説明

創傷ケア及び/又は他の組織治癒適用のための骨格材料

創傷ケア及び/又は他の組織治癒適用のための骨格材料及びその製造方法が開示される。該骨格材料は、魚皮からの脱細胞化された細胞外マトリクスから成る。該骨格材料は、魚皮の脂質層からの脂質をも含み得る。該骨格材料を製造する方法及び使用する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷ケア及び/又は他の組織治癒適用のための骨格材料及びその製造方法に関する。該骨格材料は、魚皮からの脱細胞化された細胞外マトリクスを含む。
【背景技術】
【0002】
種々のヒト、動物及び合成材料が現在開示されており、又は、組織欠損を増強、修復又は矯正するための医学的手法において用いられている。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第2003/0059460号は、生体組織の再生に用いられ得る、合成及び天然ポリマーを含むハイブリッドポリマー材料を開示している。このハイブリッドは、架橋された天然のポリマーと生物分解吸収性合成ポリマーを含む。しかしながら、ハイブリッド材料を製造するためには一連の複雑な加工工程を引き受ける必要がある。加えて、得られたハイブリッド材料は、合成材料と同様に天然材料を含有する。
【0004】
米国特許第6,541,023号は、組織工学骨格として使用するための魚皮に由来する多孔性のコラーゲンゲルの使用を開示している。コラーゲンゲルの調製は、魚皮の粉砕を伴う。さらに、中国特許第1068703号は、火傷創傷を手当するための魚皮を調製する方法を開示しており、魚体から魚皮を分離することと、2.5〜3のpH値を確立するのに十分な量のヨードチンキ、エタノール、ボルネオール、サルファダイアジン亜鉛及び塩酸の保存溶液中に該皮を置くこととを伴う。しかしながら、それらの産物は、米国特許第6,541,023号の産物がゲル形態であり、中国特許第1068703号の産物が溶液中に貯蔵されることから、扱いが難しい。
【0005】
さらに、医学的な使用のための多くの細胞外マトリクス産物は、ヒトの皮膚(ALLODERM(登録商標) Regenerative Tissue Matrix(LifeCell));ウシ胎児の皮膚(PRIMATRIX(商標) Dermal Repair Scaffold (TEI Biosciences));ブタ膀胱(MATRISTEM(商標) Extracellular MatrixWound Sheet (Medline Industries, Inc.));及びブタ小腸粘膜下組織(OASIS(登録商標) Wound Matrix (Healthpoint Ltd.))に由来する。しかしながら、創傷治癒及び組織修復を増強する改良された産物及び方法が必要とされている。本発明はこの要求を満たすものである。
【発明の概要】
【0006】
脊椎動物の細胞外マトリクス(ECM)は、細胞を囲む及び支持する複合構造体である。ECMは、構造タンパク質の複雑な混合物から構成され、そのほとんどはコラーゲンであり、他は分化したタンパク質及びプロテオグリカンである。ここで述べる骨格材料は、魚皮からの天然生物学的ECM成分の、大部分は損なわれていない無細胞の骨格である。該骨格は、魚皮からの天然の脂質をも含み得る。皮膚のECMの本来の三次元構造、組成、及び、機能は、基本的に不変であり、及び、細胞の遊走、付着、増殖及び分化を支援する骨格を提供し、これにより組織の修復及び/又は交換を促進する。また、本発明は、該骨格材料を製造する方法及び使用する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、ここで開示される方法に従って魚皮から作られた脱細胞化(decellularized)ECM産物(骨格材料)の実例サンプルを示す。
【図2】図2は、100×(2A)及び400×(2B)の倍率での骨格材料の断面の光学イメージを示す。
【図3】図3は、300×(3A)及び600×(3B)の倍率での骨格材料の断面の走査電子顕微鏡(SEM)イメージを示す。
【詳細な説明】
【0008】
本発明に従う骨格材料は、損なわれていない魚皮から得られる。骨格材料のサンプルの外観を示す実例を図1に示す。硬骨魚又は軟骨魚類を含む任意の種類の魚を、魚皮の原料として用いることができる。例えば、該原料は、タラ、ハドック及びナマズのような丸い魚;ハリバット、ツノガレイ及びシタビラメのようなカレイ類;サケ及びマスのようなサケ科の魚;マグロのようなサバ科の魚;又はニシン、カタクチイワシ、サバ及びイワシのような小魚であってよい。ある態様において、魚皮は、冷水油性魚(cold-water oily fish)及び/又はオメガ−3オイルを高い量で含むことが知られている魚から得られる。オメガ−3オイルが高い魚の例は、サケ、イワシ、マグロ、ニシン、タラ、イワシ、サバ、ギンダラ、キュウリウオ、白身魚、ホキ魚、及びマスのいくつかの種類である。
【0009】
魚皮は、加工前の魚から取り除かれる。魚皮が鱗を持つ種類の魚のものである場合、魚皮は、鱗の大部分が除去されるように、又は、少なくとも酸化燐灰石が鱗から除去されるように、鱗を取り除かれる。「鱗の大部分が除去される」又は「実質的に鱗を含まない」というフレーズは、魚皮上の鱗の少なくとも95%、好ましくは少なくとも99%、及びより好ましくは100%が除去されることを意味する。「実質的に鱗を含まない」魚皮は、鱗のない種類の魚からの魚皮を指すこともできる。鱗は、全ての加工の前に、純粋に機械的圧力(例えば、ナイフ、研摩材との振盪、水圧、ナイフ或いはセラミック又はプラスチックを用いた研磨のような他の圧力デバイスと同じ機械力を用いる特別な鱗除去デバイスを介して)によって除去されるか、又は、いくつかの化学的処置(例えば、脱細胞化(decellularization))の後に、鱗を洗い落とすための機械的圧力によって除去される。魚皮が最初に化学的に及び/又は酵素的に(例えば、トリトン(登録商標)X−100での処置)に処置される場合、脱細胞化後の皮はより引き裂かれやすいために、通常、機械的圧力は穏やかである必要がある。鱗は、二以上の工程、例えば、脱細胞化の前の部分的除去に続いて脱細胞化の間及び/又は後のさらなる除去において除去され得る。或いは、鱗は化学的処置のみによって除去され得る。
【0010】
