説明

加湿器、加湿システム、床下暖房システム及び建物

【課題】屋内に設ける必要がないため、屋内空間を占用せず、日本の乾燥した冬期の暖房時における加湿手段としても能力が十分である加湿器を提供する。
【解決手段】床部1aに吊り下げられるケーシング7と、ケーシング7の上面に設けられたガラリ13を有する給気口8と、ケーシング7の側面に設けられた通気部としてのスリット10,・・・と、ケーシング7の内部に設けられた吸水性を有するフィルター11,11と、ケーシング7の内部に設けられた給水タンク12とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床下空間に設置される加湿器、同加湿器を備えた加湿システム、同加湿システムを備えた床下暖房システム及び同床下暖房システムを備えた建物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、日本の冬期は、空気が乾燥しており、特に暖房時にはさらに空気が乾燥するので、喉を痛めたり、肌が乾燥したりするのを防止するために、加湿器が使用されている。
【0003】
しかしながら、通常、加湿器は、屋内に設置されるので、屋内空間を占用し、邪魔である。
【0004】
こうしたことから、建物の床下空間内に、水蒸気を含んだ木炭粒などの調湿材を敷設して加湿させる従来技術などがある(特許文献1等を参照)。
【特許文献1】特開2005−241228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような従来技術では、木炭粒などの調湿材の含有する水分量しか加湿に利用できないので、日本の乾燥した冬期の暖房時における加湿手段としては能力が不足しているという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、屋内に設ける必要がないため、屋内空間を占用せず、日本の乾燥した冬期の暖房時における加湿手段としても能力が十分である加湿器、同加湿器を備えた加湿システム、同加湿システムを備えた床下暖房システム及び同床下暖房システムを備えた建物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の加湿器は、建物の床下空間に設置される加湿器であって、前記建物の床下に床と接して設けられるケーシングと、該ケーシングの上面に設けられた給気部と、前記ケーシングに設けられた通気部とを備えていることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記ケーシングの内部に設けられた吸水性を有するフィルターと、前記ケーシングの内部に設けられた給水タンクとを備えているとよい。
【0009】
また、前記給気部に、ガラリが設けられているとよい。
【0010】
さらに、前記通気部の近傍位置に、給気用のファンが設けられているとよい。
【0011】
また、前記ケーシングの内部における前記給気部の近傍位置に、給気用のファンが設けられているとよい。
【0012】
さらに、前記ケーシングの上面に、前記給水タンクを出し入れ可能とする蓋が設けられているとよい。
【0013】
本発明の加湿システムは、上記したいずれかの加湿器を備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明の床下暖房システムは、建物の最下階の床下空間に設置された床下暖房装置と、上記した加湿システムを備えていることを特徴とする。
【0015】
ここで、前記建物の屋内空間から前記床下空間へ暖気を排気する排気部を有するとよい。
【0016】
また、前記床下空間は、床と底盤コンクリートと側壁コンクリートとに囲まれているとともに、前記側壁コンクリートには断熱材が取り付けられているとよい。
【0017】
本発明の建物は、上記したいずれかの床下暖房システムを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
このような本発明の加湿器は、建物の床下空間に設置される加湿器であって、建物の床下に床と接して設けられるケーシングと、ケーシングの上面に設けられた給気部と、ケーシングに設けられた通気部とを備えた構成とされている。
【0019】
こうした構成なので、屋内に設ける必要がないため、屋内空間を占用せず、日本の乾燥した冬期の暖房時における加湿手段としても能力が十分である。
【0020】
ここで、ケーシングの内部に設けられた吸水性を有するフィルターと、ケーシングの内部に設けられた給水タンクとを備えている場合は、簡易な構成であり、経済的に実施できる。
【0021】
また、給気部に、ガラリが設けられている場合は、屋内空間側から加湿器中へ物を落下させてしまうなどのおそれがなく、大きな給気部とすることができ、加湿能力を高めることができる。
