説明

加力試験装置

【課題】設備コストの低減を図ることが可能であり、且つ精度よく可撓性部材の特性値を計測することが可能な加力試験装置を提供する。
【解決手段】2個の免震ゴム10a,10bを、連結部材2を挟んで上下に直列に配置し、上段側の免震ゴム10aの下端及び下段側の免震ゴム10bの上端をそれぞれ連結部材2に固定する。この免震ゴム10a,10bの連結体を加圧部材3,4同士の間に配置し、下段側の免震ゴム10bの下端を下側加圧部材3に固定すると共に、上段側の免震ゴム10aの上端を上側加圧部材4に固定する。その後、鉛直移動装置5により上側加圧部材4を下降させ、各免震ゴム10a,10bに圧縮荷重を加える。また、水平移動装置6により、連結部材2を水平方向に移動させる。これにより、各免震ゴム10a,10bに剪断荷重が加えられるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性部材に圧縮荷重を加えつつ該圧縮荷重と直交方向に剪断荷重を加えることにより、該可撓性部材を圧縮剪断変形させて該可撓性部材の特性試験を行うように構成された加力試験装置に係り、特に建物等の構造物の免震構造に用いられる免震ゴムの特性試験を行うのに好適な加力試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板等の硬質材料からなる硬質層と、ゴム等の粘弾性的性質を有する材料からなる軟質層とを積層一体化した構成の免震装置(免震ゴム)が建物等の構造物の支承部材として広く用いられている。
【0003】
この免震ゴムの特性(例えば横弾性率や耐疲労性など)を調べるための試験装置として、免震ゴムに圧縮荷重を加えつつ該圧縮荷重と直交方向に剪断荷重を加えることにより、該免震ゴムを圧縮剪断変形させるように構成された加力試験装置が広く用いられている。この加力試験装置として、特開2001−41870に記載のものがある。第3図は同号の加力試験装置の正面図である。この加力試験装置100においては、フレーム101に、複数個の鉛直ガイド部材102を介して上側加圧板103が鉛直方向に往復移動可能に取り付けられており、その下方に、複数個の水平ガイド部材104を介して下側加圧板105が水平方向に往復移動可能に設置されている。フレーム101の上部には、上側加圧板103を鉛直方向に往復移動させるための動力源として鉛直シリンダ機構106が設置され、フレーム101の側部には、下側加圧板105を水平方向に往復移動させるための動力源として水平シリンダ機構107が設置されている。
【0004】
加力試験を行う場合には、この上側加圧板103と下側加圧板105との間に免震ゴム110を配置し、この免震ゴム110の上端を上側加圧板103に連結すると共に、下端を下側加圧板105に連結する。その後、鉛直シリンダ機構106により上側加圧板103を下方へ移動させ、免震ゴム110を該上側加圧板103と下側加圧板105との間で圧縮する。この状態で水平シリンダ機構107により下側加圧板105を水平方向に移動させることにより、免震ゴム110に水平方向の剪断荷重が加えられる。
【0005】
この加圧板103,105の移動を案内するガイド部材102,104としては、例えば、特開2005−54828に記載の直動転がり案内装置がある。同号の直動転がり案内装置は、レールと、このレールに沿って移動可能な移動ブロックと、該レールと移動ブロックとの間に介在したボールとを備えている。この移動ブロックに加圧板103,105が取り付けられる。この直動転がり案内装置にあっては、移動ブロックが移動するのに伴い、該移動ブロックとレールとの間でボールが転がることにより、摩擦抵抗が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−41870
【特許文献2】特開2005−54828
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、上記の加力試験装置100において免震ゴム110の加力試験を行う場合には、免震ゴム110が建物等を支承した状態で地震が発生した状況を再現するために、免震ゴム110にかなり大きな圧縮荷重(例えば100t(トン)程度)を加えた状態で下側加圧板105を水平移動させる。そのため、この下側加圧板105を支持している水平ガイド部材104は磨耗が激しく、頻繁にこのガイド部材104を交換することが必要となるため、設備コストが嵩む。特に、ガイド部材104として上記の直動転がり案内装置を用いた場合には、この直動転がり案内装置自体が非常に高価であるため、設備コストが膨大なものとなる。
