説明

加工適性に優れた粘着シート

【課題】打ち抜き適性に優れ、かつ経時での被着体からの剥がれが生じ難い粘着シートを提供することを目的とする。
【解決手段】基材層、粘着剤層、剥離シートの順に積層された粘着シートであって、該粘着シートから前記剥離シートを剥離させ、前記基材層及び前記粘着剤層からなる粘着ラベルとし、この粘着ラベルの前記粘着剤層をポリプロピレン板に貼着し、この粘着ラベルに0.98N/25mmの荷重を30分間載荷させた時の前記粘着ラベルの剥がれ距離が50mm以内であり、且つ、前記粘着ラベルをステンレス板に貼着し、−5℃〜10℃のいずれかの温度にてJIS−Z0237に記載の180度引き剥がし粘着力測定試験を行った場合、前記粘着ラベルが、該試験から得られる粘着力−引き剥がし時間曲線において、最大粘着力から30〜100%の振幅を有するスリップスティック現象を示して剥離することを特徴とする粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートの加工段階での打ち抜き適性に優れ、被着体から剥がれにくい粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、商業用から家庭用まで広範囲にわたってラベル、ステッカー等の形に加工して使用されている。この粘着シートから粘着ラベルを製造し、被着体である製品やその容器に、この粘着ラベルを貼付する。
【0003】
その工程は、まず粘着シートの基材表面に目的に応じた印刷を行い、次いで、粘着シートを断裁したり、もしくは表面の基材と粘着剤からなる層までダイカット刃を入れて切断する行為、いわゆる“ハーフカット”により所望の形状にラベルを打ち抜く(以下、「打ち抜き」という。)。さらに、ハーフカットした際には、必要に応じて、この打ち抜きにより生じる不必要部分(基材に印刷が施されておらず、カス部分となる基材層及び粘着剤層)を剥き取った後、一旦この粘着シートをロール状に巻き直す。
そして、自動ラベル貼付機(オートラベラー)を用いて、巻き取った粘着シート上に残っている粘着ラベルを、剥離シートより引き剥がし、被着体に貼り付けている。
このとき、粘着シートの打ち抜き適性が劣ると、ダイカット刃に粘着剤が付着してしまう。その結果、粘着シートを断裁する場合には、ダイカット刃を押し込んだり引き抜いたりする際に、断裁した粘着シートの側面に粘着剤が付着してしまい、汚れの原因となったり、粘着シートを何重にも重ねて断裁した際には、粘着シートの側面が粘着剤で固着され、重ねられた粘着シートを1枚ずつ引き剥がす作業効率を低下させてしまう。
また、粘着シートをハーフカットする場合には、ダイカット刃を引き抜く際に、粘着剤が糸を曳き、その糸を曳いた粘着剤がラベル表面を汚染してしまう。さらに、ハーフカットした粘着シートをロール状に巻き取った際には、ラベル表面に付着した粘着剤が重ねられた剥離紙に付着し、オートラベラーでの貼付工程において、粘着ラベルが剥離シートから剥がれず被着体に貼れない問題がある。
【0004】
そのため、粘着ラベルの加工段階にあっては、ラベルを打ち抜く際の打ち抜き適性に優れることが非常に重要となっている。
【0005】
そこで、粘着剤の糸曳きを減少し、打ち抜き適性を改善した粘着シートとして、粘着剤の応力−歪み曲線において、400%歪み時の応力値が7N/cm以上であることを特徴とする粘着シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、打ち抜き適性とカス取り適性を改善した粘着シートとして、粘着剤の応力−歪み曲線において、100%歪み時の応力値が3N/cm以上であることを特徴とする粘着シートが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−286458号公報
【特許文献2】特開2003−286459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に係る粘着シートだけでは、ラベルを打ち抜く際の打ち抜き適性を大幅に向上させることが難しい場合もあった。また、打ち抜き適性は満足しても、被着体に貼着した粘着ラベルが経時で剥がれる場合があった。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、打ち抜き適性に優れると同時に、経時での被着体からの剥がれが生じ難い粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため、
