説明

加工システム

【課題】形状の異なる種々のワークに容易且つ簡便に対応するとともに、効率的な加工処理を遂行することを可能にする。
【解決手段】加工システム10は、第1工作機械ユニット12及び第2工作機械ユニット14と、搬送機構18と、ワークパレットストッカ24とを備える。第1工作機械ユニット12は、第1工作機械28a及び第2工作機械28bを互いに隣接して配列するとともに、ワーク保持機構30を構成するターンテーブル60には、3つの副回転機構62が設けられる。各副回転機構62には、ワークWに対応して、ワークパレットWPが着脱自在に設けられる。搬送機構18は、ワークW及びワークパレットWPを個別に支持して、搬入及び搬出する機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを位置決め保持するワーク保持機構を有し、前記ワーク保持機構に保持された前記ワークに加工処理を施す工作機械と、前記工作機械に沿って水平方向に延在する搬送経路を有し、前記ワークを前記搬送経路に沿って搬送可能な搬送機構とを備える加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ワークに対して種々の加工処理を施す工作機械と、前記工作機械に対して前記ワークを搬入及び搬出するローダ装置(搬送機構)とを備えた加工システムが採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている加工システムでは、図8に示すように、ローダ装置1を備えている。このローダ装置1は、複数のフレーム2に支持され、且つ、工作機械3の上方を水平方向に延びる軌道4と、前記軌道4に沿って水平方向に移動する移動台5と、前記移動台5に対して上下方向に移動可能に支持される第1のスライダ6aと、前記第1のスライダ6aに対して上下方向に移動可能に支持される第2のスライダ6bとを備えている。
【0004】
移動台5上には、前記移動台5を軌道4に沿って走行させるためのアクチュエータ7が設置されている。第2のスライダ6bの先端(下端)には、把持装置8が取り付けられており、前記把持装置8によって、ワークWが着脱可能である。工作機械3には、ワークWを位置決め載置するための加工テーブル9が設けられている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−46920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の加工システムにおいて加工処理されるワークWは、一般的に、多種類にわたっており、種々の異なる形状を有している場合が多い。このため、工作機械3では、形状の異なる各ワークWに対応して多種類の加工テーブル9を用意するとともに、多種類のツールを用意する必要がある。従って、加工されるワークWの形状が異なる際に、このワークWに対応して加工テーブル9及びツールの交換が行われており、この種の交換作業に相当な時間を要している。
【0007】
これにより、形状の異なる多種類のワークWに対して、効率的な加工処理を行うことができないという問題がある。しかも、加工テーブル9は、相当に重量物である。このため、加工テーブル9の交換作業が煩雑化するとともに、作業者に過度の負担を強いるという問題がある。
【0008】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、形状の異なる種々のワークに容易且つ簡便に対応するとともに、効率的な加工処理を遂行することが可能な加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ワークを位置決め保持するワーク保持機構を有し、前記ワーク保持機構に保持された前記ワークに加工処理を施す工作機械と、前記工作機械に沿って水平方向に延在する搬送経路を有し、前記ワークを前記搬送経路に沿って搬送可能な搬送機構とを備える加工システムに関するものである。
【0010】
加工システムは、ワーク保持機構に着脱自在であるとともに、前記ワーク保持機構でワーク保持する際、前記ワークが直接取り付けられるワークパレットを設けている。そして、搬送機構は、ワーク及びワークパレットを個別に支持し、ワーク保持機構に対して搬入及び搬出可能な把持手段を備えている。
【0011】
また、工作機械は、互いに並列される第1工作機械及び第2工作機械を有し、ワーク保持機構は、水平面で回転可能なターンテーブルと、前記ターンテーブルに設けられ、水平面で回転してワークの加工面を加工主軸に対向する向きに設定する複数の副回転機構と、前記副回転機構のうちの1つを前記第1工作機械の前記加工主軸と対向する第1保持位置とし、前記副回転機構のうちの他の1つを前記第2工作機械の前記加工主軸と対向する第2保持位置となるように前記ターンテーブルを間欠回転させる主回転機構とを有するとともに、ワークパレットは、前記副回転機構に対して着脱自在であることが好ましい。
