説明

副甲状腺ホルモン(PTH)に対する抗体およびその使用

本明細書に記載する発明の実施態様は、抗原副甲状腺ホルモン(PTH)に対する抗体およびそのような抗体の使用に関する。特に、本明細書に記載する発明の実施態様によれば、抗原PTHに対する完全なヒトモノクローナル抗体(mAb)が供給される。更なる実施態様においては、重鎖および軽鎖イムノグロブリン分子をコードするヌクレオチド配列、およびこれらを含むアミノ酸配列、特に、フレームワーク領域および/または相補性決定領域(CDR)にまたがる連続的な重鎖および軽鎖配列に対応する配列、具体的には、FR1からFR4またはCDR1からCDR3が供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載する発明の実施態様は、抗原副甲状腺ホルモン(PTH)に対する抗体およびそのような抗体の使用に関する。特に、本明細書に記載する発明の実施態様によれば、抗原PTHに対する完全なヒトモノクローナル抗体(mAb)が供給される。重鎖および軽鎖イムノグロブリン分子をコードするヌクレオチド配列、およびこれらを含むアミノ酸配列、特に、フレームワーク領域および/または相補性決定領域にまたがる連続的な重鎖および軽鎖配列に対応する配列、具体的には、FR1からFR4またはCDR1からCDR3が供給される。本発明の抗体は、PTHの過剰産生と関連した病気の診断および治療における使用が見出されている。
【背景技術】
【0002】
副甲状腺は、内分泌系の一部をなし、副甲状腺ホルモン(PTH)を産生する。PTHは、血流中のカルシウム、リンおよびマグネシウムのレベルを調節し、通常の骨石灰化に必須なこれらの物質の適切なバランスを維持する。慢性的なPTHの過剰産生は、副甲状腺機能亢進症(HPT)として知られている。副甲状腺ホルモンの過剰産生によって血中カルシウムレベルが上昇し、血中リン酸レベルが減少する。骨からカルシウムが溶出し、消化管(GI)からのカルシウム吸収が増す。腎臓は、尿の過剰なカルシウムを分泌することによって、増加した血中カルシウムレベルを補う。これは、腎臓結石の形成をもたらしうる、増加したPTHレベルの効果は、腎臓だけでなく、骨、胃および腸、神経系ならびに筋肉において見られる(R.S. Cotran et al., eds., Robbins Pathologic Basis of Disease 1246-47 (4th ed., W.B. Saunders Co., Philadelphia 1989))。
【0003】
原発性副甲状腺機能亢進症においては、腫瘍の存在(副甲状腺線種(〜80%)または、あまり一般的ではないが、副甲状腺の過形成(〜15%)もしくはカルチノーマ(〜5%))により、PTHの分泌が増す。血中のカルシウムレベルが上昇することによって、症状は、腎臓結石、骨痛、倦怠感、拒食症、吐き気および嘔吐を含みうる(L.M. Tierney, Jr., et al., eds., Current Medical Diagnosis and Treatment 1001-02 (35th ed., Appleton & Lange, Stamford, CT 1996))。現在のところ、副甲状腺によるPTH放出の持続的なブロックをもたらすことができる薬は存在しないので、原発性HPTの現在の医療治療は満足できるものではない。副甲状腺の一部または全ての外科的な除去が、好ましい治療であるが、喉頭神経の損傷および長期的な低カルシウム症などの問題が、術後に生じてしまうかもしれない。
【0004】
二次性副甲状腺機能亢進症においては、PTHの過剰な産生が、通常は、ビタミンD欠失(くる病および骨軟化症)または慢性腎疾患(CRF)のいずれかによってもたらされる。二次性HPTが腎不全を原因とする場合、その病状は、低カルシウム血症および高リン血症、ならびにPTHに対して相対的に応答できないことを特徴とする。このPTH機能に対する抵抗性により、副甲状腺がカルシウムおよびリンを再び正常な値に戻そうとするので、副甲状腺の過形成およびPTHの過剰な産生がもたらされる。PTHレベルに対する抵抗性は、腎臓においてカルシトリオール(ビタミンDの活性型)を産生することができないこと、および、腎臓を介してリン酸を排出することができないことを原因とする。カルシトリオールは、直接、副甲状腺に作用し、PTH産生を阻害し、GI管がカルシウム吸収を促進する機能を有する。それゆえ、カルシトリオールの欠失は、血清のPTHレベルの増大をもたらす。高いリン酸レベルも、直接、副甲状腺組織に作用してPTHの発現を誘導し、カルシウムと直接相互作用して低カルシウム血症を維持することができる。ネガティブフィードバック機構の欠失によって、CRFに見られるPTHに対する抵抗性の大部分が説明される(Fauci, A.S. et al., eds., Harrison’s Principles of Internal Medicine 2214-47 (14th ed., McGraw-Hill Co. 1998))。重篤な二次性HPTにおいては、極端に高いレベルのPTHが、ホルモンに対する骨の抵抗性を破壊してしまい、皮膚、軟組織、および動脈(calciphylaxis)における広範性の石灰化を引き起こすであろう、血清での高いカルシウムレベルおよびリン酸レベルがもたらされる。このような石灰化によって、痛みを伴う皮膚の虚血性壊死、壊疽、不整脈および肺疾患がもたらされる(Tierney et al., supra at 1003)。
【0005】
最近、二次性HPTが、炭酸カルシウムなどのリン酸バインダー、および、超生理学的なレベルのカルシトリオールおよびdoxercalciferolなどのビタミンDアナログを用いて、医学的に治療されている。全ての患者が、カルシトールに応答するわけではなく、高カルシウム血症が治療の共通の問題点となっている(Felsenfeld, A.J., J. Am. Soc. Nephrology 8(6):993-1004 (1997))。カルシウム受容体のアロステリックな調節因子としてデザインされたカルシウム擬態薬も、可能性ある治療として臨床的開発が行われている。
【0006】
PTHは、副甲状腺から分泌される84のアミノ酸ペプチドである。そのアミノ酸配列(Keutman, H.T. et al., Biochemistry 17: 5723-29 (1978))および関連遺伝子のヌクレオチド配列(Hendy et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 78: 7365-69 (1981))が知られている。PTHは、PTH/副甲状腺関連タンパク質(PTHrP)受容体を介して作用し、骨吸収を促進し、カルシウム排出を減少させる。ヒトの副甲状腺ホルモン(hPTH)は、実質的にインタクトなhPTH1-84およびその断片として循環している。全長hPTH1-84および断片hPTH1-34が、生物学的に活性であると考えられており、断片hPTH35-84は不活性であると考えられている。PTHのN末端を欠失した断片(hPTH7-84またはhPTH7-34)は、不活性なだけではなく、in vivoで生物学的に活性なPTHを阻害することもできる(Horiuchi et al., Science 220: 1053-55 (1983))。
【0007】
米国特許第4341755号において、Lindallは、哺乳類の血清中のPTHの抗体ラジオイムノアッセイを開示している。このアッセイにおいては、ヒトPTHの65-84部分に対して高い親和性を有するニワトリ抗体を利用した。米国特許第6030790号において、Ademannらは、hPTH1-37の様々な断片を用いて非特異的な動物にインジェクトすることによって調製したポリクローナル抗体を開示しており、この抗体が生物学的に活性なPTHのアッセイにおいて有用であることを開示している。1998年11月27日に出願された日本国特許出願番号第98337263号において、Japan Tobacco, Inc., は、ヒトPTHまたはその断片と反応するヒトモノクローナル抗体を開示している。しかしながら、恐らくはヒトPTHに対するこのような抗体の親和性が不十分であるという事実が原因で、開示されている抗体が、治療上有用とであるとは思えない。
【0008】
治療に用いるためのPTHに対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体の開発における障害が開示されており、不十分な親和性および免疫原性が原因とされている(Bradwell, A.R. et al. Lancet 353: 370-73 (1999))。Bradwellらは、副甲状腺カルチノーマに罹患した患者をPTHで免疫し、PTHに対する自己抗体を患者に産生させることに成功した。しかしながら、副甲状腺機能亢進症の患者群における個々の標的範囲にPTHを調整するための臨床的必要性が原因で、免疫応答の不均一性および自己抗原に対する免疫寛容を破る必要性から、臨床における免疫化方法は一般的には適用できないであろう。それゆえ、治療上有用な抗-PTH抗体に対する満たされない必要性が、存在する。
【特許文献1】米国特許第4,341,755号
【特許文献2】米国特許第6,030,790号
【特許文献3】米国特許第5,151,510号
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【特許文献7】WO00/76310号
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【特許文献14】米国特許出願第08/234,145号
【特許文献15】米国特許出願第08/376,279号
【特許文献16】米国特許出願第08/430,938号
【特許文献17】米国特許出願第08/464,584号
【特許文献18】米国特許出願第08/464,582号
【特許文献19】米国特許出願第08/463,191号
【特許文献20】米国特許出願第08/462,837号
【特許文献21】米国特許出願第08/486,853号
【特許文献22】米国特許出願第08/486,857号
【特許文献23】米国特許出願第08/486,859号
【特許文献24】米国特許出願第08/462,513号
【特許文献25】米国特許出願第08/724,752号
【特許文献26】米国特許出願第08/759,620号
【特許文献27】米国特許第6,162,963号
【特許文献28】米国特許第6,150,584号
【特許文献29】米国特許第6,114,598号
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【特許文献33】日本国特許3068506B2号
【特許文献34】日本国特許3068507B2号
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【特許文献84】米国特許第5,698,767号
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【特許文献88】米国特許第5,693,761号
【特許文献89】米国特許第5,693,792号
【特許文献90】米国特許第5,714,350号
【特許文献91】米国特許第5,777,085号
【特許文献92】米国特許第4,683,195号
【特許文献93】米国特許第4,683,202号
【特許文献94】米国特許第5,703,057号
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【特許文献96】WO98/24893号
【特許文献97】WO00/76310号
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【特許文献102】米国特許第4,816,397号
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【特許文献107】米国特許第4,735,210号
【特許文献108】米国特許第5,101,827号
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【特許文献110】米国特許第5,648,471号
【特許文献111】米国特許第5,697,902号
【特許文献112】米国特許第3,773,919号
【特許文献113】欧州特許第58,481号
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【特許文献115】欧州特許第52,322号
【特許文献116】欧州特許第36,676号
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【特許文献118】欧州特許第143,949号
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【特許文献120】日本国特許出願83-118008
【特許文献121】米国特許4,485,045号
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【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本明細書に記載する発明は、PTHに結合し、PTHの機能に影響を及ぼすモノクローナル抗体に関する。したがって、本発明の実施態様によれば、診断および治療の観点から望む特性を有するヒト抗-PTH抗体および抗-PTH抗体調製物が供給される。特に、本発明の1つの実施態様によれば、例えば、制限されるわけではないが、PTHに対する強い結合親和性、in vitroでPTHを中和する能力、およびin vivoでPTHを長時間にわたって中和する能力を含む治療の有用性を付与するという特性を有する抗-PTH抗体が供給される。
【0010】
本発明の1つの実施態様は、PTHに結合し、配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、50、54、58、62、66、70、74および78からなる群から選択される重鎖アミノ酸配列を有する、完全なヒトモノクローナル抗体である。1つの実施態様においては、抗体は、配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、52、56、60、64、68、72、76および80からなる群から選択される軽鎖アミノ酸配列を更に含む。
【0011】
本発明の他の実施態様は、配列番号2を含む重鎖可変領域配列および配列番号4を含む軽鎖可変領域配列を有する単離したヒトモノクローナル抗体である。
【0012】
本発明の他の実施態様は、PTHに結合し、図3に示す配列を含むCDRを有する重鎖アミノ酸配列を含む、完全なヒト抗体である。CDRの決定は、この業界の当業者によって容易に行われることができることは注意すべきである。一般的に、本明細書の発明においては、CDRは、Sequences of Proteins of Immunological Interest Vol. 1-3 (Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD 1991)でKabatらが定義しているように表す。
【0013】
本発明の更なる他の実施態様は、PTHに結合し、図4に示す配列を含むCDRを有する軽鎖アミノ酸配列を含む、完全なヒト抗体である。
【0014】
本発明の更なる実施態様は、PTHに結合し、図3に示す配列を含むCDRを有する重鎖アミノ酸配列を含み、図4に示す配列を含むCDRを有する軽鎖アミノ酸配列を含む、完全なヒト抗体である。
【0015】
本発明の他の実施態様は、単離した高親和性の抗-PTH抗体である。本発明の更なる実施態様においては、このような高い親和性の抗体の単回投与によって、24から36時間、好ましくは48から60時間、より好ましくは72から84時間、甲状腺機能亢進症のレベルから通常のレベルまたは通常に近いレベルへと、血清中の非結合のPTHレベルを減少させる。本発明の他の実施態様は、Alzet浸透圧ポンプによって50μg/kg/dayのヒトPTH(1-34)を皮下に投与した通常のSprague-Dawleyラットに、3mg/kgの抗体の静脈内単回投与することによって、48時間少なくとも50%まで(直接アッセイによってまたはPTH生物活性のバイオマーカーによって測定)、非結合のPTHのレベルを減少させる抗-PTH抗体である。
【0016】
本発明の更なる実施態様は、本発明の完全なヒト抗体と、PTHへの結合について交差競合する抗体である。本発明の他の実施態様においては、完全なヒト抗体は、抗-PTH mAb 183である。
【0017】
本明細書に記載する発明の実施態様は、PTHに特異的に結合する単離した抗体の産生および同定に基づく。PTHは、甲状腺機能亢進症において高いレベルで発現する。PTHの生物活性を阻害することによって、原発性甲状腺機能亢進症および二次性甲状腺機能亢進症によって引き起こされる症状の進行を遅らせることができる。
【0018】
したがって、本明細書に記載する発明の1つの実施態様によれば、PTHに結合する単離した抗体、またはこれらの抗体の断片が供給される。この業界で知られているように、抗体は、有利には、例えば、モノクローナル、キメラおよび/またはヒト抗体である。本明細書に記載する発明の実施態様によれば、また、これらの抗体を産生する細胞も供給される。
【0019】
本発明の実施態様が、任意の特定の形態の抗体または発生もしくは産生方法に限定していないことは明らかであろう。例えば、抗-PTH抗体は、完全長抗体(例えば、インタクトなヒトFc領域を有する)または抗体断片(例えば、Fab、Fab’またはF(ab’)2)とすることができる。加えて、抗体は、抗体を分泌するハイブリドーマから、または、抗体をコードする1つまたは複数の遺伝子で形質転換またはトランスフェクトした組換え体産生細胞から得ることができる。
【0020】
本発明の他の実施態様は、本明細書に記載の任意の抗体をコードする核酸分子、このような任意の抗-PTH抗体をコードする単離した核酸分子を有するベクター、このような任意の核酸分子で形質転換した宿主細胞を含む。加えて、本発明の1つの実施態様は、核酸分子が発現して抗体を産生する条件下で宿主細胞を培養し、その後、抗体を回収することによって、抗-PTH抗体を産生する方法である。
【0021】
本発明の更なる実施態様は、哺乳類を、ヒトPTHまたはその断片、および1つまたは複数のオーソロガス配列またはその断片で免疫化することによって、PTHに対する高親和性の抗体を産生する方法である。
【0022】
本発明の他の実施態様は、本明細書に記載する発明によって調製された抗体を、患者のサンプルにおけるPTHのレベルを検出するのに利用する、病気または症状を診断する方法を含む。1つの実施態様においては、患者のサンプルは、血液または血清である。更なる実施態様においては、以下に詳細に記すmAB 183などの抗-PTH抗体を用いたPTHの過剰発現の同定を含む、危険因子の同定、病気の診断、病期の決定のための方法が供給される。
【0023】
本発明の他の実施態様は、医薬的に許容可能な担体または希釈剤と組み合わせた、有効量の本発明の抗体を含む医薬組成物を含む。更に他の実施態様においては、抗-PTH抗体またはその断片は、治療剤と接合している。治療剤は、毒素または放射性同位体とすることができる。好ましくは、このような抗体は、例えば原発性および二次性副甲状腺機能亢進症などの病気の治療に使用することができる。
【0024】
更に他の実施態様においては、患者に有効量の抗-PTH抗体を投与することを含む、患者においてPTHの過剰発現に関連する病気または症状を治療する方法が供給される。1つの実施態様においては、患者は、哺乳類の患者であり、好ましくはヒト患者である。他の実施態様においては、この方法は、原発性および二次性副甲状腺機能亢進症の治療を含む。
【0025】
他の実施態様においては、本発明は、PTHに結合する抗体、および、存在するならば抗原と抗体の反応を示す手段を含む、副甲状腺機能亢進症をスクリーニングするための、哺乳類組織または細胞においてPTHの検出のためのアッセイキットを含む。好ましくは、抗体は、モノクローナル抗体である。1つの実施態様においては、PTHに結合する抗体は、標識されている。他の実施態様においては、抗体は非標識の一次抗体であり、反応を示す手段が、抗-イムノグロブリンである標識された二次抗体を含む。好ましくは、抗体は、蛍光色素、酵素、放射性核種および放射線不透過性物質からなる群から選択されるマーカーで標識されている。
【0026】
更に他の実施態様においては、本発明は、患者に有効量の抗-PTH抗体を投与することを含む、患者においてPTHの過剰発現に関連する病気または症状を治療する方法を含む。この方法は、in vivoで行うことができる。更なる実施態様は、PTHの過剰発現の治療が必要な哺乳類を同定し、その哺乳類に治療上有効な量の抗-PTH抗体を投与することを含みうる、PTHの過剰発現に関連する病気または症状を治療する方法を含む。他の実施態様においては、本発明は、組成物(抗-PTH抗体を含む)を含む容器、およびその組成物がPTHの過剰発現によって特徴付けられる副甲状腺機能亢進症を治療するために使用することができることを示すパッケージ挿入体または標識を含む製造品が供給される。好ましくは、哺乳類、より好ましくはヒトが、抗-PTH抗体を投与される。好ましい実施態様においては、原発性および二次性副甲状腺機能亢進症を治療する。
【0027】
加えて、本明細書に記載の核酸、ならびにその断片およびバリアントは、非制限な例として、(a)対応するコードタンパク質、ポリペプチド、断片および組換え体または異種遺伝子産物としてのバリアントの生合成をもたらすのに、(b)本明細書に記載の核酸の検出および定量のためのプローブとして、(c)アンチセンス分子の調製のためのテンプレート配列として、等に使用することができる。
【0028】
更にその上、本明細書に記載のタンパク質およびポリペプチド、ならびにその断片およびバリアントは、(a)抗-PTH抗体の産生を刺激するための免疫原としての使用、(b)このような抗体を用いた免疫アッセイにおける捕捉抗原、(c)本明細書に記載のPTHポリペプチドに結合する物質をスクリーニングするための標的として、および、(d) PTH特異的抗体に対する標的であって、抗体を用いた治療により、標的が媒介する分子および/または細胞機能に影響を与えるような標的を含むような方法で、使用することができる。
【0029】
幾つかの実施態様においては、抗-PTH抗体を投与し、その後に血液から循環している抗体を取り除く除去剤を投与する。
【0030】
幾つかの実施態様においては、抗-PTH抗体は、補体を固定して補体依存性細胞障害活性(CDC)に関与する能力を増大するために、改変することができる。1つの実施態様においては、抗-PTH抗体をアミノ酸置換等によって改変し、抗体クリアランスを変更することができる。例えば、特定のアミノ酸置換によって、身体からの抗体のクリアランスを促進することができる。代替として、アミノ酸置換によって、身体からの抗体のクリアランスを示すことができる。他の実施態様において、抗-PTH抗体が体からよりゆっくりと除かれるように、抗-PTH抗体を改変することができる。
【0031】
更なる実施態様は、副甲状腺機能亢進症などの病気の治療のための医薬の調製における、抗-PTH抗体の使用である。1つの実施態様においては、病気は原発性副甲状腺機能亢進症である。代替的な実施態様においては、病気は二次性副甲状腺機能亢進症である。更なる他の実施態様は、動物の循環PTHのレベルの減少のための医薬の調製における、抗-PTH抗体の使用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本明細書に記載の発明の実施態様は、完全なヒト抗-PTH抗体およびその使用に関する。このような完全なヒト抗体は、非ヒト配列を含む抗体と比較して、改善された薬物動態学的特性および安全特性という利点を有し、それゆえ、ヒトでの免疫原性を有さないと考えられる。本明細書に記載のスクリーニング方法と組み合わせたデュアル抗原免疫化方法の使用を介して、治療用途に有用である、レアな親和性およびin vivoで長い作用時間を有するモノクローナル抗体が見出された。加えて、本明細書においてなされたin vivoでの中和研究によって、非常に治療用途に優れた抗-PTH抗体については、高い親和性、好ましくはナノモルの範囲の、より好ましくはピコモル範囲の高い親和性を有するべきであることが示された。本明細書に記載の抗-PTH抗体は、優先的かつ特異的にPTHに結合することが見出された。
【0033】
したがって、本発明の実施態様によれば、PTHに結合する単離した抗体、またはそれらの断片が供給される。この業界で知られているように、抗体は、有利には、例えば、モノクローナル、キメラおよび/またはヒト抗体とすることができる。本発明の実施態様によれば、また、これらの細胞を産生する細胞が供給される。
【0034】
加えて、本発明の実施態様によれば、病気の診断または治療のための、これらの抗体の使用が供給される。例えば、本発明の実施態様によれば、副甲状腺機能亢進症に関連したPTHの発現を阻害する方法および抗体が供給される。好ましくは、抗体は、原発性および二次性副甲状腺機能亢進症を治療するのに使用される。このような治療に関連して、本明細書に記載の抗体を含む製造品が供給される。加えて、甲状腺機能亢進症をスクリーニングするための本明細書に記載の発明による抗体を含むアッセイキットが供給される。
【0035】
抗-PTH mAb 183抗体などの本明細書に記載の発明の抗体は、高い親和性、顕著な中和活性、ならびに維持された半減期および長い作用時間を有する。抗-PTH mAb 183抗体などの本明細書に記載の発明の抗-PTH抗体は、Alzet浸透圧ポンプによって50μg/kg/dayのヒトPTH(1-34)を皮下に投与した通常のSprague-Dawleyラットにおける非結合のPTHレベルを、3mg/kgの抗体の静脈内単回投与後少なくとも48時間、少なくとも50%まで減少させる(直接アッセイによってまたはPTH生物活性のバイオマーカーによって測定)。
【0036】
したがって、本明細書に記載の抗体は、治療有用性を有する。例えば、抗-PTH mAb 183抗体などの本発明による抗体の単回投与によって、24から36時間、好ましくは48から60時間、より好ましくは72から84時間、患者の血清の非結合PTHのレベルを、甲状腺機能亢進症のレベルから通常のレベルまたは通常に近いレベルへと減少させる。同じように、抗-PTH mAb 183抗体などの本発明による抗-PTH抗体の少なくとも一回の投与によって、患者の循環PTHレベルを、投与前のレベルに対して約25%まで、好ましくは約50%まで、より好ましくは約75%まで減少させることができ、好ましくは、約24から36時間、好ましくは48から60時間、より好ましくは72から84時間このような減少を維持する。
【0037】
本発明の抗体に関する更なる実施態様、特徴等は、以下に更に詳細に記す。
【0038】
(配列表)
それぞれのヒト抗-PTH抗体の重鎖および軽鎖可変ヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、以下の表1に中身を示した配列表において定める。
【0039】
【表1A】

