説明

創傷部を取り扱うためのシステム及び方法

傷(12)の領域を判定及び追跡するためのシステムが、傷(12)の輪郭のトレースを取得及び保持し得るフィルム(14)と、背板の表面及び基準面(22)を具える背板のテンプレート(20)であって、基準面(22)が背板の表面と視覚的にコントラストを成し、背板のテンプレート(20)が概略フィルム(14)を受容する大きさでありフィルム/テンプレートアッセンブリを形成する背板のテンプレート(20)と、フィルム/テンプレートアッセンブリに対して間隔を空けて斜めに概略配置されたデジタル画像装置であって、基準面、バックグラウンド面、及び傷のトレースを有するフィルム/テンプレートアッセンブリのデジタル画像(28)を取得するためのデジタル画像装置と、画像を処理して傷のトレースの中の領域を判定するためのデジタル画像処理装置と、を具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して生物学的な組織の回復の速さを測定するためのシステム及び方法に関する。本発明は、特に、傷の画像の取り込み、デジタル化、及び解析、及び傷の特徴の変化の程度の判定のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
傷の回復過程の速さ及び質を大いに高める傷の治療の分野で多くの進歩が近年なされている。効果的な傷の治療法を提供するのに見合うものは、傷の大きさ及び傷が回復する速さを測定する能力である。傷の回復の早さを判断する大雑把であるが一般に効果的な方法は、長期にわたって傷の大きさ全体の変化を追うことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
傷の大きさの変化を測定及び追跡するためのこれまでの取り組みは、多くの面で医療サービス提供者に治療の有効性の評価ができる必要な情報を与えることに失敗している。傷の大きさを測定するための多くの既存の方法は、透明又は半透明のフィルム及びペン又はマーカを使用してその端にそって患者の傷をトレースし、その後で解析のための何らかの方法でトレースしたものをデジタル化することを含んでいる。このような方法の一例は、トレースしたフィルムをタッチパッド面の上に配置して傷の輪郭を再びトレースすることを含んでいる。タッチパッドの電子機器は、その後で解析されるデータのデジタル配列にトレースを変換する。しすて、電子機器に関連するプロセッサがトレースの内側の面積を計算する。トレースの拡大又は縮小が行われないため、このようなシステムで測定可能な傷の大きさは機器のタッチセンサの面の大きさに限定される。さらに、このようなシステムは2つのトレースを含んでいて、一方は患者のトレースで他方はタッチパッドのトレースであり、漸進的エラー及び誤差の影響を受け易い。
【0004】
当技術分野で既知の他のシステムは、画像の取り込みに関する距離及び角度を考慮した直接的なデジタル画像処理法に頼っている。これらのシステムは非常に複雑であり、画像の表示に関する角度及び距離の変化を考慮に入れた非常に大きな処理能力を要する傾向にある。結局、画像認識処理は多くの場合精度良く且つ一貫して傷の周囲を規定することができないため、これらの複雑なシステムでさえも失敗する。
【0005】
傷及び傷の回復過程の背景
傷は一般に、皮膚の上皮の安定性の破壊として定義される。しかしながら、このような負傷は、真皮、皮下脂肪、筋膜、筋肉、さらには骨さえも含んで非常に深い可能性がある。適切な傷の治療は、組織の回復につながる非常に複雑で、動きのある協調的な一連の段階である。急激な傷の回復は、細胞外のマトリックス環境の中で協調して動いて損傷組織を修復する常在細胞集団及び遊走細胞集団の双方を含む動きのある過程である。(様々な理由により)このような様態ではいくつかの傷が回復に失敗するが、これは慢性的な傷と称される。
【0006】
組織の損傷に続いて、傷の強調的な回復が一般的に、止血、炎症、増殖、再形成から成る4つの重なり合っているが明確な段階を含んでいる。止血は、出血、凝固、血小板活性化及び補体活性化である傷の反応及び修復における第1の段階を含んでいる。炎症は、第一日目の終わり近くにのピークに達する。細胞の凝固が、次の7日から30日で発生し、
面積測定が最も役立つ期間を含んでいる。その間に、線維増殖、血管形成、再上皮化、及び細胞外マトリクスの合成が生じる。傷の中の初期のコラーゲン生成は、一般に約7日でピークに達する。傷の再上皮化が最適な条件の下で約48時間で生じ、その時点で傷が完全に閉塞する。回復中の傷は3週間で最大の引っ張り強度の15%から20%を有し、4ヵ月で最大の強度の60%を有する。初めの1ヵ月後に、分解及び再形成段階が開始し、細胞質及び血管が減少して引張強さが増加する。十分に成長した傷跡の形成に、多くの場合6から12ヵ月を要する。
【0007】
傷の回復過程の測定における従来技術での取り組み
傷の治療は、材料及び専門的な治療期間に関する費用のかかる可能性があるため、傷の傷の回復過程の正確な評価に基づく治療が肝要である。従来技術における現状の問題点は、傷の大きさを(直接的又は間接的に)実際に測定するための不完全な方法を有することである。明らかに、理想的な測定機器は、寸法精度が良く、信頼性が高く、恒久的な記録のためのデータを提供し、傷の周辺の領域と傷との正確な識別を与える。体のあらゆる場所のいかなる大きさ又は形状の傷の測定が可能である必要がある。患者に直接的に関連する本システムのそれらのパーツは、携帯型の不活性物質でできている必要がある。患者に与える苦痛を最小限にしてそれらを使用しなければならず、傷の中に汚染物質を入れてはならない。さらに、測定可能な形式への傷の画像の「変換」に関する機器は、費用がかかってはならず、臨床医が日常的に使用するのに過度の熟練を要してはならない。
【0008】
また、整合性のある傷の測定を得ることは、傷の大きさの変化を正確に判断するのに重要な要因である。様々な医師が特定の患者に関する傷の測定に従事しているため、正確に再現可能な技術を使用して、関連した正確な偏りの無い効率的な結果を出さなければならない。最適な測定機器は、介護士の間で整合性があり、患者の位置、傷の伸長、又は相違点及び信頼性に影響を及ぼす他の変化に対して最小限の変化しか生じないであろう。
【0009】
傷の評価の頻度は、多くの場合回復プロセスの前の段階で観察される傷の特性に基づいており、医療サービス提供者の指示に従って単に実行される。所定の発明の効果は、基礎評価データを追跡調査データと比較できない限り評価できない。このため、ある観察による測定値の一貫性が重要である。
【0010】
完全に回復した傷の定義は、全体的に再上皮化し最低でも28日間継続的に回復した状態にある傷として表されることがある。一般に、回復した傷は、規則的な修復過程の中を進むため、傷の大きさ及び形状、回復の早さ、及び創傷床の状態といった特定のパラメータが、このような過程の進展を評価するための適切なマーカである。慢性的な傷については、複雑且つ非均一の回復過程のため、このようなことは生じない可能性がある。完全な傷の閉塞は、実現しそうになく、特定の慢性的な傷の転帰を判断するための現実的な客観的評価項目でもない。
【0011】
