創傷被覆材および生命を脅かす重篤な出血を抑制するための方法
本発明は、新型出血抑制創傷被覆材およびその使用方法ならびに製造方法に関する。対象の創傷被覆材は、重篤な出血を抑制するために、非哺乳動物から構成される。重篤な出血を抑制するための創傷被覆材は、キトサン、親水性ポリマー、ポリアクリルポリマーまたはそれらの組み合わせを含む生体材料から形成される。本発明で考慮されている重篤な命にかかわる出血の種類は、典型的には、通常のガーゼ創傷被覆材を通常の圧力で被験体の創傷に適用した場合に止血され得ないタイプのものである。該創傷被覆材は、創傷を密封し、創傷部位における凝血塊の形成を促進し、創傷部位における凝血塊の形成を補強し、創傷部位からの出血を防止し、創傷部位からの血液の流出を実質的に妨げるように創傷部位に接着することによって、創傷からの重篤な命にかかわる血液の流れを実質的に止めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2003年12月15日に出願された、米国特許出願番号が付与されていない、Wound Dressing and Method of Controlling Severe Life−Threatening Bleedingについての出願の、米国特許法第1.53条第(b)項の下での一部継続出願である。この米国特許出願は、2002年6月16日に出願された、国際出願番号PCT/US02/18757の、米国特許法第371条の下での国際段階移行であった。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、出血抑制創傷被覆材、およびこのような被覆材の使用方法ならびに製造方法に関する。対象の創傷被覆材は、重篤な出血を抑制するために、非哺乳動物から構成される。重篤な出血を抑制するための創傷被覆材は、キトサンおよび/または他の親水性ポリマーを含む生体材料から形成される。あるいは該材料は、ポリアクリル酸またはポリアクリル酸と他のポリマーとの組み合わせを含み得る。本発明で考慮されている重篤な命にかかわる出血の種類は、典型的には、通常のガーゼ創傷被覆材を通常の圧力で創傷に適用した場合に止血され得ないタイプのものである。該創傷被覆材は、創傷部位に接着し、創傷を密封し、創傷部位における凝血塊の形成を促進し、創傷部位における凝血塊の形成を補強し、創傷部位からの出血を防止し、創傷部位からの血液の流出を実質的に妨げることによって、創傷からの命にかかわる出血の流れを実質的に止めることができる。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
新型出血抑制包帯およびその適用は、利用可能な実質的に増強された止血方法になると考えられる。今まで、ガーゼ包帯と共に連続的に圧力をかけることが、血流、特に、重篤な出血創傷からの血流を止めるために用いられる好ましい主な処置となっている。しかし、この方法は、重篤な血流を止めるのに、効果的でもないし安全でもない。このことは、創傷からの重篤な命にかかわる出血の場合の生存上の主な問題であったし、今も問題であり続けている。
【0004】
さらに、重篤な出血は、戦場での創傷による死亡の主要な原因であり、そのような死亡のおよそ50%を占めている。これらの死亡の三分の一は、改良された出血抑制方法および装置によって防止できると予想されている。また、このような改良された出血抑制は、非軍事的な場、例えば、出血が外傷後死亡の第二の主要原因である病院および獣医診療所においてきわめて有用であることも実証される。
【0005】
現在利用可能なコラーゲン創傷被覆材または乾燥フィブリントロンビン創傷被覆材は、外科手術適用における使用に限られており、高血流における分解に対する抵抗性が十分ではない。また、それらは、重篤な血流の止血において何らかの実際的な目的に役立つ十分な接着性を有していない。また、これらの現在利用可能な外科用止血包帯は、抵抗力が弱く、圧力による屈曲または負荷によって損傷すれば失敗する傾向がある。それらはまた、易出血性出血において分解し易い。これらの包帯のこのような分解および崩壊は、創傷への接着減損を引き起こし、出血を弱めずに続行させる可能性があるため、破局的となり得る。
【0006】
キトサンおよびキトサン被覆材に関して先行技術が存在する。例えば、Malletteらに対して発行された特許文献1では、マイクログラム/mLの量の血液を凝集させるために、液体または粉末形態のキトサンを使用している。また、Malletteらに対して発行された特許文献2は、キトサンを血管に直接注入することにより血管を治療的に閉塞する方法に関するものである。さらに、Malletteらに対して発行された特許文献3は、組織創傷にキトサン溶液または水溶性キトサンを接触させて配置することにより線維増殖を阻害し、組織再生を促進する止血に関する。該キトサン形態は、出血を防止する凝塊を形成する。
【0007】
Vournakisらに対して発行された特許文献4は、珪藻由来の医用グレード、高精度のキチンおよびキチン誘導体(該特許における分析によっては実証されていないが、いわゆるタンパク質の無い)を作成する方法に関する。いわゆるタンパク質の無いキチン/キトサン材料の提案された利点は、それらが、現在のエビおよびカニ由来のキチン材料よりも有意に抗原性が少ないと考えられることである。
【0008】
非特許文献1には、転相法によって製造された非対称キトサン膜の製造および創傷治癒機能が記載されている。
【0009】
非特許文献2には、ブタ脾臓皮膜剥ぎ取り試験に典型的な中等度の血流および浸出下でのキチン/キトサン止血パッチの試験が記載されている。
【0010】
非特許文献3には、ブタ脾臓皮膜剥ぎ取り試験における止血物質試験が記載されている。
【0011】
WATER SOLUBLE POLYMERS,SYNTHESIS,SOLUTION PROPERTIES AND APPLICATIONS、ACS Series467(W.S.Shalabyら編集、ACS、ワシントンDC、1991年、Ch28、431−445頁)におけるSandford,Steinnes A.、「Biomedical Application of High Purity Chitosan」。これは、キトサンスポンジに関するキトサンの使用法を記載している一般的なレビュー論文である。
【0012】
Mallette,W.G.ら、「Chitosan:A New Hemostat」Annals of Thoracic Surgery36(1):55−58頁、(1983)。上記のMaletteに関するコメントを参照されたい。
【0013】
Olsen,R.ら、In CHITIN AND CHITOSAN 、SOURCES,CHEMISTORY,BIOCHEMISTORY,PHYSICAL PROPERTIES AND APPLICATIONS,Elsevier Applied Science、ロンドンおよびニューヨーク、1989年、813−828頁。この論文は、キトサンの凝集効率に関する。
【0014】
特許文献5は、改善されたタックを有するキトサン医用バンドを扱っている。特許文献6は、外部止血適用のための、または創傷保護のための水不溶性および2%酢酸不溶性のキトサンスポンジを記載している。
【0015】
特許文献7は、少なくとも1つの生理学的試剤および少なくとも1つの下部構造を用いる凍結乾燥法によって形成された、創傷被覆材および/またはインプラント適用のためのコラーゲン基材の構造的に非均一なスポンジを記載している。
【0016】
特許文献8は、血液または他の流体の流れの停止に効率の高い凍結乾燥したスポンジ構造に関する。この特許は、コラーゲンスポンジの調製を記載している。
【0017】
特許文献9は、キトサンおよびアルギネートのブレンドまたは混合物から形成された創傷被覆材を含む。
【特許文献1】米国特許第4,394,373号明細書
【特許文献2】米国特許第4,452,785号明細書
【特許文献3】米国特許第4,532,134号明細書
【特許文献4】米国特許第5,858,350号明細書
【特許文献5】特許第60142927号公報
【特許文献6】特公昭63−090507号公報
【特許文献7】米国特許第5,700,476号明細書
【特許文献8】米国特許第2,610,625号明細書
【特許文献9】米国特許第5,836,970号明細書
【非特許文献1】Mi,F.L.ら、「Fabrication and Characterization of a Sponge−Like Assymetric Chitosan Membrane as a Wound Dressing」、Biomaterials、2001年、22(2):p.165−173
【非特許文献2】Chan,M.W.ら、「Comparison of Poly−N−acetyl Glucosamine(P−GlcNAc)with Absorbable Collagen(Actifoam),and Fibrin Sealant(Bolheal)for Achieving Hemostasis in a Swine Model of Splenic Hemorrhage」、J.Trauma Injury,Infection,and Critical Care,2000年、48(3):p.454−458
【非特許文献3】Cole,D.J.ら、「A Pilot Study Evaluating the Efficacy of a Fully Acetylated poly−N−acetyl glucosamine Membrane Formulation as a Topical Hemostatic Agent」、Surgery、1999年、126(3):510:p.517
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、重篤な血流を止めることができ、圧力による屈曲または負荷の際に失敗しない改良された止血包帯に対する必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の要旨)
本発明は、重篤な命にかかわる出血を抑制するための救急処置/第一次処置用創傷被覆材に関する。現在、重篤な命にかかわる出血の抑制に好適な低コストの創傷被覆材は無い。特に、典型的には全死亡の50%が重篤な出血の即時抑制不能に関連している戦場において、このタイプの被覆材に対する必要性が存在している。本発明の創傷被覆材は、創傷部位に接着し、創傷を密封し、創傷部位における凝血塊の形成を促進し、創傷部位における凝血塊の形成を補強し、創傷部位からの出血を防止し、創傷部位からの血液の流出を実質的に妨げることによって、創傷からの命にかかわる血液の流れを実質的に止めることができる。
【0020】
一実施形態において、圧縮されたスポンジが、約0.6g/cm3から0.15g/cm3の圧縮スポンジ密度を有する、親水性ポリマーを含む、出血抑制用の圧縮スポンジが提供される。親水性ポリマーは、アルギネート、キトサン、親水性ポリアミン、キトサン誘導体、ポリリジン、ポリエチレンイミン、キサンタン、カラゲナン、第四級アンモニウムポリマー、硫酸コンドロイチン、澱粉、修飾セルロースポリマー、デキストラン、ヒアルロナンまたはそれらの組み合わせであり得る。澱粉は、アミラーゼ、アミロペクチンおよびアミロペクチンとアミラーゼの組み合わせであり得る。親水性ポリマーは、キトサンであることが好ましい。キトサンは、少なくとも約100kDaの重量平均分子量を有することが好ましい。キトサンは、少なくとも約150kDaの重量平均分子量を有することがより好ましい。キトサンは、少なくとも約300kDaの重量平均分子量を有することが最も好ましい。
【0021】
キトサンは、スピンドルLV1の30rpmで、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃において、約100センチポアズから約2000センチポアズの粘度を有することが好ましい。キトサンは、スピンドルLV1の30rpmで、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃において、約125センチポアズから約1000センチポアズの粘度を有することがより好ましい。キトサンは、スピンドルLV1の30rpmで、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃において、約150センチボアズから約500センチボアズの粘度を有することが最も好ましい。
【0022】
該圧縮スポンジは、活性成分をさらに含み得る。該活性成分としては、限定はしないが、カルシウム、トロンビン、第VIIa因子、第XIII因子、トロンボキサンA2、プロスタグランジン−2a、上皮増殖因子、血小板由来増殖因子、フォン・ウィルブランド因子、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF−α、形質転換増殖因子(TGF)、TGF−α、TGF−β、インスリン様増殖因子、線維芽細胞増殖因子、ケラチノサイト増殖因子、神経成長因子、ペニシリン、アンピシリン、メチシリン、アモキシシリン、クラバモックス、クラブラン酸,アモキシシリン、アズトレオナム、イミペネム、ストレプトマイシン、カナマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、クリンダマイシン、エリスロマイシン、ポリミキシン、バシトラシン、アムホテリシン、ナイスタチン、リファンピシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、クロラムフェニコールおよびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
他の実施形態において、親水性ポリマースポンジ、およびスポンジの内部におよび/またはスポンジ表面に1つの、または複数の湿潤可能なポリマーマトリクスを含む出血抑制用の圧縮複合スポンジが提供される。親水性ポリマーとしては、アルギネート、親水性ポリアミン、キトサン誘導体、ポリリジン、ポリエチレンイミン、キサンタン、カラゲナン、第四級アンモニウムポリマー、硫酸コンドロイチン、澱粉、修飾セルロースポリマー、デキストラン、ヒアルロナンまたはそれらの組み合わせを挙げることができる。澱粉は、アミラーゼ、アミロペクチンおよびアミロペクチンとアミラーゼの組み合わせであり得る。
【0024】
湿潤可能なポリマーとしては、不織マット類、織マット類、成形ポリマーメッシュおよび低密度スポンジ類を挙げることができる。湿潤可能なポリマーとしては、限定はしないが、キチン、アルギネート、中和キトサン、再アセチル化キトサン、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(e−カプロラクトン)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(β−ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリホスファゼン、ポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセンポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルポリマー、ポリエステル、ポリアミドおよびそれらの組み合わせを挙げることができる。親水性ポリマーはキトサンであることが好ましい。
【0025】
キトサンは、少なくとも約100kDaの重量平均分子量を有することが好ましい。キトサンは、少なくとも約150kDaの重量平均分子量を有することがより好ましい。キトサンは、少なくとも約300kDaの重量平均分子量を有することが最も好ましい。キトサンは、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃で約100センチポアズから約2000センチポアズの粘度を有することが好ましい。キトサンは、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃で約125センチポアズから約1000センチポアズの粘度を有することがより好ましい。キトサンは、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃で約150センチボアズから約500センチボアズの粘度を有することが最も好ましい。
【0026】
該スポンジは、親水性ポリマーを含浸させた糸を含み得る。該糸は親水性ポリマーを含浸させる。該親水性ポリマーはキトサンであることが好ましい。また、該親水性ポリマーとして、限定はしないが、アルギネート、親水性ポリアミン、キトサン誘導体、ポリリジン、ポリエチレンイミン、キサンタン、カラゲナン、第四級アンモニウムポリマー、硫酸コンドロイチン、澱粉、修飾セルロースポリマー、デキストラン、ヒアルロナンまたはそれらの組み合わせを挙げることもできる。
【0027】
該湿潤可能なメッシュは、不織メッシュであり得る。該スポンジは、約15ミクロンから約300ミクロンの孔径の細孔を含有することが好ましい。該スポンジは、約30ミクロンから約250ミクロンの孔径の細孔を含有することがより好ましい。該スポンジは、約100ミクロンから約225ミクロンの孔径の細孔を含有することがより好ましい。該スポンジは、約125ミクロンから約200ミクロンの孔径の細孔を含有することがより好ましい。該スポンジは、約150ミクロンから約175ミクロンの孔径の細孔を含有することが最も好ましい。該スポンジは、スポンジ基材表面当たり、1cm2当たり約100cm2から1cm2当たり約1000cm2の利用可能な血液接触表面積を有することが好ましい。該圧縮複合スポンジは、スポンジ基材表面当たり、1cm2当たり約200cm2から1cm2当たり約800cm2の利用可能な血液接触表面積を有することがより好ましい。該スポンジは、スポンジ基材表面当たり、1cm2当たり約300cm2から1cm2当たり約500cm2の利用可能な血液接触表面積を有することが最も好ましい。創傷表面積当たりの利用可能なキトサン生体材料の平均質量は、約0.02g/cm2から約1.0g/cm2であることが好ましい。創傷表面積当たりの利用可能なキトサン生体材料の平均質量は、約0.04g/cm2から約0.5g/cm2であることがより好ましい。創傷表面積当たりの利用可能なキトサン生体材料の平均質量は、約0.06g/cm2から約0.1g/cm2であることが最も好ましい。
【0028】
該圧縮複合スポンジは、裏地支持層をさらに含み得る。該裏地支持層は、ポリマー材料の層であり得る。該ポリマー材料は、合成非生分解性材料であっても天然生分解性ポリマーであってもよい。合成生分解性材料としては、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(e−カプロラクトン)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(β−ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリホスファゼン、ポリエチレンのコポリマー類、ポリプロピレンのコポリマー類、前記ポリマー類の合成に用いられるモノマー類のコポリマー類またはそれらの組み合わせを挙げることができる。天然ポリマー類は、キチン、アルギン、澱粉、デキストラン、コラーゲン、アルブメンおよびそれらの組み合わせを挙げることができる。合成ポリマー類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセンポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルポリマー、ポリエステル、ポリアミドおよびそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0029】
該圧縮複合スポンジは、創傷部位に対して、約40kPaから約500kPaの接着度を有することが好ましい。該圧縮複合スポンジは、創傷部位に対して、約60kPaから約250kPaの接着度を有することがより好ましい。該圧縮複合スポンジは、創傷部位に対して、約100kPaから約200kPaの接着度を有することが最も好ましい。
【0030】
該圧縮複合スポンジは、創傷被覆材−血液界面において、前記創傷からの血流と組み合わせて接着材料を形成することができる。該接着材料はキトサン接着材料であることが好ましい。該キトサン材料は、創傷が密封されている場合、約6.3以下のpHを有することが好ましい。該キトサン材料は、創傷が密封されている場合、好ましくは、約4.5以下のpHを有することがより好ましい。該キトサン材料は、創傷が密封されている場合、約4.0以下のpHを有することが最も好ましい。
【0031】
該接着材料は、酢酸、ギ酸、乳酸、アスコルビン酸、塩酸およびクエン酸よりなる群から選択される酸を含み得る。該圧縮複合スポンジは、約3.0mm以上で約8mm以下の厚さを有することが好ましい。該圧縮複合スポンジは、約3.5mm以上で約7mm以下の厚さを有することがより好ましい。該圧縮複合スポンジは、約4.0mm以上で約6mm以下の厚さを有することが最も好ましい。該圧縮複合スポンジは、約0.1Mpaから約10Mpaの極限引張応力を有することが好ましい。該圧縮複合スポンジは、約0.15Mpaから約0.8Mpaの極限引張応力を有することがより好ましい。該圧縮複合スポンジは、約0.25Mpaから約0.5Mpaの極限引張応力を有することが最も好ましい。
【0032】
該圧縮複合スポンジは、約5%の極限伸び率を有することが好ましい。該圧縮複合スポンジは、約10%の極限伸び率を有することがより好ましい。該圧縮複合スポンジは、約15%の極限伸び率を有することが最も好ましい。
【0033】
他の実施形態において、(a)低密度スポンジの凍結/凍結乾燥調製;および(b)1分当たり、約10mmの好ましい速度、および80℃の好ましい制御温度において、該低密度スポンジを圧縮し、それによって約0.1g/cm3から約0.2g/cm3の密度を有する圧縮スポンジを得ることを包含する出血抑制用圧縮スポンジを調製するプロセスが提供される。
【0034】
他の実施形態において、(a) 低密度スポンジの凍結/凍結乾燥調製以外の方法による低密度スポンジの調製;および(b)引き続いて、1分当たり、約10mmの好ましい速度、および約80℃の好ましい制御温度において、該低密度スポンジを圧縮し、それによって約0.1g/cm3から約0.2g/cm3の密度を有する圧縮スポンジを得ることを包含する出血抑制用圧縮スポンジを調製するプロセスが提供される。該低密度スポンジは、約0.01g/cm3から約0.035g/cm3の密度を有することが好ましい。該圧縮スポンジは、約0.1g/cm3から約0.15g/cm3の密度を有することが好ましい。
【0035】
他の実施形態において、a)キトサン生体材料溶液を加熱することによってキトサン生体材料を脱気し、それに減圧を適用すること;b)キトサン生体材料溶液を凍結させること;c)キトサン生体材料中の水分が固相から気相内へ通るように、凍結キトサン生体材料の構造的完全性を損傷することなく、凍結キトサン生体材料の内部から水分を除去すること;d)1分当たり、約10mmの好ましい速度でキトサン生体材料を圧縮し、それによって、約0.1g/cm3から約0.2g/cm3の密度を有する圧縮スポンジを得ること;およびe)80℃で30分間、圧縮キトサンスポンジを焼成することを包含する出血抑制用圧縮スポンジを調製するプロセス。ステップ(b)のキトサン生体材料の凍結時、温度は、予め決められた時間をかけて徐々に低下させることが好ましい。
【0036】
ステップ(b)の温度は、約−25℃以下の最終凍結温度であることが好ましい。ステップ(b)の処理は、約−35℃以下の最終凍結温度を含むことがより好ましい。ステップ(b)の温度は、約−45℃以下の最終凍結温度であることが最も好ましい。水分除去は、凍結したキトサン生体材料の凍結乾燥によって実施できる。この処理は、凍結前に、脱気キトサン溶液にアルゴン、窒素およびヘリウムを添加するステップをさらに含むことができる。
【0037】
該圧縮スポンジは滅菌できる。該圧縮スポンジはγ線照射によって滅菌することが好ましい。
【0038】
他の実施形態において、圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジを投与することを包含する、被験体における重篤な出血を防止するプロセスが提供される。該被験体は哺乳動物であることが好ましい。該哺乳動物はヒトであることがより好ましい。該被験体は、もし、出血が抑制されないままであれば、20分から30分以内に、全血液容量の約30〜40%の損失が生じるような重篤な出血を被っていることが好ましい。該圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジは、出血外傷部上に直接、約60kPaから80kPaの圧力で適用され、そのまま3分から5分保持してから、放し、覆って巻き付けることが好ましい。
【0039】
他の実施形態において、重篤な出血を処置するための、圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジ、覆い用ガーゼロールおよび創傷巻き付け用Ace包帯を備える包帯キットが提供される。
【0040】
他の実施形態において、マクロテクスチャー加工面に該スポンジの組織接触面を押し付けることを包含する、圧縮スポンジまたは複合圧縮スポンジの機械的接合およびかみ合わせのプロセスが提供される。マクロテクスチャー加工面としては、化学的エッチングによって調製された面、イオンビーム表面削摩によって調製された面、機械的切断によって調製された面およびレーザー削摩によって調製された面を挙げることができる。
【0041】
他の実施形態において、マクロテクスチャー加工面に該スポンジの組織接触面を押し付けることを包含する、圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジの機械的牽引力を改善するプロセスが提供される。マクロテクスチャー加工面は、化学的エッチングによって調製された面、および粒子吹きつけ法によって調製された面よりなる群から選択されることが好ましい。
【0042】
他の実施形態において、スポンジ表面をポリマーフィルム、ポリマープレート、高所プラスチックプレートまたは水分不浸透性通気性膜フィルムで覆うことを包含する、複合スポンジまたは圧縮複合スポンジの表面上に粗い外被が形成されることを制限するかまたは阻止するプロセスが提供される。
【0043】
他の実施形態において、約0.05g/cm3未満の開始密度で、スポンジが約0.08g/cm3未満の密度に達するまで、該スポンジを圧縮することによって該スポンジが形成される低密度スポンジ。該スポンジは、凍結または凍結乾燥以外の方法によって形成することができる。該スポンジは、転相法、予め形成されたマトリクスに対する活性成分の共有結合によって作成されたスポンジ、および発泡法よりなる群から選択される方法を用いて形成されることが好ましい。
【0044】
他の実施形態において、該圧縮スポンジ および圧縮複合スポンジは、少なくとも1つのさらなる親水性ポリマーをさらに含み得る。さらなる親水性ポリマーとしては、限定はしないが、アルギネート、キトサン、親水性ポリアミン、キトサン誘導体、ポリリジン、ポリエチレンイミン、キサンタン、カラゲナン、第四級アンモニウムポリマー、硫酸コンドロイチン、澱粉、修飾セルロースポリマー、デキストラン、ヒアルロナンまたはそれらの組み合わせを挙げることができる。澱粉としては、限定はしないが、アミラーゼ、アミロペクチンおよびアミロペクチンとアミラーゼの組み合わせを挙げることができる。該親水性ポリマーは、キトサンであることが好ましい。
【0045】
他の実施形態では、圧縮スポンジが約0.6g/cm3から0.15g/cm3の圧縮スポンジ密度を有し、疎水性ポリマーがポリアクリル酸であり得る親水性ポリマーを含む出血抑制用圧縮スポンジが提供される。該圧縮スポンジは、活性成分をさらに含み得ることが好ましい。該活性成分としては、限定はしないが、カルシウム、トロンビン、第VIIa因子、第XIII因子、トロンボキサンA2、プロスタグランジン−2a、上皮増殖因子、血小板由来増殖因子、フォン・ウィルブランド因子、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF−α、形質転換増殖因子(TGF)、TGF−α、TGF−β、インスリン様増殖因子、線維芽細胞増殖因子、ケラチノサイト増殖因子、神経成長因子、ペニシリン、アンピシリン、メチシリン、アモキシシリン、クラバモックス、クラブラン酸、アモキシシリン、アズトレオナム、イミペネム、ストレプトマイシン、カナマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、クリンダマイシン、エリスロマイシン、ポリミキシン、バシトラシン、アムホテリシン、ナイスタチン、リファンピシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、クロラムフェニコールおよびそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0046】
他の実施形態において、疎水性ポリマーがポリアクリル酸である、親水性ポリマースポンジおよび該スポンジの内部および/または該スポンジ表面に1つまたは複数の湿潤可能なポリマーマトリクスを含む出血抑制用圧縮複合スポンジが提供される。該湿潤可能なポリマーマトリクスとしては、不織マット類、織マット類、成形ポリマーメッシュおよび低密度スポンジ類を挙げることができる。該湿潤可能なポリマーマトリクスとしては、キチン、アルギネート、中和キトサン、再アセチル化キトサン、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(e−カプロラクトン)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(β−ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリホスファゼン、ポリエチレン、ポリプロピレン,メタロセンポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルポリマー、ポリエステル、ポリアミドまたはそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0047】
該スポンジは、親水性ポリマーに含浸させた糸をさらに含み得る。該糸は、疎水性ポリマーがポリアクリル酸である親水性ポリマーに含浸させることが好ましい。該湿潤可能なポリマーマトリクスは不織メッシュであることが好ましい。
【0048】
該スポンジは、約15ミクロンから約300ミクロンの孔径を有する細孔を含有することが好ましい。該スポンジは、約30ミクロンから約250ミクロンの孔径を有する細孔を含有することがより好ましい。該スポンジは、約100ミクロンから約225ミクロンの孔径を有する細孔を含有することがより好ましい。該スポンジは、約125ミクロンから約200ミクロンの孔径を有する細孔を含有することがより好ましい。該スポンジは、約150ミクロンから約175ミクロンの孔径を有する細孔を含有することが最も好ましい。該スポンジは、スポンジ基材表面当たり、1cm2当たり、約100cm2から1000cm2の利用可能な血液接触表面積を有することが好ましい。該スポンジは、スポンジ基材表面当たり、1cm2当たり、約200cm2から800cm2の利用可能な血液接触表面積を有することがより好ましい。該スポンジは、スポンジ基材表面当たり、1cm2当たり、約300cm2から500cm2の利用可能な血液接触表面積を有することが最も好ましい。
【0049】
該圧縮複合スポンジは、裏地支持層をさらに含み得る。該裏地支持層は、ポリマー材料の層であり得ることが好ましい。該ポリマー材料は、合成非生分解性材料かまたは天然生分解性ポリマーであることが好ましい。合成生分解性材料としては、限定はしないが、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(e−カプロラクトン)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(β−ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリホスファゼン、ポリエチレンのコポリマー類、ポリプロピレンのコポリマー類、前記ポリマー類の合成に用いられるモノマー類のコポリマー類またはそれらの組み合わせを挙げることができる。天然ポリマーとしては、限定はしないが、キチン、アルギン、澱粉、デキストラン、コラーゲン、卵白、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。合成ポリマーとしては、限定はしないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセンポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルポリマー、ポリエステル、ポリアミドまたはそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0050】
該圧縮複合スポンジは、創傷部位に対して、約40kPaから500kPaの接着度を有することが好ましい。該圧縮複合スポンジは、創傷部位に対して、約60kPaから250kPaの接着度を有することがより好ましい。該圧縮複合スポンジは、創傷部位に対して、約100kPaから200kPaの接着度を有することが最も好ましい。
【0051】
該圧縮複合スポンジは、創傷被覆材−血液界面において、前記創傷からの血流と組み合わせて接着材料を形成する能力があり得る。該接着材料は、創傷が密封されている場合、好ましくは、約5.5以上のpHを有することが好ましい。該接着材料は、創傷が密封されている場合、好ましくは、約6.5以下のpHを有することがより好ましい。該接着材料は、創傷が密封されている場合、好ましくは、約7.5以下のpHを有することが最も好ましい。該接着材料は、酢酸、ギ酸、乳酸、アスコルビン酸、塩酸、およびクエン酸よりなる群から選択される酸を含むことが好ましい。該圧縮複合スポンジは、約3.0mm以上で約8mm以下の厚さを有することが好ましい。該圧縮複合スポンジは、約3.5mm以上で約7mm以下の厚さを有することがより好ましい。該圧縮複合スポンジは、約4.0mm以上で約6mm以下の厚さを有することが最も好ましい。該圧縮複合スポンジは、約0.1MPaから約10MPaの極限引張応力を有することが好ましい。該圧縮複合スポンジは、約0.15MPaから約0.8MPaの極限引張応力を有することがより好ましい。該圧縮複合スポンジは、約0.25MPaから約0.5MPaの極限引張応力を有することが最も好ましい。
【0052】
該圧縮複合スポンジは、約5%の極限伸び率を有することが好ましい。該圧縮複合スポンジは、約10%の極限伸び率を有することがより好ましい。該圧縮複合スポンジは、約15%の極限伸び率を有することが最も好ましい。
【0053】
他の実施形態において、(a)低密度スポンジの凍結/凍結乾燥調製ステップ;および(b)該低密度スポンジを、1分当たり、10mmの好ましい速度および80℃の好ましい制御温度で圧縮することによって、約0.1g/cm3から約0.2g/cm3の密度を有する圧縮スポンジを得るステップ、を包含する、請求項1の出血抑制用圧縮スポンジを調製するプロセスが提供される。
【0054】
他の実施形態において、(a)低密度スポンジの凍結/凍結乾燥調製以外の方法により低密度スポンジを調製するステップ;および(b)引き続き、該低密度スポンジを、1分当たり、10mmの速度および80℃の好ましい制御温度で圧縮することによって、約0.1g/cm3から約0.2g/cm3の密度を有する圧縮スポンジを得るステップ、を包含する、出血抑制用圧縮スポンジを調製するプロセスが提供される。該低密度スポンジは、約0.01g/cm3から約0.035g/cm3の密度を有することが好ましい。該圧縮スポンジは、約0.1g/cm3から約0.15g/cm3の密度を有することが好ましい。
【0055】
他の実施形態において、a)生体材料溶液を加熱し、それに減圧を適用することによって生体材料溶液を脱気こと;b)該生体材料溶液を凍結させること;c)該生体材料中の水分が固相から気相内へ通るように、凍結生体材料の構造的完全性を損傷することなく、凍結生体材料の内部から水分を除去すること;d)1分当たり、約10mmの好ましい速度で該生体材料を圧縮し、それによって、約0.1g/cm3から約0.2g/cm3の密度を有する圧縮スポンジを得ること;およびe)80℃で30分間、圧縮スポンジを焼成することを包含する出血抑制用圧縮複合スポンジを調製するプロセスが提供される。ステップ(b)の該生体材料の凍結時、温度は、予め決められた時間をかけて徐々に低下させることが好ましい。ステップ(b)の温度は、約−5℃以下の最終凍結温度であることが好ましい。ステップ(b)の温度は、約−35℃以下の最終凍結温度であることがより好ましい。ステップ(b)の温度は、約−25℃以下の最終凍結温度であることが最も好ましい。水分除去は、凍結した該生体材料の凍結乾燥によって実施することが好ましい。この処理は、凍結前に、脱気キトサン溶液にアルゴン、窒素およびヘリウムを添加するステップをさらに含むことができる。該スポンジは、滅菌できる圧縮スポンジであり得る。該圧縮スポンジはγ線照射によって滅菌することが好ましい。
【0056】
他の実施形態において、圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジを投与することを包含する、被験体における重篤な出血を防止するプロセスが提供される。該被験体は哺乳動物であることが好ましい。該哺乳動物はヒトであることがより好ましい。該被験体は、もし、出血が抑制されないままであれば、20分から30分以内に、全血液容量の約30〜40%の損失が生じるような重篤な出血を被っていることが好ましい。該圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジは、出血外傷部上に直接、約60kPaから80kPaの圧力で適用され、剥離、填塞および巻き付け前に3分から5分、正しい場所に保持されることが好ましい。
【0057】
他の実施形態において、圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジを投与することを包含する、被験体における重篤な出血を防止するプロセスが提供される。該被験体は哺乳動物であることが好ましい。該哺乳動物はヒトであることがより好ましい。該被験体は、もし、出血が抑制されないままであれば、20分から30分以内に、全血液容量の約30〜40%の損失が生じるような重篤な出血を被っていることが好ましい。該圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジは、出血外傷部上に直接、約60kPaから80kPaの圧力で適用され、そのまま3分から5分保持してから、放し、覆って巻きつけることが好ましい。
【0058】
他の実施形態において、重篤な出血を処置するための、圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジ、覆い用ガーゼロールおよび創傷巻き付け用Ace包帯を備える包帯キットが提供される。
【0059】
他の実施形態において、マクロテクスチャー加工面に該スポンジの組織接触面を押し付けることを包含する、圧縮スポンジまたは複合圧縮スポンジの機械的接合およびかみ合わせのプロセスが提供される。マクロテクスチャー加工面としては、化学的エッチングによって調製された面、イオンビーム表面削摩によって調製された面、機械的切断によって調製された面およびレーザー削摩によって調製された面を挙げることができる。
【0060】
他の実施形態において、マクロテクスチャー加工面に該スポンジの組織接触面を押し付けることを包含する、圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジの機械的牽引力を改善するプロセスが提供される。マクロテクスチャー加工面は、化学的エッチングによって調製された面、および粒子吹きつけ法によって調製された面よりなる群から選択されることが好ましい。
【0061】
他の実施形態において、スポンジ表面をポリマーフィルム、ポリマープレート、高所プラスチックプレートまたは水分不浸透性通気性膜フィルムで覆うことを包含する、複合スポンジまたは圧縮複合スポンジの表面上に粗い外被が形成されることを制限するかまたは阻止するプロセスが提供される。
【0062】
他の実施形態において、約0.05g/cm3未満の密度で、該スポンジが約0.08g/cm3未満の密度に達するまで、該スポンジを圧縮することによって該スポンジが形成され、および該スポンジが、凍結または凍結乾燥以外の方法によって形成される低密度スポンジが提供される。該スポンジは、転相法、予め形成されたマトリクスに対する活性成分の共有結合によって作成されたスポンジ、および発泡法よりなる群から選択される方法を用いて形成されることが好ましい。
【0063】
他の実施形態において、ポリアクリル酸と組み合わせて親水性ポリマーをさらに含む圧縮スポンジおよび圧縮複合スポンジが提供される。該親水性ポリマーとしては、限定はしないが、アルギネート、キトサン、親水性ポリアミン、キトサン誘導体、ポリリジン、ポリエチレンイミン、キサンタン、カラゲナン、第四級アンモニウムポリマー、硫酸コンドロイチン、澱粉、修飾セルロースポリマー、デキストラン、ヒアルロナンまたはそれらの組み合わせを挙げることができる。澱粉としては、限定はしないが、アミラーゼ、アミロペクチンおよびアミロペクチンとアミラーゼの組み合わせを挙げることができる。該親水性ポリマーは、キトサンであることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
(A. 圧縮スポンジおよび圧縮複合スポンジ)
本発明は、重篤な命にかかわる出血を抑制するための救急処置/第一次処置創傷被覆材に関する。このような出血は、衝撃外傷および重篤な動脈裂傷において致命的であり得る。特に、典型的には全死亡の50%が重篤な出血の即時抑制不能に関連している戦場において、このタイプの被覆材に対する緊急の必要性が存在している。