鱗が除去された後、魚皮は、脱細胞化の前に任意に凍結される。魚皮は、骨格のコラーゲン構造を保つために、液体窒素中で該皮をインキュベートすることによって、又は、-70℃以下に該皮を凍結できる他の特別な凍結設備を用いることにより、急速に凍結され得る。或いは、該魚皮は、魚工場において典型的に見られる従来のタイプの冷凍機中で凍結されてよい。凍結プロセスは、損なわれていない魚皮に含まれる細胞を溶解するか又は部分的に溶解し、魚皮の脱細胞化の促進を助けることができる。魚皮が凍結されている場合、さらなる加工のために後で解凍されてよい。
【0011】
魚皮が凍結されていてもいなくても、さらなる加工の前にバッファー溶液で洗浄されてよい。例えば、魚皮は、魚皮の消毒及び安定化を促進するために、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸(例えば50mMアスコルビン酸)、ビタミンA、C、E、及びベータカロテン)、抗生物質(例えば、ストレプトマイシン及びペニシリン)、プロテアーゼ(例えば、ディスパーゼII)及びプロテアーゼ阻害剤(例えば、アンチパイン、アプロチニン、ベンズアミジン、ベスタチン、DFP、EDTA、EGTA、ロイペプチン、ペプスタチン、ホスホラミドン及びPMSF)の一以上を任意に含むバッファー溶液で1〜3回洗浄されてよい。バッファー溶液は、少なくとも5.5のpHであってよく、例えば、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0又はそれ以上である。ある態様において、pHは7.0〜9.0であり、例えば、7.5〜8.5である。バッファー溶液は、魚皮を数日から数週間又はそれ以上の間貯蔵し得る媒体としても使用され得る。ある態様において、魚皮は、バッファー溶液中に約4℃の温度で貯蔵される。
【0012】
バッファー溶液中での凍結及び/又は洗浄及び/又は貯蔵の後、魚皮は、抗原性物質を含む細胞性物質を魚皮から最小に除去するために、機械的及び構造的完全性並びに天然の細胞外マトリクスの生物活性にダメージを与えないように、一以上の脱細胞化(decellularizing)溶液で処理される。
【0013】
ここで用いられる「細胞外マトリクス」又は「ECM」という用語は、種々の他の重要な機能を行うことに加えて、皮の細胞に構造的サポートを提供する、魚皮中に存在する非細胞性組織物質を指す。ここで記載されるECMは、抽出され、精製され、又は分離されたECM成分(例えば、コラーゲン)から構成されたか又は完全に再形成されたマトリクス物質を含まない。
【0014】
ここで用いられる「無細胞の」、「脱細胞化された(decellularized)」、「脱細胞化された魚皮」などの用語は、ECMの複合三次元組織内構造を残して細胞性及び核酸内容物のかなりの量が除去された魚皮を指す。「脱細胞化剤(decellularizing agents)」は、かなりの量の細胞性及び核酸内容物をECMから除去するのに効果的な薬剤である。生存核酸及び非生存核酸及び他の細胞性物質の少なくとも50%がECMから除去されたとき、ECMは、「脱細胞化された」又は細胞性及び核酸内容物を「実質的に含まない」(即ち、「かなりの量」が除去されている)。ある態様において、約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は100%の生存及び非生存核酸及び細胞性物質が除去される。脱細胞化は、例えば、DNA内容物について処置された魚皮を試験することによって確かめられる。ECMからの核酸の除去は、例えば、ECMの組織学的試験、及び/又はPICOGREEN(登録商標)アッセイ、ジフェニルアミンアッセイなどの生化学的アッセイによって、又はPCRによって決定できる。
【0015】
脱細胞化は細胞膜を破裂させ、細胞の内容物を放出する。脱細胞化は、一以上の物理的処置、一以上の化学的処置、一以上の酵素的処置、又はそれらの任意の組合せを包含し得る。物理的処置の例は、超音波処理、機械的撹拌、機械的マッサージ、機械的圧迫、及び凍結/解凍である。化学的脱細胞化剤の例は、イオン性塩(例えば、アジ化ナトリウム)、塩基、酸、洗浄剤(例えば、非イオン性及びイオン性洗浄剤)、酸化剤(例えば、過酸化水素及び、ペルオキシ酸)、低張液、高張液、キレート剤(例えば、EDTA及びEGTA)、有機溶媒 (例えば、トリ(n-ブチル)-ホスフェート)、アスコルビン酸、メチオニン、システイン、マレイン酸、及びDNAに結合するポリマー(例えば、ポリ−L−リシン、ポリエチルイミン(PEI)、及びポリアミンドアミン(PAMAM))である。非イオン性洗浄剤は、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル−ポリエチレングリコール、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、ポリエチレングリコールtert−オクチルフェニルエーテル(トリトン(登録商標)X−100)(Dow Chemical Co.)を含む。イオン性洗浄剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、デオキシコール酸ナトリウム、トリトン(登録商標)X−200、及び双性イオン洗浄剤(例えば、CHAPS)を含む。他の適切な脱細胞化洗浄剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート及びポリオキシエチレン(80)ソルビタンモノオレエート(Tween20及び80)、3−[(3−クロロアミドプロピル)−ジメチルアミノ]−1−プロパン−スルホネート、オクチル−グルコシド及びドデシル硫酸ナトリウムを含む。酵素的脱細胞化剤の例は、プロテアーゼ、エンドヌクレアーゼ、及びエキソヌクレアーゼである。プロテアーゼは、セリンプロテアーゼ(例えば、トリプシン)、スレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパルテート プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ(例えば、サーモリシン)、及びグルタミン酸プロテアーゼを含む。脱細胞化は、通常、少なくとも5.5のpHで、例えば、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0又はそれ以上のpHで行われる。ある態様において、pHは、7.0〜9.0であり、例えば、7.5〜8.5である。
【0016】