傷の2次元領域を測定する上記のシステムに加えて、皮膚の表面の下に延びる傷の容積を測定するための様々な方法が存在する。一般的な傷の容積の測定方法は、型、流体の導入、ノギス、及びステレオ写真測量法を含んでいる。しかしながら、これらの方法は全て、精度、再現性、又は複雑さに関する様々な問題に悩まされている。例えば傷の型は、面倒で時間がかかり、不快であり、傷を汚染する危険性がある。
【0012】
傷の大きさを見積もるための別の方法は、シート又はフィルムで覆われた傷の中に食塩水を導入することである。そして、流体を取り出して容積を判定するために測定する。しかしながら、このような流体の方法はあいまいで、乱雑であり、多くの場合実施するのが難しい。また、このような方法では傷が汚染する可能性がある。ノギスの基づくシステムは、3次元の座標系に頼るプラスチックでコーティングされた使い捨て可能のゲージを使用し、傷の容積を直接的に測定する。このような方法は、数学的な式を使用して容積を計算するが、データの取得に関する方法のバリエーションにしばしば悩まされる。
【0013】
ステレオ写真写真測量法のシステムは、一般に、コンピュータ又はマイクロプロセッサをベースとする他の装置に取り付けられたビデオカメラを使用する。傷の測定に関するステレオ写真写真測量法のシステムでは、臨床医が傷の近くの主焦点面に標的板を配置して、ビデオテープに組み合わせた画像を取り込む。綿棒を使用して最も深い点の傷の深さをマークする。画像を取得した後に、臨床医がコンピュータを使用して傷の長さ及び幅をトレースする。また、深さとして綿棒の長さを測定して記録する。そして、後で使用、分析及び比較するために、コンピュータに画像を保存する。ステレオ写真写真測量法のシステムは、多くの場合、傷の大きさ及び容積の精度が良く再現可能な測定値を与えるが、非常に効果で複雑である。
【0014】
本分野における取り組みが、Method and Apparatus for Photogrammetric Assessment of Biological Tissueと題され、1999年10月19日にTaylorらに付与された米国特許番号第5,967,979号に記載されている。この特許は、傷の近くに配置された矩形を含む傷及び標的板の傾いた画像の形成を含む傷の遠隔評価方法及び装置を開示している。座標変換により、傷の大きさ及びその輪郭の双方の測定が可能となる。異なる斜角での2つの別々の画像により、測定可能な傷の3次元の外観をもたらす。
【0015】
直接的な傷の測定を含む過去の取り組み(すなわち、傷の輪郭のトレースをデジタル化装置に移すこと)は、一つには、傷の画像を測定するのに適した機器に変換するために別のトレースを形成する単純な必要性に悩まされている。このようなシステムは、一般に、使用するテンプレートによって又は機器とともに使用するタッチパネル面により、大きさが限られていた。さらに、これまで使用されている多くの画像処理方法は、手足の周りの傷又はそうでなければ画像装置のCCDの配列面に対して平行な面にない傷に効果を発揮しない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記のような目的;すなわち、精度、識別(傷の領域と傷の周囲の領域とを区別する能力)、再現性、非侵襲性、容易性、費用効果的といった、全てを実現する傷の測定システムを有するのが望ましい。患者に直接的に接触しそうなシステムの部分は、無菌で使い捨て可能でなければならない。システムの処理の構成要素は、適度に熟練した臨床医が使用するのに簡単且つ分かり易くなければならない。同様に、処理の構成要素は、履歴データを与えて使用者が長期にわたって変化を追跡し得るようでなければならない。
【0017】
最も正確な識別手段は臨床医の目である一方で、本発明のシステムは、これまで以上に有用で安価なデジタル画像機器という利点を有する。本発明の第1の好適な実施例は、(傷のトレースを含む)透明又は半透明のフィルム;(例えば、黒い枠を有する白いバックグラウンドといった視覚的にコントラストを成すバックグラウンド及び基準面を具える半硬質の板を具える)バックグラウンド/テンプレート;及び(例えば一体型又は取付可能なカメラを具えたPDA又は他の携帯型コンピュータを具える)デジタル画像装置及びデジタル処理装置を使用する。
【0018】
上記の本システムに関する本方法は、始めに当分野の大部分の臨床医に既知の方法で透明又は半透明のフィルムに傷の周囲をトレースするステップを有する。しかしながら、輪郭を繰り返して再びトレースするのではなく、透明な物が画像処理において拡大又は縮小且つ斜めに位置決め可能な簡単なテンプレートの上に配置される。上記の第1の好適な実施例の本システムのデジタル画像装置は、傷のトレースの輪郭を中に具えたテンプレート全体を取り込む。そして、ユニットの中のソフトウェアでデジタル化した画像を処理し、テンプレートの基準の外観及びトレースを自動的に見付けて、ディスプレイ画面に特定の結果を表示する。また、本発明の処理システムは、画像データを閾値化するステップと、輪郭を見付けるステップと、(テンプレートを識別するために使用する)正方形を見付けるステップと、(テンプレートの基準の外観に関連する)関心のある領域を設定するステップと、傷のトレースを見付けるステップと、面積を計算するステップと、歪みを除去するステップと、あるタイプのデータフィルタリングの結果を表示する。
【0019】
デジタルカメラ又は他の撮像装置を使用することにより、データ入力処理を簡易化して、さらには従来のシステムに関する手作業でのトレースに起因するエラーを防止することが可能となる。また、本画像処理方法は、固定サイズのタッチセンサ式のパッドを使用する場合よりも非常に柔軟性の高い。また、テンプレートに関する傷のトレースの位置決めにより、画像処理が非常に信頼性が高く且つ精度が良くなる。さらに、本発明の方法を使用して組織の所定の領域の複数の傷の領域を測定できる。本発明のシステムに要するデジタル画像処理装置の特性及び処理能力は比較的低いため、本方法を1つの簡単なマイクロプロセッサシステムの中に埋め込むことができる。従来技術とは対照的に、本方法はデジタルカメラを使用してトレースした傷の輪郭を取り込み、既知の大きさの基準のテンプレートの外観と輪郭とを比較することによって面積を計算する。2度目のトレースは無く、傷の大きさは使用したテンプレートの大きさに限定される。低コストのテンプレートを交換することによって、いかなる傷に対して本方法を使用できる。既知の寸法の基準の外観を具えたテンプレートの使用により、画像を拡大又は縮小し及び表面の視野角に対して垂直なもの以外を説明するための画像処理が可能となる。
【0020】
本発明の第2の好適な実施例は、単にデジタル画像装置(例えば、320×240画素又はこれよりも画素数が大きいカラー又は白黒のデジタルカメラ);及びタッチパネル式の表示画面又は他の表示に関する手段を有して図形データ入力を提供する処理ユニット(好適には、タブレット型のPC又はコンピュータシステムに基づく他のマイクロプロセッサ)から成る。
【0021】
