説明

加熱励振を利用した熱伝導型気圧センサ

【目的】
単純な構造と回路構成で、極低気圧から1気圧以上の気圧も1つのセンサチップを用いて計測できる高帯域の気圧を高感度、高精度の(加熱励振を利用した)熱伝導型気圧センサを提供する。
【手段】
カンチレバ状の薄膜10に、薄膜温度センサと加熱手段および励振手段を設けてあり、薄膜ヒータの加熱手段による間欠加熱時の薄膜を構成する主たる二層の熱膨張の違いに基づく反り曲がりを利用して励振手段にしたこと、主たる二層として熱膨張係数に非常に大きな差があるシリコン層とシリコン熱酸化膜を使用する。また、ゼーベック電流の所定時間の積分により高感度化する回路や気流の影響を抑制するキャップを具備することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板から熱分離した加熱できる薄膜を振動させるようにした熱伝導型気圧センサにおいて、極低気圧から高気圧まで1個のセンサチップを利用して広帯域の気圧測定、特に1気圧またはそれ以上の気圧においても、振動により強制対流による気流を発生させて、高感度に真空度を含む気体圧力を計測できるようにした加熱励振を利用した熱伝導型気圧センサに関する。
【背景技術】
【0002】
温度センサとヒータとを有し、このヒータにより加熱した薄膜やワイヤなどの物体の気体などの周囲媒体への熱伝導による温度変化を温度センサで計測して、周囲媒体の気圧、湿度や流速などの物理情報を得る熱型センサを一般に熱伝導型センサという。このような熱伝導によるその物体の温度変化から真空度などの雰囲気気体の気圧を計測する熱伝導型気圧センサにおいては、一般に、加熱した物体とヒートシンクまでとの距離および気体の平均自由行程との関係で、気圧が真空から1気圧程度に高くなると、気圧の変化に対して熱伝導による熱の逃げの変化がほとんどなくなり、従って、感度がほとんどなくなるという問題があった。
【0003】
本発明者は、先に、熱伝導型気圧センサとしての薄膜ピラニ真空センサの薄膜を振動させる励振手段として静電引力を利用し振動させて気流を発生させることで、加熱された薄膜からの熱の逃げを促進させることにより、1気圧またはそれ以上の気圧においても高感度に真空度を含む気体圧力を計測できるようにした熱伝導型気圧センサを発明した(特許文献1)。また、本発明者は、先に、薄膜状態で温度センサとして利用できるものとして、ダイオードを利用したもの(特許文献2)、熱電対の短絡ゼーベック電流を検出するようにした電流検出型熱電対(特許文献3)を発明した。また、本発明者は、先に、薄膜状ヒータとして、ダイオードをヒータとして利用するもの(特許文献4)、熱電対をヒータとして利用するもの(特許文献5)を発明した。さらに、これらをカンチレバ状の薄膜に形成して流速や真空度などを計測する熱伝導型センサ(特願2007-103611)も発明した。また、ゼーベック電流を所定の時間だけ積分することにより、高感度で高精度に温度差を検出できるようにした温度センサ(特願2009−188088)も発明した。本願発明は、これらを組み合わせることができるようにすると共に、更に、単純なセンシング部の構造と駆動回路構成、高感度で高精度な広帯域の気圧を計測できる熱伝導型気圧センサを提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許公開2007−51963号公報
【特許文献2】PCT/JP01/00080,10/169083(米国)
【特許文献3】PCT/JP2006/322842
【特許文献4】特許公開2006−250736号公報
【特許文献5】特許公開2009−79965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の1気圧付近の気圧を計測する熱伝導型気圧センサは、薄膜を振動させる励振手段として静電引力を利用していた。このために励振用電極を薄膜に近接して設ける必要があり、実際には、構造的に複雑で製作困難であった。
【0006】
また、従来の薄膜を振動させる励振手段では、共振を利用しており、小さな電力で大きな振幅が得られ、大きな気流を発生させるには好都合であったが、励振のタイミングが一致する必要があり、位相調整など回路的にも複雑であったので、もう少し単純な構造で、必ずしも共振を利用しなくとも済み、さらに単純な回路構成であることが望まれていた。
本発明の課題は、共振を利用しなくとも済み、単純な構造でのカンチレバ構造やダイアフラムを用いた加熱励振を利用した熱伝導型気圧センサであって、高真空領域から、1気圧以上の領域までの気圧を測定できる加熱励振を利用した熱伝導型気圧センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の問題点を解消するためになされたもので、本発明の請求項1に係わる熱伝導型気圧センサは、基板から熱分離した薄膜に、少なくとも1個の薄膜状温度センサと前記薄膜を昇温させる加熱手段および前記薄膜を振動させる励振手段を具備した熱伝導型気圧センサにおいて、前記薄膜は、少なくとも膨張係数の異なる二層以上の薄膜からなること、前記励振手段として、前記加熱手段による間欠加熱時の前記薄膜を構成する主たる二層の熱膨張の違いに基づく反りを利用すること、この反りに基づく強制対流により、加熱手段から周囲気体への熱伝導を促進させて前記薄膜温度センサの温度変化を増大させるようにしたこと、この温度変化の増大により被測定気圧の計測感度を増大させるようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
例えば、バイメタルのように、カンチレバ型の熱膨張係数の大きく異なる少なくとも二層からなる基板から熱分離してある薄膜では、この薄膜に設けた薄膜ヒータのジュール加熱などで薄膜を加熱したときに薄膜は熱膨張係数の大きい方の層が余計伸びるので、薄膜は反り曲がる。加熱が続けば温度上昇は飽和するので、反り曲がりは一定に落ち着く。しかし、加熱を止めると薄膜は冷却されて元の温度に戻るので、反り曲がりは加熱前の状態に戻ってゆく。このように、加熱冷却時に反り曲がりが繰り返すので、薄膜は振動する。このように周囲気体の振動による気流の発生には、励振手段としてのカンチレバなどの少なくとも二層からなる基板から熱分離した(宙に浮いた)薄膜の熱膨張係数の違いを利用して間欠的に加熱冷却を繰り返すようにする必要がある。
【0009】
間欠的に加熱冷却の周期は、薄膜加熱の熱時定数程度が望ましい。この周期は薄膜の共振周波数の周期とは必ずしも一致させることは必須ではない。
【0010】
本発明の請求項2に係わる熱伝導型気圧センサは、前記薄膜をカンチレバ形状とした場合である。
【0011】
