説明

加熱揉捻製茶法

【課題】荒茶処理工程の段階で被処理茶葉Tを熱気により茶葉の乾燥のし過ぎを抑えながら120〜350℃に加熱して処理をすることにより青臭みが無く、旨味や香味が極めて強く、しかも長期間にわたって旨味や香味の殆んど低下しない茶湯となる荒茶を製造する。
【解決手段】被処理茶葉に温度:120〜350℃の熱気又は高湿度熱気を当てて茶葉からの急激な水分の蒸散を抑えながら加熱し、揉捻し、得られた被処理茶葉を乾燥機等により含有水分を20〜25%程度にまで減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理茶葉を120〜350℃に加熱しながら揉捻することを特徴とする製茶方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
緑茶は、茶園で摘採した生茶葉を先ず95〜105℃程度の蒸気により数十秒間蒸熱して醗酵を止め、次いでこの蒸茶葉に粗揉、揉捻、中揉、精揉等の処理を夫々数十分ずつ加えて荒茶とし、更に、これに火入れ、乾燥、篩分、その他の仕上げ処理を加えて製造する。
尚、この処理工程のうち精揉工程は緑茶に特有のもので茶葉に撚りをかけて細棒状にするものであり、言わば成形工程であって、製品緑茶の香味や旨味を高めるものではない。
また、紅茶は材料生茶葉に蒸熱処理を加えずに充分に醗酵させて荒茶処理を加えるものであり、烏龍茶は材料生茶葉が部分的に醗酵した段階で荒茶処理を加えるものである。
【0003】
荒茶の処理工程は、含有水分が40〜50%程度の蒸茶葉を揉んで葉の組織を軟化させながら徐々に水分を減少させ、含有水分が20〜25%程度になるまで乾燥させ、揉みかためるものである。
即ち、粗揉工程は含有水分が40〜50%程度以上の蒸茶葉を葉打ちをかけながら軽く揉んで含有水分を30〜40%程度にまで減少させるものであり、揉捻工程は粗揉処理により
若干軟化して葉切れが生じにくくなった茶葉を揉捻するもので、これにより茶葉は一層柔らかくなると共に、茶葉を構成する細胞のうちの一部の細胞の細胞膜が破断するものと思われている。
中揉工程は、揉捻処理により充分に軟化した茶葉を軽く揉んで含有水分を25〜30%程度にまで減少させるものであり、精揉工程はその茶葉を往復方向に揉んで細棒状にしながら含有水分を20〜25%程度にまで減少させるものである。
ところで上記した従来の製法による緑茶等は旨味や香味が薄いきらいがあり、必ずしも需要者の嗜好に適うものではなかった。
そのため従来から荒茶に火入れ処理を加えることにより旨味や香味を強める方策はとられてはいた。
荒茶に火入れ処理を加えると、これに残留する青臭みが消え、旨味や香味が強められる。火入れ処理により荒茶の旨味や香味が強くなる理由については詳しくは解明されていないが、荒茶は製品に近い状態にまで処理が進んでいるものであるから、旨味や香味が強まる程度は極めて僅かで、需要者の要求を完全に満足するものにはなりえなかったのである。
【0004】
緑茶等の旨味や香味が薄いのは、荒茶処理工程での処理条件、殊に被処理茶葉を少なくとも50℃以下の低い温度で処理することゝされていることに起因するものと思われる。
例えば、粗揉処理工程では粗揉機には110〜130℃程度の熱風を吹きいれ、被処理茶葉を35〜40℃程度に保ちながら20〜30分間処理を加えるのが適当であるとされていた。
しかも、次の揉捻工程では被処理茶葉は加熱をすることなく(室温で)揉捻処理を加えることゝされているのである。
揉捻をすることにより茶葉は軟化するが旨味や香味が低下することはあっても強められることはない。しかも揉捻をすることにより茶葉が摩擦熱などにより所定の温度より高くなるような場合にはそれを所定の範囲内に抑える方策さえ試みられていたのである。
【特許文献1】特開平10-056968号公報
【特許文献2】特開2006−288230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、従来の製法による緑茶等は旨味や香味が薄いきらいがあり、必ずしも需要者の嗜好に適うものではなかった点である。
