説明

加圧予備処理反応器での乾燥排出のための方法およびプロセス

リグノセルロース原料の処理のための反応器および関連する方法。反応器は、上方部分と下方部分とを有する槽を含む。槽の外壁と槽の下方部分の少なくとも一つの下方壁との間に圧力筒状部は形成され、槽の上方部分と圧力筒状部は圧力ラインで操作上で連結されるので、圧力筒状部の圧力と上方部分の圧力とは等しくなる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2009年12月21日に出願された出願第61/288,520号の優先権の利益を主張するものであり、この先願の明細書全文が参考文献として本明細書に包含されている。
【発明の背景】
【0002】
本発明は、一般的には、バイオマスから糖を製造することに関するものである。
【0003】
バイオマスの熱化学的プロセスにおいては、ほとんどの反応プロセスは湿潤環境での予備処理ステップを含む。バイオマス予備処理ステップは、通常、酸加水分解または自動加水分解を含み、酸または水が加圧された反応器中のバイオマスに加えられる。
【0004】
典型的な反応器では、原料は液体に浸漬され、水蒸気および/または他の気体材料を介して所望の温度および圧力に加熱される。予備処理された原料は次に反応器の底部を通って排出される。反応槽および排出装置内が酸性条件であると、反応器および排出装置のために、高価な建設材料が必要となる。
【発明の概要】
【0005】
ある面では、本発明は、一般にリグノセルロース原料の処理のための反応器に関する。この反応器は上方部分および下方部分を有する槽を含む。上方部分は、(i)バイオマスを受け入れるために適合され、かつ加圧気体を介してバイオマスを加圧および加熱するのに適合されており、そして、(ii)カーボンスチールを含む少なくとも一つの上方壁によって規定されている。下方部分は、(i)加圧されたバイオマスを受け入れるために適合され、かつ過剰の液体または自由液体なしでバイオマスの加水分解または自動加水分解を促進するために適合されており、(ii)耐食材料で作製された少なくとも一つの下方壁を含み、(iii)輸送液体なしでバイオマスを輸送するよう構成されている。反応器はさらに槽の外壁と下方部分の壁との間に形成される圧力筒状部(envelope)を含む。槽の上方部分と圧力筒状部は加圧ラインで操作上で(operatively)連結されているので、圧力筒状部の圧力と上方部分の圧力は等しくなる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1Aおよび図1Bは、本発明の態様に従う反応器を概略的に図示するものである。
【発明の詳細な説明】
【0007】
ある面では、どのようなバイオマスであっても、本明細書に記載されているプロセスおよび反応器との関係で使用することができる。例えば、バイオマスは一つまたはそれ以上の木材、草、および/または任意のリグノセルロース含有原料を含む。
【0008】
先行技術(例えば浸漬法の使用)の欠陥を克服するための試みにおいて、バイオマス予備処理反応槽で液体を減らすことによって、下流での乾燥と蒸発の必要性を減らし、糖の抽出の効率を改善することは望ましいことである。この液体を減少させた環境は、自由液体がほとんどないかまたは自由液体がない乾燥条件を使用することで達成される。しかし、液体が存在しないことは一群の特有の困難を引き起こす。本発明のある面においては、反応器のデザインが、それらの困難を軽減することができる。
【0009】
乾燥プロセス用反応器では、反応槽は、一般に二つの部分:上方部分および下方部分を含む。槽の上方部分は加圧された部分であり、そこにバイオマスが入り、水蒸気または他の気体物質(例えばアンモニア)を使用して加熱される。上方部分の壁はカーボンスチール、ステンレススチールまたは他の適当な材料で作製されている。
【0010】
槽の最終的な圧力は加熱用媒体に依存する。もし水蒸気を使用すると、所望の温度での槽の圧力は、約5〜25バールとなるが、もしアンモニアを加熱用媒体として使用すると、所望の操作温度での槽の操作圧力は60バールまでになり得る。
【0011】
本発明のある態様では、水蒸気とアンモニアおよび/または他の加熱用媒体との混合物を使用することも可能である。
【0012】
槽の下方部は、底部排出部であり、そこでは、バイオマス原料にかかっている内部圧力が、排出装置が位置している空洞の外部圧力と異なる。
【0013】
適切な質量流を促進するために、この反応器排出装置は、米国特許第5,500,083号公報(ここで引用することにより、その内容が本明細書に包含される)に記載されているようにDiamondback(登録商標)チップビン形状に類似するものでよく、またはサイドリリーフがある他の一次元収束形、または振動又は回転排出装置の必要がなくてもバイオマス原料の円滑な排出ができる他の幾何学形状でさえもよい。ある面では、本発明は、バイオマスを移動させるための外部の力(例えば、振動および/または回転)よりもむしろ槽の幾何学形状に依存している。
【0014】
排出部の幾何学形状は、槽の適切な操作に重要であり、排出装置の壁のたわみは抑制されなければならない。たわみは排出部を非常に重い材料で建造するか、または槽の排出領域の内部と外部の圧力を等しくすることで抑制される。圧力を等しくするために、槽の排出装置領域のまわりに圧力筒状部が存在し、それにより排出装置材料の歪みを軽減している。圧力筒状部は、排出装置の外部と内部との間の圧力差を最小限にする。
【0015】
