説明

創傷充填装置

膨張可能な袋状部材であって、袋状部材を膨張/収縮するように動作可能に接続された少なくとも1つの流体輸送管路を有する膨張可能な袋状部材と、膨張可能な袋状部材の少なくとも一部を覆う、テクスチャを有する別個のカバーソケット部材とを含む、哺乳類の体の部位に局所陰圧治療法を行うための機器で利用するための創傷充填装置が記載される。創傷充填装置を実現する機器も記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所陰圧(TNP)治療法によって創傷を治療する際に利用するための機器及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
TNP治療法では、多くの場合、陰圧又は陽圧がかけられる創傷上の包帯内に、例えば創傷の容積の少なくとも一部を充填するために利用することができる袋状部材(嚢ともいう)を設けることを含む。さらに、例えば治療上の理由により、創傷領域内及びその周囲の組織を働かせるように、変動圧力又は圧力サイクルを袋状部材に加えることができる。
【0003】
特許文献1では、創傷を吸引、洗滌及び清浄するための機器、創傷包帯及び方法が説明されている。非常に概括的に述べると、本発明は、創傷を吸引するための局所陰圧(TNP)治療法を行い、併せて創傷を洗滌及び/又は清浄するための別の流体をさらに供給し、創傷滲出液及び洗滌流体の両方を含む流体を次いで吸引手段によって排出し、有害な材料から有益な材料を分離する手段を通して循環することによる、創傷の治療を説明している。創傷治癒に有益な材料は、創傷包帯を通って再循環され、創傷治癒に有害な材料は廃棄物収集袋又は容器に廃棄される。
【0004】
特許文献2では、創傷の吸引、洗滌及び清浄を利用して創傷を清浄するための機器、創傷包帯及び方法が説明されている。やはり非常に概括的に述べると、本文献で説明された本発明は、創傷の吸引、洗滌及び清浄に関して特許文献1と同様の機器を利用するが、創傷部位/包帯に戻される有益な材料の温度を制御して、例えば創傷に最も有効な治療効果を有する最適な温度になるようにする加熱手段を設ける重要な追加的ステップをさらに含む。
【0005】
特許文献3では、創傷を吸引、洗滌及び/又は清浄するための機器及び方法が説明されている。やはり非常に概括的に述べると、本文献は上記の2つの文献で述べたものと同様の機器を説明しているが、創傷治癒を促進するように創傷部位/包帯に生理活性物質を供給及び投与するための手段を設ける追加的ステップを含む。
【0006】
上記の引用文献の内容は、参照によって本明細書に含まれる。
【0007】
上記文献が対処しているすべての創傷は、創傷包帯内に袋状部材又は嚢体を設ける必要があることがあり、現在利用可能なものは不適切なことがある。実際、特許文献1では、創傷治療法のための機器で利用されるあらかじめ形成された膨張可能な嚢体を利用する実施例を、図13A及び図20で示している。
【0008】
膨張可能な嚢体タイプの創傷充填材が利用されることがある他の理由は、嚢体表面の、平坦でない、又はテクスチャを有する、あるいは他の平滑ではない表面を、創傷面/境界面に直接適用するためである。テクスチャ面は、創傷面の「働き」を助け、それにより圧力サイクルの治療効果が向上する。テクスチャ面はまた、圧力(陰圧)が創傷面上により均一に分布し、例えば創傷滲出液などの流体が、創傷領域から、一般にTNP治療法機器の一部を形成する吸引管路に向かって、より迅速かつ均一に排液されることを助けるように、創傷充填材と創傷面との間の境界面に、複数の流体流チャンネルを形成する。
【0009】
既知の膨張可能な創傷充填材の例は、特許文献4において説明されている。
【0010】
特許文献4では、膨張可能な袋又は嚢体タイプの創傷充填部材を利用して、創腔を充填する。嚢体部材は2つの層を有すると説明されているが、2つの層は一体構造の形態であるように見える。このタイプの構造の問題は、製造が難しく費用がかかることである。その構造によって嚢体は比較的剛性がある堅いものとなり、創傷面に対して不撓性となり、不快感及び外傷を起こす可能性がある。
【0011】
