説明

副生アルコール類の工業的分離装置

【課題】本発明が解決しようとする課題は、ジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物とを、触媒を存在させた反応蒸留塔内でエステル交換反応に付し、芳香族カーボネートを1時間あたり1トン以上の工業的規模で製造する際に副生するアルコール類を含む大量の低沸点反応混合物から、該アルコール類を効率的に長時間安定的に分離できる具体的な工業的分離装置を提供することにある。
【解決手段】上記の課題を解決する副生アルコールの工業的分離装置として、特定の構造を有する連続多段蒸留塔が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副生アルコール類の工業的分離装置に関する。さらに詳しくは、ジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物とのエステル交換反応によって芳香族カーボネート類を1時間あたり1トン以上の工業的規模で連続的に製造する際に副生するアルコール類を含む低沸点反応混合物からアルコール類を分離するための工業的分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族カーボネートは、最も需要の多いエンジニアリングプラスチックである芳香族ポリカーボネートを、有毒なホスゲンを用いないで製造するための原料として重要である。芳香族カーボネートの製法として、芳香族モノヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応による方法が古くから知られており、最近も種々検討されているが、この方法はホスゲン使用の問題に加え、この方法によって製造された芳香族カーボネートには分離が困難な塩素系不純物が存在しており、高純度が要求される用途、例えば芳香族ポリカーボネートの原料として用いることはできない。
【0003】
一方、ジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物とのエステル交換反応による芳香族カーボネートの製造方法も知られている。しかしながら、これらのエステル交換反応は全て平衡反応であって、しかもその平衡が原系に極端に偏っていることに加えて反応速度が遅いことから、この方法によって芳香族カーボネート類を工業的に大量に製造するのは多大な困難を伴っていた。そのため、触媒の開発に加え、反応方式を工夫することによって平衡をできるだけ生成系側にずらし、芳香族カーボネート類の収率を向上させる試みが数多くなされている。例えば、ジメチルカーボネートとフェノールの反応において、副生してくるメタノールを共沸形成剤とともに共沸によって留去する方法(特許文献1)、副生してくるメタノールをモレキュラーシーブで吸着させて除去する方法(特許文献2)が提案されている。また、反応器の上部に蒸留塔を設けた装置によって、反応で副生してくるアルコール類を反応混合物から分離させながら同時に蒸発してくる未反応原料との蒸留分離を行う方法も提案されている(特許文献3−1〜3−8)。
【0004】
本発明者等はジアルキルカーボネートと芳香族ヒドロキシ化合物を連続的に多段蒸留塔に供給し、触媒を存在させた該塔内で連続的に反応させ、副生するアルコールを含む低沸点成分を蒸留によって連続的に抜き出すと共に、生成したアルキルアリールカーボネートを含む成分を塔下部より抜き出す反応蒸留法(特許文献4)、アルキルアリールカーボネートを連続的に多段蒸留塔に供給し、触媒を存在させた該塔内で連続的に反応させ、副生するジアルキルカーボネートを含む低沸成分を蒸留によって連続的に抜き出すと共に生成したジアリールカーボネートを含む成分を塔下部より抜き出す反応蒸留法(特許文献5)、これらの反応を2基の連続多段蒸留塔を用いて行い、副生するジアルキルカーボネートを効率的にリサイクルさせながらジアリールカーボネートを連続的に製造する反応蒸留法(特許文献6)、ジアルキルカーボネートと芳香族ヒドロキシ化合物等を連続的に多段蒸留塔に供給し、塔内を流下する液を蒸留塔の途中段及び/又は最下段に設けられたサイド抜き出し口より抜き出し、蒸留塔の外部に設けられた反応器へ導入して反応させた後に該抜き出し口のある段よりも上部の段に設けられた循環用導入口へ導入することによって、該反応器内と該蒸留塔内の両方で反応を行う反応蒸留法(特許文献7−1〜7−3)等、これらのエステル交換反応を連続多段蒸留塔内で反応と蒸留分離とを同時に行う方法を開発し、これらのエステル交換反応に対してこの反応蒸留方式が有用であることを世界で初めて開示した。
本発明者等が提案したこれらの反応蒸留法は、芳香族カーボネート類を効率よく、かつ連続的に製造することを可能とする初めてのものであり、その後これらの開示をベースとする同様な反応蒸留方式が数多く提案されるようになった(特許文献8〜11、12−1−〜12−2、13〜18、19−1〜19−3、20〜21、22−1〜22−2、23)。
【0005】
一方、ジメチルカーボネートとフェノールとのエステル交換反応によって副生するメタノール類を含む反応混合物から該アルコール類を分離する方法についてもいくつかの提案がなされている。例えば、液相部が複数の反応区画に分割されており、反応液が各区画を順次経て反応器から流出するようになっている反応器を用いて上記の反応を行い、気相部のガスを抜き出し、これを熱交換させた後、蒸留塔で分離する方法(特許文献27)や、同じ反応器を用いて気相部のガスを抜き出し、これを熱交換させて液化した後、反応器の気相部の圧力よりも高い圧力で蒸留分離する方法(特許文献28)が提案されている。しかしながら、これらの方法の目的は反応器として上述のような連続式撹拌槽を用いて反応させたときのガス成分を、省エネルギー的に分離することであって、しかもこの反応方式によるガス成分の組成は、例えばジメチルカーボネート98.1質量%、メタノール1.4質量%、フェノール、メチルフェニルカーボネート等0.5質量%(特許文献28)であり、反応蒸留方式によって生成する副生アルコール類を含む低沸点反応混合物の組成とは大きく異なっており、反応蒸留方式による低沸点反応混合物からアルコール類を所定の濃度で分離することとは自ずから異なっている。槽型反応器の上部に設置した蒸留塔の塔頂から、メタノールを約10〜74質量%含む液を30g/hr程度で留出させる方法(特許文献29)も提案されている。しかしながらこれらの特許文献は、少量の実験室的規模のものであるか、あるいは、単なる蒸留に必要なエネルギー量の比較計算を行ったものであり、いずれも工業的規模で分離することに関する具体的な記載や示唆が全くない。
【0006】
ジアルキルカーボネートと芳香族ヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を反応蒸留方式で行う場合、副生するアルコール類は通常、反応系内に存在する芳香族カーボネートよりも低沸点の化合物、例えば原料のジアルキルカーボネート及び芳香族ヒドロキシ化合物、副生物のアルキルアリールエーテル等を含む低沸点反応混合物として反応蒸留塔の上部から連続的に抜出されている。このエステル交換反応は平衡定数の非常に小さい平衡反応であることから、副生アルコール類はこの反応を阻害するのでこの低沸点反応混合物からアルコール類の含有量の少ない成分とアルコール類を主とする成分とに効率的に長期間安定的に連続的に分離・回収することが工業的に実施する際には重要となってくる。
【0007】
