説明

剛性パッケージ用押出し被覆ストリップ

【課題】連続複合工具により高速で加工できる、押出し被覆アルミニウムストリップの製造方法、本発明により製造されたアルミニウムストリップ、および本発明によるアルミニウムストリップの有利な使用方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、アルミニウムストリップが、コイルから巻き解かれかつ単方向または双方向押出し被覆装置に供給され、熱可塑性ポリマーで押出し被覆され、押出し被覆後に熱可塑性ポリマーの融点より高い金属温度に再加熱される構成の被覆されたアルミニウムストリップの製造方法に関する。連続複合工具により高い製造速度で加工される押出し被覆アルミニウムストリップの製造方法を提供する目的は、アルミニウムストリップの単方向または双方向プラスチック材料被覆を、表在構造を有するロールを用いて、再加熱後に表面組織化することにより達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムストリップをコイルから巻き解きかつ単方向押出し装置または双方向押出し装置に供給し、アルミニウムストリップを熱可塑性ポリマーで押出し被覆し、押出し被覆後にアルミニウムストリップを熱可塑性ポリマーの融点より高い金属温度に再加熱する被覆アルミニウムストリップの製造方法に関する。本発明はまた、本発明により製造されたアルミニウムストリップ、および本発明によるアルミニウムストリップの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料用缶、特に飲料用缶の端部の製造に使用されるアルミニウムストリップは、缶の内容物により引き起こされる腐食に対して保護されなくてはならない。これは、缶の端部(缶端)を製造するのに使用されるアルミニウムストリップを被覆することにより達成される。これまで、缶端を被覆するのにラッカーシステムが使用されており、ラッカーの塗布後に、缶端は焼付け加工を受けなくてはならない。溶剤の消費量が多いことおよびこのような装置からの排出空気の廃棄が複雑であることに加え、ラッカーシステムは230℃〜270℃の比較的高い焼付け温度を必要とし、このためアルミニウムストリップはかなり軟化されてしまう。したがって、充分な安定性および強度を付与するためには、マグネシウム含有量の多い高価なアルミニウム合金を使用しなければならず、このためより腐食を受け易いものとなってしまう。缶端のストリップに押出し被覆を設けることは、下記特許文献1から知られている。この目的のため、アルミニウムストリップは最初に予熱され、次に押出し装置を用いて片面または両面が被覆される。次に、アルミニウムストリップは冷却加工を受け、ほぼ室温まで冷却される。アルミニウムストリップが室温まで完全に冷却された後にのみ、アルミニウムストリップは、巻上げられるアルミニウムストリップを更に搬送する他のストリップ搬送ロールに接触する。しかしながら、缶端を製造するには、押出し被覆アルミニウムストリップは、種々の形成工程すなわちスタンピング工程およびブランキング工程を受けなくてはならない。この目的のため、缶端の製造中に、アルミニウムストリップは、高速で連続複合工具(follow-on composite tool, Folgeverbundwerkzeug(英、独訳))に通され、ここで、個々の作業工程が極めて短いサイクルタイムで行われる。前掲の特許文献1から知られた押出し被覆の接着特性は充分なものであるが、押出し被覆アルミニウムストリップが連続複合工具で加工される場合には、特に、高い生産速度が設定されるときに問題が生じる。したがって、これまでは、加工速度の損失を受ける一方で、押出し被覆アルミニウムストリップを非常に高い加工速度で缶端に加工できたに過ぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第96/32202号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明の目的は、連続複合工具により高速で加工できる、押出し被覆アルミニウムストリップの製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、本発明により製造されたアルミニウムストリップ、および本発明によるアルミニウムストリップの有利な使用方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の教示によれば、上記目的は、アルミニウムストリップの単方向または双方向プラスチック材料被覆が、表在構造を有するロールを用いて、再加熱後に表面組織化されることにより達成される。
