創傷の吸引、灌注および洗浄用装置
適合性創傷ドレッシング(2)に接続された貯蔵器(12)からの灌注流体とドレッシングからの創傷滲出物とが、ドレッシングを貫通する流路により流体を移動させる装置(18)と流体による洗浄およびドレッシングへの戻しの手段(17)とによって再循環される創傷洗浄用装置。洗浄手段(単相の例えばミクロ濾過系あるいは二相の例えば透析系であってよい)によって、創傷治癒に有害である物質が除去されるとともに創傷治癒を促進するのに有益である物質が依然として含有されている洗浄ずみ流体が創傷底へ戻される。この装置を使用するドレッシングおよび治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、創傷の吸引、灌注および/または洗浄用の装置および医療用創傷ドレッシング、およびこのような創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置を使用する創傷治療方法に関するものである。
【0002】
この発明は、さらに詳しくは、広範囲の創傷、とりわけ慢性的創傷に容易に適用することができ、それらの創傷を創傷治癒に有害である物質から洗浄し、一方、とりわけ創傷治癒に何らかの治療上の観点で有益である物質を保持する、そのような装置、創傷ドレッシングおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
この発明以前には、吸引および/または灌注用装置が、そのために知られており、また、創傷治療の間に創傷滲出物を除去するために使用される傾向にあった。このような創傷治療についての公知の形態では、創傷からの排出物は、とりわけ強滲出状態にあるときには、廃棄のために例えば捕集バッグへ放出される。創傷治癒に有害である物質はこのようにして除去される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、創傷からの滲出物の成長因子、細胞基質成分、および他の生理活性成分のような創傷治癒の促進に有益である物質は、そのような治療が適用されたときに、最も有益である可能性のある部位、すなわち創傷底へ失われる。
【0005】
このような公知の形態の創傷ドレッシングと吸引および/または灌注治療系とによって、身体自体の組織治癒処理の最適特性が失われることになるとともに遅い治癒および/または創傷底に充分に付着しかつ創傷底から成長する強い3次元構造を有しない弱い新組織成長を引き起こす創傷環境がドレッシングの下方にしばしば作り出される。このことは、とりわけ慢性的創傷においてかなり不都合である。
【0006】
従って、創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することができ、一方、創傷治癒の促進に有益である物質を保持することのできる治療系を提供することが望ましいであろう。
【0007】
透析は、血液のような体液から身体に有害である物質を全身的に洗浄するために、血液のような体液を生体外で処理する公知の方法である。透析液との接触によってそのような物質を除去し、一方で血液、細胞および蛋白質のような物質を保持することは、透析の主要目的である。付加的な積極治療作用を有している他の物質は、それらをも透過させる透析膜を通って系へ失われるおそれがある。このため、再循環における体液中のそのような物質の均衡はさらにくずれることがある。
【0008】
創傷底と接触して創傷治癒の促進に有益である物質を実質的に希釈することなく、創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することができ、かつ、そのような物質を同時に創傷へ連続的に供給しかつ再循環させることのできる治療系を提供することが望ましいであろう。
【0009】
体液を処理する透析は、処理された流体が身体の内部へ戻されるので、全身治療でもある。これは、処理された流体が身体の外側、例えば創傷へ循環される局所療法とは対照的なものである。たいていの透析では血液のような体液が大量に必要でもあり、そのために関連装置は携帯型のものではない傾向にある。
【0010】
強滲出状態においてさえ、慢性的創傷によって、身体内系に比べて処置すべき量がかなり少ない流体と、何らかの治療的観点で有益であって創傷および/またはその環境の内部に保持すべき量がかなり少ない物質とが作り出される。
【0011】
この発明の1つの目的は、
a) 公知の吸引および/または灌注治療系における前記短所の少なくともいくつかを未然に防止することと、
b) 創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することができ、一方、創傷底と接触して創傷治癒の促進に有益である物質を保持することのできる治療系を提供することである。
【0012】
この発明のさらに別の目的は、
a) 公知の透析系における前記短所の少なくともいくつかを未然に防止することと、
b) 創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することができ、一方、創傷底と接触して創傷治癒の促進に有益である物質を保持することのできる治療系を
c) 身体の全身に影響をおよぼすことなく提供することである。
【0013】
この発明のさらにもっと別の目的は、
a) 公知の透析系における前記短所の少なくともいくつかを未然に防止することと、
b) 創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することができ、一方、創傷底と接触して創傷治癒の促進に有益である物質を保持することのできる
c) 携帯型の治療系を提供することである。
【0014】
創傷の下にあって創傷を包囲している組織への血管供給とその組織における循環とは妥協的なものであることが多い。この発明のさらに別の目的は、この効果を逆にし、一方、有害である物質を除去し、それによって創傷治癒を促進するのに有益である物質の治療的活性量を保持するとともに供給する治療系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、この発明の第1の観点によれば、
a) i) 創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成することのできる裏張層と、流体供給管へ接続され、創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る少なくとも1つの入口管と、流体排出管へ接続され、創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る少なくとも1つの出口管とを有しており、その入口管あるいはそれぞれの入口管およびその出口管あるいはそれぞれの出口管が創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る箇所は、創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成し、少なくとも1つの入口管は流体再循環管に接続され、少なくとも1つの出口管は流体排出管に接続されている適合性創傷ドレッシングと、
ii) 流体排出管に接続された少なくとも1つの入口部と流体再循環管に接続された少なくとも1つの出口部とを有している流体洗浄手段と
を備えている流体流路、
b) 第2流体供給管によって(場合によってはあるいは必要に応じて、供給と再循環との流れを切り換える手段を介して)前記流路の完全体に接続された流体貯蔵器、
c) 流体を前記創傷ドレッシングと前記流体洗浄手段とによって、また、場合によってはあるいは必要に応じて前記流体供給管によって、移動させる装置、および
d) 場合によっては、前記流体貯蔵器から前記流体供給管(場合によってはあるいは必要に応じて、流れを切り換える前記手段を介して)を通して流体が前記流路を満たすことができるように、かつ、前記流路を通して前記装置によって再循環することができるように、前記流路から流体を放出する手段
を備えていることを特徴とする創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置が提供される。
【0016】
供給と再循環との間における流れ切換手段は、創傷が同時に
a) 流体貯蔵器に連通するが、
b) 流体再循環管に近接し、かつ、
c) 逆の場合も同じである
ことを可能にする任意の形態を採ることができる。
【0017】
従って、創傷ドレッシングの創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通るただ1つの入口管があれば、流体貯蔵器は、流体供給管によって、要望に応じて流体再循環管あるいは流体排出管の中へ流れを切り換える流れ切換手段を介して流路に接続される。
【0018】
この場合において、供給と再循環との間における流れ切換手段は、T字バルブのような調整器であってよい。この調整器は次いで、供給と再循環との間に所望の流れ切換が達成されるように、流体再循環管の2つの部分あるいは流体排出管と流体供給管とに接続される。
【0019】
もし2つ以上の入口管があれば、これらはそれぞれ、流体を創傷の中へ流入させるバルブあるいは他の制御装置のような第1調整器および第2調整器をそれぞれ有している流体供給管あるいは流体再循環管に接続することができる。
【0020】
供給と再循環との間における所望の流れ切換はそれぞれ、第2調整器が閉鎖されたときに第1調整器を開放し、また、その逆にすることによって、達成される。
【0021】
流路から流体を放出する手段は、灌注流体および/または創傷滲出物に接触するこの装置の適切な任意部分に配置することができるが、普通は排出管および/または再循環管の内部に配置される。しかしながら、この手段は、たいていは貯蔵器および流体供給管のできるだけ下流側にしかも遠くに配置されるので、流体貯蔵器から流体供給管を介する流路の全体を流体で満たすために使用することができる。
【0022】
この手段は、この装置から流体を例えば捕集バッグのような廃液貯蔵器へ放出するためのバルブあるいは他の制御装置、例えば放出と再循環とを切り換えるために回されるT字バルブのような調整器であってよい。
【0023】
あるいは、供給と再循環との流れ切換は望まれず、相伴う放出および/または再循環が望まれることがある。後者は、再循環の際における灌注流体および/または創傷滲出物の容積が
a) 創傷滲出物および/または
b) 洗浄流体から例えば透析ユニットのような系における選択透過性完全体を通過する流体
のそれへの連続的添加によって増大するときに起きるであろう。
【0024】
従って、廃液管および/または再循環管から流体を放出する手段は、再循環通路から分岐している放出ラインを介する灌注流体および/または滲出物の通過を許容しあるいは阻止するための簡単なバルブあるいは他の制御装置のような調整器の形態に設けることができる。
【0025】
流体洗浄手段は、要望に応じて「単相系」であってよい。
【0026】
この場合には、創傷および流体貯蔵器からの循環流体は、創傷治癒に有害である物質が除去されるとともに創傷治癒の促進に有益である物質をなお含有している洗浄ずみ流体が再循環管を通して創傷底へ戻される自己完結型の系を通過する。このような系は、これ以降に、流体洗浄手段と関連してさらに詳しく説明される。
【0027】
これに代えて、適切な場合には、流体洗浄手段は、透析ユニットあるいは二相性流体抽出ユニットのような二相系の形態に設けることができる。
【0028】
この場合には、創傷および流体貯蔵器からの循環流体は、流体が間接的に(あるいは、ほとんどないことであるが直接)第2流体(透析液)相に、より一般的には液体に接触して再循環し、創傷治癒に有害である物質が除去されるとともに創傷治癒の促進に有益である物質をなお含有している洗浄ずみ流体が再循環管を通して創傷底へ戻される系を通過する。このような系は、これ以降に、流体洗浄手段と関連してさらに詳しく説明される。
【0029】
使用に際して、典型的には、供給と再循環との流れ切換手段は、流体貯蔵器から創傷の中へ流体を流入させるが流体再循環管に対して創傷を閉鎖するように設定される。
【0030】
そして、排出管および/または再循環管から流体を放出する手段が開放されるとともに、創傷を通して流体を移動させる装置および流体洗浄手段が始動される。
【0031】
装置流路の容積と灌注流体および/または創傷からの創傷滲出物の流速とは、装置流路の全長にわたって装置を流体で満たすために、すなわち、存在する任意の流体(たいていは空気)貯蔵器を流体再循環通路から移動させるために、この装置を作動させることとどれほど長く作動させるかということが適切であるかどうかに大きく左右される。典型的には、再循環の際に創傷滲出物に関する流体貯蔵器からのきわめて多量の灌注流体があるので、創傷を通る流体を移動させる装置の使用はこの目的に叶うものである。
【0032】
作動は、装置が装置流路の全長にわたって流体で満たされるまで行われる。その後、典型的には、排出管および/または再循環管から流体を放出する手段が閉鎖され、供給と再循環との流れ切換手段が、流体貯蔵器に対して創傷を閉鎖するが流体再循環管から創傷の中へ流体を流入させるように設定される。
【0033】
流体洗浄手段が、透析ユニットあるいは二相性流体抽出ユニットのような二相系であるときには、洗浄流体は典型的には、選択透過性完全体、例えばポリマー製のフィルム、シートあるいは膜の表面に接触して移動するようにされる。洗浄流体が静的であることがあまり一般的でないときには、このステップはもちろん省略される。
【0034】
以下にいっそう詳しく述べるように、再循環の際における灌注流体および/または創傷からの創傷滲出物の容積は、
a) 創傷滲出物および/または
b) 洗浄流体から選択透過性完全体、例えば透析ユニットのような二相系におけるポリマー製のフィルム、シートあるいは膜を通過する流体
のそれへの連続的添加によって増大する。
【0035】
これに加えて、あるいはこれに代えて、創傷を通して流体を移動させる装置と、創傷ドレッシングの下流側にしかも遠くにある流体再循環管の中で再循環の際に流体に適用された流体洗浄手段とによって、創傷に負圧を加えることは望ましいであろう。
【0036】
このような場合には、相伴う流体放出および/または再循環が可能である系を提供することと、排出管および/または再循環管から流体を放出する手段によって再循環の際に流体の好ましい均衡を維持するために必要な調整を行うこととが望ましいであろう。
【0037】
再循環の際における灌注流体および/または創傷からの創傷滲出物の容積は、洗浄流体から、例えば透析ユニットのような系における選択透過性完全体を通過する流体のそれから連続的に失われることで、減少することがある。
【0038】
これに加えて、あるいはこれに代えて、創傷を通して流体を移動させる装置と、創傷ドレッシングの下流側にしかも近くにある流体再循環管の中で再循環の際に流体に適用された流体洗浄手段とによって、創傷に正圧を加えることは望ましいであろう。
【0039】
供給と再循環との流れ切換手段は、相伴う供給および/または再循環が可能である形態で同じように提供することができ、また、流れ切換手段によって再循環の際に流体の好ましい均衡を維持するために必要な調整が行われる。
【0040】
正圧あるいは負圧が創傷に加えられるときに、創傷底への再循環流路と創傷底からの再循環流路とにおける少なくとも1つの中空体が、灌注流体のかなりの圧縮あるいは減圧を引き起こす圧力に対する充分な復元力を有しているべきである、ということは認識されるであろう。
【0041】
この装置のすべての実施形態では、この発明に使用するのに適しているものとしてこの明細書で例示として説明されたそのような物体(フィルム、シートあるいは膜によって画成されたもの)の種類および材料は、この機能をかなり使用することができるであろう。
【0042】
従って、入口管あるいは排出管および/または再循環管のような、フィルム、シートあるいは膜によって画成された物体と、灌注流体で満たされたバッグ、チャンバーおよびパウチのような構造体、例えば創傷ドレッシングの裏張層とについての適切な材料は、圧力がこのようにして加えられたときにこの機能を使用する可能性がある適度に弾性のある熱可塑性プラスチック材料である。
【0043】
この発明によれば、この観点でいくつかの利点がもたらされる。その1つは、創傷の下にある組織に1つ以上の生理活性成分で灌注することのできる正圧が裏張層の下方にある創傷へ加わることである。
【0044】
これは、生理活性成分単独による処置によるものよりも創傷治癒を大きく促進させるために、治療活性量で達成することができる。
【0045】
創傷治癒に有益である滲出物のそのような生理活性成分は、例えば酵素あるいは他の種であってよく、また、流体洗浄のための透析手段の透析液から供給することができる。
【0046】
この発明の創傷の吸引、灌注および洗浄用装置を循環状態で使用すると効果がさらに促進されるであろうということは信じられている。
【0047】
創傷流体を循環させると、創傷治癒に関連する生物学的シグナル分子の、創傷治癒処理に都合がよい創傷底における定位置への移動および/または、さもなければそれらにさらされない例えば強滲出状創傷における細胞への移動が促進されるであろう。
【0048】
これはとりわけ、創傷の吸引、灌注および/または洗浄のためのこの発明におけるこの第1観点による装置の実施形態における事例であり、この装置には、細管が創傷底へ向かって放射状に広がるとともに創傷底へ延び、流体を供給しかつ拡張区域にわたって創傷底から流体を直接捕集する開口の端部へ延びる入口側マニホールドおよび出口側マニホールドがある。
【0049】
このような物質には、サイトカイン、酵素、増殖を促進する創傷細胞への栄養素、酸素、および、成長因子や走化性を引き起こすのに有利な効果(さらに促進してもよい)を有している他の因子のような創傷治癒に有利に関連する他の分子が含まれる。
【0050】
創傷の吸引、灌注および/または洗浄のためのこの発明におけるこの第1観点による装置のすべての実施形態では、特別な利点は、創傷ドレッシングがそれの施される身体部分の形状に適合する傾向があるという点である。
【0051】
この創傷ドレッシングは、創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成することのできる創傷対向面のある裏張層と、流体供給管あるいは再循環管へ接続され、創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る少なくとも1つの入口管と、流体排出管へ接続され、創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る少なくとも1つの出口管とを有しており、その入口管あるいはそれぞれの入口管およびその出口管あるいはそれぞれの出口管が創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る箇所は、相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成している。
【0052】
用語「相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部」は、この明細書では、流体・微生物不透過性であって、50%大気圧までの、いっそう一般的には15%大気圧までの正圧あるいは負圧を創傷へ加えることのできる部分を表示するために使用されている。用語「流体」は、この明細書では、ゲル、例えば厚い滲出物、液体、例えば水、および空気、窒素などの気体を含めるために使用されている。
【0053】
施される裏張層の形状は、創傷の区域にわたって創傷を吸引し、灌注しかつ/または洗浄するのに適している任意の形状であってよい。
【0054】
このような例には、実質的に偏平なフィルム、シートあるいは膜、または流体を収容することのできる、例えばポリマーフィルムからなるバッグ、チャンバー、パウチあるいは裏張層の他の構造体が含まれる。
【0055】
裏張層は、普通は最大100ミクロンまでの、好ましくは最大50ミクロンまでの、いっそう好ましくは最大25ミクロンまでの、そして最小10ミクロンの(ほぼ均一な)厚さのあるフィルム、シートあるいは膜であってよい。
【0056】
その最大断面寸法は、500mmまで(例えば大きい胴の創傷に対して)、100mmまで(例えば腋窩の創傷および鼠径部の創傷に対して)、そして手足の創傷に対しては200mmまで(例えば、静脈性下腿潰瘍および糖尿病性足部潰瘍のような慢性的創傷に対して)であってよい。
【0057】
このドレッシングは弾性的に変形可能なものであるのが好ましいが、その理由は、患者の快適性が増大し、かつ、創傷の炎症のおそれが減少するからである。
【0058】
そのために適した材料には、ポリエチレン、例えば高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、これらのコポリマー、例えば酢酸ビニルとのコポリマーおよびポリビニルアルコール、およびこれらの混合物のようなポリオレフィン、ポリシロキサン、ポリカーボネートのようなポリエステル、ポリアミド、例えば6-6ポリアミド、6-10ポリアミド、および疎水性ポリウレタンのような水溶性流体を吸収しない合成ポリマー材料が含まれる。
【0059】
それらは、親水性であってもよく、従って、親水性ポリウレタンも含まれる。それらには、熱可塑性エラストマーおよびエラストマーブレンド、例えば、場合によってはあるいは必要に応じて高衝撃耐性ポリスチレンをブレンドしたエチル酢酸ビニルのようなコポリマーも含まれる。それらには、エラストマー性ポリウレタン、とりわけ溶液流延によって形成されたポリウレタンが含まれる。
【0060】
この創傷ドレッシングについての好ましい材料には、熱可塑性エラストマーおよび硬化性システムが含まれる。
【0061】
裏張層は、創傷を覆ってかつ/または入口管および出口管の周りに相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成することができるものである。
【0062】
しかしながら、とりわけ創傷ドレッシングの周縁、すなわち相対的に液密な封止部の外側の周りでは、創傷の周りにおける皮膚の浸軟を防止するために、高い水蒸気透過性のある材料から作られているのが好ましい。この材料はまた、流体、例えば水、血液あるいは創傷滲出物と接触したときに高い水蒸気透過性がある交換可能材料であってもよい。この材料は例えば、スミス・アンド・ネフュー(Smith & Nephew)社のアレビン(Allevyn(登録商標))、アイブイ(IV)3000(登録商標)およびオプサイト(OpSite(登録商標))のドレッシングに使用されている材料であってよい。
【0063】
裏張層の創傷対向面の周縁には、例えば創傷の周りの皮膚に貼り付けるために接着性フィルムが担持されていてもよい。このフィルムは、創傷ドレッシングの創傷対向面の周縁の周りにおける液密な封止部の定位置に創傷ドレッシングを保持するのに充分であれば、例えば感圧性接着剤であってもよい。
【0064】
これに代えて、あるいはこれに加えて、適切な場合には、ドレッシングを定位置に固定して漏れを防止するために光切換可能な接着剤(light switchable adhesive)を使用することができる。(光切換可能な接着剤は、その接着力が光硬化によって減少されているものである。その使用は、ドレッシング除去の際の外傷を減少させるのに有益である。)
【0065】
従って、裏張層は、裏張層の近位面の周りに延びている透明あるいは半透明の材料(先に列挙された材料がとりわけ適しているということが理解されるであろう)からなるフランジあるいはリップを有していてもよい。
【0066】
この裏張層には、ドレッシングを定位置に固定してその近位面における漏れを防止するために光切換可能な接着剤からなるフィルムと、その遠位面における不透明材料からなる層とが担持されている。
【0067】
ドレッシングを除去するために、また、ドレッシング除去の際に過剰な外傷を引き起こさないために、近位創傷の周りに延びているフランジあるいはリップの遠位面における不透明材料からなる層は、適切な波長の放射線をそのフランジあるいはリップに照射する前に除去される。
【0068】
創傷の周りの皮膚に貼り付けるために接着性フィルムが担持されている創傷ドレッシングの周縁、すなわち相対的に液密な封止部の外側は、高い水蒸気透過性のある材料かあるいは交換可能な材料から作られており、従って、接着性フィルムは、連続状であれば、高いまたは交換可能な水蒸気透過性も有していなければならず、例えば、スミス・アンド・ネフュー社のアレビン(Allevyn(登録商標))、アイブイ(IV)3000(登録商標)およびオプサイト(OpSite(登録商標))のドレッシングに使用されているような接着性フィルムである。
【0069】
創傷ドレッシングの創傷対向面における周縁の周りの液密な封止部の定位置に創傷ドレッシングを保持するために真空状態が施されるときには、創傷ドレッシングには、創傷の周りにそのドレッシングを封止するためにシリコーン製のフランジあるいはリップが設けられてもよい。このことによって、患者の皮膚への接着テープについての必要性とそれに関連した外傷とがなくなる。
【0070】
灌注流体および/または創傷滲出物の内部とそれらの流れがある箇所とにおいて、ドレッシングはかなりの正圧下にあるが、この正圧は、周縁箇所でドレッシングを創傷の周りの皮膚から持ち上げて除去するように作用する傾向がある。
【0071】
従って、装置のこのような使用では、この目的のために周縁箇所で作用するために、そのような正圧に抗して創傷を覆ってそのような封止部あるいは閉鎖部を形成しかつ維持する手段を設ける必要があるであろう。このような手段の例には、ドレッシングを定位置に固定して漏れを防止するために、前記のような光切換可能な接着剤からなるものが含まれる。
【0072】
光切換可能な接着剤の接着力は光硬化によって減少され、それによってドレッシング除去の外傷が減少しているので、例えば前記のようなフランジには、いっそう強い接着剤からなるフィルムを使用することができる。
【0073】
患者の皮膚への外傷が許容できるいっそう極端な条件の下で使用するのに適した液状接着剤の例には、創傷の縁部の周りおよび/または創傷ドレッシングの裏張層の近位面、例えばフランジあるいはリップの周りに塗布された、基本的にシアノアクリレートおよび同様の組織接着剤からなるものが含まれる。
【0074】
このような手段のさらに適切な例には、接着性(例えば感圧接着性)および非接着性の、かつ、弾性および非弾性のストラップ、バンド、ループ、細片、ひも、包帯、例えば圧縮包帯、シート、カバー、スリーブ、ジャケット、さや、包み、ストッキングおよびホーズ、例えば、体肢の創傷を覆って圧縮状に装着され、治療がこのようにして施されるとそこに適切な圧力を加える管状の弾性ホーズあるいは管状の弾性ストッキング、および膨脹可能なカフ、スリーブ、ジャケット、ズボン、さや、包み、体肢の創傷を覆って圧縮状に装着され、治療がこのようにして施されるとそこに適切な圧力を加えるストッキングおよびホーズが含まれる。
【0075】
このような手段は、それぞれ創傷ドレッシングを覆って配置されて創傷ドレッシングの裏張層の周縁を越えて延びていてもよく、また、必要に応じて、創傷および/またはそれ自体の周りで皮膚に接着されるかさもなければ固定され、さらに、必要に応じて、創傷の周縁の周りにおける液密な封止部の中の定位置に創傷ドレッシングを保持するのに充分である程度まで(例えば、弾性の包帯、ストッキングで)圧縮力を加える。
【0076】
このような手段は、それぞれドレッシングの他の構成要素、とりわけ裏張層と一体であってもよい。これに代えて、このような手段は、例えば接着性フィルムで、ドレッシングに永久に取り付けられるかあるいは取り外し可能に取り付けられてもよく、または、これらの構成要素は、互いに嵌まり合うベルクロ(Velcro(登録商標))、押しロック、スナップロックあるいはひねりロックであってもよい。
【0077】
この手段およびドレッシングは、互いに永久に取り付けられていない別々の構造体であってよい。
【0078】
創傷に対するより高い正圧についてのいっそう適切なレイアウトでは、堅いフランジあるいはリップが、先に画成されたような創傷ドレッシングの裏張層における近位面の周縁の周りに広がっている。
【0079】
このフランジあるいはリップは、周縁の溝あるいは導管を画成するために、その近位面において凹形のものである。
【0080】
それは、フランジあるいはリップを通過して溝あるいは導管に連通する吸引出口を有しており、また、真空のポンプあるいは管備品のような真空供給装置に接続されていてもよい。
【0081】
裏張層は、その近位面の周りに広がっているフランジあるいはリップと一体であってもよく、あるいは、例えばヒートシール処理によってフランジあるいはリップに取り付けられていてもよい。
【0082】
創傷を覆って、必要とされる相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成するために、また、装置の使用時に創傷ドレッシングの創傷対向面における周縁の下方の灌注流体および/または滲出物の通過を防止するために、ドレッシングは創傷の周りの皮膚に配置される。
【0083】
次いで、この装置には、フランジあるいはリップの内側へ真空処理が施され、従って、創傷の周りにおける周縁箇所で、創傷における正圧に抗する封止部あるいは閉鎖部が形成されるとともに維持される。
【0084】
前記の取付手段と、創傷の周りにおける周縁箇所で創傷における正圧あるいは負圧に抗する創傷を覆う封止部あるいは閉鎖部を形成しかつ維持する手段とのすべてに対して、創傷ドレッシング封止用周縁は、楕円形および特定の円形のようなほぼ丸い形状のものであるのが好ましい。
【0085】
創傷を覆って、かつ、入口管および出口管が創傷対向面を貫通しかつ/または創傷対向面の下方を通る箇所で入口管および出口管の周りに、相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成するために、裏張層は、これらの他の構成要素と一体であってもよい。
【0086】
これらの構成要素は、互いに嵌まり合う押しロック、スナップロックあるいはひねりロックであってもよく、または、互いに接合されるかヒートシール処理されていてもよい。
【0087】
その入口管あるいはそれぞれの入口管およびその出口管あるいはそれぞれの出口管は、流体再循環管および/または流体供給管(場合によっては、あるいは必要に応じて、管あるいはホースを介する)あるいは、流体再循環管および/または流体供給管(場合によっては、あるいは必要に応じて、供給と再循環との流れ切換手段を介する)あるいは流体排出管の接続端部に雄部材としてそれぞれ接続されるノズル、穴、開口、オリフィス、ルアー、長穴あるいは口の接続端部に雌部材としてそれぞれ接続される漏斗、穴、開口、オリフィス、ルアー、長穴あるいは口のような開き口の形態にあってもよい。
【0088】
ここで、これらの構成要素が一体であるときには、それらは同じ材料から作られているのが普通である(先に列挙された材料がとりわけ適切であるということはわかるであろう)。
【0089】
ここで、代わりに、それらが押しロック、スナップロックあるいはひねりロックの嵌合体であるときには、それらは同じ材料から作られていてもよく、あるいは異なる材料から作られていてもよい。いずれの場合にも、先に列挙された材料はすべての構成要素についてとりわけ適切な材料である。
【0090】
その管あるいはそれぞれの管は、裏張層の下方を通るのではなく、裏張層をほぼ貫通する。そのような場合には、裏張層には、その管あるいはそれぞれの管とその接続管あるいはそれぞれの接続管との実質的な遊び、あるいは圧力下におけるあらゆる方向への変形に耐えるために、硬くかつ/または弾性的に柔軟でないかあるいは曲がらない区域がたいてい備わっている。
【0091】
この区域は、関連したそれぞれの管あるいはホース、あるいは流体再循環管および/または流体供給管あるいは流体排出管の接続端部に接続されるノズル、穴、開口、オリフィス、ルアー、長穴あるいは口の周りで遠位へ(創傷から外側へ)突出する隆起によって、堅くされ、補強され、さもなければ強化されていることが多い。
【0092】
これに代えて、あるいはこれに加えて、適切な場合には、裏張層には、裏張層を堅くし、補強し、さもなければ強化するために、裏張層の近位面の周りに広がる堅いフランジあるいはリップが備わっている。
【0093】
創傷ドレッシングには、使用時に創傷における裏張層の下方に完全体が備わっていなくてもよい。
【0094】
しかしながら、このことは、創傷を実際的な速度で灌注するために充分な機能的表面区域にわたって灌注流体を供給する系を提供しないかもしれない。創傷治癒に有害である物質の濃度が相対的に高い、とりわけ慢性的創傷の透析法の使用に適切であるために、創傷灌注流体および/または創傷滲出物がいっそう均一に供給される系を提供すること、あるいは、創傷底を覆ってドレッシングの下方にいっそう複雑な通路を通すことは、有利であろう。
【0095】
従って、ドレッシングの1つの形態では、入口側マニホールドから創傷底まで放射状に広がって開き口で終わり、かつ、開き口を介して創傷底へ循環流体を供給する「樹木」形態の管あるいは細管が設けられている。同じように、細管が放射状に広がって創傷底まで延びて開口で終わり、かつ、創傷底から流体を直接放射する出口側マニホールドがある。
【0096】
管などは、使用時に、それぞれ入口側マニホールドあるいは出口側マニホールドから創傷を貫通して規則正しく放射状に広がっていてもよく、あるいは不規則に放射状に広がっていてもよいが、規則正しい方が好ましい。より深い創傷についてのいっそう適切なレイアウトは、管などが半球状かつ同心状に創傷底まで放射状に広がっているものである。
【0097】
より浅い創傷については、管などのそのようなレイアウトについての適切な形態の例には、管などが偏平半楕円状かつ同心状に創傷底まで放射状に広がっているものが含まれる。
【0098】
管などのレイアウトについての他の適切な形態には、入口管および/または出口管が裏張層の創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通り創傷底を覆って延びる箇所で、入口管および/または出口管から延びている管あるいは細管が備わっているものが含まれる。これらには、管などに沿った小穴、開き口、穴、開口、オリフィス、切れ込みあるいは長穴が設けられた止まり穴があってもよい。
【0099】
従って、これらの管などによって、循環流体を創傷底あるいは出口管へ直接供給しあるいはその流体を創傷からそれぞれ直接捕集する入口側マニホールドが効果的に形成される。
【0100】
入口側マニホールドは、裏張層の下方で創傷底の大部分を覆って、管、細管などにおける穴、開口、オリフィス、切れ込みあるいは長穴を介して形成される。
【0101】
管あるいは細管は、創傷および創傷ドレッシングの内部に対して良好な適合性があって弾性的に柔軟である構造体、例えばゴム弾性のある構造体、好ましくは柔軟な構造体であるのが望ましい。
【0102】
治療がこのように施されるときには、管、細管などのレイアウトは創傷の深さおよび/または容積に左右されるであろう。
【0103】
従って、より浅い創傷については、管、細管などのそのようなレイアウトの適切な形態の例には、渦巻状にされた1つ以上の管などから基本的に構成されているものが含まれる。
【0104】
治療がこのように施されるときの、より深い創傷についてのいっそう適切なレイアウトは、らせん状あるいは渦巻らせん状にされた1つ以上の管などから構成されているものであってもよい。
【0105】
より浅い創傷についての他の適切なレイアウトには、ドレッシングが使用されるときに創傷に流体を循環させる、止まり穴が穿孔された入口側マニホールドあるいは出口側マニホールドのあるものが含まれる。
【0106】
これらの一方あるいは双方はそのような形態であってよく、他方は例えば止まり穴が穿孔された1つ以上のまっすぐな放射状の管あるいはノズルであってよい。
【0107】
別の適切なレイアウトは、入口管あるいは入口細管および/または出口管あるいは出口細管をそれぞれ通して、循環流体を創傷底へ直接供給しあるいは循環流体を創傷から直接捕集する入口側マニホールドおよび/または出口側マニホールドを備え、入口側マニホールドおよび/または出口側マニホールドは、互いに積層状に永久に接合されたいくつかの層における長穴によって形成され、入口管あるいは入口細管および/または出口管あるいは出口細管は、互いに積層状に永久に接合されたいくつかの層を貫通する開き口によって形成されている。(図10aには、非限定的であるが、そのような積層体の分解斜視図が示されている。)
【0108】
この明細書で言及されたように、施された裏張層は、この治療系に適していて創傷へ50%大気圧までの、普通は25%大気圧までの正圧あるいは負圧を加える任意のものであればよい。
【0109】
従って、裏張層は、微生物不透過性のフィルム、シートあるいは膜であることが多く、実質的に偏平で、その上における圧力差に左右され、たいていは従来の創傷ドレッシングに使用されたフィルムあるいはシートと同じような(ほぼ均一の)厚さ、すなわち、最大100ミクロン、好ましくは最大50ミクロン、より好ましくは最大25ミクロンで、最小厚さが10ミクロンのものである。
【0110】
裏張層には、互いに一体でない他の構成要素どうしの実質的な遊びに耐えるために、硬くかつ/または弾性的に柔軟でないかあるいは曲がらない区域がたいてい備わっており、また、裏張層は、例えば突出状隆起によって、堅くされ、補強され、さもなければ強化されていてもよい。
【0111】
このような形態のドレッシングは、創傷底に対して極めて適合性があるというものではないであろうし、また、裏張層と裏張層の下方の創傷底とによって画成されたチャンバー、くぼみあるいは空洞を効果的に形成するものであろう。
【0112】
創傷ドレッシングの内部は、強滲出状態にある創傷についても創傷底に対する適合性があるのが望ましいであろう。従って、ドレッシングの1つの形態は、裏張層の下方に創傷詰物が設けられているものである。
【0113】
この創傷詰物は、創傷の形状に対して良好な適合性があって弾性的に柔軟である構造体、例えばゴム弾性のある構造体、好ましくは柔軟な構造体であるのが望ましい。
【0114】
創傷詰物は、それ自体の弾性によって裏張層へ押し付けられて、創傷底へ適度な圧力を加える。
【0115】
創傷詰物は、ドレッシングの他の構成要素、とりわけ裏張層と一体であってもよい。
【0116】
これに代えて、創傷詰物は、必要とされる、創傷を覆う相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部が壊れないように、例えば接着性フィルムで、あるいは近位面から広がっているフランジあるいはリップへのヒートシール処理によって、それら/それに永久に接合されてもよい。
【0117】
あまり一般的ではないが、創傷詰物は、例えば接着性フィルムで裏張層へ取り外し可能に取り付けられていてもよく、あるいは、これらの構成要素は、互いに嵌まり合う押しロック、スナップロックあるいはひねりロックであってもよい。
【0118】
創傷詰物および裏張層は、互いに永久に接合されていない別々の構造体であってもよい。
【0119】
創傷詰物は、創傷の形状に対して良好な適合性があって弾性的に柔軟である構造体、例えばゴム弾性のある構造体、好ましくは柔軟な構造体であるのが好ましい、中実の完全体であっても、中実の完全体を備えているものであってもよい。
【0120】
このような創傷詰物の適切な例は、適切な材料、例えば弾性のある熱可塑性プラスチックから形成された発泡体である。この創傷ドレッシングについての好ましい材料には、小さい開き口すなわち微細孔のある濾過用の網状化発泡ポリウレタン発泡体が含まれる。
【0121】
これに代えて、あるいはこれに加えて、創傷詰物は、創傷詰物を創傷の形状に押し付ける流体あるいは固体で満たされたバッグ、チャンバー、パウチあるいは他の構造体のような、フィルム、シートあるいは膜によって画成された適合性のある1つ以上の中空体の形状にあってもよく、そのような中空体からなるものであってもよい。
【0122】
このフィルム、シートあるいは膜には、従来の創傷ドレッシングの裏張層に使用されたフィルムあるいはシートの厚さと同じような(ほぼ均一な)厚さがあることが多い。
【0123】
すなわち、このフィルム、シートあるいは膜は、厚さが最大100ミクロン、好ましくは最大50ミクロン、より好ましくは最大25ミクロンで、最小厚さが10ミクロンであり、弾性的に柔軟であり、例えばゴム弾性があり、好ましくは柔軟である。
【0124】
このような詰物は、ドレッシングの他の構成要素、とりわけ裏張層と一体であってもよく、または、例えば接着性フィルムであるいはフランジへのヒートシール処理によって、それら/それに永久に接合されてもよい。
【0125】
フィルム、シートあるいは膜によって画成された中空体に含有された適切な流体の例には、大気圧を超える小さい正圧の空気、窒素およびアルゴンのような気体、より一般的には空気と、水や生理食塩水のような液体とが含まれる。
【0126】
