説明

加圧充填機

【課題】充填機の運転状況が変化したり充填液の流量が変動した場合でも安定した充填を行えるようにする。
【解決手段】回転体16に複数の充填バルブ18が設けられており、圧力エア源34からの圧力によって、加圧タンク20内の充填液を充填バルブ18に送って容器2内に充填する。加圧された充填液の圧力は圧力センサー42によって検出され、この圧力センサー42からの信号が圧力調整手段40に送られる。圧力センサー42によって検出された圧力値から目標圧力値へ圧力を調節する際の立ち上がり速度の設定値を複数有しており、充填機の運転状況等に応じて前記立ち上がり速度設定値のいずれかを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填液を加圧して送液し容器内に充填する加圧充填機に係り、特に、その圧力を制御する構成を備えたロータリー式の加圧充填機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロータリー式の加圧充填機は、外部から供給された容器を回転搬送しつつ一定の区間内で液体を充填した後、この容器を機外に排出する。充填される液体は加圧タンク内に貯留されており、エアによって加圧されて充填バルブへ送液されている。前記加圧タンクはエア源に連通しており、給気量と排気量を調節計によって制御することにより、加圧充填機へ送液する充填液の圧力を設定圧力に維持するようにしている。
【0003】
加圧充填機へ送液する充填液の圧力を一定に維持することができれば、充填液は所定の流量で送液されるが、ロータリー式の加圧充填機では、充填の運転状況に応じて充填液に加圧されるエア圧力が変動してしまう。例えば、容器に充填を行わない運転待機時には、複数の充填バルブが全て閉じているので、圧力は一定であるが、運転が開始されて充填バルブが開放されると、圧力が低下してしまう。このように圧力が低下すると、流量が変動して充填精度が悪くなる。そこで、運転開始時に圧力を高める制御を行うようにした加圧式充填機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された加圧式充填機は、加圧タンク内に、エア供給手段から加圧エアが送られ、その内部に収容されている内容物が配管を介してフィラに供給される。フィラに供給される内容物の供給圧力は、前記配管に設けられた圧力センサによって測定されて調節手段に送られる。調節手段には、予め設定された値が入力されており、前記圧力センサによって測定される値が常にこの設定値に一致するように、エア供給手段から加圧タンクに送られるエアの圧力を調節する。さらに、この特許文献1の充填機には、前記調節手段によって維持される設定圧力を変更する設定圧力変更手段を設けてあり、充填機が一定時間停止した後の再スタート時に、設定圧力変更手段によって前記設定圧力を高い圧力に変更するようにしている。
【0005】
また、充填機によっては、温度の変動によって充填液の粘度が大きく変化し、一定の圧力をかけていても充填ノズルから吐出される充填液の流量が変動して充填精度が悪くなる場合もあった。そこで、このような場合に、充填時間を計測して基準時間と比較し、充填量の誤差をなくすように圧力を調整するようにした充填機が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2に記載された加圧式充填装置は、従来の加圧式充填装置に、容器内に充填された液量が予め定めた基準値となるまでの時間を計測するタイマーと、このタイマーによる計測時間と予め定めた基準時間との誤差を検出する比較器と、この比較器によって検出された誤差の大きさに応じてその誤差がなくなるように充填液タンクに加える圧力補正手段を設け、あるいは、予め定めた基準時間を計測するタイマーと、充填液量を検出する検出器によって検出した前記基準時間経過時に容器に充填されている充填液量と予め定めた基準充填計量との誤差を検出する比較器と、この比較器によって検出されて誤差の大きさに応じて、その誤差がなくなるように前記充填液タンク内に加える圧力を補正する圧力補正手段とを設けたものである。
【特許文献1】実公平6−28480号公報(第2頁、図1)
【特許文献2】特許第2817192号公報(第2−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
