説明

加熱殺菌用ラベル付き容器、及び加熱殺菌容器用ラベル

【課題】 本発明は、加熱した後であってもラベルに皺が生じ難い加熱殺菌用ラベル付き容器を提供する。
【解決手段】 本発明の加熱殺菌用ラベル付き容器は、シート成形によって形成された容器2と、前記容器2の胴部21の周囲に貼着されたラベル3と、を有し、前記ラベル3は、5mm引き延ばしたときの第1伸縮率が0.1%未満で且つ10mm引き延ばしたときの第2伸縮率が1.0%未満であり、前記ラベル3の両側端部3a,3bが重ならないように貼着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填物の充填前などに加熱殺菌される用途に用いられる加熱殺菌用ラベル付き容器、及び加熱殺菌される容器に用いられる加熱殺菌容器用ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、果汁飲料等の飲料、ゼリー、ヨーグルトなどの食品を入れるため、カップ状の容器(カップ容器)が用いられている。
このような容器に充填物を充填する場合、アセプティック充填が行われることが多い。アセプティック充填とは、容器と充填物の殺菌を別々に行った後、無菌室内で容器内に充填物を充填する方式である。
特許文献1には、アセプティック充填用容器として、熱可塑性ポリエステルからなる内外層の間に酸素吸収層が設けられた多層構造のブロー成形容器が開示されている。このブロー成形容器の胴部の外周の一部又は全面には、商品名などの意匠印刷を施したシュリンクラベルやストレッチラベルが装着されている。
しかしながら、上記ブロー成形容器を製造する際には、多段射出機を用いて多層プリフォームを形成する工程とこれを金型内でブロー成形する工程とが必要である。そのため、容器の製造コストが高くなるという問題点がある。
【0003】
一方、多層シートは比較的安価に製造できるため、この多層シートをシート成形するだけで得られるシート成形容器は、安価に製造できる。
そして、従来、シート成形容器の胴部に、商品名などの意匠印刷が施された紙製ラベルが貼り付けられた、加熱殺菌用の紙ラベル付き容器も知られている。
しかしながら、この紙ラベル付き容器は、アセプティック充填を行う前の容器殺菌工程で高温に曝されると、容器が変形し(膨張及び/又は収縮など)、これに伴い、紙ラベルに皺が生じるという問題点がある。特に、近年、樹脂原料の高騰を背景として、容器は薄肉化される傾向にある。このように薄肉化された容器は特に変形し易く、それに伴い紙ラベルに皺がより生じ易くなってきている。
また、上記ブロー成形容器も同様に薄肉化されると変形し易くなるため、それに装着されたラベルについても前記皺発生の問題が生じるおそれがあるが、特許文献1には、ラベルの皺発生に関する問題点及びそれを解決する手段は、何ら開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−27701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第1の目的は、加熱されても、貼着されたラベルに皺が生じ難い加熱殺菌用ラベル付き容器を提供することである。
本発明の第2の目的は、加熱殺菌容器に貼着した後に加熱されても、皺が生じ難い加熱殺菌容器用ラベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の加熱殺菌用ラベル付き容器は、シート成形によって形成された容器と、前記容器の胴部に貼着されたラベルと、を有し、前記ラベルの第1伸縮率が0.1%未満で且つラベルの第2伸縮率が1.0%未満であり、前記ラベルの両側端部が重ならないように前記ラベルが貼着されている。
ただし、第1伸縮率は、容器の周方向に対応する方向にラベルを引張り(引張り方法は、JIS K 7127のフィルムの引張試験法に準ずる)、前記ラベルを1.05倍に延ばした状態を1秒間保持した後引張り力を解除し、引張り解除後のラベルの長さを測定し、下記式(A)に代入して求められる。第2伸縮率は、容器の周方向に対応する方向にラベルを引張り(引張り方法は、JIS K 7127のフィルムの引張試験法に準ずる)、前記ラベルを1.10倍に延ばした状態を1秒間保持した後引張り力を解除し、引張り解除後のラベルの長さを測定し、下記式(A)に代入して求められる。
式(A):{(引張り解除後のラベルの長さ−引張り前のラベルの長さ)/引張り前のラベルの長さ}×100。
【0007】
