられる。形質転換または核酸導入の後、核酸は、ホストのゲノムに組み込まれてもよいし、染色体外要素として存在してもよい。“ホスト細胞”は、インビトロの培養組織中の細胞、およびホスト動物中の細胞を含む。米国特許出願第5,534,615号には、例えば、ポリペプチドの組合え産物に関するこれらいくつかの処理が開示されている。
【0038】
人為的操作を用いた任意の利用可能な方法によってポリヌクレオチドが細胞に核酸導入されている場合、または細胞が、転換されたポリヌクレオチドを固有に有する元々改変された細胞の子孫である場合、細胞は“遺伝的に改変された”、“核酸導入された”、または“遺伝的に形質転換された”と言われる。多くの場合、ポリヌクレオチドは、転写可能であって、また、重要なタンパク質をコードする配列を含んでいてもよい。これにより、細胞は上記タンパク質を発現することができる。改変された細胞の子孫が同じ改変を有する場合、遺伝的な改変は“遺伝する”と言われる。
【0039】
また、抗体は“キメリカル”であり得る。免疫グロブリンにおける重鎖領域および/または軽鎖領域は、決定された種からの、もしくは決定された抗体のクラスまたはサブクラスに属している、関連する抗体配列と同一または相同である。一方、残りの鎖は、他の種由来の抗体、または抗体の別のクラスもしくはサブクラスに属している抗体および抗体フラグメントにおいて、それらが所望の生物活性を示すように、関連する配列と同一または相同である(米国特許出願第4,816,567号)。
【0040】
用語“超可変領域”は、本明細書において用いられる場合、抗原への結合に関与する抗体のアミノ酸残基に関する。超可変領域は、“相補性決定領域”のアミノ酸残基、および/または“超可変ループ”のアミノ酸残基を含む。骨格残基、すなわち“FR(framework residues)”は、本明細書において定義されるように、超可変領域の残基とは異なる可変ドメインのアミノ酸残基である。
【0041】
多くの場合、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レセプター抗体)である。このヒト免疫グロブリンにおいて、レセプターの超可変領域の残基は非ヒト種の超可変領域の残基(ドナー抗体)によって置換されている。非ヒト種としては、マウス、ラット、ラビット、または所望の選択性、親和性および能力を有する、非ヒト霊長類などが挙げられる。
【0042】
ある場合、ヒト免疫グロブリンのFv領域の骨格残基(FR)は、関連する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レセプター抗体において、またはドナー抗体において検出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は、抗体機能をさらに改良するために行なわれる。一般的に、ヒト化抗体は、実質的にすべてが少なくとも1つ、および典型的には2つの可変ドメインを含む。ここでは、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応する超可変ループのすべてまたは略すべて、およびすべてのまたは略すべてのFR領域が、ヒト免疫グロブリン配列の可変ドメインである。また、ヒト化抗体は、免疫グロブリン(Fc)(一般的にはヒト免疫グロブリン)の不変領域の少なくとも一部を含む。ヒト化抗体を得るための様々な処理は、現在の技術において知られている。
【0043】
“抗体フラグメント”は、抗体全長の少なくとも一部を含み、通常、抗原結合領域またはその可変領域を含む。抗体フラグメントとしては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvフラグメント;二重特異性抗体;線形抗体;単鎖抗体分子;および抗体フラグメントによって形成される多特異的抗体を含む。抗体フラグメントを作製するいくつかの技術が開発されている。伝統的に、これらのフラグメントは未処理抗体のタンパク分解によってもたらされる。しかしながら今日では、これらのフラグメントは組換えホスト細胞を用いて直接作製することができる。例えば、抗体フラグメントは、抗体ファージのライブラリーから単離することができる。代替的に、Fab’−SHフラグメントは、E.coliから直接回収することが可能であり、化学的に結合してF(ab’)2フラグメントを形成する。別の実施形態において、F(ab’)2はロイシンジップGCN4によって形成されて、F(ab’)2分子の集合を促進する。別のアプローチによると、組換えホスト細胞培養組織のF(ab’)2フラグメントは、直接単離され得る。抗体フラグメントの産生に関する他の技術は、当業者に対して明らかにされるであろう。他の実施形態において、選択された抗体は単鎖Fvフラグメント(single chain Fv fragment:scFv)である。改定に関しては、国際公報第1993/016185号を参照のこと。
【0044】
“単鎖Fv(scFv)”または“抗体フラグメント”は、抗体のVHドメインおよびVLドメインを含む。これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。一般的に、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間に配置されているポリペプチドをさらに含んでいる。当該ポリペプチドは、抗原結合のための所望の構造を形成することが可能である。
【0045】
用語“二重特異性抗体”は、2つの抗原結合部位を有する抗体小フラグメントに関する。これらのフラグメントは、同じポリペプチド鎖に軽鎖可変ドメイン(VL)と結合される重鎖可変ドメイン(VH)を含んでいる。2つのドメインを同一鎖において対にするには近すぎる配置を採用しているため、これらのドメインは別の鎖の相補的なドメインと対にされ、2つの抗原結合部位を作り出すことを余儀なくされる。
【0046】
“線形抗体”という表現は、1組の抗原結合領域を形成する、一対のタンデムセグメントFd(VH−CH 1 −VH−CH 1)を含む抗体に関する。線形抗体は、二重特異的または単一特異的であり得る。
【0047】
“多特異的抗体”は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して特異性のある結合を有している。一方で、上記分子は通常2つの抗原のみと結合する(すなわち、二重特異的抗体、BsAbs)。本明細書において用いられる場合、三重特異的抗体などのさらに特異性を有している抗体も表現の範囲内に含まれる。二重特異的抗体の調製に関する処理については現状の技術において知られている。本発明の抗体フラグメントは、前駆細胞のエピトープと特異的に結合する能力を有する。
【0048】
用語“幹細胞”は、増殖してさらなる幹細胞を産生する能力を有する、比較的無活動の非分化細胞に関する。また、当該細胞は、多数の前駆細胞を産生する能力を有しているとともに、分化細胞、または分化されたもしくは分化可能な娘細胞を生み出し得る。これらの細胞は自己保存することが可能である。すなわち、それぞれの細胞分裂によって、娘細胞が幹細胞にもなり得ることを意味する。
【0049】
用語“神経幹細胞”(neural stem cell:NSC)は、ニューロン、アストロサイトおよびオリゴデントロサイトに分化する能力がある子孫を産生することができる多能性幹細胞に関する。
【0050】
用語“前駆細胞(progenitor cell)”は、幹細胞由来の未分化細胞に関する。前駆細胞は限定された増殖能力を有する(幹細胞とは異なり、増殖能力が限定され、したがって自己保存を示さない)が、自己再生され得る。この自己再生は、適切な条件において、特定の分化経路および場合により、ニューロン、アストロサイトまたはオリゴデンドロサイトへの分化に関与している。
【0051】
用語“前駆細胞(precursor cells)”は、インビボまたはインビトロにおいて、幹細胞から得られるとすぐに本発明の方法によって修飾されるか、または操作される生存細胞に関する。この細胞は自己再生可能であり、且つ、多能性を有しているため、当該用語には前駆細胞および幹細胞の両方を含んでいる。インビトロにおいて、神経幹細胞由来の前駆細胞は、典型的にニューロスフィアの形態で成長するが、培養条件によって異なる成長パターンを示し得る。
【0052】
用語“ニューロスフィア”は、神経幹細胞由来であって、インビトロにおいて培養される細胞の集団に関する。少なくともいくつかの細胞は、ネスチン表現型(陽性)(神経幹細胞の細胞質内マーカーであるネスチンと反応する)である。この集団は、幹細胞および/または前駆細胞からなり、分化した細胞を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
【0053】
神経組織の好ましい供給源は哺乳動物から得られ、より好ましくはげっ歯動物(例えば、マウスおよびラット)および霊長類の動物から得られ、最も好ましくはヒトから得られる(ヒトの胚組織を除く)。米国特許出願第5,750,376号および米国特許出願第5,851,832号には、自己再生可能であり、且つ、多能性を有する、成人ヒト神経組織、成体アカゲザル、マウス胚、および幼若マウスおよび成体マウスからの脳組織から得たCNS神経幹細胞を単離および増殖する方法が開示されている。本方法は、培養組織において、CNS神経幹細胞から得た神経幹細胞を構築すること、およびCNS神経幹細胞の子孫を分化することを含む。
【0054】
用語“脳室”は、脳脊髄液の流れを通す中枢神経系内の任意のキャビティまたは処理に関する。よって、当該用語には、側脳室、第3脳室および第4脳室だけでなく、中心導管(central channel)および中脳水道も包含される。
【0055】
用語“脳室組織”は、CNS脳室を覆っており、CNS幹細胞および前駆細胞などの、未分化細胞の集まりを含んでいる上衣下星帯を含む組織に関する。
【0056】
用語“恒常的な増殖性集団”は、成体哺乳動物における前脳の側脳室の上衣下星帯内に位置づけられて分化される細胞集団に関する(スマートによって概要が示される;J. Comp. Neurol. 116:325, (1961))。この細胞集団は、上衣下星帯のいくつかの領域に当該細胞の約33%を含む(Morshead and van der Kooy, J. Neurosci. 12:249, (1992))。
【0057】
詳細な説明および特許請求の範囲を通して、用語“含む(comprises)”およびそのバリアントは、他の技術的特徴、付加、要素またはステップを除くことを意図したものではない。当業者によれば、本発明の他の目的、利点および特徴は、発明の詳細な説明から部分的に、および本発明の実施例から部分的に寄せ集められ得る。以下の実施例および図面は、説明のために提供されるものであり、本発明を限定することが目的ではない。
【0058】
〔図面の説明〕
図1.NILOハイブリドーマの起源を示す図である。
【0059】
13.5日齢胚の嗅球から産生したニューロスフィアを抗原として使用する。5〜6ランで、3ヶ月の間に5万セルを3回注射することによって、成体アルメニアンハムスター(クリセトゥラス ミグラトリウス)を免疫する。最終免疫から3日後に、脾臓細胞をBalb/c P3−X63.Ag8.653の非産生ミエローマと融合させる。HATにおいて選択したクローンを生育し、フローサイトメトリーによって分析する。
【0060】
図2.モノクローナル抗体の選択方法を示す図である。
【0061】
a)13.5日齢成体マウスの嗅球のニューロスフィア由来の細胞、および6週齢成体マウスの成人マウスのSVZから得たニューロスフィア由来の細胞を所定の強度で標識するモノクローナル抗体を、フローサイトメトリーによって選択する。サイトメトリーはコールターXLにおいて行なった。具体的には、細胞形態学による当該抗体の選択を10,000回行ない、ヨウ化プロピジウムによって染色されなかった死細胞を除去した。b)ニューロスフィアとして細胞培養組織における別のランの後、NILO1またはNILO2に関して、6週齢マウスのSVZ由来の神経組織細胞を標識する。
【0062】
図3.免疫細胞化学の手法を用いたNILO1およびNILO2によるニューロスフィア細胞の標識を示す。
【0063】
a)ネスチンによってニューロスフィアを標識し、さらにFITC抗マウスポリクローナル二次抗体によって標識すると共に、NILO1によってニューロスフィア標識し、Cy5によって標識された二次抗ハムスターによってさらに標識した。b)抗GFAP、NILO1およびDAPI(核)によって標識する以外は、a)と同様であり、c)、d)およびe)、マトリゲル(登録商標)において、ニューロスフィアをNILO2によって標識した。
