説明

創傷ドレナージ装置

減圧を利用して、創傷から生じる滲出液を排出させるための創傷ドレナージ装置(10)において、収集容器内に間接的に真空が生成される。該収集容器(16)は、真空チャンバー(14)内に配置され、該収集容器(16)と、ガス変圧器手段に連絡する該真空チャンバー(14)との間に、空間(32)をもっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷(wound)から生じる滲出液(浸出液;exudate)を排出させるべく減圧を用いるための創傷ドレナージ装置に関するものであって、当該装置は、ハウジングを有し、該ハウジングは、滲出液を収集するための供給部開口をもつ収集容器を受け入れるための真空チャンバーを有し、かつ、当該装置は、減圧を生じさせる手段を有し、該手段は、真空チャンバーの壁と、作動中その内部に収容される収集容器との間の空間に、減圧を生じさせるものである。
【背景技術】
【0002】
このタイプの創傷ドレナージ装置は、DE−A−21 27 764によって知られている。この既知のシステムは、創傷からの滲出液を吸引するための空気吸引装置を有している。その装置は、減圧下に置くことのできるチャンバーのあるハウジングを有する。創傷内もしくは創傷上に置かれるドレンに結合するための吸引ホースを持った、使い捨て可能なフレキシブルなパウチが、収集容器としてこのチャンバー内に配設されている。減圧(減じられた圧力)を発生させるための手段は、ガス−ジェットポンプを有しており、該ポンプは、一方の側では、ハウジング内に同様に収容されている交換可能なガスシリンダに接続されており、他方の側では、前記真空チャンバーと収集容器との間の空間に接続されている。この既知の創傷ドレナージ装置の意図するところは、とりわけ、緊急時にすぐにアクセスできないような場所であっても、操作スタッフのための容易な使用を向上させることである。
【0003】
しかしながら、この装置は、ガスシリンダおよびガス−ジェットポンプの存在のため比較的重いということがわかった。このことは、患者の移動性(mobility)を阻害し、かつ、取り扱いの容易さに対して悪影響を及ぼす。ガスシリンダは、減圧を発生させるための唯一のガス源であるため、頻繁に取り替える必要がある。
【0004】
さらに、US−A−4,004,590は、減圧をさまざまな様式で生成できる創傷ドレナージ装置を開示している。この目的のために、この既知の装置は、第一に、モータ付き吸引ポンプと、第二に、外部真空源に連結するための接続部とを有している。この既知の装置においても、ポンプおよびモータの重量が、取り扱い、ひいては患者の移動性にとっての弱点となる。
【0005】
この既知の装置では、他の多数の既知システムと同じく、真空ポンプを駆動するため、何らかの形で電気を用いることで構成される。湿った環境での電気の利用は、創傷ドレナージシステムの安全性にとって有害であり、ひいては、処置される患者にとっても有害である。
【0006】
単純なタイプの創傷ドレナージ装置も、DE−U−29 619 523で知られている。この既知のシステムは、カバー付きのバキューム型の容器を備えている。この容器内には、滲出液用の受入れパウチがあり、これは、カバーにある穴を通過する吸引ラインを通してドレンに接続されている。容器内に減圧を生成することで、受入れパウチを通して創傷に及ぼされるべき吸引力がもたらされ、それが創傷から流体をはき出させる。このような容器内での減じられた圧力は、容器と受入れパウチとの間の空間に接続されたピストン/シリンダアセンブリーを通して生成できる。カバーと、吸引ラインと、受入れパウチは、交換可能でかつ無菌のユニットを構成している。この既知の創傷ドレナージ装置では、容器内の圧力は、小穴を通して容器内部に連絡するシリンダ内に適合しているバネによって示すことができる。
【0007】
この既知システムの弱点は、ピストン/シリンダアセンブリーを作動させるため、容器内で必要とされる真空の発生が、人によってかけられる力を必要とし、多くの場合、この力は、患者自身によって与えることができないということである。これにより、看護スタッフの配置が必要になる。こういった手動操作される創傷ドレナージ装置は、一般に、低圧での適用のみに適している。
【0008】
本発明の目的は、患者に高い移動自由度をもたらすポータブルな創傷ドレナージ装置を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、患者と操作スタッフの両方にとって非常に使うことが簡単な創傷ドレナージ装置を提供することである。
【0010】
さらに本発明の他の目的は、電気をほとんど、もしくはまったく使わない安全な創傷ドレナージ装置を提供することである。
【0011】
さらに、本発明の目的は、簡単な様式で製造可能な創傷ドレナージ装置を提供することである。
