説明

加熱装置

【課題】坪量の使用範囲が広く、用紙サイズが大きく変化する用紙に対して定着ムラや、光沢ムラという定着性能を阻害することがない加熱装置を提供すること。
【解決手段】定着部の用紙搬送方向上流側に、用紙の情報に応じて移動可能に保持された複数の加熱源を有する加熱装置を設けているので、坪量の使用範囲が広く、用紙サイズが大きく変化する用紙に対しても定着を確実に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙上に形成されたトナーを加熱する加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置では、用紙に転写されたトナー画像を加熱した定着ローラと、加圧ローラと挟持圧接してトナーを溶融させて用紙上に定着させる定着装置が多く用いられている。
【0003】
定着熱供給能力を上げたり、ニップ時間を長くしたりするために、ベルトを併用したシステムも広く用いられている。しかし、均一な加熱を実現することは容易ではなく、高速化に伴って必要な加熱時間が長くなるにつれて、この課題はさらに難度を増している。また、ローラやベルトなどの部材がトナーや紙と接触するため、汚れたり、摩耗したり、あるいは機械的変形の負荷で破断したりするため、定期的な交換が必要である。機械停止による生産性の低下や、交換した部品による費用が発生する。
【0004】
これらの問題を解決するため、輻射によってトナーや紙に熱を供給する非接触加熱方式が提案され、実用に供されている。
【0005】
非接触加熱装置は、フラッシュ露光により短時間で加熱定着する方法や、セラミックヒータなどにより数秒程度加熱して定着する方法などがある。
【0006】
特許文献1にはフラッシュ定着に関する技術が公開されている。フラッシュ露光ではごく短時間で定着でき、複数のランプのうち何れを点灯するか選択して、紙寸法に応じた加熱をしたり、点灯時間を制御したりして紙厚に応じて加熱することが可能である。しかし、加熱に使える波長が短いため、黒以外のトナーは照射光吸収率が異なるため、カラー画像には適用できなかった。黒以外のトナーに照射光波長に対して高い吸収率をもつ特殊な材料を混ぜることも行われているが、トナー色の彩度が低下し、色再現性は充分なものではない。
【0007】
また特許文献2では、セラミックヒータを用いた技術が公開されている。セラミックヒータなどは、色による照射光吸収率の差が少ない赤外域の照射光を利用できるため、カラー画像への適用が容易だが、ヒータそのものの熱容量が大きく、加熱や冷却に時間がかかるため、温度変化には、待ち時間が必要になる。ヒータを複数に分割通電制御して紙寸法(幅方向分割で対応)や紙厚(紙搬送方向の分割で対応)の変更に対応しようとしても、あるいはヒータ温度を変更して紙厚の変更に対応しようとしても、温度を変更するのに時間がかかるため、大きな生産性低下を招いていた。
【特許文献1】特開昭60−60675号公報
【特許文献2】特開2000−19866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、定着装置あるいは定着前予備加熱装置として使われる非接触の加熱装置の上記不具合を解消し、均一な加熱が可能な非接触の加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、下記構成により達成できる。すなわち
1.用紙上に形成されたトナーを加熱する加熱装置であって、
用紙上のトナーを輻射熱により加熱する複数の板状の加熱源と、
少なくとも一つの前記加熱源を移動させて複数の前記加熱源間での重なり状態を変更することにより、対向する用紙への輻射面積を変更する移動手段と、
加熱する用紙の情報に基づいて前記移動手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする加熱装置。
【0010】
2.前記加熱装置は、前記用紙上に形成されたトナーを熱と圧力により定着させる定着部よりも用紙搬送方向上流側に設けられたことを特徴とする前記1に記載の加熱装置。
【0011】
