説明

加熱冷却装置

【課題】 熱交換室で発生した冷却水の気化蒸気を、確実にエゼクタに吸引することのできる加熱冷却装置を提供する。
【解決手段】 反応釜1のジャケット部2に気体用循環通路3と液体用循環通路19を接続する。気体用循環通路3には、バルブ4を介して冷却用エゼクタ6と接続する。液体用循環通路19は加熱用エゼクタ22と接続する。液体用循環通路19と気体用循環通路3を循環通路均圧管25で接続する。
ジャケット部2で発生した気化蒸気は、気体用循環通路3から冷却用エゼクタ6に吸引されると共に、循環通路均圧管25を通って加熱用エゼクタ22へも吸引されることにより、ジャケット部2内の温度上昇を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換室内で被熱交換物を直接に又は間接に熱交換して、被熱交換物を加熱又は冷却する加熱冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱冷却装置は、熱交換室を加熱用エゼクタ又は冷却用エゼクタと連通して、当該エゼクタに共通タンクを介して循環ポンプと接続することによって、加熱と冷却の切り換えを短時間で行うことができるものである。
【0003】
この加熱冷却装置においては、特に冷却時において、冷却温度が設定値よりも上昇してしまい、その結果として加熱冷却装置の温度制御性を悪化させる問題があった。これは、冷却時において、熱交換室で被熱交換物を冷却して発生した冷却水の気化蒸気が、気体用循環通路での圧力損失によって、確実にエゼクタに吸引されないために、熱交換室の圧力が所定の低圧状態に維持されず、冷却温度が設定値よりも上昇してしまうのである。
【特許文献1】特開2002−31450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、熱交換室で発生した冷却水の気化蒸気を、確実にエゼクタに吸引することによって、温度制御性を向上させることのできる加熱冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、被熱交換物を加熱あるいは冷却する熱交換室を、気体用あるいは液体用の循環通路でエゼクタと連通して、当該エゼクタにタンクを介して循環ポンプと接続したものにおいて、気体用循環通路と液体用循環通路を連通して均圧状態にする循環通路均圧管を設けたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の加熱冷却装置は、気体用循環通路と液体用循環通路を連通して均圧状態にする循環通路均圧管を設けたことにより、気体用循環通路の圧力損失が大きくてエゼクタに気化蒸気を確実に吸引することができない場合に、循環通路均圧管から気化蒸気を液体用循環通路に導いてエゼクタに吸引することによって、熱交換室の圧力を所定の低圧状態に維持して、冷却温度が設定値よりも上昇してしまうことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、気体用循環通路と液体用循環通路を連通して均圧状態にする循環通路均圧管を設けるものであるが、この循環通路均圧管には、流下する流体量を調節することのできる調節弁を設けることが望ましい。
【実施例1】
【0008】
本実施例においては、熱交換室として加熱や冷却を行う反応釜1を用いた例を示す。反応釜1の内部に入れた図示しない被熱交換物を、ジャケット部2に供給する加熱源としてのスチームや冷却源としての冷却水によって加熱あるいは冷却するものである。
【0009】
反応釜1のほぼ全周にわたりジャケット部2を形成し、ジャケット部2の左側方から気体用循環通路3にバルブ4を取り付けて気体用のエゼクタ6と接続する。エゼクタ6は、そのディフューザ部7をタンク8内に配置して取り付ける。タンク8の下方を管路9で循環ポンプ10と接続し、更に管路11でエゼクタ6のノズル部12と連通する。
【0010】
ノズル部12の側方には気体用循環通路3の一端を接続してジャケット部2と連通する。タンク8内の冷却水等の液体が循環ポンプ10で循環され、管路11からエゼクタ6のノズル部12を通ってタンク8内へと循環する。タンク8の右側上部には、冷却水補充供給管13を接続する。
【0011】
