説明

剛性ビードを備える平形ガスケット

本発明は、剛性ビードと、少なくとも1つの金属層(2)とを備える金属平形ガスケットに関する。本発明の金属ガスケットは、金属ガスケットにおける少なくとも1つの金属層(2)内に形成された少なくとも1個の剛性ビード(6)を備え、剛性ビード(6)は2つの対向する側面(8,10)を含んでいる。更に、本発明のガスケットは、2つの側面(8,10)間における剛性ビード(6)の周方向において、互いに隣接する窪み又はビード部分(18,20,22)からなる少なくとも1列(12,14,16)を備え、これらビード部分又は窪み(18,20,22)は、それぞれ剛性ビード(6)と共に連続する輪郭を形成し、且つ剛性ビード(6)とは逆向きに配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性ビードを備える金属製平形ガスケットに関する。また、本発明は、耐圧縮性を有するシール用ビードを備えるガスケットに関する。更に、本発明は、シリンダヘッド用の金属製ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術により、ストッパ付き又はストッパ無しの種々のガスケットが既知である。
【0003】
特許文献1(独国特許出願公開第10219526号明細書)は、ストッパ層を備える金属ガスケットに関するものであり、このストッパ層は、チェス盤状にエンボス加工を施して金属ガスケット層に形成される。
【0004】
特許文献2(米国特許出願公開第20040160017号明細書)は、ストッパ層を備える金属ガスケットに関するものであり、このストッパ層は、ハニカム状にエンボス加工を施して金属ガスケット層に形成される。
【0005】
特許文献3(独国特許出願公開第102004061964号明細書)は、リング部分状に形成されたストッパ層を備えるガスケットに関するものであり、各リング部分は個別の層として形成されている。
【0006】
特許文献4(独国特許出願公開第102006047424号明細書)には、金属層に波形状のエンボス加工を施すことにより形成される、波形状の変形制限部が開示されている。
【0007】
特許文献5(独国特許出願公開第20121984号明細書)には、金属層に波形状のエンボス加工を施すことにより形成される波形状の変形制限部が開示されており、本明細書において「波形ストッパ」と称する。
【0008】
従来技術における波形ストッパは、特にシール領域周り、すなわち剛性ビード周り、又は剛性ビード内に配置されるビードとして形成される。これまで、このようなビードは中実の円又はループとして形成され、通常、ビードの経路に対して直交する方向にのみ耐圧縮性を発揮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第10219526号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第20040160017号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102004061964号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102006047424号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第20121984号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、剛性ビードとして形成されるシール領域における圧縮性を向上させることにある。
【0011】
更に、ガスケットの特性を損なうことなく、波形ストッパを構成する材料を薄く形成すると共に、本発明に係るガスケット製造用ツールの生産コストを低減することが望ましい。
【0012】
本発明の一実施形態においては、少なくとも1つの層及び剛性ビードを備える金属平形ガスケットが使用される。この実施形態の金属平形ガスケットは、金属ガスケットにおける少なくとも1つの層内に形成された少なくとも1個の剛性ビードを備える。剛性ビードは2つの対向する側面を含み、本発明の金属ガスケットはこれら2つの側面間における剛性ビードの周方向において、互いに隣接するビード部分又は窪みからなる少なくとも1列(以下、窪み列とも称する)を備える。これらビード部分又は窪みは、それぞれ剛性ビードと共に連続的な輪郭を形成し、かつ剛性ビードとは逆向きに配置されている。
【0013】