【0022】
さらに、通気部の近傍位置に、給気用のファンが設けられている場合は、湿気を含んだ空気が給気部から送り出されることを促進でき、加湿能力を高めることができる。
【0023】
また、ケーシングの内部における給気部の近傍位置に、給気用のファンが設けられている場合も、湿気を含んだ空気が給気部から送り出されることを促進でき、加湿能力を高めることができる。
【0024】
さらに、ケーシングの上面に、給水タンクを出し入れ可能とする蓋が設けられている場合は、建物の床に位置する蓋を開閉し、給水タンクを出し入れするだけで、簡単に給水が行える。
【0025】
本発明の加湿システムは、上記したいずれかの加湿器を備えた構成とされているので、上記した加湿器の効果を奏する加湿を行える。
【0026】
本発明の床下暖房システムは、建物の最下階の床下空間に設置された床下暖房装置と、上記した加湿システムを備えた構成とされているので、上記した加湿システムの効果を奏する床暖房を行える。
【0027】
ここで、建物の屋内空間から床下空間へ暖気を排気する排気部を有する場合は、床下空間から屋内空間内へ給気した暖気を再び排気部から床下空間内へ循環させるため、熱損失が少なくて済み、経済的に稼動できる。
【0028】
また、床下空間が、床と底盤コンクリートと側壁コンクリートとに囲まれているとともに、側壁コンクリートには断熱材が取り付けられている場合は、床下空間を断熱構造とするため、床下空間内の暖気の熱を屋外に極力漏らすことなく、より熱損失が少なくて済み、さらに経済的に稼動できる。
【0029】
本発明の建物は、上記したいずれかの床下暖房システムを備えた構成とされているので、上記した床下暖房システムの効果を奏する建物を構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0031】
図1は、本実施の形態の床下暖房システムを備えた建物1の概略構成を示している。
【0032】
まず、このような建物1は、基礎断熱として構築された底盤コンクリート1bと、その側縁に立設された側壁コンクリート1cと、さらにその上に立設された外壁部1dと、その外壁部1dの上端開口を塞ぐ天井部1eとから主に構成されている。
【0033】
そして、この天井部1eと外壁部1dとに囲まれる空間は、床としての床部1aによって床下空間2と居室などの屋内空間3とが区切られている。この床部1aは、暖房時の床暖房効果を考慮して、床下空間2と屋内空間3との間の熱の伝達をある程度許容し、断熱材が貼り付けられていない構成となっている。
【0034】
また、側壁コンクリート1cの床下空間2側には、グラスウールなどの断熱材4が貼り付けられており、床下空間2内の暖気の熱が屋外に極力漏れない断熱構造となっている。
【0035】
そして、本実施の形態の床下暖房システムは、床下空間2に設置された床下暖房装置6と、床部1aに吊り下げられた状態に設置された給気部としての給気口8を有する加湿器5と、床部1aに設けられたガラリ14を有する排気部としての排気口9とから主に構成されている。
【0036】
本実施の形態の床下暖房システムは、屋内空間3に設けられたコントローラCにより、床下暖房装置6のオン・オフの切り替えや温度設定が行われる。
【0037】
ここで、この加湿器5は、図2に示したように、ケーシング7と、ケーシング7の上面に設けられた給気部としての給気口8と、ケーシング7に設けられた通気部としてのスリット10,・・・と、ケーシング7の内部に設けられたフィルター11,11と、ケーシング7の内部に設けられた給水タンク12とから主に構成されている。
【0038】
このケーシング7は、係止部7aで床部1aに吊り下げられた状態に設けられている。
【0039】
また、給気口8は、ケーシング7の係止部7aが外周縁となるように形成されており、ガラリ13が設けられている。
【0040】
さらに、通気部としてのスリット10,・・・は、ケーシング7の左右側面に設けられている。
【0041】
また、2枚のフィルター11,11は、吸水性及び通気性を有する不織布から成り、その下部がケーシング7の底に溜められた水W1に浸かるように、ケーシング7の前後の内側面間に設けられている。
【0042】
さらに、給水タンク12は、その下部に設けられた挿入部12aが、ケーシング7の内部に設けられた嵌め込み部12bに嵌め込まれて支持されている。
【0043】
また、給水タンク12の挿入部12aと嵌め込み部12bとは、嵌め込まれた際に、給水タンク12の内部の水W2がケーシング7の底に溜められた水W1へ補給されるとともに、図示を省略した逆流を防止する逆流防止弁機構が設けられている。
【0044】
さらに、給水タンク12の上方には、ケーシング7に、床部1aと上面位置が一致する蓋17が設けられており、給水タンク12が出し入れ可能とされている。