上記の第2の好適な実施例に関する方法は、患者の傷の近く(好適には傷の外側)に小さな基準タグを設置するステップと、創傷部の面に対して概略垂直な位置から傷の部位のデジタル画像を取り込むステップと、を有している。そして、デジタル画像を表示画面を有するタブレット型のPC又は他のコンピュータ及び表示画面に関連する(タッチセンサ式のパネルといった)図形データ入力装置に転送する。好適には、観察及び図形データの入力のために本表示画面を設置できる。表示部が例えばタブレット型のPCに関するものである場合、表示部を机といった筆記面の上に平らに設置できる。そして、PCの画面上に画像を表示して拡大又は縮小させ、臨床医に精度の良い傷の表示を提供する。そして、臨床医は画面上(又は他のタイプの図形データ入力装置)でスタイラス・ペンで傷の周囲をトレースして、傷の範囲を規定する。そして、本システムの中のソフトウェアがトレースの輪郭及び画像のスケールに基づいて(視野に含まれるタグを参照して)傷の面積を計算する。基準タグはコンピュータが容易に認識できるよう構成されているため、拡大縮小を非常に精度良く行うことが可能となる。一方、傷の周縁の規定はコンピュータにとってそれほど容易ではないため、本処理のこのステップは臨床医による手作業のままである。
【0022】
従来技術と対比して、このような第2の実施例は、第1の実施例と同様に、単に1つのトレースステップを使用することで、処理の中にエラーを導入する可能性を大いに減らす。タッチパッド技術を使用する従来技術の方法とは異なり、本書に記載の本発明の本実施例は有利なことに、臨床医がトレースを行う前に傷の画像の拡大又は縮小を行うことができる。
【0023】
また、従来技術の多くと比較して、本発明に係る本方法は、データ処理の要請とともにハードウェアの要請及び設置の点でより簡単である。さらに、従来技術の多くの方法は、周縁の周りを包む傷、又はそうでなければ1つの画像の枠の中に完全には見えない傷に関して良く動作しない。
【0024】
本発明に係るシステム及び方法は、従来技術とともに以上で概略が説明された問題の必ずしも全てではないにせよ、さらなる問題を扱う。最後に、それは、全て新たな且つ独自の方法で、1つのシステムで求められている全ての利益を提供する特定の新たな要素とともに、他のシステムの最も良い面の本発明による使用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
まず、本発明に係る方法を実施するための第1の好適な実施例のシステムで要する特定の部品の簡単な説明を、図1を参照して行う。一般に、本システムは、患者の傷口の上に置かれた透明又は半透明フィルムの使用を含んでおり、透明又は半透明フィルムにマジックペン等で傷の周囲の輪郭のトレースが行われる。そして、傷のトレースが行われた透明又は半透明フィルムを、好適な実施例では太い黒色の帯(枠)によって囲まれた白いバックグラウンドを具えている長方形のテンプレートの上に配置する。そして、臨床医は、予めプログラムされた携帯型のデジタルプロセッサ及びデジタルカメラ装置(例えば、カメラが装着されたPDA)を使用して、フィルム/テンプレートアッセンブリの画像を取り込む。装置にプログラムされた処理用ソフトが、傷のトレース及び(基準として)周囲の枠を特定及び定量化し、傷の面積を計算する。このような第1の方法は、腕又は脚の傷に見られるように、体の平らでない部分で広範囲に及ぶ傷に関連する特定の適用であることが分かる。
【0026】
図1を参照すると、本発明の方法を実施する各部品の積極的な使用とともに、本発明に係るシステムの全ての部品が開示されている。図1は、傷12を有する患者10を示しており、透明/半透明フィルム14が傷の上に注意深く配置されて傷のトレースを規定する。介護士/臨床医はマジックペン16又は他の先の軟らかいマーキング器具を使用して、透明/半透明フィルム14に傷の輪郭を穏やかにトレースすることで、傷のトレース18が永久的(半永久的)に透明/半透明フィルム14に定着される。
【0027】
当然ながら透明/半透明フィルム14は、好適には、少なくとも傷に付けられる側が滅菌してある。使用するまでシートの内側の面を滅菌された状態に保持する取り外せる裏地を具える様々な透明、半透明(semi−transparent)、半透明(translucent)のシート材が利用可能である。減圧治療を受ける傷のために、(カットされて創傷床に配置される)フィルタ/発泡体の層に関する包装が、トレース手段として使用するための適切な滅菌した透明/半透明のシート材を与えることが分かっている。このような包装は一般的に、不透明又は半透明シートと透明フィルムとの間のフィルタ/発泡体の材料をシールする。これらのシートの内側の面は、当然ながら一般に2つのシートを引き離すことによって包装が開けられるまで滅菌されている。包装を開けた直後に使用する場合、透明シートは、傷の輪郭をトレースするための手段として本発明のシステムでの適切な適用であることが分かる。
【0028】
そして、透明/半透明フィルム14は、好適な実施例では患者の識別情報を付加的に与えるが、背板20の上に配置され固定されて、本システムで使用する画像テンプレートアッセンブリを与える。背板20は、対比色の枠22に縁取られた非光沢面を具える硬質又は半硬質の板を概略的に具えている。対比色の枠22は、背板20の結合した又は取り囲んだ対照的な境界を形成するのに適した多くの様々なタイプの枠でよい。好適な実施例では、背板20が例えば非光沢性の白色又は淡い色であり、枠22もまた非光沢性の黒色又は濃い色のカラーインクの縁で簡単にプリントされ又は塗られている。また、フィルムが挿入される対比色から成る物理的に別体の枠を使用してもよい。
【0029】
透明/半透明フィルム14が背板20に固定されると、PDA装置24に結合されたデジタルカメラにアッセンブリの適切な表示を与える便利な撮像位置に、アッセンブリが配置される。透明/半透明フィルム14及び背板20のアッセンブリのPDA装置24に関するデジタルカメラによってデジタル画像28が形成される。このデジタル画像28は、好適には、静止画の取り込み処理の際にPDA装置24に表示でき、傷のトレース18及び少なくとも枠22の内側の境界の完全な画像を確保する。適切な画像が取り込まれると、PDA装置24に関連するマイクロプロセッサの中で動作可能な処理ソフトがイメージデータを解析及び定量化して、傷の領域についての値を戻す。画像データを処理し領域の値を判定するための方法が、図6A及び6Bを参照して以下に詳細に記載されている。好適な実施例では、PDA装置24のマイクロプロセッサシステムが、適度の量のデジタル画像データ及び以下に記載の関連する処理要求を扱うことができる。このような処理要求は実際はわずかであって、一般に標準的な携帯型PC、多くの最新型PDA及び他の携帯型計算機器で実行される。
【0030】
ここで、本発明の代替的な好適な実施例を説明する図2を参照する。第1の実施例と同じように、第2の実施例は、デジタル処理システムでの1つの傷トレース動作及び傷のトレースの取り込みを使用する。違いは、傷のトレースを実行する場所にある。本発明の第2の好適な実施例のシステムは、単に、デジタル画像装置(デジタルカメラ)から成る;すなわち、タブレットPCといったプロセシングユニット又はタッチセンサー方式の横置き可能な表示画面を有するコンピュータシステムに基づく他のマイクロプロセッサ(又は図形情報を入力するための代替的な方法);及び表示画面へのデータの取得を指示するスタイラス・ペン(又は使用者が操作可能な他の器具)である。
【0031】
