説明

剥離装置及びこれを用いた画像形成装置

【課題】感光体ドラムに当接する剥離部材の先端部が浮き上がることを防止して、剥離部材による安定した剥離性能を確保するとともに、感光体ドラムの表面の磨耗を抑制することにより剥離部材及び感光体ドラムの長寿命化を実現できる剥離装置及びこれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】剥離部と感光体ドラム3とが接触する接触点P1において、剥離装置30の剥離部は、感光体ドラム3の外周面から生じる反力を受ける。剥離装置制御部は、剥離部が磨耗し、感光体ドラム3の外周面から生じる反力の増加するに従って、剥離装置30の回動支点における、反力の回転モーメントMを減少させるように前記剥離部材駆動手段を制御して回動支点を変位させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離装置及びこれを用いた画像形成装置に係り、特に、感光体ドラムの外周部に貼付いたシート状部材を剥離部材により剥離する剥離装置及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いたファクシミリやプリンタ等の画像形成装置では、回転駆動される感光体ドラムを帯電器により帯電し、前記感光体ドラムに画像情報に応じた光照射により静電潜像を形成し、現像装置によりこの静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成し、このトナー像をシート材、用紙などの記録媒体に転写して画像を出力するようにされている。
【0003】
このような画像形成装置においては、感光体ドラムに形成されたトナー像を記録媒体に転写した後に、記録媒体が感光体ドラムに静電的に貼付いたままになることを防止するために、剥離部材を感光体ドラムに摺接させて感光体ドラムから記録媒体を強制的に剥離する剥離装置を搭載するものが知られている。
【0004】
以下に、従来の剥離装置の一例について図面を参照して説明する。
図8(a)は従来の剥離装置の用紙剥離爪が磨耗した時の感光体ドラムとの当接状態を示す説明図である。また、図8(b)は、図8(a)に記載されているH部の詳細図である。
【0005】
剥離装置に係る従来技術として、例えば、画像形成装置において、図8(a)に示すように、感光体ドラム3から用紙(記録媒体)を強制剥離させるために、先細りのクサビ形状の用紙剥離爪(剥離部材)131を感光体ドラム3に一定の荷重で当接させ、感光体ドラム103の表面に吸着した用紙を機械的に剥離するようにした剥離装置が設けられている。
【0006】
この用紙剥離爪131は、図8(a)に示すように、回動支点となる支軸132によって自在に保持されており、用紙剥離爪131の先端131aが感光体ドラム103に対して感光体ドラム103へのダメージを考慮して1g程度の弱い荷重にて当接するよう図示しないばね部材により矢印SP方向に付勢されている。
【0007】
感光体ドラム3は、用紙剥離爪131が当接した状態で回転するため、感光体ドラム3の回転時間(通紙枚数)の増加に伴い、図8(a)、(b)に示すように、用紙剥離爪131の先端131aの当接部131bが磨耗していく。この磨耗の進行が早いと用紙剥離爪131の寿命を短く設定しなければならず、メンテナンスサイクルを伸ばすことができない。
【0008】
また、用紙剥離爪131の磨耗を抑えるために、用紙剥離爪131に耐摩耗性の非常に高い材料を使用すると、感光体ドラム3に傷等のダメージを与えてしまい、感光体ドラム103の寿命が短くなってしまうという問題が生じる。
【0009】
さらに、用紙剥離爪131の先端131aが磨耗すると、感光体ドラム103のわずかな偏心により、感光体ドラム3の回転により用紙剥離爪131の先端131aが感光体ドラム103から浮き上がってしまうため、本来の用紙剥離性能が低下するという問題が生じる。すなわち、用紙剥離爪131により感光体ドラム103から用紙が剥離されなかった場合には、装置内で紙詰まりを起こしてしまう。
【0010】
そこで、特許文献1では、画像形成装置に搭載される剥離装置において、感光体ドラムに当接させる爪状剥離部材の構成として、感光体ドラムと対向する面の形状を、感光体ドラムの表面に残留したトナーを塞き止めることなく通過可能に形成したものが提案されている。このように構成することで、爪状剥離部材の先端部分が部分的に磨耗することにより感光体ドラムの表面が損傷することを防止する構成を備える剥離装置が提案されている。
