説明

加圧封着容器

【課題】 金属製の封止部材による一対の基板を完全に封止することができる加圧封着容器を提供する。
【解決手段】 有機ELディスプレイは、複数の走査線1と、複数のデータ線2と、複数の有機EL素子3とを含む表示部と、一対のガラス基板4、5と、金属製の封止部材6とを含む加圧封着容器とを備えている。封止部材6は、一対のガラス基板4、5を封着するためのものである。封着工程において、封止部材6の全ての場所に均等に加圧圧力が作用するように、封止部材6の角部6aは、封止部材6の直線部6bと略同じ幅になるように円弧状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の基板が金属製の封止部材によって封止された加圧封着容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ等において、表示部に空気等の流入を防ぐために、一対の基板がインジウム合金等の金属製の封止部材によって封着された加圧封着容器が知られている。
【0003】
図8は、有機ELディスプレイの部分平面図である。図9は、有機ELディスプレイの一対のガラス基板及び封止部材の分解斜視図である。まず、図8及び図9を参照して、従来の有機ELディスプレイについて説明する。
【0004】
例えば、有機ELディスプレイでは、図8及び図9に示すように、走査線51と、データ線52と、有機EL素子53とを含む表示部と、対向するように設けられた一対のガラス基板54、55と、一対のガラス基板54、55を封止するインジウム合金製の封止部材56とを含む加圧封着容器とを備えている。
【0005】
図8に示すように、各走査線51は、平行になるように設けられ、各データ線52も平行になるように設けられている。複数の走査線51と複数のデータ線52は、それぞれが、互いに直行するように設けられている。また、走査線51とデータ線52は、上下方向(ガラス基板54、55に対して直行する方向)において、異なる位置に設けられている。そして、走査線51とデータ線52との間の位置で、且つ、各走査線51と各データ線52とが交差する位置には、複数の有機EL素子53がマトリックス状に設けられている。
【0006】
図8及び図9に示すように、走査線51、データ線52及び有機EL素子53が設けられた表示部の外側を囲むように、ガラス基板54、55の外周部に沿って金属製(例えば、In製)の封止部材56が設けられている。この封止部材56は、図8及び図9に示すように、平面視(ガラス基板54、55に垂直な方向から視て)にて、長方形状に形成されている。そして、封止部材56の各角部56aは、一対の直線形状の直線部56bが直交するように形成されている。
【0007】
そして、この封止部材56は、一対のガラス基板54、55を封着するために設けられており、封止部材56と一対のガラス基板54、55に囲まれた領域、即ち、走査線51、データ線52及び有機EL素子53が設けられた表示部は、減圧雰囲気若しくは不活性ガスが充填された状態で封止されている。従って、表示部には外部から空気や水等が流入しないように構成されている。
【0008】
この有機ELディスプレイを製造する際における封着工程では、走査線51、データ線52及び有機EL素子53を含む表示部を一方のガラス基板55に形成した後、表示部の外側を囲むように、封止部材56をガラス基板55の外周部に沿って形成する。
【0009】
次に、他方のガラス基板54を、封止部材56の上方に載置した状態で、ガラス基板54を一定の加圧圧力で加圧することにより、一対のガラス基板54、55が、封止部材56によって封着される。
【特許文献1】特開2003−187700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の有機ELディスプレイの構成では、封止部材56の各角部56aは、一対の直線形状の直線部56bが直交するように形成されているため、直線部56bの幅に比べて、角部56aの幅が広いといった問題が発生する。従って、ガラス基板54、55を封着する製造工程において、ガラス基板54、55が加圧圧力によって加圧された際に、封止部材56の角部56aの全幅に渡って均等に加圧圧力を作用させることができない。
【0011】
このため、封止部材56によるガラス基板54、55の封止が不完全になり、封止部材56の内部側に外部からの空気や水等の異物の流入を防ぐことができないといった問題がある。
【0012】
本発明の目的は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、金属製の封止部材による一対の基板を完全に封止することができる加圧封着容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、対向する一対の基板を加圧して、前記一対の基板間に減圧雰囲気を封じ込めた加圧封着容器において、前記一対の基板間の外周部には、金属封止部材が平面視にて多角形状に設けられ、前記金属封止部材の角部と直線部とが略同一幅に形成されていることを特徴とする加圧封着容器である。
【0014】
また、請求項2記載の発明は、前記金属封止部材は、平面視にて四角形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の加圧封着容器である。
【0015】
また、請求項3記載の発明は、前記金属封止部材の角部は、曲線状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の加圧封着容器である。
【0016】