上記加熱殺菌用ラベル付き容器は、第1伸縮率が0.1%未満で且つ2伸縮率が1.0%未満であるラベルが用いられている。かかるラベルは、加熱殺菌時に、容器が膨張してもそれに追従でき、一方、膨張した容器が元に戻ってもそれに追従できる。従って、加熱殺菌後に、ラベルの面内に皺が発生し難く、外観的に美麗なラベル付き容器を提供できる。
【0008】
本発明の好ましい加熱殺菌用ラベル付き容器は、前記ラベルの引張り強度が20N/15mm以下である。
ただし、引張り強度は、容器の周方向に対応する方向にラベルを引張り(引張り方法は、JIS K 7127のフィルムの引張試験法に準ずる)、前記ラベルを1.05倍に延ばしたときの強さである。
【0009】
本発明の他の好ましい加熱殺菌用ラベル付き容器は、前記ラベルの120℃での熱収縮率が5%以上10%以下である。
ただし、120℃での熱収縮率は、ラベルを120℃のオイルバスに5秒間浸漬し、浸漬後、容器の周方向に対応する方向におけるラベルの長さを測定し、下記式(B)に代入して求められる。
式(B):{(浸漬前のラベルの長さ−浸漬後のラベルの長さ)/浸漬前のラベルの長さ}×100。
【0010】
本発明の別の局面によれば、加熱殺菌容器用ラベルが提供される。
この加熱殺菌容器用ラベルは、第1伸縮率が0.1%未満で且つ下記第2伸縮率が1.0%未満である。
ただし、第1伸縮率は、一方向にラベルを引張り(引張り方法は、JIS K 7127のフィルムの引張試験法に準ずる)、前記ラベルを1.05倍に延ばした状態を1秒間保持した後引張り力を解除し、引張り解除後のラベルの長さを測定し、下記式(A)に代入して求められる。第2伸縮率は、一方向にラベルを引張り(引張り方法は、JIS K 7127のフィルムの引張試験法に準ずる)、前記ラベルを1.10倍に延ばした状態を1秒間保持した後引張り力を解除し、引張り解除後のラベルの長さを測定し、下記式(A)に代入して求められる。
式(A):{(引張り解除後のラベルの長さ−引張り前のラベルの長さ)/引張り前のラベルの長さ}×100。
【発明の効果】
【0011】
本発明の加熱殺菌用ラベル付き容器は、加熱殺菌処理に供された後、貼着されたラベルに皺が生じ難い。
従って、本発明によれば、加熱殺菌後においてもラベルが美麗に貼着されている加熱殺菌用ラベル付き容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】1つの実施形態に係る加熱殺菌用ラベル付き容器の正面図。
【図2】図1のII−II線で切断した端面図。
【図3】他の実施形態に係る加熱殺菌用ラベル付き容器の正面図。
【図4】1つの実施形態に係るラベルの平面図。
【図5】図4のV−V線で切断した断面図。
【図6】実施例及び比較例で作製したラベルを示す参考平面図。
【図7】実施例及び比較例で作製したラベル付き容器を示す参考正面図。
【図8】伸縮率の測定に使用されたサンプルを示す参考平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
図1及び図2において、本発明の加熱殺菌用ラベル付き容器1は、シート成形によって成形された容器2と、この容器2の胴部21の周囲に巻き付けて貼着されたラベル3と、を有し、前記ラベル3は、その両側端部3a,3bが重ならないように容器2の胴部21に貼着されている。
本発明の加熱殺菌用ラベル付き容器1は、充填物の充填前、充填時又は/及び充填後に、殺菌のために加熱処理が施されるものである。特にアセプティック充填を行う場合、充填物の充填前に加熱殺菌が行われる。
【0014】
(容器2)
容器2は、例えばアセプティック充填のような加熱殺菌処理が行われる容器(加熱殺菌容器)である。
容器2の形状は、例えば、上面が開口された、上面開口部を有する有底筒状である。このような形状の容器2は、カップ状容器とも呼ばれる。
具体的には、容器2は、筒状の胴部21と、その胴部21の下面を閉塞する底部22と、を有する。胴部21の外形は、一般的には円筒状であるが、楕円筒状、四角筒状などの多角筒状に形成されていてもよい。また、胴部21の外形は、図1に示すように、底部22から上面開口部に向かって次第に又は段階的に大径とされた、逆円錐台状に形成されていてもよい。
なお、容器2の上面開口部には、充填物を充填後、適切な蓋材(例えば、シート状蓋)が取り付けられる(蓋材及び充填物は、図示せず)。
容器2の大きさは、特に限定されず、例えば、容積100ミリリットル〜500ミリリットルのものが挙げられる。
【0015】
本発明の容器2は、熱可塑性樹脂シートをシート成形することにより得られる。
シート成形法としては、特に限定されず、真空成形法、圧空成形法などの一般的に公知のシート成形法が挙げられる。