これらの例には、シリコーンゲル、例えばキャビケア(CaviCare)(登録商標)ゲル、あるいは、好ましくはセルロースゲル、例えばイントラジット(Intrasite)(登録商標)架橋物質のような親水性架橋セルロースゲルも含まれる。これらの例には、エアゾール系の気体相が、空気または、窒素あるいはアルゴンのような不活性気体であり、より一般的には、大気圧を超える小さい正圧の空気であるエアゾール発泡体と、プラスチック小片のような固体粒子とが含まれる。
【0127】
当然のことであるが、裏張層が充分に適合性のあるものであり、かつ/または、例えば上向き皿状のシートであれば、裏張層は、創傷詰物の上方でなく下方に存在するであろう。
【0128】
この種のレイアウトでは、創傷詰物が創傷ドレッシングを創傷底へ押し付けるように、創傷詰物は、創傷の周りの皮膚にしっかりと接合するかさもなければ取り外し可能に取り付けなければならない。このことは、創傷詰物および裏張層が互いに永久に取り付けられていない別々の構造体であるような実施形態では重要である。
【0129】
より深い創傷についてのこのようなレイアウトでは、治療がこのように施されるときに、そのような取り付けの手段によっても、創傷を覆って封止部あるいは閉鎖部が形成されるとともに維持される。
【0130】
詰物が裏張層の上方にあり、流体の入口管および出口管が裏張層の創傷対向面を貫通するときには、それらは、裏張層を覆って創傷詰物を通ってあるいは創傷詰物の周りに延びる。
【0131】
ドレッシングの1つの形態では、裏張層の下方に創傷詰物が設けられているが、その詰物は、開き口、穴、開口、オリフィス、切れ込みあるいは長穴のあるバッグ、チャンバー、パウチ、あるいは他の構造体、または、管、細管あるいはノズルのような、フィルム、シートあるいは膜によって画成された、弾性的に柔軟であり、例えばゴム弾性があり、好ましくは柔軟な中空体であるか、またはそのような中空体からなっている。この詰物は、少なくとも1つの開き口、穴、開口、オリフィス、切れ込みあるいは長穴によって、少なくとも1つの入口管あるいは出口管に連通している。
【0132】
従って、中空体に収容された流体は、この装置における循環流体である。
【0133】
そして、中空体あるいはそれぞれの中空体には、循環流体を創傷底へ直接供給し、あるいはその流体を穴、開口、オリフィス、切れ込みあるいは長穴によって、またはフィルム、シートあるいは膜の形態にある管あるいはホースによって、それぞれ創傷から直接捕集する入口側マニホールドあるいは出口側マニホールドが効果的に形成されている。
【0134】
治療がこのように施されると、詰物の種類もまた、創傷の深さおよび/または容積に大きく左右される。
【0135】
従って、より浅い創傷については、創傷ドレッシングの構成要素としての適切な創傷詰物の例には、循環流体を創傷底へ直接供給しあるいはその流体を創傷から直接捕集する入口側マニホールドあるいは出口側マニホールドを画成する1つ以上の適合性中空体から基本的に構成されているものが含まれる。
【0136】
治療がこのように施されるときの、より深い創傷についてのいっそう適切な創傷詰物は、例えばポリマー製のフィルム、シートあるいは膜によって画成されて中実状完全体を少なくとも部分的に包囲する1つ以上の適合性中空体が備わっているものであってよい。この創傷詰物には、取り扱いに都合がよいいっそう良好な剛性のある系が設けられてもよい。
【0137】
入口管および出口管が創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る箇所で、裏張層の下方における創傷詰物が、入口管と出口管とを直接接続する入口側マニホールドあるいは出口側マニホールドを効果的に形成することなく、また、創傷底が存在しているときには、創傷底の吸引かつ/または灌注を引き起こすために、1つ以上の穴、溝、導管、通路、管、細管および/または空間などにとっては、入口管および出口管が流体の裏張層の下方における創傷詰物を貫通してあるいはその周りで裏張層の創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る箇所から延びているのが好ましい。
【0138】
あまり一般的ではないが、創傷詰物は、裏張層の下方における創傷詰物を通るそのような穴、溝、導管、通路および/または空間を形成することのできる微細孔がある連続気泡発泡体であってもよい。
【0139】
詰物が、例えばポリマー製のフィルム、シートあるいは膜によって画成された1つ以上の適合性中空体であるかあるいはそのような中空体からなっているときには、詰物には、流体を創傷ドレッシングの下方における創傷底へ流入させる手段が設けられていてもよい。
【0140】
これらは、流体の入口管および出口管が裏張層の下方における創傷詰物を貫通してあるいはその周りで裏張層の創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る箇所から延びている管、細管あるいはノズルの形態にあってもよい。
【0141】
ドレッシングが使用されるときに創傷における流体を循環させる、先に説明された、止まり穴が穿孔された入口側マニホールドあるいは出口側マニホールドが備わっている、より浅い創傷についての適切なレイアウトのすべては、裏張層の下方における創傷詰物の下方で使用することができる。
【0142】
要するに、適切なレイアウトには、一方あるいは双方のマニホールドが環状あるいはドーナツ状(例えば楕円形あるいは円形のような規則的形状、または不規則的形状)であって、場合によっては、その環あるいはドーナツ部から分岐している、止まり穴が穿孔された放射状の管あるいはノズルが備わり、かつ/または、曲折状の、蛇行状の、曲がりくねった、ジグザグ状の、曲がったあるいは犂耕体状(すなわち、犂で耕された溝のような)のパターンにあり、または、互いに積層状に接合された層における長穴によってかつその層を貫通する開き口によって画成されているものが含まれる。
【0143】
入口管および/または出口管、流体循環管および流体供給管などは、従来の種類のもの、例えば断面形状が楕円形あるいは円形のものであってもよく、また、それらの全長にわたる均一な円筒状の穴、溝、導管あるいは通路を適切に備えたものであってもよい。
【0144】
灌注流体および/または創傷からの創傷滲出物における所望の流体容積の流速と、再循環における所望の量とに左右されるが、穴の最大断面寸法は適切には、大きい胴の創傷に対しては10mmまでであり、また、手足の創傷に対しては2mmまでである。
【0145】
管壁は、とりわけ、再循環の際における灌注流体および/または創傷からの創傷滲出物の容積が、創傷滲出物および/または選択透過可能な完全体、例えば透析ユニットのような二相系のポリマー製のフィルム、シートあるいは膜を通る洗浄流体からの流体の連続的添加によって増大するときには、そこに加わる正圧あるいは負圧に耐えることができるように適度に厚くなければならない。しかしながら、以下でポンプに関して述べるように、このような管の主要な目的は、圧力容器として作用するのではなく、灌注流体および滲出物を装置の流路の長さにわたって送ることである。管壁は好ましくは、少なくとも25ミクロンの厚さがあればよい。
【0146】
管など、あるいはその中空体またはそれぞれの中空体に沿ったくり穴あるいは任意の小穴、開き口、穴、開口、オリフィス、切れ込みあるいは長穴は、小さい断面寸法であってよい。
【0147】
そして、これらは、細胞残屑および微生物が含まれる微粒子に対する巨視的フィルターおよび/または微視的フィルターを効果的に形成し、一方で蛋白質および栄養素を通過させる。
【0148】
中実の完全体であるかかつ/または1つ以上の弾性的に柔軟なあるいは適合性のある中空体である詰物を貫通しかつ/またはその周りを通るそのような管あるいはホースなどは、入口管および出口管とともにこれ以降にさらに詳しく説明される。
【0149】
創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置の全長は、使用時に創傷ドレッシングが創傷を覆うときには、微生物不透過性でなければならない。
【0150】
創傷ドレッシングとこの発明の創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置の内部とは無菌であるのが望ましい。
【0151】
流体は、流体貯蔵器および/または流体洗浄手段が含まれる流体が再循環する系の残り部分において、紫外線のガンマ線照射あるいは電子ビーム照射によって殺菌することができる。この方法によればとりわけ、内部表面と殺菌剤が含まれる流体との接触が減少するかあるいはなくなる。
【0152】
流体の滅菌に関する他の方法の例には例えば、微生物に対して選択的に不透過性である、最大断面寸法が例えば0.22〜0.45ミクロンである微細な開き口あるいは微細なくり穴による限外濾過法と、クロルヘキシジンおよびポビドンヨードのような化学物質の溶液、銀塩例えば硝酸銀のような金属イオン源、および過酸化水素によるような流体殺菌法との使用も含まれるが、後者には、内部表面と殺菌剤が含まれる流体との接触が含まれる。
【0153】
創傷ドレッシングの内部、流体が再循環する系の残り部分、および/または創傷底は、創傷が強滲出状態にあるときでさえ、流体が流体貯蔵器の中で殺菌された後は滅菌状態に維持されているのが好ましく、または、少なくとも自然に起きる微生物成長が抑制されるのが好ましい。
【0154】
従って、この観点で潜在的に有益であるかあるいは実際に有益である物質は、初めに灌注流体に添加することができ、また、その量は必要に応じて再循環の際に連続的添加によって増やすことができる。
【0155】
このような物質の例には、抗菌剤(それらのいくつかは先に列挙されている)および抗真菌剤が含まれる。
【0156】
これらのうち特に適しているのは例えば、トリクロサン、ヨウ素、メトロニダゾール、セトリミド、酢酸クロルヘキシジン、ウンデシレン酸ナトリウム、クロルヘキシジンおよびヨウ素である。
【0157】
二水素リン酸カリウム/一水素リン酸2ナトリウムのような緩衝剤は、pHを調整するために添加することができ、リドカイン/リグノカイン塩酸塩、キシロカイン(アドレナリン、リドカイン)のような局所麻酔薬/局所麻酔剤、および/または抗炎症剤は、創傷の痛みまたはドレッシングに関連した炎症あるいは痛みを緩和するために添加することができる。
【0158】
創傷治癒に有益である滲出物の生理活性成分が流体洗浄の実行の前あるいは後に除去されない系を設けることも望ましい。この成分は、例えば成長因子などの蛋白質のような、創傷治癒の促進に有益である物質の例えば受動沈殿によって生じるであろう。
【0159】
この成分は、流路における任意の箇所、例えば少なくとも入口管および出口管の中で生じるであろう。
【0160】
創傷治癒の促進に有益である物質の沈殿は、以下のように有効である。
a)過剰な物質を灌注流体に初めに添加し、必要に応じて再循環の量を連続的添加によって増やすことができ、または
b)忌避薬のコーティングを、流体に直接接触する再循環通路における任意の箇所あるいは任意の完全体、例えば流体洗浄手段かあるいは所望の管で使用することができる。
【0161】
循環流体が通過する表面についてのコーティング物質の例には、成長因子、酵素および他の蛋白質や誘導体について有用である、ヘパリンのような抗凝血剤と、PTFEおよびポリアミドのような高表面張力物質とが含まれる。
【0162】
この発明に係る創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置には、流体貯蔵器への流体供給管の形態にあり、創傷ドレッシングの下方における創傷へ流体を直接あるいは間接的に流入させる手段が設けられている。
【0163】
この流体貯蔵器は、任意の従来型のもの、例えば灌注流体を収容することのできる、例えばポリマーフィルムからなる管、バッグ(このようなバッグは、典型的には血液あるいは血液製剤、例えば血漿のために、または、例えば栄養素の注入送り込みのために使用される)、チャンバー、パウチあるいは他の構造体であってよい。
【0164】
この貯蔵器は、普通は従来の創傷ドレッシングの裏張層に使用されたフィルムあるいはシートの厚さと同じような(ほぼ均一な)厚さ、すなわち、最大100ミクロンまでの、好ましくは最大50ミクロンまでの、いっそう好ましくは最大25ミクロンまでの、そして最小10ミクロンの厚さがあるフィルム、シートあるいは膜から作ることができ、たいていは弾性的に柔軟であり、例えばゴム弾性があり、好ましくは柔軟な中空体である。
【0165】
この装置のすべての実施形態では、この発明に係る創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置の全体にわたる管と流体貯蔵器との型式および材料は、それらの機能によって大きく左右される。
【0166】
特に長期にわたる時間尺度での使用に適しているためには、その材料は、無毒で生体適合性があり、適切な場合には、この装置の流路における、また、この装置における循環流体の中へ移動する透析液の二相系透析ユニットの使用の際における流体貯蔵器からの流体および/または創傷滲出物の活性成分に対して不活性でなければならない。
【0167】
灌注流体と接触するときには、この装置の使用に際して、その材料は、かなりの量の抽出溶剤を装置の外側へ自由に拡散させるべきではない。
【0168】
その材料は、紫外線のガンマ線照射あるいは電子ビーム照射によって、かつ/または、使用時に流体・微生物不透過性であって軟性である化学物質の溶液のような流体殺菌剤によって、殺菌することのできるものであるべきである。
【0169】
流体貯蔵器についての適切な材料の例には、ポリエチレンなどのポリオレフィンのような合成ポリマー材料、例えば、高密度ポリエチレンおよび高密度ポリプロピレンが含まれる。
【0170】
この目的のために適した材料には、そのコポリマー、例えば酢酸ビニルおよびその混合物のあるものも含まれる。この目的のために適した材料には、医療級のポリ塩化ビニルがさらに含まれる。
【0171】
そのようなポリマー材料にもかかわらず、流体貯蔵器には、それと互いに一体でない他の構成要素との実質的な遊びに耐えるために、硬くかつ/または弾性的に柔軟でないかあるいは曲がらない区域がたいてい備わっており、また、裏張層は、例えば突出状隆起によって、堅くされ、補強され、さもなければ強化されていてもよい。
【0172】
創傷を通して流体を移動させる装置および流体を洗浄する手段は、この目的のために適切なものであり、また、この目的のために適切な箇所で作用するものである。
【0173】
それは、その主要目的が創傷に正圧あるいは負圧を加えることではなく流体(流体貯蔵器からの灌注流体および/または創傷滲出物)を装置の流路の全長にわたって移動させることであるものの、創傷に正圧あるいは負圧を加えるものであってもよい。
【0174】
それが、創傷ドレッシングの上流側にあってそこへ向かう流体再循環管の中における再循環中の流体に、かつ/または創傷ドレッシングへ向かう流体供給管の中における流体に(場合によっては、あるいは必要に応じて、供給と再循環との流体切換手段によって)適用されると、創傷底にはたいてい正圧(すなわち大気圧を超える圧力)が加わるであろう。
【0175】
たいてい、流体洗浄手段は(その目的に対して最も好ましくは)、創傷ドレッシングの下流側にあり、流路に最も高い抵抗力をもたらす。このことは、流体洗浄手段が単相系であり、例えば微細な開き口あるいは微細なくり穴による限外濾過によって、創傷へ正圧をより多く加える場合に、特に顕著である。
【0176】
この装置が、流体再循環管の中における再循環中の流体および/または創傷ドレッシングの下流側にあってそこから離れている流体排出管の中における流体に適用されると、創傷底には普通は負圧(すなわち大気圧未満の圧力あるいは真空)が加わるであろう。
【0177】
この場合もやはり、たいてい、流体洗浄手段は(その目的に対して最も好ましくは)、創傷ドレッシングの下流側にあり、流路に最も高い抵抗力をもたらして、創傷へ負圧を多く加える。
【0178】
次のような種類のポンプを要望に応じて使用することができる。
シャトルポンプ :流体を1分間に2〜50mlの速度で移動させる揺動シャト ル機構がある
ダイアフラムポンプ :1つあるいは2つの柔軟性ダイアフラムの脈動によって液体 が変位し、チェックバルブによって流体の流れの方向が調節さ れる
ピストンポンプ :ピストンによりチェックバルブを通して流体が汲み上げら れ、とりわけ創傷底へ正圧および/または負圧が加えられる
のような往復ポンプ、
遠心ポンプ
柔軟性インペラーポンプ :ゴム弾性のあるインペラーがあり、インペラーブレー ドと成形されたハウジングとの間の流体を阻止し、ポン プハウジングを通して流体を洗い流す
前進性キャビティポンプ :協働するスクリューローターとステーターとがあり、 とりわけ、より高い粘度と微粒子で満たされた滲出物の ためのもの
ロータリーベーンポンプ :駆動軸に取り付けられ、そのスピンのような脈動によ ることなく流体を移動させる羽根付きディスクがある。 出力はポンプを損傷することなく制限することができる
蠕動ポンプ :ローターアームに周縁ローラーがあり、柔軟な流体再 循環管に作用して管の中における流体をローターの方向 へ押す
真空ポンプ :圧力調整器がある
のような回転ポンプ。
【0179】
この装置の型式および/または容量は、
創傷治癒過程の最適特性についての
a) 灌注流体および/または創傷からの創傷滲出物における適切なあるいは所望の流体容積の流速と、
b) 創傷底へ正圧あるいは負圧を加えることが適切であるかどうかあるいは望まれているかどうかということと、創傷底ヘのそのような圧力の大きさと
によって、また、携帯性、消費電力、および汚染からの隔離のような諸因子によって、大きく左右されるであろう。
【0180】
このような装置はまた、パルス式、連続式、可変式、可逆式および/または自動化されかつ/またはプログラム可能な流体移動のできるものであるのが好ましい。
【0181】
実際には、強滲出状態にある創傷からの場合でさえも、そのような滲出物の流れの速度は、最大で75マイクロリットル/cm2/時間(ここでcm2は創傷の面積である)の程度に過ぎず、流体には(プロテアーゼが存在するために)大きい可動性がある。創傷が治癒するにつれて、滲出物の体液濃度は低下し、粘度は例えば同じ創傷についての水準である12.5〜25マイクロリットル/cm2/時間まで変化する
【0182】
創傷治癒に有害である物質が透析ユニットのような二相系(以下を参照)によって除去されると、流体も流体洗浄手段によって系へ失われるおそれがある。
【0183】
このことは、創傷治癒に有害である物質に加えて、水も透過させることのできる例えば透析用のポリマー製フィルム、シートあるいは膜によって起きることがある。
【0184】
従って、再循環中の流体の均衡は、さらに減少するかも知れないが、このような望ましくない損失を先に説明されたような通常の方法で最小限にするために、調整することができる。
【0185】
それゆえに、創傷からの循環流体には流体貯蔵器からの再循環の際に創傷滲出物を覆う多量の灌注流体が含まれているのが普通である、ことがわかるであろう。
【0186】
従って、この観点で、この装置の型式および/または容量は、創傷からの滲出物の適切なあるいは所望の流体容積の流速ではなく、灌注流体のそれに大きく左右されるであろう。
【0187】
実際には、灌注流体および/または創傷滲出物のそのような流速は、1〜1000ml/cm2/24時間の程度、例えば、3〜300ml/cm2/24時間、あまり好ましくはないが1〜10ml/cm2/24時間であり、ここでcm2は創傷の面積である。
【0188】
再循環中の灌注流体および/または創傷滲出物の体積は、広い範囲で変化するが、治療がこのようにして施されるときには、典型的には、例えば1〜8l(例えば大きい胴の創傷に対して)、200〜1500ml(例えば腋窩の創傷および鼠径部の創傷に対して)、そして手足の創傷に対しては0.3〜300mlである。
【0189】
実際には、適切な圧力は、創傷底における正圧あるいは負圧が10%大気圧であるような最大で25%大気圧の程度であり、この装置は閉鎖された再循環系として作用する。
【0190】
これらの範囲の上限は病院用にいっそう適しているかもしれず、ここで、相対的に高い%圧力および/または真空は専門家の監督下で安全に使用される。
【0191】
下限は家庭用あるいは野戦病院用にいっそう適しているかもしれず、前者では、相対的に高い%圧力および/または真空は専門家の監督によらないと安全に使用することができない。
【0192】
この装置は、蠕動ポンプあるいはダイアフラムポンプであってもよく、例えば、小型携帯用のダイアフラムポンプあるいは蠕動ポンプが好ましい。これらは、特にポンプの内部表面および可動部分と(慢性的な)創傷滲出物との接触を減少させるかあるいは排除し、かつ、洗浄を容易にするためには、好ましい型式のポンプである。
【0193】
この装置は創傷および/または流体洗浄手段へ正圧を加えるものであるのが好ましい。加えられた圧力が正であるときに好ましいポンプは、蠕動ポンプであり、例えば、流体洗浄手段の上流側に備え付けられた小型携帯用蠕動ポンプである。
【0194】
ポンプが蠕動ポンプであるときには、これは、流速が0.2〜180ml/時間であり、重量が0.5kg未満であるインステックモデル(Instech Model)P720小型蠕動ポンプであってよい。これはおそらく家庭用および野戦病院用に有用であろう。
【0195】
このポンプは創傷および/または流体洗浄手段へ負圧を加えるものであるのが好ましい。加えられた圧力が負であるときに好ましいポンプは、ダイアフラムポンプであり、例えば、ドレッシングあるいは流体洗浄手段の下流側に備え付けられた小型携帯用ダイアフラムポンプである。
【0196】
ポンプが蠕動ポンプであり、好ましくは小型携帯用ダイアフラムポンプであるときには、液体を変位させる1つまたは2つの柔軟性ダイアフラムはそれぞれ、脈動を作り出す手段に連結された、例えばポリマー製のフィルム、シートあるいは膜であってもよい。これは、とりわけ圧電変換器、ソレノイドあるいは強磁性完全体の芯および電流の流れ方向が変化するコイル、ロータリーカムおよび従動子などとして都合のよい任意の形態に設けることができる。
【0197】
ドレッシングからの流出物は、創傷治癒に有害である物質の除去のための流体洗浄手段へ流れ、次いで流体再循環管へ流れる。
【0198】
この発明に係る創傷の吸引、灌注および洗浄用装置には、
a) 限外濾過ユニットあるいは化学吸収ユニットおよび/または化学吸着ユニットのような 単相系、または
b) 透析ユニットあるいは二相性抽出ユニットのような二相系
であってよい流体洗浄手段が設けられている。
【0199】
前者において、創傷および流体貯蔵器からの循環流体は、創傷治癒に有害である物質が除去され、かつ、創傷治癒の促進に有益である物質を依然として包含している洗浄ずみ流体が創傷へ戻される自己完結型の系を通過する。
【0200】
単相系は任意の従来型のものであってもよい。
【0201】
このような系における流体洗浄手段の例には、1つ以上の巨視的フィルターおよび/または微視的フィルターを適切に備えているマクロ濾過ユニットあるいはミクロ濾過ユニットが含まれる。
【0202】
これらは、粒子、例えば細胞残屑および微生物を保持し、蛋白質および栄養素を通過させるためのものである。
【0203】
代わりのものとして、これらには、洗浄用完全体が創傷治癒に有害である物質に対するフィルター、例えば高処理能力があり、低い蛋白質結合力があり、除去される創傷治癒に有害である物質を選択的に透過せず、創傷治癒の促進に有益である物質を依然として含有している洗浄ずみ流体が通過するようなポリマー製のフィルム、シートあるいは膜であるような限外濾過ユニットも含まれている。
【0204】
この膜は、酢酸セルロース−硝酸エステル混合物、ポリ塩化ビニリデン、および例えば親水性ポリウレタンのような親水性ポリマー材料から作られているのが好ましい。
【0205】
あまり好ましくない材料の例には、ポリカーボネート、PTFEおよびポリアミドのようなポリエステル、例えば6-6ポリウレタン、6-10ポリウレタンおよび疎水性ポリウレタン、および石英ファイバーならびにグラスファイバーも含有している疎水性材料が含まれる。
【0206】
それには微細な開き口あるいは微細なくり穴があり、その最大断面寸法は、このようにして選択的に除去される種と透過される種とに大きく左右される。
【0207】
前者は、例えば、典型的には20〜700ミクロンの範囲にある最大断面寸法、例えば20〜50nm(例えば望ましくない蛋白質に対して)、50〜100nm、100〜250nm、250〜500nmおよび500〜700nmを有している微細な開き口あるいは微細なくり穴で除去される。
【0208】
フィルター完全体は、いっそう複雑な形態、例えば管、細管などのような細長い構造の形態にあるポリマー材料製の偏平なシートあるいは膜であってよい。
【0209】
この系は、化学吸収ユニット、例えば、ゼオライトのような微粒子、あるいは、例えば官能化されたポリマーからなる層が、創傷および流体貯蔵器からの循環流体を通過させるときに創傷治癒に有害である物質を取り除くことができる部位をその表面に有しているようなものであってよい。
【0210】
これらの物質は、創傷治癒に有害である物質を例えばキレート化剤および/またはイオン交換剤、酵素であってもよい分解剤によって破壊することあるいは結合することで、除去することができる。
【0211】
このようなものの例には、あまり特別なものでない化学吸着ユニットおよび/または化学吸収ユニット、例えば活性化された炭素あるいはゼオライトのような物理吸着剤が、創傷および流体貯蔵器からの循環流体を通過させるときに創傷治癒に有害である物質を取り除くことができる非特定部位をその表面に有しているようなものであってよい。
【0212】
洗浄用完全体、例えばポリマー製のフィルム、シートあるいは他の化学吸収手段および/または化学吸着手段などは、創傷治癒に有害である物質を装置の流路の所定容量についての実際的流速でかつ灌注流体の流速で除去することのできるものでなければならないのはもちろんである。
【0213】
二相系では、創傷および流体貯蔵器からの循環流体は、第2流体(透析液)相、より一般的には液体と間接的に(あるいはあまり一般的ではないが直接)接触する。
【0214】
従って、二相性液体抽出ユニットの1つの形態では、第2流体相は、(通常は)洗浄流体と直接接触して通過する表面の上方でドレッシングからの循環流体と混和しない液体である。創傷治癒に有害である物質は透析液の中へ除去され、また、創傷治癒に有益である物質を依然として含有している洗浄ずみ流体は再循環管を通して創傷底へ戻される。
【0215】
流体洗浄のためのこのような手段の例には、第2流体(透析液)相がパーフルオロデカリンおよび類似物質であるものが含まれる。
【0216】
これに代えて、適切な場合には、それは2つの流体(再循環流体および透析液)が有意に2次元状の完全体、例えば装置における循環流体の中の物質を透過することのできるポリマー製のフィルム、シートあるいは膜あるいは中空の繊維あるいはフィラメントによって隔離される形態に設けることができる。
【0217】
この場合もやはり、創傷治癒に有害である物質は透析液の中へ除去され、また、創傷治癒に有益である物質を依然として含有している洗浄ずみ流体は再循環管を通して創傷底へ戻される。
【0218】
透析ユニットのような二相系が設けられているいずれかの形態では、使用時に、透析液は典型的には、この装置の中における循環流体を越えて並流方向にあるいは好ましくは向流方向に移動する。
【0219】
蠕動ポンプのようなポンプおよび/またはバルブによって、2つの流体の流れ方向が制御される。
【0220】
しかしながら、洗浄流体は、創傷治癒に有害である物質を創傷滲出物から実際的な速度で除去するために系に充分な(動的な)表面積をもたらさないものの、あまり一般的ではないが静的であってもよい。
【0221】
この創傷の吸引、灌注および洗浄用装置における流体洗浄のための透析手段の典型的な透析液流速は、全身治療のための透析ユニットのような通常型二相系において使用されるようなものである。
【0222】
完全体は、全身治療のための透析ユニットのような通常型二相系において使用されるものとたいていは同じ種類で同じ(ほぼ均一な)厚さのフィルム、シートあるいは膜であってもよい。
【0223】
フィルム、シートあるいは膜は、実質的に偏平なものであってもよく、また、それにかかる圧力差に左右されるが、堅くし、補強し、さもなければ強化するために、その上にあるいはその中に他の材料を必要とすることがある。
【0224】
しかしながら、これは、創傷治癒に有害である物質を創傷滲出物から実際的な速度で除去するために系に充分な機能的表面積をもたらさない。
【0225】
創傷治癒に有害である物質の濃度が相対的に高い、とりわけ慢性的創傷の透析法の使用に適切であるために、ポリマー材料からなるフィルム、シートあるいは膜がいっそう複雑な形態にある系を提供することは有利であろう。
【0226】
これは、例えば楕円形および円形のような丸い形状の管、中空の繊維あるいはフィラメント、または細管のような細長い構造の形態にあってもよく、例えば、それらの間に空間がある平行な配列にあってもよい。
【0227】
創傷灌注流体および/または創傷滲出物は内側を通って再循環し、洗浄流体は隣接する管あるいは細管どうしの空間の中へ並流方向にあるいは好ましくは向流方向に流れるか、またはこれらの逆になる。
【0228】
この場合もやはり、創傷治癒に有害である物質は透析液の中へ除去され、また、創傷治癒に有益である物質を依然として含有している洗浄ずみ流体は再循環管を通して創傷底へ戻される。
【0229】
流体洗浄手段が、二相系、例えば透析ユニットあるいは二相性抽出ユニットの形態にあるときには、創傷および流体貯蔵器からの循環流体は、有意に2次元状の完全体、例えば創傷治癒に有害である物質を選択的に透過させることのできるポリマー製のフィルム、シートあるいは膜の一方表面を通過する。
【0230】
これらは、洗浄流体を完全体の他方表面に通過させることによって除去される。この完全体は、創傷治癒に有害である前記物質を選択的に透過させることのできるフィルム、シートあるいは膜であってよい。
【0231】
前記のようなこれらの例には、
遊離基のような酸化剤、例えば過酸化物および超酸化物、
II価鉄およびIII価鉄、
創傷底における酸化ストレスに含まれるすべてのもの、
セリンプロテアーゼ、例えばエラスターゼおよびトロンビン、システインプロテアーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、例えばコラゲナーゼ、およびカルボキシル(酸)プロテアーゼのようなプロテアーゼ、
リポ多糖類のようなエンドトキシン、
ホモセリンラクトン誘導体、例えばオキソアルコール誘導体のような自己誘導物質シグナル分子、
トロンボスポジン-1(TSP-1)、プラスミノゲン・アクチベータ・阻害剤、あるいはアンギオスタチン(プラスミノゲンフラグメント)のような血管形成阻害剤、
腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)およびインターロイキン1ベータ(IL-1β)のような炎症誘発性サイトカイン、
および
リポ多糖類、例えばヒスタミンのような炎症剤
が含まれる。
【0232】
フィルム、シートあるいは膜(典型的には、フィルム、シートあるいは膜によって画成された、先に記載されたような適合性中空体の形態にある)の例には、天然および合成のポリマー材料が含まれる。
【0233】
膜は、セルロース誘導体、例えば再生セルロース、セルロースのモノアセテート、ジアセテートあるいはトリアセテートのようなセルロースのモノエステル、ジエステルあるいはトリエステル、ベンジルセルロースおよびヘモファン、およびこれらの混合物のような1つ以上の親水性ポリマー材料であってよい。
【0234】
他の材料の例には、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトンおよびポリエーテルエーテルケトン、およびこれらのスルホン化誘導体、およびこれらの混合物のような1つ以上の疎水性ポリマー材料が含まれる。
【0235】
他の材料の例には、ポリカーボネートのようなポリエステル、例えば6-6ポリアミド、6-10ポリアミドおよびポリアミド、例えばポリ(メチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリルおよびそのコポリマー、例えばアクリロニトリル−金属スルホン酸ナトリウムのコポリマーを含むポリアクリレート、およびポリ塩化ビニリデンのような疎水性材料が含まれる。
【0236】
この膜のための適切な材料には、ポリエチレン、例えば高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、そのコポリマー、例えば酢酸ビニルとのコポリマーおよびポリビニルアルコール、およびこれらの混合物のような熱可塑性ポリオレフィンが含まれる。
【0237】
この透析膜には、創傷からの除去のために目標とされた創傷治癒に有害である種の選択的灌流をさせるために選ばれた分画分子量(MWCO)がなければならない。例えば、セリンプロテアーゼエラスターゼ(分子量25900ダルトン)の灌流にはMWCOが25900ダルトンよりも大きい膜が必要である。
【0238】
MWCOの限界値は、それぞれの適用を適切にするために1〜3000000ダルトンの間で変えることができる。MWCOは、より大きい競合種による干渉を排除するために、できるだけこの分子量に近いのが好ましい。
【0239】
例えば、MWCOが25900ダルトンよりも大きいような膜では、エラスターゼへの拮抗剤であるアルファ-1-アンチトリプシン(AAT)(分子量54000ダルトン)を創傷流体の外側から透析液の中へ自由に拡散させることができない。慢性的創傷の治癒の促進に有益である阻害剤は、創傷底と接触したままであり、また、その上で有益に作用するが、創傷治癒に有害であるエラスターゼは除去される。
【0240】
この装置のこのような使用は例えば、糖尿病性足部潰瘍のような慢性的創傷、そしてとりわけ褥瘡性圧迫潰瘍における創傷治癒処理に都合がよい。
【0241】
以下で述べるように、膜の透析液側におけるエラスターゼに対する拮抗剤、例えば分解性酵素、あるいは金属イオン封鎖剤は、このプロテアーゼの創傷滲出物からの除去を促進するために使用することができる。
【0242】
創傷治癒に有害である相異なるいくつかの物質を除去することが望ましいときには、それぞれが異なる物質を除去する一連のモジュールの系を設けることは有利であるかもしれない。
【0243】
これによって、不相溶性洗浄物質を同じ流体および/または創傷滲出物に使用することができる。
【0244】
このような任意の系は、灌注流体および/または創傷滲出物を最小の管理で洗浄することができる、自動化され、プログラム可能な従来の系であるのが好ましい。
【0245】
先にいっそう詳しく述べたように、流体は選択透過性完全体を通る洗浄流体から流れる。
【0246】
この完全体は、透析ユニットのような二相系における典型的な透過性のポリマー製フィルム、シートあるいは膜であってよい。
【0247】
さらに、溶質あるいは分散相の種は、透析液から透析用のポリマー製フィルム、シートあるいは膜を通って灌注流体および/または創傷滲出物の中へ流れる。
【0248】
このような特性は、創傷治癒に有益である物質を透析液から灌注流体および/または創傷滲出物の中へ灌流させるために使用することができる。
【0249】
あまり一般的でないこの種の注入送り込みでは、広い範囲の種は透析液から滲出物および/または灌注流体の中へ入るのが普通である。
【0250】
これらには、
炭酸水素イオンのようなイオン種、
創傷底における酸化ストレスを解放するためのアスコルビン酸(ビタミンC)およびビタミンEのようなビタミン、およびこれらの安定誘導体、およびこれらの混合物、
二水素リン酸カリウム/リン酸一水素二ナトリウムのようなpH緩衝剤、
創傷の痛みまたはドレッシングに関連した炎症あるいは痛みを緩和するためのリドカイン/リグノカイン塩酸塩およびキシロカイン(アドレナリン、リドカイン)のような局所麻酔薬/局所麻酔剤および/または抗炎症剤
アミノ酸、糖類、低分子量組織構成単位および微量元素のような創傷細胞の増殖を促進するための栄養素および他の細胞培養培地種、および
空気、窒素、酸素および/または酸化窒素のような気体
が含まれる。
【0251】
この発明の装置における流体洗浄の目的のために、限外濾過ユニットのような単相系および透析ユニットのような二相系の双方には、創傷ドレッシングからの灌注流体および/または創傷滲出物が上方を通るか貫通して次に流体再循環管へ流れる不溶解性のかつ/または固定化された基質に結合された、捕捉状の(化学変化を起こしにくい、不溶解性のかつ/または固定化された)以下のような種があってもよい。
創傷底における酸化ストレスを除去するための、3-ヒドロキシチラミン(ドーパミン) 、アスコルビン酸(ビタミンC)、ビタミンEおよびグルタチオン、およびこれらの安定誘導体、およびこれらの混合物のような酸化防止剤および遊離基捕捉剤、
デスフェリオキサミン(DFO)、3-ヒドロキシチラミン(ドーパミン)のようなIII価鉄キレート化剤(III価鉄は創傷底における酸化ストレスに含まれる)のような遷移金属イオンキレート化剤のような金属イオンキレート化剤および/またはイオン交換剤、
III価鉄還元剤、
TIMPおよびアルファ1-アンチトリプシン(AAT)のようなプロテアーゼ阻害剤、4-(2-アミノエチル)-ベンゼンスルホニルフルオライド(AEBSF、ペファブロック)およびNα-p-トシル-リシンクロロメチルケトン(TLCK)およびε-アミノカプロイル-p-クロロベンジルアミドのようなセリンプロテアーゼ阻害剤、システインプロテアーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、カルボキシル(酸)プロテアーゼ阻害剤、
創傷治癒に有害である酸化還元感受性遺伝子の創傷滲出物の中への発現を引き起こす物質の除去による創傷治癒の促進に潜在的に有益であるかあるいは実際に有益である犠牲的酸化還元物質、
酵素であってもよい自己誘導物質シグナル分子分解剤、および
リポ多糖類、例えばペプチドミメティックス(peptidomimetics)に結合しあるいは分解する抗炎症物質。
【0252】
創傷治癒に有害である滲出物の他の生理活性成分は、このようにして除去してもよい。
【0253】
これらの成分は適切なキレート化剤および/またはイオン交換剤、酵素であってもよい分解剤、あるいは他の種で除去してもよい。
【0254】
以下の種類の官能化された基質には、創傷および流体貯蔵器からの再循環流体をそれらの上方に流す際に創傷治癒に有害である物質を除去することのできる部位が、その表面にある。
不均質樹脂、例えば、
金属捕捉剤、すなわち
3-(ジエチレントリアミノ)プロピル-官能化シリカゲル、
2-(4-(エチレンジアミノ)ベンゼン)エチル-官能化シリカゲル、
3-(メルカプト)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(1-チオウレイド)プロピル-官能化シリカゲル、
トリアミンテトラアセテート-官能化シリカゲル、
あるいは求電子的捕捉剤、すなわち
4-カルボキシブチル-官能化シリカゲル、
4-エチルベンゼンスルホニルクロライド-官能化シリカゲル、
プロピオニルクロライド-官能化シリカゲル、
3-(イソシアノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(チオシアノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(2-無水コハク酸)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(マレイミド)プロピル-官能化シリカゲル、
あるいは求核性捕捉剤、すなわち
3-アミノプロピル-官能化シリカゲル、
3-(エチレンジアミノ)-官能化シリカゲル、
2-(4-(エチレンジアミノ))プロピル-官能化シリカゲル、
3-(ジエチレントリアミノ)プロピル-官能化シリカゲル、
4-エチルベンゼンスルホンアミド-官能化シリカゲル、
2-(4-トルエンスルホニルヒドラジノ)エチル-官能化シリカゲル、
3-(メルカプト)プロピル-官能化シリカゲル、
ジメチルシロキシ-官能化シリカゲル、
あるいは塩基捕捉剤あるいは酸捕捉剤、すなわち
3-(ジメチルアミノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド-[1,2-α] ピリミジノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(1-イミダゾル-1-イル)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(1-モルホリノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(1-ピペラジノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(1-ピペリジノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(4,4’-トリメチルジピペリジノ)プロピル-官能化シリカゲル、