殊に近年は、紅茶や緑茶を淹れて飲むのではなく、予め茶湯を作っておいてそれを販売し、飲用しようとする傾向が生じていて、旨味や香味が強く、淹れた後に長期間にわたって変質しないものが求められている点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、荒茶処理工程の段階で材料茶葉を120〜350℃に加熱し揉捻することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の加熱揉捻製茶法は、荒茶処理工程の段階、即ち材料茶葉が半ナマの状態の段階でこれを熱気により茶葉の乾燥のし過ぎを抑えながら120〜350℃に加熱して処理をすることにより青臭みが無く、旨味や香味が極めて強く、しかも長期間にわたって旨味や香味の殆んど低下しない茶湯となる荒茶が得られる。
また、荒茶の処理工程が著しく簡素化され、短縮される。
更に、本発明の加熱揉捻製茶法によれば、従来は殆んど利用されなかった夏番茶や秋冬番茶も処理することが出来るようになる。殊に、熱処理条件を強くすることにより製品茶葉のタンニンの含有量が減少するので、タンニンの少ない茶を得ることが出来る効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
先ず、含有水分が30〜40%程度にまで減少していて、若干軟化して葉切れが生じにくくなっている被処理茶葉に温度:120〜350℃の熱気を当てて茶葉からの急激な水分の蒸散を抑えながら加熱し、揉捻する。尚、この場合、熱気は湿度:60%以上、温度:120〜350℃の高湿度熱気を用いると茶葉からの水分の蒸散の抑制が容易となる。
揉捻の程度は、被処理茶葉が120℃以上になり、茶葉が従来方式の粗揉処理の場合と同程度、若しくはそれよりも柔らかくなり、茶葉を構成する細胞のうちの30%以上の細胞の細胞膜が破断するまでが適当であり、5分間以内にその状態になるようにし、また含有水分が25〜40%程度の範囲に保たれるようにするのが適当である。
続いて、この処理茶葉を火入れ機や乾燥機等により含有水分を20〜25%程度にまで減少させる。
尚、この方法では、被処理茶葉は揉捻するに先立って従来法と同じく材料生茶葉を蒸熱し、粗揉処理するのもよく、或いは材料生茶葉を高湿度熱気により数十秒間加熱しておくのもよい。或いは材料生茶葉に蒸熱処理を加えずに充分に醗酵させたり、材料生茶葉を部分的に醗酵させたものでもよい。
要は材料生茶葉を加熱し、葉打ちをするなどして適度に軟化させて葉切れの生じにくいものにし、揉捻処理が可能な状態にすればよいのである。
【0009】
以下、本発明を図示の実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明を適用するローリング方式の揉捻装置の1実施例の要部を示す説明図、図2はその平面図であって、図中符号1は揉盤、2はカマである。この揉捻装置は揉盤1の中央に熱気の吹き上げ孔3が形成されており、それに熱気又は高湿度熱気の発生装置8が連結されていて、カマ2に120〜350℃の熱気又は湿度が60%以上の高湿度熱気を吹き入れるように構成されている以外は従来の揉捻装置と同様である。
即ち、揉盤1の外方には同期的に回転する支持軸4が樹立されており、それぞれの上端部にはカマ2の半径寸法よりも若干短いアーム5が同一方向に向けて取り付けられている。
カマ2は揉盤1より僅かに上位にあり、その外側にはそれぞれの支持軸4に対応する位置にアーム5よりも若干長いブラケット6が放射状に取り付けられており、それぞれがアーム5に連結されていて、クランク機構を構成している。
そして支持軸3を回転させると、その回転がクランク機構を介してカマ2に伝えられて、これが揉盤1の上で旋回運動をするようになっている。
また、カマ2には圧迫蓋7が取り付けられていて、カマ2に充填された被処理茶葉Tに適度な圧迫力を加えることにより所望の揉捻力を発揮させるようになっている。
【0011】
材料生茶葉に320℃の高湿度熱気を30秒間当てることにより含有水分を38%に調整した被処理茶葉Tをカマ2に充填して揉捻装置を起動させ、これが定常状態に達したところで揉捻を続けながら吹き上げ孔3から270℃の高湿度熱気を吹き上げてカマ2に吹き入れた。
3分間が経過した時点で高湿度熱気の吹き入れを止め、カマ2から被処理茶葉Tを取り出したところ、処理茶葉は240℃に加熱され、充分に揉捻されたものとなった。
