説明

加圧式ペン

【課題】リフィールをノック操作で筆記位置に前進させるとき、リフィールの後部空間を加圧できるようにした加圧式ペンにおいて、通気路を閉鎖するシール部材がリフィールの外周面に摺接せずにリフィールを筆記位置に移動できるようにした加圧式ペンを提供する。
【解決手段】リフィールホルダー23の後部に圧縮筒26を嵌着する。リフィールホルダー23の内方には、エアータイト24を保持したリターンスプリングホルダー25が挿入されている。圧縮筒26が前進すると、リフィールホルダー23も前進し、エアータイト24を押圧してその内側面をリフィールに密着させ、通気路32を閉じる。さらに、圧縮筒26が前進すると、圧縮筒26に設けた圧縮室53でリフィール2の後部空間を加圧する。その後、圧縮筒26の前進に伴ってリフィール2とエアータイト24は密着した状態で前進し、リフィール2は筆記位置に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記に際し、リフィール内に充填されているインキを加圧して筆記できるようにした加圧式ペンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
軸筒内に収納したリフィールの先端をノック操作で筆記位置に突出させる際、インキを充填したリフィールの後部空間に空気圧を加え筆記先端に供給されるインキを加圧できるようにしたボールペン等の加圧式ペンが知られている(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
一般的に、加圧式ペンは、ノック操作によりリフィールの先端を軸筒から繰り出す際、リフィールの後部周囲を密閉して密閉空間を形成し、この密閉空間を圧縮してリフィールの後部空間を加圧しているが、多くの場合、密閉空間を形成するためのシール部材としてリフィールの外周面等に摺接する弾性部材を使用している。例えば上記特許文献1に記載の塗布具キャップでは、インキタンク外壁に対して気密に周状当接して摺動可能な内径を有するOリングが使用されている。また、特許文献2に記載のボールペンでは、Oリングで構成された環状弾性部材がシリンダーの内面に気密的に摺接したり、離れたりするように構成されている。そのため、従来の加圧式ペンでは、リフィールが軸方向に移動する際、気密状態で接するシール部材がリフィールの外周面やシリンダーの内周面に擦り合わされるから、摩耗し易く、またOリング自体を拡張したり、収縮させたりしなければならないので、損傷しやすく、充分に気密状態を保持できなくなることがあった。その上、加圧機構の空気が的確にインキに作用しないため、加圧が不確実になることがあった。また、加圧機構が充分に減圧されない状態で後退することにより、インキが加圧機構による吸引作用でリフィールから吸い出されるおそれがあるものもあった。
【0004】
また、従来の加圧式ペンでは、ノック操作によりリフィールを繰り出す機構として所謂回転カム式繰出し機構を採用しているものが多いが、上記のような加圧機構を組み込んでいるため、構成が複雑になり、確実にリフィールを繰り出しにくいものもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−246648号公報(段落0011、0012、図2、図3)
【特許文献2】特開2005−138356号公報(段落0023、0029、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決課題は、上記のように、リフィールを繰り出す際、リフィールの後部空間を加圧できるよう加圧機構を設けた加圧式ペンにおいて、リフィールの外面に気密的に接するシール体がリフィールの外面に沿って摺動しないようにした加圧式ペンを提供することである。