【0011】
また、特許文献2では、感光体ドラムの回転時の振れにより感光体ドラムに当接する剥離部材の先端部が浮き上がることを防止して、剥離部材による安定した剥離性能を確保し、感光体ドラムと剥離部材の間の異物噛み込みを抑制し、感光体の表面の磨耗を抑制するために、剥離部材の回動支点を感光体ドラムの半径方向で感光体から離間するように変位させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−219035号公報
【特許文献2】特開2009−265292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に示される構成では、爪状剥離部材を回転可能に支持する回転軸の位置が固定されているため、爪状剥離部材の先端部の磨耗により、爪状剥離部材と感光体ドラムとの接触面積が拡大していき、感光体ドラムの振れによる影響で爪状剥離部材の先端部(接触面の端部)が浮き上がって剥離不良の原因となるという問題が生じる。さらに、爪状剥離部材と感光体ドラムとの接触面積の拡大にともない、爪状剥離部材と感光体ドラムの間の異物を噛み込む虞があり、その異物噛み込みにより感光体ドラムの磨耗が生じるという問題が生じる。
【0014】
また、特許文献2に示される構成では、長期間に亘る安定した剥離性能の確保、剥離部材及び感光体ドラムの長寿命化は達成されるものの、剥離爪の回動支点を変位するための機構等が必要となり、剥離部材周辺の構造が大型化/複雑化するために生じる、剥離部材が感光体ドラムから受ける反力の影響、剥離部材に発生する回転モーメントについては考慮がなされておらず、感光体ドラムに当接する剥離部材の先端部が浮き上がるという課題がある。
【0015】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、感光体ドラムに当接する剥離部材の先端部が浮き上がることを防止して、剥離部材による安定した剥離性能を確保するとともに、感光体ドラムの表面の磨耗を抑制することにより剥離部材及び感光体ドラムの長寿命化を実現できる剥離装置及びこれを用いた画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するために本発明に係る剥離装置の各構成は、次の通りである。
【0017】
本発明の剥離装置は、感光体ドラムの外周面に沿って搬送されるシート部材に当接して前記シート部材を前記感光体ドラムから剥離する剥離部材と、前記剥離部材を前記感光体ドラムに当接離間させ、前記剥離部材の回動支点を変位させる剥離部材駆動手段とを備え、前記感光体ドラムの外周面に貼付いたシート部材を剥離する剥離装置において、前記剥離部材は、前記感光体ドラムの外周面に当接する先細りクサビ形状の先端部を備え、前記先端部が前記感光体ドラムの軸線に対して平行な線上に配置される前記回動支点を中心に回動可能に軸支されるとともに、前記剥離部材駆動手段は、前記先端部と前記感光体ドラムとが接触する接触点における、前記感光体ドラムの外周面から生じる反力の増加に従って、前記剥離部材の回動支点における前記反力の回転モーメントを減少させるように前記回動支点を変位することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の剥離装置の前記剥離部材駆動手段は、前記接触点における接線に対して外側から内側に向かう方向に前記剥離部材の回動支点を変位させることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の剥離装置の前記剥離部材駆動手段は、前記剥離部材の先端部の磨耗量が増加するに従って、前記剥離部材の回動支点を変位させることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の剥離装置の前記剥離部材駆動手段は、前記感光体ドラムの回転軸線と転写ローラ回転軸線とがなす平面に沿った方向に前記剥離部材の回動支点を変位させることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の剥離装置の前記剥離部材駆動手段は、前記接触点における接線を基準にして形成される傾斜角度を増加する方向に、前記剥離部材の回動支点を変位させることを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明の画像形成装置は、トナー像が形成される