【0008】
また、この加力試験装置100にあっては、仮にガイド部材104として直動転がり案内装置を用いた場合でも、下側加圧板105を水平移動させる際には、必ずガイド部材104から摩擦抵抗力を受けるので、正確に免震ゴム110の特性値を計測するのが難しい。
【0009】
本発明は、設備コストの低減を図ることが可能であり、且つ精度よく可撓性部材の特性値を計測することが可能な加力試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(請求項1)の加力試験装置は、可撓性部材に圧縮荷重を加えつつ該圧縮荷重と略直交方向に剪断荷重を加えて該可撓性部材を圧縮剪断変形させるように構成された加力試験装置において、少なくとも1対の第1の可撓性部材と第2の可撓性部材との一端同士を直列に連結するための連結部材と、該第1の可撓性部材の他端が連結される第1の加圧部材と、該第2の可撓性部材の他端が連結される第2の加圧部材と、該第1の加圧部材及び第2の加圧部材の少なくとも一方を他方に向って接近させ、これによって該第1の可撓性部材及び第2の可撓性部材にそれぞれ前記圧縮荷重を加えるように構成された圧縮荷重付与手段と、該連結部材を該第1の加圧部材と第2の加圧部材との接近方向と略直交方向に移動させ、これによって該第1の可撓性部材及び第2の可撓性部材にそれぞれ前記剪断荷重を加えるように構成された剪断荷重付与手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2の加力試験装置は、請求項1において、前記第1の加圧部材は、略鉛直方向に移動可能に設置されており、前記第2の加圧部材は、該第1の加圧部材の下方に固定設置されており、該第1の加圧部材と第2の加圧部材との間に前記第1の可撓性部材と第2の可撓性部材とが上下多段に配置され、該第1の可撓性部材の下端と該第2の可撓性部材の上端とがそれぞれ前記連結部材によって連結されると共に、該第1の可撓性部材の上端が該第1の加圧部材に連結され、該第2の可撓性部材の下端が該第2の加圧部材に連結されるように構成されており、前記圧縮荷重付与手段は、該第1の加圧部材を略鉛直方向に移動させるように構成されており、前記剪断荷重付与手段は、該連結部材を略水平方向に移動させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3の加力試験装置は、請求項1又は2において、前記剪断荷重付与手段は、シリンダ機構により前記連結部材を移動させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4の加力試験装置は、請求項1又は2において、前記剪断荷重付与手段は、ボールねじ機構により前記連結部材を移動させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5の加力試験装置は、請求項1ないし4のいずれか1項において、該加力試験装置は、さらに、前記第1の加圧部材及び第2の加圧部材の接近移動に追従して、前記剪断荷重付与手段を該第1の加圧部材及び第2の加圧部材から略等距離となる位置に移動させる移動手段を備えていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6の加力試験装置は、請求項1ないし5のいずれか1項において、前記連結部材の前記第1の加圧部材側に、複数個の前記第1の可撓性部材が並列に配置され、各第1の可撓性部材の前記一端がそれぞれ該連結部材に連結されると共に、各第1の可撓性部材の前記他端がそれぞれ該第1の加圧部材に連結され、該連結部材の前記第2の加圧部材側に、複数個の前記第2の可撓性部材が並列に配置され、各第2の可撓性部材の前記一端がそれぞれ該連結部材に連結されると共に、各第2の可撓性部材の前記他端がそれぞれ該第2の加圧部材に連結されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項7の加力試験装置は、請求項1ないし6のいずれか1項において、前記第1の可撓性部材及び第2の可撓性部材は、それぞれ、硬質材料からなる硬質層と、粘弾性的性質を有する材料からなる軟質層とを積層一体化してなる免震ゴムであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の加力試験装置により加力試験を行う場合、少なくとも1対の第1の可撓性部材と第2の可撓性部材とを直列に配置し、それらの対向する一端同士を連結部材により連結する。