また、リフィール内のインキを確実に加圧できかつインキが加圧機構により吸引されるおそれもない加圧式ペンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、軸筒内に収納したリフィールを軸方向に移動して筆記位置と後退位置に保持し、筆記位置に移動させる際リフィールの後部空間を加圧するよう加圧機構を設けた加圧式ペンにおいて、上記加圧機構は、通気を許容する状態でリフィールの後部を嵌着保持し後端に開口部を有するリフィールホルダーと、リフィールに接触可能な空隙を空けて該リフィールの周囲を囲むエアータイトと、該エアータイトを保持し上記リフィールホルダーの前部に軸方向に所定範囲内で微動可能に連結されかつ軸筒内に設けたストッパーに当接する位置まで前後動可能に後方にリターンスプリングにより付勢されたリターンスプリングホルダーと、上記リフィールホルダーの後部に嵌着し内部に圧縮室を有する圧縮筒と、該圧縮筒を前後動させるよう軸筒に設けられたノック式繰出機構を具備し、上記リフィールホルダーの内面は該リフィールホルダーが前進した際エアータイトを押圧して該エアータイトの内側面をリフィールの外周面に密着させるようエアータイトに対向し、上記圧縮筒とリフィールホルダーは、圧縮筒が前進する際該リフィールホルダーが上記エアータイトを押圧する位置まで圧縮筒とリフィールホルダーが一緒に前進するよう圧縮筒とリフィールホルダーを連結しその後リフィールホルダーに対して圧縮筒が接近するよう圧縮筒とリフィールホルダーの連結を解除する解除可能な連結手段で連結され、該圧縮筒により上記リフィールホイルダーとリフィール及びエアータイトとリターンスプリングホルダーを上記リターンスプリングに抗して前方に移動させるようにしたことを特徴とする加圧式ペンが提供され、上記課題が解決される。
なお、本発明においては、リフィールが前進してその先端が突出する軸筒の先端側を前方、前部といい、リフィールが後退する軸筒の後端側を後方、後部という。
【0008】
また、本発明によれば、上記解除可能な連結手段は、圧縮筒の先端内面に形成された係止突起及び外周面に設けられた外方突起と、軸筒内に形成され該圧縮筒が後退位置にあるとき上記外方突起が当たる内方突起と、上記リフィールホルダーの外周面に設けられ上記圧縮筒の係止突起が係合する係合溝を含み、上記圧縮筒の先端は外方突起が軸筒の内方突起に係合しているときは先端閉じて圧縮筒の係止突起がリフィールホルダーの係合溝に係合し、軸筒の内方突起から外れたときは先端が拡開して圧縮筒の係止突起とリフィールホルダーの係合溝の係合が外れるよう拡開可能に形成されている上記加圧式ペンが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記のように構成され、軸筒内に収納したリフィールを軸方向に移動して筆記位置と後退位置に保持し、筆記位置に移動させる際リフィールの後部空間を加圧するよう加圧機構を設けた加圧式ペンにおいて、上記加圧機構は、通気を許容する状態でリフィールの後部を嵌着保持し後部に開口部を有するリフィールホルダーと、リフィールに接触可能な空隙を空けて該リフィールの周囲を囲むエアータイトと、該エアータイトを保持し上記リフィールホルダーの前部に軸方向に所定範囲内で微動可能に連結されかつ軸筒内に設けたストッパーに当接する位置まで前後動可能に後方にリターンスプリングにより付勢されたリターンスプリングホルダーと、上記リフィールホルダーの後部に嵌着し内部に圧縮室を有する圧縮筒と、該圧縮筒を前後動させるよう軸筒に設けられたノック式繰出機構を具備し、上記リフィールホルダーの内面は該リフィールホルダーが前進した際エアータイトを押圧してエアータイトの内側面をリフィールの外周面に密着させるようエアータイトに対向し、上記圧縮筒とリフィールホルダーは、圧縮筒が前進する際該リフィールホルダーが上記エアータイトを押圧する位置まで圧縮筒とリフィールホルダーが一緒に前進するよう圧縮筒とリフィールホルダーを連結しその後リフィールホルダーに対して圧縮筒が接近するよう圧縮筒とリフィールホルダーの連結を解除する解除可能な連結手段で連結され、該圧縮筒により上記リフィールホイルダーとリフィール及びエアータイトとリターンスプリングホルダーを上記リターンスプリングに抗して前方に移動させるようにしたから、非筆記時はエアータイトの内側面がリフィールの外周面から離れているので、リフィールの外周面とリフィールホルダーの内周面間及びリフィールホルダーの後端開口部を通して圧縮筒の圧縮室に通じる通気路が形成されている。そして、後退位置にある圧縮筒をノック式繰出機構により前進させると、連結手段によりリフィールホルダーと圧縮筒が連結されている状態では、圧縮筒とリフィールホルダーは一緒に前進し、リフィールホルダーの内面がエアータイトに当接してエアータイトの内側面がリフィールの外周面に密着し、リフィールの外周面から圧縮室に通じる上記通気路が閉鎖される。さらに、圧縮筒が前進すると、連結手段によるリフィールホルダーと圧縮筒の連結が解除され、圧縮筒のみが前進する。その結果、圧縮筒の圧縮室内の空気が後端開口部を通してリフィール内に入り込みインキを加圧することができる。