互いに隣接するビード部分又は窪み列は、剛性ビードとは逆向きに形成され、剛性ビードを支持するよう機能するため、ビードの完全な平坦化を防止するものである。互いに隣接する窪み又はビード部分からなる列は、剛性ビードに対して一部又は大部分が平行に延在するよう形成される。すなわち、窪みにより剛性ビードに対して一種の「カウンタービード」が形成されることになる。窪みは、エンボス加工により剛性ビードとは逆向きの金属層内に形成され、隣接する窪み列も剛性ビードとは逆向きに形成されることにより、剛性ビードの背面側が凹部方向に支持され、剛性ビードの圧縮度を制限することが可能となる。ここに「窪み」とは、層の一方に湾曲状に形成され、これに対応するよう層の他方に湾曲状に突出する窪みを意味するものであり、単なる層の薄肉化を意味するエンボス加工による窪みとは区別される。特に、本明細書における「窪み」とは、剛性ビードの横断面にほぼ対応する横断面を呈する、金属層の変形を意味するものである。従って、窪みは、例えばビード部分として又はスポットビードとして形成することもできる。
【0014】
本発明における他の実施形態において、ガスケットは、互いに隣接し、かつ平行に延在する2つの窪み列を備える。
【0015】
特別な実施形態において、窪みは互いに隣接する列上において平行、かつ整列させた状態で配置される。プレス加工用ツールの製造コストは、窪みを互いに整列配置させることにより低減することができる。
【0016】
隣接する列上における窪みは、互いに位置をずらせて配置することもできる。一実施形態において、隣接する列上における窪みは互いに位置をずらせて配置され、これにより剛性ビードをより均等に支持することが可能になる。
【0017】
他の実施形態において、ガスケットは、互いに隣接し、かつ平行に延在する3つの窪み列を備える。
【0018】
他の実施形態において、ガスケットは、互いに隣接し、かつ平行に延在する4つの窪み列を備える。
【0019】
他の実施形態において、剛性ビード及び窪み列は、少なくとも部分的に円弧上に延在する。更に、剛性ビード及び窪み列が複数の同心円を形成するか、又は複数の同心的な円弧上に配置される構成とすることもできる。
【0020】
代替的な実施形態において、円弧上に配置される窪みは、2°〜4°の中心角にほぼ対応する長さを有する。これは、全円上に約50〜180以上の窪みが配置可能であることを意味する。例えばビード部分として形成可能な窪みは、その幅に対して、好適には約2〜8倍、より好適には3〜6倍、更に好適には4〜5倍の長さで形成可能とする。
【0021】
本発明に係る金属平形ガスケットにおける他の実施形態において、列を形成する窪みは、ほぼ同一の幅及び長さを有する。
【0022】
本発明に係る金属平形ガスケットにおける別の代替的な実施形態において、少なくとも2つの互いに隣接する窪み列は、同数の窪みを有する。
【0023】
他の実施形態において、少なくとも幾つかの窪みにおける側面、又は少なくとも幾つかの窪みにおける側面領域の層厚は、金属層とほぼ同一とする。この実施形態によれば、窪み領域における層厚は、ほぼ一定とするのが好適である。別の一実施形態によれば、剛性ビードにおける側面領域の層厚は、金属層とほぼ同一とする。
【0024】
他の実施形態において、それぞれの窪みにおける横断面は、波形状又は円形波状を呈する。
【0025】
金属平形ガスケットにおける他の実施形態において、少なくとも幾つかの窪みにおける側面領域は、金属層の層厚に比べ、漸減している。
【0026】
この実施形態において、窪み領域における層厚は、漸減させるものとする。別の一実施形態においては、剛性ビードにおける側面領域の層厚を実質的に漸減させることにより、この層における他の箇所の層厚より薄くする。
【0027】
他の実施形態において、窪みの横断面は台形状を呈する。剛性ビードが台形状の場合、せん断に基づくエンボス加工により、剛性ビード側面及び/又は窪みをテーパさせることができる。
【0028】
剛性ビード側面及び/又は窪みにおけるテーパ形状を変化させることにより、平形ガスケットの特性をその利用上の要件に適合させることができる。
【0029】
金属平形ガスケットにおける別の一実施形態において、ガスケットは、例えば燃焼室開口用に少なくとも1つの流通開口を備え、該流通開口は剛性ビード及び少なくとも1つの窪み列に包囲される。
【0030】
平形ガスケットは、例えば油、ガス等の流体を充満させ、又は真空引きしたチャンバのシール用に使用することもできる。流通開口は、本発明に係るガスケットの効果を発現させる上で必ずしも必要ではない。なぜなら、ガスケットは開口を密閉するためだけに使用することもできるからである。ガスケットに流通開口を設けない場合、単一のシール面だけをシールすれば十分であるため、場合によりシール性を向上させることが可能となる。
【0031】
他の例示的な実施形態において、金属平形ガスケットは、更に、付加的な窪み列を少なくとも1つ備え、この窪み列は剛性ビードにおける側面間以外の領域に配置される。これらの領域においては、複数の窪みが、互いにほぼ平行に延在する複数本のライン上に隣接配置されている。隣接するライン上の窪みは、互いに位置をずらせた状態で配置するだけでなく、互いに平行又は整列させて配置することもできる。これにより、個々の窪みを、原則的に任意の形状とすることができる金属平形ガスケット層の一面にわたって配置することが可能になる。別の一実施形態においては、個々の窪みを直線的に形成し、曲線又は円弧に沿って接線方向に配置することができる。