特許文献5は、嚢体内部に設けられて延びる複数の可撓性の管路を有する膨張可能な嚢体又は小袋を含み、管路が嚢体表面に出口/入口開口部を有する、創傷洗滌及び/又は吸引装置を説明している。管路は、創傷に流体を供給し、又は創傷から流体を導出するため、あるいはその両方のための流体移送管路である。しかし、この特定の構造の問題は、製造が非常に複雑であり費用がかかることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2004/037334号
【特許文献2】国際公開第2005/04670号
【特許文献3】国際公開第2005/105180号
【特許文献4】国際公開第2005/082435号
【特許文献5】独国特許出願公開第2378392号明細書
【特許文献6】英国特許出願公開第0712735号明細書
【特許文献7】国際特許出願第2007/074374号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、既知の装置構造の欠点のいくつかを排除又は少なくとも軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様によると、哺乳類の体の部位に局所陰圧治療法を行うための機器で利用するための創傷充填装置が提供され、装置は、膨張可能な袋状部材であって、袋状部材を膨張/収縮するように動作可能に接続された少なくとも1つの流体輸送管路を有する膨張可能な袋状部材と、膨張可能な袋状部材の少なくとも一部を覆う、テクスチャを有する別個のカバーソケット部材とを含む。
【0015】
上記で説明した創傷充填装置は、例えばヒトの体の創傷にTNP治療法を行うための機器の一部を形成することができる。そのような機器はまた、創傷の周りの無傷の皮膚又は肉に固着された密閉膜又は被覆カバーの下に画成されている創腔を吸引するための、例えば真空ポンプなどの吸引手段に接続された吸引管路を一般に含むことができ、その下に膨張可能な袋状部材及びソケット部材が閉じ込められている。膨張/収縮のために膨張可能な袋に動作可能に接続された少なくとも1つの管路はまた、密閉膜又は被覆膜(drape)を貫通し、又はその下を通ることができるが、あらゆる場合において周知のTNP包帯構造に従って密閉される。陰圧の実行は、当技術分野で既知の、創腔領域から排出するための手段又は方法によって達成することができる。
【0016】
膨張可能な袋状部材は、少なくとも1つの管路を介して膨張するための適切な手段に、動作可能に接続することができる。そのような手段は、創傷面が創傷に有益な治療効果を達成するように働くように、袋内に一定の圧力を維持し、又はパルス圧力を加えるように、例えば空気などの膨張流体を袋へと給送し、場合によっては流体を吸い出すこともできる、周知のタイプのポンプを含むことができる。
【0017】
袋状部材の陽圧膨張の選択肢が上記で説明されているが、接続されている管路を大気に開放したままとすることによって袋状部材を自己膨張させる選択肢もある。袋状部材を取り囲む創腔は、例えば真空ポンプによって排出されるので、袋は、袋表面の一方の側が創傷面に向かって、他方の側が密閉被覆膜の内面に向かって引き寄せられると、創腔と袋内部との圧力差のみにより空気が引き込まれることによって、膨張する傾向がある。
【0018】
密閉膜又は被腹膜の下に形成される創腔はまた、創腔の密閉に密閉膜が特に有効な場合、過剰な陰圧がかけられることによって患者に過度の不快感を与えないよう一定の陰圧を維持するために、創腔への通気を供給するために設けられた他の管路を有することもできる。そのような通気管路はまた、創腔の持続的吸引も促進する。そのような追加的な管路はまた、圧力変換器が創傷の遠位側に接続されているとき、創傷での圧力の測定に利用するという2つの目的にも役立つことができる。
【0019】
創傷部位に洗滌剤及び/又は薬剤を供給又は投与するために、創腔領域へのアクセスを有する他の管路を設けることもできる。
【0020】
膨張可能な袋状部材及びソケット部材は、互いに対して相互に摺動可能とすることができる。したがって、袋状部材が例えばあらかじめ定められた圧力パルスで膨張及び収縮すると、袋状部材の外面及びソケット部材の内面は互いに対して摺動することができる。これにより、ソケット部材のテクスチャ面が創傷面に対して無理に摺動されたり、外傷を引き起こす可能性や、新しく形成された肉芽組織を損傷する可能性を防ぐことができ、したがって、ソケット部材の外側のテクスチャ面は、創傷面に対して実質的に正常に圧力パルスを加えることができる。