【0012】
さらに、互いに並列される第1工作機械及び第2工作機械により工作機械ユニットを構成し、搬送経路に沿って前記工作機械ユニットが複数配列されることが好ましい。
【0013】
さらにまた、搬送機構は、工作機械の上方に水平方向に沿って延在する搬送経路上を進退可能な移動部と、前記移動部に昇降可能に装着されるとともに、把持手段を構成する第1把持部及び第2把持部とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、形状の異なるワークに対応してワークパレットが設けられており、このワークパレットは、ワーク保持機構に対して着脱自在である。このため、形状の異なるワークの加工処理が行われる際には、ワーク保持機構に取り付けられていた処理済みのワークに対応するワークパレットと、新たなワークに対応するワークパレットとを交換するだけでよい。
【0015】
従って、比較的軽量なワークパレットを取り扱うだけでよく、ワークの変更に伴う切り替え処理が、簡単且つ短時間で良好に遂行可能になる。これにより、形状の異なる種々のワークに容易且つ簡便に対応するとともに、効率的な加工処理を遂行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本実施の形態に係る加工システム10の斜視図であり、図2は、前記加工システム10の平面図である。
【0017】
加工システム10は、工作機械として、例えば、第1工作機械ユニット12及び第2工作機械ユニット14を備え、前記第1工作機械ユニット12及び前記第2工作機械ユニット14は、搬送経路16に沿って水平方向に(矢印A方向)配列される。
【0018】
加工システム10は、ワークWを搬送経路16に沿って搬送可能な搬送機構18を備える。搬送機構18の上流側には、ワーク搬入コンベア20が設けられるとともに、前記搬送機構18の下流側には、ワーク搬出コンベア22が設けられる。第1工作機械ユニット12と第2工作機械ユニット14とに対応し、搬送経路16に平行してワークパレットストッカ24が配設される。
【0019】
加工システム10は、ワークWに対してドリル加工、中ぐり加工及びホーニング加工等を行うものである。以下、加工システム10の向きを特定するために、図1及び図3における左右方向をX方向、高さ方向をY方向とし、X方向及びY方向に直交する奥行きの方向をZ方向とする。X方向及びY方向は、水平面内の所定の一方向であって、直交している。
【0020】
第1工作機械ユニット12は、図3に示すように、基台26を備え、この基台26上には、第1工作機械28aと第2工作機械28bとが互いに近接して矢印X方向に配列される。第1工作機械28a及び第2工作機械28bの前方には、ワーク保持機構30が配設される。
【0021】
第1工作機械28aは、基台26上に設けられてZ方向に延在する一対のZレール32を備え、このZレール32には、Z方向に進退可能なコラム34が載置される。このコラム34は、基台26の後方に設けられるZモータ36に連結されるボールねじ38に螺合する。コラム34の前面側には、鉛直方向に延在する一対のYレール40が設けられるとともに、このYレール40には、支持体42が係合する。
【0022】
支持体42は、基台26内に配置されているYモータ44に連結されてY方向に延在するボールねじ46の回転作用下に、前記Y方向に昇降移動する。支持体42には、図示しないアームモータに連結されて水平軸回り(Z軸回り)に回転可能な回転アーム48が設けられ、前記回転アーム48の回転先端には、Z1方向に突出して加工主軸50が設けられる。この加工主軸50は、スピンドルモータ52により回転されるとともに、前記加工主軸50の先端には、工具Tが装着される(図4参照)。
【0023】
なお、第2工作機械28bは、上記の第1工作機械28aと同様に構成されており、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0024】
図5に示すように、ワーク保持機構30は、水平面で回転可能なターンテーブル60と、前記ターンテーブル60上に設けられ、水平面で回転してワークWの加工面を加工主軸50に対向する向きに設定する3つの副回転機構62と、該副回転機構62のうちの1つを第1工作機械28aの加工主軸50と対向する第1保持位置64aとし、副回転機構62のうちの他の1つを第2工作機械28bの加工主軸50と対向する第2保持位置64bとなるようにターンテーブル60を回転させる主回転機構66とを有する。