【0064】
図4.NILO、およびマトリゲル(登録商標)上のニューロスフィア細胞中の神経集団を規定する抗体の二重発現を示す。
【0065】
a)およびc)GFAPを有するNILO1を異なる倍率で示す;b)およびd)、GFAPを有するNILO2を異なる倍率で示す;e)NILO1およびネスチンを示す;f)NILO1およびki67を示す。
【0066】
図5.SVZ神経帯において神経前駆細胞を検出するNILO1を有する脳切片の標識を示す。
【0067】
組織低温保持領域をパラホルムアルデヒドで固定し、NILO1(グリーン−FITC)ならびにダブルコルチン(doublecortin:DCX)、GFAP、ビメンチン、βIII−チューブリン(Tuj1)、ki−67およびPSA−NCAMによって染色した。モノクローナル抗体は表1に示される。
【0068】
図6.SVZ神経帯において神経前駆細胞を検出するNILO2を有する脳切片の標識を示す。
【0069】
組織低温保持領域をパラホルムアルデヒドによって固定し、NILO2(グリーン−FITC)ならびにダブルコルチン(DCX)、GFAP、ビメンチン、βIII−チューブリン(Tuj1)、ki−67およびPSA−NCAMによって染色した。モノクローナル抗体は表1に示される。
【0070】
図7.ニューロスフィア由来の細胞、およびC2C12細胞株中のNILO2によって免疫沈降させた表面タンパク質を示す。
【0071】
NILO2によって細胞をインキュベートし、その後5%ブリグ58(シグマ)の存在下において溶解バッファーと共に使用した。精製した抽出物を様々な方法で発現させた。
【0072】
図8.ニューロスフィア細胞増殖におけるNILO1およびNILO2の作用を示す。
【0073】
24時間、48時間および72時間示される抗体濃縮物の存在下において細胞をインキュベートし、増殖を測定するためのMTZテトラゾリウム化合物を用いて増殖量を測定した。
【0074】
図9.ニューロスフィア細胞分化におけるNILO1およびNILO2の作用を示す。
【0075】
ニューロスフィアが存在し、FGF2およびEGFが存在せず、0.5%FCSが存在する培地において、細胞をインキュベートする。これは、前駆細胞の急速な分化をもたらし、細胞を分化させる。2日〜4日間示される抗体濃縮物の存在下で、増殖を測定するためのMTZテトラゾリウム用いて細胞の増殖能を測定し、ニューロスフィア構造を分化または維持する能力を測定する。
【0076】
図10.骨髄に存在する間葉前駆細胞を同定する能力があるNILO1を示す。
【0077】
a)骨髄細胞をNILO1によるフローサイトメトリー(分別)の手法で選択するか、または、b)間葉細胞を付着する能力および獲得する能力によって選択する。c)骨髄中の間葉前駆細胞またはNILO1によって標識された培養液中で1週間後に選択された間葉前駆細胞。d)Sca−1、Alpha6、beta1、NILO1およびNILO2によって標識された骨髄または間葉細胞、e)ニューロスフィア培地において2週間経過したのちのNILO1細胞、およびf)そのTuj1+細胞における分化、またはg)脂肪細胞分化培地(レッドオイルで染色された)において6週間経過した後のNILO1細胞、またはh)染色されていない(グリース滴下)。
【0078】
〔実施形態の詳細な説明〕
以下、本発明者らによって行なわれるアッセイを用いて本発明について説明する。本発明者らは、モノクローナル抗体NILO1およびNILO2の特異性および有効性を明らかにしている。
【0079】
<実施例1.モノクローナル抗体NILO1およびNILO2の産生>
本発明者らは、神経幹細胞に対するモノクローナル抗体を取得する方法を示す。当該方法は、抗原刺激源としての、13.5日胚細胞由来のニューロスフィアの利用、および免疫化のレセプターとしての、特異的なパターンを用いた3カ月齢未満のアルメニアンハムスターの利用を含む。ハムスター起源のモノクローナル抗体を分泌し、神経幹細胞に対して特異性を有する種属間ハイブリドーマの特異的な選択培地の選定の後、脾臓および脾臓とマウスミエローマ細胞との融合物を取得することは、胚起源および成体動物からの神経幹細胞を共に許容する。
【0080】
(免疫化に用いられる抗原)
ニューロスフィア由来の神経幹細胞(NSC)を用いた。ニューロスフィアとして成長するこの細胞は脱凝集することがあり、新たなニューロスフィアを形成する能力がある培養組織においてクローン化され得る。ニューロスフィアの一部を形成するこの細胞は、“インビトロ”の培養組織中で、ニューロンおよびグリア(アストロサイトおよびオリゴデンドロサイト)などの脳の様々な細胞型に分化する能力があるような神経前駆細胞と考えられる。さらに、これらの細胞は“ネスチン”などの規定された細胞内マーカーを有し、ニューロン、オリゴデンドロサイトまたはアストロサイトなどの任意の神経系統の細胞に分化し得る。
【0081】
増殖中の細胞の状態および特性が、培養組織において続けられるランの回数に依存して変更され得るとはいえ、これらNSCは、細胞希釈ランを通して培養組織において維持され得る。これらNSCに対するモノクローナル抗体を取得するための本手順は、3〜5ラン(ラン0は、マウス組織からこれらの細胞を取得する時間である)のときの細胞を用いる。
【0082】
成体マウスには、NSCの取得に用いられ得る様々な脳の領域が存在する。最も重要な神経領域は、脳室下帯(SVZ)および海馬歯状回の顆粒領域である。しかしながら、成体マウスにおけるNSC取得率は低く、最低限の数の細胞が連続的に免疫を実行するために必要となることに鑑みて、我々の手順では13.5日齢マウス由来の胚組織(具体的には、嗅球)からNSCを得る。この組織から重要な量のNSCを得ることは容易であり、それは免疫化に用いられ得る。
【0083】
(免疫化に用いられる動物)
マウス神経前駆細胞に対するモノクローナル抗体を得るために、4ヶ月齢の雄のアルメニアンハムスターを用いる。独立した部屋および穏やかな環境であるが、他のマウスと同様に、通常の温度および湿度条件の飼育小屋で、動物を飼育する。また、アルメニアンハムスターが他のマウス抗原に対するモノクローナル抗体を取得するために用いられているとはいえ、今日、アルメニアンハムスターが神経成分に対する抗体を産生するために用いられているのでは決してない。重要なのは、アルメニアンハムスターが用いられて、他のハムスター種が同じように用いられないことである。
【0084】
5×106セル/ml濃度のPBSにて、脱凝集した生存ニューロスフィア細胞を注射し、動物を免疫化した。免疫経路は常に腹膜内とし、皮下注射シリンジを使用して各免疫(“追加免疫”)を別の位置にした。免疫ガイドラインは次の通りである:日数は0日、30日および60日とした。ニューロスフィア由来の細胞によって3度目の再免疫の3日後、脾臓を除去するために動物を全身麻酔した後に屠殺した。脾臓はリンパ球を抽出するために用いられており、後述するようにリンパ球とミエローマ細胞とを融合する。
【0085】
(細胞融合)
融合の手順は他の著者によってこれまでに示されるものに類似する。簡単に言うと、NSCによって免疫されたハムスターの脾臓由来のリンパ球を培地中で洗浄し、血清を含まないDMEMにおいて再懸濁する。マウスミエローマ細胞と、融合されることになる細胞とを50mlファルコンチューブの中で混合する。融合では、P3−X63.Ag8.653と称されるBalb.cから得た107非産生ミエローマ細胞と、免疫されたハムスターの脾臓から得た106細胞とを使用する。これらの細胞を室温で5分間、1500r.p.mで同時に遠心分離にかけた。浮遊物を吸引によって除去してすべて取り除く。細胞だけを含むチューブを37℃の湯浴中に置く。細胞懸濁液を時々ゆっくりとかき混ぜながら、1分間に0.4mlのポリエチレングリコール(水に40%PEG)を一滴ずつ添加する。その後、予め37℃に調節された、血清を含まないDMEM培地5mlを3分以下で一滴ずつゆっくりと希釈した。懸濁液を穏やかに混合し、DMEM−10%FCS完全培地で完成させて、37℃で30〜45分間インキュベートする。そして、細胞を平底96ウェルプレートに0.1ml/ウェルで分配し、37℃、5%CO2に設定されたインキュベーターにおいて保持する。融合から1日後、HA(2X)を含有しているDMEM−10%FCS培地を0.1ml/ウェルずつ加える。この培地を求め、週に一度交換する。ハイブリッドを目視により、または低分解能の倒立顕微鏡によって検出する。融合から3週間後、1ウェルにつき2mlの選択培地を有する24ウェルプレートにコロニーを移植する。
【0086】
(神経幹細胞に対して特異性を有する抗原の選択)
選択は、NSC細胞に対するフローサイトメトリーにおける、本発明の抗体によって陽性標識された細胞の検出によってなされる。NSC細胞の誘導体は;1)13.5日齢胚から得た嗅球ニューロスフィア、2)成体マウスのニューロスフィア、3)BW5147マウスから得た胸腺腫瘍細胞、3)成体マウスの骨髄細胞である。
【0087】
標識は、1/2に希釈した細胞培養液の上澄みを用いて行なった。二次抗体としては、異なる代替物(FITC蛍光色素、PEまたはビオチン)によって標識される抗ハムスターIgG(混合物)(Becton Dickinson,Ltd.)を用いる。
【0088】
ニューロスフィアNSC細胞を標識し、BW5147胸腺腫に対してネガティブである融合上澄みを増幅し、凍結する。選択された295個のハイブリッドから、約80個の抗体を選択する。選択された上澄みはNILO1およびNILO2と称されるモノクローナル抗体を含む。
【0089】
<実施例2.NILOモノクローナル抗体によるニューロスフィア細胞の同定>
NILO1およびNILO2は、ハムスターのBリンパ球と、Balb/cマウス由来の非産生ミエローマP3− P3−X63.Ag8.653.653とのハイブリドーマによって産生される、ハムスター免疫グロブリンIgGである。種属間の融合(ハムスター×マウス)であるにも関わらず、ハイブリドーマの安定性は選択およびクローニングを保証するほど十分高い。NILO1ハイブリドーマおよびNILO2ハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体は、G−タンパク質またはA−タンパク質とのセファロースカラム結合によって精製する。これにより、抗体の純度を保証し、様々な色素(フルオレセイン、フィコエリスリンなど)によって直接標識することが可能になる。現在、NILO抗体はFITCによって、およびPEによって標識される。
【0090】
NILO1抗体およびNILO2抗体は、免疫細胞化学、免疫組織化学、および本明細書に示される機能調査によって示されるように、神経幹細胞に対して極端な選択性を有する。
【0091】
一方、これらの抗体と磁性粒子との結合が試験されており、他の供給源からの神経前駆細胞集団の1回のみのランで、迅速な精製が可能である。このことは、1回のランで、細胞再構成実験において用いられている骨髄集団を濃縮することを可能にしている。この状況は、変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病など)、または組織破壊過程で生じ、今日、非常に多くの影響を伴う疾患(糖尿病、心血管系壊死、造血性欠乏など)に多大な波紋をもたらすことになる。
【0092】
NILO抗体の卓越した選択性を実証するために、様々なパターンの実験計画を行なっている。第1の調査は、フローサイトメトリーを用いて検出されるニューロスフィア細胞の標識を実証することからなる。これらの抗体による細胞の標識は、このDNAマーカーに対してネガティブな細胞を排他的に選択するために、ヨウ化プロピジウム(10μg/ml)の存在下で行なった。ここでは、生存細胞の標識が保証されており、しかも標識が細胞質内ではない(図2)。モノクローナル抗体NILO1およびNILO2によって標識された細胞の特性および比率は両者の間で異なっており、各抗体は異なる表面タンパク質を同定することを示唆する。
【0093】