そして、この連結体を第1の加圧部材と第2の加圧部材との間に配置し、該第1の可撓性部材の他端を第1の加圧部材に連結すると共に、第2の可撓性部材の他端を第2の加圧部材に連結する。その後、圧縮荷重付与手段により第1の加圧部材と第2の加圧部材とを接近させ、各可撓性部材にそれぞれ圧縮荷重を加える。この状態において、剪断荷重付与手段により連結部材を該加圧部材同士の接近方向(以下、圧縮方向という。)と略直交方向(以下、剪断方向という。)に移動させる。これにより、第1の可撓性部材及び第2の可撓性部材にそれぞれ剪断荷重が加えられるようになる。
【0018】
かかる本発明の加力試験装置にあっては、連結部材は、前記圧縮方向の両側から第1の可撓性部材と第2の可撓性部材とによって支持されている。連結部材に剪断荷重付与手段から前記剪断方向への移動力が加えられたときには、各可撓性部材がこの連結部材に引っ張られて剪断変形することにより、連結部材が該剪断方向に移動可能となっている。そのため、本発明では、加圧部材からの圧縮荷重に対抗して連結部材を剪断方向に移動可能に支持する、前記直動転がり案内装置の如きガイド部材が不要である。これにより、従来、このガイド部材の設置及び交換に掛かっていたコストが不要となるので、加力試験装置の設備コストの低減を図ることが可能である。また、このガイド部材からの摩擦抵抗もなくなるので、試験精度の向上を図ることも可能である。
【0019】
さらに、本発明によれば、少なくとも2個の可撓性部材の加力試験を同時に行うことができるので、多数の可撓性部材の加力試験を行う場合の処理能力も向上する。
【0020】
請求項2の通り、本発明の加力試験装置は、第1の可撓性部材と第2の可撓性部材とが上下多段に配置され、これらが上下方向に圧縮される縦型の構成となっていることが好ましい。このように構成することにより、この加力試験装置の省スペース化を図ることが可能である。
【0021】
請求項3,4の通り、剪断荷重付与手段は、シリンダ機構又はボールねじ機構により連結部材を移動させるように構成されていることが好ましい。このシリンダ機構は簡便である。また、ボールねじ機構は、可撓性部材に大きな荷重を加えることができると共に、該可撓性部材の剪断変形時における剪断方向の変位量を高精度にて調節することが可能である。
【0022】
請求項5の態様にあっては、第1の加圧部材及び第2の加圧部材の接近移動に追従して、剪断荷重付与手段が該第1の加圧部材及び第2の加圧部材から略等距離となる位置に移動するので、この剪断荷重付与手段によって連結部材を剪断方向に移動させることにより、第1の可撓性部材と第2の可撓性部材とを略均等に圧縮剪断変形させることが可能となる。
【0023】
請求項6の通り、連結部材の第1の加圧部材側及び第2の加圧部材側にそれぞれ複数個の可撓性部材を並列に配置して加力試験を行うようにしてもよい。このようにすることにより、さらに多くの可撓性部材の加力試験を同時に行うことが可能となるので、この加力試験装置の処理能力が大幅に向上する。
【0024】
請求項7の通り、本発明の加力試験装置は、大きな圧縮荷重が加えられる免震ゴムの加力試験を行うのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態に係る加力試験装置の概略的な縦断面図である。
【図2】図1の加力試験装置で加力試験を行っている状態を示す概略的な縦断面図である。
【図3】従来例に係る加力試験装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態では、免震ゴム用の加力試験装置が例示されているが、本発明は、免震ゴム以外の可撓性部材用の加力試験装置にも適用可能である。
【0027】
第1図及び第2図は、実施の形態に係る加力試験装置の概略的な縦断面図である。なお、第1図は加力試験を行う前の状態を示し、第2図は加力試験を行っている状態を示している。第1図及び第2図において、z軸は鉛直方向を示し、x軸及びy軸はそれぞれ水平方向であって且つ互いに直交方向を示している。
【0028】