【0025】
ターンテーブル60は、矩形板が三方に放射状に延在する形状であって、各矩形板の間には、上方に延在する隔離板61が設けられている。主回転機構66は、ターンテーブル60を120°毎に、平面視で時計方向に間欠回転させながら、2つのワークWを第1工作機械28a及び第2工作機械28bに対するように固定する。
【0026】
3つの副回転機構62は、図3に示すように、それぞれワークパレットWPを位置決めする保持具としてのピン70を有する。各副回転機構62は、ターンテーブル60上で等間隔(120°)に配置されている。この副回転機構62は、第1保持位置64a及び第2保持位置64bにあるときに、ワークパレットWP上のワークWの加工面が後方(矢印Z2方向)を指向するように回転動作する(図3及び図5参照)。
【0027】
副回転機構62は、矢印Z1方向の第3保持位置64cにあるとき、ワークパレットWPからワークWを開放可能とし、加工済みのワークWを搬出する一方、未加工のワークWを搬入する。
【0028】
図3及び図4に示すように、基台26には、フレーム72が設けられており、このフレーム72には、第1保持位置64a及び第2保持位置64bに配置されるワークWを押圧保持するためのワーク押圧固定装置74a、74bが設けられる。ワーク押圧固定装置74a、74bは、サーボモータ76a、76bを備え、前記サーボモータ76a、76bに連結されるボールねじ78a、78bが矢印Y方向に延在する。
【0029】
ボールねじ78a、78bには、ナット部80a、80bが噛合するとともに、前記ナット部80a、80bには、シリンダ82a、82bが設けられる。シリンダ82a、82bから下方に延在するロッド84a、84bには、固定板86a、86bが固着される。
【0030】
第2工作機械ユニット14は、上記の第1工作機械ユニット12と同様に構成されており、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0031】
図3に示すように、ワークパレットWPは、ワークWを位置決め保持するために、例えば、一対のピン部材88を設けている。ワークパレットWPは、ワークWの形状に対応して複数種類だけ用意されており、後述するワークパレットストッカ24にストックされている。
【0032】
図1に示すように、搬送機構18は、複数の支柱90を介して第1工作機械ユニット12及び第2工作機械ユニット14の上方に矢印A方向に延在して配置される搬送経路16を備える。この搬送経路16上には、自走台車(移動部)92が配置される。自走台車92は、モータ94の駆動作用下に、例えば、図示しないラックピニオン等を介して、矢印X方向(矢印A方向と同一方向)に進退可能である。
【0033】
自走台車92には、ワークW及びワークパレットWPを個別に支持し、第3保持位置64cに位置する副回転機構62に対して搬入及び搬出可能な把持手段96が設けられる。把持手段96は、自走台車92に装着されて鉛直方向に所定距離だけ離間して配設される一対のシリンダ98a、98bを備え、前記シリンダ98a、98bから下方に延在するロッド100a、100bには、第1把持部102a及び第2把持部102bが連結される。
【0034】
図6に示すように、第1把持部102a及び第2把持部102bは、ロッド100a、100bに連結される手首部104a、104bを備え、この手首部104a、104bに支持板106a、106bが固着される。支持板106a、106bには、シリンダ108a、108bを介して互いに近接及び離間する一対の爪部材110a、110bが設けられる。爪部材110a、110bは、それぞれガイド112a、112bを介して支持板106a、106bに支持されるとともに、シリンダ108a、108bには、公知の手段、例えば、ラックピニオン等が連結される。
【0035】
支持板106a、106b上には、シリンダ114a、114bが設けられる。シリンダ114a、114bから下方に延在するロッド116a、116bの先端には、ワーク押さえ板118a、118bが固着される。
【0036】
各一対の爪部材110a、110bは、ワークW及びワークパレットWPをそれぞれ把持する機能を有する一方、ワーク押さえ板118a、118bは、前記一対の爪部材110a、110bに把持されている前記ワークWを押圧保持する機能を有する。
【0037】
図1に示すように、ワークパレットストッカ24は、載置台120を備える。この載置台120には、同一種類のワークWに対応して同一構成の3つのワークパレットWPを1セットして、例えば、2セットが載置可能である。