成体マウスの脳の脳室下帯から産生されたニューロスフィア(図3a)、13.5日齢マウス胚からの脳の嗅球から産生されたニューロスフィア(図3b)、および成体マウスの嗅球から産生されたニューロスフィア(図3c)を、免疫細胞化学技術を用いて分析する。ニューロスフィアを市販の抗ネスチン抗体または抗GFAP抗体を用いて二重染色することによって標識する。二重標識は、染色された細胞の特異性および当該細胞と神経幹細胞との結合を示す。さらに、各標識は、分離され、且つ、マトリゲル(登録商標)を使用した培養プレートの樹脂に付着されたニューロスフィア細胞において行なった。これにより、さらに詳細な個々の分析が可能になる。図4は、マトリゲル中の細胞におけるGFAP、ネスチンおよびKi−67 NILO1またはNILO2の同時発現を示す。GFAPは、極めて前駆型の細胞またはグリア細胞を標識する。GFAPを含む両ケースにおいて染色は単細胞であるが、GFAPおよびNILOの標識は異なる領域に局在化しており、細胞内に同時発生しないことを明白に確認することができる。
【0094】
図3では、神経幹細胞の細胞質内マーカーであるネスチンが存在しているNILO1細胞の有無を確認することが可能である。とはいえ、NILO1はネスチン陽性神経前駆細胞内の細胞分集団を標識する。
【0095】
<実施例3.脳のSVZ領域におけるNILOマーカー>
NILO抗体は、成体マウス脳の神経原性領域における限定的に存在することによって証明されるように、神経幹細胞に特異的である。主に、NILOに対してポジティブな細胞は、成体マウスのSVZ領域および海馬の歯状回において検出されている。
【0096】
NILO1細胞およびNILO2細胞が神経前駆細胞に関連することを証明するために、ダブルコルチン(doublecortin:DCX)、ネスチン(nestin:Nes)、GFAP、ビメンチン、βIII−チューブリン、PSA−NCAMおよびKi67によって二重標識する、免疫組織化学調査標識を行なう。すべてのマーカーは、神経前駆細胞からの神経細胞の発達において、添付の表1に示すように異なる段階で関連している。組織化学分野は、切片を詳細に分析する目的のため、やや厚い切片(30ミクロン)でクリオスタットによって実施される。
【0097】
データは、NILO1(図5)およびNILO2(図6)が、周期的に前駆細胞を同定している神経前駆細胞集団および原始神経芽細胞の選択マーカーであることを示す。つまり、それらの標識はDCX、Ki67、ビメンチン、βIII−チューブリンに対して二重にポジティブなマーカーに同時発生し、GFAPマーカーと非常に近接している。それは直接的な同時発生ではないものの、マトリゲル中の細胞の組織化学において観察されるように、非常に近接した領域に同時に局在する。
【0098】
【表1】
表1.細胞および神経原性領域におけるNILOの有無を検出するために用いられるマーカー
【0099】
<実施例4.NILO抗体によって認識される表面タンパク質の同定>
これら抗体のうちNILO抗体免疫沈降によって認識される抗体を同定することは、神経前駆細胞において、NILO抗体によって認識される抗原のおおよその大きさを知るために行なわれている。神経前駆細胞は、ビオチンによって、またはNILO2およびNILO2抗体によって認識される代替可能なC2C12系統によって、細胞表面において標識されて用いられる。ビオチンによる細胞標識の後、抗体は結合され、続いてBriji界面活性剤を用いる材料および方法(Material and Methods using the Briji detergent)において述べられているように溶解される。ニューロスフィア細胞およびC2C12系統のいずれにおいても、NILO2によるタンパク質免疫沈降では140kDおよび170kDaの2つに大多数のバンドがある。一方、NILO1は“ウェスタンブロット”に用いられなくてよい。これらのデータは、免疫組織化学に基づくこれら抗体の類似の位置に依存せず、各モノクローナル抗体が前駆細胞の細胞表面タンパク質の異なる型を同定することを証明する。極めて関連性のある状況では、前駆細胞の細胞表面タンパク質の異なる型がNILOによって同定される表面抗原(細胞レセプター)により同定される。
【0100】
<実施例5.ニューロスフィアの増殖分化におけるNILO1抗体およびNILO2抗体の機能性作用>
NILOの細胞分布は、神経幹細胞において均一である。神経幹細胞は、その前駆細胞の状態で維持される。この状態は、繊維芽細胞成長因子2(fibroblast growth factor 2:FGF2)および表皮成長因子(epidermal growth factor:EGF)などの成長因子の存在下における厳密な細胞培養条件のもと、ウシ胎児血清(fetal calf serum:FCS)の非存在下で保持されることでもたらされる。これらの因子、すなわちFGFおよびEGFの非存在下で、且つ、FCSの存在下において細胞は増殖を停止し、任意の神経系統細胞:すなわち、ニューロン、オリゴデンドロサイト、またはアストロサイトに分化する。
【0101】
神経前駆細胞の増殖におけるNILO抗体の可能な機能性作用は、研究中である。NILO1抗体およびNILO2抗体を用いることで、抗体と、成体OBまたは13.5日齢のOBからのSVZニューロスフィア由来の神経幹細胞との相互作用は、神経細胞の任意の型(ニューロン、オリゴデンドロサイトまたはアストロサイト)への増殖プロセス(図8)を阻害する能力および分化プロセス(図9)の能力があることが証明されている。
【0102】
ニューロスフィアが増殖可能な培養培地において、ニューロスフィアに対して異なる濃度でNILO1およびNILO2をともに添加したとき、細胞増殖は停止する。持続的な抗体の存在下において、細胞は5〜6日後に死滅する。これらすべてのデータは、NILO抗体が細胞自己再生過程に関連するレセプターを認識すること、または自己再生能力を維持する因子(LIFまたはその他など)を阻害することを示唆する(図8)。
【0103】
0.1%ウシ血清の有無にかかわらず、FGF2およびEGFの非存在下であって、且つ、異なる濃度の精製NILO1の存在下でニューロスフィア細胞が分化培地に認識される場合、抗体の非存在下において観察される作用と比較して、分化プロセスがかなり低減されることがわかっている。NILO2は、NILO1よりも標識されないものの、ニューロスフィアの分化に同様の作用をもたらす。
【0104】
これらのデータは、神経前駆細胞の表面構造によるNILOの継続的な相互作用が、これらの細胞の挙動に重要な変化を生むことを証明している。それは、NILO抗体が前駆細胞の生態に不可欠な表面構造を認識することを示唆する。
【0105】
<実施例6.NILO1によって同定された非神経前駆細胞の識別>
NILOモノクローナル抗体を有する他の組織の分析は、神経領域の外側にこれら抗体によって同様に標識される他の少数集団が存在することを証明した。特に、NILO1抗体によって同定される2つの前駆細胞集団は、骨髄の間葉前駆細胞および乳房組織の前駆細胞である。
【0106】
骨髄においてNILO1によって標識されるごくわずかな細胞、および新生児マウスの脳内移植において神経組織による変化に見込まれる当該細胞の関与が同定された。骨髄内のNILO1によって標識されるどちらかの型の細胞を研究および分析した。細胞播種後、数日の培地に付着して並んだ細胞がNILO1に対してポジティブとなることから(図10)、ウシ血清を有する培養培地の樹脂に対して付着させることによって間葉細胞を作製した。これらの細胞は、神経組織培養条件(ニューロスフィアを生育するための培養培地)において、Sca−1、ならびにアルファ6インテグリンおよびベータ1インテグリンだけでなく、ネスチンマーカーおよびNILO1マーカーもまた得られるため、間葉細胞と考えられる。さらに、βIII−チューブリン陽性細胞に関して、FGF2因子およびEGF因子のない培地において分化されるときにこれらのマーカーは見当たらない。これは、当該細胞が間葉細胞の起源である可能性を示唆し得る。さらに、脂肪細胞中の間葉細胞の分化における培養条件のため、これらの細胞はグリースを含む細胞の6週培養組織において生存可能であり(図10h)、レッドオイルによって標識される(10g)。このことは、間葉組織由来の様々な種類の組織を産生する能力を証明する。
【0107】
<実施例7.NILO1による胸組織前駆細胞の同定>
6週齢マウスの乳房組織の脱凝集状態で、NILO1にわずかな細胞(<3%)を同定する能力があることが観察されている。マンモスフィアを形成する能力を有するこれらの細胞は、Sca−1によって弱く標識されていることから、前駆細胞であり得ることを示す(図11b)。この議論を証明するために、脱凝集した乳房組織細胞をNILO1抗体によって標識し、無菌状態で分離した。続いて、NILO1陽性細胞およびNILO1陰性細胞を実験用マウスの胸腺脂肪中の乳房前駆細胞の移植に用いた。そして、3次元乳房構造の有無を移植後8週目に分析した(図11c)。観察されるように、サイトメトリーを用いて選択した1200セルのNILO1細胞は、3次元乳房構造を再構築する能力があった。これらのデータは、NILO1が乳房組織前駆細胞の構造を認識することを示すと思われる。
【受託番号】
【0108】
DSM ACC2881
DSM ACC2887
【技術分野】
【0001】
本発明は、NILO1およびNILO2と称されるモノクローナル抗体の利用に関する。当該抗体は、中枢神経系の前駆細胞を含む前駆細胞を有する集団を同定、単離および濃縮することを目的として、細胞表面マーカーと結合される。また、本発明は、抗体を取得するための特異的な方法、上記抗体を含有する薬学的組成物、およびその利用(例えば、前駆細胞集団における分子または薬剤の作用を特定する方法)に関する。
【背景技術】
【0002】
わずかな例外はあるが、中枢神経系(central nervous system:CNS)の神経集団は、基本的に有糸分裂後の集団と考えられており、それらの死後に置換される能力を有さずに分化している。主に、全哺乳動物の成熟CNSの2つの領域において活発なニューロン新生プロセスが確認されており、それは自己再生に対する脳の潜在能力(ヒトの脳を含む)を示唆する(Altman and Das, 1965. J Comp Neurol 124: 319-35; Alvarez-Buylla et al., 2000. Prog Brain Res 127: 1-11; Bedard and Parent, 2004. Brain Res Dev Brain Res 151: 159-68; Bonnert et al., 2006. Eur J Neurosci; Lennington et al., 2003. Reprod Biol Endocrinol 1: 99)。このことは、細胞代償療法、ひいては未だ有効な治療方針のない神経変性疾患にとって見込みのある将来を与える。
【0003】
神経幹細胞はすべての脳細胞の起源、すなわちニューロンおよびグリアを構成する。初期には支持細胞であると考えられるグリア細胞は、様々な機能に関与する星型細胞のアストロサイト、およびミエリンによって軸索を取り囲むことによって当該軸索を保護しているオリゴデンドロサイトを含む。ニューロン新生は、マウスの生涯、そしておそらくヒトの生涯にわたって維持されるが、神経幹細胞の数は成体の脳に極めて少ない。
【0004】
神経幹細胞は、特に、歯状回の下に位置する側脳室の脳室下帯(subventricular zone:SVZ)(Doetsch et al., 1999. Cell 97: 703-16)および海馬の顆粒細胞下帯にある中枢神経組織の所定のニッチに主に集中している。終脳脳室下帯(SVZ)は、嗅球ニューロン(olfactory bulb:OB)を産生している成体マウス神経幹細胞の主な供給源である(Alvarez-Buylla et al., 2000. Prog Brain Res 127: 1-11; Bedard et al., 2002. Eur J Neurosci 16: 1917-24; Doetsch et al., 2002. Neuron 36: 1021-34; Dutton and Bartlett, 2000. Dev Neurosci 22: 96-105; Pencea et al., 2001. Exp Neurol 172: 1-16)。SVZは、成体年齢において活発に増殖しており、側脳室の壁を覆っている細胞の薄層からなる(Doetsch et al., 1999. Cell 97: 703- 16)。これら前駆細胞のいくつかは脳室前縁に集中しており、吻側遊走性流(rostral migratory stream:RMS)を生み出す。
【0005】