前記基板の少なくとも一方と前記金属封止部材の間には、スペーサが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加圧封着容器である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、封止部材の角部を直線部と同じ幅に形成することによって、一対の基板を封着する工程において、一対の基板が封止部材を挟むように加圧された際に、封止部材の角部及び直線部の全ての位置に略均等に加圧圧力を作用させることができる。これにより、封止部材によって一対の基板を完全に封着することができるので、封止部材の内部側に外部から空気や水等の流入を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明による有機ELディスプレイの平面図である。図2は、有機ELディスプレイの内部構造を示す斜視図である。図3は、有機ELディスプレイの一対のガラス基板及び封止部材の分解斜視図である。
【0019】
図1〜図3に示すように、有機ELディスプレイは、複数の走査線1と、複数のデータ線2と、複数の有機EL素子3とを含む表示部と、一対のガラス基板4、5と、金属製の封止部材6とを含む加圧封着容器とを備えている。尚、図3においては、走査線1、データ線2及び有機EL素子3は、図示を省略している。
【0020】
図1に示すように、各走査線1は平行に設けられるとともに、各データ線2も平行になるように設けられている。そして、図3に示すように、走査線1とデータ線2は、互いに直交するように、且つ、上下方向(ガラス基板4、5に対して垂直な方向)の位置をずらして形成されている。尚、走査線1は、有機EL素子3によって発光された光を透過するために、ITO等の光を透過可能な導電材料によって形成されている。
【0021】
図2に示すように、有機EL素子3は、走査線1とデータ線2との間であって、走査線1とデータ線2とが交わる位置に設けられている。この有機EL素子3は、正孔輸送層10と、発光層11と、電子輸送層12とを備えている。また、各有機EL素子3は、RGBのいずれかの色を発光するように形成されている。
【0022】
有機ELディスプレイでは、いずれかの走査線1とデータ線2とに電圧が印加されると、その電圧の印加された走査線1とデータ線2とが交わる位置に設けられた有機EL素子3では、正孔輸送層10を介して走査線1から正孔が発光層11に注入されるとともに、電子輸送層12を介してデータ線2から電子が発光層11に注入される。
【0023】
そして、発光層11において、注入された正孔と電子とが再結合することによって、RGBいずれかの色の光を発光する。この発光された光は、走査線1を透過して外部に照射され、画像を形成するように構成されている。
【0024】
図1及び図3に示すように、加圧封着容器では、走査線1、データ線2及び有機EL素子3が形成される表示部の外周部を囲むように、対向する一対のガラス基板4、5の間の外周部に約0.5mmの厚みの金属製(例えば、インジウム製)の封止部材6が形成されている。封止部材6は、平面視(ガラス基板4、5の垂直方向から視て)にて、長方形状に形成されている。
【0025】
封止部材6の各角部6aは、封止部材6の直線部6bと同じ幅あるいは略同じ幅になるように円弧状に形成されている。即ち、封止部材6は、全ての部分において同じ幅あるいは略同じ幅になるように形成されている。
【0026】
封止部材6は、一対のガラス基板4、5を封着して、走査線1、データ線2及び有機EL素子3が設けられている表示部に、外部から空気や水等が流入することを防ぐように構成されている。
【0027】
図4は、ガラス基板の封着工程を行う封着装置の概略図である。次に、封着装置の構成について説明する。
【0028】
図4に示すように、封着装置20は、封着室21に設けられた一対の基板ホルダー22、23と、基板ホルダー22、23を保持する保持部材24、25と、封着室21を真空にするための真空ポンプ26とを備えている。基板ホルダー22、23は、ガラス基板4、5を保持するとともに、上側の基板ホルダー22は、保持部材24によって上下方向に移動可能に構成されている。
【0029】
次に、封着装置20による封着工程について説明する。まず、常温で、ガラス基板4を基板ホルダー22に装着し、上面に封止部材6が設けられたガラス基板5を基板ホルダー23に装着する。次に、ガラス基板4、5が基板ホルダー22、23に装着された封着室21を真空ポンプ26によって、約10−5Paの真空状態にする。
【0030】
次に、ガラス基板4の下面が、ガラス基板5に形成された封止部材6に接するまで、基板ホルダー22とともにガラス基板4を下方へ移動させる。そして、ガラス基板4の下面が、ガラス基板5の上面に設けられた封止部材6と接した状態で、更に、50kg/cm〜100kg/cmの加圧圧力によって、ガラス基板4を加圧する。
【0031】
ここで、図1に示すように、本発明による封止部材6の各角部6aは、直線部6bと同じ幅になるように円弧状に形成されているので、封止部材6の全ての場所において、ガラス基板4を介して加圧される加圧圧力が、略同じ加圧圧力で作用することになる。
【0032】
その後、ガラス基板4への加圧圧力を一定時間保持すると、封止部材6によってガラス基板4、5が圧着して封止される。
【0033】
以上のように、封止部材6の角部6aを、封止部材6の直線部6bと略同じ幅になるように円弧状に形成しているので、封着工程において、ガラス基板4に加圧圧力が加圧された際に、ガラス基板4を介して封止部材6に加圧される加圧圧力が、封止部材6の全ての場所において均一に作用させることができる。従って、封止部材6によってガラス基板4、5を完全に封止することができる。
【0034】