【0032】
金属平形ガスケットにおける他の実施形態において、第1円弧に沿って延在する第1窪み列における少なくとも1つの円形所定部位には、窪みが配置されないものとする。更に、この実施形態において、第1円弧とは異なる半径を有し、かつ同心的な第2円弧に沿って延在する第2窪み列における少なくとも1つの第2円形部位には、対応する第1円形部位とは異なり、窪みが配置される。更に、この実施形態において、同心的な第2円弧に配置される第2窪み列における少なくとも1つの円形部位には窪みが配置されないが、第1円弧において対応する円形部位には窪みが配置される。
【0033】
この実施形態は、部分的にのみ延在する複数の弧状部により、例えば燃焼室開口による凸部及びこれに対応して剛性ビードに形成される凹部に基づく円形軌道からの逸脱を補償する上で好適である。この補償は、例えば円形状に配置された窪み列が燃焼室開口による凸部で断絶される領域に、付加的な円弧を設けることにより行うことができる。すなわち、この付加的な円弧は断絶される部位周りに延在し、これにより窪みを有する状態で剛性ビードが他の部位と均等の幅で設けられる。これにより、任意の形状又は軌道とした剛性ビードに合わせて窪みを配置することが可能になる。
【0034】
他の実施形態において、流通開口は凸部を有し、該凸部周りに剛性ビードが延在する。この実施形態においては、窪み列が配置されている少なくとも1つの円弧が、流通開口の凸部領域に対応して剛性ビードに形成される(少なくとも1つの)凹部により断絶される。この(少なくとも1つの)円弧断絶箇所及び当該箇所における窪み列の欠落は、流通開口の凸部周りにおける剛性ビードの円弧上に付加的に配置される(少なくとも)1つの窪み列により補償されるものである。これにより、狭幅領域における窪みの機能低下が回避される。
【0035】
更に、本発明においては、1列上又は隣接する複数列上における窪みの高さ、幅及び長さに変化を持たせることで、例えば剛性ビードの側面がピーク荷重に晒されることを回避可能とする。
【0036】
他の実施形態において、窪みは、スポットビード状又は窪み、Y字状、X字状、V字状、十字状、星形状状、又は三角形状、四角形状又は六角形状窪みとして形成される。
【0037】
他の実施形態において、金属平形ガスケットは内燃機関のシリンダヘッド用ガスケットとして形成される。
【0038】
別の観点から、本発明によれば、上述した金属平形ガスケットを製造するためのエンボス/プレス加工用ツールが提供される。本発明に係るエンボス/プレス加工用ツールは、本発明に係る剛性ビードを有する平形ガスケットの少なくとも一層に、剛性ビードと、少なくとも1つの窪み列とを設けることができるよう形成されるものである。好適には、上記ツールに付加的な部材を設けることにより、貫通孔の打ち抜き、プリント、プレス又はエンボス加工を行い、金属平形ガスケット層に更なるシール用ビードを形成可能とする。
【0039】
以下、従来技術との対比において本発明に係る金属ガスケットを図面に示す種々の実施形態に基づいて更に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】ストッパと、シール領域とを有する既知のシリンダヘッド用ガスケットにおける一実施形態の要部を示す説明図である。
【図2】ビード部分として形成された2つの窪み列に支持される、本発明に係る剛性ビードを備える平形ガスケットの一部を示す説明図である。
【図3】図3A〜図3Dは、ビード部分として形成された2つの窪み列に支持される、本発明に係る剛性ビードを備えるガスケットの実施形態を異なる状態で示す説明図である。
【図4】図4A〜図4Dは、ビード部分として形成された2つの窪み列に支持される、本発明に係る剛性ビードを備えるガスケットにおける他の実施形態を異なる状態で示す説明図である。
【図5】ビード部分として形成された3つの窪み列に支持される、本発明に係る剛性ビードを備えるガスケットの詳細を示す平面図である。
【図6】燃焼室凸部に対応する剛性ビードの凹部、及び剛性ビードの凹部におけるビード部分を補償するビード部分の配置を示す、本発明に係るガスケットの実施形態を示す説明図である。
【図7】図7A〜図7Cは、剛性ビードを支持し、かつビード部分として形成された窪みを配置した状態で、本発明に係るガスケットの実施形態を示す説明図である。
【図8】図8A〜図8Dは、本発明の実施形態として採択可能な窪みの種々の構成・配置を示す説明図である。
【図9】図9A及び図9Bは、ビード部分が異なる幅及び/又は高さを有する窪みとして形成された、本発明に係るガスケットの実施形態を示す説明図である。