また、神経幹細胞は、吻側遊走性流による上衣下星細胞の移動の結果として生じる嗅球由来であり得る(Alvarez-Buylla and Lim, 2004. Neuron 41: 683-6)。これらの領域は、所定の神経性細胞、またはニューロスフィアとして知られる細胞の凝集体として規定される。当該所定の神経性細胞は、自己再生増殖を維持することが可能なインビトロにおいて、もしくは組織によって被覆された基質の単層において取得することができる。EFGおよび塩基性FGFが補われた適切な培地において神経幹細胞を生育する場合、神経幹細胞は増殖し、自己再生能力を維持し得る。これらの因子を培地から除去すると、主要な神経種であるニューロンおよびグリア細胞(アストロサイトおよびオリゴデンドロサイト)への分化をもたらす。
【0006】
多能性細胞はこれらの増殖領域から単離され、培養組織においてクローン化されて伸張される。インビトロの環境、すなわち移植後において、これらの細胞は中枢神経系の3つの主要な細胞種を産生する能力を有しているため、神経多能性細胞に分類される。
【0007】
神経組織の移植による特異的な神経集団の機能的置換は、神経変性疾患の治療にとって魅力的な治療法を示す。しかし従来、神経幹細胞は、組織生体検査または検視によって脳組織から得られるものであり、倫理的問題および免疫適合性の問題をもたらす。したがって、以前として、上記問題を解決する神経幹細胞の供給源を提供する必要がある。
【0008】
この意義において、モノクローナル抗体は細胞内に存在する抗原(細胞質内抗原)によって神経幹細胞を同定することが知られている。当該抗体が細胞内に存在する抗原と結合し得るためには、結果的に細胞死を伴う原形質膜の透過処理が必要となることから、生存細胞集団の選択に使用され得ないという欠点を有する。ネスチン、Sox2、ビメンチン、またはGFAP(極めて未発達な前駆細胞のための)およびダブルコルチン、PSA−MCAM、Ki67、ならびにβIII−チューブリン(増殖性の前駆細胞および神経幹細胞のための)などの神経前駆細胞を特徴づける、多くの細胞質内モノクローナル抗体が存在する。しかし、今日まで、神経前駆細胞の表面抗原に対するわずかな抗体を特徴づけられているに過ぎない。
【0009】
神経組織の損失は、脳応答および個々の死において進行性損失を伴ういくつかの神経変性疾患の原因であると提議されている。現在、これらの疾患を治す治療法はなく、ある程度緩和する治療が当該疾患の一時的な改善を成し得るのみである。一次的な治療という現状の一つの理由には、新たな神経幹細胞の移植という手法によって、当該細胞を患者に提供することの困難性に起因する。この手法は、損傷された組織の少なくとも一部を再生することが可能であり、おそらく断定的に病状を改善することができる細胞治療である。
【0010】
しかし現在までに、後述する濃縮、選択および治療剤としての研究または使用のために幹細胞を精製する手段を得ることは実質的に不可能であり、神経細胞に対する新規の表面マーカーを見出す必要があることを明白に示している。
【発明の概要】
【0011】
このように、幹細胞集団の濃縮に関する前駆細胞、および初期の前躯体を検出することができる手段を見出す必要性がある。それにより、前駆細胞および初期の前躯体の研究および治療薬としての利用が可能になる。
【0012】
この意義において、および本発明の第1の態様によれば、以下:
a.13.5日齢マウス胚の嗅球から神経幹細胞(neural stem cells:NSC)を含むニューロスフィアを産生する工程と、
b.生存ニューロスフィア細胞によって4ヶ月齢アルメニアンハムスターを免疫する工程と、
c.上記動物の脾臓を抽出してリンパ球を取得する工程と、
d.リンパ球と、非産生マウスミエローマ細胞とを融合して、ハイブリッド細胞またはハイブリドーマを生み出す工程と、
e.ヨウ化プロピジウムの存在下で、死細胞が分析から除外されるニューロスフィア細胞フローサイトメトリーを用いて、ハイブリドーマによって産生される抗体の決定および/または選択を行なう工程とを含む、前駆細胞の膜抗原を特異的に認識するモノクローナル抗体を産生する方法を提供する。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、モノクローナル抗体は:
a)国際寄託当局デュスチェ サムラング フォン ミクルールガニスメン ウンド ゼルクルツレン GmbH(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH:DSMZ)、ブラウンシュワイク、ドイツにアクセスDSM番号No.ACC2887で2008年3月12日に寄託されたハイブリドーマによって産生される、NILO1(クローン1 B6.2.13)と称されるモノクローナル抗体、および、
b)国際寄託当局デュスチェ サムラング フォン ミクルールガニスメン ウンド ゼルクルツレン GmbH(DSMZ)、ブラウンシュワイク、ドイツにアクセスDSM番号No.ACC2881で2008年2月4日に寄託されたハイブリドーマによって産生される、NILO2(クローン2 B7.10)と称されるモノクローナル抗体、
などから提供され、上述の処理によって取得される。
【0014】
本発明の第3の態様は、神経誘導細胞の任意のモノクローナル抗体の活性フラグメントからなる。
【0015】
本発明の別の態様によれば、RNAまたはDNAの遺伝子構造は、上記請求項のいずれかに記載の本発明の抗体、または本発明の抗体フラグメントに転写する能力を提供する。
【0016】
本発明の上記遺伝子構造は、抗体(NILO1および/またはNILO2)、または当該抗体フラグメントの配列の、インビトロまたは細胞内における転写を方向づけるとともに、下記の配列型:a)少なくとも本発明の抗体の符号化配列、または当該抗体の転写のための、本発明の抗体フラグメントの符号化配列を少なくとも含むヌクレオチド配列(好ましくは二重鎖)、b)遺伝子発現系またはベクターと関連があるヌクレオチド配列(好ましくは二重鎖)、の少なくとも1つを含む。b)のヌクレオチド配列は、少なくとも1つのプロモーターと、また、他の配列と操作上で結合する、本発明の抗体の配列または抗体フラグメントの配列の符号化配列を含んでいる。このプロモーターは重要な上記ヌクレオチド配列の転写を方向づけており、当該他の配列は適切な転写および適切な時間および的確な形態での調節に必須であるか、またはふさわしい配列である。この他の配列としては、例えば、開始シグナルおよび停止シグナル、切断部位、ポリアデニル化シグナル、複製起点、エンハンサー、サイレンサーなどが挙げられる。これら複数の発現系またはベクターは当業者に知られる従来の方法(Sambrook et al., 1989)によって取得され得、本発明の一部を形成する。
【0017】
本発明の別の態様は、国際寄託当局デュスチェ サムラング フォン ミクルールガニスメン ウンド ゼルクルツレン GmbH(DSMZ)、ブラウンシュワイク、ドイツにアクセス番号DSM No.ACC2887およびDSM No.ACC2881で寄託された、モノクローナル抗体NILO1およびNILO2を産生するハイブリドーマからなる。
【0018】
本発明の別の態様では、以下:
a)細胞集団と、モノクローナル抗体NILO1および/またはモノクローナル抗体NILO2によって認識される細胞表面マーカー中のエピトープまたは抗原決定基を認識する試薬とを接触させる工程と、
b)上記試薬と、上記エピトープまたは抗原決定基との接触がある細胞を選択する工程と、
を含む、幹細胞または前駆細胞が非常に豊富な集団を産生する方法について述べる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、幹細胞はニューロスフィアを先導し得るヒト中枢神経系からの幹細胞である(NS−IC)。
【0020】
本発明に係る本態様のより好ましい実施形態において、神経細胞または神経誘導細胞を含んでいる集団はニューロスフィアの培養組織から取得される。
【0021】
本発明に係る本態様のより好ましい実施形態において、試薬は下記のリスト:
a)モノクローナル抗体NILO1によって認識される細胞表面マーカー中のエピトープまたは決定基を認識可能な、抗体またはそのフラグメント、
b)モノクローナル抗体NILO2によって認識される細胞表面マーカー中のエピトープまたは決定基を認識可能な、抗体またはそのフラグメント、
c)NILO1抗体またはそのフラグメント、
d)NILO2抗体またはそのフラグメント、
e)抗体NILO1によって認識される細胞表面マーカーと結合するリガンドまたは分子、
f)抗体NILO2によって認識される細胞表面マーカーと結合するリガンドまたは分子、
g)蛍光色素接合体、および、
h)磁性粒子を有する接合体
から選択される。
【0022】
本発明に係る本態様のさらに好ましい実施形態において、試薬は、発色団、化学発光材料、放射性核酸またはナノ粒子などのマーカーと結合されるモノクローナル抗体NILO1および/またはNILO2を含む。
【0023】
本発明のさらに好ましい実施形態において、前駆細胞の選択は、フローサイトメトリー技術、すなわちFACSフローサイトメトリー(蛍光標示式細胞分取器)、もしくは顕微鏡検査を用いて、免疫細胞化学技術(細胞)もしくは免疫組織化学(組織)を用いて、または磁性選択法もしくは任意の他の陽性選択法によって行なう。
【0024】
本発明の別の態様は、幹細胞または神経前駆細胞が豊富な集団を提供する。上記豊富な集団は、上述した方法によって得られる。
【0025】
本発明に係る本態様の好ましい実施形態において、幹細胞または前駆細胞が豊富な集団は、薬物として使用される。
【0026】
本発明に係る本態様のより好ましい実施形態において、幹細胞または前駆細胞が豊富な集団は、変性疾患または組織破壊過程に生じる疾患の治療に使用される。これらの疾患としては、限定されないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病、循環器壊死、造血性欠乏が挙げられる。
【0027】
本発明の別の態様によれば、薬剤のスクリーニング法および発見法は、以下の工程:
a)モノクローナル抗体NILO1および/もしくはモノクローナル抗体NILO2と結合される神経細胞または神経誘導細胞を含む集団から選択し、神経細胞または神経誘導体の集団と比較した場合、ヒトニューロスフィア開始細胞(neurosphere initiator cells:NS−IC)に関する濃縮された集団を産生する工程と、
b)上記濃縮された集団を非ヒト哺乳動物に接種する工程と、
c)上記哺乳動物、および上記集団を接種されている別の非ヒト哺乳動物(対照被験体)に対して、薬学的に陽性な組成物を投与する工程と、
d)両哺乳動物における上記投与の作用を比較する工程と、
を含むことが説明される。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、非ヒト哺乳動物はげっ歯動物である。
【0029】
本発明の別の態様によれば、薬剤のスクリーニング法および発見法は、以下の工程:
a)モノクローナル抗体NILO1と結合される神経細胞または神経誘導細胞を含む集団から選択し、モノクローナル抗体NILO2と結合される、神経細胞または神経誘導細胞のさらなる選択によって上記集団をさらに濃縮し、神経細胞または神経誘導体の集団と比較した場合、ヒトニューロスフィア開始細胞(NS−IC)に関する濃縮された集団を産生する工程と、
b)ヒトニューロスフィア開始細胞(NS−IC)となり得るヒトCNS−SCに関する上記濃縮された集団を、非ヒト哺乳動物に接種する工程と、
c)上記哺乳動物、および上記集団を接種されている別の非ヒト哺乳動物(対照被験体)に対して、薬学的に陽性な組成物を投与する工程と、
d)上記投与の作用を比較する工程と、
を含むことが説明される。
【0030】
本発明に係る方法の本態様の好ましい実施形態では、上述したように、非ヒト哺乳動物がげっ歯動物である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】NILOハイブリドーマの起源を示す図である。
【図2】モノクローナル抗体の選択方法を示す図である。
【図3】免疫細胞化学の手法を用いたNILO1およびNILO2によるニューロスフィア細胞の標識を示す。
【図4】NILO、およびマトリゲル(登録商標)上のニューロスフィア細胞中の神経集団を規定する抗体の二重発現を示す。
【図5】SVZ神経帯において神経前駆細胞を検出するNILO1を有する脳切片の標識を示す。
【図6】SVZ神経帯において神経前駆細胞を検出するNILO2を有する脳切片の標識を示す。
【図7】ニューロスフィア由来の細胞、およびC2C12細胞株中のNILO2によって免疫沈降させた表面タンパク質を示す。
【図8】ニューロスフィア細胞増殖におけるNILO1およびNILO2の作用を示す。
【図9】ニューロスフィア細胞分化におけるNILO1およびNILO2の作用を示す。
