説明

加熱殺菌装置

【課題】包装食品の加熱殺菌する加熱殺菌装置において、低コストで蒸気供給量の調節を可能とした加熱殺菌装置を提供する。
【解決手段】殺菌槽1内の被殺菌物に高温水を噴射することで被殺菌物2を加熱殺菌する加熱殺菌装置であって、殺菌槽内の温度を検出し、殺菌槽内温度が目標値になるように前記高温水に対する蒸気供給量を制御している加熱殺菌装置において、蒸気供給量を制御する蒸気導入制御装置6は、全開と全閉の二位置で開閉する全開/全閉制御弁6A及び全開と微少開の二位置で開閉する全開/微少開制御弁6Bを直列に設置しておき、蒸気導入制御装置6は、現時点での槽内温度や演算で求めた所定時間後における槽内温度の予想値に基づき、全開/全閉制御弁6A及び全開/微少開制御弁6Bの開閉制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は缶詰やレトルト食品など、食品を包装容器に収容した後に、包装容器内の食品を加熱殺菌する加熱殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
缶詰やレトルト食品は、密封包装後に容器ごしに内部食品の加熱殺菌を行うことで、常温での長期保存を可能にしている。加熱殺菌を行う場合、殺菌槽内に被殺菌物を収容しておき、被殺菌物に高温の循環水を噴射することで被殺菌物を加熱する。被殺菌物に対する加熱に過不足があると、十分な殺菌が行われないことによって腐敗が発生したり、過剰な加熱によって食品に変質が発生することがあるため、精密な加熱制御を行う必要がある。加熱殺菌装置では、殺菌槽内の温度を検出しておき、槽内温度が目標値となるように加熱量の調節を行う。槽内温度が目標値よりも低い場合には噴射している循環水の温度を上昇させることで槽内温度を高くし、槽内温度が目標値よりも高い場合には噴射している循環水の温度を低下させることで槽内温度を低くして、温度の調節を行っている。循環水を加熱する熱源としては蒸気が一般的であり、循環水に供給する蒸気量を増加すると循環水の温度は上昇し、蒸気の供給を停止すると循環水の温度は低下する。
【0003】
特開平7−231770号公報には、アナログ圧力調整弁を設けておき、アナログ圧力調整弁の開度を調整することで蒸気供給量の制御を行うことが記載されている。蒸気必要量に合わせて開度を逐次制御すると、蒸気必要量分の蒸気を供給することができる。しかし開度を比例的に制御することのできる調整弁はコストが高いという問題があった。そのため、蒸気導入管に並列部を設け、開閉2位置で制御する制御弁であって口径の異なる複数の制御弁を並列部のそれぞれに設置しておき、蒸気必要量に応じて開く弁を選択することで蒸気供給量を制御することも行われている。この場合、制御弁は開閉2位置の安価なものが使用できるために蒸気導入制御装置のコストを低下しながら、蒸気供給量を段階的に増減することができる。ただしこの場合でも、蒸気導入管に並列部を設ける必要があるため、この部分ではコストが上昇することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−231770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、包装食品の加熱殺菌する加熱殺菌装置において、低コストで蒸気供給量の調節を可能とした加熱殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、殺菌槽内の被殺菌物に高温水を噴射することで被殺菌物を加熱殺菌する加熱殺菌装置であって、殺菌槽内の温度を検出し、殺菌槽内温度が目標値になるように前記高温水に対する蒸気供給量を制御している加熱殺菌装置において、蒸気供給量を制御する蒸気導入制御装置は、全開と全閉の二位置で開閉する全開/全閉制御弁及び全開と微少開の二位置で開閉する全開/微少開制御弁を直列に設置しておき、蒸気導入制御装置は、現時点での槽内温度や演算で求めた所定時間後における槽内温度の予想値に基づき、全開/全閉制御弁及び全開/微少開制御弁の開閉制御を行うものであることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記の加熱殺菌装置において、蒸気導入制御は、目標温度と目標温度を含む所定の幅を持った目標温度帯を設定しておき、現在の槽内温度が目標温度未満であると全開/全閉制御弁を全開、目標温度よりも高いと全開/全閉制御弁を全閉とし、現在の槽内温度が目標温度帯の下限値未満であり、かつ所定時間後の予測温度も目標温度帯の下限未満であった場合には全開/微少開制御弁を全開とし、それ以外の場合には全開/微少開制御弁を微少開とするものであることを特徴とする。
【0008】