この実施の形態の加力試験装置1は、建物等の構造物の支承部材として用いられる免震ゴム10の加力試験を行うためのものである。この免震ゴム10は、鋼板等の硬質材料からなる硬質層(図示略)と、ゴム等の粘弾性的性質を有する材料からなる軟質層(図示略)とを積層一体化したものである。この免震ゴム10の上端及び下端には、この免震ゴム10を建物等の上部構造物及び基礎等の下部構造物にそれぞれ連結するためのフランジ11,12が設けられている。
【0029】
第1,2図の通り、この加力試験装置1は、少なくとも1対の免震ゴム10(10a,10b)を上下に直列に(即ち同軸状に)配置して加力試験を行うように構成されている。これらの免震ゴム10a,10b同士の間に盤状の連結部材2が配置され、上段側の免震ゴム10aの下端のフランジ12が該連結部材2の上面にボルト(図示略)で固定されると共に、下段側の免震ゴム10bの上端のフランジ11が該連結部材2の下面にボルトで固定されることにより、これらの免震ゴム10a,10b同士が該連結部材2を介して連結される。なお、上段側の免震ゴム10aのフランジ12と下段側の免震ゴム10bのフランジ11とは共通のボルトによって連結部材2に固定されてもよく、別々のボルトによって連結部材2に固定されてもよい。また、これらのフランジ11,12は、ボルト以外の固定手段により連結部材2に固定されてもよい。連結部材2の側面には、後述の水平移動装置6のボールねじ6aの先端が接続される接続部2aが設けられている。
【0030】
加力試験装置1は、この免震ゴム10a,10bの連結体の上側及び下側にそれぞれ配置される盤状の上側加圧部材3及び下型加圧部材4と、該上側加圧部材3を下降させて該免震ゴム10a,10bに圧縮荷重を加えるための圧縮荷重付与手段としての鉛直移動装置5と、前記連結部材2を略水平方向に移動させて各免震ゴム10a,10bに剪断荷重を加えるための剪断荷重付与手段としての水平移動装置6等を備えている。上側加圧部材3は、この加力試験装置1のフレームFに対し鉛直ガイド部材7を介して略鉛直方向に往復移動可能に取り付けられている。下側加圧部材4は、この上側加圧部材3の下方に固定設置されている。これらの加圧部材3,4は、それぞれ盤面を略水平とし、且つ各々の盤面の中心が略合致するように配置されている。なお、各加圧部材3,4の設置構造はこれに限定されない。
【0031】
鉛直ガイド部材7としては、例えば前述の直動転がり案内装置や、直線滑り軸受等を用いることができる。ただし、鉛直ガイド部材7は、特定の構成のものに限定されない。
【0032】
この実施の形態では、鉛直移動装置5としては、油圧によりピストンを進退させる油圧シリンダ機構が用いられている。なお、このシリンダ機構の動力源は油圧に限定されるものではなく、空気圧などであってもよい。また、水平移動装置6としては、電動モータ等のモータMの回転駆動力によりボールねじ6aを進退(螺進)させるボールねじ機構が用いられている。ただし、鉛直移動装置5及び水平移動装置6の構成はこれに限定されない。例えば、これらの移動装置5,6の双方にシリンダ機構が用いられてもよく、これらの双方にボールねじ機構が用いられてもよい。なお、移動装置5,6としてボールねじ機構を用いることにより、免震ゴム10の圧縮剪断変形時における圧縮方向及び剪断方向の変位量を高精度にて調節することが可能となる。
【0033】
この鉛直移動装置5は、ピストンを下向きにしてフレームFの上部に設置され、該ピストンの下端が上側加圧部材3の上面に連結されている。水平移動装置6は、ボールねじ6aの先端側を加圧部材3,4同士の間に略水平に(この実施の形態では第1,2図におけるx軸方向に)差し向けた姿勢でフレームFの側部に設置されている。この水平移動装置6は、高さ調節可能な支持部材(図示略)により支持されている。この支持部材は、上側加圧部材3の昇降に連動して、常にボールねじ6aの先端側が上側加圧部材3の下面及び下側加圧部材4の上面から略等距離となる高さに位置するように水平移動装置6を昇降させるよう構成されている。なお、この水平移動装置6の高さ調節機構及びその制御方法は、特定の機構及び方法に限定されない。例えば、この水平移動装置6の高さ調節は、上側加圧部材3の昇降と連動して自動的に行われるようにしてもよく、作業者が手動にて行うようにしてもよい。
【0034】