容器2を形成する熱可塑性樹脂シートの材質は、特に限定されず、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルなどが挙げられる。ポリプロピレンなどのポリオレフィンは、果汁のような充填物に対して耐性があるが、耐熱性が低く、加熱殺菌時の熱によって変形し易いという欠点がある。従って、ポリオレフィンを含むシートから形成された容器は、これに貼着されるラベルに、皺を生じさせ易い容器と言える。この点、本発明のラベル3は、後述するように所定の伸縮率を有するので、ポリオレフィンを含むシートから形成された容器に貼着した場合であっても、皺が発生し難い。
【0016】
また、上記容器2を形成する熱可塑性樹脂シートは、図2に示すように、酸素バリア層25を有する多層シートであることが好ましい。熱可塑性樹脂シートが酸素バリア層25を有する多層シートである場合、内外層23,24の間に、酸素バリア層25が積層される。前記内外層23,24としては、上記で例示したようなポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。酸素バリア層25としては、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアミド(MXD6)、ポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。
前記多層シート(熱可塑性樹脂シート)の好ましい層構成としては、ポリプロピレンなどのポリオレフィン/EVOHなどの酸素バリア層/ポリプロピレンなどのポリオレフィン;低密度ポリエチレンなどのシーラント層/ポリプロピレンなどのポリオレフィン/EVOHなどの酸素バリア層/ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリスチレン/EVOHなどの酸素バリア層/ポリスチレン;などが挙げられる。特に好ましくは、ポリプロピレン/EVOH/ポリプロピレンの積層構造を有する多層シートである。
このような多層シートは、各層を接着剤を介して積層するドライラミネート法、各層の樹脂材料を共押出して積層する共押出法、一部の層を溶融押出して積層する熱ラミネーション法などによって、得ることができる。
【0017】
熱可塑性樹脂シートの厚みは、特に限定されず、容器2の機械的強度と原料コストを比較考量して適宜設定される。
例えば、熱可塑性樹脂シートの厚みは、0.1mm〜6.0mmであり、好ましくは、0.5mm〜3.0mmである。熱可塑性樹脂シートが多層シートである場合、内外層の厚みはそれぞれ0.1mm〜2.5mmであり、酸素バリア層の厚みは0.01mm〜1.0mmであることが好ましい。
かかる熱可塑性樹脂シートをシート成形して得られる容器2の胴部21の肉厚は、成形前のシートの厚みよりも薄くなる(一般的には、胴部21の上下方向中央部の肉厚が最も薄くなり、胴部21の下方部(底部22の近傍部分)の肉厚は、これよりも厚く、成形前のシートの厚みに近い)。本発明の加熱殺菌用ラベル付き容器1は、ラベル3が容器2の強度を補うので、上記のような比較的薄肉の容器2も使用することができ、一方、容器2の厚みが比較的薄くても、貼着されたラベル3には皺が発生し難い。
【0018】
(加熱殺菌容器用ラベル)
ラベル3は、上記容器2の胴部21に巻き付けるように貼着されている。
このラベル3は、その両側端部3a,3b(容器2の周方向に対応した方向における両側端部3a,3b)が重ならずに非重合とされていることを条件として、その貼着位置や貼着方法は特に限定されない。ラベルの両側端部3a,3bが重なっていると、加熱時に皺が発生するので好ましくない。
例えば、ラベル3は、容器2の胴部21の周囲に隙間無く貼着されていてもよいが、一般には、図1に示すように、ラベル3は、容器2の胴部21の上方部及び下方部の僅かな部分を除いて、容器2の胴部21の周方向に巻くように貼着される。
【0019】
また、ラベル3は、図1に示すように、その両側端部3a,3bの縁a1,b1が実質的に当接するように貼着されていてもよいし、或いは、図3に示すように、ラベル3の両側端部3a,3bの縁a1,b1が離れて貼着されていてもよい。容器2の収縮によってラベル3の縁同士が押し合って皺が発生することを防止できることから、ラベル3は、ラベル3の両側端部3a,3bの縁a1,b1を離して貼着されていることが好ましい。両側端部3a,3bの縁a1,b1を離して貼着されている場合、両縁a1,b1の間隔(ラベルが貼着されていない容器胴部の一領域における周方向の間隔)は、容器胴部21の全周長の1/2倍以下が好ましく、さらに、1/4倍以下がより好ましく、特に、0.5mm〜5mmが特に好ましい。ラベル3の両側端部3a,3bの縁a1,b1が実質的に当接している、又は、両側端部3a,3bの縁a1,b1の間隔が0.5mm〜5mmであれば、容器胴部21の全周の何れの箇所においても、ラベル3に表示された意匠印刷が見えるので好ましい。