3.前記用紙の情報は、少なくとも用紙の単面積当たりの質量と、用紙サイズとを含むことを特徴とする前記1または2に記載の加熱装置。
【0012】
4.前記複数の板状の加熱源は、セラミック基材上に電熱線を配置し前記電熱線に電圧を与えることによりセラミック基材全体を加熱するセラミックヒータであり、前記加熱源には温度分布を均一にする均一化部材を設けたことを特徴とする前記1から3の何れか1項に記載の加熱装置。
【0013】
5.前記加熱源が、分割された複数の通電領域と、
加熱する用紙の情報に基づいて、前記複数の通電領域に選択的に通電する制御手段を有することを特徴とする前記1から4の何れか1項に記載の加熱装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、定着部の用紙搬送方向上流側に、用紙の情報に応じて移動可能に保持された複数の加熱源を有する加熱装置を設けているので、均一な加熱が可能であり定着を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限らない。また、以下の、本発明の実施の形態における断定的な説明は、ベストモードを示すものであって、本発明の用語の意義や技術的範囲を限定するものではない。
〈画像形成装置概要〉
図1は本発明の加熱装置650を画像形成装置に設けたときの構成を示す概略図である。
【0016】
本実施の形態の画像形成装置は、上部に自動原稿送り装置1を設けるとともに、画像形成装置本体内に画像読取部2、画像形成部3、給紙部5、定着部6、加熱装置650、排紙・切換部7および用紙収納部9を有している。
【0017】
自動原稿送り装置1は、原稿を一枚ずつ送り出して画像読取位置へと搬送し、画像読取が終わった原稿を所定の場所に排紙処理する装置である。
【0018】
なお、自動原稿送り装置1は可倒式に構成されており、この自動原稿送り装置1を起こしてプラテンガラス203上を開放することにより、当該プラテンガラス203上に原稿を直接載置することができるように構成してある。
【0019】
原稿は画像読取部2によって読み取られ、各色の画像信号はメモリより順次取り出されて各露光光学系313にそれぞれ電気信号として入力される。
【0020】
画像形成部3は、色分解画像に応じたトナー像を形成するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の画像形成手段(以下、画像形成ユニットという)300、画像形成体である感光体ドラム301、スコロトロン帯電器303、画像書き込み手段である露光光学系313および現像器311等を1組として構成してある。
【0021】
画像形成ユニット300は用紙収納部9の上方部において縦方向に長く配設した中間転写体401(中間転写ベルト401ともいう)の1面(張設面A)に沿って縦方向(上から、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の順)に配列されており、4組とも機械的構成を同じ構成としている。よって図1においては、1組の構成についてのみ参照符号を付け、他は便宜上、省略してある。
【0022】
露光光学系313は、スコロトロン帯電器303に対して感光体ドラム301の回転方向下流側に配置されている。露光光学系313は、レーザ光学系で構成される露光用ユニットであり、その構成自体は公知である。
【0023】
画像形成において、たとえば、イエロー(Y)の画像形成は次のように成される。感光体駆動モータの始動により、感光体ドラム301は反時計方向へと回転し、スコロトロン帯電器303の帯電作用により、感光体ドラム301に電位が付与される。しかる後、第1の色信号即ち(Y)の画像信号に対応する露光が露光光学系313により行われ、感光体ドラム301上に原稿の(Y)の画像に対応する静電潜像が形成される。静電潜像は現像器311で反転現像され、顕像化される。
【0024】
反転現像により作製された(Y)のトナー像は、中間転写ベルト401を挟んで感光体ドラム301に対向して設けられている転写ローラ305によって、当該中間転写ベルト401上に転写される(1次転写手段という)。