【0040】
【表1B】

【0041】
(定義)
他に定義しない限り、本明細書に記載の発明に関連する科学および技術用語は、当業者によって一般的に理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈によって他に必要とされない限り、単数形の語は複数形を含み、複数形の語は単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載する細胞および組織培養、分子生物学、ならびにタンパク質およびオリゴまたはポリヌクレオチド化学およびハイブリダイゼーションの技術、ならびにこれらに関して使用する名称は、当分野においてよく知られており一般的に使用されている名称である。組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養および形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)用の、標準的な技法を使用する。酵素反応および精製技法は、製造者の仕様書に従い、あるいは当分野で一般的に行われているように、あるいは本明細書に記載するのと同様に行う。前述の技術および手順は、当分野でよく知られている従来の方法に従い、本明細書中に引用し論じる様々な一般的およびさらに詳細な参照文献中に記載されたのと同様に一般的に行う。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual(2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. 1989)を参照のこと。本明細書に記載する、分析化学、合成有機化学、ならびに医療および薬剤化学の実験手順および技法に関して使用する名称は、当分野においてよく知られており一般的に使用されている名称である。化学合成、化学分析、医薬調製、配合、および送達、ならびに患者の治療用の、標準的な技法を使用する。
【0042】
本明細書で使用する場合、以下の用語は、他に指示が無い限り、以下の意味を有すると理解される。
【0043】
本明細書で使用する、用語「単離したポリヌクレオチド」は、ゲノム、cDNA、または合成起源、あるいはこれらのいくつかの組合せのポリヌクレオチドを意味するものとし、その起源によって、「単離したポリヌクレオチド」は、(1)「単離したポリヌクレオチド」が自然に見られるポリヌクレオチドの全体または一部分とは結合していない、(2)自然では連結していないポリヌクレオチドと動作可能に連結している、あるいは(3)大きな配列の一部分として自然には存在しない。
【0044】
本明細書で言及する用語「単離したタンパク質」は、cDNA、組換えRNA、または合成起源、あるいはこれらのいくつかの組合せのタンパク質を意味するものとし、その起源、または派生源によって、「単離したタンパク質」は、(1)自然に見られるタンパク質とは結合していない、(2)同じ供給源由来の他のタンパク質を含まない、例えばマウスのタンパク質を含まない、(3)異種由来の細胞によって発現される、あるいは(4)自然には存在しない。
【0045】
用語「ポリペプチド」は、ネイティブなタンパク質、断片、またはポリペプチド配列のアナログを指すための一般用語として本明細書では使用する。それ故、ネイティブなタンパク質、断片、およびアナログは、ポリペプチド種である。本発明の好ましいポリペプチドは、ヒト重鎖イムノグロブリン分子およびヒトkappa軽鎖イムノグロブリン分子、ならびに重鎖イムノグロブリン分子と軽鎖イムノグロブリン分子(例えばkappa軽鎖イムノグロブリン分子)を含む組合せ、およびこの逆によって形成される抗体分子、ならびにこれらの断片およびアナログを含む。
【0046】
本明細書で使用し物体に適用する、用語「自然に存在する」は、物体を自然中で見つけることができることを指す。例えば、自然から単離することができ、研究室または他の場所において人間によって故意に改変されていない、(ウイルスを含めた)生物中に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、自然に存在する。
【0047】
本明細書で使用する用語「動作可能に連結した」は、それらをその意図する形式で機能させることが可能である関係にあるように記載される要素の位置を指す。コード配列と「動作可能に連結した」制御配列は、コード配列の発現がその制御配列と適合性がある条件下で得られるように連結している。
【0048】
本明細書で使用する用語「制御配列」は、それらが連結するコード配列の発現およびプロセシングに影響を与えるのに必要な、ポリヌクレオチド配列を指す。このような制御配列の性質は、宿主生物に応じて異なる;原核生物では、このような制御配列には一般にプロモーター、リボソーム結合部位、および転写停止配列を含み;真核生物では、一般に、このような制御配列には、プロモーターおよび転写停止配列を含む。用語「制御配列」は、その存在が発現およびプロセシングに必要なあらゆる要素を少なくとも含み、その存在が有利である他の要素、例えばリーダー配列および融合パートナー配列も含むことができるものとする。
【0049】
本明細書で言及する用語「ポリヌクレオチド」は、少なくとも10塩基長のポリマー形態のヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドのいずれか、あるいはいずれかのタイプのヌクレオチドの改変形態を意味する。この語は、一本鎖および二本鎖形態のDNAを含む。
【0050】
本明細書で言及する用語「オリゴヌクレオチド」は、自然に存在するヌクレオチド、ならびに自然に存在する、および自然に存在しないオリゴヌクレオチド結合によって1つに連結した改変型ヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、200塩基以下の長さを一般に含むポリヌクレオチドのサブセットである。好ましくはオリゴヌクレオチドは10〜60塩基長であり、最も好ましくは12、13、14、15、16、17、18、19、または20〜40塩基長である。通常オリゴヌクレオチドは、例えばプローブ用の一本鎖であるが、オリゴヌクレオチドは、例えば遺伝子ミュータントの構築において使用するための二本鎖であってよい。本発明のオリゴヌクレオチドは、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドであってよい。
【0051】
本明細書で言及する用語「自然に存在するヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む。本明細書で言及する用語「改変ヌクレオチド」は、改変または置換された糖基などを有するヌクレオチドを含む。本明細書で言及する用語「オリゴヌクレオチド結合」は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニラデード、ホスホロアミデートなどのオリゴヌクレオチド結合体を含む。例えばLaPlanche et al, Nucl.Acids Res.14: 9081(1986); Stec et al., J.Am.Chem.Soc.106: 6077(1984); Stein et al., Nucl.Acids Res.16: 3209(1988); Zon et al., Anti-Cancer Drug Design 6: 539(1991); Zon et al., Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach、pp.87〜108 (F.Eckstein、Ed.、Oxford University Press、Oxford England(1991)); Stec et al., 米国特許第5151510号; Uhlmann and Peyman Chemical Reviews 90: 543(1990)を参照のこと。望むならば、オリゴヌクレオチドは検出用の標識を含むことができる。
【0052】
本明細書で言及する用語「選択的にハイブリダイズする」は、検出可能かつ特異的に結合することを意味する。本発明のポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、およびそれらの断片は、感知可能な量の非特異的核酸と検出可能な結合を最少にするハイブリダーゼーションおよび洗浄条件下において、核酸鎖と選択的にハイブリダイズする。高ストリンジェンシー条件を使用して、当分野で知られており本明細書で論じるのと同様の、選択的ハイブリダーゼーション条件を得ることができる。一般に、本発明のポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、および断片と、対象とする核酸配列の間の核酸配列相同性は、少なくとも80%、およびより典型的かつ好ましくは少なくとも85%、90%、95%、99%、および100%相同性であろう。それらの配列の間に、部分的または完全な同一性が存在する場合、2つのアミノ酸配列は相同的である。例えば85%の相同性は、最大にマッチさせて2つの配列をアラインメントさせた場合に、85%のアミノ酸が同一であることを意味する。(マッチさせた2つの配列のいずれかの)ギャップがマッチングを最大にする際に与えられ;5以下のギャップ長が好ましく、2以下がより好ましい。あるいは好ましくは、2つのタンパク質配列(または少なくとも30アミノ酸長のそれらに由来するポリペプチド配列)は、変異データマトリクスおよび6以上のギャップペナルティーを用いるプログラムALIGNを使用して、それらが(標準偏差単位で)5を超えるアラインメントスコアを有する場合、この語を本明細書で使用するように相同的である。Dayhoff, M.O., in Atlas of Protein Sequence and Structure, Vol. 5, 101-110 および Supplement 2 to Vol. 5, 1-10 (National Biomedical Research Foundation 1972)を参照のこと。2つの配列またはその一部分は、ALIGNプログラムを使用して最適にアラインメントをとるとき、それらのアミノ酸が50%以上同一である場合、より好ましくは相同的である。用語「〜に対応する」は、本明細書で、ポリヌクレオチド配列が参照ポリヌクレオチド配列の全体または一部分と相同的である(すなわち、進化上厳密には関連していないが同一で
ある)こと、あるいはポリヌクレオチド配列が参照ポリヌクレオチド配列と同一であることを意味するように使用する。対照的に、用語「〜と相補的である」は、を本明細書で、相補配列が参照ポリヌクレオチド配列の全体または一部分と相同的であることを意味するように使用する。例示のため、ヌクレオチド配列「TATAC」は参照配列「TATAC」に対応し、参照配列「GTATA」と相補的である。
【0053】
以下の用語を使用して、2つ以上のポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の配列関係を記載する:「参照配列」、「比較ウインドウ」、「配列同一性」、「配列同一性の割合」、および「実質的同一性」。「参照配列」は、配列比較用の基盤として使用する定義された配列であり、参照配列は、大きな配列のサブセット、例えば配列表中に与えられる完全長cDNAまたは遺伝子配列のセグメントとして存在してよく、あるいは完全なcDNAまたは遺伝子配列を含むことができる。一般に参照配列は、少なくとも18ヌクレオチドまたは6アミノ酸長であり、頻繁には少なくとも24ヌクレオチドまたは8アミノ酸長であり、しばしば少なくとも48ヌクレオチドまたは16アミノ酸長である。2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、(1)2つの分子間で類似している配列(すなわち、完全なポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の一部分)をそれぞれ含むことができ、(2)2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列間で異なる配列をさらに含むことができるので、2つ(またはそれを超える)分子間の配列の比較は、「比較ウインドウ」で2分子の配列を比較して、局所領域の配列類似性を確認および比較することによって典型的には行う。本明細書で使用する「比較ウインドウ」は、少なくとも18の隣接ヌクレオチド位置または6アミノ酸の概念上のセグメントを指し、ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、少なくとも18の隣接ヌクレオチドまたは6アミノ酸配列の参照配列と比較することができ、比較ウインドウ中のポリヌクレオチド配列の一部分は、2配列の最適アラインメント用の(付加または欠失を含まない)参照配列と比較して、20パーセント以下の付加、欠失、置換など(すなわちギャップ)を含むことができる。比較ウインドウを一直線に並べるための配列の最適アラインメントは、Smith and Waterman, Adv.Appl, Math.2: 482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch J.Mol.Biol.48: 443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman, Proc. Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)85: 2444(1988)の類似性検索法によってこれらのアルゴリズムをコン
ピュータで実行することによって(GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA in the Wisconsin Geneticsソフトウェアパッケージリリース7.0、(Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、Wis.)、Geneworks、またはMacVectorソフトウェアパッケージ)、あるいは調査によって行うことができ、様々な方法によって生じる最適アラインメント(すなわち、比較ウインドウで最も高い相同性の割合をもたらす)を選択する。
【0054】
用語「配列同一性」は、2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列が、比較ウインドウで(すなわち、ヌクレオチド毎または残基毎のベースで)同一であることを意味する。用語「配列同一性の割合」は、比較ウインドウで2つの最適にアラインメントをとる配列を比較すること、同一の核酸塩基(例えばA、T、C、G、UまたはI)あるいは残基が両方の配列に存在する位置の数を測定してマッチする位置の数を得ること、マッチする位置の数を比較ウインドウ中の位置の全体数(すなわちウインドウサイズ)で割ること、およびその結果に100を掛けて配列同一性の割合を得ることによって計算する。本明細書で使用する用語「実質的同一性」は、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の性質を示し、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸は、少なくとも18ヌクレオチド(6アミノ酸)位置の比較ウインドウ、頻繁には、少なくとも24〜48ヌクレオチド(8〜16アミノ酸)位置のウインドウで参照配列と比較して、少なくとも85パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも90〜95パーセントの配列同一性、さらに通常では少なくとも99パーセントの配列同一性を有する配列を含み、配列同一性の割合は、比較ウインドウで参照配列の合計20パーセント以下の欠失または付加を含むことができる配列と、参照配列を比較することによって計算する。参照配列は、より大きな配列のサブセットであってよい。
【0055】
本明細書で使用するように、20個の従来のアミノ酸およびそれらの略称は従来の使用に従う。Immunology-A Synthesis (2d ed., Golub, E.S. and Gren, D.R. eds., Sinauer Associates, Sunderland, Mass. (1991))を参照のこと。この文献は、参照によって本明細書に導入される。20個の従来のアミノ酸の立体異性体(例えば、D-アミノ酸)、非天然アミノ酸、例えばα-、α-二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸など、乳酸、および他の特殊なアミノ酸も、本明細書に記載の発明のポリペプチドの適切な要素とすることができる。特殊なアミノ酸の例には、4-ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、ε-N,N,N-トリメチルリシン、ε-N-アセチルリシン、O-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリシン、σ-N-メチルアルギニン、ならびに他の類似のアミノ酸およびイミノ酸(例えば4-ヒドロキシプロリン)がある。本明細書で使用するポリペプチド表記では、標準的な使用および慣習に従い、左手方向がアミノ末端方向であり、右手方向がカルボキシ末端方向である。
【0056】
同様に、他に示さない限り、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左手の末端が5'末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左手方向を5'方向と呼ぶ。5'から3'への新生RNA転写物の付加の方向を転写方向と呼び、RNAと同じ配列を有するDNA鎖上の5'からRNA転写物の5'末端の配列領域を「上流配列」と呼び、RNAと同じ配列を有するDNA鎖上の3'からRNA転写物の3'末端の配列領域を「下流配列」と呼ぶ。
【0057】
ポリペプチドに適用した場合、用語「実質的同一性」は、2つのペプチド配列が、デフォルトギャップ加重値を使用するプログラムGAPまたはBESTFITなどによって、最適にアラインメントさせた時に、少なくとも80パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性、より好ましくは少なくとも95パーセントの配列同一性、および最も好ましくは少なくとも99パーセントの配列同一性を共有することを意味する。同一ではない残基の位置は、保存アミノ酸置換が異なることが好ましい。保存アミノ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群はグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり;脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群はセリンおよびスレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群はアスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群はフェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群はリシン、アルギニン、およびヒスチジンであり;ならびに硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群はシステインおよびメチオニンである。好ましい保存アミノ酸置換群はバリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。
【0058】
本明細書で論じるように、抗体またはイムノグロブリン分子のアミノ酸配列をわずかに変化させたバリアントは、本発明によって含まれるものとして企図される、ただし、アミノ酸配列の変化は少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、および最も好ましくは99%を保つものとする。特に、保存アミノ酸の置換が企図される。保存置換は、それらの側鎖に関連性を有するアミノ酸のファミリー内で起こる置換である。遺伝的にコードされているアミノ酸は一般に以下のファミリーに分けられる:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸、(2)塩基性=リシン、アルギニン、ヒスチジン、(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンおよび(4)非電荷極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン。より好ましいファミリーは: 脂肪族ヒドロキシファミリーであるセリンおよびスレオニン; アミド含有ファミリーであるアスパラギンおよびグルタミン; 脂肪族ファミリーであるアラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン;かつ、芳香族ファミリーであるフェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシン、である。例えば、ロイシンとイソロイシンまたはバリン、アスパラギン酸とグルタミン酸、スレオニンとセリンの単離置換、またはあるアミノ酸と構造上関連があるアミノ酸の同様の置換は、特にその置換がフレームワーク内のアミノ酸と関係がない場合は、生成する分子の結合または性質に対して重大な影響はないと予想することが妥当である。アミノ酸の変化が機能性ペプチドをもたらすかどうかは、ポリペプチド誘導体の特異的活性をアッセイすることによって容易に決定することができる。アッセイは本明細書に詳細に記載する。抗体またはイムノグロブリン分子の断片またはアナログは、当業者によって容易に調製することができる。断片またはアナログの好ましいアミノおよびカルボキシ末端は、機能性ドメインの境界近辺に存在する。構造性および機能性ドメインは、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列データと、公のまたは専有の配列データベースを比較することによって同定することができる。コンピュータによる比較法を使用して、既知の構造および/または機能の他のタンパク質中に存在する、配列モチーフまたは予想されるタンパク質立体配座ドメインを同定することが好ましい。既知の三次元構造へと折りたたまれているタンパク質配列を同定するための方法が知られている。Bowie et al., Science 253: 164 (1991)。したがって前述の例は、当業者は、本発明において構造性および機能性ドメインを定義するのに使用することができる配列モチーフおよび構造の立体配座を見分けることができることを実証する。
【0059】
好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させる、(2)酸化に対する感受性を低下させる、(3)タンパク質複合体形成に関する結合親和性を変える、(4)結合親和性を変える、および(4)このようなアナログの他の物理化学的または機能的性質を与えるかまたは変える置換である。アナログは、天然のペプチド配列以外の様々なムテイン配列を含むことができる。例えば、1つまたは多数のアミノ酸置換(好ましくは保存アミノ酸置換)は、天然の配列に(好ましくは、分子間接触部分を形成するドメインの外側のポリペプチド部分に)作製することができる。保存アミノ酸置換は、親配列の構造特性を実質的に変えないはずである(例えば、置換アミノ酸は、親配列中に存在するヘリックスを破壊する、あるいは親配列を特徴付ける他のタイプの二次構造を乱す傾向はないはずである)。当分野で認められているポリペプチドの二次構造および三次構造の例は、Proteins, Structures and Molecular Principles (Creighton, Ed., W.H.Freeman and Company, New York (1984));Introduction to Protein Structure (Branden, C. and Tooze, J. eds., Garland Publishing, New York, N.Y. (1991));およびThornton et al., Nature 354: 105 (1991)中に記載されている。
【0060】
本明細書で使用する用語「ポリペプチド断片」は、アミノ末端および/またはカルボキシ末端欠失を有するが、残りのアミノ酸配列は、例えば完全長cDNA配列から推定される天然の配列中の対応する位置と同一であるポリペプチドを指す。断片は、典型的には少なくとも5、6、8または10アミノ酸長、好ましくは少なくとも14アミノ酸長、より好ましくは少なくとも20アミノ酸長、通常は少なくとも50アミノ酸長、およびさらにより好ましくは少なくとも70アミノ酸長である。本明細書で使用する用語「アナログ」は、推定アミノ酸配列の一部分と実質的同一性を有し、以下の特性:(1)適切な結合条件下でのPTHへの特異的結合、(2)適切なPTH結合をブロックする能力、(3)in vitroまたはin vivoでのPTH発現細胞の増殖お詐害する能力、の少なくとも1つを有する、少なくとも25アミノ酸のセグメントを含むポリペプチドを指す。典型的には、ポリペプチドアナログは、自然に存在する配列との保存アミノ酸置換(または付加または欠失)を含む。アナログは、典型的には、少なくとも20アミノ酸長、好ましくは少なくとも50アミノ酸長以上であり、しばしば完全長の天然のポリペプチドと同じ長さであってよい。
【0061】
ペプチドアナログは、鋳型ペプチドの性質と類似の性質を有する非ペプチド薬剤として、製薬産業において一般的に使用されている。これらのタイプの非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣体」または「模倣ペプチド」と呼ばれる。Fauchere, J.Adv.Drug Res.15: 29(1986); Veber and Freidinger, TINS p.392 (1985);および Evans et al., J.Med.Chem. 30: 1229 (1987)。これらの文献は、参照によって本明細書に導入される。このような化合物は、コンピュータによる分子モデリングによって開発されることが多い。治療上有用なペプチドと構造的に類似しているペプチド模倣体を使用して、同等の治療または予防効果を生み出すことができる。一般に、模倣ペプチドは、ヒト抗体などの、典型的なポリペプチド(すなわち、生化学的性質または薬理学的活性を有するポリペプチド)と構造的に類似しているが、当分野でよく知られている方法によって、-CH2NH-、-CH2S-、-CH2-CH2-、-CH=CH- (シスおよびトランス)、-COCH2-、-CH(OH)CH2-、および-CH2SO-からなる群から選択される結合によって場合によっては置換されている1つまたは複数のペプチド結合を有する。同じタイプのD-アミノ酸(例えば、L-リシンの代わりにD-リシン)による、コンセンサス配列の1つまたは複数のアミノ酸の系統的置換を使用して、より安定性のあるペプチドを作製することができる。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一なコンセンサス配列変異体を含むconstrained peptideを、当分野で既知の方法によって作製することができる(Rizo and Gierasch Ann.Rev.Biochem. 61: 387 (1992) 参照によって本明細書に導入する);例えば、ペプチドを環化する分子間ジスルフィド架橋を形成することができる内部システイン残基を加えることによって、作製することができる。