タンクに付加する圧力を制御する加圧式充填機では、送液する充填液の圧力が設定圧力になるように、調節計によって給気バルブおよび排気バルブを制御するようになっている。この調節計には、設定圧力と異なった場合には、どれだけの速度もしくは時間で前記設定圧力(目標圧力)に到達させるかの立ち上がり速度設定値を持っており、充填液などの条件によってこの立ち上がり速度が設定される。従来の加圧充填機では、前記立ち上がり速度設定値は1つの値だけであり、どのような状況で圧力が変化した場合でもこの立ち上がり速度設定値に応じて目標圧力に到達するようにしている。そのため、温度の影響により粘度が変動する充填液の場合や、下流に配置された装置の運転状態、例えば、下流に配置されたキャッパが頻繁に停止するために、充填機も頻繁に停止せざるを得ない場合などは、きめ細かな圧力制御を行うことは不可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の充填手段が設けられた回転体と、この回転体を回転させる駆動手段と、充填液が貯留された加圧タンクと、この加圧タンクの充填液を加圧して前記充填手段に供給する加圧手段と、加圧された充填液の圧力を検出する圧力検出手段と、この圧力検出手段による検出値が設定された目標圧力値に維持されるように、前記加圧手段による加圧力を調節する調節手段とを備えたロータリー式の加圧充填機において、前記調節手段は、圧力検出手段によって検出された圧力値から前記目標圧力値へ圧力を調節する際の立ち上がり速度設定値を複数有し、これら立ち上がり速度設定値を充填の運転状況に応じて選択することを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記立ち上がり速度設定値は、低速、中速および高速からなり、全ての充填手段が開放していない待機運転中は前記速度設定値を低速とし、いくつかの充填手段が開放して充填動作を行っている充填運転中は中速とし、充填停止信号入力時には高速とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のロータリー式の加圧充填機は、立ち上がり速度設定値を複数保有し、充填機の運転状態等に応じて前記複数の立ち上がり速度設定値のいずれかを選択することにより、充填機がどのような運転状態でも、また、流量が変動しやすい充填液であっても、安定した充填が行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
回転体に設けられた複数の充填手段と、充填液が貯留された加圧タンクと、加圧タンクの充填液を加圧して前記充填手段に供給する加圧手段と、充填液の圧力を検出する圧力検出手段と、前記加圧手段による加圧力を調整する調整手段ととを備えたロータリー式の加圧充填機に、前記調節手段によって目標圧力値へ圧力を調節する際の立ち上がり速度を複数設定し、運転状況等に応じて複数の立ち上がり速度設定値のいずれかを選択するという構成で、どのような運転状態でも流量の変動を抑えて安定した充填を行うことができるという目的を達成する。
【実施例1】
【0012】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は本発明の一実施例に係るロータリー式の加圧充填機の全体の構成を簡略化して示す平面図、図2は、このロータリー式の加圧充填機の構成図である。この加圧充填機によって液体等の内容物が充填される容器2は、搬送コンベヤ4によって連続的に搬送され、インフィードスクリュー6によって所定の間隔に切り離された後、入口スターホイール8を介してロータリー式の加圧充填機10内に供給される。
【0013】
この実施例の加圧充填機10は、ロードセル12によって充填量を計測しつつ充填を行うウエイトフィラであり、入口スターホイール8を介して供給された容器2は、安定区間A、つまり、容器2が供給された直後はロードセル12が振動するため正確な重量の測定が行えないので振動が収束するのを待つ区間と、風袋計測区間B、つまり、供給された容器2の重量を計測する区間を経た後充填が開始され(充填区間C)、ロードセル12が所定の充填量を計測した時点で充填を終了する。充填が終了した容器2は、出口スターホイール14を介して前記搬送コンベヤ4上に排出されて次の工程に送られる。なお、この加圧式充填機によって充填される液体は、粘度が高い液で、気泡などが混入しやすく温度により流量が変化しやすい液である。
【0014】
次に、図2によりロータリー式の加圧充填機の構成について説明する。回転体(具体的な構造は図示を省略)16の外周側の下部に、円周方向等間隔で複数の充填バルブ(充填手段)18が設けられている。これら充填バルブ18によって充填される充填液は、加圧タンク20に貯留されており、供給配管22を通って前記回転体16の充填バルブ18に送られる。加圧タンク20から送られ、ロータリジョイント24を介して回転体16に供給された充填液は、マニホールド26によって分岐され、各給液管28を通って前記各充填バルブ18に送られて容器2内に充填される。
【0015】
