説明

加工魚卵用冷凍劣化防止剤

【課題】塩タラコ,辛子メンタイコ等の加工魚卵の冷凍劣化及びタンパク質の変性を抑制する冷凍劣化防止剤を提供する。
【解決手段】この発明の加工魚卵用冷凍劣化防止剤は、生物を灰化して抽出した多種類の水溶性ミネラルよりなり、生物の灰化物に水を加えて抽出した液状ミネラルのほか、液状ミネラルより水分を除去したパウダー状のミネラルである。
また上記水溶性ミネラルは多種類の生物を予め種類毎に灰化したものを混合又は調合した後抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塩タラコ,辛子メンタイコ等の加工魚卵の冷凍劣化及びタンパク質の変性を抑制するための冷凍劣化防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、辛子メンタイコ等の加工魚卵の加工工程中に添加する生物ミネラルよりなる殺菌,抗菌,又は発色等の品質保持用の食品処理剤として本出願人の提案に係る特許文献1が知られているほか、冷凍前又は冷凍保存中の魚介類にメタリン酸ナトリウム等の食品添加物を添加して加圧処理する処理方法が特許文献2により公知である。またジェランガム等の多糖類によって魚卵に膜を形成し、魚卵の外観や食感等の品質を保持する魚卵用冷凍劣化防止剤が特許文献3により公知である。
【0003】
【特許文献1】特開2004−49148号公報(第10頁)
【特許文献2】特開平5−292877号公報
【特許文献3】特開2004−41065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記特許文献1に示される処理剤はタラコの塩漬け加工に対して殺菌・抗菌効果や発色効果がある点は開示されているものの、魚卵を冷凍保存した際に生ずる組織の劣化やタンパク質の変性の抑制に関しては開示又は示唆されていない。また特許文献2においては加圧工程や高圧の加圧設備が必要であるのでコスト高になるという問題点があった。さらに特許文献3は魚卵表面に直接、魚卵用品質保持剤を被覆させる必要があることから、魚卵を覆う膜(卵嚢)を除去して冷凍劣化防止剤に浸漬しなければならない。そのため、特に卵嚢を残したまま加工する必要のあるタラコ製品にはこの技術は不向きであるほか、タラコをはじめとする魚卵製品にこの冷凍劣化防止剤を用いる場合には、膜を除去した後、この冷凍劣化防止剤に浸漬するための工程を新たに加えなければ処理できないという問題点があった。
【0005】
この発明は、本願出願人の開発に係る野生植物を中心とした生物より抽出する生物ミネラルの、人体への安全性やミネラル補給という有用な性質を活かした、主に加工魚卵用冷凍劣化防止剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の加工魚卵用冷凍劣化防止剤は、第1に、生物を灰化して抽出した多種類の水溶性ミネラルよりなることを特徴としている。
【0007】
第2に、水溶性ミネラルが生物の灰化物に水を加えて抽出した液状ミネラルであることを特徴としている。
【0008】
第3に、水溶性ミネラルが液状ミネラルより水分を除去したパウダー状のミネラルであることを特徴としている。
【0009】
第4に、水溶性ミネラルが多種類の生物より抽出したミネラルであることを特徴としている。
【0010】
第5に、水溶性ミネラルが多種類の生物を予め種類毎に灰化したものを混合又は調合した後抽出したミネラルであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
以上のように構成される加工魚卵用冷凍劣化防止剤は、元来動物が摂取を必要とする生物体中に含有されるミネラルであり、急性毒性、変異原性試験など種々の安全性に関する試験をおこない、その安全性を確認している。この生物ミネラルを加工用魚卵に冷凍劣化防止剤として添加するだけで卵細胞が強化されるため、魚卵を凍結または解凍した場合に生ずる卵組織の劣化、特にタンパク質の劣化が抑制でき、日持の良い加工魚卵が製造できる。また、卵細胞が強化されるため冷凍・解凍後に生じる旨味成分やミネラル分の流出を抑制することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の冷凍劣化防止剤の主成分は多種類でそれぞれが生物体中に微量に存在する元素からなる主として野生植物由来のミネラル溶液または粉末である。