図2は、傷12を負った患者10を示しており、デジタル画像装置42によって傷12を撮像するよう適切に配置されている。基準タグ32が傷12の周囲の近く(好適には外側)に配置されていることで、基準タグ32もまた傷12の面に対して略垂直な位置からのデジタル画像装置42によって取得される傷の部位のデジタル画像44の中に捕らえられる。そして、このようにして取り込まれたデジタル画像44が、タブレットPC46又はタッチセンサ式のディスプレイ画面48(好適には、机といった筆記面の上に置けるディスプレイ)を有する他のコンピュータに送られる。通信リンク45を介したタブレットPC46へのデジタル画像44の伝送は、(例えばUSBといった)配線接続されたシリアル通信又は(IR又はRFベースのプロトコルといった)無線通信といった多くの様々なデータ通信プロトコルでよい。
【0032】
画像44は、タブレットPC46の中で動作可能な処理ソフトに受信され、タブレットPC46の画面上に表示される。ここで画像が容易に拡大又は縮小されて、精度が良く明りょうな傷12の表示を臨床医に与える。拡大縮小修正及び対比効果を含む画像に対する様々な修正を、画像44とともにディスプレイ48上に表示されたファンクション「キー」54を介して臨床医が行ってもよい。このような処理の取り組みにより、以下に詳細に説明するが、臨床医に傷の最良な表示を与えて、精密且つ一貫した周囲のトレースをもたらす。
【0033】
そして、臨床医は、スタイラス・ペン50で傷の周囲52を画面48上でトレースして傷12の範囲を規定する。図形的なデータ入力の代替的な方法を、タッチパネル式の画面ディスプレイの代わりに使用してもよい。システムの中のソフトウェアは、タッチパネル式画面からこのようなデータを受け取り、以下に説明する方法に従って拡大又は縮小した大きさのトレースを確定する。トレースは、傷の周囲を規定する実際の線に関する決定についてプロセッサに頼ることなく、プロセッサが使用して傷の面積を計算する確かなデータを与える。このような判断の方法は臨床医に委ねられる。一方基準タグ32は、画像のスケールを精度良く判断することを目的として画像プロセッサが容易に認識できるよう特別に構成されている。そして、トレース及び基準タグの画像に関するデータとともに、タブレットPC46の中のプロセッサシステムは、傷の面積を計算してディスプレイ上で臨床医にそれを報告する。
【0034】
ここで、図3Aを参照して、本発明の第1の好適な実施例によって所得された2次元画像及びデータ処理において利用される画像の中の様々なパラメータを説明する。図3Aは、本システムによって取得された典型的な画像を示しており、背板20に配置されている枠22の画像を含んでいる。枠22によって規定される領域の中に完全に含まれる傷のトレース18を示す。
【0035】
傷18のトレースは、本発明に係るシステムの客観的計測値である領域AWを取り囲んでいる。このような計測値AWを取得するために、画像に関するデータを、データを積分し傷のトレースに関する曲線の下側(曲線の中)の面積を規定し得る方法で定量化しなければならない。当技術分野において、デジタル化された場の中の既知のデータ点によって周囲が規定される閉曲線の中の面積を決定するための様々なアルゴリズムが知られている。このようなケースでは、これらの計算を実行するのに必要な情報が、当然ながら枠の中の関心のある領域の幅である場の全体の幅WTを含んでいる。また、このような計算に必要なものは場の高さHTであり、これは同じように枠の寸法によって定義される。いずれのケースでも、枠に関するこれら2つの寸法は、計算される実際の傷の面積のための基準の寸法となるように、実寸法として既知である。このような方法では、画像処理における角度及び3次元の効果を除去するためのより複雑な計算を実行するための処理が不要となる。換言すれば、画像における傷のトレースの実寸法は、寸法WT及びHTによって規定された関心のある領域に対するその相対的な大きさよりも重要ではない。
【0036】
関心のある領域の規定は、基本的に、傷のトレース18が中に位置している座標フィールドを規定する。この座標フィールドは、最小X値X0から傷のトレースの閉曲線の横方向の上限である最大X値XNまでに延びているX−Y座標フレームにおける曲線の比較として解析される。同様に、縦方向の最小値(Y0)及び最大値(YN)を、傷のトレースの曲線上で選択した多くの点のそれぞれについて座標の順序対をデジタル処理で識別するのに先だって、識別及び規定できる。また、座標系の中の曲線上の点の識別及びこれらの点を積分して曲線の中の面積を測定することに関する方法は、当技術分野で知られている。
【0037】
図3Bは、本発明の第1の好適な実施例に関して上述したように、PDA装置24に与えられた画像28の表示を与えるものである。この表示は、画像取得の最中又は取得後のいずれかであるが、枠22を具えるテンプレート20が、本システム及び方法の機能を強調するために明らかに斜めに位置しているのが見られる。臨床医は、好適には、テンプレート20の平面に対して略垂直な位置でデジタル画像装置(PDA装置)を保持するが、このような位置決めは重要ではない。枠22の内縁全体が画像の中に取り込まれる限り、処理によって実際の傷の面積を測定できる。
【0038】
PDA装置24に示される表示では、傷のトレース18が、実際の傷の領域を拡大又は縮小した測定値である領域Alを取り囲む。実際の値AWを取得するために、画像に関するデータをX及びYの双方の方向に拡大又は縮小する必要がある。このようなケースでは、寸法WITは、当然ながら枠22の中の関心のある領域の画像の幅である。同様に、場の画像の高さHITは、枠22の寸法によって規定され、WIT及びHITに対してそれぞれ独立して比較されて2次元のそれぞれの倍率を規定する。そして、これらの倍率を傷のトレース18を表すデータの座標に適用して、画像のX値Xl0及び傷のトレースの閉曲線の横方向の上限XIN、及びYI0及びYINに関する正確な値を与える。さらに、座標系の中の曲線上の点の特定及びこれらの点を積分して曲線の中の面積を測定することに関する方法は、当技術分野で既知である。そして、拡大又は縮小されたデータ及び得られる計算値を、例えば表30の数値形式でPDA装置24上に表示する。
【0039】
予想されるように、本発明に係る(上記のような)システムに対する多くの様々な機能強化及び(以下に詳細に説明する)方法を行うことができる。これらの機能強化のうちいくつかは直下に概略が説明されているが、他のものは当業者にとって明らかである。
【0040】
画像表示の履歴の提供
傷の面積の絶対値の変化についての情報を提供するのに加えて、特定の患者についての特定の傷に関する現状の傷のトレースだけではなく過去のトレースを盛り込んでいる重ね合わせ表示を実際には提供するのが、(以下に説明する図4の傷のデータ表示40に示すように)ある状況では可能であり且つ望ましい。図4では、これらの傷のトレースの履歴を、介護士が回復が生じる速さを特定し得るだけでなく、他の領域よりも速く治癒する可能性のある傷の特定の領域を識別し得る方法で、破線又は点線の輪郭の形式で示す。本発明に係る処理システムの追加的なデータの記憶部は、全てこのような機能強化を実行するのに要する。
【0041】
傷の回復領域の識別