加圧タンク20は、給気バルブ30およびレギュレータ32を介して圧力エア源34に接続されており、圧力エア源34から圧力エアを供給することによりこの加圧タンク20内の液体を加圧して前記充填バルブ18に供給する。圧力エア源34を加圧タンク20に接続するエア配管36に排気バルブ38が設けられており、前記給気バルブ30とこの排気バルブ38の開度を調節することにより、加圧充填機に送液する充填液の圧力を制御することができる。これら給気バルブ30からの給気量および排気バルブ38からの排気量は調節計40によって調節され、前記充填液の圧力を設定圧力に制御する。なお、加圧タンク20には、図示はしないが、貯留している充填液を外部から補充する配管が接続されている。
【0016】
前記加圧タンク20から回転体16に充填液を供給する供給配管22のロータリジョイント24の直前に圧力センサー42が設けられており、この圧力センサー42から圧力値の検出信号が前記調節計40に送られ、圧力センサー42の圧力値が所定の圧力となるように調節計40が前記両バルブ30、38の開度を制御する。調節計40は、PID制御によって、設定圧力を維持するように制御している。Pは比例動作、Iは積分動作、Dは微分動作であり、これら3つの動作のうちPとI、もしくはPIDを組み合わせて制御を行う。また、圧力センサー42の検出した圧力が設定圧力と異なる時には、設定圧力(目標圧力)にどれだけの速度で復帰させるかを制御している。
【0017】
この実施例では、設定圧力が運転待機時および連続運転時には0.08MPa、運転の開始時には前記運転待機時等よりも0.005MPa高い0.085MPa、停止信号の入力時には前記運転待機時等よりも0.003MPa低い0.077MPaとしている。運転開始時には、全ての充填バルブ18が閉じた状態から順次開放されていくため、圧力が低下するので、それを考慮して運転時よりも高く設定する。また、運転中に停止信号が入力されると、開放している充填バルブ18の本数が次第に減少していくことにより、圧力が上昇するので、それを考慮して運転時よりも低く設定する。
【0018】
前記各充填バルブ18の下方には、それぞれびん台44が配置されており、前記入口スターホイール8から供給された容器2が各びん台44上に載せられる。びん台44はそれぞれロードセル12に連結されており、びん台44上に載せられた容器2はロードセル12によってその重量が計測される。各ロードセル12の計測した信号が制御装置46に送られる。
【0019】
制御装置46は、制御部46aと流量演算部46bとタイマー46cを備えており、前記ロードセル12からの信号により、充填バルブ18から吐出される充填液の流量を算出する。流量の算出はタイマー46cとロードセル12によって行っており、充填中において一定時間、例えば3秒間でどれだけの充填液が吐出されたかを算出することにより、流量値を求める。また、制御装置46は、予め基準流量値を記憶しており、前記算出した流量値を基準流量値と比較して、基準流量値から外れた場合には、前記調節計40に指令信号を出力して設定圧力を変更するようにしている。例えば、基準流量値を100g/s〜120g/sの範囲に設定した場合に、100g/s以下の値が5本の充填バルブ18から連続して計測された時、つまり、計測した流量値が少ない方に外れた場合には、設定圧力を0.001MPa上昇させるように調節計40に信号を送る。逆に、120g/s以上の値が5本連続して計測された場合、つまり、計測した流量値が多い方に外れた場合には、設定圧力を0.001MPa下降させるように調節計40に信号を送る。
【0020】
この実施例に係るロータリー式の加圧充填機では、充填の運転状況に応じて送液する充填液の設定圧力を変更するとともに、充填液の流量が変動した場合にも設定圧力を変更するようにしている。設定圧力を変更した場合、現在の圧力から設定圧力(目標圧力)となるように調節計40で給気バルブ30および排気バルブ38の開度を調節するが、調節計40は現在の圧力から変更した目標圧力に到達するまでの速度(立ち上がり速度)を複数記憶しており、充填の運転状況に応じて、制御装置46がこれら速度のどれを選択するか指令するようになっている。すなわち、この実施例に係るロータリー式の加圧充填機では、充填の運転状況に応じて送液する充填液の設定圧力を変更するとともに、現在の圧力から変更した目標圧力に到達するまでの速度(立ち上がり速度)も最適な速度に選択するようにしている。
【0021】
