説明

加工装置

【課題】排気用のファンに加工屑等の異物が付着するおそれを低減させてファンの吸引力の低下を防止する。
【解決手段】排気路30の途中のファン31で加工室25内の雰囲気を吸入して排気する構成において、ファン31と加工室25との間の排気路30に、排気を気液分離する分離手段40を設け、気体のみをファン31側に排出し、排気中の異物を含む廃液を廃液排出口44から排出する。廃液がファン31を通らないようにすることにより、加工屑等の異物がファン31に付着するおそれを低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウェーハ等の被加工物を加工する加工装置に係り、特に加工室内の雰囲気を排気するファンと排気路とを備える加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程では、シリコンやガリウムヒ素等の半導体材料からなるウェーハの表面に、格子状の分割予定ラインが設定され、この分割予定ラインで囲まれた多数の矩形状領域に、ICやLSI等の電子回路を有するデバイスが形成される。そしてこのウェーハは、裏面が研削されて設定厚さに薄化されるなどの所定の工程を経てから、分割予定ラインに沿って切断されることにより、多数のチップ状のデバイスに分割される。このようにして得られたデバイスは、樹脂やセラミックでパッケージングされ、各種電子機器に実装される。ウェーハを分割する装置としては、回転する切削ブレードを分割予定ラインに沿ってウェーハに切り込ませて切断する切削装置があり、ウェーハの裏面研削は、ウェーハの裏面に回転する砥石を押し付けて研削する研削装置が用いられる。
【0003】
この種の切削装置や研削装置といった加工装置においては、密閉される加工室内において保持テーブルに保持した被加工物を加工手段(上記切削ブレードや砥石など)で加工する構成が一般的である。そして加工の際には、加工手段が被加工物に接する加工点に加工液を供給しながら加工が遂行される。加工液は、加工によって生じる加工屑を被加工物から除去したり加工点を冷却したりする目的で供給され、加工屑が混入した加工液は廃液として加工装置外に排出される。一方、加工室内の雰囲気はダクトを通じて装置外に排気され、そのダクトの途中には、加工室内の雰囲気をダクト内に吸入して排気口に送り込むファンが設けられる。加工装置の中には、これらダクトおよびファンが内蔵されているタイプのものもある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−124165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような構成の加工装置では、ファンによって加工室からダクト内に吸入される排気中に、加工屑が混じった廃液が混入する場合があり、加工屑はファンに付着しやすい。ファンに加工屑が付着すると、ファンの回転速度が低下したりファンに振動が発生したりして、吸引力が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、ファンに加工屑等の異物が付着するおそれが低減してファンの吸引力の低下が防止される加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加工装置は、被加工物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルで保持された被加工物を加工する加工手段と、該加工手段と被加工物とに加工液を供給する加工液供給手段と、前記保持テーブルと前記加工手段と前記加工液供給手段とを囲繞する加工室と、一端が前記加工室に連通するとともに他端がファンに連通して該加工室内の雰囲気を排気する排気路と、を備える加工装置であって、前記排気路上で前記加工室と前記ファンとの間に配設されて、該加工室から該排気路に流入した排気に含まれる廃液を気体から分離する分離手段を備え、該分離手段は、底面が上を向き頂点が下を向いた逆円錐形のチェンバーと、該チェンバーの底面側の側面に形成された前記加工室に連通する吸気口と、前記チェンバーの頂点側に形成された廃液排出口と、前記チェンバーの底面に形成されて前記ファンに連通する気体排出口とを有し、前記吸気口から吸入された排気によって前記チェンバー内に渦巻き気流が発生することで、該排気に含まれる廃液が前記廃液排出口を介して排出されるとともに 該排気は前記気体排出口を介して排出されることを特徴とする。