【0065】
重篤な命にかかわる出血を抑制するための新型創傷被覆材は、以下の性質を有することが好ましい:
i) パッケージからの取り出し後、1ステップで容易に速やかに適用される;
ii) 迅速で強力な血液凝固;
iii) 迅速で強力な組織接着;
iv) 強力な内部凝集性;
v) 迅速で強力な創傷密封;
vi) 強い血流下での耐分解性;
vii) 外傷との良好な適合性;
viii)滑りを止めるため、制御された組織接触面テクスチャーによる組織上への包帯の良好な初期機械的取り付け;および
ix) 有効性を損なうことなく、手荒に扱える能力。
【0066】
この目的で、本発明は、新型出血抑制創傷被覆材、およびこのような創傷被覆材の使用方法および製造方法に関する。本発明で考慮されている重篤な命にかかわる出血の種類は、典型的には、通常のガーゼ創傷被覆材を通常の圧力で被験体の創傷に適用した場合に止血され得ないタイプのものである。あるいは、重篤な命にかかわる出血の性質は、通常のガーゼ創傷被覆材を通常の圧力で創傷に適用した場合に止血されず、もし、他の手段で抑制されなければ、その人が低血圧の状態に陥る結果になると考えられるようなものである。言い換えると、重篤な命にかかわる出血は、一般的に、通常のガーゼ創傷被覆材を通常の圧力で創傷に適用した場合に止血することができず、その人の収縮期血圧が、約90mmHg未満のレベルに低下する結果になると考えられるものである。
【0067】
また、重篤な命にかかわる出血は、70kgのヒト男性から、約20分に、全血液の約40%超の容量が失われると考えられる出血で、その血液容量の損失により、その人の生存可能性が大きく低下すると考えられるような、1分当たり、約90mL超の血液損失という定常的な高血流として記述することもできる。このタイプの出血が5〜10分以内に止められなければ、負傷した人は動脈血圧が60mmHg未満に低下するような低血圧状態に陥り得る。多くの場合、重篤な出血は、衝撃弾丸傷または鋭い穿孔傷または鈍端外傷によって生じる。他の場合、重篤な出血は、凝血異常または内部外傷または手術外傷、自動車外傷、農業事故などによって生じる。
【0068】
本発明の創傷被覆材は、少なくとも約90mL/分の血流速度を有する実質的な動脈創傷または実質的な静脈創傷によって生じる前記の重篤な出血を止めることができ、および約5分以下の時間、創傷被覆材への直接的な圧力を適用することによって創傷部位に接着することができる。また、該創傷被覆材は、速やかに作用して創傷を密封し、相当の創傷部位からの重篤な出血の凝固および凝集を助け、創傷被覆材への直接的圧力の一時的適用によって重篤な出血を止める。該創傷被覆材は、高血流において抗分解性を有し、良好な内部凝集性を有する。それは、外傷に適合する上で十分な柔軟性および手荒な取り扱いに抗する靭性を有する。
【0069】
重篤な出血を抑制するための該対象被覆材は、生体材料から形成される。該生体材料は非哺乳動物材料を含むことが好ましい。該非哺乳動物材料は、より一般的にはキトサンと称されるポリ〔β−(1→4)−2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコピラノース〕である。
【0070】
該創傷被覆材は、中間構造体の使用または形体生成ステップにより、スポンジ様または織形態へと形成される。該生体材料は、相互接続開放多孔性構造、および/または配向開放ラメラ構造、および/または開放菅状構造、および/または蜂巣状構造、および/または糸状構造を含む。該創傷被覆材は約15ミクロンから約300ミクロン;約30ミクロンから約250ミクロン;約100ミクロンから約225ミクロン;約125ミクロンから約200ミクロン;最も好ましくは、約150ミクロンから約175ミクロンの細孔を有する相互接続自由空間領域または細孔を有する。該創傷被覆材は、前記創傷被覆材の基材表面当たり、好ましくは1cm2当たり、少なくとも約100cm2、より好ましくは1cm2当たり、少なくとも約200cm2、最も好ましくは1cm2当たり、少なくとも約300cm2の平均血液接触表面積を有する。創傷表面積当たりのキトサン生体材料の平均質量は、約0.02g/cm2から約1.0g/cm2であることが好ましく;創傷表面積当たりのキトサン生体材料の平均質量は、約0.04g/cm2から約0.5g/cm2であることがより好ましく;創傷表面積当たりのキトサン生体材料の平均質量は、約0.06g/cm2から約0.1g/cm2であることが最も好ましい。
【0071】
「基材表面当たり」とは、例えば、一般的に血液と接触する1cm×1cmの基材面を考えた場合、開放スポンジ構造のため、血液は、少なくとも100cm2のキトサン表面積に接触することが予測されることを意味する。
【0072】
スポンジ類は、限定はしないが、転相法、凍結、凍結乾燥、予め形成されたマトリクスに対する活性成分の共有結合、および発泡法などの方法により調製できる。
【0073】
さらに、該創傷被覆材は、約37℃の温度で前記創傷部位に接着している場合、前記創傷被覆材の基材表面積につき、好ましくは1cm2当たり、1分当たり、約0.008グラム以下、より好ましくは1cm2当たり、1分当たり、約0.005グラム以下、最も好ましくは1cm2当たり、1分当たり、約0.002グラム以下の平均分解速度を有する。
【0074】
対象の創傷被覆材は、好ましくは少なくとも約0.05g/cm3,より好ましくは少なくとも約0.07g/cm3,最も好ましくは少なくとも約0.11g/cm3の密度を有する。それは、好ましくは少なくとも約0.05g/cm3までの、より好ましくは少なくとも約0.07g/cm3までの,最も好ましくは少なくとも約0.095g/cm3までの,かつ好ましくは約0.2g/cm3以下の圧縮負荷を有し得る。
【0075】
本発明の創傷被覆材は、少なくとも約50kDa、好ましくは少なくとも約75kDa、より好ましくは少なくとも約100kDa、最も好ましくは少なくとも約150kDaの数平均分子量(pH5.5、0.01M酢酸ナトリウム中、ポリエチレングリコール標準に対し、ゲルろ過クロマトグラフィーによって決定された分子量)を有するキトサンを典型的に含有する。該キトサン接着材料は、創傷が密封されている場合、約6.3以下のpHを有することが好ましい。該キトサン接着材料は、創傷が密封されている場合、約4.5以下のpHを有することがより好ましい。該キトサン接着材料は、創傷が密封されている場合、約4.0以下のpHを有することが最も好ましい。
【0076】
親水性ポリマーがポリアクリル酸である被覆材に関しては、該接着材料は、創傷が密封されている場合、約5.5以上のpHを有することが好ましい。該接着材料は、創傷が密封されている場合、約6.5以上のpHを有することがより好ましい。該接着材料は、創傷が密封されている場合、約7.5以上のpHを有することが最も好ましい。
【0077】
該キトサンはまた、好ましくは少なくとも約100kDa、より好ましくは少なくとも約150kDa、最も好ましくは少なくとも約300kDaの重量平均分子量(pH5.5、0.01M酢酸ナトリウム中、ポリエチレングリコール標準に対し、ゲルろ過クロマトグラフィーによって決定された分子量)を有する。該創傷被覆材中のキトサンはまた、単スピンドルの約30rpmで、1%酢酸(AA)溶液中、25℃において、好ましくは約100センチポアズから約2000センチポアズ、より好ましくは約125センチポアズから約1000センチポアズ、最も好ましくは約150センチポアズから約500センチポアズのブルックフィールドLV DV−II+粘度を有する。該スピンドルは、スピンドルLV1、LV2、LV3、またはLV4であることが好ましい。上記の分子量および粘度は、実質的に純粋なキトサン創傷被覆材およびキトサンの吸着表層によって形成された創傷被覆材に関するものである。キトサンの共有結合表層を含有する創傷被覆材の場合は、より低粘度および低分子量のキトサンが好ましいと考えられる。
【0078】
本発明の創傷被覆材は、組織接着および組織密封を促進するために、カチオン性キトサン塩を含み得る。好ましくはカチオン性キトサン塩としては、限定はしないが、ギ酸キトサン、酢酸キトサン、乳酸キトサン、キトサン塩化物、アスコルビン酸キトサンおよびクエン酸キトサンを挙げることができる。キトサンあ、典型的には、少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約85%の脱アセチル化度を有する。
【0079】
中等密度スポンジ(0.1g/cm3>密度>0.5g/cm3固体体積)またはすでに好ましい密度における中等密度スポンジを圧縮するよりも、低密度スポンジ(密度<0.03g/cm3固体)を0.15g/cm3に近接した最適密度へと圧縮するほうが好ましい。これは、低密度スポンジにおけるスポンジ形成法により、中等密度スポンジおよび高密度スポンジにおけるスポンジ細孔間の壁厚よりもかなり薄い壁厚が生じるからである。また、これらの高密度スポンジは、スポンジ剛度を増加させ、亀裂に対する耐性を低下させる、より相互接続的な構造を有することが多い。低密度スポンジにおける複数の薄壁により、より高密度に圧縮された場合、より相互接続的な構造、ならびにより厚い、したがってより硬い気泡壁を有して製造される中等密度スポンジおよび高密度スポンジよりも、より柔軟で強靭なスポンジが考慮されている。
【0080】
スポンジ高密度化は、一定の温度において、制御された圧縮速度の単一方向性または二方向性適用によって達成できる。好ましいスポンジ高密度化は、80℃において、約2重量%と5重量%との間のスポンジ水分含量で、単一方向性圧縮によって達成される。単一軸圧縮の一例としては、10.0cm(x方向)、×10.0cm(y方向)×1.70cm(z方向)が、Geo Knight394−TSシャトルプレスにおいて、40psiで、平らな、水平定方位(xy平面)、63.5cm×50.8cmのアルミニウム圧盤間のz方向に10.0mm/分で圧縮された。圧縮速度は、設定圧力およびParker SPF200Bニードルバルブの使用によって制御された。
【0081】
0.55cmの最終スポンジ厚を、50cm×2cm×0.55cmの少なくとも2つのスペーサーバーを用いて制御した。スポンジの初期密度は0.033g/cm3であった。加圧後のスポンジ密度は0.10g/cm3であった。0.15cm高、0.35cm高および0.45cm高などの他のスペーサー制御を、それぞれ、0.375g/cm3、0.16g/cm3および0.125g/cm3のスポンジを得るために用いている。5cm×5cm×1.7cmmのスポンジを2.5cm×2.5cm×0.55cmのスポンジへと縮小するために、二方向性圧縮(zおよびxまたはy方向における圧盤圧縮)を実施できる。スポンジ表面を密閉プラスチックフィルムで包み、減圧の適用によって、スポンジとプラスチックフィルムジャッケット内部から制御レベルまで空気を除去する減圧バギング法を用いて、複雑な形状を圧縮できる。スポンジリボンおよび他のスポンジ形材を圧縮するために、加熱ローラープレスを使用することもできる。ローラープレスを用いてそれらに加圧する場合は、このようなスポンジリボンおよび形材を、内部複合メッシュによって補強することが好ましい。連続複合スポンジフィラメントの圧縮の好ましい実施形態は、完全圧縮で、2.5mmに近接した直径から0.67mm直径までの入口制御テーパーで、加熱Teflon(商標)コーティングした棒押出ダイ(80℃)によりフィラメントを引くものである。
【0082】
延性圧縮を最適化する一方、スポンジの脆性圧壊を最少化するために、制御された水分、加熱および圧縮速度の条件が選択される。スポンジの脆性圧壊は、亀裂によるスポンジの機械的完全性の損失をもたらす。微細な相互接続域への最適なスポンジ圧縮は、均一な相互接続球状(例えば、十二面体)細孔を有するスポンジにおいて最も良好に達成される。非圧縮スポンジの孔径は、30ミクロンから120ミクロンの間、ポリマー壁厚は1ミクロンから20ミクロンが最適である。ラメラ構造または蜂巣様構造を有するスポンジの場合、その構造が単一軸圧縮の垂直方向から30度から40度近く、均一に方向づけされていることが最良である。熱勾配の方向に垂直なシャーストレスを適用することによって凍結時にこのような均一構造を得ることが可能である。凍結方向に均一負荷、および熱損失に垂直な方向に減少負荷を適用することによって、このようなシャーが達成される。
【0083】
垂直に近い構造は、脆性破壊およびランダムなチャネル形成の無い圧縮をしにくい。実際、開放成形における凍結時に、上表層氷核に由来する層垂直構造は、容易に圧縮されないスポンジ内垂直外殻層となり、スポンジに硬さが生じ、または水溶液に接触した際、急速に分解する。また、垂直構造は、大量において弾性圧縮され、表面に細孔相互接続に損失があるため望ましくない。
【0084】
また、ラメラタイプまたは蜂巣様スポンジでは、壁構造がちりめん皺表面または繊毛表面を有することが望ましい。ラメラまたは蜂巣壁上のこのような表面は、氷および親水性ポリマーの凍結制御相分離時に特定の条件下で達成される。通常、ちりめん皺または繊毛は、ラメラ表面または蜂巣表面に垂直であり、薄壁、「歯」、「蜂巣板」として、または3ミクロンから10ミクロンの円柱、およびちりめん皺の場合は、3〜10ミクロンの長さ、または繊毛の場合は、2〜3ミクロンの直径で、表面から突出している。それらはラメラまたは蜂巣壁上に分布しており、迷路様の規則性を有することが多く、1つの壁は他の壁と5〜10ミクロン離れて、常に離れて隣接している。ちりめん皺の程度は、ポリマーの分子量、その分子量分布、相分離前または相分離時の細長いロッド様の溶液特性の程度および冷却法によって制御されると思われる。高密度化の際、これらのちりめん皺は、ラメラが互いに圧縮される際、所望の制御されたラメラ間隔を、少なくとも約5ミクロンから10ミクロンへと扶壁することによって細孔の接続を維持するように作用する。
【0085】
表面の繊毛およびちりめん皺はまた、機械的固定および表面合せを助けることによって、接着において重要な役割を演じている。したがって、高密度化時、ちりめん皺/繊毛構造の表面テクスチャーは最良に保存される。これは、ポジのスポンジ表面をネガの基材表面内へ圧縮することによって達成できる。この基材表面のテクスチャーはちりめん皺/繊毛表面の解放ネガであることが理想的である。したがって、最少の負荷適用で、第1の表面は第2の表面内にちょうど入りこみ、2つの表面間に最大表面面積の接触が提供される。また、第2の表面から第1の表面を取り外す際にも、必然的に、有意な表面損傷または損失なしに、表面は良好に取り外されることになる。加圧時のこの表面微小入れ込みと同様に、圧縮ステップ時にスポンジが押し付けられる指定鋳型表面の適用によって、スポンジ表面におけるマクロパターンの作成も可能である。このようなパターンとしては、組織外傷への第一次止血包帯を補助すると考えられる滑り止めパターンがあげられる。
【0086】
角形態、円柱形態、球形態、複雑形態および複合形態を、出血を抑制するための最適な密度に圧縮できる。スポンジ類は複合形態によって調製できる。典型的な角形複合形態は、スポンジ内に不溶性であるが湿潤可能な不織または織メッシュを含み得る。これは典型的には、前スポンジ溶液内に存在するメッシュにより、スポンジ形成相分離処理を行うことによって実施されると考えられる。不織メッシュ材料はスポンジ圧縮処理により適合性があり、高密度化時にスポンジの引き裂きがより生じにくいため好ましい。他の実施形態では、0.25%から1%のキトサン溶液からキトサンスポンジへ、凍結/凍結乾燥することにより低密度キトサンスポンジを形成した。次いでこのスポンジを、室温で99%無水酢酸に少なくとも24時間浸漬することによってキチンスポンジ形態へと再アセチル化する。次に、この再アセチル化スポンジをキトサン成形溶液(1%から2%)の上または中に適用でき、該キトサン溶液を凍結/凍結乾燥によってスポンジへと形成する。次いで、キチンスポンジによって補強された複合キトサンスポンジを、引き続き最適密度へと加圧する。複合形態の他の実施形態では、キトサンスポンジを、最も好ましくは凍結/凍結乾燥法によって形成した。次いで、このキトサンスポンジを、0.1M NaOH溶液中で洗浄することによって中和してから、水中ですすいで、残っているナトリウム塩および水酸化ナトリウムを除く。次に、中和したキトサンスポンジ(水および血液に不溶性になった)を好適な鋳型内の親水性ポリマー塩溶液(pH≧7)の水溶液上または水溶液内に置く。この鋳型を凍結/凍結ドライヤー内において、中和キトサンスポンジによって補強された親水性スポンジを製造する。引き続き複合スポンジを適切な厚さに加圧する。
【0087】
きわめて好ましい円柱状スポンジ複合形態では、該スポンジが湿った糸または布内に形成される。該スポンジおよび糸の直径は典型的には、1〜2mmと考えられる。圧縮軸に垂直なこの糸の圧縮により、出血を抑制するために、内部出血外傷およびオーバーレイを必要とする外傷に投与し複数の裂傷箇所を処置するための強力な適合性の医療用包帯テープへと織ることのできる、直径0.2mmから0.5mmの柔軟なキトサン含浸糸が生成される。このようなテープは、易出血性のものを含めた種々の重症度の創傷に重ねる上できわめて便利であると考えられる。テープ内の含浸ポリマーは、局所の凝固ならびに組織への堅固な接着を促進する。このタイプのキトサン含浸糸により、血友病およびショック状態の人などの正常な血小板凝固が損なわれている個人における凝固促進が提供される。
【0088】
本発明のスポンジは、機械的手段を用いてマット化され、メッシュ化できる。特に、使用の際に被験体の創傷および組織に接触するスポンジ面を、ミクロテクスチャー化面に対して加圧できる。ミクロテクスチャー化面としては、限定はしないが、機械的切断によって調製された面およびレーザー削摩によって調製された面を挙げることができる。使用の際に被験体の創傷および組織に接触するスポンジ面を、マクロテクスチャー化面に対して加圧することによって、該スポンジの機械的牽引力もまた改善できる。マクロテクスチャー化面としては、限定はしないが、化学的エッチングによって調製された面、および粒子吹きつけ法によって調製された面を挙げることができる。
【0089】
該スポンジは、親水性ポリマーに含浸させた糸を含み得る。該糸は、親水性ポリマーを吸収できる合成または天然の任意の材料であり得る。例えば、外糸は植物ベースの材料であり得る。該糸は多フィィメント化されていることが好ましい。
【0090】
該スポンジ創傷被覆材は、取り扱いおよび機械的特性の改善を提供し助ける、該スポンジ創傷被覆材に付着させた裏地支持層を有し得る。この裏地支持層は、キトサンの上層による、または3M9942アクリレート皮膚接着剤による直接的な接着によって該被覆材に付着または結合できるか、またはフィブリン接着剤もしくはシアノアクリレート接着剤が使用できる。この裏地支持層はまた、実質的に血液に不溶性であることが好ましい。該裏地支持層はまた、実質的に血液に不浸透性であることが好ましい。該裏地支持層はまた、実質的に生分解性であることが好ましい。該裏地支持層は、適用時の該包帯の確かな取り扱い、および一旦包帯が適用されたら、手に付着しないことが考慮された材料であることが好ましい。
【0091】
該裏地支持層を形成する材料は、ポリマー材料の層であることが好ましい。好ましい裏地材料の例としては、合成および天然ポリマーの低弾性率メッシュ類、および/または薄膜類および/または織り物が挙げられる。合成生分解性材料としては、限定はしないが、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(e−カプロラクトン)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(β−ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリホスファゼン、ポリエチレンのコポリマー、ポリプロピレンのコポリマー、および上記ポリマーの合成に用いられるモノマーのコポリマーまたはそれらの組み合わせが挙げられる。天然生分解性ポリマーとしては、限定はしないが、キチン、アルギン、澱粉、デキストラン、コラーゲンおよび卵白が挙げられる。一時的な外部創傷適用のための非生分解性ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセンポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルポリマー、ポリエステル、ポリアミドおよびそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0092】
本発明の創傷被覆材は、創傷部位に対して、好ましくは少なくとも約40kPa,より好ましくは、少なくとも約60kPa,最も好ましくは少なくとも約100kPaの接着度を有する。また、該創傷被覆材は、好ましくは約3.0mm以上、より好ましくは約3.5mm以上、最も好ましくは約4.0mm以上、かつ、好ましくは約8.0mm以下、より好ましくは約7.0m以下、最も好ましくは約6.5mm以下の厚さを有する。本発明の創傷被覆材(2.5cm幅)は、好ましくは1kg以上、より好ましくは少なくとも1.5kg、最も好ましくは少なくとも2.25kgの極限引張破壊負荷を有する。この同じ被覆材は、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも15%の極限伸び率を有する。この被覆材のヤング係数は、好ましくは10MPa未満、より好ましくは3MPa未満、最も好ましくは1MPa未満である。
【0093】
該創傷被覆材は、かなりの量の表面血液を含む創傷部位に創傷被覆材を適用する上で特に有用な補助牽引面を含むことが好ましい。該補助牽引面は、典型的には、使用中、創傷部位から離れた方向に創傷被覆材が滑ることを避けるために、創傷部位を把持する少なくとも1つの外面を含むことができる。該補助牽引面は、トレッドデザインの形態であることが好ましい。
【0094】
対象の創傷被覆材は、創傷被覆材−血液界面において、前記創傷からの血流と組み合わせて接着材料を形成することができる。この場合、創傷が密封されている時、キトサン接着材料は、好ましくは約5.5以下、より好ましくは約4.5以下、最も好ましくは約4以下のpHを有する。キトサン創傷被覆材のpHを調整する目的で用いられる典型的な酸は以下のものである:酢酸、ギ酸、乳酸、アスコルビン酸、塩酸およびクエン酸。上記のレベルにpHを調整するためのキトサンカチオン/アニオン対におけるグルコサミン官能基に対する酸アニオンのモル比は、好ましくは約0.90、より好ましくは約0.75、最も好ましくは約0.60である。
【0095】
該創傷被覆材は、創傷にかみ合って接触するように、および重篤な命にかかわる出血の流れを止めることを促進するために、創傷の形状に適合させることができる。より具体的に言うと、創傷被覆材は創傷の間隙に導入される。該創傷被覆材は、管の形状に適合させることができることが好ましい。次いで、再形状化された創傷被覆材が創傷内に挿入される。
【0096】
本発明はまた、ある人の創傷部位における創傷からの重篤な命にかかわる出血を抑制する方法を考慮している。該方法は、キトサンを含む生体材料から形成された創傷被覆材を提供すること、前記創傷被覆材を創傷部位に接着させ、前記創傷からの重篤な命にかかわる出血の流れを実質的に止めることを包含する。創傷は密封され、前記創傷部位からの出血流出が防止されることが好ましい。また、前記創傷部位内への、および/または前記創傷部位外への出血および他の体液の流れが防止されることが好ましい。本発明の被覆材は、赤血球を凝集させることによって、出血部位に強力な凝血塊を速やかに生じさせるように作用する。それはまた、通常の血小板凝固経路を加速することによって凝固を促進できる。
【0097】
一定の適用において、対象の創傷被覆材の分解速度は、凝集速度に比べて比較的遅かったが、高速での凝集は分解を停止させるため、このバランスは良好な結果をもたらす。このことは、創傷被覆材の内部構造および表面構造の均一性が重要であることを示している。きめの境界または小さい亀裂によって生じたチャンネルなど、創傷被覆材にかなりの欠損が存在する場合、その欠損部に沿ってかなりの血流をその経路に集中させ、きわめて望ましくない出血通過状態を生み出し、それらが形成するより狭い低粘度凝集領域を押し流す可能性がある。また、ウェーハ表面上の圧力下でのかなりの血流は、先行技術の創傷被覆材の創傷接着性に悪影響を及ぼすと考えられるが、本発明の創傷被覆材の創傷接着性に悪影響を及ぼすとは考えられない。
【0098】
本発明の創傷被覆材の重要な好ましい属性は、キトサンを血液と組み合わせる一方、その結果生じる「凝血塊」の機械的保全を達成し、外傷に直に隣接した面に該凝血塊を結合させる手段である。対象の創傷被覆材は、創傷部位における凝血塊形成を加速し、創傷部位における凝血塊形成を補強し、創傷部位からの出血流出を防ぐ。それはまた、創傷部位内への、および/または創傷部位外への血液および他の体液の流れを実質的に防止する。
【0099】
本発明の創傷被覆材は、凝血および創傷部位への接着の二重の能力を保持する一方、極端な環境において、高レベルの弾性も示す。この創傷被覆材の顕著な弾性は、該被覆材の尋常ではない物理的性質によって示される。対象の創傷被覆材は、以前記載された先行技術製品とは違って、創傷の形状に適合する一方、構造的弾性を維持する顕著な能力を有している。この構造的弾性により、該創傷被覆材は、変形後、機械的性質の実質的な損失なしに好ましい形状をとることができる。
【0100】
本発明の出血抑制被覆材は、使用中の該被覆材の滑りを実質的に避けるために、創傷領域を把持する面を含むことが好ましい。典型的には、該被覆材のこの非滑り面は、牽引面を含む。対象の出血抑制被覆材は、牽引面などの効果的な非滑り面を有することから利益を与え得る。対象の出血抑制被覆材は、滑らかなおよび粗い面を有し得る。より粗い面もまた良好な接着性を示すならば、そのより粗い面は、組織または出血面の側であることが好ましい。
【0101】
牽引面は、十分に潤滑な表面(重篤な出血の場合に存在する表面など)上の表面接触(良好な牽引)の安定性増加を提供することによって、急速な動脈出血を抑制する被覆材の能力を改善できる。このような牽引面は、接着動態に悪影響を及ぼすことなく、血液を運ぶことを助ける一方、被覆材適用の危険な時期の間、より制御された安定な組織接触を考慮している。例えば、該包帯の組織側は、トレッドデザインの形態の牽引面を有し得る。このトレッドは、被覆材が創傷への適用を受ける際、創傷から離れる方向に牽引損失を受けることを防ぎ得る。
【0102】
該抑制被覆材の非滑り面は、非接続的または互いに隠されたリッジによって製造できる。このようにして、今度は、リッジ間に形成されたチャンネルが互いに完全にまたは部分的に隠され、したがって、創傷領域内への、または創傷領域外への血流抑制を提供すると考えられる接続の抑制が提供される。被覆材適用領域における血流抑制は、出血抑制被覆材におけるリッジまたは特定のタイプの応答ゲートによって維持できる。出血抑制被覆材を製造するための鋳型の底部上リッジは、非滑り面を可能にするタイプの、例えば対象の被覆材におけるリッジなどの牽引抑制物の形態におけるくぼみを含み得る。
【0103】
このように、牽引面などの少なくとも1つの非滑り面を有する出血抑制被覆材が製造できる。また、このような被覆材を製造する方法も提供し得る。最後に、出血抑制被覆材を製造する鋳型を製造できる。
【0104】
接着性の基材および上面が有利である場合の重篤な出血を処置するため、接着および凝固が両面に必要とされる際に容易に剥がすことができるように支持の裏地をデザインすることが可能である。
【0105】
広範囲の可能なタイプの出血創傷を扱うために、被覆材の多数の出血抑制形状がある。外傷を受けた人が第一の応答者によって処置され得るか、または場合によっては外傷を受けた本人によって処置され得るように、異なった形状のいくつかの包帯を携行することが必要であると考えられる(例えば、戦場の状況下)。本発明の被覆材は、多量の物理的誤用を許容し、依然として出血抑制活性なプラットホームのままであり得る。
【0106】
該被覆材は、限局性の血管出血ならびに小さな局所的創傷の処置に理想的である。それはまた、出血部位が容易に圧縮できない複雑な侵入創傷内に充填するのにも十分に適している。
【0107】
本発明により、一旦出血抑制が達成されたら、四肢創傷を安定化させること、創傷端を接近させることおよび汚染を防ぐ耐久性被覆材を作出すること、および最終的修復のために外傷者を後送することが、一般市民および戦場の出血抑制被覆材に関する主な要件である。該出血抑制被覆材の1つの予想される形状は、周囲および末端にしっかりと付着でき、それ自体に対するはがし返し面を介して、永久接着性接着剤などの固定タブによって固定できる柔軟性、弾性の裏地を有する10インチ×18インチの被覆材である。この形状によって、創傷面が接近し、血流を遠位末端へと損失させることのない出血抑制が付加されると考えられ、第一の応答者によって、またはいくつかの場合には、外傷を受けた兵士によって適用でき、歩行または輸送中の四肢の動きの下で安定であると考えられる。該包帯は、創傷または皮膚への有害な接着なしに切り離すことによって除去されることが予想される。
【0108】
(B. 圧縮スポンジおよび圧縮複合スポンジの作製方法)
人の創傷部位における創傷からの重篤な命にかかわる出血を抑制することのできる創傷被覆材を製造する方法が提供される。このような方法は、上記のキトサン生体材料を提供するステップを包含する。
【0109】
該構造または形態を製造するステップは、典型的には、溶液から実施され、凍結(相分離を生じさせる)、非溶媒ダイ押出し(フィラメントを製造する)、電気スピニング(フィラメントを製造する)、非溶媒(透析およびフィルター膜の製造に典型的に用いられる)または前形成されたスポンジ様製品または織製品上にコーティングする溶液による転相および沈殿などの方法を用いて達成できる。凍結により2つ以上の異なる相が形成される凍結(典型的には、キトサン生体材料が分離固体相に分別される、水の氷への凍結)の場合、凍結溶媒(典型的には、氷)を除去し、したがって、凍結構造を乱すことなく、創傷被覆材を製造するもう1つのステップが必要とされる。これは、凍結乾燥および/または凍結置換ステップによって達成できる。該フィラメントは、不織紡糸法によって不織スポンジ様メッシュに形成できる。あるいは、該フィラメントは、従来の紡糸および製織法によってフェルト化織物へと製造できる。前記生体材料のスポンジ様製品を作成するために用いることができる他の方法としては、固体キトサンマトリクスからの付加ポロゲンの分解または前記マトリクスからの材料の穿孔が挙げられる。
【0110】
該キトサン生体材料は、一般的大気気体を脱気することが好ましい。典型的には、脱気は、キトサン生体材料から十分に残留気体を除去するため、引き続き凍結操作を受けた際に気体がもれて対象の創傷被覆製品に望ましくない大きな空隙や大きな捕捉気体の泡を形成したりすることがない。脱気ステップは、典型的には、溶液形態におけるキトサン生体材料を加熱し、次いでそれに減圧を適用することによって実施できる。例えば、脱気は、該キトサン溶液を攪拌しながら約500mTorrで約5分間、減圧を適用する直前に、該キトサン溶液を約60℃に加熱することによって実施できる。
【0111】
親水性ポリマー生体材料スポンジ溶液処理の一実施形態は、最初の脱気後に、該溶液に一定の気体を再び添加するものである。このような気体としては、限定はしないが、アルゴン、窒素およびヘリウムが挙げられる。このステップの利点は、これらの気体の分圧を含有する溶液が、凍結時に微小空隙を形成することである。次いで、この微小空隙は、氷表面が進行するにつれ、スポンジを通って運ばれる。これによってスポンジの細孔相互接続を補助する十分に規定され制御されたチャンネルが残される。
【0112】
次に、典型的には、溶液形態にあるキトサン生体材料を凍結ステップに供する。凍結は、キトサン生体材料溶液を冷却し、溶液温度を、室温から凍結点以下の最終温度まで低下させることにとって実施することが好ましい。この方法で創傷被覆材製品好ましい構造が作成できる。最終凍結温度は、好ましくは約−10℃以下、より好ましくは約−20℃以下、最も好ましくは約−30℃以下である。該温度は、予め決められた時間をかけて徐々に低下させることが好ましい。例えば、キトサン生体材料溶液の凍結温度は、約90分間から約160分間に、約−0.4℃/分と約−0.8℃/分との間の一定の温度冷却ランプの適用によって、室温から−45℃まで低下できる。
【0113】
次いで、凍結キトサン生体材料は、該凍結材料の間隙内からの水分除去を受けることができる。この水分除去ステップは、凍結キトサン生体材料の構造的完全性を損なうことなく達成できる。これは、最終的な創傷被覆材の構造的配置を乱す恐れのある実質的液相を生成させることなく達成できる。したがって、キトサン生体材料は、中間体液層を実質的に形成することなく固体凍結相から気相へと移る。
【0114】
水分除去を実施する好ましい方法は、凍結乾燥ステップを用いることによる。該凍結キトサン生体材料の凍結乾燥は、該凍結キトサン生体材料をさらに凍結させることによって行うことができる。次いで、典型的には、減圧が適用される。次に、減圧排気した凍結キトサン材料を加熱する。次いで、前記の加熱し、減圧排気し、凍結したキトサン材料を乾燥させることが好ましい。
【0115】
より具体的にいうと、該凍結キトサン生体材料を、少なくとも約1時間、より好ましくは少なくとも約2時間、最も好ましくは少なくとも約3時間の好ましい時間、好ましくは約−15℃、より好ましくは約−25℃、最も好ましくは約−45℃で、引き続く凍結に供することができる。このステップに引き続き、冷却器を、約−45℃未満、より好ましくは約−60℃、最も好ましくは約−85℃に冷却できる。次いで、好ましくは多くて約150mTorr、より好ましくは多くて約100mTorr、最も好ましくは少なくとも約50mTorrの量の減圧を適用できる。次いで、減圧排気した凍結キトサン材料を、少なくとも約1時間、より好ましくは少なくとも約5時間、最も好ましくは少なくとも約10時間の好ましい時間、好ましくは約−25℃、より好ましくは約−15℃、最も好ましくは約−10℃に加熱できる。最後に、少なくとも約36時間、より好ましくは少なくとも約42時間、最も好ましくは少なくとも約48時間の好ましい時間、好ましくは約20℃、より好ましくは約15℃、もっとも好ましくは、約10℃の温度で乾燥を行うことができる。
【0116】
引き続いて、前記創傷被覆材の厚さを減少させ、密度を増加させるために、例えば、加熱圧締盤を用いることによって、キトサン生体材料を圧縮できる。圧縮温度は、好ましくは約60℃以上、より好ましくは約70℃以上、かつ約85℃以下である。次いで、該加圧キトサン生体材料を、好ましくは約75℃までの温度に、より好ましくは約80℃までの温度に、最も好ましくは約85℃までの温度に加熱することによって予備調整することが好ましい。予備調整は、典型的には、約0.25時間まで、より好ましくは約0.35時間まで、より好ましくは約0.45時間まで、最も好ましくは約0.50時間までの時間で行って、これによって、先に上記で述べたように、前記創傷被覆材の接着の強度および耐分解性を増加させる。
【0117】
次いで、処理された創傷被覆材を、滅菌ステップに供することができる。該被覆材は、多くの方法により滅菌できる。例えば、好ましい方法は、γ線照射などの照射によるものであり、これによってさらに、該創傷被覆材の耐血液分解性、引張り特性および接着性を増加させることができる。該照射は、少なくとも約5kGy、より好ましくは少なくとも約10kGy、最も好ましくは少なくとも約15kGyのレベルで実施できる。滅菌した創傷被覆材は、引き続いてアルゴンまたは窒素気体などの不活性気体によってパージした熱密封ポーチに貯蔵するためにパッケージ化できる。
【0118】
引き続いて、創傷部位に該創傷被覆材を接着させることにより、創傷からの重篤な命にかかわる出血を実質的に止めることのできるキトサン生体材料から創傷被覆材を製造できる。該創傷被覆材は、前記創傷部位に密封し、重篤な出血の凝固または凝集を利用して、前記創傷部位に前記創傷被覆材を接着させることによって、前記創傷部位からの出血を防ぐことが好ましい。この創傷被覆材は、好ましくは、創傷部位に強力に接着する一方、創傷周囲からの赤血球を凝固および凝集させる結果、好ましくは、必要な圧力が使用されるのは、適用の最初の5分間のみである。本発明の一形態において、専門的医療処置が可能になるまで、負傷した人の生存を維持するために、該装置は、非熟練実施者によってでも適用される一時的被覆材であるようにデザインされる。
【0119】
(C. 圧縮スポンジに使用される活性剤)
圧縮スポンジはさらに活性剤を含み得る。該活性成分は、創傷の性質または患者の医学的状態に依って、限定はしないが、ヒト血清アルブミン、カルシウム、ウシトロンビン、ヒトトロンビン(hトロンビン)、rhトロンビン、第VIIa因子、第XIII因子、組換え第XIII因子(第XIIIγ因子)、トロンボキサンA2、プロスタグランジン−2a、上皮増殖因子、血小板由来増殖因子、フォン・ウィルブランド因子、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF−α、形質転換増殖因子(TGF)、TGF−α、TGF−β、インスリン様増殖因子、線維芽細胞増殖因子、ケラチノサイト増殖因子、神経成長因子、ペニシリン、アンピシリン、メチシリン、アモキシシリン、クラバモックス、クラブラン酸、アモキシシリン、アズトレオナム、イミペネム、ストレプトマイシン、カナマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、クリンダマイシン、エリスロマイシン、ポリミキシン、バシトラシン、アムホテリシン、ナイスタチン、リファンピシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、クロラムフェニコールまたはそれらの組み合わせであり得る。例えば、軍事的状況において受けた創傷は、抗生物質、抗真菌剤、および凝固因子を含み得る。手術における癌患者は、活性剤の種々の組み合わせを受けることができる。
【実施例】
【0120】
(実施例1:出血抑制試験)
表1には、出血抑制試験のために入手された主なキトサン材料のリストが提供されている。ブタ脾臓実験用のGelfoam(商標)+トロンビン、およびSurgicel(商標)対照およびブタ大動脈穿孔用のJohnson and Johnson4インチ×4インチガーゼ対照以外、本明細書に記載された被覆材材料は全てキトサン基材であった。
【0121】
【表1】
* 許容限度以下の鉛、水銀、ビスマス、アンチモン、スズ、カドミウム、銀、銅およびモリブデン。NA=得られず。
【0122】
1リットルの清浄な滅菌Pyrexフラスコ中、Ametek、限外ろ過(UF)水および乾燥キトサンから、水溶液(2.00重量%)を調製した。Carbomer、PrimexおよびGenisキトサン材料の場合、1.0重量%または2.0重量%の氷酢酸(Aldrich99.99%)を水性混合物に加えた。該フラスコを、40℃で12時間から48時間震蕩することによって溶解を達成した。該溶液は、凍結直前に室温で、500mTorrの減圧を適用することによって脱気した。
【0123】
創傷被覆材は、キトサンの2%水溶液を、Teflon(商標)コーティングしたアルミニウムまたはポリスチレンの鋳型に、少なくとも1.5cmの深さに注ぎいれ、−45℃で3時間、−80℃ Revcoフリーザー中で凍結させることによって調製した。あるいは、凍結は、Virtis Genesis 35EL凍結乾燥器無いの棚上で実施した。該創傷被覆材において、多くて10%の縮みがあり、最終的な凍結乾燥した創傷被覆材の密度は、0.033g/cm3近傍であった。2つのタイプの成形創傷被覆材の横断面を図1および2(異なった凍結速度)に示してある。観察された構造(図3)は、バルク溶液の冷却速度によって、および異なった表面において影響を受けた。引き続き、創傷被覆材における構造は、製剤化、成形(サイズおよび形状)および凍結条件によって制御された。最適な創傷被覆材の構造は、直径が50ミクロンに近い均一な相互接続した細孔からなる開放細孔または層であって、冷却面に垂直な六方構造のものである。これらの構造は制御でき、効率が高く迅速な血液凝固のための広い特定の表面積を有する、柔軟であるが強力な創傷被覆材が得られる。典型的には、このような構造のための利用できる特定の表面積は、500cm2/g超であった。図5における走査電子顕微鏡写真は、創傷被覆材の基材表面の典型的な開放セル構造を示している。該創傷被覆材は、熱対流炉中、80℃±1℃で30分間加熱して、構造および酢酸濃度分布を最適化した。このステップは、出血領域における創傷被覆材の接着性を最適化(典型的には、真皮に対する接着力>40kPa)するために必須であった。
【0124】
該創傷被覆材は、80±5℃で、50kPa近い負荷の下、17mmの厚さから5.5±0.5mmへ(密度が、およそ0.03±0.005g/cm3から0.12±0.02g/cm3へ)、直ちに圧縮された。図4は、加熱および圧縮後の典型的な好ましいキトサン創傷被覆材の基材の外観を示している。
【0125】
(実施例2:創傷被覆材の調製および評価)
止血用創傷被覆材は以下のとおり調製された:
a)85%超の脱アセチル化度、26ppm未満の金属成分および90%超の固体含量を有する乾燥キトサン粉末またはフレークを、40℃で、約2%または1%の酢酸(重量/重量)を有する2%水溶液(重量/重量)に作成した。
【0126】
b)上記a)のキトサン溶液を、少なくとも5分間、攪拌下、約500mTorrまでの減圧下で脱気し、1.7cmの深さまで鋳型に注ぎ入れた。一定の低密度、フォーム構造は、出血領域におけるそれらの分解のし易さによる問題を示した。これらの問題は、一般に、該溶液の十分な脱気によって避けられた。
【0127】
c)該脱気キトサン溶液を含有する該鋳型を室温から−45℃まで冷却することによって凍結した。90分間にわたって線形冷却ランプを用い、温度を、少なくとももう1時間、−45℃に維持した。
【0128】