脱細胞化工程の例は、1MのNaCl、2%のデオキシコール酸、0.02%のアジ化ナトリウム及び500ppmのストレプトマイシンを含む溶液中で魚皮をインキュベートすることである。他の例において、魚皮は、プロテアーゼ(例えば、2.5U/mLのディスパーゼII)及び他の成分(例えば、0.02%のアジ化ナトリウム)を含む第一の脱細胞化溶液でインキュベートされる。第一の脱細胞化溶液が流され、次いで、魚皮は、洗浄剤(例えば、0.5%トリトン(登録商標)X−100)及び他の成分(例えば、0.02%アジ化ナトリウム)を含む溶液などの第二の脱細胞化溶液で処置される。他の例において、魚皮は、まず、洗浄剤(例えば、0.5%トリトン(登録商標)X−100)を他の成分(例えば、0.02%EDTA、アジ化ナトリウム、及び/又はデオキシコール酸)と共に含む脱細胞化溶液で処置され、次いで、SDSなどの洗浄剤を含む第二の脱細胞化溶液中でインキュベートされる。
【0017】
魚皮は、撹拌しながらインキュベートされてもされなくてもよい。脱細胞化工程は、全ての残った脱細胞化溶液が流され、任意に魚皮をバッファー溶液(例えば、ハンクス液)で洗浄し、次いで、脱細胞化のさらなる工程で魚皮を再度処置することにより、必要に応じて繰り返されてよい。一旦、十分な量の細胞性物質が除去されたら、脱細胞化溶液は除去されてよい(例えば、吸引によって又は溶液を穏やかに流すことによって)。
【0018】
脱細胞化の後、魚皮は任意に水、バッファー溶液、及び/又は塩溶液で洗浄されてよい。適切な洗浄溶液の例は、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)、ハンクス液(HBSS)、メディウム199(M199, SAFC Biosciences, Inc.)及び/又はL−グルタミンを含む。洗浄工程は、通常、少なくとも5.5のpHで、例えば、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0又はそれ以上のpHで行われる。ある態様においてpHは7.0〜9.0であり、例えば、7.5〜8.5である。
【0019】
魚皮は、最終産物の外観を改良するために、任意に漂白されてよい。漂白は、脱細胞化の前、後、及び/又は同時に行われてよい。例えば、一以上の漂白剤が、一以上の脱細胞化溶液に及び/又は一以上のバッファー溶液に混合され得る。漂白剤の例は、亜硫酸ナトリウム、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、及び過硫酸ナトリウムを含む。ある態様において、過硫酸塩のような強力な漂白剤を用いる場合、漂白及び脱細胞化は、一以上の漂白剤、濃厚剤及び過酸化物源の混合物中で魚皮をインキュベートすることを含む一つの工程において組み合わされてもよい。例えば、乾燥漂白混合物が調整され(例えば、実施例5に記載される「漂白混合物」を参照)、続いて、水、過酸化水素、又はそれらの混合物が乾燥混合物に加えられて、脱細胞化にも十分であり得る漂白溶液が作られる。漂白剤(例えば、亜硫酸ナトリウム、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、及び過硫酸ナトリウム)は、乾燥混合物の約40〜60%w/wである。漂白並びに脱細胞化を加速するために、EDTAと過硫酸塩の組合せが混合物に加えられ得る。ある態様において、乾燥混合物中のEDTAの濃度は約0.25〜5%w/wである。過酸化水素は、混合物の約15〜25%であってよく;過酸化物源は、過炭酸ナトリウム及び過炭酸カリウムであってよい。リン酸ナトリウム過水和物(perhydrate)及び炭酸ナトリウム又はメタケイ酸マグネシウム及びシリシウムシリケートもまた、過酸化物源として使用され得る。乾燥混合物は、また、シリカ及び水和シリカを例えば、1〜10%w/wで、及び任意に一以上のステアラート(例えば、ステアリン酸アンモニウム、ステアリン酸ナトリウム、及び/又はステアリン酸マグネシウム)を含み得る。さらに、乾燥混合物は、任意に、ヒドロキシプロピル メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン(即ちアルギン酸塩)、有機ゴム(例えば、セルロース、キサンタンガム)メタケイ酸ナトリウム、及びそれらの組合せのような濃厚剤を、漂白/脱細胞化溶液の粘度を上げ、また、ダメージからタンパク質繊維を保護するために含み得る。漂白、及び/又は漂白プラス脱細胞化は、通常、少なくとも5.5のpHで、例えば、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0又はそれ以上のpHで行われる。ある態様において、pHは、7.0〜9.0であり、例えば7.5〜8.5である。漂白及び/又は漂白プラス脱細胞化の後に、魚皮は任意に、L−グルタミンを含む溶液で、上記のpH条件下で洗浄される。
【0020】
ある態様において、魚皮は、消化酵素で処置される。漂白と同様に、消化は、脱細胞化の前、後、及び/又は同時に行われ得る。適切な酵素は、プロテアーゼ、例えばセリンプロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパルテート プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、及びグルタミン酸プロテアーゼを含む。ある態様において、消化酵素は、トリプシンなどのセリンプロテアーゼである。消化酵素は、アルカリ性環境において機能し、ECM内の架橋を制限し、魚皮を柔らかくする酵素であってよい。消化は、通常、少なくとも5.5のpHで、例えば、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0又はそれ以上のpHで行われる。ある態様において。pHは7.0〜9.0であり、例えば7.5〜8.5である。
【0021】
脱細胞化された魚皮は任意に凍結保存され得る。凍結保存は、凍結の前に魚皮を凍結保護物質溶液中に浸漬することを伴ってよい。凍結保護物質溶液は、通常、適切なバッファー、一以上の凍結保護物質、及び任意に溶媒、例えば水と組み合わされて最小の膨張及び収縮を起こす有機溶媒を含む。凍結保護物質の例は、スクロース、ラフィノース、デキストラン、トレハロース、ジメチルアセトアミド、エイメチルスルフォキシド、エチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール、2−メチル−2.4−パンタンディアル、ある種の抗凍結タンパク質及びペプチド、及びそれらの組合せを含む。或いは、脱細胞化された魚皮が、凍結工程の間に形成される氷結晶を最小化するために昇華の前に急速凍結(瞬間凍結)される場合、皮は任意に凍結保護物質を含まないバッファー溶液中で凍結され得る。凍結保存は、通常、少なくとも5.5のpHで、例えば、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0又はそれ以上のpHで行われる。ある態様において、pHは7.0〜9.0であり、例えば7.5〜8.5である。