感光体ドラムと、シート部材を前記感光体ドラムに沿って搬送しながら前記感光体ドラムに形成されたトナー像を転写する転写手段と、前記転写手段による転写工程時に前記感光体ドラムに貼付いたシート部材を剥離する剥離装置を備えて、前記感光体ドラムの表面に形成されたトナー像をシート部材上に転写して画像出力を行う画像形成装置において、剥離装置として、前記剥離装置を用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、感光体ドラムの外周面に沿って搬送されるシート部材に当接して前記シート部材を前記感光体ドラムから剥離する剥離部材と、前記剥離部材を前記感光体ドラムに当接離間させ、前記剥離部材の回動支点を変位させる剥離部材駆動手段とを備え、前記感光体ドラムの外周面に貼付いたシート部材を剥離する剥離装置において、前記剥離部材は、前記感光体ドラムの外周面に当接する先細りクサビ形状の先端部を備え、前記先端部が前記感光体ドラムの軸線に対して平行な線上に配置される前記回動支点を中心に回動可能に軸支されるとともに、前記剥離部材駆動手段は、前記先端部と前記感光体ドラムとが接触する接触点における、前記感光体ドラムの外周面から生じる反力の増加に従って、前記剥離部材の回動支点における前記反力の回転モーメントを減少させるように前記回動支点を変位することで、感光体ドラムに当接する剥離部材の先端部が浮き上がることを防止して、剥離部材による安定した剥離性能を確保するとともに、感光体ドラムの表面の磨耗を抑制することにより剥離部材及び感光体ドラムの長寿命化を実現できるという優れた効果を奏し得る。
【0024】
本発明によれば、剥離装置の前記剥離部材駆動手段は、前記接触点における接線に対して外側から内側に向かう方向に前記剥離部材の回動支点を変位させることで、剥離部材に発生する回転モーメントを減少することができ、剥離部材及び感光体ドラムの表面の磨耗を抑制することができるため、剥離部材及び感光体ドラムの部品寿命を延ばすことができるという優れた効果を奏し得る。
【0025】
本発明によれば、剥離装置の前記剥離部材駆動手段は、前記剥離部材の先端部の磨耗量が増加するに従って、前記剥離部材の回動支点を変位させることで、剥離部材による安定した剥離性能を確保することができ、剥離部材及び感光体ドラムの表面の磨耗を抑制することができるため、剥離部材及び感光体ドラムの部品寿命を延ばすことができるという優れた効果を奏し得る。
【0026】
本発明によれば、剥離装置の前記剥離部材駆動手段は、前記感光体ドラムの回転軸線と転写ローラ回転軸線とがなす平面に沿った方向、又は前記接触点における接線を基準にして形成される傾斜角度を増加する方向に、前記剥離部材の回動支点を変位させることで、剥離部材による安定した剥離性能を確保することができ、剥離部材及び感光体ドラムの表面の磨耗を抑制することができるため、剥離部材及び感光体ドラムの部品寿命を延ばすことができるという優れた効果を奏し得る。
【0027】
本発明によれば、画像形成装置は、トナー像が形成される感光体ドラムと、シート部材を前記感光体ドラムに沿って搬送しながら前記感光体ドラムに形成されたトナー像を転写する転写手段と、前記転写手段による転写工程時に前記感光体ドラムに貼付いたシート部材を剥離する剥離装置を備えて、前記感光体ドラムの表面に形成されたトナー像をシート部材上に転写して画像出力を行う画像形成装置において、剥離装置として、前記剥離装置を用いることで、感光体ドラムに当接する剥離部材の先端部が浮き上がることを防止して、剥離部材による安定した剥離性能を確保するとともに、感光体ドラムの表面の磨耗を抑制することにより剥離部材及び感光体ドラムの長寿命化を実現できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係る剥離装置を備えた画像形成装置の全体の構成を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る剥離装置を備えた画像形成装置の装置本体の構成を示す部分詳細図である。
【図3】(a)は、本実施形態に係る剥離装置の剥離爪の構成を示す概略図である。(b)は、本実施形態に係る剥離装置の構成を示す概略図である。
【図4】本実施形態に係る剥離装置のブロック図である。
【図5】本実施形態に係る剥離装置が感光体ドラムに当接している状態を示す概略図である。
【図6】本実施形態に係る剥離装置の回動支点の変位を示す説明図である。
【図7】本実施形態に係る剥離装置の回動支点の変位を示す説明図である。