反応蒸留方式によるジメチルカーボネートとフェノールとのエステル交換反応によって塔上部から抜き出されるメタノール類とジメチルカーボネートを含む低沸点反応混合物を蒸留によって分離する方法についてもいくつかの提案がなされている。それらは、抽出剤としてシュウ酸ジメチルを用いてジメチルカーボネートを抽出しながら塔頂からメタノールを抜き出す抽出蒸留法(特許文献30)、抽出剤としてエチレンカーボネートを用いてジメチルカーボネートを抽出しながら塔頂からメタノールを抜き出す抽出蒸留法(特許文献14)、常圧で蒸留し塔頂からメタノール約70質量%、ジメチルカーボネート約30質量%からなる混合物を得る方法(特許文献19)、塔頂からメタノール64.5質量%、ジメチルカーボネート35.5質量%からなる混合物を得る方法(特許文献20)、塔頂からメタノール60〜40質量%、ジメチルカーボネート40〜60質量%からなる混合物を得る方法(特許文献15)である。
【0008】
しかしながら、抽出蒸留法では大量の抽出剤を使用しなければならず、抽出後、これらの抽出剤とジメチルカーボネートをさらに分離する必要があり、他の方法では、塔頂抜き出し液中のメタノール含有量が80質量%未満と低濃度であり、これをジメチルカーボネート製造原料として用いる場合は好ましくない。また、これらの特許文献に記載されているのは、数100g/hr以下のメタノールの分離回収法であり、最大量を記載している特許文献20でさえ、処理されているメタノールの量は約0.9kg/hrである。
また、これらの特許文献におけるメタノール類の蒸留分離を行っている連続時間は、反応蒸留法ではない反応方式を用いている特許文献29の場合が最長であるが高々720時間である。反応蒸留方式を用いている場合は最長でもわずか2週間(特許文献19)であり、他は10日間(特許文献15)や、定常状態になるまでの時間(特許文献14、30)であり、非常に短いものであって、数1000時間、例えば5000時間もの長期間安定的に蒸留操作を行う工業的な分離方法の開示や示唆を与えるものではない。
このように、反応蒸留法によって芳香族カーボネートを工業的に製造する際に大量に副生するアルコール類を含む低沸点反応混合物から該アルコール類を効率的に長期間安定的に分離する工業的分離装置の具体的な開示や示唆は、これまで全くなされていなかった。
【0009】
【特許文献1】特開昭54−48732号公報(西独特許公開公報第736063号、米国特許第4252737号明細書)
【特許文献2】特開昭58−185536号公報(米国特許第410464号明細書)
【特許文献3−1】特開昭56−123948号公報(米国特許第4182726号明細書)の実施例
【特許文献3−2】特開昭56−25138号公報の実施例
【特許文献3−3】特開昭60−169444号公報(米国特許第4554110号明細書)の実施例
【特許文献3−4】特開昭60−169445号公報(米国特許第4552704号明細書)の実施例
【特許文献3−5】特開昭60−173016号公報(米国特許第4609501号明細書)の実施例
【特許文献3−6】特開昭61−172852号公報の実施例
【特許文献3−7】特開昭61−291545号公報の実施例
【特許文献3−8】特開昭62−277345号公報の実施例
【特許文献4】特開平3−291257号公報
【特許文献5】特開平4−9358号公報
【特許文献6】特開平4−211038号公報
【特許文献7−1】特開平4−224547号公報
【特許文献7−2】特開平4−230242号公報
【特許文献7−3】特開平4−235951号公報
【特許文献8】国際公開第00/18720号公報(米国特許第5362901号明細書)
【特許文献9】イタリア特許第01255746号公報
【特許文献10】特開平6−9506号公報(欧州特許0560159号明細書、米国特許第5282965号明細書)
【特許文献11】特開平6−41022号公報(欧州特許0572870号明細書、米国特許第5362901号明細書)
【特許文献12−1】特開平6−157424号公報(欧州特許0582931号明細書、米国特許第5334742号明細書)
【特許文献12−2】特開平6−184058号公報(欧州特許0582930号明細書、米国特許第5344954号明細書)
【特許文献13】特開平7−304713号公報
【特許文献14】特開平9−40616号公報
【特許文献15】特開平9−59225号公報
【特許文献16】特開平9−110805号公報
【特許文献17】特開平9−165357号公報
【特許文献18】特開平9−173819号公報
【特許文献19−1】特開平9−176094号公報
【特許文献19−2】特開2000−191596号公報
【特許文献19−3】特開2000−191597号公報
【特許文献20】特開平9−194436号公報(欧州特許0785184号明細書、米国特許第5705673号明細書)
【特許文献21】国際公開第00/18720公報(米国特許第6093842号明細書)
【特許文献22−1】特開2001−64234号公報
【特許文献22−2】特開2001−64235号公報
【特許文献23】国際公開第02/40439公報(米国特許第6596894号、米国特許第6596895号、米国特許第6600061号明細書)
【特許文献24】国際公開第97/11049公報(欧州特許0855384号明細書、米国特許第5872275号明細書)
【特許文献25】特開平11−92429号公報(欧州特許1016648号明細書、米国特許第6262210号明細書)
【特許文献26】特開平9−255772号公報(欧州特許0892001号明細書、米国特許第5747609号明細書)
【特許文献27】特開平2003−113144号公報
【特許文献28】特開平2003−155264号公報
【特許文献29】特開平6−157410号公報
【特許文献30】特開平7−101908公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、ジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物とのエステル交換反応によって芳香族カーボネート類を1時間あたり1トン以上の工業的規模で連続的に製造する際に副生するアルコール類を含む低沸点反応混合物からアルコール類を分離するための工業的分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決し、大量に副生するアルコール類を、効率的に長時間安定的に分離できる具体的な工業的分離装置を見出すべき検討を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、
1.ジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物とのエステル交換反応によって芳香族カーボネート類を1時間あたり1トン以上の工業的規模で連続的に製造する際に副生するアルコール類を含む低沸点反応混合物からアルコール類を分離するための装置であって、下記式(1)〜(8)を満足する長さL(cm)、内径D(cm)、内部に段数nをもつインターナルを有する回収部と、長さL(cm)、内径D(cm)、内部に段数nをもつインターナルを有する濃縮部からなる連続多段蒸留塔であることを特徴とする副生アルコール類の工業的分離装置、
500 ≦ L ≦ 3000 式(1)
100 ≦ D ≦ 500 式(2)
2 ≦ L/D ≦ 30 式(3)
10 ≦ n ≦ 40 式(4)
700 ≦ L ≦ 5000 式(5)
50 ≦ D ≦ 400 式(6)
10 ≦ L/D ≦ 50 式(7)
35 ≦ n ≦ 100 式(8)
【0012】
2.該連続多段蒸留塔のL、D、L/D、n、L、D、L/D、nがそれぞれ、800≦L≦2500、 120≦D≦400、 5≦L/D≦20、 13≦n≦25、 1500≦L≦3500、 70≦D≦200、 15≦L/D≦30、 40≦n≦70、 L ≦ L、 D ≦ Dであることを特徴とする前項1記載の副生アルコール類の工業的分離装置、