【発明の開示】
【0012】
本発明による創傷ドレナージ装置では、この目的のために、減圧を生じさせるための前記手段が、ガス変圧器手段(gas-transformer means)を有しており、該ガス変圧器手段は、減圧を形成するために加圧ガスを用いるためのものであり、この変圧器手段が、圧力側では耐圧力性のガスコンパートメントに連絡し、真空側では真空チャンバーに連絡し、該ガスコンパートメントは、ハウジングに設けられ、かつ外部のガス源との接続のためのカップリングを持っている。
【0013】
本発明による装置では、耐圧力性のガスコンパートメントは、ハウジングそれ自体の中に設けられ、前記カップリングを通して、外部ガス源から発せられた圧縮空気などのようなガスで充満させることができる。このガスコンパートメントはまた、ガス変圧器手段を通じて、真空チャンバーの内壁と収集容器の外壁との間の空間に連絡している。このことによって、本発明による装置は、ガスコンパートメントそのものを交換することなしに、「再充填可能(rechargeable)」あるいは「再充満可能(refillable)」となっている。中央圧縮空気ラインシステム(結合病院やその他多数の医療機関における該システムは、ほとんど全ての病室および/または部屋に、1つ以上の接続ポイントを持っている)への単純なカップリングが容易であるため、移動可能な患者は、必要に応じてこれを自分で運搬できる。ガスコンパートメントを充填するために当該創傷ドレナージ装置をコンプレッサーの圧力側に接続すれば、当該装置はまた、家庭内といった状況でも利用可能である。本発明による装置では、比較的重い交換可能な圧力シリンダがなく、モータ付ポンプもないため、この装置の重量は従来技術と比べて小さい。このように6kg未満という比較的小さな重量のため、患者の移動性が向上する。ユーザ、患者、看護あるいは医療スタッフにとっての使用の容易性も高い。本発明による創傷ドレナージ装置は、中央真空システムとは独立に用いることが可能である。従って、本発明による創傷ドレナージ装置は、患者に対して高いレベルの移動性を提供する。例として、手術された患者は、手術室において、本発明による創傷ドレナージシステムへ接続されることが可能であり、その後、回復室を経て、看護エリアに移すことができ、そのプロセス中、当該創傷ドレナージ装置を連続的に機能させ続けることができる。本発明による創傷ドレナージシステムは、また、患者や操作スタッフにとって使用が容易であることから、家庭看護での適用にも適している。移動できる患者は、例えば、本発明による創傷ドレナージ装置をベルトに装着する、あるいは移動式スタンドから吊り下げて患者とともに移動させることも可能である。このシステムはまた、適当なアタッチメント手段を用いてベッドサイドで用いることもできる。
【0014】
本発明による創傷ドレナージ装置は、おおむね完全に機械式である。電源は、内外部にかかわらず必要とされないため、本発明による創傷ドレナージ装置は、使用中に湿気がある場合でも安全である。本発明による創傷ドレナージ装置は、圧縮ガスを用いて真空を生成するために、ガス変圧器手段、特に、圧縮空気変圧器(compressed-air transformer)として知られているものを用いている。このタイプのガス変圧器手段は市販されている。その実例品には、ベンチュリ管と、ピストン−シリンダアセンブリーとが含まれる。ノイズ低減の観点からは、ベンチュリ管が好ましいが、その理由は、ピストン−シリンダアセンブリーと比較して可動部分を含まないためである。圧縮空気変圧器そのものの使用は、すでにNL−C−1006001において提案されている点に注意すべきである。
【0015】
創傷にかける減圧を一定(例えば、140cmHO)に保つため、現在の圧力が測定され、以前のキャリブレーションに基いた制御信号が、ガス変圧器手段に発せられる。
【0016】
ガスコンパートメントの耐圧能力(最大圧力は約15バール)は、装置に用いられる材料に対して追加の要求をもたらさない。標準的なプラスチック材料を用いるのが有利であるが、それは、それらの材料が過剰な負荷に対して降伏し、それ故に爆発の危険性が低いからである。さらに、プラスチック材料を使用することで装置全体の総重量が比較的小さくなる。本発明による装置は、1つ以上のガスコンパートメントを備える。ガスコンパートメントは、お互いに並列もしくは直列に接続されてもよく、ガス変圧器手段に接続されることもできる。
【0017】
変圧器手段はまた、外部のガス源に直接接続できるようになっているのが有利であり、ガスコンパートメントが機能しないような場合、例えば、リークや他の欠陥の場合にも、当該創傷ドレナージ装置が使用可能であり、滲出液の吸引を中断する必要がない。好ましい実施態様では、その目的のために、カップリングがガスコンパートメントもしくは変圧器手段に対して選択的に接続できる。例として、この目的のため、カップリングが通路を通してガスコンパートメントに連絡し、この通路が、ガス変圧器手段に連絡する側流路を備えるとともに、三方弁などのような遮断部材を備える。この特性のさらなる利点は、当該装置が中央ガス源と接続されていれば、ガスコンパートメントの内容物が節約できるということである。