【0006】
驚くべきことに、再加熱後の未だ柔らかい状態の熱可塑性ポリマー被覆の表面の組織化(texturing,Texturierung(英、独訳))により、アルミニウムストリップの摩擦特性を大幅に改善できることが判明している。アルミニウムストリップのプラスチック材料被覆の表面の組織化により、その後の加工でのアルミニウムストリップの滑り特性に影響を与えることができ、これにより、これらの滑り特性は、連続複合工具での加工のために最適に調節できる。また、被覆されたアルミニウムストリップの滑り特性を更に改善する添加物を、使用される熱可塑性ポリマーに添加できる。
【0007】
本発明による方法の第1実施形態によれば、ロールの表面組織化の特に正確な凹凸(impression, Abformung(英、独訳))は、表面組織化に使用されるロールが調質(temper, Temperierte(英、独訳))されることにより達成される。調質されたロールは、特に良好な凹凸を得るため、ロールの表面温度を、アルミニウムストリップの温度および再加熱後のプラスチック材料被覆の温度に意図的に調節できる。例えば、プラスチック材料被覆のロールがアルミニウムストリップを同時的に冷却する場合には、冷却されたロールは、プラスチック材料被覆の表面組織化に使用される。また、充分な凹凸を得るため、加熱されたロールを用いて、再加熱後のアルミニウムストリップの温度の損失を補償することができる。被覆内への表面組織の転写度合いは、溶融したプラスチック材料被覆のフレキシビリティおよびロールの接触圧力により正確に調節できる。
【0008】
表面組織化に使用されるロールが、電子放電法を用いて導入された等方性組織または(EDT)表在構造(superficial structure, Oberflaechenstruktur auf(英、独訳))を有する場合には、連続複合工具での最大加工速度に関して特に良好な結果が得られる。ロールのEDT表在構造は、ミクロンメートル範囲内の非常に微細な等方分布された凹部からなり、該凹部は、アルミニウムストリップの押出し被覆上に、対応する表面粗さを形成する。これとは別に、充分な等方性表在構造を形成する他の表面組織化法を使用することもできる。
【0009】
本発明による方法の他の有利な実施形態によれば、表面組織化後のプラスチック材料被覆の粗さRaは0.02μm〜10μmである。これらの粗さ値により、アルミニウムストリップは、連続複合工具での最大加工速度を得ることができる。
【0010】
押出し被覆されたアルミニウムストリップにできる限り正確に表面組織を導入するため、およびその後の加工中にアルミニウムストリップに損傷を与えないようにするため、必要ならば、使用される調質表面組織化ロールに加えて、押出し被覆されたアルミニウムストリップを、表面組織化後に空冷システムおよび/または水冷システムを用いて冷却する。この点に関して、アルミニウムストリップは、熱可塑性ポリマー被覆が完全に凝固するように、ほぼ室温まで冷却するのが好ましい。
【0011】
本発明による方法の他の有利な実施形態によれば、プラスチック材料被覆の厚さは0.2μm〜20μmであり、これにより、一方では非常に少量の材料が使用され、他方では充分な保護効果、例えば飲料の内容物の腐食性影響に対する保護効果がアルミニウムストリップに付与される。また、0.2μm〜20μmの厚さの熱可塑性ポリマー被覆を有するアルミニウムストリップも、例えば缶端に非常に有効に加工できることが判明している。
【0012】
プラスチック材料被覆には、ポリプロピレンまたはポリプロピレン配合物が使用されることが好ましい。ポリプロピレンは、特に腐食性液体に対して非常に有効なバリヤ特性を有しかつアルミニウムストリップ上に高速で押出すことができる。また、再加熱中に、ポリプロピレン被覆は、低い金属温度を必要とする。かくして、例えば表面組織化と同時に押出されたプラスチック材料層の接着性の改善を達成するのに、165℃より高いPMT(ピーク金属温度:peak metal temperature)で充分である。ポリプロピレンの場合には、使用されるプラスチック材料の融点より約30℃を超える195℃〜210℃の範囲内の温度で非常に良い結果が達成される。ラッカーシステムに比べて非常に低い再加熱温度であるため、アルミニウムストリップの軟化は小さく留まり、このため比較的Mg含有量の小さいアルミニウム合金を使用できる。
【0013】