【0045】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
【0046】
このような本実施の形態の加湿器は、建物1の床下空間2に設置される加湿器5であって、建物1の床としての床部1aに吊り下げられるケーシング7と、ケーシング7の上面に設けられた給気部としての給気口8と、ケーシング7に設けられた通気部としてのスリット10,・・・とを備えた構成とされている。
【0047】
こうした構成なので、屋内に設ける必要がないため、屋内空間3を占用せず、日本の乾燥した冬期の暖房時における加湿手段としても能力が十分である。
【0048】
ここで、ケーシング7の内部に設けられた吸水性を有するフィルター11,11と、ケーシング7の内部に設けられた給水タンク12とを備えているので、簡易な構成であり、経済的に実施できる。
【0049】
また、給気口8に、ガラリ13が設けられているので、屋内空間3側から加湿器5中へ物を落下させてしまうなどのおそれがなく、大きな給気口8とすることができ、加湿能力を高めることができる。
【0050】
さらに、ケーシング7の上面に、給水タンク12を出し入れ可能とする蓋17が設けられているので、建物の床部1aに位置する蓋17を開閉し、給水タンク12を出し入れするだけで、簡単に給水が行える。
【0051】
本実施の形態の床下暖房システムは、建物1の最下階の床下空間2に設置された床下暖房装置6と、本実施の形態の加湿器5とを備えた構成とされているので、本実施の形態の加湿器5の作用効果を奏する床暖房を行える。
【0052】
ここで、建物1の屋内空間3から床下空間2へ暖気を排気する排気部としての排気口9を有するので、床下空間2から屋内空間3内へ給気した暖気を再び排気口9から床下空間2内へ循環させるため、熱損失が少なくて済み、経済的に稼動できる。
【0053】
また、床下空間2が、床としての床部1aと底盤コンクリート1bと側壁コンクリート1cとに囲まれているとともに、側壁コンクリート1cには断熱材4が取り付けられているので、床下空間2を断熱構造とするため、床下空間2内の暖気の熱を屋外に極力漏らすことなく、より熱損失が少なくて済み、さらに経済的に稼動できる。
【0054】
本実施の形態の建物1は、本実施の形態の床下暖房システムを備えた構成とされているので、本実施の形態の床下暖房システムの作用効果を奏する建物1を構築できる。
【実施例1】
【0055】
以下、前記した実施の形態の実施例1について、図3に基づいて説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0056】
図3は、実施例1の加湿器51の概略構成を示している。
【0057】
この実施例1の加湿器51では、通気部としてのスリット10,・・・の近傍位置に、給気用のファン15,15が設けられていることが、図2に示した実施の形態の加湿器5と異なる。
【0058】
また、給気用のファン15,15の駆動装置(図示せず)が、図1に示したコントローラCと配線(図示せず)により接続されており、コントローラCにより、給気用のファン15,15の回転速度が調節される。
【0059】
すなわち、このような構成なので、湿気を含んだ空気が給気口8から送り出されることを促進でき、加湿能力を高めることができる。
【0060】
また、コントローラCにより、給気用のファン15,15の回転速度を調節して、加湿器51の出力設定が行える。
【0061】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0062】
以下、前記した実施の形態の実施例2について、図4に基づいて説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0063】
図4は、実施例2の加湿器52の概略構成を示している。
【0064】
この実施例2の加湿器52では、ケーシング7の内部における給気口8の近傍位置に、給気用のファン16が設けられていることが、図2に示した実施の形態の加湿器5と異なる。
【0065】
また、給気用のファン16の駆動装置(図示せず)が、図1に示したコントローラCと配線(図示せず)により接続されており、コントローラCにより、給気用のファン16の回転速度が調節される。
【0066】
すなわち、このような構成なので、実施例1の加湿器51と同様に、湿気を含んだ空気が給気口8から送り出されることを促進でき、加湿能力を高めることができる。
【0067】
また、コントローラCにより、給気用のファン16の回転速度を調節して、加湿器52の出力設定が行える。
【0068】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【0069】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態及び実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0070】