【0020】
ラベル3の平面形状は、特に限定されないが、容器胴部21の略全周に貼着できるようにするため、図4に示すように、略矩形状であることが好ましい。なお、本実施形態の容器胴部21は、逆円錐台状に形成されているため、この胴部21に貼着されるラベル3は、上縁及び下縁が中央において上方に膨らむ円弧状に縁取られた矩形状(略矩形状に含まれる1つの形態)に形成されている。ラベル3が前記円弧状の上縁及び下縁を有する矩形状に形成されている場合、その上縁及び下縁の曲率は、逆円錐台状の容器に従って適宜設定されるが、通常、300R以上である。
【0021】
ラベル3は、意匠印刷が施された基材31と、前記基材31の裏面に設けられた粘着剤層32と、を有する。
意匠印刷は、商品名、絵柄、説明書きなどの所望の意匠を表示するため、基材31にインキを用いて印刷される。意匠印刷は、基材31の表面又は裏面に施される。なお、基材31の表面に意匠印刷が施される場合、該意匠印刷を保護するため、意匠印刷上にオーバーコート層を設けてもよい。
【0022】
基材31は、ラベル3の第1及び第2伸縮率が下記のような要件を満たすように適宜選択される。基材31の材質は、特に限定されず、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル共重合体、各種エラストマーなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。基材は、多層フィルム(例えば、ポリオレフィン層とその他熱可塑性樹脂層が積層された多層フィルムなど)であってもよい。中でも、基材は、ポリオレフィン系フィルム又はポリオレフィンを含む多層フィルムが好ましく、さらに、ポリプロピレン系フィルム又はポリプロピレンを含む多層フィルムがより好ましい。前記ポリプロピレンとしては、プロピレン−エチレンランダム共重合体のようなプロピレンを主成分とする共重合体などが挙げられる。基材を構成するフィルムは、延伸されていてもよいし、無延伸でもよい。
基材31の厚みは特に限定されないが、一般には、30μm〜100μmである。
【0023】
粘着剤層32は、従来公知の粘着剤を基材31の裏面に設けることによって形成されている。粘着剤としては、常温で粘着性を示し且つ押し付けることによって被着体に付着する感圧型粘着剤を用いることが好ましい。感圧型接着剤は熱が加わっても接着強度が低下し難いので、本発明のラベルに好適である。感圧型粘着剤としては、アクリル系、ゴム系などが挙げられる。
粘着剤層32の容器2に対する接着力は、特に限定されないが、好ましくは、前記接着力は5N/25mm以上であり、より好ましくは8N/25mm〜20N/25mmである。接着力が5N/25mm以上であれば、加熱殺菌時に容器2が変形しても、ラベル3の一部が容器2から剥がれるおそれがなく、ラベル3の皺発生を確実に防止できる。一方、接着力が20N/25mmを超えるような粘着剤は、現実的に得ることが困難である。
ただし、前記接着力は、JIS Z 0237(90度引き剥がし粘着力の測定)に準拠して測定できる。
【0024】
ラベル3は、下記第1伸縮率が0.1%未満で且つ下記第2伸縮率が1.0%未満である。好ましくは、ラベル3は、第1伸縮率が0.05%以下で且つ第2伸縮率が0.8%以下である。
第1伸縮率は、JIS K 7127のフィルムの引張試験法に準じて一方向(容器2の周方向に対応する方向)にラベルを引張り、前記ラベルの一方向の長さを、元長に対して1.05倍に延ばした状態を1秒間保持した後引張り力を解除し、引張り解除後のラベルの一方向の長さを測定し、下記式に代入して求められる。第2伸縮率は、ラベルを1.10倍に延ばすこと以外は、前記第1伸縮率と同様にして求められる。具体的には、実施例の伸縮率の測定方法を参照されたい。
式:{(引張り解除後のラベルの一方向の長さ−引張り前のラベルの一方向の長さ)/引張り前のラベルの一方向の長さ}×100。
【0025】