【0010】
上記のように、エアータイトによりリフィール周囲の通気路を閉鎖する位置までは、リフィールホルダーと圧縮筒は連結されているので、通気路を閉鎖する前にリフィールの後部空間を加圧するおそれはなく、通気路閉鎖後に確実に加圧することができる。さらに、圧縮筒がリフィールホルダーに当接すると、リフィールホルダーとリフィール及びエアータイトとリターンスプリングホルダーが一緒になってリターンスプリングに抗して前進し、リフィールを筆記位置に保持することができる。この間、エアータイトはリフィールに密着した状態で移動するから、従来の加圧式ペンのシール体のようにリフィール等の外周面に摺接して摩耗するおそれは少ない。
【0011】
また、リフィールを収納位置に後退させるよう上記ノック繰出機構をノックすると、圧縮筒はノック機構の作用で後退し、それに伴いリターンスプリングの作用でリターンスプリングホルダーとエアータイト及びリフィールホルダーとリフィールも追従して後退するが、リターンスプリングホルダーが軸筒内のストッパーに当ると、リターンスプリングホルダーとエアータイトの後退は停止する。圧縮筒はさらに後退し続けているから、リターンスプリングホルダーに微動可能に連結されているリフィールホルダーも後退し、上記エアータイトの押圧は解除され、エアータイトの内側面はリフィールの外周面から離れる。その結果、リフィールの外周面とリフィールホルダーの内周面間の通気路は外気に開放され、圧縮筒内の圧縮室は通気路に連通する。リターンスプリングホルダーの移動は限定された所定の範囲内であるので、その移動限界でリターンスプリングホルダーにより拘束されリフィールホルダーの後退は停止される。その後、圧縮筒のみが後退するから、後退位置で連結手段により圧縮筒とリフィールホルダーは連結され、非筆記状態(収納状態)に戻る。この際、上記のように通気路を開放した後に圧縮筒がさらに後退するようにしたので、圧縮筒の圧縮室には吸引作用が働かず、リフィールのインキが後方に吸引されるおそれはない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図。
【図2】固定カムを示し(A)は正面図、(B)は断面図。
【図3】回転カムを示し(A)は正面、(B)は軸方向に沿った断面図、(C)は側面図、(D)は縦断面図。
【図4】ノックカムを示し、(A)は正面図、(B)は長孔に沿った断面図、(C)は内方突起に沿った断面図、(D)は側面図。
【図5】リフィールホルダーを示し、(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は断面図、(D)はリフィールを保持する部分の断面図、(E)は小径部の底面の説明図。
【図6】リターンスプリングホルダーの断面図。
【図7】圧縮筒を示し、(A)は正面図、(B)は係止突起に沿った断面図、(C)は長孔に沿った断面図、(D)は側面図。
【図8】非筆記状態の一部の拡大説明図。
【図9】ノック部をノックした最初の状態の断面図。
【図10】図9の状態の拡大説明図。
【図11】図9の状態からノックを続けている状態の断面図。
【図12】図11に示す状態の拡大説明図。
【図13】リフィールの筆記先端が軸筒の先端から突出した状態の断面図。
【図14】リフィールが筆記位置に保持された状態の断面図。
【図15】リフィールの後部空間を加圧している状態の拡大説明図。
【図16】リフィールの後退させるようノック部をノックした状態の断面図。
【図17】リフィールの後退中にリターンスプリングホルダーの移動が停止した状態の拡大説明図。
【図18】図16の状態からさらに圧縮筒が後退した状態の断面図。