【0013】
魚介類等の動物や海草・海藻類,陸上の植物を灰化して多種類のミネラルを抽出する方法は、本発明者等の提案による特許第3084687号に示されるもののほか、古くから特開昭51−121562号,特公昭61−8721号,特公平6−92273号等に示される方法が知られている。
【0014】
また上記のように灰化抽出した生物ミネラルは加熱によって気化又は昇華された元素を除く、原材料が含有するすべてのミネラルを含み、さらに難溶性又は不溶性のミネラルを含む総合ミネラルであるが、この抽出ミネラルに水を加えて撹拌し、水分と固体成分とを分離して得た水溶液は、水溶性ミネラルのみを含んだ高濃度のミネラル溶液である。
【0015】
さらに上記ミネラル水溶液を濃縮して濃縮液又は濃度調整した調整液(液状ミネラル)とし、あるいはさらに水分を除去することによって水溶性ミネラルをさらに微粉砕してパウダーとして以下の実験に使用する水溶性生物ミネラル末(生物ミネラルパウダー)を得ることができる。この水溶性生物ミネラル末も水溶性ミネラルのみを含んだミネラル溶液(液状ミネラル)と成分上変わりがない。
【0016】
次に本発明の試験に使用する水溶性生物ミネラル末又はその水溶液の製法について説明する。
1.水溶性生物ミネラル末の製造方法
(1)生物ミネラル原末の抽出
原料としては野草類(クズ、イタドリ、ドクダミ、ヨモギ等)、樹木枝葉類(マツ枝葉、ヒノキ枝葉、スギ枝葉、イチョウ葉等)、海藻類(ホンダワラ,コンブ等)、竹、熊笹、苔類、シダ類、シジミ、カニ殻等のできるだけ人工的に育成されたものではなく、自然の条件下で育った野性のものが、多様なミネラル成分を比較的多量に含む点で野生のものが望ましい。これらの原料を原材料毎に洗浄及び天日乾燥後、200〜2000℃の温度下で1次的に灰化させ、さらにその灰化物を同様に加熱して残存未燃焼有機物を除去する2次加熱工程を経て、粗粉砕後20メッシュにかけて選別し、再度の過熱・放冷後、金属探知機による金属除去工程を経て、微粉砕して生物ミネラル原末を得た。
【0017】
多種類の原料を用いることにより、ミネラルの種類を豊富にし、製品毎の成分量を概ね均一化することができる。また上記灰化物は多種類の乾燥原料を予め得ようとするミネラルバランスに対応した配分量で混合して灰化してもよいが、原料毎に灰化したものを後で略等量ずつ又は所定のミネラルバランスを考慮して適量ずつ配合して用いてもよい。後者の方法によれば、原料毎に少しずつ異なるミネラル含有量を考慮し、より均質で正確なミネラルの種類と含有量の生物ミネラル原末を得ることができる。上記のような方法によって得たミネラルの組成は平均的には概ね表1に示す通りであり、使用する原料により含有成分に僅かな違いが生じるものの、概ね均一なバランスの多種類のミネラル含有量が保たれる。
【0018】
【表1】

【0019】
(2)水溶性生物ミネラル末(水溶性生物ミネラルパウダー)の製造
前記生物ミネラル原末に加水して加熱抽出を行い、該抽出液をデカンテーションし、粗ろ過後、1次濃縮を行い液状ミネラルを得た。さらにこの液状ミネラルを遠心脱水及び乾燥の2次濃縮工程を経て、粉砕後60メッシュにて選別して水溶性生物ミネラル末を得た。このようにして得られた水溶性生物ミネラル末を後述する添加方法によって、塩タラコ及び辛子メンタイコの冷凍劣化防止剤として使用した。ちなみに所定濃度に調整して液状ミネラルを用いることもできる。
【0020】
水溶性生物ミネラル末の組成は平均的には表2に示す通りである。なお液状ミネラル及び水溶性ミネラル末が含有するミネラルのバランスは、液状ミネラルより水分のみを除去したものが水溶性生物ミネラル末であることから、ほぼ等しいものである。よって冷凍劣化防止剤としてミネラルを用いる場合は、水溶性生物ミネラル末,液状ミネラルともに同様の効果が得られる。
【0021】
【表2】

【0022】
2.塩タラコの製造