二位置で開閉する制御弁を直列に接続した場合、安価な制御弁を使用することができ、配管を並列化することもないために、蒸気導入制御装置のコストを低減することができる。そして現在の槽内温度に加えて、所定時間後における槽内温度の予想値に基づき、全開/全閉制御弁及び全開/微少開制御弁の開閉制御を行うものであるため、目標温度に対する槽内温度のオーバーシュート及びアンダーシュートが大きくなることを防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明を実施すると、低コストの蒸気導入制御装置によって槽内温度のオーバーシュートやアンダーシュートが少なくなるように蒸気導入量を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を実施している加熱殺菌装置のフロー図
【図2】本発明の一実施例での槽内温度と蒸気供給量の関係を説明する説明図
【図3】本発明の一実施例での槽内温度と蒸気供給量の関係を説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明を実施している加熱殺菌装置のフロー図、図2と図3は槽内温度と蒸気供給量の関係を説明する説明図である。加熱殺菌装置は、円筒形の殺菌槽1内に缶詰やレトルト食品などの被殺菌物2を収容しておき、殺菌槽1内で被殺菌物2を加熱することで殺菌を行うものである。殺菌槽1の下部には、蒸気を導入する蒸気導入管3と給水を導入する給水導入管5を接続している。蒸気導入管3には蒸気導入制御装置6を設けており、蒸気導入制御装置6には全開/全閉制御弁6Aと全開/微少開制御弁6Bを直列に設置している。給水導入管5には給水制御弁7を設けており、各制御弁の開閉を制御することで殺菌槽1内への蒸気と給水の導入を制御する。殺菌槽1の底部には循環配管8を接続しており、循環配管8の他端は殺菌槽内に設けている噴射ノズル9と接続している。循環配管8の途中に循環ポンプ4を設けており、循環ポンプ4を作動すると殺菌槽1底部の水は循環配管8を通して噴射ノズル9へ送られ、噴射ノズル9から殺菌槽1内へ循環水を噴射する。殺菌槽1の上部には槽内温度を検出する槽内温度検出器11を設けておく。蒸気導入制御装置6、給水制御弁7、循環ポンプ4の作動は、運転制御装置10によって制御するようにしており、運転制御装置10は槽内温度検出器11とも接続している。
【0012】
蒸気導入制御装置6を構成している全開/全閉制御弁6Aと全開/微少開制御弁6Bは、それぞれ開閉2位置での操作を行う制御弁である。全開/全閉制御弁6Aの場合、全開と全閉の2位置で操作するが、全開/微少開制御弁6Bは開度調整機構付の制御弁であり、閉じた場合でも弁を完全に閉じるのではなく、少量の蒸気を通過させる微少開となるようにしている。
【0013】
被殺菌物2の加熱殺菌を行う場合、ます被殺菌物2をトレイに並べ、トレイを積み重ねた状態で殺菌槽1内に収容しておく。次に殺菌槽1の底部へ水を導入しておき、底部にためた水に蒸気を吹き込むことで水を加熱して高温とし、循環ポンプ4を作動することで噴射ノズル9から被殺菌物2へ向けて高温の循環水を噴射する。加熱殺菌では、被殺菌物2を殺菌温度まで上昇させる昇温工程、被殺菌物2を殺菌温度に維持する加熱工程、被殺菌物2を冷却する冷却工程を行う。昇温工程及び加熱工程では、蒸気導入管3からの蒸気供給を行うと噴射ノズル9から噴射する循環水の温度が上昇、蒸気供給を停止すると循環水温度は低下することになり、冷却工程では給水導入管5から冷却用水を導入し、循環水の温度を低下させて被殺菌物2の冷却を行う。
【0014】
運転制御装置10には、運転開始からの経過時間とその時の槽内温度の目標値を設定しておき、槽内温度検出器11で検出している槽内温度が目標温度になるように、蒸気導入の制御を行うことで温度調節を行う。殺菌槽1への蒸気供給を行うと殺菌槽内底部にためておいた水の温度が上昇し、噴射ノズル9から噴射している循環水温度が上昇すると、殺菌槽1内の温度が上昇する。逆に殺菌槽1への蒸気供給を停止すると殺菌槽内底部の水温が低下し、噴射ノズル9から噴射している噴射水温度が低下するため、殺菌槽1内の温度が低下する。被殺菌物2へ噴射している水の温度変化は、波及的に広がっていくものであるため、蒸気導入制御弁6を閉じて蒸気供給を停止してもしばらくの間は槽内温度の上昇が続き、蒸気導入制御弁6を開いて蒸気供給を開始してもしばらくの間は槽内温度の低下が続くことになる。そのため、槽内温度が目標温度に到達したことを検出して蒸気導入制御装置6の操作を行った場合、槽内温度は目標温度を通り過ぎるために、槽内温度を目標値に保つことができないということになる。
【0015】
そこで運転制御装置10は、現在の槽内温度に基づく蒸気供給量の制御と、槽内温度の変化速度から所定時間後の槽内温度予想値を演算で求め、蒸気供給量を前もって変化させることにより殺菌槽内温度のオーバーシュートやアンダーシュートを小さく抑える制御を行う。槽内温度の予想値は、現在の槽内温度と単位時間前の槽内温度を比較し、槽内温度の変化がその後も継続するとして、所定時間後の予想の槽内温度を算出することができる。
【0016】