【0021】
膨張可能な袋状部材及びテクスチャを有するソケット部材を、既知の経済的な製造技術で作製された2つの別個の部品として設けることによって、いくつかの重要な利点が得られる。まず、膨張可能な袋状部材は、創腔内部で折り畳まれたり丸められたりしたときも平坦なままである、本来柔らかく可撓性の薄いシート材から作製することができ、それにより、創傷面にかかる不要な負荷及び外傷が、既知の多層の袋構造と比較して、最小限になる。膨張可能な袋状部材を作製することができる材料は、膨張時に耐えなければならない圧力が比較的低いことから、比較的薄いものとすることができる。次に、膨張可能な袋状部材の上に別個のソケット部材を有することによって、ソケット部材表面のテクスチャを創傷面の必要に合わせて調整し、創傷タイプに合った適切なソケット/創傷境界面設計を有することができる。
【0022】
ソケット部材は、例えば実質的に隣接する外側形状を有する2つのシート材から作製し、それらの外縁で互いに溶着することができる。1つのシートは、例えば膨張可能な袋状部材を挿入する開口部を中心に有することができ、開口部の周りではソケット部材は、溶着された外縁を創傷面と接触させずにソケット部材の内側に含むように、裏返しにすることができる。
【0023】
膨張可能な袋状部材は、例えば、EVA、PU、PP、PE、シリコーンなどの薄く可撓性で実質的に不浸透性のプラスチックシート材及び他の適切な可撓性のプラスチック材料から、溶着後に溶着を内側に含むように裏返しにすることができるソケット部材と同様の方法で、作製することができる。しかし、膨張可能な袋状部材はソケット部材内に含まれており、溶着された外縁は創傷と接触しないようになっているので、これはソケット部材ほど重要ではない。
【0024】
したがって、別個の袋及びソケット部材を有することによって、それぞれの構成部品は、その機能に最適化され、2つの別個の役割を果たす必要のために損なわれることがない、特性を有するように作製することができる。
【0025】
膨張可能な袋状部材及びソケット部材の一実施例では、それらを作製するシートは、例えば円状とすることができる。
【0026】
ソケット部材は、後で膨張可能な袋状部材と組み合わせるものとして成形することができる。
【0027】
袋状部材を膨張/収縮させるための管路は、袋状部材の内部へと入るところで、袋状部材で密閉することができる。しかし、本発明の好ましい実施例では、膨張可能な袋状部材は開口部を備え、膨張可能な袋状部材への流体アクセス、及び有利には創腔領域に出入りする流体アクセスを行うことができるポート部材が、例えば溶着によって開口部に取り付けられている。そのようなポート部材は、可撓性のプラスチック材料の管路などの適切な流体管路を接続するための設備を有することができる。ポート部材はまた、有利には適切なシュラウド部材を備えており、これにより、患者が上にのった場合に不快感を与えない平滑な丸みを帯びた表面を設け、さらに重要なことには、様々なポートが、上を覆う密閉被覆膜によって塞がれたり遮断されたりすることなく創傷部位からの流体の自由な流れを維持するという2つの目的に役立つ。ポート部材及びシュラウドは、すべての管路をひとまとめにし、一部品として扱うことができるという利点をもたらし、それにより機器の創傷への利用がより迅速でより効率的になり、TNP機器の信頼性が向上する。
【0028】
本発明の好ましい実施例では、利用の際、特許文献6及び特許文献7に説明されているように、包帯とグロメットの組み合わせによって、密閉するための被腹膜下での様々な管路の創腔領域へのアクセスを提供することができる。
【0029】
ソケットは実質的に創傷面に固着しない材料から作製することができ、したがって患者への苦痛及び外傷が少ないので、柔らかく可撓性のソケット材料を利用して本発明による装置を製造することによって、より簡単に包帯を除去することができる。
【0030】
本発明による装置の別個のソケット部材は、創傷が閉じて空洞が残る傾向にある組織成長の減少を促進する。ソケット部材は、創傷の過成長を防ぎ、組織内のポケット形成を最小限にするという従来のTNP治療法における創傷充填材と類似した部材を効果的に形成し、二次的癒合による、又は創傷の基部から上方に向かう、創傷の治癒を促進する。