【図19】圧縮筒とリフィールホルダーが連結される直前の状態を示す拡大説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施例を示し、軸筒1は先端にリフィール2の筆記先端を突出させる通孔3を形成したテーパー部材4を有し、周面にグリップ5が設けられ、後部にはリフィール2を軸方向に移動して筆記位置と後退位置(収納位置)に保持するノック式繰出機構が設けられ、該ノック式繰出機構とリフィール2の間には、インキを充填したリフィールの後部空間を、リフィールを筆記位置に移動させる際、加圧する加圧機構が設けられている。
【0014】
上記ノック式繰出機構としては、いわゆる回転カム式繰出機構やハートカム式繰出機構その他公知の種々の繰出機構を採用することができる。図1に示す実施例では、よく知られた構成であるが、いわゆる回転カム式繰出機構を用いている。簡単に説明すると、軸筒1の後部には、クリップ6を有する固定カム7が挿入固定され、該固定カム7の内面には、深いカム溝8と浅いカム溝9を交互に設けたカム部10が形成されている(図2)。該固定カム7内には、後端に山形状のカムを形成し上記カム部10のカム溝に交互に係合する突片11を有する回転自在な回転カム12(図3)と、ノック操作された際回転せずに軸方向に直線的に移動し上記回転カム12のカムに係合する山形状のカム13を先端に有する筒状のノックカム14(図4)が挿入されている。該ノックカム14の後端にはノック部15が固定され、ノック部15と固定カム7の間にはノックカム14を後方に付勢するノックスプリング16が挿入されている。公知のように、上記構成により、非筆記状態では回転カム12の突片11は固定カム7の深いカム溝8に入り込んで回転カムを後方に後退させている。上記ノック部15をノックすると、ノックカム14を介して上記回転カム12は前進し、ノックを停止するとノックカム14はノックスプリング16により後退する。回転カム12は回転して突片11は固定カム7の浅いカム溝9に係合し、リフィール2を筆記先端が軸筒1から突出した筆記状態に保持する。筆記状態から、ノック部15をノックすると、ノックカム14を介して回転カム12は固定カム7の前方に移動し、突片11は浅いカム溝9から外れる。ノックを停止するとノックカム14と回転カム12は後退し、回転カム12は回転して突片11は固定カム7の深いカム溝8に係合し、リフィール2は後退して筆記先端は軸筒1内に収納される。
【0015】
上記構成は通常の回転カム式繰出機構と本質的に変わらないが、本発明において、上記固定カム7は、内方の中間部に軸方向に延びる複数の内方突起17を周方向に間隔を空けて設けてあり、前部には長孔18が設けられている。また、上記回転カム12は、リフィールが筆記状態から非筆記状態に後退するとき、ノックカム14とともに後退するよう連結されている。すなわち、上記回転カム12の後部はノックカム14の内方に挿入することができるよう径小19に形成され、該径小部19の外面には外方突起20が設けられている。ノックカム14の内面には内方突起21が形成されている。回転カム12の径小部19は、ノックカム14の前方から該ノックカム内に差込まれ、外方突起20がノックカム14の内方突起21を越える位置まで挿入される。上記回転カム12の外方突起20の前方には凹み22が形成されているので、ノックカム14は該外方突起20の前方には移動可能であるが、後方に移動する際は外方突起20に内方突起21が係合した位置からは回転カム12を一緒に後退させる。上記構成により、ノック操作により回転カム12を前進させてリフィール2を筆記位置に移動させた後、ノックカム14が後退する際はノックカム14だけが後退するが、リフィール2を非筆記位置に後退させるため、ノック操作により回転カム12を後方に移動させるときは、外方突起20と内方突起21が係合してノックカム14と一緒に回転カム12が後方に移動する。
【0016】