3.該連続多段蒸留塔の回収部および濃縮部のインターナルが、それぞれトレイおよび/または充填物であることを特徴とする前項1または2に記載の副生アルコール類の工業的分離装置、
4.該連続多段蒸留塔の回収部および濃縮部のインターナルが、それぞれトレイであることを特徴とする前項3記載の副生アルコール類の工業的分離装置、
【0013】
5.該エステル交換反応を反応蒸留方式で行い、該低沸点反応混合物を該アルコール類の濃度が90質量%以上の塔頂成分と該アルコール類の含有量が0.2質量%以下の塔底成分に分離し、且つ、分離されるアルコール類の量が、1時間あたり200kg以上であることを特徴とする前項1〜4のいずれかに記載の副生アルコール類の工業的分離装置、
6.該塔頂成分中の該アルコール類の濃度が95質量%以上であることを特徴とする前項5記載の副生アルコール類の工業的分離装置、
7.該塔頂成分中の該アルコール類の濃度が97質量%以上であることを特徴とする前項5記載の副生アルコール類の工業的分離装置、
8.該塔底成分中の該アルコール類の含有量が0.1質量%以下あることを特徴とする前項5〜7のいずれかに記載の副生アルコール類の工業的分離装置、
を提供することにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の工業的分離装置は、ジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物とのエステル交換反応によって芳香族カーボネート類を1時間あたり1トン以上の工業的規模で連続的に製造する際に副生するアルコール類を含む低沸点反応混合物から、該アルコール類を長期間安定的に効率的に分離することができる。そして分離されるアルコール類の量が、1時間あたり200kg以上の規模で、アルコール類の含有量が90質量%以上の塔頂成分と、アルコール類の含有量が0.2質量%以下の塔底成分とに、容易に分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明で用いられるジアルキルカーボネートとは、一般式(9)で表されるものである。
OCOOR (9)
ここで、R1 は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10の脂環族基、炭素数6〜10のアラールキル基を表す。このようなR1 としては、例えばメチル、エチル、プロピル(各異性体)、アリル、ブチル(各異性体)、ブテニル(各異性体)、ペンチル(各異性体)、ヘキシル(各異性体)、ヘプチル(各異性体)、オクチル(各異性体)、ノニル(各異性体)、デシル(各異性体)、シクロヘキシルメチル等のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等の脂環族基;ベンジル、フェネチル(各異性体)、フェニルプロピル(各異性体)、フェニルブチル(各異性体)、メチルベンジル(各異性体)等のアラールキル基が挙げられる。なお、これらのアルキル基、脂環族基、アラールキル基において、他の置換基、例えば低級アルキル基、低級アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン等で置換されていてもよいし、不飽和結合を有していてもよい。
【0016】
このようなR1 を有するジアルキルカーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート(各異性体)、ジアリルカーボネート、ジブテニルカーボネート(各異性体)、ジブチルカーボネート(各異性体)、ジペンチルカーボネート(各異性体)、ジヘキシルカーボネート(各異性体)、ジヘキシルカーボネート(各異性体)、ジヘプチルカーボネート(各異性体)、ジオクチルカーボネート(各異性体)、ジノニルカーボネート(各異性体)、ジデシルカーボネート(各異性体)、ジシクロペンチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジシクロヘプチルカーボネート、ジベンジルカーボネート、ジフェネチルカーボネート(各異性体)、ジ(フェニルプロピル)カーボネート(各異性体)、ジ(フェニルブチル)カーボネート(各異性体)ジ(クロロベンジル)カーボネート(各異性体)、ジ(メトキシベンジル)カーボネート(各異性体)、ジ(メトキシメチル)カーボネート、ジ(メトキシエチル)カーボネート(各異性体)、ジ(クロロエチル)カーボネート(各異性体)、ジ(シアノエチル)カーボネート(各異性体)等が挙げられる。
【0017】
これらの中で、本発明において好ましく用いられるのは、R1 がハロゲンを含まない炭素数4以下のアルキル基からなるジアルキルカーボネートであり、特に好ましいのはジメチルカーボネートである。また、好ましいジアルキルカーボネートのなかで、さらに好ましいのは、ハロゲンを実質的に含まない状態で製造されたジアルキルカーボネートであって、例えばハロゲンを実質的に含まないアルキレンカーボネートとハロゲンを実質的に含まないアルコールから製造されたものである。
本発明で用いられる芳香族モノヒドロキシ化合物とは、下記一般式(10)で表されるものであり、芳香族基に直接ヒドロキシル基が結合しているものであれば、どの様なものであってもよい。
ArOH (10)
【0018】
ここでAr1 は炭素数5〜30の芳香族基を表す。このようなAr1 を有する芳香族モノヒドロキシ化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール(各異性体)、キシレノール(各異性体)、トリメチルフェノール(各異性体)、テトラメチルフェノール(各異性体)、エチルフェノール(各異性体)、プロピルフェノール(各異性体)、ブチルフェノール(各異性体)、ジエチルフェノール(各異性体)、メチルエチルフェノール(各異性体)、メチルプロピルフェノール(各異性体)、ジプロピルフェノール(各異性体)、メチルブチルフェノール(各異性体)、ペンチルフェノール(各異性体)、ヘキシルフェノール(各異性体)、シクロヘキシルフェノール(各異性体)等の各種アルキルフェノール類;メトキシフェノール(各異性体)、エトキシフェノール(各異性体)等の各種アルコキシフェノール類;フェニルプロピルフェノール(各異性体)等のアリールアルキルフェノール類;ナフトール(各異性体)及び各種置換ナフトール類;ヒドロキシピリジン(各異性体)、ヒドロキシクマリン(各異性体)、ヒドロキシキノリン(各異性体)等のヘテロ芳香族モノヒドロキシ化合物類等が用いられる。これらの芳香族モノヒドロキシ化合物の中で、本発明において好ましく用いられるのは、Ar1 が炭素数6から10の芳香族基からなる芳香族モノヒドロキシ化合物であり、特に好ましいのはフェノールである。また、これらの芳香族モノヒドロキシ化合物の中で、本発明において好ましく用いられるのは、ハロゲンを実質的に含まないものである。
【0019】
本発明のエステル交換反応で、芳香族カーボネートを生成し、アルコール類を副生する反応は、下記式(11、12)で表されるが、本発明においては反応式(11)の反応が主として起こっている。
OCOOR + ArOH → ArOCOOR + ROH (11)
ArOCOOR+ ArOH → ArOCOOAr +ROH (12)
本発明のエステル交換反応で用いられるジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物の量比はモル比で、0.5〜3であることが必要である。この範囲外では、目的とする芳香族カーボネートの所定生産量に対して、残存する未反応の原料が多くなり、効率的でないし、またそれらを回収するために多くのエネルギーを要する。この意味で、このモル比は、0.8〜2.5がより好ましく、さらに好ましいのは、1.0〜2.0である。
