説明

加圧成形装置、金型及び加圧成形方法

成形サイクルを短くすることができ、生産性を高くすることができる加圧成形装置、金型
及び加圧成形方法を提供する。第1の金型と、第1の金型と対向させて配設され、かつ、基板(14)、基板(14)より第1の金型側に配設された断熱材(21)、及び断熱材(21)より第1の金型側に配設され、第1の金型と対向する面に凹凸が形成された加工部材を備えた第2の金型と、第1の金型に被加工部材を装填する装填処理部と、加工部材を、被加工部材を構成する材料の状態変化点より高い成形温度に加熱する加熱処理部と、加工部材を被加工部材に押し付けて、凹凸を被加工部材に転写するための転写処理部とを有する。この場合、加工部材が断熱材より第1の金型側に配設されるので、短時間で、加工部材を加熱して成形温度にし、加工部材を冷却して離型温度にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧成形装置、金型及び加圧成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アクリル樹脂等の樹脂から成り、所定の形状を有するプレート状の成形品原型にスタンパを押し付け、該スタンパにあらかじめ形成された微細パターンを転写するようにした加圧成形装置においては、上金型及び下金型を備えた金型装置が配設され、前記上金型を進退させることによって、加圧圧縮及び離型が行われるようになっている。そして、下金型上に成形品原型をセットし、金型装置の全体を加熱した状態で上金型を前進させ、該上金型のスタンパを成形品原型に押し付け、加圧圧縮を行い、前記微細パターンを転写して成形品を成形するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−1705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の加圧成形装置においては、転写性を向上させるために、成形品原型の温度を十分に高くする必要があり、そのために、金型装置の全体の温度を十分に高くする必要がある。また、加圧圧縮が終了した後に、成形品原型の温度をあらかじめ設定された離型温度、例えば、成形品原型が樹脂である場合には、ガラス転移点Tgより低くしてから離型を行わないと、取り出す際の外力で成形品が変形してしまうので、前記離型温度になるまで離型を行うのを待機するようにしている。
【0004】
したがって、成形サイクルが長くなり、生産性が低くなってしまう。
【0005】
本発明は、前記従来の加圧成形装置の問題点を解決して、成形サイクルを短くすることができ、生産性を高くすることができる加圧成形装置、金型及び加圧成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために、本発明の加圧成形装置においては、第1の金型と、該第1の金型と対向させて進退自在に配設され、かつ、基板、該基板より前記第1の金型側に配設された断熱材、及び該断熱材より前記第1の金型側に配設され、第1の金型と対向する面に凹凸が形成された加工部材を備えた第2の金型と、前記第1の金型に被加工部材を装填する装填処理部と、前記加工部材を、前記被加工部材を構成する材料の状態変化点より高い成形温度に加熱する加熱処理部と、前記加工部材を被加工部材に押し付けて、前記凹凸を被加工部材に転写するための転写処理部とを有する。
【0007】
本発明の他の加圧成形装置においては、さらに、前記加熱処理部は、前記状態変化点より低い予備加熱温度に加熱された被加工部材を加熱する。
【0008】
本発明の更に他の加圧成形装置においては、さらに、前記加工部材を加熱する加熱部は、前記断熱材と加工部材との間に配設される。
【0009】
本発明の更に他の加圧成形装置においては、さらに、前記加工部材を加熱する加熱部は、前記第1、第2の金型間において、前記加工部材と対向させて配設される。
【0010】
本発明の更に他の加圧成形装置においては、さらに、前記加工部材を加熱する加熱部は、加工部材に内在させられる。
【0011】
本発明の金型においては、被加工部材が装填された他の金型に対して進退自在に配設されるようになっている。
【0012】
そして、基板と、該基板より前記他の金型側に配設された断熱材と、該断熱材より前記他の金型側に配設され、他の金型と対向する面に、前記被加工部材に転写するための凹凸が形成された加工部材とを有する。
【0013】
本発明の他の金型においては、さらに、前記断熱材と加工部材との間に前記加工部材を加熱する加熱部が配設される。
【0014】
本発明の更に他の金型においては、さらに、前記加工部材を加熱する加熱部が加工部材に内在させられる。
【0015】
本発明の加圧成形方法においては、第1の金型に被加工部材を装填し、前記第1の金型と対向させて進退自在に配設され、かつ、断熱材より前記第1の金型側に配設され、第1の金型と対向する面に凹凸が形成された加工部材を、前記被加工部材を構成する材料の状態変化点より高い成形温度に加熱し、前記加工部材を被加工部材に押し付け、前記凹凸を被加工部材に転写する。