基材層、粘着剤層、剥離シートの順に積層された粘着シートであって、
該粘着シートから前記剥離シートを剥離させ、前記基材層及び前記粘着剤層からなる粘着ラベルとし、
この粘着ラベルの前記粘着剤層をポリプロピレン板に貼着し、この粘着ラベルに0.98N/25mmの荷重を30分間載荷させた時の前記粘着ラベルの剥がれ距離が50mm以内であり、
且つ、前記粘着ラベルをステンレス板に貼着し、−5℃〜10℃のいずれかの温度にてJIS−Z0237に記載の180度引き剥がし粘着力測定試験を行った場合、
前記粘着ラベルが、該試験から得られる粘着力−引き剥がし時間曲線において、最大粘着力から30〜100%の振幅を有するスリップスティック現象を示して剥離することを特徴とする粘着シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粘着シートは、打ち抜き適性に優れ、経時での被着体からの剥がれが生じ難いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の粘着シートは、基材、粘着剤、剥離シートから構成されている。
この基材としては、フィルム、不織布、紙等が挙げられる。具体的には、フィルムの材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS,ポリカーボネート、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリビニルアルコール、セロファン等が挙げられる。また、不織布の材質としては、パルプ、レーヨン、マニラ麻、アクリロニトリル、ナイロン、ポリエステル等が挙げられる。また、紙としては、上質紙、樹脂コート紙等が挙げられる。
また、基材表面の粘着剤を積層する面には、コロナ処理を行ったり、アンカーコート剤を塗布してもよい。このような処理を行うことにより、基材層と粘着剤層の密着性が向上し、粘着剤が基材から脱離しにくくなり、打ち抜き適性が向上する。一方、基材表面の印刷する面にも、コロナ処理を行ったり、アンカーコート剤を塗布し、印刷インキの密着性を向上させても良い。
【0012】
この粘着剤としては、ポリマーの種類で、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ビニルエーテル系等が挙げられる。また、粘着剤の形態として、溶剤系、エマルジョン型粘着剤、水溶性粘着剤等の水系、ホットメルト型粘着剤、UV硬化型粘着剤、EB硬化型粘着剤等の無溶剤系等を用いることができる。
そのなかでも、炭素数2〜14(メタ)アルキルアクリレートと極性基含有ビニルモノマーを必須成分としてなるアクリル系共重合体と、粘着付与樹脂とを含有するエマルジョン型アクリル系粘着剤組成物であることが好ましい。
【0013】
このような炭素数2〜14の(メタ)アルキルアクリレートとして、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート等のモノマーが挙げられる。これらのモノマーは単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0014】
そのなかでも、得られる粘着剤組成物の粘着力と凝集力とのバランスを考慮して、炭素数2〜14の(メタ)アルキルアクリレートとして、n−ブチルアクリレート又は2−エチルヘキシルアクリレートが好ましく、アクリル系共重合体中にこれを50質量%以上含むものが好ましく、70質量%以上含むものが最も好ましい。
【0015】
また、極性基含有ビニルモノマーとして、酢酸ビニル、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、カルボキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等を用いることができる。
【0016】
そのなかでも、極性基含有ビニルモノマーとして、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましく、アクリル系共重合体中にこれを0.1〜10質量%含むものが好ましく、1〜10質量%含むものが最も好ましい。含有量を0.1〜10質量%とするのは、0.1質量%未満では打ち抜き適性や接着力が十分でなく、10質量%を越えると初期接着力が低下するからである。
【0017】