上記加圧機構は、主として、リフィールホルダー23、エアータイト24、リターンスプリングホルダー25、圧縮筒26で構成されている。リフィールホルダー23(図5)は、通気を許容する状態でリフィール2の後部を嵌着保持できるよう内面に断面多角形の保持面27を形成した径小部28を有している。なお、該保持面27の適所には、リフィールを安定状態で保持できるよう円筒状のリフィールの外周面の一部が嵌合する凹部(図示略)を設けることもできるが、この凹部の深さはリフィールの外周面とリフィールホルダーの内面間の通気路を閉鎖しない程度に設けられる。該径小部28の内面端部には、リフィールの後端縁が密着せずに通気を許容する状態で接するよう半径方向に延びる突起29を設けてある。該径小部28は開口部30により後方に開口し、後端には、エラストマー等の軟質材料で形成した弾性部材31が2色成形の要領で一体的に設けられ、圧縮筒26の内面に該弾性部材31が摺接するようにしてある。これにより、開口部30からリフィール2の外周面とリフィールホルダー23の内周面間を通る通気路32が設けられる。また、リフィールホルダー23の径小部28の外周には、係合溝33が環状に設けられ、該係合溝33の前方には隆起部34が形成され、かつ係止爪35が突接されている。
【0017】
リフィールホルダー23の径小部28の前方には、肩部36を介して径大部37が形成され、上記径小部28に通じる径大部37の内面角部には傾斜面38が設けられている。該径大部37の後部外周には、上記固定カム7の長孔18に前後に移動可能に係合してリフィールホルダー23の抜け止めをするための係止爪39が形成され、周面にはリターンスプリングホルダー25と連結するための制御孔40が開口され、先端内面には該リターンスプリングホルダー25を安定状態で保持するための隆起部41が設けられている。
【0018】
上記リフィールホルダー23の先部内には、エアータイト24を有するリターンスプリングホルダー25が挿入されている。該エアータイト24は、リフィール2に接触可能な空隙を空けて該リフィール2の周囲を囲む内側面42と、後方に向けて傾斜する傾斜面43を有し、有弾性のゴム材料、エラストマー材料で構成され、外周に設けた係止爪44をリターンスプリングホルダー25に形成した係止孔45に係合した状態でリターンスプリングホルダー25内に挿入固定される。リフィールホルダー23にリターンスプリングホルダー25を挿入した状態で、エアータイトの上記傾斜面43はリフィールホルダー23内に形成した上記傾斜面38に対向している。該リターンスプリングホルダー25は、図1に示すように、フランジ46が軸筒内のストッパー47、図1に示す実施例では上記固定カム7の先端47に当接する位置まで前後動可能にリターンスプリング48で後方に付勢され、図6に示すように、外面に係止爪49を有し、該係止爪49がリフィールホルダー23の上記制御孔40に入り込むよう上記リフィールホルダー23の前方から挿入される。この状態で、上記エアータイト24の傾斜面43とリフィールホルダー23の内面の傾斜面38間には、空気が通る微小間隙が形成され、この微小間隙を通って上記リフィールホルダー23の内面を通る上記通気路32が外気に連通している。上記のようにリターンスプリングホルダー25が固定カムの先端のストッパー47に当接しているとき、上記リフィールホルダー23は、該リフィールホルダー23に設けた制御孔40の軸方向の端縁間範囲(所定範囲)内で軸方向(前後方向)に微動動できる。リフィールホルダー23が前進すると、上記エアータイト24はリフィールホルダー23の傾斜面37により押圧され、内側面42がリフィール2の外周面に密着し、上記通気路は閉鎖される。リフィールホルダー23が後退するとき、該係止爪49に制御孔40の前端縁があたると、リフィールホルダー23の後退動は制限される。
【0019】
上記圧縮筒26は、図7に示すように、上記リフィールホルダー23の径小部28に嵌着される内径を有する径大部50と、肩部51を介して径大部50に連続して設けられ上記回転カム12に挿入できる径小部52を有し、該径小部52の後端は閉鎖されている。該圧縮筒26の径大部50の内径は、該リフィールホルダー23の径小部28を挿入した際、密閉した圧縮室53を形成することができる内径に形成されている。なお、該径大部50の内面端部には、環状の突起54を突設してあり、リフィールホルダー23の後端に設けた弾性部材31が該環状突起54に密着して気密状態を一層確実に保持できるようにしてある。径大部50の後部の外周面には上記固定カム7の軸方向に延びる内方突起17間に入り込んで圧縮筒26の回り止めをなすよう軸方向に延びる回り止め突起55が設けられ、中間部には上記リフィールホルダー23の外周に設けた係止爪35が抜け止めのために入り込む長孔56が形成されている。上記径小部52の外周には、係止突起57が形成され、回転カム12に挿入した際、回転カム12の回転は伝達しないが、一緒に前後動できるように連結されている。上記肩部51には回転カム12の回転を阻害しないよう半径方向に延びる複数の隆起部58が形成されている。この際、図8に示すように、回転カム12の内面に内方係止突起59を設けて圧縮筒26の係止突起57が該内方係止突起59を越えて係合するようにするとよい。該圧縮筒26の先端には、該圧縮筒26が前進した際、上記リフィールホルダー23の肩部36に当接可能な押圧端60が形成されている。