2-(2-ピリジル)エチル-官能化シリカゲル、
3-(トリメチルアンモニウム)プロピル-官能化シリカゲル、
あるいは反応物、すなわち
3-(1-シクロヘキシルカルボジイミド)プロピル-官能化シリカゲル、
TEMPO-官能化シリカゲル、
2-(ジフェニルホスフィノ)エチル-官能化シリカゲル、
2-(3,4-シクロヘキシルジオール)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(グリシドキシ)プロピル-官能化シリカゲル、
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル-官能化シリカゲル、
1-(アリル)メチル-官能化シリカゲル、
4-ブロモプロピル-官能化シリカゲル、
4-ブロモフェニル-官能化シリカゲル、
3-クロロプロピル-官能化シリカゲル、
4-ベンジルクロライド-官能化シリカゲル、
2-(カルボメトキシ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(4-ニトロベンズアミド)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(ウレイド)プロピル-官能化シリカゲル、
または前記のものの任意の組み合わせ
のようなシリカ保持型反応物。
【0255】
創傷ドレッシングからの灌注流体および/または創傷滲出物が上方を通るか貫通する、不溶性のかつ/または固定化された基体に結合された、前記のような捕捉性の(化学変化を起こしにくい、不溶解性のかつ/または固定化された)種は、流体洗浄手段に適したものとして前に説明された。
【0256】
しかしながら、それらは、創傷治癒に有害である物質を創傷から除去するために、たいていはドレッシングの内部に使用されるものの、適切な場合には、灌注流体および/または創傷滲出物に接触する装置の任意の部分にも使用することができる。
【0257】
流体洗浄手段は、適切な場合には、1つ以上の巨視的フィルターおよび/または微視的フィルターをさらに備えていてもよい。
【0258】
これらは、微粒子、例えば細胞残屑および微生物を保持し、蛋白質および栄養素を通過させるためのものである。
【0259】
これに代えて、透析ユニットのような二相系のうちあまり一般的でないもの(前記参照)を流体洗浄手段として使用してもよい。この種類のものでは、透析用のポリマー製フィルム、シートあるいは膜は、創傷治癒に有害である以下のような物質を選択的に透過させることのできる完全体ではない。
セリンプロテアーゼ、例えばエラスターゼおよびトロンビン、システインプロテアーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、例えばコラゲナーゼ、およびカルボキシル(酸)プロテアーゼのようなプロテアーゼ、
リポ多糖類のようなエンドトキシン、
トロンボスポンジン-1(TSP-1)、プラスミノゲン・アクチベータ・阻害剤、あるいはアンギオスタチン(プラスミノゲンフラグメント)のような血管形成阻害剤、
腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)およびインターロイキン1ベータ(IL-1β)のような炎症誘発性サイトカイン、
遊離基のような酸化剤、例えば過酸化物および超酸化物、および
金属イオン、例えばII価鉄およびIII価鉄、創傷底における酸化ストレスに含まれるすべてのもの。
【0260】
しかしながら、創傷からの滲出物および/または灌注流体の成分は、創傷治癒の際にその中へ入りかつそれを貫通するように含まれるのが有利であるものの、より大きい分子あるいはより小さい分子であっても差しつかえないであろう。
【0261】
透析液の中には、あるいは好ましくは、透析液に接触する少なくとも1つの表面がある、流体洗浄手段における1つ以上の中実構造状完全体の中には、例えば酵素あるいは他のものである以下のような種に対する拮抗剤であることによって、創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することのできる1つ以上の物質がある。
4-(2-アミノエチル)-ベンゼンスルホニルフルオライド(AEBSF、ペファブロック)およびNα-p-トシル-L-リシンクロロメチルケトン(TLCK)およびε-アミノカプロイル-p-クロロベンジルアミドのようなセリンプロテアーゼ阻害剤、システインプロテアーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、およびカルボキシル(酸)プロテアーゼ阻害剤、のようなプロテアーゼ阻害剤、
リポ多糖類、例えばペプチドミメティックスを結合しあるいは分解するための抗炎症物質のような結合剤および/または分解剤、
創傷底における酸化ストレスを除去するための、3-ヒドロキシチラミン(ドーパミン) 、アスコルビン酸(ビタミンC)、ビタミンEおよびグルタチオン、およびこれらの安定誘導体、およびこれらの混合物のような酸化防止剤、
デスフェリオキサミン(DFO)、3-ヒドロキシチラミン(ドーパミン)のようなキレート化剤および/またはイオン交換剤。
【0262】
これらには、ペプチド(サイトカイン、例えば、α-アミノ-γ-ブチロラクトンおよびL-ホモカルノシンのような細菌性サイトカインが含まれる)、および創傷治癒の促進に潜在的に有益であるかあるいは実際に有益であるIII価鉄還元剤のような犠牲的酸化還元物質、および/またはグルタチオン酸化還元系のようなこの種の再生可能物質、および他の生理活性成分がさらに含まれる。
【0263】
このようなあまり一般的でない種類の二相系透析ユニットの使用では、広い範囲の種は滲出物から透析液の中へ入るのが普通である。
【0264】
いくつかの(主としてイオン性の)種は、創傷治癒に有害である物質をあまり選択透過させない透析用のポリマー製フィルム、シートあるいは膜を通って、透析液から灌注流体および/または創傷滲出物の中へ流れるであろう。
【0265】
創傷からの滲出物および/または灌注流体はそれを通ってあちらこちらに自由に拡散するであろう。
【0266】
もし(好ましくは)透析液が例えば捕集バッグへ廃棄のために放出されないときには、創傷ドレッシングから「最上位」である透析液と灌注流体および/または創傷滲出物との間に、安定状態にある濃度均衡が最終的にもたらされる。
【0267】
循環する創傷流体は、創傷治癒の促進に有益である物質がこの均衡により速く達するのを促進する。
【0268】
循環する創傷流体はまた、これらの物質を、最も有益である可能性のある部位、すなわち創傷底へ戻す。
【0269】
創傷治癒に有害である目標物質はまた、創傷治癒に有害である物質をあまり選択透過させない透析用のポリマー製フィルム、シートあるいは膜を通って、滲出物から透析液の中へ流れる。
【0270】
創傷からの滲出物および/または灌注流体の他の成分とは異なり、創傷治癒に有害である目標物質は、透析液と接触するか、あるいは好ましくは、透析液の中で、少なくとも1つの表面がある、流体洗浄手段における1つ以上の中実構造状完全体と接触し、そして、適切な拮抗剤、結合剤および/または分解剤、キレート化剤および/またはイオン交換剤、酸化還元剤などによって、除去される。創傷治癒を促進するのに有益である物質が依然として含有されている洗浄ずみ流体は、再循環管へ戻される。
【0271】
創傷からの滲出物および/または灌注流体の他の成分とは異なり、創傷治癒に有害である目標物質は、透析液から絶えず除去され、きわめて少ないこれらの種は、透析液から灌注流体および/または創傷滲出物の中へ流れ、また、これらの種が創傷ドレッシングから常に「最上位」にあっても、安定状態にある濃度均衡はもたらされない。
【0272】
循環する創傷流体は、創傷治癒に有害である物質の再循環からの除去を促進するとともに、創傷に接触する創傷治癒の促進に有益である物質を保持する、と信じられている。
【0273】
このような形態の二相系の特別な利点は、創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することのできる物質が、(細胞)毒性のものであるかあるいは生体不適合性のものであるか、または創傷治癒の促進に有益である任意成分に対して不活性でないときには、この系は、かなりの量の拮抗剤を透析液の外側から灌注流体の中へ自由に拡散させることがない、という点である。しかしながら、活性物質は、流体に対して有益に作用することができる。
【0274】
このフィルム、シートあるいは膜は、金属イオン封鎖あるいは分解のために目標とされた種の灌流をさせるために選ばれた分画分子量(MWCO)(従来のように定義された)の透析膜であるのが好ましい。例えば、セリンプロテアーゼエラスターゼ(分子量25900ダルトン)の金属イオン封鎖にはMWCOが25900ダルトンよりも大きい膜が必要であろう。
【0275】
MWCOの限界値は、それぞれの適用を適切にするために1〜3000000ダルトンの間で変えることができる。MWCOは、より大きい競合種による干渉を排除するために、できるだけこの分子量に近いのが好ましい。
【0276】
限外濾過ユニットのような単相系および透析ユニットのような二相系の双方は、この発明の装置から比較的容易に取り外すことのできるモジュール形態にあってもよい。この系には、このようなモジュールが1つ以上備わっているのが好ましい。
【0277】
それぞれ、
a) 灌注流体および/または創傷滲出物が創傷ドレッシングから流れるとともに、
b) 創傷治癒を促進するのに有益である物質が依然として含有されている洗浄ずみ流体が再循環管へ戻され、さらに
c) (前記手段が透析ユニットのような二相系の形態に設けられているときに)洗浄流体が前記手段へ入りかつ前記手段から出る
複数の導管には、
灌注流体および/または滲出物、洗浄ずみ流体および洗浄流体の連続的通過を防止するために、
i) 流れを切り換えるとともに
ii) これらの導管の端部を覆って直接的な液密の封止部あるいは閉鎖部をもたらし、かつ、そのように露出させたこの発明の装置の残り部分に管を協働させる
モジュール式の切断および離脱の手段が備わっているのが好ましい。
【0278】
この発明の創傷の吸引、灌注および洗浄用装置には、バルブあるいは創傷から流体を放出する他の制御装置のような調整器などの、排出管および/または再循環管へ流体を放出する手段が設けられている。
【0279】
創傷および流体洗浄手段を通して流体を移動させるこの装置は、灌注流体を創傷ドレッシングへ移動させるとともに創傷底に所望の正圧あるいは負圧を加えるために使用される。
【0280】
再循環管における流体の所望の均衡は、典型的には、
a) 排出管および/または再循環管へ流体を放出する手段、
b) 供給と再循環との間で流れを切り換える手段、および/または
c) 創傷底を覆ってかつ流体洗浄手段を通して流体を移動させる手段
によって、必要に応じて調整されるであろう。
【0281】
従って、例えば、もしも
a) 創傷の吸引、灌注および洗浄用装置が限外濾過ユニットのような単相系のものであり、
b) 創傷が強滲出状態になく、かつ、
c) 流体を流体貯蔵器から創傷の中へ流入させることが適切でないかあるいは望ましくないときには、
再循環中における流体の均衡の変化はまったくないかあるいは無視することができる。
【0282】
創傷底に例えば所望の正圧あるいは負圧が完全に加えられると、この装置は閉鎖型再循環系として作動することができる。
【0283】
供給管と再循環管との間の流れ切換手段は、流体供給管を介して創傷を流体貯蔵器へ閉鎖するために設定され、また、排出管および/または再循環管への流体放出手段も閉鎖される。
【0284】
もしも、
a) 創傷の吸引、灌注および洗浄用装置が限外濾過ユニットのような単相系のものであり、
b) 創傷が強滲出状態にあり、かつ/または
c) 流体を流体貯蔵器から創傷の中へ流入させることが適切であるかあるいは望ましいときには、
再循環中における流体の均衡には正の変化がある。
【0285】
創傷底に例えば所望の正圧あるいは負圧が完全に加えられると、この装置は、好ましくないであろうが創傷底への圧力を増大させないときには、閉鎖型再循環系として作動することができない。
【0286】
排出管および/または再循環管への流体放出手段は、創傷底への正圧を解放するためにはある程度開かなければならない。流体放出は例えば捕集バッグへの廃液放出であってよい。
【0287】
創傷治癒の促進に有益である物質は、治療がこのようにして適用されたときに、最も有益である可能性のある部位、すなわち創傷底へ失われることがある。
【0288】
しかしながら、再循環中の流体の均衡は、このような好ましくない損失を最小限にするために定期的に調整することができる。
【0289】
透析ユニットあるいは二相性抽出ユニットの形態にある流体洗浄用二相系手段が備わっている装置における再循環中の流体の均衡を決定する諸因子は、この装置の作用とともに先に詳しく説明された。この装置の流路の全長にわたって確立された安定状態再循環の後におけるいくつかの箇所では、全体の流体高さが透析液からの移送によって好ましくない程度まで増大すると放出バルブが開かれることが必要である、という点にここで留意するだけで充分である。
【0290】
a) 排出管および/または再循環管へ流体を放出する手段、
b) 供給と再循環との間で流れを切り換える手段、および/または
c) 流体を移動させる手段
によって再循環管における流体の所望の均衡を維持するための他の組み合わせおよび必要な調整は、当業者にとって明らかであろう。
【0291】
排出管および/または再循環管への流体放出手段からの流出物は、捕集するとともに監視することができ、また、創傷および/またはその滲出物の状態を診断するために使用することができる。
【0292】
廃液貯蔵器は、従来の任意の型、例えば、管、バッグ(典型的には人工肛門バッグとして使用されるバッグのようなもの)、チャンバー、パウチあるいは他の構造体、例えば放出された灌注流体を収容することができるポリマー製フィルムであってよい。この装置におけるすべての実施形態では、廃液貯蔵器の型式および材料はその機能に大きく左右されるであろう。使用に適しているためには、その材料は、使用に際して流体不透過性であって柔軟であることだけが必要である。
【0293】
流体貯蔵器のために適した材料の例には、ポリ塩化ビニリデンのようなポリオレフィンなどの合成ポリマー材料が含まれる。
【0294】
この目的のために適切な材料には、ポリエチレン、例えば、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、これらのコポリマー、例えば酢酸ビニルとのコポリマー、およびこれらの混合物も含まれる。
【0295】
この発明の第2の観点では、創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成することのできる創傷対向面がある裏張層を備え、かつ、
流体供給管へ接続され、創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る少なくとも1つの入口管と、
流体排出管へ接続され、創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る少なくとも1つの出口管とを有しており、
その入口管あるいはそれぞれの入口管およびその出口管あるいはそれぞれの出口管が創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る箇所は、創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成していることを特徴とする適合性創傷ドレッシングが提供される。
【0296】
このドレッシングは細菌耐性のあるパウチに使用するのが好ましい。
【0297】
このような創傷ドレッシングの適切な形態の例は、例示として前に説明されている。
【0298】
この発明の1つの目的は、
a) 公知の吸引および/または灌注治療における前記短所の少なくともいくつかを未然に防止することと、
b) i)創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することができ、一方、創傷底と接触して創傷治癒の促進に有益である物質を保持することができ、かつ/または
ii)創傷底と接触して創傷治癒の促進に有益である物質の活性量を含有する流体を創傷底に接触している創傷の中へかつ/または創傷を貫通して流すことのできる
治療系を提供することである。
【0299】
そして、この発明の第3の観点では、この発明の創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置を使用して創傷治癒を促進する創傷治療方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0300】
この発明はこれから、添付図面を参照しながら、例示としてだけ説明される。
【0301】
図1によれば、創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置(1)は、
創傷(5)を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部(4)を形成することのできる裏張層(3)を有している適合性創傷ドレッシング(2)と、
流体供給管(7)へ接続され、箇所(8)で裏張層(3)の創傷対向面を貫通する1つの入口管(6)と、
流体排出管(10)へ接続され、箇所(11)で創傷対向面を貫通する1つの出口管(9)とを備えてなり、
入口管および出口管が貫通しかつ/または創傷対向面の下方を通る箇所(8)(11)は、創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成し、
入口管(6)は、流れを供給と再循環とに切り換える手段、ここではT字バルブ(14)を介して、流体供給管(7)により、流体貯蔵器(12)と、放出手段、ここでは例えば捕集バッグ(図示略)へ廃棄するための放出用T字バルブ(16)を有している流体再循環管(13)とに接続され、
出口管(9)は、流体排出管(10)へ、そしてまた、流体再循環管(13)およびT字バルブ(14)を介して入口管(6)へ接続された、ここでは限外濾過ユニットの形態にある流体洗浄手段(17)と、
そのロータ(図示略)における周縁ローラで流体再循環管(13)に作用して創傷の上に低い負圧を加える、ここでは蠕動ポンプ(18)、例えば好ましくは携帯用小型蠕動ポンプである、創傷および流体洗浄手段(17)を通して流体を移動させる装置とに接続されている。
【0302】
限外濾過ユニット(17)は単相系である。ここで、創傷および流体貯蔵器からの循環流体は、創傷治癒に有害である物質が除去されるとともに創傷治癒を促進するのに有益である物質が依然として含有されている洗浄ずみ流体が再循環管を経て創傷底へ戻される自己完結型の系を通過する。
【0303】
(この装置の変形例では、2つの入口管(6)があり、これらはそれぞれ流体供給管(7)および流体再循環管(13)に接続され、これらの管はそれぞれ、流体を流体貯蔵器(12)から創傷の中へ流入させる第1バルブ(19)と、流体を再循環管(13)から創傷の中へ流入させる第2バルブ(20)とを有している。この装置の使用時には通常、第1バルブ(19)が開かれると第2バルブ(20)が閉じられ、第2バルブ(20)が開かれると第1バルブ(19)が閉じられる。)
【0304】
装置(1)の使用時には、バルブ(16)が捕集バッグ(図示略)へ向けて開かれ、その後、T字バルブ(14)が回されて、流体が流体貯蔵器(12)から流体供給管(7)および入口管(6)を経て創傷ドレッシングへ流入する。(この装置の前記変形例では、2つの入口管(6)があり、これらはそれぞれ流体供給管(7)および流体再循環管(13)に接続されており、流体を流体貯蔵器(12)から創傷の中へ流入させるために第1バルブ(19)が開かれて第2バルブ(20)が閉じられ、また、その逆も行われる。)
【0305】
ポンプ(18)が始動して流体再循環管(13)がそのロータ(図示略)における周縁ローラで締め付けられ、創傷の上に低い正圧が加えられる。ポンプは、この装置が装置流路の全長にわたって流体が満たされて余分な流体が放出用T字バルブ(16)を介して捕集バッグ(図示略)の中へ廃棄されるまで、作動される。
【0306】
次いで、T字バルブ(14)は、回されて供給と再循環とが切り換えられ、すなわち、流体が創傷から流体貯蔵器(12)へ流れないように、しかし、流体が流体再循環管(13)から創傷の中へ流入するように、閉じられるように設定され、同時に、放出用T字バルブ(16)も閉じられる。
【0307】
(この装置の前記変形例では、2つの入口管(6)があり、これらはそれぞれ流体供給管(7)および流体再循環管(13)に接続されており、第1バルブ(19)が閉じられるとともに、流体を再循環管(13)から創傷の中へ流入させる第2バルブ(20)が開かれることで、再循環系が設定される。)
【0308】
創傷および流体貯蔵器(12)からの循環流体は限外濾過ユニット(17)を通過する。創傷治癒に有害である物質は除去されるとともに、創傷治癒を促進するのに有益である物質が依然として含有されている洗浄ずみ流体は再循環管(13)を経て創傷底へ戻される。
【0309】
流体の再循環は、必要とされる限り続けられる。次いで、流体が流体貯蔵器(12)から流体供給管(7)および入口管(6)を経て創傷ドレッシングへ流入するようにT字バルブ(14)を回すことで、供給と再循環との切り換えが逆にされる。
【0310】
(この装置の前記変形例では、2つの入口管(6)があり、これらはそれぞれ流体供給管(7)および流体再循環管(13)に接続されており、流体を流体貯蔵器(12)から創傷の中へ流入させるために第1バルブ(19)が開かれて第2バルブ(20)が閉じられ、また、その逆も行われる。)
【0311】
同時に放出バルブ(16)が開かれて、新鮮な流体が再循環系をどっと流れる。ポンプ(18)の作動は、この装置とその流体再循環が停止されたときにこの装置が洗い流されるまで、続けられる。
【0312】
例えば創傷が強滲出状態にあれば、再循環における流体の均衡には正の変化がある。放出用T字バルブ(16)を開いて流体を再循環管(13)から放出することによって、流体を再循環から放出する必要があるかもしれない。
【0313】
図2における装置(21)は、ここでは透析ユニット(23)である二相系の形態にある流体洗浄手段を除いて図1の装置の場合と同一であって同一の符号が付けられたいくつかの構成要素が備わった、図1の装置の変形例である。
【0314】
ここでは、創傷および流体貯蔵器からの循環流体が通過する1つの系であって、洗浄流体が通過する第2の系に選択的透過可能に接触することで有害物質が除去される1つの系がある。
【0315】
そして、透析ユニット(23)には、創傷治癒に有害である物質を選択的に透過させることができる内側のポリマー製のフィルム、シートあるいは膜であって、その物質を
a)ポリマー製のフィルム、シートあるいは膜の一方表面の向こう側へ洗浄流体を通過させる第1チャンバー(25)と、
b)創傷および流体貯蔵器(12)からの循環流体を通過させて有害物質を除去する第2チャンバー(26)と
の中へ分配するフィルム、シートあるいは膜が備わっている。
【0316】
そして、透析ユニット(23)には透析液供給管(29)へ接続されている透析液入口管(28)が備わっており、透析液供給管(29)は、そのロータ(図示略)における周縁ローラで透析液供給管(29)に作用して透析液貯蔵器(図示略)からバルブ(34)を経て第1チャンバー(25)におけるポリマー製のフィルム、シートあるいは膜(24)の表面の向こう側へ洗浄流体を供給する蠕動ポンプ(38)、例えば好ましくは携帯用小型蠕動ポンプへ通じている、創傷および流体洗浄手段(17)を通して流体を移動させる装置とに接続されている。
【0317】
透析ユニット(23)にはまた、透析液出口管(30)も備わっており、この出口管(30)は、第2放出用T字バルブ(36)を介して例えば捕集バッグ(図示略)の中へ廃棄する透析液出口管(31)へ通じている。
【0318】
この装置の作用は、灌注系が液体で満たされて装置の流路の長さにわたって定常状態の再循環が確立された後にいくつかの箇所でバルブ(34)および第2バルブ(36)が開かれる透析ユニット(23)を除いて、図1の装置のそれに類似している。
【0319】
ポンプ(38)が作動して透析液供給管(29)がそのロータ(図示略)における周縁ローラで締め付けられて、洗浄流体が、透析液貯蔵器(図示略)から第1チャンバーへ汲み上げられるとともに放出用バルブ(36)を介して捕集バッグ(図示略)の中へ廃棄される。
【0320】
透析ユニット(23)は、色を変化させて洗浄ずみ流体中の有害因子の存在を表示する基板が備わったモジュール(あるいはごしごし洗浄用カートリッジ)であって、ごしごし洗浄用カートリッジが消耗すると新品に交換されるモジュールである。
【0321】
図3〜図6によれば、それぞれのドレッシング(41)は、25ミクロンの均一厚さと、創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成することのできる創傷対向面(43)とがある微生物不透過性フィルム裏張層(42)によって画成された適合性物体の形態にある。
【0322】
裏張層(42)は使用時に、創傷の周りにおける皮膚を覆って創傷の上に広げられる。重なり部(44)における裏張層(42)の近位面には、接着性フィルム(45)を皮膚に充分に付着させて創傷ドレッシングをその創傷対向面(43)の周縁の周りにある液密封止部における定位置に保持するために、接着性フィルム(45)が載せられている。
【0323】
流体供給管(図示略)へ接続され、創傷対向面(43)を貫通しかつ/またはその下方を通る1つの入口管(46)と、流体排出管(図示略)へ接続され、創傷対向面(43)を貫通しかつ/またはその下方を通る1つの出口管(47)とがある。
【0324】
図3aおよび図3bによれば、1つの形態のドレッシングには、円形裏張層(42)の下方に創傷詰物(48)が設けられている。これは、創傷の形状へ沿わされる流体、ここでは空気あるいは窒素で満たされた膜(49)によって画成された、ほぼ円錐台状で環状の適合性中空体からなっている。詰物(48)は、接着性フィルム(図示略)あるいはヒートシールによって裏張層に永久に取り付けることができる。
【0325】
環状中空体(48)の中央穴(50)の上方における裏張層(42)の中央には、入口管(46)および出口管(47)が取り付けられており、これらは、環状中空体(48)の穴(50)を経てそれぞれ管(51)および管(52)の中に延出し、その後、中空体(48)の下方で正反対に半径方向へ延出している。ドレッシングのこのような形態は、より深い創傷に対するいっそう適切な配置である。
【0326】
図4aおよび図4bによれば、より浅い創傷についてのいっそう適切な形態が示されている。これは、円形裏張層(42)と、ヒートシールによって裏張層(42)へ永久に接合されて円形パウチ(63)を形成する、開き口(62)のある円形の上向き皿状第1膜(61)とからなっている。パウチ(63)は、穴(64)によって入口管(46)に連通しており、従って、ドレッシングが使用されるときに循環流体を創傷へ直接供給する入口側マニホールドを効果的に構成している。
【0327】
開口(66)のある環状第2膜(65)が、ヒートシールによって裏張層(42)へ永久に接合されて、層(42)とともに環状チャンバー(67)が形成されている。チャンバー(67)は、オリフィス(68)によって出口管(47)に連通しており、従って、ドレッシングが使用されるときに創傷から流体を直接捕集する出口側マニホールドを効果的に構成している。
【0328】
図5aおよび図5bによれば、より深い創傷に対するいっそう適切な、図4aおよび図4bのドレッシングの変形例が示されている。これは、円形裏張層(42)と、逆円錐台状で中実状の完全体、ここでは熱可塑性プラスチックから形成された弾性エラストマー発泡体あるいは好ましくは架橋されたプラスチック発泡体の形態にある詰物(69)とからなっている。
【0329】
詰物(69)は、接着性フィルム(図示略)あるいはヒートシールで裏張層(42)に永久に取り付けることができる。円形の上向き皿状シート(70)が、裏張層(42)および中実状完全体(69)の下方に配されているとともにこれらに沿っているが、このシート(70)は、裏張層(42)および中実状完全体(69)とは別の構造体であって、これらに永久に接合されているものではない。
【0330】
開き口(72)のある円形の上向き皿状第1膜(71)が、ヒートシールによってシート(70)へ永久に接合されて、シート(70)とともに円形パウチ(73)を形成している。パウチ(73)は、穴(74)によって入口管(46)に連通しており、従って、ドレッシングが使用されるときに循環流体を創傷へ直接供給する入口側マニホールドを効果的に構成している。
【0331】
開口(76)のある環状第2膜(75)が、ヒートシールによってシート(70)へ永久に接合されて、シート(70)とともに環状チャンバー(77)が形成されている。チャンバー(77)は、オリフィス(78)によって出口管(47)に連通しており、従って、ドレッシングが使用されるときに創傷から流体を直接捕集する出口側マニホールドを効果的に構成している。
【0332】
これに代えて、適切な場合には、ドレッシングは、円形の上向き皿状シート(70)が裏張層として機能し、中実状詰物(69)が裏張層としてのシート(70)の下ではなく上に配置される形態に設けることができる。詰物(69)は、裏張層(42)の代わりに接着性フィルムあるいは接着テープで定位置に保持される。
【0333】
図6aおよび図6bによれば、より深い創傷に対するいっそう適切な形態にあるドレッシングが示されている。これは、円形裏張層(42)と、ほぼ逆半球状の完全体の形態にあり、ここでは、弾性エラストマー発泡体あるいは、流体、ここでは創傷形状へ沿わされるゲルで満たされて接着性フィルム(図示略)あるいはヒートシールによって裏張層に永久に接合された中空体の形態にある詰物(79)とからなっている。
【0334】
裏張層(42)には、入口管(46)および出口管(47)が周縁に取り付けられている。円形の上向き皿状シート(80)が、裏張層(42)および詰物(79)の下方に配されているとともにこれらに沿っているが、このシート(80)は、裏張層(42)および詰物(79)とは別の構造体であって、これらに永久に接合されているものではない。
【0335】
円形の上向き皿状2層膜(81)には、その層状要素どうしの間に閉鎖溝(82)が備わっており、また、膜(81)によって形成された皿の外面(84)にはその長さに沿った小穴(83)があり、その渦巻らせん状の外側端部には溝(82)が入口管(46)に連通する開口(85)があり、従って、ドレッシングが使用されるときに循環流体を創傷へ直接供給する入口側マニホールドが効果的に構成されている。
【0336】
膜(81)には、溝(82)の一区切りどうしの間に、かつ、それらの長さに沿って開き口(86)もある。膜(81)によって形成された皿の内面(87)は、その一番内側の箇所(88)で接着性フィルム(図示略)あるいはヒートシールによってシート(80)へ永久に接合されている。これによって、接続用の閉鎖型の渦巻らせん状導管(89)が画成されている。その渦巻らせんの一番外側の端部で、導管(89)は、開口(90)によって出口管(47)に連通しており、従って、開き口(86)によって創傷から流体を直接捕集する出口側マニホールドを効果的に構成している。
【0337】
図7aおよび図7bによれば、1つの形態のドレッシングには円形裏張層(42)が設けられている。第1の(大きい方の)逆向き渦巻らせん状膜(92)が、ヒートシールによって裏張層(42)の中心に永久に接合されて、裏張層(42)との間で半球状チャンバー(94)が形成されている。第1の膜(92)の内部には、第2の(小さい方の)同心半球状膜(92)が、ヒートシールによって裏張層(42)に永久に接合されて、半球状パウチ(95)が形成されている。パウチ(95)は、入口管(46)に連通しており、従って、複数の管(97)が半球状に広がり創傷底へ向かって開き口(98)まで延びる入口側マニホールドを効果的に構成している。これらの管(97)は、循環流体を開き口(98)を通じて創傷底へ直接供給するものである。
【0338】
チャンバー(94)は、出口管(47)に連通しており、従って、複数の細管(99)が半球状に広がって創傷底へ向かって開口(100)まで延びる出口側マニホールドを効果的に構成している。これらの細管(99)は、開口(100)によって創傷から流体を直接捕集するものである。
【0339】
図8a〜図8dによれば、1つの形態のドレッシングには、正方形裏張層(42)と、入口管(46)から延出している第1管(101)と、出口管(47)から延出している第2管(102)とが設けられており、これらの管(101)・(102)は、それらの箇所で裏張層(42)を貫通して創傷底の上方を延びている。
【0340】
これらの管(101)・(102)には、管(101)・(102)に沿ったオリフィス(103)・(104)による止まり穴がある。これらの管(101)・(102)によって、それぞれオリフィスを通して循環流体を創傷底へ直接供給しあるいは循環流体を創傷から直接捕集する入口側マニホールドおよび出口側マニホールドがそれぞれ形成されている。
【0341】
図8aおよび図8dでは、入口側マニホールドおよび出口側マニホールドとしての管(101)・(102)のそれぞれについての1つのレイアウトは渦巻である。図8bでは、そのレイアウトは図8aおよび図8dのレイアウトの変形例であり、入口側マニホールド(101)のレイアウトは全円環体あるいは一部円環体であり、出口側マニホールド(102)のレイアウトは半径状管である。
【0342】
図8cによれば別の適切なレイアウトが示されており、ここでは、入口側マニホールド(101)および出口側マニホールド(102)は、犂行体状パターンで、すなわち耕された耕地のように、創傷底の上方を互いに並んで延びている。
【0343】
図9aおよび図9bによれば、図8a〜図8dにおいて示されたのと同一である、より深い創傷に対する他の適切なレイアウトが示されている。しかしながら、正方形裏張層(42)には、裏張層(42)の下方に、かつ、接着性フィルム(図示略)あるいはヒートシールによって裏張層(42)に永久に接合されてもよい創傷詰物(110)があり、この詰物(110)は、逆向き半球状の中実状完全体、ここでは、熱可塑性プラスチック発泡体、好ましくは架橋プラスチック発泡体から形成された弾性エラストマー発泡体である。
【0344】
詰物(110)の下方には、中実状詰物(110)に沿っている円形の上向き皿状シート(111)があるが、このシート(111)は、別の構造体であって、中実状詰物(110)に永久に接合されているものではない。シート(111)を通して、入口管(46)から延出している第1管(101)と、出口管(47)から延出している第2管(102)とが設けられており、これらの管(101)・(102)は創傷底の上方を延びている。これらの管(101)・(102)には、管(101)・(102)に沿ったオリフィス(103)・(104)による止まり穴もある。
【0345】
これに代えて(図5aおよび図5bのように)、適切な場合には、ドレッシングは、円形の上向き皿状シート(111)が裏張層として機能し、中実状詰物(110)が裏張層としてのシート(111)の下ではなく上に配置される形態に設けることができる。詰物(110)は、裏張層(42)の代わりに接着性フィルムあるいは接着テープで定位置に保持される。
【0346】
図10a〜図10cにおいて、それぞれが流体を創傷へ供給し、かつ、創傷から流体を捕集する創傷ドレッシングの入口側マニホールドおよび出口側マニホールドが、互いに積層状に永久に接合されたいくつかの層における複数の長穴と複数の開き口とによって構成されている。
【0347】
そして、図10aには、入口側マニホールドおよび出口側マニホールドの積層体(120)の分解斜視図が示されており、この積層体(120)は、第1層(121)〜第5層(125)である完全に重なり合う5つの正方形熱可塑性ポリマー層からなり、それぞれの層が接着性フィルム(図示略)あるいはヒートシールによって積層体(120)の隣接層に接合されている。
【0348】
最上の(第1の)層(121)(使用時のドレッシングにおいて一番遠位にある層)は、何も設けられていない正方形被覆層である。
【0349】
マニホールドの積層体(120)の外側にある、図10bに示された次の(第2の)層(122)は、正方形層であり、この層(122)を貫通する入口側マニホールド長穴(126)を備えている。長穴(126)は、流体入口管(図示略)の接続用端部に連結するために層(122)の一方端部(127)まで延びているとともに、それらの間に間隔を置いて平行配列にある4つの隣接状分岐部(128)の中へ広がっている。
【0350】
次の(第3の)層(123)は、別の正方形層であり、この層(123)を貫通するいくつかの入口側マニホールド開き口(129)を備えており、これらの開き口(129)は、開き口(129)が第2層(122)を貫通する入口側マニホールド長穴(126)(図10bに示されている)と合わされるように、列をなしている。
【0351】
マニホールドの積層体(120)の外側にある、図10cに示された次の(第4の)層(124)は、別の正方形層であり、この層(124)を貫通するいくつかの入口側マニホールド開き口(130)を備えており、これらの開き口(130)は、開き口(130)が第3層(123)を貫通する開き口(129)と合わされるように、列をなしている。
【0352】
この層(124)は、この層を貫通する出口側マニホールド長穴(131)も備えている。長穴(131)は、流体出口管(図示略)の接続用端部に連結するために層(122)の端部(127)からマニホールドの積層体(120)の反対側における層(124)の一方端部(131)まで延びている。長穴(131)は、層(124)における開き口(130)どうしの間に間隔を置いた平行配列にあり、かつ、層(122)における開き口(129)どうしの間の間隔と合わされるように、3つの隣接状分岐部(133)の中へ広がっている。
【0353】
最後の(第5の)層(125)は、別の正方形層であり、この層(125)を貫通するいくつかの入口側マニホールド開き口(134)を備えており、これらの開き口(134)は、開き口(134)が第4層(124)を貫通する入口側マニホールド開き口(130)と合わされ(次いで、第3層(123)を貫通する開き口(129)と合わされ)るように、列をなしている。この層(125)は、この層の中に出口側マニホールド開き口(135)も備えており、これらの開き口(135)は、開き口(135)が第4層(124)における出口側マニホールド開き口(131)と合わされるように、列をなしている。
【0354】
積層体(120)を構成するために層(121)〜層(125)がともに接合されると、最上(第1)層(121)、第2層(122)を貫通する入口側マニホールド長穴(126)および第3層(123)が協働して第2層(122)に入口側マニホールドが形成され、この入口側マニホールドが使用時に流体入口管(図示略)の接続用端部に連結される、ということは分かるであろう。
【0355】
第2層(122)を貫通する入口側マニホールド長穴(126)、および層(123)・(124)・(125)を貫通する入口側マニホールド開き口(129)・(130)・(134)は、すべてが相互に合わされており、協働して、第2層(122)における入口側マニホールドと積層体(120)の近位面(136)との間に第3層〜第5層(123)・(124)・(125)を貫通する入口側マニホールド導管を構成する。
【0356】
第3層(123)、第4層(124)を貫通する出口側マニホールド長穴(131)、および第5層(125)は、協働して第4層(124)に出口側マニホールドを形成するが、この出口側マニホールドは使用時に流体出口管(図示略)の接続用端部に連結される。
【0357】
第4層(124)を貫通する出口側マニホールド長穴(131)、および第5層(125)を貫通する出口側マニホールド開き口(135)は、相互に合わされており、協働して、第4層(124)における出口側マニホールドと積層体(120)の近位面(136)との間に第5層(125)を貫通する出口側マニホールド導管を構成する。
【0358】
図11における、創傷の吸引、灌注および/または洗浄用の装置(1)は、図1の装置(1)の変形例である。この装置(1)には、この系におけるあらゆる閉塞に対してポンプ(17)を保護するものとして、ポンプ(17)の周りにバイパス(711)がある。この装置(1)は、適切な手段によって自動的に作動され、例えば破裂用円盤(図示略)あるいは圧力駆動型動力化バルブによって一般に閉鎖される。バイパス(711)に代わるものとしては、過剰な負荷すなわち圧力を検知してポンプ(17)を停止させる、この系における圧力センサーがある。
【0359】