【図10】図10A及び図10Bは、燃焼室、又は燃焼室をシールするビードから離れた側のガスケットに対する圧縮度も抑制するため、燃焼室開口から離れたガスケット部分に付加的な窪みを設けた、本発明に係るガスケットの実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、内燃機関に使用され、シール領域3と、圧縮制限部又はストッパ5とを備える従来既知の平形ガスケット(シリンダヘッド用ガスケット)を示している。ストッパ5及びシール領域3は、内燃室開口周縁4と共に燃焼室周りに配置され、それぞれが円周状に形成されているため、ツールの製造が簡素化される。なぜなら、ツールは旋盤加工により製造することができるからである。
【0042】
図2は、層2及び剛性ビード6として形成されたシール素子を備える、本発明に係る平形ガスケット(シリンダヘッド用ガスケット)の一部を示している。剛性ビード6は、燃焼室開口周縁4と共に燃焼室周りに延在し、内側面8及び外側面10を含んでいる。両側面8,10間のビード上には、ビード部分として形成された窪み18,20からなる2列12,14が示されており、これら列12,14は、側面8,10と共に剛性ビード6を支持するものである。窪み間における領域は流体を流通させるため、窪み18,20自体がシール性に寄与することはない。個々の窪み18,20は、相互に位置をずらせた状態で列12,14に配置される。
【0043】
図3Aは、本発明に係る内燃機関のシリンダヘッド用ガスケットにおける一部を斜視図で示している。図示の実施形態における剛性ビードは下方に向けられており、剛性ビード6の外側面10と内側面8との間で窪みを呈している。ビード部分として形成された窪み18,20は、それぞれ窪み18からなる内列、及び窪み20からなる外列を形成し、これら両列の裏側におけるビード底部において上方に隆起する。参照符号24は、ガスケットの境界又はシール領域を示している。剛性ビード6の内側においては、内燃室開口周縁4が内燃室開口周りに延在している。
【0044】
図3A´は、図3に示す本発明に係るシリンダヘッド用ガスケットの一部をほぼ同一状態で示すものであり、下方に向けられている剛性ビードが外側面10と内側面8との間で窪みを呈している。図3A同様、ビード部分として形成された窪み18,20は、それぞれ窪み18からなる内列、及び窪み20からなる外列を形成し、これら両列の裏側はビード底部において凸部として外方に隆起する。参照符号24も、ガスケットの境界又はシール領域を示している。剛性ビード6の内側においては、内燃室開口周縁4が内燃室開口周りに延在している。
【0045】
図3Aとは対照的に、図3A´に示す外列20の窪み(又はガスケットの裏側における各隆起部)は異なる高さを有し、図面上端縁にかけては小隆起部が、また下端縁にかけてはより深い窪みが形成されている。内列18における窪み(又はガスケットの裏側における各隆起部)も異なる高さを有し、大きな窪み(又は隆起部)18が小さな窪み(又は隆起部)と交互に形成されている。これら2つの形成法が、図で示す他の実施形態における各窪み列にも適用可能であることは言うまでもないことであろう。特に、異なる列における窪みは、高さ又は平坦さ又は深さを異ならせて形成されるものとする。
【0046】
図3Bは、図3Aに示すガスケットの一部を逆側から示している。剛性ビード6は、層2に配置されている。図示の実施形態において、剛性ビード6は上方を志向し、外側面10と内側面8との間で隆起部を呈している。ビード部分として形成された窪み18,20は、それぞれ窪み18からなる内列、及び窪み20からなる外列を形成し、これら両列はビードの裏側において複数の窪みを呈する。参照符号24は、ガスケットの境界又はシール領域を示している。剛性ビード6の内側においては、内燃室開口周縁4が内燃室開口周りに延在している。
【0047】
図3Cは、図3A及び図3Bに示す剛性ビード6を有する層2の横断面図であり、剛性ビード6が外側面10及び内側面8と共に金属層2に形成されている。この場合の切断線は、内燃室開口を包囲する内燃室開口周縁4から内燃室開口に対して半径方向に延在し、その際、内列の窪み18が外列の窪み20と互いに重なる領域を通過している。
【0048】
図3Dは、図3A及び図3Bに示す剛性ビード6を有する層2の横断面図であり、剛性ビード6が外側フランジ10及び内側フランジ8と共に金属層2に形成されている。この場合の切断線は、燃焼室開口を包囲する内燃室開口周縁4から内燃室開口に対して半径方向に延在し、その際、内列の窪み18が配置されている領域、及び外列における窪み間の領域23を通過しているため、図示の横断面に外列の窪み20は示されていない。
【0049】
図3A〜図3Dにおいて、剛性ビード6は台形状に形成されており、剛性ビード6における側面8,10の厚さ又は材料強度は、層2の層厚に比べ低減されている。このため、剛性ビード6の側面8,10は、層2の層厚に対して漸減している。ビード部分として形成される窪み18,20は、図3A〜図3Dにおいてやはり台形状に形成され、その両側面の厚さ又は材料強度は、層2の層厚に比べ低減されている。このため、窪み18,20の側面は、層2の層厚に対して漸減している。