この実施例では、充填を行っていない運転待機時には、目標圧力に到達するまでの速度を低速にする。目標圧力に到達する速度を低速に設定すると、目標圧力に到達するまでの速度は遅いが(図3(a)のL参照)、圧力の変動幅が小さくなる(図3(b)参照)。運転待機時には、全ての充填バルブが閉じているので、外部からの影響がなく比較的安定している。従って、目標圧力に到達するまでに時間がかかっても、低速で制御した方がより安定する。特に、粘性が高く気泡が混入しやすい充填液を充填する場合には、充填液内に気泡が混入していると、速い速度で目標圧力に到達するように制御すると、充填液からの反発が大きくなり安定しなくなるため、低速で制御を行うことが好ましい。なお、粘性が低く影響がない充填液の場合には、目標圧力に到達する速度として中速を選択するようにしても良い。
【0022】
また、連続運転時および運転の開始時には、目標圧力に到達するまでの速度を中速にする。速度を中速に設定すると、目標圧力に到達するまでの速度は低速の場合よりも速くなるが(図3(a)のM参照)、その分圧力の変動幅が大きくなる(図3(c)参照)。連続運転時や運転開始時には、目標圧力に到達するまでの速度として低速を選択すると、反応が遅く、目標圧力に到達しないまま充填が行われてしまうため、充填精度が悪くなってしまう。そのため、圧力の変動幅は多少大きくとも、中速で制御した方がより安定した充填を行うことができる。
【0023】
運転中に停止信号が入力された時には、目標圧力に到達するまでの速度を高速にする。目標圧力に到達する速度を高速に設定すると、目標圧力にすぐに到達するが(図3(a)のH参照)、圧力の変動幅が非常に大きくなる(図3(d)参照)。このように速度を速めると、目標圧力に到達する時間は早くなるが、その分圧力の変動幅が大きくなるため、結果的に圧力が安定するまでに時間がかかることになる。停止信号が入力されると、開放している充填バルブの本数が次第に減少するので、所定時間後に圧力が急激に上昇する。そこで、開放している充填バルブが残り1〜3本になるタイミングを見計らって、目標時間への到達速度として高速を選択し、急激な圧力変動に対して早く追いつくようにしている。なお、立ち上がり速度とは、現在の圧力よりも高い目標圧力に上昇させる速度と、現在の圧力よりも低い目標圧力に下降させる速度の両方を含むものである。
【0024】
この実施例に係るロータリー式の加圧充填機では、目標圧力へ圧力を調節する際の立ち上がり速度を複数設定し、運転状況等に応じて、最適な立ち上がり速度設定値を選択するようにしたので、充填液の流量を常に安定させて精度の良い充填を行うことができる。なお、この実施例では、ロードセルによって充填量を測定しつつ充填を行うウエイトフィラについて説明したが、ウエイトフィラに限るものではなく、流量計を用いたフローメーター式充填装置や、タイマーを用いたタイマー式充填装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ロータリー式の加圧充填機の全体の構成を簡略化して示す平面図である。(実施例1)
【図2】前記ロータリー式の加圧充填機の構成を示す回路図である。
【図3】目標圧力へ到達するまでの立ち上がり速度の複数の設定値を説明するグラフである。
【符号の説明】
【0026】
16 回転体
20 加圧タンク
34 圧力エア源
40 調節手段(調節計)
42 圧力検出手段(圧力センサー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の充填手段が設けられた回転体と、この回転体を回転させる駆動手段と、充填液が貯留された加圧タンクと、この加圧タンクの充填液を加圧して前記充填手段に供給する加圧手段と、加圧された充填液の圧力を検出する圧力検出手段と、この圧力検出手段による検出値が設定された目標圧力値に維持されるように、前記加圧手段による加圧力を調節する調節手段とを備えたロータリー式の加圧充填機において、
前記調節手段は、圧力検出手段によって検出された圧力値から前記目標圧力値へ圧力を調節する際の立ち上がり速度設定値を複数有し、これら立ち上がり速度設定値を充填の運転状況に応じて選択することを特徴とするロータリー式の加圧充填機。
【請求項2】
前記立ち上がり速度設定値は、低速、中速および高速からなり、全ての充填手段が開放していない待機運転中は前記速度設定値を低速とし、いくつかの充填手段が開放して充填動作を行っている充填運転中は中速とし、充填停止信号入力時には高速とすることを特徴とする請求項1に記載のロータリー式の加圧充填機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−197062(P2007−197062A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19397(P2006−19397)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】