説明

加熱可能なガス選択性透過膜を有するガスセンサ

【解決手段】ガスセンサは、シリコン材料から構成され、外部に加熱器(20)を含む選択性透過膜(13)を有する。膜(13)は、圧力センサを収容する排気されるハウジングを閉じる。ハウジングを囲む領域を排気するとき、熱放散が周囲の空気の全圧力の急速な変化の結果として変化し、その結果、信号のドリフト(drift )が膜(13)の温度調節にもかかわらず生じる。本発明は少なくとも1つの第2加熱器(21,22) を備え、少なくとも1つの第2加熱器の温度が第1加熱器(20)と関係なく調整される。その結果、膜温度が、ハウジング内の全圧力が大幅に変化する場合でも極めて一定である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気されるべく適合され、ガス選択性透過膜によって閉じられているハウジングと、前記膜上に配置された加熱器とを備えたガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第10031882号明細書(レイボルド(Leybold ))は、ヘリウム又は水素のためのガス選択性センサについて述べており、該センサは、ガラス又は別のシリコン材料から作られ、選択性ガス透過膜によって閉じられたハウジングを備えている。ガス圧力を測定するためのガス圧力センサが、ハウジング内に収容されている。排気後、ハウジングの内部に結果として生じるガス圧力は、膜を通過する試験ガスの量を示す。膜は窓状の穿孔を備えたシリコン・ディスクである。前記穿孔には夫々、白金から作られた螺旋形の加熱体が、膜壁上に配置されている。螺旋形の加熱体は、それら全体として、膜が選択的なガス透過性に関する必要な特性を有するように、膜を加熱するための加熱器を形成する。
【0003】
欧州特許出願公開第0831964号明細書(レイボルド(Leybold ))は、シリコンから作られた選択性ガス透過膜のための製造工程について述べている。前記工程では、シリコン・ディスクが、その両面に酸化層を備え、次にエッチングされることにより、ディスクの一面にのみ連続的なSiO2層を保持する。その中間に、窓状の穿孔が、薄膜技術の分野に基づいた方法を用いることにより、穿孔内に螺旋形の加熱体を配置するために形成される。
【0004】
独国特許出願公開第102004034381号明細書(インフィコン(Inficon ))には、膜によって同様に閉じられ、ガス圧力センサを含むハウジングがその中に設けられた選択性ガスセンサが、述べられている。
【0005】
上述されたガスセンサは、石英窓センサとも呼ばれる。ガス選択膜を備えたガスセンサは、容器又は導管が漏れに関して検査される必要があるとき、漏れ検出のために用いられる。検査対象は、例えばヘリウム等の試験ガスで満たされる。その後、試験ガスセンサを用いて、試験ガスの漏れがあった場合に、検査対象の外部で調べられる。多くの場合このために、試験ガスで満たされた対象物は、関連する膜センサと共に排気される試験室に配置されて、それにより試験ガスが漏れがあった場合に放出し、膜センサによって検出されることが可能になる。加熱される膜を備えた石英窓センサは、試験ガス信号がドリフトする(drifting)ことを防ぐために、非常に安定した膜温度を有する必要がある。この信号のドリフト(drift )により、直ちに検出限界に達する。温度調節された加熱器を備えた膜の場合、試験室の排気中のポンプオフ処理が、試験室の急速な圧力降下により、センサのハウジング壁からの熱放散という明確な変化と同時に起こるので、温度が調節されているにもかかわらず信号のドリフト(drift )を生じさせる。従って、比較的大きな試験ガス信号のみが測定され得るか、又は他の場合には、容認できない程長い設定時間が経過するのを待つ必要がある。
【特許文献1】独国特許出願公開第10031882号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0831964号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102004034381号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ガスセンサの信号の安定性が増加し、また、小さな漏れ割合が確実に測定され得るように、膜の所望の温度が高い定常性をもって維持されるガスセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガスセンサは請求項1によって定義されている。このガスセンサは、ガスセンサの膜上に、第1加熱器と関係なく調整される少なくとも1つの第2加熱器を備える。膜の個別の領域の個別の温度調整によって、異なる温度の影響が個々に補われ得る。従って、例えば他の固体に接触しない膜の中央領域が独立した温度調整の対象になり得る一方、膜がハウジングに接する端部領域も独立した温度調整の対象になり得る。それによって、膜温度の高い定常性が、例えば大気圧から高真空程度までの試験室のポンプダウンの間のような全圧力が非常に変わる状況でさえ達成され得る。
【0008】
好ましくは、第1加熱器は、ハウジングの壁と直接接しない膜の領域に配置される一方、第2加熱器は、ハウジングの壁と直接接する領域に配置されている。このように、膜の「自由領域」と「支持領域」との間に差が設定され、個別の温度調整処理が2つの領域で行なわれる。
【0009】
本発明の更なる実施形態によれば、更に2つ以上の加熱器が、特に膜の端部に沿って設けられ得る。
【0010】
好ましくは、膜上の追加の加熱器は夫々自身の接触パッドを備えている。これにより、簡易な電気接触が可能になり、個別の追加の加熱器の独立を保証する。そのための選択肢として、複数の前記第2加熱器が同一の接触パッドを共有することが可能である。
【0011】
第1加熱器が多数の加熱島部(heating island)を適切に含む一方、第2加熱器は並行な導体帯から構成される。通常第2加熱器の後方に配置された容器の壁を有する第2加熱器は、ガス透過性にわずかな影響しかない。この領域では、透過窓が存在せず、その点で加熱器はこうして比較的簡易な設計であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態が、図面を参照して以下に更に詳細に説明される。
【0013】
ここに示されたガス圧力センサは、排気されるべく適合されたハウジング10を備え、該ハウジングは、矩形断面を有し、カップ状の形状を有する。ハウジング10は4 つの側壁11及び1 つの底壁12を有する。底壁12の反対側は膜13によって閉じられている。この膜は、例えばヘリウム及び水素等の軽いガスに対してガスを選択的に透過可能である。ガスへの透過性のために、約250 ℃の一定温度が必要とされる。