【0022】
脱細胞化された魚皮は、ガラス瓶又はポーチなどの無菌容器の中に入れられてよい。一つの態様において、TYVEK(登録商標)ポーチが用いられる。例えば、魚皮は、凍結保護物質溶液中でインキュベートされ、TYVEK(登録商標)ポーチに入れられ、次いで、凍結乾燥機内に置かれ、凍結保護物質と適合する速度で凍結されてよい。
【0023】
脱細胞化された魚皮は凍結乾燥されてよい、即ち、氷が再結晶化することなくそれぞれの氷の結晶相から連続的に水が除去されるように、低温及び減圧下の条件で凍結されてよい。凍結乾燥の間、水は、通常、昇華により最初に除去され、次いで、必要であれば脱着により除去される。加工後及び滅菌前に過剰な水を除去する他の方法は、真空プレスである。
【0024】
ある態様において、脱細胞化された魚皮は、凍結される前及び/又はその後に滅菌される。滅菌方法は当該分野で周知である。例えば、脱細胞化された魚皮は、エチレンオキシドチャンバー中に置かれ、エチレンオキシドの適切なサイクルで処置され得る。他の滅菌方法は、オゾン、二酸化炭素、ガス状ホルムアルデヒド又は放射線(例えば、ガンマ放射、X−線、電子ビームプロセシング、及び亜原子粒子)を用いた滅菌を含む。
【0025】
凍結、水の凍結乾燥及び/又は真空プレスの代わりに又はそれに加えて、脱細胞化された魚皮は、アルコールなどの非水溶性溶液中に保存され得る。
【0026】
得られた産物(骨格材料)は、組織の再生、修復及び/又は交換(例えば、内在性の組織の修復、再生、及び/又は増殖)を促進し得る性質を有する無菌のコラーゲンベースのマトリクスである。「骨格材料(scaffold material)」という用語は、上記のように、脱細胞化され、任意に漂白、消化、乾燥凍結などをされた魚皮を含む材料を指す。骨格材料は、内皮細胞及び/又は上皮細胞の支持のための損なわれていない骨格を提供でき、ホストによって統合され得、生体適合性であり、著しく石灰化せず、また、環境温度で貯蔵及び輸送可能である。「ホストによって統合される」というフレーズは、ここでは、骨格材料で処置される患者の細胞及び組織が、骨格材料中に伸びることが可能であり、骨格材料が実際に患者の体内に統合/吸収されることを意味する。「生体適合性」という用語は、それの意図される使用のインビボ環境において実質的に非毒性であり、患者の生理学的システムによって実質的に拒絶されない(即ち、非抗原性)材料を指す。これは、国際標準化機構(ISO)基準第10993及び/又は米国薬局方(USP)23及び/又は米国食品及び薬物投与(FDA)青書摘要書第G95-1、表題「Use of International Standard ISO-10993, Biological Evaluation of Medical Devices Part 1: Evaluation and Testing」によって説明される生体適合性試験をパスする材料の能力によって測定され得る。典型的には、それらの試験は、材料の毒性、感染性、発熱性、刺激ポテンシャル、反応性、溶血性活性、発癌性及び/又は免疫原性を測定する。生体適合性構造又は材料は、大多数の患者に導入されたとき、著しく有害な、長く続くか又はエスカレートする生物学的反応又は応答を起こさず、典型的には外科的処置又は外来の物体の生物への移植に伴う穏やかな一時的な炎症とは区別される。
【0027】
持続的に高いレベルのマトリクスメタロプロテーゼ(metalloproteses)(MMP)は、創傷慢性に寄与し得る。ここで記載した骨格材料は、マトリクスメタロプロテーゼ(MMP)を吸収し得るため、創傷治癒及び慢性から急性創傷への移行を促進する。
【0028】
骨格材料は、魚皮の細胞外マトリクス(ECM)からのタンパク質を含有する。骨格材料中のECM成分は、例えば、構造タンパク質;粘着性グリコタンパク質;プロテオグリカン;非プロテオグリカンポリサッカリド;及びマトリクス細胞タンパク質を含むことができる。構造タンパク質の例は、コラーゲン(ECM中のもっとも豊富なタンパク質)、例えば、繊維状のコラーゲン(I、II、III、V、及びXI型);筋膜(facit)コラーゲン(IX、XII、及びXIV型)、短鎖コラーゲン(VIII及びX型)、基底膜コラーゲン(IV型)及び他のコラーゲン(VI、VII、及びXIII型);エラスチン;及びラミニンを含む。粘着性グリコタンパク質の例は、フィブロネクチン;テネイシン;及びトロンボスポンジンを含む。プロテオグリカンの例は、ヘパリンスルフェート;コンドロイチンスルフェート;及びケラタンスルフェートを含む。非プロテオグリカンポリサッカリドの例は、ヒアルロン酸である。マトリクス細胞性タンパク質は、細胞表面のレセプター、サイトカイン、成長因子、プロテアーゼ、及びECMとの相互作用を介して細胞機能を制御する、構造的に多様な細胞外タンパク質のグループである。例には、トロンボスポンジン(TSP)1及び2;テネイシン;及びSPARC(分泌タンパク質、酸性でシステインに富む)が含まれる。
【0029】
ある態様において、脱細胞化(decellularization)(及び他の任意の加工工程)は、魚皮の脂質層から天然の脂質の全てを除去しない。従って、骨格材料は、魚皮からの一以上の脂質を含み得る。特に、魚皮の脂質層からの脂質を含み得る。例えば、骨格材料は、約25%w/wまでの脂質(凍結乾燥後の全骨格材料の乾燥重量の)、例えば、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、又は24%w/wまでの脂質を含み得る。骨格材料中の脂質の存在は、例えば、有機溶媒抽出に続くクロマトグラフィーによって確かめられる。適切な有機溶媒の例は、アセトン及びクロロホルムを含む。
【0030】