図2及び図3に記載しているように、運転制御装置10では、一定の幅を持った目標温度帯(例えば目標温度−0.5℃から目標温度+1℃の範囲)を維持するように蒸気供給量を制御する。運転制御装置10は、槽内温度検出器11で検出している現在の槽内温度が目標温度−0.5℃未満であると、全開/全閉制御弁6Aを全開とし、全開/微少開制御弁6Bは全開又は微少開とする。全開/微少開制御弁6Bを全開とするか微少開とするかの判定は、所定時間後の予測温度に基づき決定する。現在の槽内温度とそれまでの温度変化率から演算によって所定時間後の予想温度を求め、予想温度も目標温度−0.5℃未満の場合には全開/微少開制御弁6Bを全開とし、予想温度では目標温度−0.5℃より高くなる場合には全開/微少開制御弁6Bを微少開とする。また、槽内温度検出器11で検出している現在の槽内温度が目標温度−0.5℃から目標温度の間であると、全開/全閉制御弁6Aを全開、全開/微少開制御弁6Bは微少開とし、現在の槽内温度が目標温度以上であると、全開/全閉制御弁6Aを全閉、全開/微少開制御弁6Bは微少開とする。
【0017】
全開/全閉制御弁6Aを全開、全開/微少開制御弁6Bも全開とした場合、蒸気導入制御装置6での総合開度は大きくなり、殺菌槽1への蒸気供給量が多くなるため槽内温度は上昇する。全開/全閉制御弁6Aを全開、全開/微少開制御弁6Bは微少開とした場合、蒸気導入管3を通して供給される蒸気量は、全開/微少開制御弁6Bの微少開分であるために蒸気導入制御装置6での総合開度は小さくなり、殺菌槽1への蒸気供給量が少なくなる。この場合でも殺菌槽1への蒸気導入を行っているため槽内温度は上昇しているが、上昇度は緩やかになる。なお、この実施例では微少開での蒸気供給量によって槽内温度は上昇しているが、微少開での開度は槽内温度が低下する蒸気供給量になるように設定する場合もある。全開/全閉制御弁6Aを全閉、全開/微少開制御弁6Bは微少開とした場合、直列に接続している全開/全閉制御弁6Aで全閉としているために蒸気導入制御装置6での総合開度は閉となり、殺菌槽1への蒸気供給は停止する。殺菌槽1では放熱による温度低下があるため、蒸気供給が停止すれば槽内温度は低下していく。
【0018】
蒸気供給量の制御を、上記のように現在の槽内温度と所定時間後の予想温度を組み合わせて行うと、図3に記載のとおり、現時点での槽内温度は目標値−0.5℃よりも低い時刻aの時点で蒸気供給量を減少することになる。図の実線で示した槽内温度は時刻aの時点で全開/微少開制御弁6Bを微少開として蒸気供給量を減少した場合のもの、破線で示した槽内温度は検出温度が目標温度−0.5℃になってから蒸気供給量を減少した場合のものを示している。蒸気供給量を減少しても槽内温度が変化し始めるまでにはタイムラグがあるため、槽内温度が目標温度−0.5℃になるまで全開/微少開制御弁6Bを開として蒸気供給を継続していた場合には、槽内温度が目標温度より大幅に大きくなるオーバーシュートが発生し、加熱を行っている食品にダメージを与えることがある。しかし、時刻aの段階で蒸気供給量を減少したことによって槽内温度のオーバーシュートは抑制することができている。
【0019】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 殺菌槽
2 被殺菌物
3 蒸気導入管
4 循環ポンプ
5 給水導入管
6 蒸気導入制御装置
6A 全開/全閉制御弁
6B 全開/微少開制御弁
7 給水制御弁
8 循環配管
9 噴射ノズル
10 運転制御装置
11 槽内温度検出器















【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌槽内の被殺菌物に高温水を噴射することで被殺菌物を加熱殺菌する加熱殺菌装置であって、殺菌槽内の温度を検出し、殺菌槽内温度が目標値になるように前記高温水に対する蒸気供給量を制御している加熱殺菌装置において、蒸気供給量を制御する蒸気導入制御装置は、全開と全閉の二位置で開閉する全開/全閉制御弁及び全開と微少開の二位置で開閉する全開/微少開制御弁を直列に設置しておき、蒸気導入制御装置は、現時点での槽内温度や演算で求めた所定時間後における槽内温度の予想値に基づき、全開/全閉制御弁及び全開/微少開制御弁の開閉制御を行うものであることを特徴とする加熱殺菌装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱殺菌装置において、蒸気導入制御は、目標温度と目標温度を含む所定の幅を持った目標温度帯を設定しておき、現在の槽内温度が目標温度未満であると全開/全閉制御弁を全開、目標温度よりも高いと全開/全閉制御弁を全閉とし、現在の槽内温度が目標温度帯の下限値未満であり、かつ所定時間後の予測温度も目標温度帯の下限未満であった場合には全開/微少開制御弁を全開とし、それ以外の場合には全開/微少開制御弁を微少開とするものであることを特徴とする加熱殺菌装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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