【0016】
本発明の他の加圧成形方法においては、さらに、前記被加工部材は、前記状態変化点より低い予備加熱温度に加熱される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、加圧成形装置においては、第1の金型と、該第1の金型と対向させて進退自在に配設され、かつ、基板、該基板より前記第1の金型側に配設された断熱材、及び該断熱材より前記第1の金型側に配設され、第1の金型と対向する面に凹凸が形成された加工部材を備えた第2の金型と、前記第1の金型に被加工部材を装填する装填処理部と、前記加工部材を、前記被加工部材を構成する材料の状態変化点より高い成形温度に加熱する加熱処理部と、前記加工部材を被加工部材に押し付けて、前記凹凸を被加工部材に転写するための転写処理部とを有する。
【0018】
この場合、加工部材が断熱材より第1の金型側に配設されるので、わずかな消費エネルギーで、かつ、短時間で、加工部材を加熱して成形温度にし、加工部材を冷却して離型温度にすることができる。その結果、成形サイクルを短くすることができるとともに、生産性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態における加圧成形装置の概念図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における加圧成形装置の制御装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における加圧成形方法の装填工程を示す第1の図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における加圧成形方法の装填工程を示す第2の図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における加圧成形方法の加圧圧縮工程を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における加圧成形方法の取出工程を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における加圧成形方法の装填工程を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態における加圧成形方法の装填工程を示す第1の図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態における加圧成形方法の装填工程を示す第2の図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態における加圧成形方法の加圧圧縮工程を示す図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態における加圧成形方法の取出工程を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
11 下金型
12 上金型
14 基板
21 断熱材
22 ヒータ
23 スタンパ
25 微細パターン
34、85 ハロゲンランプ
44 成形品原型
71 制御部
81 インダクタ
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の第1の実施の形態における加圧成形装置の概念図、図2は本発明の第1の実施の形態における加圧成形装置の制御装置を示すブロック図である。
【0023】
図において、15は加圧成形装置の筐体であり、該筐体15は、底壁16、側壁17及び頂壁18を備える。また、20は成形品を成形するための加圧成形部であり、該加圧成形部20内に金型装置10が配設される。該金型装置10は、型台29上に載置され、第1の金型としての下金型11、該下金型11と対向させて、かつ、進退(図において上下方向に移動)自在に配設された第2の金型としての上金型12を備える。なお、必要に応じて、下金型11及び上金型12を包囲し、かつ、該上金型12を案内する図示されないスリーブ状の胴型を配設することができる。50は、前記加圧成形部20より上方に配設され、上金型12を進退させ、加圧圧縮及び離型を行うための加圧装置である。本実施の形態においては、前記成形品として光導波路等が成形される。
【0024】
また、30は、前記加圧成形部20と仕切り壁33を介して隣接させて形成された予備加熱室であり、該予備加熱室30に被加工部材としての図示されない成形品原型が搬入され、該成形品原型は、予備加熱室30において予備的に加熱された後、加圧成形部20に供給される。そのために、前記予備加熱室30内に前記成形品原型を載置するための支持部材としてのテーブル31、成形品原型の温度T1を検出する第1の温度検出部としての温度センサ32、成形品原型を予備的に加熱する加熱部としてのハロゲンランプ34等が配設される。前記成形品原型は、成形材料としてのアクリル樹脂等の樹脂から成り、所定の形状を有する。また、前記成形品原型をガラスによって構成することもできる。