骨格材料中の脂質は、例えば、脂肪アシル(即ち脂肪酸、それらの接合体、及び誘導体);グリセロ脂質;グリセロリン脂質(即ちリン脂質);スフィンゴ脂質;サッカロ脂質;ポリケチド;ステロール脂質(即ちステロール);ある種の脂肪溶解性ビタミン;プレノール(prenol)脂質;及び/又はポリケチドを含んでよい。脂肪アシルの例は、飽和脂肪酸、例えば、ポリ不飽和脂肪酸;脂肪エステル;脂肪アミド;及びエイコサノイドを含む。ある態様において、脂肪酸は、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)(魚油中に高い濃度で見られる)などのオメガ−3脂肪酸を含む。魚油中に見いだされる他の脂肪酸は、アラキジン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アルファ−リノレン酸、ガンマ−リノレン酸、ベヘン酸、エルカ酸、及びリグノセリン酸を含む。グリセロ脂質の例は、一置換、二置換、及び三置換のグリセロール、例えばモノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、及びトリアシルグリセロール(即ちモノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリド)を含む。グリセロリン脂質の例は、ホスファチジルコリン;ホスファチジルエタノールアミン;及びホスファチジルセリンを含む。スフィンゴ脂質の例は、ホスホスフィンゴ脂質及びグリコスフィンゴ脂質を含む。ステロール脂質の例は、コレステロール;ステロイド;及びセコステロイド(ビタミンDの変異形)を含む。プレノール脂質の例は、イソプレノイド;カロテノイド;及びキノン及びヒドロキノン、例えばビタミンE及びKを含む。
【0031】
骨格材料は、一以上の追加される活性剤(即ち、骨格材料の加工の間又は後に加えられる薬剤)、例えば抗生物質、防腐剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、駆虫剤及び抗炎症剤を含んでよい。活性成分は、抗酸化剤又は薬物などの創傷ケア及び/又は組織治癒を促進する化合物又は組成物であってよい。それは、タンパク質又はタンパク質類及び/又は他の生物製剤であってもよい。抗生物質、防腐剤、及び抗菌剤は、効果的な抗菌特性を骨格材料に提供するのに十分な量で加えられてよい。ある態様において、抗菌剤は、一以上の抗菌性金属、例えば、銀、金、白金、銅、亜鉛又はそれらの組合せである。例えば、銀は、イオン、金属、元素及び/又はコロイド形態で、加工中に骨格材料に添加され得る。銀は、また、他の抗菌剤と組み合わせられてもよい。抗炎症剤は、骨格材料が適用される創傷又は組織領域における炎症を減少及び/又は抑制するのに十分な量で添加されてよい。
【0032】
骨格材料は、乾燥された形態で用いられ得る。あるいは、骨格材料は、使用の前に再水和されてよい。ある態様において、厚い骨格材料を形成するために、一以上の骨格材料が共に積層される。
【0033】
通常、骨格材料は、約0.1〜4.0mmの厚さ(即ち断面において)であり、例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0又は3.5mmの厚さである。その厚さは、開始材料として用いられる魚の種類、加工、凍結乾燥、及び/又は水和(実施例14を参照)を含む多くの要因に依存し得る。もちろん、産物が二以上の層の骨格材料を含む場合、厚さは比例して大きくなる。
【0034】
ここで開示される骨格材料は、種々の医学的適用のために用いられ得る。例えば、骨格材料は、創傷包帯(wound dressing)として及び/又は縫合材料として用いられてよく、ここで、骨格材料は、創傷又は組織領域に又はその一部に適用される。「創傷」という用語は、組織ダメージ、組織穿通(penetration)、裂傷、又は損害(lesions)をもたらす任意の損傷を指す。骨格材料による治療を受け入れられる創傷は、内部、界面、外部、間隙、体外、及び/又は体内を含む任意のサイトに位置され得る損傷を含む。骨格材料で被覆されるのに適した創傷の例は、切り傷、裂傷、開放創傷、組織破裂、褥瘡、皮膚炎、障害、慢性創傷、戦場創傷、壊死性創傷、急性、慢性、外傷性、裂傷、擦過傷、挫傷、壊死性筋膜、毒性表皮のネクロリシス、圧迫創傷、静脈機能不全性潰瘍、動脈性の潰瘍、糖尿病の又は神経障害性の潰瘍、褥瘡性潰瘍、混合性潰瘍、火傷創傷、毛菌症、脈管炎創傷、膿皮、壊疽、及び同等物及び/又はそれらの組合せを含み、当業者に既知である。ヒト及び動物被検体における創傷の治療が予期される。
【0035】
ある態様において、骨格材料は、腹壁再構築のために、例えばヘルニアを修復するために用いられる。例えばヘルニアの修復において、外科医はヘルニアの位置の近くで切開する。鼠蹊部のヘルニアについては、切開は腹部が大腿にあうところの折り目のすぐ上で行われる。臍ヘルニアの修復は臍の近くで行われる。ヘルニアが以前の手術の部位で生じている場合、その外科的処置からの切開が再び開かれる。切開が行われる場所に関わらず、外科的処置は同様の多くの方法において続行される。ヘルニア嚢は、慎重に開かれ、腸又は他の組織は腹部の中に戻される。弱まった領域は、腹筋組織を一緒に引き戻す合成メッシュ又は縫合で修復されて補強される。
【0036】
ここで開示される骨格材料は、メッシュ材料又は縫合として用いられ得るか、又は、メッシュ材料又は縫合を強化するために用いられ得る。骨格材料は、創傷包帯、メッシュ材料、包帯、又は縫合などの創傷ケア又は組織治癒産物を補強又は増強するために用いられ得る。例えば、骨格材料は、創傷包帯、メッシュ材料又は縫合の次に又はそれと絡み合わせて用いられ得る。メッシュ材料又は縫合として、又は、メッシュ材料又は縫合を強化するために用いられる場合、骨格材料は、成分ECM物質の架橋結合を増大するために、例えばグルテルアルデヒド又はクロムなどの化学的架橋結合を用いて処置され得る。骨格材料は、また、歯周病のために失われた歯肉の交換、膀胱スリングの形成、及び骨盤底の再構築の促進のために用いられ得る。
【0037】
ここで用いられるように、単数形「a」「an」及び「the」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数の物を含む。
【0038】
ここで記載された刊行物は、本願の出願日以前のそれらの開示を単に提供するものである。本明細書が先の開示のためにそのような刊行物より前の権利を与えられないことを承認するものとして解釈されるべきではない。さらに、提供された刊行物の日付は、実際の公開日とは相違する可能性があり、個々に確認される必要があり得る。ここで挙げられた全ての刊行物、特許、特許出願及び他の参考文献は、それらのすべてが参照によって本明細書に援用される。
【0039】
明細書はある態様を参照して詳細に説明しているが、開示の範囲から逸脱しない限り、種々の変更が行われてよく、等価物が用いられ得ることは、当業者には明らかである。さらに、以下の実施例は単なる例証であり、いかなる意味でも開示を限定するように解釈されるべきではない。
【実施例】
【0040】
実施例1
皮除去
皮をなるべく多くの表皮の脂肪と一緒に魚の切り身から除去した。ナイフで魚皮の表面をこすってまな板上で魚皮から鱗をとった。
殺菌及び安定化
脱鱗化した皮を、それぞれ50mMのアスコルビン酸と500ppmのストレプトマイシンを含む滅菌リン酸バッファー生理食塩水で、4℃で1時間、2回洗浄した。