【0020】
本発明のエステル交換反応は、1時間あたり1トン以上の生産量で芳香族カーボネートが連続的に製造でき、副生するアルコール類を含む低沸点反応混合物が製造できる方法であればどのような方法でもよいが、特に好ましいのは反応蒸留方式である。
本発明において製造される芳香族カーボネートとは、ジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物とがエステル交換反応によって得られるアルキルアリールカーボネート、ジアリールカーボネート、およびこれらの混合物のことである。このエステル交換反応においては、ジアルキルカーボネートの1つまたは2つのアルコキシ基が芳香族モノヒドロキシ化合物のアリーロキシ基と交換されアルコール類を離脱する反応(式11、12)と、生成したアルキルアリールカーボネート2分子間のエステル交換反応である不均化反応(式13)によってジアリールカーボネートとジアルキルカーボネートに変換される反応が含まれている。
2ArOCOOR → ArOCOOAr + ROCOOR (13)
【0021】
本発明のエステル交換反応では、主としてアルキルアリールカーボネートが得られるが、このアルキルアリールカーボネートをさらに芳香族モノヒドロキシ化合物とエステル交換反応をさせるか、不均化反応(式13)をさせることによって、ジアリールカーボネートとすることができる。このジアリールカーボネートは、ハロゲンを全く含まないため、エステル交換法でポリカーボネートを工業的に製造するときの原料として重要である。
なお、本発明のエステル交換反応では、通常少量のアルキルアリールカーボネートが反応副生物として生成する。
【0022】
本発明のエステル交換反応で原料として用いられるジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物はそれぞれ純度の高いものであってもいいが、他の化合物を含むものであってもよく、例えば、この工程または/および他の工程で生成する化合物や反応副生物を含むものであってもよい。工業的に実施する場合、これらの原料として、新規に反応系に導入されるジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物に加え、この工程または/および他の工程から回収されたものをも使用することが好ましい。本発明の工業的分離装置を使うことによって、反応器の上部から抜き出される低沸点反応混合物を連続的に蒸留分離することによって、アルコール類の含有量の少ない成分をエステル交換反応の原料として再使用することができ、このことは特に好ましい方法である。
【0023】
本発明のエステル交換反応は通常、公知の触媒の存在下に行われる。例えばエステル交換反応を反応蒸留方式で行う場合には、これらの触媒は反応蒸留を行う多段蒸留塔内に固定された固体触媒であってもいいし、反応系に溶解する可溶性触媒であってもよい。もちろん、これらの触媒成分が反応系中に存在する有機化合物、例えば、脂肪族アルコール類、芳香族モノヒドロキシ化合物類、アルキルアリールカーボネート類、ジアリールカーボネート類、ジアルキルカーボネート類等と反応したものであっても良いし、反応に先立って原料や生成物で加熱処理されたものであってもよい。本発明のエステル交換反応を反応系に溶解する可溶性触媒で実施する場合は、これらの触媒は、反応条件において反応液への溶解度の高いものであることが好ましい。この意味で好ましい触媒としては、例えば、PbO、Pb(OH)2 、Pb(OPh)2 ;TiCl4 、Ti(OMe)、(MeO)Ti(OPh)、(MeO)Ti(OPh)、(MeO)Ti(OPh)、Ti(OPh)4 ;SnCl4 、Sn(OPh)4 、Bu2 SnO、Bu2 Sn(OPh)2 ;FeCl3 、Fe(OH)3 、Fe(OPh)3 等、又はこれらをフェノール又は反応液等で処理したもの等が挙げられる。
【0024】
本発明において、エステル交換反応を反応蒸留方式で行う場合に該連続多段蒸留塔内に触媒を存在させる方法はどのようなものであってもよいが、触媒が反応液に不溶解性の固体状の場合は、連続多段蒸留塔A内の段に設置する、充填物状にして設置するなどによって塔内に固定させる方法などがある。また、原料や反応液に溶解する触媒の場合は、該蒸留塔Aの中間部より上部から蒸留塔内に供給することが好ましい。この場合、原料または反応液に溶解させた触媒液を原料と一緒に導入してもよいし、原料とは別の導入口からこの触媒液を導入してもよい。本発明で用いる触媒の量は、使用する触媒の種類、原料の種類やその量比、反応温度並びに反応圧力などの反応条件の違いによっても異なるが、原料の合計重量に対する割合で表して、通常0.0001〜30質量%で使用される。
【0025】
本発明においてエステル交換反応を反応蒸留方式で行う場合には、反応蒸留塔として用いられる連続多段蒸留塔は、芳香族カーボネートを1時間あたり1トン以上の生産量で長期間安定的に製造できるものであればどのようなものであってもよいが、例えば、下記式(14)〜(19)の条件を満足する長さL(cm)、内径D(cm)、内部に段数nをもつインターナルを有する構造をしており、塔頂部またはそれに近い塔の上部に内径d(cm)のガス抜出し口、塔底部またはそれに近い塔の下部に内径d(cm)の液抜出し口、該ガス抜出し口より下部であって塔の上部および/または中間部に1つ以上の導入口、該液抜出し口より上部であって塔の下部に1つ以上の導入口を有するものが特に好ましい。
【0026】
1500 ≦ L ≦ 8000 式(14)
100 ≦ D ≦ 2000 式(15)
2 ≦ L/D ≦ 40 式(16)
20 ≦ n ≦ 120 式(17)
5 ≦ D/d ≦ 30 式(18)
3 ≦ D/d ≦ 20 式(19)
式(14)〜(19)を同時に満足する連続多段蒸留塔Aを反応蒸留塔として用いることによって、ジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物とから1時間あたり1トン以上、通常1〜100トン/hrの工業的規模で、芳香族カーボネート類が高選択率・高生産性で、例えば2000時間以上、好ましくは3000時間以上、さらに好ましくは5000時間以上の長期間、安定的に製造できる。
【0027】
本発明で行われるエステル交換反応は連続的に行われるがその反応時間は反応器内での反応液の平均滞留時間に相当すると考えられるが、これは反応器の種類や形状、原料供給量、触媒の種類や量、反応条件などによって異なり、反応蒸留方式の場合は蒸留塔のインターナルの形状や段数、蒸留条件などによっても異なるが、通常0.01〜10時間、好ましくは0.05〜5時間、より好ましくは0.1〜3時間である。反応温度は、用いる原料化合物の種類や触媒の種類や量によって異なるが、通常100〜350℃である。反応速度を高めるためには反応温度を高くすることが好ましいが、反応温度が高いと副反応も起こりやすくなり、例えばアルキルアリールエーテルなどの副生が増えるので好ましくない。このような意味で、好ましい反応温度は130〜280℃、より好ましくは150〜260℃、さらに好ましくは、180〜250℃の範囲である。また反応圧力は、用いる原料化合物の種類や組成、反応温度などにより異なるが、減圧、常圧、加圧のいずれであってもよく、通常0.1〜2×10Pa、好ましくは、10〜10 Pa、より好ましくは2×10〜5×10の範囲で行われる。
【0028】