【0025】
前記温度センサ32によって検出された温度T1は、制御部71に送られ、該制御部71の第1の温度制御処理手段としての、かつ、予備加熱処理部としての図示されない予備加熱処理手段は、第1の温度制御処理としての予備加熱処理を行い、ハロゲンランプ34をオン・オフさせ、前記温度T1を加圧圧縮工程に移行する前の最適な予備加熱温度Tfにする。該予備加熱温度Tfは、操作部72を操作することによって、ガラス転移点Tgよりわずかに低い第1の設定温度として設定される。前記ガラス転移点Tgは、成形品原
型を構成する材料によってあらかじめ決まる状態変化点を構成する。
【0026】
なお、本実施の形態において、成形品原型はハロゲンランプ34によって加熱されるようになっているが、ホットプレート上に成形品原型を載置し、ホットプレートによって加熱することもできる。
【0027】
また、40は、前記加圧成形部20と仕切り壁36を介して隣接させて形成された搬出室であり、該搬出室40に加圧成形部20において成形された成形品が移動させられた後、搬出される。
【0028】
前記加圧装置50は、下端を前記上金型12と対向させて、進退自在に配設された加圧部材としての加圧ロッド51、該加圧ロッド51の上端に取り付けられた加圧プレート52、及び該加圧プレート52より下方の所定の箇所に配設された加圧用の駆動部としての複数の空圧式の加圧シリンダ53等を備える。
【0029】
また、前記頂壁18と加圧プレート52との間に、前記加圧ロッド51を包囲して包囲体としてのベローズ54が配設され、必要に応じて筐体15内を密閉し、真空排気したり、成不活性ガスの雰囲気を形成したりすることができる。
【0030】
なお、本実施の形態においては、加圧用の駆動部として加圧シリンダ53を使用するようになっているが、加圧シリンダ53に代えて電動式のモータを使用することもできる。その場合、電動式のモータの出力軸に運動方向変換部としてのボールねじ等が連結され、出力軸の回転の回転運動が前記ボールねじ等によって直進運動に変換され、加圧ロッド51に伝達される。
【0031】
前記加圧シリンダ53は、前記頂壁18に固定されたシリンダ部53a、及び前記加圧プレート52に固定されたロッド部53bから成り、駆動媒体としての圧縮空気によって駆動される。そのために、前記各シリンダ部53aにおいて、第1の室としてのヘッド側空気室53cに媒体流路としての流路L1を介して媒体供給源としての圧縮空気源SU1が、第2の室としてのロッド側空気室53dに流路L2を介して弁装置としてのサーボ弁64がそれぞれ接続される。そして、該サーボ弁64は、制御部71によって切り替えられ、流路L3を介して圧縮空気源SU2に接続され、流路L4を介して大気に連通させられる。なお、前記流路L2には、圧縮空気の圧力を検出するための圧力検出器Pr1が配設される。本実施の形態においては、前記駆動媒体として圧縮空気が使用されるが、油を使用することもできる。そして、前記加圧シリンダ53を駆動することによって、加圧プレート52を進退させ、加圧ロッド51を進退させることができる。
【0032】
なお、前記制御部71には、前記上金型12に配設され、前記成形品原型に対して加圧圧縮を行うに当たり、成形品原型を加熱する加熱部としてのヒータ22、加工部材としての、かつ、入子としての図示されないスタンパの温度T2を検出する第2の温度検出部としての温度センサ28等が接続される。該温度センサ28によって検出された温度T2は、制御部71に送られ、該制御部71の第2の温度制御処理手段としての、かつ、加熱処理部としての図示されない加熱処理手段は、第2の温度制御処理としての加熱処理を行い、ヒータ22をオン・オフさせ、前記温度T2を加圧圧縮工程に移行した後の最適な成形温度Tpにする。該成形温度Tpは、操作部72を操作することによって、前記ガラス転移点Tgより高い第2の設定温度として設定される。なお、本実施の形態においては、後述されるように、成形品原型に微細パターンが転写されるようになっていて、前記成形温度Tpは、前記微細パターンを十分に転写することができるように設定される。
【0033】
また、前記温度センサ28は、貼付け等によって前記スタンパに取り付けられるように
なっているが、温度センサ28をスタンパから離し、非接触式のものを使用することもできる。なお、前記制御部71には表示部73が接続される。
【0034】
次に、加圧成形方法について説明する。
【0035】
図3は本発明の第1の実施の形態における加圧成形方法の装填工程を示す第1の図、図4は本発明の第1の実施の形態における加圧成形方法の装填工程を示す第2の図、図5は本発明の第1の実施の形態における加圧成形方法の加圧圧縮工程を示す図、図6は本発明の第1の実施の形態における加圧成形方法の取出工程を示す図である。