更に、本発明で使用するエマルジョン型アクリル系粘着剤用樹脂としては、前記の極性基含有ビニルモノマー以外に、単独重合時のガラス転移点が80℃以上のモノマーを使用することが好ましい。そのようなモノマーとしては、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、スチレン、イソボルニルメタクリレート、フェニルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、メチルメタクリレート等がある。中でもスチレン又はメチルメタクリレートを使用することが好ましい。これらの使用量は、全モノマーに対して、5〜25%使用するのが好ましく、10〜20%使用するのがより好ましい。
【0018】
また、本発明で用いる粘着付与樹脂は、特にポリオレフィン(ポリエチレンやポリプロピレン等)のような低極性被着体に対する粘着力を高め、耐剥がれ性を高めるために使用されるものであり、ロジンやロジンのエステル化合物等のロジン系樹脂;ジテルペン重合体やα−ピネン−フェノール共重合体等のテルペン系樹脂;脂肪族系(C5系)や芳香族系(C9)等の石油樹脂;その他、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。そのなかでも、重合ロジンエステルが好ましく、さらに軟化点145℃以上であるものが好ましく、軟化点160℃〜170℃であることがより好ましい。また、アクリル系共重合体100質量部に対して、これを3〜30質量部含有するのが好ましく、5〜25質量部含有するのが最も好ましい。上記範囲内にある重合ロジンエステルを選定することにより、耐剥がれ性と初期接着性を一層両立し易くなる。
【0019】
また、本発明の粘着シートを構成する粘着剤層は、動的粘弾性スペクトルの損失正接のピークを示す温度が−5℃〜5℃であることが好ましい。動的粘弾性の測定においては、粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:アレス2KSTD)を用いて、同試験機の測定部である平行円盤の間に試験片を挟み込み、周波数1Hzで−50℃から150℃までの貯蔵弾性率(G')と損失弾性率(G”)を測定する。試験片は厚み0.5〜2.5mmの粘着剤を単独で平行円盤の間に挟んでも良いが、基材と粘着剤の積層体を幾重にも重ねて平行円盤の間に挟んでも良い。なお、後者の場合は粘着剤のみの厚さが前記の範囲となるように調整する。粘着剤としての厚さを上記の範囲に調整すると、中間に基材が挟まっていても粘着剤の動的粘弾性スペクトルに影響はないことを本発明者等は確認している。
【0020】
本発明で用いる剥離シートとしては、クラフト紙、グラシン紙及び上質紙等の紙、それらの紙にポリビニルアルコール等の合成樹脂もしくはクレー等を片面もしくは両面にコーティングした紙、又はそれらの紙にポリエチレン樹脂などを片面もしくは両面にラミネートした紙、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びポリプロピレン等のプラスチックフィルムに、フッソ樹脂やシリコーン樹脂等の剥離剤を片面もしくは両面にコーティングしたものなどが挙げられる。
【0021】
本発明の粘着シートは、この粘着シートから基材又は剥離シートを剥離させ、基材層及び粘着剤層からなる粘着ラベルとし、この粘着ラベルの粘着剤層をポリプロピレン板に接着させ、この接着させた粘着ラベルに0.98N/25mmの荷重を30分間載荷させた時、この接着させた粘着ラベルの剥がれ距離が、50mm以内、好ましくは20mm以内、最も好ましくは5mm以内のものである。
【0022】
この粘着ラベルの剥がれ距離試験は、温度23±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気中で、化学的あるいは物理的な表面処理を施していない平滑なポリプロピレン系被着体である試験板に、幅25mmの粘着ラベルをJIS Z 0237に準拠して、圧着速さ5mm/s、圧着回数1往復で試験片を貼り1時間放置した後、その粘着ラベルの基材端部(遊び部分)に0.98Nの定荷重を試験板から90度方向に載荷し、30分間放置した時の粘着ラベルの剥がれた距離を測定することにより規定される。
【0023】
この剥がれ距離が50mmより小さいと、粘着ラベルが被着体から剥がれにくく、長時間にわたり高い接着性を有する。一方、この剥がれ距離が50mmを超えるものは、被着体から剥がれやすい。