この圧力筒状部は排出装置の壁(これは耐食材料である)をできるだけ薄くすることを可能にする。なぜなら圧力筒状部の壁(より費用のかからない材料、例えばカーボンスチールなどで作られている)は反応器の圧力に耐えられるからである。耐食材料は、ステンレススチール、チタニウム、ジルコニウム、および/または任意の他の耐食材料でよい。
【0016】
もし圧力筒状部を省くと、排出装置の建造に使われる金属板または金属片は、形を保ち、支えることが難しくなり、より費用のかかる装置になる。特になぜならば、それらは排出装置のたわみおよび損傷を抑えなければならないからである。ある面では、圧力筒状部がある反応器は、それゆえに費用のかかる材料の必要量を有利に低減する。
【0017】
気体(例えば水蒸気)は、上方槽部位(すなわち、熱化学反応が主として起こる場所)にあるバイオマス原料を加熱し、加圧するのに使われる。反応器と排出装置を取り囲む筒状部との間の圧力を等しくするために、二つの部位は均圧パイプによって連結されている。反応器の上方部位内の気体は、次いで排出装置を取り囲む筒状部を満たし、加圧することができ、それによって排出装置の内部と外部との間の圧力を等しくする。
【0018】
おおよそ等しくなった場合は、反応器内の気体と、排出装置を取り囲んでいる空洞とは、大体同じ圧力になるが、同じ機能を有しない。排出装置を取り囲んでいる空洞への気体は、排出装置内のバイオマスを加熱するために必要とされないが、ただ圧力を維持するために必要とされる。反応槽の上方部分への気体はバイオマスを加熱するためにも、槽の圧力を維持するためにも使われる。
【0019】
もし加熱用媒体の凝縮液が圧力筒状部で回収されれば、排出装置の内部と空洞(排出装置の外部)との間に静水圧の差を生みだすことが可能である。この静水圧差が排出装置の領域において過剰になることを抑制するために、オーバーフロー装置を空洞に設けることも可能であり、これにより排出装置の空洞エリア内の液体レベルを維持する。
【0020】
排出部位の内部と外部との圧力を等しくすることを可能にすることに加えて、空洞は、−反応器の上方部位の温度であるかまたはそれに近いので−異常な状態、例えば反応器の上方部位への気体の損失のような状態で、熱を反応器の内容物に供給することができる。そのような場合、空洞エリアの熱は、プロセス反応器の安全で制御された失活を可能にするための一時的なプロセスの熱源となる。例えば、圧力筒状部(例えば、空洞)内の凝縮液の液体レベルを維持することは、加熱用媒体が一時的に失われた場合に熱源を供給することができる。
【0021】
もし反応器がゆっくりと失活されれば、熱と圧力の急激で危険な損失が避けられ、それにより、オペレーターや装置への危険を最小限にすることができる。
【0022】
図1Aおよび図1Bは、本発明のある態様に従う反応器を概略的に図示するものである。図1Aおよび図1Bは、同じ槽の異なる視座を示し、同じ数字が同じ部分を示している。槽100は外壁190によって大まかに規定され、外壁は上方部分と下方部分120とに分割されている空洞を作り出す。
【0023】
バイオマス原料(例えば、リグノセルロース原料)は槽100の頂部102に供給される。バイオマスは重力によって供給される、および/または機械的に、例えばスクリューコンベヤーおよび/またはコンベヤーベルトを介して供給される。槽100に入ると、バイオマス原料は上方部分110に入り、そこではアンモニアおよび/または水蒸気が液体の過剰量を加えることなしに反応器を加圧している。すなわち、スラリーが液体の添加によってつくりだされないことが好ましい。プロセス化学薬品(例えば、加水分解反応を促進する酸)は、バイオマス原料が槽に入る前にバイオマスに加えられてきた。これらの酸の例としては、硫酸、塩酸、フッ酸および/またはリン酸が含まれる。酢酸、ギ酸のような有機酸も使用することができる。
【0024】
プロセス入口ノズル140からもプロセス化学薬品(例えば、加水分解反応を促進する酸)の添加が可能である。これらの酸の例としては、硫酸、塩酸、フッ酸および/またはリン酸が含まれる。ある面では、反応処理槽には自由液体がほとんどないか全くない。すなわち、自由液体はセルロース原料に吸収されるので、バイオマスがほとんどまたは全く過剰液体を有しない。
【0025】
下方部分120は外部の撹拌や回転なしにバイオマスの輸送を促進するように形成されており、例えば、米国特許第5,500,083号公報に記載されているようなDiamondback(登録商標)チップビンの形状に形成されている。下方部分120は耐食材料(例えば、ステンレススチール、チタニウム、ジルコニウム、セラミックコーティング(レンガライニングのように)、ポリテトラフルオロエチレンライニングまたはそれらの組合せなど)で作製されており、圧力筒状部130は下方部分120と壁190との間に存在する。図示されているように、圧力筒状部130は、下方部分120の壁122と槽100の壁132との間に存在する。バイオマスは底部部分104を経由して槽100を出る。
【0026】
閉塞の除去を促進し、詰まりを軽減するために、ノズル150、160および170が設けられている。さらに、均圧ライン180は、(連結182を介して)上方部分110と(連結184を介して)圧力筒状部130との間の圧力を等しくする。加圧ノズル186は上方部分110の圧力および/または圧力筒状部130の圧力の制御を促進するために設けられている。ある面では、圧力筒状部130は下方部分120の壁を形成するための材料(例えば、耐食材料または他の適当な材料)をより少なくすることができる。