伸縮率は、ラベルに応力を加えて引き延ばし、応力を解除した後、ラベルがどの程度まで元の寸法に戻るかの指標であり、伸縮率が0%に近いラベルほど、元の寸法に戻りやすい。本発明のラベル3は、1.05倍に延ばしたときの伸縮率(第1伸縮率)が0.1%未満であり、且つ1.10倍に延ばしたときの伸縮率(第2伸縮率)が1.0%未満である。かかるラベル3は、少なくとも1.10倍に延ばすことができ、且つそのときの伸縮率が1.0%未満であるため、加熱殺菌時に、容器2が膨張してもそれに十分に追従して伸び、一方、膨張した容器2が元に戻ってもそれに追従して元に戻る。従って、加熱殺菌時に、容器2が変形しても、ラベル3の面内に皺が発生し難い。
【0026】
ラベル3は、上記第1及び第2伸縮率を満たし、さらに、下記引張り強度が20N/15mm以下であることが好ましい。特に、引張り強度が16N/15mm以下であることがより好ましい。
引張り強度は、JIS K 7127のフィルムの引張試験法に準じて一方向(容器2の周方向に対応する方向)にラベル3を引張り、前記ラベル3の一方向の長さを、元長に対して1.05倍に延ばしたときの強さである。具体的には、実施例の引張り強度の測定方法を参照されたい。
【0027】
引張り強度は、ラベルを所定寸法にまで引き延ばす(例えば元長が100mmのラベルを105mmに引き延ばす)ときに、どの程度の力が必要かの指標であり、引張り強度が小さいラベルほど延びやすい。
引張り強度が20N/15mm以下であるラベル3は、加熱殺菌時に、容器2の膨張を阻害し難い。このため、加熱殺菌後に、容器2が歪に変形せず、容器2が歪に変形することに起因する、ラベル3の皺発生を防止できる。
このような引張り強度を有するラベル3を形成するための基材31としては、例えば、無延伸ポリオレフィンフィルムなどが挙げられる。
なお、引張り強度が余りに小さいと、ラベルの機械的強度が低下するため、上記ラベルの引張り強度は、5N/15mm以上であることが好ましい。
【0028】
また、ラベル3は、上記第1及び第2伸縮率を満たし、さらに、下記120℃での熱収縮率が5%以上10%以下であることが好ましく、これに加えて、下記130℃での熱収縮率が7%以上20%以下であることがより好ましい。
120℃での熱収縮率は、ラベル3を120℃のオイルバスに5秒間浸漬し、浸漬後(オイルバスから取り出した後)、一方向(容器2の周方向に対応する方向)におけるラベルの長さを測定し、下記式に代入して求められる。130℃での熱収縮率は、ラベルを130℃のオイルバスに5秒間浸漬すること以外は、前記120℃での熱収縮率と同様にして求められる。具体的には、実施例の熱収縮率の測定方法を参照されたい。
式:{(浸漬前のラベルの一方向の長さ−浸漬後のラベルの一方向の長さ)/浸漬前のラベルの一方向の長さ}×100。
【0029】
熱収縮率が上記範囲のラベル3は、加熱殺菌時、容器2が収縮するときに(例えば膨張した容器2が元に戻るときに)、その容器2に追従して適度に収縮し得る。従って、加熱殺菌時に、容器2が収縮しても、ラベル3の面内に皺が発生し難い。なお、120℃での熱収縮率が5%未満である場合には、容器2の収縮に追従するほどにラベル3が収縮しない虞がある。一方、120℃での熱収縮率が10%を超える場合には、ラベルが熱収縮し過ぎることにより容器が微妙に変形し、この容器変形に起因してラベルの面内に皺発生する虞がある。
このような熱収縮性を有するラベル3を形成するための基材31としては、例えば、少なくとも一方向に延伸されたポリオレフィンフィルムなどが挙げられる。
なお、上記のように一方向に熱収縮性を有するラベル3は、他方向にも若干熱収縮又は若干熱膨張する性質を有していてもよい。他方向にも熱収縮性又は熱膨張性を有する場合、前記他方向における熱収縮率は、120℃で5秒間浸漬測定の場合で−1%〜3%程度が好ましく、特に、120℃で5秒間浸漬測定及び130℃で5秒間浸漬測定の何れの場合でも−1%〜3%程度がより好ましい。なお、他方向における熱収縮率の測定方法は、上記一方向における熱収縮率の測定方法と同様である。
【0030】
さらに、本発明のラベル3は、上記第1伸縮率が0.1%未満で且つ第2伸縮率が1.0%未満で、上記引張り強度が20N/15mm以下で(好ましくは16N/15mm以下)、且つ、上記120℃での熱収縮率が5%以上10%以下であることが好ましく、これに加えて、上記130℃での熱収縮率が7%以上20%以下であることがより好ましい。
なお、上記ラベル3の第1伸縮率、第2伸縮率、引張り強度及び熱収縮率に関して、次の点に留意されたい。