基板から熱分離した薄膜がカンチレバ形状の場合、カンチレバの先の方は基板から完全に熱分離されており、被計測気圧の対象である周囲の気体に接しているだけなので、例えば、カンチレバ形状の基板側に設けた薄膜ヒータからの熱は、カンチレバ形状の先端側では、接している周囲気体に熱が伝導して逃げるしかない(放射熱伝達は、温度500K以下では、小さいのでほぼ無視できる)。したがって、極めて高真空(実質的には、10−4Pa以下の気圧)では、カンチレバ形状の先端側に設けた2個の温度センサの点では、温度差がゼロになるという特徴がある。このように、温度差を計測して気圧の変化を高精度に計測するのに、ゼロを基準として計測する方法であるゼロ位法が適用できる。従って、薄膜がカンチレバ形状であり、カンチレバの基板支持側に近いところに加熱用のヒータが配置され、そのカンチレバの先端側に向かって、その長さ方向に配置形成した2個の温度センサ(温度差センサでは、1個でもよい)により2点間の温度差を計測することは、高真空度(極めて低い気圧)では、これら2点間の温度差が本質的にゼロになることが分かっているので、ゼロ位法により高真空度においても高精度に気圧を計測できる。
一方前記薄膜の振動による強制対流の効果が見られる高い気圧領域(0.1気圧以上の領域)では、主に、前記薄膜ヒータを加熱停止させた直後以降の状態での、カンチレバ形状の先端側に設けた2個の温度センサの温度差から被計測気圧を計測した方が良い。
【0012】
本発明の請求項3に係わる熱伝導型気圧センサは、温度センサとして、熱電対を用いたことを特徴とする熱伝導型気圧センサである。
【0013】
ここで、熱電対は、本質的に温度差しか検出しない温度差センサなので、上述のカンチレバ形状中の2点間の温度差を計測するのに好適である。特に、電流検出型熱電対として動作させると、単純構成で高感度の温度差計測が可能である。
【0014】
本発明の請求項4に係わる熱伝導型気圧センサは、薄膜として、シリコンとシリコン酸化膜の主たる二層を含み、これらのシリコンとシリコン酸化膜との熱膨張係数の違いを利用した場合である。
【0015】
カンチレバ型の膨張係数の大きく異なる少なくとも二層の材質として、SOI層などのシリコン層(Si層)とSOI層の下部のシリコン酸化膜(BOX層)を利用した場合である。一般にSOI層のシリコン酸化膜(BOX層)は、石英薄膜であり、極めて熱膨張係数が小さい。したがって、BOX層が付いたままのSOI層をカンチレバとして形成すると、SOI基板を形成したときの高温でのSOI層(Si層)が伸びた状態で固定されていたので、SOI層は物理的にカンチレバとして自由になると室温での収縮状態になり、SOI層側にカンチレバが反り返る状態になる。そのために、SOI層の下のBOX層とは反対側表面にもシリコン酸化膜を成長させて、伸びのバランスを取り、曲がらないカンチレバにすることが多い。本発明では、SOI層のBOX層とは反対側表面にもシリコン酸化膜を成長させても、BOX層よりは充分薄く成長させて、反り曲がりを残すようにして、熱膨張によるバイメタル効果が大きくなるような構造にしてあり、加熱手段による薄膜の加熱時には、大きく反りが変化するようにしている。
【0016】
本発明の請求項5に係わる熱伝導型気圧センサは、加熱手段に薄膜ヒータを用いた場合である。
【0017】
薄膜ヒータとして、金属薄膜や拡散抵抗、温度差センサである熱電対も抵抗を有するのでヒータとしても利用できるし、更には、pn接合などの接合を持つダイオードの順方向電流による加熱を利用することができる。また、トランジスタのコレクタ抵抗を利用して薄膜ヒータとしても良い。
【0018】
本発明の請求項6に係わる熱伝導型気圧センサは、薄膜ヒータの位置を、基板から熱分離した薄膜のうち、温度センサよりも基板支持部に近い側に設けた場合である。
【0019】
薄膜ヒータの寸法が同一であった場合には、薄膜ヒータの位置を、基板から熱分離した薄膜の基板支持部付近に設けることにより、二層の熱膨張係数による基板から熱分離した薄膜の反りが大きくなり、基板から熱分離した薄膜がカンチレバ状であった場合には、その反りの変化が一層顕著になる。したがって、反りに基づく強制対流が増大して、周囲気体の気圧変化を高感度に計測できる。なお、実験によると、反りに基づく強制対流の効果は、0.1気圧(0.1x10Pa(パスカル))以上の気圧で顕著になることがわかっている。
【0020】
本発明の請求項7に係わる熱伝導型気圧センサは、薄膜ヒータとして、抵抗温度係数が1000ppm/K以下の導体を用いた場合である。
【0021】
一定電力を印加して、所定の温度上昇分を確保したいときには、抵抗温度係数が小さな金属薄膜を用いると便利である。その理由は、抵抗温度係数が小さいと、温度上昇によりヒータの抵抗変化が無視できるので、基板から熱分離した薄膜の熱コンダクタンスが一定であるときには、温度上昇分が供給電力に比例するので、一定の供給電力を供給するのに、一定の電圧又は電流をヒータに印加すればよいことになるからである。このように、同一の消費電力のヒータを用いると、基板から熱分離した薄膜の温度上昇分は、周囲温度を基準にして同一の温度上昇分となることが理論的に分かっている。すなわち、周囲温度が変わっても、その周囲温度から一定の温度上昇分が得られるということである。薄膜ヒータとしてのジュール加熱のヒータでは、繰り返し加熱をしても、同一の消費電力になるようにすることが望まれることが多い。薄膜ヒータの抵抗温度係数(TCR)が極めて小さく、加熱によるヒータの電気抵抗の変化が無視できる程度であると、一定の電圧印加もしくは一定の電流通電により、一定の電力供給ができるので、所定のヒータの温度上昇が望める。しかし、その抵抗温度係数(TCR)が大きいヒータでは、温度上昇と共に抵抗値が変化すること、更に、周囲温度が異なってもその抵抗値が異なってしまうので、一定の電力供給が困難である。従って、薄膜ヒータとして、抵抗温度係数(TCR)が1000ppm/K以下の導体を用いた方がよく、可能ならば、抵抗温度係数(TCR)が使用温度で無視できるほど小さいためにその抵抗変化が無視できる方が好適である。一例として、ニクロム(NiCr)薄膜などは、抵抗温度係数(TCR)が数十ppm/K程度であり、極めて好適な材料である。
【0022】
本発明の請求項8に係わる熱伝導型気圧センサは、薄膜ヒータとして、熱電対をヒータとしても利用できるようにした場合である。
【0023】
熱電対は、二本の異なる導体の接合を利用し、温度差に基づく起電力で、温度差を検出する温度差センサであるが、導体は抵抗を有しているので、これをヒータとして利用することができる。特に、温度差に基づく起電力による短絡電流を計測するようにした電流検出型熱電対では、一方の導体として熱起電力が大きい半導体を使用することが多い。二本の異なる導体の接合は、オーム性接合であるが、熱電対を構成する半導体中の抵抗で発熱させることができるし、基板から熱分離した薄膜としてSOI層を利用した場合には、このSOI層を主な薄膜ヒータとして利用することができる。特にSOI層を用いたカンチレバ構造の時には、その先端部が基板から熱分離されているので、大きな温度上昇が得られやすい。
【0024】
本発明の請求項9に係わる熱伝導型気圧センサは、上記基板から熱分離した薄膜を、熱抵抗部を介して少なくとも、二つの薄膜Aと薄膜Bとに分割し、それぞれの薄膜Aと薄膜Bに薄膜温度センサTHAと薄膜温度センサTHBを形成してあり、これらの薄膜温度センサTHAと薄膜温度センサTHBとの温度差から被計測気圧を知るようにした場合である。
【0025】