本発明のエステル交換反応を実施する場合、原料であるジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物とを触媒が存在する反応器に連続的に供給し、生成するアルコール類を含む低沸点反応混合物を反応器上部よりガス状で連続的に抜出し、芳香族カーボネート類を含む高沸点反応混合物を塔下部より液状で連続的に抜出すことにより芳香族カーボネート類が連続的に製造される。本発明の場合、反応器が連続多段蒸留塔である反応蒸留方式が好ましいが、このときは原料を触媒が存在する該連続多段蒸留塔内に連続的に供給し、該塔内で反応と蒸留を同時に行い、生成するアルコール類を含む低沸点反応混合物を塔上部よりガス状で連続的に抜出し、芳香族カーボネート類を含む高沸点反応混合物を塔下部より液状で連続的に抜出すことにより芳香族カーボネート類が連続的に製造される。
【0029】
1トン/hr以上で芳香族カーボネート類を製造する場合、アルコール類は通常約200kg/hr以上副生する。この副生アルコール類は反応系に存在する、芳香族カーボネートよりも低沸点の化合物、例えば未反応原料、副生アルキルアリールエーテルなどと共に低沸点反応混合物として、反応器の上部から連続的に抜き出される。もちろん該低沸点反応混合物中に芳香族カーボネートおよびそれよりも沸点の高い化合物が少量含まれていてもよい。
本発明において反応器から連続的に抜出される低沸点反応混合物の量は、原料組成や量、反応蒸留条件、反応率、選択率等によって異なるが、通常、10トン/hr以上で1000トン/hr以下である。
【0030】
本発明において分離すべき該低沸点反応混合物の組成は、反応条件あるいは連続多段蒸留塔の反応蒸留条件やリサイクルされる原料組成等によって異なるが、通常、副生アルコール 1.6〜10質量%、ジアルキルカーボネート50〜80質量%、芳香族モノヒドロキシ化合物10〜40質量%、副生物であるアルキルアリールエーテル0.5〜10質量%、芳香族カーボネート0.05〜0.5質量%である。
本発明は副生アルコールを含むこのような組成を有する該低沸点反応混合物を工業的規模で効率的に蒸留分離するのに適した分離装置を提供するものであって、該分離装置は、式(1)〜(8)を満足する長さL(cm)、内径D(cm)、内部に段数nをもつインターナルを有する回収部と、長さL(cm)、内径D(cm)、内部に段数nをもつインターナルを有する濃縮部からなる蒸留塔であることが必要である。このような連続多段蒸留塔を用いることによって、上記の目的が容易に達成できることが容易に達成できることが明らかになった。この分離装置が副生アルコール類の工業的分離装置として、このような優れた効果を理由は明らかではないが、式(1)〜(8)の条件が組み合わさった時にもたらされる複合効果のためであると推定される。
【0031】
なお、各々の要因の好ましい範囲は下記に示される。
(cm)が500より小さいと、回収部の分離効率が低下するため目的とする分離効率を達成できないし、目的の分離効率を確保しつつ設備費を低下させるには、Lを3000より小さくすることが必要である。より好ましいL(cm)の範囲は、800≦L≦2500 であり、さらに好ましくは、1000≦L≦2000 である。
(cm)が100よりも小さいと、目的とする蒸留量を達成できないし、目的の蒸留量を達成しつつ設備費を低下させるには、Dを500より小さくすることが必要である。より好ましいD(cm)の範囲は、120≦D≦400 であり、さらに好ましくは、150≦D≦300 である。
/Dが2より小さい時や30より大きい時は長期安定運転が困難となる。より好ましいL/Dの範囲は、5≦L/D≦20 であり、さらに好ましくは、7≦L/D≦15 である。
【0032】
が10より小さいと回収部の分離効率が低下するため目的とする分離効率を達成できないし、目的の分離効率を確保しつつ設備費を低下させるには、nを40よりも小さくすることが必要である。より好ましいnの範囲は、13≦n≦25 であり、さらに好ましくは、15≦n≦20 である。
(cm)が700より小さいと、濃縮部の分離効率が低下するため目的とする分離効率を達成できないし、目的の分離効率を確保しつつ設備費を低下させるには、Lを5000より小さくすることが必要である。Lが5000よりも大きいと塔の上下における圧力差が大きくなりすぎるため、長期安定運転が困難となるだけでなく、塔下部での温度を高くしなければならないため、副反応が起こりやすくなる。より好ましいL(cm)の範囲は、1500≦L ≦3500 であり、さらに好ましくは、2000≦L≦3000 である。
(cm)が50よりも小さいと、目的とする蒸留量を達成できないし、目的の蒸留量を達成しつつ設備費を低下させるには、Dを400より小さくすることが必要である。より好ましいD(cm)の範囲は、70≦D≦200 であり、さらに好ましくは、80≦D≦150 である。
【0033】
/Dが10より小さい時や50より大きい時は長期安定運転が困難となる。より好ましいL/Dの範囲は、15≦L/D≦30 であり、さらに好ましくは、20≦L/D≦28 である。
が35より小さいと濃縮部の分離効率が低下するため目的とする分離効率を達成できないし、目的の分離効率を確保しつつ設備費を低下させるには、nを100よりも小さくすることが必要である。nが100よりも大きいと塔の上下における圧力差が大きくなりすぎるため、長期安定運転が困難となるだけでなく、塔下部での温度を高くしなければならないため、副反応が起こりやすくなる。より好ましいnの範囲は、40≦n≦70 であり、さらに好ましくは、45≦n≦65 である。
また、LとLの関係、およびDとDの関係は、分離すべき該低沸点反応混合物の量、およびアルコール類の濃度等によって異なるが、通常、L≦L、 D≦D であることが好ましい。
【0034】
本発明の副生アルコール類の工業的分離に用いる連続多段蒸留塔は、回収部および濃縮部に、インターナルとしてトレイおよび/または充填物を有する蒸留塔であることが好ましい。本発明でいうインターナルとは、蒸留塔において実際に気液の接触を行わせる部分のことを意味する。このようなトレイとしては、例えば泡鍾トレイ、多孔板トレイ、バルブトレイ、向流トレイ、スーパーフラックトレイ、マックスフラックトレイ等が好ましく、充填物としては、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック等の不規則充填物やメラパック、ジェムパック、テクノパック、フレキシパック、スルザーパッキング、グッドロールパッキング、グリッチグリッド等の規則充填物が好ましい。トレイ部と充填物の充填された部分とを合わせ持つ多段蒸留塔も用いることができる。
【0035】
本発明においては、連続多段蒸留塔Bの回収部および濃縮部のインターナルが、それぞれトレイである場合が特に好ましい。
なお、本発明でいう段数とは、インターナルがトレイの場合、実段数を意味し、インターナルが充填物の場合は理論段数を意味することとする。
なお、本発明のエステル交換反応を反応蒸留方式で行う場合は、反応蒸留塔として用いる連続多段蒸留塔にも上記のインターナルを用いることが好ましく、特に式(11)及び(12)の反応を主として行う反応蒸留塔にはトレイを、式(13)の反応を主として行う反応蒸留塔にはトレイと規則充填物をインターナルとすることが好ましい。
【0036】
本発明の分離装置を用いて連続分離を行う際、副生アルコール類を含むエステル交換反応の低沸点反応混合物を連続多段蒸留塔内にガス状で供給してもよいし、液状で供給してもよいが、通常ガス状で抜きだされる該低沸点反応混合物の熱を他の物質の加熱、例えば反応器に供給されるエステル交換反応の原料の加熱に使うことは特に好ましい方法である。この場合、熱交換の程度によって、連続多段蒸留塔に供給される該低沸点反応混合物は、ガス状、気液混合状、液状となる。また、該低沸点反応混合物を連続多段蒸留塔内に供給する位置は、回収部と濃縮部の間である。連続多段蒸留塔は、蒸留物の加熱のためのリボイラーと、還流装置を有することが好ましい。
【0037】