【0038】
載置台120は、モータ122を備える移動機構124を介して矢印Z方向に進退可能である。載置台120上の所定のワークパレットWPは、把持手段96の鉛直下方位置に対して配置可能である。
【0039】
このように構成される加工システム10の動作について、以下に説明する。
【0040】
先ず、搬送機構18が駆動されて、把持手段96を構成する第1把持部102a及び第2把持部102bは、ワーク搬入コンベア20上に配置されているワークWを同時に把持する。具体的には、第1把持部102a及び第2把持部102bは、シリンダ98a、98bを介して下降することにより、ワーク搬入コンベア20のワーク取り出し高さ位置に配置する。
【0041】
さらに、図6に示すように、シリンダ108a、108bが駆動され、各一対の爪部材110a、110bは、互いに近接する方向に移動してワークWの底面側を支持する。一方、シリンダ114a、114bが駆動され、ワーク押さえ板118a、118bは、各ワークWの上面部を押圧することにより、爪部材110a、110bにそれぞれ前記ワークWが把持される。
【0042】
そして、図1に示すように、シリンダ98a、98bが駆動され、第1把持部102a及び第2把持部102bが上昇した後、自走台車92がX方向一方(矢印A方向)に移動する。このため、例えば、第1把持部102aは、第1工作機械ユニット12を構成するワーク保持機構30の第3保持位置64c上に配置される。
【0043】
この状態で、シリンダ98aが駆動されて第1把持部102aが下降し、ワークWは、第3保持位置64cに配置される副回転機構62のワークパレットWP上に配置される。そこで、シリンダ108a、114aが、前記とは逆方向に駆動されることにより、一対の爪部材110a及びワーク押さえ板118aがワークWから離間する。従って、ワークWは、ワークパレットWP上に位置決め載置される。
【0044】
第1把持部102aが上昇した後、自走台車92は、矢印A方向に所定距離だけ移動する。このため、第2把持部102bは、第2工作機械ユニット14を構成するワーク保持機構30の第3保持位置64c上に配置される。この位置で、第2把持部102bは、シリンダ98bの駆動作用下に下降し、この第2把持部102bに把持されているワークWは、第3保持位置64cに位置する副回転機構62上のワークパレットWPに位置決め配置される。同様にして、一対の爪部材110b及びワーク押さえ板118bがワークWから離間することにより、このワークWは、ワークパレットWP上に配置される。
【0045】
以下、第1工作機械ユニット12側の動作について説明すると、図5に示すように、ワーク保持機構30では、ターンテーブル60が平面時計方向に120°回転し、ワークWが第1保持位置64aに移動する。このため、第3保持位置64cには、空のワークパレットWPが配置され、このワークパレットWPには、上記のように搬送機構18を介してワークWが配置される。
【0046】
一方、第1保持位置64aに移動したワークWは、加工面が第1工作機械28aの加工主軸50に対面しており、前記加工主軸50を介して前記ワークWに第1の加工処理が施される。第1保持位置64aで第1の加工処理が施されたワークWは、ターンテーブル60の回転作用下に、第2保持位置64bに移動するとともに、この第1保持位置64aには、未加工のワークWが移動する。また、第3保持位置64cには、空のワークパレットWPが配置され、このワークパレットWP上には、搬送機構18を介してワークWが導入される。
【0047】
第2保持位置64bに移動したワークWは、加工面が第2工作機械28bの加工主軸50に対面しており、この加工主軸50を介して前記ワークWには、第2の加工処理が施される。
【0048】
なお、上記の第1工作機械28a及び第2工作機械28bによりワークWに加工を施す際、前記ワークWは、ワーク押圧固定装置74a、74bの作用下に、第1保持位置64a及び第2保持位置64bに対して押圧維持されている(図3及び図4参照)。
【0049】
第2保持位置64bで全加工工程(第1加工処理及び第2加工処理)が施されたワークWは、ターンテーブル60の回転作用下に、第3保持位置64cに移動する。そして、加工済みのワークWは、搬送機構18を介してワークパレットWP上から離脱された後、ワーク搬出コンベア22に移送される。
【0050】
次いで、加工されるワークWの形状(種類)が変更される際の切り替え作業について、図7に示すタイミングチャートに沿って以下に説明する。なお、図7中、時間t1は、待ち時間であり、時間t2は、ターンテーブル60の回転による加工停止時間である。