上記のように、患者の傷又は傷の画像における傷をトレースするステップでは、介護士又は技術者は一般に、傷の境界、すなわち創傷部又は破壊された組織が安定な又は破壊されていない患者の皮膚組織と交わる線して最も容易に識別可能なものの輪郭を描くであろう。しかしながら、当業者は多くの場合、本発明の第1の実施例の透明/半透明フィルム及び濃い色のマジックペン又は上記の第2の実施例のタッチパネル式ディスプレイ及びスタイラス・ペンを用いて同じようにトレースされる傷の中に回復が識別できる領域があることを認識するであろう。傷の回復過程を識別する際に長期にわたって関心のあるこのような領域の例は、無傷の皮膚組織に関する(傷の外縁からその内縁に向かう)傷の周囲の発赤領域、一般に傷自身の周囲の広がりを規定する初期の肉芽組織の領域、さらには回復過程の間に流体が排出し続ける傷内部の漿液領域、を有している。
【0042】
傷の中のこれらの様々な領域の識別により、技術者又は医療サービス提供者がそれぞれ関心のある特定の領域に対応する複数の様々なトレースを形成可能である。例えば、閉曲線の最も内側は、傷に関する小さな内側トレースとして定義される漿液帯域である。漿液帯域を囲む2つの閉曲線は、その内側の範囲及びその外側の範囲によって初期の肉芽組織の領域又は帯域を特定する。一般に、初期の肉芽組織の帯域の外側の範囲は、特定の回復帯域として規定されない傷のトレースに関する境界全体を与える。そして、漿液帯域及び2つの初期の肉芽組織の帯域双方の外側の第4のトレースは、傷自身の周りの発赤領域を表す。これらの領域のそれぞれは、回復過程に関する関連情報を医療サービス提供者に提供し得る結果、追加的又は連続的な治療法の開発において指針を与える。上記の例は、複数のトレース領域を用いる1つの方法を示しているが、介護士は、このような複数の領域の計算機能を最大限に利用するための自身の特定の方式を決めると予想される。これらのトレースのそれぞれが、デジタル画像処理装置がこれらの領域のうちのいずれか1つ中の領域を精度良く特定するのための閉曲線であることは、当然ながら重要である。
【0043】
ここで、再び図4を参照して、計算データ及び履歴データの双方をコンピュータの画面上に表示して、本発明の2つの好適な実施例のうちのいずれかによって処理した後に医療サービス提供者及び/又は技術者が見て解析する方法の詳細な説明を行う。第1のケースでは、データを記憶してPDA装置自身に提供するか、又は後で記憶して観察するためにより大きなシステムにアップロードする。このようなアップロードは、このような装置のために規定された様々な有線又は無線通信プロトコルのいずれかを介して行われ、インターネットベースの通信プロトコルを含んでいる。
【0044】
図4は、データディスプレイ34の中の典型的なスクリーンショットを与えている。データディスプレイ34は主に、傷のトレースディスプレイ36、患者の情報ディスプレイ38、傷データディスプレイ40を具えている。傷のトレースディスプレイ36は、単に本発明に係る処理の際にデジタル画像装置によって取得されたデジタル画像の再形成である。患者の情報ディスプレイ38は、単に傷のデータ及び画像データの特定及びこれの目録を作ることを目的として設けられている。本発明の第1の好適な実施例と一般に関連する枠の中に示すが、図4に示すディスプレイの態様は、第2の好適な実施例のデータ取得のディスプレイに同様に適用可能である。
【0045】
傷のデータディスプレイ40は、ディスプレイ上に規定された現在の画像に関するデータを提供するだけでなく、長期にわたって傷の特徴の変化を識別するのに適した履歴データをも提供する。このような情報は、例えば、特定の患者に関する初期の測定によって規定された傷の面積及びそれに続く周期的に行われた傷の面積の測定の完全な履歴を含んでいる。このようなケースでは、傷の面積の絶対値がこのような表示部に提供されるだけではなく、このような傷の面積のパーセンテージの変化もまた提供されており、介護士は生じている回復の速さをより迅速に認識することができる。
【0046】
ここで、図5を参照して、本発明のシステムとともに使用可能な2以上の傷の領域を具えた代替的なテンプレートの簡単な説明を行う。この図では、傷の領域19a,19b,及び19cが、多くの患者に一般的なものとして図示されている。本発明のシステム及び方法は、全体的に同じ方法で複数の傷のトレースを識別及び扱うことができる。上記の方法が示すように(さらに以下に詳細に説明するように)、枠の中の関心のある領域の特定のステップを実行した後に、個々の傷のトレースを特定する。このようなステップ(以下の図6Bのステップ130及び図7Bのステップ162)を、関心のある領域の中で慎重に特定された多くの様々な傷のトレースについて繰り返す。このプロセスに関する唯一の制限は、テンプレートを規定する枠の境界の中での(又は他のタイプの基準領域と関連した)、又は(第2の好適なシステムにおける)画像の場の中での、傷のトレースの規定である。座標系に関するこれらの曲線のデジタル化及び規定は、同様に単に計算処理においてある閉曲線から隣の閉曲線に進めるという問題である。
【0047】
本発明の方法は、以上で詳細に説明したように、好適なシステムの実施例から得られる。ここで、本発明の好適な実施例の方法の説明のために、図6A及び図6Bを参照する。これらのフローチャートは、傷のトレースデータの取得(図6A)及び処理(図6B)に関するステップを示す。図6Aは、デジタル処理に十分な傷のトレースの取得の開始プロセスを示す。画像取得方法100はステップ102で開始し、介護士が傷を目視で検査して傷を覆うのに適切な大きさのテンプレートを選択する。ステップ104で、介護士が関心のある傷の全ての部分を十分覆うよう傷の領域の上に透明/半透明フィルムを配置する。そしてステップ106で、介護士又は技術者が、できるだけ傷の表面に力をかけないような方法で透明/半透明フィルムにマジックペンで傷の輪郭をトレースする。そしてステップ108で、介護士/技術者は傷からフィルムを取り除き、処理に適した方法で背板のテンプレート上に透明/半透明フィルムを配置する。好適な実施例では、上記のように、背板のテンプレートが周縁が黒くて非反射の枠で囲まれた半硬質の長方形のパネル上に非光沢の白い面を具えている。パネルのバックグラウンド及びその基準領域として他の色及び幾何学的形状を使用してもよい。
【0048】
背板に透明/半透明フィルムを接着又は固定するための様々な機構が実施される。最も簡単な実施例では、しっかりとフィルムを固定して周囲の枠に対してフィルムの移動を防止する方法で、フィルムの端部のある部分を背板の周縁にテープで貼る。背板にフィルムを固定するためのさらに複雑な方法は、(写真のフレームのように)フィルムの上を覆うよう背板に置かれた硬質のオーバーフレームの使用を含んでいる。目的は、単に画像処理の際に背板によって与えられた枠に対して傷のトレースの移動を防止することである。
【0049】
ステップ110で、技術者は(デジタルカメラを備えた)PDA装置を配置して、傷のトレースの全体的な視野及び少なくとも枠の内側を取り込む。一般的に、本発明に係るシステムで使用されるデジタルカメラは、(PDA装置の画面上に)即時の表示を与え、ステップ112で技術者は適切な表示を確かめることができ、その後、デジタルカメラを操作して画像を取り込む。そしてステップ114で、本発明の方法は、以下に詳細に説明する画像処理ルーチンに入る。この処理のフローチャートは、処理の結合部116を通ってフローチャートBで続行される。