また、その処理茶葉は含有水分が35%になっていたのでこれを火入れ機に送り込み210℃の高湿度熱気を当てて30秒間火入れ処理を加え、続いて茶用熱風乾燥機により120℃の熱風を当てて含有水分が20%になるまで乾燥させた。
その結果、香味や旨味が極めて強く、しかも湯茶は長期間にわたって香りや風味が殆んど変わらないものであった。
【実施例2】
【0012】
図3は、スクリュー方式の揉捻装置の1実施例の要部を示す説明図である。
図中符号11は円筒であり、その始端側に被処理茶葉Tの投入口13が形成されており、末端側は開口している。また、円筒11の中心線上には揉捻スクリュー12が取り付けられていて、これを回転させることにより投入口13から連続的に投入される被処理茶葉Tを揉捻して、開口端から押し出すようになっている。又、円筒11の開口端から数十mm程度離れた位置にダンパー14が設けられており、その回転速度や開口端からの間隔を調節することによって被処理茶葉Tに対する揉捻の程度を調節することができるようになっている。
また、円筒11には熱気の吹き入れ孔15が形成されており、それに熱気又は高湿度熱気の発生装置16が連結されていて、円筒11に120〜350℃の熱気又は湿度が60%以上の高湿度熱気を吹き入れるように構成されている。
【0013】
円筒11の熱気吹き入れ孔15より温度が190℃の熱気を吹き入れながら、投入口13から含有水分を38%に調整した被処理茶葉Tを円筒11に連続的に投入して揉捻した。
被処理茶葉Tは円筒11を35秒で通過して排出された。
得られた被処理茶葉は180℃に加熱され、充分に揉捻されたものとなった。
また、その処理茶葉は含有水分が37%になっていたのでこれを茶用熱風乾燥機により120℃熱風を当てて含有水分が20%になるまで乾燥させた。
その結果、香味や旨味が極めて強く、しかも湯茶は長期間にわたって香りや風味が殆んど変わらないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明の加熱揉捻製茶法は、従来の製茶法に比べて荒茶の処理工程が著しく簡素化され、短縮されるうえ、長期間にわたって旨味や香味の殆んど低下しない茶湯となる荒茶が得られるので、ドリンク茶の製造、販売にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ローリング方式の揉捻装置の1実施例の要部を示す説明図である。(実施例1)
【図2】同上平面図である。
【図3】スクリュー方式の揉捻装置の1実施例の要部を示す説明図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0016】
1 揉盤
2 カマ
3 吹き上げ孔
4 支持軸
5 アーム
6 ブラケット
7 圧迫蓋
8 熱気又は高湿度熱気の発生装置
11 円筒
12 揉捻スクリュー
13 投入口
14 ダンパー
15 吹き入れ孔
16 熱気又は高湿度熱気の発生装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
予じめ生茶葉を醗酵させたり、生茶葉を蒸熱し、或いは生茶葉を湿度:60%以上、温度:120〜350℃の高湿度熱気により加熱し、葉打ちをするなどして適度に軟化させて葉切れの生じにくいものにして、揉捻処理が可能な状態にした被処理茶葉を温度:120〜350℃の熱気により茶葉の乾燥のし過ぎを抑えて加熱を加えながら揉捻することを特徴とする加熱揉捻製茶法。
【請求項2】
熱気は湿度:60%以上、温度:120〜350℃の高湿度熱気であることを特徴とする請求項1に記載の加熱揉捻製茶法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−125476(P2008−125476A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316388(P2006−316388)
【出願日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(392025320)
【出願人】(000119450)
【Fターム(参考)】