逆円錐台状の容器2の胴部にラベル3が貼着される場合、容器の胴部に貼着されたラベルの周方向と、容器の胴部に貼着する前のラベル3の一方向とは、厳密には平行でない。なぜなら、逆円錐台状の容器2の胴部の形状に従い、貼着後のラベルも逆円錐台の筒状となるからである。もっとも、前記貼着後のラベル3の周方向と貼着前のラベル3の一方向とは、殆ど平行であると言え、両方向における上記第1伸縮率などの値は、実質的に変わらない。よって、本発明においては、ラベル3の一方向における第1伸縮率、第1伸縮率、第2伸縮率、引張り強度及び熱収縮率を、容器の周方向に対応する方向における第1伸縮率、第1伸縮率、第2伸縮率、引張り強度及び熱収縮率と見なしている。
【0031】
本発明の加熱殺菌用ラベル付き容器1は、各種の加熱殺菌処理に供される。
加熱殺菌処理は、充填物の充填前、充填時又は/及び充填後の何れの段階で行われてもよい。
加熱殺菌処理の条件は、充填物の種類及び殺菌方法などに応じて適宜設定されるが、一般的に、ラベル付き容器1は、100℃以上に加熱される。
好ましくは、本発明の加熱殺菌用ラベル付き容器1は、アセプティック充填に供される。具体的には、アセプティック充填は、例えば、ラベル付き容器の内部(充填物を入れる容器の内部)に、160℃程度の過酸化水素水を霧状にして1秒間噴霧した後、約1秒間放置するというサイクルを4回繰り返す工程、その後、160℃の熱風を2秒間吹き付けて容器を加熱して乾燥する工程、その後、別ルートで加熱殺菌処理された充填物を容器内に充填する工程、その後、蓋を閉じ、冷却する工程、からなる。
充填物は、特に限定されず、果汁飲料などの飲料、ゼリー、ヨーグルトなどの各種食品が挙げられる。
本発明の加熱殺菌用ラベル付き容器1は、加熱殺菌によってラベル3に皺が生じることを防止できる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をさらに説明する。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0033】
[使用したラベル基材]
(1)基材A
厚み70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(リンテック(株)製、商品名「カイナス KEP70WA」)。
(2)基材B
厚み70μmの一軸延伸ポリオレフィンフィルム(ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの積層フィルムであって、MD方向に延伸処理が施されているフィルム)(Avery Dennison Corporation製、商品名「Primax 300SMTC」)。
(3)基材C
厚み50μmの発泡ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「クリスパー」)。
(4)基材D
厚み80μmの発泡ポリプロピレンフィルム((株)ユポ・コーポレーション製、商品名「ユポ」)。
【0034】
[実施例1]
基材Aの裏面に、アクリル系粘着剤(綜研化学株式会社製、商品名「SKダイン1717」)を厚み25μmでベタ状に塗工した。この粘着剤の面に離型紙を貼り合わせて、積層体を作製した。次に、この積層体を、図6に示すような、円弧状の上縁及び下縁を有する略矩形状に打ち抜くことにより、実施例1のラベルを作製した(ラベルの上縁における曲率:504R、下縁における曲率:433R)。なお、同一のラベルを複数枚作製した。
このラベルの第1伸縮率、第2伸縮率、引張り強度、及び熱収縮率を、下記の測定方法に従って測定した。その結果を表1及び表2に示す。
【0035】
次に、実施例1のラベルを離型紙から外し、そのラベルのMD方向が容器の周方向となるようにして、容器の胴部に巻き付け、粘着剤を介して貼着することにより、ラベル付き容器を作製した(図7参照)。貼着されたラベルの両側端部の縁の間隔は、約5mmであった。
なお、容器は、図7に示すような逆円錐台状(胴部の上端における直径:58mm、胴部の下端における直径:50mm、胴部の高さ:82mm。ただし、これら胴部の寸法には、フランジ部を含まない)であり、ポリプロピレン/エチレン−ビニルアルコール共重合体/ポリプロピレンの厚み1.6mmの多層シートのシート成形容器を使用した。
得られたラベル付き容器の上面開から容器の内部に、160℃の過酸化水素水を霧状にして1秒間噴霧した後、約1秒間放置するというサイクルを4回繰り返した後、直ちに、160℃の熱風を2秒間吹き付けた後、室温下で10分間放置した。そのラベルの外観を観察した結果を、表3に示す。
【0036】
[実施例2]