【0008】
本発明の加工装置では、被加工物は加工室内の保持テーブルに保持され、加工液供給手段から加工液が加工手段と被加工物とに供給された状態で、加工手段で加工が施される。加工の際にはファンが稼働して加工室内の雰囲気が排気路に吸入され、分離手段を通って装置外に排気される。分離手段においては、排気が吸気口からチェンバー内に導入されて気体排出口から排出され、この排気の流れによりチェンバー内には渦巻き気流が発生する。チェンバー内に導入される排気中に、加工屑等の異物が混じった廃液が混入していると、その廃液は渦巻き気流の作用で気体と分離させられ、気体のみが気体排出口から排出し、異物を含む廃液は廃液排出口から排出される。したがって廃液はファンを通らず、このため廃液に含まれる加工屑等の異物がファンに付着するおそれが低減する。その結果、ファンの吸引力の低下が防止される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ファンに加工屑等の異物が付着するおそれが低減してファンの吸引力の低下が防止される加工装置が提供されるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る切削装置の全体斜視図である。
【図2】同切削装置で切削加工される被加工物が、粘着テープを介してフレームに支持された状態を示す斜視図である。
【図3】同装置内の排気路を示す縦断面図である。
【図4】排気路に設けられる分離手段の斜視図である。
【図5】分離手段の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を切削装置に適用した一実施形態を説明する。
(1)切削装置
(1−1)切削加工に関する構成
図1は、一実施形態に係る切削装置10の全体斜視図である。この切削装置10は、例えば半導体ウェーハ等の円板状の被加工物1を多数のチップに分割する装置として好適なものである。図2に示すように、被加工物1の表面には互いに直交して格子状に配列される複数の分割予定ライン2が設定されており、分割予定ライン2で囲まれた多数の矩形状領域には、ICやLSI等の電子回路を有するデバイス3が形成されている。被加工物1は、切削装置10により分割予定ライン2に沿って切断され、多数のチップ状のデバイス3に分割される。
【0012】
この場合、被加工物1は、粘着テープ4を介して環状のフレーム5の内側に表面側が露出する状態に支持され、この状態で、図1に示すカセット50内に複数段に重ねて収納される。被加工物1は、切削装置10内においてフレーム5を保持することで搬送される。
【0013】
図1により切削装置10の説明を進めると、フレーム5に支持された複数の被加工物1が収納されたカセット50は、切削装置10の基台11に設けられたカセット台12に着脱可能に設置される。カセット台12は昇降するエレベータ式であって、カセット台12が上昇することで、被加工物1は基台11上の所定高さの搬入出位置に位置付けられる。その搬入出位置に位置付けられた被加工物1は、搬入出手段13によって搬出され、仮置き領域14に載置される。そして仮置き領域14において所定の搬送開始位置に位置決めされてから、旋回動作する第1搬送手段15Aによって、搬入出位置に位置付けられている(図1はその状態)保持テーブル16に搬入される。保持テーブル16に搬入された被加工物1は、保持テーブル16上に負圧吸引作用により粘着テープ4を介して表面側が露出した状態で吸引保持される。
【0014】
保持テーブル16は、テーブル台17上に回転可能に支持されており、テーブル台17は図示せぬ移動機構によってX方向に移動させられる。保持テーブル16は図示せぬ回転機構によって回転駆動され、被加工物1は保持テーブル16の回転によって自転させられる。保持テーブル16上に被加工物1が保持されると、保持テーブル16がX1方向に移動し、撮像手段を備えたアライメント手段18の直下の加工位置に位置付けられる。加工位置は透明なカバー24で覆われる加工室25内に設定され、この加工位置では、アライメント手段18によりパターンマッチング等の処理がなされて分割予定ライン2が検出される。
【0015】