【0062】
「抗体」または「抗体ペプチド」は、インタクトな抗体、または、インタクトな抗体と特異的に競合するインタクトな抗体の結合断片を指す。組換えDNA技法によって、あるいはインタクトな抗体の酵素または化学的切断によって、結合断片を生成させる。結合断片にはFab、Fab'、F(ab')2、Fv、および単鎖抗体がある。「二重特異性」または「二機能性」抗体以外の抗体は、その結合部位のそれぞれが同一であると理解される。過剰な抗体によって、カウンター受容体(counterreceptor)と結合する受容体の量を、(in vitro競合結合アッセイで測定して)少なくとも約20%、40%、60%または80%、およびさらに通常は約85%より多く減少させるとき、抗体は受容体とカウンター受容体の接着を実質的に阻害する。
【0063】
用語「エピトープ」は、イムノグロブリンまたはT細胞受容体と特異的に結合することができる任意のタンパク質抗原決定基を含む。エピトープ抗原決定基は、一般に、アミノ酸または糖側鎖などの分子である化学的活性を有する表面基からなり、特異的な三次元構造特性、および特異的な電荷特性を一般に有する。解離定数が≦1μM、好ましくは≦100nM、最も好ましくは≦10nMであるとき、抗体は抗原と特異的に結合すると言える。
【0064】
用語「剤(物質)」は、本明細書において、化学化合物、化学化合物の混合物、生物マクロ分子、または生物物質から作製した抽出物を表すように使用する。
【0065】
本明細書の目的における「活性」または「活性な」は、ネイティブなまたは自然に存在するPTHポリペプチドの生物学的活性および/または免疫学的活性を保持するPTHポリペプチドの形態を指す。ここで、「生物学的」活性は、ネイティブなまたは自然に存在するPTHポリペプチドが有する抗原性エピトープに対する抗体の産生を誘導する能力以外に、ネイティブなまたは自然に存在するPTHポリペプチドによって引き起こされる生物学的機能(阻害機能または刺激機能のいずれか)を指し、「免疫学的」活性は、ネイティブなまたは自然に存在するPTHポリペプチドが有する抗原性エピトープに対する抗体の産生を誘導する能力を指す。
【0066】
「治療」は、治療上の処置および予防的なまたは予防手段を指し、治療により、対象者が標的病態または疾患を予防する、または遅らせる(緩和する)ことができる。治療が必要な対象者は、すでに疾患を有する対象者だけではなく、疾患にかかりやすい対象者または疾患を予防している対象者を含む。
【0067】
「哺乳類」は、ヒト、他の霊長類(サル、チンパンジーおよびゴリラ等)、家畜および農業用家畜、ならびに、動物園にいる動物、研究用動物、またはペット動物(イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ、げっ歯類等)等を含む、哺乳類に分類される任意の動物を指す。治療の目的のためには、哺乳類は、ヒトであることが好ましい。
【0068】
本明細書に使用される「担体」は、使用する用量および濃度で細胞または哺乳類に曝露した時に、これらに対して非毒性である、医薬的に許容可能な担体、賦形剤、または安定化剤を含む。たびたび、生理学的に許容可能な担体は、水溶性のpH緩衝溶液である。生理学的に許容可能な担体の例には、リン酸、クエン酸、および他の有機酸塩などのバッファー;アスコルビン酸などの抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、またはイムノグロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニンまたはリジンなどのアミノ酸; グルコース、マンノース、またはデキストリンを含めた単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成カウンターイオン、および/またはTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(商標)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0069】
抗体のパパイン消化によって、「Fab」断片としても知られている2つの同一の抗原結合部位断片(それぞれが1つの抗原結合部位を有する)、および、残りの「Fc」断片(結晶化する能力を有することから命名された)を産生する。ペプシン処理によって、2つの抗原結合部位を含み、抗原を架橋させる能力を有する「F(ab')2」断片が生成する。
【0070】
「Fv」は、抗体の完全な抗原認識部位と抗原結合部位を保持している、抗体の最小断片である。この領域は、タイトで共有結合ではなくて会合している、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインのダイマーからなる。それぞれの可変ドメインの3つのCDRが相互作用し、VH-VLダイマーの表面の抗原結合部位を規定しているのは、この立体配置においてである。正確には、6つのCDRにより、抗体に、抗原結合特異性が付与される。しかしながら、例えば、1つの可変領域(例えば、FvダイマーのVHまたはVL部分、または、抗原に特異的な3つのCDRだけを含む、半分のFv)でさえも、抗原を認識して結合する能力を有している。しかしながら、おそらく、完全な結合部位よりも低い親和性であろう。
【0071】
Fab断面は、また、軽鎖ドメインと、重鎖の第一定常ドメイン(CH1)も含む。Fab断片は、抗体のヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加されていることによって、Fab’断片とは異なる。F(ab’)2抗体断片は、元来、ヒンジシステインを有するFab’のペアとして産生されてきた。抗体断片の他の化学的に結合させることも知られている。
【0072】
「固相」は、本明細書に記載の抗体が吸着することができる非水溶性のマトリクスを意味する。本明細書に含まれる固相の例には、部分的にまたは全体的に、ガラス(例えば、制御された細穴性ガラス)、多糖類(例えばアガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコールおよびシリコーンから形成される固相が含まれる。特定の実施態様においては、文脈に依存して、固相は、アッセイプレートのウェルを含みうる;他には、精製カラム(例えばアフィニティクロマトグラフィーカラム)がある。この用語は、また、米国特許第4,275,149号に記載されているような、分離した粒子の不連続固相を含む。
【0073】
用語「リポソーム」は、薬剤(PTHポリペプチドまたはPTHポリペプチドに対する抗体等)を哺乳類にデリバリーするのに有用な様々なタイプの脂質、リン脂質および/または界面活性剤から構成される小胞を示すのに、本明細書では使用される。リポソームのコンポーネントは、一般的に、生物の膜の脂質の配置に類似した、二重膜形態で配列している。
【0074】
用語「小分子」は、約500ダルトンより小さい分子量を有する分子を示すのに、本明細書では使用される。
【0075】
本明細書で使用する、「標識」または「標識された」は、例えば、放射線標識アミノ酸の導入、または標識アビジンによって検出することができるビオチン部分のポリペプチドへの結合(例えば、蛍光マーカー、または、光学的方法または比色方法によって検出することができる酵素活性を有するストレプトアビジ)による、検出可能なマーカーの導入を指す。特定の場合、標識またはマーカーは、治療用とすることができる。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する様々な方法が、この業界で知られており、使用することができる。ポリペプチドの標識の例には、制限するわけではないが、以下のものを含む:放射性同位体または放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、リン光発光性ランタノイド)、酵素標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光、ビオチン基、第二のレポーターによって認識されるあらかじめ決められたポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)を含むことができる。幾つかの実施態様においては、標識は、立体障害を減じるために、様々な長さのスペーサーアームによって結合させる。
【0076】
本明細書で使用する用語「医薬物質または薬」は、患者に適切に投与したときに、所望の治療効果を誘導することができる化学化合物または組成物を指す。本明細書の他の化学用語は、The McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms (Parker,S., Ed., McGraw-Hill, San Francisco(1985))により例示されるのと同様に、当分野での従来の使用に従い使用する。
【0077】
本明細書で使用する、「実質的に純粋」は、対象種が、存在する主要な種であることを意味し(すなわち、モル単位で、その種が組成物中の任意の他の個々の種より多量に存在する)、好ましくは、実質的に純粋な分画は、対象種が存在するすべてのマクロ分子種の少なくとも約50パーセントを(モル単位で)含む組成物である。一般に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在するすべてのマクロ分子種の約80パーセントより多くを、より好ましくは、約85%、90%、95%、および99%より多くを含む。対象種が、ほぼ均質になるまで精製される(一般的な検出法によっては、組成物中のコンタミ物質種を検出することができない)ことが最も好ましく、この場合組成物は、1種のマクロ分子種から本質的になる。
【0078】
用語「患者」は、ヒトおよび獣被験体を含む。
【0079】
(抗体構造)
基本的な抗体の構造単位は、テトラマーを含むことが知られている。それぞれのテトラマーは、2つの同一のポリペプチド鎖のペアから構成され、それぞれのペアは、1本の「軽鎖」(約25kDa)および1本の「重鎖」(約50〜70kDa)を有する。それぞれの鎖のアミノ末端部分は、抗原認識を主に担う約100〜110以上のアミノ酸の可変領域を含む。それぞれの鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主に担う定常領域を規定する。ヒト軽鎖は、kappaおよびλ軽鎖として分類される。重鎖はmu、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンとして分類され、それぞれIgM、IgD、IgA、およびIgEとして、抗体のアイソタイプを定義する。軽鎖および重鎖内では、可変領域と定常領域が、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって結びつき、重鎖は約10以上のアミノ酸の「D」領域も含む。Fundamental Immunology Ch.7 (Paul,W., ed. 2nd ed. Raven Press, N.Y. (1989))を一般的に参照のこと。それぞれの軽鎖/重鎖ペアの可変領域は、抗体結合部位を形成する。したがって、インタクトな抗体は2つの結合部位を有する。二重機能性または二重特異性抗体以外は、2つの結合部位は同一である。
【0080】
これらの鎖はいずれも、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる、3つの超可変領域によって結合した、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)という一般的な同じ構造を有する。それぞれのペアの2本の鎖由来のCDRは、フレームワーク領域によって整列しており、特異的エピトープとの結合を可能にする。N末端からC末端に、軽鎖および重鎖の両方は、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。それぞれのドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991) (1987))、または、Chothia and Leak, J. Mol. Biol. 196:901〜917 (1987); Chothia et al., Nature 342:878〜883 (1989)の定義に従う。
【0081】
二重特異性抗体または二重機能性抗体は、2つの異なる重鎖/軽鎖ペア、および2つの異なる結合部位を有する人工のハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab'断片の結合を含めた、様々な方法によって生成することができる。例えば、Songsivilai and Lachmann, Clin. Exp. Immunol. 79:315〜321 (1990); Kostelny et al., J. Immunol. 148:1547〜1553 (1992)を参照のこと。二重特異性抗体の生成は、従来の抗体の生成と比較すると、比較的骨の折れるプロセスである可能性があり、収率および純度は二重特異性抗体に関しては一般に低い。二重特異性抗体は、1つの結合部位を有する断片の形態では存在しない(例えばFab、Fab'、およびFv)。
【0082】
(ヒト抗体および抗体のヒト化)
ヒト抗体は、マウスまたはラットの可変および/または定常領域を有する抗体に関するいくつかの問題を回避する。このようなマウスまたはラット由来のタンパク質が存在することによって、抗体の迅速なクリアランスがもたらされる可能性があり、あるいは患者に抗体に対する免疫応答の発生がもたらされる可能性がある。マウスまたはラット由来の抗体の使用を回避するために、げっ歯類が完全ヒト抗体を産生するように、ヒト抗体の機能をげっ歯類に導入することによって、完全ヒト抗体を作製することができる。
【0083】
(ヒト抗体)
完全ヒト抗体を作製するための1つの方法は、ヒト重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子をゲノムに含むように遺伝子操作された、XenoMouse(登録商標)系統のマウスを使用することによる。例えば、2245kbおよび190kbの大きさのヒトの重鎖遺伝子座およびkappa軽鎖遺伝子座の生殖細胞系形状断片を含んでいる、XenoMouse(登録商標)マウスが、Green et al. Nature Genetics 7:13〜21 (1994)に記載されている。メガ塩基対サイズのヒト重鎖遺伝子座およびkappa軽鎖遺伝子座それぞれの生殖細胞形状YAC断片を利用することにより、Green et al.の成果は、ヒト抗体レパートリーの約80%より多くを導入することに拡張された。Mendez et al., Nature Genetics 15:146-56 (1997)および1996年12月3日に出願された米国特許出願番号08/759,620を参照せよ。これらは、参照として本明細書に導入される。更に、完全なラムダ軽鎖遺伝子座を含むXenoMouse(登録商標)マウスが生成された(2001年11月30日に出願された米国特許出願第60/334,508)。そして、複数のアイソタイプを生成するXenoMouse(登録商標)マウスが産生された(例えば、WO 00/76310を参照せよ)。XenoMouse(登録商標)系統は、Abgenix,Inc.(Fremont、CA)から入手可能である。
【0084】
XenoMouse(登録商標)の生成は、1990年1月12日に出願された米国特許出願第07/466,008号、1990年11月8日に出願された米国特許出願第07/610,515号、1992年7月24日に出願された米国特許出願第07/919,297号、1992年7月30日に出願された米国特許出願第07/922,649号、1993年3月15日に出願された米国特許出願第08/031,801号、1993年8月27日に出願された米国特許出願第08/112,848号、1994年4月28日に出願された米国特許出願第08/234,145号、1995年1月20日に出願された米国特許出願第08/376,279号、1995年8月27日に出願された米国特許出願第08/430,938号、1995年6月5日に出願された米国特許出願第08/464,584号、1995年6月5日に出願された米国特許出願第08/464,582号、1995年6月5日に出願された米国特許出願第08/463,191号、1995年6月5日に出願された米国特許出願第08/462,837号、1995年6月5日に出願された米国特許出願第08/486,853号、1995年6月5日に出願された米国特許出願第08/486,857号、1995年6月5日に出願された米国特許出願第08/486,859号、1995年6月5日に出願された米国特許出願第08/462,513号、1996年10月2日に出願された米国特許出願第08/724,752号、および1996年12月3日に出願された米国特許出願第08/759,620号、ならびに米国特許第6,162,963号、米国特許第6,150,584号、米国特許第6,114,598号、米国特許第6,075,181号、および米国特許第5,939,598号、ならびに日本国特許3068180B2号、日本国特許3068506B2号、および日本国特許3068507B2号中に、さらに論じられ示されている。Mendez et al. Nature Genetics 15:146〜156 (1997)、ならびにGreen and Jakobovits J. Exp. Med. 188:483〜495 (1998)も参照のこと。1996年6月12日に付与公開された欧州特許EP0463151B1号、1994年2月3日に公開された国際特許出願WO94/02602号、1996年10月31日に公開された国際特許出願WO96/34096号、1998年6月11日に公開されたWO98/24893、2000年12月21日に公開されたWO00/76310も参照のこと。前記の特許、特許出願および文献のそれぞれの開示は、参照によって完全に本明細書に導入される。
【0085】
他の手法では、GenPharm International,Inc.を含めた他者は、「小遺伝子座(minilocus)」手法を使用してきている。小遺伝子座手法では、Ig遺伝子座由来の数片(個々の遺伝子)を含ませることによって、外因性のIg遺伝子座を模倣する。したがって、1つまたは複数のVH遺伝子、1つまたは複数のDH遺伝子、1つまたは複数のJH遺伝子、mu定常領域、および第2の定常領域(好ましくはγ定常領域)を、動物中に挿入するための構築体に成形する。この手法は、Surani他への米国特許第5,545,807号、ならびにそれぞれLonbergおよびKayへの、米国特許第5,545,806号、米国特許第5,625,825号、米国特許第5,625,126号、米国特許第5,633,425号、米国特許第5,661,016号、米国特許第5,770,429号、米国特許第5,789,650号、米国特許第5,814,318号、米国特許第5,877,397号、米国特許第5,874,299号、および米国特許第6,255,458号、KrimpenfortおよびBernsへの米国特許第5,591,669号および米国特許第6,023.010号、Berns他への米国特許第5,612,205号、米国特許第5,721,367号、および米国特許第5,789,215号、ならびにChoiおよびDunnへの米国特許第5,643,763号、ならびに1990年8月29日に出願されたGenPharm Internationalの米国特許出願第07/574,748号、1990年8月31日に出願された米国特許出願第07/575,962号、1991年12月17日に出願された米国特許出願第07/810,279号、1992年3月18日に出願された米国特許出願第07/853,408号、1992年6月23日に出願された米国特許出願第07/904,068号、1992年12月16日に出願された米国特許出願第07/990,860号、1993年4月26日に出願された米国特許出願第08/053,131号、1993年7月22日に出願された米国特許出願第08/096,762号、1993年11月18日に出願された米国特許出願第08/155,301号、1993年12月3日に出願された米国特許出願第08/161,739号、1993年12月10日に出願された米国特許出願第08/165,699号、1994年3月9日に出願された米国特許出願第08/209,741号中に記載されている。これらは、参照によって本明細書に導入される。欧州特許0546073B1号、国際特許出願WO92/03918、WO92/22645、WO92/22647、WO92/22670、WO93/12227、WO94/00569、WO94/25585、WO96/14436、WO97/13852、およびWO98/24884、ならびに米国特許第5,981,175号も参照のこと。これらは、参照によって完全に本明細書に導入される。Taylor他、1992、Chen他、1993、Tuaillon他、1993、Choi他、1993、Lonberg他、(1994)、Taylor他、(1994)、およびTuaillon他、(1995)、Fishwild他、(1996)をさらに参照のこと。これらは、参照によって完全に本明細書に導入される。
【0086】
Kirinは、マウスからのヒト抗体の作製も実証しており、その中では、ミクロ細胞の融合によって、大きな染色体の数片、または染色体全体を導入している。欧州特許出願第773288号および欧州特許出願第843961号を参照のこと。これらの開示は、参照によって本明細書に導入される。
【0087】
Lidak Pharmaceutical(現在はXenorex)が、ヒトドナーからの悪性でない成熟末梢リンパ球の注入によって改変されたSCIDマウスにおける、ヒト抗体の産生を実証してきた。改変したマウスは、免疫原での刺激によって、ヒト抗体の産生からなるヒトドナーの免疫応答特性を示す。米国特許第5,476,996号および5,698,767号を参照せよ。これらの開示は、参照によって本明細書に導入される。
【0088】
ヒト抗-マウス抗体(HAMA)の応答によって、業界はキメラ抗体またはそれ以外の場合はヒト化抗体の調製に向かっている。キメラ抗体はヒト定常領域およびマウス可変領域を有するが、いくつかのヒト抗-キメラ抗体(HACA)の応答が、特に抗体の慢性的または多用量の使用において、観察されるであろうことが予想される。したがって、HAMAまたはHACA応答の懸念および/または影響を無効にするためには、PTHに対する完全ヒト抗体を与えることが望ましいと思われる。
【0089】
(ヒト化およびディスプレイ技法)
ヒト抗体の産生に関する前記記載のように、減少した免疫原性を有する抗体の産生には利点がある。ある程度は、これは、適切なライブラリーを用いたヒト化およびディスプレイ技法により達成することができる。マウス抗体または他の種の抗体によって、当分野に既知の技法を用いてヒト化抗体またはprimatized antibodyを調製することができることは明らかである。Winter and Harris, Immunol Today 14:43-46 (1993)およびWright et al., Crit, Reviews in Immunol. 12:125-168 (1992)を参照せよ。対象抗体は、組換えDNA技法によって遺伝子組換えを行い、CH1、CH2、CH3、ヒンジドメイン、および/またはフレームワークドメインを、対応するヒト配列で置換することができる(WO 92/02190および米国特許第5,530,101号、5,585,089号、5,693,761号、5,693,792号、5,714,350号および5,777,085号を参照せよ)。キメライムノグロブリン遺伝子の構築のためのIg cDNAの使用も当分野に知られている(Liu et al., P.N.A.S. 84:3439 (1987)およびJ. Immunol. 139:3521 (1987))。mRNAをハイブリドーマまたは抗体を産生する他の細胞から単離し、cDNAを産生するのに用いる。対象のcDNAは、特異的なプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応によって増幅することができる(米国特許第4,683,195号および4,683,202号)。代わりに、対象配列を単離するために、ライブラリーを調製し、スクリーニングすることができる。その後、抗体の可変領域をコードするDNA配列を、ヒトの定常領域配列に融合する。ヒトの定常領域遺伝子の配列は、Kabat et al., “Sequences of Proteins of Immunological Interest” N.I.H. publication no. 91-3242 (1991)に開示されている。ヒトのC領域遺伝子は、既知のクローンから容易に購入できる。アイソタイプの選択は、補体結合、または抗体依存性細胞毒性の活性のような、望むエフェクター機能によって導かれるだろう。好ましいアイソタイプは、IgG1、IgG3およびIgG4である。ヒトの軽鎖定常領域、kappaまたはlambdaのいずれかを使用することができる。その後、キメラヒト化抗体を一般的な方法によって発現させる。
【0090】
Fv、F(ab’).sub.2およびFabのような抗体断片は、インタクトなタンパク質の切断によって(例えば、プロテアーゼまたは化学切断によって)調製することができる。代替的な方法としては、切断した遺伝子が企図される。例えば、F(ab’)2断片の一部分をコードするキメラ遺伝子は、CH1ドメインおよびH鎖のヒンジ領域に続いて切断分子を産生するための翻訳停止コドンをコードするDNA配列を含む。
【0091】
重鎖および軽鎖J領域のコンセンサス配列は、その後にヒトのC領域セグメントにV領域セグメントを結合するために、J領域へ有用な制限酵素部位を導入するプライマーとして用いるためのオリゴヌクレオチドをデザインするために用いることができる。C領域cDNAは、部位特異的変異導入によって改変し、ヒト配列の類似部位に制限酵素部位を配置することができる。
【0092】
発現ベクターには、プラスミド、レトロウィルス、YAC、EBVに由来するエピソーム等が含まれる。便利なベクターは、任意のVHまたはVL配列を容易に挿入して発現できるように遺伝子組み換えされた適切な制限酵素部位を有する、機能的に完全なヒトCHまたはCLイムノグロブリン配列をコードするベクターである。このようなベクターにおいては、スプライシングは、通常、挿入されたJ領域中のスプライスドナー部位とヒトのC領域の上流のスプライスアクセプター部位の間、および、ヒトのCHエキソン内で生じるスプライス領域で生じる。ポリアデニル化および転写終結は、コード領域の下流のネイティブな染色体部位で生じる。得られたキメラ抗体は、レトロウィルスLTR、例えばSV-40 earlyプロモーター(Okayama et al., Mol. Cell. Bio. 3:280 (1983))、ラウス肉腫ウィルスLTR(Gorman et al., P.N.A.S. 79: 6777 (1982))およびマウス白血病ウィルスLTR(Grosschedl et al., Cell 41:885 (1985))を含む任意の強力なプロモーターに連結することができる。また、明らかなように、ネイティブなIgプロモーター等を使用することができる。
【0093】