反応釜1のジャケット部2に、加熱用の蒸気供給管15と冷却用の冷却水供給管16をそれぞれ接続する。蒸気供給管15には供給する蒸気の圧力を制御するための圧力制御弁17を取り付け、また、冷却水供給管16には供給する冷却水量を制御する制御弁18を取り付ける。
【0012】
ジャケット部2の下端部に加熱用の蒸気が凝縮した復水を排出する液体用循環通路19を接続する。液体用循環通路19には、開閉弁20と、蒸気は排出することがなく復水だけを自動的に出口側へ排出することのできる蒸気トラップ21を並行に配置して、加熱用のエゼクタ22と接続する。
【0013】
液体用循環通路19の水平部末端近傍の上部位置5と、気体用循環通路3のジャケット部2底部よりも上部位置24を、循環通路均圧管25で接続する。循環通路均圧管25には、流下する流体量を調節することのできる調節弁26を取り付ける。調節弁26を開弁することによって、気体用循環通路3と液体用循環通路19を連通して均圧状態にすることができるものである。
【0014】
加熱用のエゼクタ22は、タンク8と循環ポンプ23で構成し、循環ポンプ23の駆動によってタンク8内の流体をエゼクタ22に供給して、エゼクタ22でジャケット部2内の復水及び一部の凝縮しきれなかった蒸気を吸引するものである。
【0015】
循環ポンプ23とエゼクタ22の間に、余剰流体を系外へ排出するための余剰流体排出管14を接続する。
【0016】
反応釜1内の図示しない被熱交換物を加熱する場合は、蒸気供給管15から加熱に適した温度の蒸気をジャケット部2へ供給することによって、蒸気が反応釜1内の被熱交換物に熱を与えて加熱する。加熱により蒸気の凝縮した復水は、蒸気トラップ21あるいは開閉弁20と液体用循環通路19を通ってエゼクタ22に吸引されタンク8に至る。
【0017】
一方、反応釜1内の被熱交換物を冷却する場合は、冷却水供給管16から所定温度の冷却水をジャケット部2へ供給すると共に、循環ポンプ10を駆動して冷却用エゼクタ6でジャケット部2内の流体を吸引することによって、ジャケット部2内を所定の圧力状態、例えば、大気圧以下の真空状態、とすることにより、冷却水が反応釜1内の被熱交換物の熱を奪って蒸発することにより、その蒸発潜熱によって被熱交換物を気化冷却することができるものである。
【0018】
気化冷却して蒸発した気化蒸気は、気体用循環通路3を通って気体用のエゼクタ6に吸引されるが、気化蒸気は容積が大きいために、気体用循環通路3の有効径が小さい場合や、曲がりくねっている場合のように、圧力損失が大きくなると、エゼクタ6に吸引される気化蒸気の量が少なくなってしまい、ジャケット部2内の温度が上昇してしまうのであるが、循環通路均圧管25を開放して気体用循環通路3と液体用循環通路19を均圧状態とすることによって、気体用循環通路3内の気化蒸気の一部を、エゼクタ22で吸引することで、ジャケット部2内での温度上昇を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の加熱冷却装置の実施例を示す構成図。
【符号の説明】
【0020】
1 反応釜
2 ジャケット部
3 気体用循環通路
6 冷却用エゼクタ
8 タンク
10 循環ポンプ
12 ノズル部
15 蒸気供給管
16 冷却水供給管
19 液体用循環通路
22 加熱用エゼクタ
23 循環ポンプ
25 循環通路均圧管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被熱交換物を加熱あるいは冷却する熱交換室を、気体用あるいは液体用の循環通路でエゼクタと連通して、当該エゼクタにタンクを介して循環ポンプと接続したものにおいて、気体用循環通路と液体用循環通路を連通して均圧状態にする循環通路均圧管を設けたことを特徴とする加熱冷却装置。


【図1】
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【公開番号】特開2009−300015(P2009−300015A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155863(P2008−155863)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000133733)株式会社テイエルブイ (913)
【Fターム(参考)】