d)次いで、凍結キトサンを、−70℃以下の温度、および約100mTorrの減圧における冷却器を用いて凍結乾燥した。棚温度を、−45℃から−15℃にランプし、そのレベルで10時間保持した。次いで、10℃において、さらに36〜48時間の凍結乾燥を実施した。元の凍結プラーク質量の約2.8%近くに達するまで凍結乾燥を実施した。
【0129】
e)元の質量の2.8%でその処理を停止させ、凍結乾燥創傷被覆材を鋳型から取り出した。
【0130】
f)形成された生成物は、元の凍結体積から10%収縮した酸緩衝、水溶性、高規定表面積の創傷被覆材であった。該創傷被覆材の構造は、一般に、50ミクロンから80ミクロンの直径の相互接続細孔を有する均一な開放細孔構造であった。過冷却が影響を受けないわずかに異なった冷却法を用いて、層/六方構造(5ミクロン近い厚さの均一な薄いキトサンシートで、シート間が50ミクロン近く離れている)を得た。
【0131】
g)次いで、該創傷被覆材を、60±20kPaの圧力の適用下、80±2℃に加熱した滑らかで平坦な圧締盤の間で圧縮した(1.7cmから約0.5cmの厚さへ)。
【0132】
h)次に、該被覆材を、80±5℃に30分間加熱することによって熱対流オーブン内で調節した。
【0133】
i)次いで、各創傷被覆材を、ラベルを付けたKapak530熱密封ポーチ内に貯蔵した。
【0134】
j)得られた創傷被覆材は、強靭で、柔軟で、止血性で、湿潤組織に接着性であり、血流による分解に対して耐性であった。
【0135】
k)該創傷被覆材を、窒素雰囲気下、15kGyのγ線照射に曝露させることによって、分解性の改善、接着強度の改善および滅菌を達成することができた。
【0136】
出血課題の増加した動物モデルにおいて、種々の組成および構造の出血抑制被覆材候補の止血作用についてのインビボ評価をスクリーンした。簡単な再現性モデルにおいて多数の被覆材候補スクリーンし、それらを従来の材料と比較することができるように、脾臓裂傷モデルを利用した。これは出血課題のもっとも少ないモデル(約2〜5mL/分の軽度の浸出性出血)であるが、最初の創傷被覆材製剤はこの試験に失敗した。また、キトサンのゲル、粉末もこの試験に失敗し、一方、薄膜類の性能は不良であった。
【0137】
重篤な出血モデルにおける試験の前に、ブタを、全身静脈内ヘパリンによって抗凝血状態にし、皮膜化剥ぎ取り脾臓モデル(10〜20mL/分の強い浸出性出血)において、より良好な材料を試験した。次いで、この試験を通ったわずかな材料を、抗凝血ブタにおける頚動脈裂傷モデル(約50mL/分)で評価した。次に、この試験を通った材料候補の創傷被覆材製剤を、胸部または腹部の大動脈に4mm直径の穿孔を施したブタ大動脈切開モデルで試験した。これらの重篤な血管出血の課題モデル(100mL/分の過剰出血速度)を通る材料は、肝臓外傷の重篤な(グレードV)モデルでも試験した。
【0138】
先に操作を受け、評価のため、殺処理が予定されている健康な動物について該試験を実施した。実験は全て、1996年米国学術研究会議、「実験動物の管理および使用に関する指針」および適用できる連邦法にしたがって実施した。動物を同定後、筋肉内(i.m.)Telazol 4〜9mg/kgによって麻酔を誘導した。イソフランをマスクにより投与し、動物に挿管した。
【0139】
裂傷および皮膜剥ぎ取り実験用のキトサンパッチは、37mm直径の創傷被覆材から切断した等サイズの四分の一片、またはより大きな創傷被覆材から切断した1.5cm×1.5cmの創傷被覆材片のいずれかであった。
【0140】
Gelfoam(商標)+トロンビンまたはSurgicel(商標)の対照材料は、1.5cm×1.5cm片から作成した。吸収性ゼラチン創傷被覆材のGelfoam(商標)サイズ100は、Pharmaciaにより供給された。酸化セルロースのSurgicel(商標)は、Ethiconにより供給された。局所用トロンビン(ウシ源)10,000U.S.単位は、Jones Pharmaにより供給された。Gelfoam(商標)+トロンビンは、使用前に、1.5cm×1.5cm×0.8cmの創傷被覆材を、トロンビン中、30分間浸漬することにより作成した。
【0141】
正中線腹側ラポラトミーを実施した。脾臓の上半分を肱置した(手術創のタオルクランプと並置して)。表面は、湿ったラップパッドからの滅菌生理食塩溶液の適用により湿潤性を保たせた。
【0142】
抗凝血のため、右大腿動脈を外科手術により単離し、6Fシースによりカニューレ挿入し、血液サンプル採取を考慮した。5000単位のヘパリンの静脈内投与前、ヘパリン投与の10分後、およびそれ以降は20分おきに、活性凝固時間(ACT)を測定した。ACTレベルが200秒未満の場合は、2000単位のヘパリンを投与し、10分後にACTを再測定した。該動物が抗凝血状態であることを確実にするため、ACT>200秒まで、これを繰り返した。
【0143】
脾臓試験領域は分画化し、タオルクランプおよび湿ったパッドを用いることによって湿潤性を保たせ、最も直接した未試験面のみを露出させた。以下のとおり、試験パッチの適用前に、1つの外傷を作成した:
(i)裂傷モデルにおいて、4mmの刃が突き出るように直角鉗子に配置した#11外科用刃を用いて、外傷(8mmの長さ×4mmの深さ)を作成した。
【0144】
(ii)皮膜剥ぎ取りモデルにおいて、クランプ#11刃および一対の手術用はさみを用いて、外傷(5mm×5mm×4mmの深さ)を作成した。
【0145】
外傷作成後、30秒間、出血させた。表面の血液をガーゼで除いた後、一定の均一な圧力を30秒間用いて、試験パッチを外傷にデジタル的に適用した。次いで、デジタル圧力を除去し、該パッチを2分間観察した。この段階で試験番号を記録した。観察可能な再出血が生じた場合は、再出血する時間を記録し、次の試験(30秒出血、ガーゼによる血液の清掃、30秒のデジタル圧力の後、2分まで観察)を開始した。試験パッチの試験は、2分間の観察時間中に再出血が生じない時、または6試験の再出血が観察された時に完了した。6試験期間の間、創傷の再出血が続いた場合は、失敗のパッチを除去し、Gelfoam+トロンビンパッチを適用した。新たな外傷を作成し、他のパッチを試験した。
【0146】
頚動脈裂傷モデルの場合は、37mm直径の圧縮創傷被覆材またはより大きな創傷被覆材からキトサンパッチ(37mm×25mm)を切断した。適用を促進するため、創傷被覆材のいくつかは、3M9942皮膚接着剤によりキトサンに付着させた3M9781発泡医療用テープの上層を有した。Gelfoam(商標)+トロンビンを対照として用いた。
【0147】
垂直切開を行って、10cm長の頚動脈を露出させた。筋膜を引っ込め、動脈が組織の平坦な基部上に支持されるまで周囲の軟組織を切り裂いた。両端を結んだ縫合糸を、露出した動脈の近位および遠位に配置した。これらをクランプし、動脈の縦方向に、1.5cmの切開を作成した。
【0148】
抗凝血のため、右大腿動脈を外科手術により単離し、6Fシースによりカニューレ挿入し、血液サンプル採取を考慮した。5000単位のヘパリンの静脈内投与前、ヘパリン投与の10分後、およびそれ以降は20分おきに、活性凝固時間(ACT)を測定した。ACTレベルが200秒未満の場合は、2000単位のヘパリンを投与し、10分後にACTを再測定した。該動物が抗凝血状態であることを確実にするため、ACT>200秒まで、これを繰り返した。
【0149】
切開作成後、該動脈を2秒間出血させ、次いで、1分間圧縮した。圧縮を除去した後、結び目を再クランプした。該領域を生理食塩水で洗い流した。結び目のクランプを2秒間外してからパッチを適用した。パッチ上に均一に3秒間圧力を適用した。圧力適用後30分以内に出血が見られた場合は、もう3分間、圧力を再適用した。パッチが接着していなかったら新しいパッチと取り替えた。圧力再適用、または同一タイプのパッチの取替えの各々は、そのパッチタイプの試験期間として扱った。30分間にパッチ周囲、またはパッチを通して出血が見られない場合、特定の創傷被覆材に対する試験は完了したと考えられた。30分の止血(創傷からの出血が見られない)を達成するために用いられた試験の数について、材料を評価した。
【0150】
ブタ大動脈穿孔の場合、2.5cm直径片に切断した圧縮キトサン創傷被覆材のサンプルパッチまたは4インチ×4インチ手術用ガーゼの対照を用いた。
【0151】
腹部および胸部大動脈のいずれかまたは両方は、前者においては正中線垂直ラポラトミー、後者においては胸骨切開によって露出させた。筋膜および胸骨をクランプし、結び目を切開部位の近位および遠位に配置した。両端クランプを適用しながら、#11円刃刀を用いて、大動脈壁を通して3mmの切開を作成し、その切開を通して、4mm直径のMedtronic(商標)の血管穿孔器を挿入し、大動脈に4mm直径の孔を作成した。該穿孔器を除去し、該孔にデジタル圧力を適用して両端クランプを外した。
【0152】
中指で大動脈孔に圧力をかけながら親指と示指との間に該パッチを保持した。この中指からの圧力を1秒間解除してから創傷被覆材を出血領域に適用した。大動脈孔上のパッチに示指を介してしっかりと圧力を適用することによって、該創傷被覆材を適所に保持した。パッチの適用中に創傷からもれ出てたまった血液は吸引除去した。デジタル圧力の3分後、指を外し、出血の継続および接着不良の徴候に関して該パッチを観察した。最初の30分間に、出血の継続または再出血が見られた場合は、さらに3分間、圧力を適用した。
【0153】
止血が依然として不完全であった場合は、同じ創傷被覆材の別のパッチを準備し、古いパッチを除去し、新たな試験を開始させた。30分間にパッチの周囲から、またはパッチを通して出血が見られない場合に、試験は完了したと考えた。30分の止血(創傷からの出血が見られない)を達成するために用いられた試験の数について、材料を評価した。試験時、キトサン創傷被覆材と同じ方法でガーゼの対照サンプルを適用した。
【0154】
動物は全て耳介血管を介してバルビツール酸塩(Euthasol、1mL/10lb)の注入により麻酔下で安楽死させた。動物は、実験手順の最後に、または動物が何らかの有害な作用を受けた場合は終了前に安楽死させた。
【0155】
出血抑制を達成するまでに必要な試験の数および再出血する時間(脾臓試験の場合のみ)にしたがって、試験を0.0から6.0にランク付けした。1つの試験のみが必要であって、再出血の無かった試験は0.0とランク付けした。第2の試験が必要で、第1の再出血する時間が90秒であった試験は:
【0156】
【数1】
(脾臓の場合)または他のモデルの場合は1.0
止血を達成するために4つの試験が必要であり、第3の試験において、脾臓再出血の時間が30秒であった試験は:
【0157】
【数2】
(脾臓の場合)または他のモデルの場合は3.0
急速な分解、接着不足または出血非抑制によって、完全に失敗したサンプルは、6.0+とランク付けした。
【0158】
要約すると、止血が不良になるほど、以下に定義されたランキングが高くなる:
R=Г+Λ
式中、Г=出血を停止させるための試験数−1
【0159】
【数3】
A=試験(一つまたは複数)の時間
脾臓試験の結果は、表2、3および4にまとめてある。
【0160】
表2は、組成および構造に関して、最適化されていなかったキトサン試験サンプルの挙動を示している。これらの非最適化材料は、Surgicel(商標)陰性対照(表4)よりも不良から、同等および部分的にのみより良好の範囲であった。リン酸緩衝溶液が存在すると、Surgicel(商標)よりわずかに効果的であっただけの、接着不良で止血の緩慢なパッチとなった。該キトサン薄膜は、中程度の接着性があり、出血に対して相当な密封を提供するが、その透明な表面下の緩慢な血液浸出により明らかにされるように、止血はきわめて緩慢であった。初期の試験では、成形創傷被覆材の上面における低密度フォームの徴候が一般に示された。この低密度フォームは、分解し易く、創傷被覆材の上面が出血領域に適用されると崩壊することが判明した。その後、このフォーム効果は、溶液を凍結前に脱気することによって回避され得ることが発見された。低分子量キトサン創傷被覆材(相対的1%溶液粘度<50cps)は、出血領域においてきわめて分解を受け易く、パッチ適用には不適当となることが判明した。グルタミン酸塩対アニオンにより、より柔軟な創傷被覆材が製造されたが、重篤な出血領域において容易に分解される創傷被覆材が製造されるという犠牲を伴った。酢酸塩対イオンによる低密度創傷被覆材(0.05g/cm3未満のもの)もまた、分解および崩壊により容易に損傷されることが判明した。
【0161】
表3は、好ましい組成および構造の最適化キトサン創傷被覆材のランキング結果を示している。これらの創傷被覆材は、高分子量(相対的1%溶液粘度が100cps超)を有するキトサンから成り、0.12g/cm3に近い創傷被覆材密度を有した。中程度出血脾臓試験において、最適化創傷被覆材に関する結果は、ウィルコクソン順位和検定を用いて、Gelfoam(商標)+トロンビンの陽性対照と区別できないことが判明した(Z=−0.527、p=0.598)。同じ統計的方法を用いて、該創傷被覆材は、性能不良のSurgicel(商標)対照とは有意に異なっていることが示された(Z=−3.96、p=0.0001)。
【0162】
図6は、脾臓表面に対する最適化キトサン創傷被覆材パッチの密接した接着性ならびに外傷に直に近接した赤血球の凝集を示している(H&E染色組織学的切片により)。
【0163】
頚動脈外傷モデルに関するランキングは表5にまとめてある。このモデルにおいて、最適化キトサンパッチは、試験3、5および6において、きわめて良好な性能であった。最初の試験1および2での性能の改善は、該創傷被覆材の直接上層への支持裏地(3M9781フォーム包帯)の適用によるものであった。この裏地により、創傷被覆材上により均一な圧力の適用が可能となり、また、該被覆材を適用する人が、パッチ表面が粘着することなく、および創傷からのパッチ剥離を引き起こすことなく、パッチ表面から容易に指を放すことが考慮されている。頚動脈モデルは、脾臓外傷モデルであり得るよりも重篤な動脈出血条件を調べるために用いられた。可能な陽性対照として、Gelfoam(商標)+トロンビンを調べたが、高出血領域では分解することが判明した。
【0164】
表6は、大動脈外傷モデルの結果をまとめている。対照包帯としてガーゼ包帯(4インチ×4インチ)を用いた。対照は全ての試験期間において、重篤な出血を止めることができないが、一方、最適化キトサン大動脈パッチは、この創傷に見られたきわめて高レベルの出血を、該パッチのわずか1回または2回の適用後に迅速に止め、引き続き凝固させる能力があることが判明した。サンプルと対照とのランキングの間に違いが無いという可能性について、正確な有意性(両側検定、p=0.002)を測定した。創傷が最初の試行で止血された場合、平均して、パッチ適用後の血液損失は、最少(<50mL)であった。第2の試行が必要とされた場合、パッチ適用後の血液損失は、100mL超だが300mL未満であった。キトサン創傷被覆材の場合、パッチ適用後に、平均して、150mLの血液が失われたが、一方、3つのガーゼ対照試験の場合、各動物につき、1リットル超の血液が失われた。キトサン創傷被覆材試験の場合、生存率は100%であったが、ガーゼ試験の場合は、生存した動物はいなかった(0%)。該キトサンパッチは、30分の試験期間にわたって、および、一般に1時間から2時間後に動物を殺処理するまで、継続した止血有効性を示した。図7は、重篤な胸部創傷を密封している典型的なキトサンパッチを示している。図7のパッチにより密封された切除大動脈の管腔側(外傷を見せて)が、図8に示されている。図9は、図7および8の外傷を通って採取された組織学的染色切片の顕微鏡写真を示している。動物殺処理時、大動脈の除去および検査の際、外傷部位に強力な凝血の証拠が見出され(図9)、また、試験番号16の場合、生きている動物でパッチを取り除いた後(適用後、30分超)、引き続く再出血は無かった。
【0165】
【表2】
高密度タイプ=高密度創傷被覆材(約0.12g/cm3)
PBS処理=リン酸緩衝生理食塩溶液中に浸漬することにより中和化した創傷被覆材
LDタイプ=低密度創傷被覆材(約0.03g/cm3)
FFタイプ=高速凍結創傷被覆材
薄膜タイプ=溶媒注型薄膜(500ミクロン)。
【0166】
【表3】
【0167】
【表4】
【0168】
【表5】
高密度タイプ=高密度創傷被覆材(約0.12g/cm3)。
【0169】
【表6−1】
【0170】
【表6−2】
【0171】
【表6−3】
高密度タイプ=高密度創傷被覆材(約0.12g/cm3)。
【0172】
(実施例3:ブタ肝臓モデルにおける肝臓出血抑制)
戦場における出血抑制の必要性を推進するために、米国陸軍科学技術目標(STO)の出血抑制が2000年に制定された。STOの一般的な戦略目標は、戦場傷害における出血による死亡数を減少させる製品および方法の開発として要約することができる。したがって、出血抑制製品および方法の要件は次のように述べられた:
それらは、以下の1者以上による使用にとって実行可能でなければならない:自身(負傷戦闘員)、戦友(負傷兵士を援助する非医療用戦友)、戦闘人命救助者、戦闘医療隊員、医師助手、および大隊軍医。それらは、凹凸地、限定された視界、および極端な環境などの再前線の戦場条件における使用にとって実行可能でなければならない。製品および方法は、外部の電源を必要とするものであってはならない。全ての装置は、人が携帯可能であって耐久性のあるものでなければならない。最前線で使用可能な製品および方法は、より高い医療段階においても使用されることが期待される。STOの特別戦略目標の一つは、最前線戦場条件下で圧縮性出血に使用するための、新規の、または改善された止血用物質の開発である。圧縮性および非圧縮性部位に使用するための単一製品が望まれている。
【0173】
STOの一部として、本発明の出血抑制包帯を用いて、テキサス州、サンアントニオ、フォートサムヒューストンの米国陸軍外科学研究所(ISR)において、ブタ肝臓モデルにおける肝臓出血抑制の試験が行われた。ブタにおける重篤な静脈出血および肝臓外傷の標準化モデルにおいて、血液損失および生存率に及ぼすキトサン出血抑制包帯の効果を判定するために、該試験が行われた。このモデルは、米国陸軍ISRにおいて、他の多数の止血用包帯を試験するために用いられてきた。
【0174】
本試験には、品種間交雑種の市販ブタを用いた。国際実験動物管理の評価および認定協会によって認定された施設において維持された。本試験は、テキサス州、フォートサムヒューストンの米国陸軍外科学研究所の施設内動物管理および使用委員会により承認された。動物は、実験動物の管理および使用に関する指針(アメリカ国立衛生研究所刊行物86−23、1996年改訂)にしたがって、人の管理を受けた。
【0175】
動物は、キトサン包帯かガーゼスポンジのいずれかを受けるように無作為に割り当てられた(表7を参照)。手術準備は、以下のことから成った:動物は手術操作の36〜48時間前は絶食させ、水は自由に取らせた。グリコピラレートおよびチレタミンHClとゾラゼパンHClの組み合わせ(Telazol(登録商標)、アイオワ州、フォートドッジ、フォートドッジ研究所)による前投薬後、5%イソフランを用いてマスクにより麻酔を誘導した。該ブタに挿管し、人工呼吸器に配置し、イソフランにより維持した。頚動脈および頚静脈血管カテーテルを、手術により配置した。開腹術を実施し、脾臓摘出術および膀胱カテーテル配置を完了させた。さらなる実験操作の前に、37.0℃と39.0℃との間の直腸温度および15分間の安定した平均動脈圧(MAP)を必要とした。連続的データ回収システム(Micro−Med(登録商標)、ケンタッキー州、ルイスビル)を用いて、試験期間を通して10秒おきに、血圧および心拍を記録した。各動物からベースラインの動脈血液サンプルを採取し、各動物が、正常な血小板数、プロトロンビン時間、活性部分的トロンボプラスチン時間、および血漿フィブリノーゲン濃度を示すことを確認した。
【0176】
肝臓外傷を生じさせた。この方法は以下のことを含んだ。肝臓を手動で引っ込ませ、左右の中葉を持ち上げて十分に露出させた。次に、「X」の形態に構成された2つの4.5cm先鋭化スズを有する、特別にデザインされたクランプを、肝臓の横隔膜面上に、中心を、左右中葉の交点に約2−3cm背側にして配置した。内臓面上、方形葉の下に、器具のベースプレートを配置した。該スズが、器具のベースプレートの対応する溝にはまるように、2つの中葉の実質組織および基底の血管を通して器具のスズをクランプすることによって外傷を生じさせた。肝臓の第1の穿孔後、該器具を開放し、スズを引っ込め、第2の適用が第1のものと50パーセント重なるようにして該動物に再配置した。この再配置にしたがって、肝臓を2回穿孔した。実験期間の終結時に、肝臓の切除および検査によって肝臓外傷の文書化を達成した。この外傷は、中心に小さな島状物を有する大きな星形創傷の外観を呈し、およそ10×8×4cmと測定された。該外傷は、左中葉血管、右中葉血管、および門脈肝臓血管と共に、完全に切り裂かれていた。
【0177】
外傷の30秒後、全ての動物において、温(38℃)乳酸加リンガー溶液による救急蘇生を開始した。救急蘇生の目標は、ベースラインMAPに戻すことであった。液体は、260mL/分で投与した。この救急蘇生法を、目標が達成されるまで続け、60分の試験時間中を通じてMAPが低下した場合は再び開始した。救急蘇生の開始(外傷30秒後)と同時に、以下の処置を適用した。1つの被覆材を、方形葉の表面に適用して穿孔外傷を覆い、他の2つの被覆材を、横隔膜の側から創傷内に詰めた。背腹方向に60秒間、圧縮を適用した。60秒後、外傷を検査し、止血が達成されたかどうかを判定した。次に、アプリケーターの手を再配置し、側腹−内側方向に60秒間、圧力を適用し、止血に関して観察を行った。この手順を繰り返し、合計4回の60秒間圧縮を行った。圧縮後に止血が完了していた場合は、さらなる圧縮は実施しなかった。止血は、外傷部位からの肉眼で検出できる出血が無いこととして定義した。
【0178】
処置適用の完了後、腹部を閉じ、外傷後60秒間または死亡まで、どちらかが初めに来た時まで、動物をモニターした。60秒より前の死亡は、心拍が0として定義した。60秒時に生存している動物は、ペントバルビタールの過量により安楽死させた。
【0179】
外傷導入直後血液は、処置適用開始まで腹腔から連続的に吸引された。この容量を測定し、前処置血液損失として称した。試験期間の最後に、各腹部を開き、液体および腹腔内凝固血液を吸引し、測定した。これは処置後血液損失と称した。さらに、全蘇生液体の使用を記録した。外傷前の動物血液容量を、以前に報告されているとおり(Pusateriら、Mil.Med.166、217−222頁、(2001))推定した。
【0180】
体重、推定血液容量、裂傷血管数、ベースラインMAP、生存時間、前外傷MAP、前処置血液損失、および包帯接着スコアを、SASのGLM法を用いて分散分析により分析した。データは、最小二乗法の最小二乗平均値±標準誤差として報告される。データを、分散および非正規形の不均質性に関して検討した。これらの条件を、処置後血液損失および液体使用データに関して探知した。したがって、血液損失および液体使用データは、解析前に対数変換された。変換データを、分散分析により分析した。これらのデータは、逆変換手段および95%信頼区間(95%CI)として表される。メスとオスの分布、止血、および生存データを、SASのFREQ法を用いてフィッシャー正確度試験(Fishers Exact Test)により分析した。データは、比率またはパーセンテージとして報告された。両側検定を全ての比較に用いられた。
【0181】
動物の体重、推定血液容量、動物の性別分布、ベースラインMAP、外傷前MAP、肝外傷内の裂傷を受けた主要裂傷血管数、または前処置血液損失において処置群間で差異はなかった(表8および表9を参照)。
【0182】
処置後の血液損失は、ガーゼ創傷被覆材の対照と比較して、キトサン群において減少した(p=0.01)。液体の使用における有意差は見られなかった。生存パーセンテージは、キトサン群において増加した(p=0.04)。止血は、外傷後3,4分でキトサン群でより頻繁に生じた(p=0.03)。生存時間は、キトサン群における高レベル生存率のため、統計的に比較できなかった(表10を参照)。
【0183】
【表7】
【0184】
【表8】
【0185】
【表9】
【0186】
【表10】
この米国陸軍ISR試験(Pusateriら、J.Trauma、54、177−182頁、(2003))により、独立した試験において、標準的4インチ×4インチガーゼよりもキトサン創傷被覆材の有意に改善された性能が証明される。米国陸軍ISRは、本発明クレームの被覆材の場合および赤十字により開発されている乾燥フィブリントロンビン創傷被覆材の場合においてのみ、重篤な血流の止血において4インチ×4インチガーゼよりも有意に改善された性能が証明できた。赤十字の包帯は、高価であるとともに抵抗力が弱く、破損しやすい。
【0187】
(実施例4:包帯の照射)
3M 9781多孔性フォーム裏地を有する高分子量4インチ×4インチキトサン出血抑制被覆材は、アイスランドのエビ源(Genisロット番号SO1115−1)から調製された。これらは、無菌キトサン包帯の大型ロット(ロット番号OMLC 2SM114)を調製するために市販用の凍結乾燥会社を用い2%酢酸と2%キトサン溶液により調製された。この包帯を、窒素下、15kGyで照射された。引き続きそれらを、単軸引張り強度、破裂強さ、血液吸着、水吸着ならびに無菌性について試験した。ブタの大動脈穿孔を、腹腔外傷および胸部外傷における非γ線照射サンプル上で実施した。7枚のパッチが用いられた。パッチ適用後の平均血液損失は、<50mLであった。全てのパッチは、最初の適用の際に接着性、創傷密封性および止血性があった(7 x 0ランキング)。動物は全て生存した。
【0188】
γ線照射および非照射包帯(ロット番号OMLC 2SM114)を、オレゴン州ポートランド所在のOregon Medical Laser Centerで開発されたインビトロ破裂圧試験により試験した。破裂試験を実施するために、包帯の25mm直径の円形試験片を、クエン酸塩添加全血に10秒間浸す。次いで試験片を中心に置き、50mm直径PVCパイプの側面で4mm直径の穿孔の際、デジタル圧でしっかりと保持する。この最初の付着後、パイプ内の液体圧を4.5±0.5kPa.s−1でランプさせ、0.1秒間隔で圧力と時間を記録する。破損前に記録された最大圧としての破裂圧を記録する。包帯の試験部位への相対的接着性を評価するために接着破損ランキングを定める。該ランキングシステムは、破損の3つの異なる様式に分類される。ランキング1は、キトサンの接着が保たれずにPVC面から容易に分離される試験片に与えられる。ランキング2は、試験片の分離がそれほど容易ではなく、幾らかのキトサンが試験部位に付着したままである場合に当てられる。ランキング3は、PVC面にしっかりと固定されたままになっている基本構造から創傷被覆材本体の粘着性の分離によってのみ試験片が取り外しできる場合に当てられる。
【0189】
湿潤媒体として血液を用いてPVC基材に対するγ線照射および非照射キトサン包帯の平均破裂圧(平均±SD、n=6)は、それぞれ122±1.9kPaおよび86±20kPaであった。この結果は、T−検定を用いて統計的に解析された(p=0.007)。湿潤媒体として血液を用いてPVC基材に対するγ線照射および非照射キトサンα包帯の平均接着性破裂ランキング(平均±SD、n=6)は、両方とも3±0であった。図10は、粘着性破損がキトサン構造内で生じている高ランキング破損の形を示している。
【0190】
被覆材(ロット番号OMLC 2SM114)の血液および水の吸着性を、試験小片(約0.02g)を血液または水に3.0秒間浸漬することにより判定した。浸漬前後の質量の差異を記録した。湿潤媒体として血液または水を用いて創傷被覆材に3秒間吸着された媒体の1グラム当りの平均質量を、γ線照射および非照射キトサンサンプル(n=4)に関して測定した(図11を参照)。この結果は、Tukey−HSD検定による一方向ANOVAを用いて統計的に解析された、p=0.001。γ線照射は、非照射材料の場合、水の過剰な吸着を有意に減少させた。このような過剰の水の吸着は、引き続く接着および構造的破損による創傷被覆材の崩壊(ゲルへと)を引き起こすと考えられる。
【0191】
キトサン被覆材(ロット番号OMLC 2SM114)の引張り用試験片を、5kg荷重計を具備した単軸Chatillon Materials Testing Vitrodyne V1000を用いて評価した。サンプルを犬骨片(15±1mm×6.5±0.5mm×5±0.5mmのガーゼ×厚さ×幅)に切断し、2本のクランプ間に保持した。クロスヘッド速度は、10mm.s−1であった。荷重および押しのけ量を、0.1秒間隔で記録した。
【0192】
被覆材全体の引張り結果は、表11に示している。応力および伸び率に関してγ線照射および非照射サンプル間で有意差はなかった。15kGyでの照射によりヤング係数が少し増加した。
【0193】
【表11】
*2.5cm幅の包帯について算出。
【0194】
52枚の4インチ×4インチ創傷被覆材(ロット番号OMLC 2SM114)を清浄に調製した。これら4インチ×4インチ創傷被覆材のうち、46枚を二重パック包内に包装し、14kGyから15kGyの間の認定線量でのγ線照射のためにカリフォルニア州オンタリオ所在のIsoMedix施設に送付した。創傷被覆材2SM114番号1から切断された、黄色ブドウ球菌(ATCC29213)でドープされた8枚のキトサン創傷被覆材試験片(1インチ×0.21インチ×0.21インチ)のセットをこれらのサンプルと共に箱詰めした。各試験片を、100マイクロリットルの0.5マクファラン接種により接種した。黄色ブドウ球菌は、活性であることが示された対照培地からかき出した。ブドウ球菌のない4枚の試験片の対照セットもまた含まれた。γ線照射処置をしない対照サンプルは、加熱密封包内の小型無菌容器に、室温、暗所で保持した(対照の要約に関しては表12を参照)。
【0195】
【表12】
46枚の照射された創傷被覆材パッケージを、無菌扱い、すなわちエチレンオキシド無菌による無菌条件下で開封し、接着剤被覆フォーム裏地(3M 9781テープ)を付着させ、各創傷被覆材および裏地の小切片(約1.2インチ×0.2×0.12インチ)を、個々の創傷被覆材滅菌試験のために取り出し、創傷被覆材を、加熱密封により元の内部パック内に再度包装した。これらの創傷被覆材のうち40枚に、ロット番号および創傷被覆材番号のラベルを付け、評価のために送付した。該切片および対照片を、無菌性試験のためにセントビンセントのPHSにある微生物学施設に供した。
【0196】
該切片および対照片は、チオグリコレートに富む増殖培地を含有するラベルの付きサンプル容器(0.6インチ直径×5インチ)に無菌的に入れ、35℃で好気的に温置した。培養培地は、増殖徴候を7日目、14日目および21日目に調べた。該サンプルを、5%ヒツジ血液と共にトリプシン大豆寒天中で副次培養し、35℃で温置し、48時間後増殖を調べた。
【0197】
個々の培養物を、濁度試験および副次培養のかき取りにより分析した。全ての培養物および7日目、14日目および21日目の全ての副次培養物において、非照射および黄色ブドウ球菌を投与された培養物でも増殖の無いことが示された。個別の培養物のグラム陽性染色により、これらの知見が確認された。
【0198】
(実施例5:スポンジの調製)
表13は、試験用に入手された親水性ポリマー類を掲げている。さらなる親水性ポリマー類としては、ポリリジン、硫酸コンドロイチン、澱粉およびヒアルロナンが挙げられる。限外ろ過水の水溶液(2.00重量%および8.00重量%)(Ametek)および親水性粉末を、清浄な1リットルのビン(Nalgene)に調製した。キトサン不織マット(PolyMed社)を、室温で48時間にわたり無水酢酸(Aldrich 99%)に曝すことによってキチン不織マットに変換させた。残留した無水酢酸を、限外ろ過水の複数回洗浄を用いてマットから洗浄した。アセチル化マットをNaOH(0.5M)に6時間曝すことにより、炭素−2位のアセチルアミドを加水分解することなく3グルコピラノース炭素および5グルコピラノース炭素のアセチルエステルを加水分解した(FTIR分析により確認)。撚れた(1/cm)超微細(4ミクロンの直径)多繊維(>50)ポリエステル糸(20N荷重下で200ミクロン)を得た(Multicraft Plastics、オレゴン州ポートランド)。
【0199】
【表13】
氷酢酸(Aldrich 99.99%)を、水の2重量%および4重量%でそれぞれ2重量%および8重量%のキトサン水溶液に加えた。親水性ポリマー溶液の溶解は、ロータリーベッド撹拌機上、室温で24時間までのビンの緩やかな軸回転により達成された。2%溶液は全て、25℃、2000cps未満での2号および3号スピンドルでLVTBrookfield粘度計により測定された最高粘度を有して容易に溶液となった。キトサン、アルギン酸およびアクリル酸の8%溶液は、Brookfield粘度計による測定にとって高すぎる粘度を有した。これらの場合における極めて高粘度の液体溶液により、これら溶液の注ぎが妨がれた。その代わり、これら溶液を、プラスチックビンから搾り出し、引張り、すくい出して鋳型に装填した。これら後者の極めて高粘度の液体は、製造環境において容易に処理することができなかった。
【0200】
2%水溶液の場合は1.7cmの深さ、8%の場合は0.45〜0.70cmの深さのアルミニウム鋳型内のTeflon(商標)被覆された10.8cm×10.8cm×2.0cmウェルに、水溶液を注ぐ/入れることによってスポンジを形成した。最初室温における溶液は、実験室(0.65m2)Virtisまたは(3.72m2または16.63m2)Hull凍結乾燥機中、−25℃と−45℃との間の温度でアルミニウム鋳型を冷却棚上に置くことによりプラークに凍結された。プラークからの水の昇華による親水性ポリマースポンジの製造は、200mTorr未満の圧で−80℃の冷却機を用い、48時間から60時間かけて−45℃から18℃に徐々に棚温度をランプして凍結乾燥することにより達成された。
【0201】
2%キトサン溶液のサンプルの場合、凍結中2%キトサン溶液における、望ましくないクラスト(上面氷核)形成を防ぐために4つの方法を試験した。1つの方法は、鋳型の上面にポリマー薄膜を乗せて、凍結のための冷却棚に乗せる前にポリマー溶液の表面と密接な湿潤接触させることであった。溶液がプラークに凍結された後(約1〜2時間)、保護ポリマー薄膜を除去する。ガラス転移温度が−45℃以下であるため、塩化ポリビニリデン薄膜(例えば、Saran(商標)ラップ)が特に有用である。この薄膜は、上部の過冷却親水性ポリマー溶液面上への沈殿および凍結面のクラスト核形成により、凍結機/凍結乾燥機内の冷却表面に形成された樹枝状氷を防ぐ働きをする。このクラスト層を防ぐ第2のアプローチは、鋳型の直ぐ上に置かれる高架状(250mm×6mm×5mmスペーサーバーを用いて)の薄い(例えば、3mm)アクリル製プレートの使用であった。これは、接触する保護ポリマー薄膜を除去するための凍結/凍結乾燥サイクルを中断する必要がないため、薄膜法よりも有利であった。実施例7に詳述された第3の方法では、注がれた鋳型溶液の上面に持続的浸透性キチン不織マット裏地適用が用いられた。実施例11に詳述された第4のアプローチは、凍結時の溶液封じ込めとして親水性溶液で満たされた加熱密封されたフォイル裏打ちポーチを使用することであった。
【0202】
凍結乾燥の終了時に(>48時間)、スポンジを乾燥機から取り出し、秤量し、加熱密封されたフォイル裏打ちポーチに保存した。スポンジは、1.7cmの深さに注がれた溶液の場合、10cm×10cm×1.7cmであり、0.45〜0.70cmの深さに注がれたスポンジの場合、10cm×10cm×0.43cmであった。Arizona InstrumentsVapor Pro水分分析器を用いる水分分析により、スポンジ質量の1%から4%の間の残存水分%を示した。キトサンスポンジ中の残存酢酸は、Mettler DL53オートタイトレーターおよび27%と22%との間のスポンジ質量で0.010M NaOHを用いて測定された。2%および8%溶液のキトサンスポンジに関する平均スポンジ密度は、それぞれ0.031±002g/cm3および0.103±0.014g/cm3であった。他の親水性スポンジに関する平均スポンジ密度は、2%スポンジについては0.0248±.0036g/cm3であり8%スポンジについては0.0727±.0023g/cm3であった。キトサンスポンジと他の親水性スポンジとの間の平均29%の密度差は、主としてキトサンスポンジ中の酢酸および非キトサンスポンジを秤量する際に考慮に入れなかった少量フラクションの揮発成分により生じる。
【0203】
種々の親水性試験ポリマー類全てから2%スポンジは、適合性を有した、同様の外観および構造で全て良好に形成された。全てが8%近くで幅および長さが収縮した。アルギネートおよびキトサンスポンジは、非常に良好な粘着性、操作による引き裂きおよび亀裂に抵抗性を有した。デキストラン、カルボキシメチルセルロースおよびポリアクリル酸スポンジは、より粘着性が低く、操作により容易に亀裂および引き裂きを生じた。−30℃近辺で凍結された2%スポンジの典型的な外観を、図12に示している。この端部は、滑らかな外観を呈し、規則的なモザイク構造模様が付いている。スポンジの上面は、中心が僅かにドーム状であった。唯一の外見上の特徴は、規則的な0.5mm直径×0.5mm深さの面あばたきずであった。ベース面(すなわち、Teflon(商標)鋳型ベースと接触する面)は、結晶粒界により分離された面生地および明白な「大型単結晶」領域を示した。片側安全かみそりの刃を用いた横断面の切断(図13)により、内部構造を示している。ベース面内の結晶粒界は、種々の方向に配向された微細なラメラ領域を区分し、鋳型面における種々の不均質な核形成事象から生じやすい境界線として見ることができる。スポンジの内部構造は、スポンジ内に拡がり、スポンジの厚さの60%近辺まで含む微細なラメラ(各々2〜5ミクロンの厚さ)のベース層により説明できる。ベースラメラの直ぐ上部は、上部コース層からベースの微細層を分離している薄い境界面(<10ミクロン)である。このコース層は、上部溶液温度が0℃以下に低下する際に上面溶液と接触する外来の樹枝状氷から生じる。この層におけるラメラは、10ミクロン以上の厚さであり、一般に上面に垂直に配向されている。これらのコース、垂直ラメラは、スポンジの平面に対して直角の圧縮に耐える。樹枝状氷による核形成から上面を保護することによって形成されたキトサンスポンジは、上部クラスト構造を有さなかった。これらのスポンジは、耐亀裂性に関して機械的性能が改善されており、上面保護することなく形成されたスポンジと比較して適合性(可撓性)が改善された。
【0204】
2%スポンジの全面は、血液または水を容易に吸着した。全ての非圧縮スポンジは、短時間(すなわち、5秒以上)で過剰の水または血液と接触した場合、ゲルに極めて崩壊し易かった。
【0205】
8%スポンジは、2%スポンジよりもかなり硬い。閉鎖され、滑らかな外観のスポンジベースにおいて微細構造を容易に見ることはできなかった。これらのスポンジは、血液および水を圧縮2%スポンジほど容易には吸着しなかった。これらのスポンジの横断面を切断すると、内部構造が、2%スポンジのものと違っていることが観察された:コース上部垂直構造は、2%スポンジと同じ相対的深さの近辺に(すなわち、30〜40%)存在し、ベース層は、直角から30°近くに配向され、微細な結晶粒界により区分されたラメラの高コンパクトゾーンから構成されている。
【0206】
2%溶液からのスポンジは、Teflon(商標)被覆平行プレート圧締盤を80℃に加熱し、1200mm/分から5mm/分mの間の一定速度で圧締盤を一緒に一定のスペーサー距離(典型的には0.55cm)にすることにより典型的にプレスされた。0.45cmにプレスされた1.70cm厚さのスポンジ密度は、凡そ0.10g/cm3であった。80℃未満で、および/または200mm/分以上の圧縮速度でプレスされたスポンジは、結晶粒界での亀裂により、および脆性破損により、機械的破損を受け易かった。これは、2%、60mm/分以上でプレスされた1.7cm厚みのキトサンスポンジの場合に見られた。864枚のスポンジの中で、260枚以上のスポンジが、脆性崩壊および破損により廃棄された。圧縮速度が、20mm/分に調整した場合、864枚のうちからスポンジから43枚のみ廃棄された。圧縮速度を、10mm/分に調整した場合、9枚未満が廃棄された。
【0207】
低速度(<12mm/分)でプレスされたスポンジ構造の変化を、図13に示す。垂直に対して20°と40°との間に配向された微細ベースラメラは、均一なベース層に容易に高密度化(75%圧縮)されるが、垂直のコース上層は、部分的にのみ高密度化(約55%圧縮)されることを見ることができる。低圧縮速度での結晶粒界領域は、密接したままである。より高い圧縮速度(>20mm/分)での結晶粒界領域は、より分離し易くなる。
【0208】
(親水性スポンジに関して観察)圧縮スポンジは、水または血液によって容易には濡れにくく、両媒体中の分解に対してより抵抗があった。圧縮された2%スポンジは、血液により十分に濡れたが、分解しなかった。濡れた圧縮スポンジの接着強度は、PAA>キトサン>CMC>アルギン酸と等級分けされた。
【0209】
効果的なスポンジの極めて重要な決定因子は、ラメラ表面に対して正規直交するミクロンサイズのちりめん皺(図14)の存在である。これらのちりめん皺は、小型の「歯」としてラメラ表面から3ミクロンから10ミクロン突出している。理想的には、ラメラの少なくとも1つの面上に規則的に分布させるべきである。これらの構造は、ラメラが垂直方向に対して30°以上のラメラ成長の配向で形成する制御条件下で最も一般的である。また、それらは、−25℃で凍結する最初の30分から60分後に凍結プラークを−45℃以下に急速冷却する能力によって制御されると考えられる。プレス後、試験キトサンスポンジを、一定温度の熱対流オーブン中、80℃で30分間焼成して残存する応力をアニールさせ、残存遊離酢酸を除去した。
【0210】
(実施例6:2%キトサンスポンジの調製)