【0025】
他の色信号による画像形成は上記と同様のプロセスにより、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の画像形成ユニットによって作られたトナー像が前記(Y)のトナー像のある画像領域と重畳するように順次転写され、中間転写ベルト401上に重ね合わせのカラートナー像が形成される。
【0026】
上記画像形成に平行して、用紙Pが用紙収納部9の送り出し部901(911、921)より給紙ローラ903(913、923)によって送り出され、レジストローラ501へと搬送される。
【0027】
レジストローラ501の駆動によって中間転写ベルト401上のカラートナー像領域と重畳するように給紙され、転写域における2次転写手段415の作用によって、カラートナー像が用紙P上に転写される。
【0028】
トナー像が転写された用紙Pは、中間転写ベルト401の周面より分離されたのち、定着部6へ搬送される。加熱処理終了後の用紙Pは、排紙ローラ703により搬送されて、排紙トレイ705上に排出される。
【0029】
また、用紙Pが分離された後の中間転写ベルト401は、当該中間転写ベルト401を挟んで接地された導電性ローラと対向して設けられている除電器407により除電され、しかる後、クリーニングブレード413によって摺擦され、清掃される。
【0030】
また、転写後に感光体ドラム301の周面上に残っているトナーは、ドラムクリーニング部309により除去され、不図示の帯電前の一様露光器により先の画像形成における感光体ドラム301の履歴が解消されて、次の画像形成の準備がなされる。
【0031】
用紙収納部9には、複数枚の用紙Pを積層状態で収納する収納容器905、915、925と送り出し部901、911、921とを含んで構成された給紙ユニット900、910、920を上下方向に配設している。さらに、用紙搬送方向と平行、かつ、上位の給紙ユニットに対して、直下の給紙ユニットを下流方向にずらして配列すると同時に、上下方向には近接させて配置してある。
【0032】
給紙部5は、給紙ユニット900、910、920の一部を構成する収納容器905、915、925のそれぞれからレジストローラ501へと用紙Pを搬送するための多数の搬送手段R1、R2、R3、R4、R5、R6を有しており、当該搬送手段は、それぞれ一対のローラで構成してある。
【0033】
排紙・切換部7は、画像形成後の用紙Pを、排紙または再給紙するための手段を有する領域である。この排紙・切換部7は、定着部6から排出された用紙Pの搬送路を切り換える切換手段701、用紙Pを機外に排出するための排紙ローラ703、排出された用紙Pを積載する装置本体の側面に設けられた排紙トレイ705、反転搬送される用紙Pの表裏を反転させる反転部801および反転された用紙Pを画像形成部3に向けて再給紙する反転搬送部803を有している。
〈定着部〉
次に、定着部6について図2を用いて説明する。図2は、定着部6と、定着部6の用紙搬送方向の上流側の加熱装置650とを示している。
【0034】
定着部6は、定着ローラ601aと、熱源を有する加熱ローラ601bと、定着ローラ601aおよび加熱ローラ601bによって張架された定着ベルト601cと、定着ベルト601cの外周面を介して定着ローラ601aに圧接する加圧ローラ601dとで構成されている。定着ローラ601aと加圧ローラ601dとで形成されるニップ部Nbに未定着トナー像を担持した用紙Pを通して定着を行う。
【0035】
加熱ローラ601bと加圧ローラ601dの内部には熱源としてのハロゲンヒータ602を有している。着ローラ601aには定着駆動部(不図示)が備えられており、定着駆動部により定着ローラ601aが回転され、定着ベルト601c、加熱ローラ601bおよび加圧ローラ601dが従動回転する。
【0036】