図12における、創傷の吸引、灌注および/または洗浄用の装置(1)は、図2の装置(1)の変形例である。この装置(1)は、透析ユニット(21)が備わった二相系であるが、透析流体が、第2放出用T字バルブ(36)を介して例えば捕集バッグ(図示略)の中へ廃棄されるために透析液貯蔵器(図示略)から第1チャンバー(25)における透析膜(24)を一度だけ通過するものである。
【0360】
この変形例には、透析液再循環管(811)が備わっており、この透析液再循環管(811)は、透析液ポンプ(23)の入口側における第1T字バルブ(816)と、透析ユニット(21)を通る多数の通路における回路が流体で満たされるとポンプ(23)で透析液を再循環させる第2T字バルブ(817)との間を延びている。この系の操作は当業者に明らかであろう。
【0361】
図13〜図15によれば、ドレッシングのこれらの形態には、円形裏張層(342)の下方に創傷詰物(348)が設けられている。創傷詰物(348)は、膜(349)によって画成された、ほぼ下向きのドーム状あるいは環状の、または偏球状の適合性中空体からそれぞれ構成され、この中空体は、この中空体を創傷形状に沿わせる流体、ここでは空気あるいは窒素で満たされている。詰物(348)は、例えば裏張層(342)にヒートシールされたボス(351)を介して裏張層(342)に永久に取り付けられている。
【0362】
膨脹用入口管(350)、入口管(346)および出口管(347)が、中空体(348)の上方で、裏張層(342)におけるボス(351)の中心に取り付けられている。膨脹用入口管(350)は、中空体(348)を膨脹させるために、中空体(348)の内部と連通している。入口管(346)は中空体(348)を事実上貫通して管(352)の中に延びている。出口管(347)は裏張層(342)の直下で半径方向へ延びている。
【0363】
図13において、管(352)は、ヒートシール処理で詰物(348)に永久に接合された開き口(362)付きの膜(361)によって形成された入口側マニホールド(353)に連通している。入口側マニホールド(353)は、適切な材料、例えば弾性のある熱可塑性プラスチックから構成された発泡体(363)で満たされている。好ましい材料には、小さい開き口すなわち微細孔のある濾過用の網状化発泡ポリウレタンが含まれる。
【0364】
図14において、出口管(347)は、適切な材料、例えば弾性のある熱可塑性プラスチックから構成された発泡体(364)の層に連通している。この場合もやはり、好ましい材料には、小さい開き口すなわち微細孔のある濾過用の網状化発泡ポリウレタンが含まれる。
【0365】
使用時における図13、図14および図15のすべてにおいて、管(346)は、創傷底から広大な区域にわたって灌注流体を直接供給する1つ以上の開口の中で終わっている。同じように、出口管(347)は、ドレッシングの使用時に創傷の周縁から流体を半径方向へ効果的に捕集する。
【0366】
図16によれば、このドレッシングにも、円形裏張層(342)の下方に創傷詰物(348)が設けられている。創傷詰物(348)も、膜(349)によって画成された、ほぼ環状の適合性中空体から構成され、この中空体は、この中空体を創傷形状に沿わせる流体、ここでは空気あるいは窒素で満たされている。
【0367】
詰物(348)は、第1ボス(351)と、適切な材料、例えば弾性のある熱可塑性プラスチックから形成された発泡体の層(364)とを介して裏張層(342)に永久に取り付けられている。この場合もやはり、好ましい材料には、小さい開き口すなわち微細孔のある濾過用の網状化発泡ポリウレタンが含まれる。第1ボス(351)および発泡体層(364)はそれぞれ、裏張層(342)およびボス(351)にヒートシールされている。
【0368】
膨脹用入口管(350)、入口管(346)および出口管(347)が、環状中空体(348)の上方で、裏張層(342)における第1ボス(351)の中心に取り付けられている。膨脹用入口管(350)、入口管(346)および出口管(347)はそれぞれ、中空体(348)における中央穴(356)を通って管(353)・(354)・(355)の中を延びて、環状中空体(348)に取り付けられた第2ボス(357)へ至っている。
【0369】
管(353)は、中空体(348)の内部に連通しており、中空体(348)の膨脹を可能にしている。管(354)は、膜(361)によって形成された入口側マニホールド(352)に連通するために、第2ボス(357)を貫通して半径方向へ延びており、膜(361)は、ヒートシール処理によって網状化されたハニカム構造体の形態で詰物(348)に永久に取り付けられており、このハニカム構造体には、灌注流体を広大な区域にわたって創傷底へ直接供給する開口(362)がある。管(355)は、このドレッシングの使用時に創傷の中央から半径方向へ流れる流体を捕集する。ドレッシングのこのような形態は、より深い創傷に対していっそう適したレイアウトである。
【0370】
図17におけるドレッシングは、図16のドレッシングに類似しているが、図16のドレッシングとは、膜(349)によって画成された環状の適合性中空体が、空気または窒素あるいはアルゴンのような不活性気体のような気体ではなく、流体、ここではプラスチック製の小片あるいはビーズのような固体微粒子で満たされている点と、膨脹用入口管(350)および管(353)が中央穴(356)から省略されている点とで、異なっている。
【0371】
中空体(348)のための内容物の例には、シリコーンゲルあるいは、好ましくは、例えばイントラジット(Intrasite)(登録商標)架橋物質のような親水性架橋セルロースゲルであるセルロースゲルも含まれる。この例には、エアゾール発泡体および、例えばキャビケア(CaviCare)(登録商標)発泡体のような凝固エアゾール発泡体も含まれる。
【0372】
図18および図19には、より深い創傷についての別の形態が示されている。この形態には、円形裏張層(342)と、複式マルタ十字架あるいは様式化バラに酷似した深いギザギザのある円盤の形態にあるチャンバー(363)とが備わっている。
【0373】
このチャンバー(363)は、上部の不浸透性膜(361)と下部の多孔性フィルム(362)とによって画成されており、フィルム(362)には、創傷底から広大な区域にわたって灌注流体を直接供給する開き口(364)がある。チャンバー(363)のいくつかの形状構成が示されているが、これらはすべて、創傷の中への挿入に際して接近しているかあるいは重なる可能性のあるアームによって、創傷底へ充分に沿うことができる。
【0374】
一番下に示されたチャンバー(363)の特定のデザインでは、アームの1つが延長されており、延長アームの端部に入口部が設けられている。これによって、使用時にドレッシングおよび創傷から離れた灌注供給部の連結および分離の自由度がもたらされている。
【0375】
入口管(346)および出口管(347)が、チャンバー(363)の上方で、裏張層(342)におけるボス(351)の中心に取り付けられている。入口管(346)は、チャンバー(363)に永久に取り付けられるとともに、その内部に連通しており、従って、入口側マニホールドを事実上、構成している。チャンバー(363)の上方の空間は、ゆったりとしたガーゼパッキング(364)で満たされている。
【0376】
図18では、出口管(347)は、裏張層(342)の創傷対向面(343)の直下にあるドレッシングの内部から流体を捕集する。
【0377】
図19には、図18のドレッシングの変形例が示されている。チャンバーの上方における空間の最下部で一片の発泡体(354)の中へ通じるように、出口管(347)が取り付けられている。
【0378】
図20において、ドレッシングは、図13のドレッシングに類似しているが、ほぼ下向きドーム状の創傷中空詰物(348)を貫通するのではなくその上面を覆う入口管(352)が開き口(362)のある膜(361)によって形成された入口側マニホールド(353)に連通している点では図13のドレッシングに類似していない。
【0379】
図22では、開き口(362)のある膜(361)によって形成され、ほぼ下向きドーム状である環状の創傷中空詰物の下面にわたる入口側マニホールド(353)を加えると、図14のドレッシングに類似している。
【0380】
図21では、ほぼ下向きドーム状である環状の創傷中空詰物は省略されている。
【0381】
図23によれば、より深い創傷についての別の形態が示されている。密封された発泡体詰物(348)の上方における裏張層(342)のボス(351)の中心には、入口管(346)と出口管(347)とが取り付けられている。入口管(346)は、創傷底に、永久にかつ詰物(348)を貫通して取り付けられている。出口管(347)は、詰物(348)の上部周縁に取り付けられた多孔性発泡体によって画成されたチャンバー(363)に、かつその内部に連通して取り付けられている。そして、チャンバー(363)によって出口側マニホールドが効果的に形成されている。
【0382】
図24では、発泡体詰物(348)は一部分だけ密封されている。入口管(346)は、創傷底に、永久にかつ詰物(348)を貫通して取り付けられている。出口管(347)は、詰物(348)の発泡体に、かつその内部に連通して取り付けられている。流体は、詰物(348)の上部周縁の近傍における環状空隙を通って発泡体の中へ入り、そして、出口側マニホールドを効果的に形成する。
【0383】
図25および図26には、入口管(346)と出口管(347)とが裏張層(342)を貫通するドレッシングが示されている。
【0384】
図25では、それらは、多孔性フィルム(369)によって画成されて弾性的に復元するプラスチック製のビーズあるいは小片で満たされた多孔性バッグ詰物(348)の内部に連通している。
【0385】
図26では、それらは、発泡体詰物(348)の直下にある創傷空間に連通している。発泡体(348)は、現場で入口管(346)および出口管(347)の周りに射出されて形成されたキャビケア(CaviCare)(登録商標)発泡体であってよい。
【0386】
図27によれば、創傷の吸引、灌注および洗浄用の装置(1)は、図1に示された装置の主要な変形例である。
【0387】
図1において、創傷と流体洗浄手段との間で流体を移動させる装置は、ドレッシング(2)の下流側における流体循環管(13)に作用して低い負圧を創傷にもたらす蠕動ポンプ(18)であり、例えば小型携帯用蠕動ポンプが好ましい。
【0388】
図27に示された装置(1)では、蠕動ポンプ(18)は、低い負圧を創傷にもたらすための、a)ドレッシング(2)の上流側における流体供給管(7)に作用する蠕動ポンプ、およびb)ドレッシング(2)の下流側における流体循環管(13)に作用する、圧力調整手段付きの真空ポンプアセンブリーによって、置き換えられる。
【0389】
この真空ポンプアセンブリーにはタンク(911)が備わっており、このタンク(911)には、流体循環管(13)に接続されているとともにタンク(911)の上部に連通している入口管(912)と、廃液バッグ(915)のある廃液ポンプ(914)に接続されているとともにタンク(911)の下部に連通している廃液管(913)と、真空ポンプ(918)に接続されているとともにタンク(911)の上部に連通しているポンプ管(916)と、洗浄手段(17)に連なる流体循環管(13)に接続されているとともにタンク(911)の下部に連通している出口管(917)とが備わっている。
【0390】
真空ポンプ(918)は、導線(920)を介する圧力フィードバック調整器(919)によって制御されるが、調整器(919)は、タンク(911)の上部におけるタンクセンサー(921)と創傷空間におけるドレッシングセンサー(922)とから、それぞれ導線(923)と導線(924)とを介して信号を受信する。
【0391】
この装置(1)の作用は、必要な変更を加えると、図1における装置の作用に類似している。圧力フィードバック調整器(919)によって、創傷および/またはタンク(911)における圧力が調整される。例えば創傷がひどく滲出し続けるために循環における流体の量が過剰になると、廃液ポンプ(914)が始動されて、流体がタンク(911)の下部から廃液バッグ(915)へ移送される。
【0392】
この発明の装置の使用はこれから、以下のいくつかの実施例において例示としてだけ説明される。
【0393】
実施例1−ミクロ濾過による単相系からの、微生物を含む汚染微生物の除去
【0394】
基本的には図1と同じものであるが、創傷ドレッシングとポンプとの間における試料取入口S1と、洗浄手段としての無菌状0.22μmフィルター濾過装置の下流側における試料取入口S2とが備わっている単相回路が、γ放射線照射によって滅菌された。
【0395】
供試生物(エス.アウレウス(S.aureus)NCTC 10788)の接種に先立って、創傷貯蔵器は45mlの無菌MRD(最大回収希釈剤)で満たされ、その後、MRDは、前記供試生物で接種されて、104cfu/mlの最終濃度になった。
【0396】
このインキュベーション液は、この濾過装置に循環されるのに先立って、前記回路(0.22μm滅菌フィルターを迂回する)の周りに予備循環された。予備循環流体の試料(0.5ml)は、取入口S1から30分および60分で取り入れられた。これはMRDの中で10-3まで連続的に希釈され、また、対をなす1mlのトリプトン大豆寒天(TSA)プレートが、標準有効プロトコルに従ってそれぞれの希釈液から用意された。これらのプレートは、計数に先立って、32℃で少なくとも72時間、インキュベートされた。
【0397】
1時間後に、流体はこの濾過装置に循環された。循環流体の0.5mlの試料は、取入口S1からT=10分、30分、50分および70分で取り入れられ、取入口S2からT=0分、20分、40分および80分で取り入れられた。すべての試料は、先に説明したように数え上げられた。
【0398】
結果
【0399】
【表1】
【0400】
【表2】
【0401】
【表3】
【0402】
結論
この単相系によれば、およそ3つの対数によって0.22μmフィルターを通過した後に創傷回路から細菌細胞をただちに除去することができるとともに、循環する細菌の全数を徐々に減少させることができた。
【0403】
実施例2−二相系(静的第2相)におけるエラスターゼの阻害
【0404】
a) 固定化エラスターゼ拮抗剤−ポリ(無水マレイン酸-alt-メチルビニルエーテル)と1%の5-(2-アミノエチルアミノ)-1-ナフタレンスルホン酸(EDANS)蛍光タグとによる4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオライド(AEBSF)のコンジュゲート(「阻害剤」)の調製
【0405】
磁気的に攪拌されているDMF(100ml)中のMAMVE(1.646g、10.5ミリモル単位)の溶液に、DMF(2ml)中のEDANS(30.4mg、0.1ミリモル)が添加された。15分後に、DMF(20ml)中のAEBSF塩酸塩(2.502g、10.4ミリモル)とトリエチルアミン(1.056g、10.4ミリモル)との溶液が、滴下された。5時間後に、この溶液を、0.5M HCL(2000ml)の中へ滴下して沈殿させ、0.5M HCLでブフナー濾過・洗浄した。この生成物は、真空乾燥されて、−4℃で保管された。収率3.702g、98%。
【0406】
磁気的に攪拌されているDMF(100ml)中のMAMVE(2.000g、12.8ミリモル単位)の溶液に、DMF(2ml)中のEDANS(37.0mg、0.1ミリモル)が添加された。15分後に、DMF(10ml)中のフェネチルアミン(1.537g、12.7ミリモル)の溶液が、滴下された。5時間後に、この溶液を、0.5M HCL(2000ml)の中へ滴下して沈殿させ、0.5M HCLでブフナー濾過・洗浄した。この生成物は、真空乾燥されて、室温で保管された。収率3.426g、97%。
【0407】
b) エラスターゼ阻害
【0408】
基本的には図1と同じものであり、静的第2相のある二相洗浄手段があるが、洗浄手段の下流側における試料取入口が備わっている二相回路が使用された。
【0409】
その洗浄手段は、マイクロクロス交差流シリンジフィルター(MiCroKros Cross Flow Syringe Filter)(スペクトラム ラブズ インコーポレーテッド)(Spectrum Labs Inc)PS/400K MWCO=8cm2のものであり、これには別々の2つのチャンバーがあり、その外側のチャンバーにおける流体は静的に保有される。
【0410】
その外側のチャンバーは、2mg/mlの阻害剤溶液(TRIS中1mlまで)で満たされて、管類に接続された。入口側管類および出口側管類はTRIS溶液の中に配置され、TRISが、前記マイクロクロスシリンジの内側チャンバーとその管類とに5分間、流された。管類はその後、空にされた。2mlのエラスターゼ(0.311mg/ml)がこの創傷回路の中へピペット分注された。
【0411】
管類が貯蔵器の中に配置され、また、ポンプおよびタイマーが同時に始動された。
【0412】
創傷回路から1時間ごとに10マイクロリットルの試料が、6時間にわたって採取され、試料採取後ただちに、次のようにしてアッセイされた。6時間にわたる活性の減少を測定するために、静的エラスターゼの対照がすべての時点でアッセイされた。
【0413】
c) エラスターゼの活性のアッセイ
【0414】
エラスターゼ基質であるN-Succ-(Ala)3-ニトロニリド(DMSOにおける10mg/ml)が用意された。25マイクロリットルのN-Succ-(Ala)3-ニトロニリド(10mg/ml)が、4.5ml容量の使い捨てキュベットの中における2.475mlのTRISに添加された。この混合は、エラスターゼ溶液が同キュベットの中へ添加される前に10分間行われた(基質が充分に混合されることを保証するために)。次いで、10マイクロリットルの試料がそれぞれのキュベットに添加されて、充分に混合された。この試料は室温で40分間、インキュベートされて、405nmでの吸光度が記録された。
【0415】
結果および結論
【表4】
【0416】
【表5】
【0417】
すべてのエラスターゼ対照実験の平均値は、0時間についての100%の活性を計算するために使用された。
【表6】
【0418】
これらの結果によれば、エラスターゼ+Tris溶液については、活性が60〜70%減少していることが示されている。このことは、外側チャンバーにおける2mlのエラスターゼと1mlのTRISとの混合による希釈効果(2/3)として説明することができる。これにより、この系はエラスターゼに対して不活性であることと、膜を介する完全な混合/拡散は3時間以内に起きることとが示されている。
【0419】
6時間以内におけるエラスターゼ+MAMVE-AEBSFでは、エラスターゼ活性が90%低下することが示されている。
【0420】
実施例3−二相系(静的第2相)からの鉄イオンの金属イオン封鎖
【0421】
基本的には図1と同じものであり、静的第2相のある二相洗浄手段があり、洗浄手段の下流側における試料取入口が備わっている二相回路が使用されたが、洗浄手段は、スライド・エー・ライザー(Slide-A-Lyzer)のチャンバーの中におけるスライド・エー・ライザー透析カセット(ピアース(Pierce)社製の10,000MWCO、3〜15ml容量、製品番号66410)である。
【0422】
このカセットには次の1つが収容された。
a) 5mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)
b) デンプン対照(40mg/ml、120mg/mlおよび200mg/ml)あるいは
c) 溶液中におけるデンプン−デスフェリオキサミン(DFO)コンジュゲート(バイオメディカル・フロンティアーズ・インコーポレーテッド(Biomedical Frontiers Inc.)から供給されたもの)(40mg/ml、120mg/mlおよび200mg/ml)
【0423】
それぞれの透析カセットはスライド・エー・ライザーチャンバーの中に配置された。この構成において、カセット収容物は、先に言及した10,000MWCO膜によって再循環用第1流体から分離されている。
【0424】
トランスフェリン(10mg/ml、35ml容積)が、試料取入口の中へ注入されて、マスターフレックスポンプ(Masterflex pump)(型式番号7523−37)により、8時間にわたって相異なる流速(0.54ml/分、0.82ml/分、1.08ml/分および1.35ml/分)で、この流れ系の周りに循環された。
【0425】
試料は2時間、4時間、6時間および8時間で回収された。
【0426】
これらの試料の鉄含有量が、フェロジンアッセイ法を使用して次のように測定された。試料は、トランスフェリンから鉄イオンを遊離するために、pH4.8の50mMの酢酸緩衝液と混合された。遊離したIII価3鉄イオンをII価鉄イオンに還元するために、試料にはアスコルビン酸塩(30ミリモル)が添加された。フェロジン(5mM)が試料に混合され、II価鉄イオンとの間で着色錯体を形成した。ユニキャム(UNICAM)UV4−100・UV−Vis分光光度計V3.32(製造番号022405)を使用して、吸光度が測定された。
【0427】
結果および結論
【0428】
デンプン-DFOは、8時間にわたって、用量依存的にトランスフェリンから鉄を採取した。8時間の再循環の後に、200mg/mlのデンプン-DFOの存在下で、およそ20〜25%のイオン除去が起きた。
【0429】
相異なる濃度のデンプン対照あるいはPBSの存在下では、トランスフェリンの鉄含量は、希釈効果のためにわずかに低下し、次いでゆっくり正常値に戻ったが、このことは、デンプン-DFOによるイオン採取がDFO単独で媒介されたことを示唆する。
【0430】
トランスフェリンについての鉄採取特性は相異なる流速でも同様であったが、このことは、この流れには透析膜を介するイオン移動に対する効果がなかったことを示唆する。
【0431】
実施例4−二相系(動的第2相)の第2相からの抗生物質の注入
【0432】
基本的には図1と同じものであり、基本的には図2と同じ第2(透析液)回路のある二相循環系が、使用された。ポンプはシリコーン管類に作用する蠕動ポンプであった。この第2回路には、創傷流体を変化させる透析液の貯蔵器(50mlのファルコン遠心分離管)が設けられた。創傷回路は、ルアー接続用の中空繊維接線膜透析ユニット(スペクトラム(Spectrum)(登録商標)マイクロクロス(MiCroKros)(登録商標)X14S-100-04N,表面積8cm2,400KDMol.Wt.切断物)の端部の中に接続された。透析液回路は、創傷回路と透析液回路との間における流れが向流方向になるように、同じ透析ユニットの側面部に接続された。
【0433】
創傷回路は、製造業者の指示に従って、まずエタノールで次に滅菌水で洗われた。創傷貯蔵器は20mlの滅菌水で満たされた。創傷ポンプが100の設定速度で作動され、創傷回路に実測2.09ml/分の流速が生じた。透析液回路は、製造業者の指示に従って、まずエタノールで次に滅菌水で洗われた。透析液貯蔵器は20mlの滅菌水で満たされた。透析液ポンプが100の設定速度で作動され、創傷回路に実測1.93ml/分の流速が生じた。2mlのシリンジに取り付けられた、ルアー接続部のある一定長さのシリコーン管によって、試料(1ml)が創傷貯蔵器および透析液貯蔵器から取り出された。
【0434】
実験の開始時点で、5mlの滅菌水が透析液貯蔵器から除去され、硫酸ゲンタマイシン(ヨーロッパ基準の硫酸ゲンタマイシン、CRS(活性616IU/mg)の5mg/ml溶液の5mlが添加された。創傷ポンプと透析ポンプとの両方を同時に作動させた。試料を230分にわたって時々、透析液回路および創傷回路から採取した。実験の間、容積は変わらなかった。
【0435】
先に作られた標準曲線を使用して透析液回路から創傷回路へのゲンタマイシンの移動についてのだいたいの測定値を得るために、試料(1ml)が2mlの滅菌水で希釈され、190nmでの紫外線吸光度が検査された。
【0436】
その後、試料は、指標細菌としてスタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)を使用するアッセイに従って、ゲンタマイシン活性についての定量的阻害ゾーンアッセイにより分析された。
【0437】
結果および結論
流体の抗菌活性−阻害ゾーンアッセイの結果によれば、創傷回路におけるゲンタマイシンのレベルは、2つの回路における薬剤のレベルが互いに接近するにつれて遅くなる増加率で、230分にわたって安定的に増大することを示している。透析液回路におけるゲンタマイシンのレベルは、薬剤が透析液回路から創傷回路まで移動すると、予想どおり安定的に減少することを示している。臨床業務において有用である圧力および流速では、創傷治癒のための薬剤は、許容できる量と許容できる時間尺度で供給することができる。
【0438】
実施例5−二相系(静的第2相)における局在化グルタチオン還元酵素(GR)と補因子NADP(還元形)とによるグルタチオンの再生(酸化グルタチオン(GSSG)のグルタチオン(GSH)への還元)
【0439】
基本的には図1と同じものであり、静的第2相のある二相洗浄手段があり、洗浄手段の下流側における試料取入口が備わっている二相回路が使用されたが、洗浄手段は、スライド・エー・ライザー(Slide-A-Lyzer)のチャンバーの中におけるスライド・エー・ライザー透析カセット(ピアース(Pierce)社製の10,000MWCO、3〜15ml容量、製品番号66410)である。
【0440】
分離された15ml容量のスライド・エー・ライザーカセットの中へ、それぞれの保存溶液の5mlが注入された。
a) 蒸留水の中で調製された2mg/mlのNADP(NADP)
b) NADP保存溶液の中で調製された2mg/mlのグルタチオン還元酵素(GR+NADP)あるいは
c) 蒸留水の中で3重に調製された2mg/mlのグルタチオン還元酵素(GR)
【0441】
これらのカセットは、平らに配置され、そして上部外側空洞の中に、GSSGストック溶液(蒸留水の中で調製された50mMのGSSG(30.6mg/l))の15mlを一定量入れた。この溶液は第1相回路の周りに循環された。第1相回路は、6時間にわたって、1時間ごとに1.5ml容量の使い捨てUVキュベットの中へ試料採取(1ml)された。この時間周期の終わりに、それぞれの分取物は、グルタチオンアッセイキット(キャルバイオケミストリー(Calbiochem)社から市販)を使用してアッセイされた。3重のものは平均化され、また、それぞれのデーターポイントについてSDが決定された。これらのデーターは、3つの制御系のそれぞれについて、GSSG濃度対時間としてプロットされた。
【0442】
結果および結論
GSSGは、GRとその補因子NADPとの組み合わせによって、GR単独あるいはNADP単独によるときよりもかなり多い程度まで使い尽くされた。従って、この使い尽くしは非特異的結合に起因するものではない。前記の酵素濃度と補因子の濃度では、6時間でおよそ40%のGSSGが使い尽くされた。
【0443】
実施例6−単相系からの細菌性自己誘導物質の分解的除去
【0444】
自己誘導物質と称される細胞外シグナル分子の交換は、細菌によって行われ、臨界的な細菌細胞密度で活性化された重要な細菌ビルレント遺伝子の発現の調整に必須であり、従って、上首尾な細菌の定着と組織の侵入とが達成される。この系はクオラムセンシング(Quorum Sensing)と称される。逆に言えば、自己誘導物質の種の(通常は酵素的な)分解あるいは金属イオン封鎖は、基本的な伝達を乱すとともに創傷における感染の防止を助成する1つの方法である。
【0445】
AiiA酵素は、エス.アウレウスによって自己誘導物質として使用される3-オキソドデシルホモセリンラクトンシグナル分子を分解するものである。
【0446】
使用されたAiiA酵素は、ノッティンガム大学で生産されたものであり、マルトース結合蛋白質に結合される。
【0447】
a) ポリマー支持体に結合されたAiiA酵素の調製
【0448】
臭化シアン活性化セファロース6MB(シグマ(Sigma)社から市販)(より高い貫流速度のために直径が200〜300μmのもの)が、1mMの塩酸の中で洗浄されるとともに、30分間、浸漬されかつ膨脹された。このゲルは、大量の蒸留水で洗浄され、その後、pH8.5のNAHCO3/NaClで洗浄され、直ちに使用された。
【0449】
AiiA酵素溶液(約1mg/ml)がポリマー支持ビーズに添加されて、4℃で一晩、静置された。結合されたビーズは、pH8.5のNaHCO3/NaClで洗浄され、懸濁液として保存された。ビーズからの洗浄液もまた、未結合酵素の量と、従って結合効率とを決定するために捕集された。
【0450】
半製品である未結合ビーズが、対照として使用された。
【0451】
1mg、10mgおよび100mgの相異なる量の酵素結合ビーズは、単相系に洗浄手段を構成し、洗浄手段の下流側に試料口も有している、貫流についての軸方向の入口部および出口部のある円筒状ガラスシリンダーを横切る2種のガラスフリットによって画成されたチャンバーの中に捕捉される。10μMの3-オキソドデシルホモセリンラクトン(ODHSL)のストックが、チャンバーを通じて37℃で1.93ml/分の割合で6時間にわたってポンプにより汲み上げられる。
【0452】
循環流体は、6時間にわたって、1時間ごとに1.5ml容量の使い捨てUVキュベットの中へ試料採取(1ml)される。
【0453】
この時間期間の終わりに、それぞれの分取物は、E.coliにおける生物発光に基づくプラスミドレポーター系を使用する、1997年発行のJ.Bacteriol.の179巻、第5271〜5281ページにおけるスイフト(Swift)らのアッセイ法を使用してアッセイされた。100mgの試料によれば、6時間でODHSL濃度の86%減少を示す。
【図面の簡単な説明】
【0454】
【図1】図1は、この発明の第1の観点による創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置の模式図である。この装置には限外濾過ユニットの形態にある流体洗浄用の単相系手段が備わっている。
【図2】図2は、この発明の第1の観点による創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置の模式図である。この装置には透析ユニットあるいは二相性抽出ユニットの形態にある流体洗浄用の二相系手段が備わっている。
【図3】図3は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。図3aはその創傷ドレッシングの平面断面図であり、図3bはその創傷ドレッシングの側面断面図である。
【図4】図4は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。図4aはその創傷ドレッシングの平面断面図であり、図4bはその創傷ドレッシングの側面断面図である。
【図5】図5は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。図5aはその創傷ドレッシングの平面断面図であり、図5bはその創傷ドレッシングの側面断面図である。
【図6】図6は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。図6aはその創傷ドレッシングの平面断面図であり、図6bはその創傷ドレッシングの側面断面図である。
【図7】図7は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。図7aはその創傷ドレッシングの平面断面図であり、図7bはその創傷ドレッシングの側面断面図である。
【図8】図8は、それぞれが流体を創傷へ供給しかつ創傷から流体を捕集する、この発明の第2の観点による創傷ドレッシングの入口側マニホールドおよび出口側マニホールドのレイアウト図である。
【図9】図9は、それぞれが流体を創傷へ供給しかつ創傷から流体を捕集する、この発明の第2の観点による創傷ドレッシングの入口側マニホールドおよび出口側マニホールドのレイアウト図である。
【図10】図10は、それぞれが流体を創傷へ供給しかつ創傷から流体を捕集する、この発明の第2の観点による創傷ドレッシングの入口側マニホールドおよび出口側マニホールドのレイアウト図である。
【図11】図11は、この発明の第1の観点による創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置の模式図である。この装置には限外濾過ユニットの形態にある流体洗浄用の単相系手段が備わっている。
【図12】図12は、この発明の第1の観点による創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置の模式図である。この装置には透析ユニットあるいは二相性抽出ユニットの形態にある流体洗浄用の二相系手段が備わっている。
【図13】図13は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図14】図14は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図15】図15は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図16】図16は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図17】図17は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図18】図18は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図19】図19は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図20】図20は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図21】図21は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図22】図22は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図23】図23は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図24】図24は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図25】図25は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図26】図26は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図27】図27は、この発明の第1の観点による創傷の吸引、灌注および/または洗浄用の別の装置の模式図である。この装置には限外濾過ユニットの形態にある流体洗浄用の単相系手段が備わっている。
【技術分野】
【0001】
この発明は、創傷の吸引、灌注および/または洗浄用の装置および医療用創傷ドレッシング、およびこのような創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置を使用する創傷治療方法に関するものである。
【0002】
この発明は、さらに詳しくは、広範囲の創傷、とりわけ慢性的創傷に容易に適用することができ、それらの創傷を創傷治癒に有害である物質から洗浄し、一方、とりわけ創傷治癒に何らかの治療上の観点で有益である物質を保持する、そのような装置、創傷ドレッシングおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
この発明以前には、吸引および/または灌注用装置が、そのために知られており、また、創傷治療の間に創傷滲出物を除去するために使用される傾向にあった。このような創傷治療についての公知の形態では、創傷からの排出物は、とりわけ強滲出状態にあるときには、廃棄のために例えば捕集バッグへ放出される。創傷治癒に有害である物質はこのようにして除去される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、創傷からの滲出物の成長因子、細胞基質成分、および他の生理活性成分のような創傷治癒の促進に有益である物質は、そのような治療が適用されたときに、最も有益である可能性のある部位、すなわち創傷底へ失われる。
【0005】
このような公知の形態の創傷ドレッシングと吸引および/または灌注治療系とによって、身体自体の組織治癒処理の最適特性が失われることになるとともに遅い治癒および/または創傷底に充分に付着しかつ創傷底から成長する強い3次元構造を有しない弱い新組織成長を引き起こす創傷環境がドレッシングの下方にしばしば作り出される。このことは、とりわけ慢性的創傷においてかなり不都合である。
【0006】
従って、創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することができ、一方、創傷治癒の促進に有益である物質を保持することのできる治療系を提供することが望ましいであろう。
【0007】
透析は、血液のような体液から身体に有害である物質を全身的に洗浄するために、血液のような体液を生体外で処理する公知の方法である。透析液との接触によってそのような物質を除去し、一方で血液、細胞および蛋白質のような物質を保持することは、透析の主要目的である。付加的な積極治療作用を有している他の物質は、それらをも透過させる透析膜を通って系へ失われるおそれがある。このため、再循環における体液中のそのような物質の均衡はさらにくずれることがある。
【0008】
創傷底と接触して創傷治癒の促進に有益である物質を実質的に希釈することなく、創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することができ、かつ、そのような物質を同時に創傷へ連続的に供給しかつ再循環させることのできる治療系を提供することが望ましいであろう。
【0009】
体液を処理する透析は、処理された流体が身体の内部へ戻されるので、全身治療でもある。これは、処理された流体が身体の外側、例えば創傷へ循環される局所療法とは対照的なものである。たいていの透析では血液のような体液が大量に必要でもあり、そのために関連装置は携帯型のものではない傾向にある。
【0010】
強滲出状態においてさえ、慢性的創傷によって、身体内系に比べて処置すべき量がかなり少ない流体と、何らかの治療的観点で有益であって創傷および/またはその環境の内部に保持すべき量がかなり少ない物質とが作り出される。
【0011】
この発明の1つの目的は、
a) 公知の吸引および/または灌注治療系における前記短所の少なくともいくつかを未然に防止することと、
b) 創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することができ、一方、創傷底と接触して創傷治癒の促進に有益である物質を保持することのできる治療系を提供することである。
【0012】
この発明のさらに別の目的は、
a) 公知の透析系における前記短所の少なくともいくつかを未然に防止することと、
b) 創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することができ、一方、創傷底と接触して創傷治癒の促進に有益である物質を保持することのできる治療系を
c) 身体の全身に影響をおよぼすことなく提供することである。
【0013】
この発明のさらにもっと別の目的は、
a) 公知の透析系における前記短所の少なくともいくつかを未然に防止することと、
b) 創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することができ、一方、創傷底と接触して創傷治癒の促進に有益である物質を保持することのできる
c) 携帯型の治療系を提供することである。
【0014】
創傷の下にあって創傷を包囲している組織への血管供給とその組織における循環とは妥協的なものであることが多い。この発明のさらに別の目的は、この効果を逆にし、一方、有害である物質を除去し、それによって創傷治癒を促進するのに有益である物質の治療的活性量を保持するとともに供給する治療系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、この発明の第1の観点によれば、
a) i) 創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成することのできる裏張層と、流体供給管へ接続され、創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る少なくとも1つの入口管と、流体排出管へ接続され、創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る少なくとも1つの出口管とを有しており、その入口管あるいはそれぞれの入口管およびその出口管あるいはそれぞれの出口管が創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る箇所は、創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成し、少なくとも1つの入口管は流体再循環管に接続され、少なくとも1つの出口管は流体排出管に接続されている適合性創傷ドレッシングと、