【0041】
脱細胞化
a)魚皮を、1MのNaCl中に8時間置き、続いて、0.02%のアジ化ナトリウム及び500ppmのストレプトマイシンを含む2%のデオキシコール酸中でインキュベートした。
【0042】
b) a)における溶液を流した。魚皮を、10分間、40RPMで、室温でハンクス液に中に置いた。この工程を繰り返し、魚皮を、層流フード中の容器中に置き、開放して溶液を吸引した。手順を二回以上繰り返した。
【0043】
c)魚皮を0.5%のSDSを含む脱細胞化溶液で処置し、該容器を室温で1時間、40RPMでの回転装置中に置いた。
【0044】
d)脱細胞化溶液を、b)において記載したように吸引により除去した。魚皮を50mLのダルベッコのリン酸バッファー生理食塩水で洗浄した。
【0045】
消化
魚皮を、18時間、室温で、1MのTris−HCl、0.05μg/mLのトリプシン、pH8.5からなる消化溶液中でインキュベートした。
凍結保護
魚皮を、ハンクス液中に7%のデキストラン、6%のスクロース、6%のラフィノース及び1mMのEDTAを含む前凍結溶液中に浸漬した。
洗浄
魚皮を前凍結溶液で洗浄し、室温で120分の間、40RMPの回転装置中に置いた。
パッケージング
魚皮をポーチ中に挿入してヒートシールで閉じた。ポーチは、エチレンオキシド(EtOx)での滅菌に適した、DuPontからの医用等級の多孔性TYVEK(登録商標)膜ポーチであった。
凍結乾燥
魚皮を含むポーチを凍結乾燥機中に入れて凍結乾燥した。
滅菌
魚皮を含むポーチをエチレンオキシドチャンバーに入れ、エチレンオキシドの1〜5サイクルで処置して魚皮を滅菌した。
【0046】
実施例2
皮除去
皮をなるべく多くの表皮の脂肪と一緒に魚の切り身から除去した。ナイフで魚皮の表面をこすってまな板上で魚皮から鱗をとった。
殺菌及び安定化
脱鱗化した皮を、それぞれ50mMのアスコルビン酸と500ppmのストレプトマイシンを含む滅菌リン酸バッファー生理食塩水で、4℃で1時間、2回洗浄した。
【0047】
脱細胞化
a)魚皮を、2.5U/mLのディスパーゼII(又はプロナーゼ)及び0.02%のアジ化ナトリウムを含むリン酸バッファー生理食塩水中に置き、4℃で8時間、連続的に振盪しながらインキュベートした。次いで、溶液を流し、サンプルを0.5%のトリトン(登録商標)X−100及び0.02%のアジ化ナトリウムの第二溶液中で24時間、穏やかに振盪しながらインキュベートした。
【0048】
b) a)における溶液を流した。魚皮を、10分間、40RPMで、室温でハンクス液に中に置いた。この工程を繰り返し、魚皮を、層流フード中の容器中に置き、開放して溶液を吸引した。手順を二回以上繰り返した。
【0049】
c)魚皮を0.5%のSDSを含む脱細胞化溶液で処置し、該容器を室温で1時間、40RPMでの回転装置中に置いた。
【0050】
d) c)の脱細胞化溶液を、b)において記載したように吸引により除去した。魚皮を50mLのダルベッコのリン酸バッファー生理食塩水で洗浄した。
【0051】
消化
魚皮を、18時間、室温で、1MのTris−HCl、0.05μg/mLのトリプシン、pH8.5からなる消化溶液中でインキュベートした。
凍結保護
魚皮を、ハンクス液中に7%のデキストラン、6%のスクロース、6%のラフィノース及び1mMのEDTAを含む前凍結溶液中に浸漬した。
洗浄
魚皮を前凍結溶液で洗浄し、室温で120分の間、40RMPの回転装置中に置いた。
パッケージング
魚皮をTYVEK(登録商標)膜ポーチに挿入してヒートシールで閉じた。
凍結乾燥
魚皮を含むポーチを、凍結乾燥機中に入れて凍結乾燥した。
滅菌
魚皮を含むポーチをエチレンオキシドチャンバーに入れ、エチレンオキシドの1〜5サイクルで処置して魚皮を滅菌した。
【0052】
実施例3
皮除去
皮をなるべく多くの表皮の脂肪と一緒に魚の切り身から除去した。ナイフで魚皮の表面をこすってまな板上で魚皮から鱗をとった。
凍結
魚皮を、標準の魚工場の急速冷凍機中で凍結した。凍結プロセスの間、細胞は溶解した。凍結は微生物の増殖を阻害する。
解凍
魚皮を4℃で解凍した。
殺菌及び安定化
脱鱗化した皮を、それぞれ50mMのアスコルビン酸と500ppmのストレプトマイシンを含む滅菌リン酸バッファー生理食塩水で、4℃で1時間、2回洗浄した。
脱細胞化
a)魚皮を0.5%のSDSを含む脱細胞化溶液で処置し、該容器を室温で1時間、40RPMでの回転装置中に置いた。
【0053】
b)脱細胞化溶液を吸引により除去した。魚皮を50mLのダルベッコのリン酸バッファー生理食塩水で洗浄した。
【0054】
消化
魚皮を、18時間、室温で、1MのTris−HCl、0.05μg/mLのトリプシン、pH8.5からなる消化溶液中でインキュベートした。
凍結保護
魚皮を、ハンクス液中に7%のデキストラン、6%のスクロース、6%のラフィノース及び1mMのEDTAを含む前凍結溶液中に浸漬した。
洗浄
魚皮を前凍結溶液で洗浄し、室温で120分の間、40RMPの回転装置中に置いた。
パッケージング
魚皮をTYVEK(登録商標)膜ポーチに挿入してヒートシールで閉じた。
凍結乾燥
魚皮を含むポーチを、凍結乾燥機中に入れて凍結乾燥した。
滅菌
魚皮を含むポーチをエチレンオキシドチャンバーに入れ、エチレンオキシドの1〜5サイクルで処置して魚皮を滅菌した。
【0055】
実施例4
漂白された骨格マトリクスを得るために、洗浄工程において前凍結溶液に漂白剤(亜硫酸ナトリウム)を0.5%の濃度で加えた以外は、魚皮を実施例1〜3のそれぞれに記載したように処理した。
【0056】
実施例5
漂白/脱細胞化混合物を、以下のように調製した。
【表A−1】

【表A−2】

【0057】
実施例6
皮除去
皮を魚の切り身から除去した。スチールワイヤーブラシ及びナイフで魚皮の表面をこすって魚皮から実質的に鱗をとった。
凍結
皮を急速冷凍器で凍結した(即ち、−80℃の冷凍器中に直接置いた)。次いで、皮を冷凍器から取り出して室温で約2時間解凍した。
【0058】
脱細胞化
a)ダルベッコのリン酸バッファー生理食塩水(DPBS)中に0.5%のトリトン(登録商標)X−100及び0.02%のアジ化ナトリウムを含む溶液中で組織をインキュベートし、40rpmで2時間、室温で振盪し、該溶液を流した。
【0059】
b)脱鱗化プロセスをナイフで続けた。鱗を含まない産物を得た(見てわかる鱗なし)。
【0060】
c)次いで、組織をハンクス液(HBSS)中の2mMのL−グルタミン中に10分間、40rpm及び室温で置き、該溶液を流した。
【0061】