【0018】
必要ならば、圧縮空気変圧器を、低真空、中真空、高真空といった、様々な真空圧力範囲に設定することが好ましい。滲出液を排出させるよう、治療している医師によって選択される当該システムは、部分的に、治療される創傷に依存する。高真空の場合、吸引力が大きいため、結果、あるタイプの創傷では、組織に対してダメージが与えられるかもしれない。従って、収集パウチ内での減圧、即ち、創傷に対する真空が、再現可能に設定および/または測定され得るならば、有利である。この目的のため、従来技術では、創傷ドレナージ装置に対する圧力監視・制御システムがすでに開示されているが、これらのシステムは、概して、高、低もしくは中のいずれか特定タイプの圧力にのみ適している。患者によってなされるエラーを防ぐため、この設定変更は、権限のある人だけによって行われるようにするのが有利である。当該創傷ドレナージ装置は、コントロールノブを使うことなどによって、例えば、一般的な創傷ドレナージに対しては150cm水柱、自己輸血(retransfusion)に対しては80cm水柱といった、1つ以上の固定した減圧値に設定できるようにすることが有利であり、かつ、当該装置は、減圧が測定されているときに、適切な制御信号がガス変圧器手段に送られるというように、前もって較正される。この目的のために、該装置は、減圧を測定するための圧力計を備えることが有利である。本発明による創傷ドレナージ装置で用いられるものとして、ガスコンパートメントとガス変圧器手段とを組み合わせたものは、それ自体としては、約20リットル/分の最小流速を必要とする胸部機能(thorax function)には適していない。従って、本発明による創傷ドレナージ装置の好ましい実施態様では、大流量の高真空システムに連結するための閉鎖可能な直接的な接続部が設けられる。
【0019】
ガスコンパートメント内のガス備蓄の消費を低減するため、ガス変圧器手段は、2つの複動ピストン−シリンダ組立体と、作動シリンダと、真空シリンダとを、備えることが有利であり、これらのピストンは共通のピストンロッドに設けられる。加圧されたガスの圧力の影響下にある作動シリンダ内のピストンの移動が、真空シリンダ内のピストンに対して対応する移動を引き起こし、それによって、その減圧側の真空シリンダに真空を生じさせる。作動シリンダ内のピストンの移動の方向が反対になると、真空は、ピストンの反対側の真空シリンダ内に生成される。真空シリンダ内におけるピストンの減圧側は、各場合において、真空コンパートメントに接続され、こんどは、この真空コンパートメントが、受入れ容器と真空チャンバー壁との間の空間に連絡している。真空シリンダの直径は、比較的高い真空を生成するのに、わずかな量の圧縮空気しか必要としないようにするため、例えば、作動シリンダの直径より大きいこと、例えば2倍、が有利である。作動シリンダの駆動は、生成される真空を測定する真空計からの制御信号に基づくため、作動シリンダを不連続に、言い換えると測定された真空が不十分なときだけ作動させることができる。これにより、ガスコンパートメント中のガス備蓄を効果的に用いることができるようになる。
【0020】
他の実施態様では、ベンチュリ管がガス変圧器手段として適用され、該ベンチュリ管は、ピストン/シリンダ組立体と比較してそれ自体から発生するノイズが少ない。さらに、このノイズは、流出する空気によるヒス音(hissing sound)を含んでおり、ベンチュリ管の出口において、例えばガス透過性のプラスチック発泡体からできた小さなノイズ吸収ダンパを用いれば効率的に低減することができる。
【0021】
収集容器(例えば、プラスチックの受入れパウチ)にダメージが発生した際に、創傷ドレナージ装置全体を掃除および滅菌する必要性をなくすため、取外し可能な内部容器(inner container)を真空チャンバー内に配設し、ガス変圧器手段を、この内部容器と収集容器との間の空間に連絡させることが有利である。
【0022】
収集容器は、使い捨てであることが有利であり、真空チャンバーから取外されてもよい。これは、滲出液と装置の残部との間に接触がないことを意味し、それはスタッフや装置にとって安全である。
【0023】
容易に組み立てることができるという観点から、本発明による創傷ドレナージ装置は、モジュラー構造(modular configuration)をもつことが好ましい。該モジュラー構造は、ツーパート(two part)のハウジング(特に、プラスチックからなるフロントパートおよびリアパート)と、少なくとも1つのガスコンパートメントと、真空チャンバー(特に、真空カップ)と、ガス変圧器手段がマウントされる(プラスチックの)支持プレートとを、備えるのが有利である。