【0050】
図6Bは、本発明のシステムにカメラによって取り込まれた傷のトレースのデジタル画像処理に関する様々なステップを詳細に開示している。処理118は、ステップ120で開始され、デジタル画像がデジタルカメラからPDA装置のデータ処理部に送られる。さらに、好適な実施例では、容易に利用可能な携帯型PC装置又はPDA装置によってデータプロセッサの要件が実行される。さらに、画像データがプロセッサによって受け取られ、画像の閾値の初期の規定がステップ122で実行される。このステップで、プロセッサは、画像の明るい(白い)又は暗い(黒い)要素を単に特定して閾値を規定し、それによって画像の個々の画素が明るいバックグラウンドと対照的に暗いものとして特定される。そして、プロセッサは、画像の輪郭を見付けるステップ124を実行するが、これはすなわち、画像の輪郭を規定するデータのベクトルを規定することである。
【0051】
傷のトレースの特定及び処理に進む前に、ステップ126で、プロセッサは背板のテンプレートで規定された枠を特定及び位置決めする。枠の特定及び位置決めにより、ステップ128で、プロセッサは、全体として特定及び位置決めした枠の内側にある画像の領域として、関心のある領域を設定することが可能となる。さらに、枠の境界は既知の幾何学的形状を有しているため、トレースデータから傷の大きさを正確に定量化するための基準の寸法を与える。
【0052】
その後、ステップ130で、プロセッサが傷の周縁でトレースされた線画像に関するトレースデータを特定及び位置決めする。特定され位置決めされたトレースに関するデータが規定されると、このようなデータに関する数学的な処理を実行できる。ステップ132で、プロセッサは曲線の輪郭の典型的な積分を実行して、関心のある特定のフレーム及び設定領域に関する既知の幾何学的なパラメータに基づいて曲線の中の面積を計算する。ステップ134は、多くの場合画像処理のゆがみ又はエラーから生じる明らかに誤ったデータを捨てることを目的とする所定の基準に基づくゆがんだデータの除去を含んでいる。最後にステップ136で、様々なフィルタリング処理が画像に実行されて、画像処理において普通に有る、ちらつく照明の影響を除去又は減らす。
【0053】
処理の後、本発明のシステムは、ステップ138で、画像表示及び計算値の表示の双方を与える。ディスプレイの性質とともに、取得及び計算されたデータの提示の特徴は、上記のように説明される。要約すれば、本発明の第1の好適な方法の処理手順は、以下のデジタル画像処理のステップを有している;(1)画像の閾値化処理を実行して、エンプティ又はフル(白又は黒)のいずれかでピクセル値を十分に特性化する方法で画像の明るい画素と暗い画素との間の識別が可能となる;(2)テンプレートの正方形を特定するが、これは、長方形に関する直線を特定するとともに、テンプレートの正方形をテンプレートの周縁の領域と関連づけることによって行われる(3)関心のある領域、すなわち正方形の内側をくくる;(4)くくられた領域の中に収容されているピクセル情報の本質的にはデータスキャンを実行する;(5)最後に、くくられた領域を調べる処理において、プロセッサがエンプティ又は白いバックグラウンド画素と傷のトレースとを区別することによって傷のトレースを発見して特定する。
【0054】
そして、当技術分野で既知の様々なアルゴリズムを介して、プロセッサは傷のトレースの閉曲線を組み立てて傷の領域と同じであるとみなす曲線の中の面積を計算する。好適な実施例では様々なデータフィルタリング方法を使用して、コンピュータのディスプレイ画面上に結果を表示する前に、画像及び画像に関するデータからゆがみを除去する。患者の他の様々な関連情報を取り込んだ傷の回復情報と統合して、傷の回復の効果及び実行できる変更の必要性を見分けるために必要な手段を提供してもよい。
【0055】
ここで、本発明の第2の好適な実施例の方法の説明のために、図7A及び7Bを参照する。これらのフローチャートは、傷のトレースのデータの取得(図7A)及び処理(図7B)に関するステップを示している。図7Aは、傷の画像を取得する初めのプロセス及びデジタル処理に十分な傷のトレースを示す。画像取得の方法140はステップ142で開始し、介護士が目視で傷を検査して傷の近く又は傷の中に適切な基準マーカを配置する。ステップ144で、臨床医がデジタル画像装置(デジタルカメラ)を配置して、視野が基準マーカとともに関心のある傷の部分をカバーしているかを確認する。そしてステップ146で、臨床医がデジタル画像装置で傷の部位のデジタル画像を取り込む。そして、技術者/臨床医は、ステップ148で上記のような様々な方法のいずれかに従ってタブレットPC装置にデジタル画像を転送する。
【0056】
ステップ150で、技術者は、タブレットPC上の傷の部位のデジタル画像の表示を見て、画像に関する様々なパラメータ(スケール、コントラスト、色等)を修正し、傷の領域全体及び基準タグを明りょうに示す。そして、ステップ152で、臨床医が、タブレットPC装置のタッチパネル式の画面上でスタイラス・ペンによって傷の周囲(及び関心のある他の閉じた領域)をトレースする。そして、ステップ154で、本発明の方法が、以下に詳細に記載される画像処理ルーチンに入る。このようにして処理のフローチャートは、処理の結合部156を介してフローチャートBで続行される。
【0057】
図7Bは、傷の画像のタブレットPCのタッチパネル式のディスプレイ上でのスタイラス・ペンの使用を介して臨床医によって規定された傷のトレースのデジタル画像処理に関する様々なステップを詳細に開示している。処理158はステップ160で開始され、基準マーカが傷の部位のデジタル画像の中に配置される。上記のように、基準タグは、画像データの中の画素とコントラストを成すことによって容易に区別し得る明確な輪郭の境界で構成されている。これにより、このような高いコントラストの輪郭が、傷の面積に関する計算を実行する際に傷自身の画像を拡大又は縮小するための基準の寸法を与える。
【0058】
その後、ステップ162で、タブレットPC装置のパネル式の画面に臨床医によってトレースされた傷の周縁の周りのラインに関するトレースしたデータを、プロセッサが特定及び位置決めする。面積の計算の前に、処理ルーチンが閉曲線のトレースの存在を確かめ、ステップ164で、できるだけ正確にトレースを閉じる。代替的に本プロセスが、規定したトレースが、再びトレースを規定することを開始及び要求するための処理には十分ではないことを臨床医に知らせてもよい。特定して位置決めしたトレースに関するデータを規定すると、データが基準マーカに関する既知の値に従って拡大又は縮小される。ステップ168で、プロセッサが曲線の輪郭の典型的な積分を実行し、この場合もやはり、特定して画像処理した基準タグに関する既知の幾何学的なスケーリングパラメータに基づいて、曲線の中の面積を計算する。ステップ170は、提供された傷の画像に関する関心のある領域を強調するためのディスプレイ情報及び特徴を提供して、現在及び過去の双方の計算値を報告することを有している。最後に、ステップ172で、現在の画像及び計算された領域とともに蓄積されたデータが、今後の指針及び後の測定値との比較のために記憶される。
