説明

加工装置

【課題】 音発生機構が特定の周波数の音を発しても制御手段に異常が生じることのない加工装置を提供することである。
【解決手段】 被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を加工する加工手段と、被加工物を搬送する搬送手段と、磁気ディスク装置を備えた制御手段と、異常を知らせる音発生手段と、少なくとも該制御手段及び該音発生手段が取り付けられた枠体とを備えた加工装置であって、該制御手段又は該音発生手段の少なくとも何れか一方が該枠体に伝達される音を遮断する弾性部材を介して取り付けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントローラ内に磁気ディスク装置を備えた研削装置等の加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されて表面に形成された半導体ウエーハは、研削装置によって裏面が研削されて所定の厚みに加工された後、ダイシング装置(切削装置)によって個々のデバイスに分割され、分割されたデバイスは携帯電話、パソコン等の各種電気機器に広く利用されている。
【0003】
研削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持されたウエーハを研削する研削ホイールを回転可能に支持する研削ユニットと、カセットからウエーハを搬出する搬出機構と、搬出されたウエーハの位置決めを行う位置決めユニットと、位置決めされたウエーハをチャックテーブルまで搬送する搬送機構と、研削されたウエーハを洗浄するスピンナ洗浄ユニットと、チャックテーブルからスピンナ洗浄ユニットまで研削済みのウエーハを搬送する第2の搬送機構と、磁気ディスク装置(ハードディスクドライブ)を備えた制御手段(コントローラ)と、異常を知らせる音発生機構と、各機構が取り付けられる枠体とから概ね構成されていて、ウエーハを所望の厚みに形成できる(例えば、特開2003−326458号公報)。
【0004】
音発生機構は例えば異常を知らせるためのブザーを含んでおり、各機構で異常が発生した際、肉声の10倍ほどの周波数(2〜3kHz)で比較的大きい音量の音を発してオペレータに注意を喚起し、異常を回避するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−326458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の研削装置等の加工装置では、異常を知らせるために音発生機構がブザー音等の音を発生した後に制御手段に異常が生じる場合があるという問題があった。この問題について検討したところ、ブザーの周波数が制御手段に備えられた磁気ディスク装置に共鳴して磁気ヘッドが適正に位置付けられないことに起因して制御手段に異常が生じることが判明した。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、音発生機構が特定の周波数の音を発しても制御手段に異常が生じることのない加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を加工する加工手段と、被加工物を搬送する搬送手段と、磁気ディスク装置を備えた制御手段と、異常を知らせる音発生手段と、少なくとも該制御手段及び該音発生手段が取り付けられた枠体とを備えた加工装置であって、該制御手段又は該音発生手段の少なくとも何れか一方が該枠体に伝達される音を遮断する弾性部材を介して取り付けられていることを特徴とする加工装置が提供される。
【0009】
好ましくは、音発生手段と制御手段との間に遮音板が介在されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の加工装置は、制御手段又は音発生手段が枠体に伝達される音を遮断する弾性部材を介在して取り付けられているので、音発生機構が発する音が枠体を伝達して制御手段の磁気ディスク装置に伝達されることがなく、音発生機構が音を発した後に制御手段に異常が生じるという問題を解消することができる。
【0011】
音発生機構と制御手段との間に遮蔽板を介在させることにより、空気を伝搬する音も遮蔽されより効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】研削装置の概略斜視図である。
【図2】本発明実施形態に係るブザー及びコントローラの取付構造を示す側面図である。
【図3】コントローラの取付構造を示す一部断面拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明の実施形態に係る研削装置2の斜視図が示されている。4は研削装置2のベースであり、ベース4の後方にはコラム6が立設されている。コラム6には、上下方向に伸びる一対のガイドレール(一本のみ図示)8が固定されている。
【0014】
この一対のガイドレール8に沿って研削ユニット(研削手段)10が上下方向に移動可能に装着されている。研削ユニット10は、そのハウジング20が一対のガイドレール8に沿って上下方向に移動する移動基台12に取り付けられている。
【0015】
研削ユニット10は、ハウジング20と、ハウジング20中に回転可能に収容された図示しないスピンドルと、スピンドルを回転駆動するサーボモータ22と、スピンドルの先端に固定された複数の研削砥石26を有する研削ホイール24を含んでいる。
【0016】
研削ユニット10は、研削ユニット10を一対の案内レール8に沿って上下方向に移動するボールねじ14とパルスモータ16とから構成される研削ユニット送り機構18を備えている。パルスモータ16をパルス駆動すると、ボールねじ14が回転し、移動基台12が上下方向に移動される。
【0017】
ベース4の中間部分にはチャックテーブル機構28が配設されており、チャックテーブル機構28は図示しないチャックテーブル移動機構によりY軸方向に移動される。30はチャックテーブル機構28をカバーする蛇腹である。