【図10】骨髄に存在する間葉前駆細胞を同定する能力があるNILO1を示す。
【図11】3次元乳房構造を再構築する能力があるNILO1を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔定義〕
本明細書において用いられる用語“抗体”は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち表面マーカーまたはエピトープに対して特異的に結合する(免疫反応を伴って)抗原固定部位を含んでいる分子に関する。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部位としては、例えば、ペプシンなどの酵素による処理抗体を産生し得る、フラグメントF(ab)およびF(ab’)2を含む。
【0033】
本明細書において用いられる表現“モノクローナル抗体”または“モノクローナル抗体組成物”は、前駆細胞の特定のエピトープと免疫反応することが可能な抗原固定部位を1種類のみ含んでいる抗体分子の集団を示す。よって、モノクローナル抗体組成物は免疫反応する前駆細胞に対して特有の結合親和性を示す。従来の抗体、すなわち“ポリクローナル抗体”は、典型的に、様々な決定基(エピトープ)に対して方向づけられる、異なる抗体を含む。一方、モノクローナル抗体は、それぞれ抗原の単一のエピトープに対して方向づけられる。
【0034】
本明細書における用語“エピトープ”は、免疫システム、具体的には抗体、B細胞またはT細胞によって認識されるマクロ分子の一部に関する。通常、エピトープは自己のものとは異なるタンパク質由来であると考えられているが、ホスト由来の配列が認識され、エピトープとして分類されてもよい。
【0035】
組換えDNA技術を用いることによって、可変領域または抗原認識領域をバインドする抗体を、ヒト抗体の枠組みに構築することができる。このように、モノクローナル抗体は、遺伝子操作によって生化学的に改変されてもよいし、またはできる限り前駆細胞の認識に必須ではない部分全体または一部の抗体を欠いており、また、当該抗体にさらなる有利な性質を移す別の抗体によって人工的に置換されてもよい。
【0036】
“組換え抗体”は、抗体をコードする核酸によって形質転換されるか、もしくは核酸導入されているホスト細胞に産生されるか、または相同組換えの結果として同じものを産生するものである。
【0037】
“形質転換”および“核酸導入”は、細胞に核酸を導入する処理に関して、同義的に用いられる。形質転換または核酸導入の後、核酸は、ホストのゲノムに組み込まれてもよいし、染色体外要素として存在してもよい。“ホスト細胞”は、インビトロの培養組織中の細胞、およびホスト動物中の細胞を含む。米国特許出願第5,534,615号には、例えば、ポリペプチドの組合え産物に関するこれらいくつかの処理が開示されている。
【0038】
人為的操作を用いた任意の利用可能な方法によってポリヌクレオチドが細胞に核酸導入されている場合、または細胞が、転換されたポリヌクレオチドを固有に有する元々改変された細胞の子孫である場合、細胞は“遺伝的に改変された”、“核酸導入された”、または“遺伝的に形質転換された”と言われる。多くの場合、ポリヌクレオチドは、転写可能であって、また、重要なタンパク質をコードする配列を含んでいてもよい。これにより、細胞は上記タンパク質を発現することができる。改変された細胞の子孫が同じ改変を有する場合、遺伝的な改変は“遺伝する”と言われる。
【0039】
また、抗体は“キメリカル”であり得る。免疫グロブリンにおける重鎖領域および/または軽鎖領域は、決定された種からの、もしくは決定された抗体のクラスまたはサブクラスに属している、関連する抗体配列と同一または相同である。一方、残りの鎖は、他の種由来の抗体、または抗体の別のクラスもしくはサブクラスに属している抗体および抗体フラグメントにおいて、それらが所望の生物活性を示すように、関連する配列と同一または相同である(米国特許出願第4,816,567号)。
【0040】
用語“超可変領域”は、本明細書において用いられる場合、抗原への結合に関与する抗体のアミノ酸残基に関する。超可変領域は、“相補性決定領域”のアミノ酸残基、および/または“超可変ループ”のアミノ酸残基を含む。骨格残基、すなわち“FR(framework residues)”は、本明細書において定義されるように、超可変領域の残基とは異なる可変ドメインのアミノ酸残基である。
【0041】
多くの場合、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レセプター抗体)である。このヒト免疫グロブリンにおいて、レセプターの超可変領域の残基は非ヒト種の超可変領域の残基(ドナー抗体)によって置換されている。非ヒト種としては、マウス、ラット、ラビット、または所望の選択性、親和性および能力を有する、非ヒト霊長類などが挙げられる。
【0042】
ある場合、ヒト免疫グロブリンのFv領域の骨格残基(FR)は、関連する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レセプター抗体において、またはドナー抗体において検出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は、抗体機能をさらに改良するために行なわれる。一般的に、ヒト化抗体は、実質的にすべてが少なくとも1つ、および典型的には2つの可変ドメインを含む。ここでは、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応する超可変ループのすべてまたは略すべて、およびすべてのまたは略すべてのFR領域が、ヒト免疫グロブリン配列の可変ドメインである。また、ヒト化抗体は、免疫グロブリン(Fc)(一般的にはヒト免疫グロブリン)の不変領域の少なくとも一部を含む。ヒト化抗体を得るための様々な処理は、現在の技術において知られている。
【0043】
“抗体フラグメント”は、抗体全長の少なくとも一部を含み、通常、抗原結合領域またはその可変領域を含む。抗体フラグメントとしては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvフラグメント;二重特異性抗体;線形抗体;単鎖抗体分子;および抗体フラグメントによって形成される多特異的抗体を含む。抗体フラグメントを作製するいくつかの技術が開発されている。伝統的に、これらのフラグメントは未処理抗体のタンパク分解によってもたらされる。しかしながら今日では、これらのフラグメントは組換えホスト細胞を用いて直接作製することができる。例えば、抗体フラグメントは、抗体ファージのライブラリーから単離することができる。代替的に、Fab’−SHフラグメントは、E.coliから直接回収することが可能であり、化学的に結合してF(ab’)2フラグメントを形成する。別の実施形態において、F(ab’)2はロイシンジップGCN4によって形成されて、F(ab’)2分子の集合を促進する。別のアプローチによると、組換えホスト細胞培養組織のF(ab’)2フラグメントは、直接単離され得る。抗体フラグメントの産生に関する他の技術は、当業者に対して明らかにされるであろう。他の実施形態において、選択された抗体は単鎖Fvフラグメント(single chain Fv fragment:scFv)である。改定に関しては、国際公報第1993/016185号を参照のこと。
【0044】
“単鎖Fv(scFv)”または“抗体フラグメント”は、抗体のVHドメインおよびVLドメインを含む。これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。一般的に、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間に配置されているポリペプチドをさらに含んでいる。当該ポリペプチドは、抗原結合のための所望の構造を形成することが可能である。
【0045】
用語“二重特異性抗体”は、2つの抗原結合部位を有する抗体小フラグメントに関する。これらのフラグメントは、同じポリペプチド鎖に軽鎖可変ドメイン(VL)と結合される重鎖可変ドメイン(VH)を含んでいる。2つのドメインを同一鎖において対にするには近すぎる配置を採用しているため、これらのドメインは別の鎖の相補的なドメインと対にされ、2つの抗原結合部位を作り出すことを余儀なくされる。
【0046】
“線形抗体”という表現は、1組の抗原結合領域を形成する、一対のタンデムセグメントFd(VH−CH 1 −VH−CH 1)を含む抗体に関する。線形抗体は、二重特異的または単一特異的であり得る。
【0047】
“多特異的抗体”は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して特異性のある結合を有している。一方で、上記分子は通常2つの抗原のみと結合する(すなわち、二重特異的抗体、BsAbs)。本明細書において用いられる場合、三重特異的抗体などのさらに特異性を有している抗体も表現の範囲内に含まれる。二重特異的抗体の調製に関する処理については現状の技術において知られている。本発明の抗体フラグメントは、前駆細胞のエピトープと特異的に結合する能力を有する。
【0048】
用語“幹細胞”は、増殖してさらなる幹細胞を産生する能力を有する、比較的無活動の非分化細胞に関する。また、当該細胞は、多数の前駆細胞を産生する能力を有しているとともに、分化細胞、または分化されたもしくは分化可能な娘細胞を生み出し得る。これらの細胞は自己保存することが可能である。すなわち、それぞれの細胞分裂によって、娘細胞が幹細胞にもなり得ることを意味する。
【0049】
用語“神経幹細胞”(neural stem cell:NSC)は、ニューロン、アストロサイトおよびオリゴデントロサイトに分化する能力がある子孫を産生することができる多能性幹細胞に関する。
【0050】
用語“前駆細胞(progenitor cell)”は、幹細胞由来の未分化細胞に関する。前駆細胞は限定された増殖能力を有する(幹細胞とは異なり、増殖能力が限定され、したがって自己保存を示さない)が、自己再生され得る。この自己再生は、適切な条件において、特定の分化経路および場合により、ニューロン、アストロサイトまたはオリゴデンドロサイトへの分化に関与している。
【0051】
用語“前駆細胞(precursor cells)”は、インビボまたはインビトロにおいて、幹細胞から得られるとすぐに本発明の方法によって修飾されるか、または操作される生存細胞に関する。この細胞は自己再生可能であり、且つ、多能性を有しているため、当該用語には前駆細胞および幹細胞の両方を含んでいる。インビトロにおいて、神経幹細胞由来の前駆細胞は、典型的にニューロスフィアの形態で成長するが、培養条件によって異なる成長パターンを示し得る。
【0052】
用語“ニューロスフィア”は、神経幹細胞由来であって、インビトロにおいて培養される細胞の集団に関する。少なくともいくつかの細胞は、ネスチン表現型(陽性)(神経幹細胞の細胞質内マーカーであるネスチンと反応する)である。この集団は、幹細胞および/または前駆細胞からなり、分化した細胞を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
【0053】
神経組織の好ましい供給源は哺乳動物から得られ、より好ましくはげっ歯動物(例えば、マウスおよびラット)および霊長類の動物から得られ、最も好ましくはヒトから得られる(ヒトの胚組織を除く)。米国特許出願第5,750,376号および米国特許出願第5,851,832号には、自己再生可能であり、且つ、多能性を有する、成人ヒト神経組織、成体アカゲザル、マウス胚、および幼若マウスおよび成体マウスからの脳組織から得たCNS神経幹細胞を単離および増殖する方法が開示されている。本方法は、培養組織において、CNS神経幹細胞から得た神経幹細胞を構築すること、およびCNS神経幹細胞の子孫を分化することを含む。
【0054】
用語“脳室”は、脳脊髄液の流れを通す中枢神経系内の任意のキャビティまたは処理に関する。よって、当該用語には、側脳室、第3脳室および第4脳室だけでなく、中心導管(central channel)および中脳水道も包含される。
【0055】
用語“脳室組織”は、CNS脳室を覆っており、CNS幹細胞および前駆細胞などの、未分化細胞の集まりを含んでいる上衣下星帯を含む組織に関する。
【0056】
用語“恒常的な増殖性集団”は、成体哺乳動物における前脳の側脳室の上衣下星帯内に位置づけられて分化される細胞集団に関する(スマートによって概要が示される;J. Comp. Neurol. 116:325, (1961))。この細胞集団は、上衣下星帯のいくつかの領域に当該細胞の約33%を含む(Morshead and van der Kooy, J. Neurosci. 12:249, (1992))。