更に、ヒト抗体または他の種からの抗体は、制限するわけではないがファージディスプレイ、レトロウィルスディスプレイ、リボソームディスプレイ、および他の技法を含む、ディスプレイタイプの技法によって、当分野に良く知られた手法を用いて産生することができ、得られた分子は、当分野に良く知られた手法により、アフィニティ成熟等の更なる成熟に供することができる。Wright and Harris, supra., Hanes andPlucthau, PNAS USA 94:4937-4942 (1997) (リボソームディスプレイ)、Parmley and Smith, Gene 73:305-318 (1988)(ファージディスプレイ)、Cwirla et al., PNAS USA 87:6378-6382 (1990)、Russel et al., Nucl. Acids Res. 21:1081-1085 (1993)、Hoganboom et al., Immunol. Reviews 130:43-68 (1992)、Chiswell and McCafferty, TIBTECH 10:80-84 (1992)、および米国特許第5,733,743号。ディスプレイ技法を利用してヒトでない抗体を産生するならば、このような抗体は、前記したようにヒト化することができる。
【0094】
これらの技法を用いて、抗体を、PTH発現細胞、PTHそれ自体、PTHの形態、これらのエピトープまたはペプチド、および、これらの発現ライブラリー(その後に、前記した活性について前記したスクリーニングを行うことができる)(米国特許第5,703,057号参照)により、産生することができる。
【0095】
(抗体の調製)
以下に示すように、XenoMouse(登録商標)技術を使用することによって、本発明の抗体を調製した。したがって、このようなマウスは、ヒトのイムノグロブリン分子および抗体を生成することができ、マウスのイムノグロブリン分子および抗体の生成に欠陥がある。本方法を達成するために使用される技術は、本明細書に開示する特許、出願、および参照文献中に開示されている。しかしながら、詳細には、マウスのトランスジェニック生成およびそれに由来する抗体の好ましい実施態様が、1996年12月3日に出願された米国特許出願第08/759,620号、および1998年6月11日に公開された国際特許出願WO98/24893、ならびに2000年12月21日に公開されたWO00/76310中に開示されている。これらの開示は、参照によって本明細書に導入される。Mendez et al., Nature Genetics 15: 146〜156 (1997)も参照のこと。この文献の開示は、参照によって本明細書に導入される。
【0096】
本明細書に記載する抗体は、ヒトPTHを中和でき、高い親和性を有する抗体である。更に、幾つかの実施態様においては、抗体はラットPTHと交差反応する。幾つかの異なる方法が、従来、ヒトPTHのN末端に対するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を産生するのに使用されてきた。これらの方法には、完全長のヒトPTH(hPTH)またはウシPTH(bPTH)(Vieira et al., Braz. J. med. Biol. Res. 21: 1005-1011 (1988))、ヒトPTHの合成ペプチド(1-34または1-37)(Visser et al., Acta Endocrinol. 90: 90-102 (1979); Logue et al., J. Immunol. Methods 137: 159-66 (1991))、ならびに、hPTH(1-10)、hPTH(9-18)およびhPTH(24-37)の多抗原性ペプチド(MAP)(Magerlein et al., Drug Res. 48: 783-87 (1998))を用いた免疫を含まれていた。これらの方法では、ヒトの治療に適した抗体を産生していなかった(治療方法のための本明細書の「治療的投与および配合物」とタイトル付けされたセクションを参照せよ)。hPTHに対して高い親和性を有する抗体は、ペプチドに対するB細胞寛容のために、調製することが困難である。しかしながら、Bradwellら(1999)は、ヒトPTH(1-34)およびウシPTH(1-34)MAPの混合物で、その後にhPTH(51-84)およびbPTH(51-86)を標的とするヒトおよびウシMAPの混合物で免疫することによって、手術ができない副甲状腺の腫瘍を有するヒト患者において、効率的にPTHに対するB細胞寛容を破ることを実証した。
【0097】
本明細書に記載の方法は、hPTHに対するB細胞寛容を克服することだけでなく、治療および診断用途に適した完全なヒトモノクローナル抗体を産生することを企図する。XenoMouse(登録商標)動物を、PTHの合成ペプチド(hPTH(1-34)およびrPTH(1-34))で免疫した。なぜならば、合成ペプチドは、内因性のヒトPTHに特異的な抗体を産生するのに使用して成功しているからである(Visser et al., (1979))。更にその上、マウスのPTHのN末端は、ヒトPTH(85%同一)およびラットPTH(91%同一)と高度に保存されているので、ペプチドの組み合わせを、分子模倣を介してマウスPTHに対するB細胞寛容を破るための免疫原として用いた。この方法により、高い親和性のヒト抗-ヒトPTH抗体を産生することができた。これらのペプチドは、両方とも、キーホールリンペットヘモシアニンと結合させ、これらのペプチドの免疫原性を増すためにフロイント完全アジュバントまたはフロイント不完全アジュバントで乳化した。
【0098】
免疫後、リンパ細胞(B細胞など)を、抗体を発現したマウスから回収し、回収した細胞系をミエローマ細胞系と融合させて、不死化したハイブリドーマ細胞系を作製する。これらのハイブリドーマ細胞系をスクリーニングして選択して、対象抗原に特異的な抗体を産生したハイブリドーマ細胞系を同定する。本明細書において、PTHに特異的な抗体を産生する複数のハイブリドーマ細胞系の作製を記載する。さらに、このような細胞系によって生じる抗体の特徴を、このような抗体の重鎖および軽鎖のヌクレオチドおよびアミノ酸配列分析とともに、本明細書に記載する。
【0099】
あるいは、ミエローマ細胞と融合させてハイブリドーマを作製する代わりに、B細胞を直接アッセイすることができる。例えば、免疫処置したXenoMouse(登録商標)のマウスからCD+19 B細胞を単離し、増殖させて、抗体分泌形質細胞へと分化させることができる。その後、細胞上清に由来する抗体を、PTH免疫原に対する反応性を、ELISAを用いてスクリーニングする。上清は、また、更なるエピトープマップのためにPTHの断片に対する免疫活性についてスクリーニングし、種の交差反応性を求めるためにラットPTHでスクリーニングする。その後、望む特異性を有する抗体を分泌する単一の形質細胞は、PTH特異的溶血プラークアッセイ(Babcook et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA、i93:7843〜7848 (1996))を使用して単離される。溶解の標的とされる細胞は、PTH抗原でコーティングされた、ヒツジ赤血球細胞(SRBC)であることが好ましい。対象とするイムノグロブリンおよび補体を分泌する形質胞培養物の存在下では、プラークの形成は、対象とする形質細胞の周囲での、特異的にPTHが媒介するヒツジ赤血球細胞の溶解を示す。プラークの中心の単一抗原特異的形質細胞は単離することができ、抗体の特異性をコードする遺伝情報は、単一形質細胞から単離する。B細胞培養物の代わりとして、抗原特異的形質細胞を、免疫化した動物のCD138+脾細胞またはリンパ球から直接単離することができる。単離方法と独立して、逆転写酵素PCRを使用して、抗体の重鎖および軽鎖可変領域をコードするDNAを、クローニングすることができる。その後、このようなクローニングされたDNAは、適切な発現ベクター、好ましくはpcDNAなどのベクターカセット、より好ましくはイムノグロブリン重鎖および軽鎖の定常ドメインを含むpcDNAベクター、中に、さらに挿入することができる。その後、作製したベクターを、宿主細胞、好ましくはCHO細胞にトランスフェクトし、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、あるいは所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適するように改変した、一般的な栄養培地中で培養することができる。PTHに特異的な抗体を産生する複数の単一形質細胞の単離を以下に記す。さらに、抗-PTH抗体の特異性をコードする遺伝物質を単離し、適切な発現ベクター中に導入し、その後、これを宿主細胞にトランスフェクトする。
【0100】
一般に、前述の細胞系によって産生した抗体は、完全ヒトIgG2重鎖とヒトkappa軽鎖を有していた。前記抗体は高親和性を有しており、固相および溶液相のいずれかによって測定すると、典型的には約10-6〜約10-12Mの解離定数(KD)を有していた。少なくとも10-9MのKDを有する抗体が好ましく、10-10、10-11または10-12MのKDを有する抗体がより好ましい。モノクローナル抗体と分泌抗原の相互作用のカイネティクスのため、抗体のKDが抗原の濃度を超えた場合、結合効率は大きく減少する。抗原のレベルを効率よく抑制するためには、抗体のKDを抗原濃度よりも小さくしなければならない。
【0101】
抗-PTH抗体の治療的な有用性における親和性の重要性に関して、例えば、コンビナトリアル技法によって抗-PTH抗体を産生し、結合親和性でこのような抗体を評価することができることは理解されよう。利用することができる1つのアプローチは、前記したように調製し、PTHに対して良好な親和性を有することがわかっている抗体から重鎖cDNAを取り出し、これを、前記したように調製し、同じようにPTHに対して良好な親和性を有することがわかっている第二の抗体の軽鎖cDNAと組み合わせて、第三の抗体を産生することである。得られた第三の抗体の親和性は、本明細書に記載されているように測定することができ、望ましい解離定数を有する抗体を単離し、特徴付ける。例えば、高い結合親和性を有する抗-PTH mAb 183および抗-PTH mAb 168抗体に基づいて、抗-PTH mAb 168に由来する重鎖cDNAを、抗-PTH mAb 183に由来する軽鎖cDNAと結合させることができ、得られた抗体は、結合についてアッセイすることができる。代わりに、前記した任意の抗体の軽鎖を、その軽鎖とペアにした時に、PTHに対して高い親和性を示すであろう重鎖の生成を補助するツールとして使用することができ、または、その逆も可能である。例えば、抗-PTH mAb 183の軽鎖または軽鎖可変領域を、重鎖または重鎖可変領域のライブラリーを用いて発現させることができる。このライブラリー中のこれらの重鎖可変領域は、ナイーブ動物から単離することができ、過免疫の動物から単離することができ、CDR領域が異なる可変重鎖配列を含むライブラリーから人工的に調製することができ、または、任意の重鎖可変領域遺伝子のCDR領域に多様性を持たせることができる任意の他の方法(ランダム変異または部位特異的変異)によって調製することができる。これらのCDR領域、特にCDR3は、抗-PTH mAb 183と最初にペアであった重鎖と、著しく異なる長さまたは配列一致性とすることができる。その後、得られたライブラリーを、PTHへの高親和性結合の点でスクリーニングすることができ、抗-PTH mAb 183と類似の特性を有する治療に適切な抗体分子(高い親和性および中和化)を産生することができる。重鎖または重鎖可変領域を用いた類似の方法を使用して、特徴的な軽鎖可変領域を有する治療に適切な抗体分子を産生することができる。更にその上、新規の重鎖可変領域、または軽鎖可変領域は、前記と同じ方法に使用して、新規の軽鎖可変領域、または重鎖可変領域を同定することができ、これらにより、新規の抗体分子を産生することができる。
【0102】
利用することができるもう1つのコンビナトリアルアプローチは、本明細書に記載した本発明による抗体において利用できることが実証された、生殖細胞系重鎖および/または軽鎖上、特に相補性決定領域(CDR)で変異を起こさせることである。得られた抗体の親和性は、本明細書に記載したように測定することができ、望む解離定数を有する抗体を単離し、特徴付ける。好ましいバインダーの選択において、同じものをコードする1つまたは複数の配列を使用して、前記したような組換え抗体を産生することができる。オリゴヌクレオチド上で変異を行う適切な方法は、当分野の当業者に知られており、例えば亜硫酸ナトリウムを用いた、化学的な変異、酵素を用いた誤りの導入、および紫外線照射への暴露を含む。本明細書に記載の本発明は、変異または他の任意の方法により産生されたか否かによらず、本明細書に定義したような実質的な一致性を、本明細書に明白に示した抗体に対して有する抗体を含む。更に、本明細書で定義したような保存型または非保存型アミノ酸置換を有する抗体(本明細書に明白に示した抗体により調製された)は、本明細書で記載した本発明の実施態様に含まれる。
【0103】
使用することができるもう1つのコンビナトリアルアプローチは、前記した抗体のCDR領域、特にCDR3を、他の可変領域遺伝子に由来するフレームワーク領域と関連して発現させることである。例えば、抗-PTH mAb 183の重鎖のCDR1(GYSFTSYWIG(配列番号89))、CDR2(IISPGDSDTRYSPSFQG(配列番号90))およびCDR3(QGDYVWGSYDS(配列番号91))を、他の重鎖可変領域のフレームワーク領域と関連して発現させることができる。同じように、抗-PTH mAb 183の軽鎖のCDR1(KSSQSLLDSDGKTYLY(配列番号92))、CDR2(EVSNRFS(配列番号93))およびCDR3(MPSIHLWT(配列番号94))を、他の軽鎖可変領域のフレームワーク領域と関連して発現させることができる。加えて、これらCDRの生殖細胞系配列(germline sequence)を、他の重鎖または軽鎖可変領域遺伝子(例えば、重鎖CDR2:IIYPGDSDTRYSPSFQG(配列番号95))と関連して発現させることができる。得られた特異性は、特異性および親和性によってアッセイすることができ、新規の抗体分子を産生することができる。
【0104】
更にその上、生殖細胞系D領域21-10に由来するPTHと相互作用することができる能力を有する重鎖CDR3を、作製することができる。このD領域の生殖細胞系形態の1つのリーディングフレームは、下線を引いたCDR3(YYDYVWGSYAYT(配列番号96))のコア結合領域をコードする。ランダムな隣接アミノ酸を有する、下線を引いたコア配列、またはその断片を発現し、抗-PTH mAb 183で同定したCDR3と類似の特異性を有する新規のCDR3を作製することができた。この新規な重鎖によって、元の抗-PTH mAb 183と比較して類似のまたは改善した結合特性を有する抗体を作製することができた。CDR3をコードするこのD領域に変異を導入し、抗-PTH mAb 183と機能的に等価な抗体を作製することができる。例えば、配列(DYVWGSY(配列番号97))のアスパラギン酸(「D」)を任意の他のアミノ酸へと変異させ、適切な軽鎖と組み合わせた場合、新規な抗体は、特異性および高親和性についてアッセイすることができる。同じように、V領域とJ領域の結合部をわずかに変化させることだけではなく、これら2つの軽鎖断片を結合するのに使用されるヌクレオチドの数および同一性を変更することにによっても、軽鎖のCDR3にコードされているアミノ酸を加え、および/または、取り除くことができる。
【0105】
好ましい実施態様においては、抗-PTH mAb 183の特性は、例えば、PTHに対する高親和性(10-10のKDよりも良い)、ヒトPTHまたはオーソロガスタンパク質のN末端上のエピトープの中和についての特異性、PTH応答性細胞のカルシウム流入を中和する能力、およびヒトPTHを注入したラットにおける高カルシウム血症を阻害する能力を含む。これらの例は、抗-PTH mAb 183と類似の特性を有する抗体の産生に役立つ本発明の配列を使用する、現在のこの業界での多くの可能性ある手段の例示である。現在の従来技術に任意に改良した、または、未来のまたは従来の手法を介して任意に産生した、抗-PTH mAb 183が有する前記特性を有する特徴的な抗体は、抗-PTH mAb 183と「機能的に同等」であり、それゆえ、本明細書に記載の発明の実施態様に含まれると考えられる。
【0106】
理解されているように、本明細書に記載の発明による抗体は、様々な細胞系中で発現させることができる。特定の抗体をコードする配列を、適切な哺乳類宿主細胞の形質転換用に使用することができる。形質転換は、米国特許第4,399,216号、米国特許第4,912,040号、米国特許第4,740,461号、および米国特許第4,959,455号(これらの特許は、参照によって本明細書に導入される)によって例示されるような、例えばウィルス中(またはウィルスベクター中)にポリヌクレオチドをパッケージ化すること、およびウィルス(またはベクター)を宿主細胞に導入すること、または当分野で知られているトランスフェクション手順による方法を含めた、ポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入するための、任意の知られている方法によるものであってよい。使用する形質転換手順は、形質転換される宿主に依存する。異種ポリヌクレオチドを哺乳類細胞中に導入するための方法は、当分野ではよく知られており、デキストラン仲介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン仲介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム中へのポリヌクレオチドの被包、およびDNAの核中への直接のマイクロインジェクションを含む。
【0107】
発現用の宿主として利用可能な哺乳動物細胞系は、当分野ではよく知られており、これらに限られないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、幼若ハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHepG2)、およびいくつかの他の細胞系を含めた、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞系を含む。特に好ましい細胞系は、どの細胞系が高い発現レベルを有し、構成的PTH結合性を有する抗体を産生するかどうかを、決定することによって選択する。
【0108】
(エピトープマッピング)
PTHに対する、本明細書で示される抗体の結合は、多くの方法によって調べることができる。例えば、PTHをSDS-PAGEに供して、イムノブロッティングによって分析することができる。SDS-PAGEは、還元剤が存在していない条件下または存在している条件下のいずれかで行うことができる。このような化学修飾により、システイン残基のメチル化がもたらされる。したがって、本明細書で記載した抗-PTH抗体がPTH上の直線状のエピトープに結合するかどうかを求めることができる。
【0109】
(表面活性化レーザー脱着イオン化)
本明細書で記すPTH抗体のエピトープのエピトープマッピングは、また、SELDIを用いて行うことができる。SELDI ProteinChip(登録商標)アレイは、タンパク質-タンパク質相互作用の部位を定義するために使用される。最初のインキュベーションおよび洗浄によって、Protein Chipアレイの表面上に共有結合によって固定化した抗体に、特異的に抗原が捕捉される。結合した抗原は、レーザー誘導脱着工程によって検出し、直接その質量を分析することができる。このような結合抗原の断片は、タンパク質の「エピトープ」として呼ばれる。
【0110】
SELDI方法により、迅速で、高感度で拡張可能な方法で、複合的な分子組成物中の個々のコンポーネントを、直接検出し、他のコンポーネントと関連して定量的にマッピングすることができる。SELDIは、レーザー誘導脱着工程によって、多くの検出する個々のタンパク質分子を捕捉して提示するために、表面化学の多様性を有するアレイを利用する。SELDI方法の成功は、表面(「チップ」)上での複数の機能の小型化および統合(それぞれは異なる技法に依存している)によって、部分的にもたらされた。SELDI BioChipおよび他のタイプのSELDIプローブは、それらが、個々の標的分子(例えば、タンパク質)または評価すべき分子群の捕捉、精製(分離)、提示、検出および特徴づけの活性な関与物となるような、表面「活性化」である。
【0111】
オリジナルサンプルのみをロードした、1機のSELDI protein BioChipによって、何千回も読み込むことができる。LumiCyteのSELDI protein Bio Chipは、1平方センチメートル当り、10,000もの設定可能なタンパク質結合位置を保持している。それぞれの位置には、多数の個々のタンパク質が存在していることが明らかにされている。それぞれの位置からのタンパク質組成物の情報を比較し、特徴的な情報のセットを組み合わせた場合、得られた組成物マップにより、選択的に、特異的なパターンまたは分子の「フィンガープリント」を求めるのに使用される特徴のセットを有するイメージが明らかにされる。異なるフィンガープリントは、健康の様々なステージ、病気の兆候、または適切な治療の実施に関連した病気からの回復に関連させることができる。
【0112】
SELDI方法は、4つのパートで、更に詳細に記載することができる。最初は、1つまたは複数の対象タンパク質を、サンプル調製もサンプルの標識も無しに、オリジナル物質から直接、ProteinChip Array上に捕捉、すなわち「結合」させる。第二の工程においては、化学的および生体分子「ノイズ」を減ずることによって、「シグナル対ノイズ」比を増幅させる。望まない物質を洗浄して取り除くことによって、チップ上に標的を選択的に保持させて、このような「ノイズ」を減少させる。さらに、捕捉された1つまたは複数の標的タンパク質は、標的についての直接的な情報(分子量)を供給する、迅速・高感度なレーザー誘導工程(SELDI)によって読み込まれる。最後に、アレイ内の1つまたは複数の位置の標的タンパク質は、1つまたは複数のチップ上での結合または修飾反応を行うことによって、in situで特徴付け、タンパク質の構造および機能を特徴付けることができる。
【0113】
(ファージディスプレイ)
線状ファージ上に提示した12残基のランダムペプチドのコンビナトリアルライブラリー(New England Biolabs)に、ProteinChip Arrayを適用することによって、本明細書で記載する抗-PTH抗体のエピトープを求めることができる。
【0114】
ファージディスプレイは、ペプチドをバクテリオファージのコートタンパク質との融合体として発現させて、ファージ粒子の表面に融合タンパク質を提示させる選択方法である。標的でコートしたプレートまたはチューブを用いて、ペプチドを提示するファージのライブラリーをインキュベートし、結合しないファージを洗浄して取り除き、特異的に結合したファージを溶出させることによって、パニングを行う。その後、溶出したファージを増幅し、更なる結合および増幅サイクルを通して、好ましい結合配列を有するプールを増幅する。3ラウンドまたは4ラウンド後、個々の結合クローンを、抗体をコートしたウェル上で行うファージELISAアッセイによって結合試験を行い、ポジティブクローンの特異的DNA配列を求める。
【0115】
本明細書に記載する抗-PTH抗体に対するパニングを複数回行った後、結合ファージを溶出し、結合ペプチドの同定および特徴のための更なる研究に供することができる。
【0116】
(診断的使用)
本明細書に記載の発明による抗体は、診断アッセイに、特にin vitroアッセイに、例えば、血流中の循環PTHのレベルを求めるための使用に有用である。PTH抗原の発現レベルに基づいて、患者が副甲状腺機能亢進症に罹患しているか、および/または、副甲状腺機能亢進症の重篤度を求めることができる。患者サンプル、好ましくは血液、より好ましくは血液血清を、副甲状腺機能亢進症の進行における様々な段階、および/または、この病気の診断治療の様々な時点で、患者から採取する。血液サンプル中のPTH抗原の濃度は、存在する抗原の量を特異的に求める方法を使用して求めることができる。このような方法には、例えば、本発明の抗体が好都合なことに不溶性のマトリクス(例えばポリマーマトリクス)上で固定化されているELISA法を含む。進展または治療の各段階の統計的に有意な結果を付与するサンプル群を使用して、病気の各段階の特性とみなすことができる抗原の濃度の範囲を明示することができる。
【0117】
研究の対象者の副甲状腺機能亢進症の段階を評価し、または、治療中の対象者の応答を特徴付けるために、血液サンプルを対象者から採取し、サンプル中に存在するPTH抗原の濃度を求める。このように得られた濃度は、値が低下する濃度範囲を同定するのに使用される。このように同定された範囲は、病気の進展の段階、または、診断する対象者の様々な群において同定された治療段階と関連があり、研究対象者の段階を供給する。
【0118】
サンプル中の遺伝子増幅および/または発現は、例えば、一般的なサザンブロッティング、mRNAの転写を定量するノザンブロッティング(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201-5205 (1980))、ドットブロッティング(DNA分析)、または、本明細書において供給される配列に基づく適切に標識したプローブを用いたin situ ハイブリダイゼーションによって、直接測定することができる。代わりに、DNA二本鎖、RNA二本鎖、およびDNA-RNAハイブリッド二本鎖またはDNA-タンパク質複合体を含む特異的な二本鎖を認識することができる抗体を使用することができる。前記抗体は、表面上での二本鎖の形成において、二本鎖に結合した抗体の存在が検出できるように、次に、標識することができ、二本鎖が表面に結合したアッセイを行うことができる。
【0119】
例えば、抗体断片を含む抗体は、PTHタンパク質の発現を定性的にまたは定量的に検出するのに使用することができる。前記したように、抗体は、好ましくは、検出可能な、例えば蛍光標識を備えており、結合を、光学顕微鏡、フローサイトメトリー、蛍光定量法、または当分野で既知の他の技法によってモニターすることができる。増幅した遺伝子が細胞表面タンパク質、例えば増殖因子をコードするならば、これらの技法は、特に適切である。当分野で知られているように、このような結合アッセイが好ましい。
【0120】
例えば、免疫蛍光顕微鏡または免疫電子顕微鏡によって、PTHタンパク質に結合する抗体のin situ検出を行うことができる。この目的のために、組織標本を患者から取り出し、標識抗体を、好ましくは生物サンプル上に抗体を重ねることによって、アプライする。この手法により、また、試験する組織中でマーカー遺伝子産物の分布を求めることができる。当分野の当業者にとっては、様々な組織学的手法は、in situ検出のために容易に利用できることは明らかであろう。
【0121】
異なる遺伝子発現を定量するための、最も高感度で最もフレキシブルな定量法の1つは、RT-PCRである。RT-PCRは、薬剤処理を行ったまたは行っていない通常組織および腫瘍組織中の異なるサンプル群のmRNAレベルを比較し、遺伝子発現のパターンを特徴づけし、密接に関連したmRNA間を区別し、RNA構造を分析するのに使用することができる。
【0122】