【0024】
また、本発明の粘着シートは、上述した高い接着性を有すると共に、−5℃〜10℃、好ましくは0℃〜10℃、さらに好ましくは5℃〜10℃のいずれかの温度環境下におけるJIS−Z0237に記載の試験板に対する180度引き剥がし粘着力測定試験条件で測定した時、その粘着力−引き剥がし時間曲線において、最大粘着力から30〜100%、好ましくは60〜100%、最も好ましくは80〜100%の振幅を有するスリップスティック現象で剥離するものである。なお、上記のスリップスティック現象の有無は、ラベルを剥がし始めてから剥離長さが15%に達した位置から85%に達した位置までに相当する粘着力−引き剥がし時間曲線における振幅から判断する。
【0025】
一般的に、粘着剤は、ある温度を境にしてそれ以下の温度域ではスリップスティック現象により剥離するようになる。通常、粘着剤は50℃以下の温度域にスリップスティック現象により剥離する上限温度を有しており、その上限温度以下の温度域では、常にスリップスティック現象で剥離することになる。本発明の粘着シートは−5℃〜10℃の温度範囲でスリップスティック現象により剥離する。つまり、−5℃以上にスリップスティック現象により剥離する上限温度を有しているものである。−5℃〜10℃の温度範囲ではスリップスティック現象は起きないが、−5℃より低温になるとスリップスティック現象を示す粘着剤は打ち抜き特性が不良である。打ち抜き加工を行う環境は、通常は室温付近であるため、−5℃より低温域のみでスリップスティック現象を示す粘着剤は、室温での加工時に金属の刃に付き易く、離れ難いためであると考えられる。また、本発明の粘着シートは、上記温度範囲内でスリップスティック現象により剥離するものであれば良いが、−5℃〜10℃でスリップスティック現象により剥離し、更に10℃を超えてスリップスティック現象により剥離するものであっても良い。しかしながら、通常は、10℃を超えてもスリップスティック現象により剥離する現象が発生するものは、所期の初期接着力が得られ難いので、−5℃〜10℃の温度範囲内にスリップスティック現象により剥離する上限温度を有する粘着シートであることが好ましい。
【0026】
この−5℃〜10℃のいずれかの温度環境下における180度引き剥がし粘着力測定試験は、JIS−Z0237に記載の試験板に対する180度引き剥がし粘着力測定試験に準拠する条件で行う。まず、設定温度±2℃、相対湿度0〜10%の雰囲気中で、JIS−Z0237に記載の方法により処理したステンレス板に、圧着速さ5mm/s、圧着回数1往復で試験片を貼り、1時間静置後、その粘着ラベルの基材端部(遊び部分)を180度に折り返し、300mm/分の速さで連続して剥離させた時の引き剥がし時間に対する180度引き剥がし粘着力を測定するものである。
【0027】
図1に、本発明の粘着シートを、この180度引き剥がし粘着力測定試験で測定した時の粘着力−引き剥がし時間曲線のグラフを示す。図1のように、粘着力がある一定の最大値を一定時間保持した後、急激に粘着力が減少し、その後直ちに粘着力が元に戻るのを何回か繰り返しながら剥離していく現象を“スリップスティック”という。この時、粘着力の振幅は、上述したように最大粘着力に対して30〜100%、好ましくは60〜100%、最も好ましくは80〜100%である。振幅が30%未満の場合は、連続的に剥離している状態であり、もはや“スリップスティック”による剥離ではない。
また、最小粘着力を示した時間から次の最小粘着力を示す時間までの周期は、0.2〜12秒であるのが好ましく、0.5〜6秒であるのがより好ましい。
【0028】
打ち抜き適性を向上させるためには、粘着剤が打ち抜かれる非常に短時間において、ダイカット刃等の金属に対して接着し難い粘着剤を選定することが重要である。本評価方法では、ステンレス板に対する粘着力を評価基準に選定することで、ダイカット刃等の金属への接着性を評価し、更に、−5℃〜10℃の環境下で測定することにより、高速域での挙動に近い状態で評価しているため、実際の打ち抜き適性との強い相関が見られたものと考えられる。粘着力の評価基準として、スリップスティック現象により剥離することが打ち抜き適性を良好に保つのは、切断工程にて金属の刃に一度接着した粘着剤が、容易に剥がれ易いことを示しているものと考えられる。
【0029】