例えば、前記実施の形態及び実施例では、説明を簡単に行えるように、建物1内に加湿器5,51,52を1台しか設けなかったが、これに限定されず、複数台設けて実施してもよい。
【0071】
また、前記実施の形態及び実施例では、床下暖房システムとして、加湿器5,51,52を床下暖房装置6とともに使用して実施したが、これに限定されない。
【0072】
すなわち、加湿器5,51,52は、それぞれ単独で使用した加湿システムとして実施してもよい。
【0073】
さらに、前記実施の形態及び実施例では、加湿器5,51,52は、ケーシング7を、床部1aに吊り下げた状態に設けたが、これに限定されない。
【0074】
すなわち、ケーシング7の底部を床下空間2の底面(底盤コンクリート1bの上面)に載置する形態で実施してもよい。
【0075】
要するに、ケーシング7は、建物1の床下に床部1aと接して設けられていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の最良の実施の形態の床下暖房システムを備えた建物の概略構成を示す説明図である。
【図2】本実施の形態の加湿器の概略構成を示した説明図である。
【図3】実施例1の加湿器の概略構成を示した説明図である。
【図4】実施例2の加湿器の概略構成を示した説明図である。
【符号の説明】
【0077】
1 建物
1a 床部(床)
1b 底盤コンクリート
1c 側壁コンクリート
1d 外壁部
1e 天井部
2 床下空間
3 屋内空間
4 断熱材
5 加湿器
51 加湿器
52 加湿器
6 床下暖房装置
7 ケーシング
8 給気口(給気部)
9 排気口(排気部)
10 スリット(通気部)
11 フィルター
12 給水タンク
13 ガラリ
14 ガラリ
15 給気用のファン
16 給気用のファン
17 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の床下空間に設置される加湿器であって、
前記建物の床下に床と接して設けられるケーシングと、該ケーシングの上面に設けられた給気部と、前記ケーシングに設けられた通気部とを備えていることを特徴とする加湿器。
【請求項2】
前記ケーシングの内部に設けられた吸水性を有するフィルターと、前記ケーシングの内部に設けられた給水タンクとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の加湿器。
【請求項3】
前記給気部に、ガラリが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の加湿器。
【請求項4】
前記通気部の近傍位置に、給気用のファンが設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の加湿器。
【請求項5】
前記ケーシングの内部における前記給気部の近傍位置に、給気用のファンが設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の加湿器。
【請求項6】
前記ケーシングの上面に、前記給水タンクを出し入れ可能とする蓋が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の加湿器。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の加湿器を備えていることを特徴とする加湿システム。
【請求項8】
建物の最下階の床下空間に設置された床下暖房装置と、請求項7に記載の加湿システムを備えていることを特徴とする床下暖房システム。
【請求項9】
前記建物の屋内空間から前記床下空間へ暖気を排気する排気部を有することを特徴とする請求項8に記載の床下暖房システム。
【請求項10】
前記床下空間は、床と底盤コンクリートと側壁コンクリートとに囲まれているとともに、前記側壁コンクリートには断熱材が取り付けられていることを特徴とする請求項8又は9に記載の床下暖房システム。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか一項に記載の床下暖房システムを備えていることを特徴とする建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−264700(P2009−264700A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117183(P2008−117183)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】