【0024】
さらなる態様によれば、本発明は、本発明による創傷ドレナージ装置と、創傷から出る滲出液を収集するための収集容器とのアセンブリー(組立体)に関するものであり、該アセンブリーは、フレキシブルな受入れ容器を有し、該容器は、創傷からの滲出液を受入れ容器まで搬送するための供給部(feed)に連絡している。
【0025】
好ましい実施態様では、真空チャンバーは開口をもち、収集容器はこの開口を閉鎖するためのカバーを備えている。この実施態様では、カバーを開口上に位置させることで、フレキシブルな受入れパウチのような収集容器それ自体が、真空チャンバー内の正しい位置に保持されるようになる。
【0026】
カバーの正しいポジショニングを確実にするため、カバーは閉鎖リム(closure rim)を備えることが有利であり、それによって該カバーは単一方向(single way)にて真空チャンバーの開口に位置することができる。閉鎖リムは、お互いに接合している異なる離心率(eccentricity)の2つの楕円形部分によって構成された、1つの楕円形であることが好ましい。その場合、開口には、対応する形状の閉鎖リムを設ける。閉鎖リムを構成する楕円形部分の半径が異なるために、カバーは、1つの方向(one way)だけにおいて真空チャンバー上に位置することができる。この楕円形状はまた、ドレナージ中に、受入れ容器が、断面からわかるとおり、概して楕円の形状を示すことからも有利である。受入れ容器それ自体は、該受入れ容器の外側に加わる真空の下で変形するようにフレキシブルな材料でできており、その結果、受入れ容器それ自体が創傷に真空をかけることができる。真空チャンバー(モジュラー構造と接続された解放可能なカップが有利である)は、従って、断面も同様にそれに応じた楕円形であることが好ましい。真空チャンバーおよび/または収集容器には、収集された滲出液の体積を示す目盛線を設けることが有利である。閉鎖リムとカバーとは、一緒になって、真空チャンバーの真空気密(vacuum-tight)な閉鎖を形成する。真空を簡単に破ることができるようにするため、1つ以上のリップ(lip)をカバーに設けるのが有利である。カバー(エッジにおける真空シールを形成する観点から、フレキシブルで比較的弱い材料からなる)が、真空の影響下で、真空チャンバー内に吸引されてしまうことを防ぐように、該カバーの下側には、多数の補強リブが設けられていることが好ましい。
これらの相反する要求事項の間のバランスは、わずかに凸状になった上面(補強リブにより任意に達成される)をもつカバーそのものを提供することで達成される。
【0027】
さらなる実施態様では、カバーは、補助物質(auxiliary substances)を供給するための閉鎖可能な供給部開口を備えており、該供給部開口が受け入れ容器に連絡している。このタイプの補助物質は、例えば、収集された滲出液が患者に戻されるような場合に必要である。この種の自己輸血は、感染の危険を制限する際に有利である。閉鎖可能な供給部開口はまた、収集された滲出液からサンプルを採取するため(該サンプルを調べるため)に用いられる。隔壁(septum)または同様のシールを付加的な供給部開口に設けるのが好ましい。無菌状態の観点から、壊れやすく作られた蓋あるいは同様の保護部が供給部開口上に位置する。所望ならば、供給部開口を再び閉鎖できるようにするため、収集容器に蓋を設けることもできる。
【0028】
例えば、装置の予期しない不具合の場合、収集された滲出液が創傷に流れて戻ることを防ぐため、ドレンからの滲出液を受入れ容器に搬送するための供給部ラインに逆止弁を設けることが有利である。
【0029】
自己輸血の観点から、受入れ容器への滲出液の供給部が遮断部材を備えていることが好ましく、かつ、該受入れ容器は、該受入れ容器から滲出液を取り除くための排出部(discharge)を備えており、この排出部に遮断部材が備えられる。ドレナージ中、該供給部は開いており、排出部は閉じている。自己輸血のためには、供給部は閉じており、排出部は開いている。該供給部と排出部とが、受入れ容器の向かい合った各側に配設されることが有利であり、受入れ容器を経由する単純な流れが可能になる。
【0030】