【0051】
先ず、第1工作機械ユニット12では、全ての加工工程が終了したワークWが第3保持位置64cに配置される。そこで、第3保持位置64c上の加工済みワークWは、搬送機構18を介してワークパレットWP上から取り出され、ワーク搬出コンベア22に搬出されるとともに(旧ワーク払い出し)、前記搬送機構18を介して、ワークパレットストッカ24上のワークパレットWPの交換が行われる。
【0052】
具体的には、図1に示すように、ワークパレットストッカ24では、載置台120上の所定の位置にワークパレットWPが配置された後、移動機構124を構成するモータ122が駆動され、前記載置台120が搬送経路16の下方に移動される。そして、搬送機構18が駆動されて、例えば、旧ワークWに対応するワークパレットWPが、第3保持位置64c上で第1把持部102aにより把持される。一方、ワークパレットストッカ24上の新たなワークWに対応するワークパレットWPが、第2把持部102bに把持される。
【0053】
次に、新たなワークWに対応するワークパレットWPは、第3保持位置64cに配置されている副回転機構62に配置されるとともに、旧ワークWに対応するワークパレットWPは、例えば、ワークパレットストッカ24上に払い出される。さらに、第3保持位置64cに新たなワークパレットWPが配置されて第1のワークパレットWP1−1(図7参照)の交換が行われた後、ワーク搬入コンベア20に送られた新たなワークWが搬送機構18により把持されて、前記新たなワークパレットWPにこの新たなワークWが投入される。
【0054】
上記のように、第3保持位置64cにおいて、新たなワークパレットWPの交換作業及び新たなワークWの投入作業が行われている間、第1保持位置64a及び第2保持位置64bでは、それぞれ旧ワークWに対して所定の加工処理が施されている。
【0055】
搬送機構18は、第1工作機械ユニット12で旧ワークWの払い出しを行った後、所定の待ち時間t1が経過すると、第2工作機械ユニット14側で全ての加工処理が終了して第3保持位置64cに保持されている旧ワークWの払い出しを行う。さらに、第3保持位置64cで旧ワークWが払い出された旧ワークパレットWPを、新たなワークWに対応する新たなワークパレットWPと交換するとともに、この新たなワークパレットWPに対して新たなワークWを投入する。
【0056】
第2工作機械ユニット14側で第1のワークパレットWP2−1の交換を行っている間、第1工作機械ユニット12側では、第1保持位置64a及び第2保持位置64bで旧ワークWの加工処理が行われている。そして、第1工作機械ユニット12側の第3保持位置64cに移動された加工済みの旧ワークWを払い出して、新たなワークWに対応する第2のワークパレットWP1−2の交換を行う際には、第1保持位置64aに新たなワークWが配置されている。従って、この新たなワークWに対し、第1工作機械28aによる加工処理が行われている。
【0057】
そして、上記の作業を繰り返すことにより、第1工作機械ユニット12側の残りのワークパレットWPが第3のワークパレットWP1−3と交換されるとともに、第2工作機械ユニット14側においても同様に、残り2つのワークパレットWPが第2のワークパレットWP2−2及び第3のワークパレットWP2−3と交換される(図7参照)。
【0058】
この場合、本実施形態では、第1工作機械ユニット12側で新たなワークWに対応してワークパレットWPを交換している間に、第2工作機械ユニット14側では、ワークWの加工を行うことができる。従って、ワークWの形状(種類)が異なる際に、例えば、比較的長時間を要する切り替え時間が可及的に短縮化される。これにより、ワークWの変更に伴う切り替え作業を短時間で且つ効率的に行うことが可能になり、形状の異なる種々のワークWに対する加工処理が容易に効率化されるという効果が得られる。
【0059】
さらに、本実施形態では、形状の異なるワークWに対応して多種類のワークパレットWPを設けるとともに、前記ワークパレットWPは、ワーク保持機構30に対して着脱自在である。このため、形状の異なるワークWの加工処理が行われる際には、ワーク保持機構30に取り付けられていた処理済みのワークWに対応するワークパレットWPと、新たなワークWに対応するワークパレットWPとを交換するだけでよい。
【0060】
従って、比較的軽量なワークパレットWPを取り扱うだけでよく、ワークWの変更に伴う切り替え処理が簡単且つ短時間で良好に遂行可能になる。これにより、形状の異なる種々のワークWに容易且つ簡便に対応するとともに、効率的な加工処理を遂行することができるという効果が得られる。
