説明

加熱装置

【課題】 電極体の金属材料の腐食を防止することが可能な加熱装置を提供すること。
【解決手段】中空形状の絶縁性の絶縁性管体2と、前記絶縁性管体2の両端部に配置された中空形状の一対の電極体3とを交互に接続して形成された搬送管1内に、流動性を有する動植物由来原料からなる非食品材料を連続的に搬送しつつ、前記一対の電極体3の間に電流を流し、ジュール熱により前記非食品材料を加熱する加熱装置であって、前記一対の電極体3間への通電時の電流密度が、前記搬送管1の縦断面視における前記絶縁性管体2と接合している前記電極体3の端部の内周面部において拡散分布する形状に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送管内に流動性を有する原料を連続的に流動搬送しつつ、原料に直接通電し、ジュール熱を利用して原料を加熱する加熱装置に係り、特に、動植物由来原料からなる非食品材料を加熱するための加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流動性を有する原料を搬送管内において連続的に流動搬送しつつ、直接原料に通電し、電気抵抗により発生するジュール熱を利用して原料を加熱する加熱装置が知られている。このような加熱装置は、小型に設計可能であり、効率的に加熱処理可能であるため、例えば、漁船に積まれ、漁船上で獲ったサンマなどの魚類を加熱処理し、養殖魚の餌等に使用される、いわゆるフィッシュミールと、漁船の燃料に利用可能とされる魚油とを生成する加工作業において使用することができる。
【0003】
従来の加熱装置は、中空形状の絶縁性の絶縁性管体と、前記絶縁性管体の両端部に配置された一対の中空形状の電極体とを交互に複数接続して形成された搬送管を有し、この搬送管内において流動性を有する原料を連続的に流動搬送しつつ、前記電極体間で交流電圧を印加して、原料に直接通電することで、原料を加熱する構造となっている。
【0004】
なお、従来、前記絶縁性管体101および電極体102は、図5の縦断面拡大図に示すように、それぞれの端部にへルール継手103を有し、双方をパッキン104を介して突き合わせ、クランプ105で固定することにより互いに接合されている。
【0005】
また、前記搬送管106における絶縁性管体101と電極体102との接合部の構造としては、例えば、図5に示すように、互いに隣合っている絶縁性管体101の内周面と、電極体102の内周面との間で段差が生じないように接続することで、搬送管106内に搬送される原料の流れをスムーズにするものがある(特許文献1)。なお、このような搬送管106の構造を有する加熱装置においては、前記電極体102間に交流電圧を印加した際に、電極体102と絶縁性管体101との接合部における電流密度分布は、図5の点線のようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−172161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている加熱装置においては、図5の電流密度分布に示すように、2つの電極体102の間を流れる電流は絶縁性管体101内を流動している原料の中を最短距離を通って流れるために、搬送管106の縦断面視における絶縁性管体101と接合している電極体102の端部の内周面側の側辺(図5におけるP点)において、電流密度が集中してしまうため、電極体102の金属材料の腐食が著しく進行してしまうという問題があった。
【0008】
本願発明は、このような問題点に鑑み、電極体の金属材料の腐食を防止することが可能な加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するため、請求項1に記載の加熱装置は、中空形状の絶縁性の絶縁性管体と、前記絶縁性管体の両端部に配置された中空形状の一対の電極体とを交互に接続して形成された搬送管内に、流動性を有する動植物由来原料からなる非食品材料を連続的に搬送しつつ、前記一対の電極体の間に電流を流し、ジュール熱により前記非食品材料を加熱する加熱装置であって、前記一対の電極体への通電時の電流密度が、前記搬送管の縦断面視における前記絶縁性管体と接合している前記電極体の端部の内周面部において拡散分布する形状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の加熱装置は、請求項1に記載の加熱装置であって、前記電極体の前記絶縁性管体との接合部は、前記搬送管の縦断面視における前記絶縁性管体の端部の内周面側の頂点を中心とした円弧状に切削加工されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の加熱装置は、請求項1に記載の加熱装置であって、前記絶縁性管体と接合している前記電極体の端部の内周面側の側辺は、面取り加工されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の加熱装置によれば、従来の加熱装置のように、搬送管の縦断面視における絶縁性管体と接合している電極体の端部の内周面部において電流密度が集中し、電極体に使用されている金属材料の腐食が著しく進行することを防止することができ、加熱装置の電極体の耐久性の向上を図ることができる等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態の加熱装置に係る搬送管における絶縁性管体と電極体との接合部を示す縦断面拡大図、(b)は電流密度分布を拡大視する要部拡大図