【0050】
図4Aは、本発明に係る内燃機関のシリンダヘッド用ガスケットにおける一部を斜視図で示している。剛性ビード6は層2に延在し、図示の実施形態においては下方に向けられ、剛性ビード6の外側面10と内側面8との間で窪みを呈している。ビード部分として形成された窪み18,20は、それぞれ窪み18からなる内列、及び窪み20からなる外列を形成し、これら両列はビード底部において外方に隆起する。剛性ビード6の内側においては、内燃室開口周縁4が内燃室開口周りに延在している。図示の実施形態において、内列及び外列の窪み18,20は互いに位置をずらせて配置されておらず、平行に、又は共面的に、又は共半径的に配置される。
【0051】
図4Bは、図4Aに示すガスケットの一部を逆側から示している。この場合、内列及び外列の窪み18,20は互いに位置をずらせて配置される。図示の実施形態において、剛性ビード6は上方を志向した状態で層2に配置され、外側側面10と内側側面8との間で隆起部を呈している。ビード部分として形成された窪み18,20は、それぞれ窪み18からなる内列、及び窪み20からなる外列を形成し、これら両列はビードの裏側において複数の窪みを呈する。剛性ビード6の内側においては、内燃室開口周縁4が内燃室開口周りに延在している。
【0052】
図4Cは、図4A及び図4Bに示す剛性ビード6を有する層2の横断面図であり、剛性ビード6が外側面10及び内側面8と共に金属層2に形成されている。この場合の切断線は、内燃室開口を包囲する内燃室開口周縁4から内燃室開口に対して半径方向に延在し、その際、内列のビード部分として形成された窪み18が、外列のビード部分として形成された窪み20と互いに重なる領域を通過している。
【0053】
図4Dは、図4A及び図Bに示す剛性ビード6を有する層2の横断面図であり、剛性ビード6が外側フランジ10及び内側フランジ8と共に金属層2に形成されている。この場合の切断線は、内燃室開口を包囲する内燃室開口周縁4から内燃室開口に対して半径方向に延在し、その際、内列のビード部分として形成された窪み18が配置されている領域、及び外列のビード部分として形成された2個の窪み20間における領域23を通過している。このため、外列のビード部分として形成された窪み20は、図示の横断面に示されていない。
【0054】
図4A〜4Dに示す剛性ビード6は曲線的な波形状に形成され、剛性ビード6の側面8,10における厚さは層2の層厚さにほぼ対応するものである。ただし、剛性ビード6の側面は、層2の層厚に対して漸減するよう形成することもできる。ビード部分として形成されている窪み18,20は、図示の実施形態においてやはり波形状に形成されており、窪み18,20における側面の厚さは層2の層厚さにほぼ対応している。窪み18,20の側面は、層2の層厚さに対して漸減するよう形成することもできる。
【0055】
本発明の平形ガスケットは、剛性ビード6の内側面10を図3Dに示すように角状に、外側面8を図4Dに示すように曲線状にそれぞれ形成することができ、又はその逆に形成することも可能であることに留意されたい。同様に、このような台形状及び曲線状の窪みを任意に組み合わせて、上述した剛性ビードの1つを形成することもできる。また、窪み18,20からなる列に台形状及び曲線状の窪みを交互に配置することもできる。更に、テーパさせた側面を有する窪みと、通常の側面を有する窪みとを一列上に並列的に配置してもよい。
【0056】
図5は、本発明に係る剛性ビード6及び側面8,10を備える本発明における平形ガスケット(シリンダヘッド用ガスケット)の一部を平面図で示している。剛性ビード6の背面には、ビード部分として形成された窪み18,20,22からなる3列12,14,16が配置されており、これら3列は相互かつ剛性ビード6に対して平行に延在している。この実施形態により、ビードの耐荷重性を向上させることができる。なぜなら剛性ビードは、窪みからなる1列又は2列に比べ、3列12,14,16を配置することでより良好に支持されるからである。
【0057】
図6は、剛性ビード6及び側面8,10を備える本発明に係る平形ガスケット(シリンダヘッド用ガスケット)の一部を示す平面図である。燃焼室開口,したがって燃焼室開口周縁4は燃焼室凸部42を有している。側面8,10を有する剛性ビード6は、燃焼室開口周縁4に対してほぼ平行に燃焼室凸部42周りに延在している。ビード部分として形成された窪みも、剛性ビードの経路に対して平行に配置することができる。図6において、ビード部分からなる列12,14が配置されている円弧は燃焼室凸部を包囲しておらず、燃焼室凸部42に終端している。燃焼室凸部領域において、同心的な円弧に配置されている窪み18,20は、同様に同心的な円弧に配置されている付加的な窪み22に連続している。これら窪み22は、同心的な円弧に配置されている窪みが燃焼室凸部42により断絶している弧状部に配置される。