本発明では、原料であるジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物のエステル交換反応で芳香族カーボネート類を1トン/hr以上の工業的規模で連続的に製造する際に方副生するアルコール類を含む低沸点反応混合物、通常10〜1000トン/hrを分離する工業的蒸留装置が提供されるが、この蒸留装置では該アルコール類の濃度が90質量%以上、好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは97%以上である塔頂成分と、該アルコール類の含有量が0.2質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.07質量%以下の塔底成分とに長時間安定的に効率的な分離を行うことが可能である。また、この分離装置では、分離されるアルコール類の量を、200kg/hr以上、好ましくは500kg/hr以上、より好ましくは1〜20トン/hrにすることができる。
【0038】
本発明で分離操作を実施した場合、塔頂成分は、副生アルコール類を90質量%以上含有するが残りの成分の全部または大部分は、通常ジアルキルカーボネートである。従って、該塔頂成分はジアルキルカーボネート製造原料として用いることが好ましい。ジアルキルカーボネートの製造方法としては、アルコール類のカルボニル化反応を用いる方法と、アルキレンカーボネートの加アルコール分解反応を用いる方法が工業的に実施されているが、該塔頂成分はいずれの反応の原料としても用いることができる。アルキレンカーボネートの加アルコール分解反応は平衡反応であるので、アルコール濃度の高い原料を用いることが好ましいので、該塔頂成分を、この反応の原料とすることは好ましい方法である。この場合、該塔頂成分中のアルコール濃度が95質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上のものを原料とすることが特に好ましい。
【0039】
また、本発明で分離操作を実施した場合、塔底成分は、該低沸点反応混合物の成分から該塔頂成分を抜出した成分からなっており、副生アルコール類を0.2質量%以下、好ましくは0.1質量%以下含有するものであって、通常、主成分はジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物であって、少量の副生アルキルアリールエーテル及び少量の芳香族カーボネート類を含有するものである。従って、この塔底成分をエステル交換反応の原料として循環再使用することは特に好ましい方法である。
本発明の分離装置を用いて、副生アルコール類の連続蒸留分離を行う場合、連続多段蒸留塔の蒸留条件は、塔底温度が150〜300℃、好ましくは170〜270℃、さらに好ましくは190〜250℃であり、塔頂圧力が2×10〜5×10Pa、好ましくは4×10〜3×10Pa、さらに好ましくは6×10〜2×10Paである。
【0040】
本発明でいう長期安定運転とは、1000時間以上、好ましくは3000時間以上、さらに好ましくは5000時間以上、フラッディングや配管のつまりやエロージョンがなく、運転条件に基づいた定常状態で運転が継続でき、所定の分離効率を維持しながら、200kg/hrの所定量の副生アルコール類が蒸留分離されていることを意味する。
本発明の連続多段蒸留塔、インターナル、配管等を構成する材料は、主に炭素鋼、ステンレススチールなどが好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例3〜7は本発明の工業的分離装置の性能を示すための例である。混合物の組成はガスクロマトグラフィー法で測定し、ハロゲンはイオンクロマトグラフィーで測定した。
【0042】
[実施例1]
図1に示されるL=1700cm、D=180cm、L/D=9.4、n=16、L=2500cm、D=100cm、L/D=25、n=55 であり、インターナルが回収部、濃縮部ともに多孔板トレイである連続多段蒸留塔が提供される。
【0043】
[実施例2]
図1に示されるL=1200cm、D=180cm、L/D=4.6、n=18、L=2800cm、D=160cm、L/D=17.5、n=58 であり、インターナルが回収部、濃縮部ともに多孔板トレイである連続多段蒸留塔が提供される。
【0044】
[実施例3]
<反応蒸留塔>
図2に示されるようなL=3300cm、D=500cm、L/D=6.6、n=80、D/d=17、D/d=9 である連続多段蒸留塔Aをエステル交換反応の反応蒸留塔として用いた。なお、この参考例では、インターナルとして多孔板トレイを用いた。
<反応蒸留と低沸点反応混合物から副生メタノールの分離>
図2に示される連続多段蒸留塔Aと図1に示される連続多段蒸留塔Bを図3に示されるように接続された装置を用いて反応蒸留と副生メタノールの分離をおこなった。この参考例で用いられた連続多段蒸留塔Bは、本発明の工業的分離装置のジメチルカーボネート44質量%、フェノール49質量%、アニソール5.7質量%、メチルフェニルカーボネート1質量%、メタノール0.3質量%、からなる原料1を連続多段蒸留塔Aの上部導入口21から液状で80.8トン/hrの流量で連続的に導入した。なお、原料1は導入口20から導入され、熱交換器27で該蒸留塔Aの上部からガス状で抜出される低沸点反応混合物(A)の熱で加熱された上で導入口21に送られた。一方、ジメチルカーボネート76質量%、フェノール19.5質量%、アニソール4.4質量%、メチルフェニルカーボネート0.1質量%、からなる原料2を該蒸留塔Aの下部導入口11から86トン/hrの流量で連続的に導入した。連続多段蒸留塔Aに導入された原料のモル比は、ジメチルカーボネート/フェノール=1.87であった。この原料にはハロゲンは実質的に含まれていなかった(イオンクロマトグラフィーでの検出限界外で1ppb以下)。触媒はPb(OPh)として、反応液中に約70ppmとなるように該蒸留塔Aの上部の導入口10から導入された。該蒸留塔Aの塔底部の温度が233℃で、塔頂部の圧力が9.6×10Paの条件下で連続的に反応蒸留が行われた。24時間後には安定的な定常運転が達成できた。該蒸留塔Aの塔底部に接続された抜出し口25から82.3トン/hrで連続的に抜出された液には、メチルフェニルカーボネートが10.1質量%、ジフェニルカーボネートが0.27質量%含まれていた。メチルフェニルカーボネートの1時間あたりの生産量は8.3トン(蒸留塔Aに導入された量を除いた実質の生成量は7.5トン/hr)、ジフェニルカーボネートの1時間あたりの生産量は0.22トンであることがわかった。反応したフェノールに対して、メチルフェニルカーボネートとジフェニルカーボネートを合わせた選択率は99%であった。
【0045】
この条件で長期間の連続運転を行った。500時間後、2000時間後、4000時間後、5000時間後、6000時間後の1時間あたりの生産量は、メチルフェニルカーボネートが、8.3トン、8.3トン、8.3トン、8.3トン、8.3トンであり、ジフェニルカーボネートの1時間あたりの生産量は0.22トン、0.22トン、0.22トン、0.22トン、0.22トンであり、メチルフェニルカーボネートとジフェニルカーボネートを合わせた選択率は99%、99%、99%、99%、99%、99%、であり、非常に安定していた。また、製造された芳香族カーボネートには、ハロゲンは実質的に含まれていなかった(1ppb以下)。
【0046】