「塩タラコ」とは、スケトウダラの卵巣である鱈子(たらこ)を塩漬けしたものである。
図1に基づき、
CS:コントロール塩タラコ(通常の塩漬処理を行った塩タラコ)、
SS:サンプル塩タラコ(水溶性生物ミネラル末を併用し塩漬処理を行った塩タラコ)
の塩タラコの製造方法について説明する。
【0023】
国内で一般に使用される冷凍状態のスケトウダラの卵巣を2〜6℃にて解凍し、洗浄し計量した後、樽に入れる。そして塩蔵用調味料としては一般に使用される配合のものを用い、例えば食塩、L−グルタミン酸Na、核酸、タンパク質加水分解質、L−アスコルビン酸Na、ニコチン酸アミド、亜硝酸Naを含む溶液を25℃にて添加する。このとき塩タラコSSにのみ水溶性生物ミネラル末をタラコ重量に対して0.05%添加する。これを5℃にて10時間熟成させ、洗浄・液きり工程を経て、形を整えてグレード別に選別し計量した後、包装して金属探知機にて混入物の検査をし、−20℃で凍結し出荷工程に回される。
【0024】
3.辛子メンタイコの製造
「辛子メンタイコ」は、タラコを塩漬けにし、さらに唐辛子を含んだ調味液に漬け込み、味及び色付けしたものである。
図2に基づき、
CK:コントロール辛子メンタイコ
(通常の塩漬処理を行ったあと辛子調味液に漬け込んだ辛子メンタイコ)、
SK:サンプル辛子メンタイコ
(水溶性生物ミネラル末を併用し塩漬処理を行った後辛子調味液に漬け込んだ
辛子メンタイコ)、
の辛子メンタイコの製造方法について説明する。
【0025】
冷凍状態のスケトウダラを塩蔵処理し形を整えてグレード別に選別し計量するまでは上述の塩タラコの製造方法と同様である。計量後の塩タラコに辛子調味料としては一般に使用される配合のものを用い、例えばL−グルタミン酸Na、核酸、タンパク質加水分解質、発酵調味料、焼酎、D−ソルビトール、唐辛子を含む溶液を25℃にて添加する。これを5℃にて10時間熟成させ、洗浄・液きり工程を経て、形を整えてグレード別に選別し計量した後、包装して金属探知機にて混入物の検査をし、−20℃で凍結し出荷工程に回される。
【0026】
4.走査電子顕微鏡(SEM)による卵表面の観察
まず上記方法により製造された魚卵(サンプル:CS、SS)の卵細胞の表面にどのような変化が生じたかを確認するため、走査型電子顕微鏡(日立S−800電界放射型走査電子顕微鏡)により、CS、SSの卵の表面(膜構造)を観察した。
【0027】
ちなみにタラコ卵細胞1は図3の断面模視図に示すように、最も外側に濾胞細胞層2があり、その内側に卵膜3が存在する。該卵膜3の内側には卵細胞質4があり、該卵細胞質4は、中心には核6があり、卵膜3側には受精時に関与する卵黄胞7があるほか、栄養物質である卵黄球8や油球9によって構成されている。
【0028】
<実験方法>
CS又はSS 0.3gを緩衝液A(1M NaClを含む100mM リン酸緩衝液)で3回洗浄し、上清を除き、5%グルタールアルデヒド溶液に2時間浸漬した(前固定処理)。グルタールアルデヒドを除き、上記緩衝液Aで3回洗浄後、1%オスミウム酸溶液を加え、2時間室温で固定(導電染色:重金属を付着させて導電性を付与すること)した。1%オスミウム酸溶液を除き、上記緩衝液Aで3回洗浄し、エタノール系列(50、70、80、90、95%)で15分ずつ脱水した。
【0029】
次に99.5%エタノールで15分ずつ2回脱水後、99.5%エタノールを再度加え冷蔵庫内で一晩保管し、上清のエタノールを除き、100%t−ブチルアルコールで10分ずつ3回置換処理を行った。そしてt−ブチルアルコール乾燥装置で凍結乾燥し、試料台に銀ペーストで試料を固定し、イオンスパッター(金属コーティング装置)で白金−パラジウムを蒸着(コート)後、SEMで観察した。ちなみに導電染色と金属コーティングは、不良導体であるタラコ卵にSEMの電子線の照射した際に生じる帯電現象を防止するために予め試料に導電性を付与するものである。
【0030】
<結果>
上記方法により作成した試料(CS,SS)をSEMにより観察した結果を図4に示す。図4はCS,SSの130倍での卵細胞の写真と、卵細胞の一部拡大写真(倍率5000倍と10000倍)である。図4の130倍の写真に示すように、CSは卵細胞に凹みが生じ、全体として卵細胞が萎んでいるのに対し、SSでは生の卵細胞に近い形状が維持されており、その表面もCSに比してSSの方が滑らかであることが確認できた。