【0036】
図において、10は金型装置、11は下金型、12は上金型であり、該上金型12は、基板14、該基板14より下金型11側、すなわち、基板14上に配設された断熱材21、該断熱材21より下金型11側、すなわち、断熱材21上に配設されたヒータ22、該ヒータ22より下金型11側、すなわち、ヒータ22上に着脱自在に取り付けられた薄板形状を有するスタンパ23等を備える。該スタンパ23は、本体部24の表面側、すなわち、下金型11と対向する面にあらかじめ所定のパターンで凹凸、すなわち、微細パターン25が形成され、該微細パターン25を下金型11と対向させた状態で、図示されない取付具によって前記上金型12に取り付けられる。また、温度センサ28は本体部24の所定の箇所に配設される。なお、前記基板14の温度を調整するために、基板14内に必要に応じて温調流路を形成することができ、その場合、該温調流路内に温調用の媒体を流すことができる。
【0037】
まず、装填工程において、前記制御部71(図2)の前記予備加熱処理手段は、予備加熱処理を行い、ハロゲンランプ34を通電して成形品原型44を加熱し、予熱して、成形品原型44の温度T1をガラス転移点Tgよりわずかに低い予備加熱温度Tfにする。
【0038】
続いて、前記制御部71の装填処理部としての図示されない装填処理手段は、装填処理を行い、図示されないハンドリング装置を操作して、予備加熱室30(図1)内の成形品原型44を把持し、加圧成形部20内に搬送し、図3の矢印Aで示されるように、下金型11上にセットする。このようにして、前記装填処理手段は、図4に示されるように、成形品原型44を金型装置10に装填する。
【0039】
次に、加圧圧縮工程において、前記制御部71の前記加熱処理手段は、加熱処理を行い、前記ヒータ22を通電してスタンパ23を加熱し、微細パターン25を転写させることができるように、前記スタンパ23の温度T2をガラス転移点Tgより高い成形温度Tpにする。続いて、前記制御部71の転写処理部としての図示されない転写処理手段は、所定のタイミングで加圧装置50を作動させて加圧シリンダ53を駆動し、加圧プレート52及び加圧ロッド51を前進(図1において下方向に移動)させ、図5に示されるように、前記スタンパ23を成形品原型44に押し付けて加圧圧縮を行う。このとき、成形品原型44においては、微細パターン25を転写させることができるように、スタンパ23と接触した表層部だけが伝熱によって加熱され、前記スタンパ23と同様に、成形品原型44に微細パターン25を十分に転写することができるように、表層部の温度がガラス転移点Tgより高い成形温度Tpにされる。したがって、加圧圧縮に伴って微細パターン25を転写することができる。
【0040】
ところで、前記温度T2が、ガラス転移点Tg以上になると、前記成形品原型44を構成する樹脂が軟化して、分子運動性が高くなり、ガラス状態になる。この場合、微細パターン25を転写させることができるように、成形品原型44の表層部はガラス転移点Tgより高い成形温度Tpに加熱された状態にされるので、微細パターン25を良好に転写することができ、転写性を向上させることができる。
【0041】
また、加圧圧縮工程に移行する前に、あらかじめ予備加熱室30内において温度T1がガラス転移点Tgよりわずかに低い予備加熱温度Tfにされ、加圧圧縮工程に移行したときに、前記ヒータ22によって、前記予備加熱温度Tfから加熱が開始されることになるので、温度T2を成形温度Tpにするのに必要な時間を短くすることができる。したがって、成形サイクルを短くすることができ、生産性を高くすることができる。
【0042】
続いて、取出工程において、前記制御部71の取出処理部としての図示されない取出処理手段は、取出処理を行い、温度センサ28によって検出された温度T2を読み込み、該温度T2が、離型を行うのに最適な離型温度Tsになるのを待機する。この場合、自然冷却によって成形品原型44が冷却されるのを待機することができるだけでなく、下金型11、ヒータ22、スタンパ23等に冷却媒体流路を形成し、該冷却媒体流路に冷却媒体、例えば、水等を流すことによって成形品原型44を冷却することもできる。
【0043】
なお、前記離型温度Tsは、前記操作部72を操作することによって、ガラス転移点Tgより低く、離型を十分に行うことができる第3の設定温度として設定される。
【0044】
そして、温度T2が離型温度Tsになると、前記取出処理手段は、加圧装置50を作動させ、加圧シリンダ53を駆動して加圧プレート52及び加圧ロッド51を後退(図1において上方向に移動)させ、上金型12を成形品原型44から離間させる。これに伴って、成形品74を得ることができる。続いて、前記取出処理手段は、前記ハンドリング装置を操作して、加圧成形部20内の成形品74を把持し、図6の矢印Bで示されるように取り出して、搬出室40内に搬送する。このようにして、前記取出処理手段は、成形品原型44を加圧成形部20から搬出することができる。
