説明

加熱装置及び配膳車

【課題】食品の加熱時間が長くならないようにしながらクールダウンにかかる時間を短くすることができる加熱装置を提供する。
【解決手段】保温庫1内をヒータ2で加熱することにより、保温庫1内に収容した食品を加熱するための加熱装置Aに関する。複数のヒータ2a、2bと、各ヒータ2a、2bへの通電を個別に制御するための制御手段3とを備える。保温庫1内を昇温するときには全てのヒータ2a、2bに通電する。保温庫1内を一定の温度に維持するときには一部のヒータ2aにのみ通電する。保温庫1内を降温するときには全てのヒータ2a、2bに通電しないようにする。上記制御手段3で各ヒータ2a、2bへの通電を制御自在に形成する。全てのヒータ2a、2bを発熱させて保温庫1内を一定の温度に維持している場合に比べて、保温庫1内の降温を開始するときに、発熱させていないヒータ2bの熱容量を大幅に低くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を加熱(再加熱も含む)する際に用いられる加熱装置及びこの加熱装置を移動自在に形成した配膳車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、病院や老人保健施設またはホテルや学校などの施設において食事を提供するにあたって、配膳車が用いられているが(例えば、特許文献1参照)、このような配膳車としては、調理された食品(食材も含む)を一旦3℃程度に冷蔵保存しておき、食事前の搬送中に冷蔵した食品を安全温度である75℃まで加熱して配膳する、所謂クックチル方式のものが提案されている。
【0003】
図3(a)に配膳車に備えられる加熱装置Aの概略図を示す。加熱装置Aは、保温庫1と、その庫内に収容されるヒータ2と、庫内の空気を循環させる送風機10と、庫内の温度を測定する温度センサ11と、ヒータ2及び温度センサ11と電気的に接続される制御機器12と、ヒータ2と制御機器12との間に設けたスイッチ13とを備えて形成されている。制御機器12はマイクロコンピュータなどの演算装置などで形成することができ、制御機器12とスイッチ13とで制御手段3が形成されている。
【0004】
この加熱装置Aの保温庫1の庫内温度は、例えば、図3(b)に示すような変動で制御されている。すなわち、まず、制御機器12でスイッチ13をオン(ON)にしてヒータ2に通電することによって、ヒータ2を発熱させて保温庫1の庫内温度を上昇させる。次に、庫内温度が所定の設定温度になると、制御機器12でスイッチ13のオンとオフを制御しながら設定温度を維持させる。ここで、スイッチ13は温度センサ11で測定した庫内温度を制御機器12にフィードバックしてPID制御などでオンオフ制御することができる。そして、スイッチ13をオフ(OFF)にしてヒータ2への通電を停止することによって、ヒータ2の発熱を停止させて保温庫1の庫内温度を下降させる(クールダウン)ことができる。具体的には、例えば、食品を75℃まで加熱するために、庫内温度を100〜130℃の高温に上昇させた後、食品の芯温(内部温度)が75℃に達するまで庫内温度を100〜130℃に維持する。そして、食品の加熱完了後に直ぐに保温庫1の扉を開けると高温のままで危険であるので、安全に扉を開けるために庫内温度を80℃以下になるようにクールダウンしている。
【特許文献1】特許第2644187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、食品を加熱完了後に直ぐに配膳等の次の作業に取りかかりたいために、クールダウンにかかる時間は作業を行うことができず、無駄な時間となっていた。特に、再加熱カート(食品を再加熱する配膳車)は通常の配膳車よりも保温庫1の断熱性が高いために冷えにくく、クールダウンの時間が長くなるものであった。
【0006】
また、急速なクールダウンの方法として保温庫1に外気を取り入れる方法があるが、この方法では外気に熱い空気が放出されるために、周囲温度が上昇してしまうという問題があった。
【0007】
また、ヒータの熱容量を小さくすると、クールダウンにかかる時間は短くなるものの、加熱に時間がかかるようになるために、庫内温度の上昇からクールダウンまでの全体の時間は短くすることができない。