基板から熱分離した薄膜をカンチレバ構造にして、その支持部である基板側に近い方、または、基板からカンチレバに及ぶ領域にも含めて、カンチレバの途中まで薄膜ヒータを構成しておき、更に、その薄膜ヒータよりもカンチレバの先端側に、二つの薄膜Aと薄膜Bとにカンチレバ構造を熱抵抗部を介して分割する構造とする。この分割された二つの薄膜Aと薄膜Bのそれぞれに、薄膜温度センサTHAと薄膜温度センサTHBを形成するようにした構造で、それらの温度差を計測するようにすることが、極めて低気圧から1気圧以上の高気圧までの計測気圧範囲を拡大する上で重要である。
【0026】
本発明の請求項10に係わる熱伝導型気圧センサは、薄膜温度センサTHAと薄膜温度センサTHBの双方とも熱電対とした場合である。
【0027】
カンチレバ構造などの基板から熱分離した薄膜(宙に浮いた薄膜)の基板近くに形成した薄膜ヒータからの熱を先端側で、その長さ方向に熱抵抗を介して形成した二つの領域の温度差を計測して、この温度差出力から被測定周囲気体の気圧を計測するが、高気圧側、特に、0.1気圧以上の高い気圧での強制振動による強制対流熱伝達を促進することで、温度差を拡大しようということが本願発明の主眼である。この温度差計測のためには、本質的の温度差のみに出力が出現する温度差センサが最適となる。温度差センサとして、単純な構造で、薄膜化できる熱電対が好適であり、薄膜温度センサTHAと薄膜温度センサTHBともに、熱電対にする方がよい。また、基板から熱分離した薄膜をカンチレバ構造にする方がよく、一方の導体としてSOI基板のSOI層(半導体層)を利用し、更に、熱膨張係数の違いによる反りを励振手段とするには、熱膨張係数の極めて小さいBOX層(SiO2膜層)との二重構造層を利用することが、単純構造となるので好適である。なお、他方の導体として、絶縁層を介した金属薄膜を用いてよく、可能ならば、SOI層(半導体層)とは、反対の熱起電力を発生する金属薄膜の選択が望ましい。
【0028】
本発明の請求項11に係わる熱伝導型気圧センサは、前記薄膜の振動による強制対流の効果が見られない低い気圧領域では、前記薄膜ヒータを加熱状態での薄膜温度センサTHAと薄膜温度センサTHBとの温度差から被計測気圧を知るようにし、前記薄膜の振動による強制対流の効果が見られる高い気圧領域では、前記薄膜ヒータを加熱停止させた直後以降の状態での薄膜温度センサTHAと薄膜温度センサTHBとの温度差から被計測気圧を知るようにした場合である。
【0029】
前記薄膜の振動による強制対流の効果が見られない低い気圧領域とは、ほぼ0.1気圧付近以下の気圧の真空状態であり、極めて高真空(極めて低気圧)では、特に、基板から熱分離した薄膜をカンチレバ構造にした場合には、この薄膜のうち、薄膜ヒータよりも先端側に形成した二つの薄膜温度センサTHAと薄膜温度センサTHBとの温度差は、この薄膜を加熱していても本質的にゼロに成るように動作するから、ゼロ位法を利用して高精度に極めて低気圧を計測することができる。しかしながら、前記薄膜の振動による強制対流の効果が見られる高い気圧領域である0.1気圧付近以上の気圧では、本願発明では、励振手段により被計測周囲気体に強制対流を生じしめて、冷却を促進するものであるから、加熱し始めて、膨張係数の異なる二層の熱膨張に基づく振動(ほとんど、一回だけの振動)を利用するカンチレバ構造体の振動が始まったときに計測しても良い。しかし、実験によると、むしろ、加熱を止めて、冷却してゆく過程での振動(ほとんど、一回だけの振動)を利用して、熱抵抗部を挟んで形成してある薄膜温度センサTHAと薄膜温度センサTHBとの強制対流による温度差を計測した方が、信号対雑音比(S/N比)が大きく、気圧変化による温度差信号の変化も大きくなり、高感度、高精度検出が可能になった。この加熱を止めて、冷却してゆく過程での振動を利用した場合には、カンチレバの基板側に形成した薄膜温度センサTHA部(薄膜ヒータよりは先端側に形成されている)の温度が速く冷却され、熱抵抗部を挟んで形成された薄膜温度センサTHBの温度は、ゆっくり冷却されて行くので、温度差のピークを迎えた後、冷却が進むに連れて、薄膜温度センサTHAと薄膜温度センサTHBとの温度差もゼロに近づくので、信号出力もゼロに近づくことになる。この意味でゼロ位法が使用できるので、高感度で、高精度計測ができる。
【0030】
本発明の請求項12に係わる熱伝導型気圧センサは、前記基板に、熱伝導型気圧センサの動作に必要な回路のうち、少なくとも、その一部を集積化した場合である。
【0031】
熱伝導型気圧センサは、基板から熱分離した薄膜に、少なくとも1個の薄膜状温度センサと前記薄膜を昇温させる加熱手段および前記薄膜を振動させる励振手段を具備しているが、これらを動作させて出力させるためには、種々の回路が必要である。これらの回路のうちの全部又はその一部を基板に集積化しようとするものである。例えば、基板をシリコン(Si)などの半導体を用いた場合は、温度センサからの出力信号を増幅する増幅器、薄膜ヒータなどの加熱手段の駆動回路、励振手段のタイミング用の回路、演算回路、表示回路などを同一基板に集積化することができる。このようにして、極めて小型、軽量でコンパクトな熱伝導型気圧センサが提供できる。
【0032】
本発明の請求項13に係わる熱伝導型気圧センサは、少なくとも基板に形成した温度センサと加熱手段とを覆うように設けたキャップが、密閉されていないが、周囲気体の流れを妨げるようにして、前記温度センサと加熱手段に直接気流が触れないようにした場合である。
【0033】
熱伝導型気圧センサは、気流に敏感であり、例えば、真空センサとして用いた場合には、ポンプで真空排気し始めたときなど、気流が生じる。この場合、熱伝導型気圧センサを構成する温度センサと加熱手段としてのヒータに、気流が直接触れると、真の気圧の計測が困難になる。従って、気流が温度センサとヒータに直接触れないようにする必要があり、熱伝導型気圧センサの気圧感知部となる温度センサとヒータを気流に晒さないように、メッシュや穴の開いたキャップを被せるか、覆うようにするものである。メッシュや穴の開いたキャップは、基板全体を覆うようにしても良い。
【0034】
本発明の請求項14に係わる熱伝導型気圧センサは、前記温度センサの出力を出力電流となるようにして、該出力電流を所定の時間だけ積分して、出力電圧に変換し、該出力電圧を利用して被計測気圧を知るようにした場合である。
【0035】
温度センサを電流検出型熱電対として短絡ゼーベック電流を計測するようにした場合や、起電力を検出するにしてもこれを電流変換にして出力信号とする場合に、むしろ、これらの出力電流IをコンデンサCなどに充電させるようにすると、出力電流Iに、充電時間Δtを乗じた分は、コンデンサCに貯えられる電荷Qとなる。このときコンデンサCの両端の電圧V(出力電圧)は、V=Q/C=IΔt/Cであり、適当なコンデンサCの値を選択することにより、S/N比が大きいままで、大きな出力電圧Vが容易に得られる。例えば、熱伝導型気圧センサのヒータを停止し、カンチレバ状薄膜の振動を開始させた直後から所定に時間、例えば、20ミリ秒間、演算増幅器を利用してコンデンサCに前記薄膜温度センサTHAと薄膜温度センサTHBとの温度差に基づくゼーベック電流信号を貯えることにより、大きな出力電圧Vに変換して、一層の気圧に関する感度を増大させることができる。
【0036】