したがって、上記の評価方法は、20℃±10℃程度の環境下で、金属刃により高速で打ち抜き加工をする際の金属刃に対する付着性を適切に評価する方法として適している。つまり、上記の評価方法は、基材層、粘着剤層、剥離シートの順に積層された粘着シートの金属刃による打ち抜き適性を評価する方法であって、該粘着シートから前記剥離シートを剥離させ、前記基材層及び前記粘着剤層からなる粘着ラベルとし、前記粘着ラベルをステンレス板に貼着し、−5℃〜10℃の温度にてJIS−Z0237に記載の180度引き剥がし粘着力測定試験を行うことを特徴とする粘着シートの打ち抜き適性を評価する方法である。この評価方法により、該試験から得られる粘着力−引き剥がし時間曲線において、粘着ラベルが、最大粘着力から30〜100%の振幅を有するスリップスティック現象を示して剥離するか否かを確認して、加工適性の良否を判断する。
【0030】
また、前記の180度引き剥がし粘着力測定試験における最大粘着力は、−5℃〜10℃のいずれかの温度にて1〜10N/25mmであることが好ましい。1N/25mm以上とすることにより初期接着性を一層向上させることができ、10N/25mm以内とすることにより打ち抜き適性をより向上させることができる。
【0031】
本発明の粘着シートは、例えば、炭素数2〜14の(メタ)アルキルアクリレートと、極性基含有ビニルモノマーをエマルジョンにより重合させたアクリル系共重合体に、粘着付与樹脂を添加した粘着剤組成物からなる粘着剤を、剥離シートに塗工し、乾燥、熱硬化、電離放射線硬化等による処理を行い、基材を貼り合わせる方法で得られる。
また、上記粘着剤を先に基材に塗工し、乾燥、熱硬化、電離放射線硬化等による処理を行い、剥離シートを貼り合わせる方法でも得られる。また、基材層と粘着剤層の密着性を向上させるために、高温下で貼り合わせを行ってもよい。
【0032】
この時、塗工する粘着剤の厚みは、乾燥後の厚みで5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましく、12〜22μmであることが一層好ましい。粘着剤の厚みを上記範囲に設定することにより、接着性と打ち抜き適性の両立を図りやすくなる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。本発明は、下記実施例に何ら制限されるものではない。
【0034】
[実施例1]
〈粘着剤の合成〉
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に、脱イオン水270質量部を入れ、窒素を吹き込みながら75℃まで昇温した。
【0035】
撹拌下、ラテムルE−118B(花王社製)を0.8質量部、過硫酸カリウムを0.1質量部添加した。
続いて2−エチルヘキシルアクリレートが312質量部、スチレンが40質量部、メチルアクリレートが20質量部、メチルメタクリレートが20質量部、メタクリル酸が8質量部、N−メチロールアクリルアミドが2質量部からなる単量体混合物に、ラテムルE−118Bを32質量部と脱イオン水を80質量部加えて乳化させたモノマープレエマルジョンの一部(4質量部)を添加し、反応容器温度を75℃に保ちながら60分間重合させた。
【0036】
引き続き、反応容器内温度を75℃に保ちながら、残りのモノマープレエマルジョン509質量部と過硫酸カリウムの水溶液(有効成分1質量%)60質量部を、各々別の滴下漏斗を使用して、反応容器内温度を75℃に保ちながら240分間かけて滴下して重合させた。滴下終了後、同温度にて180分間撹拌し、共重合体を冷却した。
【0037】
次いで、この共重合体に、粘着付与樹脂としてスーパーエステルE−650(荒川化学社製)を添加し(固形分比で、共重合体/粘着付与樹脂=100/20)、60分間撹拌した。その後、pHが8.0になるようにアンモニア水(有効成分10質量%)でこれらを調製し、100メッシュ金網で濾過して、粘着剤を得た。
【0038】
〈粘着シートの作成〉
剥離シート(64GPS、王子製紙社製)に、乾燥後の厚みが23μmとなるように上記粘着剤を塗工し、熱風乾燥機を用いて90℃で3分間乾燥させ、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム50μm(エステルA4100、東洋紡社製)を貼り合わせ、23℃で2日間熟成することにより、粘着シートを作成した。
【0039】
〈10℃、5℃、0℃、−5℃、−10℃におけるステンレス板に対する180度引き剥がし粘着力の測定〉