基材Aに代えて、基材Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のラベルを作製した。このラベルの第1伸縮率、第2伸縮率、引張り強度、及び熱収縮率を、下記の測定方法に従って測定した。その結果を表1及び表2に示す。
実施例2のラベルを、実施例1と同様にして、容器の胴部に貼着してラベル付き容器を作製した。このラベル付き容器を、実施例1と同様にして、加熱試験を行い、ラベルの外観を観察した。その結果を表3に示す。
【0037】
[比較例1]
基材Aに代えて、基材Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のラベルを作製した。このラベルの第1伸縮率、第2伸縮率、引張り強度、及び熱収縮率を、下記の測定方法に従って測定した。その結果を表1及び表2に示す。
比較例1のラベルを、実施例1と同様にして、容器の胴部に貼着してラベル付き容器を作製した。このラベル付き容器を、実施例1と同様にして、加熱試験を行い、ラベルの外観を観察した。その結果を表3に示す。
【0038】
[比較例2]
基材Aに代えて、基材Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2のラベルを作製した。このラベルの第1伸縮率、第2伸縮率、引張り強度、及び熱収縮率を、下記の測定方法に従って測定した。その結果を表1及び表2に示す。
比較例2のラベルを、実施例1と同様にして、容器の胴部に貼着してラベル付き容器を作製した。このラベル付き容器を、実施例1と同様にして、加熱試験を行い、ラベルの外観を観察した。その結果を表3に示す。
【0039】
[各ラベルの第1伸縮率の測定方法]
図8に示すように、各ラベルの略中心領域において、基材のMD方向に140mm、TD方向に15mmに切断して測定用サンプルを作製した。このサンプルの一側縁から20mm及び120mm離れた位置に、標線をそれぞれ描いた。このサンプルを離型紙から波がした後、その両端部に、応力測定器((株)島津製作所製、製品名「オートグラフ」)のチャックの各端部が前記標線に一致するように取り付けた。従って、測定前の応力測定器のチャック間距離(チャック間に存在しているサンプルの長さ。図7の符号XYで示す長さ)は、100mmである。
そして、各チャックをJIS K 7127に準じた方法でMD方向に離反させることによって、サンプルを引張ってチャック間距離XYを105mmとし(つまり、サンプルを元長に対して1.05倍に引き延ばし)、その状態を1秒間保持した後、引張り力を解除した。解除した後、直ちに、サンプルの両標線間の長さを測った。その測定値を下記式に代入することにより、第1伸縮率を求めた。なお、第1伸縮率は、基材(ラベル)のMD方向における伸縮率であるが、この第1伸縮率は、ラベルが容器に貼着された後には、容器の周方向に対応した方向における伸縮率と実質的に同一である。
式:{(引張り解除後のラベルの両標線間の長さ−引張り前のラベルの両標線間の長さ)/引張り前のラベルの両標線間の長さ}×100={(引張り解除後の両標線間の長さ−100)/100}×100。
【0040】
[各ラベルの第2伸縮率の測定方法]
チャックによってサンプルを引張ったときのチャック間距離XYを110mmとした(つまり、サンプルを元長に対して1.10倍に引き延ばした)こと以外は、上記第1伸縮率と同様にして、第2伸縮率を測定した。なお、第2伸縮率は、基材のMD方向における伸縮率であるが、この第2伸縮率は、ラベルが容器に貼着された後には、容器の周方向に対応した方向における伸縮率と実質的に同一である。
【0041】
[各ラベルの引張り強度の測定方法]
上記第1伸縮率の測定時に、サンプルを引張ってチャック間距離XYを105mmとしたときのチャックの引張り力(引張り強度)を、応力測定器から読み取った。
ただし、引張り強度の測定値は、3つのサンプルの平均値である。
【0042】
[各ラベルの120℃での熱収縮率の測定方法]
各ラベルの略中心領域において、基材のMD方向に50mm、TD方向に50mmに切断して測定用サンプルを作製した。このサンプルを、120℃のオイルバス中に5秒間浸漬した後、取り出した。取り出し後、直ちに、サンプルのMD方向の長さ及びTD方向の長さを測った。その測定値を、下記式に代入することにより、120℃での熱収縮率(MD方向及びTD方向それぞれの熱収縮率)を求めた。
式:{(浸漬前のラベルのMD方向の長さ(又は浸漬前のラベルのTD方向の長さ)−浸漬後のラベルのMD方向の長さ(又は浸漬後のラベルのTD方向の長さ))/浸漬前のラベルのMD方向の長さ(又は浸漬前のラベルのTD方向の長さ)}×100={(50−浸漬後のラベルのMD方向の長さ(又は浸漬後のラベルのTD方向の長さ))/50}×100。