ここで定着ベルト601cは、基体として内径100〜150mm程度で、厚さが20〜80μm程度のニッケル電鋳ベルト、あるいは厚さが50〜200μm程度のポリイミド等の耐熱性樹脂ベルトを基体として用いている。基体の外側(外周面)には、厚さ100〜500μm程度のシリコンゴムを被覆したものに、離型層として表面に厚さ30〜50μm程度のPFA(パーフルオロアルコキシ)やフッ素系樹脂などを施し、あるいはPFAチューブを被覆された構成になっている。シリコンゴム層はゴム硬度5度〜40度(JIS−A)の範囲が良好な画像均一性を得る条件として好ましい。
【0037】
定着ローラ601aは、たとえばSTKM(機械構造用炭素鋼管)等のスチール材を用いた肉厚2〜5mm程度の円筒状の金属パイプもしくは中実の棒と、該金属パイプもしくは中実の棒の外周面に厚さ5〜15mmのシリコンゴムを設け、外径20〜50mm程度のソフトローラとして構成される。
【0038】
加熱ローラ601bと加圧ローラ601dの表面には、接触あるいは非接触で、温度センサ601eが設けられている。そして所定の温度に到達したときの温度を温度センサ601eが検知することにより、不図示の制御手段の指示により定着温度が制御されている。
【0039】
定着温度は、トナーの特性や画像形成装置のプリント速度などに依存するが本実施の形態では約160℃である。
〈加熱装置〉
加熱装置650は、坪量が300〜350g/mの紙を使用しても確実に定着できるように、用紙Pが定着部6に進入してくる前に予め熱を与える装置であり、加熱装置650を通過した用紙Pの表面温度が約70℃になるようにしている。
【0040】
加熱装置650は、用紙Pを搬送する紙搬送部651に対向して設けられ、用紙Pは紙搬送部651と加熱装置650の間隙を非接触な状態で通過する。
【0041】
紙搬送部651は、不図示の駆動部から駆動される駆動ローラ651aと従動ローラ651bとによって張架された紙搬送ベルト651cを有している。本実施の形態で用いられる駆動ローラ651aと従動ローラ651bは、軸長さ400mm、外径φ40のアルミ製のローラであり、搬送ベルト651cを搬送するためのパーフォレーションが設けられている。
【0042】
紙搬送ベルト651cは、網状のベルトとし、ベルト幅400mm、ベルト径φ500でPTFE(ポリ4フッ化エチレン)がコートされたグラスファイバー製である。ベルト基材の厚みは0.95mm、メッシュ面積は5×5mmのものを使用している。
【0043】
加熱装置650は、熱源としてセラミックヒータCH(ヒータCHという)と、ヒータCHを取り付ける筐体650aと、ヒータCHを用紙搬送方向と、用紙搬送方向に直角な方向(軸方向)に移動可能な移動手段を有している。
【0044】
筐体650aは、ヒータCHから放出される熱を画像形成装置本体内に逃がさないように断熱部材で覆われている。
【0045】
図3に本実施の形態に用いるヒータCHの概略図を示す。ヒータCHは、表面積が180×150mm、厚さ5mm、定格出力1kW、700℃で通電制御可能なものを使用している。ヒータCHの背面側(通電コネクターが無い面側)には接触熱伝導効率を高くし、温度分布を均一化するための均一化部材としてのアルミ板ALを摺り合わせ加工して密着させている。
【0046】
温度均一化部材は、紙に対向しない側に設けても効果は得られるが、紙への加熱量を均一にするには紙対向面に設けた方がより効果的である。
【0047】
さらに加熱性能を向上させるためにアルミ板ALの表面には放射率の大きいセラミックやカーボンのコーティングが施してある。ヒータCHに取り付けられたアルミ板ALは、紙搬送ベルト651cを通過する用紙P側に向けられるように取り付けられている。
【0048】
次に、用紙の情報(薄紙、厚紙、紙幅など)に応じて移動可能な複数の加熱源であるヒータCHの移動形態について説明する。
【0049】
図4は、4枚のヒータCHを用いて用紙の情報に応じてそれぞれのヒータCHが移動する例を示す図である。
【0050】
図4において、図4(a)は加熱装置650の軸方向から見た筐体650aとヒータCHから放出された熱を反射する反射板650bを含む断面図であり、図4(b)は筐体650aを省略した平面図である。なお、用紙搬送は、基準位置zに用紙の片側を合わせている(片側基準という)。
【0051】