また、収集された滲出液(特に血液)の自己輸血または他の再利用の観点からは、収集容器はフィルターを備えることが有利である。特に供給部ラインと受入れ容器との間に設けることが有利である。このタイプのフィルターは、例えば、供給された滲出液からの皮膚細胞、血餅(blood clots)等を取り除くが、それ以外の場合は、自己輸血用に用いられる注射針をブロックするか、または他の場合には必要ない。血球への損傷を防止するために、シャープフィルターとして知られているものは用いられないが、その代わり、丸みを帯びた開口をもつフィルターを用いる。ドレナージを行なっている間に空気が吸引されることがよくあり、同様に受入れ容器に集まり、これによって、滲出液に対する利用可能容積が小さくなるので、受入れ容器には、使用中に受入れ容器の内側を真空チャンバーに接続するフィルターを設けることが有利であり、結果、創傷に対する真空の生成も容易になる。これによって、受入れ容器内に収集される空気は、このフィルターを通した真空チャンバーからの吸引で確実に取り除かれるようになる。このフィルターは、湿気と接触すると膨潤して該フィルター内の空孔を閉じそして該フィルターが液密(fluid-tight)になるようなタイプであることが好ましい。
【0031】
本発明は、また、創傷から生じた滲出液を収集するための収集容器に関するものであり、本発明による創傷ドレナージ装置および/またはアセンブリーのために明確に意図されたものであって、該収集容器は、フレキシブルな受入れ容器を有し、該受入れ容器は、創傷からの滲出液を受入れ容器に搬送するための供給部に連絡しており、該収集容器はカバーを有し、該カバーは閉鎖リムを備え、該カバーが真空チャンバーの開口に、唯一の方向(unique way)にて位置することができるようになっている。この唯一の位置取り(ポジショニング)によって、収集容器が正しく本来の位置に置かれることが確実になる。閉鎖リムは、好ましくは、お互いに接合している異なった離心率の2つの楕円形部分によって構成された、1つの楕円形である。
【0032】
さらに、本発明は、創傷からの滲出液を収集するための収集容器に関するものであり、特に、上述のカバーを有する本発明の実施態様によるものでは、フレキシブルな受入れ容器を有し、該受入れ容器は、創傷からの滲出液を受入れ容器に搬送するための供給部に連絡しており、該供給部は遮断部材を備え、かつ、該受入れ容器は、該受入れ容器から滲出液を取り除くための排出部に連絡しており、該排出部は遮断部材を備えている。本発明によるこの収集容器は、特に自己輸血に適しており、該自己輸血では、創傷ドレナージの間に受入れ容器に受入れられた滲出液が後に排出部を通して患者に再導入され、例えば、適当なラインを通して注入針に連結されている。例として、従来の弁を遮断部材として用いることが可能である。
【0033】
供給部と排出部とは、好ましくは、受入れ容器の向かい合った各側に備えられ、特に上部側に供給部が、下部側に排出部が備えられ、該受入れ容器は、常に実質的に垂直ポジションにて保持できるようになっている。受入れ容器が空のときに、該容器内に真空が吸引されるのを防止するため、好ましくは、排出部に向かい合った、受入れ容器の反対側の面に、逃し弁を設けるのが有利である。
【0034】
本発明による収集容器の好ましい実施態様では、流れ込む滲出液をろ過するため、収集容器はフィルターを備え、より好ましくは受入れ容器内にフィルターを備える。
【0035】
該収集容器は、引掛け環(hanging eye)を備えていること、例えば、上述の本発明の収集容器に従って、カバー上の引掛け環などを備えていることが有利である。アセンブリーに関して、すでに論じられた収集容器の有益な特性についても、収集容器そのものに対して適用可能である。
【0036】
本発明は添付図面を参照しながら、以下のとおり説明される。
【0037】
対応する部分は、さまざまな図面において同一の参照番号で示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図では、本発明による創傷ドレナージ装置が、全体を参照番号10で示されている。該装置10は、プラスチックからなるツーパートのハウジング12を有しており、該ハウジングの中に、多数のコンパートメントが備えられている。この実施態様では、真空チャンバー14は、ハウジング12の一体的なコンポーネントを構成しており、その中に、滲出液用の取り外し可能でフレキシブルな受入れパウチ16(図2参照)が収容されている。他の実施態様では、真空チャンバーは、解放可能なカップとして設計される。耐圧力性のガスコンパートメントは、解放可能であって、かつ、プラスチックからできており、真空チャンバー14の両側に配置されている。後側には、接続コンパートメント20があり、この中に、以下でさらに詳細に説明されるコンポーネントが配置される。ガスコンパートメント18内を支配するのが比較的低い圧力(12バールまで)であるという観点から、必要な強度を達成するためには、ガスコンパートメントには多数の補強リブが設けられれば十分である。この実施態様では、ガスコンパートメントも同様に、ハウジングの一体的なコンポーネントを形成する。このハウジングは、例えば、ツーパートに射出成形され、全てのコンパートメントを有するフロントパート12aと、実質的に平坦なリアパート12bである。