その最初の工程は、標的サンプルからmRNAを単離することである。開始物質は、典型的には、病気組織および対応する通常組織からそれぞれ単離した全RNAである。それゆえ、例えば、同じタイプの通常組織と比較するために、病気組織の凍結またはパラフィン包埋して固定化した(例えばホルマリン固定)サンプルからmRNAを抽出することができる。mRNAを抽出する方法は、当分野で良く知られており、Ausubel et al., Current Protocols of Molecular Biology, Jon Wiley and Sons (1997)を含む、分子生物学の通常のテキストに開示されている。パラフィン包埋組織からのRNA抽出方法は、例えば、Rupp and Locker, Lab Invest., 56:A67 (1987)、およびDe Andres et al., BioTechniques, 18:42044 (1995)に開示されている。特に、RNA単離は、製造者(Qiagen等)からの精製キット、バッファーセットおよびプロテアーゼを用いて、製造者の取扱説明書にしたがって行うことができる。例えば、培養液中の細胞からの全RNAは、Qiagen RNeasy mini-columnを用いて単離することができる。組織サンプルからの全RNAは、RNA Stat-60 (Tel-Test)を用いて単離することができる。
【0123】
RNAはPCRの鋳型として用いることはできないので、RT-PCRによるディファレンシャルな遺伝子発現分析の最初の工程は、cDNAへのRNA鋳型の逆転写であり、その後、PCR反応による指数的増幅を行う。2つの最も一般的に用いられる逆転写酵素は、トリ骨髄芽球症ウィルス逆転写酵素(AMV-RT)およびマウス白血病ウィルス逆転写酵素(MMLV-RT)である。発現プロファイリングの状況および目標に応じて、逆転写工程は、典型的には、特異的なプライマー、ランダムヘキサマー、またはオリゴ-dTプライマーを用いて行う。例えば、抽出したRNAは、製品の取扱説明書にしたがって、GeneAmp RNA PCR kit(Perkin Elmer, CA, USA)を用いて逆転写することができる。その後、得られたcDNAを、その後のPCR反応の鋳型として用いることができる。
【0124】
PCR工程には、様々な熱安定DNA依存性DNAポリメラーゼが使用できるにもかかわらず、典型的には、5’-3’ヌクレアーゼ活性を有するが3’-5’エンドヌクレアーゼ活性が欠如したTaq DNAポリメラーゼを使用する。それゆえ、TaqMan PCRでは、典型的には、TaqまたはTthポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性を利用して、標的増幅産物に結合したハイブリダイズプローブを加水分解する。しかし、同等の5’ヌクレアーゼ活性を有する任意の酵素を使用することができる。2つのオリゴヌクレオチドプライマーを、PCR反応の増幅産物を得るために使用される。第三のオリゴヌクレオチド、またはプローブは、2つのPCRプライマーの間に位置するヌクレオチド配列を検出するようにデザインされる。前記プローブは、Taq DNAポリメラーゼ酵素によって伸張せず、レポーター蛍光色素および蛍光クエンチャー色素で標識する。レポーター色素からの任意のレーザー誘導蛍光は、2つの色素がプローブ上に存在する時に互いに近接に位置する場合、クエンチャー色素によって消光する。増幅反応の間、Taq DNAポリメラーゼ酵素は、鋳型に依存して、プローブを切断する。結果として生じたプローブ断片は、溶液中で解離し、放出されたリポーター色素からのシグナルが、第二の蛍光色素の消光効果の影響を受けなくなる。新たな分子が合成されるごとに、リポーター色素の一分子が遊離し、消光されないリポーター色素の検出により、データの定量的解析がもたらされる。
【0125】
TaqMan RT-PCRは、市販の装置、例えば、ABI PRIZM 7700TM Sequence Detection SystemTM (Perkin-Elmer-Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)、またはLightcycler (Roche Molecular Biochemicals, Mannheim, Germary)等を用いて行うことができる。好ましい実施態様においては、5’ヌクレアーゼ手法は、ABI PRIZM 7700TM Sequence Detection SystemTMのようなリアルタイム定量PCR装置で行う。前記システムは、サーマルサイクラー、レーザー、電荷結合素子(CCD)カメラおよびコンピューターからなる。前記システムにより、サーマルサイクラーで、96穴フォーマットのサンプルを増幅する。増幅の間、レーザー誘導蛍光シグナルが、96穴全てについて光ファイバーケーブルによりリアルタイムに集められ、CCDで検出される。前記システムは、装置を操作するソフトウェアおよびデータを分析するソフトウェアを含む。
【0126】
5’ヌクレアーゼアッセイのデータは、最初は、Ct、すなわちスラッシュホールドサイクルとして表現される。前記で論じたように、蛍光の値は各サイクルの間で記録され、増幅反応におけるその時点までの増幅産物の量を表す。蛍光シグナルが統計的有意差で最初に記録された時が、スラッシュホールドサイクル(Ct)である。ΔCt値は、通常の細胞のRNAの発現と、病気組織の細胞のRNA発現を比較する場合に、核酸サンプルにおける特定の標的配列の最初の相対的なコピー数の定量的な測定値として使用される。
【0127】
エラーおよびサンプル間の変化を最小にするために、RT-PCRは、通常、内部標準を用いて行う。理想的な内部標準は、異なる種間でも一定のレベル発現し、実験処理によっては影響を受けない。遺伝子発現のパターンを標準化するのに最も頻度高く使用されているRNAは、ハウスキーピング遺伝子、グリセルアルデヒド‐3‐リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)およびβ‐アクチンのmRNAである。
【0128】
マイクロアレイ技法を用いて、ディファレンシャルな遺伝子発現を同定し、確認することができる。この方法においては、対象物のヌクレオチド配列を、マイクロチップ基板上にのせ、または配置する。その後、配置した配列を、対象細胞または組織に由来する特異的なDNAプローブとハイブリダイズさせる。
【0129】
マイクロアレイ技法の特異的な実施態様においては、cDNAクローンのPCRで増幅した挿入物を、密集したアレイの基板にアプライする。好ましくは、少なくとも10,000ヌクレオチド配列を基板にアプライする。それぞれ10,000エレメントでマイクロチップ上に固定化された、マイクロアレイ遺伝子は、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするのに適している。蛍光で標識したcDNAプローブを、対象組織から抽出されたRNAの逆転写によって、蛍光ヌクレオチドを挿入して産生する。チップにアプライする標識したcDNAプローブは、アレイ上のDNAの各スポットに選択的にハイブリダイズする。非特異的に結合しているプローブを除去するためのストリンジェントな洗浄後、チップを、共焦点レーザー顕微鏡によってスキャンする。それぞれのアレイエレメントのハイブリダイゼーションの定量によって、対応するmRNAの存在量を評価することができる。二色蛍光を用いた、2つの異なるRNAから生成した別々に標識したcDNAプローブは、アレイに対合してハイブリダイズする。それゆえ、それぞれ特異的な遺伝子に対応する2つのRNAからの転写産物の相対量が同時に求まる。ハイブリダイゼーションの小型スケールにより、多くの遺伝子の発現パターンの簡便で迅速な評価が可能になった。このような方法は、細胞当り数コピーしか発現しない珍しい転写産物を検出するのに必要な感度を有しており、少なくとも約2倍異なる発現レベルを再現性をもって検出できることが示されている(Schena et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93(20) L106-49)。核酸のハイブリダイゼーション方法およびマイクロアレイ技法は、当分野で良く知られている。
【0130】
(PTHアゴニストおよびアンタゴニスト)
本明細書に記載する本発明の実施態様は、また、PTHアゴニスト(模倣体)またはPTHアンタゴニストのいずれかとして機能するPTHタンパク質のバリアントにも関連している。PTHタンパク質のバリアントは、変異によって、例えば、分離した点変異またはPTHタンパク質の切断によって生成することができる。PTHタンパク質のアゴニストは、天然に存在する形態のPTHタンパク質の生物活性と、またはその一部と、同じ活性を実質的に保持することができる。PTHタンパク質のアゴニストは、例えば、PTHタンパク質を含む細胞内シグナル伝達カスケードの下流または上流の構成メンバーに競合的に結合することによって、天然に存在する形態のPTHタンパク質の1つまたは複数の活性を阻害することができる。それゆえ、特異的な生物効果は、制限された機能のバリアントを用いた治療によって除去することができる。1つの実施態様において、天然に存在する形態のタンパク質の生物活性の一部を有するバリアントによる患者の治療によって、天然に存在する形態のPTHタンパク質と比較して、患者への副作用を少なくすることができる。
【0131】
PTHアゴニスト(模倣体)またはPTHアンタゴニストのいずれかとして機能するPTHタンパク質のバリアントは、アゴニストまたはアンタゴニスト活性により、PTHタンパク質の変異体(例えば、切断変異体)のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって同定することができる。1つの実施態様においては、PTHバリアントの変化に富んだライブラリーは、核酸レベルでのコンビナトリアル変異によって調製され、変化に富んだ遺伝子ライブラリーによってコードされている。例えば、潜在的なPTH配列のディジェネレートセットが、個々のポリペプチドとして、またはその代わりに、PTH配列のセットを含むより大きな融合タンパク質のセット(例えば、ファージディスプレイ)として発現することができるように、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列へと酵素を用いてライゲーションさせることによってPTHバリアントの変化に富んだライブラリーを調製することができる。ディジェネレートオリゴヌクレオチド配列から潜在的なPTHバリアントのライブラリーを調製するのに使用することができる様々な方法が存在する。オートマチックDNA合成機によって、ディジェネレート遺伝子配列を化学的に合成することができ、その後、合成遺伝子を、適切な発現ベクターへライゲーションさせる。遺伝子のディジェネレートセットの使用により、1つの混合物中で、潜在的なPTHバリアント配列の望むセットをコードする全ての配列の提供が可能となる。ディジェネレートオリゴヌクレオチドを合成する方法は、当分野において既知である(例えば、Narang, Tetrahedron 39:3 (1983); Itakura et al., Annu Rev. Biochem. 53:323 (1984); Itakura et al., Science 198:1056 (1984); Ike et al., Nucl. Acid. Res. 11:477 (1983)を参照せよ)。
【0132】
(抗体療法の更なる方法)
本明細書で論じるように、PTH抗体の機能は、その操作形式の少なくとも一部分に対して重要であるようである。機能とは、例えばPTHに結合する抗-PTH抗体の活性を意味する。したがって、いくつかの観点で、PTHに対する治療候補としての抗体の作製に関して、補体を固定することができ、補体依存性細胞毒性(CDC)に関与することができる抗体が望ましい。例えば、CDCおよび抗体依存性細胞毒性(ADCC)を含む、エフェクター機能を有することができる、本明細書に記載の本発明の実施態様による抗-PTH抗体を調製することができる。以下のマウスIgM、マウスIgG2a、マウスIgG2b、マウスIgG3、ヒトIgM、ヒトIgG1、およびヒトIgG3を非制限的に含めた、同じことができるいくつかのアイソタイプの抗体が存在する。作製される抗体は、このようなアイソタイプを最初に有している必要はなく、作製される抗体は、任意のアイソタイプを有することができ、当分野でよく知られている従来の技法を使用して、抗体のアイソタイプを後に変えることができることは理解されよう。このような技法には、特に、直接的な組換え技法の使用(例えば、米国特許第4,816,397号を参照)、細胞-細胞融合技法(例えば、米国特許第5,916,771号および米国特許第6,207,418号を参照)がある。
【0133】
細胞-細胞融合技法では、任意の望ましいアイソタイプを有する重鎖を有する、ミエローマまたは他の細胞系を調製し、軽鎖を有するもう1つのミエローマまたは他の細胞系を調製する。このような細胞は後に融合させることができ、インタクトな抗体を発現する細胞系を単離することができる。
【0134】
例えば、本明細書に記載の発明の特定の抗-PTH抗体は、ヒト抗-PTH IgG2抗体である。このような抗体がPTH分子との望ましい結合を有する場合、同じ可変領域(抗体の特異性および抗体の親和性のいくらかを定義する)を依然として有しながら、容易にアイソタイプwを変えることができ、ヒトIgM、ヒトIgG1、またはヒトIgG3アイソタイプが生成する可能性がある。
【0135】
したがって、前に論じた所望の「構造」属性に見合う、抗体候補が作製されると、それらの抗体は一般に、アイソタイプの変更によって、特定の代替「機能」属性を与えられる可能性がある。
【0136】
(他の療法の設計および作製)
本明細書に記載の発明の実施態様によって、ならびに、PTHに関して本明細書において産生および特徴づけを行った抗体の活性に基づいて、抗体要素を超える他の治療様式の設計が容易になる。このような治療様式には、非制限的に、二重特異性抗体などの最新の抗体療法、免疫毒素、および放射標識療法、ペプチド療法剤、遺伝子療法剤、特に細胞内発現抗体、アンチセンス療法剤、および小分子の作製がある。
【0137】
最新の抗体療法剤の作製に関しては、補体固定が望ましい属性である場合、例えば二重特異性抗体、免疫毒素、または放射標識を使用することによって細胞を殺傷するために、補体への依存性を取り除くことができる可能性がある。
【0138】
例えば、二重特異性抗体に関しては、(i)2つの抗体であって、1つはPTHに対する特異性を有し、他方は第2の分子に対する特異性を有し、それらが接合している抗体、(ii)PTHに特異的な第1の鎖、および第2の分子に特異的な第2の鎖を有する単一抗体、または(iii)PTHおよび他の分子に対する特異性を有する一本鎖抗体を含む、二重特異性抗体を作製することができる。このような二重特異性抗体は、よく知られている技法を使用して作製することができ;例えば、(i)および(ii)に関しては、例えば、Fanger et al., Immunol Methods 4:72-81 (1994)、ならびにWrigh and Harris, supra.、(iii)に関しては、例えば、Trauneeker et al. Int. J. Cancer (Suppl.) 7:51〜52 (1992)を参照のこと。それぞれの場合、第2の特異性を、CD16またはCD64(例えば、Deo et al. 18:127 (1997)を参照のこと)またはCD89(例えば、Valerius et al. Blood 90:4485〜4492 (1997)を参照のこと)を非制限的に含めた、重鎖活性化レセプターに施すことができる。前述の事項に従い調製した二重特異性抗体は、PTHを発現する細胞、特に本発明のPTH抗体が効果的であるこれらの細胞を殺傷する可能性があると思われる。
【0139】
免疫毒素に関しては、当分野でよく知られている技法を使用して、抗体を修飾して免疫毒素として働かせることができる。例えば、Vitetta Immunol Today 14:252(1993)を参照のこと。米国特許第5,194,594号も参照のこと。放射標識抗体の調製に関しては、当分野でよく知られている技法を使用して、このような修飾型抗体を容易に調製することもできる。例えば、Junghans et al. Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655〜686(2d edition, Chafner and Longo, eds., Lippincott Raven (1996))中を参照のこと。米国特許第4,681,581号、第4,735,210号、第5,101,827号、第5,102,990号(RE35,500)、第5,648,471号、および第5,697,902号も参照のこと。
【0140】
(治療的投与および配合物)
本明細書に記載された発明による抗-PTH化合物は、血清PTHレベルを減少し、それにより、例えば、血清PTHが異常に上昇した病理状態を有効に治療するための、滅菌した医薬調製物または配合物に使用することができる。このような病理状態は、例えば、原発性、二次性、および三次性副甲状腺機能亢進症などの副甲状腺機能亢進症、高カルシウム血症、ならびに高リン血症を含む。抗-PTH抗体は、好ましくは、標的の治療範囲内でPTHを潜在的に抑制するのに十分な親和性を有し、好ましくは、不定期な投与が可能であるほど十分な作用期間を有する。血液透析患者における二次性副甲状腺機能亢進症の治療においては、好ましくは、少なくとも2日間の最小期間で抗体を投与することによってPTHを抑制し、透析(一週間に3回行う)の間は連続して有効であるべきである。このような作用期間によって、血液透析時での静脈投与が可能になり、これにより、患者と医療供給者のコンプライアンスや信頼を増すことができるであろう。他の副甲状腺機能亢進症の患者群においては、2日より長い作用期間、好ましくは3から5日間の作用期間、最も好ましくは7から10日間の作用期間によって、皮下または筋肉内注入のような代替的な可能経路により、より頻度が少なく、より便利な投与スケジュールが可能となるであろう。
【0141】
高親和性および長い作用期間が好ましいことは、原発性副甲状腺機能亢進症、二次性副甲状腺機能亢進症、および三次性副甲状腺機能亢進症などの、全ての副甲状腺機能亢進症の症状に拡張される。抗体の一回の投与後における、便利な長い作用期間は、好ましくは2日間を超え、より好ましくは5から7日間であり、最も好ましくは10日間を超える。本発明の好ましい抗体は、10-10のKDを有し、1.5日間を超える、好ましくは2から4日間の、より好ましくは6から10日間の半減期を有し、50%を超えて、好ましくは60%、65%または70%を超えて、より好ましくは75%、80%または85%を超えて循環PTHのレベルを抑制する。好ましい実施態様においては、1.5日間を超える期間で75%を超えて抑制することが示されている抗体が提供される。
【0142】
本発明の生物学的に活性な抗-PTH抗体は、単独で、または他の治療剤と組み合わせて使用することができる。例えば、慢性腎疾患(CRF)が原因の二次性副甲状腺機能亢進症の現在認可されている治療は、(1)消化管においてカルシウムの吸収を促進するカルシトリオール(ビタミンDの活性型)およびアナログ、(2)リン酸を結合させ、腸での吸収を防ぐための、食事中の炭酸カルシウム、および(3)他のリン酸バインダーからなる。CRFでの二次性副甲状腺機能亢進症の主な原因の1つは、副甲状腺に直接作用してPTHの産生を引き起こす血清のリン酸レベルの高さである。腎臓の欠陥を原因とする不十分なリン酸排出のために、リン酸レベルが増す。前記した現在の治療は、骨吸収を防止し、そして、治療において、本明細書に記載の発明の抗体と組み合わせて使用することができる。
【0143】
in vivo投与用に使用するとき、抗体配合物は滅菌済みでなければならない。これは、例えば、凍結乾燥および再溶解の前または後に、滅菌済み濾過膜を介した濾過によって容易に行われる。抗体は通常凍結乾燥した形で、あるいは溶液中に保存される。一般に治療用抗体組成物は、滅菌済みアクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針によって貫通可能なストッパーなどの、配合物の格納を可能にするアダプターを有する静脈内注射溶液用バッグまたはバイアル中に置かれる。
【0144】
抗体投与の経路は、既知の方法、例えば静脈内、腹膜内、大脳内、筋肉内、眼球内、動脈内、クモ膜下、吸入または病巣内経路による注射または注入、あるいは以下に記す徐放系に従う。抗体は注入によって連続的に、あるいは大量注射によって投与することが好ましい。
【0145】
治療上使用する抗体の有効量は、例えば治療目的、投与の経路、および患者の状態に依存するであろう。したがって、セラピストは、必要に応じて最適な治療効果を得るために、用量を滴定し、投与の経路を変えることが好ましい。典型的には、望ましい効果を得る用量に達するまで臨床医は抗体を投与するであろう。この治療の進行は、従来のアッセイによって、あるいは本明細書に記載するアッセイによって容易にモニターされる。
【0146】
本発明の抗体は、医薬的に許容可能な担体と混合して調製することができる。この治療組成物は、静脈内に、あるいは鼻または肺を介して、好ましくは液状または粉末状エアロゾル(凍結乾燥済み)として投与することができる。組成物は、望むならば非経口的あるいは皮下に投与することもできる。全身に投与するとき、治療組成物は滅菌済みであり、発熱物質を含まず、pH、等浸透圧、および安定度に関して妥当な事項を有する非経口的に許容可能な溶液中に存在しなければならない。これらの条件は当業者には知られている。
【0147】
簡潔には、望ましい純度を有する化合物と生理的に許容可能な担体、賦形剤、または安定剤を混合することによって、保存または投与のために、本明細書に記載の発明の化合物の用量配合物を調製する。このような物質は、使用する用量および濃度でレシピエントに対して非毒性であり、これらはTRIS HCl、リン酸、クエン酸、酢酸、および他の有機酸塩などのバッファー;アスコルビン酸などの抗酸化剤;ポリアルギニンなどの低分子量(約10残基未満)ペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはアルギニンなどのアミノ酸; セルロースまたはその誘導体、グルコース、マンオース、またはデキストリンを含む単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの対イオン、および/またはTWEEN、PLURONICSまたはポリエチレングリコールなどの非イオン性界面活性剤を含む。
【0148】
注射用の滅菌済み組成物は、Remington's Pharmaceutical Sciences(18th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1990)中に記載されたのと同様の従来の製薬方法に従って配合することができる。例えば水、またはゴマ、ピーナッツ、または綿実油のような自然に存在する植物油、あるいはオレイン酸エチルのような合成脂質賦形剤などの賦形剤に、活性化合物を溶かすことまたは懸濁させることが望ましい可能性がある。容認されている製薬方法に従って、バッファー、防腐剤、抗酸化剤などを導入することができる。
【0149】
徐放性製剤の適切な例には、ポリペプチドを含む固形疎水性ポリマーの半透性物質があり、その物質は成形品、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性物質の例には、ポリエステル、Langer et al, J.Biomed Mater.Res., (1981) 15: 167〜277およびLanger, Chem.Tech., (1982) 12: 98〜105によって記載されたヒドロゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、欧州特許第58,481号)、L-グルタミン酸とガンマエチル-L-グルタミン酸のコポリマー(Sidman et al., Biopolymers, (1983) 22: 547〜556)、非分解性エチレン-酢酸ビニル(Langer et al.上記)、LUPRON Depot(商標)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸リュープロリドから構成される注射用ミクロスフェア)、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133,988号)がある。
【0150】
エチレン-酢酸ビニルおよび乳酸-グリコール酸などのポリマーは、100日間を超えて分子を放出することができるが、いくつかのヒドロゲルは短時間の間タンパク質を放出する。被包されたタンパク質が長時間身体中にとどまる場合、37℃における湿気への露出の結果としてタンパク質は変性または凝集し、生物学的活性の消失および免疫原性の変化が生じる可能性がある。関係する機構に応じて、タンパク質を安定化させるための合理的戦略を考案することができる。例えば、凝集機構がジスルフィド交換による分子間S-S結合形成であることが発見されている場合、スルフヒドリル残基を改変すること、酸性溶液から凍結乾燥させること、含水量を調節すること、適切な添加剤を使用すること、および特異的なポリマーマトリクス組成物を開発することによって、安定化を得ることができる。
【0151】
徐放性組成物は、また、リポソームに包まれた本発明の抗体も含む。このような抗体を含むリポソームは、それ自体が知られている方法によって調製される:米国特許No.DE3,218,121; Epstein et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, (1985) 82: 3688〜3692; Hwang et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, (1980) 77: 4030〜4034; 欧州特許第52,322号; 欧州特許第36,676号; 欧州特許第88,046号; 欧州特許第143,949号; 欧州特許第142,641号; 日本国特許出願83-118008; 米国特許4,485,045号および米国特許4,544,545号;ならびに欧州特許第102,324号。
【0152】
患者に投与するための抗体配合物の用量は、疾患の重度およびタイプ、体重、性別、食事、投与の時間および経路、他の治療、および他の関連する臨床的要因を含めた薬剤の作用を変えることが知られている様々な要因を考慮に入れて、担当医によって決定されるであろう。治療上有効な用量は、in vitroまたはin vivo法によって決定することができる。
【0153】
治療として使用される本発明の抗体の有効量は、例えば、治療対象、投与経路および患者の状態に依存するであろう。したがって、セラピストは、必要に応じて最適な治療効果を得るために、用量を滴定し、投与の経路を変える必要があるであろう。典型的な毎日の投与量は、前記の要因に依存して、約0.001から100mg/kg以上の範囲であろう。望ましい投与濃度は、0.001 mg/kg、0.005mg/kg、0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、55mg/kg、60mg/kg、65mg/kg、70mg/kg、75mg/kg、80mg/kg、85mg/kg、90mg/kg、95mg/kg、および100mg/kgまたはそれ以上を含む。典型的には、臨床医は、望ましい効果を達成するまで、治療用抗体を投与するであろう。この治療の進行は、一般的なアッセイまたは本明細書に記載のアッセイによって、容易にモニターされる。
【実施例】
【0154】
行われた実験および得られた結果を含む以下の実施例は、専ら例示する目的で提供され、本明細書に記載の発明を制限するものとして解釈されるべきものではない。
【0155】
(実施例1:PTH抗原調製)
以下のPTHペプチドを、本明細書に記載の実験で用いた。
【0156】
【化1】