A. 2%キトサンスポンジの2つのサンプル(N=3):1つのサンプルは、20mm/分で1.7cmから0.55cmにプレスし、他のサンプルはプレスしなかった。両サンプルを、80℃で30分間焼成した。四角の試験片(5cm×5cm)を各スポンジから切断した。試験片を、室温で血液中10秒間浸すことによってクエン酸添加ブタ全血で濡らした。それを、デジタル圧(200〜300mmHg)により3分間、12mm厚さの清浄なPVC(400グリットの湿った紙および乾いた紙を用いて粗くした)の10cm×10cmの表面に4mm直径の穿孔を中心にして付着させた。穿孔下の貯留層中、室温でブタ全血を加圧ランプさせた(50mmHg/秒近辺)。圧変換器を貯留層に取付けて破損時の最大圧を測定した。
【0211】
プレスしたスポンジ試験片(N=3)を、500mmHg以上の圧力に保持した。これらのスポンジにおける破損は、PVCに結合している接着剤の損失によるものであった。プレスしなかったスポンジ試験片(N=3)は、500mmHg未満で破損し、破損は血液中のスポンジ崩壊および分解によるものであった。
【0212】
B. 10mm/分で1.7cmから0.55cmにプレスされた2パーセント溶液キトサンスポンジ(N=5)を、80℃で30分間焼成し、フォーム化PVCテープと共に焼成し、γ線照射(15kGy)により滅菌した。試験片(5cm×5cm)を、室温で10分間ブタ全血中に浸した。次にこの試験片を、平坦なPVC表面の4mm直径の穿孔を中心にして付着させ、荷重圧(600mmHg近辺)で3分間保持した。この時間終了時に、穿孔下のブタ全血を室温で300mmHgまでの圧力に3分間ランプしてから(50mmHg/秒近く)、付着させた試験片が破損するまで再度同様の速度でランプした。試験片の破損は、血圧が1800mmHg以上である場合に生じた。破損は、粘着性の破壊、クラスト上層の分解またはPVCに対する接着剤の結合損失のいずれかによるものであった。
【0213】
C. 8%溶液から調製されたキトサンスポンジ試験片(4cm×4cm×0.5cm)は、4mm直径の急性ブタ大動脈穿孔出血を止める効果がある(平均動脈圧70mmHg;包帯試験片の30分間以上の止血性)ことが判明した。しかしながら、8%キトサン溶液からのスポンジは、非可撓性であり、創傷に容易に適合させることができなかった。一方、2%キトサン溶液から形成されたが、1.7cmから0.45cmにプレスされた同密度のスポンジは、この大動脈穿孔外傷での出血を止める効果があるのみならず、容易に適合性があり、出血創傷に対して配置された時間でより適合性となった。
【0214】
D. クラストの無いスポンジから形成された、徐々に圧縮された(1.70cmから0.45cmへ)最初2%溶液のキトサン包帯から1インチ直径の試験片(N=12)を、12匹の麻酔を受けたブタの穿孔(4mm直径)大動脈に付着させた(最初の自由流動出血に対する3分間のデジタル圧、平均70mmHg動脈圧)。全ての試験片は、最初の適用時に出血を止め、少なくとも30分にわたり止血した。比較として、クラスト層を有する包帯から形成されたキトサン包帯(N>100)は、同じ時間にわたり出血を止めるために、平均0.5回から1.5回の圧力の再適用を要した。
【0215】
E. 高速プレス(>50mm/分)の2%キトサンスポンジの楕円形(3.8cm×3.2cm)試験片(N=10)を、ブタ全血中に室温で10秒間浸した。次に試験片を、平坦なPVCの表面に4mm直径の穿孔を中心にして付着させ、デジタル圧(600mmHg近辺)で3分間保持した。この時間終了時に、穿孔下のブタ全血を300mmHgまでの圧力に3分間加圧(50mmHg/秒近辺)してから、試験片が破損するまで再度ランプした(約50mmHg/秒)。到達した最大圧、試験固定具に対する最終接着性、破損後のバルクスポンジの粘着性について破損をランク付けした。この結果を、徐々にプレスした(圧縮速度<15mm/分)2%キトサンスポンジの20枚の試験片の同様な試験結果と比較した。最終破裂ランキングおよび接着ランキングは同様であった。しかし60%の高速プレススポンジは、グロスクラスト分解およびゲル化のためにあり得る中で最低の粘着ランキングを有した一方、徐々にプレスされた20枚の包帯全ては、最高の粘着ランキングを有した。
【0216】
F. 2セットの2%キトサンスポンジを調製した。1セットは、実質的なラメラ面ちりめん皺を有し、別のセットは、ラメラ面にちりめん皺を有さなかった。両セットのスポンジを、0.10g/cm3密度近辺の緩やかなプレス速度でプレスした。スポンジを80℃で30分間焼成し、PVCフィーム薄膜により裏打ちした。ブタ大動脈穿孔実験において、ちりめん皺化ラメラを有するスポンジセットは、全ての場合に(N=12)において重篤な大動脈出血を止血するのに有効であった。ちりめん皺化ラメラのないスポンジ(N=6)において、試験片は、出血を止血するのに有効ではなかった。
【0217】
(実施例7:キチンメッシュ補強によるキトサンスポンジの調製)
水に浸漬したキチン不織メッシュを、吸収性ワイプ(Kimwipe(商標))に対し置き、不織キチンマット中の水含量を減少させた。このマットを10cm×10cmの四角に切断した。次いでそれを、10.8cm×10.8cm×2cmの深さのアルミニウム鋳型ウェルに注いだ2%キトサン溶液の面上に置いた。残されたマットはキトサン面で懸濁し、表面でマット内へのキトサンの吸着がいくらかあることが見られた。キトサン溶液およびマットを、実験室用(Virtis)凍結乾燥機内に置いた。この溶液を凍結し、水を昇華させるとスポンジ表面にしっかりと付着させた織マットを有するスポンジが現れた。キチンマットを有するスポンジを、キチンマットのないスポンジと同じ速度で乾燥した。キチン裏地スポンジの切片を横断面で切断すると、1.5mmの深さ近くまでマットへのキトサンの部分的湿潤が明らかになった。しかしながら、切片はまた、マット面の上部1mmには、キトサンが無いことを明らかにした。キチンマット複合面を有するスポンジは、80±2℃に加熱された平行プレート圧締盤間で20mm/分で1.8cmから0.45cmの厚さにプレスした。プレス後のスポンジを通る横断面は、キチンマットとスポンジとの間の界面が、プレスにより損傷されず、マットおよびスポンジの両方が、共にしっかりと固定されていることを示した。また、キチンマットの存在は、スポンジ適合性および耐分解性スポンジに影響を及ぼし得るスポンジクラスト(上面から下部へのコース氷核形成)の形成を防いだ。このスポンジを、ブタの4mm直径の急性動脈穿孔モデルにおいて試験した。この外傷における出血は、標準的なキトサン包帯片では止血されず、キチンマット裏打ち試験片が、3分間デジタル圧を保持することにより適用された。2.5cm直径の試験片の適用を行っている外科医は、この試験片は特に適合性があり、キチン裏地に粘着することなく指を離すことができたと述べている。この試験片は、プロトコルの試験時間に要求される30分間以上外傷部位を密封した。それは、外傷部位に良好な接着を保持し、たとえこの包帯と共に通常は適用される保護非浸透性裏地を有していなくても分解の兆候を示さなかった。また、この包帯は、該包帯の可撓性により脈拍を診ることができたので、該包帯が外傷に適合性であることが観察された。
【0218】
(実施例8:キトサン含浸糸)
0.5mm直径のポリエステル多繊維を2%キトサン溶液に浸し、直径を約2mmに拡張させた。次に室温で浸漬したキトサン糸を、拡張された糸から溶液を引き出すことなく、平坦な疎水性Teflon被覆アルミニウムトレイ上に静かに載せた。次いでトレイを、−25℃でVirtis凍結乾燥機の棚に置き、凍結させた。凍結乾燥によって糸から氷を除くと0.033g/cm3でキトサンスポンジで含浸させた2mm直径の拡張糸が残った。拡張糸に対して10N近辺の引張り力の適用および糸表面に対して直角にテーパニトリルゴムを介した約500mmHgの圧力の適用により、2mmから約0.7mm直径の糸に圧縮した。この糸は、良好な適合性を示し、ガーゼ様包帯の製織用に調製された。糸の一部を80℃に10分間焼成した。次にそれを、血液中に10秒間浸し、清浄な試験PVC表面に対し3分間しっかりと保持した。それは良好な接着性を示した。
【0219】
(実施例9:圧縮低密度スポンジと非プレス高密度スポンジとの間の撓みの比較)
ここに供された高密度化法により、厚さ、幅および/または半径において制御された縮小により、適合性の高い低密度の相互接続スポンジの容積が縮小される。親水性ポリマーの適合性は、グルタミン酸またはグリセロールなどの可塑剤で修飾しないことが好ましい。なぜならば、この修飾が、重篤な出血下でスポンジをより分解し易くさせ、スポンジ崩壊し易くさせるためである。本実施例は、低密度スポンジのより高密度スポンジへの圧縮により、化学的に同一のより高密度のスポンジを高密度化なしで形成された場合よりも、より低い弾性率のスポンジが生ずることを示している。
【0220】
弾性率(E)を測定するために、水平面からの撓みを、単独の片持梁実験において判定した。矩形梁を、プレスされた2%スポンジおよび非プレスの8%スポンジから切断した。梁は、9cmの長さで2.54cmの幅であった。6.7cmだけの梁が、平坦な水平面の縁から延伸するように固定した。固定点から6.5cmの梁チップ上に20g重量または30g重量を載せた。水平面から直角の梁の6.5cm点の撓みを、荷重3秒後に測定した。弾性率(E)を、式:
E=P.L3/(3y.I)
から算出した。式中I=w.h3/12であり、P=荷重(N)であり;L=自由梁長(m)であり;y=水平面からの梁撓み(m)であり;w=梁幅(m)であり;h=垂直面の梁高さ(m)であり;I=慣性モーメント(m4)である。
【0221】
梁の厚さは、デジタルカリパーを用いて測定された。梁の撓みを測定後、梁を2.54cm×2.54cmの四角に切断し、秤量し、密度を測定した。この試験結果は、表2に示している。8%サンプルは全て、2%サンプルよりも撓みに対して抵抗性であることを見ることができる。圧縮2%スポンジに関する平均弾性率(MPa)は、キトサン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースおよびアルギン酸に関してそれぞれ、6.43±3.3、1.75、3.5および2.9±0.4である。8%スポンジに関する平均弾性率(MPa)は、キトサン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースおよびアルギン酸に関してそれぞれ、10.6±3.3、12.4、4.54および5.7±2.1である。圧縮2%スポンジに対する8%スポンジの平均弾性率比は、キトサン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースおよびアルギン酸に関してそれぞれ、0.61、0.14、0.77および0.51である。
【0222】
【表14】
PAA=ポリアクリル酸、CMC=カルボキシメチルセルロース、AA=アルギン酸。
【0223】
(実施例10)
プレスされた2パーセント溶液、複合ポリアクリル酸スポンジ(N=2)試験片(5cm×5cm)を、ブタ全血中、室温で10秒間浸した。次に該試験片を、平坦なPVC表面に4mm直径の穿孔を中心にして付着させ、荷重圧(750mmHg)で3分間保持した。この時間終了時に、穿孔下のブタ全血を室温で300mmHgまでの圧力に3分間ランプし、加圧(50mmHg/秒近辺)してから、付着した試験片が破損するまで同様な速度で再度ランプした。試験片の破損は、血圧が2300mmHg以上であった場合に生じた。破損は、スポンジの粘着性破壊によるものであった。
【0224】
(実施例11)
凍結棚と極めて良好な熱的接触を達成し、凍結時のコースクラスト形成を防ぐため、また成長する垂直ラメラに対して直角の制御されたレベルの剪断応力を適用するためのアプローチを記載する。加熱密封されたフォイル裏打ちポーチ(15cm×23cm)に、200gの2%キトサン溶液を充填した。全ての空気を、最終的密封前にポーチから除去した。−25℃で実験室用のVirtis凍結乾燥機内の平行プレート棚間にポーチを入れ、少なくとも180分間凍結させた。Virtis乾燥機は、上部棚を下部棚上に下げることができる「ストッパリング」装置を有したため、下部棚上のスペーサー間に置かれたキトサン充填のフォイルポーチにしっかりと接触させ、荷重をかけることができた。上部棚が最下部の棚に下がった場合、上部棚が、溶液の充填されたポーチの上面にしっかりと留まるようなレベルにポーチを充填した。ポーチ上の圧力の程度は、上部棚の空の重量および2つの棚間に留まっているポーチ数により制御できた。本実施例において、1.7cmスペーサーバーが用いられ、2つのポーチだけが棚間に置かれ、ポーチに対する荷重は10kg近辺であった。凍結乾燥前に、ストッパー付きの棚を上昇させ;凍結プラークをポーチから除去し、冷却凍結乾燥機の棚に置いた。凍結の際のポーチ内の膨張は、加熱密封の部分的な内部引き裂きにより調整された。引き続きプラークを、スポンジに凍結乾燥した。該スポンジを通る横断面は、該スポンジの上面および底面から成長し、中間部で交わる均一なラメラ構造を示した。上部構造は、底部構造の鏡像体であった。ラメラは、垂直に対して20°から30°の間で、該スポンジの中心から縁への方向で全て均一に配向されていた。該スポンジは、結晶粒界が無いことを示した。該スポンジを1.7cmから0.55cmの厚さまでプレスした。引張り強度、適合性、および過酷な曲げに対する耐引裂き性または耐断裂性に関して優れた機械特性を有した。該スポンジを焼成し、PVCフォーム裏地により裏打ちし、γ線を15kGyで照射した。
【0225】
単一の楕円形試験片を、急性ブタモデルにおける大動脈穿孔に対して適用した。これは、30分の試験時間にわたり動脈出血を止血するのに有効であった。外科医は、該サンプルが極めて良好な適合性を有したことを述べた。
【0226】
(実施例12)
簡単な陽性テクスチャー加工表面を、10cm×10cm×1.7cmのキトサンスポンジ上に創製した。これは、陰性パターン化された10cm×10cm×0.25cmのアルミニウムカードを用いて達成された。このパターンは、平坦なアルミニウム面上で400グリットの湿った紙および乾いた紙を操作することにより作製した。この表面を、非持続性の赤色染料で被覆し、その大部分を、乾いた布で拭くことにより表面の上部から除いた。この表面に対して圧縮されたキトサンスポンジは、アルミニウムカードの赤色染料により明らかとなった陽性の表面パターン化を示した。
【0227】
上記に検討された全ての引用文献は、全ての目的のために参照としてそれらの全体が本明細書に組み込まれている。本発明は、それらの好ましい実施形態を参照にして具体的に示され、記載されているが、形態および詳細における種々の変形が、添付の請求項により定義されている本発明の精神および範囲から逸脱することなく作製し得ることが当業者により解される。
【図面の簡単な説明】
【0228】
【図1】図1は、初期非圧縮創傷被覆材を通る横断面のフォトデジタル像を示している。
【図2】図2は、非圧縮創傷被覆材における配向層構造を通る横断面のフォトデジタル像を示している。
【図3】図3は、基材に対して垂直に切断した相互接続多孔性キトサン創傷被覆材構造の光学顕微鏡写真を示している。
【図4】図4は、加熱および圧縮後のキトサン生体材料創傷被覆材の写真を示している。
【図5】図5は、圧縮キトサン創傷被覆材の典型的な基材表面の走査電子光学顕微鏡を示している。高倍率の差込図(棒線=100ミクロン)。
【図6】図6は、キトサン/脾臓外傷部位および隣接脾臓面を通る組織学的染色断面を示している。パッチと脾臓との間のフィブリン/血小板の豊富な凝血塊(B)による凝集凝血塊応答(A)。図は、脾臓とキトサンとの間の極めて良好な接着を証明している。
【図7】図7は、キトサンによって密封された胸部大動脈の写真を示している。
【図8】図8は、穿孔外傷を示す固定胸部大動脈を示している。
【図9】図9は、胸部大動脈外傷を通る染色組織学的断面を示している。
【図10】図10は、強力に接着した被覆材におけるインビトロの破壊圧不成功の写真を示している。
【図11】図11は、γ線照射サンプルおよび非照射(すなわち、非滅菌)サンプルに関する水分および血液吸着結果の棒グラフを示している。
【図12】図12は、典型的なキトサンスポンジ外観の詳細図である。図12Aは、側縁部およびスポンジの上部を示す、スポンジの側面平面図であり、図12Bは、このスポンジの中央領域を通る横断面(12cm×1.7cm)であり、そして図12Cは、異なる結晶粒界によって隔てられた、異なる表面ラメラ方向の領域の違いを示す、このスポンジ基材の平面図である。
【図13】図13は、平行な面の間で80℃にて10mm/分で、17mmから5mmの厚さに圧縮された典型的な2%溶液切断スポンジに見られる、スポンジ内部構造に及ぼす圧縮の効果を示している。図13Aは、圧縮前の、垂直に配向するラメラ上部の「表皮」層Cおよび微細な「毛羽立った」ラメラ基材層Bを示し、そして図13Bは、圧縮後の、部分的に圧縮された「表皮」層Cおよび非常に圧縮された基材層Bを示す。
【図14】図14は、表面ちりめん皺を示す単一ラメラの詳細図を示している。
【図15】図15は、ラメラ表面の詳細図を示している。
【図16】図16は、ラメラの上面に隆起しているちりめん皺構造の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示している。図16(a)〜16(g)は、種々の倍率におけるちりめん皺を示している。
【図17】図17は、ミクロかん子を用いてキトサン基材近辺から除去した単一ラメラの側方照明による光学顕微鏡画像を示している。微細なちりめん皺構造がラメラの上面に垂直に隆起しているのを見ることができる。
【技術分野】
【0001】
本願は、2003年12月15日に出願された、米国特許出願番号が付与されていない、Wound Dressing and Method of Controlling Severe Life−Threatening Bleedingについての出願の、米国特許法第1.53条第(b)項の下での一部継続出願である。この米国特許出願は、2002年6月16日に出願された、国際出願番号PCT/US02/18757の、米国特許法第371条の下での国際段階移行であった。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、出血抑制創傷被覆材、およびこのような被覆材の使用方法ならびに製造方法に関する。対象の創傷被覆材は、重篤な出血を抑制するために、非哺乳動物から構成される。重篤な出血を抑制するための創傷被覆材は、キトサンおよび/または他の親水性ポリマーを含む生体材料から形成される。あるいは該材料は、ポリアクリル酸またはポリアクリル酸と他のポリマーとの組み合わせを含み得る。本発明で考慮されている重篤な命にかかわる出血の種類は、典型的には、通常のガーゼ創傷被覆材を通常の圧力で創傷に適用した場合に止血され得ないタイプのものである。該創傷被覆材は、創傷部位に接着し、創傷を密封し、創傷部位における凝血塊の形成を促進し、創傷部位における凝血塊の形成を補強し、創傷部位からの出血を防止し、創傷部位からの血液の流出を実質的に妨げることによって、創傷からの命にかかわる出血の流れを実質的に止めることができる。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
新型出血抑制包帯およびその適用は、利用可能な実質的に増強された止血方法になると考えられる。今まで、ガーゼ包帯と共に連続的に圧力をかけることが、血流、特に、重篤な出血創傷からの血流を止めるために用いられる好ましい主な処置となっている。しかし、この方法は、重篤な血流を止めるのに、効果的でもないし安全でもない。このことは、創傷からの重篤な命にかかわる出血の場合の生存上の主な問題であったし、今も問題であり続けている。
【0004】
さらに、重篤な出血は、戦場での創傷による死亡の主要な原因であり、そのような死亡のおよそ50%を占めている。これらの死亡の三分の一は、改良された出血抑制方法および装置によって防止できると予想されている。また、このような改良された出血抑制は、非軍事的な場、例えば、出血が外傷後死亡の第二の主要原因である病院および獣医診療所においてきわめて有用であることも実証される。
【0005】
現在利用可能なコラーゲン創傷被覆材または乾燥フィブリントロンビン創傷被覆材は、外科手術適用における使用に限られており、高血流における分解に対する抵抗性が十分ではない。また、それらは、重篤な血流の止血において何らかの実際的な目的に役立つ十分な接着性を有していない。また、これらの現在利用可能な外科用止血包帯は、抵抗力が弱く、圧力による屈曲または負荷によって損傷すれば失敗する傾向がある。それらはまた、易出血性出血において分解し易い。これらの包帯のこのような分解および崩壊は、創傷への接着減損を引き起こし、出血を弱めずに続行させる可能性があるため、破局的となり得る。
【0006】
キトサンおよびキトサン被覆材に関して先行技術が存在する。例えば、Malletteらに対して発行された特許文献1では、マイクログラム/mLの量の血液を凝集させるために、液体または粉末形態のキトサンを使用している。また、Malletteらに対して発行された特許文献2は、キトサンを血管に直接注入することにより血管を治療的に閉塞する方法に関するものである。さらに、Malletteらに対して発行された特許文献3は、組織創傷にキトサン溶液または水溶性キトサンを接触させて配置することにより線維増殖を阻害し、組織再生を促進する止血に関する。該キトサン形態は、出血を防止する凝塊を形成する。
【0007】
Vournakisらに対して発行された特許文献4は、珪藻由来の医用グレード、高精度のキチンおよびキチン誘導体(該特許における分析によっては実証されていないが、いわゆるタンパク質の無い)を作成する方法に関する。いわゆるタンパク質の無いキチン/キトサン材料の提案された利点は、それらが、現在のエビおよびカニ由来のキチン材料よりも有意に抗原性が少ないと考えられることである。
【0008】
非特許文献1には、転相法によって製造された非対称キトサン膜の製造および創傷治癒機能が記載されている。
【0009】
非特許文献2には、ブタ脾臓皮膜剥ぎ取り試験に典型的な中等度の血流および浸出下でのキチン/キトサン止血パッチの試験が記載されている。
【0010】
非特許文献3には、ブタ脾臓皮膜剥ぎ取り試験における止血物質試験が記載されている。
【0011】
WATER SOLUBLE POLYMERS,SYNTHESIS,SOLUTION PROPERTIES AND APPLICATIONS、ACS Series467(W.S.Shalabyら編集、ACS、ワシントンDC、1991年、Ch28、431−445頁)におけるSandford,Steinnes A.、「Biomedical Application of High Purity Chitosan」。これは、キトサンスポンジに関するキトサンの使用法を記載している一般的なレビュー論文である。
【0012】
Mallette,W.G.ら、「Chitosan:A New Hemostat」Annals of Thoracic Surgery36(1):55−58頁、(1983)。上記のMaletteに関するコメントを参照されたい。
【0013】
Olsen,R.ら、In CHITIN AND CHITOSAN 、SOURCES,CHEMISTORY,BIOCHEMISTORY,PHYSICAL PROPERTIES AND APPLICATIONS,Elsevier Applied Science、ロンドンおよびニューヨーク、1989年、813−828頁。この論文は、キトサンの凝集効率に関する。
【0014】
特許文献5は、改善されたタックを有するキトサン医用バンドを扱っている。特許文献6は、外部止血適用のための、または創傷保護のための水不溶性および2%酢酸不溶性のキトサンスポンジを記載している。
【0015】
特許文献7は、少なくとも1つの生理学的試剤および少なくとも1つの下部構造を用いる凍結乾燥法によって形成された、創傷被覆材および/またはインプラント適用のためのコラーゲン基材の構造的に非均一なスポンジを記載している。
【0016】
特許文献8は、血液または他の流体の流れの停止に効率の高い凍結乾燥したスポンジ構造に関する。この特許は、コラーゲンスポンジの調製を記載している。
【0017】
特許文献9は、キトサンおよびアルギネートのブレンドまたは混合物から形成された創傷被覆材を含む。
【特許文献1】米国特許第4,394,373号明細書
【特許文献2】米国特許第4,452,785号明細書
【特許文献3】米国特許第4,532,134号明細書
【特許文献4】米国特許第5,858,350号明細書
【特許文献5】特許第60142927号公報
【特許文献6】特公昭63−090507号公報
【特許文献7】米国特許第5,700,476号明細書
【特許文献8】米国特許第2,610,625号明細書
【特許文献9】米国特許第5,836,970号明細書
【非特許文献1】Mi,F.L.ら、「Fabrication and Characterization of a Sponge−Like Assymetric Chitosan Membrane as a Wound Dressing」、Biomaterials、2001年、22(2):p.165−173
【非特許文献2】Chan,M.W.ら、「Comparison of Poly−N−acetyl Glucosamine(P−GlcNAc)with Absorbable Collagen(Actifoam),and Fibrin Sealant(Bolheal)for Achieving Hemostasis in a Swine Model of Splenic Hemorrhage」、J.Trauma Injury,Infection,and Critical Care,2000年、48(3):p.454−458
【非特許文献3】Cole,D.J.ら、「A Pilot Study Evaluating the Efficacy of a Fully Acetylated poly−N−acetyl glucosamine Membrane Formulation as a Topical Hemostatic Agent」、Surgery、1999年、126(3):510:p.517
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、重篤な血流を止めることができ、圧力による屈曲または負荷の際に失敗しない改良された止血包帯に対する必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の要旨)
本発明は、重篤な命にかかわる出血を抑制するための救急処置/第一次処置用創傷被覆材に関する。現在、重篤な命にかかわる出血の抑制に好適な低コストの創傷被覆材は無い。特に、典型的には全死亡の50%が重篤な出血の即時抑制不能に関連している戦場において、このタイプの被覆材に対する必要性が存在している。本発明の創傷被覆材は、創傷部位に接着し、創傷を密封し、創傷部位における凝血塊の形成を促進し、創傷部位における凝血塊の形成を補強し、創傷部位からの出血を防止し、創傷部位からの血液の流出を実質的に妨げることによって、創傷からの命にかかわる血液の流れを実質的に止めることができる。
【0020】
一実施形態において、圧縮されたスポンジが、約0.6g/cm3から0.15g/cm3の圧縮スポンジ密度を有する、親水性ポリマーを含む、出血抑制用の圧縮スポンジが提供される。親水性ポリマーは、アルギネート、キトサン、親水性ポリアミン、キトサン誘導体、ポリリジン、ポリエチレンイミン、キサンタン、カラゲナン、第四級アンモニウムポリマー、硫酸コンドロイチン、澱粉、修飾セルロースポリマー、デキストラン、ヒアルロナンまたはそれらの組み合わせであり得る。澱粉は、アミラーゼ、アミロペクチンおよびアミロペクチンとアミラーゼの組み合わせであり得る。親水性ポリマーは、キトサンであることが好ましい。キトサンは、少なくとも約100kDaの重量平均分子量を有することが好ましい。キトサンは、少なくとも約150kDaの重量平均分子量を有することがより好ましい。キトサンは、少なくとも約300kDaの重量平均分子量を有することが最も好ましい。
【0021】
キトサンは、スピンドルLV1の30rpmで、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃において、約100センチポアズから約2000センチポアズの粘度を有することが好ましい。キトサンは、スピンドルLV1の30rpmで、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃において、約125センチポアズから約1000センチポアズの粘度を有することがより好ましい。キトサンは、スピンドルLV1の30rpmで、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃において、約150センチボアズから約500センチボアズの粘度を有することが最も好ましい。
【0022】
該圧縮スポンジは、活性成分をさらに含み得る。該活性成分としては、限定はしないが、カルシウム、トロンビン、第VIIa因子、第XIII因子、トロンボキサンA2、プロスタグランジン−2a、上皮増殖因子、血小板由来増殖因子、フォン・ウィルブランド因子、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF−α、形質転換増殖因子(TGF)、TGF−α、TGF−β、インスリン様増殖因子、線維芽細胞増殖因子、ケラチノサイト増殖因子、神経成長因子、ペニシリン、アンピシリン、メチシリン、アモキシシリン、クラバモックス、クラブラン酸,アモキシシリン、アズトレオナム、イミペネム、ストレプトマイシン、カナマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、クリンダマイシン、エリスロマイシン、ポリミキシン、バシトラシン、アムホテリシン、ナイスタチン、リファンピシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、クロラムフェニコールおよびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
他の実施形態において、親水性ポリマースポンジ、およびスポンジの内部におよび/またはスポンジ表面に1つの、または複数の湿潤可能なポリマーマトリクスを含む出血抑制用の圧縮複合スポンジが提供される。親水性ポリマーとしては、アルギネート、親水性ポリアミン、キトサン誘導体、ポリリジン、ポリエチレンイミン、キサンタン、カラゲナン、第四級アンモニウムポリマー、硫酸コンドロイチン、澱粉、修飾セルロースポリマー、デキストラン、ヒアルロナンまたはそれらの組み合わせを挙げることができる。澱粉は、アミラーゼ、アミロペクチンおよびアミロペクチンとアミラーゼの組み合わせであり得る。
【0024】
湿潤可能なポリマーとしては、不織マット類、織マット類、成形ポリマーメッシュおよび低密度スポンジ類を挙げることができる。湿潤可能なポリマーとしては、限定はしないが、キチン、アルギネート、中和キトサン、再アセチル化キトサン、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(e−カプロラクトン)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(β−ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリホスファゼン、ポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセンポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルポリマー、ポリエステル、ポリアミドおよびそれらの組み合わせを挙げることができる。親水性ポリマーはキトサンであることが好ましい。
【0025】
キトサンは、少なくとも約100kDaの重量平均分子量を有することが好ましい。キトサンは、少なくとも約150kDaの重量平均分子量を有することがより好ましい。キトサンは、少なくとも約300kDaの重量平均分子量を有することが最も好ましい。キトサンは、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃で約100センチポアズから約2000センチポアズの粘度を有することが好ましい。キトサンは、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃で約125センチポアズから約1000センチポアズの粘度を有することがより好ましい。キトサンは、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃で約150センチボアズから約500センチボアズの粘度を有することが最も好ましい。
【0026】
該スポンジは、親水性ポリマーを含浸させた糸を含み得る。該糸は親水性ポリマーを含浸させる。該親水性ポリマーはキトサンであることが好ましい。また、該親水性ポリマーとして、限定はしないが、アルギネート、親水性ポリアミン、キトサン誘導体、ポリリジン、ポリエチレンイミン、キサンタン、カラゲナン、第四級アンモニウムポリマー、硫酸コンドロイチン、澱粉、修飾セルロースポリマー、デキストラン、ヒアルロナンまたはそれらの組み合わせを挙げることもできる。
【0027】
該湿潤可能なメッシュは、不織メッシュであり得る。該スポンジは、約15ミクロンから約300ミクロンの孔径の細孔を含有することが好ましい。該スポンジは、約30ミクロンから約250ミクロンの孔径の細孔を含有することがより好ましい。該スポンジは、約100ミクロンから約225ミクロンの孔径の細孔を含有することがより好ましい。該スポンジは、約125ミクロンから約200ミクロンの孔径の細孔を含有することがより好ましい。該スポンジは、約150ミクロンから約175ミクロンの孔径の細孔を含有することが最も好ましい。該スポンジは、スポンジ基材表面当たり、1cm2当たり約100cm2から1cm2当たり約1000cm2の利用可能な血液接触表面積を有することが好ましい。該圧縮複合スポンジは、スポンジ基材表面当たり、1cm2当たり約200cm2から1cm2当たり約800cm2の利用可能な血液接触表面積を有することがより好ましい。該スポンジは、スポンジ基材表面当たり、1cm2当たり約300cm2から1cm2当たり約500cm2の利用可能な血液接触表面積を有することが最も好ましい。創傷表面積当たりの利用可能なキトサン生体材料の平均質量は、約0.02g/cm2から約1.0g/cm2であることが好ましい。創傷表面積当たりの利用可能なキトサン生体材料の平均質量は、約0.04g/cm2から約0.5g/cm2であることがより好ましい。創傷表面積当たりの利用可能なキトサン生体材料の平均質量は、約0.06g/cm2から約0.1g/cm2であることが最も好ましい。
【0028】
該圧縮複合スポンジは、裏地支持層をさらに含み得る。該裏地支持層は、ポリマー材料の層であり得る。該ポリマー材料は、合成非生分解性材料であっても天然生分解性ポリマーであってもよい。合成生分解性材料としては、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(e−カプロラクトン)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(β−ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリホスファゼン、ポリエチレンのコポリマー類、ポリプロピレンのコポリマー類、前記ポリマー類の合成に用いられるモノマー類のコポリマー類またはそれらの組み合わせを挙げることができる。天然ポリマー類は、キチン、アルギン、澱粉、デキストラン、コラーゲン、アルブメンおよびそれらの組み合わせを挙げることができる。合成ポリマー類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセンポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルポリマー、ポリエステル、ポリアミドおよびそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0029】
該圧縮複合スポンジは、創傷部位に対して、約40kPaから約500kPaの接着度を有することが好ましい。該圧縮複合スポンジは、創傷部位に対して、約60kPaから約250kPaの接着度を有することがより好ましい。該圧縮複合スポンジは、創傷部位に対して、約100kPaから約200kPaの接着度を有することが最も好ましい。
【0030】
該圧縮複合スポンジは、創傷被覆材−血液界面において、前記創傷からの血流と組み合わせて接着材料を形成することができる。該接着材料はキトサン接着材料であることが好ましい。該キトサン材料は、創傷が密封されている場合、約6.3以下のpHを有することが好ましい。該キトサン材料は、創傷が密封されている場合、好ましくは、約4.5以下のpHを有することがより好ましい。該キトサン材料は、創傷が密封されている場合、約4.0以下のpHを有することが最も好ましい。
【0031】
該接着材料は、酢酸、ギ酸、乳酸、アスコルビン酸、塩酸およびクエン酸よりなる群から選択される酸を含み得る。該圧縮複合スポンジは、約3.0mm以上で約8mm以下の厚さを有することが好ましい。該圧縮複合スポンジは、約3.5mm以上で約7mm以下の厚さを有することがより好ましい。該圧縮複合スポンジは、約4.0mm以上で約6mm以下の厚さを有することが最も好ましい。該圧縮複合スポンジは、約0.1Mpaから約10Mpaの極限引張応力を有することが好ましい。該圧縮複合スポンジは、約0.15Mpaから約0.8Mpaの極限引張応力を有することがより好ましい。該圧縮複合スポンジは、約0.25Mpaから約0.5Mpaの極限引張応力を有することが最も好ましい。
【0032】
該圧縮複合スポンジは、約5%の極限伸び率を有することが好ましい。該圧縮複合スポンジは、約10%の極限伸び率を有することがより好ましい。該圧縮複合スポンジは、約15%の極限伸び率を有することが最も好ましい。
【0033】
他の実施形態において、(a)低密度スポンジの凍結/凍結乾燥調製;および(b)1分当たり、約10mmの好ましい速度、および80℃の好ましい制御温度において、該低密度スポンジを圧縮し、それによって約0.1g/cm3から約0.2g/cm3の密度を有する圧縮スポンジを得ることを包含する出血抑制用圧縮スポンジを調製するプロセスが提供される。
【0034】
他の実施形態において、(a) 低密度スポンジの凍結/凍結乾燥調製以外の方法による低密度スポンジの調製;および(b)引き続いて、1分当たり、約10mmの好ましい速度、および約80℃の好ましい制御温度において、該低密度スポンジを圧縮し、それによって約0.1g/cm3から約0.2g/cm3の密度を有する圧縮スポンジを得ることを包含する出血抑制用圧縮スポンジを調製するプロセスが提供される。該低密度スポンジは、約0.01g/cm3から約0.035g/cm3の密度を有することが好ましい。該圧縮スポンジは、約0.1g/cm3から約0.15g/cm3の密度を有することが好ましい。
【0035】
他の実施形態において、a)キトサン生体材料溶液を加熱することによってキトサン生体材料を脱気し、それに減圧を適用すること;b)キトサン生体材料溶液を凍結させること;c)キトサン生体材料中の水分が固相から気相内へ通るように、凍結キトサン生体材料の構造的完全性を損傷することなく、凍結キトサン生体材料の内部から水分を除去すること;d)1分当たり、約10mmの好ましい速度でキトサン生体材料を圧縮し、それによって、約0.1g/cm3から約0.2g/cm3の密度を有する圧縮スポンジを得ること;およびe)80℃で30分間、圧縮キトサンスポンジを焼成することを包含する出血抑制用圧縮スポンジを調製するプロセス。ステップ(b)のキトサン生体材料の凍結時、温度は、予め決められた時間をかけて徐々に低下させることが好ましい。
【0036】
ステップ(b)の温度は、約−25℃以下の最終凍結温度であることが好ましい。ステップ(b)の処理は、約−35℃以下の最終凍結温度を含むことがより好ましい。ステップ(b)の温度は、約−45℃以下の最終凍結温度であることが最も好ましい。水分除去は、凍結したキトサン生体材料の凍結乾燥によって実施できる。この処理は、凍結前に、脱気キトサン溶液にアルゴン、窒素およびヘリウムを添加するステップをさらに含むことができる。
【0037】
該圧縮スポンジは滅菌できる。該圧縮スポンジはγ線照射によって滅菌することが好ましい。
【0038】
他の実施形態において、圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジを投与することを包含する、被験体における重篤な出血を防止するプロセスが提供される。該被験体は哺乳動物であることが好ましい。該哺乳動物はヒトであることがより好ましい。該被験体は、もし、出血が抑制されないままであれば、20分から30分以内に、全血液容量の約30〜40%の損失が生じるような重篤な出血を被っていることが好ましい。該圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジは、出血外傷部上に直接、約60kPaから80kPaの圧力で適用され、そのまま3分から5分保持してから、放し、覆って巻き付けることが好ましい。
【0039】
他の実施形態において、重篤な出血を処置するための、圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジ、覆い用ガーゼロールおよび創傷巻き付け用Ace包帯を備える包帯キットが提供される。
【0040】
他の実施形態において、マクロテクスチャー加工面に該スポンジの組織接触面を押し付けることを包含する、圧縮スポンジまたは複合圧縮スポンジの機械的接合およびかみ合わせのプロセスが提供される。マクロテクスチャー加工面としては、化学的エッチングによって調製された面、イオンビーム表面削摩によって調製された面、機械的切断によって調製された面およびレーザー削摩によって調製された面を挙げることができる。
【0041】