【図8】(a)は、従来の剥離装置の用紙剥離爪が磨耗した時の感光体ドラムとの当接状態を示す説明図である。(b)は、図9(a)のH部の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る剥離装置を備えた画像形成装置の全体の構成を示す説明図、図2は前記画像形成装置の装置本体の構成を示す部分詳細図である。
【0030】
本実施形態は、図1に示すように、トナー像が形成される感光体ドラム(像担持体)3と、シート状の記録用紙(記録媒体)を感光体ドラム3に沿って搬送しながら感光体ドラム3に形成されたトナー像を転写する転写機構(転写手段)10と、転写機構10による転写工程時に感光体ドラム3に貼付いた記録用紙を剥離する剥離装置30を備えて、感光体ドラム3の表面に形成されたトナー像を記録用紙上に転写して画像出力を行う画像形成装置1Aにおいて、剥離装置30として、本発明に係る剥離装置の構成を備えたことを特徴とするものである。
【0031】
まず、本実施形態に係る画像形成装置1Aの全体構成について図面を参照して説明する。
【0032】
画像形成装置1Aは、外部から伝達された画像データを電子写真方式によって、記録媒体となる所定のシート状の記録用紙(以下、用紙と称する。)にモノクロ画像として出力形成するものである。
【0033】
画像形成装置1Aは、図1,2に示すように、主に、露光ユニット(露光手段)1、現像器(現像手段)2、感光体ドラム(像担持体)3、帯電器(帯電手段)4、クリーナユニット5、定着ユニット6、用紙搬送路7、給紙トレイ8、排紙トレイ9及び転写機構10等より構成される装置本体1A1と、自動原稿処理装置1A2とにより構成されている。
【0034】
装置本体1A1の上面部には、原稿が載置される透明ガラスからなる原稿載置台21が設けられ、この原稿載置台21の上方には、自動原稿処理装置1A2が上方に向かい揺動開放自在に設けられ、一方、この原稿載置台21の下方には、原稿の画像情報を読み取る原稿読み取り部であるスキャナ部22が配置されている。
【0035】
そのスキャナ部22の下方には、露光ユニット1、現像器2、感光体ドラム3、帯電器4、クリーナユニット5、定着ユニット6、用紙搬送路7、排紙トレイ9及び転写機構10が配設され、さらに、その下方には、用紙が収納された給紙トレイ8が配設されている。
【0036】
露光ユニット1は、図示しない画像処理部から出力された画像データ(印字用画像情報)に応じてレーザ光を、帯電器4によって均一に帯電された感光体ドラム3の表面に照射して露光することにより、該感光体ドラム3の表面に画像データに応じた静電潜像を書込み形成する機能を有するものである。
【0037】
露光ユニット1は、スキャナ部22の直下で且つ感光体ドラム3上方に配置され、レーザ照射部91および反射ミラー12を備えたレーザスキャニングユニット(LSU)13a,13bが採用されている。本実施形態では、高速印字処理を行う為に、複数のレーザ光を利用し、照射タイミングの高速化を低減する手法を採用し、2ビーム手法を採用している。
【0038】
尚、本実施形態では、露光ユニット1にレーザスキャニングユニット(LSU)13a,13bを用いているが、発光素子をアレイ状に並べたもの、例えばELやLED書込みヘッドを用いるものであっても良い。
【0039】
感光体ドラム3は、図2に示すように、円筒状を呈し、露光ユニット1の下方に配設され、図示しない駆動手段と制御手段により所定方向(図中の矢印A方向)に回転するように制御されている。この感光体ドラム3の外周面に沿って、画像転写終了後の位置を基準として感光体ドラム回転方向下流側に向かい、用紙剥離爪(剥離部材)31を備えた剥離装置30、クリーナユニット5、電界発生部としての帯電器4、現像器2の順に配置されている。
【0040】
現像器2は、感光体ドラム3上に形成された静電潜像を黒トナーで顕像化するものであって、感光体ドラム回転方向(図中の矢印A方向)で帯電器4より下流側で感光体ドラム3の側方で略水平(図中で右側)に配置されている。この現像器2下方には記録媒体搬送方向上流側にレジストローラ15が配置されている。
【0041】
レジストローラ15は、給紙トレイ8から供給された用紙の先端と感光体ドラム3上のトナー像とを整合して感光体ドラム3と転写ベルト103との間に搬送するように、図示しない駆動手段と制御手段とにより動作制御されている。
【0042】