本実施の形態におけるヒータCHの移動手段652は、ネジとナットによるボールネジ機構を用いている。これはネジ部をモータで回転させることによりナット部がネジ軸に沿って直線運動することを利用した広く使われている機構である。各ヒータCHにはそれぞれ軸方向と用紙搬送方向にボールネジ機構が取り付けられ、画像形成装置が有する不図示の制御手段によってネジを回転させるモータが制御され、ヒータCHの移動量が決定される。
【0052】
なお、直線運動を行う機構としてはボールネジ機構の他に、リニアモータを用いる機構やワイヤーとプーリを用いた機構などがあるが、設計上の制約やコストの点を考慮して最適な機構を選択することが好ましい。
【0053】
何れの構成でも、既知の移動機構を適切に設計すれば、加熱領域を数秒以内に切り替えることができ、紙種・紙厚・紙寸法に応じた定着条件の切り替えによる生産性の低下を最小限に抑えることができる。
【0054】
さらに制御手段は、画像形成装置が有する不図示の操作手段から入力された用紙の情報、すなわち紙の単位面積当たりの質量(坪量という)、紙サイズ、普通紙、コート紙などに応じたヒータCHの移動に関するデータテーブルを有している。
【0055】
制御手段は、片側基準の場合、ヒータCHを以下のように移動するように指示する。
ヒータCH1は移動しない固定ヒータ、
ヒータCH2は、軸方向(用紙搬送方向に対して直角方向)にのみ移動可能、
ヒータCH3は、用紙搬送方向に移動可能、
ヒータCH4は、軸方向と用紙搬送方向に移動可能、
さらにデータテーブルは、最終的に排紙された定着画像の定着性能を満足するための定着性能、光沢度に関するデータを有している。定着性能は擦り試験によって判定され、光沢度は光沢度試験によって判定され、擦り試験と光沢度試験の両方を満足しなければならない。
【0056】
擦り試験と光沢度試験の合格判定基準は以下のとおり。
【0057】
擦り試験 :坪量64g/mA4サイズの試験用紙を2kg□30mmの真鍮棒に巻き付け、10mm×10mmの黒ベタ画像に10回往復させて、そのときの試験用紙にトナーが付着していないこと(目視検査)。
【0058】
光沢度試験:12g/mのトナー量を有するベタ画像を出力し、光沢度計によって測定し判定する。
【0059】
光沢度計・・・・村上色彩研究所製、品番 GMX−203を使用
入射角75度
判定基準・・・・コート紙使用の場合、光沢度が80以上で合格
普通紙使用の場合、光沢度が40以上で合格
紙搬送速度(線速)に関するデータテーブルを有し、本実施の形態では500mm/secとする。
〈実施例〉
1)用紙サイズがA4で、坪量が約160g/mのとき、
ヒータCH3とCH4を用紙搬送方向に移動させて用紙搬送方向の長さを160mm、照射幅を310mmに設定。
【0060】
そのときの照射時間は約300ms。100枚/分で通紙したときの定着性能を光沢度計によって検証した。その結果光沢度は40〜50であり合格レベルであり、擦り試験も合格であった。
【0061】
2)用紙サイズがA4で、坪量が300g/mのとき、
ヒータCH3とCH4を用紙搬送方向に伸ばし、用紙搬送方向の長さを320mm、照射幅を310mmに設定(図5参照)。
【0062】
そのときの照射時間は約600ms。100枚/分で通紙したときの定着性能を光沢度計によって検証した。その結果光沢度は40〜50であり合格レベルであり、擦り試験も合格であった。
【0063】
3)用紙サイズがA5で、坪量が約160g/mのとき、
ヒータCH3とCH4を用紙搬送方向に移動させて用紙搬送方向の長さを160mmとし、さらにヒータCH2とCH4を軸方向に縮めて照射幅を220mmに設定(図6参照)。
【0064】
そのときの照射時間は約300ms。
【0065】
この場合、ヒータCH2、3、4は図6においてハッチング部のようにそれぞれが重なり合う領域が発生する。図7は、軸方向から見た断面図である。このとき温度均一化策を施さないと重なった領域の発熱量は周囲より相対的に高くなる。このような領域では加熱量が不均一になり光沢や画質のムラなどが発生する。
【0066】