本発明による方法の他の実施形態によれば、アルミニウムストリップは、単方向または双方向に押出し被覆される前に、洗浄、脱脂、ピックリング(酸洗い)および転化層の塗布による予処理を受けるか、陽極酸化加工を受ける。アルミニウムストリップの同様な予処理により、押出し被覆工程前に予熱することなく本発明による方法を実施することが可能になる。なぜならば、アルミニウムストリップに対するプラスチック材料の接着特性が最大限に改善されるからである。しかしながら、特に腐食特性も大幅に改善される。なぜならば、圧延加工中のアルミニウムストリップの表面のピックリングにより生じるアルミニウム摩耗、合金要素および酸化物表皮の堆積物が非常に完全に除去され、均質なアルミニウム表面が形成されるからである。
【0014】
本発明による方法の他の実施形態によれば、アルミニウムストリップに対する熱可塑性ポリマー被覆の接着の改善は、押出し被覆中に、熱可塑性ポリマー被覆に加え、接着促進層が同時押出しされることにより達成される。接着促進剤およびプラスチック材料被覆の同時押出しは、アルミニウムストリップへのプラスチック材料被覆の接着特性を更に改善すると同時に、接着促進層およびプラスチック材料被覆を塗布する作業が不要になることを意味する。
【0015】
更に、本発明の方法は、缶端、より詳しくは飲料用缶のストリップの製造に特に有利である。前述のように、缶端の製造に使用されるアルミニウムストリップは、例えば強度および耐食性等の、缶端にとってのあらゆる特性を維持すると同時に、高い加工速度を達成するために、被覆されたアルミニウムストリップの特に優れた滑り特性を必要とする多数の形成工程を受ける。また、再加熱加工中に過度の高温は不要であり、このため、本発明による方法の実施中のアルミニウムストリップの軟化は低い。
【0016】
本発明の第2の教示によれば、前掲の目的は、アルミニウムストリップ上に押出される、単方向または双方向熱可塑性ポリマー層を備えたアルミニウムストリップであって、アルミニウムストリップのプラスチック材料被覆の表面が、被覆後に付された等方性表面組織、好ましくはEDT表面の表面組織を有しているアルミニウムストリップにより達成される。
【0017】
前述のように、本発明のアルミニウムストリップは、缶端の製造に特に良く適している。なぜならば、アルミニウムストリップの滑り特性は、押出されたプラスチック材料被覆であるにもかかわらず、等方性表面組織またはEDT表面により最適化され、したがって高い加工速度が可能になるからである。
【0018】
熱可塑性ポリマー被覆の表面の粗さRaは、アルミニウムストリップの加工中の最適滑り特性を確保すべく、0.02μm〜10μmであるのが好ましい。粗さ値とは、DIN(ドイツ工業規格)による平均粗さRaの測定値に関するものである。
【0019】
少量の使用材料と、優れた加工性と、腐食に対する充分な保護効果との間の最適な妥協は、アルミニウムストリップの押出し被覆の厚さを0.2μm〜20μmとすることにより達成される。
【0020】
押出し被覆がポリプロピレン層またはポリプロピレン配合層、および任意であるが接着促進層を有している場合には、ポリプロピレンの優れた加工特性により、非常に高い加工速度を達成できると同時に、飲料用缶の腐食性成分に対するポリプロピレンのバリヤ効果を利用できることにより達成できる。ポリプロピレン配合物はまた、例えば特定熱抵抗(specific thermal resistance, spezifische Temperaturbestaendigkeiten(英、独訳))または強度の調節を可能にする。また、接着促進層は、ポリプロピレン層またはポリプロピレン配合物層と一緒に容易に同時押出しでき、これにより、アルミニウムストリップの押出し被覆の特に経済的な製造方法を提供できる。
【0021】
最後に、本発明が基づいている目的は、缶端、より詳しくは飲料用缶の端部を製造するのに、本発明によるアルミニウムストリップを使用することにより達成される。前述のように、本発明によるアルミニウムストリップは、特に優れた加工性、同時に、経済的な製造および優れた強度および腐食特性を有することに特徴を有している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
アルミニウムストリップを製造する本発明による方法、本発明により製造されたアルミニウムストリップ、または本発明によるアルミニウムストリップの有利な使用方法を構成しかつ開発するには複数の可能性がある。この点に関し、特許請求の範囲の請求項1および11およびこれらに従属する請求項の記載、および添付図面に関連して述べる2つの実施形態の説明を参照されたい。
【0023】
【図1】アルミニウムストリップの片面を被覆する本発明による方法の第1実施形態を示す概略図である。
【図2】アルミニウムストリップの両面を被覆する本発明による方法の第2実施形態を示す概略図である。