【0027】
連続プロセスに関連して図示し、記載したが、反応器はバッチプロセスでも使用できる。
【0028】
本発明を、現時点で最も現実的で好ましい態様と考えられるものとの関連で記載してきたが、本発明は開示された態様に限定されるものではなく、反対に、添付の請求項の思想および範囲に含まれる種々の修正および等価である構成に及ぶことを意図していることを理解されたい。











【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロース原料の処理のための反応器であって、
この反応器は、上方部分および下方部分を有する槽を含み、
上方部分は、(i)バイオマスを受け入れるために適合され、かつ加圧気体を介してバイオマスを加圧および加熱するのに適合されており、(ii)少なくとも一つの上方壁によって規定されており、
下方部分は、(i)加圧されたバイオマスを受け入れるために適合され、かつ過剰の液体または自由液体なしでバイオマスの加水分解または自動加水分解を促進するために適合されており、(ii)耐食材料を含む少なくとも一つの下方壁を含み、(iii)輸送液体なしでバイオマスを輸送するよう構成されており、
圧力筒状部(envelope)が槽の外壁と少なくとも一つの下方壁との間に形成されており、
槽の上方部分と圧力筒状部は加圧ラインで操作上で(operatively)連結されているので圧力筒状部の圧力と上方部分の圧力とが等しくなっている、
リグノセルロース原料の処理のための反応器。
【請求項2】
下方部分が外部の撹拌または回転なしにバイオマスを輸送するように構成されている請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
耐食材料がステンレススチール、チタニウム、ジルコニウム、耐食合金、セラミックコーティング、ポリテトラフルオロエチレンライニングまたはそれらの組合せを含む請求項1に記載の反応器。
【請求項4】
加圧気体が水蒸気である場合に、上方部分が約5〜25バールの圧力までバイオマスを加圧するのに適合している請求項1に記載の反応器。
【請求項5】
加圧気体がアンモニアである場合に、上方部分が約60パールの圧力までバイオマスを加圧するのに適合している請求項1に記載の反応器。
【請求項6】
バイオマス原料を加水分解する方法であって、
上方部分と下方部分とを有する槽にバイオマス原料を供給する工程、
加圧用媒体を使用して上方部分のバイオマスを加圧する工程、
過剰な液体または自由液体なしに加水分解反応または自動加水分解反応が起こる下方部分へ加圧されたバイオマスを輸送する工程、
輸送液体の導入なしで下方部分から加水分解されたバイオマスを輸送する工程を含み、
圧力筒状部が槽の外壁と下方部分の少なくとも一つの壁との間に形成されており、
圧力筒状部と槽の上方部分とを連結する加圧ラインを介して、圧力筒状部の圧力と上方部分の圧力とを等しくする、
バイオマス原料を加水分解する方法。
【請求項7】
バイオマス原料を供給する工程が連続的に行われる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
バイオマス原料を供給する工程がバッチ式プロセスで行われる請求項6に記載の方法。
【請求項9】
加圧用媒体がアンモニアを含み、上方部分でバイオマスを加圧する工程が約60バールまでの圧力となる請求項6に記載の方法。
【請求項10】
加圧用媒体が水蒸気を含み、上方部分でバイオマスを加圧する工程が約5〜25バールの圧力となる請求項6に記載の方法。
【請求項11】
下方部分から加水分解されたバイオマスを輸送する工程が、外部の撹拌または回転なしにさらに起こる請求項6に記載の方法。
【請求項12】
加水分解反応が硫酸、塩酸、フッ酸、リン酸またはそれらの組合せの添加で起こる請求項6に記載の方法。
【請求項13】
加水分解反応が酢酸、ギ酸またはそれらの組合せの添加で起こる請求項6に記載の方法。
【請求項14】
加水分解反応が硫酸の添加で起こる請求項6に記載の方法。
【請求項15】
バイオマスが木材、草またはそれらの組合せを含む請求項6に記載の方法。
【請求項16】
重力を介して槽にバイオマスを供給する工程をさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項17】
スクリューコンベヤーまたはコンベヤーベルトを介して槽にバイオマスを供給する工程をさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項18】
熱源を供給するために圧力筒状部内の凝縮液のレベルを維持することをさらに含む請求項6に記載の方法。


【公表番号】特表2013−514786(P2013−514786A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544953(P2012−544953)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/061405
【国際公開番号】WO2011/084761
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(504420490)アンドリッツ・テクノロジー・アンド・アセット・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (4)
【Fターム(参考)】