【0059】
要約すれば、本発明の第2の好適な実施例の処理手順は、以下のデジタル画像処理ステップを有している;(1)傷の部位の(基準タグを具えた)デジタル画像を取得して、タッチパネル式のディスプレイを組み込んだデジタル処理システムに送る;(2)傷の特徴を特定することを目的として画像の明りょう度を改善するための機会が臨床医に提供される;(3)タッチパネル式のディスプレイ上での傷の周縁のトレースが行われることで、傷の周縁を規定するデータセットを規定する;(4)基準タグの取得した画像に関する基準が作成されて、傷の周縁を規定するデータセットを拡大又は縮小させ;当技術分野で既知の様々なアルゴリズムを介して、プロセッサが傷のトレースデータの閉曲線を組み立て、内包される幾何学的な枠又は基準マーカに対するレシオメトリック(ratio metric)な比較を通して傷の領域と同等と見なす領域を曲線の中の面積を計算する。第1の好適な実施例とともに、コンピュータのディスプレイ画面上での画像の強調及びそうでなければ結果の表示は、医療サービス提供者に関連情報を伝えて傷の治療法を確立、維持、及び/又は変更する。
【0060】
上記の好適な実施例に関して本発明を記載したが、本明細書は単に説明のために与えられ、本発明を限定するものと解釈することを意図するものではない。当業者は、本発明の変更が特定の患者及び傷の治療環境に適合することを認識するであろう。大きさ及び構成に関するこのような変更は、傷のタイプ又は適用される治療のタイプに偶然に一致するに過ぎないが、本発明の精神及び範囲から必ずしも逸脱するものではない。
【0061】
上記のテンプレートの長方形の幾何学的形状は、例えば、主に簡単のために選択されることが明らかであり、当業者は上記の長方形の枠と同じような機能を実現する代替的な幾何学的形状を認めるであろう。また、タブレットPCが、臨床医がコンピュータ上の傷のトレースを規定し得る1の機構又は他の方法を提供することが明らかであり、そのいくつかはタッチパネル式のディスプレイを有さず、本発明のシステムが要する図形的なデータ入力を提供する。黒又は白色の表面及び透明又は半透明フィルムは、本発明のシステムの様々な部品とともに使用する最適であるが限定されない典型的な材料である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、本発明の方法の順を追った段階を示す本発明の第1の実施例のシステム全体の斜視図を示す。
【図2】図2は、本発明の方法の順を追った段階を示す本発明の第2の実施例のシステム全体の斜視図を示す。
【図3】図3Aは、傷のトレースを表示し本発明の画像処理を介してなされた様々な幾何学的な測定値を識別する本発明の第1の実施例とともに使用されるテンプレートを表す詳細図である。図3Bは、図3Aに示すテンプレートを表す取得した画像を有するPDA型装置のスクリーンの詳細図であり、さらに、傷のトレース及び傷の領域の解析で実施及び使用される様々な測定値を示す。
【図4】図4は、回復する傷の追跡経過を示す本発明に係るシステムによって生成された表示を表す「スクリーンショット」を示す。
【図5】図5は、複数の別々の創傷床を含む傷のトレースを示す本発明に係る第1の実施例とともに使用される第2のテンプレートを示す詳細図である。
【図6】図6Aは、本発明に係る第1の実施例の方法の実施についての最初の段階を示す高レベルのフローチャートである。図6Bは、本発明に係る第1の好適な実施例の方法の画像処理段階を示す高レベルのフローチャートである。
【図7】図7Aは、本発明に係る第2の実施例の方法の実施についての最初の段階を示す高レベルのフローチャートである。図7Bは、本発明に係る第2の好適な実施例の方法の画像処理段階を示す高レベルのフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傷(12)の領域を判定及び追跡するためのシステムであって、
前記傷(12)に対して距離を空けて斜めに概略配置されたデジタル画像装置(42)であって、前記傷(12)及び前記傷(12)の直近を取り囲む領域のデジタル画像(44)を取得するためのデジタル画像装置(42)と、
前記傷(12)に関連して取り除き可能に配置できる基準タグ(32)であって、既知の大きさの識別可能な要素を有する基準タグ(32)と、
前記所得したデジタル画像(44)を受信、表示、及び処理するために前記デジタル画像装置(42)とデータ通信を行うデジタル画像ディスプレイ及び処理装置(46)であって、さらに前記ディスプレイが、前記傷(12)のトレースに関するデータを入力するための図形データ入力装置(50)を具えている一方で、前記デジタル画像(44)が前記ディスプレイ上に表示され、前記画像及びトレースデータに基づいて傷の面積を計算及び報告するデジタル画像ディスプレイ及び処理装置(46)と、
を具えていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記デジタル画像装置(42)が、前記デジタルカメラから前記デジタル画像ディスプレイ及び処理装置(46)にデジタル画像(44)データを送信するためのデータ通信ポートを有するデジタルカメラを具えていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記基準タグ(32)が、バックグラウンドを有する凹凸の無い幾何学的形状を具えており、
既知の大きさを有する少なくとも2の直交する要素が前記バックグラウンドと視覚的にコントラストを成すことを特徴とする請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記基準タグ(32)が使い捨て可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記デジタル画像ディスプレイ及び処理装置(46)がパーソナルコンピュータ(PC)を具えており、
前記PCが、前記デジタル画像装置から前記取得したデジタル画像(44)を受信するためのデータ通信ポートと、
前記デジタル画像装置から受信した前記取得したデジタル画像(44)を表示するための画像表示画面(48)と、
前記画像表示画面と関連して動作可能であり、使用者が操作可能な装置(50)からのデータ入力を受けるための図形データ入力装置(50)であって、前記画像表示画面(48)上に表示されるように前記傷(12)のトレースを表すデータを入力するための図形データ入力装置(50)と、
前記取得したデジタル画像(44)データ及び前記傷(12)のトレースデータを処理して前記傷(12)の面積を計算するためのマイクロプロセッサと、
を具えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記パーソナルコンピュータ(PC)がタブレット型PCを具えており、
前記画像表示画面(48)が、前記デジタル画像(44)を表示しこれと関連して前記図形データ入力装置(50)を動作させるのに概略適している面内に配置可能であることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