【図3a】本発明によるアルミニウムストリップの第3実施形態を示す概略断面図である。
【図3b】本発明によるアルミニウムストリップの第3実施形態を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
最初に、図1には、アルミニウムストリップ、より詳しくはアルミニウムからなる缶端ストリップを製造する本発明による方法の第1実施形態が示されている。アルミニウムストリップ1はコイル(図示せず)から巻き解かれ、任意であるが予熱システム2に供給される。アルミニウムストリップ1の予熱により、アルミニウムストリップ上に被覆されるプラスチック材料の接着が改善される。予熱後に、アルミニウムストリップ1は単方向押出し被覆装置3内に供給される。押出し被覆装置3は、押出し機3aおよびこれに関連する塗布ロール3bおよび加圧ロール3cを有している。塗布ロール3bおよび加圧ロール3cは、通常、冷却されまたは調質される。
【0025】
この実施形態では、押出し機3aは、熱可塑性ポリマー層と一緒に接着促進層を同時押出しできるように構成されている。熱可塑性ポリマー層としては、ポリプロピレンまたはポリプロピレン配合物を使用するのが好ましい。なぜならば、これらは飲料用缶端の製造に関して特に有利だからである。しかしながら、容易に押出すことができかつ優れた被覆特性を有する他のプラスチック材料、例えばポリエチレン、ポリエステル、ポリアミドまたはポリカーボネートを使用することもできる。
【0026】
アルミニウムストリップ1の片面が押出し被覆された後、アルミニウムストリップは再加熱システム内に供給され、加熱装置4内で再加熱が行われる。加熱装置4は、アルミニウムストリップを、対流、誘導または熱放射により特定温度に加熱できる。加熱装置4では、アルミニウムストリップ1は、使用される熱可塑性ポリマーの融点より高い温度に加熱される。ポリプロピレンを使用する場合には、融点は165℃である。
【0027】
例えば、アルミニウムストリップ1を、使用される熱可塑性ポリマーの融点より30℃を超える高い温度に0.5秒〜3秒間加熱することにより、アルミニウムストリップへの膜の最適接着、および押出しにより僅かに延伸された押出し被覆の弛緩が生じることが判明している。したがって、同時に、再加熱温度は、ラッカーシステムでこれまで使用されている焼付け温度よりかなり低い。かくして、例えば本発明による方法では、金属温度すなわち165℃より高いピーク金属温度(好ましくは約210℃)が使用される。このため、ラッカーシステムに要求される230℃〜260℃の温度と比較して、アルミニウムストリップ1の軟化の大幅な低減、ひいては缶端ストリップの優れた強度が得られる。したがって本発明の方法は、高強度缶端の製造に、低マグネシウム含有量のアルミニウムストリップを使用することも可能にする。
【0028】
アルミニウムストリップ1が再加熱装置4を通過した後、アルミニウムストリップのプラスチック材料被覆が、表面組織化ロール(texturing roll, Texturierwalze(英、独訳))5および加圧ロール6を用いて、表面組織が形成される。加圧ロール6は表面組織化ロール5を支持することのみに使用されるので、特別な表面組織を有しないが、その代わりに、アルミニウムストリップを入念に搬送するように構成されている。表面組織化ロール5は調質され、この点に関し、アルミニウムストリップ1の温度に基づいて、再加熱後にロール表面の最適凹凸がプラスチック材料被覆に達成されるように表面温度により調節される。本発明の範疇では、ロールの調質には、良好な凹凸を形成する表面組織化ロール
6の温度に基づいたロールの加熱および冷却が含まれる。プラスチック材料被覆の組織化表面は、被覆されたアルミニウムストリップの例えば缶端への加工に関して非常に優れた滑り特性を有している。表面組織化後のプラスチック材料被覆により得られる平均粗さ値Raは、0.02μm〜10μmである。同様に加工された表面は、後の加工工程で缶端を製造する場合、特に連続複合工具を使用する場合に特に良く適している。EDT表面を有する表面組織化ロール5は、表面組織化が特に微細で、等方性を有しかつ均質に行えるため、後のパンチング工程および成形工程におけるアルミニウムストリップの加工性に関して特に優れた結果を達成できることが判明している。再加熱加工後のアルミニウムストリップの温度に基づいて、表面組織化ロール5は、優れた凹凸結果を得るべく特定温度に冷却しまたは加熱できる。表面組織化されたプラスチック材料被覆を備えたアルミニウムストリップは、次に、更なる冷却工程に導かれ、ここでアルミニウムストリップ1は、空冷または水冷手段7を用いて室温に冷却されるのが好ましい。アルミニウムストリップ1は、例えば更なるロール上でストリップが搬送されることにより表面組織が損傷を受けないようにするため、被覆されたアルミニウムストリップの表面が組織化された直後に冷却されるのが好ましい。コイルへのアルミニウムストリップの巻上げは、図1には示されていない。