【0057】
詳細な説明および特許請求の範囲を通して、用語“含む(comprises)”およびそのバリアントは、他の技術的特徴、付加、要素またはステップを除くことを意図したものではない。当業者によれば、本発明の他の目的、利点および特徴は、発明の詳細な説明から部分的に、および本発明の実施例から部分的に寄せ集められ得る。以下の実施例および図面は、説明のために提供されるものであり、本発明を限定することが目的ではない。
【0058】
〔図面の説明〕
図1.NILOハイブリドーマの起源を示す図である。
【0059】
13.5日齢胚の嗅球から産生したニューロスフィアを抗原として使用する。5〜6ランで、3ヶ月の間に5万セルを3回注射することによって、成体アルメニアンハムスター(クリセトゥラス ミグラトリウス)を免疫する。最終免疫から3日後に、脾臓細胞をBalb/c P3−X63.Ag8.653の非産生ミエローマと融合させる。HATにおいて選択したクローンを生育し、フローサイトメトリーによって分析する。
【0060】
図2.モノクローナル抗体の選択方法を示す図である。
【0061】
a)13.5日齢成体マウスの嗅球のニューロスフィア由来の細胞、および6週齢成体マウスの成人マウスのSVZから得たニューロスフィア由来の細胞を所定の強度で標識するモノクローナル抗体を、フローサイトメトリーによって選択する。サイトメトリーはコールターXLにおいて行なった。具体的には、細胞形態学による当該抗体の選択を10,000回行ない、ヨウ化プロピジウムによって染色されなかった死細胞を除去した。b)ニューロスフィアとして細胞培養組織における別のランの後、NILO1またはNILO2に関して、6週齢マウスのSVZ由来の神経組織細胞を標識する。
【0062】
図3.免疫細胞化学の手法を用いたNILO1およびNILO2によるニューロスフィア細胞の標識を示す。
【0063】
a)ネスチンによってニューロスフィアを標識し、さらにFITC抗マウスポリクローナル二次抗体によって標識すると共に、NILO1によってニューロスフィア標識し、Cy5によって標識された二次抗ハムスターによってさらに標識した。b)抗GFAP、NILO1およびDAPI(核)によって標識する以外は、a)と同様であり、c)、d)およびe)、マトリゲル(登録商標)において、ニューロスフィアをNILO2によって標識した。
【0064】
図4.NILO、およびマトリゲル(登録商標)上のニューロスフィア細胞中の神経集団を規定する抗体の二重発現を示す。
【0065】
a)およびc)GFAPを有するNILO1を異なる倍率で示す;b)およびd)、GFAPを有するNILO2を異なる倍率で示す;e)NILO1およびネスチンを示す;f)NILO1およびki67を示す。
【0066】
図5.SVZ神経帯において神経前駆細胞を検出するNILO1を有する脳切片の標識を示す。
【0067】
組織低温保持領域をパラホルムアルデヒドで固定し、NILO1(グリーン−FITC)ならびにダブルコルチン(doublecortin:DCX)、GFAP、ビメンチン、βIII−チューブリン(Tuj1)、ki−67およびPSA−NCAMによって染色した。モノクローナル抗体は表1に示される。
【0068】
図6.SVZ神経帯において神経前駆細胞を検出するNILO2を有する脳切片の標識を示す。
【0069】
組織低温保持領域をパラホルムアルデヒドによって固定し、NILO2(グリーン−FITC)ならびにダブルコルチン(DCX)、GFAP、ビメンチン、βIII−チューブリン(Tuj1)、ki−67およびPSA−NCAMによって染色した。モノクローナル抗体は表1に示される。
【0070】
図7.ニューロスフィア由来の細胞、およびC2C12細胞株中のNILO2によって免疫沈降させた表面タンパク質を示す。
【0071】
NILO2によって細胞をインキュベートし、その後5%ブリグ58(シグマ)の存在下において溶解バッファーと共に使用した。精製した抽出物を様々な方法で発現させた。
【0072】
図8.ニューロスフィア細胞増殖におけるNILO1およびNILO2の作用を示す。
【0073】
24時間、48時間および72時間示される抗体濃縮物の存在下において細胞をインキュベートし、増殖を測定するためのMTZテトラゾリウム化合物を用いて増殖量を測定した。
【0074】
図9.ニューロスフィア細胞分化におけるNILO1およびNILO2の作用を示す。
【0075】
ニューロスフィアが存在し、FGF2およびEGFが存在せず、0.5%FCSが存在する培地において、細胞をインキュベートする。これは、前駆細胞の急速な分化をもたらし、細胞を分化させる。2日〜4日間示される抗体濃縮物の存在下で、増殖を測定するためのMTZテトラゾリウム用いて細胞の増殖能を測定し、ニューロスフィア構造を分化または維持する能力を測定する。
【0076】
図10.骨髄に存在する間葉前駆細胞を同定する能力があるNILO1を示す。
【0077】
a)骨髄細胞をNILO1によるフローサイトメトリー(分別)の手法で選択するか、または、b)間葉細胞を付着する能力および獲得する能力によって選択する。c)骨髄中の間葉前駆細胞またはNILO1によって標識された培養液中で1週間後に選択された間葉前駆細胞。d)Sca−1、Alpha6、beta1、NILO1およびNILO2によって標識された骨髄または間葉細胞、e)ニューロスフィア培地において2週間経過したのちのNILO1細胞、およびf)そのTuj1+細胞における分化、またはg)脂肪細胞分化培地(レッドオイルで染色された)において6週間経過した後のNILO1細胞、またはh)染色されていない(グリース滴下)。
【0078】
〔実施形態の詳細な説明〕
以下、本発明者らによって行なわれるアッセイを用いて本発明について説明する。本発明者らは、モノクローナル抗体NILO1およびNILO2の特異性および有効性を明らかにしている。
【0079】
<実施例1.モノクローナル抗体NILO1およびNILO2の産生>
本発明者らは、神経幹細胞に対するモノクローナル抗体を取得する方法を示す。当該方法は、抗原刺激源としての、13.5日胚細胞由来のニューロスフィアの利用、および免疫化のレセプターとしての、特異的なパターンを用いた3カ月齢未満のアルメニアンハムスターの利用を含む。ハムスター起源のモノクローナル抗体を分泌し、神経幹細胞に対して特異性を有する種属間ハイブリドーマの特異的な選択培地の選定の後、脾臓および脾臓とマウスミエローマ細胞との融合物を取得することは、胚起源および成体動物からの神経幹細胞を共に許容する。
【0080】
(免疫化に用いられる抗原)
ニューロスフィア由来の神経幹細胞(NSC)を用いた。ニューロスフィアとして成長するこの細胞は脱凝集することがあり、新たなニューロスフィアを形成する能力がある培養組織においてクローン化され得る。ニューロスフィアの一部を形成するこの細胞は、“インビトロ”の培養組織中で、ニューロンおよびグリア(アストロサイトおよびオリゴデンドロサイト)などの脳の様々な細胞型に分化する能力があるような神経前駆細胞と考えられる。さらに、これらの細胞は“ネスチン”などの規定された細胞内マーカーを有し、ニューロン、オリゴデンドロサイトまたはアストロサイトなどの任意の神経系統の細胞に分化し得る。
【0081】
増殖中の細胞の状態および特性が、培養組織において続けられるランの回数に依存して変更され得るとはいえ、これらNSCは、細胞希釈ランを通して培養組織において維持され得る。これらNSCに対するモノクローナル抗体を取得するための本手順は、3〜5ラン(ラン0は、マウス組織からこれらの細胞を取得する時間である)のときの細胞を用いる。
【0082】
成体マウスには、NSCの取得に用いられ得る様々な脳の領域が存在する。最も重要な神経領域は、脳室下帯(SVZ)および海馬歯状回の顆粒領域である。しかしながら、成体マウスにおけるNSC取得率は低く、最低限の数の細胞が連続的に免疫を実行するために必要となることに鑑みて、我々の手順では13.5日齢マウス由来の胚組織(具体的には、嗅球)からNSCを得る。この組織から重要な量のNSCを得ることは容易であり、それは免疫化に用いられ得る。
【0083】
(免疫化に用いられる動物)
マウス神経前駆細胞に対するモノクローナル抗体を得るために、4ヶ月齢の雄のアルメニアンハムスターを用いる。独立した部屋および穏やかな環境であるが、他のマウスと同様に、通常の温度および湿度条件の飼育小屋で、動物を飼育する。また、アルメニアンハムスターが他のマウス抗原に対するモノクローナル抗体を取得するために用いられているとはいえ、今日、アルメニアンハムスターが神経成分に対する抗体を産生するために用いられているのでは決してない。重要なのは、アルメニアンハムスターが用いられて、他のハムスター種が同じように用いられないことである。
【0084】
5×106セル/ml濃度のPBSにて、脱凝集した生存ニューロスフィア細胞を注射し、動物を免疫化した。免疫経路は常に腹膜内とし、皮下注射シリンジを使用して各免疫(“追加免疫”)を別の位置にした。免疫ガイドラインは次の通りである:日数は0日、30日および60日とした。ニューロスフィア由来の細胞によって3度目の再免疫の3日後、脾臓を除去するために動物を全身麻酔した後に屠殺した。脾臓はリンパ球を抽出するために用いられており、後述するようにリンパ球とミエローマ細胞とを融合する。
【0085】
(細胞融合)
融合の手順は他の著者によってこれまでに示されるものに類似する。簡単に言うと、NSCによって免疫されたハムスターの脾臓由来のリンパ球を培地中で洗浄し、血清を含まないDMEMにおいて再懸濁する。マウスミエローマ細胞と、融合されることになる細胞とを50mlファルコンチューブの中で混合する。融合では、P3−X63.Ag8.653と称されるBalb.cから得た107非産生ミエローマ細胞と、免疫されたハムスターの脾臓から得た106細胞とを使用する。これらの細胞を室温で5分間、1500r.p.mで同時に遠心分離にかけた。浮遊物を吸引によって除去してすべて取り除く。細胞だけを含むチューブを37℃の湯浴中に置く。細胞懸濁液を時々ゆっくりとかき混ぜながら、1分間に0.4mlのポリエチレングリコール(水に40%PEG)を一滴ずつ添加する。その後、予め37℃に調節された、血清を含まないDMEM培地5mlを3分以下で一滴ずつゆっくりと希釈した。懸濁液を穏やかに混合し、DMEM−10%FCS完全培地で完成させて、37℃で30〜45分間インキュベートする。そして、細胞を平底96ウェルプレートに0.1ml/ウェルで分配し、37℃、5%CO2に設定されたインキュベーターにおいて保持する。融合から1日後、HA(2X)を含有しているDMEM−10%FCS培地を0.1ml/ウェルずつ加える。この培地を求め、週に一度交換する。ハイブリッドを目視により、または低分解能の倒立顕微鏡によって検出する。融合から3週間後、1ウェルにつき2mlの選択培地を有する24ウェルプレートにコロニーを移植する。
【0086】
(神経幹細胞に対して特異性を有する抗原の選択)
選択は、NSC細胞に対するフローサイトメトリーにおける、本発明の抗体によって陽性標識された細胞の検出によってなされる。NSC細胞の誘導体は;1)13.5日齢胚から得た嗅球ニューロスフィア、2)成体マウスのニューロスフィア、3)BW5147マウスから得た胸腺腫瘍細胞、3)成体マウスの骨髄細胞である。
【0087】
標識は、1/2に希釈した細胞培養液の上澄みを用いて行なった。二次抗体としては、異なる代替物(FITC蛍光色素、PEまたはビオチン)によって標識される抗ハムスターIgG(混合物)(Becton Dickinson,Ltd.)を用いる。
【0088】
ニューロスフィアNSC細胞を標識し、BW5147胸腺腫に対してネガティブである融合上澄みを増幅し、凍結する。選択された295個のハイブリッドから、約80個の抗体を選択する。選択された上澄みはNILO1およびNILO2と称されるモノクローナル抗体を含む。
【0089】
<実施例2.NILOモノクローナル抗体によるニューロスフィア細胞の同定>