d)組織を、HBSS中の0.5%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の溶液中に、1時間、室温で置き、40rpmで振盪し、該溶液を流した。
【0062】
消化
組織を18時間、室温で、1mMのEDTA及び0.05μg/mLのトリプシンのpH8.5の消化溶液中でインキュベートした。
漂白
組織を漂白混合物Cと2%過酸化水素で30分間漂白した。
洗浄
組織を連続する水流で、6℃で48時間洗浄した。
凍結保護
魚皮を、ダルベッコのリン酸バッファー生理食塩水(DPBS)液中に7%のデキストラン、6%のスクロース、6%のラフィノース及び1mMのEDTAを含む前凍結溶液中に浸漬した。
パッケージング
魚皮をTYVEK(登録商標)膜ポーチに挿入してヒートシールで閉じた。
凍結乾燥
魚皮を含むポーチを、凍結乾燥機中に入れて凍結乾燥した。
滅菌
魚皮を含むポーチをエチレンオキシドチャンバーに入れ、エチレンオキシドの1〜5サイクルで処置して骨格を滅菌した。
【0063】
実施例7
皮除去の後の凍結工程を除いて、実施例6に記載したように産物を製造した。凍結工程の代わりに、組織を、50mMのアスコルビン酸、500ppmのストレプトマイシンをそれぞれ含む滅菌リン酸バッファー生理食塩水で、4℃で1時間、二回洗浄した。
【0064】
実施例8
皮除去
皮を魚の切り身から除去した。スチールワイヤーブラシ及びナイフで魚皮の表面をこすって魚皮から鱗をとった。
凍結
皮を急速冷凍器中で、−80℃で凍結した。次いで、皮を冷凍器から取り出して室温で約2時間解凍した。
【0065】
脱細胞化
a)ダルベッコのリン酸バッファー生理食塩水(DPBS)中の0.5%のトリトン(登録商標)X−100及び0.02%のEDTAの溶液中で組織をインキュベートし、40rpmで24時間、室温で振盪し、該溶液を流した。
【0066】
b)脱鱗化プロセスをナイフで続けた。鱗を含まない産物を得た(見てわかる鱗なし)。
【0067】
c)組織をHBSS中の0.5%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の溶液中に1時間、室温で置き、40rpmで振盪し、該溶液を流した。
【0068】
d)次いで、組織を、ハンクス液(HBSS)中の2mMのL−グルタミン中に10分間、40rpm及び室温で置き、該溶液を流した。
【0069】
漂白
組織を漂白混合物Cと2%過酸化水素で30分間漂白した。
洗浄
組織を連続する水流で、6℃で48時間洗浄した。
凍結保護
魚皮を、ダルベッコのリン酸バッファー生理食塩水(DPBS)液中に7%のデキストラン、6%のスクロース、6%のラフィノース及び1mMのEDTAを含む前凍結溶液中に浸漬した。
パッケージング
魚皮をTYVEK(登録商標)膜ポーチに挿入してヒートシールで閉じた。
凍結乾燥
魚皮を含むポーチを、凍結乾燥機中に入れて凍結乾燥した。
滅菌
魚皮を含むポーチをエチレンオキシドチャンバーに入れ、エチレンオキシドの1〜5サイクルで処置して骨格を滅菌した。
【0070】
実施例9
皮除去の後の凍結工程を除いて、実施例8に記載したように産物を製造した。凍結工程の代わりに、組織を、50mMのアスコルビン酸、500ppmのストレプトマイシンをそれぞれ含む滅菌リン酸バッファー生理食塩水で、4℃で1時間、二回洗浄した。
【0071】
実施例10
皮除去
皮を魚の切り身から除去した。スチールワイヤーブラシ及びナイフで魚皮の表面をこすって魚皮から実質的に鱗をとった。
【0072】
凍結
皮を急速冷凍器中で、−80℃で凍結した。次いで、皮を冷凍器から取り出して室温で約2時間解凍した。
【0073】
脱細胞化
a)ダルベッコのリン酸バッファー生理食塩水(DPBS)中の0.5%のトリトン(登録商標)X−100及び0.02%のEDTAの溶液中で組織をインキュベートし、40rpmで48時間、室温で振盪し、該溶液を流した。
【0074】
b)次いで、組織を、ハンクス液(HBSS)中の2mMのL−グルタミン中に10分間、40rpm及び室温で置き、該溶液を流した。
【0075】
漂白
組織をケレシス(Kerecis)漂白混合物Cと2%過酸化水素で30分間漂白した。
洗浄
組織を連続する水流で、6℃で12時間洗浄した。
凍結保護
魚皮を、ダルベッコのリン酸バッファー生理食塩水(DPBS)液中に7%のデキストラン、6%のスクロース、6%のラフィノース及び1mMのEDTAを含む前凍結溶液中に浸漬した。
パッケージング
魚皮をTYVEK(登録商標)膜ポーチに挿入してヒートシールで閉じた。
凍結乾燥
魚皮を含むポーチを、凍結乾燥機中に入れて凍結乾燥した。
滅菌
魚皮を含むポーチをエチレンオキシドチャンバーに入れ、エチレンオキシドの1〜5サイクルで処置して骨格を滅菌した。
【0076】
実施例11
皮除去の後の凍結工程を除いて、実施例10に記載したように産物を製造した。凍結工程の代わりに、組織を、50mMのアスコルビン酸、500ppmのストレプトマイシンをそれぞれ含む滅菌リン酸バッファー生理食塩水で、4℃で1時間、二回洗浄した。
【0077】
実施例12
皮除去
皮を魚の切り身から除去した。スチールワイヤーブラシ及びナイフで魚皮の表面をこすって実質的に魚皮から鱗をとった。鱗を含まない産物を得た。
凍結
皮を急速冷凍器中で、−80℃で凍結した。次いで、皮を冷凍器から取り出して室温で約2時間解凍した。
【0078】
脱細胞化及び漂白
a)組織を漂白混合物Cと2%過酸化水素で30分間漂白した。
【0079】
b)組織をHBSS中の0.5%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の溶液中に1時間、室温で置き、40rpmで振盪し、該溶液を流した。
【0080】
c)次いで、組織を、ハンクス液(HBSS)中の2mMのL−グルタミン中に10分間、40rpm及び室温で置き、該溶液を流した。
【0081】
洗浄
組織を連続する水流で、6℃で12時間洗浄した。
凍結保護
魚皮を、ダルベッコのリン酸バッファー生理食塩水(DPBS)液中に7%のデキストラン、6%のスクロース、6%のラフィノース及び1mMのEDTAを含む前凍結溶液中に浸漬した。
パッケージング
魚皮をTYVEK(登録商標)膜ポーチに挿入してヒートシールで閉じた。
凍結乾燥
魚皮を含むポーチを、凍結乾燥機中に入れて凍結乾燥した。
滅菌
魚皮を含むポーチをエチレンオキシドチャンバーに入れ、エチレンオキシドの1〜5サイクルで処置して骨格を滅菌した。
【0082】
実施例13
皮除去の後の凍結工程を除いて、実施例12に記載したように産物を製造した。凍結工程の代わりに、組織を、50mMのアスコルビン酸、500ppmのストレプトマイシンをそれぞれ含む滅菌リン酸バッファー生理食塩水で、4℃で1時間、二回洗浄した。