【0058】
窪み18,20,22が配置されている同心的な各円弧に対して燃焼室側から連続的に番号を付した場合、第1円弧に配置されている窪み18は、第3円弧に配置されている窪み22に連続し、同様に、第2円弧に配置されている窪み20は、第4円弧に配置されている窪み22に連続する。この構成により、任意の形状とした剛性ビード6の経路に窪み18,20,22を配置することが可能となる。図3又は図5に示すとおり、この場合の窪み18,20,22は、剛性ビード6の経路に沿って同心的な平行線上に配置される。
【0059】
図7A〜図7Cは、剛性ビード6及び側面8,10を備える本発明に係るガスケット(シリンダヘッド用ガスケット)の一部をそれぞれ異なる実施形態として平面図で示している。図7Aにおいては、剛性ビード6の裏側にビード部分として形成された窪み20からなる列14が配置され、剛性ビード6に対して平行に延在している。図示の実施形態におけるビードは、窪み列が設けられていない剛性ビードより耐荷重性が向上されている。これは、窪み20による列14が剛性ビード6を僅かに支持するからである。
【0060】
図7Bにおいては、剛性ビード6の裏側にビード部分として形成された窪み18,22からなる2列12,16が配置され、剛性ビード6に対して平行に延在している。図示の実施形態においては、図7Aに示す実施形態に比べ、ビードの耐荷重性が更に向上されている。これは、図示の実施形態におけるビードが窪み18,20からなる2列12,16により、図7Aの剛性ビードに比べ、より強固に支持されるからである。
【0061】
図7Cにおいては、剛性ビード6の裏側にビード部分として形成された窪み18,20,22からなる3列12,14,16が配置され、剛性ビード6に対して平行に延在している。図示の実施形態においては、図7A及び図7Bに示す実施形態に比べ、ビードの耐荷重性が更に向上されている。これは、図示の実施形態におけるビードが窪み18,20,22からなる3列12,14及び16により、図7A及び7Bの実施形態に比べ、遥かに強固に支持されるからである。図示の実施形態におけるビード部分は、互いに平行、かつ整列させた状態で配置される。
【0062】
図8A〜図8Dは、剛性ビード6及び側面8,10を備える本発明に係るシリンダヘッド用ガスケットの一部をそれぞれ異なる実施形態として平面図で示している。
【0063】
図8Bにおいては、剛性ビード6の裏側に三角形状として形成された窪み100からなる2列12,16が配置され、剛性ビード6に対して平行に延在している。外列16における三角形状窪み100の先端は内側を、また内列12における三角形状窪みの先端は外側を志向している。非細長形状とした窪み100は平行な2列を形成し、これら列は互いに密接しているため、単一の窪み列とみなすこともできる。
【0064】
図8Bは、図8Aにほぼ対応するものであるが、窪みが三角形状ではなくY字状ビード102として形成されている点で異なっている。各Y字状ビード102の交点だけに着目すれば、非細長形状とし、かつ互いに位置をずらせて配置された窪み100からなる2列に映る。しかしながら、Y字状ビード102からなる各列の外側及び内側端部のみに着目すれば、これら端部の大部分が互いに重複しており、Y字状ビード102からなる列を1つとして捉えることもできる。
【0065】
図8Cの実施形態は、図8A及び図8Bの実施形態にほぼ対応している。三角形状窪み100及びY字状ビード102とは異なり、図示の実施形態における窪みは五角形状104として形成されている。非細長形状とした五角形状104の各先端は、交互に内側又は外側を志向している。五角形状窪み104からなる2列12,16は、互いに対して明確に分離されている。それぞれの五角形状窪み104は、他方の列において対応する窪みに対して整列して配置されている。不均等に形成された五角形状窪みを配置することにより、より均等に剛性ビードに窪みを設けることもできる。
【0066】
図8Dは、異なる形状とした窪みの集合を示し、これら窪みにより窪み列を構成することができる。内列12及び外列16は順次に五角形状窪み104、六角形状窪み106、矩形窪み108、正方形窪み110、台形窪み112及び菱形窪み114を含んでいる。更に、列12、16は、八角形状窪み116、円形窪み又はスポットビード状118、十字ビード120、三角形状窪み100、環状窪み又は環状ビード121及び半月窪み又は半月ビード124を含んでいる。列12,16は、図示の実施形態においても互いに分離されている。それぞれの窪み列は、上述したタイプの窪みのうち1つだけで形成することもできる。例えば、窪みからなる内列を環状窪み又は環状ビード121で、また窪みからなる外列をスポットビード状118で形成することが可能である。更に、図示のとおり、1個の列内に異なる大きさ及び形状の窪みを形成し、例えば、スポットビード状から八角窪みに移行後、環状ビード121が後続する配列とすることもできる。