上記実施形態では、有機ELディスプレイに本発明を適用したが、有機ELディスプレイ以外の他のフラットパネルディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)、センサ関係の各加圧封着容器に本発明を適用してもよい。
【0035】
以下、本発明をFEDに適用した場合を、図5〜図7を参照して説明する。図5は、本発明によるFEDの概略の断面図である。図6は、FEDの内部構造を示す斜視図である。図7は、FEDの一対のガラス基板及び封止部材の分解斜視図である。
【0036】
図5〜図7に示すように、FEDは、カソード電極31と、アノード電極32と、画像形成部33と、一対のガラス基板34、35と、金属製の封止部材36と、スペーサ37とを備えている。
【0037】
図6に示すように、カソード電極31は、細線形状に形成されている。そして、これらの細線形状の複数のカソード電極31が、ガラス基板35の内面上に形成されている。図6に示すように、アノード電極32は、平面形状に形成され、画像形成部33に対応する領域のガラス基板34の内面を覆うように設けられている。
【0038】
画像形成部33は、複数の電子放出源40と、各電子放出源40を絶縁するために設けられた絶縁膜41と、絶縁膜41の上面に形成されたゲート電極42と、電子放出源40と対向するようにアノード電極32の内面側に設けられた蛍光体43とを備えている。
【0039】
この画像形成部33では、カソード電極31とゲート電極42との間に電圧が印加されると、電子放出源40から電子が放出される。放出された電子は、カソード電極31よりも低い電位に設定されたアノード電極32に向かって進行して、アノード電極32の内面側に設けられた蛍光体43に衝突して光を発光し、画像を形成する。
【0040】
画像形成部33を囲むように、ガラス基板35の内面の外周部にガラスからなるスペーサ37が設けられている。そして、スペーサ37とガラス基板34との間には、ガラス基板34とガラス基板35とを封止するための封止部材36が設けられている。この封止部材36は、図7に示すように、角部36aが、封止部材36の直線部36bと同じ幅になるように円弧形状に形成されている。
【0041】
このように、スペーサ37をガラス基板35と封止部材36との間に設けることによって、カソード電極31とアノード電極32との間の距離が、特性に影響を与えるFEDにおいても、安定した特性を得ることができる。尚、図7に示すように、スペーサ37の角部は、直角に屈曲するように形成したが、スペーサ37の角部を封止部材36の角部36aと同じように円弧形状に形成してもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、封止部材6の角部6aを円弧状に形成したが、封止部材の角部を円弧形状以外の曲線や多角形状に形成してもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、封止部材6を平面視にて長方形状に形成したが、封止部材の形状は長方形状に限定するものではなく、他の三角形や五角形等の多角形状に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明による有機ELディスプレイの平面図である。
【図2】有機ELディスプレイの内部構造を示す斜視図である。
【図3】有機ELディスプレイの一対のガラス基板及び封止部材の分解斜視図である。
【図4】ガラス基板の封着工程を行う封着装置の概略図である。
【図5】本発明によるFEDの概略の断面図である。
【図6】FEDの内部構造を示す斜視図である。
【図7】FEDの一対のガラス基板及び封止部材の分解斜視図である。
【図8】従来の有機ELディスプレイの部分平面図である。
【図9】従来の有機ELディスプレイの一対のガラス基板及び封止部材の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 走査線
2 データ線
3 有機EL素子
4 ガラス基板
5 ガラス基板
6 封止部材
6a 角部
6b 直線部
10 正孔輸送層
11 発光層
12 電子輸送層
20 封着装置
21 封着室
22 基板ホルダー
23 基板ホルダー
24、25 保持部材
26 真空ポンプ
31 カソード電極
32 アノード電極
33 画像表示部
34 ガラス基板
35 ガラス基板
36 封止部材
37 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の基板を加圧して、前記一対の基板間に減圧雰囲気を封じ込めた加圧封着容器において、
前記一対の基板間の外周部には、金属封止部材が平面視にて多角形状に設けられ、前記金属封止部材の角部と直線部とが略同一幅に形成されていることを特徴とする加圧封着容器。
【請求項2】
前記金属封止部材は、平面視にて四角形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の加圧封着容器。
【請求項3】
前記金属封止部材の角部は、曲線状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の加圧封着容器。
【請求項4】
前記基板の少なくとも一方と前記金属封止部材の間には、スペーサが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加圧封着容器。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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