他の実施形態において、マクロテクスチャー加工面に該スポンジの組織接触面を押し付けることを包含する、圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジの機械的牽引力を改善するプロセスが提供される。マクロテクスチャー加工面は、化学的エッチングによって調製された面、および粒子吹きつけ法によって調製された面よりなる群から選択されることが好ましい。
【0042】
他の実施形態において、スポンジ表面をポリマーフィルム、ポリマープレート、高所プラスチックプレートまたは水分不浸透性通気性膜フィルムで覆うことを包含する、複合スポンジまたは圧縮複合スポンジの表面上に粗い外被が形成されることを制限するかまたは阻止するプロセスが提供される。
【0043】
他の実施形態において、約0.05g/cm3未満の開始密度で、スポンジが約0.08g/cm3未満の密度に達するまで、該スポンジを圧縮することによって該スポンジが形成される低密度スポンジ。該スポンジは、凍結または凍結乾燥以外の方法によって形成することができる。該スポンジは、転相法、予め形成されたマトリクスに対する活性成分の共有結合によって作成されたスポンジ、および発泡法よりなる群から選択される方法を用いて形成されることが好ましい。
【0044】
他の実施形態において、該圧縮スポンジ および圧縮複合スポンジは、少なくとも1つのさらなる親水性ポリマーをさらに含み得る。さらなる親水性ポリマーとしては、限定はしないが、アルギネート、キトサン、親水性ポリアミン、キトサン誘導体、ポリリジン、ポリエチレンイミン、キサンタン、カラゲナン、第四級アンモニウムポリマー、硫酸コンドロイチン、澱粉、修飾セルロースポリマー、デキストラン、ヒアルロナンまたはそれらの組み合わせを挙げることができる。澱粉としては、限定はしないが、アミラーゼ、アミロペクチンおよびアミロペクチンとアミラーゼの組み合わせを挙げることができる。該親水性ポリマーは、キトサンであることが好ましい。
【0045】
他の実施形態では、圧縮スポンジが約0.6g/cm3から0.15g/cm3の圧縮スポンジ密度を有し、疎水性ポリマーがポリアクリル酸であり得る親水性ポリマーを含む出血抑制用圧縮スポンジが提供される。該圧縮スポンジは、活性成分をさらに含み得ることが好ましい。該活性成分としては、限定はしないが、カルシウム、トロンビン、第VIIa因子、第XIII因子、トロンボキサンA2、プロスタグランジン−2a、上皮増殖因子、血小板由来増殖因子、フォン・ウィルブランド因子、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF−α、形質転換増殖因子(TGF)、TGF−α、TGF−β、インスリン様増殖因子、線維芽細胞増殖因子、ケラチノサイト増殖因子、神経成長因子、ペニシリン、アンピシリン、メチシリン、アモキシシリン、クラバモックス、クラブラン酸、アモキシシリン、アズトレオナム、イミペネム、ストレプトマイシン、カナマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、クリンダマイシン、エリスロマイシン、ポリミキシン、バシトラシン、アムホテリシン、ナイスタチン、リファンピシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、クロラムフェニコールおよびそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0046】
他の実施形態において、疎水性ポリマーがポリアクリル酸である、親水性ポリマースポンジおよび該スポンジの内部および/または該スポンジ表面に1つまたは複数の湿潤可能なポリマーマトリクスを含む出血抑制用圧縮複合スポンジが提供される。該湿潤可能なポリマーマトリクスとしては、不織マット類、織マット類、成形ポリマーメッシュおよび低密度スポンジ類を挙げることができる。該湿潤可能なポリマーマトリクスとしては、キチン、アルギネート、中和キトサン、再アセチル化キトサン、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(e−カプロラクトン)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(β−ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリホスファゼン、ポリエチレン、ポリプロピレン,メタロセンポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルポリマー、ポリエステル、ポリアミドまたはそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0047】
該スポンジは、親水性ポリマーに含浸させた糸をさらに含み得る。該糸は、疎水性ポリマーがポリアクリル酸である親水性ポリマーに含浸させることが好ましい。該湿潤可能なポリマーマトリクスは不織メッシュであることが好ましい。
【0048】
該スポンジは、約15ミクロンから約300ミクロンの孔径を有する細孔を含有することが好ましい。該スポンジは、約30ミクロンから約250ミクロンの孔径を有する細孔を含有することがより好ましい。該スポンジは、約100ミクロンから約225ミクロンの孔径を有する細孔を含有することがより好ましい。該スポンジは、約125ミクロンから約200ミクロンの孔径を有する細孔を含有することがより好ましい。該スポンジは、約150ミクロンから約175ミクロンの孔径を有する細孔を含有することが最も好ましい。該スポンジは、スポンジ基材表面当たり、1cm2当たり、約100cm2から1000cm2の利用可能な血液接触表面積を有することが好ましい。該スポンジは、スポンジ基材表面当たり、1cm2当たり、約200cm2から800cm2の利用可能な血液接触表面積を有することがより好ましい。該スポンジは、スポンジ基材表面当たり、1cm2当たり、約300cm2から500cm2の利用可能な血液接触表面積を有することが最も好ましい。
【0049】
該圧縮複合スポンジは、裏地支持層をさらに含み得る。該裏地支持層は、ポリマー材料の層であり得ることが好ましい。該ポリマー材料は、合成非生分解性材料かまたは天然生分解性ポリマーであることが好ましい。合成生分解性材料としては、限定はしないが、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(e−カプロラクトン)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(β−ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリホスファゼン、ポリエチレンのコポリマー類、ポリプロピレンのコポリマー類、前記ポリマー類の合成に用いられるモノマー類のコポリマー類またはそれらの組み合わせを挙げることができる。天然ポリマーとしては、限定はしないが、キチン、アルギン、澱粉、デキストラン、コラーゲン、卵白、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。合成ポリマーとしては、限定はしないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセンポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルポリマー、ポリエステル、ポリアミドまたはそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0050】
該圧縮複合スポンジは、創傷部位に対して、約40kPaから500kPaの接着度を有することが好ましい。該圧縮複合スポンジは、創傷部位に対して、約60kPaから250kPaの接着度を有することがより好ましい。該圧縮複合スポンジは、創傷部位に対して、約100kPaから200kPaの接着度を有することが最も好ましい。
【0051】
該圧縮複合スポンジは、創傷被覆材−血液界面において、前記創傷からの血流と組み合わせて接着材料を形成する能力があり得る。該接着材料は、創傷が密封されている場合、好ましくは、約5.5以上のpHを有することが好ましい。該接着材料は、創傷が密封されている場合、好ましくは、約6.5以下のpHを有することがより好ましい。該接着材料は、創傷が密封されている場合、好ましくは、約7.5以下のpHを有することが最も好ましい。該接着材料は、酢酸、ギ酸、乳酸、アスコルビン酸、塩酸、およびクエン酸よりなる群から選択される酸を含むことが好ましい。該圧縮複合スポンジは、約3.0mm以上で約8mm以下の厚さを有することが好ましい。該圧縮複合スポンジは、約3.5mm以上で約7mm以下の厚さを有することがより好ましい。該圧縮複合スポンジは、約4.0mm以上で約6mm以下の厚さを有することが最も好ましい。該圧縮複合スポンジは、約0.1MPaから約10MPaの極限引張応力を有することが好ましい。該圧縮複合スポンジは、約0.15MPaから約0.8MPaの極限引張応力を有することがより好ましい。該圧縮複合スポンジは、約0.25MPaから約0.5MPaの極限引張応力を有することが最も好ましい。
【0052】
該圧縮複合スポンジは、約5%の極限伸び率を有することが好ましい。該圧縮複合スポンジは、約10%の極限伸び率を有することがより好ましい。該圧縮複合スポンジは、約15%の極限伸び率を有することが最も好ましい。
【0053】
他の実施形態において、(a)低密度スポンジの凍結/凍結乾燥調製ステップ;および(b)該低密度スポンジを、1分当たり、10mmの好ましい速度および80℃の好ましい制御温度で圧縮することによって、約0.1g/cm3から約0.2g/cm3の密度を有する圧縮スポンジを得るステップ、を包含する、請求項1の出血抑制用圧縮スポンジを調製するプロセスが提供される。
【0054】
他の実施形態において、(a)低密度スポンジの凍結/凍結乾燥調製以外の方法により低密度スポンジを調製するステップ;および(b)引き続き、該低密度スポンジを、1分当たり、10mmの速度および80℃の好ましい制御温度で圧縮することによって、約0.1g/cm3から約0.2g/cm3の密度を有する圧縮スポンジを得るステップ、を包含する、出血抑制用圧縮スポンジを調製するプロセスが提供される。該低密度スポンジは、約0.01g/cm3から約0.035g/cm3の密度を有することが好ましい。該圧縮スポンジは、約0.1g/cm3から約0.15g/cm3の密度を有することが好ましい。
【0055】
他の実施形態において、a)生体材料溶液を加熱し、それに減圧を適用することによって生体材料溶液を脱気こと;b)該生体材料溶液を凍結させること;c)該生体材料中の水分が固相から気相内へ通るように、凍結生体材料の構造的完全性を損傷することなく、凍結生体材料の内部から水分を除去すること;d)1分当たり、約10mmの好ましい速度で該生体材料を圧縮し、それによって、約0.1g/cm3から約0.2g/cm3の密度を有する圧縮スポンジを得ること;およびe)80℃で30分間、圧縮スポンジを焼成することを包含する出血抑制用圧縮複合スポンジを調製するプロセスが提供される。ステップ(b)の該生体材料の凍結時、温度は、予め決められた時間をかけて徐々に低下させることが好ましい。ステップ(b)の温度は、約−5℃以下の最終凍結温度であることが好ましい。ステップ(b)の温度は、約−35℃以下の最終凍結温度であることがより好ましい。ステップ(b)の温度は、約−25℃以下の最終凍結温度であることが最も好ましい。水分除去は、凍結した該生体材料の凍結乾燥によって実施することが好ましい。この処理は、凍結前に、脱気キトサン溶液にアルゴン、窒素およびヘリウムを添加するステップをさらに含むことができる。該スポンジは、滅菌できる圧縮スポンジであり得る。該圧縮スポンジはγ線照射によって滅菌することが好ましい。
【0056】
他の実施形態において、圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジを投与することを包含する、被験体における重篤な出血を防止するプロセスが提供される。該被験体は哺乳動物であることが好ましい。該哺乳動物はヒトであることがより好ましい。該被験体は、もし、出血が抑制されないままであれば、20分から30分以内に、全血液容量の約30〜40%の損失が生じるような重篤な出血を被っていることが好ましい。該圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジは、出血外傷部上に直接、約60kPaから80kPaの圧力で適用され、剥離、填塞および巻き付け前に3分から5分、正しい場所に保持されることが好ましい。
【0057】
他の実施形態において、圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジを投与することを包含する、被験体における重篤な出血を防止するプロセスが提供される。該被験体は哺乳動物であることが好ましい。該哺乳動物はヒトであることがより好ましい。該被験体は、もし、出血が抑制されないままであれば、20分から30分以内に、全血液容量の約30〜40%の損失が生じるような重篤な出血を被っていることが好ましい。該圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジは、出血外傷部上に直接、約60kPaから80kPaの圧力で適用され、そのまま3分から5分保持してから、放し、覆って巻きつけることが好ましい。
【0058】
他の実施形態において、重篤な出血を処置するための、圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジ、覆い用ガーゼロールおよび創傷巻き付け用Ace包帯を備える包帯キットが提供される。
【0059】
他の実施形態において、マクロテクスチャー加工面に該スポンジの組織接触面を押し付けることを包含する、圧縮スポンジまたは複合圧縮スポンジの機械的接合およびかみ合わせのプロセスが提供される。マクロテクスチャー加工面としては、化学的エッチングによって調製された面、イオンビーム表面削摩によって調製された面、機械的切断によって調製された面およびレーザー削摩によって調製された面を挙げることができる。
【0060】
他の実施形態において、マクロテクスチャー加工面に該スポンジの組織接触面を押し付けることを包含する、圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジの機械的牽引力を改善するプロセスが提供される。マクロテクスチャー加工面は、化学的エッチングによって調製された面、および粒子吹きつけ法によって調製された面よりなる群から選択されることが好ましい。
【0061】
他の実施形態において、スポンジ表面をポリマーフィルム、ポリマープレート、高所プラスチックプレートまたは水分不浸透性通気性膜フィルムで覆うことを包含する、複合スポンジまたは圧縮複合スポンジの表面上に粗い外被が形成されることを制限するかまたは阻止するプロセスが提供される。
【0062】
他の実施形態において、約0.05g/cm3未満の密度で、該スポンジが約0.08g/cm3未満の密度に達するまで、該スポンジを圧縮することによって該スポンジが形成され、および該スポンジが、凍結または凍結乾燥以外の方法によって形成される低密度スポンジが提供される。該スポンジは、転相法、予め形成されたマトリクスに対する活性成分の共有結合によって作成されたスポンジ、および発泡法よりなる群から選択される方法を用いて形成されることが好ましい。
【0063】
他の実施形態において、ポリアクリル酸と組み合わせて親水性ポリマーをさらに含む圧縮スポンジおよび圧縮複合スポンジが提供される。該親水性ポリマーとしては、限定はしないが、アルギネート、キトサン、親水性ポリアミン、キトサン誘導体、ポリリジン、ポリエチレンイミン、キサンタン、カラゲナン、第四級アンモニウムポリマー、硫酸コンドロイチン、澱粉、修飾セルロースポリマー、デキストラン、ヒアルロナンまたはそれらの組み合わせを挙げることができる。澱粉としては、限定はしないが、アミラーゼ、アミロペクチンおよびアミロペクチンとアミラーゼの組み合わせを挙げることができる。該親水性ポリマーは、キトサンであることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
(A. 圧縮スポンジおよび圧縮複合スポンジ)
本発明は、重篤な命にかかわる出血を抑制するための救急処置/第一次処置創傷被覆材に関する。このような出血は、衝撃外傷および重篤な動脈裂傷において致命的であり得る。特に、典型的には全死亡の50%が重篤な出血の即時抑制不能に関連している戦場において、このタイプの被覆材に対する緊急の必要性が存在している。
【0065】
重篤な命にかかわる出血を抑制するための新型創傷被覆材は、以下の性質を有することが好ましい:
i) パッケージからの取り出し後、1ステップで容易に速やかに適用される;
ii) 迅速で強力な血液凝固;
iii) 迅速で強力な組織接着;
iv) 強力な内部凝集性;
v) 迅速で強力な創傷密封;
vi) 強い血流下での耐分解性;
vii) 外傷との良好な適合性;
viii)滑りを止めるため、制御された組織接触面テクスチャーによる組織上への包帯の良好な初期機械的取り付け;および
ix) 有効性を損なうことなく、手荒に扱える能力。
【0066】
この目的で、本発明は、新型出血抑制創傷被覆材、およびこのような創傷被覆材の使用方法および製造方法に関する。本発明で考慮されている重篤な命にかかわる出血の種類は、典型的には、通常のガーゼ創傷被覆材を通常の圧力で被験体の創傷に適用した場合に止血され得ないタイプのものである。あるいは、重篤な命にかかわる出血の性質は、通常のガーゼ創傷被覆材を通常の圧力で創傷に適用した場合に止血されず、もし、他の手段で抑制されなければ、その人が低血圧の状態に陥る結果になると考えられるようなものである。言い換えると、重篤な命にかかわる出血は、一般的に、通常のガーゼ創傷被覆材を通常の圧力で創傷に適用した場合に止血することができず、その人の収縮期血圧が、約90mmHg未満のレベルに低下する結果になると考えられるものである。
【0067】
また、重篤な命にかかわる出血は、70kgのヒト男性から、約20分に、全血液の約40%超の容量が失われると考えられる出血で、その血液容量の損失により、その人の生存可能性が大きく低下すると考えられるような、1分当たり、約90mL超の血液損失という定常的な高血流として記述することもできる。このタイプの出血が5〜10分以内に止められなければ、負傷した人は動脈血圧が60mmHg未満に低下するような低血圧状態に陥り得る。多くの場合、重篤な出血は、衝撃弾丸傷または鋭い穿孔傷または鈍端外傷によって生じる。他の場合、重篤な出血は、凝血異常または内部外傷または手術外傷、自動車外傷、農業事故などによって生じる。
【0068】
本発明の創傷被覆材は、少なくとも約90mL/分の血流速度を有する実質的な動脈創傷または実質的な静脈創傷によって生じる前記の重篤な出血を止めることができ、および約5分以下の時間、創傷被覆材への直接的な圧力を適用することによって創傷部位に接着することができる。また、該創傷被覆材は、速やかに作用して創傷を密封し、相当の創傷部位からの重篤な出血の凝固および凝集を助け、創傷被覆材への直接的圧力の一時的適用によって重篤な出血を止める。該創傷被覆材は、高血流において抗分解性を有し、良好な内部凝集性を有する。それは、外傷に適合する上で十分な柔軟性および手荒な取り扱いに抗する靭性を有する。
【0069】
重篤な出血を抑制するための該対象被覆材は、生体材料から形成される。該生体材料は非哺乳動物材料を含むことが好ましい。該非哺乳動物材料は、より一般的にはキトサンと称されるポリ〔β−(1→4)−2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコピラノース〕である。
【0070】
該創傷被覆材は、中間構造体の使用または形体生成ステップにより、スポンジ様または織形態へと形成される。該生体材料は、相互接続開放多孔性構造、および/または配向開放ラメラ構造、および/または開放菅状構造、および/または蜂巣状構造、および/または糸状構造を含む。該創傷被覆材は約15ミクロンから約300ミクロン;約30ミクロンから約250ミクロン;約100ミクロンから約225ミクロン;約125ミクロンから約200ミクロン;最も好ましくは、約150ミクロンから約175ミクロンの細孔を有する相互接続自由空間領域または細孔を有する。該創傷被覆材は、前記創傷被覆材の基材表面当たり、好ましくは1cm2当たり、少なくとも約100cm2、より好ましくは1cm2当たり、少なくとも約200cm2、最も好ましくは1cm2当たり、少なくとも約300cm2の平均血液接触表面積を有する。創傷表面積当たりのキトサン生体材料の平均質量は、約0.02g/cm2から約1.0g/cm2であることが好ましく;創傷表面積当たりのキトサン生体材料の平均質量は、約0.04g/cm2から約0.5g/cm2であることがより好ましく;創傷表面積当たりのキトサン生体材料の平均質量は、約0.06g/cm2から約0.1g/cm2であることが最も好ましい。
【0071】
「基材表面当たり」とは、例えば、一般的に血液と接触する1cm×1cmの基材面を考えた場合、開放スポンジ構造のため、血液は、少なくとも100cm2のキトサン表面積に接触することが予測されることを意味する。
【0072】
スポンジ類は、限定はしないが、転相法、凍結、凍結乾燥、予め形成されたマトリクスに対する活性成分の共有結合、および発泡法などの方法により調製できる。
【0073】
さらに、該創傷被覆材は、約37℃の温度で前記創傷部位に接着している場合、前記創傷被覆材の基材表面積につき、好ましくは1cm2当たり、1分当たり、約0.008グラム以下、より好ましくは1cm2当たり、1分当たり、約0.005グラム以下、最も好ましくは1cm2当たり、1分当たり、約0.002グラム以下の平均分解速度を有する。
【0074】
対象の創傷被覆材は、好ましくは少なくとも約0.05g/cm3,より好ましくは少なくとも約0.07g/cm3,最も好ましくは少なくとも約0.11g/cm3の密度を有する。それは、好ましくは少なくとも約0.05g/cm3までの、より好ましくは少なくとも約0.07g/cm3までの,最も好ましくは少なくとも約0.095g/cm3までの,かつ好ましくは約0.2g/cm3以下の圧縮負荷を有し得る。
【0075】
本発明の創傷被覆材は、少なくとも約50kDa、好ましくは少なくとも約75kDa、より好ましくは少なくとも約100kDa、最も好ましくは少なくとも約150kDaの数平均分子量(pH5.5、0.01M酢酸ナトリウム中、ポリエチレングリコール標準に対し、ゲルろ過クロマトグラフィーによって決定された分子量)を有するキトサンを典型的に含有する。該キトサン接着材料は、創傷が密封されている場合、約6.3以下のpHを有することが好ましい。該キトサン接着材料は、創傷が密封されている場合、約4.5以下のpHを有することがより好ましい。該キトサン接着材料は、創傷が密封されている場合、約4.0以下のpHを有することが最も好ましい。
【0076】
親水性ポリマーがポリアクリル酸である被覆材に関しては、該接着材料は、創傷が密封されている場合、約5.5以上のpHを有することが好ましい。該接着材料は、創傷が密封されている場合、約6.5以上のpHを有することがより好ましい。該接着材料は、創傷が密封されている場合、約7.5以上のpHを有することが最も好ましい。
【0077】
該キトサンはまた、好ましくは少なくとも約100kDa、より好ましくは少なくとも約150kDa、最も好ましくは少なくとも約300kDaの重量平均分子量(pH5.5、0.01M酢酸ナトリウム中、ポリエチレングリコール標準に対し、ゲルろ過クロマトグラフィーによって決定された分子量)を有する。該創傷被覆材中のキトサンはまた、単スピンドルの約30rpmで、1%酢酸(AA)溶液中、25℃において、好ましくは約100センチポアズから約2000センチポアズ、より好ましくは約125センチポアズから約1000センチポアズ、最も好ましくは約150センチポアズから約500センチポアズのブルックフィールドLV DV−II+粘度を有する。該スピンドルは、スピンドルLV1、LV2、LV3、またはLV4であることが好ましい。上記の分子量および粘度は、実質的に純粋なキトサン創傷被覆材およびキトサンの吸着表層によって形成された創傷被覆材に関するものである。キトサンの共有結合表層を含有する創傷被覆材の場合は、より低粘度および低分子量のキトサンが好ましいと考えられる。
【0078】
本発明の創傷被覆材は、組織接着および組織密封を促進するために、カチオン性キトサン塩を含み得る。好ましくはカチオン性キトサン塩としては、限定はしないが、ギ酸キトサン、酢酸キトサン、乳酸キトサン、キトサン塩化物、アスコルビン酸キトサンおよびクエン酸キトサンを挙げることができる。キトサンあ、典型的には、少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約85%の脱アセチル化度を有する。
【0079】
中等密度スポンジ(0.1g/cm3>密度>0.5g/cm3固体体積)またはすでに好ましい密度における中等密度スポンジを圧縮するよりも、低密度スポンジ(密度<0.03g/cm3固体)を0.15g/cm3に近接した最適密度へと圧縮するほうが好ましい。これは、低密度スポンジにおけるスポンジ形成法により、中等密度スポンジおよび高密度スポンジにおけるスポンジ細孔間の壁厚よりもかなり薄い壁厚が生じるからである。また、これらの高密度スポンジは、スポンジ剛度を増加させ、亀裂に対する耐性を低下させる、より相互接続的な構造を有することが多い。低密度スポンジにおける複数の薄壁により、より高密度に圧縮された場合、より相互接続的な構造、ならびにより厚い、したがってより硬い気泡壁を有して製造される中等密度スポンジおよび高密度スポンジよりも、より柔軟で強靭なスポンジが考慮されている。
【0080】
スポンジ高密度化は、一定の温度において、制御された圧縮速度の単一方向性または二方向性適用によって達成できる。好ましいスポンジ高密度化は、80℃において、約2重量%と5重量%との間のスポンジ水分含量で、単一方向性圧縮によって達成される。単一軸圧縮の一例としては、10.0cm(x方向)、×10.0cm(y方向)×1.70cm(z方向)が、Geo Knight394−TSシャトルプレスにおいて、40psiで、平らな、水平定方位(xy平面)、63.5cm×50.8cmのアルミニウム圧盤間のz方向に10.0mm/分で圧縮された。圧縮速度は、設定圧力およびParker SPF200Bニードルバルブの使用によって制御された。
【0081】
0.55cmの最終スポンジ厚を、50cm×2cm×0.55cmの少なくとも2つのスペーサーバーを用いて制御した。スポンジの初期密度は0.033g/cm3であった。加圧後のスポンジ密度は0.10g/cm3であった。0.15cm高、0.35cm高および0.45cm高などの他のスペーサー制御を、それぞれ、0.375g/cm3、0.16g/cm3および0.125g/cm3のスポンジを得るために用いている。5cm×5cm×1.7cmmのスポンジを2.5cm×2.5cm×0.55cmのスポンジへと縮小するために、二方向性圧縮(zおよびxまたはy方向における圧盤圧縮)を実施できる。スポンジ表面を密閉プラスチックフィルムで包み、減圧の適用によって、スポンジとプラスチックフィルムジャッケット内部から制御レベルまで空気を除去する減圧バギング法を用いて、複雑な形状を圧縮できる。スポンジリボンおよび他のスポンジ形材を圧縮するために、加熱ローラープレスを使用することもできる。ローラープレスを用いてそれらに加圧する場合は、このようなスポンジリボンおよび形材を、内部複合メッシュによって補強することが好ましい。連続複合スポンジフィラメントの圧縮の好ましい実施形態は、完全圧縮で、2.5mmに近接した直径から0.67mm直径までの入口制御テーパーで、加熱Teflon(商標)コーティングした棒押出ダイ(80℃)によりフィラメントを引くものである。
【0082】
延性圧縮を最適化する一方、スポンジの脆性圧壊を最少化するために、制御された水分、加熱および圧縮速度の条件が選択される。スポンジの脆性圧壊は、亀裂によるスポンジの機械的完全性の損失をもたらす。微細な相互接続域への最適なスポンジ圧縮は、均一な相互接続球状(例えば、十二面体)細孔を有するスポンジにおいて最も良好に達成される。非圧縮スポンジの孔径は、30ミクロンから120ミクロンの間、ポリマー壁厚は1ミクロンから20ミクロンが最適である。ラメラ構造または蜂巣様構造を有するスポンジの場合、その構造が単一軸圧縮の垂直方向から30度から40度近く、均一に方向づけされていることが最良である。熱勾配の方向に垂直なシャーストレスを適用することによって凍結時にこのような均一構造を得ることが可能である。凍結方向に均一負荷、および熱損失に垂直な方向に減少負荷を適用することによって、このようなシャーが達成される。
【0083】
垂直に近い構造は、脆性破壊およびランダムなチャネル形成の無い圧縮をしにくい。実際、開放成形における凍結時に、上表層氷核に由来する層垂直構造は、容易に圧縮されないスポンジ内垂直外殻層となり、スポンジに硬さが生じ、または水溶液に接触した際、急速に分解する。また、垂直構造は、大量において弾性圧縮され、表面に細孔相互接続に損失があるため望ましくない。
【0084】
また、ラメラタイプまたは蜂巣様スポンジでは、壁構造がちりめん皺表面または繊毛表面を有することが望ましい。ラメラまたは蜂巣壁上のこのような表面は、氷および親水性ポリマーの凍結制御相分離時に特定の条件下で達成される。通常、ちりめん皺または繊毛は、ラメラ表面または蜂巣表面に垂直であり、薄壁、「歯」、「蜂巣板」として、または3ミクロンから10ミクロンの円柱、およびちりめん皺の場合は、3〜10ミクロンの長さ、または繊毛の場合は、2〜3ミクロンの直径で、表面から突出している。それらはラメラまたは蜂巣壁上に分布しており、迷路様の規則性を有することが多く、1つの壁は他の壁と5〜10ミクロン離れて、常に離れて隣接している。ちりめん皺の程度は、ポリマーの分子量、その分子量分布、相分離前または相分離時の細長いロッド様の溶液特性の程度および冷却法によって制御されると思われる。高密度化の際、これらのちりめん皺は、ラメラが互いに圧縮される際、所望の制御されたラメラ間隔を、少なくとも約5ミクロンから10ミクロンへと扶壁することによって細孔の接続を維持するように作用する。
【0085】
表面の繊毛およびちりめん皺はまた、機械的固定および表面合せを助けることによって、接着において重要な役割を演じている。したがって、高密度化時、ちりめん皺/繊毛構造の表面テクスチャーは最良に保存される。これは、ポジのスポンジ表面をネガの基材表面内へ圧縮することによって達成できる。この基材表面のテクスチャーはちりめん皺/繊毛表面の解放ネガであることが理想的である。したがって、最少の負荷適用で、第1の表面は第2の表面内にちょうど入りこみ、2つの表面間に最大表面面積の接触が提供される。また、第2の表面から第1の表面を取り外す際にも、必然的に、有意な表面損傷または損失なしに、表面は良好に取り外されることになる。加圧時のこの表面微小入れ込みと同様に、圧縮ステップ時にスポンジが押し付けられる指定鋳型表面の適用によって、スポンジ表面におけるマクロパターンの作成も可能である。このようなパターンとしては、組織外傷への第一次止血包帯を補助すると考えられる滑り止めパターンがあげられる。
【0086】
角形態、円柱形態、球形態、複雑形態および複合形態を、出血を抑制するための最適な密度に圧縮できる。スポンジ類は複合形態によって調製できる。典型的な角形複合形態は、スポンジ内に不溶性であるが湿潤可能な不織または織メッシュを含み得る。これは典型的には、前スポンジ溶液内に存在するメッシュにより、スポンジ形成相分離処理を行うことによって実施されると考えられる。不織メッシュ材料はスポンジ圧縮処理により適合性があり、高密度化時にスポンジの引き裂きがより生じにくいため好ましい。他の実施形態では、0.25%から1%のキトサン溶液からキトサンスポンジへ、凍結/凍結乾燥することにより低密度キトサンスポンジを形成した。次いでこのスポンジを、室温で99%無水酢酸に少なくとも24時間浸漬することによってキチンスポンジ形態へと再アセチル化する。次に、この再アセチル化スポンジをキトサン成形溶液(1%から2%)の上または中に適用でき、該キトサン溶液を凍結/凍結乾燥によってスポンジへと形成する。次いで、キチンスポンジによって補強された複合キトサンスポンジを、引き続き最適密度へと加圧する。複合形態の他の実施形態では、キトサンスポンジを、最も好ましくは凍結/凍結乾燥法によって形成した。次いで、このキトサンスポンジを、0.1M NaOH溶液中で洗浄することによって中和してから、水中ですすいで、残っているナトリウム塩および水酸化ナトリウムを除く。次に、中和したキトサンスポンジ(水および血液に不溶性になった)を好適な鋳型内の親水性ポリマー塩溶液(pH≧7)の水溶液上または水溶液内に置く。この鋳型を凍結/凍結ドライヤー内において、中和キトサンスポンジによって補強された親水性スポンジを製造する。引き続き複合スポンジを適切な厚さに加圧する。
【0087】
きわめて好ましい円柱状スポンジ複合形態では、該スポンジが湿った糸または布内に形成される。該スポンジおよび糸の直径は典型的には、1〜2mmと考えられる。圧縮軸に垂直なこの糸の圧縮により、出血を抑制するために、内部出血外傷およびオーバーレイを必要とする外傷に投与し複数の裂傷箇所を処置するための強力な適合性の医療用包帯テープへと織ることのできる、直径0.2mmから0.5mmの柔軟なキトサン含浸糸が生成される。このようなテープは、易出血性のものを含めた種々の重症度の創傷に重ねる上できわめて便利であると考えられる。テープ内の含浸ポリマーは、局所の凝固ならびに組織への堅固な接着を促進する。このタイプのキトサン含浸糸により、血友病およびショック状態の人などの正常な血小板凝固が損なわれている個人における凝固促進が提供される。
【0088】
本発明のスポンジは、機械的手段を用いてマット化され、メッシュ化できる。特に、使用の際に被験体の創傷および組織に接触するスポンジ面を、ミクロテクスチャー化面に対して加圧できる。ミクロテクスチャー化面としては、限定はしないが、機械的切断によって調製された面およびレーザー削摩によって調製された面を挙げることができる。使用の際に被験体の創傷および組織に接触するスポンジ面を、マクロテクスチャー化面に対して加圧することによって、該スポンジの機械的牽引力もまた改善できる。マクロテクスチャー化面としては、限定はしないが、化学的エッチングによって調製された面、および粒子吹きつけ法によって調製された面を挙げることができる。
【0089】
該スポンジは、親水性ポリマーに含浸させた糸を含み得る。該糸は、親水性ポリマーを吸収できる合成または天然の任意の材料であり得る。例えば、外糸は植物ベースの材料であり得る。該糸は多フィィメント化されていることが好ましい。
【0090】
該スポンジ創傷被覆材は、取り扱いおよび機械的特性の改善を提供し助ける、該スポンジ創傷被覆材に付着させた裏地支持層を有し得る。この裏地支持層は、キトサンの上層による、または3M9942アクリレート皮膚接着剤による直接的な接着によって該被覆材に付着または結合できるか、またはフィブリン接着剤もしくはシアノアクリレート接着剤が使用できる。この裏地支持層はまた、実質的に血液に不溶性であることが好ましい。該裏地支持層はまた、実質的に血液に不浸透性であることが好ましい。該裏地支持層はまた、実質的に生分解性であることが好ましい。該裏地支持層は、適用時の該包帯の確かな取り扱い、および一旦包帯が適用されたら、手に付着しないことが考慮された材料であることが好ましい。
【0091】
該裏地支持層を形成する材料は、ポリマー材料の層であることが好ましい。好ましい裏地材料の例としては、合成および天然ポリマーの低弾性率メッシュ類、および/または薄膜類および/または織り物が挙げられる。合成生分解性材料としては、限定はしないが、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(e−カプロラクトン)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(β−ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリホスファゼン、ポリエチレンのコポリマー、ポリプロピレンのコポリマー、および上記ポリマーの合成に用いられるモノマーのコポリマーまたはそれらの組み合わせが挙げられる。天然生分解性ポリマーとしては、限定はしないが、キチン、アルギン、澱粉、デキストラン、コラーゲンおよび卵白が挙げられる。一時的な外部創傷適用のための非生分解性ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセンポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルポリマー、ポリエステル、ポリアミドおよびそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0092】
本発明の創傷被覆材は、創傷部位に対して、好ましくは少なくとも約40kPa,より好ましくは、少なくとも約60kPa,最も好ましくは少なくとも約100kPaの接着度を有する。また、該創傷被覆材は、好ましくは約3.0mm以上、より好ましくは約3.5mm以上、最も好ましくは約4.0mm以上、かつ、好ましくは約8.0mm以下、より好ましくは約7.0m以下、最も好ましくは約6.5mm以下の厚さを有する。本発明の創傷被覆材(2.5cm幅)は、好ましくは1kg以上、より好ましくは少なくとも1.5kg、最も好ましくは少なくとも2.25kgの極限引張破壊負荷を有する。この同じ被覆材は、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも15%の極限伸び率を有する。この被覆材のヤング係数は、好ましくは10MPa未満、より好ましくは3MPa未満、最も好ましくは1MPa未満である。
【0093】
該創傷被覆材は、かなりの量の表面血液を含む創傷部位に創傷被覆材を適用する上で特に有用な補助牽引面を含むことが好ましい。該補助牽引面は、典型的には、使用中、創傷部位から離れた方向に創傷被覆材が滑ることを避けるために、創傷部位を把持する少なくとも1つの外面を含むことができる。該補助牽引面は、トレッドデザインの形態であることが好ましい。
【0094】
対象の創傷被覆材は、創傷被覆材−血液界面において、前記創傷からの血流と組み合わせて接着材料を形成することができる。この場合、創傷が密封されている時、キトサン接着材料は、好ましくは約5.5以下、より好ましくは約4.5以下、最も好ましくは約4以下のpHを有する。キトサン創傷被覆材のpHを調整する目的で用いられる典型的な酸は以下のものである:酢酸、ギ酸、乳酸、アスコルビン酸、塩酸およびクエン酸。上記のレベルにpHを調整するためのキトサンカチオン/アニオン対におけるグルコサミン官能基に対する酸アニオンのモル比は、好ましくは約0.90、より好ましくは約0.75、最も好ましくは約0.60である。
【0095】
該創傷被覆材は、創傷にかみ合って接触するように、および重篤な命にかかわる出血の流れを止めることを促進するために、創傷の形状に適合させることができる。より具体的に言うと、創傷被覆材は創傷の間隙に導入される。該創傷被覆材は、管の形状に適合させることができることが好ましい。次いで、再形状化された創傷被覆材が創傷内に挿入される。
【0096】
本発明はまた、ある人の創傷部位における創傷からの重篤な命にかかわる出血を抑制する方法を考慮している。該方法は、キトサンを含む生体材料から形成された創傷被覆材を提供すること、前記創傷被覆材を創傷部位に接着させ、前記創傷からの重篤な命にかかわる出血の流れを実質的に止めることを包含する。創傷は密封され、前記創傷部位からの出血流出が防止されることが好ましい。また、前記創傷部位内への、および/または前記創傷部位外への出血および他の体液の流れが防止されることが好ましい。本発明の被覆材は、赤血球を凝集させることによって、出血部位に強力な凝血塊を速やかに生じさせるように作用する。それはまた、通常の血小板凝固経路を加速することによって凝固を促進できる。
【0097】
一定の適用において、対象の創傷被覆材の分解速度は、凝集速度に比べて比較的遅かったが、高速での凝集は分解を停止させるため、このバランスは良好な結果をもたらす。このことは、創傷被覆材の内部構造および表面構造の均一性が重要であることを示している。きめの境界または小さい亀裂によって生じたチャンネルなど、創傷被覆材にかなりの欠損が存在する場合、その欠損部に沿ってかなりの血流をその経路に集中させ、きわめて望ましくない出血通過状態を生み出し、それらが形成するより狭い低粘度凝集領域を押し流す可能性がある。また、ウェーハ表面上の圧力下でのかなりの血流は、先行技術の創傷被覆材の創傷接着性に悪影響を及ぼすと考えられるが、本発明の創傷被覆材の創傷接着性に悪影響を及ぼすとは考えられない。
【0098】
本発明の創傷被覆材の重要な好ましい属性は、キトサンを血液と組み合わせる一方、その結果生じる「凝血塊」の機械的保全を達成し、外傷に直に隣接した面に該凝血塊を結合させる手段である。対象の創傷被覆材は、創傷部位における凝血塊形成を加速し、創傷部位における凝血塊形成を補強し、創傷部位からの出血流出を防ぐ。それはまた、創傷部位内への、および/または創傷部位外への血液および他の体液の流れを実質的に防止する。
【0099】
本発明の創傷被覆材は、凝血および創傷部位への接着の二重の能力を保持する一方、極端な環境において、高レベルの弾性も示す。この創傷被覆材の顕著な弾性は、該被覆材の尋常ではない物理的性質によって示される。対象の創傷被覆材は、以前記載された先行技術製品とは違って、創傷の形状に適合する一方、構造的弾性を維持する顕著な能力を有している。この構造的弾性により、該創傷被覆材は、変形後、機械的性質の実質的な損失なしに好ましい形状をとることができる。
【0100】