【0020】
該圧縮筒26とリフィールホルダー23は、圧縮筒26が前進する際、リフィールホルダー23が上記エアータイト24を押圧する状態まで圧縮筒26とリフィールホルダー23が一緒に前進するよう圧縮筒26とリフィールホルダー23を連結し、その後リフィールホルダー23に対して圧縮筒26が軸方向に接近するよう圧縮筒26とリフィールホルダー23の連結を解除することができる解除可能な連結手段で連結されている。解除可能な連結手段は種々に構成することができるが、図1に示す実施例においては、次のように構成されている。先ず、圧縮筒26の径大部50の前部にスリット61を設けて、前部を拡開可能に形成し、該拡開可能部分の外周には外方突起62を設け、先端の内周には係止突起63を形成する。上記外方突起62は、図1に示すようにリフィール2が後退位置(収納位置)にあるとき、上記固定カム7の内方突起17の先端内側に摺接し、これにより該圧縮筒26の先端を閉じ(縮径)して先端の係止突起63を上記リフィールホルダー23の係合溝33に係合させ、リフィールホルダー23と圧縮筒26が一緒に前進できるよう連結している。該外方突起62が固定カム7の内方突起17から外れる位置まで前進すると、該圧縮筒26の先端の閉鎖は開放され、上記係止突起63は係合溝33から外れ、リフィールホルダー23の隆起部34を超えて先端は拡開し、リフィールホルダー23と圧縮筒26の連結は解除される。さらに圧縮筒26が前進すると、上記押圧端60がリフィールホルダー23の肩部36に当接する。
【0021】
解除可能な連結手段としては、その他の適宜の機構を採用することができ、例えば通常のノック式シャープペンシルのチャック機構に類似の機構を設けることもできる。この場合には、圧縮筒の先端をコレットチャックのように外方に拡げ、その周囲にチャック機構のクラッチリングと同様のクラッチリングを嵌着して開閉可能にし、該圧縮筒でリフィールホルダーの径小部をチャックできるようにしておけばよい。そして、圧縮筒が前進してリフィールホルダーがエアータイトを押圧するまではクラッチリングで圧縮筒の先端を閉鎖しておけば、リフィールホルダーは圧縮筒に連結されて一緒に前進する。エアータイトを押圧後、クラッチリングが適宜のストッパーに当って移動を停止するようにしておけば、チャックは開放されるからリフィールホルダーと圧縮筒の連結は解除され、リフィールホルダーの移動は停止する。その後も圧縮筒は前進するから、圧縮筒をリフィールホルダーの軸方向に接近させることができる。圧縮筒の押圧端がリフィールホルダーに当れば、リフィールホルダーを移動させることができる(図示略)。
【0022】
図1、図8〜図19を参照し、使用状態を説明すると、図1に示すように、非筆記状態ではリフィール2は後退位置にあり、筆記先端は軸筒1内に収納されている。この状態では、圧縮筒26はノックスプリング16により回転カム12、ノックカム14を介して後方に引っ張られている。そのため、圧縮筒26の外方突起62は固定カム7の内方突起17の内側に入り込み、圧縮筒26の先端は閉じられ、該圧縮筒26の先端の係止突起63はリフィールホルダー23の係合溝33に係合している。また、リフィールホルダー23の内面に形成した傾斜面38はエアータイト24の傾斜面43を押圧しておらず、エアータイト24とリフィール2の外周面から圧縮筒26の圧縮室53に通じる通気路32は外気に連通している(図8)。
【0023】