【図2】第2実施形態の加熱装置に係る搬送管における絶縁性管体と電極体との接合部を示す縦断面拡大図
【図3】第3実施形態の加熱装置に係る搬送管における絶縁性管体と電極体との接合部を示す縦断面拡大図
【図4】(a)(b)(c)は、それぞれ他の実施形態の加熱装置に係る搬送管における絶縁性管体と電極体との接合部を示す縦断面拡大図
【図5】従来の加熱装置に係る搬送管における絶縁性管体と電極体との接合部を示す縦断面拡大図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の加熱装置について、図面に示す第1実施形態乃至第3実施形態により説明する。
【0015】
本実施形態の加熱装置は、例えば、魚介類、海草類、野菜、果実、澱粉類等の破材である動植物由来原料の非食品材料を加熱して、前述したようなミールや魚油等の非食品材料を生成するための加熱装置である。
【0016】
この加熱装置には、原料の搬送方向における上流側から順に、搬送される原料を収容可能な供給側容器、冷却機、および排出側容器(共に不図示)、加熱ユニット等が設けられており、これらは全て後述する搬送管1(図1乃至図3参照)によって接続されている。
【0017】
前記供給側容器の吐出口と、加熱ユニットの流入口とを接続する搬送管1にはポンプ(不図示)が設けられており、このポンプにより前記供給側容器内の原料が加圧されて、搬送管1内に順次搬送されるようになっている。
【0018】
また、前記供給側容器から搬送された原料は、前記搬送管1により前記加熱ユニットまで搬送されて加熱された後、前記冷却機まで搬送されるようになっている。そして、加熱後の原料は、前記冷却機で冷却された後、前記搬送管1により前記排出側容器内に供給されるようになっている。
【0019】
なお、前記冷却機を設けることなく、加熱後の非食品材料を直接前記排出側容器に供給してもよい。また、前記加熱ユニットは複数台設け、前記搬送管1によって相互に直列状に連結してもよい。
【0020】
前記加熱ユニットは、前記供給側容器から搬送管1内に原料を連続的に搬送させつつ、後述する一対の電極体間に交流電流を流し、原料に直接通電するものであって、前記搬送管1と電源ユニット(不図示)からなる。
【0021】
前記搬送管1は、中空円筒形状の絶縁性の絶縁性管体2と、前記絶縁性管体2の両端部に配置された中空円筒形状の一対の電極体3とを交互に複数接続して形成されている。
【0022】
前記絶縁性管体2は、テフロン(登録商標)等の樹脂材料により形成されており、一方、前記一対の電極体3は、チタンやステンレスなどの金属材料により形成されている。また、それぞれの電極体3は、前記電源ユニットに接続されており、本実施形態においては、例えば10kHz、600Vの交流電圧が供給されるようになっている。そして、搬送管1において隣接して対をなす一対の電極体3が異極性となるように、それぞれの電極体3には電源ユニットから電力が供給され、対となる電極体3の相互間に搬送管1内の原料を介して電流が流れて、原料に発生するジュール熱により原料が加熱されるようになっている。
【0023】
図1乃至図3は、第1実施形態乃至第3実施形態の加熱装置に係る搬送管1101における絶縁性管体2と電極体3との接合部を示す縦断面拡大図である。なお、図1乃至図3においては、前記電源ユニットによりそれぞれの電極体間に電力を供給した時の搬送管1内における電流密度分布を点線で示している。
【0024】
図1乃至図3の各実施形態に示すように、絶縁性管体2および電極体3は、それぞれ互いに接続される端部にへルール継手4(2),4(3)を有している。両者のへルール継手4が接合する接合面には、リング状のパッキン5を嵌合させるための凹溝が形成されている。そして、双方をパッキン5を介して突き合わせ、双方のへルール継手4を挟み込むようにしてクランプ6を取付け、クランプ6の蝶ねじ(不図示)を締め込むことにより、絶縁性管体2と電極体3とが固定されて接合されている。
【0025】
図1(a)(b)に示すように、第1実施形態においては、電極体3の絶縁性管体2との接合部は、搬送管1の縦断面視における絶縁性管体2の端部の内周面側の頂点(図1におけるA点)を中心とした半径rの円弧状の断面3aとして切削加工されている。
【0026】