帯電器4は、感光体ドラム3の表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段であって、感光体ドラム3の上方でその外周面に近接して配置されている。
尚、本実施形態では、チャージャー型の帯電器4を用いているが、接触型のローラ方式によるものやブラシ方式によるものを用いるものであっても良い。
【0043】
クリーナユニット5は、現像・画像転写後における感光体ドラム3上の表面に残留したトナーを除去・回収するものであって、感光体ドラム3を挟んで現像器2と略対向する位置で感光体ドラム3の側方で略水平(図中で左側)に配置されている。
【0044】
上述した様に、感光体ドラム3上で顕像化された静電像は、静電像が有する電荷の逆極性の電界が搬送される用紙上に転写機構10から印加されることで用紙上に転写される。
例えば、静電像が(−)極性の電荷を有している時は、転写機構10の印加極性は(+)極性となる。
【0045】
転写機構10は、図2に示すように、駆動ローラ101、従動ローラ102及び他のローラで架橋されるとともに、所定の抵抗値(本実施形態では1×10〜1×1013Ω・cmの範囲)を有する転写ベルト103が配置された転写ベルト式ユニットで構成され、感光体ドラム3の下方で、転写ベルト103の表面が感光体ドラム3の外周面の一部と接触するように配置されている。この転写ベルト103により、用紙を感光体ドラム3に押圧しながら搬送するようになっている。
【0046】
感光体ドラム3と転写ベルト103の接触部104には、駆動ローラ101及び従動ローラ102とは異なる導電性で転写電界を印加可能な弾性導電性ローラ105が配置されている。
【0047】
弾性導電性ローラ105は、弾性ゴム、発泡性樹脂等の軟質材料により構成されている。この弾性導電性ローラ105が弾性を有することで、感光体ドラム3と転写ベルト103とが線接触でなく、所定の幅(転写ニップと呼ばれる。)を有する面接触となるので搬送される用紙への転写効率の向上を図ることができる。
【0048】
更に、転写ベルト103の転写領域の用紙搬送方向下流側には、搬送される用紙が転写領域で印加された電界を除電し、次工程への搬送をスムーズに行う為の除電ローラ106が転写ベルト103の背面側に配置されている。
【0049】
また、転写機構10には、転写ベルト103の残留トナーによる汚れを取るクリーニングユニット107と、転写ベルト103の除電を行う複数の除電機構108が配置されている。この除電機構108に用いられる除電を行うための手法として、装置を介して接地する手法、若しくは積極的に前記転写電界の極性とは逆極性を印加する手法がある。
【0050】
転写機構10で用紙上に転写された静電像(未定着トナー)は、定着ユニット6に搬送されて加圧・加熱されることで未定着トナーが溶融され用紙上に定着される。
【0051】
定着ユニット6は、図2に示すように、加熱ローラ6a、加圧ローラ6bとを備え、この加熱ローラ6aと加圧ローラ6bとにより用紙を挟持した状態で加熱ローラ6aを回転させ、加熱ローラ6aと加圧ローラ6bとの間を通過させることにより、用紙上に転写されたトナー像を溶融して定着させるものである。
【0052】
定着ユニット6の用紙搬送方向下流側には、用紙を搬送する搬送ローラ16が設けられている。
【0053】
加熱ローラ6aは、その外周部には用紙剥離爪611、ローラ表面温度検出部材(サーミスター)612、ローラ表面クリーニング部材613が配置され、内周部には加熱ローラ表面を所定温度(定着設定温度:概ね160〜200℃)とする熱源614が設けられている。
【0054】
加圧ローラ6bは、ローラの両端部で加熱ローラ6aに対し所定圧量で加圧ローラ6bが圧接することが可能な加圧部材621が配置され、さらに、加圧ローラ6bの外周には加熱ローラ6aの外周と同様に用紙剥離爪622、ローラ表面クリーニング部材623が配置されている。
【0055】
この定着ユニット6は、図2に示すように、加熱ローラ6aと加圧ローラ6bとの圧接部(いわゆる定着ニップ部と呼ばれる。)600において、搬送される用紙上の未定着トナーを加熱ローラ6aにより加熱して溶融し、該加熱ローラ6aと加圧ローラ6bとの圧接力による用紙上への投鋲作用で、未定着トナーを用紙上に定着するようになっている。
【0056】
給紙トレイ8は、画像情報が出力(印字)されるシート(用紙)を複数枚蓄積しておくためのものであり、露光ユニット1、現像器2、感光体ドラム3、帯電器4、クリーナユニット5、定着ユニット6等で構成される画像形成部14の下側に構成されている。この給紙トレイ8の排紙側上部には、半月状の用紙ピックアップローラ(図示省略)が配置されている。