本発明の出血抑制被覆材は、使用中の該被覆材の滑りを実質的に避けるために、創傷領域を把持する面を含むことが好ましい。典型的には、該被覆材のこの非滑り面は、牽引面を含む。対象の出血抑制被覆材は、牽引面などの効果的な非滑り面を有することから利益を与え得る。対象の出血抑制被覆材は、滑らかなおよび粗い面を有し得る。より粗い面もまた良好な接着性を示すならば、そのより粗い面は、組織または出血面の側であることが好ましい。
【0101】
牽引面は、十分に潤滑な表面(重篤な出血の場合に存在する表面など)上の表面接触(良好な牽引)の安定性増加を提供することによって、急速な動脈出血を抑制する被覆材の能力を改善できる。このような牽引面は、接着動態に悪影響を及ぼすことなく、血液を運ぶことを助ける一方、被覆材適用の危険な時期の間、より制御された安定な組織接触を考慮している。例えば、該包帯の組織側は、トレッドデザインの形態の牽引面を有し得る。このトレッドは、被覆材が創傷への適用を受ける際、創傷から離れる方向に牽引損失を受けることを防ぎ得る。
【0102】
該抑制被覆材の非滑り面は、非接続的または互いに隠されたリッジによって製造できる。このようにして、今度は、リッジ間に形成されたチャンネルが互いに完全にまたは部分的に隠され、したがって、創傷領域内への、または創傷領域外への血流抑制を提供すると考えられる接続の抑制が提供される。被覆材適用領域における血流抑制は、出血抑制被覆材におけるリッジまたは特定のタイプの応答ゲートによって維持できる。出血抑制被覆材を製造するための鋳型の底部上リッジは、非滑り面を可能にするタイプの、例えば対象の被覆材におけるリッジなどの牽引抑制物の形態におけるくぼみを含み得る。
【0103】
このように、牽引面などの少なくとも1つの非滑り面を有する出血抑制被覆材が製造できる。また、このような被覆材を製造する方法も提供し得る。最後に、出血抑制被覆材を製造する鋳型を製造できる。
【0104】
接着性の基材および上面が有利である場合の重篤な出血を処置するため、接着および凝固が両面に必要とされる際に容易に剥がすことができるように支持の裏地をデザインすることが可能である。
【0105】
広範囲の可能なタイプの出血創傷を扱うために、被覆材の多数の出血抑制形状がある。外傷を受けた人が第一の応答者によって処置され得るか、または場合によっては外傷を受けた本人によって処置され得るように、異なった形状のいくつかの包帯を携行することが必要であると考えられる(例えば、戦場の状況下)。本発明の被覆材は、多量の物理的誤用を許容し、依然として出血抑制活性なプラットホームのままであり得る。
【0106】
該被覆材は、限局性の血管出血ならびに小さな局所的創傷の処置に理想的である。それはまた、出血部位が容易に圧縮できない複雑な侵入創傷内に充填するのにも十分に適している。
【0107】
本発明により、一旦出血抑制が達成されたら、四肢創傷を安定化させること、創傷端を接近させることおよび汚染を防ぐ耐久性被覆材を作出すること、および最終的修復のために外傷者を後送することが、一般市民および戦場の出血抑制被覆材に関する主な要件である。該出血抑制被覆材の1つの予想される形状は、周囲および末端にしっかりと付着でき、それ自体に対するはがし返し面を介して、永久接着性接着剤などの固定タブによって固定できる柔軟性、弾性の裏地を有する10インチ×18インチの被覆材である。この形状によって、創傷面が接近し、血流を遠位末端へと損失させることのない出血抑制が付加されると考えられ、第一の応答者によって、またはいくつかの場合には、外傷を受けた兵士によって適用でき、歩行または輸送中の四肢の動きの下で安定であると考えられる。該包帯は、創傷または皮膚への有害な接着なしに切り離すことによって除去されることが予想される。
【0108】
(B. 圧縮スポンジおよび圧縮複合スポンジの作製方法)
人の創傷部位における創傷からの重篤な命にかかわる出血を抑制することのできる創傷被覆材を製造する方法が提供される。このような方法は、上記のキトサン生体材料を提供するステップを包含する。
【0109】
該構造または形態を製造するステップは、典型的には、溶液から実施され、凍結(相分離を生じさせる)、非溶媒ダイ押出し(フィラメントを製造する)、電気スピニング(フィラメントを製造する)、非溶媒(透析およびフィルター膜の製造に典型的に用いられる)または前形成されたスポンジ様製品または織製品上にコーティングする溶液による転相および沈殿などの方法を用いて達成できる。凍結により2つ以上の異なる相が形成される凍結(典型的には、キトサン生体材料が分離固体相に分別される、水の氷への凍結)の場合、凍結溶媒(典型的には、氷)を除去し、したがって、凍結構造を乱すことなく、創傷被覆材を製造するもう1つのステップが必要とされる。これは、凍結乾燥および/または凍結置換ステップによって達成できる。該フィラメントは、不織紡糸法によって不織スポンジ様メッシュに形成できる。あるいは、該フィラメントは、従来の紡糸および製織法によってフェルト化織物へと製造できる。前記生体材料のスポンジ様製品を作成するために用いることができる他の方法としては、固体キトサンマトリクスからの付加ポロゲンの分解または前記マトリクスからの材料の穿孔が挙げられる。
【0110】
該キトサン生体材料は、一般的大気気体を脱気することが好ましい。典型的には、脱気は、キトサン生体材料から十分に残留気体を除去するため、引き続き凍結操作を受けた際に気体がもれて対象の創傷被覆製品に望ましくない大きな空隙や大きな捕捉気体の泡を形成したりすることがない。脱気ステップは、典型的には、溶液形態におけるキトサン生体材料を加熱し、次いでそれに減圧を適用することによって実施できる。例えば、脱気は、該キトサン溶液を攪拌しながら約500mTorrで約5分間、減圧を適用する直前に、該キトサン溶液を約60℃に加熱することによって実施できる。
【0111】
親水性ポリマー生体材料スポンジ溶液処理の一実施形態は、最初の脱気後に、該溶液に一定の気体を再び添加するものである。このような気体としては、限定はしないが、アルゴン、窒素およびヘリウムが挙げられる。このステップの利点は、これらの気体の分圧を含有する溶液が、凍結時に微小空隙を形成することである。次いで、この微小空隙は、氷表面が進行するにつれ、スポンジを通って運ばれる。これによってスポンジの細孔相互接続を補助する十分に規定され制御されたチャンネルが残される。
【0112】
次に、典型的には、溶液形態にあるキトサン生体材料を凍結ステップに供する。凍結は、キトサン生体材料溶液を冷却し、溶液温度を、室温から凍結点以下の最終温度まで低下させることにとって実施することが好ましい。この方法で創傷被覆材製品好ましい構造が作成できる。最終凍結温度は、好ましくは約−10℃以下、より好ましくは約−20℃以下、最も好ましくは約−30℃以下である。該温度は、予め決められた時間をかけて徐々に低下させることが好ましい。例えば、キトサン生体材料溶液の凍結温度は、約90分間から約160分間に、約−0.4℃/分と約−0.8℃/分との間の一定の温度冷却ランプの適用によって、室温から−45℃まで低下できる。
【0113】
次いで、凍結キトサン生体材料は、該凍結材料の間隙内からの水分除去を受けることができる。この水分除去ステップは、凍結キトサン生体材料の構造的完全性を損なうことなく達成できる。これは、最終的な創傷被覆材の構造的配置を乱す恐れのある実質的液相を生成させることなく達成できる。したがって、キトサン生体材料は、中間体液層を実質的に形成することなく固体凍結相から気相へと移る。
【0114】
水分除去を実施する好ましい方法は、凍結乾燥ステップを用いることによる。該凍結キトサン生体材料の凍結乾燥は、該凍結キトサン生体材料をさらに凍結させることによって行うことができる。次いで、典型的には、減圧が適用される。次に、減圧排気した凍結キトサン材料を加熱する。次いで、前記の加熱し、減圧排気し、凍結したキトサン材料を乾燥させることが好ましい。
【0115】
より具体的にいうと、該凍結キトサン生体材料を、少なくとも約1時間、より好ましくは少なくとも約2時間、最も好ましくは少なくとも約3時間の好ましい時間、好ましくは約−15℃、より好ましくは約−25℃、最も好ましくは約−45℃で、引き続く凍結に供することができる。このステップに引き続き、冷却器を、約−45℃未満、より好ましくは約−60℃、最も好ましくは約−85℃に冷却できる。次いで、好ましくは多くて約150mTorr、より好ましくは多くて約100mTorr、最も好ましくは少なくとも約50mTorrの量の減圧を適用できる。次いで、減圧排気した凍結キトサン材料を、少なくとも約1時間、より好ましくは少なくとも約5時間、最も好ましくは少なくとも約10時間の好ましい時間、好ましくは約−25℃、より好ましくは約−15℃、最も好ましくは約−10℃に加熱できる。最後に、少なくとも約36時間、より好ましくは少なくとも約42時間、最も好ましくは少なくとも約48時間の好ましい時間、好ましくは約20℃、より好ましくは約15℃、もっとも好ましくは、約10℃の温度で乾燥を行うことができる。
【0116】
引き続いて、前記創傷被覆材の厚さを減少させ、密度を増加させるために、例えば、加熱圧締盤を用いることによって、キトサン生体材料を圧縮できる。圧縮温度は、好ましくは約60℃以上、より好ましくは約70℃以上、かつ約85℃以下である。次いで、該加圧キトサン生体材料を、好ましくは約75℃までの温度に、より好ましくは約80℃までの温度に、最も好ましくは約85℃までの温度に加熱することによって予備調整することが好ましい。予備調整は、典型的には、約0.25時間まで、より好ましくは約0.35時間まで、より好ましくは約0.45時間まで、最も好ましくは約0.50時間までの時間で行って、これによって、先に上記で述べたように、前記創傷被覆材の接着の強度および耐分解性を増加させる。
【0117】
次いで、処理された創傷被覆材を、滅菌ステップに供することができる。該被覆材は、多くの方法により滅菌できる。例えば、好ましい方法は、γ線照射などの照射によるものであり、これによってさらに、該創傷被覆材の耐血液分解性、引張り特性および接着性を増加させることができる。該照射は、少なくとも約5kGy、より好ましくは少なくとも約10kGy、最も好ましくは少なくとも約15kGyのレベルで実施できる。滅菌した創傷被覆材は、引き続いてアルゴンまたは窒素気体などの不活性気体によってパージした熱密封ポーチに貯蔵するためにパッケージ化できる。
【0118】
引き続いて、創傷部位に該創傷被覆材を接着させることにより、創傷からの重篤な命にかかわる出血を実質的に止めることのできるキトサン生体材料から創傷被覆材を製造できる。該創傷被覆材は、前記創傷部位に密封し、重篤な出血の凝固または凝集を利用して、前記創傷部位に前記創傷被覆材を接着させることによって、前記創傷部位からの出血を防ぐことが好ましい。この創傷被覆材は、好ましくは、創傷部位に強力に接着する一方、創傷周囲からの赤血球を凝固および凝集させる結果、好ましくは、必要な圧力が使用されるのは、適用の最初の5分間のみである。本発明の一形態において、専門的医療処置が可能になるまで、負傷した人の生存を維持するために、該装置は、非熟練実施者によってでも適用される一時的被覆材であるようにデザインされる。
【0119】
(C. 圧縮スポンジに使用される活性剤)
圧縮スポンジはさらに活性剤を含み得る。該活性成分は、創傷の性質または患者の医学的状態に依って、限定はしないが、ヒト血清アルブミン、カルシウム、ウシトロンビン、ヒトトロンビン(hトロンビン)、rhトロンビン、第VIIa因子、第XIII因子、組換え第XIII因子(第XIIIγ因子)、トロンボキサンA2、プロスタグランジン−2a、上皮増殖因子、血小板由来増殖因子、フォン・ウィルブランド因子、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF−α、形質転換増殖因子(TGF)、TGF−α、TGF−β、インスリン様増殖因子、線維芽細胞増殖因子、ケラチノサイト増殖因子、神経成長因子、ペニシリン、アンピシリン、メチシリン、アモキシシリン、クラバモックス、クラブラン酸、アモキシシリン、アズトレオナム、イミペネム、ストレプトマイシン、カナマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、クリンダマイシン、エリスロマイシン、ポリミキシン、バシトラシン、アムホテリシン、ナイスタチン、リファンピシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、クロラムフェニコールまたはそれらの組み合わせであり得る。例えば、軍事的状況において受けた創傷は、抗生物質、抗真菌剤、および凝固因子を含み得る。手術における癌患者は、活性剤の種々の組み合わせを受けることができる。
【実施例】
【0120】
(実施例1:出血抑制試験)
表1には、出血抑制試験のために入手された主なキトサン材料のリストが提供されている。ブタ脾臓実験用のGelfoam(商標)+トロンビン、およびSurgicel(商標)対照およびブタ大動脈穿孔用のJohnson and Johnson4インチ×4インチガーゼ対照以外、本明細書に記載された被覆材材料は全てキトサン基材であった。
【0121】
【表1】
* 許容限度以下の鉛、水銀、ビスマス、アンチモン、スズ、カドミウム、銀、銅およびモリブデン。NA=得られず。
【0122】
1リットルの清浄な滅菌Pyrexフラスコ中、Ametek、限外ろ過(UF)水および乾燥キトサンから、水溶液(2.00重量%)を調製した。Carbomer、PrimexおよびGenisキトサン材料の場合、1.0重量%または2.0重量%の氷酢酸(Aldrich99.99%)を水性混合物に加えた。該フラスコを、40℃で12時間から48時間震蕩することによって溶解を達成した。該溶液は、凍結直前に室温で、500mTorrの減圧を適用することによって脱気した。
【0123】
創傷被覆材は、キトサンの2%水溶液を、Teflon(商標)コーティングしたアルミニウムまたはポリスチレンの鋳型に、少なくとも1.5cmの深さに注ぎいれ、−45℃で3時間、−80℃ Revcoフリーザー中で凍結させることによって調製した。あるいは、凍結は、Virtis Genesis 35EL凍結乾燥器無いの棚上で実施した。該創傷被覆材において、多くて10%の縮みがあり、最終的な凍結乾燥した創傷被覆材の密度は、0.033g/cm3近傍であった。2つのタイプの成形創傷被覆材の横断面を図1および2(異なった凍結速度)に示してある。観察された構造(図3)は、バルク溶液の冷却速度によって、および異なった表面において影響を受けた。引き続き、創傷被覆材における構造は、製剤化、成形(サイズおよび形状)および凍結条件によって制御された。最適な創傷被覆材の構造は、直径が50ミクロンに近い均一な相互接続した細孔からなる開放細孔または層であって、冷却面に垂直な六方構造のものである。これらの構造は制御でき、効率が高く迅速な血液凝固のための広い特定の表面積を有する、柔軟であるが強力な創傷被覆材が得られる。典型的には、このような構造のための利用できる特定の表面積は、500cm2/g超であった。図5における走査電子顕微鏡写真は、創傷被覆材の基材表面の典型的な開放セル構造を示している。該創傷被覆材は、熱対流炉中、80℃±1℃で30分間加熱して、構造および酢酸濃度分布を最適化した。このステップは、出血領域における創傷被覆材の接着性を最適化(典型的には、真皮に対する接着力>40kPa)するために必須であった。
【0124】
該創傷被覆材は、80±5℃で、50kPa近い負荷の下、17mmの厚さから5.5±0.5mmへ(密度が、およそ0.03±0.005g/cm3から0.12±0.02g/cm3へ)、直ちに圧縮された。図4は、加熱および圧縮後の典型的な好ましいキトサン創傷被覆材の基材の外観を示している。
【0125】
(実施例2:創傷被覆材の調製および評価)
止血用創傷被覆材は以下のとおり調製された:
a)85%超の脱アセチル化度、26ppm未満の金属成分および90%超の固体含量を有する乾燥キトサン粉末またはフレークを、40℃で、約2%または1%の酢酸(重量/重量)を有する2%水溶液(重量/重量)に作成した。
【0126】
b)上記a)のキトサン溶液を、少なくとも5分間、攪拌下、約500mTorrまでの減圧下で脱気し、1.7cmの深さまで鋳型に注ぎ入れた。一定の低密度、フォーム構造は、出血領域におけるそれらの分解のし易さによる問題を示した。これらの問題は、一般に、該溶液の十分な脱気によって避けられた。
【0127】
c)該脱気キトサン溶液を含有する該鋳型を室温から−45℃まで冷却することによって凍結した。90分間にわたって線形冷却ランプを用い、温度を、少なくとももう1時間、−45℃に維持した。
【0128】
d)次いで、凍結キトサンを、−70℃以下の温度、および約100mTorrの減圧における冷却器を用いて凍結乾燥した。棚温度を、−45℃から−15℃にランプし、そのレベルで10時間保持した。次いで、10℃において、さらに36〜48時間の凍結乾燥を実施した。元の凍結プラーク質量の約2.8%近くに達するまで凍結乾燥を実施した。
【0129】
e)元の質量の2.8%でその処理を停止させ、凍結乾燥創傷被覆材を鋳型から取り出した。
【0130】
f)形成された生成物は、元の凍結体積から10%収縮した酸緩衝、水溶性、高規定表面積の創傷被覆材であった。該創傷被覆材の構造は、一般に、50ミクロンから80ミクロンの直径の相互接続細孔を有する均一な開放細孔構造であった。過冷却が影響を受けないわずかに異なった冷却法を用いて、層/六方構造(5ミクロン近い厚さの均一な薄いキトサンシートで、シート間が50ミクロン近く離れている)を得た。
【0131】
g)次いで、該創傷被覆材を、60±20kPaの圧力の適用下、80±2℃に加熱した滑らかで平坦な圧締盤の間で圧縮した(1.7cmから約0.5cmの厚さへ)。
【0132】
h)次に、該被覆材を、80±5℃に30分間加熱することによって熱対流オーブン内で調節した。
【0133】
i)次いで、各創傷被覆材を、ラベルを付けたKapak530熱密封ポーチ内に貯蔵した。
【0134】
j)得られた創傷被覆材は、強靭で、柔軟で、止血性で、湿潤組織に接着性であり、血流による分解に対して耐性であった。
【0135】
k)該創傷被覆材を、窒素雰囲気下、15kGyのγ線照射に曝露させることによって、分解性の改善、接着強度の改善および滅菌を達成することができた。
【0136】
出血課題の増加した動物モデルにおいて、種々の組成および構造の出血抑制被覆材候補の止血作用についてのインビボ評価をスクリーンした。簡単な再現性モデルにおいて多数の被覆材候補スクリーンし、それらを従来の材料と比較することができるように、脾臓裂傷モデルを利用した。これは出血課題のもっとも少ないモデル(約2〜5mL/分の軽度の浸出性出血)であるが、最初の創傷被覆材製剤はこの試験に失敗した。また、キトサンのゲル、粉末もこの試験に失敗し、一方、薄膜類の性能は不良であった。
【0137】
重篤な出血モデルにおける試験の前に、ブタを、全身静脈内ヘパリンによって抗凝血状態にし、皮膜化剥ぎ取り脾臓モデル(10〜20mL/分の強い浸出性出血)において、より良好な材料を試験した。次いで、この試験を通ったわずかな材料を、抗凝血ブタにおける頚動脈裂傷モデル(約50mL/分)で評価した。次に、この試験を通った材料候補の創傷被覆材製剤を、胸部または腹部の大動脈に4mm直径の穿孔を施したブタ大動脈切開モデルで試験した。これらの重篤な血管出血の課題モデル(100mL/分の過剰出血速度)を通る材料は、肝臓外傷の重篤な(グレードV)モデルでも試験した。
【0138】
先に操作を受け、評価のため、殺処理が予定されている健康な動物について該試験を実施した。実験は全て、1996年米国学術研究会議、「実験動物の管理および使用に関する指針」および適用できる連邦法にしたがって実施した。動物を同定後、筋肉内(i.m.)Telazol 4〜9mg/kgによって麻酔を誘導した。イソフランをマスクにより投与し、動物に挿管した。
【0139】
裂傷および皮膜剥ぎ取り実験用のキトサンパッチは、37mm直径の創傷被覆材から切断した等サイズの四分の一片、またはより大きな創傷被覆材から切断した1.5cm×1.5cmの創傷被覆材片のいずれかであった。
【0140】
Gelfoam(商標)+トロンビンまたはSurgicel(商標)の対照材料は、1.5cm×1.5cm片から作成した。吸収性ゼラチン創傷被覆材のGelfoam(商標)サイズ100は、Pharmaciaにより供給された。酸化セルロースのSurgicel(商標)は、Ethiconにより供給された。局所用トロンビン(ウシ源)10,000U.S.単位は、Jones Pharmaにより供給された。Gelfoam(商標)+トロンビンは、使用前に、1.5cm×1.5cm×0.8cmの創傷被覆材を、トロンビン中、30分間浸漬することにより作成した。
【0141】
正中線腹側ラポラトミーを実施した。脾臓の上半分を肱置した(手術創のタオルクランプと並置して)。表面は、湿ったラップパッドからの滅菌生理食塩溶液の適用により湿潤性を保たせた。
【0142】
抗凝血のため、右大腿動脈を外科手術により単離し、6Fシースによりカニューレ挿入し、血液サンプル採取を考慮した。5000単位のヘパリンの静脈内投与前、ヘパリン投与の10分後、およびそれ以降は20分おきに、活性凝固時間(ACT)を測定した。ACTレベルが200秒未満の場合は、2000単位のヘパリンを投与し、10分後にACTを再測定した。該動物が抗凝血状態であることを確実にするため、ACT>200秒まで、これを繰り返した。
【0143】
脾臓試験領域は分画化し、タオルクランプおよび湿ったパッドを用いることによって湿潤性を保たせ、最も直接した未試験面のみを露出させた。以下のとおり、試験パッチの適用前に、1つの外傷を作成した:
(i)裂傷モデルにおいて、4mmの刃が突き出るように直角鉗子に配置した#11外科用刃を用いて、外傷(8mmの長さ×4mmの深さ)を作成した。
【0144】
(ii)皮膜剥ぎ取りモデルにおいて、クランプ#11刃および一対の手術用はさみを用いて、外傷(5mm×5mm×4mmの深さ)を作成した。
【0145】
外傷作成後、30秒間、出血させた。表面の血液をガーゼで除いた後、一定の均一な圧力を30秒間用いて、試験パッチを外傷にデジタル的に適用した。次いで、デジタル圧力を除去し、該パッチを2分間観察した。この段階で試験番号を記録した。観察可能な再出血が生じた場合は、再出血する時間を記録し、次の試験(30秒出血、ガーゼによる血液の清掃、30秒のデジタル圧力の後、2分まで観察)を開始した。試験パッチの試験は、2分間の観察時間中に再出血が生じない時、または6試験の再出血が観察された時に完了した。6試験期間の間、創傷の再出血が続いた場合は、失敗のパッチを除去し、Gelfoam+トロンビンパッチを適用した。新たな外傷を作成し、他のパッチを試験した。
【0146】
頚動脈裂傷モデルの場合は、37mm直径の圧縮創傷被覆材またはより大きな創傷被覆材からキトサンパッチ(37mm×25mm)を切断した。適用を促進するため、創傷被覆材のいくつかは、3M9942皮膚接着剤によりキトサンに付着させた3M9781発泡医療用テープの上層を有した。Gelfoam(商標)+トロンビンを対照として用いた。
【0147】
垂直切開を行って、10cm長の頚動脈を露出させた。筋膜を引っ込め、動脈が組織の平坦な基部上に支持されるまで周囲の軟組織を切り裂いた。両端を結んだ縫合糸を、露出した動脈の近位および遠位に配置した。これらをクランプし、動脈の縦方向に、1.5cmの切開を作成した。
【0148】
抗凝血のため、右大腿動脈を外科手術により単離し、6Fシースによりカニューレ挿入し、血液サンプル採取を考慮した。5000単位のヘパリンの静脈内投与前、ヘパリン投与の10分後、およびそれ以降は20分おきに、活性凝固時間(ACT)を測定した。ACTレベルが200秒未満の場合は、2000単位のヘパリンを投与し、10分後にACTを再測定した。該動物が抗凝血状態であることを確実にするため、ACT>200秒まで、これを繰り返した。
【0149】
切開作成後、該動脈を2秒間出血させ、次いで、1分間圧縮した。圧縮を除去した後、結び目を再クランプした。該領域を生理食塩水で洗い流した。結び目のクランプを2秒間外してからパッチを適用した。パッチ上に均一に3秒間圧力を適用した。圧力適用後30分以内に出血が見られた場合は、もう3分間、圧力を再適用した。パッチが接着していなかったら新しいパッチと取り替えた。圧力再適用、または同一タイプのパッチの取替えの各々は、そのパッチタイプの試験期間として扱った。30分間にパッチ周囲、またはパッチを通して出血が見られない場合、特定の創傷被覆材に対する試験は完了したと考えられた。30分の止血(創傷からの出血が見られない)を達成するために用いられた試験の数について、材料を評価した。
【0150】
ブタ大動脈穿孔の場合、2.5cm直径片に切断した圧縮キトサン創傷被覆材のサンプルパッチまたは4インチ×4インチ手術用ガーゼの対照を用いた。
【0151】
腹部および胸部大動脈のいずれかまたは両方は、前者においては正中線垂直ラポラトミー、後者においては胸骨切開によって露出させた。筋膜および胸骨をクランプし、結び目を切開部位の近位および遠位に配置した。両端クランプを適用しながら、#11円刃刀を用いて、大動脈壁を通して3mmの切開を作成し、その切開を通して、4mm直径のMedtronic(商標)の血管穿孔器を挿入し、大動脈に4mm直径の孔を作成した。該穿孔器を除去し、該孔にデジタル圧力を適用して両端クランプを外した。
【0152】
中指で大動脈孔に圧力をかけながら親指と示指との間に該パッチを保持した。この中指からの圧力を1秒間解除してから創傷被覆材を出血領域に適用した。大動脈孔上のパッチに示指を介してしっかりと圧力を適用することによって、該創傷被覆材を適所に保持した。パッチの適用中に創傷からもれ出てたまった血液は吸引除去した。デジタル圧力の3分後、指を外し、出血の継続および接着不良の徴候に関して該パッチを観察した。最初の30分間に、出血の継続または再出血が見られた場合は、さらに3分間、圧力を適用した。
【0153】
止血が依然として不完全であった場合は、同じ創傷被覆材の別のパッチを準備し、古いパッチを除去し、新たな試験を開始させた。30分間にパッチの周囲から、またはパッチを通して出血が見られない場合に、試験は完了したと考えた。30分の止血(創傷からの出血が見られない)を達成するために用いられた試験の数について、材料を評価した。試験時、キトサン創傷被覆材と同じ方法でガーゼの対照サンプルを適用した。
【0154】
動物は全て耳介血管を介してバルビツール酸塩(Euthasol、1mL/10lb)の注入により麻酔下で安楽死させた。動物は、実験手順の最後に、または動物が何らかの有害な作用を受けた場合は終了前に安楽死させた。
【0155】
出血抑制を達成するまでに必要な試験の数および再出血する時間(脾臓試験の場合のみ)にしたがって、試験を0.0から6.0にランク付けした。1つの試験のみが必要であって、再出血の無かった試験は0.0とランク付けした。第2の試験が必要で、第1の再出血する時間が90秒であった試験は:
【0156】
【数1】
(脾臓の場合)または他のモデルの場合は1.0
止血を達成するために4つの試験が必要であり、第3の試験において、脾臓再出血の時間が30秒であった試験は:
【0157】
【数2】
(脾臓の場合)または他のモデルの場合は3.0
急速な分解、接着不足または出血非抑制によって、完全に失敗したサンプルは、6.0+とランク付けした。
【0158】
要約すると、止血が不良になるほど、以下に定義されたランキングが高くなる:
R=Г+Λ
式中、Г=出血を停止させるための試験数−1
【0159】
【数3】
A=試験(一つまたは複数)の時間
脾臓試験の結果は、表2、3および4にまとめてある。
【0160】
表2は、組成および構造に関して、最適化されていなかったキトサン試験サンプルの挙動を示している。これらの非最適化材料は、Surgicel(商標)陰性対照(表4)よりも不良から、同等および部分的にのみより良好の範囲であった。リン酸緩衝溶液が存在すると、Surgicel(商標)よりわずかに効果的であっただけの、接着不良で止血の緩慢なパッチとなった。該キトサン薄膜は、中程度の接着性があり、出血に対して相当な密封を提供するが、その透明な表面下の緩慢な血液浸出により明らかにされるように、止血はきわめて緩慢であった。初期の試験では、成形創傷被覆材の上面における低密度フォームの徴候が一般に示された。この低密度フォームは、分解し易く、創傷被覆材の上面が出血領域に適用されると崩壊することが判明した。その後、このフォーム効果は、溶液を凍結前に脱気することによって回避され得ることが発見された。低分子量キトサン創傷被覆材(相対的1%溶液粘度<50cps)は、出血領域においてきわめて分解を受け易く、パッチ適用には不適当となることが判明した。グルタミン酸塩対アニオンにより、より柔軟な創傷被覆材が製造されたが、重篤な出血領域において容易に分解される創傷被覆材が製造されるという犠牲を伴った。酢酸塩対イオンによる低密度創傷被覆材(0.05g/cm3未満のもの)もまた、分解および崩壊により容易に損傷されることが判明した。
【0161】
表3は、好ましい組成および構造の最適化キトサン創傷被覆材のランキング結果を示している。これらの創傷被覆材は、高分子量(相対的1%溶液粘度が100cps超)を有するキトサンから成り、0.12g/cm3に近い創傷被覆材密度を有した。中程度出血脾臓試験において、最適化創傷被覆材に関する結果は、ウィルコクソン順位和検定を用いて、Gelfoam(商標)+トロンビンの陽性対照と区別できないことが判明した(Z=−0.527、p=0.598)。同じ統計的方法を用いて、該創傷被覆材は、性能不良のSurgicel(商標)対照とは有意に異なっていることが示された(Z=−3.96、p=0.0001)。
【0162】
図6は、脾臓表面に対する最適化キトサン創傷被覆材パッチの密接した接着性ならびに外傷に直に近接した赤血球の凝集を示している(H&E染色組織学的切片により)。
【0163】
頚動脈外傷モデルに関するランキングは表5にまとめてある。このモデルにおいて、最適化キトサンパッチは、試験3、5および6において、きわめて良好な性能であった。最初の試験1および2での性能の改善は、該創傷被覆材の直接上層への支持裏地(3M9781フォーム包帯)の適用によるものであった。この裏地により、創傷被覆材上により均一な圧力の適用が可能となり、また、該被覆材を適用する人が、パッチ表面が粘着することなく、および創傷からのパッチ剥離を引き起こすことなく、パッチ表面から容易に指を放すことが考慮されている。頚動脈モデルは、脾臓外傷モデルであり得るよりも重篤な動脈出血条件を調べるために用いられた。可能な陽性対照として、Gelfoam(商標)+トロンビンを調べたが、高出血領域では分解することが判明した。
【0164】
表6は、大動脈外傷モデルの結果をまとめている。対照包帯としてガーゼ包帯(4インチ×4インチ)を用いた。対照は全ての試験期間において、重篤な出血を止めることができないが、一方、最適化キトサン大動脈パッチは、この創傷に見られたきわめて高レベルの出血を、該パッチのわずか1回または2回の適用後に迅速に止め、引き続き凝固させる能力があることが判明した。サンプルと対照とのランキングの間に違いが無いという可能性について、正確な有意性(両側検定、p=0.002)を測定した。創傷が最初の試行で止血された場合、平均して、パッチ適用後の血液損失は、最少(<50mL)であった。第2の試行が必要とされた場合、パッチ適用後の血液損失は、100mL超だが300mL未満であった。キトサン創傷被覆材の場合、パッチ適用後に、平均して、150mLの血液が失われたが、一方、3つのガーゼ対照試験の場合、各動物につき、1リットル超の血液が失われた。キトサン創傷被覆材試験の場合、生存率は100%であったが、ガーゼ試験の場合は、生存した動物はいなかった(0%)。該キトサンパッチは、30分の試験期間にわたって、および、一般に1時間から2時間後に動物を殺処理するまで、継続した止血有効性を示した。図7は、重篤な胸部創傷を密封している典型的なキトサンパッチを示している。図7のパッチにより密封された切除大動脈の管腔側(外傷を見せて)が、図8に示されている。図9は、図7および8の外傷を通って採取された組織学的染色切片の顕微鏡写真を示している。動物殺処理時、大動脈の除去および検査の際、外傷部位に強力な凝血の証拠が見出され(図9)、また、試験番号16の場合、生きている動物でパッチを取り除いた後(適用後、30分超)、引き続く再出血は無かった。
【0165】
【表2】
高密度タイプ=高密度創傷被覆材(約0.12g/cm3)
PBS処理=リン酸緩衝生理食塩溶液中に浸漬することにより中和化した創傷被覆材
LDタイプ=低密度創傷被覆材(約0.03g/cm3)
FFタイプ=高速凍結創傷被覆材
薄膜タイプ=溶媒注型薄膜(500ミクロン)。
【0166】
【表3】
【0167】
【表4】
【0168】
【表5】
高密度タイプ=高密度創傷被覆材(約0.12g/cm3)。
【0169】
【表6−1】
【0170】
【表6−2】
【0171】
【表6−3】
高密度タイプ=高密度創傷被覆材(約0.12g/cm3)。
【0172】
(実施例3:ブタ肝臓モデルにおける肝臓出血抑制)
戦場における出血抑制の必要性を推進するために、米国陸軍科学技術目標(STO)の出血抑制が2000年に制定された。STOの一般的な戦略目標は、戦場傷害における出血による死亡数を減少させる製品および方法の開発として要約することができる。したがって、出血抑制製品および方法の要件は次のように述べられた:
それらは、以下の1者以上による使用にとって実行可能でなければならない:自身(負傷戦闘員)、戦友(負傷兵士を援助する非医療用戦友)、戦闘人命救助者、戦闘医療隊員、医師助手、および大隊軍医。それらは、凹凸地、限定された視界、および極端な環境などの再前線の戦場条件における使用にとって実行可能でなければならない。製品および方法は、外部の電源を必要とするものであってはならない。全ての装置は、人が携帯可能であって耐久性のあるものでなければならない。最前線で使用可能な製品および方法は、より高い医療段階においても使用されることが期待される。STOの特別戦略目標の一つは、最前線戦場条件下で圧縮性出血に使用するための、新規の、または改善された止血用物質の開発である。圧縮性および非圧縮性部位に使用するための単一製品が望まれている。
【0173】
STOの一部として、本発明の出血抑制包帯を用いて、テキサス州、サンアントニオ、フォートサムヒューストンの米国陸軍外科学研究所(ISR)において、ブタ肝臓モデルにおける肝臓出血抑制の試験が行われた。ブタにおける重篤な静脈出血および肝臓外傷の標準化モデルにおいて、血液損失および生存率に及ぼすキトサン出血抑制包帯の効果を判定するために、該試験が行われた。このモデルは、米国陸軍ISRにおいて、他の多数の止血用包帯を試験するために用いられてきた。
【0174】
本試験には、品種間交雑種の市販ブタを用いた。国際実験動物管理の評価および認定協会によって認定された施設において維持された。本試験は、テキサス州、フォートサムヒューストンの米国陸軍外科学研究所の施設内動物管理および使用委員会により承認された。動物は、実験動物の管理および使用に関する指針(アメリカ国立衛生研究所刊行物86−23、1996年改訂)にしたがって、人の管理を受けた。
【0175】
動物は、キトサン包帯かガーゼスポンジのいずれかを受けるように無作為に割り当てられた(表7を参照)。手術準備は、以下のことから成った:動物は手術操作の36〜48時間前は絶食させ、水は自由に取らせた。グリコピラレートおよびチレタミンHClとゾラゼパンHClの組み合わせ(Telazol(登録商標)、アイオワ州、フォートドッジ、フォートドッジ研究所)による前投薬後、5%イソフランを用いてマスクにより麻酔を誘導した。該ブタに挿管し、人工呼吸器に配置し、イソフランにより維持した。頚動脈および頚静脈血管カテーテルを、手術により配置した。開腹術を実施し、脾臓摘出術および膀胱カテーテル配置を完了させた。さらなる実験操作の前に、37.0℃と39.0℃との間の直腸温度および15分間の安定した平均動脈圧(MAP)を必要とした。連続的データ回収システム(Micro−Med(登録商標)、ケンタッキー州、ルイスビル)を用いて、試験期間を通して10秒おきに、血圧および心拍を記録した。各動物からベースラインの動脈血液サンプルを採取し、各動物が、正常な血小板数、プロトロンビン時間、活性部分的トロンボプラスチン時間、および血漿フィブリノーゲン濃度を示すことを確認した。
【0176】
肝臓外傷を生じさせた。この方法は以下のことを含んだ。肝臓を手動で引っ込ませ、左右の中葉を持ち上げて十分に露出させた。次に、「X」の形態に構成された2つの4.5cm先鋭化スズを有する、特別にデザインされたクランプを、肝臓の横隔膜面上に、中心を、左右中葉の交点に約2−3cm背側にして配置した。内臓面上、方形葉の下に、器具のベースプレートを配置した。該スズが、器具のベースプレートの対応する溝にはまるように、2つの中葉の実質組織および基底の血管を通して器具のスズをクランプすることによって外傷を生じさせた。肝臓の第1の穿孔後、該器具を開放し、スズを引っ込め、第2の適用が第1のものと50パーセント重なるようにして該動物に再配置した。この再配置にしたがって、肝臓を2回穿孔した。実験期間の終結時に、肝臓の切除および検査によって肝臓外傷の文書化を達成した。この外傷は、中心に小さな島状物を有する大きな星形創傷の外観を呈し、およそ10×8×4cmと測定された。該外傷は、左中葉血管、右中葉血管、および門脈肝臓血管と共に、完全に切り裂かれていた。
【0177】
外傷の30秒後、全ての動物において、温(38℃)乳酸加リンガー溶液による救急蘇生を開始した。救急蘇生の目標は、ベースラインMAPに戻すことであった。液体は、260mL/分で投与した。この救急蘇生法を、目標が達成されるまで続け、60分の試験時間中を通じてMAPが低下した場合は再び開始した。救急蘇生の開始(外傷30秒後)と同時に、以下の処置を適用した。1つの被覆材を、方形葉の表面に適用して穿孔外傷を覆い、他の2つの被覆材を、横隔膜の側から創傷内に詰めた。背腹方向に60秒間、圧縮を適用した。60秒後、外傷を検査し、止血が達成されたかどうかを判定した。次に、アプリケーターの手を再配置し、側腹−内側方向に60秒間、圧力を適用し、止血に関して観察を行った。この手順を繰り返し、合計4回の60秒間圧縮を行った。圧縮後に止血が完了していた場合は、さらなる圧縮は実施しなかった。止血は、外傷部位からの肉眼で検出できる出血が無いこととして定義した。
【0178】
処置適用の完了後、腹部を閉じ、外傷後60秒間または死亡まで、どちらかが初めに来た時まで、動物をモニターした。60秒より前の死亡は、心拍が0として定義した。60秒時に生存している動物は、ペントバルビタールの過量により安楽死させた。
【0179】
外傷導入直後血液は、処置適用開始まで腹腔から連続的に吸引された。この容量を測定し、前処置血液損失として称した。試験期間の最後に、各腹部を開き、液体および腹腔内凝固血液を吸引し、測定した。これは処置後血液損失と称した。さらに、全蘇生液体の使用を記録した。外傷前の動物血液容量を、以前に報告されているとおり(Pusateriら、Mil.Med.166、217−222頁、(2001))推定した。
【0180】
体重、推定血液容量、裂傷血管数、ベースラインMAP、生存時間、前外傷MAP、前処置血液損失、および包帯接着スコアを、SASのGLM法を用いて分散分析により分析した。データは、最小二乗法の最小二乗平均値±標準誤差として報告される。データを、分散および非正規形の不均質性に関して検討した。これらの条件を、処置後血液損失および液体使用データに関して探知した。したがって、血液損失および液体使用データは、解析前に対数変換された。変換データを、分散分析により分析した。これらのデータは、逆変換手段および95%信頼区間(95%CI)として表される。メスとオスの分布、止血、および生存データを、SASのFREQ法を用いてフィッシャー正確度試験(Fishers Exact Test)により分析した。データは、比率またはパーセンテージとして報告された。両側検定を全ての比較に用いられた。
【0181】
動物の体重、推定血液容量、動物の性別分布、ベースラインMAP、外傷前MAP、肝外傷内の裂傷を受けた主要裂傷血管数、または前処置血液損失において処置群間で差異はなかった(表8および表9を参照)。
【0182】
処置後の血液損失は、ガーゼ創傷被覆材の対照と比較して、キトサン群において減少した(p=0.01)。液体の使用における有意差は見られなかった。生存パーセンテージは、キトサン群において増加した(p=0.04)。止血は、外傷後3,4分でキトサン群でより頻繁に生じた(p=0.03)。生存時間は、キトサン群における高レベル生存率のため、統計的に比較できなかった(表10を参照)。
【0183】
【表7】
【0184】
【表8】
【0185】
【表9】
【0186】
【表10】
この米国陸軍ISR試験(Pusateriら、J.Trauma、54、177−182頁、(2003))により、独立した試験において、標準的4インチ×4インチガーゼよりもキトサン創傷被覆材の有意に改善された性能が証明される。米国陸軍ISRは、本発明クレームの被覆材の場合および赤十字により開発されている乾燥フィブリントロンビン創傷被覆材の場合においてのみ、重篤な血流の止血において4インチ×4インチガーゼよりも有意に改善された性能が証明できた。赤十字の包帯は、高価であるとともに抵抗力が弱く、破損しやすい。
【0187】
(実施例4:包帯の照射)
3M 9781多孔性フォーム裏地を有する高分子量4インチ×4インチキトサン出血抑制被覆材は、アイスランドのエビ源(Genisロット番号SO1115−1)から調製された。これらは、無菌キトサン包帯の大型ロット(ロット番号OMLC 2SM114)を調製するために市販用の凍結乾燥会社を用い2%酢酸と2%キトサン溶液により調製された。この包帯を、窒素下、15kGyで照射された。引き続きそれらを、単軸引張り強度、破裂強さ、血液吸着、水吸着ならびに無菌性について試験した。ブタの大動脈穿孔を、腹腔外傷および胸部外傷における非γ線照射サンプル上で実施した。7枚のパッチが用いられた。パッチ適用後の平均血液損失は、<50mLであった。全てのパッチは、最初の適用の際に接着性、創傷密封性および止血性があった(7 x 0ランキング)。動物は全て生存した。
【0188】