【0031】
また5000倍と10000倍の一部拡大写真で明らかなように、CSでは濾胞細胞層が剥離し、アミノ酸等の旨味成分や塩分をはじめとするミネラル類の交換の場である卵膜中の微細孔が露出しているのに対し、SSでは濾胞細胞層が保持されているため微細孔が露出していないことが確認できた。
【0032】
<考察>
したがって上記のSEMによる観察実験より、水溶性生物ミネラル末を魚卵加工用の調味液に添加するだけで、濾胞細胞層が剥離せず卵膜上に維持できること、すなわち卵の膜構造を強化できることが確認できた。
【0033】
5.解凍直後の揮発性窒素発生量の測定
従来、加工魚卵(この実験では塩タラコ及び辛子メンタイコ)を冷凍処理すると、細胞中に含まれる水分が凍結して氷となり、その氷によって卵細胞が傷つけられ、冷凍時に傷つけられた魚卵(卵細胞)を解凍した際に、損傷箇所から旨味成分等を含む水分がドリップとして流出して、食味や食感を損なうということ(=冷凍劣化)が問題となっていた。そこで上記水溶性生物ミネラル末が冷凍劣化抑制効果を有するか検証するため、水溶性生物ミネラル末を冷凍劣化防止剤として魚卵加工用の調味液に添加した製品と、添加していない製品について、解凍直後に発生する揮発性窒素量を測定し、比較した。
【0034】
揮発性窒素とは、食品の劣化に伴い生成するアンモニア、トリメチルアミン、微量のジメチルアミン等の揮発性の窒素のことであり、一般に揮発性窒素が試料100g当たり約30mg発生した時、初期腐敗とされている。「衛生試験法・注解(2005年) 2.1.2.3 特殊窒素化合物1」揮発性窒素(1)拡散法」参照。
【0035】
<実験方法>
上記方法により製造された魚卵(腹状のサンプル:CS,SS,CK,SK)をランダムに10腹選択し、それぞれから卵をすべて採取した後、10腹分の卵を混合しこれを1ロットとして8ロット分のサンプルを作製し、冷凍輸送したものを冷蔵庫内(10℃)にて解凍した。これらのサンプルにおける解凍直後の揮発性窒素発生量は、「衛生試験法・注解(2005年)拡散法」に準拠し測定した。測定後、今回実験に使用した8ロット分(N=8)の揮発性窒素発生量の測定結果の平均値の差について、有意差があるか否かをt検定により検証した。
【0036】
<結果>
上記実験方法により測定した揮発性窒素発生量の測定結果を図5のグラフに示す。図5に示すようにCSとSSの揮発性窒素発生量の平均値の差は−2.126であり、CSに比してSSの揮発性窒素の発生量が抑制されたことが判明した。同様にCKとSKの揮発性窒素発生量の平均値の差も−1.837であることから、CKに比してSKの揮発性窒素の発生量が抑制されたことが分かった。
【0037】
また99%水準におけるt検定(N=8)の結果、
CS,SSにおける平均値の差の信頼区間:−2.992〜−1.261
CK,SKにおける平均値の差の信頼区間:−2.955〜−0.719
となった。上記のCS,SSとCK,SKの平均値の差がそれぞれの信頼区間に属していることから、本実験の結果は99%の確率で統計的有意差があることが分かった。
【0038】
<考察>
上記結果より、水溶性生物ミネラル末を冷凍劣化防止剤として魚卵加工用の調味液に添加することにより解凍直後の揮発性窒素発生量を低減できたことから、冷凍時の卵細胞破壊を防止でき、解凍時における傷ついた細胞からのドリップの流出を抑制し、食味や食感の低下を防止できることが明らかとなった。
【0039】
6.解凍後の揮発性窒素発生量の経日変化の測定
次に解凍後の魚卵(この実験では塩タラコ:CS,SS)の揮発性窒素発生量の経日変化を測定することにより、冷蔵保存条件化における解凍後の魚卵のタンパク質の変性が抑制されたか否かを検証した。
【0040】
<実験方法>