そして、第1実施形態においては、図1に点線で示したように、電極体3間への通電時の電流密度は、搬送管1の縦断面視における絶縁性管体2と接合している電極体3の端部の内周面部において拡散分布している。更に説明すると、同図(b)に示すように、電極体3の端部に形成された円弧状の断面3aは、中心角θの範囲でA点と等距離に対峙することとなる。これによりA点と断面3aとの間の電流密度はA点から中心角θの範囲で拡散分布することとなり、当該断面3aの1箇所に電流密度が集中することがなくなる。
【0027】
したがって、従来のように、搬送管1の縦断面視における絶縁性管体2と接合している電極体3の端部の内周面部において電流密度が集中することがなくなり、電極体3に使用されている前述したチタンやステンレス等の金属材料の腐食が著しく進行することを確実に防止することができる。
【0028】
第2実施形態においては、図2に示すように、電極体3と接合している絶縁性管体2の端部の側辺は面取り加工されている。そして、電極体3の絶縁性管体2との接合部となる端部は、搬送管1の縦断面視における絶縁性管体2の端部の内周面側の頂点(図2におけるB点)を中心とした円弧状の断面3aとして切削加工されている。
【0029】
そして、第2実施形態においては、図2に点線で示したように、電極体3間への通電時の電流密度は、搬送管1の縦断面視における絶縁性管体2と接合している電極体3の端部の内周面部において拡散分布している。
【0030】
したがって、従来のように、搬送管1の縦断面視における絶縁性管体2と接合している電極体3の端部の内周面部において電流密度が集中することがなくなり、電極体3の金属材料の腐食が著しく進行することを確実に防止することができる。
【0031】
第3実施形態においては、図3に示すように、絶縁性管体2と接合している電極体3の端部の内周面側の側辺が面取り加工されている。また、第3実施形態においては、電極体3と接合している絶縁性管体2の端部の内周面側の側辺も、同様に面取り加工されている。
【0032】
そして、第3実施形態においては、図3に点線で示したように、電極体3間への通電時の電流密度は、搬送管1の縦断面視における絶縁性管体2と接合している電極体3の端部の内周面部において拡散分布している。
【0033】
したがって、従来のように、搬送管1の縦断面視における絶縁性管体2と接合している電極体3の端部の内周面部において電流密度が集中することがなくなり、電極体3の金属材料の腐食が著しく進行することを確実に防止することができる。
【0034】
なお、本発明は、前記本実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて変更することができる。
【0035】
例えば、他の実施形態として、図4(a)(b)(c)に示すように、第1実施形態乃至第3実施形態に係る搬送管1において、さらに電極体3の端部の内周面側の側辺や、絶縁性管体2の端部の内周面側の側辺を滑らかに加工した構造を有するものであってもよい。図4(a)(b)(c)に示すような他の実施形態においても、前記第1実施形態乃至第3実施形態と同様に、電極体3間への通電時の電流密度は、搬送管1の縦断面視における絶縁性管体2と接合している電極体3の端部の内周面部において拡散分布するため、電極体3の金属材料の腐食防止を図ることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 搬送管
2 絶縁性管体
3 電極体
4 へルール継手
5 パッキン
6 クランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空形状の絶縁性の絶縁性管体と、前記絶縁性管体の両端部に配置された中空形状の一対の電極体とを交互に接続して形成された搬送管内に、流動性を有する動植物由来原料からなる非食品材料を連続的に搬送しつつ、前記一対の電極体の間に電流を流し、ジュール熱により前記非食品材料を加熱する加熱装置であって、
前記一対の電極体への通電時の電流密度が、前記搬送管の縦断面視における前記絶縁性管体と接合している前記電極体の端部の内周面部において拡散分布する形状に形成されていることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記電極体の前記絶縁性管体との接合部は、前記搬送管の縦断面視における前記絶縁性管体の端部の内周面側の頂点を中心とした円弧状に切削加工されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記絶縁性管体と接合している前記電極体の端部の内周面側の側辺は、面取り加工されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−170894(P2010−170894A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13195(P2009−13195)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000110882)ニチモウ株式会社 (52)
【Fターム(参考)】