【0018】
チャックテーブル機構28は回転駆動されるチャックテーブル50を備えている。チャックテーブル50は、枠体50aと、枠体50aの上面とその保持面が面一に形成されたポーラスセラミックス等の吸引部50bとから構成される。
【0019】
ベース4の前側部分には第1のウエーハカセット32と、第2のウエーハカセット34と、ウエーハ搬送ロボット36と、複数の位置決めピン40を有する位置決め機構38と、ウエーハ搬入機構(ローディングアーム)42と、ウエーハ搬出機構(アンローディングアーム)44と、スピンナ洗浄ユニット46が配設されている。
【0020】
また、ベース4の概略中央部には、チャックテーブル50を洗浄する洗浄水噴射ノズル48が設けられている。この洗浄水噴射ノズル48は、チャックテーブル50が装置手前側のウエーハ搬入・搬出領域に位置付けられた状態において、チャックテーブル50に向かって洗浄水を噴射する。
【0021】
研削装置2のベース4内には、研削装置の各種機構及びユニットを制御するコントローラ(制御手段)52が配設されている。コントローラ52は研削装置2の制御データを格納する磁気ディスク装置(ハードディスクドライブ)を備えている。ベース4の前側には、研削装置2の各機構及びユニットで異常が発生した際に比較的大きい音量の音を発してオペレータに注意を喚起するブザー54が配設されている。
【0022】
図2を参照すると、コントローラ52及びブザー54の取付構造が概略的に示されている。コントローラ52のケーシング56が弾性取付構造60を介して枠体58に取り付けられており、ブザー54を支持する支持プレート62が弾性取付構造64を介して枠体58に取り付けられている。ブザー54とコントローラ52との間には、枠体58に取り付けられた遮蔽板66が介在されている。
【0023】
図3を参照すると、コントローラ52の弾性取付構造60の詳細が示されている。コントローラ52のケーシング56は一体的に形成されたフランジ56aを有している。フランジ56aには取付穴57が形成されている。枠体58の取付穴59中にはゴムプッシュ等の弾性部材68が圧入されている。弾性部材68はフランジ56aの取付穴57と概略同一内径の取付穴69を有している。
【0024】
コントローラ52を枠体58に取り付けるには、弾性部材68の両側にワッシャー74,76を配設して、ボルト70を弾性部材68の取付穴69及びフランジ56aの取付穴57に挿入してナット72をボルト70に螺合して締め付けることにより、コントローラ52が枠体58に弾性的に固定される。
【0025】
詳細な取付構造は省略するが、ブザー54の弾性取付構造もコントローラ52の弾性取付構造と概略同様であり、ブザー54が発生した比較的大きい音量のブザー音に起因する振動はゴムプッシュ等の弾性部材によりある程度吸収されて枠体58に伝達される。
【0026】
本実施形態によると、コントローラ52のケーシング56及びブザー54が枠体58に伝達される音を遮断する弾性部材68を介して枠体58に弾性的に取り付けられているので、ブザー54が発するブザー音に起因する振動がコントローラ52に伝達されるまでに減衰される。
【0027】
よって、ブザー音に共鳴してコントローラ52内の磁気ディスク装置が共鳴して振動することがなく、磁気ディスク装置の磁気ヘッドを常に適正な位置に位置付けることができ、ブザー音に起因するコントローラ52の異常発生を回避することができる。
【0028】
また、ブザー54とコントローラ52との間に遮蔽板66が介在されているので、この遮蔽板により空気を伝搬するブザー音もある程度遮蔽され、より効果的である。
【0029】
上述した実施形態では、コントローラ52及びブザー54も枠体58に弾性取付構造62,64を介して取り付けられているが、コントローラ52又はブザー54の少なくとも何れか一方を弾性的に枠体58に取り付けることにより、ブザー音に起因するコントローラ52の異常発生を抑制することができる。
【0030】
上述した実施形態では、本発明を研削装置に適用した例について説明したが、本発明の要旨とする弾性取付構造はコントローラに磁気ディスク装置を採用する他の加工装置にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
2 研削装置
10 研削ユニット
24 研削ホイール
26 研削砥石
50 チャックテーブル
52 コントローラ(制御手段)
54 ブザー
56 ケーシング
58 枠体
60,64 弾性取付構造
66 遮蔽板
68 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を加工する加工手段と、被加工物を搬送する搬送手段と、磁気ディスク装置を備えた制御手段と、異常を知らせる音発生手段と、少なくとも該制御手段及び該音発生手段が取り付けられた枠体とを備えた加工装置であって、
該制御手段又は該音発生手段の少なくとも何れか一方が該枠体に伝達される音を遮断する弾性部材を介して取り付けられていることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
該音発生手段と該制御手段との間に遮音板が介在されている請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
該加工手段は被加工物を研削する研削ホイールを回転可能に支持する研削手段から構成される請求項1又は2記載の加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−71223(P2013−71223A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213281(P2011−213281)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】