さらに、前記パーソナルコンピュータ(PC)が、前記取得したデジタル画像(44)、前記傷(12)のトレースデータ、及び前記計算した面積データを保持するためのデジタル記憶装置を具えていることを特徴とする請求項5又は6に記載のシステム。
【請求項8】
さらに、前記パーソナルコンピュータ(PC)が、遠隔処理システムに前記取得したデジタル画像(44)、前記傷(12)のトレースデータ、及び前記計算した面積データを送信するためのデータ通信システムを具えていることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
さらに、前記パーソナルコンピュータ(PC)が、前記ディスプレイ(48)上に表示された前記取得したデジタル画像(44)の外観を選択的に修正するためのプログラミングを具えており、このような表示修正が前記傷(12)の解像度を改善することを特徴とする請求項5から8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
さらに、前記デジタル画像装置(42)及び前記デジタル画像ディスプレイ及び処理装置(46)を接続してそれらとの間で前記取得したデジタル画像(44)を通信するためのデータ通信ケーブルを具えていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
さらに、前記デジタル画像装置(42)及び前記デジタル画像ディスプレイ及び処理装置(46)が、それぞれそれらとの間で前記取得したデジタル画像(44)を無線通信するための無線データ通信システムを具えていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
傷(12)の領域を判定及び追跡するための方法であって、
前記傷(12)に近接する領域に、既知の寸法の識別できる要素を有する基準タグ(32)を取り除き可能に配置するステップと、
前記傷(12)に対して概略間隔を空けて斜めにデジタル画像装置(42)を配置するステップと、
前記傷(12)及び前記傷(12)に近接する領域のデジタル画像(44)を取得するステップと、
前記デジタル画像装置(42)からディスプレイ(48)及び図形データ入力装置(50)を有するデジタル画像ディスプレイ及び処理装置(46)に前記取得したデジタル画像(44)を表すデータを送信するステップと、
前記ディスプレイ装置(46)上に前記所得したデジタル画像(44)を表示させるステップと、
前記図形データ入力装置(50)で前記ディスプレイ(48)上において前記傷(12)の前記所得したデジタル画像(44)の少なくとも一部をトレースすることにより、前記取得したデジタル画像(44)を前記ディスプレイ(48)上に表示させながら、トレースデータを入力するステップと、
前記取得したデジタル画像(44)及び前記入力したトレースデータに基づいて傷の面積を計算及び報告するステップと、
を具えることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記ディスプレイ上に表示された前記取得したデジタル画像(44)の外観を選択的に修正するステップを具えており、
このような表示修正が前記傷(12)の解像度を改善することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
さらに、前記取得したデジタル画像(44)、前記傷のトレースデータ、及び前記計算した面積データを記憶するステップを具えることを特徴とする請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
さらに、前記ステップのそれぞれを長期にわたって周期的に繰り返して、前記取得したデジタル画像(44)及び前記計算した面積データの変化を追跡するステップと、
を具えることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
さらに、前記傷のトレースの内側の前記面積の前記計算値及び長期にわたる前記追跡した変化を画像表示部に表示するステップを具えることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
さらに、長期にわたって取得された前記傷のトレースの重ね合わせ画像を前記画像表示部に同心円状に表示するステップを具えていることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記傷の面積を計算及び報告するステップが、
前記取得した前記傷(12)のデジタル画像(44)をトレースするステップからデータ入力の空間的な場所を表す2次元のトレースデータ配列を生成するステップと、
前記取得したデジタル画像(44)の中の明るい画素と暗い画素との間に画像の閾値レベルを規定するステップと、
前記傷(12)に関連して配置された前記基準タグ(32)に関するデジタル画像データを特定及び位置決めするステップと、
前記基準タグ(32)に関する既知の実際の寸法値に従って、少なくとも2の直交する空間的次元で前記トレースデータ配列を拡大又は縮小させるステップと、
前記トレースデータ配列に関する積分関数を実行して、前記傷のトレースの境界の内側の面積を計算するステップと、
前記傷のトレースの境界の内側の前記計算した面積の値を表示するステップと、
具えることを特徴とする請求項12から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
さらに、前記トレースが行われる際に、前記デジタル画像ディスプレイ及び処理装置(46)の前記ディスプレイ(48)上に前記傷のトレースを表示させるステップと、
閉曲線への前記トレースが終わると前記トレースの内側の領域を1種類の色で埋めるステップと、
を具えることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記傷(12)の前記取得したデジタル画像(44)の少なくとも一部をトレースするステップが、前記傷(12)に関する損傷した組織の領域の周縁の画像の閉じた輪郭をトレースするステップを具えていることを特徴とする請求項12から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記傷(12)の前記取得したデジタル画像(44)の少なくとも一部をトレースするステップが、前記傷(12)の中の生理的な特徴を有する少なくとも2の領域の画像の複数の閉じた輪郭をトレースするステップを具えていることを特徴とする請求項12から20のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−536848(P2009−536848A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509818(P2009−509818)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/011129
【国際公開番号】WO2007/133556
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(501394620)ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド (25)
【Fターム(参考)】