加工位置の上方には、切削手段20の切削ブレード21が配設されている。アライメント手段18によって分割予定ライン2が検出されると、切削ブレード21と、検出された分割予定ライン2とのY方向の位置合わせがなされる。切削手段20の切削ブレード21はY方向と平行な回転軸の先端に固定されており、切削手段20は、Y方向に割り出し送りされ、かつ、昇降可能となっている。また、切削手段20には、図3に示すように、切削ブレード21と被加工物1とに向けて加工液を供給する加工液供給ノズル(加工液供給手段)22が設けられている。
【0016】
切削ブレード21と分割予定ライン2とのY方向の位置合わせがなされたら、切削手段20を下降させて切削ブレード21の刃先を被加工物1に対する所定の切り込み高さ位置に定め、テーブル台17をX方向に移動させて被加工物1を加工送りする。これにより、1本の分割予定ライン2に沿って切削ブレード21が相対的に移動しながら切り込んでいき、分割予定ライン2が切削加工されて切断される。次いで、分割予定ライン2間の間隔に応じて切削手段20をY方向に送る割り出し送りと、被加工物1のX方向への加工送り(X1,X2方向の往復移動)を繰り返して、X方向に延びる全ての分割予定ライン2を切断する。
【0017】
続いて、保持テーブル16を90°回転させて、切断済みの分割予定ライン2に直交する未切断側の分割予定ライン2をX方向と平行に設定し、この後、上記と同様にして分割予定ライン2を切削して切断する。これにより全ての分割予定ライン2が切断され、被加工物1は多数のデバイス3に分割される。多数のデバイス3は粘着テープ4に貼り付いたまま、円板状の被加工物1の形態が保たれている。なお、切削ブレード21を被加工物1に切り込ませて切削加工する際には、加工液供給ノズル22から加工液が供給され、切削によって生じる加工屑が被加工物1から除去されるとともに、切削ブレード21が被加工物1に接する加工点が冷却される。
【0018】
以上のようにして被加工物1が多数のデバイス3に分割されたら、テーブル台17がX2方向に移動して保持テーブル16が搬入出位置に戻り、次いで保持テーブル16による被加工物1の保持が解除される。続いて、第2搬送手段15Bによって被加工物1は洗浄手段19に搬入され、洗浄手段19で水洗された後、乾燥処理される。この後、被加工物1は第1搬送手段15Aによって仮置き領域14に載置されてから、搬入出手段13によってカセット50内に戻される。
【0019】
以上が1枚の被加工物1に対する切削処理のサイクルであり、このサイクルが、カセット50内の全ての被加工物1に対してなされる。
【0020】
(1−2)排気に関する構成
次に、上記加工室25内の雰囲気を排気する構成について説明する。
図3に示すように、加工室25の後側(図1でY2側)には隔壁26が設けられており、この隔壁26には、図3に示すように排気口27が形成されている。そしてこの排気口27には、排気路30の一端が連通されている。この排気路30の他端は、装置10内に設置されたファン31に連通しており、排気路30の他端側には、装置10の外部まで延びる排気管32が接続されている。排気路30の途中の加工室25とファン31との間には、排気を気体と液体とに分離する分離手段40が配設されている。ここで、排気路30を、加工室25と分離手段40との間と、分離手段40とファン31との間の2つに分け、前者を上流側排気路30A、後者を下流側排気路30Bとする。排気管32は、下流側排気路30Bの末端に接続されている。
【0021】
図4に示すように、分離手段40は、下方に向かうにしたがって縮径する逆円錐形状の円筒体であるチェンバー41を主体としている。このチェンバー41の上を向いた底面41a側の側面には、吸気口42が形成されている。図3に示すように、吸気口42には上流側排気路30Aが接続され、チェンバー41と加工室25とは上流側排気路30Aを介して連通されている。
【0022】
図5に示すように、吸気口42は、チェンバー41の接線方向に沿って開口しており、このため、吸気口42からチェンバー41内に気体が導入されると、チェンバー41内には、同図の矢印に示すようにチェンバー41の内周面に沿った渦巻き気流が発生するようになっている。また、チェンバー41の底面41aの中心には、気体排出口43が形成されている。図3に示すように、気体排出口43には下流側排気路30Bが接続され、チェンバー41とファン31とは下流側排気路30Bを介して連通されている。一方、チェンバー41の下を向いた頂点41b側には、廃液排出口44が形成されている。