ii) 流体排出管に接続された少なくとも1つの入口部と流体再循環管に接続された少なくとも1つの出口部とを有している流体洗浄手段と
を備えている流体流路、
b) 第2流体供給管によって(場合によってはあるいは必要に応じて、供給と再循環との流れを切り換える手段を介して)前記流路の完全体に接続された流体貯蔵器、
c) 流体を前記創傷ドレッシングと前記流体洗浄手段とによって、また、場合によってはあるいは必要に応じて前記流体供給管によって、移動させる装置、および
d) 場合によっては、前記流体貯蔵器から前記流体供給管(場合によってはあるいは必要に応じて、流れを切り換える前記手段を介して)を通して流体が前記流路を満たすことができるように、かつ、前記流路を通して前記装置によって再循環することができるように、前記流路から流体を放出する手段
を備えていることを特徴とする創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置が提供される。
【0016】
供給と再循環との間における流れ切換手段は、創傷が同時に
a) 流体貯蔵器に連通するが、
b) 流体再循環管に近接し、かつ、
c) 逆の場合も同じである
ことを可能にする任意の形態を採ることができる。
【0017】
従って、創傷ドレッシングの創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通るただ1つの入口管があれば、流体貯蔵器は、流体供給管によって、要望に応じて流体再循環管あるいは流体排出管の中へ流れを切り換える流れ切換手段を介して流路に接続される。
【0018】
この場合において、供給と再循環との間における流れ切換手段は、T字バルブのような調整器であってよい。この調整器は次いで、供給と再循環との間に所望の流れ切換が達成されるように、流体再循環管の2つの部分あるいは流体排出管と流体供給管とに接続される。
【0019】
もし2つ以上の入口管があれば、これらはそれぞれ、流体を創傷の中へ流入させるバルブあるいは他の制御装置のような第1調整器および第2調整器をそれぞれ有している流体供給管あるいは流体再循環管に接続することができる。
【0020】
供給と再循環との間における所望の流れ切換はそれぞれ、第2調整器が閉鎖されたときに第1調整器を開放し、また、その逆にすることによって、達成される。
【0021】
流路から流体を放出する手段は、灌注流体および/または創傷滲出物に接触するこの装置の適切な任意部分に配置することができるが、普通は排出管および/または再循環管の内部に配置される。しかしながら、この手段は、たいていは貯蔵器および流体供給管のできるだけ下流側にしかも遠くに配置されるので、流体貯蔵器から流体供給管を介する流路の全体を流体で満たすために使用することができる。
【0022】
この手段は、この装置から流体を例えば捕集バッグのような廃液貯蔵器へ放出するためのバルブあるいは他の制御装置、例えば放出と再循環とを切り換えるために回されるT字バルブのような調整器であってよい。
【0023】
あるいは、供給と再循環との流れ切換は望まれず、相伴う放出および/または再循環が望まれることがある。後者は、再循環の際における灌注流体および/または創傷滲出物の容積が
a) 創傷滲出物および/または
b) 洗浄流体から例えば透析ユニットのような系における選択透過性完全体を通過する流体
のそれへの連続的添加によって増大するときに起きるであろう。
【0024】
従って、廃液管および/または再循環管から流体を放出する手段は、再循環通路から分岐している放出ラインを介する灌注流体および/または滲出物の通過を許容しあるいは阻止するための簡単なバルブあるいは他の制御装置のような調整器の形態に設けることができる。
【0025】
流体洗浄手段は、要望に応じて「単相系」であってよい。
【0026】
この場合には、創傷および流体貯蔵器からの循環流体は、創傷治癒に有害である物質が除去されるとともに創傷治癒の促進に有益である物質をなお含有している洗浄ずみ流体が再循環管を通して創傷底へ戻される自己完結型の系を通過する。このような系は、これ以降に、流体洗浄手段と関連してさらに詳しく説明される。
【0027】
これに代えて、適切な場合には、流体洗浄手段は、透析ユニットあるいは二相性流体抽出ユニットのような二相系の形態に設けることができる。
【0028】
この場合には、創傷および流体貯蔵器からの循環流体は、流体が間接的に(あるいは、ほとんどないことであるが直接)第2流体(透析液)相に、より一般的には液体に接触して再循環し、創傷治癒に有害である物質が除去されるとともに創傷治癒の促進に有益である物質をなお含有している洗浄ずみ流体が再循環管を通して創傷底へ戻される系を通過する。このような系は、これ以降に、流体洗浄手段と関連してさらに詳しく説明される。
【0029】
使用に際して、典型的には、供給と再循環との流れ切換手段は、流体貯蔵器から創傷の中へ流体を流入させるが流体再循環管に対して創傷を閉鎖するように設定される。
【0030】
そして、排出管および/または再循環管から流体を放出する手段が開放されるとともに、創傷を通して流体を移動させる装置および流体洗浄手段が始動される。
【0031】
装置流路の容積と灌注流体および/または創傷からの創傷滲出物の流速とは、装置流路の全長にわたって装置を流体で満たすために、すなわち、存在する任意の流体(たいていは空気)貯蔵器を流体再循環通路から移動させるために、この装置を作動させることとどれほど長く作動させるかということが適切であるかどうかに大きく左右される。典型的には、再循環の際に創傷滲出物に関する流体貯蔵器からのきわめて多量の灌注流体があるので、創傷を通る流体を移動させる装置の使用はこの目的に叶うものである。
【0032】
作動は、装置が装置流路の全長にわたって流体で満たされるまで行われる。その後、典型的には、排出管および/または再循環管から流体を放出する手段が閉鎖され、供給と再循環との流れ切換手段が、流体貯蔵器に対して創傷を閉鎖するが流体再循環管から創傷の中へ流体を流入させるように設定される。
【0033】
流体洗浄手段が、透析ユニットあるいは二相性流体抽出ユニットのような二相系であるときには、洗浄流体は典型的には、選択透過性完全体、例えばポリマー製のフィルム、シートあるいは膜の表面に接触して移動するようにされる。洗浄流体が静的であることがあまり一般的でないときには、このステップはもちろん省略される。
【0034】
以下にいっそう詳しく述べるように、再循環の際における灌注流体および/または創傷からの創傷滲出物の容積は、
a) 創傷滲出物および/または
b) 洗浄流体から選択透過性完全体、例えば透析ユニットのような二相系におけるポリマー製のフィルム、シートあるいは膜を通過する流体
のそれへの連続的添加によって増大する。
【0035】
これに加えて、あるいはこれに代えて、創傷を通して流体を移動させる装置と、創傷ドレッシングの下流側にしかも遠くにある流体再循環管の中で再循環の際に流体に適用された流体洗浄手段とによって、創傷に負圧を加えることは望ましいであろう。
【0036】
このような場合には、相伴う流体放出および/または再循環が可能である系を提供することと、排出管および/または再循環管から流体を放出する手段によって再循環の際に流体の好ましい均衡を維持するために必要な調整を行うこととが望ましいであろう。
【0037】
再循環の際における灌注流体および/または創傷からの創傷滲出物の容積は、洗浄流体から、例えば透析ユニットのような系における選択透過性完全体を通過する流体のそれから連続的に失われることで、減少することがある。
【0038】
これに加えて、あるいはこれに代えて、創傷を通して流体を移動させる装置と、創傷ドレッシングの下流側にしかも近くにある流体再循環管の中で再循環の際に流体に適用された流体洗浄手段とによって、創傷に正圧を加えることは望ましいであろう。
【0039】
供給と再循環との流れ切換手段は、相伴う供給および/または再循環が可能である形態で同じように提供することができ、また、流れ切換手段によって再循環の際に流体の好ましい均衡を維持するために必要な調整が行われる。
【0040】
正圧あるいは負圧が創傷に加えられるときに、創傷底への再循環流路と創傷底からの再循環流路とにおける少なくとも1つの中空体が、灌注流体のかなりの圧縮あるいは減圧を引き起こす圧力に対する充分な復元力を有しているべきである、ということは認識されるであろう。
【0041】
この装置のすべての実施形態では、この発明に使用するのに適しているものとしてこの明細書で例示として説明されたそのような物体(フィルム、シートあるいは膜によって画成されたもの)の種類および材料は、この機能をかなり使用することができるであろう。
【0042】
従って、入口管あるいは排出管および/または再循環管のような、フィルム、シートあるいは膜によって画成された物体と、灌注流体で満たされたバッグ、チャンバーおよびパウチのような構造体、例えば創傷ドレッシングの裏張層とについての適切な材料は、圧力がこのようにして加えられたときにこの機能を使用する可能性がある適度に弾性のある熱可塑性プラスチック材料である。
【0043】
この発明によれば、この観点でいくつかの利点がもたらされる。その1つは、創傷の下にある組織に1つ以上の生理活性成分で灌注することのできる正圧が裏張層の下方にある創傷へ加わることである。
【0044】
これは、生理活性成分単独による処置によるものよりも創傷治癒を大きく促進させるために、治療活性量で達成することができる。
【0045】
創傷治癒に有益である滲出物のそのような生理活性成分は、例えば酵素あるいは他の種であってよく、また、流体洗浄のための透析手段の透析液から供給することができる。
【0046】
この発明の創傷の吸引、灌注および洗浄用装置を循環状態で使用すると効果がさらに促進されるであろうということは信じられている。
【0047】
創傷流体を循環させると、創傷治癒に関連する生物学的シグナル分子の、創傷治癒処理に都合がよい創傷底における定位置への移動および/または、さもなければそれらにさらされない例えば強滲出状創傷における細胞への移動が促進されるであろう。
【0048】
これはとりわけ、創傷の吸引、灌注および/または洗浄のためのこの発明におけるこの第1観点による装置の実施形態における事例であり、この装置には、細管が創傷底へ向かって放射状に広がるとともに創傷底へ延び、流体を供給しかつ拡張区域にわたって創傷底から流体を直接捕集する開口の端部へ延びる入口側マニホールドおよび出口側マニホールドがある。
【0049】
このような物質には、サイトカイン、酵素、増殖を促進する創傷細胞への栄養素、酸素、および、成長因子や走化性を引き起こすのに有利な効果(さらに促進してもよい)を有している他の因子のような創傷治癒に有利に関連する他の分子が含まれる。
【0050】
創傷の吸引、灌注および/または洗浄のためのこの発明におけるこの第1観点による装置のすべての実施形態では、特別な利点は、創傷ドレッシングがそれの施される身体部分の形状に適合する傾向があるという点である。
【0051】
この創傷ドレッシングは、創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成することのできる創傷対向面のある裏張層と、流体供給管あるいは再循環管へ接続され、創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る少なくとも1つの入口管と、流体排出管へ接続され、創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る少なくとも1つの出口管とを有しており、その入口管あるいはそれぞれの入口管およびその出口管あるいはそれぞれの出口管が創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る箇所は、相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成している。
【0052】
用語「相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部」は、この明細書では、流体・微生物不透過性であって、50%大気圧までの、いっそう一般的には15%大気圧までの正圧あるいは負圧を創傷へ加えることのできる部分を表示するために使用されている。用語「流体」は、この明細書では、ゲル、例えば厚い滲出物、液体、例えば水、および空気、窒素などの気体を含めるために使用されている。
【0053】
施される裏張層の形状は、創傷の区域にわたって創傷を吸引し、灌注しかつ/または洗浄するのに適している任意の形状であってよい。
【0054】
このような例には、実質的に偏平なフィルム、シートあるいは膜、または流体を収容することのできる、例えばポリマーフィルムからなるバッグ、チャンバー、パウチあるいは裏張層の他の構造体が含まれる。
【0055】
裏張層は、普通は最大100ミクロンまでの、好ましくは最大50ミクロンまでの、いっそう好ましくは最大25ミクロンまでの、そして最小10ミクロンの(ほぼ均一な)厚さのあるフィルム、シートあるいは膜であってよい。
【0056】
その最大断面寸法は、500mmまで(例えば大きい胴の創傷に対して)、100mmまで(例えば腋窩の創傷および鼠径部の創傷に対して)、そして手足の創傷に対しては200mmまで(例えば、静脈性下腿潰瘍および糖尿病性足部潰瘍のような慢性的創傷に対して)であってよい。
【0057】
このドレッシングは弾性的に変形可能なものであるのが好ましいが、その理由は、患者の快適性が増大し、かつ、創傷の炎症のおそれが減少するからである。
【0058】
そのために適した材料には、ポリエチレン、例えば高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、これらのコポリマー、例えば酢酸ビニルとのコポリマーおよびポリビニルアルコール、およびこれらの混合物のようなポリオレフィン、ポリシロキサン、ポリカーボネートのようなポリエステル、ポリアミド、例えば6-6ポリアミド、6-10ポリアミド、および疎水性ポリウレタンのような水溶性流体を吸収しない合成ポリマー材料が含まれる。
【0059】
それらは、親水性であってもよく、従って、親水性ポリウレタンも含まれる。それらには、熱可塑性エラストマーおよびエラストマーブレンド、例えば、場合によってはあるいは必要に応じて高衝撃耐性ポリスチレンをブレンドしたエチル酢酸ビニルのようなコポリマーも含まれる。それらには、エラストマー性ポリウレタン、とりわけ溶液流延によって形成されたポリウレタンが含まれる。
【0060】
この創傷ドレッシングについての好ましい材料には、熱可塑性エラストマーおよび硬化性システムが含まれる。
【0061】
裏張層は、創傷を覆ってかつ/または入口管および出口管の周りに相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成することができるものである。
【0062】
しかしながら、とりわけ創傷ドレッシングの周縁、すなわち相対的に液密な封止部の外側の周りでは、創傷の周りにおける皮膚の浸軟を防止するために、高い水蒸気透過性のある材料から作られているのが好ましい。この材料はまた、流体、例えば水、血液あるいは創傷滲出物と接触したときに高い水蒸気透過性がある交換可能材料であってもよい。この材料は例えば、スミス・アンド・ネフュー(Smith & Nephew)社のアレビン(Allevyn(登録商標))、アイブイ(IV)3000(登録商標)およびオプサイト(OpSite(登録商標))のドレッシングに使用されている材料であってよい。
【0063】
裏張層の創傷対向面の周縁には、例えば創傷の周りの皮膚に貼り付けるために接着性フィルムが担持されていてもよい。このフィルムは、創傷ドレッシングの創傷対向面の周縁の周りにおける液密な封止部の定位置に創傷ドレッシングを保持するのに充分であれば、例えば感圧性接着剤であってもよい。
【0064】
これに代えて、あるいはこれに加えて、適切な場合には、ドレッシングを定位置に固定して漏れを防止するために光切換可能な接着剤(light switchable adhesive)を使用することができる。(光切換可能な接着剤は、その接着力が光硬化によって減少されているものである。その使用は、ドレッシング除去の際の外傷を減少させるのに有益である。)
【0065】
従って、裏張層は、裏張層の近位面の周りに延びている透明あるいは半透明の材料(先に列挙された材料がとりわけ適しているということが理解されるであろう)からなるフランジあるいはリップを有していてもよい。
【0066】
この裏張層には、ドレッシングを定位置に固定してその近位面における漏れを防止するために光切換可能な接着剤からなるフィルムと、その遠位面における不透明材料からなる層とが担持されている。
【0067】
ドレッシングを除去するために、また、ドレッシング除去の際に過剰な外傷を引き起こさないために、近位創傷の周りに延びているフランジあるいはリップの遠位面における不透明材料からなる層は、適切な波長の放射線をそのフランジあるいはリップに照射する前に除去される。
【0068】
創傷の周りの皮膚に貼り付けるために接着性フィルムが担持されている創傷ドレッシングの周縁、すなわち相対的に液密な封止部の外側は、高い水蒸気透過性のある材料かあるいは交換可能な材料から作られており、従って、接着性フィルムは、連続状であれば、高いまたは交換可能な水蒸気透過性も有していなければならず、例えば、スミス・アンド・ネフュー社のアレビン(Allevyn(登録商標))、アイブイ(IV)3000(登録商標)およびオプサイト(OpSite(登録商標))のドレッシングに使用されているような接着性フィルムである。
【0069】
創傷ドレッシングの創傷対向面における周縁の周りの液密な封止部の定位置に創傷ドレッシングを保持するために真空状態が施されるときには、創傷ドレッシングには、創傷の周りにそのドレッシングを封止するためにシリコーン製のフランジあるいはリップが設けられてもよい。このことによって、患者の皮膚への接着テープについての必要性とそれに関連した外傷とがなくなる。
【0070】
灌注流体および/または創傷滲出物の内部とそれらの流れがある箇所とにおいて、ドレッシングはかなりの正圧下にあるが、この正圧は、周縁箇所でドレッシングを創傷の周りの皮膚から持ち上げて除去するように作用する傾向がある。
【0071】
従って、装置のこのような使用では、この目的のために周縁箇所で作用するために、そのような正圧に抗して創傷を覆ってそのような封止部あるいは閉鎖部を形成しかつ維持する手段を設ける必要があるであろう。このような手段の例には、ドレッシングを定位置に固定して漏れを防止するために、前記のような光切換可能な接着剤からなるものが含まれる。
【0072】
光切換可能な接着剤の接着力は光硬化によって減少され、それによってドレッシング除去の外傷が減少しているので、例えば前記のようなフランジには、いっそう強い接着剤からなるフィルムを使用することができる。
【0073】
患者の皮膚への外傷が許容できるいっそう極端な条件の下で使用するのに適した液状接着剤の例には、創傷の縁部の周りおよび/または創傷ドレッシングの裏張層の近位面、例えばフランジあるいはリップの周りに塗布された、基本的にシアノアクリレートおよび同様の組織接着剤からなるものが含まれる。
【0074】
このような手段のさらに適切な例には、接着性(例えば感圧接着性)および非接着性の、かつ、弾性および非弾性のストラップ、バンド、ループ、細片、ひも、包帯、例えば圧縮包帯、シート、カバー、スリーブ、ジャケット、さや、包み、ストッキングおよびホーズ、例えば、体肢の創傷を覆って圧縮状に装着され、治療がこのようにして施されるとそこに適切な圧力を加える管状の弾性ホーズあるいは管状の弾性ストッキング、および膨脹可能なカフ、スリーブ、ジャケット、ズボン、さや、包み、体肢の創傷を覆って圧縮状に装着され、治療がこのようにして施されるとそこに適切な圧力を加えるストッキングおよびホーズが含まれる。
【0075】
このような手段は、それぞれ創傷ドレッシングを覆って配置されて創傷ドレッシングの裏張層の周縁を越えて延びていてもよく、また、必要に応じて、創傷および/またはそれ自体の周りで皮膚に接着されるかさもなければ固定され、さらに、必要に応じて、創傷の周縁の周りにおける液密な封止部の中の定位置に創傷ドレッシングを保持するのに充分である程度まで(例えば、弾性の包帯、ストッキングで)圧縮力を加える。
【0076】
このような手段は、それぞれドレッシングの他の構成要素、とりわけ裏張層と一体であってもよい。これに代えて、このような手段は、例えば接着性フィルムで、ドレッシングに永久に取り付けられるかあるいは取り外し可能に取り付けられてもよく、または、これらの構成要素は、互いに嵌まり合うベルクロ(Velcro(登録商標))、押しロック、スナップロックあるいはひねりロックであってもよい。
【0077】
この手段およびドレッシングは、互いに永久に取り付けられていない別々の構造体であってよい。
【0078】
創傷に対するより高い正圧についてのいっそう適切なレイアウトでは、堅いフランジあるいはリップが、先に画成されたような創傷ドレッシングの裏張層における近位面の周縁の周りに広がっている。
【0079】
このフランジあるいはリップは、周縁の溝あるいは導管を画成するために、その近位面において凹形のものである。
【0080】
それは、フランジあるいはリップを通過して溝あるいは導管に連通する吸引出口を有しており、また、真空のポンプあるいは管備品のような真空供給装置に接続されていてもよい。
【0081】
裏張層は、その近位面の周りに広がっているフランジあるいはリップと一体であってもよく、あるいは、例えばヒートシール処理によってフランジあるいはリップに取り付けられていてもよい。
【0082】
創傷を覆って、必要とされる相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成するために、また、装置の使用時に創傷ドレッシングの創傷対向面における周縁の下方の灌注流体および/または滲出物の通過を防止するために、ドレッシングは創傷の周りの皮膚に配置される。
【0083】
次いで、この装置には、フランジあるいはリップの内側へ真空処理が施され、従って、創傷の周りにおける周縁箇所で、創傷における正圧に抗する封止部あるいは閉鎖部が形成されるとともに維持される。
【0084】
前記の取付手段と、創傷の周りにおける周縁箇所で創傷における正圧あるいは負圧に抗する創傷を覆う封止部あるいは閉鎖部を形成しかつ維持する手段とのすべてに対して、創傷ドレッシング封止用周縁は、楕円形および特定の円形のようなほぼ丸い形状のものであるのが好ましい。
【0085】
創傷を覆って、かつ、入口管および出口管が創傷対向面を貫通しかつ/または創傷対向面の下方を通る箇所で入口管および出口管の周りに、相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成するために、裏張層は、これらの他の構成要素と一体であってもよい。
【0086】
これらの構成要素は、互いに嵌まり合う押しロック、スナップロックあるいはひねりロックであってもよく、または、互いに接合されるかヒートシール処理されていてもよい。
【0087】
その入口管あるいはそれぞれの入口管およびその出口管あるいはそれぞれの出口管は、流体再循環管および/または流体供給管(場合によっては、あるいは必要に応じて、管あるいはホースを介する)あるいは、流体再循環管および/または流体供給管(場合によっては、あるいは必要に応じて、供給と再循環との流れ切換手段を介する)あるいは流体排出管の接続端部に雄部材としてそれぞれ接続されるノズル、穴、開口、オリフィス、ルアー、長穴あるいは口の接続端部に雌部材としてそれぞれ接続される漏斗、穴、開口、オリフィス、ルアー、長穴あるいは口のような開き口の形態にあってもよい。
【0088】
ここで、これらの構成要素が一体であるときには、それらは同じ材料から作られているのが普通である(先に列挙された材料がとりわけ適切であるということはわかるであろう)。
【0089】
ここで、代わりに、それらが押しロック、スナップロックあるいはひねりロックの嵌合体であるときには、それらは同じ材料から作られていてもよく、あるいは異なる材料から作られていてもよい。いずれの場合にも、先に列挙された材料はすべての構成要素についてとりわけ適切な材料である。
【0090】
その管あるいはそれぞれの管は、裏張層の下方を通るのではなく、裏張層をほぼ貫通する。そのような場合には、裏張層には、その管あるいはそれぞれの管とその接続管あるいはそれぞれの接続管との実質的な遊び、あるいは圧力下におけるあらゆる方向への変形に耐えるために、硬くかつ/または弾性的に柔軟でないかあるいは曲がらない区域がたいてい備わっている。
【0091】
この区域は、関連したそれぞれの管あるいはホース、あるいは流体再循環管および/または流体供給管あるいは流体排出管の接続端部に接続されるノズル、穴、開口、オリフィス、ルアー、長穴あるいは口の周りで遠位へ(創傷から外側へ)突出する隆起によって、堅くされ、補強され、さもなければ強化されていることが多い。
【0092】
これに代えて、あるいはこれに加えて、適切な場合には、裏張層には、裏張層を堅くし、補強し、さもなければ強化するために、裏張層の近位面の周りに広がる堅いフランジあるいはリップが備わっている。
【0093】
創傷ドレッシングには、使用時に創傷における裏張層の下方に完全体が備わっていなくてもよい。
【0094】
しかしながら、このことは、創傷を実際的な速度で灌注するために充分な機能的表面区域にわたって灌注流体を供給する系を提供しないかもしれない。創傷治癒に有害である物質の濃度が相対的に高い、とりわけ慢性的創傷の透析法の使用に適切であるために、創傷灌注流体および/または創傷滲出物がいっそう均一に供給される系を提供すること、あるいは、創傷底を覆ってドレッシングの下方にいっそう複雑な通路を通すことは、有利であろう。
【0095】
従って、ドレッシングの1つの形態では、入口側マニホールドから創傷底まで放射状に広がって開き口で終わり、かつ、開き口を介して創傷底へ循環流体を供給する「樹木」形態の管あるいは細管が設けられている。同じように、細管が放射状に広がって創傷底まで延びて開口で終わり、かつ、創傷底から流体を直接放射する出口側マニホールドがある。
【0096】
管などは、使用時に、それぞれ入口側マニホールドあるいは出口側マニホールドから創傷を貫通して規則正しく放射状に広がっていてもよく、あるいは不規則に放射状に広がっていてもよいが、規則正しい方が好ましい。より深い創傷についてのいっそう適切なレイアウトは、管などが半球状かつ同心状に創傷底まで放射状に広がっているものである。
【0097】
より浅い創傷については、管などのそのようなレイアウトについての適切な形態の例には、管などが偏平半楕円状かつ同心状に創傷底まで放射状に広がっているものが含まれる。
【0098】
管などのレイアウトについての他の適切な形態には、入口管および/または出口管が裏張層の創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通り創傷底を覆って延びる箇所で、入口管および/または出口管から延びている管あるいは細管が備わっているものが含まれる。これらには、管などに沿った小穴、開き口、穴、開口、オリフィス、切れ込みあるいは長穴が設けられた止まり穴があってもよい。
【0099】
従って、これらの管などによって、循環流体を創傷底あるいは出口管へ直接供給しあるいはその流体を創傷からそれぞれ直接捕集する入口側マニホールドが効果的に形成される。
【0100】
入口側マニホールドは、裏張層の下方で創傷底の大部分を覆って、管、細管などにおける穴、開口、オリフィス、切れ込みあるいは長穴を介して形成される。
【0101】
管あるいは細管は、創傷および創傷ドレッシングの内部に対して良好な適合性があって弾性的に柔軟である構造体、例えばゴム弾性のある構造体、好ましくは柔軟な構造体であるのが望ましい。
【0102】
治療がこのように施されるときには、管、細管などのレイアウトは創傷の深さおよび/または容積に左右されるであろう。
【0103】
従って、より浅い創傷については、管、細管などのそのようなレイアウトの適切な形態の例には、渦巻状にされた1つ以上の管などから基本的に構成されているものが含まれる。
【0104】
治療がこのように施されるときの、より深い創傷についてのいっそう適切なレイアウトは、らせん状あるいは渦巻らせん状にされた1つ以上の管などから構成されているものであってもよい。
【0105】
より浅い創傷についての他の適切なレイアウトには、ドレッシングが使用されるときに創傷に流体を循環させる、止まり穴が穿孔された入口側マニホールドあるいは出口側マニホールドのあるものが含まれる。
【0106】
これらの一方あるいは双方はそのような形態であってよく、他方は例えば止まり穴が穿孔された1つ以上のまっすぐな放射状の管あるいはノズルであってよい。
【0107】
別の適切なレイアウトは、入口管あるいは入口細管および/または出口管あるいは出口細管をそれぞれ通して、循環流体を創傷底へ直接供給しあるいは循環流体を創傷から直接捕集する入口側マニホールドおよび/または出口側マニホールドを備え、入口側マニホールドおよび/または出口側マニホールドは、互いに積層状に永久に接合されたいくつかの層における長穴によって形成され、入口管あるいは入口細管および/または出口管あるいは出口細管は、互いに積層状に永久に接合されたいくつかの層を貫通する開き口によって形成されている。(図10aには、非限定的であるが、そのような積層体の分解斜視図が示されている。)
【0108】
この明細書で言及されたように、施された裏張層は、この治療系に適していて創傷へ50%大気圧までの、普通は25%大気圧までの正圧あるいは負圧を加える任意のものであればよい。
【0109】
従って、裏張層は、微生物不透過性のフィルム、シートあるいは膜であることが多く、実質的に偏平で、その上における圧力差に左右され、たいていは従来の創傷ドレッシングに使用されたフィルムあるいはシートと同じような(ほぼ均一の)厚さ、すなわち、最大100ミクロン、好ましくは最大50ミクロン、より好ましくは最大25ミクロンで、最小厚さが10ミクロンのものである。
【0110】
裏張層には、互いに一体でない他の構成要素どうしの実質的な遊びに耐えるために、硬くかつ/または弾性的に柔軟でないかあるいは曲がらない区域がたいてい備わっており、また、裏張層は、例えば突出状隆起によって、堅くされ、補強され、さもなければ強化されていてもよい。
【0111】
このような形態のドレッシングは、創傷底に対して極めて適合性があるというものではないであろうし、また、裏張層と裏張層の下方の創傷底とによって画成されたチャンバー、くぼみあるいは空洞を効果的に形成するものであろう。
【0112】
創傷ドレッシングの内部は、強滲出状態にある創傷についても創傷底に対する適合性があるのが望ましいであろう。従って、ドレッシングの1つの形態は、裏張層の下方に創傷詰物が設けられているものである。
【0113】
この創傷詰物は、創傷の形状に対して良好な適合性があって弾性的に柔軟である構造体、例えばゴム弾性のある構造体、好ましくは柔軟な構造体であるのが望ましい。
【0114】
創傷詰物は、それ自体の弾性によって裏張層へ押し付けられて、創傷底へ適度な圧力を加える。
【0115】
創傷詰物は、ドレッシングの他の構成要素、とりわけ裏張層と一体であってもよい。
【0116】
これに代えて、創傷詰物は、必要とされる、創傷を覆う相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部が壊れないように、例えば接着性フィルムで、あるいは近位面から広がっているフランジあるいはリップへのヒートシール処理によって、それら/それに永久に接合されてもよい。
【0117】
あまり一般的ではないが、創傷詰物は、例えば接着性フィルムで裏張層へ取り外し可能に取り付けられていてもよく、あるいは、これらの構成要素は、互いに嵌まり合う押しロック、スナップロックあるいはひねりロックであってもよい。
【0118】
創傷詰物および裏張層は、互いに永久に接合されていない別々の構造体であってもよい。
【0119】
創傷詰物は、創傷の形状に対して良好な適合性があって弾性的に柔軟である構造体、例えばゴム弾性のある構造体、好ましくは柔軟な構造体であるのが好ましい、中実の完全体であっても、中実の完全体を備えているものであってもよい。
【0120】
このような創傷詰物の適切な例は、適切な材料、例えば弾性のある熱可塑性プラスチックから形成された発泡体である。この創傷ドレッシングについての好ましい材料には、小さい開き口すなわち微細孔のある濾過用の網状化発泡ポリウレタン発泡体が含まれる。
【0121】
これに代えて、あるいはこれに加えて、創傷詰物は、創傷詰物を創傷の形状に押し付ける流体あるいは固体で満たされたバッグ、チャンバー、パウチあるいは他の構造体のような、フィルム、シートあるいは膜によって画成された適合性のある1つ以上の中空体の形状にあってもよく、そのような中空体からなるものであってもよい。
【0122】
このフィルム、シートあるいは膜には、従来の創傷ドレッシングの裏張層に使用されたフィルムあるいはシートの厚さと同じような(ほぼ均一な)厚さがあることが多い。
【0123】
すなわち、このフィルム、シートあるいは膜は、厚さが最大100ミクロン、好ましくは最大50ミクロン、より好ましくは最大25ミクロンで、最小厚さが10ミクロンであり、弾性的に柔軟であり、例えばゴム弾性があり、好ましくは柔軟である。
【0124】
このような詰物は、ドレッシングの他の構成要素、とりわけ裏張層と一体であってもよく、または、例えば接着性フィルムであるいはフランジへのヒートシール処理によって、それら/それに永久に接合されてもよい。
【0125】
フィルム、シートあるいは膜によって画成された中空体に含有された適切な流体の例には、大気圧を超える小さい正圧の空気、窒素およびアルゴンのような気体、より一般的には空気と、水や生理食塩水のような液体とが含まれる。
【0126】
これらの例には、シリコーンゲル、例えばキャビケア(CaviCare)(登録商標)ゲル、あるいは、好ましくはセルロースゲル、例えばイントラジット(Intrasite)(登録商標)架橋物質のような親水性架橋セルロースゲルも含まれる。これらの例には、エアゾール系の気体相が、空気または、窒素あるいはアルゴンのような不活性気体であり、より一般的には、大気圧を超える小さい正圧の空気であるエアゾール発泡体と、プラスチック小片のような固体粒子とが含まれる。
【0127】
当然のことであるが、裏張層が充分に適合性のあるものであり、かつ/または、例えば上向き皿状のシートであれば、裏張層は、創傷詰物の上方でなく下方に存在するであろう。
【0128】
この種のレイアウトでは、創傷詰物が創傷ドレッシングを創傷底へ押し付けるように、創傷詰物は、創傷の周りの皮膚にしっかりと接合するかさもなければ取り外し可能に取り付けなければならない。このことは、創傷詰物および裏張層が互いに永久に取り付けられていない別々の構造体であるような実施形態では重要である。
【0129】
より深い創傷についてのこのようなレイアウトでは、治療がこのように施されるときに、そのような取り付けの手段によっても、創傷を覆って封止部あるいは閉鎖部が形成されるとともに維持される。
【0130】
詰物が裏張層の上方にあり、流体の入口管および出口管が裏張層の創傷対向面を貫通するときには、それらは、裏張層を覆って創傷詰物を通ってあるいは創傷詰物の周りに延びる。
【0131】
ドレッシングの1つの形態では、裏張層の下方に創傷詰物が設けられているが、その詰物は、開き口、穴、開口、オリフィス、切れ込みあるいは長穴のあるバッグ、チャンバー、パウチ、あるいは他の構造体、または、管、細管あるいはノズルのような、フィルム、シートあるいは膜によって画成された、弾性的に柔軟であり、例えばゴム弾性があり、好ましくは柔軟な中空体であるか、またはそのような中空体からなっている。この詰物は、少なくとも1つの開き口、穴、開口、オリフィス、切れ込みあるいは長穴によって、少なくとも1つの入口管あるいは出口管に連通している。
【0132】
従って、中空体に収容された流体は、この装置における循環流体である。
【0133】
そして、中空体あるいはそれぞれの中空体には、循環流体を創傷底へ直接供給し、あるいはその流体を穴、開口、オリフィス、切れ込みあるいは長穴によって、またはフィルム、シートあるいは膜の形態にある管あるいはホースによって、それぞれ創傷から直接捕集する入口側マニホールドあるいは出口側マニホールドが効果的に形成されている。
【0134】
治療がこのように施されると、詰物の種類もまた、創傷の深さおよび/または容積に大きく左右される。
【0135】
従って、より浅い創傷については、創傷ドレッシングの構成要素としての適切な創傷詰物の例には、循環流体を創傷底へ直接供給しあるいはその流体を創傷から直接捕集する入口側マニホールドあるいは出口側マニホールドを画成する1つ以上の適合性中空体から基本的に構成されているものが含まれる。
【0136】
治療がこのように施されるときの、より深い創傷についてのいっそう適切な創傷詰物は、例えばポリマー製のフィルム、シートあるいは膜によって画成されて中実状完全体を少なくとも部分的に包囲する1つ以上の適合性中空体が備わっているものであってよい。この創傷詰物には、取り扱いに都合がよいいっそう良好な剛性のある系が設けられてもよい。
【0137】
入口管および出口管が創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る箇所で、裏張層の下方における創傷詰物が、入口管と出口管とを直接接続する入口側マニホールドあるいは出口側マニホールドを効果的に形成することなく、また、創傷底が存在しているときには、創傷底の吸引かつ/または灌注を引き起こすために、1つ以上の穴、溝、導管、通路、管、細管および/または空間などにとっては、入口管および出口管が流体の裏張層の下方における創傷詰物を貫通してあるいはその周りで裏張層の創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る箇所から延びているのが好ましい。
【0138】
あまり一般的ではないが、創傷詰物は、裏張層の下方における創傷詰物を通るそのような穴、溝、導管、通路および/または空間を形成することのできる微細孔がある連続気泡発泡体であってもよい。
【0139】
詰物が、例えばポリマー製のフィルム、シートあるいは膜によって画成された1つ以上の適合性中空体であるかあるいはそのような中空体からなっているときには、詰物には、流体を創傷ドレッシングの下方における創傷底へ流入させる手段が設けられていてもよい。
【0140】
これらは、流体の入口管および出口管が裏張層の下方における創傷詰物を貫通してあるいはその周りで裏張層の創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る箇所から延びている管、細管あるいはノズルの形態にあってもよい。
【0141】
ドレッシングが使用されるときに創傷における流体を循環させる、先に説明された、止まり穴が穿孔された入口側マニホールドあるいは出口側マニホールドが備わっている、より浅い創傷についての適切なレイアウトのすべては、裏張層の下方における創傷詰物の下方で使用することができる。
【0142】
要するに、適切なレイアウトには、一方あるいは双方のマニホールドが環状あるいはドーナツ状(例えば楕円形あるいは円形のような規則的形状、または不規則的形状)であって、場合によっては、その環あるいはドーナツ部から分岐している、止まり穴が穿孔された放射状の管あるいはノズルが備わり、かつ/または、曲折状の、蛇行状の、曲がりくねった、ジグザグ状の、曲がったあるいは犂耕体状(すなわち、犂で耕された溝のような)のパターンにあり、または、互いに積層状に接合された層における長穴によってかつその層を貫通する開き口によって画成されているものが含まれる。
【0143】
入口管および/または出口管、流体循環管および流体供給管などは、従来の種類のもの、例えば断面形状が楕円形あるいは円形のものであってもよく、また、それらの全長にわたる均一な円筒状の穴、溝、導管あるいは通路を適切に備えたものであってもよい。
【0144】
灌注流体および/または創傷からの創傷滲出物における所望の流体容積の流速と、再循環における所望の量とに左右されるが、穴の最大断面寸法は適切には、大きい胴の創傷に対しては10mmまでであり、また、手足の創傷に対しては2mmまでである。
【0145】
管壁は、とりわけ、再循環の際における灌注流体および/または創傷からの創傷滲出物の容積が、創傷滲出物および/または選択透過可能な完全体、例えば透析ユニットのような二相系のポリマー製のフィルム、シートあるいは膜を通る洗浄流体からの流体の連続的添加によって増大するときには、そこに加わる正圧あるいは負圧に耐えることができるように適度に厚くなければならない。しかしながら、以下でポンプに関して述べるように、このような管の主要な目的は、圧力容器として作用するのではなく、灌注流体および滲出物を装置の流路の長さにわたって送ることである。管壁は好ましくは、少なくとも25ミクロンの厚さがあればよい。
【0146】