図9に示すようにノックカム14をノックすると、圧縮筒26は回転カム12に押圧されて前進し、該圧縮筒26に連結されているリフィールホルダー23も前進する。その結果、リフィールホルダー23の傾斜面38とエアータイト24の傾斜面43が当り、該エアータイト24の角部は斜めに押圧されるから、エアータイト24の内側面42はリフィール2の外周面に密着し、上記通気路32は閉鎖され、圧縮筒26の後部には気密状態の圧縮室53が形成される(図10)。この際、エアータイト24は、リターンスプリングホルダー25を介してリターンスプリング48で後方に付勢されているので、上記内側面42は確実にリフィールの外周面に圧着する。
【0024】
圧縮筒26がさらに前進すると、圧縮筒26の外方突起62は固定カム7の内方突起17から外れ、圧縮筒26の先端の閉鎖は開放され、係止突起63はリフィールホルダー23の係合溝33から抜け出し、リフィールホルダー23と圧縮筒26の連結が解除されるので、リフィールホルダー23はその位置に留まっている(図11、図12)。しかし上記圧縮筒26は前進を続けているから、上記連結の解除とほとんど同時に圧縮筒26はリフィールホルダー23に軸方向から接近し、上記圧縮室53内の空気はリフィールホルダー23の開口部30を通ってリフィール2の後部空間を加圧する(図13〜図15参照)。リフィールホルダー23に圧縮筒26の押圧端60が当り、若しくはリフィールホルダー23の後端の弾性部材31が圧縮室53の底部に当接すると、圧縮筒26に押されて加圧状態のままリフィールホルダー23、リフィール2、エアータイト24、リターンスプリングホルダー25はリターンスプリング48に抗して前進し(図13)、ノックと止めるとノックカム14、回転カム12は後退し、リフィール2は筆記位置に保持される(図14)。このとき、上記加圧状態は、上記圧縮筒が前進した状態からリフィールを筆記位置に保持した状態を示す図14の状態まで継続しているから、リフィール2内のインキを常に加圧することができる。したがって、筆記中インキの流動は確保され、スムーズに筆記することができる。
【0025】
筆記状態でノック部15をノックすると、ノックカム14を介し回転カム12は後退する(図16)。ノックスプリング16により回転カム12が後退し始めるとき、それに追従して圧縮筒26、リフィールホルダー23、リフィール2、エアータイト24、リターンスプリングホルダー25はリターンスプリング48の作用で後退する。リターンスプリングホルダー25とエアータイト24は、リターンスプリングホルダー25のフランジ46が固定カム7の先端のストッパー47に当った位置で停止する。ノックスプリング16により、回転カム12、圧縮筒26、リフィールホルダー23、リフィール2はさらに後退するから、リフィールホルダー23の傾斜面38はエアータイト24の傾斜面43から引き離され、リフィールホルダー23によるエアータイト24の押圧は開放され、エアータイト24の内側面42はリフィール2の外周面から離れる(図17)。その結果、エアータイト24の外面、リフィールホルダー23の内面、リフィール2の外面、リフィールホルダー23の開口部30を通る通気路32は外気に連通し、圧縮室53は減圧される。したがって、その後圧縮筒26が後退してもリフィール2内のインキが吸引されるおそれはない。
【0026】
圧縮室53が減圧された後、圧縮筒26、リフィールホルダー23、リフィール2はさらに後退するが、リフィールホルダー23は、径大部37に形成した制御孔40の端縁がリターンスプリングホルダー25に設けた係止爪49に引っかかると、後退動は停止され、その位置に留まる(図18)。しかし、圧縮筒26は回転カム12に引かれてさらに後退しているので、係止突起63がリフィールホルダー23の隆起部34を越えて係合溝33に対応する位置まで後退する(図19)。この状態になると、外方突起62が固定カム7の内方突起17の内側面に係合するから、圧縮筒26の先端は閉じられ、上記係止突起63は係合溝33に係合し、図1、図8に示すような最初の状態に戻る。
【0027】
上記実施例では、圧縮筒26の外方突起62が当接する内方突起17を固定カム7の内面に形成したが、軸筒1の内面に圧縮筒26の外方突起が当接する内方突起を直接形成してもよい。(図示略)また、上記リターンスプリングホルダーのフランジが当接するストッパーを固定カムの先端に形成したが、軸筒の内面に適宜のストッパーを設けてもよいし、固定カムと軸筒を一体的に設けてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 軸筒