ただし、120℃での熱収縮率の測定値は、3つのサンプルの平均値である。
【0043】
[各ラベルの130℃での熱収縮率の測定方法]
オイルバスの温度を130℃としたこと以外は、上記120℃での熱収縮率の測定方法と同様にして、130℃での熱収縮率(MD方向及びTD方向それぞれの熱収縮率)を求めた。
ただし、130℃での熱収縮率の測定値は、3つのサンプルの平均値である。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
[評価]
実施例1及び2のラベル付き容器は、加熱試験後においても皺が発生しなかった。第1伸縮率が0.1以上である基材Cを用いた場合(比較例1)、及び、第2伸縮率が1.0以上である基材Dを用いた場合(比較例2)は、いずれもラベルの面内に皺が発生した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の加熱殺菌用ラベル付き容器は、例えば、アセプティック充填によって充填物を入れる容器として利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1…加熱殺菌用ラベル付き容器、2…容器、21…容器の胴部、3…加熱殺菌容器用ラベル、3a,3b…ラベルの側端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート成形によって形成された容器と、前記容器の胴部に貼着されたラベルと、を有し、
前記ラベルは、下記第1伸縮率が0.1%未満で且つ下記第2伸縮率が1.0%未満であり、
前記ラベルの両側端部が重ならないように前記ラベルが貼着されていることを特徴とする加熱殺菌用ラベル付き容器。
第1伸縮率は、JIS K 7127のフィルムの引張試験法に準じて容器の周方向に対応する方向にラベルを引張り、前記ラベルを1.05倍に延ばした状態を1秒間保持した後引張り力を解除し、引張り解除後のラベルの長さを測定し、下記式(A)に代入して求められる。
第2伸縮率は、JIS K 7127のフィルムの引張試験法に準じて容器の周方向に対応する方向にラベルを引張り、前記ラベルを1.10倍に延ばした状態を1秒間保持した後引張り力を解除し、引張り解除後のラベルの長さを測定し、下記式(A)に代入して求められる。
式(A):{(引張り解除後のラベルの長さ−引張り前のラベルの長さ)/引張り前のラベルの長さ}×100。
【請求項2】
前記ラベルは、下記引張り強度が20N/15mm以下である請求項1に記載の加熱殺菌用ラベル付き容器。
引張り強度は、JIS K 7127のフィルムの引張試験法に準じて容器の周方向に対応する方向にラベルを引張り、前記ラベルを1.05倍に延ばしたときの強さである。
【請求項3】
前記ラベルは、下記120℃での熱収縮率が5%以上10%以下である請求項1又は2に記載の加熱殺菌用ラベル付き容器。
120℃での熱収縮率は、ラベルを120℃のオイルバスに5秒間浸漬し、浸漬後、容器の周方向に対応する方向におけるラベルの長さを測定し、下記式(B)に代入して求められる。
式(B):{(浸漬前のラベルの長さ−浸漬後のラベルの長さ)/浸漬前のラベルの長さ}×100。
【請求項4】
下記第1伸縮率が0.1%未満で且つ下記第2伸縮率が1.0%未満であることを特徴とする加熱殺菌容器用ラベル。
第1伸縮率は、JIS K 7127のフィルムの引張試験法に準じて一方向にラベルを引張り、前記ラベルを1.05倍に延ばした状態を1秒間保持した後引張り力を解除し、引張り解除後のラベルの長さを測定し、下記式(A)に代入して求められる。
第2伸縮率は、JIS K 7127のフィルムの引張試験法に準じて一方向にラベルを引張り、前記ラベルを1.10倍に延ばした状態を1秒間保持した後引張り力を解除し、引張り解除後のラベルの長さを測定し、下記式(A)に代入して求められる。
式(A):{(引張り解除後のラベルの長さ−引張り前のラベルの長さ)/引張り前のラベルの長さ}×100。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−31915(P2011−31915A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178531(P2009−178531)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】