管など、あるいはその中空体またはそれぞれの中空体に沿ったくり穴あるいは任意の小穴、開き口、穴、開口、オリフィス、切れ込みあるいは長穴は、小さい断面寸法であってよい。
【0147】
そして、これらは、細胞残屑および微生物が含まれる微粒子に対する巨視的フィルターおよび/または微視的フィルターを効果的に形成し、一方で蛋白質および栄養素を通過させる。
【0148】
中実の完全体であるかかつ/または1つ以上の弾性的に柔軟なあるいは適合性のある中空体である詰物を貫通しかつ/またはその周りを通るそのような管あるいはホースなどは、入口管および出口管とともにこれ以降にさらに詳しく説明される。
【0149】
創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置の全長は、使用時に創傷ドレッシングが創傷を覆うときには、微生物不透過性でなければならない。
【0150】
創傷ドレッシングとこの発明の創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置の内部とは無菌であるのが望ましい。
【0151】
流体は、流体貯蔵器および/または流体洗浄手段が含まれる流体が再循環する系の残り部分において、紫外線のガンマ線照射あるいは電子ビーム照射によって殺菌することができる。この方法によればとりわけ、内部表面と殺菌剤が含まれる流体との接触が減少するかあるいはなくなる。
【0152】
流体の滅菌に関する他の方法の例には例えば、微生物に対して選択的に不透過性である、最大断面寸法が例えば0.22〜0.45ミクロンである微細な開き口あるいは微細なくり穴による限外濾過法と、クロルヘキシジンおよびポビドンヨードのような化学物質の溶液、銀塩例えば硝酸銀のような金属イオン源、および過酸化水素によるような流体殺菌法との使用も含まれるが、後者には、内部表面と殺菌剤が含まれる流体との接触が含まれる。
【0153】
創傷ドレッシングの内部、流体が再循環する系の残り部分、および/または創傷底は、創傷が強滲出状態にあるときでさえ、流体が流体貯蔵器の中で殺菌された後は滅菌状態に維持されているのが好ましく、または、少なくとも自然に起きる微生物成長が抑制されるのが好ましい。
【0154】
従って、この観点で潜在的に有益であるかあるいは実際に有益である物質は、初めに灌注流体に添加することができ、また、その量は必要に応じて再循環の際に連続的添加によって増やすことができる。
【0155】
このような物質の例には、抗菌剤(それらのいくつかは先に列挙されている)および抗真菌剤が含まれる。
【0156】
これらのうち特に適しているのは例えば、トリクロサン、ヨウ素、メトロニダゾール、セトリミド、酢酸クロルヘキシジン、ウンデシレン酸ナトリウム、クロルヘキシジンおよびヨウ素である。
【0157】
二水素リン酸カリウム/一水素リン酸2ナトリウムのような緩衝剤は、pHを調整するために添加することができ、リドカイン/リグノカイン塩酸塩、キシロカイン(アドレナリン、リドカイン)のような局所麻酔薬/局所麻酔剤、および/または抗炎症剤は、創傷の痛みまたはドレッシングに関連した炎症あるいは痛みを緩和するために添加することができる。
【0158】
創傷治癒に有益である滲出物の生理活性成分が流体洗浄の実行の前あるいは後に除去されない系を設けることも望ましい。この成分は、例えば成長因子などの蛋白質のような、創傷治癒の促進に有益である物質の例えば受動沈殿によって生じるであろう。
【0159】
この成分は、流路における任意の箇所、例えば少なくとも入口管および出口管の中で生じるであろう。
【0160】
創傷治癒の促進に有益である物質の沈殿は、以下のように有効である。
a)過剰な物質を灌注流体に初めに添加し、必要に応じて再循環の量を連続的添加によって増やすことができ、または
b)忌避薬のコーティングを、流体に直接接触する再循環通路における任意の箇所あるいは任意の完全体、例えば流体洗浄手段かあるいは所望の管で使用することができる。
【0161】
循環流体が通過する表面についてのコーティング物質の例には、成長因子、酵素および他の蛋白質や誘導体について有用である、ヘパリンのような抗凝血剤と、PTFEおよびポリアミドのような高表面張力物質とが含まれる。
【0162】
この発明に係る創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置には、流体貯蔵器への流体供給管の形態にあり、創傷ドレッシングの下方における創傷へ流体を直接あるいは間接的に流入させる手段が設けられている。
【0163】
この流体貯蔵器は、任意の従来型のもの、例えば灌注流体を収容することのできる、例えばポリマーフィルムからなる管、バッグ(このようなバッグは、典型的には血液あるいは血液製剤、例えば血漿のために、または、例えば栄養素の注入送り込みのために使用される)、チャンバー、パウチあるいは他の構造体であってよい。
【0164】
この貯蔵器は、普通は従来の創傷ドレッシングの裏張層に使用されたフィルムあるいはシートの厚さと同じような(ほぼ均一な)厚さ、すなわち、最大100ミクロンまでの、好ましくは最大50ミクロンまでの、いっそう好ましくは最大25ミクロンまでの、そして最小10ミクロンの厚さがあるフィルム、シートあるいは膜から作ることができ、たいていは弾性的に柔軟であり、例えばゴム弾性があり、好ましくは柔軟な中空体である。
【0165】
この装置のすべての実施形態では、この発明に係る創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置の全体にわたる管と流体貯蔵器との型式および材料は、それらの機能によって大きく左右される。
【0166】
特に長期にわたる時間尺度での使用に適しているためには、その材料は、無毒で生体適合性があり、適切な場合には、この装置の流路における、また、この装置における循環流体の中へ移動する透析液の二相系透析ユニットの使用の際における流体貯蔵器からの流体および/または創傷滲出物の活性成分に対して不活性でなければならない。
【0167】
灌注流体と接触するときには、この装置の使用に際して、その材料は、かなりの量の抽出溶剤を装置の外側へ自由に拡散させるべきではない。
【0168】
その材料は、紫外線のガンマ線照射あるいは電子ビーム照射によって、かつ/または、使用時に流体・微生物不透過性であって軟性である化学物質の溶液のような流体殺菌剤によって、殺菌することのできるものであるべきである。
【0169】
流体貯蔵器についての適切な材料の例には、ポリエチレンなどのポリオレフィンのような合成ポリマー材料、例えば、高密度ポリエチレンおよび高密度ポリプロピレンが含まれる。
【0170】
この目的のために適した材料には、そのコポリマー、例えば酢酸ビニルおよびその混合物のあるものも含まれる。この目的のために適した材料には、医療級のポリ塩化ビニルがさらに含まれる。
【0171】
そのようなポリマー材料にもかかわらず、流体貯蔵器には、それと互いに一体でない他の構成要素との実質的な遊びに耐えるために、硬くかつ/または弾性的に柔軟でないかあるいは曲がらない区域がたいてい備わっており、また、裏張層は、例えば突出状隆起によって、堅くされ、補強され、さもなければ強化されていてもよい。
【0172】
創傷を通して流体を移動させる装置および流体を洗浄する手段は、この目的のために適切なものであり、また、この目的のために適切な箇所で作用するものである。
【0173】
それは、その主要目的が創傷に正圧あるいは負圧を加えることではなく流体(流体貯蔵器からの灌注流体および/または創傷滲出物)を装置の流路の全長にわたって移動させることであるものの、創傷に正圧あるいは負圧を加えるものであってもよい。
【0174】
それが、創傷ドレッシングの上流側にあってそこへ向かう流体再循環管の中における再循環中の流体に、かつ/または創傷ドレッシングへ向かう流体供給管の中における流体に(場合によっては、あるいは必要に応じて、供給と再循環との流体切換手段によって)適用されると、創傷底にはたいてい正圧(すなわち大気圧を超える圧力)が加わるであろう。
【0175】
たいてい、流体洗浄手段は(その目的に対して最も好ましくは)、創傷ドレッシングの下流側にあり、流路に最も高い抵抗力をもたらす。このことは、流体洗浄手段が単相系であり、例えば微細な開き口あるいは微細なくり穴による限外濾過によって、創傷へ正圧をより多く加える場合に、特に顕著である。
【0176】
この装置が、流体再循環管の中における再循環中の流体および/または創傷ドレッシングの下流側にあってそこから離れている流体排出管の中における流体に適用されると、創傷底には普通は負圧(すなわち大気圧未満の圧力あるいは真空)が加わるであろう。
【0177】
この場合もやはり、たいてい、流体洗浄手段は(その目的に対して最も好ましくは)、創傷ドレッシングの下流側にあり、流路に最も高い抵抗力をもたらして、創傷へ負圧を多く加える。
【0178】
次のような種類のポンプを要望に応じて使用することができる。
シャトルポンプ :流体を1分間に2〜50mlの速度で移動させる揺動シャト ル機構がある
ダイアフラムポンプ :1つあるいは2つの柔軟性ダイアフラムの脈動によって液体 が変位し、チェックバルブによって流体の流れの方向が調節さ れる
ピストンポンプ :ピストンによりチェックバルブを通して流体が汲み上げら れ、とりわけ創傷底へ正圧および/または負圧が加えられる
のような往復ポンプ、
遠心ポンプ
柔軟性インペラーポンプ :ゴム弾性のあるインペラーがあり、インペラーブレー ドと成形されたハウジングとの間の流体を阻止し、ポン プハウジングを通して流体を洗い流す
前進性キャビティポンプ :協働するスクリューローターとステーターとがあり、 とりわけ、より高い粘度と微粒子で満たされた滲出物の ためのもの
ロータリーベーンポンプ :駆動軸に取り付けられ、そのスピンのような脈動によ ることなく流体を移動させる羽根付きディスクがある。 出力はポンプを損傷することなく制限することができる
蠕動ポンプ :ローターアームに周縁ローラーがあり、柔軟な流体再 循環管に作用して管の中における流体をローターの方向 へ押す
真空ポンプ :圧力調整器がある
のような回転ポンプ。
【0179】
この装置の型式および/または容量は、
創傷治癒過程の最適特性についての
a) 灌注流体および/または創傷からの創傷滲出物における適切なあるいは所望の流体容積の流速と、
b) 創傷底へ正圧あるいは負圧を加えることが適切であるかどうかあるいは望まれているかどうかということと、創傷底ヘのそのような圧力の大きさと
によって、また、携帯性、消費電力、および汚染からの隔離のような諸因子によって、大きく左右されるであろう。
【0180】
このような装置はまた、パルス式、連続式、可変式、可逆式および/または自動化されかつ/またはプログラム可能な流体移動のできるものであるのが好ましい。
【0181】
実際には、強滲出状態にある創傷からの場合でさえも、そのような滲出物の流れの速度は、最大で75マイクロリットル/cm2/時間(ここでcm2は創傷の面積である)の程度に過ぎず、流体には(プロテアーゼが存在するために)大きい可動性がある。創傷が治癒するにつれて、滲出物の体液濃度は低下し、粘度は例えば同じ創傷についての水準である12.5〜25マイクロリットル/cm2/時間まで変化する
【0182】
創傷治癒に有害である物質が透析ユニットのような二相系(以下を参照)によって除去されると、流体も流体洗浄手段によって系へ失われるおそれがある。
【0183】
このことは、創傷治癒に有害である物質に加えて、水も透過させることのできる例えば透析用のポリマー製フィルム、シートあるいは膜によって起きることがある。
【0184】
従って、再循環中の流体の均衡は、さらに減少するかも知れないが、このような望ましくない損失を先に説明されたような通常の方法で最小限にするために、調整することができる。
【0185】
それゆえに、創傷からの循環流体には流体貯蔵器からの再循環の際に創傷滲出物を覆う多量の灌注流体が含まれているのが普通である、ことがわかるであろう。
【0186】
従って、この観点で、この装置の型式および/または容量は、創傷からの滲出物の適切なあるいは所望の流体容積の流速ではなく、灌注流体のそれに大きく左右されるであろう。
【0187】
実際には、灌注流体および/または創傷滲出物のそのような流速は、1〜1000ml/cm2/24時間の程度、例えば、3〜300ml/cm2/24時間、あまり好ましくはないが1〜10ml/cm2/24時間であり、ここでcm2は創傷の面積である。
【0188】
再循環中の灌注流体および/または創傷滲出物の体積は、広い範囲で変化するが、治療がこのようにして施されるときには、典型的には、例えば1〜8l(例えば大きい胴の創傷に対して)、200〜1500ml(例えば腋窩の創傷および鼠径部の創傷に対して)、そして手足の創傷に対しては0.3〜300mlである。
【0189】
実際には、適切な圧力は、創傷底における正圧あるいは負圧が10%大気圧であるような最大で25%大気圧の程度であり、この装置は閉鎖された再循環系として作用する。
【0190】
これらの範囲の上限は病院用にいっそう適しているかもしれず、ここで、相対的に高い%圧力および/または真空は専門家の監督下で安全に使用される。
【0191】
下限は家庭用あるいは野戦病院用にいっそう適しているかもしれず、前者では、相対的に高い%圧力および/または真空は専門家の監督によらないと安全に使用することができない。
【0192】
この装置は、蠕動ポンプあるいはダイアフラムポンプであってもよく、例えば、小型携帯用のダイアフラムポンプあるいは蠕動ポンプが好ましい。これらは、特にポンプの内部表面および可動部分と(慢性的な)創傷滲出物との接触を減少させるかあるいは排除し、かつ、洗浄を容易にするためには、好ましい型式のポンプである。
【0193】
この装置は創傷および/または流体洗浄手段へ正圧を加えるものであるのが好ましい。加えられた圧力が正であるときに好ましいポンプは、蠕動ポンプであり、例えば、流体洗浄手段の上流側に備え付けられた小型携帯用蠕動ポンプである。
【0194】
ポンプが蠕動ポンプであるときには、これは、流速が0.2〜180ml/時間であり、重量が0.5kg未満であるインステックモデル(Instech Model)P720小型蠕動ポンプであってよい。これはおそらく家庭用および野戦病院用に有用であろう。
【0195】
このポンプは創傷および/または流体洗浄手段へ負圧を加えるものであるのが好ましい。加えられた圧力が負であるときに好ましいポンプは、ダイアフラムポンプであり、例えば、ドレッシングあるいは流体洗浄手段の下流側に備え付けられた小型携帯用ダイアフラムポンプである。
【0196】
ポンプが蠕動ポンプであり、好ましくは小型携帯用ダイアフラムポンプであるときには、液体を変位させる1つまたは2つの柔軟性ダイアフラムはそれぞれ、脈動を作り出す手段に連結された、例えばポリマー製のフィルム、シートあるいは膜であってもよい。これは、とりわけ圧電変換器、ソレノイドあるいは強磁性完全体の芯および電流の流れ方向が変化するコイル、ロータリーカムおよび従動子などとして都合のよい任意の形態に設けることができる。
【0197】
ドレッシングからの流出物は、創傷治癒に有害である物質の除去のための流体洗浄手段へ流れ、次いで流体再循環管へ流れる。
【0198】
この発明に係る創傷の吸引、灌注および洗浄用装置には、
a) 限外濾過ユニットあるいは化学吸収ユニットおよび/または化学吸着ユニットのような 単相系、または
b) 透析ユニットあるいは二相性抽出ユニットのような二相系
であってよい流体洗浄手段が設けられている。
【0199】
前者において、創傷および流体貯蔵器からの循環流体は、創傷治癒に有害である物質が除去され、かつ、創傷治癒の促進に有益である物質を依然として包含している洗浄ずみ流体が創傷へ戻される自己完結型の系を通過する。
【0200】
単相系は任意の従来型のものであってもよい。
【0201】
このような系における流体洗浄手段の例には、1つ以上の巨視的フィルターおよび/または微視的フィルターを適切に備えているマクロ濾過ユニットあるいはミクロ濾過ユニットが含まれる。
【0202】
これらは、粒子、例えば細胞残屑および微生物を保持し、蛋白質および栄養素を通過させるためのものである。
【0203】
代わりのものとして、これらには、洗浄用完全体が創傷治癒に有害である物質に対するフィルター、例えば高処理能力があり、低い蛋白質結合力があり、除去される創傷治癒に有害である物質を選択的に透過せず、創傷治癒の促進に有益である物質を依然として含有している洗浄ずみ流体が通過するようなポリマー製のフィルム、シートあるいは膜であるような限外濾過ユニットも含まれている。
【0204】
この膜は、酢酸セルロース−硝酸エステル混合物、ポリ塩化ビニリデン、および例えば親水性ポリウレタンのような親水性ポリマー材料から作られているのが好ましい。
【0205】
あまり好ましくない材料の例には、ポリカーボネート、PTFEおよびポリアミドのようなポリエステル、例えば6-6ポリウレタン、6-10ポリウレタンおよび疎水性ポリウレタン、および石英ファイバーならびにグラスファイバーも含有している疎水性材料が含まれる。
【0206】
それには微細な開き口あるいは微細なくり穴があり、その最大断面寸法は、このようにして選択的に除去される種と透過される種とに大きく左右される。
【0207】
前者は、例えば、典型的には20〜700ミクロンの範囲にある最大断面寸法、例えば20〜50nm(例えば望ましくない蛋白質に対して)、50〜100nm、100〜250nm、250〜500nmおよび500〜700nmを有している微細な開き口あるいは微細なくり穴で除去される。
【0208】
フィルター完全体は、いっそう複雑な形態、例えば管、細管などのような細長い構造の形態にあるポリマー材料製の偏平なシートあるいは膜であってよい。
【0209】
この系は、化学吸収ユニット、例えば、ゼオライトのような微粒子、あるいは、例えば官能化されたポリマーからなる層が、創傷および流体貯蔵器からの循環流体を通過させるときに創傷治癒に有害である物質を取り除くことができる部位をその表面に有しているようなものであってよい。
【0210】
これらの物質は、創傷治癒に有害である物質を例えばキレート化剤および/またはイオン交換剤、酵素であってもよい分解剤によって破壊することあるいは結合することで、除去することができる。
【0211】
このようなものの例には、あまり特別なものでない化学吸着ユニットおよび/または化学吸収ユニット、例えば活性化された炭素あるいはゼオライトのような物理吸着剤が、創傷および流体貯蔵器からの循環流体を通過させるときに創傷治癒に有害である物質を取り除くことができる非特定部位をその表面に有しているようなものであってよい。
【0212】
洗浄用完全体、例えばポリマー製のフィルム、シートあるいは他の化学吸収手段および/または化学吸着手段などは、創傷治癒に有害である物質を装置の流路の所定容量についての実際的流速でかつ灌注流体の流速で除去することのできるものでなければならないのはもちろんである。
【0213】
二相系では、創傷および流体貯蔵器からの循環流体は、第2流体(透析液)相、より一般的には液体と間接的に(あるいはあまり一般的ではないが直接)接触する。
【0214】
従って、二相性液体抽出ユニットの1つの形態では、第2流体相は、(通常は)洗浄流体と直接接触して通過する表面の上方でドレッシングからの循環流体と混和しない液体である。創傷治癒に有害である物質は透析液の中へ除去され、また、創傷治癒に有益である物質を依然として含有している洗浄ずみ流体は再循環管を通して創傷底へ戻される。
【0215】
流体洗浄のためのこのような手段の例には、第2流体(透析液)相がパーフルオロデカリンおよび類似物質であるものが含まれる。
【0216】
これに代えて、適切な場合には、それは2つの流体(再循環流体および透析液)が有意に2次元状の完全体、例えば装置における循環流体の中の物質を透過することのできるポリマー製のフィルム、シートあるいは膜あるいは中空の繊維あるいはフィラメントによって隔離される形態に設けることができる。
【0217】
この場合もやはり、創傷治癒に有害である物質は透析液の中へ除去され、また、創傷治癒に有益である物質を依然として含有している洗浄ずみ流体は再循環管を通して創傷底へ戻される。
【0218】
透析ユニットのような二相系が設けられているいずれかの形態では、使用時に、透析液は典型的には、この装置の中における循環流体を越えて並流方向にあるいは好ましくは向流方向に移動する。
【0219】
蠕動ポンプのようなポンプおよび/またはバルブによって、2つの流体の流れ方向が制御される。
【0220】
しかしながら、洗浄流体は、創傷治癒に有害である物質を創傷滲出物から実際的な速度で除去するために系に充分な(動的な)表面積をもたらさないものの、あまり一般的ではないが静的であってもよい。
【0221】
この創傷の吸引、灌注および洗浄用装置における流体洗浄のための透析手段の典型的な透析液流速は、全身治療のための透析ユニットのような通常型二相系において使用されるようなものである。
【0222】
完全体は、全身治療のための透析ユニットのような通常型二相系において使用されるものとたいていは同じ種類で同じ(ほぼ均一な)厚さのフィルム、シートあるいは膜であってもよい。
【0223】
フィルム、シートあるいは膜は、実質的に偏平なものであってもよく、また、それにかかる圧力差に左右されるが、堅くし、補強し、さもなければ強化するために、その上にあるいはその中に他の材料を必要とすることがある。
【0224】
しかしながら、これは、創傷治癒に有害である物質を創傷滲出物から実際的な速度で除去するために系に充分な機能的表面積をもたらさない。
【0225】
創傷治癒に有害である物質の濃度が相対的に高い、とりわけ慢性的創傷の透析法の使用に適切であるために、ポリマー材料からなるフィルム、シートあるいは膜がいっそう複雑な形態にある系を提供することは有利であろう。
【0226】
これは、例えば楕円形および円形のような丸い形状の管、中空の繊維あるいはフィラメント、または細管のような細長い構造の形態にあってもよく、例えば、それらの間に空間がある平行な配列にあってもよい。
【0227】
創傷灌注流体および/または創傷滲出物は内側を通って再循環し、洗浄流体は隣接する管あるいは細管どうしの空間の中へ並流方向にあるいは好ましくは向流方向に流れるか、またはこれらの逆になる。
【0228】
この場合もやはり、創傷治癒に有害である物質は透析液の中へ除去され、また、創傷治癒に有益である物質を依然として含有している洗浄ずみ流体は再循環管を通して創傷底へ戻される。
【0229】
流体洗浄手段が、二相系、例えば透析ユニットあるいは二相性抽出ユニットの形態にあるときには、創傷および流体貯蔵器からの循環流体は、有意に2次元状の完全体、例えば創傷治癒に有害である物質を選択的に透過させることのできるポリマー製のフィルム、シートあるいは膜の一方表面を通過する。
【0230】
これらは、洗浄流体を完全体の他方表面に通過させることによって除去される。この完全体は、創傷治癒に有害である前記物質を選択的に透過させることのできるフィルム、シートあるいは膜であってよい。
【0231】
前記のようなこれらの例には、
遊離基のような酸化剤、例えば過酸化物および超酸化物、
II価鉄およびIII価鉄、
創傷底における酸化ストレスに含まれるすべてのもの、
セリンプロテアーゼ、例えばエラスターゼおよびトロンビン、システインプロテアーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、例えばコラゲナーゼ、およびカルボキシル(酸)プロテアーゼのようなプロテアーゼ、
リポ多糖類のようなエンドトキシン、
ホモセリンラクトン誘導体、例えばオキソアルコール誘導体のような自己誘導物質シグナル分子、
トロンボスポジン-1(TSP-1)、プラスミノゲン・アクチベータ・阻害剤、あるいはアンギオスタチン(プラスミノゲンフラグメント)のような血管形成阻害剤、
腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)およびインターロイキン1ベータ(IL-1β)のような炎症誘発性サイトカイン、
および
リポ多糖類、例えばヒスタミンのような炎症剤
が含まれる。
【0232】
フィルム、シートあるいは膜(典型的には、フィルム、シートあるいは膜によって画成された、先に記載されたような適合性中空体の形態にある)の例には、天然および合成のポリマー材料が含まれる。
【0233】
膜は、セルロース誘導体、例えば再生セルロース、セルロースのモノアセテート、ジアセテートあるいはトリアセテートのようなセルロースのモノエステル、ジエステルあるいはトリエステル、ベンジルセルロースおよびヘモファン、およびこれらの混合物のような1つ以上の親水性ポリマー材料であってよい。
【0234】
他の材料の例には、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトンおよびポリエーテルエーテルケトン、およびこれらのスルホン化誘導体、およびこれらの混合物のような1つ以上の疎水性ポリマー材料が含まれる。
【0235】
他の材料の例には、ポリカーボネートのようなポリエステル、例えば6-6ポリアミド、6-10ポリアミドおよびポリアミド、例えばポリ(メチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリルおよびそのコポリマー、例えばアクリロニトリル−金属スルホン酸ナトリウムのコポリマーを含むポリアクリレート、およびポリ塩化ビニリデンのような疎水性材料が含まれる。
【0236】
この膜のための適切な材料には、ポリエチレン、例えば高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、そのコポリマー、例えば酢酸ビニルとのコポリマーおよびポリビニルアルコール、およびこれらの混合物のような熱可塑性ポリオレフィンが含まれる。
【0237】
この透析膜には、創傷からの除去のために目標とされた創傷治癒に有害である種の選択的灌流をさせるために選ばれた分画分子量(MWCO)がなければならない。例えば、セリンプロテアーゼエラスターゼ(分子量25900ダルトン)の灌流にはMWCOが25900ダルトンよりも大きい膜が必要である。
【0238】
MWCOの限界値は、それぞれの適用を適切にするために1〜3000000ダルトンの間で変えることができる。MWCOは、より大きい競合種による干渉を排除するために、できるだけこの分子量に近いのが好ましい。
【0239】
例えば、MWCOが25900ダルトンよりも大きいような膜では、エラスターゼへの拮抗剤であるアルファ-1-アンチトリプシン(AAT)(分子量54000ダルトン)を創傷流体の外側から透析液の中へ自由に拡散させることができない。慢性的創傷の治癒の促進に有益である阻害剤は、創傷底と接触したままであり、また、その上で有益に作用するが、創傷治癒に有害であるエラスターゼは除去される。
【0240】
この装置のこのような使用は例えば、糖尿病性足部潰瘍のような慢性的創傷、そしてとりわけ褥瘡性圧迫潰瘍における創傷治癒処理に都合がよい。
【0241】
以下で述べるように、膜の透析液側におけるエラスターゼに対する拮抗剤、例えば分解性酵素、あるいは金属イオン封鎖剤は、このプロテアーゼの創傷滲出物からの除去を促進するために使用することができる。
【0242】
創傷治癒に有害である相異なるいくつかの物質を除去することが望ましいときには、それぞれが異なる物質を除去する一連のモジュールの系を設けることは有利であるかもしれない。
【0243】
これによって、不相溶性洗浄物質を同じ流体および/または創傷滲出物に使用することができる。
【0244】
このような任意の系は、灌注流体および/または創傷滲出物を最小の管理で洗浄することができる、自動化され、プログラム可能な従来の系であるのが好ましい。
【0245】
先にいっそう詳しく述べたように、流体は選択透過性完全体を通る洗浄流体から流れる。
【0246】
この完全体は、透析ユニットのような二相系における典型的な透過性のポリマー製フィルム、シートあるいは膜であってよい。
【0247】
さらに、溶質あるいは分散相の種は、透析液から透析用のポリマー製フィルム、シートあるいは膜を通って灌注流体および/または創傷滲出物の中へ流れる。
【0248】
このような特性は、創傷治癒に有益である物質を透析液から灌注流体および/または創傷滲出物の中へ灌流させるために使用することができる。
【0249】
あまり一般的でないこの種の注入送り込みでは、広い範囲の種は透析液から滲出物および/または灌注流体の中へ入るのが普通である。
【0250】
これらには、
炭酸水素イオンのようなイオン種、
創傷底における酸化ストレスを解放するためのアスコルビン酸(ビタミンC)およびビタミンEのようなビタミン、およびこれらの安定誘導体、およびこれらの混合物、
二水素リン酸カリウム/リン酸一水素二ナトリウムのようなpH緩衝剤、
創傷の痛みまたはドレッシングに関連した炎症あるいは痛みを緩和するためのリドカイン/リグノカイン塩酸塩およびキシロカイン(アドレナリン、リドカイン)のような局所麻酔薬/局所麻酔剤および/または抗炎症剤
アミノ酸、糖類、低分子量組織構成単位および微量元素のような創傷細胞の増殖を促進するための栄養素および他の細胞培養培地種、および
空気、窒素、酸素および/または酸化窒素のような気体
が含まれる。
【0251】
この発明の装置における流体洗浄の目的のために、限外濾過ユニットのような単相系および透析ユニットのような二相系の双方には、創傷ドレッシングからの灌注流体および/または創傷滲出物が上方を通るか貫通して次に流体再循環管へ流れる不溶解性のかつ/または固定化された基質に結合された、捕捉状の(化学変化を起こしにくい、不溶解性のかつ/または固定化された)以下のような種があってもよい。
創傷底における酸化ストレスを除去するための、3-ヒドロキシチラミン(ドーパミン) 、アスコルビン酸(ビタミンC)、ビタミンEおよびグルタチオン、およびこれらの安定誘導体、およびこれらの混合物のような酸化防止剤および遊離基捕捉剤、
デスフェリオキサミン(DFO)、3-ヒドロキシチラミン(ドーパミン)のようなIII価鉄キレート化剤(III価鉄は創傷底における酸化ストレスに含まれる)のような遷移金属イオンキレート化剤のような金属イオンキレート化剤および/またはイオン交換剤、
III価鉄還元剤、
TIMPおよびアルファ1-アンチトリプシン(AAT)のようなプロテアーゼ阻害剤、4-(2-アミノエチル)-ベンゼンスルホニルフルオライド(AEBSF、ペファブロック)およびNα-p-トシル-リシンクロロメチルケトン(TLCK)およびε-アミノカプロイル-p-クロロベンジルアミドのようなセリンプロテアーゼ阻害剤、システインプロテアーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、カルボキシル(酸)プロテアーゼ阻害剤、
創傷治癒に有害である酸化還元感受性遺伝子の創傷滲出物の中への発現を引き起こす物質の除去による創傷治癒の促進に潜在的に有益であるかあるいは実際に有益である犠牲的酸化還元物質、
酵素であってもよい自己誘導物質シグナル分子分解剤、および
リポ多糖類、例えばペプチドミメティックス(peptidomimetics)に結合しあるいは分解する抗炎症物質。
【0252】
創傷治癒に有害である滲出物の他の生理活性成分は、このようにして除去してもよい。
【0253】
これらの成分は適切なキレート化剤および/またはイオン交換剤、酵素であってもよい分解剤、あるいは他の種で除去してもよい。
【0254】
以下の種類の官能化された基質には、創傷および流体貯蔵器からの再循環流体をそれらの上方に流す際に創傷治癒に有害である物質を除去することのできる部位が、その表面にある。
不均質樹脂、例えば、
金属捕捉剤、すなわち
3-(ジエチレントリアミノ)プロピル-官能化シリカゲル、
2-(4-(エチレンジアミノ)ベンゼン)エチル-官能化シリカゲル、
3-(メルカプト)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(1-チオウレイド)プロピル-官能化シリカゲル、
トリアミンテトラアセテート-官能化シリカゲル、
あるいは求電子的捕捉剤、すなわち
4-カルボキシブチル-官能化シリカゲル、
4-エチルベンゼンスルホニルクロライド-官能化シリカゲル、
プロピオニルクロライド-官能化シリカゲル、
3-(イソシアノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(チオシアノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(2-無水コハク酸)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(マレイミド)プロピル-官能化シリカゲル、
あるいは求核性捕捉剤、すなわち
3-アミノプロピル-官能化シリカゲル、
3-(エチレンジアミノ)-官能化シリカゲル、
2-(4-(エチレンジアミノ))プロピル-官能化シリカゲル、
3-(ジエチレントリアミノ)プロピル-官能化シリカゲル、
4-エチルベンゼンスルホンアミド-官能化シリカゲル、
2-(4-トルエンスルホニルヒドラジノ)エチル-官能化シリカゲル、
3-(メルカプト)プロピル-官能化シリカゲル、
ジメチルシロキシ-官能化シリカゲル、
あるいは塩基捕捉剤あるいは酸捕捉剤、すなわち
3-(ジメチルアミノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド-[1,2-α] ピリミジノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(1-イミダゾル-1-イル)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(1-モルホリノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(1-ピペラジノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(1-ピペリジノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(4,4’-トリメチルジピペリジノ)プロピル-官能化シリカゲル、
2-(2-ピリジル)エチル-官能化シリカゲル、
3-(トリメチルアンモニウム)プロピル-官能化シリカゲル、
あるいは反応物、すなわち
3-(1-シクロヘキシルカルボジイミド)プロピル-官能化シリカゲル、
TEMPO-官能化シリカゲル、
2-(ジフェニルホスフィノ)エチル-官能化シリカゲル、
2-(3,4-シクロヘキシルジオール)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(グリシドキシ)プロピル-官能化シリカゲル、
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル-官能化シリカゲル、
1-(アリル)メチル-官能化シリカゲル、
4-ブロモプロピル-官能化シリカゲル、
4-ブロモフェニル-官能化シリカゲル、
3-クロロプロピル-官能化シリカゲル、
4-ベンジルクロライド-官能化シリカゲル、
2-(カルボメトキシ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(4-ニトロベンズアミド)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(ウレイド)プロピル-官能化シリカゲル、
または前記のものの任意の組み合わせ
のようなシリカ保持型反応物。
【0255】
創傷ドレッシングからの灌注流体および/または創傷滲出物が上方を通るか貫通する、不溶性のかつ/または固定化された基体に結合された、前記のような捕捉性の(化学変化を起こしにくい、不溶解性のかつ/または固定化された)種は、流体洗浄手段に適したものとして前に説明された。
【0256】
しかしながら、それらは、創傷治癒に有害である物質を創傷から除去するために、たいていはドレッシングの内部に使用されるものの、適切な場合には、灌注流体および/または創傷滲出物に接触する装置の任意の部分にも使用することができる。
【0257】
流体洗浄手段は、適切な場合には、1つ以上の巨視的フィルターおよび/または微視的フィルターをさらに備えていてもよい。
【0258】
これらは、微粒子、例えば細胞残屑および微生物を保持し、蛋白質および栄養素を通過させるためのものである。
【0259】
これに代えて、透析ユニットのような二相系のうちあまり一般的でないもの(前記参照)を流体洗浄手段として使用してもよい。この種類のものでは、透析用のポリマー製フィルム、シートあるいは膜は、創傷治癒に有害である以下のような物質を選択的に透過させることのできる完全体ではない。
セリンプロテアーゼ、例えばエラスターゼおよびトロンビン、システインプロテアーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、例えばコラゲナーゼ、およびカルボキシル(酸)プロテアーゼのようなプロテアーゼ、
リポ多糖類のようなエンドトキシン、
トロンボスポンジン-1(TSP-1)、プラスミノゲン・アクチベータ・阻害剤、あるいはアンギオスタチン(プラスミノゲンフラグメント)のような血管形成阻害剤、
腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)およびインターロイキン1ベータ(IL-1β)のような炎症誘発性サイトカイン、
遊離基のような酸化剤、例えば過酸化物および超酸化物、および
金属イオン、例えばII価鉄およびIII価鉄、創傷底における酸化ストレスに含まれるすべてのもの。
【0260】
しかしながら、創傷からの滲出物および/または灌注流体の成分は、創傷治癒の際にその中へ入りかつそれを貫通するように含まれるのが有利であるものの、より大きい分子あるいはより小さい分子であっても差しつかえないであろう。
【0261】
透析液の中には、あるいは好ましくは、透析液に接触する少なくとも1つの表面がある、流体洗浄手段における1つ以上の中実構造状完全体の中には、例えば酵素あるいは他のものである以下のような種に対する拮抗剤であることによって、創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することのできる1つ以上の物質がある。
4-(2-アミノエチル)-ベンゼンスルホニルフルオライド(AEBSF、ペファブロック)およびNα-p-トシル-L-リシンクロロメチルケトン(TLCK)およびε-アミノカプロイル-p-クロロベンジルアミドのようなセリンプロテアーゼ阻害剤、システインプロテアーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、およびカルボキシル(酸)プロテアーゼ阻害剤、のようなプロテアーゼ阻害剤、
リポ多糖類、例えばペプチドミメティックスを結合しあるいは分解するための抗炎症物質のような結合剤および/または分解剤、
創傷底における酸化ストレスを除去するための、3-ヒドロキシチラミン(ドーパミン) 、アスコルビン酸(ビタミンC)、ビタミンEおよびグルタチオン、およびこれらの安定誘導体、およびこれらの混合物のような酸化防止剤、
デスフェリオキサミン(DFO)、3-ヒドロキシチラミン(ドーパミン)のようなキレート化剤および/またはイオン交換剤。
【0262】
これらには、ペプチド(サイトカイン、例えば、α-アミノ-γ-ブチロラクトンおよびL-ホモカルノシンのような細菌性サイトカインが含まれる)、および創傷治癒の促進に潜在的に有益であるかあるいは実際に有益であるIII価鉄還元剤のような犠牲的酸化還元物質、および/またはグルタチオン酸化還元系のようなこの種の再生可能物質、および他の生理活性成分がさらに含まれる。
【0263】
このようなあまり一般的でない種類の二相系透析ユニットの使用では、広い範囲の種は滲出物から透析液の中へ入るのが普通である。
【0264】
いくつかの(主としてイオン性の)種は、創傷治癒に有害である物質をあまり選択透過させない透析用のポリマー製フィルム、シートあるいは膜を通って、透析液から灌注流体および/または創傷滲出物の中へ流れるであろう。
【0265】
創傷からの滲出物および/または灌注流体はそれを通ってあちらこちらに自由に拡散するであろう。
【0266】
もし(好ましくは)透析液が例えば捕集バッグへ廃棄のために放出されないときには、創傷ドレッシングから「最上位」である透析液と灌注流体および/または創傷滲出物との間に、安定状態にある濃度均衡が最終的にもたらされる。
【0267】
循環する創傷流体は、創傷治癒の促進に有益である物質がこの均衡により速く達するのを促進する。
【0268】
循環する創傷流体はまた、これらの物質を、最も有益である可能性のある部位、すなわち創傷底へ戻す。
【0269】
創傷治癒に有害である目標物質はまた、創傷治癒に有害である物質をあまり選択透過させない透析用のポリマー製フィルム、シートあるいは膜を通って、滲出物から透析液の中へ流れる。
【0270】
創傷からの滲出物および/または灌注流体の他の成分とは異なり、創傷治癒に有害である目標物質は、透析液と接触するか、あるいは好ましくは、透析液の中で、少なくとも1つの表面がある、流体洗浄手段における1つ以上の中実構造状完全体と接触し、そして、適切な拮抗剤、結合剤および/または分解剤、キレート化剤および/またはイオン交換剤、酸化還元剤などによって、除去される。創傷治癒を促進するのに有益である物質が依然として含有されている洗浄ずみ流体は、再循環管へ戻される。