【0029】
図2に示す実施形態は、押出し被覆装置8がアルミニウムストリップ1の両面に押出し被覆を形成する点だけでなく、アルミニウムストリップ1が非予熱状態で押出し被覆装置8に通される点で図1に示した実施形態とは異なっている。実際の押出し被覆加工前に、アルミニウムストリップ1の表面を特殊加工することにより、アルミニウムストリップ1への押出し被覆の接着を損なうことなく予熱加工を省略できることが判明している。この目的のためには、製造工程の後にアルミニウムストリップ1を脱脂し、次にこれをピックリング処理しなければならない。ピックリング工程は酸性またはアルカリ性態様で行われ、圧延加工により表面に形成された酸化アルミニウムと一緒にアルミニウムストリップの表面を酸洗いする。その後、アルミニウムストリップの表面上に薄い酸化アルミニウムが形成されると、転化処理のための非常に均一な表面が形成される。次に、アルミニウムストリップは、例えば転化層が塗布される予処理を受け、次に、約80℃〜150℃の温度で乾燥または活性化される。転化層は、スプレー、ローリングまたは浸漬処理により塗布される。アルミニウムストリップの転化被覆の代わりに、アルミニウムストリップの表面を陽極酸化することもできる。
【0030】
このように処理されたアルミニウムストリップは、押出し被覆前に予熱されなくても、アルミニウムストリップ上に押出されたプラスチック材料層に対する充分な接着特性を有している。押出し装置8は、接着促進層と一緒にポリプロピレン層またはポリプロピレン配合物を、アルミニウムストリップの表面上に同時押出しするのが好ましく、接着促進層はまた接着特性を改善する。
【0031】
図2の実施形態では、押出し被覆装置8において、アルミニウムストリップの両面が連続的に押出し被覆される。しかしながら、アルミニウムストリップ1の両面に押出し層を同時に塗布することも考えられる。しかしながら、アルミニウムストリップ1の温度を最適に制御するため、個々の押出し工程の間に冷却工程を設けることも考えられる。この実施形態でも、アルミニウムストリップ1は、次に再加熱装置9に通され、該再加熱装置9においてアルミニウムストリップ1は融点より高温のPMTまで加熱される。ポリプロピレン被覆の場合には、210℃のPMTは、好ましくは0.5秒〜3秒間で達成される。アルミニウムストリップ1上へのポリプロピレン層の迅速溶融により、良好な接着が達成される。しかしながら、これらの温度ではポリプロピレン被覆の表面が滑らかになるため、その後の加工工程でのアルミニウムストリップ1の滑り特性は最適でなくなる。
【0032】
このため、アルミニウムストリップ1は一対の表面組織化ロール10、11に通される。各表面組織化ロール10、11は表在組織を有し、この表在組織は、アルミニウムストリップ1がロール10、11を通過する間に、未だ温かいプラスチック材料層内に凹凸を形成する。次に、アルミニウムストリップ1は、水冷手段または空冷手段からなる冷却装置12内に供給される。アルミニウムストリップ1は次にコイルに巻上げられるが、これは図2には示されていない。
【0033】
図3aは双方向に押出し被覆されたアルミニウムストリップ13の一実施形態の概略断面図であり、図3bは概略平面図である。図3aには、アルミニウムストリップ13に加え、転化層14、接着促進層15およびポリプロピレン層16が示されている。前述のように、接着促進層15およびポリプロピレン層16は一緒に同時押出しされたものである。これまでに知られている缶端製造用のアルミニウムストリップとは異なり、プラスチック材料被覆は正確に形成された表面組織を有し、該表面組織により、後の加工工程でのアルミニウムストリップの表面の滑り特性を正確に調節できる。
【0034】
図3bは、EDT表面を備えた表面組織化ロールにより表面組織化されたアルミニウムストリップの表面を概略的に示す。EDT表面は特に均質に分布された円形窪みすなわち凹部を有し、これらの凹部は、プラスチック材料被覆上に対応する表在構造を形成する。これらの表在構造は、その後の加工工程でのアルミニウムストリップ13の特に良好な加工特性を確保する。
【符号の説明】
【0035】
1 アルミニウムストリップ
3 単方向押出し被覆装置
4 加熱装置
5、6 表面組織化ロール
7 冷却装置
8 双方向押出し被覆装置
9 再加熱装置