連続多段蒸留塔Aの塔頂からガス状で連続的に抜出された低沸点反応混合物(A)は、熱交換器27でその熱を上記原料1の加熱に使うことによって170℃まで低下させた。85.2トン/hrで抜出された該低沸点反応混合物(A)の組成は、メタノール2質量%、ジメチルカーボネート74質量%、フェノール19.5質量%、アニソール4.4質量%、メチルフェニルカーボネート0.1質量%であった。該低沸点反応混合物(A)は連続多段蒸留塔Bの回収部と濃縮部の間に設けられた導入口31付近の液温に近い温度にされた上で該導入口31から連続的に該蒸留塔Bに供給された。一方、フレッシュなジメチルカーボネートが2.53トン/hrで該蒸留塔Bの下部の導入口41から連続的に導入された。該蒸留塔Bは塔底温度226℃、塔頂温度155℃、還流比3で連続的に蒸留分離が行われ、低沸点混合物(B)が抜出し口39から1.73トン/hrで、高沸点混合物(B)が抜出し口35から86トン/hrでそれぞれ連続的に抜出された。該高沸点混合物(B)はメタノールの含有量が0.1質量%以下であり、その組成は上記連続多段蒸留塔Aの原料2の組成と同じであり、これは原料2として循環再使用された。
【0047】
該低沸点混合物(B)の組成はメタノール97質量%、ジメチルカーボネート3質量%であった。連続的に蒸留分離されたメタノールの量は1.68トン/hrであった。該低沸点混合物(B)はエチレンカーボネートと反応させてジメチルカーボネートとエチレングリコールを製造するための原料として用いられた。
連続多段蒸留塔Bの運転は、連続多段蒸留塔Aの連続運転にあわせて行ったが、500時間後、2000時間後、4000時間後、5000時間後、6000時間後の分離効率は初期と同様であり、安定に推移した。
【0048】
[実施例4]
実施例3と同じ連続多段蒸留塔Aおよび連続多段蒸留塔Bを用いて、下記の条件で反応蒸留と副生メタノールの分離を行った。
<反応蒸留>
ジメチルカーボネート33.3質量%、フェノール58.8質量%、アニソール6.8質量%、メチルフェニルカーボネート0.9質量%、メタノール0.2質量%、からなる原料1を導入口20から熱交換器27を経て連続多段蒸留塔Aの上部導入口21から液状で86.2トン/hrの流量で連続的に導入した。一方、ジメチルカーボネート64.4質量%、フェノール33.8質量%、アニソール1.3質量%、メチルフェニルカーボネート0.4質量%、メタノール0.1質量%からなる原料2を該蒸留塔Aの下部導入口11から86.6トン/hrの流量で連続的に導入した。連続多段蒸留塔Aに導入された原料のモル比は、ジメチルカーボネート/フェノール=1.1であった。この原料にはハロゲンは実質的に含まれていなかった(イオンクロマトグラフィーでの検出限界外で1ppb以下)。触媒はPb(OPh)として、反応液中に約100ppmとなるように該蒸留塔Aの上部導入口10から導入された。該蒸留塔Aの塔底部の温度が230℃で、塔頂部の圧力が6.5×10Paの条件下で連続的に反応蒸留が行われた。24時間後には安定的な定常運転が達成できた。該蒸留塔Aの塔底部に接続された抜出し口25から88トン/hrで連続的に抜出された液には、メチルフェニルカーボネートが13.4質量%、ジフェニルカーボネートが0.7質量%含まれていた。メチルフェニルカーボネートの1時間あたりの生産量は11.8トン(蒸留塔Aに導入された量を除いた実質の生成量は10.7トン/hr)、ジフェニルカーボネートの1時間あたりの生産量は0.6トンであることがわかった。反応したフェノールに対して、メチルフェニルカーボネートとジフェニルカーボネートを合わせた選択率は98%であった。
【0049】
この条件で長期間の連続運転を行った。500時間後、1000時間後、2000時間後の1時間あたりの生産量は、メチルフェニルカーボネートが、11.8トン、11.8トン、11.8トンであり、ジフェニルカーボネートの1時間あたりの生産量は0.6トン、0.6トン、0.6トンであり、メチルフェニルカーボネートとジフェニルカーボネートを合わせた選択率は98%、98%、98%であり、非常に安定していた。また、製造された芳香族カーボネートには、ハロゲンは実質的に含まれていなかった(1ppb以下)。
【0050】
<低沸点反応混合物(A)から副生メタノールの分離>
連続多段蒸留塔Aの塔頂からガス状で連続的に抜出された低沸点反応混合物(A)は、熱交換器27でその熱を上記原料1の加熱に使うことによって161℃まで低下させた。85.4トン/hrで抜出された該低沸点反応混合物(A)の組成は、メタノール3.1質量%、ジメチルカーボネート61質量%、フェノール34.3質量%、アニソール1.2質量%、メチルフェニルカーボネート0.2質量%であった。該低沸点反応混合物(A)は連続多段蒸留塔Bの回収部と濃縮部の間に設けられた導入口31付近の液温に近い温度にされた上で該導入口31から連続的に該蒸留塔Bに供給された。一方、フレッシュなジメチルカーボネートが濃縮部の下から4段目の導入口51から3.98トン/hrで該蒸留塔Bに連続的に導入された。該蒸留塔Bは塔底温度213℃、塔頂温度138℃、還流比2.89で連続的に蒸留分離が行われ、低沸点混合物(B)が抜出し口39から2.78トン/hrで、高沸点混合物(B)が抜出し口35から86.6トン/hrでそれぞれ連続的に抜出された。該高沸点混合物(B)はメタノールの含有量が0.1質量%以下であり、その組成は上記連続多段蒸留塔Aの原料2の組成とほぼ同じであり、これは原料2として循環再使用された。
【0051】
該低沸点混合物(B)の組成はメタノール93.3質量%、ジメチルカーボネート6.7質量%であった。連続的に蒸留分離されたメタノールの量は2.59トン/hrであった。該低沸点混合物(B)はエチレンカーボネートと反応させてジメチルカーボネートとエチレングリコールを製造するための原料として用いられた。連続多段蒸留塔Bの運転は、連続多段蒸留塔Aの連続運転にあわせて行ったが、500時間後、1000時間後、2000時間後の分離効率は初期と同様であり、安定に推移した。
【0052】
[実施例5]
実施例3と同じ連続多段蒸留塔Aを用いて同様な方法により反応蒸留が行われ、塔上部抜出し口26からメタノール1.5質量%、ジメチルカーボネート81.9質量%、フェノール12.4質量%、アニソール3.9質量%、メチルフェニルカーボネート0.3質量%からなる低沸点反応混合物(A)が80.26トン/hrで抜出された。該低沸点反応混合物(A)は実施例1と同様にして熱交換器27を経て、実施例1と同じ連続多段蒸留塔Bの回収部と濃縮部の間の導入口31から連続的に供給され、一方、ジメチルカーボネート99質量%、メタノール1質量%からなるフレッシュ原料が濃縮部の下から4段目の導入口51から1.76トン/hrで該蒸留塔Bに連続的に導入された。該蒸留塔Bにおいて塔底温度219℃、塔頂温度151℃、還流比6.74で連続的に蒸留分離が行われ、低沸点混合物(B)が抜出し口39から1.19トン/hrで、高沸点混合物(B)が抜出し口35から80.83トン/hrでそれぞれ連続的に抜出された。該高沸点混合物(B)はメタノールの含有量が0.1質量%以下であり、これは反応蒸留の原料として上記連続多段蒸留塔Aで循環再使用された。
【0053】
該低沸点混合物(B)の組成はメタノール99質量%、ジメチルカーボネート1質量%であった。連続的に蒸留分離されたメタノールの量は1.18トン/hrであった。該低沸点混合物(B)はエチレンカーボネートと反応させてジメチルカーボネートとエチレングリコールを製造するための原料として用いられた。連続多段蒸留塔Bの運転は、連続多段蒸留塔Aの連続運転にあわせて行ったが、500時間後、1000時間後、2000時間後の分離効率は初期と同様であり、安定に推移した。
【0054】
[実施例6]