【0031】
ソケット部材のテクスチャ面は、主に、創傷の全表面区域にわたって均一な圧力分布をもたらし、創傷滲出液を複数のチャンネルによって効率的かつ迅速に排液するように、袋/ソケットの組み合わせの表面の上に複数のチャンネルを設けることができる。
【0032】
本発明によるソケット部材の一実施例では、テクスチャ面は、ソケット材料表面に、3次元の表面構造を効果的に形成する六角形の凹部又は溝の配列を含むことができ、凹部又は溝はそれぞれ中心に孔を有し、ソケット部材の両面の上、すなわち創傷面とソケット表面との間、及び膨張可能な袋の表面とソケット表面との間に、気体及び液体の両方の流体が流れることができるようにする。ソケット部材を作製することができる適切な材料は、例えば柔らかく創傷面に固着しないEVAフィルムなど、真空形成されたプラスチックシート材とすることができる。
【0033】
ソケット部材は、創傷面治療法に役立つ所望の表面形状及び形態とすることができる。
【0034】
別個のソケット部材を作製することができる代替材料は、例えばEVA、PU、PP、PE、シリコーン、カルボメトキシセルロース、ポリアクリレートなどの多種多様な異なる材料による織地材料、不織繊維シート、発泡体、電気紡糸したナノ繊維を含むことができる。
【0035】
例えば、コラーゲン、酸化セルロース、キトサン、ポリグリコール酸等の生分解性材料を利用することができる。
【0036】
本発明の一実施例では、膨張可能な袋状部材、ポート及びシュラウド部材、管路、患者への取り付けに適切な包帯及びグロメット部材及びソケット部材は、一体構成部品として供給することができ、TNP治療法機器として実現するには、創傷に適用し、真空及び膨張流体の適切な供給源に接続するだけでよい。
【0037】
本発明の第2の態様によれば、哺乳類の体の部位に局所陰圧治療法を行うための機器が提供され、機器は本発明の第1の態様の創傷充填装置を実現する。
【0038】
本発明をより十分に理解することができるように、添付の図面を参照しながら、例示のためにのみ、実施例を以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1A】本発明における創傷充填装置を実現する機器の一の構造の断面を部分的に表わした斜視図である。
【図1B】本発明における創傷充填装置を実現する機器の一の構造の断面を部分的に表わした斜視図である。
【図2A】ソケット部材及びその構造を表わす。
【図2B】ソケット部材及びその構造を表わす。
【図2C】ソケット部材及びその構造を表わす。
【図2D】ソケット部材及びその構造を表わす。
【図2E】ソケット部材及びその構造を表わす。
【図2F】ソケット部材及びその構造を表わす。
【図3A】膨張可能な袋状部材に溶着するためのポート部材を表わす。
【図3B】膨張可能な袋状部材に溶着するためのポート部材の断面図である。
【図3C】膨張可能な袋状部材に溶着するためのポート部材の断面図である。
【図3D】膨張可能な袋状部材に溶着するためのポート部材の断面図である。
【図3E】膨張可能な袋状部材に溶着するためのポート部材を表わす。
【図4A】図3に表わすポート部材と協働するシュラウド部材の底面図である。
【図4B】図3に表わすポート部材と協働するシュラウド部材の側面図である。
【図4C】図3に表わすポート部材と協働するシュラウド部材の上面図である。
【図4D】図3に表わすポート部材と協働する、図4Aに表わすシュラウド部材の底面図を表わす斜視図である。
【図4E】図3に表わすポート部材と協働する、図4Aに表わすシュラウド部材の上面図を表わす斜視図である。
【図5】TNP治療法を実施するための機器内に実現される、本発明における創傷充填装置が設けられている創傷の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
同一の機能を有している部材には共通する参照符号が付されている図面を参照する。
【0041】