【0057】
この用紙ピックアップローラは、給紙トレイ8内に積載収容された用紙を最上層から1枚ずつピックアップし、下流側に向かって(便宜上の用紙の流れ出し側(カセット側)を上流、排紙側を下流とする。)用紙搬送路7上のレジストローラ(「アイドルローラ」とも称する。)15側に搬送するようになっている。
【0058】
尚、本実施形態に係る画像形成装置1Aでは、高速印字処理を行うことを目的とする為、画像形成部14の下方に定型サイズの用紙を各々のトレイに500〜1500枚収納可能な複数の給紙トレイ8が配置され、一方、装置側面には複数の用紙種類を多量に収納可能な大容量給紙カセット81が配置されるとともに、該大容量給紙カセット81の上方に、主に不定型サイズの印字等に対応する手差しトレイ82が設けられている。
【0059】
排紙トレイ9は、手差しトレイ82とは反対側の装置側面に配置されている。また、排紙トレイ9に変わって、排紙用紙の後処理装置(ステープル、パンチ処理等を行う装置)や複数段排紙トレイ等をオプションとして配置することも可能な構成となっている。
【0060】
用紙搬送路7は、前述した感光体ドラム3と給紙トレイ8との間に構成され、給紙トレイ8から供給される用紙を一枚ずつ転写機構10に搬送し、転写機構10において、感光体ドラム3からトナー像が転写された用紙を定着ユニット6に搬送し、定着ユニット6において、未定着トナー像を用紙に定着した後に、指定された処理モードに応じて形成された用紙搬送路や分岐爪によって用紙を搬送するように構成されたものである。
【0061】
次に、画像形成装置1Aの処理モードに対応する用紙搬送工程について図面を参照して説明する。
【0062】
印字要求に合致する用紙Pは、図1に示すように、複数の給紙トレイ8の中から選択され、用紙搬送路7中の搬送ローラによってレジストローラ15まで搬送される。
レジストローラ15に到達して一旦停止した用紙Pは、図2に示すように、用紙Pの先端と前記感光体ドラム3上の画像情報を合致させるタイミングでレジストローラ15が再び回転することで転写機構10に搬送され、用紙P上に感光体ドラム3から未定着トナー像(画像情報)が転写された後、定着ユニット6で用紙P上にトナー像が固着されて排紙トレイ9に排出される。
【0063】
この用紙搬送路7内の搬送経路において、画像形成装置1Aが有する処理モード(コピアモード、プリンタモード、FAXモード)、および印字処理手法(片面印字、両面印字)によって定着ユニット6以降から排紙トレイ9までの搬送方法が異なる。
【0064】
通常、コピアモードでは、ユーザが画像形成装置1Aの近傍で操作を行うことから“フェースアップ排出”と呼ばれる印字面が上側になって排出される手法が多く用いられる。
【0065】
一方、プリンタ、FAX等の各モードでは、ユーザが画像形成装置1Aの近傍にいないことから排出された用紙Pのページ順を揃える“フェースダウン排出”手法が多く用いられている。
【0066】
従って、画像形成装置1Aでは、定着ユニット6を通過した用紙Pを排紙トレイ9に排出するまでの間に、複数の搬送路と複数の分岐爪を経由して、上記目的に合致する用紙排出を行うようになっている。
【0067】
次に、本実施形態に係る剥離装置30について図面を参照して詳細に説明する。
【0068】
本実施形態に係る剥離装置30は、図3(a)に示すように、感光体ドラム3の外周面に沿って搬送される用紙(シート部材)に当接して用紙を感光体ドラム3から剥離する剥離爪(剥離部材)31と、剥離爪31を感光体ドラム3に当接離間させる剥離爪駆動機構(剥離部材駆動手段)32とを備え、感光体ドラム3の外周面に貼り付いた用紙を剥離するように構成されている。
【0069】
剥離爪31は、一端には感光体ドラム3の外周面に当接する剥離部(先端部)31aが形成され、他端には支軸取付け穴(図示せず)が形成されている。後述する支軸33を回動支点として剥離部31aが回動可能に設けられている。剥離部(先端部)31aは、先端に向かうにつれて先細りクサビ形状に形成されている。
【0070】
また、剥離爪31は、図示しないバネ部材(例えば、コイル等の弾力性を付与する部材)により剥離部(先端部)31aが矢印SP方向に付勢されて,感光体ドラム3側へ押付けられるような構成を取る。
【0071】