そこで本発明のヒータCHは均一化部材としてのアルミ板ALを貼り付けている。図8はヒータCHにアルミ板ALを貼り付けたときと、比較例としてヒータCH単体(アルミ板AL無し)のときの温度分布を軸方向に対してプロットした図である。図8において実線はヒータCHにアルミ板ALを設けたときの温度分布であり、破線はヒータCH単体のときの温度分布を示している。
【0067】
ヒータCHにアルミ板ALを貼り付けたときの定着性は、100枚/分で通紙したときのであっても定着性能および光沢度はともに合格であったが、温度均一化部材であるアルミ板なしで連続通紙すると、ヒータCHが二重に重なった領域に対応する部分では、ヒータCHの温度が上昇し、800℃近くに達したところで(このとき紙加熱量は重なっていない領域に比べ5割近く多い)、紙の含水率に大きな分布が生じて、湾曲して搬送不良を起こした。また温度が上昇したヒータCH部分に対向したトナーは過剰に溶融し、トナー内部や紙の水蒸気が気泡を作り、荒れたトナー面を生じた。
【0068】
以上は、基準位置zを用紙Pの片側として搬送される片側基準であるが、設計上、書き込み部の光学センタを基準とする中央基準を採用した画像形成装置も見受けられる。この場合、4枚のヒータCH全て可動とし、通紙構成に対応する構成としてもよい。中央基準の構成にすると動かすヒータCHは増えるが、対称な構成となるためヒータCHはより均一な温度が得られる。
【0069】
次に、上記実施例に関する制御手段が行うフローについて図9に示すフローチャートを用いて説明する。図9において、ステップS1では用紙の情報を取得し、用紙幅の情報に基づいて軸方向の照射幅xを決定する(ステップS2)。さらにステップS3では、用紙斤量の情報に基づいて用紙搬送方向の照射幅yを決定する。ステップS4では照射幅x、yの情報に基づいて移動手段を制御し、加熱装置の照射面積を変更する。ステップS5では、搬送されてきた用紙を加熱装置で加熱する。
【0070】
ここで、サブルーチンのステップS2は表1に示す用紙サイズと軸方向の照射幅に関するデータテーブルに基づいて照射幅xが決定される。
【0071】
【表1】

【0072】
またサブルーチンのステップS3は表2に示す用紙坪量と用紙搬送方向の照射幅に関するデータテーブルに基づいて照射幅yが決定される。
【0073】
【表2】

【0074】
表1、表2はデータテーブルの一部を示しており、実際には用紙サイズや、用紙坪量の種類に応じて照射幅が決定されている。
【0075】
本実施例ではアルミ板とセラミックヒータCHを組み合わせた輻射源を用いたが、温度を均一にし、かつ一定温度に保てる輻射源であればこれに限定されるものではない。
【0076】
また本実施例では、照射幅を変更したい方向に2枚のヒータCHを配列移動したが、もちろん3枚あるいはそれ以上の枚数とすることも可能である。
【0077】
大型の画像形成装置で、搬送方向に2列、軸方向に3列合計6枚という構成にしたり、搬送方向の加熱領域が大きいため、小数のヒータCHでは必要な加熱領域が得られない場合、多数枚ヒータCHを並べて数カ所に分散して重ね合わせたりすることも本発明に沿った構成である。
【0078】
また、それぞれのヒータCHの内部を、個別に通電・非通電を選択できるような複数の通電領域に分割し、ヒータCHの移動によって重なった部分の通電領域に通電しないように制御することにより、より均一な加熱が可能になる。この際、重なっている領域の紙に最も近いヒータCHは、重なった領域にも通電し、他のヒータCHと重なった領域と紙の間に他のヒータCHが介在するヒータCHの重なった部分の通電領域を非通電とすることが望ましい。紙側に輻射される熱量と、通電供給される熱量がそれぞれの領域で平衡するため、温度均一化部材がなくても、温度分布は小さく抑えられる。温度均一化部材と併用すれば、さらに高い温度均一性が得られることはもちろんである。
【0079】
重なった部分は、紙への輻射に比べれば小さいものの、紙に面した側以外への輻射や熱伝導、対流による熱流出が増えるため、その熱流出を補うように、検知したヒータCH温度、もしくは予め実験等によって把握した熱流出量に基づいて、紙に最も近いヒータCH以外にも適宜給電することが望ましい。