【0157】
これらのペプチドは、Bachem California Inc., Torrance, CA.から購入した。カニクイザルPTH(1-84)も、CS Bio Company, Inc., San Carlos, CA.から購入した。
【0158】
抗原調製
XenoMouse(登録商標)動物の免疫に用いた抗原を以下のように調製した。ヒトPTH1-34(500mcg)を、ラットPTH1-34(500mcg)と混合し、500mclの結合バッファー(0.1M MES, 0.9M NaCl, pH 4.7)に溶解した。2mgのキーホールリンペットヘモシアニン(KLH; Pierce, Rockford, IL)を、200mclの蒸留水に溶かし、その後、PTH混合物を加えた。PTHとKLHを、50mclの10mg/mlの1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC, Pierce, Rockford, IL)ストック溶液を加えて、室温で2時間混合液をインキュベートすることによって架橋した。未反応のEDCは、1kDaカットオフの膜を用いてPBS pH 7.4に対して一晩透析して除去した。
【0159】
(実施例2:抗-PTH抗体)
<抗体産生>
動物の免疫
連続的にXenoMouse(登録商標)マウス(XenoMouse(登録商標)XG2, Abgenic, Inc. Fremont, CA)を免疫することによって、PTHに対するモノクローナル抗体を産生させた。前記のように、KLHに結合させた34残基のヒトおよびラット合成PTH(50/50)を抗原として用いた。最初の免疫は、マウス当り、フロイント完全アジュバント(CFA, Sigma, Oakville, ON)と1:1 v/vで混合した10μgの抗原を用いた。その後の追加免疫は、最初は、マウス当り、フロイント不完全アジュバント(CFA, Sigma, Oakville, ON)と1:1 v/vで混合した10μgの抗原で行い、その後は、マウス当りIFAと1:1 v/vで混合した10μgの抗原を3回注射し、更に、マウス当りIFAと1:1 v/vで混合した10μgの抗原で最後の追加免疫を行った。具体的には、それぞれのマウスは、尻尾の根元に皮下注射で免疫した。マウスは、0、14、28、42および54日に免疫した。マウスを49日間飼育し、以下に記載するように回収選択のために血清を得た。
【0160】
回収のための動物の選択
抗-PTH抗体のタイターをELISAによって求めた。PTH(84残基;1μg/ml)をCostar Labcoat Universal Binding Polystyrene96ウェルプレート(Corning, Acton, MA)上で、一晩4℃でコーティングさせた。非結合のPTHを含む溶液を除去し、プレートをUV光(365nm)で4分間(4000マイクロジュール)処理した。プレートをdH2Oで5回洗浄した。PTH免疫マウスまたはナイーブXenoMouse(登録商標)マウスに由来するXenoMouse(登録商標)の血清について、2ウェルずつ1:100の希釈から開始して、1:2の希釈の2%ミルク/PBS中でタイターを求めた。最後のウェルは、ブランクとした。プレートをdH2Oで5回洗浄した。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP, Pierce, Rockford, IL)結合ヤギ抗-ヒトIgG Fc特異的抗体を最終濃度1μg/mlで加えて、1時間室温でインキュベートした。プレートをdH2Oで5回洗浄した。TMB発色基質(Gaithersburg, MD)を加えて30分間プレートを発色させて、1Mリン酸を添加してELISAを停止させた。450nm吸光度から、個々のXenoMouse(登録商標)マウスに特異的なタイターを求めた。結果を表2に示す。タイターは、血清の希釈率の逆数を表し、それゆえ、より大きな数字は、よりPTHに対するヒトの免疫応答が高いことを示す。
【0161】
【表2】