【0067】
図9A及び図9Bは、それぞれ本発明に係る平形ガスケットにおける2つの異なる実施形態の一部を示している。
【0068】
図9A及び図9Bは、それぞれ剛性ビード6及び側面8,10を備える本発明に係る平形ガスケット(シリンダヘッド用ガスケット)の一部を平面図で示している。図示の領域における剛性ビード6は、例えば、多気筒エンジンにおける燃焼室開口の間に配置されるシリンダヘッド用ガスケットに求められる幅より狭く形成されている。剛性ビードは狭幅領域を備え、該狭幅領域においては外側面10が円形軌道上から内側面8方向に逸脱している。内側面は、燃焼室開口周縁4に対してほぼ平行に燃焼室凸部42周りに延在している。内列の窪みはビード部分として形成され、剛性ビード6の内側面8に対して平行に延在している。窪みからなる外列の大部分は剛性ビード6の外側面10に対して平行に延在するが、狭幅領域に終端し、断絶している。
【0069】
図9Aにおいて、内列及び外列における窪みはビード部分として形成されている。いずれの列においても、幅広窪み300及び幅狭窪み302が交互に配置され、各列の窪みは互いに対して平行に延在し、かつ整列した状態とされている。
【0070】
図9Bにおいて、内列及び外列における窪みはビード部分として形成されている。内列は幅広窪み300のみを、また外列は幅狭窪み302のみを含んでいる。図9Bにおいても、内外列の窪みは互いに対して平行に配置されている。すなわち、それぞれの窪みは互いに対して整列された状態にあり、シリンダ中心点に見て重複している。
【0071】
上述した構成とすることにより、剛性ビードに対する支持を選択的に調整することが可能になる。特に、窪みにおける高さ又は深さと共に、幅又は長さに変化を持たせることで、望ましい支持を得るものとする。
【0072】
図10A及び図10Bは、側面を有する剛性ビード6備える本発明に係る平形ガスケット(シリンダヘッド用ガスケット)の一部を示している。これら実施形態においては、付加的に設ける少なくとも1つの窪み列が、剛性ビードの側面間以外の箇所に配置されている。
【0073】
図10Aに示すガスケットは、図7Cに示すガスケットにほぼ対応するものであり、窪み18,22からなる2列10,16により支持される剛性ビードを備える。更に、図示の実施形態においては、窪み202からなる列200が配置されているが、列200は逆向きとされている。したがって、剛性ビードは,その背面ではなく底面において支持され、上向きに変位可能とされている。窪み18,22は、ガスケットを支持するため、剛性ビードが形成されているガスケット層とは逆向きに配置される。窪み202は、ガスケットを支持するため、剛性ビードが形成されているガスケット層とは逆向きに配置されるだけでなく、剛性ビード6と同じ向きに形成又は配置されるため、剛性ビード6における側面10の底部が逆方向に付加的に支持される。
【0074】
図10Bは、図10Aにおけるガスケットの一部をより広範囲にし、「外部ストッパ」が見える状態で示すものである。図示の実施形態においては、窪み202からなる更なる列200が、剛性ビード6の側面間以外のガスケット上に配置されている。領域204においては、複数の窪み202が、互いにほぼ平行に延在する複数本のライン200上に隣接して配置されている。領域204はハーフビードで包囲し、例えば2個のボルト孔210間に延在させることができる。図示のとおり、隣接するライン上の窪みは、互いに平行又は整列させて配置するだけでなく、互いに位置をずらせた状態で配置することもできる。これにより、個々の窪みを、原則的に任意の形状とすることができる金属平形ガスケット層の一面にわたって配置することが可能になる。更に、窪み202からなる列200を曲線に沿って配置することもできる。
【0075】
図2〜6に示すガスケットは、ツールを用いて製造することができ、このツールの大部分は旋盤加工により製造可能である。
【0076】
更に、図2〜図10Bの実施形態における個別的な特徴の組み合わせも、本明細書の開示内容に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性ビードと、少なくとも1つの金属層(2)とを備える金属平形ガスケットであって、
該金属ガスケットは、該金属ガスケットにおける少なくとも1つの金属層(2)に形成された少なくとも1つの剛性ビード(6)を備え、該剛性ビード(6)は互いに対向する2つの側面(8,10)を含み、更に前記ガスケットは、前記剛性ビード(6)の周方向において前記2つの側面(8,10)間に、互いに隣接するビード部分又は窪み(18,20,22)からなる少なくとも1列(12,14,16)を備え、該列は、前記剛性ビード(6)と共に連続的な輪郭を形成し、且つ前記剛性ビード(6)とは逆向きに配置されている金属平形ガスケット。