このように構成された加力試験装置1により免震ゴム10の加力試験を行う場合、まず、上記の通り、2個の免震ゴム10(10a,10b)を、連結部材2を挟んで上下に直列に配置し、上段側の免震ゴム10aの下端のフランジ12及び下段側の免震ゴム10bの上端のフランジ11をそれぞれ連結部材2の上面及び下面にボルトで固定する。次に、第1図の通り、この免震ゴム10a,10bの連結体を加圧部材3,4間に配置し、上段側の免震ゴム10aの上端のフランジ11を上側加圧部材3の下面にボルトで固定すると共に、下段側の免震ゴム10bの下端のフランジ12を下側加圧部材4の上面にボルトで固定する。なお、加圧部材3,4に対するフランジ11,12の固定方法は、ボルトによる固定に限定されない。その後、連結部材2の接続部2aに水平移動装置6のボールねじ6aを接続する。なお、下側加圧部材4上に下段側の免震ゴム10bを載せ、その上に連結部材2を載せ、その後、この連結部材2の上に上段側の免震ゴム10aを載せるようにして免震ゴム10a,10bを設置してもよい。
【0035】
その後、第2図の通り、鉛直移動装置5により上側加圧部材3を下降させ、各免震ゴム10a,10bに圧縮荷重を加える。また、水平移動装置6により、連結部材2を水平方向に移動させる。これにより、各免震ゴム10a,10bに剪断荷重が加えられるようになる。なお、必要に応じ、連結部材2を水平方向に往復移動させてもよい。
【0036】
この加力試験装置1にあっては、各免震ゴム10a,10bにより、これらの圧縮方向の両側から連結部材2が支持されている。連結部材2に水平移動装置6から水平方向への移動力が加えられたときには、各免震ゴム10a,10bがこの連結部材2に引っ張られて剪断変形することにより、連結部材2が水平方向に移動可能となっている。そのため、この加力試験装置1にあっては、上側加圧部材3からの圧縮荷重に対抗して連結部材2を水平方向に移動可能に支持する、前記直動転がり案内装置の如きガイド部材が不要である。これにより、従来、このガイド部材の設置及び交換に掛かっていたコストが不要となるので、加力試験装置1の設備コストの低減を図ることが可能である。また、このガイド部材からの摩擦抵抗もなくなるので、試験精度の向上を図ることも可能である。
【0037】
さらに、この加力試験装置1によれば、少なくとも2個の免震ゴム10a,10bの加力試験を同時に行うことができるので、多数の免震ゴム10の加力試験を行う場合の処理能力も向上する。
【0038】
この実施の形態では、水平移動装置6は、高さ調節可能な支持部材(図示略)により、上側加圧部材3の昇降に追従して常に該上側加圧部材3の下面と下側加圧部材4の上面とから略等距離となる高さに位置するように支持されている。これにより、該水平移動装置6によって連結部材2が水平方向に移動したときに、上段側の免震ゴム10aと下段側の免震ゴム10bとが略均等に圧縮剪断変形するようになる。
【0039】
[その他の構成]
上記の実施の形態は、本発明の一例を示すものであり、本発明は上記の実施の形態に限定されない。
【0040】
例えば、上記の実施の形態では免震ゴム10の加力試験を行っているが、本発明の加力試験装置により試験される可撓性部材は、免震ゴムに限定されない。例えば、本発明の加力試験装置は、免震ゴム以外のゴム製品、例えば防舷材や防振ゴム等の加力試験を行うための加力試験装置にも適用可能である。もちろん、ゴム製品以外の可撓性部材の加力試験を行うための加力試験装置にも適用可能である。
【0041】
上記の実施の形態では、連結部材2の上側及び下側にそれぞれ1個の免震ゴム10を配置して加力試験を行っているが、連結部材2の上側及び下側にそれぞれ2個以上の免震ゴム10を並列に配置して加力試験を行ってもよい。このようにすれば、より多数の免震ゴム10の加力試験を同時に行うことができるので、処理能力が大幅に向上する。
【0042】
上記の実施の形態では、連結部材2の水平方向の移動を案内するガイド部材は設けられていないが、このようなガイド部材が設けられてもよい。本発明では、仮に連結部材2の水平方向の移動を案内するガイド部材を設けた場合でも、このガイド部材は、上側加圧部材3からの荷重に対抗して連結部材2を支持する必要がないので、磨耗が少なく、加力試験装置1の設備コストが過度に増大することはない。
【0043】
上記の実施の形態では、加力試験装置1は、免震ゴム10をz軸方向に圧縮しつつ、連結部材2をx軸方向に移動させて剪断荷重を加える構成となっているが、必要に応じ、さらにy軸方向にも連結部材2を移動させうるように構成してもよい。さらに、免震ゴム10にねじり荷重を加えうるように構成してもよい。
【0044】