【0023】
切削装置10においては、上記のように被加工物1を切削加工する際には、ファン31が稼働される。ファン31が稼働すると、加工室25内の雰囲気が、排気口27から上流側排気路30Aに吸入されて上流側排気路30Aを分離手段40に向かって流れ、分離手段40のチェンバー41内に吸気口42から導入される。そしてチェンバー41内を通って気体排出口43から下流側排気路30Bに排出され、排気管32を経て装置10外に排気される。図3の矢印は、加工室25からの排気の流れを示している。
【0024】
このようにして加工室25内の雰囲気が排気されることにより、加工室25内は清浄な状態になる。排気が通過する分離手段40においては、上記のようにチェンバー41内に渦巻き気流が発生し、すなわちチェンバー41内では排気が渦巻き状に回転してから上方の気体排出口43より下流側排気路30Bに排出されていく。
【0025】
加工室25内においては、切削手段20の加工液供給ノズル22から加工液が供給されており、その加工液は回転する切削ブレード21により跳ね上がられてミスト状に飛散する。このミスト状となった加工液は廃液であって、その中には加工屑等の異物が混じっている場合が多く、排気に混入した状態で排気口27から上流側排気路30Aを経て分離手段40のチェンバー41内に吸気口42から導入される。チェンバー41内に導入された廃液を含む排気は、チェンバー41内で渦巻き気流となって回転し、その最中に遠心分離作用で気体と液体、すなわち排気と廃液に分離される(図4参照)。そして、排気のみが気体排出口43から下流側排気路30Bに排出され、異物を含む廃液は廃液排出口44から落下して排出される。
【0026】
このように、廃液を含む加工室25内の雰囲気を排気しても、その排気が分離手段40を通過することによって気液分離がなされ、気体のみが気体排出口43から排出し、異物を含む廃液は廃液排出口44から排出される。したがって廃液はファン31を通らず、このため廃液に含まれる加工屑等の異物がファン31に付着するおそれが低減する。その結果、ファン31の吸引力の低下が防止される。
【0027】
なお、上記実施形態は本発明を切削装置に適用した例であるが、本発明の加工装置は切削装置に限らず、研削装置、研磨装置、あるいはバイト切削装置等の各種加工装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1…被加工物
10…切削装置(加工装置)
16…保持テーブル
20…加工手段
22…加工液供給ノズル(加工液供給手段)
25…加工室
30…排気路
40…分離手段
41…チェンバー
41a…底面
41b…頂点
42…吸気口
43…気体排出口
44…廃液排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルで保持された被加工物を加工する加工手段と、該加工手段と被加工物とに加工液を供給する加工液供給手段と、前記保持テーブルと前記加工手段と前記加工液供給手段とを囲繞する加工室と、一端が前記加工室に連通するとともに他端がファンに連通して該加工室内の雰囲気を排気する排気路と、を備える加工装置であって、
前記排気路上で前記加工室と前記ファンとの間に配設されて、該加工室から該排気路に流入した排気に含まれる廃液を気体から分離する分離手段を備え、
該分離手段は、
底面が上を向き頂点が下を向いた逆円錐形のチェンバーと、
該チェンバーの底面側の側面に形成された前記加工室に連通する吸気口と、
前記チェンバーの頂点側に形成された廃液排出口と、
前記チェンバーの底面に形成されて前記ファンに連通する気体排出口と、
を有し、
前記吸気口から吸入された排気によって前記チェンバー内に渦巻き気流が発生することで、該排気に含まれる廃液が前記廃液排出口を介して排出されるとともに 該排気は前記気体排出口を介して排出されること
を特徴とする加工装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−223855(P2012−223855A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93598(P2011−93598)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】