【請求項2】
請求項1記載の金属平形ガスケットにおいて、該ガスケットが、互いに隣接して平行に延在する、前記窪み(18,20,22)からなる2列(12,14,16)を備える金属平形ガスケット。
【請求項3】
請求項2記載の金属平形ガスケットにおいて、前記列(14)を形成する窪み(20)が、隣接する列(12,16)における窪み(18,22)に対して位置をずらせて配置されている金属平形ガスケット。
【請求項4】
請求項2記載の金属平形ガスケットにおいて、前記列(14)を形成する窪み(20)が、隣接する列(12,16)における窪み(18,22)に対して平行に、且つ整列して配置されている金属平形ガスケット。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項記載の金属平形ガスケットにおいて、前記剛性ビード(6)及び前記窪み(18,20,22)の列(12,14,16)が、少なくとも部分的に円弧上に延在している金属平形ガスケット。
【請求項6】
請求項5記載の金属平形ガスケットにおいて、前記円弧上に配置される前記窪み(18,20,22)が、ほぼ2°〜4°の中心角に対応する長さを有する金属平形ガスケット。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項記載の金属平形ガスケットにおいて、前記窪み(18,20,22)の高さ及び/又は幅が、前記窪み(18,20,22)の列に沿って変化している金属平形ガスケット。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項記載の金属平形ガスケットにおいて、前記窪み(18,20,22)が波形断面を有する金属平形ガスケット。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項記載の金属平形ガスケットにおいて、前記窪み(18,20,22)における側面領域の厚さが、前記金属層の層厚に比べて漸減している金属平形ガスケット。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項記載の金属平形ガスケットにおいて、前記窪み(18,20,22)が台形断面を有する金属平形ガスケット。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項記載の金属平形ガスケットにおいて、該ガスケットが、少なくとも1つの流通開口、例えば燃焼室開口を更に備え、該開口が、前記剛性ビード(6)及び前記窪み(18,20,22)の少なくとも1列により包囲されている金属平形ガスケット。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項記載の金属平形ガスケットにおいて、該ガスケットが、前記剛性ビードの前記側面間以外の箇所に配置される窪み(200,202)からなる少なくとも1列を更に備える金属平形ガスケット。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか一項記載の金属平形ガスケットにおいて、前記窪みが、スポットビード状、Y字状、X字状、V字状、十字状、星形状、三角形状、四角形状、五角形状又は六角形状に形成されている金属平形ガスケット。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか一項記載の金属平形ガスケットにおいて、該金属平形ガスケットが、シリンダヘッド用ガスケットである金属平形ガスケット。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか一項記載の、剛性ビードを備える金属平形ガスケットを製造するためのプレス/エンボス加工用ツール。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【公表番号】特表2012−530888(P2012−530888A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516764(P2012−516764)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059074
【国際公開番号】WO2010/149774
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(595157503)フェデラル−モーグル シーリング システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (21)
【氏名又は名称原語表記】Federal−Mogul Sealing Systems GmbH
【Fターム(参考)】