図1A及び図1Bは、本発明における装置10の一の実施例の斜視図である。図5は、創腔(wound cavity)内に設けられた前記装置の概略的な断面図である。前記装置は、膨張可能な袋状部材14及びソケット部材16によって構成されている、膨張可能な創傷充填装置12を備えている。膨張可能な創傷充填装置12が、部分的に断面図になっている図1に表わされ、図1Bは、細部“A”の拡大図である。前記装置は、自身の内部を貫通している3つの独立した管腔20、22、24を有している(利用前の渦巻き状に巻かれた状態の)多管腔管路18も備えている。管路18は、グロメット部材28の穴26を貫通している。グロメット部材自体は、グロメット部材28の周囲の周りに形成されたフランジ30によって、包帯32に固着されている。包帯は、その一部分のみが表わされており、TNP治療法が施される創傷36に隣接している患者の皮膚34(図5参照)に、グロメット部材28を固着している。図5は、その配置の概略的な断面図を表わす。前記装置の創傷側端部において、管路18が、ポート部材38に取り付けられている。ポート部材は、膨張可能な袋状部材14の内部に、創腔40を吸引するために創腔40に(図5参照)、並びに創腔40内の陰圧を一定に維持し、及び/又は圧力を監視するように創腔40に通気させるために創腔40に、管腔20、22、24それぞれを接続している貫通した通路を有している。上部を覆い密閉している被覆膜46がポート部材38の吸気通路を遮断しないように、ポート部材38の上方に係止されているシュラウド部材44が設けられている(図3を参照しつつ、以下に詳述する)。TNPの技術分野ではよく知られているように、被覆膜46は創腔40の周囲を密閉し、これにより多量の吸気を実質的に防止する。創傷から遠位に位置している管路18の端部において、管路18が、管腔20、22、24を独立した管路52、54、56それぞれに接続しているコネクタブロック50を有している。管路52、54、56自体は、自身の自由端に、それぞれ適切なコネクタ60、62、64を備えている。これらコネクタは、膨張可能な袋状部材14を膨張させるために空気供給源(図示せず)に管腔を接続し、創腔40を吸引するために真空供給源、例えば真空ポンプ(図示せず)に管腔を接続し、創腔40内を所望の陰圧に維持するために創腔に通気させるために圧力解放弁及び/又は圧力変換器(図示せず)に管腔を接続するためのものである。
【0042】
包帯32及びグロメット部材28に関しては、特許文献6及び特許文献7を参照すべきである。これら特許文献の内容は、参照によって本明細書に組み込まれている。これら特許文献は、該包帯及び該グロメット部材の構造及び構成を詳細に説明されているが、本明細書に比較的付随している。従って、該包帯及び該グロメットは、周辺空気が前記空気供給源から創腔に流入することを防止するために、密閉するための被腹膜46に管路18を密閉する適切な手段に置き換え可能である。
【0043】
創傷充填装置12は、外側を覆っているソケット部材16を有している膨張可能な袋状部材14を備えている。膨張可能な袋状部材14は、可撓性及び不浸透性を有している薄肉プラスチック材料から成る2つの円状シート70、72の外周に溶着ビード74を形成するように、該円状シートを互いに溶着することによって作られている。上側シート70は、ポート部材38の外縁80の周囲に形成された薄肉のフランジ78に固定するに適した大きさの、円状の中心開口部76を有している。フランジ78と開口部76の縁部とは、膨張可能な袋状部材14とポート部材38とを一体部品とするように互いに溶着されているか、又は接着により接合されている。ソケット部材16は、可撓性を有している薄肉のプラスチック材料、例えばEVAから製造されており、真空形成されたテクスチャ面80を有している。該ソケット部材の表面形状は、六角形82から成る配列を備えている。各六角形には、中心孔84が設けられている(すべての凹部が穿孔されていなくても良い)。各六角形は、図2C〜図2Eに表わすように、チャンネル86によって隔てられている。図2Fは、六角状の凹部の輪郭を表わす側面図である。図2Fを参照すると、利用時に、直立した凹部がソケット部材16の表面に隣接している。ソケット部材は、プラスチック材料から成る2つのシート90、92から作られている。両シートの内側には、図2Aに表わすように、最終的な創傷接触面94が配設されている。2つのシートが自身の周囲において互いに溶着され、溶着ビード96が該シートの外側に残存している。