10、11 表面組織化ロール
14 転化層
15 接着促進層
16 ポリプロピレン層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムストリップが、コイルから巻き解かれかつ単方向または双方向押出し被覆装置に供給され、熱可塑性ポリマーで押出し被覆され、押出し被覆後に熱可塑性ポリマーの融点より高い金属温度に再加熱される構成の被覆されたアルミニウムストリップの製造方法において、アルミニウムストリップの単方向または双方向プラスチック材料被覆が、表在構造を有するロールを用いて、再加熱後に表面組織化されることを特徴とする方法。
【請求項2】
表面組織化に使用されるロールは調質されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
表面組織化に使用されるロールは、電子放電法を用いて導入される等方性表面組織またはEDT表在構造を有していることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記ロールによる表面組織化後のプラスチック材料被覆の粗さRaは、0.02μm〜10μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
押出し被覆されたアルミニウムストリップは、表面組織化後に、空冷手段および/または水冷手段を用いて冷却されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記プラスチック材料被覆の厚さは0.2μm〜20μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記プラスチック材料被覆にポリプロピレンまたはポリプロピレン配合物が使用されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記アルミニウムストリップは、単方向または双方向に押出し被覆される前に、洗浄、脱脂、ピックリングおよび転化層の塗布による予処理を受けるか、陽極酸化加工を受けることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
押出し被覆中に、熱可塑性ポリマー被覆に加え、接着促進層が同時押出しされることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
特に飲料用缶のパッケージングストリップが製造されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
アルミニウムストリップ上に押出される、特に請求項1〜10のいずれか1項記載の方法により製造される単方向または双方向熱可塑性ポリマー層を備えたアルミニウムストリップにおいて、アルミニウムストリップのプラスチック材料被覆の表面が、被覆後に付された等方性表面組織、好ましくはEDT表面の表面組織を有していることを特徴とするアルミニウムストリップ。
【請求項12】
前記熱可塑性ポリマー被覆の押出し表面の粗さRaは0.02μm〜10μmであることを特徴とする請求項11記載のアルミニウムストリップ。
【請求項13】
前記押出し被覆は、ポリプロピレン層またはポリプロピレン配合層、および任意であるが接着促進層を有していることを特徴とする請求項11または12記載のアルミニウムストリップ。
【請求項14】
前記アルミニウムストリップの押出し被覆の厚さは0.2μm〜20μmであることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項記載のアルミニウムストリップ。
【請求項15】
剛性パッケージ、特に缶端用の請求項11〜14のいずれか1項記載のアルミニウムストリップの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2012−521287(P2012−521287A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501294(P2012−501294)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053833
【国際公開番号】WO2010/108953
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(505379308)ハイドロ アルミニウム ドイチュラント ゲー エム ベー ハー (16)
【氏名又は名称原語表記】HYDRO ALUMINIUM DEUTSCHLAND GMBH
【Fターム(参考)】