この場合、ガスコンパートメント18は、接続通路22を通してお互いに連絡している。当該創傷ドレナージ装置10を、外部のガス源、特に圧縮空気ラインまたはコンプレッサーに接続するため、外部カップリング24が設けられている。遮断部材(図示されていない)をもつカップリング24が、ガスコンパートメント18のうちの1つに連絡している。圧縮空気(あるいは他の圧縮されたガス媒体)を用いて真空を生成するため、ガスコンパートメント18のうちの1つが、自体の上面で、ベンチュリ変圧器などの圧縮空気変圧器30の圧力側に接続されている。圧縮空気変圧器30の吸引または真空側は、受入れパウチ16と真空チャンバー14の内壁との間の空間32に連絡している。該受入れパウチ16は、吸引ライン28を通して、患者の創傷にフィットし得るドレン(図示されていない)に連絡している。所望ならば、使い捨ての内部容器(図示せず)が、真空チャンバー14に、該真空チャンバー14の内壁と受入れパウチ16との間に設けられてもよく、これが、受入れパウチ16からの漏洩がある場合や、該パウチへのダメージがある場合に、該真空チャンバー14を防護する。該真空チャンバー14は、目盛線をもつ窓部34を備えており、受入れパウチ16中の液体のレベルが外部からモニターできる。窓部34上に設けられる目盛に替わるものとして、受入れパウチに、この目的のための体積指示をする測定マークを設けることも可能である。本実施態様では、当該装置の操作用のスイッチ36が、該装置10の上面に設けられる。真空のレベルは、圧力計38から読み出すことができる。圧力値をモニターすることによって、圧縮空気変圧器30に対する制御信号が生成される。当該装置はまた、外部カップリング24と圧縮空気変圧器30との間の直接的な接続部40を備える。図2は、当該装置10の断面を示している。
【0039】
図3は、本発明による使い捨て収集容器とともに用いるカバー50の平面図を示している。実質的にフラットな該カバー50は、突起した閉鎖リム52を有しており、該リムは断面が逆U型であり、かつ、これは、上から見た場合に楕円形である。楕円形の閉鎖リム52は、異なる離心率を持った2つの異なる楕円形部分53で構成される。言い換えると、閉鎖リムは連続した湾曲を描いている。カバー50を保持するためのリップ54がカバー50の長手方向の端部に設けられる。突起した引掛け環56が、カバー50の中心に置かれる。2つの穴58が、楕円の長手方向軸に設けられる。1つは、実際のドレンへの接続のためのフレキシブルホースのためであり、1つは、補助物質の追加あるいはサンプル採取のためである。後者は、キャップ60によって閉鎖でき、該キャップは、所望ならば、フレキシブルなリンク62によってカバー50に固定される。受入れパウチそれ自体(本平面図には示されていない)は、適当な固定手段(例えば、接着剤)を用いてカバー50の下側に固定される。所望ならば、ガスケットが備えられてもよい。
【0040】
図4は、本発明による収集容器の他の実施態様を示している。該収集容器は、フレキシブルな材料でできた受入れパウチ16を有しており、その上面には供給部70が備えられ、該供給部は、弁72を介して、フレキシブルホース28(これはドレンに結合されている)に連絡している。この実施態様では、フィルター74は、丸い開口をもつメッシュであって、流れ込む滲出液を濾過するため、該供給部70の直下にある受入れパウチ16内に配置される。受入れ容器には、下面(underside)において、排出部76が設けられており、これも同様に弁78が設けられている。逃し弁80が受入れ容器16の上面(top side)の角部に設けられる。空気が透過可能なフィルター82が、受け入れパウチ16の壁に設けられており、これを通して、ドレナージ中に収集容器16に収集された空気を吸い出すことができる。
【0041】
図5は、本発明による創傷ドレナージ装置の他の実施態様の図を示しており、この図ではハウジングのフロントパートが取り除かれている。ハウジングの後ろのパート12aは、ねじによってフロントパートに固着するための多数のねじ穴90を備えている。取り扱いを容易にするため、ハウジングにハンドル92が一体化されている。この実施態様では、別個のシリンダー形状のガスコンパートメント18(これらは、ライン22を通じて、お互いに連絡しており、これらは、またカップリング24に連絡している)が、真空チャンバー14の隣に配置されている。左手のガスコンパートメント18の場合、該ラインはマノメーター38に連絡している。スイッチ36と、圧縮空気変圧器30とが、右手のガスコンパートメントに配置されている。図からわかるとおり、カバー50が、下面に補強リブを備えている。各場合では、2つの斜めに走っている、半径方向のリブ94a(そのうちの1つだけがこの図で見られる)が、各穴58から閉鎖リムに向けて延伸している。さらなる中央の補強リブ94bが、穴58の間に設けられている。隔壁96が、右手において、穴58に設けられている。右手におけるこの穴58は、破断可能な防護蓋60を備える。