図2A及び図2Bは、溶着後且つ反転前におけるソケット部材を表わす。上側シート90には、中心開口部98が形成されている。両シートが互いに溶着された後に、そのように形成されたソケットが開口部98を中心として反転され、これにより図2Cに表わすようにソケット部材が形成される。その結果、ソケット部材の内側には溶着ビード96が配設され、ソケット部材の外側には必要なテクスチャ面94が形成される。開口部98を利用することによって、膨張可能な袋状部材14をソケット16内に挿入し、ポート部材が溶着されたフランジ78の周囲に開口部98を嵌め込む。図2Cは、その領域の小さな部分がテクスチャ面を有しているソケット部材16を表わすが、図示のためにこのようになっているにすぎない。テクスチャ面がソケット部材16の上面全体及び下面全体に配設されている場合もあるが、同一のテクスチャ面が両面に形成されている必要は必ずしもない。図示の実施例では、六角形82の平面の幅が2.6mmであり、中心孔84の直径が0.6mmであり、六角状の凹部の深さが該平面から1.05mmである。しかしながら、これら寸法は、本発明におけるソケット部材の一の実施例の単なる例示にすぎず、他の実施例では、特定の創傷の要求に応じて変更可能である。
【0044】
この実施例では、以下に説明するように、吸引された流体をポート部材38に導く連続的な流体経路を維持するために、テクスチャ面がソケット部材の略全領域に亘って形成されていることが重要である。
【0045】
上述の例示的な創傷充填装置は、円状のシート材によって作られていると述べられているが、単なる例示であることは言うまでもなく、膨張可能な袋状部材14及びソケット部材16は、創傷の形状及び大きさ、又は所定範囲の創傷の形状及び大きさに適合する、任意の必要な形状及び大きさで作ることができる。
【0046】
ポート部材38は、例えば柔軟且つ適応可能なEVA材料から成形されているので、患者が該ポート部材上にのった場合であっても、硬質な材料を利用した場合に生じる外傷が発生しないようになっている。ポート部材38は、管腔20(52)、22(54)、24(56)の接続のための通路を管路18内に有する本体部分100及び本体部分100の外縁80の周りで膨張可能な袋状部材の開口部76の外縁に溶着されたフランジ部分78を含む。ポート部材は、管路18の外側形状に対応し協働するソケット部分102を有し、管路をソケット102へと直接差し込むことができ、個々の管腔20、22、24との同時接続をもたらすようになっている。管腔22は、創腔を排出するために創腔40と連通するように、本体部分100の上側部分を通る通路104と接続する(図5参照)。管腔24は、創腔40に通気をもたらし、及び/又は創腔40にかかっている実際の圧力を測定するために、通路106と接続する。通路104、106は、管腔22、24がソケット部分102内で共通接続されていることにより、ポート部材38内で内部接続されている。管路18の管腔20は、膨張可能な袋状部材14の内部に空気の供給源を提供するように管腔20で密閉され、ソケット102の基部の隆起した栓部分110を利用して通路108に個別に接続されている。通路108は、図3Eに点線114で示すように、ポート部材の基部112を通って出ることによって膨張可能な袋状部材の内部と連通する。本体部分100は、シュラウド部材44をポート部材38に保持するために、シュラウド部材44の突起122を受ける小さいブラインド溝120を備えている。シュラウド部材44は、吸引中、上を覆う被覆膜46によって塞がらないように、ポート部材38の外部への通路104の出口の上方及び周囲に、ポート部材38とシュラウド部材44との間の空間又は空洞124をもたらすのに役立つ(図5参照)。シュラウド部材44は、通路104を塞ぐことなく、被覆膜46によってかかる陰圧に耐えるのに十分な剛性を持つ、半クラムシェル本体部分126を含む。そのクラムシェル本体部分126はリブ128によって、過剰な歪みに対して補強されている。
【0047】