また、剥離装置30には、剥離爪31の支軸取付け穴(図示せず)を介して支軸33が回動可能に係合されて、剥離部31aと一体的に備えられている。剥離爪31は、支軸33を回動支点として回動する。支軸33の回転方向は、感光体ドラム3の軸線方向に対して垂直方向に行われる。
【0072】
剥離爪駆動機構32は、図3(b)に示すように、剥離爪31の回動支点である支軸33の位置をアーム34によって変位させる。剥離爪駆動機構32とアーム34は図示しないケーブルによって接続されている。尚、剥離爪31の回動支点である支軸33の位置を変位させる手段は、これに限定されず、ソレノイド等を使用してよい。
【0073】
また、支軸33は、剥離爪31の剥離部(先端部)31aが感光体ドラム3の外周面に対して感光体ドラム3の回転方向(図5の矢印R)の上流側に向かって傾斜して当接する位置に配置されている。また、剥離爪31の剥離部31aは、感光体ドラム3の外周面上の接点Pにおいて当接している。
【0074】
本実施形態において、この接触点P1おける接線T1を基準にして、剥離装置30の回動支点である支軸33の位置を表す。以下、接線T1に対して感光体ドラム3に近側を内側と称し、その反対側を外側と称する。
【0075】
図4は、剥離装置30を制御する剥離装置制御部11を示すブロック図である。剥離装置制御部11は、記憶部24及び剥離爪駆動機構(剥離部材駆動手段)32と接続している。
【0076】
剥離装置制御部11は、剥離部材駆動手段を制御し、剥離装置30の回動支点である支軸33の位置を変位させる。詳述すると、図5に示すように、剥離部31aと感光体ドラム3とが接触する接触点P1において、剥離爪31の剥離部31aは、感光体ドラム3の外周面から生じる反力を受ける。そのため、剥離部31aは次第に磨耗する。剥離装置制御部11は、感光体ドラム3の外周面から生じる反力が増加するに従って、剥離装置30の回動支点における、反力の回転モーメントMを減少させるように前記剥離部材駆動手段を制御して回動支点を変位させる。尚、剥離装置制御部11は、後述する磨耗量に基づき、剥離装置30の回動支点である支軸33の位置を変位させても良い。
【0077】
剥離装置制御部11は、剥離部31aと感光体ドラム3との接触時間(感光体ドラム3の回転時間)をカウントして、剥離部31aの磨耗量を算出する。尚、磨耗量の算出は、これに限定されず、感光体ドラム3を通紙する通紙枚数に換算して算出するとしても良い。
【0078】
記憶部24は、剥離装置制御部11が算出した磨耗量を記憶する。剥離装置制御部11は、記憶部24に記憶された磨耗量を剥離装置30の回動支点である支軸33の位置を変位させる制御に利用する。
【0079】
次に、剥離装置制御部11による剥離装置30の回動支点である支軸33の位置を変位する方法を説明する。
【0080】
剥離装置30の剥離部31aは、図5に示すように、感光体ドラム3の外周面から生じる反力を受けると、剥離部31aの先端が磨耗し、感光体ドラム3の内側に食込む方向に回転モーメントMが発生する。この回転モーメントMによって、剥離部31a及び感光体ドラム3の表面が磨耗する。
【0081】
剥離爪31の剥離部31aに対して感光体ドラム3の外周面から生じる反力Fが増大し続けると、剥離部31aの磨耗がさらに進行する。そこで、剥離装置制御部11は、図6に示すように、感光体ドラム3の外周面から生じる反力Fの増加するに従って、剥離装置30の回動支点における、反力の回転モーメントMを減少させるように前記剥離部材駆動手段を制御して回動支点を変位させる。この場合、剥離部31aと感光体ドラム3とが接触する接触点P1における接線T1に対して、剥離装置30の回動支点である支軸33の位置を外側から徐々に内側に向かって移動させる。
【0082】
このように、回動支点の位置を接線T1の外側から内側へ移動させることで剥離部31aに発生する回転モーメントMが減少させることができ、剥離爪31の剥離部31a及び感光体ドラム3の磨耗を減少させることができる。
【0083】
次に、前述の回動支点位置の変位方法とは異なる回動支点位置の変位方法について説明する。
【0084】
剥離装置30の回動支点である支軸33の位置の変位は、上記同様に剥離装置制御部11に基づき行われる。前述の回動支点位置の変位方法とは異なる点は、図7に示すように、感光体ドラム3の回転軸線C1と転写ローラ回転軸線C2がなす平面に沿った方向に、剥離装置30の回動支点である支軸33の位置を変位させることにある。
【0085】