本発明の粘着シートの10℃、5℃、0℃、−5℃、−10℃におけるステンレス被着体(板)に対する180度引き剥がし粘着力の測定は、JIS−Z0237に準じた下記に記載した測定方法で行った。
温度5±2℃、相対湿度0〜10%の雰囲気中で、幅25mm、長さ100mmに切断した粘着ラベルを、JIS−Z0237に記載の方法により処理したステンレス板に、2kgローラーで圧着速さ5mm/s、圧着回数1往復で試験片を貼付した。
次いで、同環境下で1時間放置後、引っ張り試験機(株式会社エーアンドディ社製 RTA100)にて、300mm/分の速さで、180度引き剥がし粘着力を測定した。同様にして、温度10±2℃、温度0±2℃、温度−5±2℃、および温度−10±2℃の環境下で粘着力を測定した。
測定時に、スリップスティック現象が発生する場合を○、発生しない(最大粘着力に対して振幅が30%未満)場合を×と評価した。
【0040】
〈ポリプロピレン板に対する定荷重剥離測定〉
化学的あるいは物理的な表面処理を施していない平滑な表面を有するポリプロピレン板に対し、幅25mm、長さ250mmに切断した粘着ラベルを、23℃、50%の環境下、2kgのローラーで圧着速さ5mm/s、圧着回数1往復で貼付した。
次いで、同環境下で1時間放置後、粘着ラベルの基材端部に0.98N(100gf)の定荷重を90度方向にかけて、30分間放置後の粘着ラベルの剥離距離を測定した。
【0041】
〈打ち抜き適性の評価〉
粘着シートの打ち抜き適性を調べるため、シール印刷加工機(OPM−W150、恩田製作所製)にて、上記粘着シートを20mm×20mmの正方形状にハーフカットした後、ロール形状に巻き取った。その後、巻き取ったロールを巻きほぐし、ラベル表面に付着した粘着剤に起因する剥離時のバリバリというブロッキング音の有無により、打ち抜き適性を評価した。評価基準としては、剥離音がしない場合を○、若干剥離音が確認されるが実用上問題のないレベルである場合を○’、剥離音がする場合を×とした。
【0042】
〈ラベルの接着性の評価〉
粘着ラベルがポリオレフィン系被着体から剥がれにくいか否かの接着性を調べるため、上記粘着ラベルを、12mmφのポリプロピレン製円柱に巻き付け、23℃、50%の環境下、1日放置し、ラベルの浮きを評価した。
浮きが発生していない場合を○、発生した場合を×とした。
【0043】
以下、表1にスリップスティックの有無の結果、定荷重剥離測定の結果、打ち抜き適性の評価結果、ラベルの接着性の評価結果を、各々示す。
【0044】
【表1】

【0045】
[実施例2]
粘着剤の合成において、粘着付与樹脂/スーパーエステルE−650(荒川化学社製)の添加量を固形分比で、共重合体/粘着付与樹脂=100/4.5とする以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0046】
[比較例1]
〈粘着剤の合成〉
攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレートを80.9質量部、2−エチルヘキシルアクリレートを12質量部、酢酸ビニルを5質量部、アクリル酸を2質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレートを0.1質量部と、重合触媒としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.2質量部とを酢酸エチルの100質量部に溶解し、80℃で8時間重合して、質量平均分子量70万のアクリル共重合体溶液を得た。
【0047】
次に、前記アクリル共重合体溶液の固形分100質量部に対して、特殊ロジンエステル系粘着付与樹脂(荒川化学工業社製「スーパーエステルA100」)を8質量部及びロジンエステル系粘着付与樹脂(荒川化学工業社製「ペンセルD135」)を12質量部添加し、酢酸エチルを加えて均一に混合して、固形分45質量%の粘着剤主剤を得た。
この粘着剤主剤の100質量部に、イソシアネート系架橋剤(大日本インキ化学工業社製「NC−40」)を1.2質量部添加し、15分間攪拌して粘着剤を得た。
【0048】
粘着剤の合成以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作成した。この粘着シートの評価は、実施例1と同様の方法で行った。
スリップスティックの有無の結果、定荷重剥離測定の結果、打ち抜き適性の評価結果、ラベルの接着性の評価結果を、表1に示す。
【0049】
[比較例2]
〈粘着剤の合成〉
攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、2−エチルヘキシルアクリレートを75質量部、酢酸ビニルを5質量部、メチルメタクリレートを15質量部、アクリル酸を4.5質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレートを0.5質量部と、重合触媒としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.2質量部とを酢酸エチルの100質量部に溶解し、80℃で8時間重合して、質量平均分子量70万のアクリル共重合体溶液を得た。
次に、前記アクリル共重合体溶液の固形分100質量部に対して、特殊ロジンエステル系粘着付与樹脂(荒川化学工業社製「スーパーエステルA100」)を20質量部添加し、酢酸エチルを加えて均一に混合して、固形分45質量%の粘着剤主剤を得た。
この粘着剤主剤の100質量部に、イソシアネート系架橋剤(大日本インキ化学工業社製「NC−40」)を3.6質量部添加し、15分間攪拌して粘着剤を得た。
粘着剤の合成以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作成した。この粘着シートの評価は、実施例1と同様の方法で行った。
スリップスティックの有無の結果、定荷重剥離測定の結果、打ち抜き適性の評価結果、ラベルの接着性の評価結果を、表1に示す。
【0050】
実施例1、2と比較例1〜2とを比較すると、実施例1、2の粘着シートは、スリップスティック現象、定荷重剥離測定での剥がれ長さ、打ち抜き適性、ラベルの接着性のいずれの評価結果も良好であった。それに対して、比較例1及び2の粘着シートは、この4つの評価基準のいずれかが劣るものであった。
【0051】
以上の結果から、本発明の粘着シートは、スリップスティック現象で剥離するものであり、打ち抜き適性に優れ、かつ一端貼着された後は剥がれにくい、高い接着性を有するものであることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の粘着シートを、JIS−Z0237に記載の試験板に対する180度引き剥がし粘着力測定試験条件で測定した時の粘着力−引き剥がし時間曲線のグラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、粘着剤層、剥離シートの順に積層された粘着シートであって、
該粘着シートから前記剥離シートを剥離させ、前記基材層及び前記粘着剤層からなる粘着ラベルとし、
この粘着ラベルの前記粘着剤層をポリプロピレン板に貼着し、この粘着ラベルに0.98N/25mmの荷重を30分間載荷させた時の前記粘着ラベルの剥がれ距離が50mm以内であり、
且つ、前記粘着ラベルをステンレス板に貼着し、−5℃〜10℃のいずれかの温度にてJIS−Z0237に記載の180度引き剥がし粘着力測定試験を行った場合、
前記粘着ラベルが、該試験から得られる粘着力−引き剥がし時間曲線において、最大粘着力から30〜100%の振幅を有するスリップスティック現象を示して剥離することを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記180度引き剥がし粘着力測定試験における最大粘着力が、−5℃〜10℃のいずれかの温度にて1〜10N/25mmである請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層が、炭素数2〜14の(メタ)アルキルアクリレートと極性基含有ビニルモノマーを必須成分として重合させたアクリル系共重合体と、粘着付与樹脂とを含有するエマルジョン型アクリル系粘着剤組成物からなり、
該粘着付与樹脂が軟化点145℃以上の重合ロジンエステルを含有し、
且つ前記粘着剤層中の該粘着付与樹脂の含有量が、該アクリル共重合体100質量部に対して5〜25質量部である請求項1または2記載の粘着シート。

【図1】
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【公開番号】特開2006−307144(P2006−307144A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305653(P2005−305653)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】