TNPの技術分野の当業者には理解されるように、上記の実施例で説明した特徴の多くは、添付の特許請求の範囲で定義される本発明から逸脱することなく、変更することができる。例えば、一体構成の管路18は別個の管路に変更することができ、適切なグロメット部材28又はグロメットは省略することができ、管路はTNPの技術分野で知られているように上を覆う被腹膜で密閉することができる。同様に、ポート部材は、別個の管路と協働するように適合することができ、シュラウド部材は、支障なく創腔を吸引することができる基本的な必要条件を満たすように、適切に修正することができる。ソケット表面のテクスチャの形態、及びそれを作製する材料は、ソケットが創傷に不要な外傷を与えず、創傷の表面区域全体にわたって均一な圧力分布を維持することができる限り、様々とすることができる。これら及び多くの他の修正は、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、行うことができる。
【0048】
本明細書の説明及び特許請求の範囲を通して、「含む」(“comprise”及び“contain”)という語及びその変化形、例えば“comprising”や“comprises”などは、「含むがこれに限定されない」(“including but not limited to”)を意味し、他の部分、付加物、構成部品、値又はステップを排除しようとするものではない(排除しない)。
【0049】
本明細書の説明及び特許請求の範囲を通して、他に記載がない限り、単数形は複数形も含む。特に、不定冠詞が利用されている場合は、他に記載がない限り、単数形とともに複数形も企図されているものと理解される。
【0050】
本発明の特定の態様、実施例又は実施例に関して説明された特徴、値、特質、化合物、化学物質又は基は、特に矛盾しない限り、本明細書で説明された以外の態様、実施例又は実施例にも適用可能であると理解される。
【符号の説明】
【0051】
10 装置
12 創傷充填装置
14 膨張可能な袋
16 ソケット
18 管路
20 管腔
22 管腔
24 管腔
26 穴
28 グロメット部材
30 フランジ
32 包帯
34 皮膚
36 創傷
38 ポート部材
40 創腔
44 シュラウド部材
46 被覆膜
50 コネクタブロック
52 管路
54 管路
56 管路
60 コネクタ
62 コネクタ
64 コネクタ
70 円状シート
72 円状シート
74 溶着ビード
76 開口部
78 フランジ
80 テクスチャ面
82 六角形
84 中心孔
86 チャンネル
90 シート
92 シート
94 創傷接触面
96 溶着ビード
98 開口部
100 本体
102 ソケット部分
104 通路
106 通路
108 通路
110 栓部分
112 基部
120 ブラインド溝
122 突起
124 空洞
126 半クラムシェル本体部分
128 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の体の部位に局所陰圧治療法を実施するための機器において利用するための創傷充填装置であって、
膨張可能な袋状部材であって、前記袋状部材を膨張/収縮させるように動作可能に前記袋状部材に接続されている少なくとも1つの流体輸送管路を有している前記袋状部材と、
前記袋状部材を少なくとも部分的に覆っているソケット部材であって、テクスチャード加工された前記ソケット部材と、
を備えていることを特徴とする創傷充填装置。
【請求項2】
前記袋状部材が、自身の外周において互いに溶着されている2つのシート材から作製されていることを特徴とする請求項1に記載の創傷充填装置。
【請求項3】
前記ソケット部材が、自身の外周において互いに溶着されている2つのシート材から作製されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の創傷充填装置。
【請求項4】
前記ソケット部材が、前記ソケット部材の内部において溶着されていることを特徴とする請求項3に記載の創傷充填装置。
【請求項5】
前記ソケット部材が、型成形されていることを特徴とする請求項1に記載の創傷充填装置。
【請求項6】
前記ソケット部材が、開口部を有しており、
前記袋状部材が、前記開口部内に挿入されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の創傷充填装置。
【請求項7】
前記袋状部材及び前記ソケット部材が、前記袋状部材が膨張又は収縮している際に、互いに対して滑動可能であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の創傷充填装置。