上記方法により製造された魚卵(腹子サンプル:CS、SS)をランダムに10腹選択し、それぞれから卵をすべて採取した後、10腹分の卵を混合しこれを1ロットとして8ロット分のサンプルを作製し、冷凍輸送したものを、冷蔵庫内(10℃)にて解凍した。これらのサンプルから、160gずつ採取したものをPE製チャック袋に移し入れ、10±0.5℃の冷蔵庫内で保管した。保管条件は、家庭用冷蔵庫での保管を想定した暗条件(×4ロット分)と店頭での保管を想定した明条件(×4ロット分)の2系列での実験を行った。明条件は12時間/1日,照射距離約25cmで、照度4000ルクスの照射を行い、照射には卓上用ライトを冷蔵庫内に設置して使用した。1、2、3、7、14日経過後の揮発性窒素発生量は、「衛生試験法・注解(2005年)拡散法」に準拠し測定した。
【0041】
<結果>
上記実験方法により測定した(A)暗条件又は(B)明条件における揮発性窒素発生量の経日変化の測定結果を図6のグラフに示す。図6に示すように暗条件・明条件ともにCSに比してSSの揮発性窒素発生量が解凍後7日程度まで略一定して少ないことが明らかである。
【0042】
<考察>
上記結果より暗条件・明条件ともにCSに比してSSの揮発性窒素発生量が解凍後7日程度まで略一定して少ないことから、水溶性生物ミネラル末を冷凍劣化防止剤として魚卵加工用の調味液に添加することにより、冷蔵保存条件化における解凍後の魚卵のタンパク質の変性を抑制する効果があることが判明した。よって約7日後までは品質が保持され、食味や食感が維持されることが分かった。
【0043】
一般に、生物の細胞膜の活性構造維持には、2価の無機イオン等のミネラルの存在が寄与していることが知られている。よって水溶性生物ミネラル末を加工魚卵に添加することにより、膜構造の維持に必要なミネラルが十分に存在する条件下で塩蔵できるので、卵の層及び膜構造が強化されるため、解凍時の卵内部のアミノ酸やミネラルの流亡を防止し、冷凍劣化及びタンパク質変性を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明の冷凍劣化防止剤はメンタイコ等の加工食品のほか、例えばカズノコ,イクラ,スジコ等のその他の魚卵加工食品の冷凍劣化やタンパク質変性を抑制する冷凍劣化防止剤としても広く応用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】塩タラコサンプル(CS,SS)の製造工程を示すフロー図である。
【図2】辛子メンタイコサンプル(CK,SK)の製造工程を示すフロー図である。
【図3】タラコ卵細胞の構造を示す断面模視図である。
【図4】塩タラコサンプル(CS,SS)の卵表面の顕微鏡写真である。
【図5】塩タラコと辛子メンタイコのコントロール(CS,CK)と本発明処理サンプル(SS,SK)の解凍直後の揮発性窒素発生量の測定結果を示す棒グラフである。
【図6】(A)は暗条件下での、(B)は明条件下でのコントロール塩タラコと本発明処理のサンプル塩タラコの解凍後の揮発性窒素発生量の経日変化を示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物を灰化して抽出した多種類の水溶性ミネラルよりなる加工魚卵用冷凍劣化防止剤。
【請求項2】
水溶性ミネラルが生物の灰化物に水を加えて抽出した液状ミネラルである請求項1の加工魚卵用冷凍劣化防止剤。
【請求項3】
水溶性ミネラルが液状ミネラルより水分を除去したパウダー状のミネラルである請求項1又は2の加工魚卵用冷凍劣化防止剤。
【請求項4】
水溶性ミネラルが多種類の生物より抽出したミネラルである請求項1,2又は3の加工魚卵用冷凍劣化防止剤。
【請求項5】
水溶性ミネラルが多種類の生物を予め種類毎に灰化したものを混合又は調合した後抽出したミネラルである請求項1,2,3又は4の加工魚卵用冷凍劣化防止剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−253211(P2008−253211A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100452(P2007−100452)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(396017198)株式会社やつか (11)
【Fターム(参考)】