【0162】
表2の血清学データに基づいて、XenoMouse(登録商標)マウス(M469-4、M469-6、M469-8およびM469-9)を、回収のために選択した。
【0163】
B細胞の培養および選択
回収したマウスのB細胞を培養し、PTH特異的抗体を分泌するB細胞を、Babcook et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93: 7834-48 (1996)に記載されているように単離した。前記のように行ったELISAを使用して、一次PTH特異的ウェルを同定した。500、250、125または50細胞/ウェルで培養した100枚のプレートを、PTHについてスクリーニングし、抗原特異的なウェルを同定した。98ウェルが、バックグラウンド(0.1)を超えた顕著なODを示した。代表的なサンプルを表3に示す。
【0164】
【表3】

【0165】
これらのデータは、ヒットの頻度が大変低く、ウェルは全ての細胞希釈液で抗原特異的なモノクローナルであることを示している。これらの98のポジティブウェルを抗原で再度スクリーニングし(表4)、48ウェルのみが明確な抗原特異的なウェルとして繰り返すことが見出された。これらの48ウェルを、hPTH7-84またはhPTH18-48のいずれかへの結合について分析した。hPTH7-34に特異的な抗体はヒトのPTHrpに交差反応しないようであるので、望ましかった。hPTH7-84またはhPTH18-48のいずれかについての反応性を有する計14ウェルを同定し、その後、これらのウェルを、以下に記載の抗原制限ELISAを用いて相対的な親和性について分析した。ウェル292A10は、抗-PTH mAb 183の供給源であった。このウェルは、PTH1-84(OD 1.4)、ヒトPTH7-84(OD 1.95)、ヒトPTH18-48(OD3.26)およびラットPTH1-84(OD0.66)に良く結合した。これらのデータは定性的であり、この抗体がアミノ酸18と34の間でPTHに結合し(免疫原はN末端断片1-34のみである)、ラットPTHにも結合できることを示している。
【0166】
抗原制限分析
抗原制限分析は、B細胞培養液上清中の抗原特異的抗体を、全ての他の抗原特異的抗体に対して親和性についてランク付けする方法である。その概念は、非常に少量のコーティング抗原が存在する場合は、最も高い親和性を示す抗体のみが、平衡状態において検出できるレベルで結合することができるであろうということである(例えば、2001年12月3に出願されたU.S.S.N. 60/337,250を参照)。ビオチン化PTHを、96ウェル培養プレート上で、25ng/mlで30分間、室温でストレプトアビジンプレートに結合させた。それぞれのプレートをdH2Oで5回洗浄し、その後、40μlのPBS中の1%ミルク(0.05%のアジ化ナトリウムを含む)をプレートに加え、10μlのB細胞上清を各プレートに加えた。シェーカーを用いて18時間室温で攪拌後、プレートを再度dH2Oで5回洗浄した。それぞれのウェルに、1μg/mlのGt 抗-ヒト(Fc)-HRPを50μl加えた。室温で1時間後、プレートを再度dH2Oで5回洗浄し、50μlのTMB基質をそれぞれのウェルに加えた。50μlの1Mリン酸をそれぞれのウェルに加えることによって反応を止め、450nmの吸光度を測定したところ、表4に示す結果が得られた。
【0167】
B細胞培養液上清における抗原特異的抗体の定量により、10ng/mlから500ng/mlの範囲の濃度であることが示された。各抗原特異的なウェルの抗原特異的抗体の濃度を求めることは困難であるので、抗原制限分析から得られた結果を、同程度の濃度の組み換え抗体(2ng/mlから100ng/ml)のタイターと比較した。このアッセイにおいては、半分より少ない抗体から検出可能な結合が得られ、ウェル292A10(抗-PTH mAb 183)は、他の培養液上清およびに全ての濃度の組み換え抗体に比べてO.D.測定値が明確に優れていた(表4)。
【0168】
【表4】

【0169】
PTH特異的溶血プラークアッセイ
多くの特殊な試薬がこのアッセイを行うには必要である。これらの試薬は、以下のように調製した。
【0170】
ヒツジ赤血球細胞(SRBC)のビオチン化
SRBCを25%ストックとしてRPMI培地内に保存した。1.0mlのストックを15mlファルコンチューブに小分けし、細胞をスピンダウンし、上清を除去することによって、SRBCの濃縮細胞ペレット250μlを得た。その後、50mlチューブ内で、ペレットをpH8.6のPBS 4.75mlで再懸濁した。別の50mlチューブ内で、Sulfo-NHSビオチン2.5mgをpH8.6のPBS 45mlに添加した。ビオチンが完全に溶解してから、SRBC 5mlを添加し、チューブをRTで1時間回転した。SRBCを3000gで5分間遠心分離し、上清を取り除き、pH7.4のPBS 25mlで洗浄した。洗浄サイクルを3回繰り返し、次いで4.75mlの免疫細胞用培地(10% FCSを加えたRPMI 1640)を、250μlのビオチン化SRBC(B-SRBC)ペレットに加えて、穏やかにB-SRBCを再懸濁した(5% B-SRBCストック)。ストックを必要になるまで4℃で保存した。
【0171】
B-SRBCのストレプトアビジン(SA)コーティング
5 %B-SRBCストック1mlを、未使用のエッペンドルフチューブ内に移した。B-SRBC細胞を、微量遠心機を用いて8000rpm(6800rcf)でパルススピンさせてペレット状にし、上清を取り除き、ペレットをpH7.4のPBS 1mlで再懸濁して、遠心を繰り返した。洗浄サイクルを2回繰り返して、その後、B-SRBCペレットをpH7.4のPBS 1.0mlに再懸濁することで、最終濃度5%(v/v)を得た。10mg/mlのストレプトアビジン(CalBiochem, San Diego, CA)ストック溶液10μlを添加し、チューブをRTで20分間混合し回転させた。洗浄工程を繰り返し、SA-SRBCをpH7.4のPBS 1ml(5%(v/v))に再懸濁した。
【0172】
SA-SRBCのヒトPTH1-34コーティング
SA-SRBCを、10μg/mlのビオチン化ヒトPTH1-34でコーティングし、20分間RTで混合し回転させた。上記のように、SRBCをpH7.4のPBS 1.0mlで2回洗浄した。PTHでコーティングしたSRBCをRPMI(+10% FCS)で再懸濁し、最終濃度を5%(v/v)にした。
【0173】
免疫蛍光(IF)によるPTH-SRBCの定性的測定
10μlの5% SA-SRBCおよび10μlの5% PTHコーティングSRBCを、PBS 40μlを含有する別の未使用の1.5mlのエッペンドルフチューブにそれぞれ添加した。コントロールヒト抗-PTH抗体を、45μg/mlでSRBCの各試料に添加した。チューブをRTで25分間回転し、次いで細胞をPBS 100μlで3回洗浄した。細胞をPBS 50μlに再懸濁し、Alexa488(Molecular Probes, Eugene, OR)に結合したヤギ抗ヒトIgG Fc抗体 2mcg/mLとともにインキュベートした。RTで25分間チューブを回転し、次いでPBS 100μlで洗浄し、細胞をPBS 10μlに再懸濁した。染色細胞10μlをクリーンなガラス顕微鏡スライド上にスポットし、ガラスカバースリップで覆って蛍光下で観察し、そして0〜4の任意のスケールでスコアリングした。
【0174】
形質細胞の調製
対象のイムノグロブリンを分泌するB細胞クローンを含有するものとして、様々なアッセイによって予め同定された単一のミクロ培養ウェルの中身を回収した。100〜1000μlのピペットマンを用いて、37C RPMI(+10% FCS)を添加することによってウェルの含量を回復させた。ピペッティングによって細胞を再懸濁し、次いで未使用の1.5mlのエッペンドルフチューブ(最終容量約500〜700μl)に移した。微量遠心機で1500rpm(240rcf)、室温で2分間、細胞を遠心分離し、次いでチューブを180度回転させ、再度2500rpmで1分間回転させた。凍結培地を回収し、免疫細胞をRPMI(10% FCS)100μl中に再懸濁し、次いで遠心分離した。RPMI(10%FCS)を用いたこの洗浄を繰り返し、細胞をRPMI(FCS)60μl中に再懸濁し、使用準備ができるまで氷上で保存した。
【0175】
プラークアッセイ
予めシリコーンエッジでスライドガラス(2×3インチ)を調製し、RTで一晩、保存可能な状態にした。使用前に、スライドを約5μlのSigmaCoat(Sigma, Oakville, ON)で処理し、ガラス表面上を均一にふき取り、乾燥させ、次いで完全にふき取った。細胞試料60μlに、各PTHコーティングSRBC(5% v/v ストック)を60μlずつ、RPMI(FCS)で調製した4×モルモット補体(Sigma, Oakville, ON)ストック、および4×濃縮血清ストック(RPMI(FCS)中で1:900)を添加した。混合物(3〜5μl)を調製したスライド上にスポットし、これらスポットを希釈されていないパラフィンオイルで覆った。スライドを37℃で最低45分間インキュベートした。
【0176】
プラークアッセイ結果
ヒトPTH1-34を用いたヒツジ赤血球細胞のコーティングは、良く機能した。コーティングを免疫蛍光顕微鏡によって定性的に求めたところ、コーティングを検出するためのコントロールヒト抗-PTH抗体を用いた場合は、二次検出試薬単独に比べて(0/4)、非常に高くなった(4/4)。ストレプトアビジンのみでコーティングした赤血球細胞では、コントロールヒト抗-PTH抗体を用いた場合でも、検出シグナルは存在しなかった(0/4)。その後、これらの赤血球細胞を使用して、ウェル292A10に由来する抗原特異的形質細胞が同定された(表5参照)。抗原特異的形質細胞を回収するための顕微操作の後、単一の形質細胞の様々な可変領域遺伝子をコードする遺伝子をRT-PCRによって解析した。
【0177】
【表5】

【0178】
<抗-PTH mAb 183の発現、精製および特徴づけ>
発現
単一の形質細胞の単離後、mRNAを抽出し、逆転写PCRを行ってcDNAを得た。ポリメラーゼ連鎖反応を用いて、重鎖および軽鎖可変領域をコードするcDNAを特異的に増幅させた。重鎖可変領域を、IgG2発現ベクターへとクローニングした。このベクターは、pcDNA3.1+/Hygro(Invitrogen, Burlington, ON)のmultiple cloning siteへとヒトIgG2の定常ドメインをクローニングすることによって得た。軽鎖可変領域は、IgK発現ベクターへとクローニングした。このベクターは、pcDNA3.1+/Neo(Invitrogen, Burlington, ON)のmultiple cloning siteへとヒトIgKの定常ドメインをクローニングすることによって得た。その後、重鎖および軽鎖発現ベクターを、60mmのディッシュに入った70%コンフルエントのヒト胚性腎臓293細胞に同時にリポフェクションした。トランスフェクトした細胞は、24時間、元の形質細胞と同じ特異性を有する組み換え抗体を分泌することができた。上清(3ml)をHEK 293細胞から回収し、ヒトIgGを特異的に検出するサンドイッチELISA用いて、インタクトな抗体の分泌(抗-PTH mAb 183)を確認した(表7)。抗-PTH mAb 183の特異性を、ELISAを用いたPTHに対する組み換え抗体の結合を介して評価した(表6)。ELISA方法を用いてO.D.を測定し、この抗体のラットPTHに対する結合能力も確認した(表7)。
【0179】
【表6】

【0180】
【表7】

【0181】
分泌ELISA試験は以下のように行った。コントロールプレートを、2mg/mlのヤギ抗-ヒトIgG H+L O/Nでコーティングし、結合プレートとした。ヒトまたはラットPTH(84残基、1μg/ml)をCostar Labcoat Universal Binding Polystyrene 96ウェルプレート上にコーティングし、4℃で一晩静置した。プレートをdH2Oで5回洗浄した。組み換え抗体は、非希釈のミニリポフェクション上清から開始して1:2で希釈した7ウェルについて、タイターを求めた。プレートをdH2Oで5回洗浄した。分泌および二結合アッセイ(two binding assay)のために、RTで、ヤギ抗-ヒトIgG Fc-特異的HRP結合抗体を、最終濃度1μg/mlで加えた。プレートをdH2Oで5回洗浄した。プレートにTMBを添加して30分間発色させて、1Mリン酸を添加してELISAを停止した。各ELISAプレートを分析して、各ウェルの450nmの吸光度を求めた。
【0182】
抗-PTH mAb 183の精製
抗-PTH mAb 183のラージスケールの産生については、重鎖と軽鎖の発現ベクター(ディッシュ当り2.5μgの各鎖)を、10枚の100mmディッシュに入った70%コンフルエントのHEK293細胞にリポフェクトした。形質転換した細胞を4日間37℃でインキュベートし、上清(6ml)を回収し、6mlの新鮮な培地と置き換えた。7日目に、上清を除去し、最初の回収液とプールした(10プレートから計120ml)。Protein-A Sepharose (Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)アフィニティクロマトグラフィー(1ml)を用いて、上清から抗-PTH mAb 183抗体を精製した。抗体を、pH2.5の0.1Mグリシンを500mcl用いて、Protein-Aカラムから溶出させた。溶出液をPBS pH7.4中で透析し、滅菌ろ過した。抗体を非還元のSDS-PAGEで分析し、純度と収率を評価した。
【0183】
ブタペスト条約に基づいて、American Type Culture Collection, 1080 University Blvd., Manassas, VA 20110-2209で、抗-PTH mAb 183の重鎖および軽鎖をコードするプラスミドDNAを寄託した(重鎖についてはATCC寄託番号PTA-4311、軽鎖についてはATCC寄託番号PTA-4310)。物質の寄託は、本明細書に含まれる記載が、最良の形態を含む本発明の任意の実施態様を実施するのに不十分であるとの認可を構成するものではなく、表される特定の例示に特許請求の範囲を制限すると解釈すべきでない。寄託の入手に関する全ての制限は、適用法令および/または制限が必要である場合は、撤廃されるであろう。
【0184】
抗-PTH mAb 183のPTH関連ペプチド(1-34)への非結合
PTH関連タンパク質(PTHrP)への抗-PTH mAb 183の結合能力を、飽和レベルのPHT関連ペプチドの存在下での3-logにわたるヒトPTH 1-34への結合能力を介して、間接的に評価した。ビオチン化ヒトPTH 1-34を、ストレプトアビジンプレートに、1μg/mlで、30分間RTで結合させた。プレートをdH2Oで5回洗浄した。その後、抗-PTH mAb 183について、5μg/mlのPTH関連タンパク質1-34の存在下または非存在下で、1μg/mlから開始して1:2で希釈して反応させた。その後、この抗体を、ヒトPTH 1-34でコーティングしたプレートに移し、1時間RTで結合させた。プレートをdH2Oで5回洗浄後、50μlのヤギ抗-ヒト(Fc)-HRP(1μg/ml)を各ウェルに加えて、プレートをRTで1時間静置した。プレートをdH2Oで5回洗浄後、50μlのTMB基質を各ウェルに加えた。反応を止めるために、50μlの1Mリン酸を各ウェルに加えた。プレートの450nm吸光度を読んだ。表8に示すように、5000ng/ml PTHrpの存在下では、1ng/mlの抗-PTH mAb 183でさえ、ヒトPTH 1-34に対する抗-PTH mAb 183結合の阻害は観察されなかった。
【0185】
【表8】