【0045】
この場合、温度T2がガラス転移点Tgより低くされるので、成形品74を取り出す際に外力が加わっても、成形品74が変形するのを防止することができる。
【0046】
ところで、本実施の形態においては、断熱材21上にヒータ22が配設され、該ヒータ22上にスタンパ23が取り付けられるようになっていて、ヒータ22は断熱材21とスタンパ23との間に配設されるので、ヒータ22を通電することによって発生させられた熱は、基板14には伝達されず、スタンパ23にだけ伝達される。また、スタンパ23を冷却するに当たり、基板14の熱がスタンパ23に伝達されることもない。すなわち、ヒータ22によって加熱すべき対象となる被加熱部、及び冷却すべき対象となる被冷却部は、スタンパ23だけになり、しかも、スタンパ23の熱容量は極めて小さい。したがって、わずかな消費エネルギーで、かつ、短時間で、スタンパ23を加熱して前記温度T2を成形温度Tpにし、スタンパ23を冷却して温度T2を離型温度Tsにすることができ、それに伴って、成形品原型44の表層部の温度を離型温度Tsにすることができる。その結果、成形サイクルを一層短くすることができるとともに、スループットを良くすることができる。
【0047】
また、前記スタンパ23を成形品原型44に押し付ける前の成形品原型44の温度T1は、スタンパ23の温度T2より高いが、スタンパ23を成形品原型44に押し付けるのに伴って、スタンパ23の熱が急速に成形品原型44に流れる。この場合、スタンパ23の熱容量が十分に小さいので、スタンパ23の熱が成形品原型44に流れるのに伴って、スタンパ23の温度T2を急激に低くすることができる。したがって、短時間で温度T2を離型温度Tsにすることができるので、成形サイクルを一層短くすることができるとともに、スループットを良くすることができる。
【0048】
なお、成形品が光導波路である場合、微細パターン25の深さは数十〔μ〕からサブ〔
μ〕になるので、成形品原型44の表層部の温度だけを成形温度Tpにすればよい。したがって、スタンパ23を十分に薄くして熱容量を小さくしても、微細パターン25の転写を良好に行うことができる。
【0049】
本実施の形態において、ヒータ22はスタンパ23と別体に形成されるようになっているが、スタンパ23に内在させることもできる。
【0050】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0051】
図7は本発明の第2の実施の形態における加圧成形方法の装填工程を示す図である。
【0052】
この場合、断熱材21上に加熱部として誘導加熱用のインダクタ81が配設され、該インダクタ81上に加工部材としての、かつ、入子としてのスタンパ23が取り付けられる。そして、インダクタ81を通電することによって、誘導加熱により発生させられた熱は、基板14には伝達されず、スタンパ23にだけ伝達される。この場合も、ヒータ22によって加熱すべき対象となる被加熱部は、スタンパ23だけになり、被加熱部の熱容量を小さくすることができる。
【0053】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0054】
図8は本発明の第3の実施の形態における加圧成形方法の装填工程を示す第1の図、図9は本発明の第3の実施の形態における加圧成形方法の装填工程を示す第2の図、図10は本発明の第3の実施の形態における加圧成形方法の加圧圧縮工程を示す図、図11は本発明の第3の実施の形態における加圧成形方法の取出工程を示す図である。
【0055】
まず、装填工程において、前記制御部71(図2)の前記予備加熱処理手段は、予備加熱処理を行い、加熱部としてのハロゲンランプ34を通電し、被加工部材としての成形品原型44を加熱し、該成形品原型44の温度T1をガラス転移点Tgよりわずかに低い予備加熱温度Tfにする。このとき、図8に示されるように、下金型11と上金型12との間に加熱装置84が置かれる。該加熱装置84は、加工部材としての、かつ、入子としてのスタンパ23と対向させて配設された加熱部としての平板状のハロゲンランプ85、及び該ハロゲンランプ85の背面に配設された反射板86を備える。続いて、前記制御部71の前記加熱処理手段は、加熱処理を行い、ハロゲンランプ85を通電してスタンパ23に光を照射することによって、スタンパ23を加熱し、スタンパ23の温度をガラス転移点Tgより高い成形温度Tpにする。
【0056】
次に、前記制御部71の前記装填処理手段は、装填処理を行い、前記加熱装置84を下金型11と上金型12との間から抜き、前記ハンドリング装置を操作して、予備加熱室30(図1)内の成形品原型44を把持し、加圧成形部20内に搬送し、図9に示されるように、下金型11上にセットする。このようにして、前記装填処理手段は成形品原型44を金型装置10に装填する。