NILO1およびNILO2は、ハムスターのBリンパ球と、Balb/cマウス由来の非産生ミエローマP3− P3−X63.Ag8.653.653とのハイブリドーマによって産生される、ハムスター免疫グロブリンIgGである。種属間の融合(ハムスター×マウス)であるにも関わらず、ハイブリドーマの安定性は選択およびクローニングを保証するほど十分高い。NILO1ハイブリドーマおよびNILO2ハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体は、G−タンパク質またはA−タンパク質とのセファロースカラム結合によって精製する。これにより、抗体の純度を保証し、様々な色素(フルオレセイン、フィコエリスリンなど)によって直接標識することが可能になる。現在、NILO抗体はFITCによって、およびPEによって標識される。
【0090】
NILO1抗体およびNILO2抗体は、免疫細胞化学、免疫組織化学、および本明細書に示される機能調査によって示されるように、神経幹細胞に対して極端な選択性を有する。
【0091】
一方、これらの抗体と磁性粒子との結合が試験されており、他の供給源からの神経前駆細胞集団の1回のみのランで、迅速な精製が可能である。このことは、1回のランで、細胞再構成実験において用いられている骨髄集団を濃縮することを可能にしている。この状況は、変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病など)、または組織破壊過程で生じ、今日、非常に多くの影響を伴う疾患(糖尿病、心血管系壊死、造血性欠乏など)に多大な波紋をもたらすことになる。
【0092】
NILO抗体の卓越した選択性を実証するために、様々なパターンの実験計画を行なっている。第1の調査は、フローサイトメトリーを用いて検出されるニューロスフィア細胞の標識を実証することからなる。これらの抗体による細胞の標識は、このDNAマーカーに対してネガティブな細胞を排他的に選択するために、ヨウ化プロピジウム(10μg/ml)の存在下で行なった。ここでは、生存細胞の標識が保証されており、しかも標識が細胞質内ではない(図2)。モノクローナル抗体NILO1およびNILO2によって標識された細胞の特性および比率は両者の間で異なっており、各抗体は異なる表面タンパク質を同定することを示唆する。
【0093】
成体マウスの脳の脳室下帯から産生されたニューロスフィア(図3a)、13.5日齢マウス胚からの脳の嗅球から産生されたニューロスフィア(図3b)、および成体マウスの嗅球から産生されたニューロスフィア(図3c)を、免疫細胞化学技術を用いて分析する。ニューロスフィアを市販の抗ネスチン抗体または抗GFAP抗体を用いて二重染色することによって標識する。二重標識は、染色された細胞の特異性および当該細胞と神経幹細胞との結合を示す。さらに、各標識は、分離され、且つ、マトリゲル(登録商標)を使用した培養プレートの樹脂に付着されたニューロスフィア細胞において行なった。これにより、さらに詳細な個々の分析が可能になる。図4は、マトリゲル中の細胞におけるGFAP、ネスチンおよびKi−67 NILO1またはNILO2の同時発現を示す。GFAPは、極めて前駆型の細胞またはグリア細胞を標識する。GFAPを含む両ケースにおいて染色は単細胞であるが、GFAPおよびNILOの標識は異なる領域に局在化しており、細胞内に同時発生しないことを明白に確認することができる。
【0094】
図3では、神経幹細胞の細胞質内マーカーであるネスチンが存在しているNILO1細胞の有無を確認することが可能である。とはいえ、NILO1はネスチン陽性神経前駆細胞内の細胞分集団を標識する。
【0095】
<実施例3.脳のSVZ領域におけるNILOマーカー>
NILO抗体は、成体マウス脳の神経原性領域における限定的に存在することによって証明されるように、神経幹細胞に特異的である。主に、NILOに対してポジティブな細胞は、成体マウスのSVZ領域および海馬の歯状回において検出されている。
【0096】
NILO1細胞およびNILO2細胞が神経前駆細胞に関連することを証明するために、ダブルコルチン(doublecortin:DCX)、ネスチン(nestin:Nes)、GFAP、ビメンチン、βIII−チューブリン、PSA−NCAMおよびKi67によって二重標識する、免疫組織化学調査標識を行なう。すべてのマーカーは、神経前駆細胞からの神経細胞の発達において、添付の表1に示すように異なる段階で関連している。組織化学分野は、切片を詳細に分析する目的のため、やや厚い切片(30ミクロン)でクリオスタットによって実施される。
【0097】
データは、NILO1(図5)およびNILO2(図6)が、周期的に前駆細胞を同定している神経前駆細胞集団および原始神経芽細胞の選択マーカーであることを示す。つまり、それらの標識はDCX、Ki67、ビメンチン、βIII−チューブリンに対して二重にポジティブなマーカーに同時発生し、GFAPマーカーと非常に近接している。それは直接的な同時発生ではないものの、マトリゲル中の細胞の組織化学において観察されるように、非常に近接した領域に同時に局在する。
【0098】
【表1】
表1.細胞および神経原性領域におけるNILOの有無を検出するために用いられるマーカー
【0099】
<実施例4.NILO抗体によって認識される表面タンパク質の同定>
これら抗体のうちNILO抗体免疫沈降によって認識される抗体を同定することは、神経前駆細胞において、NILO抗体によって認識される抗原のおおよその大きさを知るために行なわれている。神経前駆細胞は、ビオチンによって、またはNILO2およびNILO2抗体によって認識される代替可能なC2C12系統によって、細胞表面において標識されて用いられる。ビオチンによる細胞標識の後、抗体は結合され、続いてBriji界面活性剤を用いる材料および方法(Material and Methods using the Briji detergent)において述べられているように溶解される。ニューロスフィア細胞およびC2C12系統のいずれにおいても、NILO2によるタンパク質免疫沈降では140kDおよび170kDaの2つに大多数のバンドがある。一方、NILO1は“ウェスタンブロット”に用いられなくてよい。これらのデータは、免疫組織化学に基づくこれら抗体の類似の位置に依存せず、各モノクローナル抗体が前駆細胞の細胞表面タンパク質の異なる型を同定することを証明する。極めて関連性のある状況では、前駆細胞の細胞表面タンパク質の異なる型がNILOによって同定される表面抗原(細胞レセプター)により同定される。
【0100】
<実施例5.ニューロスフィアの増殖分化におけるNILO1抗体およびNILO2抗体の機能性作用>
NILOの細胞分布は、神経幹細胞において均一である。神経幹細胞は、その前駆細胞の状態で維持される。この状態は、繊維芽細胞成長因子2(fibroblast growth factor 2:FGF2)および表皮成長因子(epidermal growth factor:EGF)などの成長因子の存在下における厳密な細胞培養条件のもと、ウシ胎児血清(fetal calf serum:FCS)の非存在下で保持されることでもたらされる。これらの因子、すなわちFGFおよびEGFの非存在下で、且つ、FCSの存在下において細胞は増殖を停止し、任意の神経系統細胞:すなわち、ニューロン、オリゴデンドロサイト、またはアストロサイトに分化する。
【0101】
神経前駆細胞の増殖におけるNILO抗体の可能な機能性作用は、研究中である。NILO1抗体およびNILO2抗体を用いることで、抗体と、成体OBまたは13.5日齢のOBからのSVZニューロスフィア由来の神経幹細胞との相互作用は、神経細胞の任意の型(ニューロン、オリゴデンドロサイトまたはアストロサイト)への増殖プロセス(図8)を阻害する能力および分化プロセス(図9)の能力があることが証明されている。
【0102】
ニューロスフィアが増殖可能な培養培地において、ニューロスフィアに対して異なる濃度でNILO1およびNILO2をともに添加したとき、細胞増殖は停止する。持続的な抗体の存在下において、細胞は5〜6日後に死滅する。これらすべてのデータは、NILO抗体が細胞自己再生過程に関連するレセプターを認識すること、または自己再生能力を維持する因子(LIFまたはその他など)を阻害することを示唆する(図8)。
【0103】
0.1%ウシ血清の有無にかかわらず、FGF2およびEGFの非存在下であって、且つ、異なる濃度の精製NILO1の存在下でニューロスフィア細胞が分化培地に認識される場合、抗体の非存在下において観察される作用と比較して、分化プロセスがかなり低減されることがわかっている。NILO2は、NILO1よりも標識されないものの、ニューロスフィアの分化に同様の作用をもたらす。
【0104】
これらのデータは、神経前駆細胞の表面構造によるNILOの継続的な相互作用が、これらの細胞の挙動に重要な変化を生むことを証明している。それは、NILO抗体が前駆細胞の生態に不可欠な表面構造を認識することを示唆する。
【0105】
<実施例6.NILO1によって同定された非神経前駆細胞の識別>
NILOモノクローナル抗体を有する他の組織の分析は、神経領域の外側にこれら抗体によって同様に標識される他の少数集団が存在することを証明した。特に、NILO1抗体によって同定される2つの前駆細胞集団は、骨髄の間葉前駆細胞および乳房組織の前駆細胞である。
【0106】
骨髄においてNILO1によって標識されるごくわずかな細胞、および新生児マウスの脳内移植において神経組織による変化に見込まれる当該細胞の関与が同定された。骨髄内のNILO1によって標識されるどちらかの型の細胞を研究および分析した。細胞播種後、数日の培地に付着して並んだ細胞がNILO1に対してポジティブとなることから(図10)、ウシ血清を有する培養培地の樹脂に対して付着させることによって間葉細胞を作製した。これらの細胞は、神経組織培養条件(ニューロスフィアを生育するための培養培地)において、Sca−1、ならびにアルファ6インテグリンおよびベータ1インテグリンだけでなく、ネスチンマーカーおよびNILO1マーカーもまた得られるため、間葉細胞と考えられる。さらに、βIII−チューブリン陽性細胞に関して、FGF2因子およびEGF因子のない培地において分化されるときにこれらのマーカーは見当たらない。これは、当該細胞が間葉細胞の起源である可能性を示唆し得る。さらに、脂肪細胞中の間葉細胞の分化における培養条件のため、これらの細胞はグリースを含む細胞の6週培養組織において生存可能であり(図10h)、レッドオイルによって標識される(10g)。このことは、間葉組織由来の様々な種類の組織を産生する能力を証明する。
【0107】
<実施例7.NILO1による胸組織前駆細胞の同定>
6週齢マウスの乳房組織の脱凝集状態で、NILO1にわずかな細胞(<3%)を同定する能力があることが観察されている。マンモスフィアを形成する能力を有するこれらの細胞は、Sca−1によって弱く標識されていることから、前駆細胞であり得ることを示す(図11b)。この議論を証明するために、脱凝集した乳房組織細胞をNILO1抗体によって標識し、無菌状態で分離した。続いて、NILO1陽性細胞およびNILO1陰性細胞を実験用マウスの胸腺脂肪中の乳房前駆細胞の移植に用いた。そして、3次元乳房構造の有無を移植後8週目に分析した(図11c)。観察されるように、サイトメトリーを用いて選択した1200セルのNILO1細胞は、3次元乳房構造を再構築する能力があった。これらのデータは、NILO1が乳房組織前駆細胞の構造を認識することを示すと思われる。
【受託番号】
【0108】
DSM ACC2881
DSM ACC2887
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経前駆細胞の膜抗原を特異的に認識するモノクローナル抗体を産生する方法であって、
a.13.5日齢マウス胚の嗅球から神経幹細胞を含むニューロスフィアを産生する工程と、
b.生存ニューロスフィア細胞によって4ヶ月齢アルメニアンハムスターを免疫する工程と、
c.上記動物の脾臓を抽出してリンパ球を取得する工程と、
d.リンパ球と、Balb.cマウスから得た非産生マウスミエローマ細胞とを融合して、ハイブリッド細胞またはハイブリドーマを生み出す工程と、
e.ヨウ化プロピジウムの存在下でニューロスフィア細胞フローサイトメトリーを用いて、ハイブリドーマによって産生される抗体の決定および/または選択を行なう工程とを含む方法。
【請求項2】
以下のリスト:
a.国際寄託当局デュスチェ サムラング フォン ミクルールガニスメン ウンド ゼルクルツレン GmbH(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH:DSMZ)、ブラウンシュワイク、ドイツにDSMアクセス番号No.ACC2887で寄託されたハイブリドーマによって産生される、NILO1と称されるモノクローナル抗体、および