【0014】
前記膜13は二酸化ケイ素から作られている。膜の一般的な設計は、独国特許出願公開第10031882号明細書又は欧州特許出願公開第0831964号明細書に述べられている通りである。
【0015】
ハウジング10はホウケイ酸ガラスから作られている。膜支持体13及びハウジング10の材料の類似性のために、両方の構成要素は互いに接合されるか又は成形されることが可能であるので、接着剤又は他のシーリング要素の必要性を除去することができる。
【0016】
ハウジング10は排気された状態である。真空ポンプの接続のために、ハウジングはコネクタ14を備えており、コネクタ14は、動作状態では完全に溶解されているか、又は他の手段によって真空気密に閉じられている。
【0017】
ハウジング10にはガス圧力センサが収容されている。本実施形態では、前記センサは、例えば独国特許出願公開第102004034381号明細書に述べられているようなペニング(Penning )式センサから構成されている。ガス圧力センサ15は、2枚の並行なカソードプレート16を含んでおり、図1ではそれらの内の1枚のみが目に見える。前記カソードプレート16間には、アノードリング17が、アノードリングの軸がプレート面に直角に伸びて配置されている。電源は、カソードプレートとアノードリングとの間に供給される直流を加えるために機能する。電気回路では、電流測定装置がカソード電流又はアノード電流を測定するために配置されている。ペニング(Penning )放電に必要な磁界は、閉じられたハウジング10の外部に配置された永久磁石によって発生する。
【0018】
図2は、膜13のハウジング10から見て外側に向いた側に配置された加熱器の正面図である。第1加熱器20が、膜13の中心領域の、ハウジング10の壁と接しない領域の前方に位置付けられている。従って、第1加熱器20は、容器の前方端部で開口18(図1)と略一致する。第1加熱器20は、欧州特許出願公開第0831964号明細書に係る蛇行状の螺旋形加熱体を含む多数の窓から構成されている。螺旋形加熱体は、SiO2の薄壁層上にスパッタリングされた白金の蛇行部である。前記窓は、チェス盤状のパターンで配置され、膜13の中央領域に亘って均一に分配されている。
【0019】
本実施形態では、ハウジング10は、膜13がその端部側に接合されたフランジ19を含む。端部側の前方に配置された膜の端部は、第2加熱器21,22 を夫々含む。前記第2加熱器は、ハウジングの開口18の上端部及び下端部に沿って配置され、前側の角を回って、接触プレートが位置付けられている膜のより小さな側部上に導かれる。開口18の垂直でより小さな側部に、接触パッド25,26 及び27,28 が配置されており、これらの内で、接触パッド25,26 は夫々第1加熱器20の一端に接続されており、接触パッド27,28 は加熱器21,22 の端部に接続されている。
【0020】
第1加熱器20の蛇行状構造が多数の窓又は加熱島部(heating island)の形状で配置される一方、第2加熱器21,22 は両方共接触パッド27,28 間に延びる平行な導体帯として実現される。
【0021】
加熱器20,21,22は夫々個別に温度調整される。加熱器は、互いと関係なく一定温度に維持される。このように、膜温度の高い定常性が、例えば、ハウジング10の環境の大気圧から高真空までの排気の間のような全圧力が著しく変わる状況でも達成される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ガス選択性のガスセンサの縦断面略図である。
【図2】図1の矢印IIによって示された膜の方向に見た図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス選択性透過膜(13)によって閉じられた排気されるハウジング(10)と、前記膜(13)上に配置された温度調節される第1加熱器(20)とを備えたガスセンサにおいて、
前記膜(13)は、該膜上に配置された少なくとも1つの第2加熱器(21,22) を含み、前記少なくとも1つの第2加熱器は、前記第1加熱器(20)と関係なく調整されることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記第1加熱器(20)は、前記膜(13)の、前記ハウジング(10)の壁と直接接しない領域に配置され、前記第2加熱器(21,22) は、前記ハウジング(10)の壁と直接接する領域に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
2つの第2加熱器(21,22) が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記第2加熱器(21,22) は矩形の膜(13)の2つの平行な端部に沿って配置されていることを特徴とする請求項3に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記膜(13)上の前記第2加熱器(21,22) は、それら自身の接触パッド(27,28) を有することを特徴とする請求項3又は4に記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記第1加熱器(20)は多数の加熱島部(heating island)を含み、前記第2加熱器(21,22) は平行な導体帯を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−540268(P2009−540268A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512529(P2009−512529)
【出願日】平成19年5月4日(2007.5.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054335
【国際公開番号】WO2007/141098
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(500469855)インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (43)
【氏名又は名称原語表記】Inficon GmbH
【住所又は居所原語表記】Bonner Strasse 498, D−50968 Koeln, Germany
【Fターム(参考)】