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、食品の加熱時間が長くならないようにしながらクールダウンにかかる時間を短くすることができる加熱装置及びこれを用いた配膳車を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の加熱装置Aは、保温庫1内をヒータ2で加熱することにより、保温庫1内に収容した食品を加熱するための加熱装置Aにおいて、複数のヒータ2a、2bと、各ヒータ2a、2bへの通電を個別に制御するための制御手段3とを備え、保温庫1内を昇温するときには全てのヒータ2a、2bに通電し、保温庫1内を一定の温度に維持するときには一部のヒータ2aにのみ通電し、保温庫1内を降温するときには全てのヒータ2a、2bに通電しないように、上記制御手段3で各ヒータ2a、2bへの通電を制御自在に形成して成ることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の配膳車Bは、請求項1に記載の加熱装置Aを台車4に設けて成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、複数のヒータ2a、2bの出力(発熱量)と従来のヒータ2の出力とを同じにすることによって、食品の加熱時間が長くならないようにすることができるものであり、しかも、保温庫1内を一定の温度に維持するときには一部のヒータ2aにのみ通電して発熱させ、残りのヒータ2bは発熱させていないので、全てのヒータ2a、2bを発熱させて保温庫1内を一定の温度に維持している場合に比べて、保温庫1内の降温を開始するときに、発熱させていないヒータ2bの熱容量を大幅に低くすることができ、従って、保温庫1内を降温するクールダウンにかかる時間を短くすることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0013】
図1(a)に本発明の加熱装置Aの概略図を示す。この加熱装置Aは、保温庫1と、その庫内に収容される複数のヒータ2a、2b(ヒータ2)と、庫内の空気を循環させる送風機10と、庫内の温度を測定する温度センサ11と、ヒータ2a、2b及び温度センサ11と電気的に接続される制御機器12と、ヒータ2a、2bと制御機器12との間に設けたスイッチ13a、13bとを備えて形成されている。
【0014】
保温庫1は区切り壁15により食品収容部16とヒータ収容部17とに区切られている。食品収容部16は食品を加熱(再加熱を含む)する際に食品を収容する空間であり、ヒータ収容部17は上記ヒータ2a、2bを収容する空間である。食品収容部16とヒータ収容部17は区切り壁15の下端に設けた通気口18により連通している。また、保温庫1の上部には天井板19により食品収容部16及びヒータ収容部17と区切られた流路空間20が設けられている。流路空間20は吸気口21により食品収容部16と連通し、排気口22によりヒータ収容部17と連通している。また、流路空間20には上記送風機10が設けられている。この送風機10としてはシロッコファン、クロスフローファン、プロペラファンなどを用いることができる。上記の温度センサ11は排気口21付近で食品収容部16内に配置されている。上記の制御機器12はマイクロコンピュータなどの演算装置などで形成することができ、保温庫1の庫外に設けられている。
【0015】
ヒータ2a、2bとしてはシーズヒータ、パネルヒータ、PTCヒータなどを用いることができる。また、制御機器12と各ヒータ2a、2bとの間にはスイッチ13a、13bが直列に設けられており、制御機器12とスイッチ13a、13bとで制御手段3が形成されている。ヒータ2a、2bの合計の出力及び合計の熱容量は図3(a)に示す上記従来例のヒータ2の出力及び熱容量と等しいものである。
【0016】
この加熱装置Aの保温庫1の庫内温度は、例えば、図1(b)に示すような変動で制御されている。すなわち、まず、制御機器12でスイッチ13a、13bをオン(ON)にしてヒータ2a、2bに通電することによって、ヒータ2a、2bを発熱させて保温庫1の庫内温度を上昇させる。ここで、ヒータ2a、2bの合計の出力(発熱量)は上記従来例のヒータ2と等しいので、保温庫1の庫内温度の上昇を従来のものと比べて損なわないようにすることができ、食品の加熱時間が長くならないようにすることができる。
【0017】
次に、庫内温度が所定の設定温度にまで上昇すると、制御機器12で一方のスイッチ13bをオフにして一方のヒータ2bへの通電を停止することによって、ヒータ2bの発熱を停止させる。また、制御機器12でもう一方のスイッチ13aのオンとオフを制御しながら、もう一方のヒータ2aへの通電とその停止とを制御して発熱とその停止とを繰り返しながら設定温度を維持させる。このように一方のヒータ2bの発熱を停止することにより、ヒータ2bは庫内温度にまで冷却するが、この冷却しているヒータ2bの温度はヒータ2bが発熱している時の温度よりも低く、当然、冷却しているヒータ2bの熱容量(ヒータ2bに蓄積されている熱量)は発熱しているヒータ2bの熱容量も大幅に小さい。
【0018】
そして、一方のヒータ2aのみの発熱で庫内温度を一定の設定温度の維持した後、保温庫1の庫内温度を下降させる(クールダウン)するには、制御機器12によりスイッチ13aをオフ(OFF)にしてヒータ2aへの通電を停止することによって、ヒータ2aの発熱を停止させるようにする。ここで、クールダウン時には、もう一方のヒータ2bは既に発熱していないので、ヒータ2bが発熱して状態に比べて、ヒータ2bに蓄積されている熱量は小さい。従って、両方のヒータ2a、2bの発熱を同時に停止してクールダウンする場合に比べて、本発明のように、一方のヒータ2aのみを発熱させ、他方のヒータ2bを停止している状態から、ヒータ2aの発熱を停止してクールダウンする方が、保温庫1の庫内温度のクールダウンにかかる時間を短くすることができる。