本発明の請求項15に係わる熱伝導型気圧センサは、熱伝導型気圧センサの動作に必要な種々の回路である、加熱手段の温度を制御する温度制御回路、励振手段を駆動する励振駆動回路、温度センサからの信号を増幅する増幅回路、この増幅回路出力を利用して気圧に変換する演算回路をも内蔵させたもので、これらを必ずしも前記基板に搭載しなくともよく、装置として組み込んだ形で熱伝導型気圧センサを動作させる場合である。
発明の効果
【0037】
本発明の熱伝導型気圧センサでは、基板から熱分離した薄膜が、熱膨張係数が異なる少なくとも二層がバイメタルのように重なる構造にしておくことにより、加熱手段の間欠加熱がバイモルフ振動を引き起こし励振手段となるので、極めて単純な構造で、大量生産に適し、安価で高感度の熱伝導型気圧センサが提供できるという利点がある。
【0038】
真空を含む気圧に変動があるとそのときの共振周波数が変化することになるので、共振を利用すると自励発振回路や位相検出とその調整などが必要となる。本発明の熱伝導型気圧センサでは、共振を利用しても良いが、必ずしもその必要がなく、薄膜ヒータの熱時定数を考慮した加熱冷却の繰り返しだけで済むので、単純な回路構成で済むという利点がある。
【0039】
本発明の熱伝導型気圧センサでは、一般にシリコン(Si)基板のMEMS技術による熱分離した薄膜は、SOI基板を利用するので、SOI基板のSOI層とBOX層(SiO層)の二層が利用できるから特別の構造や材料を新たに設ける必要が無い。従って、シリコン(Si)とシリコン酸化膜(SiO2)を主たる二層で基板から熱分離した薄膜を構成することで、極めて熱膨張係数の大きなSiと極めて熱膨張係数の小さな二層の組み合わせが可能なので、安価に高感度の熱伝導型気圧センサが提供できる。
【0040】
本発明の熱伝導型気圧センサでは、基板から熱分離した薄膜をカンチレバ形状にして、加熱手段と励振手段との組み合わせにより、大きな薄膜の振動が得られ、その分、強制対流が大きくなり気圧に対する感度が増大できるという利点がある。
【0041】
本発明の熱伝導型気圧センサでは、加熱手段として基板から熱分離した薄膜に形成した薄膜ヒータを用い、基板支持部付近に形成できるので、大きな薄膜振動が得られるという利点がある。
【0042】
本発明の熱伝導型気圧センサでは、基板から熱分離した薄膜のある領域と基板との間の温度差や、薄膜内の熱抵抗部を介して分割した二つの領域の温度差を計測するので、温度差センサとして簡便な熱電対が使用できる。また、このために温度差のゼロ位法が適用できるので、高精度の気圧の計測が可能になる。
【0043】
本発明の熱伝導型気圧センサでは、薄膜ヒータとして、抵抗温度係数が小さい材料を用いることにより、薄膜ヒータの温度による抵抗値の変化が無視できるので、一定電流もしくは一定電圧駆動により、周囲温度より所定の温度上昇分が容易に実現できるという利点がある。一般に、加熱物体は、加熱を停止すると周囲温度に戻るので、周囲温度より所定の温度上昇分を指定できることが重要である。このように、単純な構造で、しかも容易に所定の温度上昇分を一定にすることができるので、周囲温度依存性が無視できる熱伝導型気圧センサが提供できる。
【0044】
本発明の熱伝導型気圧センサでは、基板から熱分離した薄膜をカンチレバ構造にすることにより、薄膜の振動による強制対流の効果が見られない低気圧領域(大体、0.1気圧以下)では、前記薄膜ヒータを加熱状態での熱抵抗部を介して配置してある薄膜温度センサTHAと薄膜温度センサTHBとの温度差から被計測気圧を知るようにしており、高真空では、これらの温度差がゼロになるはずなので、ゼロ位法が適応できる。
【0045】
また、前記薄膜の振動による強制対流の効果が見られる高い気圧領域(大体、0.1気圧以上)では、前記薄膜ヒータを加熱停止させた直後以降の状態での振動による強制対流時の薄膜温度センサTHAと薄膜温度センサTHBとの温度差から被計測気圧を知るようにしてあるので、1気圧以上の高い気圧の計測も可能で、1つの熱伝導型気圧センサのセンサチップを用いて、極めて高真空(低い気圧)から高い気圧までの広帯域の熱伝導型気圧センサが提供できるという利点がある。
【0046】
本発明の熱伝導型気圧センサでは、前記基板に形成した温度センサと加熱手段とを覆うように設けたキャップが、密閉せずに周囲気体の流れを妨げるようにしてあるので、真空排気中の気流の影響も無視できるようになるという利点がある。
【0047】
本発明の熱伝導型気圧センサでは、温度センサの出力を出力電流となるようにして、出力電流を所定の時間だけコンデンサなどを利用して積分して、出力電圧に変換し、出力電圧を利用して被計測気圧を知るようにしてあり、更に、初期状態の戻るように定期的にコンデンサの電荷を放電させるので、簡便な高感度で高精度の熱伝導型気圧センサが提供できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の熱伝導型気圧センサに関し、SOI層11を有する基板1を用いて作成し、更に熱電対ヒータとしての薄膜ヒータ25を有する熱伝導型センサチップ100の一実施例を示す平面概略図である。(実施例1)
【図2】図1に示す本発明の熱伝導型気圧センサのX−X断面における横断面の概略図である。(実施例1)
【図3】本発明の熱伝導型気圧センサの熱伝導型センサチップ100の他の一実施例の平面概略図である。(実施例2)
【図4】本発明の熱伝導型気圧センサに関し、熱伝導型センサチップ100の他の一実施例を示す平面概略図である。(実施例3)
【図5】本発明の熱伝導型気圧センサに関し、被計測気圧を高感度に計測できるようにした回路の一実施例の回路の概略図である。(実施例4)
【図6】図5における演算増幅器320を非反転増幅器として利用し、その入力端子付近を中心に示した一実施例の回路の概略図である。(実施例4)
【図7】本発明の熱伝導型気圧センサに関し、ヒートシンク150も含む基板1にキャップ60を設けた場合の一実施例を示す横断面の概略図である。(実施例5)
【図8】本発明の熱伝導型気圧センサに関し、そのシステム構成の一実施例の概略をブロック図に示したものである。(実施例6)
【図9】本発明の熱伝導型気圧センサの、100ミリ秒加熱、100ミリ秒冷却の場合の出力電圧の波形を示す。
【図10】本発明の熱伝導型気圧センサの図9におけるP1時点での、圧力対出力電圧の関係を示す特性である。
【図11】本発明の熱伝導型気圧センサでの、加熱励振ありの場合と、なしの場合での圧力対出力電圧の関係を示す特性で、実施例2の図3における温度センサとしての熱電対24aと熱電対24bとの差の出力から求めたもので、実施例2の図3における温度センサとしての熱電対24aと熱電対24bとの差の出力から求めたものであり、図9のP2時点において計測したものである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の熱伝導型気圧センサは、SOI基板を利用し、このSOI層であるSi層とそのBOX層であるSiO2層を主たる二層とするMEMS技術により基板から熱分離した薄膜としてのカンチレバ状に形成する。温度センサとして、温度差センサであるn型Si薄膜層と金属薄膜とからなる薄膜熱電対を利用する。p型のSOI層を用意し、SOI層であるSi層にn型の高濃度不純物を添加しておくか、もしくは、最初からn型の高濃度不純物を添加したSOI層の基板を用いるかしておき、低抵抗のn型Si薄膜層とその上にBOX層であるSiO2層よりも極めて薄いSiO2膜を形成して、更にその上にニッケル(Ni)などの金属薄膜を形成して、熱電対の一方の導体としてのn型Si薄膜層と他方の導体としての金属薄膜との接触部分をカンチレバ先端に形成した薄膜熱電対を利用する。