【0057】
次に、加圧圧縮工程において、前記制御部71の前記転写処理手段は、転写処理を行い、加圧装置50を作動させ、加圧シリンダ53を駆動して加圧プレート52及び加圧ロッド51を前進させ、図10に示されるように、前記スタンパ23を成形品原型44に押し付け、該成形品原型44に熱を伝達して、成形品原型44の表層部の温度をガラス転移点
Tgより高い成形温度Tpにし、加圧圧縮を行い、微細パターン25を転写する。
【0058】
続いて、取出工程において、前記制御部71の前記取出処理手段は、取出処理を行い、温度センサ28によって検出された温度T2を読み込み、該温度T2が、離型を行うのに最適な離型温度Tsになるのを待機する。
【0059】
そして、前記温度T2が離型温度Tsになると、前記取出処理手段は、加圧装置50を作動させ、加圧シリンダ53を駆動して加圧プレート52及び加圧ロッド51を後退させ、上金型12を成形品原型44から離間させる。これに伴って、成形品74を得ることができる。続いて、前記取出処理手段は、前記ハンドリング装置を操作して、加圧成形部20内の成形品74を把持し、図11の矢印Bで示されるように取り出して、搬出室40内に搬送する。このようにして、前記取出処理手段は成形品原型44を加圧成形部20から搬出することができる。
【0060】
本実施の形態においては、成形品として光導波路を成形するようになっているが、成形品として光導波路に代えてディスク基板を成形することができる。
【0061】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
スタンパを使用して成形品を成形する加圧成形装置に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の金型と、
(b)該第1の金型と対向させて進退自在に配設され、かつ、基板、該基板より前記第1の金型側に配設された断熱材、及び該断熱材より前記第1の金型側に配設され、第1の金型と対向する面に凹凸が形成された加工部材を備えた第2の金型と、
(c)前記第1の金型に被加工部材を装填する装填処理部と、
(d)前記加工部材を、前記被加工部材を構成する材料の状態変化点より高い成形温度に加熱する加熱処理部と、
(e)前記加工部材を被加工部材に押し付けて、前記凹凸を被加工部材に転写するための転写処理部とを有することを特徴とする加圧成形装置。
【請求項2】
前記加熱処理部は、前記状態変化点より低い予備加熱温度に加熱された被加工部材を加熱する請求項1に記載の加圧成形装置。
【請求項3】
前記加工部材を加熱する加熱部は、前記断熱材と加工部材との間に配設される請求項1に記載の加圧成形装置。
【請求項4】
前記加工部材を加熱する加熱部は、前記第1、第2の金型間において、前記加工部材と対向させて配設される請求項1に記載の加圧成形装置。
【請求項5】
前記加工部材を加熱する加熱部は、加工部材に内在させられる請求項1に記載の加圧成形装置。
【請求項6】
被加工部材が装填された他の金型に対して進退自在に配設される金型において、
(a)基板と、
(b)該基板より前記他の金型側に配設された断熱材と、
(c)該断熱材より前記他の金型側に配設され、他の金型と対向する面に、前記被加工部材に転写するための凹凸が形成された加工部材とを有することを特徴とする金型。
【請求項7】
前記断熱材と加工部材との間に前記加工部材を加熱する加熱部が配設される請求項6に記載の金型。
【請求項8】
前記加工部材を加熱する加熱部が加工部材に内在させられる請求項6に記載の金型。
【請求項9】
(a)第1の金型に被加工部材を装填し、
(b)前記第1の金型と対向させて進退自在に配設され、かつ、断熱材より前記第1の金型側に配設され、第1の金型と対向する面に凹凸が形成された加工部材を、前記被加工部材を構成する材料の状態変化点より高い成形温度に加熱し、
(c)前記加工部材を被加工部材に押し付け、前記凹凸を被加工部材に転写することを特徴とする加圧成形方法。
【請求項10】
前記被加工部材は、前記状態変化点より低い予備加熱温度に加熱される請求項9に記載の加圧成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【国際公開番号】WO2005/075184
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【発行日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517737(P2005−517737)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001656
【国際出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】