【0271】
創傷からの滲出物および/または灌注流体の他の成分とは異なり、創傷治癒に有害である目標物質は、透析液から絶えず除去され、きわめて少ないこれらの種は、透析液から灌注流体および/または創傷滲出物の中へ流れ、また、これらの種が創傷ドレッシングから常に「最上位」にあっても、安定状態にある濃度均衡はもたらされない。
【0272】
循環する創傷流体は、創傷治癒に有害である物質の再循環からの除去を促進するとともに、創傷に接触する創傷治癒の促進に有益である物質を保持する、と信じられている。
【0273】
このような形態の二相系の特別な利点は、創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することのできる物質が、(細胞)毒性のものであるかあるいは生体不適合性のものであるか、または創傷治癒の促進に有益である任意成分に対して不活性でないときには、この系は、かなりの量の拮抗剤を透析液の外側から灌注流体の中へ自由に拡散させることがない、という点である。しかしながら、活性物質は、流体に対して有益に作用することができる。
【0274】
このフィルム、シートあるいは膜は、金属イオン封鎖あるいは分解のために目標とされた種の灌流をさせるために選ばれた分画分子量(MWCO)(従来のように定義された)の透析膜であるのが好ましい。例えば、セリンプロテアーゼエラスターゼ(分子量25900ダルトン)の金属イオン封鎖にはMWCOが25900ダルトンよりも大きい膜が必要であろう。
【0275】
MWCOの限界値は、それぞれの適用を適切にするために1〜3000000ダルトンの間で変えることができる。MWCOは、より大きい競合種による干渉を排除するために、できるだけこの分子量に近いのが好ましい。
【0276】
限外濾過ユニットのような単相系および透析ユニットのような二相系の双方は、この発明の装置から比較的容易に取り外すことのできるモジュール形態にあってもよい。この系には、このようなモジュールが1つ以上備わっているのが好ましい。
【0277】
それぞれ、
a) 灌注流体および/または創傷滲出物が創傷ドレッシングから流れるとともに、
b) 創傷治癒を促進するのに有益である物質が依然として含有されている洗浄ずみ流体が再循環管へ戻され、さらに
c) (前記手段が透析ユニットのような二相系の形態に設けられているときに)洗浄流体が前記手段へ入りかつ前記手段から出る
複数の導管には、
灌注流体および/または滲出物、洗浄ずみ流体および洗浄流体の連続的通過を防止するために、
i) 流れを切り換えるとともに
ii) これらの導管の端部を覆って直接的な液密の封止部あるいは閉鎖部をもたらし、かつ、そのように露出させたこの発明の装置の残り部分に管を協働させる
モジュール式の切断および離脱の手段が備わっているのが好ましい。
【0278】
この発明の創傷の吸引、灌注および洗浄用装置には、バルブあるいは創傷から流体を放出する他の制御装置のような調整器などの、排出管および/または再循環管へ流体を放出する手段が設けられている。
【0279】
創傷および流体洗浄手段を通して流体を移動させるこの装置は、灌注流体を創傷ドレッシングへ移動させるとともに創傷底に所望の正圧あるいは負圧を加えるために使用される。
【0280】
再循環管における流体の所望の均衡は、典型的には、
a) 排出管および/または再循環管へ流体を放出する手段、
b) 供給と再循環との間で流れを切り換える手段、および/または
c) 創傷底を覆ってかつ流体洗浄手段を通して流体を移動させる手段
によって、必要に応じて調整されるであろう。
【0281】
従って、例えば、もしも
a) 創傷の吸引、灌注および洗浄用装置が限外濾過ユニットのような単相系のものであり、
b) 創傷が強滲出状態になく、かつ、
c) 流体を流体貯蔵器から創傷の中へ流入させることが適切でないかあるいは望ましくないときには、
再循環中における流体の均衡の変化はまったくないかあるいは無視することができる。
【0282】
創傷底に例えば所望の正圧あるいは負圧が完全に加えられると、この装置は閉鎖型再循環系として作動することができる。
【0283】
供給管と再循環管との間の流れ切換手段は、流体供給管を介して創傷を流体貯蔵器へ閉鎖するために設定され、また、排出管および/または再循環管への流体放出手段も閉鎖される。
【0284】
もしも、
a) 創傷の吸引、灌注および洗浄用装置が限外濾過ユニットのような単相系のものであり、
b) 創傷が強滲出状態にあり、かつ/または
c) 流体を流体貯蔵器から創傷の中へ流入させることが適切であるかあるいは望ましいときには、
再循環中における流体の均衡には正の変化がある。
【0285】
創傷底に例えば所望の正圧あるいは負圧が完全に加えられると、この装置は、好ましくないであろうが創傷底への圧力を増大させないときには、閉鎖型再循環系として作動することができない。
【0286】
排出管および/または再循環管への流体放出手段は、創傷底への正圧を解放するためにはある程度開かなければならない。流体放出は例えば捕集バッグへの廃液放出であってよい。
【0287】
創傷治癒の促進に有益である物質は、治療がこのようにして適用されたときに、最も有益である可能性のある部位、すなわち創傷底へ失われることがある。
【0288】
しかしながら、再循環中の流体の均衡は、このような好ましくない損失を最小限にするために定期的に調整することができる。
【0289】
透析ユニットあるいは二相性抽出ユニットの形態にある流体洗浄用二相系手段が備わっている装置における再循環中の流体の均衡を決定する諸因子は、この装置の作用とともに先に詳しく説明された。この装置の流路の全長にわたって確立された安定状態再循環の後におけるいくつかの箇所では、全体の流体高さが透析液からの移送によって好ましくない程度まで増大すると放出バルブが開かれることが必要である、という点にここで留意するだけで充分である。
【0290】
a) 排出管および/または再循環管へ流体を放出する手段、
b) 供給と再循環との間で流れを切り換える手段、および/または
c) 流体を移動させる手段
によって再循環管における流体の所望の均衡を維持するための他の組み合わせおよび必要な調整は、当業者にとって明らかであろう。
【0291】
排出管および/または再循環管への流体放出手段からの流出物は、捕集するとともに監視することができ、また、創傷および/またはその滲出物の状態を診断するために使用することができる。
【0292】
廃液貯蔵器は、従来の任意の型、例えば、管、バッグ(典型的には人工肛門バッグとして使用されるバッグのようなもの)、チャンバー、パウチあるいは他の構造体、例えば放出された灌注流体を収容することができるポリマー製フィルムであってよい。この装置におけるすべての実施形態では、廃液貯蔵器の型式および材料はその機能に大きく左右されるであろう。使用に適しているためには、その材料は、使用に際して流体不透過性であって柔軟であることだけが必要である。
【0293】
流体貯蔵器のために適した材料の例には、ポリ塩化ビニリデンのようなポリオレフィンなどの合成ポリマー材料が含まれる。
【0294】
この目的のために適切な材料には、ポリエチレン、例えば、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、これらのコポリマー、例えば酢酸ビニルとのコポリマー、およびこれらの混合物も含まれる。
【0295】
この発明の第2の観点では、創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成することのできる創傷対向面がある裏張層を備え、かつ、
流体供給管へ接続され、創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る少なくとも1つの入口管と、
流体排出管へ接続され、創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る少なくとも1つの出口管とを有しており、
その入口管あるいはそれぞれの入口管およびその出口管あるいはそれぞれの出口管が創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る箇所は、創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成していることを特徴とする適合性創傷ドレッシングが提供される。
【0296】
このドレッシングは細菌耐性のあるパウチに使用するのが好ましい。
【0297】
このような創傷ドレッシングの適切な形態の例は、例示として前に説明されている。
【0298】
この発明の1つの目的は、
a) 公知の吸引および/または灌注治療における前記短所の少なくともいくつかを未然に防止することと、
b) i)創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することができ、一方、創傷底と接触して創傷治癒の促進に有益である物質を保持することができ、かつ/または
ii)創傷底と接触して創傷治癒の促進に有益である物質の活性量を含有する流体を創傷底に接触している創傷の中へかつ/または創傷を貫通して流すことのできる
治療系を提供することである。
【0299】
そして、この発明の第3の観点では、この発明の創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置を使用して創傷治癒を促進する創傷治療方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0300】
この発明はこれから、添付図面を参照しながら、例示としてだけ説明される。
【0301】
図1によれば、創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置(1)は、
創傷(5)を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部(4)を形成することのできる裏張層(3)を有している適合性創傷ドレッシング(2)と、
流体供給管(7)へ接続され、箇所(8)で裏張層(3)の創傷対向面を貫通する1つの入口管(6)と、
流体排出管(10)へ接続され、箇所(11)で創傷対向面を貫通する1つの出口管(9)とを備えてなり、
入口管および出口管が貫通しかつ/または創傷対向面の下方を通る箇所(8)(11)は、創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成し、
入口管(6)は、流れを供給と再循環とに切り換える手段、ここではT字バルブ(14)を介して、流体供給管(7)により、流体貯蔵器(12)と、放出手段、ここでは例えば捕集バッグ(図示略)へ廃棄するための放出用T字バルブ(16)を有している流体再循環管(13)とに接続され、
出口管(9)は、流体排出管(10)へ、そしてまた、流体再循環管(13)およびT字バルブ(14)を介して入口管(6)へ接続された、ここでは限外濾過ユニットの形態にある流体洗浄手段(17)と、
そのロータ(図示略)における周縁ローラで流体再循環管(13)に作用して創傷の上に低い負圧を加える、ここでは蠕動ポンプ(18)、例えば好ましくは携帯用小型蠕動ポンプである、創傷および流体洗浄手段(17)を通して流体を移動させる装置とに接続されている。
【0302】
限外濾過ユニット(17)は単相系である。ここで、創傷および流体貯蔵器からの循環流体は、創傷治癒に有害である物質が除去されるとともに創傷治癒を促進するのに有益である物質が依然として含有されている洗浄ずみ流体が再循環管を経て創傷底へ戻される自己完結型の系を通過する。
【0303】
(この装置の変形例では、2つの入口管(6)があり、これらはそれぞれ流体供給管(7)および流体再循環管(13)に接続され、これらの管はそれぞれ、流体を流体貯蔵器(12)から創傷の中へ流入させる第1バルブ(19)と、流体を再循環管(13)から創傷の中へ流入させる第2バルブ(20)とを有している。この装置の使用時には通常、第1バルブ(19)が開かれると第2バルブ(20)が閉じられ、第2バルブ(20)が開かれると第1バルブ(19)が閉じられる。)
【0304】
装置(1)の使用時には、バルブ(16)が捕集バッグ(図示略)へ向けて開かれ、その後、T字バルブ(14)が回されて、流体が流体貯蔵器(12)から流体供給管(7)および入口管(6)を経て創傷ドレッシングへ流入する。(この装置の前記変形例では、2つの入口管(6)があり、これらはそれぞれ流体供給管(7)および流体再循環管(13)に接続されており、流体を流体貯蔵器(12)から創傷の中へ流入させるために第1バルブ(19)が開かれて第2バルブ(20)が閉じられ、また、その逆も行われる。)
【0305】
ポンプ(18)が始動して流体再循環管(13)がそのロータ(図示略)における周縁ローラで締め付けられ、創傷の上に低い正圧が加えられる。ポンプは、この装置が装置流路の全長にわたって流体が満たされて余分な流体が放出用T字バルブ(16)を介して捕集バッグ(図示略)の中へ廃棄されるまで、作動される。
【0306】
次いで、T字バルブ(14)は、回されて供給と再循環とが切り換えられ、すなわち、流体が創傷から流体貯蔵器(12)へ流れないように、しかし、流体が流体再循環管(13)から創傷の中へ流入するように、閉じられるように設定され、同時に、放出用T字バルブ(16)も閉じられる。
【0307】
(この装置の前記変形例では、2つの入口管(6)があり、これらはそれぞれ流体供給管(7)および流体再循環管(13)に接続されており、第1バルブ(19)が閉じられるとともに、流体を再循環管(13)から創傷の中へ流入させる第2バルブ(20)が開かれることで、再循環系が設定される。)
【0308】
創傷および流体貯蔵器(12)からの循環流体は限外濾過ユニット(17)を通過する。創傷治癒に有害である物質は除去されるとともに、創傷治癒を促進するのに有益である物質が依然として含有されている洗浄ずみ流体は再循環管(13)を経て創傷底へ戻される。
【0309】
流体の再循環は、必要とされる限り続けられる。次いで、流体が流体貯蔵器(12)から流体供給管(7)および入口管(6)を経て創傷ドレッシングへ流入するようにT字バルブ(14)を回すことで、供給と再循環との切り換えが逆にされる。
【0310】
(この装置の前記変形例では、2つの入口管(6)があり、これらはそれぞれ流体供給管(7)および流体再循環管(13)に接続されており、流体を流体貯蔵器(12)から創傷の中へ流入させるために第1バルブ(19)が開かれて第2バルブ(20)が閉じられ、また、その逆も行われる。)
【0311】
同時に放出バルブ(16)が開かれて、新鮮な流体が再循環系をどっと流れる。ポンプ(18)の作動は、この装置とその流体再循環が停止されたときにこの装置が洗い流されるまで、続けられる。
【0312】
例えば創傷が強滲出状態にあれば、再循環における流体の均衡には正の変化がある。放出用T字バルブ(16)を開いて流体を再循環管(13)から放出することによって、流体を再循環から放出する必要があるかもしれない。
【0313】
図2における装置(21)は、ここでは透析ユニット(23)である二相系の形態にある流体洗浄手段を除いて図1の装置の場合と同一であって同一の符号が付けられたいくつかの構成要素が備わった、図1の装置の変形例である。
【0314】
ここでは、創傷および流体貯蔵器からの循環流体が通過する1つの系であって、洗浄流体が通過する第2の系に選択的透過可能に接触することで有害物質が除去される1つの系がある。
【0315】
そして、透析ユニット(23)には、創傷治癒に有害である物質を選択的に透過させることができる内側のポリマー製のフィルム、シートあるいは膜であって、その物質を
a)ポリマー製のフィルム、シートあるいは膜の一方表面の向こう側へ洗浄流体を通過させる第1チャンバー(25)と、
b)創傷および流体貯蔵器(12)からの循環流体を通過させて有害物質を除去する第2チャンバー(26)と
の中へ分配するフィルム、シートあるいは膜が備わっている。
【0316】
そして、透析ユニット(23)には透析液供給管(29)へ接続されている透析液入口管(28)が備わっており、透析液供給管(29)は、そのロータ(図示略)における周縁ローラで透析液供給管(29)に作用して透析液貯蔵器(図示略)からバルブ(34)を経て第1チャンバー(25)におけるポリマー製のフィルム、シートあるいは膜(24)の表面の向こう側へ洗浄流体を供給する蠕動ポンプ(38)、例えば好ましくは携帯用小型蠕動ポンプへ通じている、創傷および流体洗浄手段(17)を通して流体を移動させる装置とに接続されている。
【0317】
透析ユニット(23)にはまた、透析液出口管(30)も備わっており、この出口管(30)は、第2放出用T字バルブ(36)を介して例えば捕集バッグ(図示略)の中へ廃棄する透析液出口管(31)へ通じている。
【0318】
この装置の作用は、灌注系が液体で満たされて装置の流路の長さにわたって定常状態の再循環が確立された後にいくつかの箇所でバルブ(34)および第2バルブ(36)が開かれる透析ユニット(23)を除いて、図1の装置のそれに類似している。
【0319】
ポンプ(38)が作動して透析液供給管(29)がそのロータ(図示略)における周縁ローラで締め付けられて、洗浄流体が、透析液貯蔵器(図示略)から第1チャンバーへ汲み上げられるとともに放出用バルブ(36)を介して捕集バッグ(図示略)の中へ廃棄される。
【0320】
透析ユニット(23)は、色を変化させて洗浄ずみ流体中の有害因子の存在を表示する基板が備わったモジュール(あるいはごしごし洗浄用カートリッジ)であって、ごしごし洗浄用カートリッジが消耗すると新品に交換されるモジュールである。
【0321】
図3〜図6によれば、それぞれのドレッシング(41)は、25ミクロンの均一厚さと、創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成することのできる創傷対向面(43)とがある微生物不透過性フィルム裏張層(42)によって画成された適合性物体の形態にある。
【0322】
裏張層(42)は使用時に、創傷の周りにおける皮膚を覆って創傷の上に広げられる。重なり部(44)における裏張層(42)の近位面には、接着性フィルム(45)を皮膚に充分に付着させて創傷ドレッシングをその創傷対向面(43)の周縁の周りにある液密封止部における定位置に保持するために、接着性フィルム(45)が載せられている。
【0323】
流体供給管(図示略)へ接続され、創傷対向面(43)を貫通しかつ/またはその下方を通る1つの入口管(46)と、流体排出管(図示略)へ接続され、創傷対向面(43)を貫通しかつ/またはその下方を通る1つの出口管(47)とがある。
【0324】
図3aおよび図3bによれば、1つの形態のドレッシングには、円形裏張層(42)の下方に創傷詰物(48)が設けられている。これは、創傷の形状へ沿わされる流体、ここでは空気あるいは窒素で満たされた膜(49)によって画成された、ほぼ円錐台状で環状の適合性中空体からなっている。詰物(48)は、接着性フィルム(図示略)あるいはヒートシールによって裏張層に永久に取り付けることができる。
【0325】
環状中空体(48)の中央穴(50)の上方における裏張層(42)の中央には、入口管(46)および出口管(47)が取り付けられており、これらは、環状中空体(48)の穴(50)を経てそれぞれ管(51)および管(52)の中に延出し、その後、中空体(48)の下方で正反対に半径方向へ延出している。ドレッシングのこのような形態は、より深い創傷に対するいっそう適切な配置である。
【0326】
図4aおよび図4bによれば、より浅い創傷についてのいっそう適切な形態が示されている。これは、円形裏張層(42)と、ヒートシールによって裏張層(42)へ永久に接合されて円形パウチ(63)を形成する、開き口(62)のある円形の上向き皿状第1膜(61)とからなっている。パウチ(63)は、穴(64)によって入口管(46)に連通しており、従って、ドレッシングが使用されるときに循環流体を創傷へ直接供給する入口側マニホールドを効果的に構成している。
【0327】
開口(66)のある環状第2膜(65)が、ヒートシールによって裏張層(42)へ永久に接合されて、層(42)とともに環状チャンバー(67)が形成されている。チャンバー(67)は、オリフィス(68)によって出口管(47)に連通しており、従って、ドレッシングが使用されるときに創傷から流体を直接捕集する出口側マニホールドを効果的に構成している。
【0328】
図5aおよび図5bによれば、より深い創傷に対するいっそう適切な、図4aおよび図4bのドレッシングの変形例が示されている。これは、円形裏張層(42)と、逆円錐台状で中実状の完全体、ここでは熱可塑性プラスチックから形成された弾性エラストマー発泡体あるいは好ましくは架橋されたプラスチック発泡体の形態にある詰物(69)とからなっている。
【0329】
詰物(69)は、接着性フィルム(図示略)あるいはヒートシールで裏張層(42)に永久に取り付けることができる。円形の上向き皿状シート(70)が、裏張層(42)および中実状完全体(69)の下方に配されているとともにこれらに沿っているが、このシート(70)は、裏張層(42)および中実状完全体(69)とは別の構造体であって、これらに永久に接合されているものではない。
【0330】
開き口(72)のある円形の上向き皿状第1膜(71)が、ヒートシールによってシート(70)へ永久に接合されて、シート(70)とともに円形パウチ(73)を形成している。パウチ(73)は、穴(74)によって入口管(46)に連通しており、従って、ドレッシングが使用されるときに循環流体を創傷へ直接供給する入口側マニホールドを効果的に構成している。
【0331】
開口(76)のある環状第2膜(75)が、ヒートシールによってシート(70)へ永久に接合されて、シート(70)とともに環状チャンバー(77)が形成されている。チャンバー(77)は、オリフィス(78)によって出口管(47)に連通しており、従って、ドレッシングが使用されるときに創傷から流体を直接捕集する出口側マニホールドを効果的に構成している。
【0332】
これに代えて、適切な場合には、ドレッシングは、円形の上向き皿状シート(70)が裏張層として機能し、中実状詰物(69)が裏張層としてのシート(70)の下ではなく上に配置される形態に設けることができる。詰物(69)は、裏張層(42)の代わりに接着性フィルムあるいは接着テープで定位置に保持される。
【0333】
図6aおよび図6bによれば、より深い創傷に対するいっそう適切な形態にあるドレッシングが示されている。これは、円形裏張層(42)と、ほぼ逆半球状の完全体の形態にあり、ここでは、弾性エラストマー発泡体あるいは、流体、ここでは創傷形状へ沿わされるゲルで満たされて接着性フィルム(図示略)あるいはヒートシールによって裏張層に永久に接合された中空体の形態にある詰物(79)とからなっている。
【0334】
裏張層(42)には、入口管(46)および出口管(47)が周縁に取り付けられている。円形の上向き皿状シート(80)が、裏張層(42)および詰物(79)の下方に配されているとともにこれらに沿っているが、このシート(80)は、裏張層(42)および詰物(79)とは別の構造体であって、これらに永久に接合されているものではない。
【0335】
円形の上向き皿状2層膜(81)には、その層状要素どうしの間に閉鎖溝(82)が備わっており、また、膜(81)によって形成された皿の外面(84)にはその長さに沿った小穴(83)があり、その渦巻らせん状の外側端部には溝(82)が入口管(46)に連通する開口(85)があり、従って、ドレッシングが使用されるときに循環流体を創傷へ直接供給する入口側マニホールドが効果的に構成されている。
【0336】
膜(81)には、溝(82)の一区切りどうしの間に、かつ、それらの長さに沿って開き口(86)もある。膜(81)によって形成された皿の内面(87)は、その一番内側の箇所(88)で接着性フィルム(図示略)あるいはヒートシールによってシート(80)へ永久に接合されている。これによって、接続用の閉鎖型の渦巻らせん状導管(89)が画成されている。その渦巻らせんの一番外側の端部で、導管(89)は、開口(90)によって出口管(47)に連通しており、従って、開き口(86)によって創傷から流体を直接捕集する出口側マニホールドを効果的に構成している。
【0337】
図7aおよび図7bによれば、1つの形態のドレッシングには円形裏張層(42)が設けられている。第1の(大きい方の)逆向き渦巻らせん状膜(92)が、ヒートシールによって裏張層(42)の中心に永久に接合されて、裏張層(42)との間で半球状チャンバー(94)が形成されている。第1の膜(92)の内部には、第2の(小さい方の)同心半球状膜(92)が、ヒートシールによって裏張層(42)に永久に接合されて、半球状パウチ(95)が形成されている。パウチ(95)は、入口管(46)に連通しており、従って、複数の管(97)が半球状に広がり創傷底へ向かって開き口(98)まで延びる入口側マニホールドを効果的に構成している。これらの管(97)は、循環流体を開き口(98)を通じて創傷底へ直接供給するものである。
【0338】
チャンバー(94)は、出口管(47)に連通しており、従って、複数の細管(99)が半球状に広がって創傷底へ向かって開口(100)まで延びる出口側マニホールドを効果的に構成している。これらの細管(99)は、開口(100)によって創傷から流体を直接捕集するものである。
【0339】
図8a〜図8dによれば、1つの形態のドレッシングには、正方形裏張層(42)と、入口管(46)から延出している第1管(101)と、出口管(47)から延出している第2管(102)とが設けられており、これらの管(101)・(102)は、それらの箇所で裏張層(42)を貫通して創傷底の上方を延びている。
【0340】
これらの管(101)・(102)には、管(101)・(102)に沿ったオリフィス(103)・(104)による止まり穴がある。これらの管(101)・(102)によって、それぞれオリフィスを通して循環流体を創傷底へ直接供給しあるいは循環流体を創傷から直接捕集する入口側マニホールドおよび出口側マニホールドがそれぞれ形成されている。
【0341】
図8aおよび図8dでは、入口側マニホールドおよび出口側マニホールドとしての管(101)・(102)のそれぞれについての1つのレイアウトは渦巻である。図8bでは、そのレイアウトは図8aおよび図8dのレイアウトの変形例であり、入口側マニホールド(101)のレイアウトは全円環体あるいは一部円環体であり、出口側マニホールド(102)のレイアウトは半径状管である。
【0342】
図8cによれば別の適切なレイアウトが示されており、ここでは、入口側マニホールド(101)および出口側マニホールド(102)は、犂行体状パターンで、すなわち耕された耕地のように、創傷底の上方を互いに並んで延びている。
【0343】
図9aおよび図9bによれば、図8a〜図8dにおいて示されたのと同一である、より深い創傷に対する他の適切なレイアウトが示されている。しかしながら、正方形裏張層(42)には、裏張層(42)の下方に、かつ、接着性フィルム(図示略)あるいはヒートシールによって裏張層(42)に永久に接合されてもよい創傷詰物(110)があり、この詰物(110)は、逆向き半球状の中実状完全体、ここでは、熱可塑性プラスチック発泡体、好ましくは架橋プラスチック発泡体から形成された弾性エラストマー発泡体である。
【0344】
詰物(110)の下方には、中実状詰物(110)に沿っている円形の上向き皿状シート(111)があるが、このシート(111)は、別の構造体であって、中実状詰物(110)に永久に接合されているものではない。シート(111)を通して、入口管(46)から延出している第1管(101)と、出口管(47)から延出している第2管(102)とが設けられており、これらの管(101)・(102)は創傷底の上方を延びている。これらの管(101)・(102)には、管(101)・(102)に沿ったオリフィス(103)・(104)による止まり穴もある。
【0345】
これに代えて(図5aおよび図5bのように)、適切な場合には、ドレッシングは、円形の上向き皿状シート(111)が裏張層として機能し、中実状詰物(110)が裏張層としてのシート(111)の下ではなく上に配置される形態に設けることができる。詰物(110)は、裏張層(42)の代わりに接着性フィルムあるいは接着テープで定位置に保持される。
【0346】
図10a〜図10cにおいて、それぞれが流体を創傷へ供給し、かつ、創傷から流体を捕集する創傷ドレッシングの入口側マニホールドおよび出口側マニホールドが、互いに積層状に永久に接合されたいくつかの層における複数の長穴と複数の開き口とによって構成されている。
【0347】
そして、図10aには、入口側マニホールドおよび出口側マニホールドの積層体(120)の分解斜視図が示されており、この積層体(120)は、第1層(121)〜第5層(125)である完全に重なり合う5つの正方形熱可塑性ポリマー層からなり、それぞれの層が接着性フィルム(図示略)あるいはヒートシールによって積層体(120)の隣接層に接合されている。
【0348】
最上の(第1の)層(121)(使用時のドレッシングにおいて一番遠位にある層)は、何も設けられていない正方形被覆層である。
【0349】
マニホールドの積層体(120)の外側にある、図10bに示された次の(第2の)層(122)は、正方形層であり、この層(122)を貫通する入口側マニホールド長穴(126)を備えている。長穴(126)は、流体入口管(図示略)の接続用端部に連結するために層(122)の一方端部(127)まで延びているとともに、それらの間に間隔を置いて平行配列にある4つの隣接状分岐部(128)の中へ広がっている。
【0350】
次の(第3の)層(123)は、別の正方形層であり、この層(123)を貫通するいくつかの入口側マニホールド開き口(129)を備えており、これらの開き口(129)は、開き口(129)が第2層(122)を貫通する入口側マニホールド長穴(126)(図10bに示されている)と合わされるように、列をなしている。
【0351】
マニホールドの積層体(120)の外側にある、図10cに示された次の(第4の)層(124)は、別の正方形層であり、この層(124)を貫通するいくつかの入口側マニホールド開き口(130)を備えており、これらの開き口(130)は、開き口(130)が第3層(123)を貫通する開き口(129)と合わされるように、列をなしている。
【0352】
この層(124)は、この層を貫通する出口側マニホールド長穴(131)も備えている。長穴(131)は、流体出口管(図示略)の接続用端部に連結するために層(122)の端部(127)からマニホールドの積層体(120)の反対側における層(124)の一方端部(131)まで延びている。長穴(131)は、層(124)における開き口(130)どうしの間に間隔を置いた平行配列にあり、かつ、層(122)における開き口(129)どうしの間の間隔と合わされるように、3つの隣接状分岐部(133)の中へ広がっている。
【0353】
最後の(第5の)層(125)は、別の正方形層であり、この層(125)を貫通するいくつかの入口側マニホールド開き口(134)を備えており、これらの開き口(134)は、開き口(134)が第4層(124)を貫通する入口側マニホールド開き口(130)と合わされ(次いで、第3層(123)を貫通する開き口(129)と合わされ)るように、列をなしている。この層(125)は、この層の中に出口側マニホールド開き口(135)も備えており、これらの開き口(135)は、開き口(135)が第4層(124)における出口側マニホールド開き口(131)と合わされるように、列をなしている。
【0354】
積層体(120)を構成するために層(121)〜層(125)がともに接合されると、最上(第1)層(121)、第2層(122)を貫通する入口側マニホールド長穴(126)および第3層(123)が協働して第2層(122)に入口側マニホールドが形成され、この入口側マニホールドが使用時に流体入口管(図示略)の接続用端部に連結される、ということは分かるであろう。
【0355】
第2層(122)を貫通する入口側マニホールド長穴(126)、および層(123)・(124)・(125)を貫通する入口側マニホールド開き口(129)・(130)・(134)は、すべてが相互に合わされており、協働して、第2層(122)における入口側マニホールドと積層体(120)の近位面(136)との間に第3層〜第5層(123)・(124)・(125)を貫通する入口側マニホールド導管を構成する。
【0356】
第3層(123)、第4層(124)を貫通する出口側マニホールド長穴(131)、および第5層(125)は、協働して第4層(124)に出口側マニホールドを形成するが、この出口側マニホールドは使用時に流体出口管(図示略)の接続用端部に連結される。
【0357】
第4層(124)を貫通する出口側マニホールド長穴(131)、および第5層(125)を貫通する出口側マニホールド開き口(135)は、相互に合わされており、協働して、第4層(124)における出口側マニホールドと積層体(120)の近位面(136)との間に第5層(125)を貫通する出口側マニホールド導管を構成する。
【0358】
図11における、創傷の吸引、灌注および/または洗浄用の装置(1)は、図1の装置(1)の変形例である。この装置(1)には、この系におけるあらゆる閉塞に対してポンプ(17)を保護するものとして、ポンプ(17)の周りにバイパス(711)がある。この装置(1)は、適切な手段によって自動的に作動され、例えば破裂用円盤(図示略)あるいは圧力駆動型動力化バルブによって一般に閉鎖される。バイパス(711)に代わるものとしては、過剰な負荷すなわち圧力を検知してポンプ(17)を停止させる、この系における圧力センサーがある。
【0359】
図12における、創傷の吸引、灌注および/または洗浄用の装置(1)は、図2の装置(1)の変形例である。この装置(1)は、透析ユニット(21)が備わった二相系であるが、透析流体が、第2放出用T字バルブ(36)を介して例えば捕集バッグ(図示略)の中へ廃棄されるために透析液貯蔵器(図示略)から第1チャンバー(25)における透析膜(24)を一度だけ通過するものである。
【0360】
この変形例には、透析液再循環管(811)が備わっており、この透析液再循環管(811)は、透析液ポンプ(23)の入口側における第1T字バルブ(816)と、透析ユニット(21)を通る多数の通路における回路が流体で満たされるとポンプ(23)で透析液を再循環させる第2T字バルブ(817)との間を延びている。この系の操作は当業者に明らかであろう。
【0361】
図13〜図15によれば、ドレッシングのこれらの形態には、円形裏張層(342)の下方に創傷詰物(348)が設けられている。創傷詰物(348)は、膜(349)によって画成された、ほぼ下向きのドーム状あるいは環状の、または偏球状の適合性中空体からそれぞれ構成され、この中空体は、この中空体を創傷形状に沿わせる流体、ここでは空気あるいは窒素で満たされている。詰物(348)は、例えば裏張層(342)にヒートシールされたボス(351)を介して裏張層(342)に永久に取り付けられている。
【0362】
膨脹用入口管(350)、入口管(346)および出口管(347)が、中空体(348)の上方で、裏張層(342)におけるボス(351)の中心に取り付けられている。膨脹用入口管(350)は、中空体(348)を膨脹させるために、中空体(348)の内部と連通している。入口管(346)は中空体(348)を事実上貫通して管(352)の中に延びている。出口管(347)は裏張層(342)の直下で半径方向へ延びている。
【0363】
図13において、管(352)は、ヒートシール処理で詰物(348)に永久に接合された開き口(362)付きの膜(361)によって形成された入口側マニホールド(353)に連通している。入口側マニホールド(353)は、適切な材料、例えば弾性のある熱可塑性プラスチックから構成された発泡体(363)で満たされている。好ましい材料には、小さい開き口すなわち微細孔のある濾過用の網状化発泡ポリウレタンが含まれる。
【0364】
図14において、出口管(347)は、適切な材料、例えば弾性のある熱可塑性プラスチックから構成された発泡体(364)の層に連通している。この場合もやはり、好ましい材料には、小さい開き口すなわち微細孔のある濾過用の網状化発泡ポリウレタンが含まれる。
【0365】
使用時における図13、図14および図15のすべてにおいて、管(346)は、創傷底から広大な区域にわたって灌注流体を直接供給する1つ以上の開口の中で終わっている。同じように、出口管(347)は、ドレッシングの使用時に創傷の周縁から流体を半径方向へ効果的に捕集する。
【0366】
図16によれば、このドレッシングにも、円形裏張層(342)の下方に創傷詰物(348)が設けられている。創傷詰物(348)も、膜(349)によって画成された、ほぼ環状の適合性中空体から構成され、この中空体は、この中空体を創傷形状に沿わせる流体、ここでは空気あるいは窒素で満たされている。
【0367】
詰物(348)は、第1ボス(351)と、適切な材料、例えば弾性のある熱可塑性プラスチックから形成された発泡体の層(364)とを介して裏張層(342)に永久に取り付けられている。この場合もやはり、好ましい材料には、小さい開き口すなわち微細孔のある濾過用の網状化発泡ポリウレタンが含まれる。第1ボス(351)および発泡体層(364)はそれぞれ、裏張層(342)およびボス(351)にヒートシールされている。
【0368】
膨脹用入口管(350)、入口管(346)および出口管(347)が、環状中空体(348)の上方で、裏張層(342)における第1ボス(351)の中心に取り付けられている。膨脹用入口管(350)、入口管(346)および出口管(347)はそれぞれ、中空体(348)における中央穴(356)を通って管(353)・(354)・(355)の中を延びて、環状中空体(348)に取り付けられた第2ボス(357)へ至っている。
【0369】
管(353)は、中空体(348)の内部に連通しており、中空体(348)の膨脹を可能にしている。管(354)は、膜(361)によって形成された入口側マニホールド(352)に連通するために、第2ボス(357)を貫通して半径方向へ延びており、膜(361)は、ヒートシール処理によって網状化されたハニカム構造体の形態で詰物(348)に永久に取り付けられており、このハニカム構造体には、灌注流体を広大な区域にわたって創傷底へ直接供給する開口(362)がある。管(355)は、このドレッシングの使用時に創傷の中央から半径方向へ流れる流体を捕集する。ドレッシングのこのような形態は、より深い創傷に対していっそう適したレイアウトである。
【0370】
図17におけるドレッシングは、図16のドレッシングに類似しているが、図16のドレッシングとは、膜(349)によって画成された環状の適合性中空体が、空気または窒素あるいはアルゴンのような不活性気体のような気体ではなく、流体、ここではプラスチック製の小片あるいはビーズのような固体微粒子で満たされている点と、膨脹用入口管(350)および管(353)が中央穴(356)から省略されている点とで、異なっている。
【0371】
中空体(348)のための内容物の例には、シリコーンゲルあるいは、好ましくは、例えばイントラジット(Intrasite)(登録商標)架橋物質のような親水性架橋セルロースゲルであるセルロースゲルも含まれる。この例には、エアゾール発泡体および、例えばキャビケア(CaviCare)(登録商標)発泡体のような凝固エアゾール発泡体も含まれる。
【0372】
図18および図19には、より深い創傷についての別の形態が示されている。この形態には、円形裏張層(342)と、複式マルタ十字架あるいは様式化バラに酷似した深いギザギザのある円盤の形態にあるチャンバー(363)とが備わっている。
【0373】
このチャンバー(363)は、上部の不浸透性膜(361)と下部の多孔性フィルム(362)とによって画成されており、フィルム(362)には、創傷底から広大な区域にわたって灌注流体を直接供給する開き口(364)がある。チャンバー(363)のいくつかの形状構成が示されているが、これらはすべて、創傷の中への挿入に際して接近しているかあるいは重なる可能性のあるアームによって、創傷底へ充分に沿うことができる。
【0374】
一番下に示されたチャンバー(363)の特定のデザインでは、アームの1つが延長されており、延長アームの端部に入口部が設けられている。これによって、使用時にドレッシングおよび創傷から離れた灌注供給部の連結および分離の自由度がもたらされている。
【0375】
入口管(346)および出口管(347)が、チャンバー(363)の上方で、裏張層(342)におけるボス(351)の中心に取り付けられている。入口管(346)は、チャンバー(363)に永久に取り付けられるとともに、その内部に連通しており、従って、入口側マニホールドを事実上、構成している。チャンバー(363)の上方の空間は、ゆったりとしたガーゼパッキング(364)で満たされている。
【0376】