上記の実施の形態では、加力試験装置1は、免震ゴム10が上下多段に配置され、これらを上下方向に圧縮する縦型の構成となっているが、免震ゴム10が水平方向に直列に配置され、これらを水平方向に圧縮する横型の構成としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 加力試験装置
2 連結部材
3 上側加圧部材
4 下側加圧部材
5 鉛直移動装置
6 水平移動装置
7 鉛直ガイド部材
10 免震ゴム
11,12 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性部材に圧縮荷重を加えつつ該圧縮荷重と略直交方向に剪断荷重を加えて該可撓性部材を圧縮剪断変形させるように構成された加力試験装置において、
少なくとも1対の第1の可撓性部材と第2の可撓性部材との一端同士を直列に連結するための連結部材と、
該第1の可撓性部材の他端が連結される第1の加圧部材と、
該第2の可撓性部材の他端が連結される第2の加圧部材と、
該第1の加圧部材及び第2の加圧部材の少なくとも一方を他方に向って接近させ、これによって該第1の可撓性部材及び第2の可撓性部材にそれぞれ前記圧縮荷重を加えるように構成された圧縮荷重付与手段と、
該連結部材を該第1の加圧部材と第2の加圧部材との接近方向と略直交方向に移動させ、これによって該第1の可撓性部材及び第2の可撓性部材にそれぞれ前記剪断荷重を加えるように構成された剪断荷重付与手段とを備えていることを特徴とする加力試験装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第1の加圧部材は、略鉛直方向に移動可能に設置されており、
前記第2の加圧部材は、該第1の加圧部材の下方に固定設置されており、
該第1の加圧部材と第2の加圧部材との間に前記第1の可撓性部材と第2の可撓性部材とが上下多段に配置され、該第1の可撓性部材の下端と該第2の可撓性部材の上端とがそれぞれ前記連結部材によって連結されると共に、該第1の可撓性部材の上端が該第1の加圧部材に連結され、該第2の可撓性部材の下端が該第2の加圧部材に連結されるように構成されており、
前記圧縮荷重付与手段は、該第1の加圧部材を略鉛直方向に移動させるように構成されており、
前記剪断荷重付与手段は、該連結部材を略水平方向に移動させるように構成されていることを特徴とする加力試験装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記剪断荷重付与手段は、シリンダ機構により前記連結部材を移動させるように構成されていることを特徴とする加力試験装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、前記剪断荷重付与手段は、ボールねじ機構により前記連結部材を移動させるように構成されていることを特徴とする加力試験装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、該加力試験装置は、さらに、前記第1の加圧部材及び第2の加圧部材の接近移動に追従して、前記剪断荷重付与手段を該第1の加圧部材及び第2の加圧部材から略等距離となる位置に移動させる移動手段を備えていることを特徴とする加力試験装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記連結部材の前記第1の加圧部材側に、複数個の前記第1の可撓性部材が並列に配置され、各第1の可撓性部材の前記一端がそれぞれ該連結部材に連結されると共に、各第1の可撓性部材の前記他端がそれぞれ該第1の加圧部材に連結され、
該連結部材の前記第2の加圧部材側に、複数個の前記第2の可撓性部材が並列に配置され、各第2の可撓性部材の前記一端がそれぞれ該連結部材に連結されると共に、各第2の可撓性部材の前記他端がそれぞれ該第2の加圧部材に連結されるように構成されていることを特徴とする加力試験装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記第1の可撓性部材及び第2の可撓性部材は、それぞれ、硬質材料からなる硬質層と、粘弾性的性質を有する材料からなる軟質層とを積層一体化してなる免震ゴムであることを特徴とする加力試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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