b.国際寄託当局デュスチェ サムラング フォン ミクルールガニスメン ウンド ゼルクルツレン GmbH(DSMZ)、ブラウンシュワイク、ドイツにDSMアクセス番号No.ACC2881で寄託されたハイブリドーマによって産生される、NILO2と称されるモノクローナル抗体、
から選択されるモノクローナル抗体。
【請求項3】
請求項2に記載のいずれかのモノクローナル抗体の免疫学的に活性なフラグメント。
【請求項4】
請求項2に記載の本発明の抗体、または請求項3に記載の本発明の抗体フラグメントに転写する能力がある、DNAの遺伝子構造。
【請求項5】
請求項2に記載のいずれかのモノクローナル抗体の生成ハイブリドーマ。
【請求項6】
前駆細胞が豊富な集団を産生する方法であって、
a.細胞集団と、モノクローナル抗体NILO1および/またはモノクローナル抗体NILO2によって認識される細胞表面マーカー中のエピトープまたは抗原決定基を認識する試薬とを接触させる工程と、
b.上記試薬と、上記エピトープまたは抗原決定基との接触がある細胞を選択する工程とを含む方法。
【請求項7】
前駆細胞が豊富な上記集団は、神経前駆細胞または神経誘導細胞を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
神経前駆細胞または神経誘導細胞を含んでいる上記集団は、ニューロスフィアの培養組織由来である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記試薬は、下記のリスト:
a.モノクローナル抗体NILO1によって認識される細胞表面マーカー中のエピトープまたは決定基を認識可能な、抗体またはそのフラグメント、
b.モノクローナル抗体NILO2によって認識される細胞表面マーカー中のエピトープまたは決定基を認識可能な、抗体またはそのフラグメント、
c.NILO1抗体またはそのフラグメント、
d.NILO2抗体またはそのフラグメント、
e.抗体NILO1によって認識される細胞表面マーカーと結合するリガンドまたは分子、
f.抗体NILO2によって認識される細胞表面マーカーと結合するリガンドまたは分子、
g.蛍光色素接合体、および
h.磁性粒子を有する接合体
から選択される、請求項6〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
上記試薬は、酵素、発色団、化学発光材料、放射性核酸またはナノ粒子などのマーカーと結合されるモノクローナル抗体NILO1および/またはNILO2を含む、請求項6〜9に記載の方法。
【請求項11】
前駆細胞の選択は、フローサイトメトリー技術(FACSフローサイトメトリーを含む)もしくは顕微鏡検査を用いて、免疫細胞化学技術(細胞)もしくは免疫組織化学(組織)を用いて、または磁性選択法もしくは任意の他の陽性選択法によって行なう、請求項6〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれかに記載の方法によって取得可能な幹細胞または前駆細胞が豊富な集団。
【請求項13】
薬剤として使用するための、請求項12に記載の集団。
【請求項14】
変性疾患または組織破壊過程に生じる疾患の治療に使用するための、請求項13に記載の集団。
【請求項15】
薬剤をスクリーニングまたは発見する方法であって、以下の工程:
a.モノクローナル抗体NILO1および/もしくはモノクローナル抗体NILO2、またはそれらの1つのフラグメントもしくは複数のフラグメントと結合される、幹細胞または前駆細胞を含む集団から選択し、幹細胞に関する濃縮された集団を産生する工程と、
b.上記濃縮された集団を非ヒト哺乳動物に接種する工程と、
c.上記哺乳動物、および上記集団を接種されている別の非ヒト哺乳動物(対照被験体)に対して、薬学的に陽性な組成物を投与する工程と、
d.両哺乳動物における上記投与の作用を比較する工程とを含む方法。
【請求項16】
薬剤をスクリーニングまたは発見する方法であって、以下の工程:
a.モノクローナル抗体NILO1またはそのフラグメントと結合される、幹細胞または前駆細胞を含んでいる集団から選択し、モノクローナル抗体NILO2またはそのフラグメントと結合される、幹細胞または前駆細胞のさらなる選択によって上記集団をさらに濃縮し、原始細胞の集団と比較した場合、幹細胞に関する濃縮された集団を産生する工程と、
b.幹細胞または前駆細胞に関する上記濃縮された集団を、非ヒト哺乳動物に接種する工程と、
c.上記哺乳動物、および上記集団を接種されている別の非ヒト哺乳動物(対照被験体)に対して、薬学的に陽性な組成物を投与する工程と、
d.両哺乳動物における上記投与の作用を比較する工程とを含む方法。
【請求項17】
上記非ヒト哺乳動物はげっ歯動物である、請求項15および16に記載の方法。
【請求項18】
上記幹細胞または前駆細胞は、神経幹細胞または神経前駆細胞である、請求項15および16に記載の方法。
【請求項1】
神経前駆細胞の膜抗原を特異的に認識するモノクローナル抗体を産生する方法であって、
a.13.5日齢マウス胚の嗅球から神経幹細胞を含むニューロスフィアを産生する工程と、
b.生存ニューロスフィア細胞によって4ヶ月齢アルメニアンハムスターを免疫する工程と、
c.上記動物の脾臓を抽出してリンパ球を取得する工程と、
d.リンパ球と、Balb.cマウスから得た非産生マウスミエローマ細胞とを融合して、ハイブリッド細胞またはハイブリドーマを生み出す工程と、
e.ヨウ化プロピジウムの存在下でニューロスフィア細胞フローサイトメトリーを用いて、ハイブリドーマによって産生される抗体の決定および/または選択を行なう工程とを含む方法。
【請求項2】
以下のリスト:
a.国際寄託当局デュスチェ サムラング フォン ミクルールガニスメン ウンド ゼルクルツレン GmbH(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH:DSMZ)、ブラウンシュワイク、ドイツにDSMアクセス番号No.ACC2887で寄託されたハイブリドーマによって産生される、NILO1と称されるモノクローナル抗体、および
b.国際寄託当局デュスチェ サムラング フォン ミクルールガニスメン ウンド ゼルクルツレン GmbH(DSMZ)、ブラウンシュワイク、ドイツにDSMアクセス番号No.ACC2881で寄託されたハイブリドーマによって産生される、NILO2と称されるモノクローナル抗体、
から選択されるモノクローナル抗体。
【請求項3】
請求項2に記載のいずれかのモノクローナル抗体の免疫学的に活性なフラグメント。
【請求項4】
請求項2に記載の本発明の抗体、または請求項3に記載の本発明の抗体フラグメントに転写する能力がある、DNAの遺伝子構造。
【請求項5】
請求項2に記載のいずれかのモノクローナル抗体の生成ハイブリドーマ。
【請求項6】
前駆細胞が豊富な集団を産生する方法であって、
a.細胞集団と、モノクローナル抗体NILO1および/またはモノクローナル抗体NILO2によって認識される細胞表面マーカー中のエピトープまたは抗原決定基を認識する試薬とを接触させる工程と、
b.上記試薬と、上記エピトープまたは抗原決定基との接触がある細胞を選択する工程とを含む方法。
【請求項7】
前駆細胞が豊富な上記集団は、神経前駆細胞または神経誘導細胞を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
神経前駆細胞または神経誘導細胞を含んでいる上記集団は、ニューロスフィアの培養組織由来である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記試薬は、下記のリスト:
a.モノクローナル抗体NILO1によって認識される細胞表面マーカー中のエピトープまたは決定基を認識可能な、抗体またはそのフラグメント、
b.モノクローナル抗体NILO2によって認識される細胞表面マーカー中のエピトープまたは決定基を認識可能な、抗体またはそのフラグメント、
c.NILO1抗体またはそのフラグメント、
d.NILO2抗体またはそのフラグメント、
e.抗体NILO1によって認識される細胞表面マーカーと結合するリガンドまたは分子、
f.抗体NILO2によって認識される細胞表面マーカーと結合するリガンドまたは分子、
g.蛍光色素接合体、および
h.磁性粒子を有する接合体
から選択される、請求項6〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
上記試薬は、酵素、発色団、化学発光材料、放射性核酸またはナノ粒子などのマーカーと結合されるモノクローナル抗体NILO1および/またはNILO2を含む、請求項6〜9に記載の方法。
【請求項11】
前駆細胞の選択は、フローサイトメトリー技術(FACSフローサイトメトリーを含む)もしくは顕微鏡検査を用いて、免疫細胞化学技術(細胞)もしくは免疫組織化学(組織)を用いて、または磁性選択法もしくは任意の他の陽性選択法によって行なう、請求項6〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれかに記載の方法によって取得可能な幹細胞または前駆細胞が豊富な集団。
【請求項13】
薬剤として使用するための、請求項12に記載の集団。
【請求項14】
変性疾患または組織破壊過程に生じる疾患の治療に使用するための、請求項13に記載の集団。
【請求項15】
薬剤をスクリーニングまたは発見する方法であって、以下の工程:
a.モノクローナル抗体NILO1および/もしくはモノクローナル抗体NILO2、またはそれらの1つのフラグメントもしくは複数のフラグメントと結合される、幹細胞または前駆細胞を含む集団から選択し、幹細胞に関する濃縮された集団を産生する工程と、
b.上記濃縮された集団を非ヒト哺乳動物に接種する工程と、
c.上記哺乳動物、および上記集団を接種されている別の非ヒト哺乳動物(対照被験体)に対して、薬学的に陽性な組成物を投与する工程と、
d.両哺乳動物における上記投与の作用を比較する工程とを含む方法。
【請求項16】
薬剤をスクリーニングまたは発見する方法であって、以下の工程:
a.モノクローナル抗体NILO1またはそのフラグメントと結合される、幹細胞または前駆細胞を含んでいる集団から選択し、モノクローナル抗体NILO2またはそのフラグメントと結合される、幹細胞または前駆細胞のさらなる選択によって上記集団をさらに濃縮し、原始細胞の集団と比較した場合、幹細胞に関する濃縮された集団を産生する工程と、
b.幹細胞または前駆細胞に関する上記濃縮された集団を、非ヒト哺乳動物に接種する工程と、
c.上記哺乳動物、および上記集団を接種されている別の非ヒト哺乳動物(対照被験体)に対して、薬学的に陽性な組成物を投与する工程と、
d.両哺乳動物における上記投与の作用を比較する工程とを含む方法。
【請求項17】
上記非ヒト哺乳動物はげっ歯動物である、請求項15および16に記載の方法。
【請求項18】
上記幹細胞または前駆細胞は、神経幹細胞または神経前駆細胞である、請求項15および16に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2011−519573(P2011−519573A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507948(P2011−507948)
【出願日】平成21年4月29日(2009.4.29)
【国際出願番号】PCT/ES2009/070130
【国際公開番号】WO2009/135976
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(593005895)コンセホ・スペリオール・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス (67)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月29日(2009.4.29)
【国際出願番号】PCT/ES2009/070130
【国際公開番号】WO2009/135976
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(593005895)コンセホ・スペリオール・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス (67)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS
【Fターム(参考)】
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