【0042】
図6は、モジュラー構造をもつ創傷ドレナージ装置の1つの実施態様を概略図で示している。一体化されたハンドル92を持つプラスチックのリアパート12aが、胸部機能の目的で、外部真空システムに結合するための直接な接続部98を持っている。プラスチックの取り付けプレート100が、リアパート121aの中央部にマウント可能であり、減圧の異なる範囲のための圧力レギュレーター102などのようなコンポーネントやベンチュリ30がプラスチックの取り付けプレート100に事前に組み立てされた後、この取り付けプレート100は、例えば、ねじによって、リアパート12aの中心に取り付けることができる。単純化のため、全ての接続部は示していない。続いて、(1つだけが示されている)プラスチックのガスコンパートメント18が、取り付けプレート100の両側に位置し得、例えば、プラスチック製のフレキシブルな管路を用いて、さらなるコンポーネントに連結できる。真空カップ14がハウジングのフロントパート12bに位置し、その後、フロントパート12bの真空カップ14が、例えば、ねじによりリアパート12aに固定される。この実施態様では、スイッチ36と圧力計38とを組み込むため、凹部104がフロントパート12bに設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明による創傷ドレナージ装置の一実施態様の、概略的な斜視図を示している。
【図2】図2は、図1に示された装置の断面を示している。
【図3】図3は、本発明による収集容器の一実施態様の細部の平面図を示している。
【図4】図4は、本発明による収集容器の他の実施態様の図を示している。
【図5】図5は、本発明による創傷ドレナージ装置の他の実施態様の、外面を除去した正面図である。
【図6】図6は、本発明による創傷ドレナージ装置のモジュラー構造の概略的な実施態様を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷から生じる滲出液を排出させるために減圧を用いるための創傷ドレナージ装置であって、当該装置は、ハウジングを有し、該ハウジングは、滲出液を収集するための供給部開口をもつ収集容器を受け入れるための真空チャンバーを有し、かつ、当該装置は、真空チャンバーの壁と、作動中その内部に収容される収集容器との間の空間に、減圧を生じさせる手段を有し、
減圧を生じさせるための前記手段は、減圧を生成するために、加圧されたガスを用いるためのガス変圧器手段(30)を有し、この手段は、圧力側では耐圧力性のガスコンパートメント(18)に連絡し、真空側では真空チャンバー14に連絡し、該ガスコンパートメント(18)は、ハウジング(12)に設けられ、かつ外部のガス源との接続のためのカップリング(24)を持っている、
前記創傷ドレナージ装置。
【請求項2】
カップリング(24)が、ガスコンパートメント(18)と、ガス変圧器手段(30)とに対して、選択的に接続され得る、請求項1記載の創傷ドレナージ装置。
【請求項3】
取外し可能な内部容器(32)が真空チャンバー(14)内に配置されており、かつ、ガス変圧器手段(22)が、内部容器(32)と、作動中に内部容器32内に位置する収集容器16との間の空間に連絡している、前記請求項のうちの1項に記載の創傷ドレナージ装置。
【請求項4】
当該創傷ドレナージ装置が、モジュラー構造を有するものである、前記請求項のうちの1項に記載の創傷ドレナージ装置。
【請求項5】
モジュラー構造が、ツーパートのハウジング(12a、12b)と、少なくとも1つのガスコンパートメント(18)と、真空チャンバー(14)と、組立てるべきコンポーネントとして少なくともガス変圧器手段(30)を持った取り付けプレート(100)とを有している、請求項4記載の創傷ドレナージ装置。
【請求項6】
前記請求項1〜5の1つに記載の創傷ドレナージ装置と、創傷から生じる滲出液を収集するための収集容器とのアセンブリーであって、
フレキシブルな受入れ容器(16)を有し、該受入れ容器(16)が、創傷からの滲出液を該受入れ容器(16)まで搬送するための供給部(70)に連絡している、
前記アセンブリー。
【請求項7】
真空チャンバー(14)が開口を備え、かつ、収集チャンバー(16)が該開口を閉鎖するためのカバー(50)を有している、請求項6記載のアセンブリー。
【請求項8】
カバー(50)が、真空チャンバー(14)の開口に、唯一の方向にて位置することができるように、該カバー(50)が閉鎖リム(52)を有している、請求項7記載のアセンブリー。
【請求項9】
閉鎖リム(52)が、お互いに接合している異なった離心率の2つの楕円形部分(53)によって構成された、1つの楕円形となっている、請求項8記載のアセンブリー。