【0080】
また、本発明の加熱装置では坪量が300〜350g/mの紙を使用しても確実に定着できるように、用紙Pが定着部6に進入してくる前に予め熱を与える予備加熱装置としているが、照射面積を大きくしたり、設定温度を高くしたりして定着部6を用いずに単に非接触型の定着手段とすることもできる。
【0081】
また、ヒータCH位置を連続的に変えられるよう設計することが容易なため、加熱領域・加熱時間ともに連続的に設定することができ、複数の熱源を分割固定しただけのシステムに比べ、より多様な種類・寸法の紙に対応することができる。
【0082】
以上本発明の加熱装置は、定着部6の用紙搬送方向上流側に、用紙の情報に応じて移動可能に保持された複数の加熱源を有する加熱装置を設けているので、坪量の使用範囲が大きく、多様なサイズの用紙に対しても定着を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の加熱装置を画像形成装置に設けたときの構成を示す概略図である。
【図2】定着部と、定着部の用紙搬送方向の上流側の加熱装置とを示した図である。
【図3】セラミックヒータCHの概略図である。
【図4】図4(a)は加熱装置の軸方向から見た筐体とヒータCHから放出された熱を反射する反射板を含む断面図であり、図4(b)は筐体を省略した平面図である。
【図5】用紙サイズがA4で坪量が300g/mのときのヒータCH3とCH4の位置を示す図である。
【図6】用紙サイズがA5で坪量が約160g/mのときのヒータCH2、CH3、CH4の位置を示す図である。
【図7】ヒータCH2、CH3、CH4が重なり合う領域の軸方向から見た断面図である。
【図8】ヒータCHにアルミ板ALを貼り付けたときと、ヒータCH単体のときの温度分布の図である。
【図9】制御手段が行うフローチャートである。
【符号の説明】
【0084】
1 自動原稿送り装置
2 画像読取部
3 画像形成部
5 給紙部
7 排紙・切換部
9 用紙収納部
650 加熱装置
651 紙搬送部
652 移動手段
P 記録媒体(記録材、用紙)
CH セラミックヒータ(ヒータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙上に形成されたトナーを加熱する加熱装置であって、
用紙上のトナーを輻射熱により加熱する複数の板状の加熱源と、
少なくとも一つの前記加熱源を移動させて複数の前記加熱源間での重なり状態を変更することにより、対向する用紙への輻射面積を変更する移動手段と、
加熱する用紙の情報に基づいて前記移動手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記加熱装置は、前記用紙上に形成されたトナーを熱と圧力により定着させる定着部よりも用紙搬送方向上流側に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記用紙の情報は、少なくとも用紙の単面積当たりの質量と、用紙サイズとを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記複数の板状の加熱源は、セラミック基材上に電熱線を配置し前記電熱線に電圧を与えることによりセラミック基材全体を加熱するセラミックヒータであり、前記加熱源には温度分布を均一にする均一化部材を設けたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記加熱源が、分割された複数の通電領域と、
加熱する用紙の情報に基づいて、前記複数の通電領域に選択的に通電する制御手段を有することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−145675(P2010−145675A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321901(P2008−321901)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】