2 リフィール
7 固定カム
12 回転カム
14 ノックカム
16 ノックスプリング
23 リフィールホルダー
24 エアータイト
25 リターンスプリングホルダー
26 圧縮筒
32 通気路
33 係合溝
48 リターンスプリング
53 圧縮室
62 外方突起
63 係止突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に収納したリフィールを軸方向に移動して筆記位置と後退位置に保持し、筆記位置に移動させる際リフィールの後部空間を加圧するよう加圧機構を設けた加圧式ペンにおいて、上記加圧機構は、通気を許容する状態でリフィールの後部を嵌着保持し後端に開口部を有するリフィールホルダーと、リフィールに接触可能な空隙を空けて該リフィールの周囲を囲むエアータイトと、該エアータイトを保持し上記リフィールホルダーの前部に軸方向に所定範囲内で微動可能に連結されかつ軸筒内に設けたストッパーに当接する位置まで前後動可能に後方にリターンスプリングにより付勢されたリターンスプリングホルダーと、上記リフィールホルダーの後部に嵌着し内部に圧縮室を有する圧縮筒と、該圧縮筒を前後動させるよう軸筒に設けられたノック式繰出機構を具備し、上記リフィールホルダーの内面は該リフィールホルダーが前進した際エアータイトを押圧して内側面をリフィールの外周面に密着させるようエアータイトに対向し、上記圧縮筒とリフィールホルダーは、圧縮筒が前進する際該リフィールホルダーが上記エアータイトを押圧する位置まで圧縮筒とリフィールホルダーが一緒に前進するよう圧縮筒とリフィールホルダーを連結しその後リフィールホルダーに対して圧縮筒が接近するよう圧縮筒とリフィールホルダーの連結を解除する解除可能な連結手段で連結され、該圧縮筒により上記リフィールホイルダーとリフィール及びエアータイトとリターンスプリングホルダーを上記リターンスプリングに抗して前方に移動させるようにしたことを特徴とする加圧式ペン。
【請求項2】
上記リフィールホルダーおよびエアータイトの対向部には、それぞれ傾斜面が形成されている請求項1に記載の加圧式ペン。
【請求項3】
上記圧縮筒の先端には、リフィールホルダーに当接する押圧端が形成されている請求項1または2に記載の加圧式ペン。
【請求項4】
上記解除可能な連結手段は、圧縮筒の先端内面に形成された係止突起及び外周面に設けられた外方突起と、軸筒内に形成され該圧縮筒が後退位置にあるとき上記外方突起に当たる内方突起と、上記リフィールホルダーの外周面に設けられ上記圧縮筒の係止突起が係合する係合溝を含み、上記圧縮筒の先端は外方突起が軸筒内面の内方突起に係合しているときは先端を閉じて圧縮筒の係止突起がリフィールホルダーの係合溝に係合し、軸筒の内方突起から外方突起が外れた際は先端が拡開して圧縮筒の係止突起とリフィールホルダーの係合溝の係合が外れるよう拡開可能に形成されている上記請求項1から3のいずれかに記載の加圧式ペン。
【請求項5】
上記リフィールホルダーの後端には、弾性部材が一体的に設けられている請求項1から4のいずれかに記載の加圧式ペン。
【請求項6】
上記圧縮筒の内部には、上記弾性部材が当接する環状の突起が設けられている請求項5に記載の加圧式ペン。
【請求項7】
上記リフィールを筆記位置と後退位置に移動させる機構は、固定カムと、ノックカムと回転カムを具備する回転カム式繰出機構であり、該ノックカムと回転カムは、リフィールを後退位置に後退させる際、回転カムがノックカムとともに後退するよう連結されている請求項1から6のいずれかに記載の加圧式ペン。
【請求項8】
上記圧縮筒は、回転を伝達しない状態で回転カムに連結されている請求項7に記載の加圧式ペン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−52640(P2013−52640A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193633(P2011−193633)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(392005126)ミクロ株式会社 (33)
【Fターム(参考)】