【請求項10】
カバー(50)が、補助物質を供給するための閉鎖可能な供給部開口(58)を備え、該供給部開口(58)が受入れ容器(16)に連絡している、前記請求項7〜9のうちの1項に記載のアセンブリー。
【請求項11】
供給部開口(58)が、隔壁(96)を備えている、請求項10記載のアセンブリー。
【請求項12】
蓋(60)が、供給部開口(58)を再度閉鎖するために備えられている、前記請求項10〜11のうちの1項に記載のアセンブリー。
【請求項13】
壊すことが可能な蓋(60)が、供給部開口(58)を保護するために備えられている、前記請求項10〜11のうちの1項に記載のアセンブリー。
【請求項14】
供給部(70)が遮断部材(72)を備え、かつ、受入れ容器(16)が、該受入れ容器16から滲出液を取り除くための排出部(76)を備え、該排出部(76)が遮断部材(78)を備えている、前記請求項6〜13のうちの1項に記載のアセンブリー。
【請求項15】
供給部(70)と排出部(76)とが、受入れ容器(16)の向かい合った各側に設けられている、請求項14に記載のアセンブリー。
【請求項16】
収集容器(16)がフィルター(74)を備えている、前記請求項6〜15のうちの1項に記載のアセンブリー。
【請求項17】
収集容器(16)の壁部が、空気が透過可能なフィルター(82)を備えている、前記請求項6〜16のうちの1項に記載のアセンブリー。
【請求項18】
創傷から生じる滲出液を収集するための収集容器であって、前記請求項1〜5のうちの1項に記載の創傷ドレナージ装置または前記請求項6〜17のうちの1項に記載のアセンブリーのために明白に意図されており、
フレキシブルな受入れ容器(16)を有し、該受入れ容器は、創傷からの滲出液を該受入れ容器(16)に搬送するための供給部(70)に連絡しており、かつ、
カバー(50)を有し、該カバー(50)は、該カバー(50)が真空チャンバー(14)の開口に唯一の方向にて位置することができるように、閉鎖リム(52)を有している、
前記収集容器。
【請求項19】
閉鎖リム(52)が、お互いに接合している異なった離心率の2つの楕円形部分(53)によって構成された、1つの楕円形となっている、請求項18記載の収集容器。
【請求項20】
創傷から生じる滲出液を収集するための収集容器であって、特に請求項18〜19に記載されたものであり、前記請求項1〜5のうちの1項に記載の創傷ドレナージ装置または前記請求項6〜17のうちの1項に記載のアセンブリーのために明白に意図されており、 フレキシブルな受入れ容器(16)を有し、該受入れ容器は、創傷からの滲出液を該受入れ容器(16)に搬送するための供給部(70)に連絡しており、該供給部は遮断部材(72)を備え、かつ、該受入れ容器は、該受入れ容器から滲出液を取り除くための排出部(76)に連絡しており、該排出部(76)は遮断部材(78)を備えている、
前記収集容器。
【請求項21】
供給部(70)と排出部(76)とが、受入れ容器(16)の向かい合った各側に設けられている、請求項20記載の収集容器。
【請求項22】
収集容器がフィルター(74)を備えている、前記請求項18〜21のうちの1項に記載の収集容器。
【請求項23】
収集容器の壁部が、空気が透過可能なフィルター(82)を備えている、前記請求項18〜22のうちの1項に記載の収集容器。
【請求項24】
カバー(50)が、補助物質を供給するための閉鎖可能な供給部開口(58)を備え、該供給部開口(58)が受入れ容器(16)に連絡している、前記請求項18〜23のうちの1項に記載の収集容器。
【請求項25】
隔壁(96)が供給部開口58に備えられている、請求項24に記載の収集容器。
【請求項26】
蓋(60)が、供給部開口(58)を再度閉鎖するために備えられている、前記請求項24〜25のうちの1項に記載の収集容器。
【請求項27】
壊すことが可能な蓋(60)が、供給部開口(58)を保護するために備えられている、前記請求項24〜25のうちの1項に記載の収集容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−505678(P2007−505678A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526843(P2006−526843)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000565
【国際公開番号】WO2005/025666
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(506090392)ブロークヴィル コーポレーション エン.フェー. (1)
【Fターム(参考)】