剥離爪31の剥離部31aに対して感光体ドラム3の外周面から生じる反力Fが増大すると、剥離部31aの磨耗が進行する。そこで、剥離装置制御部11は、感光体ドラム3の外周面から生じる反力Fの増加するに従って、剥離装置30の回動支点における、反力の回転モーメントMを減少させるように前記剥離部材駆動手段を制御して回動支点を感光体ドラム3の回転軸線C1と転写ローラ回転軸線C2がなす平面に沿った方向に変位させる。
【0086】
回動支点を変位させる場合、剥離部31aと感光体ドラム3とが接触する新たな接触点P2における接線T2に対して、剥離装置30の回動支点である支軸33の位置を外側から内側に位置するように移動させる(矢印D)。図7に示すように、回動支点の変位後、回動支点が接線T2に対して内側に位置している。
【0087】
剥離装置30の回動支点を感光体ドラム3の回転軸線C1と転写ローラ回転軸線C2がなす平面に沿った方向に変位させることで、剥離部31aによる安定した剥離性能を確保するとともに、剥離部31a及び感光体ドラム3の表面の磨耗を抑制することができる。
【0088】
尚、剥離装置30の回動支点を感光体ドラム3の回転軸線C1と転写ローラ回転軸線C2がなす平面に沿った方向に変位させたが、これに限定せず、剥離部材駆動手段32は、接触点P2における接線T2を基準にして形成される傾斜角度を増加する方向に、剥離装置30の回動支点を変位させてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1A 画像形成装置
3 感光体ドラム
11 剥離装置制御部
24 記憶部
30 剥離装置
31 剥離爪
31a 剥離部
32 剥離部材駆動手段
33 支軸
M 回転モーメント
P1、P2 接触点
T1、T2 接線
R 回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムの外周面に沿って搬送されるシート部材に当接して前記シート部材を前記感光体ドラムから剥離する剥離部材と、前記剥離部材を前記感光体ドラムに当接離間させ、前記剥離部材の回動支点を変位させる剥離部材駆動手段とを備え、前記感光体ドラムの外周面に貼付いたシート部材を剥離する剥離装置において、
前記剥離部材は、前記感光体ドラムの外周面に当接する先細りクサビ形状の先端部を備え、前記先端部が前記感光体ドラムの軸線に対して平行な線上に配置される前記回動支点を中心に回動可能に軸支されるとともに、
前記剥離部材駆動手段は、前記先端部と前記感光体ドラムとが接触する接触点における、前記感光体ドラムの外周面から生じる反力の増加に従って、前記剥離部材の回動支点における前記反力の回転モーメントを減少させるように前記回動支点を変位することを特徴とする剥離装置。
【請求項2】
前記剥離部材駆動手段は、前記接触点における接線に対して外側から内側に向かう方向に前記剥離部材の回動支点を変位させることを特徴とする請求項1に記載の剥離装置。
【請求項3】
前記剥離部材駆動手段は、前記剥離部材の先端部の磨耗量が増加するに従って、前記剥離部材の回動支点を変位させることを特徴とする請求項1又は2に記載の剥離装置。
【請求項4】
前記剥離部材駆動手段は、前記感光体ドラムの回転軸線と転写ローラ回転軸線とがなす平面に沿った方向に前記剥離部材の回動支点を変位させることを特徴とする請求項1に記載の剥離装置。
【請求項5】
前記剥離部材駆動手段は、前記接触点における接線を基準にして形成される傾斜角度を増加する方向に、前記剥離部材の回動支点を変位させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の剥離装置。
【請求項6】
トナー像が形成される感光体ドラムと、シート部材を前記感光体ドラムに沿って搬送しながら前記感光体ドラムに形成されたトナー像を転写する転写手段と、前記転写手段による転写工程時に前記感光体ドラムに貼付いたシート部材を剥離する剥離装置を備えて、前記感光体ドラムの表面に形成されたトナー像をシート部材上に転写して画像出力を行う画像形成装置において、
前記剥離装置として、請求項1から5のいずれか1項に記載の剥離装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−220720(P2012−220720A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86298(P2011−86298)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】