実施例3と同じ連続多段蒸留塔Aを用いて同様な方法により反応蒸留が行われ、塔上部抜出し口26からメタノール2.8質量%、ジメチルカーボネート61.0質量%、フェノール26.4質量%、アニソール9.6質量%、メチルフェニルカーボネート0.2質量%からなる低沸点反応混合物(A)が57.45トン/hrで抜出された。該低沸点反応混合物(A)は実施例1と同様にして熱交換器27を経て、実施例1と同じ連続多段蒸留塔Bの回収部と濃縮部の間の導入口31から連続的に供給され、一方、ジメチルカーボネート99.7質量%、メタノール0.3質量%からなるフレッシュ原料が濃縮部の下から4段目の導入口51から2.44トン/hrで該蒸留塔Bに連続的に導入された。該蒸留塔Bにおいて塔底温度215℃、塔頂温度138℃、還流比4.4で連続的に蒸留分離が行われ、低沸点混合物(B)が抜出し口39から1.69トン/hrで、高沸点混合物(B)が抜出し口35から58.2トン/hrでそれぞれ連続的に抜出された。該高沸点混合物(B)はメタノールの含有量が0.08質量%であり、これは反応蒸留の原料として上記連続多段蒸留塔Aで循環再使用された。
【0055】
該低沸点混合物(B)の組成はメタノール94.9質量%、ジメチルカーボネート5.1質量%であった。連続的に蒸留分離されたメタノールの量は1.6トン/hrであった。該低沸点混合物(B)はエチレンカーボネートと反応させてジメチルカーボネートとエチレングリコールを製造するための原料として用いられた。 連続多段蒸留塔Bの運転は、連続多段蒸留塔Aの連続運転にあわせて行ったが、500時間後、1000時間後の分離効率は初期と同様であり、安定に推移した。
【0056】
[実施例7]
実施例3と同じ連続多段蒸留塔Aを用いて同様な方法により反応蒸留が行われ、塔上部抜出し口26からメタノール3.0質量%、ジメチルカーボネート62.8質量%、フェノール28.0質量%、アニソール6.1質量%、メチルフェニルカーボネート0.1質量%からなる低沸点反応混合物(A)が57.11トン/hrで抜出された。該低沸点反応混合物(A)は実施例1と同様にして熱交換器27を経て、実施例1と同じ連続多段蒸留塔Bの回収部と濃縮部の間の導入口31から連続的に供給され、一方、フレッシュなジメチルカーボネートが濃縮部の下から4段目の導入口51から2.8トン/hrで該蒸留塔Bに連続的に導入された。該蒸留塔Bにおいて塔底温度213℃、塔頂温度138℃、還流比2.89で連続的に蒸留分離が行われ、低沸点混合物(B)が抜出し口39から1.84トン/hrで、高沸点混合物(B)が抜出し口35から58.07トン/hrでそれぞれ連続的に抜出された。該高沸点混合物(B)はメタノールの含有量が0.09質量%であり、これは反応蒸留の原料として上記連続多段蒸留塔Aで循環再使用された。
【0057】
該低沸点混合物(B)の組成はメタノール93.3質量%、ジメチルカーボネート6.7質量%であった。連続的に蒸留分離されたメタノールの量は1.72トン/hrであった。該低沸点混合物(B)はエチレンカーボネートと反応させてジメチルカーボネートとエチレングリコールを製造するための原料として用いられた。連続多段蒸留塔Bの運転は、連続多段蒸留塔Aの連続運転にあわせて行ったが、500時間後、1000時間後、2000時間後の分離効率は初期と同様であり、安定に推移した。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物とのエステル交換反応によって芳香族カーボネート類を1時間あたり1トン以上の工業的規模で連続的に製造する際に副生するアルコール類を含む低沸点反応混合物からアルコール類を分離するための工業的分離装置として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の副生アルコール類の工業的分離装置である連続多段蒸留塔の概略図である。内部にはインターナルが設置されている。インターナルは回収部が段数nで濃縮部がnである。
【図2】本発明のエステル交換反応を行う好ましい反応方式である反応蒸留を行う連続多段蒸留塔Aの概略図である。内部には段数nを有するインターナルが設置されている。
【図3】反応蒸留と本発明の副生アルコール類の蒸留分離を行う装置とを接続した概略図である。
【符号の説明】
【0060】
1 ガス抜出し口
2 液抜出し口
3、4 導入口
5 鏡板部
連続多段蒸留塔の回収部の長さ(cm)
連続多段蒸留塔の濃縮部の長さ(cm)
連続多段蒸留塔の回収部の内径(cm)
連続多段蒸留塔の濃縮部の内径(cm)
L 連続多段蒸留塔Aの長さ(cm)
D 連続多段蒸留塔Aの内径(cm)
連続多段蒸留塔Aのガス抜出し口内径(cm)
連続多段蒸留塔Aの液抜出し口内径(cm)
10、11、20、21、31、41、51 導入口
22、25、32 液抜出し口
26、36 ガス抜出し口
24、34、38 導入口
23、33、27、37 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物とのエステル交換反応によって芳香族カーボネート類を1時間あたり1トン以上の工業的規模で連続的に製造する際に副生するアルコール類を含む低沸点反応混合物からアルコール類を分離するための装置であって、下記式(1)〜(8)を満足する長さL(cm)、内径D(cm)、内部に段数nをもつインターナルを有する回収部と、長さL(cm)、内径D(cm)、内部に段数nをもつインターナルを有する濃縮部からなる連続多段蒸留塔であることを特徴とする副生アルコール類の工業的分離装置。
500 ≦ L ≦ 3000 式(1)
100 ≦ D ≦ 500 式(2)
2 ≦ L/D ≦ 30 式(3)
10 ≦ n ≦ 40 式(4)
700 ≦ L ≦ 5000 式(5)
50 ≦ D ≦ 400 式(6)
10 ≦ L/D ≦ 50 式(7)
35 ≦ n ≦ 100 式(8)
【請求項2】
該連続多段蒸留塔のL、D、L/D、n、L、D、L/D、nがそれぞれ、800≦L≦2500、 120≦D≦400、 5≦L/D≦20、 13≦n≦25、 1500≦L≦3500、 70≦D≦200、 15≦L/D≦30、 40≦n≦70、 L ≦ L、 D ≦ Dであることを特徴とする請求項1記載の副生アルコール類の工業的分離装置。
【請求項3】
該連続多段蒸留塔の回収部および濃縮部のインターナルが、それぞれトレイおよび/または充填物であることを特徴とする請求項1または2に記載の副生アルコール類の工業的分離装置。
【請求項4】
該連続多段蒸留塔の回収部および濃縮部のインターナルが、それぞれトレイであることを特徴とする請求項3記載の副生アルコール類の工業的分離装置。
【請求項5】
該エステル交換反応を反応蒸留方式で行い、該低沸点反応混合物を該アルコール類の濃度が90質量%以上の塔頂成分と該アルコール類の含有量が0.2質量%以下の塔底成分に分離し、且つ、分離されるアルコール類の量が、1時間あたり200kg以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の副生アルコール類の工業的分離装置。
【請求項6】
該塔頂成分中の該アルコール類の濃度が95質量%以上であることを特徴とする請求5記載の副生アルコール類の工業的分離装置。
【請求項7】
該塔頂成分中の該アルコール類の濃度が97質量%以上であることを特徴とする請求項5記載の副生アルコール類の工業的分離装置。
【請求項8】
該塔底成分中の該アルコール類の含有量が0.1質量%以下あることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の副生アルコール類の工業的分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−326782(P2007−326782A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273313(P2004−273313)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】