【0061】
しかも、ワークパレットWPは、ワークWを搬送するための搬送機構18によって取り扱うことが可能になる。従って、ワークパレットWPに専用の搬送構造を用いる必要がなく、加工システム10全体の小型且つ軽量化を図るとともに、極めて経済的であるという利点がある。
【0062】
さらにまた、搬送機構18は、第1把持部102aと第2把持部102bとを備えており、同時に2個のワークWを把持可能に構成することもできる。すなわち、例えば、ワーク搬入コンベア20及び第1工作機械ユニット12の第3保持位置64cの間隔を、第1把持部102a及び第2把持部102bの間隔と同一寸法に設定する。これにより、ワーク搬入コンベア20上のワークWの把持と、第3保持位置64cに配置されている加工処理済みのワークWの把持とを、同時且つ簡単に行うことが可能になり、作業全体の効率化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施の形態に係る加工システムの斜視図である。
【図2】前記加工システムの平面図である。
【図3】前記加工システムを構成する第1及び第2工作機械ユニットの斜視説明図である。
【図4】前記第1及び第2工作機械ユニットの側面説明図である。
【図5】ワーク保持機構の一部断面斜視図である。
【図6】把持部の説明図である。
【図7】前記加工システムの動作を説明するタイミングチャートである。
【図8】特許文献1に開示されている加工システムの説明図である。
【符号の説明】
【0064】
10…加工システム 12、14…工作機械ユニット
16…搬送経路 18…搬送機構
24…ワークパレットストッカ 28a、28b…工作機械
30…ワーク保持機構 34…コラム
42…支持体 50…加工主軸
60…ターンテーブル 62…副回転機構
64a、64b、64c…保持位置 66…主回転機構
74a、74b…ワーク押圧固定装置 92…自走台車
96…把持手段 102a、102b…把持部
110a、110b…爪部材 W…ワーク
WP…ワークパレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを位置決め保持するワーク保持機構を有し、前記ワーク保持機構に保持された前記ワークに加工処理を施す工作機械と、
前記工作機械に沿って水平方向に延在する搬送経路を有し、前記ワークを前記搬送経路に沿って搬送可能な搬送機構と、
を備える加工システムであって、
前記ワーク保持機構に着脱自在であるとともに、前記ワーク保持機構で前記ワーク保持する際、前記ワークが直接取り付けられるワークパレットを設け、
前記搬送機構は、前記ワーク及び前記ワークパレットを個別に支持し、前記ワーク保持機構に対して搬入及び搬出可能な把持手段を備えることを特徴とする加工システム。
【請求項2】
請求項1記載の加工システムにおいて、前記工作機械は、互いに並列される第1工作機械及び第2工作機械を有し、
前記ワーク保持機構は、水平面で回転可能なターンテーブルと、
前記ターンテーブルに設けられ、水平面で回転して前記ワークの加工面を加工主軸に対向する向きに設定する複数の副回転機構と、
前記副回転機構のうちの1つを前記第1工作機械の前記加工主軸と対向する第1保持位置とし、前記副回転機構のうちの他の1つを前記第2工作機械の前記加工主軸と対向する第2保持位置となるように前記ターンテーブルを間欠回転させる主回転機構と、
を有するとともに、
前記ワークパレットは、前記副回転機構に対して着脱自在であることを特徴とする加工システム。
【請求項3】
請求項2記載の加工システムにおいて、互いに並列される前記第1工作機械及び前記第2工作機械により工作機械ユニットを構成し、
前記搬送経路に沿って前記工作機械ユニットが複数配列されることを特徴とする加工システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の加工システムにおいて、前記搬送機構は、前記工作機械の上方に水平方向に沿って延在する前記搬送経路上を進退可能な移動部と、
前記移動部に昇降可能に装着されるとともに、前記把持手段を構成する第1把持部及び第2把持部と、
を備えることを特徴とする加工システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−221364(P2008−221364A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60122(P2007−60122)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】