【0083】
実施例14
産物の厚さを、凍結乾燥の前後で測定した。厚さは、デジタルカリバスで測定した。凍結前後の平均厚さはそれぞれ0.29mm及び0.46mmだった。産物は、凍結乾燥後及び創傷上での使用前に再水和されてよい(例えば、塩溶液中)。凍結乾燥され再水和された産物を試験したとき、平均厚さは0.30mmであった。水損失(凍結乾燥後の重量差に基づく)は約80〜82%と算出された。
【0084】
実施例15
産物の浸透性を大気圧下及び減圧下(0.2atm)で測定した。大気圧下の平均浸透性はサンプルの平方mmあたり、24時間あたり、水3.73mgであった。減圧下の平均浸透性はサンプルの平方mmあたり、180秒あたり、水4.93mgであった。
【0085】
実施例16
予備的な生分解性試験を、等張塩水又はダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Gibco)の何れかにおいて、32℃で産物のサンプルをインキュベートすることにより行った。約6〜10日後、50%(重量)を超えるサンプルが分解した。
【0086】
実施例17
予備的な細胞毒性試験を、DMEM中のヒト包皮線維芽細胞(細胞株Hs27、ATCC CRL−1634)、グルコース、及び10%のウシ胎児血清で産物のサンプルをインキュベートすることにより行った。サンプルは、観察可能な表現形の変化、減少、又は細胞死のいずれも起こさなかった。
【0087】
実施例18
産物を、降伏強度、引っ張り強さ、及び伸長を測定するために試験した。33mm掛ける6mmに測った同形のサンプルを再水和し、500Nのロードセル中、0.4barの圧力で、グリップにおいて締めた。試験の間、サンプルが湿っているように維持した。結果を下記表1に示す。
【表1】

【0088】
ここで開示される骨格材料は、ラット、ブタ、及びヒト(Dahms et al., Composition and biomechanical properties of the bladder acellular matrix graft: comparative analysis in rat, pig and human. British Journal of Urology. 1998;82(3):411-419を参照)の膀胱から作られた無細胞のマトリクスグラフト及びFDAが認可したALLODERMDERM(登録商標)(Bottino et al., Freeze-dried acellular dermal matrix graft: Effects of rehydration on physical, chemical, and mechanical properties. Dental Materials. 2009;25(9):1109-1115を参照)よりも強く且つ著しく伸びる。
【0089】
OASIS(登録商標)(ブタの小腸粘膜下組織)及びMATRISTEM(商標)(ブタの膀胱)の引張り強度の試験が試みられたが、任意の測定の前に分解された両方の産物のサンプルではできなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱細胞化された魚皮を含む骨格材料。
【請求項2】
前記骨格材料は魚皮からの細胞外マトリクス材料を含む、請求項1に記載の骨格材料。
【請求項3】
前記骨格材料は、魚皮の脂質層からの脂質をさらに含む、請求項2に記載の骨格材料。
【請求項4】
前記骨格材料は、創傷包帯、包帯、縫合材料、及び/又はメッシュ材料の形態である、請求項1に記載の骨格材料。
【請求項5】
前記骨格材料は、実質的に鱗を含まない、請求項1に記載の骨格材料。
【請求項6】
前記骨格材料は生体適合性である、請求項1に記載の骨格材料。
【請求項7】
前記骨格材料は、一以上の加えられる活性剤をさらに含む、請求項1に記載の骨格材料。
【請求項8】
前記加えられる活性剤は、抗生物質、防腐剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、駆虫剤、抗炎症剤、抗酸化剤、薬物、タンパク質、ペプチド、及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項6に記載の骨格材料。
【請求項9】
骨格材料を製造する方法であって、
(a)魚皮を得ること;及び
(b)前記魚皮を脱細胞化すること
を含む方法。
【請求項10】
前記魚皮を、鱗を除去すること、洗浄すること、凍結すること、漂白すること、消化すること、及び/又は凍結保存することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
脱細胞化は、一以上の物理的処置、一以上の化学的処置、一以上の酵素的処置、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記化学的処置は、イオン性塩、塩基、酸、洗浄剤、酸化剤、高張液、キレート剤、有機溶媒、メチオニン、システイン、マレイン酸、DNAに結合するポリマー、及びそれらの組合せから成る群から選択される一以上の脱細胞化剤で魚皮を処置することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記酵素的処置は、プロテアーゼ、エンドヌクレアーゼ、及びエキソヌクレアーゼから成る群から選択される一以上の酵素で魚皮を処置することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
請求項9に記載の方法を用いて製造された骨格材料。
【請求項15】
創傷を治療するための方法であって、前記創傷に請求項1の骨格材料を適用することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−507164(P2013−507164A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532673(P2012−532673)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【国際出願番号】PCT/IB2010/002528
【国際公開番号】WO2011/042794
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(512080871)
【氏名又は名称原語表記】KERECIS EHF
【住所又は居所原語表記】Borgartun 28, IS−105 Reykjavik, Iceland
【Fターム(参考)】