【0050】
特に薄膜熱電対を1対の熱電対で済む電流検出型熱電対として利用すると高感度で好適である。もちろん、1対の熱電対の代りにサーモパイルを使用しても良い。温度センサに対して、加熱手段としてカンチレバの支持部に近い側に、例えば、ニクロム薄膜の薄膜ヒータを設ける。
【0051】
また、加熱手段としても薄膜熱電対を利用することができる。これは、カンチレバの支持部に近い側に、例えば、薄膜熱電対をもう1つ設けておき、これをカンチレバ先端の温度変化検出用の前記の熱電対の基準の温度を検出するための熱電対として利用する(カンチレバの支持基板とこの熱電対を構成するn型Si薄膜層と金属薄膜との接触部分との温度差を計測することができる)と共に、薄膜ヒータとしても利用するものである。もちろん、金属薄膜などの薄膜ヒータにしても良い。これらの加熱手段を用いて、薄膜カンチレバの熱時定数近くの加熱時間で薄膜カンチレバを加熱する。冷却時間は任意に選ぶことができるが、加熱冷却を薄膜カンチレバの熱時定数近くの周期で繰り返し加熱することにより、SOI層であるSi層とBOX層であるSiO2層を主たる二層とするバイメタル構造の熱膨張による反り曲がりを利用した励振手段とするとよい。このようにして、薄膜カンチレバを振動させて周囲の気体に気流を発生させて、加熱した薄膜カンチレバからの熱の逃げを促進して1気圧やそれ以上の気圧においても高感度に気圧が計測できるようにする。
【実施例1】
【0052】
図1は、本発明の熱伝導型気圧センサに関し、SOI層を有する基板1を用いて作成し、更に加熱手段としての薄膜ヒータ25を有する熱伝導型センサチップ100の一実施例を示す平面概略図である。ここでは、空洞40にカンチレバ15として基板10から飛び出した構造のSOI層(例えば、10μm厚)(Si層)とその下にあるSiO膜(例えば、1μm厚)からなるBOX層(シリコン酸化膜層)とを主たる二層としたカンチレバ状の薄膜(例えば、700μm長)を、基板から熱分離した薄膜10とした場合であり、この薄膜10を、薄膜10Aと薄膜10Bとに二分割した場合である。そして、これらの二層の熱膨張係数の違いによりカンチレバ15をバイモルフ振動させるようにして励振手段を設けた場合であり、また、薄膜10Bは、薄膜10Aから熱抵抗部45bを介してカンチレバ15状に飛び出し、更に、薄膜10Aも基板1から別の熱抵抗部45aを介してカンチレバ状に飛び出した構造になっている。そして、これらの熱抵抗部45a, 45bは、共に薄膜10に形成したそれぞれのスリット42a、42bにより幅が狭い構造で、基板1への熱伝導を小さくして、温度変化が大きくなるようにしている。薄膜10Aには、温度センサ20として、縮退するほど高濃度に不純物を拡散したn型拡散領域(SOI層)薄膜を熱電対第2導体121aとニッケル薄膜などの熱電対第1導体120aからなる熱電対24a(薄膜温度センサTHA)が形成され、加熱手段の薄膜ヒータ25である熱電対ヒータとしても動作できるようにしてある。また、薄膜10Bに形成した熱電対24b(薄膜温度センサTHB)もその構成は熱電対24aと同様で、電流検出型熱電対として、薄膜10Aに近い方のオーム性コンタクト29bを設け、そこから基板1に向かって、熱電対24bの熱電対第1導体120bと同一金属材料である配線110により電極パッド71aに導いているので、薄膜10Bに形成した熱電対24bは、ほぼ、薄膜10Aに形成した薄膜ヒータ25の温度に近い薄膜10Bのオーム性コンタクト29bを基準(ヒータ近くなので、一般には、温接点となる)として、そこからカンチレバ15の先端部にある薄膜10Bに形成した熱電対24bの冷接点となるオーム性コンタクト29’b(ヒータ側より温度が下がるため)までの温度差を計測することになる。薄膜10Bに形成した熱電対24bは、電極パッド71aと電極パッド71bとを用いて、電流検出型熱電対として動作させると、高感度に温度差を検出することができる。
【0053】
本発明の熱伝導型気圧センサにおける図1に示す構造では、ピラニ型薄膜真空センサに応用した場合の動作を説明すると次のようである。(宙に浮いた)薄膜10Aに形成されている加熱手段としての薄膜ヒータ25(熱電対ヒータ)で、薄膜10Aをジュール加熱したとき、薄膜10Aの熱抵抗部45aが最も抵抗が大きくなるので、最も加熱される領域は、この基板側に近く細くて長い熱抵抗部45a(主に、この領域の抵抗が大きいn型拡散領域21で発熱する)である。また、このとき高真空度、たとえば、10−4Paにおいて、周囲環境温度Tcよりも、例えば100℃程度、高い温度になるように、間欠の矩形波電流パルスを流し加熱制御する。このとき、薄膜10Bは、薄膜10Aからカンチレバ状に飛び出した構造であること、さらに、100℃程度では、輻射による熱放射は極めて小さいので、高真空度の下では、薄膜10Bと薄膜10Aの温度とは、ほぼ等しい温度となる。すなわち、高真空度では、薄膜10Bと薄膜10Aとの温度差は、ほぼゼロとなり、薄膜10Bの熱電対24bの熱起電力がゼロであり、したがって、これ電流検出型熱電対として使用すれば、その短絡電流もゼロとなる。このように、薄膜10Bの熱電対24bとして、薄膜10Aを基準とした温度差のみ計測する電流検出型熱電対を使用すると、高精度計測であるゼロ位法が適用できるので、特に高真空度において高精度に真空度が計測できる。なお、薄膜10Aの温度は、薄膜ヒータ25(熱電対ヒータ)の加熱を止めて、薄膜ヒータ25を本来の熱電対として動作させることにより、その直後の温度や時間経過後の温度を計測して、加熱を止める直前の温度を知ることができる。この温度計測によりゼロ位法が適用できるものである。
【0054】
薄膜10の熱時定数は、基板から熱分離しており熱容量が小さいので、例えば、25ミリ秒程度と小さい。この場合、薄膜10Aの温度を薄膜ヒータ25への矩形波電流供給によりほぼ100℃になるように、矩形波電流を薄膜10Aの熱時定数である20ミリ秒より少し長めの30ミリ秒程度流し、また、30ミリ秒程度の時間間隔だけ電流供給を止めて、冷却期間とする。このような繰り返しの間欠電流加熱により、薄膜10の加熱冷却を繰り返すと、薄膜10は、カンチレバ15状の薄膜10Aと薄膜10Bとからなる薄膜10は、加熱前は、基板1の表面からその上方に反り曲がっている。しかし、加熱により、SOI層11であるシリコン(Si)は熱膨張係数が大きいので伸びるのに対して、BOX層であるシリコン酸化膜(SiO膜)は、極めて熱膨張係数が小さいので、ほとんど寸法が変化せず、結局、熱膨張を利用したバイメタルのように、カンチレバ15状の薄膜10は、基板1の表面側に戻るように曲がるようになり、バイモルフ振動の動作をする。このようにして、カンチレバ15状の薄膜10の励振手段として二層の熱膨張の違いにより振動をさせて、1気圧程度の真空に比べて気圧の高い領域では、ピラニ真空センサなどでは、1気圧程度の高い圧力になると、ほとんど感度を有しないのに、本発明の加熱励振させる熱伝導型気圧センサでは、薄膜の加熱し始めにおける薄膜の振動が始まったときの強制対流、もしくは、加熱手段による薄膜の加熱を止めて、冷却してゆく過程での振動を利用した強制対流を引き起こさせて、発熱したカンチレバ15状の薄膜10からの熱伝達を促進させることで、1気圧以上でも高い感度を有することになる。