【0019】
具体的には、例えば、食品を75℃まで加熱するために、ヒータ2a、2bの両方の発熱により、庫内温度を100〜130℃の高温に上昇させた後、ヒータ2bの発熱を停止すると共にヒータ2aのみを発熱させて、食品の芯温(内部温度)が75℃に達するまで庫内温度を100〜130℃に維持する。そして、食品の加熱完了後に直ぐに保温庫1の扉を開けると高温のままで危険であるので、安全に扉を開けるために、ヒータ2aの発熱を停止して庫内温度を80℃以下になるようにクールダウンしている。
【0020】
尚、上記の加熱装置Aでは、スイッチ13a、13bは温度センサ11で測定した庫内温度を制御機器12にフィードバックしてPID制御などでオンオフ制御することができる。また、庫内の空気は、送風機10の作用により、ヒータ収容部17、通気口18、食品収容部16、吸気口21、流通空間20、排気口22の順で流通して循環している。また、ヒータ2a、2bの出力及び熱容量は同じであっても異なっていてもよい。ヒータ2aの出力(ヒータ容量)とヒータ2bの出力の比で保温庫1のクールダウンの時間が変わり、庫内温度を一定の温度に維持しているときに発熱していないヒータ2bの出力が発熱しているヒータ2aの出力よりも大きいと、クールダウンにかかる時間は短くなる。しかし、ヒータ2bの出力をヒータ2aの出力よりも大きくすると、ヒータ2aによる発熱量が小さくなるために、庫内温度の維持時にヒータ2aの通電をスイッチ13aのオンオフ制御により制御しても庫内が冷めやすくなる。従って、庫内温度の維持時にヒータ2aへの通電するタイミング(オンにするタイミング)を早めに制御した方がよい。また、ヒータ及びその制御系統は2以上あってもよい。
【0021】
上記の本発明の加熱装置Aは移動しない固定式のものであってもよいが、移動可能な加熱装置Aとして形成することもできる。この場合、加熱装置Aを台車4に設けて配膳車Bとして形成することができる。例えば、図2に示す配膳車Bでは、車輪30を有する台車4の上に温冷蔵庫31を載置して取り付けることにより、温冷蔵庫31が走行可能に形成されている。温冷蔵庫31の両側面は開口部32として形成されており、この開口部32に複数枚の扉33を枢着することによって、開口部32が開閉自在に形成されている。そして、保温冷蔵庫31の内部は複数の仕切り壁により保温室34と保冷室35とで仕切られており、このうち、保温室34を上記の加熱装置Aで形成することができる。尚、図2において、9は食品を収容した食器等を載せたトレーを示し、28は配膳車Bを走行操作するための操作レバーを示し、29は温冷蔵庫31の外周面を覆うカバー体を示し、27は台車4の外周面を覆うバンパーを示し、26は熱交換機を示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は本発明の加熱装置の一例を示す概略図、(b)は本発明のスイッチのオンオフ制御と庫内温度の変化との一例を示すグラフである。
【図2】本発明の配膳車の一例を示す側面図である。
【図3】(a)は従来の加熱装置の一例を示す概略図、(b)は従来のスイッチのオンオフ制御と庫内温度の変化との一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0023】
A 加熱装置
B 配膳車
1 保温庫
2a ヒータ
2b ヒータ
3 制御手段
4 台車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保温庫内をヒータで加熱することにより、保温庫内に収容した食品を加熱するための加熱装置において、複数のヒータと、各ヒータへの通電を個別に制御するための制御手段とを備え、保温庫内を昇温するときには全てのヒータに通電し、保温庫内を一定の温度に維持するときには一部のヒータにのみ通電し、保温庫内を降温するときには全てのヒータに通電しないようにして、上記制御手段で各ヒータへの通電を制御自在に形成して成ることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱装置を台車に設けて成ることを特徴とする配膳車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−106378(P2009−106378A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279496(P2007−279496)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】