【0186】
カイネティクス分析
抗-PTH抗体(抗-PTH mAb 183)のカイネティクス測定値を、KinExA手法を用いて評価した。この方法は、溶液に基づく、平衡時での正式な親和性測定値を求めることを含む。2つの既知の抗体の濃度および未知の抗原の濃度を用いた二重曲線分析を使用して、ヒト34残基、ヒト84残基、カニクイザル84残基およびラット84残基のKD測定値を求めた。KDを求めたところ、室温で、合成ヒトPTH(1-84または1-34)およびカニクイザルPTH(1-84)(CS Bio Company, Inc., San Carlos, CA)については約10-30pMであった。抗-PTH mAb 183のKDは、室温で、合成ラットPTH1-84よりも低かった(30000pM)。
【0187】
抗-PTH mAb 183の親和性は、また、血液透析を行っている末期の腎臓病の患者に由来するプールした血清中のヒトPTHについて求めた。結合親和性は、免疫アッセイに基づくスキャッチャード分析を用いて測定した。内因性ヒトPTHの結合親和性は60pMであり、KinExA手法を用いて得られた合成ヒトPTHの高親和性と矛盾がなかった。
【0188】
他のPTH-特異的モノクローナル抗体の親和性(KD)も求めた(表9)。BiaCore(Amersham Pharmacia)を用いて測定した場合、これらの抗体が、抗-PTH mAb 183(80pM)よりも顕著に低い親和性(350-5000pM)であることが見出された。これらの組み換え抗体の大部分が、抗-PTH mAb 183と類似の、アミノ酸(18-34)内に含まれるPTH上の領域またはエピトープにマップされることが見出された(表10)。この領域またはエピトープは、受容体結合に関与することが示されたので、このエピトープに対する抗体は、中和活性を提示する強い可能性を有する(Duvos et al., Bone, (1995) 17: 403-406)。
【0189】
【表9】

【0190】
【表10】

【0191】
製品説明書に記載の方法を使用して、BiaCoreデータから更なる速度定数を求めた。結合速度定数(ka)は、抗原-抗体反応カイネティクスに基づいて計算した、抗体と標的抗原の結合の強さ(程度)を表す値である。解離速度定数(kd)は、抗原-抗体反応カイネティクスに基づいて計算した、標的抗原からモノクローナル抗体が解離する強さ(程度)を表す値である。解離定数(KD)は、解離速度定数(kd)を結合速度定数(ka)で割ることによって得らえる値である。これらの定数は、抗体の抗原に対する親和性および抗原の中和活性を表す指標として使用した。表10で示した抗体のkaおよびkdの値を計算し、表11に示す。
【0192】
【表11】

【0193】
抗-PTH mAb 183を用いたin vitroでのPTH生物活性の中和
PTHは、N末端の34アミノ酸を介して応答細胞に生物学的シグナルを伝達する。抗-PTH mAb 183は、アミノ酸18-34に結合するので、それゆえ、生物学的活性を阻害することができると考えられる。モデルシステムとして、ラット骨芽細胞系UMR-106を使用した。ヒトおよびラットPTHは、UMR-106細胞に結合し、PTH受容体を活性化する。活性化によって、受容体は、細胞内カルシウムのレベルを増加させる。細胞内カルシウムは、カルシウム感受性蛍光色素を取り込んだ細胞の蛍光の変化でモニターした。このモニターは、FLuorometric Imaging Plate Reader(FLIPR)によって測定した。抗-PTH mAb 183がPTH効果を中和できるかどうかを求めるために、抗体をPTHで予めインキュベートし、UMR-106細胞内でのPTH誘導性カルシウム流入への効果をFLIPRによって検出した。抗-PTH mAb 183は、用量依存に、200nMのヒトPTH1-34によって誘導されるカルシウム流入をブロックした。抗-PTH mAb 183についてのIC50は、図1に示すように約100nMであった。
【0194】
抗-PTH mAb 183を用いたin vivoでのPTH生物活性の中和
抗-PTH mAb 183がin vivoでヒトPTHを中和する能力は、34残基の合成ヒトPTHをラットに注入し、その後、抗-PTH mAb 183またはPBSを投与することによって評価した。34残基を浸透圧ポンプで1週間皮下に投与した(50mcg/kg/day)。Study Day 1に実験を開始した。注入PTHに応答した高カルシウム血症応答を、抗-PTH抗体によるPTH生物活性の中和を評価するバイオマーカーとして使用した。抗-PTH mAb 183(3または10mg/kg)またはアイソタイプが合致したコントロール抗体(PK 16.3.1, 10mg/kg)を、重篤な高カルシウム血症がラットに発症した後、Study Day 3に投与した。抗-PTH mAb 183は、実験の全ての期間において、両方の投与レベルで、注入PTHによりもたらされた高カルシウム血症効果を無効化した(図2)。
【0195】
(実施例3:抗-PTH抗体の構造解析)
前記表1で示した抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の配列を読み、それらのDNA配列を求めた。全ての抗-PTH抗体の完全な配列の情報を、各ガンマおよびカッパ鎖の組合せとともに、本明細書と一緒に提出した配列表に示す。
【0196】
重鎖可変領域のヌクレオチド配列の分析により、VHファミリー、D領域配列およびJ領域配列を求めた。その後、配列を完全に翻訳し、一次アミノ酸配列を求めて、生殖細胞系VH、DおよびJ領域配列を比較することによって、体細胞超変異を評価した。全ての抗-PTH重鎖の一次アミノ酸配列を図3に示す。生殖細胞系配列を上に示し、変異は、新規のアミノ酸配列とともに示す。指示された生殖細胞系配列と一致する配列中のアミノ酸は、ダッシュ(-)で示す。軽鎖を同じように分析し、VおよびJ領域を求め、生殖細胞系軽鎖配列との体細胞変異を同定した(図4)。
【0197】
(実施例4:診断薬としての抗-PTH抗体の使用)
<サンプル中のPTH抗原の検出>
サンプル中のPTH抗原を検出するための酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を開発することができる。前記アッセイにおいては、96ウェルのマイクロタイタープレートまたは384ウェルのマイクロタイタープレートなどのマイクロタイタープレートのウェルに、数時間、前記抗原に対する一次モノクローナル抗体を吸着させる。固定化された抗体は、テスタサンプル中に存在するであろう任意の抗原の捕捉抗体として機能する。前記ウェルを、乳タンパク質またはアルブミンなどのブロッキング剤でリンスおよび処理して、分析物の非特異的吸着を防ぐ。
【0198】
続いて、前記ウェルを、抗原を含む可能性のあるテストサンプルまたは標準量の抗原を含む溶液で処理する。このようなサンプルは、例えば、病態診断と考えられている循環抗原のレベルを有する恐れがある患者に由来する血清サンプルとすることができる。
【0199】
テストサンプルまたはスタンダードをリンスして除去した後、ウェルを、ビオチンと結合して標識した完全なヒトモノクローナル抗-PTH二次抗体で処理する。標識した抗-PTH抗体は、検出抗体として機能する。過剰な二次抗体をリンスして除去した後、ウェルをアビジン結合ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)および適した発色基質で処理する。テストサンプル中の抗原濃度は、スタンダードサンプルから得られたスタンダードカーブと比較して求める。
【0200】
このELISAアッセイによって、テストサンプル中のPTH抗原を検出するための、特異性が高く、感度が非常に高いアッセイが供給される。
【0201】
<患者内のPTH濃度の決定>
ヒト血清中のPTHレベルを定量するために、サンドイッチELISAを開発する。サンドイッチELISAに用いる2つのモノクローナル抗-PTH抗体は、PTH分子上の異なるエピトープを認識する。ELISAは以下のように行う:
コーティングバッファー(0.1M NaHCO3, pH9.6)に溶かした2μg/mlの濃度の捕捉抗-PTH抗体を50μl、ELISAプレート(Fisher)にコーティングする。4℃で一晩インキュベーション後、プレートを200μlのブロッキングバッファー(PBS中、0.5% BSA、0.1% Tween20、0.01% チメロサール)で、1時間25℃で処理する。プレートを、0.05% Tween 20を溶かしたPBS(洗浄バッファー、WB)を用いて洗浄する(3回)。通常のまたは患者の血清(Clinomics, Bioreclaimation)を、50%ヒト血清を含むブロッキングバッファーで希釈する。プレートを、血清サンプルで、一晩4℃でインキュベートし、WBで洗浄し、その後、100μl/ウェルのビオチン結合検出抗-PTH抗体で、1時間25℃でインキュベートする。洗浄後、プレートを、HRP-ストレプトアビジンで15分間インキュベートし、前と同じように洗浄し、その後、発色生成のために、100μl/ウェルのH2O2に溶かしたo-フェニレンジアミン(Sigmaが開発した溶液)で処理する。反応を、50μl/ウェルのH2SO4(2M)で停止させ、ELISAプレートリーダーを用いて492nmで分析する。血清サンプル中のPTH抗原の濃度は、four-parameter curve fitting programを用い、精製したPTH抗原の希釈液との比較によって計算される。
【0202】
(実施例5:二次性副甲状腺機能亢進症を治療するための抗-PTH抗体の使用)
二次性副甲状腺機能亢進症のヒト患者における、in vivoでの抗-PTH抗体の治療効果を求めるために、末期の腎臓病の多くのヒト患者を研究に登録する。選択された患者は、登録前、少なくとも4ヶ月透析している。各患者は、治療を受けない場合、400pg/mlより高い血清PTH値の経歴を有する。
【0203】
患者は、特定の時間にわたり、有効量の抗-PTH抗体、または、抗-PTH抗体を調合するのに使用する類似の賦形剤を含むプラセボを注入する。治療の一周期、患者をモニターし、血清カルシウム、リン、オステオカルシン、骨型アルカリフォスファターゼ、非結合活性PTH、総PTH(抗体結合および非結合)、ならびに橈骨、寛骨および背骨のミネラル濃度のレベルを求める。
【0204】
前記実施例で求めたように、診断データの分析により、抗-PTH抗体は顕著に循環している活性PTHのレベルを減少させることが示される。治療した患者は、また、オステオカルシンおよび骨型アルカリフォスファターゼの血清レベルの顕著な減少を示す。治療した患者によって、一回目の投与後または用量増加により、血清カルシウムが一時的に減少することが明らかになるであろう。長期にわたって、橈骨、寛骨および背骨のミネラル濃度が、非治療の患者のベースラインに比べて増加するであろう。対照的に、プラセボで治療した患者は、循環PTHの増加レベルを維持し、永続的または減少した骨ミネラル濃度を維持する。
【0205】
前記した明細書は、当分野の当業者が本発明を実施するには十分であると考えられる。本明細書に記載された本発明の実施態様は、寄託した構築物による範囲に制限されない。なぜならば、寄託した実施態様は、本発明の特定の実施態様の1つの例示として意図されたものであり、機能的に均等である任意の構築物は本発明の範囲内であるからである。本明細書における、物質の寄託は、本明細書に含まれる記載が、最良の形態を含む本発明の任意の実施態様を実施するのに不十分であるとの認可を構成するものではなく、表される特定の例示に特許請求の範囲を制限すると解釈すべきでない。
【0206】
特許、特許出願、論文、本など、およびこれらに引用されている参照を含む、本明細書に引用した全ての参照は、未だ導入されていない範囲において、完全に、参照によって本明細書に導入される。
【0207】
前記した記載事項および実施例は、本発明の好ましい特定の実施態様を詳細に述べ、本発明によって企図される最良の形態を記載する。しかしながら、詳細な前記記載事項がテキスト中にどのように表れようとも、本発明は多くの方法で実施することができ、添付の特許請求の範囲およびその任意の均等物にしたがって、本発明が解釈されるべきであることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1】図1は、Fluorometric Imaging Plate Reader(FLIPR)を用いたカルシウム動員アッセイによって求めた、抗-PTH mAb 183の中和データを示すグラフである。
【図2】図2は、ラットにおける、注入したヒトPTH(34mer)に対する高カルシウム血症応答の無効化を測定した、抗-PTH mAb 183によるin vivoでのヒトPTHの中和を示すグラフである。
【図3】図3は、会合させた生殖細胞系可変領域配列とともに、本発明によって得られた抗-PTH mAbの重鎖可変領域のアミノ酸配列のアライメントを示す。
【図4】図4は、会合させた生殖細胞系可変領域配列とともに、本発明によって得られた抗-PTH mAbの軽鎖可変領域のアミノ酸配列のアライメントを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
副甲状腺ホルモン(PTH)に結合し、配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、50、54、58、62、66、70および74からなる群から選択される重鎖アミノ酸配列を含む、ヒトモノクローナル抗体。
【請求項2】
配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、52、56、60、64、68、72および76からなる群から選択される軽鎖アミノ酸配列を更に含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
ヒトPTHに結合し、配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、52、56、60、64、68、72および76からなる群から選択される軽鎖アミノ酸配列を含む、ヒトモノクローナル抗体。
【請求項4】
配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、50、54、58、62、66、70および74からなる群から選択される重鎖アミノ酸配列を更に含む、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
前記重鎖アミノ酸配列が配列番号2の配列を含み、前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号4の配列を含む、請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体。
【請求項6】
前記重鎖アミノ酸配列が配列番号6の配列を含み、前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号8の配列を含む、請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体。
【請求項7】
前記重鎖アミノ酸配列が配列番号10の配列を含み、前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号12の配列を含む、請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体。
【請求項8】
前記重鎖アミノ酸配列が配列番号14の配列を含み、前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号16の配列を含む、請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体。
【請求項9】
前記重鎖アミノ酸配列が配列番号18の配列を含み、前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号20の配列を含む、請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体。
【請求項10】
前記重鎖アミノ酸配列が配列番号22の配列を含み、前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号24の配列を含む、請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体。
【請求項11】
前記重鎖アミノ酸配列が配列番号26の配列を含み、前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号28の配列を含む、請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体。
【請求項12】
前記重鎖アミノ酸配列が配列番号30の配列を含み、前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号32の配列を含む、請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体。
【請求項13】
前記重鎖アミノ酸配列が配列番号34の配列を含み、前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号36の配列を含む、請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体。
【請求項14】
前記重鎖アミノ酸配列が配列番号38の配列を含み、前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号40の配列を含む、請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体。
【請求項15】
前記重鎖アミノ酸配列が配列番号42の配列を含み、前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号44の配列を含む、請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体。
【請求項16】
前記重鎖アミノ酸配列が配列番号46の配列を含み、前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号48の配列を含む、請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体。
【請求項17】
前記重鎖アミノ酸配列が配列番号50の配列を含み、前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号52の配列を含む、請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体。
【請求項18】
前記重鎖アミノ酸配列が配列番号54の配列を含み、前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号56の配列を含む、請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体。
【請求項19】
前記重鎖アミノ酸配列が配列番号58の配列を含み、前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号60の配列を含む、請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体。
【請求項20】
前記重鎖アミノ酸配列が配列番号62の配列を含み、前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号64の配列を含む、請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体。
【請求項21】
前記重鎖アミノ酸配列が配列番号66の配列を含み、前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号68の配列を含む、請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体。
【請求項22】
前記重鎖アミノ酸配列が配列番号70の配列を含み、前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号72の配列を含む、請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体。
【請求項23】
前記重鎖アミノ酸配列が配列番号74の配列を含み、前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号76の配列を含む、請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体。
【請求項24】
前記重鎖アミノ酸配列が配列番号62の配列を含み、前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号4の配列を含む、請求項2に記載のヒトモノクローナル抗体。
【請求項25】
約10-9M未満の解離定数KDでヒト副甲状腺ホルモン(PTH)に結合する、抗-PTH抗体。
【請求項26】
前記解離定数KDが約10-10M未満である、請求項25に記載の抗-PTH抗体。
【請求項27】
前記抗-PTH抗体が抗-PTH mAb 183である、請求項26に記載の抗-PTH抗体。
【請求項28】
配列番号2の重鎖アミノ酸配列および配列番号4の軽鎖アミノ酸配列を含む、ヒト抗-副甲状腺ホルモン(PTH)抗体。
【請求項29】
不溶性マトリクス上で固定されている、請求項2に記載の抗体。
【請求項30】
患者サンプルのアッセイにおいて、副甲状腺ホルモン(PTH)のレベルの検出のための請求項2に記載の抗-PTH抗体の使用を含む、患者サンプルのPTHのレベルをアッセイするための改良方法。
【請求項31】
前記患者サンプルが血液である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
請求項2に記載の抗体またはその断片、および医薬的に許容可能な担体を含む組成物。
【請求項33】
動物の副甲状腺機能亢進症の有効な治療のための医薬の調製における、副甲状腺ホルモン(PTH)に特異的に結合するモノクローナル抗体の使用。
【請求項34】
前記抗体が完全なヒト抗体である、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記医薬が、動物の循環PTHのレベルを約25%減少させる、請求項33に記載の使用。
【請求項36】
前記医薬が、動物の循環PTHのレベルを約50%減少させる、請求項33に記載の使用。
【請求項37】
前記医薬が、動物の循環PTHのレベルを約75%減少させる、請求項33に記載の使用。
【請求項38】
前記医薬が、動物の循環PTHのレベルを約24から約36時間減少させる、請求項33に記載の使用。
【請求項39】
前記医薬が、動物の循環PTHのレベルを約48から約60時間減少させる、請求項33に記載の使用。
【請求項40】
前記医薬が、動物の循環PTHのレベルを約72から約84時間減少させる、請求項33に記載の使用。
【請求項41】
前記副甲状腺機能亢進症が原発性副甲状腺機能亢進症である、請求項33に記載の使用。
【請求項42】
前記副甲状腺機能亢進症が二次性副甲状腺機能亢進症である、請求項33に記載の使用。
【請求項43】
副甲状腺機能亢進症に罹患した哺乳類を有効に治療する方法であって、
副甲状腺機能亢進症の治療が必要な動物を同定する工程、
前記動物に、治療上有効量の副甲状腺ホルモン(PTH)に特異的に結合するモノクローナル抗体を投与する工程、
を含む方法。
【請求項44】
前記抗体が完全なヒト抗体である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記治療上有効量のモノクローナル抗体が、動物の循環PTHのレベルを約25%減少させる、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記治療上有効量のモノクローナル抗体が、動物の循環PTHのレベルを約50%減少させる、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記治療上有効量のモノクローナル抗体が、動物の循環PTHのレベルを約75%減少させる、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記治療上有効量のモノクローナル抗体が、動物の循環PTHのレベルを約24から約36時間減少させる、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
前記治療上有効量のモノクローナル抗体が、動物の循環PTHのレベルを約48から約60時間減少させる、請求項43に記載の方法。
【請求項50】
前記治療上有効量のモノクローナル抗体が、動物の循環PTHのレベルを約72から約84時間減少させる、請求項43に記載の方法。
【請求項51】
前記副甲状腺機能亢進症が原発性副甲状腺機能亢進症である、請求項43に記載の方法。
【請求項52】
前記副甲状腺機能亢進症が二次性副甲状腺機能亢進症である、請求項43に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−521232(P2007−521232A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507906(P2005−507906)
【出願日】平成15年8月8日(2003.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2003/025161
【国際公開番号】WO2005/016111
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(504213799)アブジェニックス・インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】