γ線照射および非照射包帯(ロット番号OMLC 2SM114)を、オレゴン州ポートランド所在のOregon Medical Laser Centerで開発されたインビトロ破裂圧試験により試験した。破裂試験を実施するために、包帯の25mm直径の円形試験片を、クエン酸塩添加全血に10秒間浸す。次いで試験片を中心に置き、50mm直径PVCパイプの側面で4mm直径の穿孔の際、デジタル圧でしっかりと保持する。この最初の付着後、パイプ内の液体圧を4.5±0.5kPa.s−1でランプさせ、0.1秒間隔で圧力と時間を記録する。破損前に記録された最大圧としての破裂圧を記録する。包帯の試験部位への相対的接着性を評価するために接着破損ランキングを定める。該ランキングシステムは、破損の3つの異なる様式に分類される。ランキング1は、キトサンの接着が保たれずにPVC面から容易に分離される試験片に与えられる。ランキング2は、試験片の分離がそれほど容易ではなく、幾らかのキトサンが試験部位に付着したままである場合に当てられる。ランキング3は、PVC面にしっかりと固定されたままになっている基本構造から創傷被覆材本体の粘着性の分離によってのみ試験片が取り外しできる場合に当てられる。
【0189】
湿潤媒体として血液を用いてPVC基材に対するγ線照射および非照射キトサン包帯の平均破裂圧(平均±SD、n=6)は、それぞれ122±1.9kPaおよび86±20kPaであった。この結果は、T−検定を用いて統計的に解析された(p=0.007)。湿潤媒体として血液を用いてPVC基材に対するγ線照射および非照射キトサンα包帯の平均接着性破裂ランキング(平均±SD、n=6)は、両方とも3±0であった。図10は、粘着性破損がキトサン構造内で生じている高ランキング破損の形を示している。
【0190】
被覆材(ロット番号OMLC 2SM114)の血液および水の吸着性を、試験小片(約0.02g)を血液または水に3.0秒間浸漬することにより判定した。浸漬前後の質量の差異を記録した。湿潤媒体として血液または水を用いて創傷被覆材に3秒間吸着された媒体の1グラム当りの平均質量を、γ線照射および非照射キトサンサンプル(n=4)に関して測定した(図11を参照)。この結果は、Tukey−HSD検定による一方向ANOVAを用いて統計的に解析された、p=0.001。γ線照射は、非照射材料の場合、水の過剰な吸着を有意に減少させた。このような過剰の水の吸着は、引き続く接着および構造的破損による創傷被覆材の崩壊(ゲルへと)を引き起こすと考えられる。
【0191】
キトサン被覆材(ロット番号OMLC 2SM114)の引張り用試験片を、5kg荷重計を具備した単軸Chatillon Materials Testing Vitrodyne V1000を用いて評価した。サンプルを犬骨片(15±1mm×6.5±0.5mm×5±0.5mmのガーゼ×厚さ×幅)に切断し、2本のクランプ間に保持した。クロスヘッド速度は、10mm.s−1であった。荷重および押しのけ量を、0.1秒間隔で記録した。
【0192】
被覆材全体の引張り結果は、表11に示している。応力および伸び率に関してγ線照射および非照射サンプル間で有意差はなかった。15kGyでの照射によりヤング係数が少し増加した。
【0193】
【表11】
*2.5cm幅の包帯について算出。
【0194】
52枚の4インチ×4インチ創傷被覆材(ロット番号OMLC 2SM114)を清浄に調製した。これら4インチ×4インチ創傷被覆材のうち、46枚を二重パック包内に包装し、14kGyから15kGyの間の認定線量でのγ線照射のためにカリフォルニア州オンタリオ所在のIsoMedix施設に送付した。創傷被覆材2SM114番号1から切断された、黄色ブドウ球菌(ATCC29213)でドープされた8枚のキトサン創傷被覆材試験片(1インチ×0.21インチ×0.21インチ)のセットをこれらのサンプルと共に箱詰めした。各試験片を、100マイクロリットルの0.5マクファラン接種により接種した。黄色ブドウ球菌は、活性であることが示された対照培地からかき出した。ブドウ球菌のない4枚の試験片の対照セットもまた含まれた。γ線照射処置をしない対照サンプルは、加熱密封包内の小型無菌容器に、室温、暗所で保持した(対照の要約に関しては表12を参照)。
【0195】
【表12】
46枚の照射された創傷被覆材パッケージを、無菌扱い、すなわちエチレンオキシド無菌による無菌条件下で開封し、接着剤被覆フォーム裏地(3M 9781テープ)を付着させ、各創傷被覆材および裏地の小切片(約1.2インチ×0.2×0.12インチ)を、個々の創傷被覆材滅菌試験のために取り出し、創傷被覆材を、加熱密封により元の内部パック内に再度包装した。これらの創傷被覆材のうち40枚に、ロット番号および創傷被覆材番号のラベルを付け、評価のために送付した。該切片および対照片を、無菌性試験のためにセントビンセントのPHSにある微生物学施設に供した。
【0196】
該切片および対照片は、チオグリコレートに富む増殖培地を含有するラベルの付きサンプル容器(0.6インチ直径×5インチ)に無菌的に入れ、35℃で好気的に温置した。培養培地は、増殖徴候を7日目、14日目および21日目に調べた。該サンプルを、5%ヒツジ血液と共にトリプシン大豆寒天中で副次培養し、35℃で温置し、48時間後増殖を調べた。
【0197】
個々の培養物を、濁度試験および副次培養のかき取りにより分析した。全ての培養物および7日目、14日目および21日目の全ての副次培養物において、非照射および黄色ブドウ球菌を投与された培養物でも増殖の無いことが示された。個別の培養物のグラム陽性染色により、これらの知見が確認された。
【0198】
(実施例5:スポンジの調製)
表13は、試験用に入手された親水性ポリマー類を掲げている。さらなる親水性ポリマー類としては、ポリリジン、硫酸コンドロイチン、澱粉およびヒアルロナンが挙げられる。限外ろ過水の水溶液(2.00重量%および8.00重量%)(Ametek)および親水性粉末を、清浄な1リットルのビン(Nalgene)に調製した。キトサン不織マット(PolyMed社)を、室温で48時間にわたり無水酢酸(Aldrich 99%)に曝すことによってキチン不織マットに変換させた。残留した無水酢酸を、限外ろ過水の複数回洗浄を用いてマットから洗浄した。アセチル化マットをNaOH(0.5M)に6時間曝すことにより、炭素−2位のアセチルアミドを加水分解することなく3グルコピラノース炭素および5グルコピラノース炭素のアセチルエステルを加水分解した(FTIR分析により確認)。撚れた(1/cm)超微細(4ミクロンの直径)多繊維(>50)ポリエステル糸(20N荷重下で200ミクロン)を得た(Multicraft Plastics、オレゴン州ポートランド)。
【0199】
【表13】
氷酢酸(Aldrich 99.99%)を、水の2重量%および4重量%でそれぞれ2重量%および8重量%のキトサン水溶液に加えた。親水性ポリマー溶液の溶解は、ロータリーベッド撹拌機上、室温で24時間までのビンの緩やかな軸回転により達成された。2%溶液は全て、25℃、2000cps未満での2号および3号スピンドルでLVTBrookfield粘度計により測定された最高粘度を有して容易に溶液となった。キトサン、アルギン酸およびアクリル酸の8%溶液は、Brookfield粘度計による測定にとって高すぎる粘度を有した。これらの場合における極めて高粘度の液体溶液により、これら溶液の注ぎが妨がれた。その代わり、これら溶液を、プラスチックビンから搾り出し、引張り、すくい出して鋳型に装填した。これら後者の極めて高粘度の液体は、製造環境において容易に処理することができなかった。
【0200】
2%水溶液の場合は1.7cmの深さ、8%の場合は0.45〜0.70cmの深さのアルミニウム鋳型内のTeflon(商標)被覆された10.8cm×10.8cm×2.0cmウェルに、水溶液を注ぐ/入れることによってスポンジを形成した。最初室温における溶液は、実験室(0.65m2)Virtisまたは(3.72m2または16.63m2)Hull凍結乾燥機中、−25℃と−45℃との間の温度でアルミニウム鋳型を冷却棚上に置くことによりプラークに凍結された。プラークからの水の昇華による親水性ポリマースポンジの製造は、200mTorr未満の圧で−80℃の冷却機を用い、48時間から60時間かけて−45℃から18℃に徐々に棚温度をランプして凍結乾燥することにより達成された。
【0201】
2%キトサン溶液のサンプルの場合、凍結中2%キトサン溶液における、望ましくないクラスト(上面氷核)形成を防ぐために4つの方法を試験した。1つの方法は、鋳型の上面にポリマー薄膜を乗せて、凍結のための冷却棚に乗せる前にポリマー溶液の表面と密接な湿潤接触させることであった。溶液がプラークに凍結された後(約1〜2時間)、保護ポリマー薄膜を除去する。ガラス転移温度が−45℃以下であるため、塩化ポリビニリデン薄膜(例えば、Saran(商標)ラップ)が特に有用である。この薄膜は、上部の過冷却親水性ポリマー溶液面上への沈殿および凍結面のクラスト核形成により、凍結機/凍結乾燥機内の冷却表面に形成された樹枝状氷を防ぐ働きをする。このクラスト層を防ぐ第2のアプローチは、鋳型の直ぐ上に置かれる高架状(250mm×6mm×5mmスペーサーバーを用いて)の薄い(例えば、3mm)アクリル製プレートの使用であった。これは、接触する保護ポリマー薄膜を除去するための凍結/凍結乾燥サイクルを中断する必要がないため、薄膜法よりも有利であった。実施例7に詳述された第3の方法では、注がれた鋳型溶液の上面に持続的浸透性キチン不織マット裏地適用が用いられた。実施例11に詳述された第4のアプローチは、凍結時の溶液封じ込めとして親水性溶液で満たされた加熱密封されたフォイル裏打ちポーチを使用することであった。
【0202】
凍結乾燥の終了時に(>48時間)、スポンジを乾燥機から取り出し、秤量し、加熱密封されたフォイル裏打ちポーチに保存した。スポンジは、1.7cmの深さに注がれた溶液の場合、10cm×10cm×1.7cmであり、0.45〜0.70cmの深さに注がれたスポンジの場合、10cm×10cm×0.43cmであった。Arizona InstrumentsVapor Pro水分分析器を用いる水分分析により、スポンジ質量の1%から4%の間の残存水分%を示した。キトサンスポンジ中の残存酢酸は、Mettler DL53オートタイトレーターおよび27%と22%との間のスポンジ質量で0.010M NaOHを用いて測定された。2%および8%溶液のキトサンスポンジに関する平均スポンジ密度は、それぞれ0.031±002g/cm3および0.103±0.014g/cm3であった。他の親水性スポンジに関する平均スポンジ密度は、2%スポンジについては0.0248±.0036g/cm3であり8%スポンジについては0.0727±.0023g/cm3であった。キトサンスポンジと他の親水性スポンジとの間の平均29%の密度差は、主としてキトサンスポンジ中の酢酸および非キトサンスポンジを秤量する際に考慮に入れなかった少量フラクションの揮発成分により生じる。
【0203】
種々の親水性試験ポリマー類全てから2%スポンジは、適合性を有した、同様の外観および構造で全て良好に形成された。全てが8%近くで幅および長さが収縮した。アルギネートおよびキトサンスポンジは、非常に良好な粘着性、操作による引き裂きおよび亀裂に抵抗性を有した。デキストラン、カルボキシメチルセルロースおよびポリアクリル酸スポンジは、より粘着性が低く、操作により容易に亀裂および引き裂きを生じた。−30℃近辺で凍結された2%スポンジの典型的な外観を、図12に示している。この端部は、滑らかな外観を呈し、規則的なモザイク構造模様が付いている。スポンジの上面は、中心が僅かにドーム状であった。唯一の外見上の特徴は、規則的な0.5mm直径×0.5mm深さの面あばたきずであった。ベース面(すなわち、Teflon(商標)鋳型ベースと接触する面)は、結晶粒界により分離された面生地および明白な「大型単結晶」領域を示した。片側安全かみそりの刃を用いた横断面の切断(図13)により、内部構造を示している。ベース面内の結晶粒界は、種々の方向に配向された微細なラメラ領域を区分し、鋳型面における種々の不均質な核形成事象から生じやすい境界線として見ることができる。スポンジの内部構造は、スポンジ内に拡がり、スポンジの厚さの60%近辺まで含む微細なラメラ(各々2〜5ミクロンの厚さ)のベース層により説明できる。ベースラメラの直ぐ上部は、上部コース層からベースの微細層を分離している薄い境界面(<10ミクロン)である。このコース層は、上部溶液温度が0℃以下に低下する際に上面溶液と接触する外来の樹枝状氷から生じる。この層におけるラメラは、10ミクロン以上の厚さであり、一般に上面に垂直に配向されている。これらのコース、垂直ラメラは、スポンジの平面に対して直角の圧縮に耐える。樹枝状氷による核形成から上面を保護することによって形成されたキトサンスポンジは、上部クラスト構造を有さなかった。これらのスポンジは、耐亀裂性に関して機械的性能が改善されており、上面保護することなく形成されたスポンジと比較して適合性(可撓性)が改善された。
【0204】
2%スポンジの全面は、血液または水を容易に吸着した。全ての非圧縮スポンジは、短時間(すなわち、5秒以上)で過剰の水または血液と接触した場合、ゲルに極めて崩壊し易かった。
【0205】
8%スポンジは、2%スポンジよりもかなり硬い。閉鎖され、滑らかな外観のスポンジベースにおいて微細構造を容易に見ることはできなかった。これらのスポンジは、血液および水を圧縮2%スポンジほど容易には吸着しなかった。これらのスポンジの横断面を切断すると、内部構造が、2%スポンジのものと違っていることが観察された:コース上部垂直構造は、2%スポンジと同じ相対的深さの近辺に(すなわち、30〜40%)存在し、ベース層は、直角から30°近くに配向され、微細な結晶粒界により区分されたラメラの高コンパクトゾーンから構成されている。
【0206】
2%溶液からのスポンジは、Teflon(商標)被覆平行プレート圧締盤を80℃に加熱し、1200mm/分から5mm/分mの間の一定速度で圧締盤を一緒に一定のスペーサー距離(典型的には0.55cm)にすることにより典型的にプレスされた。0.45cmにプレスされた1.70cm厚さのスポンジ密度は、凡そ0.10g/cm3であった。80℃未満で、および/または200mm/分以上の圧縮速度でプレスされたスポンジは、結晶粒界での亀裂により、および脆性破損により、機械的破損を受け易かった。これは、2%、60mm/分以上でプレスされた1.7cm厚みのキトサンスポンジの場合に見られた。864枚のスポンジの中で、260枚以上のスポンジが、脆性崩壊および破損により廃棄された。圧縮速度が、20mm/分に調整した場合、864枚のうちからスポンジから43枚のみ廃棄された。圧縮速度を、10mm/分に調整した場合、9枚未満が廃棄された。
【0207】
低速度(<12mm/分)でプレスされたスポンジ構造の変化を、図13に示す。垂直に対して20°と40°との間に配向された微細ベースラメラは、均一なベース層に容易に高密度化(75%圧縮)されるが、垂直のコース上層は、部分的にのみ高密度化(約55%圧縮)されることを見ることができる。低圧縮速度での結晶粒界領域は、密接したままである。より高い圧縮速度(>20mm/分)での結晶粒界領域は、より分離し易くなる。
【0208】
(親水性スポンジに関して観察)圧縮スポンジは、水または血液によって容易には濡れにくく、両媒体中の分解に対してより抵抗があった。圧縮された2%スポンジは、血液により十分に濡れたが、分解しなかった。濡れた圧縮スポンジの接着強度は、PAA>キトサン>CMC>アルギン酸と等級分けされた。
【0209】
効果的なスポンジの極めて重要な決定因子は、ラメラ表面に対して正規直交するミクロンサイズのちりめん皺(図14)の存在である。これらのちりめん皺は、小型の「歯」としてラメラ表面から3ミクロンから10ミクロン突出している。理想的には、ラメラの少なくとも1つの面上に規則的に分布させるべきである。これらの構造は、ラメラが垂直方向に対して30°以上のラメラ成長の配向で形成する制御条件下で最も一般的である。また、それらは、−25℃で凍結する最初の30分から60分後に凍結プラークを−45℃以下に急速冷却する能力によって制御されると考えられる。プレス後、試験キトサンスポンジを、一定温度の熱対流オーブン中、80℃で30分間焼成して残存する応力をアニールさせ、残存遊離酢酸を除去した。
【0210】
(実施例6:2%キトサンスポンジの調製)
A. 2%キトサンスポンジの2つのサンプル(N=3):1つのサンプルは、20mm/分で1.7cmから0.55cmにプレスし、他のサンプルはプレスしなかった。両サンプルを、80℃で30分間焼成した。四角の試験片(5cm×5cm)を各スポンジから切断した。試験片を、室温で血液中10秒間浸すことによってクエン酸添加ブタ全血で濡らした。それを、デジタル圧(200〜300mmHg)により3分間、12mm厚さの清浄なPVC(400グリットの湿った紙および乾いた紙を用いて粗くした)の10cm×10cmの表面に4mm直径の穿孔を中心にして付着させた。穿孔下の貯留層中、室温でブタ全血を加圧ランプさせた(50mmHg/秒近辺)。圧変換器を貯留層に取付けて破損時の最大圧を測定した。
【0211】
プレスしたスポンジ試験片(N=3)を、500mmHg以上の圧力に保持した。これらのスポンジにおける破損は、PVCに結合している接着剤の損失によるものであった。プレスしなかったスポンジ試験片(N=3)は、500mmHg未満で破損し、破損は血液中のスポンジ崩壊および分解によるものであった。
【0212】
B. 10mm/分で1.7cmから0.55cmにプレスされた2パーセント溶液キトサンスポンジ(N=5)を、80℃で30分間焼成し、フォーム化PVCテープと共に焼成し、γ線照射(15kGy)により滅菌した。試験片(5cm×5cm)を、室温で10分間ブタ全血中に浸した。次にこの試験片を、平坦なPVC表面の4mm直径の穿孔を中心にして付着させ、荷重圧(600mmHg近辺)で3分間保持した。この時間終了時に、穿孔下のブタ全血を室温で300mmHgまでの圧力に3分間ランプしてから(50mmHg/秒近く)、付着させた試験片が破損するまで再度同様の速度でランプした。試験片の破損は、血圧が1800mmHg以上である場合に生じた。破損は、粘着性の破壊、クラスト上層の分解またはPVCに対する接着剤の結合損失のいずれかによるものであった。
【0213】
C. 8%溶液から調製されたキトサンスポンジ試験片(4cm×4cm×0.5cm)は、4mm直径の急性ブタ大動脈穿孔出血を止める効果がある(平均動脈圧70mmHg;包帯試験片の30分間以上の止血性)ことが判明した。しかしながら、8%キトサン溶液からのスポンジは、非可撓性であり、創傷に容易に適合させることができなかった。一方、2%キトサン溶液から形成されたが、1.7cmから0.45cmにプレスされた同密度のスポンジは、この大動脈穿孔外傷での出血を止める効果があるのみならず、容易に適合性があり、出血創傷に対して配置された時間でより適合性となった。
【0214】
D. クラストの無いスポンジから形成された、徐々に圧縮された(1.70cmから0.45cmへ)最初2%溶液のキトサン包帯から1インチ直径の試験片(N=12)を、12匹の麻酔を受けたブタの穿孔(4mm直径)大動脈に付着させた(最初の自由流動出血に対する3分間のデジタル圧、平均70mmHg動脈圧)。全ての試験片は、最初の適用時に出血を止め、少なくとも30分にわたり止血した。比較として、クラスト層を有する包帯から形成されたキトサン包帯(N>100)は、同じ時間にわたり出血を止めるために、平均0.5回から1.5回の圧力の再適用を要した。
【0215】
E. 高速プレス(>50mm/分)の2%キトサンスポンジの楕円形(3.8cm×3.2cm)試験片(N=10)を、ブタ全血中に室温で10秒間浸した。次に試験片を、平坦なPVCの表面に4mm直径の穿孔を中心にして付着させ、デジタル圧(600mmHg近辺)で3分間保持した。この時間終了時に、穿孔下のブタ全血を300mmHgまでの圧力に3分間加圧(50mmHg/秒近辺)してから、試験片が破損するまで再度ランプした(約50mmHg/秒)。到達した最大圧、試験固定具に対する最終接着性、破損後のバルクスポンジの粘着性について破損をランク付けした。この結果を、徐々にプレスした(圧縮速度<15mm/分)2%キトサンスポンジの20枚の試験片の同様な試験結果と比較した。最終破裂ランキングおよび接着ランキングは同様であった。しかし60%の高速プレススポンジは、グロスクラスト分解およびゲル化のためにあり得る中で最低の粘着ランキングを有した一方、徐々にプレスされた20枚の包帯全ては、最高の粘着ランキングを有した。
【0216】
F. 2セットの2%キトサンスポンジを調製した。1セットは、実質的なラメラ面ちりめん皺を有し、別のセットは、ラメラ面にちりめん皺を有さなかった。両セットのスポンジを、0.10g/cm3密度近辺の緩やかなプレス速度でプレスした。スポンジを80℃で30分間焼成し、PVCフィーム薄膜により裏打ちした。ブタ大動脈穿孔実験において、ちりめん皺化ラメラを有するスポンジセットは、全ての場合に(N=12)において重篤な大動脈出血を止血するのに有効であった。ちりめん皺化ラメラのないスポンジ(N=6)において、試験片は、出血を止血するのに有効ではなかった。
【0217】
(実施例7:キチンメッシュ補強によるキトサンスポンジの調製)
水に浸漬したキチン不織メッシュを、吸収性ワイプ(Kimwipe(商標))に対し置き、不織キチンマット中の水含量を減少させた。このマットを10cm×10cmの四角に切断した。次いでそれを、10.8cm×10.8cm×2cmの深さのアルミニウム鋳型ウェルに注いだ2%キトサン溶液の面上に置いた。残されたマットはキトサン面で懸濁し、表面でマット内へのキトサンの吸着がいくらかあることが見られた。キトサン溶液およびマットを、実験室用(Virtis)凍結乾燥機内に置いた。この溶液を凍結し、水を昇華させるとスポンジ表面にしっかりと付着させた織マットを有するスポンジが現れた。キチンマットを有するスポンジを、キチンマットのないスポンジと同じ速度で乾燥した。キチン裏地スポンジの切片を横断面で切断すると、1.5mmの深さ近くまでマットへのキトサンの部分的湿潤が明らかになった。しかしながら、切片はまた、マット面の上部1mmには、キトサンが無いことを明らかにした。キチンマット複合面を有するスポンジは、80±2℃に加熱された平行プレート圧締盤間で20mm/分で1.8cmから0.45cmの厚さにプレスした。プレス後のスポンジを通る横断面は、キチンマットとスポンジとの間の界面が、プレスにより損傷されず、マットおよびスポンジの両方が、共にしっかりと固定されていることを示した。また、キチンマットの存在は、スポンジ適合性および耐分解性スポンジに影響を及ぼし得るスポンジクラスト(上面から下部へのコース氷核形成)の形成を防いだ。このスポンジを、ブタの4mm直径の急性動脈穿孔モデルにおいて試験した。この外傷における出血は、標準的なキトサン包帯片では止血されず、キチンマット裏打ち試験片が、3分間デジタル圧を保持することにより適用された。2.5cm直径の試験片の適用を行っている外科医は、この試験片は特に適合性があり、キチン裏地に粘着することなく指を離すことができたと述べている。この試験片は、プロトコルの試験時間に要求される30分間以上外傷部位を密封した。それは、外傷部位に良好な接着を保持し、たとえこの包帯と共に通常は適用される保護非浸透性裏地を有していなくても分解の兆候を示さなかった。また、この包帯は、該包帯の可撓性により脈拍を診ることができたので、該包帯が外傷に適合性であることが観察された。
【0218】
(実施例8:キトサン含浸糸)
0.5mm直径のポリエステル多繊維を2%キトサン溶液に浸し、直径を約2mmに拡張させた。次に室温で浸漬したキトサン糸を、拡張された糸から溶液を引き出すことなく、平坦な疎水性Teflon被覆アルミニウムトレイ上に静かに載せた。次いでトレイを、−25℃でVirtis凍結乾燥機の棚に置き、凍結させた。凍結乾燥によって糸から氷を除くと0.033g/cm3でキトサンスポンジで含浸させた2mm直径の拡張糸が残った。拡張糸に対して10N近辺の引張り力の適用および糸表面に対して直角にテーパニトリルゴムを介した約500mmHgの圧力の適用により、2mmから約0.7mm直径の糸に圧縮した。この糸は、良好な適合性を示し、ガーゼ様包帯の製織用に調製された。糸の一部を80℃に10分間焼成した。次にそれを、血液中に10秒間浸し、清浄な試験PVC表面に対し3分間しっかりと保持した。それは良好な接着性を示した。
【0219】
(実施例9:圧縮低密度スポンジと非プレス高密度スポンジとの間の撓みの比較)
ここに供された高密度化法により、厚さ、幅および/または半径において制御された縮小により、適合性の高い低密度の相互接続スポンジの容積が縮小される。親水性ポリマーの適合性は、グルタミン酸またはグリセロールなどの可塑剤で修飾しないことが好ましい。なぜならば、この修飾が、重篤な出血下でスポンジをより分解し易くさせ、スポンジ崩壊し易くさせるためである。本実施例は、低密度スポンジのより高密度スポンジへの圧縮により、化学的に同一のより高密度のスポンジを高密度化なしで形成された場合よりも、より低い弾性率のスポンジが生ずることを示している。
【0220】
弾性率(E)を測定するために、水平面からの撓みを、単独の片持梁実験において判定した。矩形梁を、プレスされた2%スポンジおよび非プレスの8%スポンジから切断した。梁は、9cmの長さで2.54cmの幅であった。6.7cmだけの梁が、平坦な水平面の縁から延伸するように固定した。固定点から6.5cmの梁チップ上に20g重量または30g重量を載せた。水平面から直角の梁の6.5cm点の撓みを、荷重3秒後に測定した。弾性率(E)を、式:
E=P.L3/(3y.I)
から算出した。式中I=w.h3/12であり、P=荷重(N)であり;L=自由梁長(m)であり;y=水平面からの梁撓み(m)であり;w=梁幅(m)であり;h=垂直面の梁高さ(m)であり;I=慣性モーメント(m4)である。
【0221】
梁の厚さは、デジタルカリパーを用いて測定された。梁の撓みを測定後、梁を2.54cm×2.54cmの四角に切断し、秤量し、密度を測定した。この試験結果は、表2に示している。8%サンプルは全て、2%サンプルよりも撓みに対して抵抗性であることを見ることができる。圧縮2%スポンジに関する平均弾性率(MPa)は、キトサン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースおよびアルギン酸に関してそれぞれ、6.43±3.3、1.75、3.5および2.9±0.4である。8%スポンジに関する平均弾性率(MPa)は、キトサン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースおよびアルギン酸に関してそれぞれ、10.6±3.3、12.4、4.54および5.7±2.1である。圧縮2%スポンジに対する8%スポンジの平均弾性率比は、キトサン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースおよびアルギン酸に関してそれぞれ、0.61、0.14、0.77および0.51である。
【0222】
【表14】
PAA=ポリアクリル酸、CMC=カルボキシメチルセルロース、AA=アルギン酸。
【0223】
(実施例10)
プレスされた2パーセント溶液、複合ポリアクリル酸スポンジ(N=2)試験片(5cm×5cm)を、ブタ全血中、室温で10秒間浸した。次に該試験片を、平坦なPVC表面に4mm直径の穿孔を中心にして付着させ、荷重圧(750mmHg)で3分間保持した。この時間終了時に、穿孔下のブタ全血を室温で300mmHgまでの圧力に3分間ランプし、加圧(50mmHg/秒近辺)してから、付着した試験片が破損するまで同様な速度で再度ランプした。試験片の破損は、血圧が2300mmHg以上であった場合に生じた。破損は、スポンジの粘着性破壊によるものであった。
【0224】
(実施例11)
凍結棚と極めて良好な熱的接触を達成し、凍結時のコースクラスト形成を防ぐため、また成長する垂直ラメラに対して直角の制御されたレベルの剪断応力を適用するためのアプローチを記載する。加熱密封されたフォイル裏打ちポーチ(15cm×23cm)に、200gの2%キトサン溶液を充填した。全ての空気を、最終的密封前にポーチから除去した。−25℃で実験室用のVirtis凍結乾燥機内の平行プレート棚間にポーチを入れ、少なくとも180分間凍結させた。Virtis乾燥機は、上部棚を下部棚上に下げることができる「ストッパリング」装置を有したため、下部棚上のスペーサー間に置かれたキトサン充填のフォイルポーチにしっかりと接触させ、荷重をかけることができた。上部棚が最下部の棚に下がった場合、上部棚が、溶液の充填されたポーチの上面にしっかりと留まるようなレベルにポーチを充填した。ポーチ上の圧力の程度は、上部棚の空の重量および2つの棚間に留まっているポーチ数により制御できた。本実施例において、1.7cmスペーサーバーが用いられ、2つのポーチだけが棚間に置かれ、ポーチに対する荷重は10kg近辺であった。凍結乾燥前に、ストッパー付きの棚を上昇させ;凍結プラークをポーチから除去し、冷却凍結乾燥機の棚に置いた。凍結の際のポーチ内の膨張は、加熱密封の部分的な内部引き裂きにより調整された。引き続きプラークを、スポンジに凍結乾燥した。該スポンジを通る横断面は、該スポンジの上面および底面から成長し、中間部で交わる均一なラメラ構造を示した。上部構造は、底部構造の鏡像体であった。ラメラは、垂直に対して20°から30°の間で、該スポンジの中心から縁への方向で全て均一に配向されていた。該スポンジは、結晶粒界が無いことを示した。該スポンジを1.7cmから0.55cmの厚さまでプレスした。引張り強度、適合性、および過酷な曲げに対する耐引裂き性または耐断裂性に関して優れた機械特性を有した。該スポンジを焼成し、PVCフォーム裏地により裏打ちし、γ線を15kGyで照射した。
【0225】
単一の楕円形試験片を、急性ブタモデルにおける大動脈穿孔に対して適用した。これは、30分の試験時間にわたり動脈出血を止血するのに有効であった。外科医は、該サンプルが極めて良好な適合性を有したことを述べた。
【0226】
(実施例12)
簡単な陽性テクスチャー加工表面を、10cm×10cm×1.7cmのキトサンスポンジ上に創製した。これは、陰性パターン化された10cm×10cm×0.25cmのアルミニウムカードを用いて達成された。このパターンは、平坦なアルミニウム面上で400グリットの湿った紙および乾いた紙を操作することにより作製した。この表面を、非持続性の赤色染料で被覆し、その大部分を、乾いた布で拭くことにより表面の上部から除いた。この表面に対して圧縮されたキトサンスポンジは、アルミニウムカードの赤色染料により明らかとなった陽性の表面パターン化を示した。
【0227】
上記に検討された全ての引用文献は、全ての目的のために参照としてそれらの全体が本明細書に組み込まれている。本発明は、それらの好ましい実施形態を参照にして具体的に示され、記載されているが、形態および詳細における種々の変形が、添付の請求項により定義されている本発明の精神および範囲から逸脱することなく作製し得ることが当業者により解される。
【図面の簡単な説明】
【0228】
【図1】図1は、初期非圧縮創傷被覆材を通る横断面のフォトデジタル像を示している。
【図2】図2は、非圧縮創傷被覆材における配向層構造を通る横断面のフォトデジタル像を示している。
【図3】図3は、基材に対して垂直に切断した相互接続多孔性キトサン創傷被覆材構造の光学顕微鏡写真を示している。
【図4】図4は、加熱および圧縮後のキトサン生体材料創傷被覆材の写真を示している。
【図5】図5は、圧縮キトサン創傷被覆材の典型的な基材表面の走査電子光学顕微鏡を示している。高倍率の差込図(棒線=100ミクロン)。
【図6】図6は、キトサン/脾臓外傷部位および隣接脾臓面を通る組織学的染色断面を示している。パッチと脾臓との間のフィブリン/血小板の豊富な凝血塊(B)による凝集凝血塊応答(A)。図は、脾臓とキトサンとの間の極めて良好な接着を証明している。
【図7】図7は、キトサンによって密封された胸部大動脈の写真を示している。
【図8】図8は、穿孔外傷を示す固定胸部大動脈を示している。
【図9】図9は、胸部大動脈外傷を通る染色組織学的断面を示している。
【図10】図10は、強力に接着した被覆材におけるインビトロの破壊圧不成功の写真を示している。
【図11】図11は、γ線照射サンプルおよび非照射(すなわち、非滅菌)サンプルに関する水分および血液吸着結果の棒グラフを示している。
【図12】図12は、典型的なキトサンスポンジ外観の詳細図である。図12Aは、側縁部およびスポンジの上部を示す、スポンジの側面平面図であり、図12Bは、このスポンジの中央領域を通る横断面(12cm×1.7cm)であり、そして図12Cは、異なる結晶粒界によって隔てられた、異なる表面ラメラ方向の領域の違いを示す、このスポンジ基材の平面図である。
【図13】図13は、平行な面の間で80℃にて10mm/分で、17mmから5mmの厚さに圧縮された典型的な2%溶液切断スポンジに見られる、スポンジ内部構造に及ぼす圧縮の効果を示している。図13Aは、圧縮前の、垂直に配向するラメラ上部の「表皮」層Cおよび微細な「毛羽立った」ラメラ基材層Bを示し、そして図13Bは、圧縮後の、部分的に圧縮された「表皮」層Cおよび非常に圧縮された基材層Bを示す。
【図14】図14は、表面ちりめん皺を示す単一ラメラの詳細図を示している。
【図15】図15は、ラメラ表面の詳細図を示している。
【図16】図16は、ラメラの上面に隆起しているちりめん皺構造の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示している。図16(a)〜16(g)は、種々の倍率におけるちりめん皺を示している。
【図17】図17は、ミクロかん子を用いてキトサン基材近辺から除去した単一ラメラの側方照明による光学顕微鏡画像を示している。微細なちりめん皺構造がラメラの上面に垂直に隆起しているのを見ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性ポリマーを含む出血抑制用圧縮スポンジであって、約0.6g/cm3から0.15g/cm3までの圧縮スポンジ密度を有する圧縮スポンジ。
【請求項2】
前記親水性ポリマーが、アルギネート、キトサン、親水性ポリアミン、キトサン誘導体、ポリリジン、ポリエチレンイミン、キサンタン、カラゲナン、第四級アンモニウムポリマー、硫酸コンドロイチン、澱粉、修飾セルロースポリマー、デキストラン、ヒアルロナンまたはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の圧縮スポンジ。
【請求項3】
前記澱粉が、アミラーゼ、アミロペクチンおよびアミロペクチンとアミラーゼとの組み合わせよりなる群から選択される、請求項2に記載の圧縮スポンジ。
【請求項4】
前記親水性ポリマーが、キトサンである、請求項1に記載の圧縮スポンジ。
【請求項5】
前記キトサンが、少なくとも約100kDaの重量平均分子量を有する、請求項4に記載の圧縮スポンジ。
【請求項6】
前記キトサンが、少なくとも約150kDaの重量平均分子量を有する、請求項4に記載の圧縮スポンジ。
【請求項7】
前記キトサンが、少なくとも約300kDaの重量平均分子量を有する、請求項4に記載の圧縮スポンジ。
【請求項8】
前記キトサンが、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃において、約100センチポアズから約2000センチポアズである粘度を有する、請求項4に記載の圧縮スポンジ。
【請求項9】
前記キトサンが、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃において、約125センチポアズから約1000センチポアズである粘度を有する、請求項4に記載の圧縮スポンジ。
【請求項10】
前記キトサンが、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃において、約150センチボアズから約500センチボアズである粘度を有する、請求項4に記載の圧縮スポンジ。
【請求項11】
前記圧縮スポンジが、活性成分をさらに含む、請求項1に記載の圧縮スポンジ。
【請求項12】
前記活性成分が、カルシウム、トロンビン、第VIIa因子、第XIII因子、トロンボキサンA2、プロスタグランジン−2a、上皮増殖因子、血小板由来増殖因子、フォン・ウィルブランド因子、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF−α、形質転換増殖因子(TGF)、TGF−α、TGF−β、インスリン様増殖因子、線維芽細胞増殖因子、ケラチノサイト増殖因子、神経成長因子、ペニシリン、アンピシリン、メチシリン、アモキシシリン、クラバモックス、クラブラン酸、アモキシシリン、アズトレオナム、イミペネム、ストレプトマイシン、カナマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、クリンダマイシン、エリスロマイシン、ポリミキシン、バシトラシン、アムホテリシン、ナイスタチン、リファンピシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、クロラムフェニコールおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項11に記載の圧縮スポンジ。
【請求項13】
親水性ポリマースポンジならびに該スポンジの内部におよび/または該スポンジ表面に1つまたは複数の湿潤可能なポリマーマトリクスを含む出血抑制用圧縮複合スポンジ。
【請求項14】
前記親水性ポリマーが、アルギネート、親水性ポリアミン、キトサン誘導体、ポリリジン、ポリエチレンイミン、キサンタン、カラゲナン、第四級アンモニウムポリマー、硫酸コンドロイチン、澱粉、修飾セルロースポリマー、デキストラン、ヒアルロナンおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項15】
前記澱粉が、アミラーゼ、アミロペクチンおよびアミロペクチンとアミラーゼとの両方の組み合わせよりなる群から選択される、請求項14に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項16】
前記湿潤可能なポリマーが、不織マット類、織マット類、成形ポリマーメッシュおよび低密度スポンジ類よりなる群から選択される、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項17】
前記湿潤可能なポリマーマトリクスが、キチン、アルギネート、中和キトサン、再アセチル化キトサン、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(e−カプロラクトン)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(β−ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリホスファゼン、ポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセンポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルポリマー、ポリエステル、ポリアミドおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項16に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項18】
前記親水性ポリマーがキトサンである、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項19】
前記キトサンが、少なくとも約100kDaの重量平均分子量を有する、請求項18に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項20】
前記キトサンが、少なくとも約150kDaの重量平均分子量を有する、請求項18に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項21】
前記キトサンが、少なくとも約300kDaの重量平均分子量を有する、請求項18に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項22】
前記キトサンが、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃で約100センチポアズから約2000センチポアズの粘度を有する、請求項18に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項23】
前記キトサンが、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃で約125センチポアズから約1000センチポアズの粘度を有する、請求項18に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項24】
前記キトサンが、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃で約150センチボアズから約500センチボアズの粘度を有する、請求項18に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項25】
前記スポンジが、親水性ポリマーを含浸させた糸を含む、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項26】
前記糸が親水性ポリマーを含浸されている、請求項25に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項27】
前記親水性ポリマーがキトサンである、請求項26に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項28】