【0055】
図2には、図1に示す本発明の熱伝導型気圧センサのX−X断面における横断面の概略図を示してあり、カンチレバ状の薄膜10がそこに形成してある熱電対ヒータとしての薄膜ヒータ25の加熱冷却により振動している様子を示している。ここでは、カンチレバ15状の薄膜10Aと薄膜10Bとからなる薄膜10が、厚み10マイクロメートル(μm)程度のp型のSOI層11(実際には、この領域に高濃度n型拡散領域21が形成されている)とBOX層(シリコン酸化膜)51とが大きな熱膨張係数により反り曲がって、振動している様子である。このp型のSOI層11に高濃度にn型不純物(リンなど)を熱拡散して形成したn型拡散領域(SOI層)21を形成して温度センサ20としての温度差センサである熱電対24が形成してある。
【0056】
なお、p型のSOI層11に形成したn型拡散領域(SOI層)21は、100℃程度の温度では、これらのpn接合により電気的に薄膜ヒータとしての薄膜ヒータ25と、薄膜10Bに形成した熱電対24bとを電気的に分離してくれるので好都合である。もちろん、pn接合による電気的分離ではなく、例えば、酸化シリコン膜(SiO2膜)での絶縁分離でも良い。
【0057】
薄膜ヒータ25を用いて加熱冷却を繰り返すことにより、カンチレバ15状の薄膜10は上下に振動(バイモルフ振動)し、周囲気体に気流を発生させる。このために加熱されたカンチレバ状の薄膜10は、冷却が促進されてカンチレバ状の薄膜10Bに形成された熱電対24bは、そのカンチレバ状の先端部ほど冷えるので、温度差が拡大して高感度に温度差検出ができる。この冷え方は、周囲気体の気圧が大きいほど大きな気流が発生するので、加熱されたカンチレバ状の薄膜10は冷えやすくなる。このようにして、従来の薄膜ピラニ真空センサでは、1気圧付近、またはそれ以上の気圧領域では、ほとんど感度を有しなかったが、本発明の熱伝導型気圧センサでは、加熱膨張による励振振動により気流を発生させて、加熱された薄膜10の冷却を促進させることで、1気圧付近やそれ以上の気圧でも飽和せずに気圧を計測できる。
【0058】
上述の実施例では、基板1からの熱分離のために宙に浮いた構造にしてある薄膜10として、カンチレバ15を用いていたが、必ずしも、カンチレバ15である必要はなく、空洞40を橋架する両端支持の橋状であっても、また、空洞40の上に形成したダイアフラム構造であっても良い。
【実施例2】
【0059】
図3は、実施例1における本発明の熱伝導型気圧センサの熱伝導型センサチップ100の図1に示す例とほぼ同様であるが、他の一実施例を示したものである。主な違いは、基板から熱分離した薄膜10を、熱抵抗部45bを介して分割形成してある薄膜Aと薄膜Bとに、それぞれ熱電対24a(薄膜温度センサTHA)と熱電対24b(薄膜温度センサTHB)とを形成してあることは同一であるが、これらの熱的基準となる熱電対の冷接点を基板1に形成してあること、これらの二つの熱電対の冷接点として、共有するオーム性コンタクト29として同一の電極パッド70を利用(りよう)するようにしたこと、そして、これらの熱電対24aと熱電対24bのそれぞれの熱電対第2導体121a, 121bを同一のSOI層に形成した同一のn型拡散領域としたこと、カンチレバ状の薄膜10のうち基板1に近い側の薄膜Aには、熱電対24aとは独立に薄膜ヒータ25を形成してあること、従って、薄膜ヒータ25の加熱中でも熱電対24aと熱電対24bとの差の出力がそれらの電極パッド70aと電極パッド70b間から得られ、薄膜Aと薄膜Bとの温度差が求められるようにしたこと、さらに、薄膜ヒータ25は、ニクロム薄膜などの抵抗温度係数が極めて小さい金属薄膜などで形成しており、カンチレバ状薄膜10の基板支持部48を越えて延びており、薄膜10の熱抵抗部45aにおいても加熱されて大きな薄膜10の熱膨張係数の違いによる反り曲がりが大きくなるように設計していることである。
【0060】
ここでの実施例の特長の一つは、極めて高真空である極めて低い気圧の領域では、カンチレバ状薄膜10は、薄膜ヒータ25より先端部側の領域に膜10を2つに分離して、熱抵抗部45bを介して形成した薄膜Aと薄膜Bとは、熱を奪う気体分子が極めて少なくなるので、同一温度、すなわち、薄膜Aと薄膜Bとの温度差がゼロになることである。従って、薄膜ヒータ25で加熱をしていながら、高精度計測法であるゼロ位法が適用できるので、1x10−3Pa程度の高真空まで計測できることになる。
【0061】
もう一つの特長は、同一の熱伝導型センサチップ100の構造でありながら、1気圧(約1x10Pa)付近以上の気圧で有効である熱膨張係数の違いにより強制対流を生じさせて、高い圧力でも感度を有するようにすることができることである。この場合、薄膜ヒータ25の加熱を止めて、冷却時の薄膜Aと薄膜Bとの温度差をこれらのそれぞれに形成した熱電対24aと熱電対24bとを利用して計測することで、高感度に測定できることである。なお、冷却時の薄膜Aと薄膜Bとの温度差は、基板1に近い薄膜Aが、冷却速度が速く、それに対して、熱抵抗部45bを有する薄膜Bの方は、ゆっくり冷却されること、更に、時間が経てば、薄膜Aと薄膜B共に、温度が下がり、元の周囲温度に近づき温度差が無くなるということから、温度差のピークを持つことになる。このピークの大きさは、強制対流の下では、促進されて、しかも気体の圧力依存性を有するので、0.1x10Pa(0.1気圧)程度以上の被計測気圧で有効な気圧センサになることが、実験的に確かめられた。
【実施例3】
【0062】
図4は、本発明の熱伝導型気圧センサに関し、シリコン半導体などの基板1を用いて作成し、更に加熱手段としての薄膜ヒータ25と温度センサ20とを有する熱伝導型センサチップ100の他の一実施例を示す平面概略図であり、同一の基板1に、熱伝導型気圧センサの動作に必要な回路のうち、少なくとも、その一部を集積化した場合である。ここでは、同一のシリコンの単結晶の基板1に加熱手段としての薄膜ヒータ25と温度センサ20とを有するカンチレバ状の熱伝導型センサのセンシング部200の他に、OPアンプを含む熱電対などの温度センサからの被計測気圧に係わる信号を増幅する増幅器(AMP)、薄膜ヒータに電力を供給するための電力用集積回路(Power IC)、データを蓄積するメモリ回路(Memory)及び、データを元に被計測気圧に換算するなどの演算増幅回路(Operational
IC)を搭載した場合を示す。このように、熱伝導型気圧センサの動作に必要な回路の一部を、同一のシリコン基板に搭載しておくことにより、極めてコンパクトな熱伝導型気圧センサのシステムが構築できるので、信号を無線で送信して、離れたところで受信するようにすることができるから、このようなチップを多数、複数の計測したい箇所に設置して、無線により個別の熱伝導型気圧センサのチップを認識するようにすれば、集中管理ができる。もちろん、排気系などの制御システムと連動させて、真空度の制御を達成させることもできる。