【請求項8】
前記ソケット部材が、テクスチャード加工された薄肉のプラスチック材料から成るシート材から作製されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の創傷充填装置。
【請求項9】
前記テクスチャード加工が、3次元パターンによって成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の創傷充填装置。
【請求項10】
3次元パターンには、前記袋状部材の外面と前記ソケット部材の内面との間に、創傷滲出液を排液するための吸引路が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の創傷充填装置。
【請求項11】
前記3次元パターンには、前記ソケット部材の外面と創傷面との間に、創傷滲出液のための吸引路が形成されていることを特徴とする請求項9に記載の創傷充填装置。
【請求項12】
前記テクスチャード加工が、凹部を繰り返し配置した配列によって成されていることを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載の創傷充填装置。
【請求項13】
少なくとも幾つかの凹部が、孔を有していることを特徴とする請求項11に記載の創傷充填装置。
【請求項14】
前記テクスチャード加工が、八角形を繰り返し配置した配列によって成されていることを特徴とする請求項7〜13のいずれか一項に記載の創傷充填装置。
【請求項15】
管路ポート部材が、前記少なくとも1つの流体輸送管路を取り付けるために、前記袋状部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の創傷充填装置。
【請求項16】
前記管路ポート部材には、創腔を吸引するための管路に接続するように、通路が設けられていることを特徴とする請求項15に記載の創傷充填装置。
【請求項17】
前記管路ポート部材には、通気及び/又は圧力の基準となる接続を確立するようにさらなる管路と協働するために、通路が設けられていることを特徴とする請求項15又は16に記載の創傷充填装置。
【請求項18】
前記管路ポート部材が、利用の際、吸引ポートの上方を覆っている創傷密閉膜によって前記吸引ポートが塞がれることを防止するために、シュラウド部材を有していることを特徴とする請求項15〜17のいずれか一項に記載の創傷充填装置。
【請求項19】
添付の明細書及び図面を参照して説明されていることを特徴とする創傷充填装置。
【請求項20】
哺乳類の体の創傷に局所陰圧治療法を実施するための機器であって、
請求項1〜19のいずれか一項に記載の創傷充填装置と、
吸引手段に接続されている吸引管路と、前記創傷を密閉し創腔を形成するための密閉膜と、
を含んでいることを特徴とする機器。
【請求項21】
前記創腔に連通している付加的な管路を備えていることを特徴とする請求項20に記載の機器。
【請求項22】
前記付加的な管路が、通気管路又は基準圧力管路であることを特徴とする請求項21に記載の機器。
【請求項23】
添付の明細書及び図面を参照して説明されていることを特徴とする哺乳類の体の創傷に局所陰圧治療法を実施するための機器。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C−2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−505889(P2011−505889A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536538(P2010−536538)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/GB2008/051122
【国際公開番号】WO2009/071935
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(391018787)スミス アンド ネフュー ピーエルシー (79)
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】