前記親水性ポリマーが、アルギネート、親水性ポリアミン、キトサン誘導体、ポリリジン、ポリエチレンイミン、キサンタン、カラゲナン、第四級アンモニウムポリマー、硫酸コンドロイチン、澱粉、修飾セルロースポリマー、デキストラン、ヒアルロナンまたはそれらの組み合わせである、請求項26に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項29】
前記澱粉が、アミラーゼ、アミロペクチンおよびアミロペクチンとアミラーゼとの両方の組み合わせよりなる群から選択される、請求項28に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項30】
前記湿潤可能なメッシュが、不織メッシュである、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項31】
前記スポンジが、約15ミクロンから約300ミクロンの孔径の孔を含有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項32】
前記スポンジが、約30ミクロンから約250ミクロンの孔径の孔を含有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項33】
前記スポンジが、約100ミクロンから約225ミクロンの孔径の孔を含有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項34】
前記スポンジが、約125ミクロンから約200ミクロンの孔径の孔を含有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項35】
前記スポンジが、約150ミクロンから約175ミクロンの孔径の孔を含有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項36】
前記スポンジが、1cm2当たり約100cm2から1cm2当たり約1000cm2の、該スポンジの基材表面当たりの利用可能な血液接触表面積を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項37】
前記スポンジが、1cm2当たり約200cm2から1cm2当たり約800cm2の、該スポンジの基材表面当たりの利用可能な血液接触表面積を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項38】
前記スポンジが、1cm2当たり約300cm2から1cm2当たり約500cm2の、該スポンジの基材表面当たりの利用可能な血液接触表面積を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項39】
創傷表面積当たりの利用可能なキトサン生体材料の質量が、約0.02g/cm2から約1.0g/cm2である、請求項18に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項40】
創傷表面積当たりの利用可能なキトサン生体材料の質量が、約0.04g/cm2から約0.5g/cm2である、請求項18に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項41】
創傷表面積当たりの利用可能なキトサン生体材料の質量が、約0.06g/cm2から約0.1g/cm2である、請求項18に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項42】
前記圧縮複合スポンジが、裏地支持層をさらに含む、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項43】
前記裏地支持層が、ポリマー材料の層である、請求項42に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項44】
前記ポリマー材料が、合成非生分解性材料または天然生分解性ポリマーである、請求項43に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項45】
前記合成生分解性材料が、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(e−カプロラクトン)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(β−ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タートロン酸)、ポリホスファゼン、前記ポリマー類の合成に用いられるモノマー類のコポリマーまたはそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項44に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項46】
前記天然ポリマーが、キチン、アルギン、澱粉、デキストラン、コラーゲン、卵白、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項43に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項47】
前記合成非生分解性材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセンポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルポリマー、ポリエステルおよびポリアミドよりなる群から選択される、請求項44に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項48】
前記圧縮複合スポンジが、前記創傷部位に対して、約40kPaから約500kPaの接着度を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項49】
前記圧縮複合スポンジが、前記創傷部位に対して、約60kPaから約250kPaの接着度を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項50】
前記圧縮複合スポンジが、前記創傷部位に対して、約100kPaから約200kPaの接着度を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項51】
前記圧縮複合スポンジが、創傷被覆材−血液界面において、前記創傷から流れる血液と組み合わせて接着材料を形成する能力のある、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項52】
前記接着材料が、キトサン接着材料である、請求項51に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項53】
前記キトサン接着材料は、前記創傷が密封されている場合、好ましくは約5.5以下のpHを有する、請求項52に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項54】
前記キトサン接着材料は、前記創傷が密封されている場合、好ましくは、約4.5以下のpHを有する、請求項52に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項55】
前記キトサン接着材料は、前記創傷が密封されている場合、好ましくは、約4.0以下のpHを有する、請求項52に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項56】
前記接着材料が、酢酸、ギ酸、乳酸、アスコルビン酸、塩酸およびクエン酸よりなる群から選択される酸を含む、請求項52に記載の圧縮キトサン複合スポンジ。
【請求項57】
前記圧縮複合スポンジが、約3.0mm以上で約8mm以下の厚さを有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項58】
前記圧縮複合スポンジが、約3.5mm以上で約7mm以下の厚さを有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項59】
前記圧縮複合スポンジが、約4.0mm以上で約6mm以下の厚さを有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項60】
前記圧縮複合スポンジが、約0.1MPaから約1.0MPaの極限引張応力を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項61】
前記圧縮複合スポンジが、約0.15MPaから約0.8MPaの極限引張応力を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項62】
前記圧縮複合スポンジが、約0.25MPaから約0.5MPaの極限引張応力を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項63】
前記圧縮複合スポンジが、約5%の極限伸び率を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項64】
前記圧縮複合スポンジが、約10%の極限伸び率を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項65】
前記圧縮複合スポンジが、約15%の極限伸び率を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項66】
(a)低密度スポンジを凍結/凍結乾燥するステップ、および
(b)1分当たり10mmの好ましい速度、および80℃の好ましい制御温度において、該低密度スポンジを圧縮し、それによって約0.1g/cm3から約0.2g/cm3の密度を有する圧縮スポンジを得るステップ、
を包含する、請求項1に記載の出血抑制用圧縮スポンジを調製するプロセス。
【請求項67】
(a)80℃の制御温度で、1分当たり約10mmの速度で前記得られた低密度スポンジを圧縮して約0.1g/cm3から約0.2g/cm3の密度を有する圧縮スポンジを得るステップであって、該低密度スポンジは圧縮前に凍結も凍結乾燥もされていない、ステップを包含する、請求項1に記載の出血抑制用圧縮スポンジを調製するプロセス。
【請求項68】
前記低密度スポンジが、約0.010g/cm3から約0.035g/cm3の密度を有する、請求項67に記載のプロセス。
【請求項69】
前記圧縮スポンジが、約0.1g/cm3から約0.15g/cm3の密度を有する、請求項67に記載のプロセス。
【請求項70】
a) キトサン生体材料溶液を加熱し、該キトサン生体材料溶液に減圧を適用することによって該キトサン生体材料溶液を脱気するステップ;
b) 該キトサン生体材料溶液を凍結させるステップ;
c) 該凍結キトサン生体材料の構造的完全性を損傷することなく、該キトサン生体材料中の水分が固相から気相になるように凍結キトサン生体材料の内部から水分を除去するステップ;
d) 1分当たり約10mmの好ましい速度で該キトサン生体材料を圧縮し、それによって、約0.1g/cm3から約0.2g/cm3の密度を有する圧縮スポンジを得るステップ;および
e) 約80℃で約30分間、該圧縮キトサンスポンジを焼成するステップ、
を包含する、請求項13に記載の出血抑制用圧縮複合スポンジを調製するプロセス。
【請求項71】
ステップ(b)の前記キトサン生体材料の凍結の間、前記温度が、予め決められた時間をかけて徐々に低下される、請求項70に記載のプロセス。
【請求項72】
前記ステップ(b)の温度が、約−25℃以下の最終凍結温度である、請求項70に記載のプロセス。
【請求項73】
前記ステップ(b)の温度が、約−35℃以下の最終凍結温度である、請求項70に記載のプロセス。
【請求項74】
前記ステップ(b)の温度が、約−45℃以下の最終凍結温度である、請求項70に記載のプロセス。
【請求項75】
前記水分除去が、前記凍結したキトサン生体材料を凍結乾燥することによって実施される、請求項70に記載のプロセス。
【請求項76】
前記凍結前に、前記脱気キトサン溶液にアルゴン、窒素およびヘリウムよりなる群から選択される気体を添加するステップをさらに包含する、請求項70に記載のプロセス。
【請求項77】
前記圧縮スポンジが、滅菌される、請求項70に記載のプロセス。
【請求項78】
前記圧縮スポンジが、γ線照射により滅菌される、請求項70に記載のプロセス。
【請求項79】
請求項1に記載の圧縮スポンジまたは請求項13に記載の圧縮複合スポンジを、それを必要とする被験体に当てることを包含する被験体における重篤な出血を防止するプロセス。
【請求項80】
前記被験体が哺乳動物である、請求項79に記載のプロセス。
【請求項81】
前記哺乳動物がヒトである、請求項79に記載のプロセス。
【請求項82】
前記被験体が、もし、前記出血が抑制されないままであれば、20分から30分以内に、全血液の約30〜40%の損失が生じるような重篤な出血を被っている、請求項79に記載のプロセス。
【請求項83】
前記圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジが、出血外傷部上に直接、約60kPaから80kPaの圧力で押さえられ、3分間から5分間、適所に保持されてから放され、覆って巻きつけられる、請求項79に記載のプロセス。
【請求項84】
請求項1に記載の圧縮スポンジまたは請求項13に記載の圧縮複合スポンジ、覆い用ガーゼロールおよび創傷巻き付け用Ace包帯を備える、重篤な出血を処置するための包帯キット。
【請求項85】
ミクロテクスチャー加工面に前記スポンジの組織接触面を押し付けることを包含する、請求項1および13に記載のスポンジの機械的接合およびかみ合わせのプロセス。
【請求項86】
前記ミクロテクスチャー加工面が、化学的エッチングによって調製された面、イオンビーム表面削摩によって調製された面、機械的切断によって調製された面およびレーザー削摩によって調製された面よりなる群から選択される、請求項85に記載のプロセス。
【請求項87】
ミクロテクスチャー加工面に前記スポンジの組織接触面を押し付けることを包含する、請求項1および13に記載のスポンジの機械的牽引力を改善するプロセス。
【請求項88】
前記ミクロテクスチャー加工面が、化学的エッチングによって調製された面、および粒子吹きつけ法によって調製された面よりなる群から選択される、請求項87に記載のプロセス。
【請求項89】
請求項1および13に記載のスポンジの表面上に粗い外被が形成されることを制限するかまたは阻止するプロセスであって、該スポンジの表面をポリマーフィルム、ポリマープレート、高所プラスチックプレート、または水分不浸透性通気性膜フィルムで覆うことを包含するプロセス。
【請求項90】
低密度スポンジであって、該スポンジは、約0.05g/cm3未満の密度を有するスポンジを、該スポンジが約0.08g/cm3未満の密度に達するまで、圧縮することによって形成され、該スポンジが、凍結または凍結乾燥以外の方法によって形成される低密度スポンジ。
【請求項91】
前記スポンジが、転相法、予め形成されたマトリクスに対する活性成分の共有結合によって、および発泡法によって調製されたスポンジ、よりなる群から選択される方法を用いて形成される、請求項90に記載の低密度スポンジ。
【請求項92】
前記スポンジが、少なくとも1つのさらなる親水性ポリマーをさらに含む、請求項1および13に記載の圧縮スポンジおよび圧縮複合スポンジ。
【請求項93】
前記親水性ポリマーが、アルギネート、キトサン、親水性ポリアミン、キトサン誘導体、ポリリジン、ポリエチレンイミン、キサンタン、カラゲナン、第四級アンモニウムポリマー、硫酸コンドロイチン、澱粉、修飾セルロースポリマー、デキストラン、ヒアルロナンおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項92に記載の圧縮スポンジおよび圧縮複合スポンジ。
【請求項94】
前記澱粉が、アミラーゼ、アミロペクチンおよびアミロペクチンとアミラーゼとの組み合わせよりなる群から選択される、請求項93に記載の圧縮スポンジ。
【請求項95】
前記親水性ポリマーがキトサンである、請求項92に記載の圧縮スポンジ。
【請求項1】
親水性ポリマーを含む出血抑制用圧縮スポンジであって、約0.6g/cm3から0.15g/cm3までの圧縮スポンジ密度を有する圧縮スポンジ。
【請求項2】
前記親水性ポリマーが、アルギネート、キトサン、親水性ポリアミン、キトサン誘導体、ポリリジン、ポリエチレンイミン、キサンタン、カラゲナン、第四級アンモニウムポリマー、硫酸コンドロイチン、澱粉、修飾セルロースポリマー、デキストラン、ヒアルロナンまたはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の圧縮スポンジ。
【請求項3】
前記澱粉が、アミラーゼ、アミロペクチンおよびアミロペクチンとアミラーゼとの組み合わせよりなる群から選択される、請求項2に記載の圧縮スポンジ。
【請求項4】
前記親水性ポリマーが、キトサンである、請求項1に記載の圧縮スポンジ。
【請求項5】
前記キトサンが、少なくとも約100kDaの重量平均分子量を有する、請求項4に記載の圧縮スポンジ。
【請求項6】
前記キトサンが、少なくとも約150kDaの重量平均分子量を有する、請求項4に記載の圧縮スポンジ。
【請求項7】
前記キトサンが、少なくとも約300kDaの重量平均分子量を有する、請求項4に記載の圧縮スポンジ。
【請求項8】
前記キトサンが、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃において、約100センチポアズから約2000センチポアズである粘度を有する、請求項4に記載の圧縮スポンジ。
【請求項9】
前記キトサンが、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃において、約125センチポアズから約1000センチポアズである粘度を有する、請求項4に記載の圧縮スポンジ。
【請求項10】
前記キトサンが、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃において、約150センチボアズから約500センチボアズである粘度を有する、請求項4に記載の圧縮スポンジ。
【請求項11】
前記圧縮スポンジが、活性成分をさらに含む、請求項1に記載の圧縮スポンジ。
【請求項12】
前記活性成分が、カルシウム、トロンビン、第VIIa因子、第XIII因子、トロンボキサンA2、プロスタグランジン−2a、上皮増殖因子、血小板由来増殖因子、フォン・ウィルブランド因子、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF−α、形質転換増殖因子(TGF)、TGF−α、TGF−β、インスリン様増殖因子、線維芽細胞増殖因子、ケラチノサイト増殖因子、神経成長因子、ペニシリン、アンピシリン、メチシリン、アモキシシリン、クラバモックス、クラブラン酸、アモキシシリン、アズトレオナム、イミペネム、ストレプトマイシン、カナマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、クリンダマイシン、エリスロマイシン、ポリミキシン、バシトラシン、アムホテリシン、ナイスタチン、リファンピシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、クロラムフェニコールおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項11に記載の圧縮スポンジ。
【請求項13】
親水性ポリマースポンジならびに該スポンジの内部におよび/または該スポンジ表面に1つまたは複数の湿潤可能なポリマーマトリクスを含む出血抑制用圧縮複合スポンジ。
【請求項14】
前記親水性ポリマーが、アルギネート、親水性ポリアミン、キトサン誘導体、ポリリジン、ポリエチレンイミン、キサンタン、カラゲナン、第四級アンモニウムポリマー、硫酸コンドロイチン、澱粉、修飾セルロースポリマー、デキストラン、ヒアルロナンおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項15】
前記澱粉が、アミラーゼ、アミロペクチンおよびアミロペクチンとアミラーゼとの両方の組み合わせよりなる群から選択される、請求項14に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項16】
前記湿潤可能なポリマーが、不織マット類、織マット類、成形ポリマーメッシュおよび低密度スポンジ類よりなる群から選択される、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項17】
前記湿潤可能なポリマーマトリクスが、キチン、アルギネート、中和キトサン、再アセチル化キトサン、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(e−カプロラクトン)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(β−ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリホスファゼン、ポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセンポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルポリマー、ポリエステル、ポリアミドおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項16に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項18】
前記親水性ポリマーがキトサンである、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項19】
前記キトサンが、少なくとも約100kDaの重量平均分子量を有する、請求項18に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項20】
前記キトサンが、少なくとも約150kDaの重量平均分子量を有する、請求項18に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項21】
前記キトサンが、少なくとも約300kDaの重量平均分子量を有する、請求項18に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項22】
前記キトサンが、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃で約100センチポアズから約2000センチポアズの粘度を有する、請求項18に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項23】
前記キトサンが、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃で約125センチポアズから約1000センチポアズの粘度を有する、請求項18に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項24】
前記キトサンが、酢酸(AA)の1%溶液中、25℃で約150センチボアズから約500センチボアズの粘度を有する、請求項18に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項25】
前記スポンジが、親水性ポリマーを含浸させた糸を含む、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項26】
前記糸が親水性ポリマーを含浸されている、請求項25に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項27】
前記親水性ポリマーがキトサンである、請求項26に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項28】
前記親水性ポリマーが、アルギネート、親水性ポリアミン、キトサン誘導体、ポリリジン、ポリエチレンイミン、キサンタン、カラゲナン、第四級アンモニウムポリマー、硫酸コンドロイチン、澱粉、修飾セルロースポリマー、デキストラン、ヒアルロナンまたはそれらの組み合わせである、請求項26に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項29】
前記澱粉が、アミラーゼ、アミロペクチンおよびアミロペクチンとアミラーゼとの両方の組み合わせよりなる群から選択される、請求項28に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項30】
前記湿潤可能なメッシュが、不織メッシュである、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項31】
前記スポンジが、約15ミクロンから約300ミクロンの孔径の孔を含有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項32】
前記スポンジが、約30ミクロンから約250ミクロンの孔径の孔を含有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項33】
前記スポンジが、約100ミクロンから約225ミクロンの孔径の孔を含有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項34】
前記スポンジが、約125ミクロンから約200ミクロンの孔径の孔を含有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項35】
前記スポンジが、約150ミクロンから約175ミクロンの孔径の孔を含有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項36】
前記スポンジが、1cm2当たり約100cm2から1cm2当たり約1000cm2の、該スポンジの基材表面当たりの利用可能な血液接触表面積を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項37】
前記スポンジが、1cm2当たり約200cm2から1cm2当たり約800cm2の、該スポンジの基材表面当たりの利用可能な血液接触表面積を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項38】
前記スポンジが、1cm2当たり約300cm2から1cm2当たり約500cm2の、該スポンジの基材表面当たりの利用可能な血液接触表面積を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項39】
創傷表面積当たりの利用可能なキトサン生体材料の質量が、約0.02g/cm2から約1.0g/cm2である、請求項18に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項40】
創傷表面積当たりの利用可能なキトサン生体材料の質量が、約0.04g/cm2から約0.5g/cm2である、請求項18に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項41】
創傷表面積当たりの利用可能なキトサン生体材料の質量が、約0.06g/cm2から約0.1g/cm2である、請求項18に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項42】
前記圧縮複合スポンジが、裏地支持層をさらに含む、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項43】
前記裏地支持層が、ポリマー材料の層である、請求項42に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項44】
前記ポリマー材料が、合成非生分解性材料または天然生分解性ポリマーである、請求項43に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項45】
前記合成生分解性材料が、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(e−カプロラクトン)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(β−ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タートロン酸)、ポリホスファゼン、前記ポリマー類の合成に用いられるモノマー類のコポリマーまたはそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項44に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項46】
前記天然ポリマーが、キチン、アルギン、澱粉、デキストラン、コラーゲン、卵白、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項43に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項47】
前記合成非生分解性材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセンポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルポリマー、ポリエステルおよびポリアミドよりなる群から選択される、請求項44に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項48】
前記圧縮複合スポンジが、前記創傷部位に対して、約40kPaから約500kPaの接着度を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項49】
前記圧縮複合スポンジが、前記創傷部位に対して、約60kPaから約250kPaの接着度を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項50】
前記圧縮複合スポンジが、前記創傷部位に対して、約100kPaから約200kPaの接着度を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項51】
前記圧縮複合スポンジが、創傷被覆材−血液界面において、前記創傷から流れる血液と組み合わせて接着材料を形成する能力のある、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項52】
前記接着材料が、キトサン接着材料である、請求項51に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項53】
前記キトサン接着材料は、前記創傷が密封されている場合、好ましくは約5.5以下のpHを有する、請求項52に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項54】
前記キトサン接着材料は、前記創傷が密封されている場合、好ましくは、約4.5以下のpHを有する、請求項52に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項55】
前記キトサン接着材料は、前記創傷が密封されている場合、好ましくは、約4.0以下のpHを有する、請求項52に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項56】
前記接着材料が、酢酸、ギ酸、乳酸、アスコルビン酸、塩酸およびクエン酸よりなる群から選択される酸を含む、請求項52に記載の圧縮キトサン複合スポンジ。
【請求項57】
前記圧縮複合スポンジが、約3.0mm以上で約8mm以下の厚さを有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項58】
前記圧縮複合スポンジが、約3.5mm以上で約7mm以下の厚さを有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項59】
前記圧縮複合スポンジが、約4.0mm以上で約6mm以下の厚さを有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項60】
前記圧縮複合スポンジが、約0.1MPaから約1.0MPaの極限引張応力を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項61】
前記圧縮複合スポンジが、約0.15MPaから約0.8MPaの極限引張応力を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項62】
前記圧縮複合スポンジが、約0.25MPaから約0.5MPaの極限引張応力を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項63】
前記圧縮複合スポンジが、約5%の極限伸び率を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項64】
前記圧縮複合スポンジが、約10%の極限伸び率を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項65】
前記圧縮複合スポンジが、約15%の極限伸び率を有する、請求項13に記載の圧縮複合スポンジ。
【請求項66】
(a)低密度スポンジを凍結/凍結乾燥するステップ、および
(b)1分当たり10mmの好ましい速度、および80℃の好ましい制御温度において、該低密度スポンジを圧縮し、それによって約0.1g/cm3から約0.2g/cm3の密度を有する圧縮スポンジを得るステップ、
を包含する、請求項1に記載の出血抑制用圧縮スポンジを調製するプロセス。
【請求項67】
(a)80℃の制御温度で、1分当たり約10mmの速度で前記得られた低密度スポンジを圧縮して約0.1g/cm3から約0.2g/cm3の密度を有する圧縮スポンジを得るステップであって、該低密度スポンジは圧縮前に凍結も凍結乾燥もされていない、ステップを包含する、請求項1に記載の出血抑制用圧縮スポンジを調製するプロセス。
【請求項68】
前記低密度スポンジが、約0.010g/cm3から約0.035g/cm3の密度を有する、請求項67に記載のプロセス。
【請求項69】
前記圧縮スポンジが、約0.1g/cm3から約0.15g/cm3の密度を有する、請求項67に記載のプロセス。
【請求項70】
a) キトサン生体材料溶液を加熱し、該キトサン生体材料溶液に減圧を適用することによって該キトサン生体材料溶液を脱気するステップ;
b) 該キトサン生体材料溶液を凍結させるステップ;
c) 該凍結キトサン生体材料の構造的完全性を損傷することなく、該キトサン生体材料中の水分が固相から気相になるように凍結キトサン生体材料の内部から水分を除去するステップ;
d) 1分当たり約10mmの好ましい速度で該キトサン生体材料を圧縮し、それによって、約0.1g/cm3から約0.2g/cm3の密度を有する圧縮スポンジを得るステップ;および
e) 約80℃で約30分間、該圧縮キトサンスポンジを焼成するステップ、
を包含する、請求項13に記載の出血抑制用圧縮複合スポンジを調製するプロセス。
【請求項71】
ステップ(b)の前記キトサン生体材料の凍結の間、前記温度が、予め決められた時間をかけて徐々に低下される、請求項70に記載のプロセス。
【請求項72】
前記ステップ(b)の温度が、約−25℃以下の最終凍結温度である、請求項70に記載のプロセス。
【請求項73】
前記ステップ(b)の温度が、約−35℃以下の最終凍結温度である、請求項70に記載のプロセス。
【請求項74】
前記ステップ(b)の温度が、約−45℃以下の最終凍結温度である、請求項70に記載のプロセス。
【請求項75】
前記水分除去が、前記凍結したキトサン生体材料を凍結乾燥することによって実施される、請求項70に記載のプロセス。
【請求項76】
前記凍結前に、前記脱気キトサン溶液にアルゴン、窒素およびヘリウムよりなる群から選択される気体を添加するステップをさらに包含する、請求項70に記載のプロセス。
【請求項77】
前記圧縮スポンジが、滅菌される、請求項70に記載のプロセス。
【請求項78】
前記圧縮スポンジが、γ線照射により滅菌される、請求項70に記載のプロセス。
【請求項79】
請求項1に記載の圧縮スポンジまたは請求項13に記載の圧縮複合スポンジを、それを必要とする被験体に当てることを包含する被験体における重篤な出血を防止するプロセス。
【請求項80】
前記被験体が哺乳動物である、請求項79に記載のプロセス。
【請求項81】
前記哺乳動物がヒトである、請求項79に記載のプロセス。
【請求項82】
前記被験体が、もし、前記出血が抑制されないままであれば、20分から30分以内に、全血液の約30〜40%の損失が生じるような重篤な出血を被っている、請求項79に記載のプロセス。
【請求項83】
前記圧縮スポンジまたは圧縮複合スポンジが、出血外傷部上に直接、約60kPaから80kPaの圧力で押さえられ、3分間から5分間、適所に保持されてから放され、覆って巻きつけられる、請求項79に記載のプロセス。
【請求項84】
請求項1に記載の圧縮スポンジまたは請求項13に記載の圧縮複合スポンジ、覆い用ガーゼロールおよび創傷巻き付け用Ace包帯を備える、重篤な出血を処置するための包帯キット。
【請求項85】
ミクロテクスチャー加工面に前記スポンジの組織接触面を押し付けることを包含する、請求項1および13に記載のスポンジの機械的接合およびかみ合わせのプロセス。
【請求項86】
前記ミクロテクスチャー加工面が、化学的エッチングによって調製された面、イオンビーム表面削摩によって調製された面、機械的切断によって調製された面およびレーザー削摩によって調製された面よりなる群から選択される、請求項85に記載のプロセス。
【請求項87】
ミクロテクスチャー加工面に前記スポンジの組織接触面を押し付けることを包含する、請求項1および13に記載のスポンジの機械的牽引力を改善するプロセス。
【請求項88】
前記ミクロテクスチャー加工面が、化学的エッチングによって調製された面、および粒子吹きつけ法によって調製された面よりなる群から選択される、請求項87に記載のプロセス。
【請求項89】
請求項1および13に記載のスポンジの表面上に粗い外被が形成されることを制限するかまたは阻止するプロセスであって、該スポンジの表面をポリマーフィルム、ポリマープレート、高所プラスチックプレート、または水分不浸透性通気性膜フィルムで覆うことを包含するプロセス。
【請求項90】
低密度スポンジであって、該スポンジは、約0.05g/cm3未満の密度を有するスポンジを、該スポンジが約0.08g/cm3未満の密度に達するまで、圧縮することによって形成され、該スポンジが、凍結または凍結乾燥以外の方法によって形成される低密度スポンジ。
【請求項91】
前記スポンジが、転相法、予め形成されたマトリクスに対する活性成分の共有結合によって、および発泡法によって調製されたスポンジ、よりなる群から選択される方法を用いて形成される、請求項90に記載の低密度スポンジ。
【請求項92】
前記スポンジが、少なくとも1つのさらなる親水性ポリマーをさらに含む、請求項1および13に記載の圧縮スポンジおよび圧縮複合スポンジ。
【請求項93】
前記親水性ポリマーが、アルギネート、キトサン、親水性ポリアミン、キトサン誘導体、ポリリジン、ポリエチレンイミン、キサンタン、カラゲナン、第四級アンモニウムポリマー、硫酸コンドロイチン、澱粉、修飾セルロースポリマー、デキストラン、ヒアルロナンおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項92に記載の圧縮スポンジおよび圧縮複合スポンジ。
【請求項94】
前記澱粉が、アミラーゼ、アミロペクチンおよびアミロペクチンとアミラーゼとの組み合わせよりなる群から選択される、請求項93に記載の圧縮スポンジ。
【請求項95】
前記親水性ポリマーがキトサンである、請求項92に記載の圧縮スポンジ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図16F】
【図16G】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図16F】
【図16G】
【図17】
【公表番号】特表2007−526026(P2007−526026A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547298(P2006−547298)
【出願日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/043084
【国際公開番号】WO2005/062880
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
【出願人】(506211517)ヘムコン, インコーポレイテッド (10)
【出願人】(506211609)プロビデンス ヘルス システム−オレゴン/ディー/ビー/エー セント ビンセント メディカル センター (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/043084
【国際公開番号】WO2005/062880
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
【出願人】(506211517)ヘムコン, インコーポレイテッド (10)
【出願人】(506211609)プロビデンス ヘルス システム−オレゴン/ディー/ビー/エー セント ビンセント メディカル センター (1)
【Fターム(参考)】
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