【実施例4】
【0063】
図5は、本発明の熱伝導型気圧センサに関し、温度センサの出力を出力電流となるようにして、この出力電流を所定の時間だけ積分して、被計測気圧を高感度に計測できるようにした回路の一実施例の回路の概略を示したものである。ここでは、上記図1や図3などに示す温度センサ20として温度差センサである熱電対(またはサーモパイル)311からの熱起電力に基づく短絡電流Isを、短絡電流計測手段301としての演算増幅器(OPアンプ)320の仮想短絡を利用して発生させて、演算増幅器(OPアンプ)320の反転入力端子と出力端子との間に接続してある積分手段としてのコンデンサC325に電流に比例する電荷を所定の時間Δtだけ貯めこんでおき、この電荷によるコンデンサC325の両端の電圧を出力電圧Voとして観測できるようにした場合である。所定の時間Δtは、外部に設けたクロックパルス発生器(Clock Pulse Generator)により発生したクロックパルス330を用いて、タイミングを取り、時間設定手段303内に設けてあるスイッチ340で、コンデンサC325に貯えられた電荷を充放電させるようにしている。もちろん、電荷ゼロ(初期状態)では、出力電圧Voがゼロであるが、スイッチ340がオフ時に充電が開始されてその期間中に電荷が貯まり、コンデンサC325の両端の電圧である出力電圧Voが、上昇する形で現れる。しかし、スイッチ340がオン時には、放電がスイッチ340を通して開始されて電荷が無くなり、初期状態に戻る。このようにして出力電圧Voは、短絡電流Isと時間Δtとの積を、コンデンサC325の大きさCで除算した形で表現される。一般に、ノイズは、信号と異なり時間平均した場合に正の成分と負の成分とが打ち消しあい、ゼロになるので、コンデンサC325に短絡電流Isを所定の時間Δtだけ充電することにより、信号対ノイズ比(S/N比)が大きくなり、安定でS/N比の大きな信号増幅ができる。このように実際のコンデンサC325の両端の電圧である出力電圧Voは、短絡電流Isを時間Δtだけ積分した電荷に対応する出力電圧であり、時間tと共に変化し、所定の積分時間Δt経過したと時に最大となり、その後のスイッチ340オン時には、放電のために電圧は急激にゼロに向かう。従って、出力電圧Voの最大値を安定に表示するために、演算増幅器(OPアンプ)320の後段に、電圧出力手段305としてのピークホールド回路350を接続して、直流としての安定な出力電圧V0pを取出し、被測定気圧の算出のデータとして利用する。なお、上記図1や図3などに示す温度センサ20としての熱電対24a(薄膜温度センサTHA)と熱電対24b(薄膜温度センサTHB)との温度差に基づくゼーベック短絡電流Isの計測にも好適である。
【0064】
図6には、上記図5(5)における短絡電流計測手段301の演算増幅器(OPアンプ)320を非反転増幅器として利用した場合で、上記図5の演算増幅器(OPアンプ)320の入力端子付近を中心に示してあり、他の回路部分は省略したものである。ここでは、仮想短絡となる入力端子の反転入力端子321には、熱電対やサーモパイル311の内部抵抗よりも小さい抵抗307を接続し、等価的短絡電流Isを大きくさせた等価的なゼーベック短絡電流検出回路とした場合であり、電流が流れず、ほぼ電位のみ与える非反転入力端子322とアースとの間には温度センサ20としての熱電対やサーモパイル311を接続する場合である。この場合も動作は、上述の図5用いた場合とほぼ同等なので、ここでは説明を省略する。
【実施例5】
【0065】
図7は、本発明の熱伝導型気圧センサに関し、ヒートシンク150も描いて、基板1にキャップ60を設けた場合の熱伝導型センサの基板1付近の一実施例を示す横断面の概略図であり、上述の基板1に形成した温度センサ20と加熱手段である薄膜ヒータ25とを覆うように孔43を有するキャップ60を設けて、真空排気時などの気流を緩和し、気流が熱伝導型気圧センサのセンシング部200に直接、触れないようにしている。このためにキャップ60を密閉しないようにし、幾つかの孔43を設けて真空排気時などには、周囲気体の流れを妨げるようにした場合である。
【0066】
孔43を有するキャップ60は、アルミニウム板などの金属やプラスチックなどの材料を用いることができるし、ヒートシンク150の材料は熱伝導率が良いものが好適で、銅板やアルミニウム板が好適である。基板1とヒートシンク150との接合物質160の材料も熱伝導率の良い金属的なものが最適である。ここでは、ヒートシンク150上に電気絶縁体の電極パッド台80を介してワイヤリングした場合で、ワイヤで配線110を形成した場合を示している。ここでは、更に、他のリード線などは省略している。
【0067】
図7に示した実施例では、キャップ60を基板1に設けた場合の一実施例であったが、キャップ60は、例えば、ヒートシンク150上に設けても良いし、これらを包むように覆うようにしても良い。
【実施例6】
【0068】
図8は、本発明の熱伝導型気圧センサに関し、そのシステム構成の一実施例の概略をブロック図に示したものである。ここでは、加熱手段の温度を制御する温度制御回路(Temperature control circuits)、励振手段を駆動する励振駆動回路(Driving circuits
for excitation of vibration)、温度センサからの信号を増幅する増幅回路(Amplifier)、この増幅回路出力を利用して気圧に変換する演算回路(Operational
circuits)を内蔵したシステム構成の場合を示している。
【0069】
それぞれの回路については、上記実施例で述べてあること、公知の技術で達成できることからここでの詳細の説明は省略する。
【0070】
ここで、図9は、本発明の熱伝導型気圧センサの、100ミリ秒加熱、100ミリ秒冷却の場合の出力電圧の波形を示す。また、図10は、 本発明の熱伝導型気圧センサの図9のP1時点における、圧力対出力電圧の関係を示す特性である。更に、図11は、本発明の熱伝導型気圧センサでの、加熱励振ありの場合と、なしの場合での圧力対出力電圧の関係を示す特性で、実施例2の図3における温度センサとしての熱電対24aと熱電対24bとの差の出力から求めたものであり、図9のP2時点において計測したものである。
【0071】
本発明の熱伝導型気圧センサは、本実施例に限定されることはなく、本発明の主旨、作用および効果が同一でありながら、当然、種々の変形がありうる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の熱伝導型気圧センサは、従来の熱伝導型気圧センサでは測定が困難であった領域の1気圧(約1x10Pa)付近または、それ以上の気圧の計測にも高感度でしかも高精度で、しかも単純な構造と回路構成で達成できること、高真空である1x10−3Paの極低気圧までの極めて広範囲の気圧(8桁以上)を、1個の熱伝導型センサチップを用いて測定ができるものである。したがって、真空センサとしての役割のほかに、車のタイヤ圧センサなどの圧力の高い領域の気圧センサとしても利用が期待できる。