図18では、出口管(347)は、裏張層(342)の創傷対向面(343)の直下にあるドレッシングの内部から流体を捕集する。
【0377】
図19には、図18のドレッシングの変形例が示されている。チャンバーの上方における空間の最下部で一片の発泡体(354)の中へ通じるように、出口管(347)が取り付けられている。
【0378】
図20において、ドレッシングは、図13のドレッシングに類似しているが、ほぼ下向きドーム状の創傷中空詰物(348)を貫通するのではなくその上面を覆う入口管(352)が開き口(362)のある膜(361)によって形成された入口側マニホールド(353)に連通している点では図13のドレッシングに類似していない。
【0379】
図22では、開き口(362)のある膜(361)によって形成され、ほぼ下向きドーム状である環状の創傷中空詰物の下面にわたる入口側マニホールド(353)を加えると、図14のドレッシングに類似している。
【0380】
図21では、ほぼ下向きドーム状である環状の創傷中空詰物は省略されている。
【0381】
図23によれば、より深い創傷についての別の形態が示されている。密封された発泡体詰物(348)の上方における裏張層(342)のボス(351)の中心には、入口管(346)と出口管(347)とが取り付けられている。入口管(346)は、創傷底に、永久にかつ詰物(348)を貫通して取り付けられている。出口管(347)は、詰物(348)の上部周縁に取り付けられた多孔性発泡体によって画成されたチャンバー(363)に、かつその内部に連通して取り付けられている。そして、チャンバー(363)によって出口側マニホールドが効果的に形成されている。
【0382】
図24では、発泡体詰物(348)は一部分だけ密封されている。入口管(346)は、創傷底に、永久にかつ詰物(348)を貫通して取り付けられている。出口管(347)は、詰物(348)の発泡体に、かつその内部に連通して取り付けられている。流体は、詰物(348)の上部周縁の近傍における環状空隙を通って発泡体の中へ入り、そして、出口側マニホールドを効果的に形成する。
【0383】
図25および図26には、入口管(346)と出口管(347)とが裏張層(342)を貫通するドレッシングが示されている。
【0384】
図25では、それらは、多孔性フィルム(369)によって画成されて弾性的に復元するプラスチック製のビーズあるいは小片で満たされた多孔性バッグ詰物(348)の内部に連通している。
【0385】
図26では、それらは、発泡体詰物(348)の直下にある創傷空間に連通している。発泡体(348)は、現場で入口管(346)および出口管(347)の周りに射出されて形成されたキャビケア(CaviCare)(登録商標)発泡体であってよい。
【0386】
図27によれば、創傷の吸引、灌注および洗浄用の装置(1)は、図1に示された装置の主要な変形例である。
【0387】
図1において、創傷と流体洗浄手段との間で流体を移動させる装置は、ドレッシング(2)の下流側における流体循環管(13)に作用して低い負圧を創傷にもたらす蠕動ポンプ(18)であり、例えば小型携帯用蠕動ポンプが好ましい。
【0388】
図27に示された装置(1)では、蠕動ポンプ(18)は、低い負圧を創傷にもたらすための、a)ドレッシング(2)の上流側における流体供給管(7)に作用する蠕動ポンプ、およびb)ドレッシング(2)の下流側における流体循環管(13)に作用する、圧力調整手段付きの真空ポンプアセンブリーによって、置き換えられる。
【0389】
この真空ポンプアセンブリーにはタンク(911)が備わっており、このタンク(911)には、流体循環管(13)に接続されているとともにタンク(911)の上部に連通している入口管(912)と、廃液バッグ(915)のある廃液ポンプ(914)に接続されているとともにタンク(911)の下部に連通している廃液管(913)と、真空ポンプ(918)に接続されているとともにタンク(911)の上部に連通しているポンプ管(916)と、洗浄手段(17)に連なる流体循環管(13)に接続されているとともにタンク(911)の下部に連通している出口管(917)とが備わっている。
【0390】
真空ポンプ(918)は、導線(920)を介する圧力フィードバック調整器(919)によって制御されるが、調整器(919)は、タンク(911)の上部におけるタンクセンサー(921)と創傷空間におけるドレッシングセンサー(922)とから、それぞれ導線(923)と導線(924)とを介して信号を受信する。
【0391】
この装置(1)の作用は、必要な変更を加えると、図1における装置の作用に類似している。圧力フィードバック調整器(919)によって、創傷および/またはタンク(911)における圧力が調整される。例えば創傷がひどく滲出し続けるために循環における流体の量が過剰になると、廃液ポンプ(914)が始動されて、流体がタンク(911)の下部から廃液バッグ(915)へ移送される。
【0392】
この発明の装置の使用はこれから、以下のいくつかの実施例において例示としてだけ説明される。
【0393】
実施例1−ミクロ濾過による単相系からの、微生物を含む汚染微生物の除去
【0394】
基本的には図1と同じものであるが、創傷ドレッシングとポンプとの間における試料取入口S1と、洗浄手段としての無菌状0.22μmフィルター濾過装置の下流側における試料取入口S2とが備わっている単相回路が、γ放射線照射によって滅菌された。
【0395】
供試生物(エス.アウレウス(S.aureus)NCTC 10788)の接種に先立って、創傷貯蔵器は45mlの無菌MRD(最大回収希釈剤)で満たされ、その後、MRDは、前記供試生物で接種されて、104cfu/mlの最終濃度になった。
【0396】
このインキュベーション液は、この濾過装置に循環されるのに先立って、前記回路(0.22μm滅菌フィルターを迂回する)の周りに予備循環された。予備循環流体の試料(0.5ml)は、取入口S1から30分および60分で取り入れられた。これはMRDの中で10-3まで連続的に希釈され、また、対をなす1mlのトリプトン大豆寒天(TSA)プレートが、標準有効プロトコルに従ってそれぞれの希釈液から用意された。これらのプレートは、計数に先立って、32℃で少なくとも72時間、インキュベートされた。
【0397】
1時間後に、流体はこの濾過装置に循環された。循環流体の0.5mlの試料は、取入口S1からT=10分、30分、50分および70分で取り入れられ、取入口S2からT=0分、20分、40分および80分で取り入れられた。すべての試料は、先に説明したように数え上げられた。
【0398】
結果
【0399】
【表1】
【0400】
【表2】
【0401】
【表3】
【0402】
結論
この単相系によれば、およそ3つの対数によって0.22μmフィルターを通過した後に創傷回路から細菌細胞をただちに除去することができるとともに、循環する細菌の全数を徐々に減少させることができた。
【0403】
実施例2−二相系(静的第2相)におけるエラスターゼの阻害
【0404】
a) 固定化エラスターゼ拮抗剤−ポリ(無水マレイン酸-alt-メチルビニルエーテル)と1%の5-(2-アミノエチルアミノ)-1-ナフタレンスルホン酸(EDANS)蛍光タグとによる4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオライド(AEBSF)のコンジュゲート(「阻害剤」)の調製
【0405】
磁気的に攪拌されているDMF(100ml)中のMAMVE(1.646g、10.5ミリモル単位)の溶液に、DMF(2ml)中のEDANS(30.4mg、0.1ミリモル)が添加された。15分後に、DMF(20ml)中のAEBSF塩酸塩(2.502g、10.4ミリモル)とトリエチルアミン(1.056g、10.4ミリモル)との溶液が、滴下された。5時間後に、この溶液を、0.5M HCL(2000ml)の中へ滴下して沈殿させ、0.5M HCLでブフナー濾過・洗浄した。この生成物は、真空乾燥されて、−4℃で保管された。収率3.702g、98%。
【0406】
磁気的に攪拌されているDMF(100ml)中のMAMVE(2.000g、12.8ミリモル単位)の溶液に、DMF(2ml)中のEDANS(37.0mg、0.1ミリモル)が添加された。15分後に、DMF(10ml)中のフェネチルアミン(1.537g、12.7ミリモル)の溶液が、滴下された。5時間後に、この溶液を、0.5M HCL(2000ml)の中へ滴下して沈殿させ、0.5M HCLでブフナー濾過・洗浄した。この生成物は、真空乾燥されて、室温で保管された。収率3.426g、97%。
【0407】
b) エラスターゼ阻害
【0408】
基本的には図1と同じものであり、静的第2相のある二相洗浄手段があるが、洗浄手段の下流側における試料取入口が備わっている二相回路が使用された。
【0409】
その洗浄手段は、マイクロクロス交差流シリンジフィルター(MiCroKros Cross Flow Syringe Filter)(スペクトラム ラブズ インコーポレーテッド)(Spectrum Labs Inc)PS/400K MWCO=8cm2のものであり、これには別々の2つのチャンバーがあり、その外側のチャンバーにおける流体は静的に保有される。
【0410】
その外側のチャンバーは、2mg/mlの阻害剤溶液(TRIS中1mlまで)で満たされて、管類に接続された。入口側管類および出口側管類はTRIS溶液の中に配置され、TRISが、前記マイクロクロスシリンジの内側チャンバーとその管類とに5分間、流された。管類はその後、空にされた。2mlのエラスターゼ(0.311mg/ml)がこの創傷回路の中へピペット分注された。
【0411】
管類が貯蔵器の中に配置され、また、ポンプおよびタイマーが同時に始動された。
【0412】
創傷回路から1時間ごとに10マイクロリットルの試料が、6時間にわたって採取され、試料採取後ただちに、次のようにしてアッセイされた。6時間にわたる活性の減少を測定するために、静的エラスターゼの対照がすべての時点でアッセイされた。
【0413】
c) エラスターゼの活性のアッセイ
【0414】
エラスターゼ基質であるN-Succ-(Ala)3-ニトロニリド(DMSOにおける10mg/ml)が用意された。25マイクロリットルのN-Succ-(Ala)3-ニトロニリド(10mg/ml)が、4.5ml容量の使い捨てキュベットの中における2.475mlのTRISに添加された。この混合は、エラスターゼ溶液が同キュベットの中へ添加される前に10分間行われた(基質が充分に混合されることを保証するために)。次いで、10マイクロリットルの試料がそれぞれのキュベットに添加されて、充分に混合された。この試料は室温で40分間、インキュベートされて、405nmでの吸光度が記録された。
【0415】
結果および結論
【表4】
【0416】
【表5】
【0417】
すべてのエラスターゼ対照実験の平均値は、0時間についての100%の活性を計算するために使用された。
【表6】
【0418】
これらの結果によれば、エラスターゼ+Tris溶液については、活性が60〜70%減少していることが示されている。このことは、外側チャンバーにおける2mlのエラスターゼと1mlのTRISとの混合による希釈効果(2/3)として説明することができる。これにより、この系はエラスターゼに対して不活性であることと、膜を介する完全な混合/拡散は3時間以内に起きることとが示されている。
【0419】
6時間以内におけるエラスターゼ+MAMVE-AEBSFでは、エラスターゼ活性が90%低下することが示されている。
【0420】
実施例3−二相系(静的第2相)からの鉄イオンの金属イオン封鎖
【0421】
基本的には図1と同じものであり、静的第2相のある二相洗浄手段があり、洗浄手段の下流側における試料取入口が備わっている二相回路が使用されたが、洗浄手段は、スライド・エー・ライザー(Slide-A-Lyzer)のチャンバーの中におけるスライド・エー・ライザー透析カセット(ピアース(Pierce)社製の10,000MWCO、3〜15ml容量、製品番号66410)である。
【0422】
このカセットには次の1つが収容された。
a) 5mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)
b) デンプン対照(40mg/ml、120mg/mlおよび200mg/ml)あるいは
c) 溶液中におけるデンプン−デスフェリオキサミン(DFO)コンジュゲート(バイオメディカル・フロンティアーズ・インコーポレーテッド(Biomedical Frontiers Inc.)から供給されたもの)(40mg/ml、120mg/mlおよび200mg/ml)
【0423】
それぞれの透析カセットはスライド・エー・ライザーチャンバーの中に配置された。この構成において、カセット収容物は、先に言及した10,000MWCO膜によって再循環用第1流体から分離されている。
【0424】
トランスフェリン(10mg/ml、35ml容積)が、試料取入口の中へ注入されて、マスターフレックスポンプ(Masterflex pump)(型式番号7523−37)により、8時間にわたって相異なる流速(0.54ml/分、0.82ml/分、1.08ml/分および1.35ml/分)で、この流れ系の周りに循環された。
【0425】
試料は2時間、4時間、6時間および8時間で回収された。
【0426】
これらの試料の鉄含有量が、フェロジンアッセイ法を使用して次のように測定された。試料は、トランスフェリンから鉄イオンを遊離するために、pH4.8の50mMの酢酸緩衝液と混合された。遊離したIII価3鉄イオンをII価鉄イオンに還元するために、試料にはアスコルビン酸塩(30ミリモル)が添加された。フェロジン(5mM)が試料に混合され、II価鉄イオンとの間で着色錯体を形成した。ユニキャム(UNICAM)UV4−100・UV−Vis分光光度計V3.32(製造番号022405)を使用して、吸光度が測定された。
【0427】
結果および結論
【0428】
デンプン-DFOは、8時間にわたって、用量依存的にトランスフェリンから鉄を採取した。8時間の再循環の後に、200mg/mlのデンプン-DFOの存在下で、およそ20〜25%のイオン除去が起きた。
【0429】
相異なる濃度のデンプン対照あるいはPBSの存在下では、トランスフェリンの鉄含量は、希釈効果のためにわずかに低下し、次いでゆっくり正常値に戻ったが、このことは、デンプン-DFOによるイオン採取がDFO単独で媒介されたことを示唆する。
【0430】
トランスフェリンについての鉄採取特性は相異なる流速でも同様であったが、このことは、この流れには透析膜を介するイオン移動に対する効果がなかったことを示唆する。
【0431】
実施例4−二相系(動的第2相)の第2相からの抗生物質の注入
【0432】
基本的には図1と同じものであり、基本的には図2と同じ第2(透析液)回路のある二相循環系が、使用された。ポンプはシリコーン管類に作用する蠕動ポンプであった。この第2回路には、創傷流体を変化させる透析液の貯蔵器(50mlのファルコン遠心分離管)が設けられた。創傷回路は、ルアー接続用の中空繊維接線膜透析ユニット(スペクトラム(Spectrum)(登録商標)マイクロクロス(MiCroKros)(登録商標)X14S-100-04N,表面積8cm2,400KDMol.Wt.切断物)の端部の中に接続された。透析液回路は、創傷回路と透析液回路との間における流れが向流方向になるように、同じ透析ユニットの側面部に接続された。
【0433】
創傷回路は、製造業者の指示に従って、まずエタノールで次に滅菌水で洗われた。創傷貯蔵器は20mlの滅菌水で満たされた。創傷ポンプが100の設定速度で作動され、創傷回路に実測2.09ml/分の流速が生じた。透析液回路は、製造業者の指示に従って、まずエタノールで次に滅菌水で洗われた。透析液貯蔵器は20mlの滅菌水で満たされた。透析液ポンプが100の設定速度で作動され、創傷回路に実測1.93ml/分の流速が生じた。2mlのシリンジに取り付けられた、ルアー接続部のある一定長さのシリコーン管によって、試料(1ml)が創傷貯蔵器および透析液貯蔵器から取り出された。
【0434】
実験の開始時点で、5mlの滅菌水が透析液貯蔵器から除去され、硫酸ゲンタマイシン(ヨーロッパ基準の硫酸ゲンタマイシン、CRS(活性616IU/mg)の5mg/ml溶液の5mlが添加された。創傷ポンプと透析ポンプとの両方を同時に作動させた。試料を230分にわたって時々、透析液回路および創傷回路から採取した。実験の間、容積は変わらなかった。
【0435】
先に作られた標準曲線を使用して透析液回路から創傷回路へのゲンタマイシンの移動についてのだいたいの測定値を得るために、試料(1ml)が2mlの滅菌水で希釈され、190nmでの紫外線吸光度が検査された。
【0436】
その後、試料は、指標細菌としてスタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)を使用するアッセイに従って、ゲンタマイシン活性についての定量的阻害ゾーンアッセイにより分析された。
【0437】
結果および結論
流体の抗菌活性−阻害ゾーンアッセイの結果によれば、創傷回路におけるゲンタマイシンのレベルは、2つの回路における薬剤のレベルが互いに接近するにつれて遅くなる増加率で、230分にわたって安定的に増大することを示している。透析液回路におけるゲンタマイシンのレベルは、薬剤が透析液回路から創傷回路まで移動すると、予想どおり安定的に減少することを示している。臨床業務において有用である圧力および流速では、創傷治癒のための薬剤は、許容できる量と許容できる時間尺度で供給することができる。
【0438】
実施例5−二相系(静的第2相)における局在化グルタチオン還元酵素(GR)と補因子NADP(還元形)とによるグルタチオンの再生(酸化グルタチオン(GSSG)のグルタチオン(GSH)への還元)
【0439】
基本的には図1と同じものであり、静的第2相のある二相洗浄手段があり、洗浄手段の下流側における試料取入口が備わっている二相回路が使用されたが、洗浄手段は、スライド・エー・ライザー(Slide-A-Lyzer)のチャンバーの中におけるスライド・エー・ライザー透析カセット(ピアース(Pierce)社製の10,000MWCO、3〜15ml容量、製品番号66410)である。
【0440】
分離された15ml容量のスライド・エー・ライザーカセットの中へ、それぞれの保存溶液の5mlが注入された。
a) 蒸留水の中で調製された2mg/mlのNADP(NADP)
b) NADP保存溶液の中で調製された2mg/mlのグルタチオン還元酵素(GR+NADP)あるいは
c) 蒸留水の中で3重に調製された2mg/mlのグルタチオン還元酵素(GR)
【0441】
これらのカセットは、平らに配置され、そして上部外側空洞の中に、GSSGストック溶液(蒸留水の中で調製された50mMのGSSG(30.6mg/l))の15mlを一定量入れた。この溶液は第1相回路の周りに循環された。第1相回路は、6時間にわたって、1時間ごとに1.5ml容量の使い捨てUVキュベットの中へ試料採取(1ml)された。この時間周期の終わりに、それぞれの分取物は、グルタチオンアッセイキット(キャルバイオケミストリー(Calbiochem)社から市販)を使用してアッセイされた。3重のものは平均化され、また、それぞれのデーターポイントについてSDが決定された。これらのデーターは、3つの制御系のそれぞれについて、GSSG濃度対時間としてプロットされた。
【0442】
結果および結論
GSSGは、GRとその補因子NADPとの組み合わせによって、GR単独あるいはNADP単独によるときよりもかなり多い程度まで使い尽くされた。従って、この使い尽くしは非特異的結合に起因するものではない。前記の酵素濃度と補因子の濃度では、6時間でおよそ40%のGSSGが使い尽くされた。
【0443】
実施例6−単相系からの細菌性自己誘導物質の分解的除去
【0444】
自己誘導物質と称される細胞外シグナル分子の交換は、細菌によって行われ、臨界的な細菌細胞密度で活性化された重要な細菌ビルレント遺伝子の発現の調整に必須であり、従って、上首尾な細菌の定着と組織の侵入とが達成される。この系はクオラムセンシング(Quorum Sensing)と称される。逆に言えば、自己誘導物質の種の(通常は酵素的な)分解あるいは金属イオン封鎖は、基本的な伝達を乱すとともに創傷における感染の防止を助成する1つの方法である。
【0445】
AiiA酵素は、エス.アウレウスによって自己誘導物質として使用される3-オキソドデシルホモセリンラクトンシグナル分子を分解するものである。
【0446】
使用されたAiiA酵素は、ノッティンガム大学で生産されたものであり、マルトース結合蛋白質に結合される。
【0447】
a) ポリマー支持体に結合されたAiiA酵素の調製
【0448】
臭化シアン活性化セファロース6MB(シグマ(Sigma)社から市販)(より高い貫流速度のために直径が200〜300μmのもの)が、1mMの塩酸の中で洗浄されるとともに、30分間、浸漬されかつ膨脹された。このゲルは、大量の蒸留水で洗浄され、その後、pH8.5のNAHCO3/NaClで洗浄され、直ちに使用された。
【0449】
AiiA酵素溶液(約1mg/ml)がポリマー支持ビーズに添加されて、4℃で一晩、静置された。結合されたビーズは、pH8.5のNaHCO3/NaClで洗浄され、懸濁液として保存された。ビーズからの洗浄液もまた、未結合酵素の量と、従って結合効率とを決定するために捕集された。
【0450】
半製品である未結合ビーズが、対照として使用された。
【0451】
1mg、10mgおよび100mgの相異なる量の酵素結合ビーズは、単相系に洗浄手段を構成し、洗浄手段の下流側に試料口も有している、貫流についての軸方向の入口部および出口部のある円筒状ガラスシリンダーを横切る2種のガラスフリットによって画成されたチャンバーの中に捕捉される。10μMの3-オキソドデシルホモセリンラクトン(ODHSL)のストックが、チャンバーを通じて37℃で1.93ml/分の割合で6時間にわたってポンプにより汲み上げられる。
【0452】
循環流体は、6時間にわたって、1時間ごとに1.5ml容量の使い捨てUVキュベットの中へ試料採取(1ml)される。
【0453】
この時間期間の終わりに、それぞれの分取物は、E.coliにおける生物発光に基づくプラスミドレポーター系を使用する、1997年発行のJ.Bacteriol.の179巻、第5271〜5281ページにおけるスイフト(Swift)らのアッセイ法を使用してアッセイされた。100mgの試料によれば、6時間でODHSL濃度の86%減少を示す。
【図面の簡単な説明】
【0454】
【図1】図1は、この発明の第1の観点による創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置の模式図である。この装置には限外濾過ユニットの形態にある流体洗浄用の単相系手段が備わっている。
【図2】図2は、この発明の第1の観点による創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置の模式図である。この装置には透析ユニットあるいは二相性抽出ユニットの形態にある流体洗浄用の二相系手段が備わっている。
【図3】図3は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。図3aはその創傷ドレッシングの平面断面図であり、図3bはその創傷ドレッシングの側面断面図である。
【図4】図4は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。図4aはその創傷ドレッシングの平面断面図であり、図4bはその創傷ドレッシングの側面断面図である。
【図5】図5は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。図5aはその創傷ドレッシングの平面断面図であり、図5bはその創傷ドレッシングの側面断面図である。
【図6】図6は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。図6aはその創傷ドレッシングの平面断面図であり、図6bはその創傷ドレッシングの側面断面図である。
【図7】図7は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。図7aはその創傷ドレッシングの平面断面図であり、図7bはその創傷ドレッシングの側面断面図である。
【図8】図8は、それぞれが流体を創傷へ供給しかつ創傷から流体を捕集する、この発明の第2の観点による創傷ドレッシングの入口側マニホールドおよび出口側マニホールドのレイアウト図である。
【図9】図9は、それぞれが流体を創傷へ供給しかつ創傷から流体を捕集する、この発明の第2の観点による創傷ドレッシングの入口側マニホールドおよび出口側マニホールドのレイアウト図である。
【図10】図10は、それぞれが流体を創傷へ供給しかつ創傷から流体を捕集する、この発明の第2の観点による創傷ドレッシングの入口側マニホールドおよび出口側マニホールドのレイアウト図である。
【図11】図11は、この発明の第1の観点による創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置の模式図である。この装置には限外濾過ユニットの形態にある流体洗浄用の単相系手段が備わっている。
【図12】図12は、この発明の第1の観点による創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置の模式図である。この装置には透析ユニットあるいは二相性抽出ユニットの形態にある流体洗浄用の二相系手段が備わっている。
【図13】図13は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図14】図14は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図15】図15は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図16】図16は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図17】図17は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図18】図18は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図19】図19は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図20】図20は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図21】図21は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図22】図22は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図23】図23は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図24】図24は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図25】図25は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図26】図26は、この発明の第2の観点による創傷の吸引および/または灌注用の適合性創傷ドレッシングの断面図である。
【図27】図27は、この発明の第1の観点による創傷の吸引、灌注および/または洗浄用の別の装置の模式図である。この装置には限外濾過ユニットの形態にある流体洗浄用の単相系手段が備わっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) i) 創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成することのできる裏張層と、流体供給管へ接続され、創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る少なくとも1つの入口管と、流体排出管へ接続され、創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る少なくとも1つの出口管とを有しており、その入口管あるいはそれぞれの入口管およびその出口管あるいはそれぞれの出口管が創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る箇所は、創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成し、少なくとも1つの入口管は流体再循環管に接続され、少なくとも1つの出口管は流体排出管に接続されている適合性創傷ドレッシングと、
ii) 流体排出管に接続された少なくとも1つの入口部と流体再循環管に接続された少なくとも1つの出口部とを有している流体洗浄手段と
を備えている流体流路、
b) 第2流体供給管によって(場合によってはあるいは必要に応じて、供給と再循環との流れを切り換える手段を介して)前記流路の完全体に接続された流体貯蔵器、
c) 流体を前記創傷ドレッシングと前記流体洗浄手段とによって、また、場合によってはあるいは必要に応じて前記流体供給管によって、移動させる装置、および
d) 場合によっては、前記流体貯蔵器から前記流体供給管(場合によってはあるいは必要に応じて、流れを切り換える前記手段を介して)を通して流体が前記流路を満たすことができるように、かつ、前記流路を通して前記装置によって再循環することができるように、前記流路から流体を放出する手段
を備えていることを特徴とする創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置。
【請求項2】
単相系である流体洗浄手段を備え、創傷からの循環流体が前記流体洗浄手段を通過し、創傷治癒に有害である物質が、前記流体洗浄手段の中における別の流体と直接または間接的に接触する循環流体によることなく除去されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
二相系である流体洗浄手段を備え、創傷からの循環流体が前記流体洗浄手段を通過し、創傷治癒に有害である物質が、前記流体洗浄手段の中における別の流体と直接または間接的に接触する循環流体によって除去されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記流体洗浄手段において、創傷からの循環流体と前記流体洗浄手段における他の流体とが、創傷治癒に有害である物質を選択的に透過させることのできる完全体によって分離されることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記流体洗浄手段において、創傷からの循環流体と前記流体洗浄手段における他の流体とが、創傷治癒に有害である物質を選択的に透過させることのできない完全体によって分離されることと、前記他の流体が、創傷治癒に有害である物質を除去する物質を備えかつ/またはその物質と接触することとを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項6】
創傷治癒に有害である物質を除去する物質が、拮抗剤、結合剤および/または分解剤、そのような有害物質についてのキレート化剤および/またはイオン交換剤、または酸化防止剤であることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項7】
創傷治癒に有害である物質を除去する物質が、4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオライド(AEBSF、ペファブロック)、Nα-p-トシル-L-リシンクロロメチルケトン(TLCK)、ε-アミノカプロイル-p-クロロベンジルアミド、システインプロテアーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、カルボキシル(酸)プロテアーゼ阻害剤、抗炎症性ペプチドミメティックス、3-ヒドロキシチラミン(ドーパミン)、アスコルビン酸(ビタミンC)、ビタミンE、グルタチオン、デスフェリオキサミン(DFO)および/または3-ヒドロキシチラミン(ドーパミン)であることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項8】
創傷治癒に有害である物質が、酸化剤、プロテアーゼ、エンドトキシン、自己誘導物質シグナル分子、血管形成阻害剤、炎症誘発性サイトカイン、および炎症剤であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成することのできる創傷対向面がある裏張層を備え、かつ、
流体供給管へ接続され、創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る少なくとも1つの入口管と、
流体排出管へ接続され、創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る少なくとも1つの出口管とを有しており、
その入口管あるいはそれぞれの入口管およびその出口管あるいはそれぞれの出口管が創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る箇所は、創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成している
ことを特徴とする請求項1に記載の装置に使用する適合性創傷ドレッシング。
【請求項10】
請求項1に記載の創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置を使用して創傷治癒を促進する創傷治療方法。
【請求項1】
a) i) 創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成することのできる裏張層と、流体供給管へ接続され、創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る少なくとも1つの入口管と、流体排出管へ接続され、創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る少なくとも1つの出口管とを有しており、その入口管あるいはそれぞれの入口管およびその出口管あるいはそれぞれの出口管が創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る箇所は、創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成し、少なくとも1つの入口管は流体再循環管に接続され、少なくとも1つの出口管は流体排出管に接続されている適合性創傷ドレッシングと、
ii) 流体排出管に接続された少なくとも1つの入口部と流体再循環管に接続された少なくとも1つの出口部とを有している流体洗浄手段と
を備えている流体流路、
b) 第2流体供給管によって(場合によってはあるいは必要に応じて、供給と再循環との流れを切り換える手段を介して)前記流路の完全体に接続された流体貯蔵器、
c) 流体を前記創傷ドレッシングと前記流体洗浄手段とによって、また、場合によってはあるいは必要に応じて前記流体供給管によって、移動させる装置、および
d) 場合によっては、前記流体貯蔵器から前記流体供給管(場合によってはあるいは必要に応じて、流れを切り換える前記手段を介して)を通して流体が前記流路を満たすことができるように、かつ、前記流路を通して前記装置によって再循環することができるように、前記流路から流体を放出する手段
を備えていることを特徴とする創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置。
【請求項2】
単相系である流体洗浄手段を備え、創傷からの循環流体が前記流体洗浄手段を通過し、創傷治癒に有害である物質が、前記流体洗浄手段の中における別の流体と直接または間接的に接触する循環流体によることなく除去されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
二相系である流体洗浄手段を備え、創傷からの循環流体が前記流体洗浄手段を通過し、創傷治癒に有害である物質が、前記流体洗浄手段の中における別の流体と直接または間接的に接触する循環流体によって除去されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記流体洗浄手段において、創傷からの循環流体と前記流体洗浄手段における他の流体とが、創傷治癒に有害である物質を選択的に透過させることのできる完全体によって分離されることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記流体洗浄手段において、創傷からの循環流体と前記流体洗浄手段における他の流体とが、創傷治癒に有害である物質を選択的に透過させることのできない完全体によって分離されることと、前記他の流体が、創傷治癒に有害である物質を除去する物質を備えかつ/またはその物質と接触することとを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項6】
創傷治癒に有害である物質を除去する物質が、拮抗剤、結合剤および/または分解剤、そのような有害物質についてのキレート化剤および/またはイオン交換剤、または酸化防止剤であることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項7】
創傷治癒に有害である物質を除去する物質が、4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオライド(AEBSF、ペファブロック)、Nα-p-トシル-L-リシンクロロメチルケトン(TLCK)、ε-アミノカプロイル-p-クロロベンジルアミド、システインプロテアーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、カルボキシル(酸)プロテアーゼ阻害剤、抗炎症性ペプチドミメティックス、3-ヒドロキシチラミン(ドーパミン)、アスコルビン酸(ビタミンC)、ビタミンE、グルタチオン、デスフェリオキサミン(DFO)および/または3-ヒドロキシチラミン(ドーパミン)であることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項8】
創傷治癒に有害である物質が、酸化剤、プロテアーゼ、エンドトキシン、自己誘導物質シグナル分子、血管形成阻害剤、炎症誘発性サイトカイン、および炎症剤であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成することのできる創傷対向面がある裏張層を備え、かつ、
流体供給管へ接続され、創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る少なくとも1つの入口管と、
流体排出管へ接続され、創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る少なくとも1つの出口管とを有しており、
その入口管あるいはそれぞれの入口管およびその出口管あるいはそれぞれの出口管が創傷対向面を貫通しかつ/またはその下方を通る箇所は、創傷を覆って相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成している
ことを特徴とする請求項1に記載の装置に使用する適合性創傷ドレッシング。
【請求項10】
請求項1に記載の創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置を使用して創傷治癒を促進する創傷治療方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公表番号】特表2006−503628(P2006−503628A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546200(P2004−546200)
【出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004647
【国際公開番号】WO2004/037334
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(391018787)スミス アンド ネフュー ピーエルシー (79)
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004647
【国際公開番号】WO2004/037334
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(391018787)スミス アンド ネフュー ピーエルシー (79)
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】
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