【符号の説明】
【0073】
1 基板
10、10A、10B 薄膜
11 SOI層
12 下地基板
15 カンチレバ
20 温度センサ
21 n型拡散領域(SOI層)
24、24a、 24b 熱電対
25 薄膜ヒータ
29、29a、29‘a、 29b、29’b オーム性コンタクト
40、41 空洞
42、42a、 42b スリット
43 孔
45、45a、 45b 熱抵抗部
48 基板支持部
50 シリコン酸化膜
51 BOX層(シリコン酸化膜)
60 キャップ
70、70a、70b 電極パッド
71、71a、71b 電極パッド
80 電極パッド台
100 熱伝導型センサチップ
110 配線
120、120a, 120b 熱電対第1導体
121、121a, 121b 熱電対第2導体
150 ヒ―トシンク
160 接合物質
200 熱伝導型センサのセンシング部
301 短絡電流計測手段
302 積分手段
303 時間設定手段
305 電圧出力手段
307 抵抗
311 熱電対(またはサーモパイル)
320 演算増幅器(OPアンプ)
321 反転入力端子
322 非反転入力端子
325 コンデンサC
330 クロックパルス
340 スイッチ
350 ピークホールド回路
360 ゼーベック電流積分による温度差検出装置部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板から熱分離した薄膜に、少なくとも1個の薄膜状温度センサと前記薄膜を昇温させる加熱手段および前記薄膜を振動させる励振手段を具備した熱伝導型気圧センサにおいて、前記薄膜は、少なくとも膨張係数の異なる二層以上の薄膜からなり、前記励振手段として、前記加熱手段による間欠加熱時の前記薄膜を構成する主たる二層の熱膨張の違いに基づく反りを利用し、前記反りに基づき、前記加熱手段による前記薄膜の加熱し始めにおける前記薄膜の振動が始まったときの強制対流による温度差を計測するか、もしくは、前記加熱手段による前記薄膜の加熱を止めて、冷却してゆく過程での振動を利用した強制対流による温度差を計測するか、のいずれかの温度差計測を利用し、加熱された前記薄膜から周囲気体への熱伝導を促進させて前記薄膜温度センサの温度変化を増大させるようにして、前記温度変化の増大により被測定気圧の計測感度を増大させるようにしたことを特徴とする熱伝導型気圧センサ。
【請求項2】
前記薄膜をカンチレバ形状としたことを特徴とする請求項1記載の熱伝導型気圧センサ。
【請求項3】
前記温度センサとして、熱電対を用いたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の熱伝導型気圧センサ。
【請求項4】
前記薄膜は、シリコンとシリコン酸化膜の主たる二層を含み、前記シリコンとシリコン酸化膜との熱膨張係数の違いを利用して反りの運動を起こすことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の熱伝導型気圧センサ。
【請求項5】
前記加熱手段に薄膜ヒータを用いたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに1項記載の熱伝導型気圧センサ。
【請求項6】
前記薄膜ヒータの位置を、基板から熱分離した薄膜のうち、温度センサよりも基板支持部に近い側に設けたことを特徴とする請求項5記載の熱伝導型気圧センサ。
【請求項7】
前記薄膜ヒータとして、抵抗温度係数が1000ppm/K以下の導体を用いたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の熱伝導型気圧センサ。
【請求項8】
前記薄膜ヒータとして、熱電対をヒータとしても利用できるようにしたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の熱伝導型気圧センサ。
【請求項9】
前記基板から熱分離した薄膜を、熱抵抗部を介して少なくとも、二つの薄膜Aと薄膜Bとに分割し、それぞれの薄膜Aと薄膜Bに薄膜温度センサTHAと薄膜温度センサTHBを形成してあり、これらの薄膜温度センサTHAと薄膜温度センサTHBとの温度差から被計測気圧を知るようにしたことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の熱伝導型気圧センサ。
【請求項10】
前記薄膜温度センサTHAと薄膜温度センサTHBの双方とも熱電対としたことを特徴とする請求項9記載の熱伝導型気圧センサ。
【請求項11】
前記薄膜の振動による強制対流の効果が見られない低い気圧領域では、前記薄膜ヒータを加熱状態での薄膜温度センサTHAと薄膜温度センサTHBとの温度差から被計測気圧を知るようにし、前記薄膜の振動による強制対流の効果が見られる高い気圧領域では、前記薄膜ヒータを加熱停止させた直後以降の状態での薄膜温度センサTHAと薄膜温度センサTHBとの温度差から被計測気圧を知るようにした請求項9または10のいずれかに記載の熱伝導型気圧センサ。
【請求項12】
前記基板に、熱伝導型気圧センサの動作に必要な回路のうち、少なくとも、その一部を集積化したことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項記載の熱伝導型気圧センサ。
【請求項13】
少なくとも前記基板に形成した温度センサと加熱手段とを覆うように設けたメッシュあるいは穴の開いたキャップによって、密閉されていないが、周囲気体の流れを妨げるようにして、前記温度センサと加熱手段に直接気流が触れないようにしたことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項記載の熱伝導型気圧センサ。
【請求項14】
前記温度センサの出力を出力電流となるようにして、該出力電流を所定の時間だけ積分して、出力電圧に変換し、該出力電圧を利用して被計測気圧を知るようにしたことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項記載の熱伝導型気圧センサ。
【請求項15】
前記加熱手段の温度を制御する温度制御回路、励振手段を駆動する励振駆動回路、温度センサからの信号を増幅する増幅回路、この増幅回路出力を利用して気圧に変換する演算回路をも内蔵したことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項記載の熱伝導型気圧センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−257426(P2011−257426A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180692(P2011−180692)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【分割の表示】特願2009−221294(P2009−221294)の分割
【原出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(391025741)
【Fターム(参考)】