説明

加熱調理器

【課題】湯煎時の鍋の用意や湯温の温度管理の煩雑さを解消して鍋を出すこともなく、自動湯煎機能を付加した加熱調理器を提供すること。
【解決手段】加熱調理器の天板2より下部に湯煎容器収納部13と着脱自在の湯煎容器15を備えることで湯煎のために鍋を都度用意する必要がなく、また、湯煎容器の温度を検出する温度検知手段17の温度値をもとに加熱コイル14の出力を制御することで湯温を所望の温度に維持して自動湯煎加熱が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯煎の用意が簡単にできるとともに、湯温を適温に自動調整できる機能を備えた加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器は、家庭でレトルト食品などを温める場合、鍋などを取り出して水を入れてガスコンロあるいはIHコンロで加熱し、沸騰した後にレトルト食品を鍋に一定時間いれて温めていた。また、湯煎を行う機器として業務用では湯を溜めた湯槽内に深めの容器を設置して保温したい食品を入れ、所定の温度で保温を行うものや、コンロ本体と湯煎機を一体的に設けたものがある。
【0003】
図5は、従来の加熱調理器の構成図を示すものである。図5に示すコンロ本体21の上部にバーナー22およびごとく23を備えている。前記バーナー22は等間隔で7個備えられている。コンロ本体21の後部には、薄い板状の箱形の湯煎機24が隣接して一体的に設けられている。前記湯煎機4の内部は湯煎槽26となっており、上面にカバー27が装着されている。カバー27には円形の穴が形成されていて穴の外周縁に突出形成された鍔に食品を入れたポット28が吊り下がるように支持される。また、湯煎槽の底板の下にはバーナー30を備えており、適温の湯を湯煎槽26に注入できるように給湯栓(図示なし)を備えている。湯煎槽26に所定量の湯が注がれ、食品の入った容器であるポット28を湯煎槽26にセットして湯煎加熱を行う(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平5−52609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、家庭においては湯煎するたびに、鍋を出して湯を沸かすというのは面倒であった。また、離乳食や低温調理などの湯煎温度は60℃付近が適しているが、通常のガスコンロあるいは加熱調理器で沸騰温度より低温の温度で一定に保つように火力調節するのは非常に面倒で難しかった。また、業務用ではコンロに湯煎機が隣接したものがあるが、装置が大掛かりであり家庭で使用するには適さないという課題を有していた。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので天板の一部に湯煎容器収納部を設け、その湯銭容器収納部に加熱手段、温度検知手段、湯煎容器を備えることで、鍋を出さずともいつでも簡便に適温に湯煎できる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理器は、天板の一部に前記天板よりも下部に設けた湯煎容器収納部と、湯煎容器収納部に嵌合する湯煎容器と、前記湯煎容器を加熱する第2の加熱手段と、前記湯煎容器の温度を検出する温度検知手段と、前記温度検知手段で検出された温度値に基づいて前記第2の加熱手段を制御する制御手段とを備え、温度検知手段で検出された温度値に基づいて前記第2の加熱手段の出力を制御するとしたものである。
【0007】
これによって、湯煎する時には、鍋を取り出すことなく、水を前記湯煎容器に注ぐことにより湯煎が可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の加熱調理器は、天板より下の湯煎容器収納部に着脱自在の湯煎容器を配設し、湯煎容器の温度に基づいて加熱手段の出力を制御することによって、湯煎時の煩雑さを解消してかつ適温に被加熱物を加温することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、被加熱物を収容した加熱容器を載置する天板と、前記加熱容器を加熱する加熱手段と、前記天板よりも下部に設けた湯煎容器収納部と、前記湯煎容器収納部に勘合する湯煎容器と、前記湯煎容器を加熱する第2の加熱手段と、前記湯煎容器の温度を検出する温度検知手段と、前記温度検知手段で検出された温度値に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段とを備えたことにより、あらためて鍋を出さずとも水を前記湯煎容器に注ぐだけで湯煎ができ、湯煎時の煩雑さを解消してかつ適温に被加熱物を加温することができる。
【0010】
第2の発明は、前記加熱容器を載置する天板と、前記加熱容器を加熱する加熱手段からなる加熱調理器本体と、前記加熱調理器本体に隣接するように設けた湯煎容器収納部と、前記湯煎容器収納部に嵌合する湯煎容器と、前記湯煎容器を加熱する第2の加熱手段と、前記湯煎容器の温度を検出する温度検知手段と、前記温度検知手段で検出された温度値に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段とを備えたことにより、天板上を湯煎加熱のために占領することなく、複数の加熱調理を同時進行することができる。
【0011】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の湯煎容器を湯煎容器の開口部の一部に持ち手部を設けるとしたことにより、加熱後の熱い湯煎容器の持ち運びを安全に行うことができる。
【0012】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の湯煎容器を湯煎容器内に複数の水きり孔を有した調理籠を備えるとしたことにより、調理用に切った野菜を一度に取り出せてかつ湯煎加熱後の湯切りを行うことができる。
【0013】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明の前記加熱容器収納部の上を覆い、前記天板と一体化して一枚の平面になる蓋を備えることによって、加熱容器収納部の未使用時にゴミや埃などが落ちることを防止して清潔に保つことができ、かつ物を載置することができる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の構成概略図を示すものであり、図2は本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の細部の構成概略図を示すものである。
【0016】
図1において、加熱調理器本体1の上面は天板2が配設されている。前記天板2の下方に加熱手段である加熱コイル3が位置し、前記加熱コイル3の出力を制御する制御手段4と、メニューごとに予め設定された加熱プログラムを記憶する記憶手段5と、前記制御手段4および前記記憶手段5を冷却する送風機6がケース7に内装されている。
【0017】
前記ケース7前面には電源の入/切を行う電源スイッチ8と、湯煎温度および加熱時間の設定を行う操作手段9と、湯煎温度および加熱時間の設定を表示する表示手段10、加熱をスタートさせるスタートボタン11が備えられている。
【0018】
また、天板2には前記加熱コイル3が配設されている位置に加熱容器12を載せるため加熱領域内を示す円が描かれている。
【0019】
天板2の一部には円筒形の湯煎容器収納部13が備えられており、前記湯煎容器収納部13の下部には第2の加熱手段である加熱コイル14が位置している。
【0020】
前記湯煎容器収納部13には着脱自在の湯煎容器15を嵌合する。前記湯煎容器15は誘導加熱が可能な材質たとえばステンレスや鉄などの金属からなる。
【0021】
また、前記湯煎容器15の開口部には熱伝導の遅いプラスチック材料からなる持ち手部16が備えられている。前記持ち手部16は加熱終了時に金属からなる前記湯煎容器15ほど高温にならないので素手で取り出すことができる。
【0022】
前記湯煎容器収納部13の側面あるいは底面には温度検知手段17が備えられており、前記湯煎容器15の外壁面と接触して温度を検知する。
【0023】
前記湯煎容器15の上面には蓋18が備えられ、図2に示すように前記天板2の空洞が塞がれて平面を形成する。
【0024】
前記、蓋18中央の取っ手は上下動するように構成されていて、前記蓋を開ける際は取っ手を引き出して手で摘めるようになっている。反対に前記蓋が閉まっている時は取っ手は下方に下がり天板と同じ高平面を形成している。
【0025】
以上のように構成された加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。なお、加熱コイルによる誘導加熱の原理などは公知事項なのでここでは説明を省略する。
【0026】
まず、天板2の前記蓋18を取り外し、誘導加熱が可能である湯煎容器15を湯煎容器収納部13から取り外して水を入れ、再び湯煎容器収納部13に装着する。
【0027】
その後、電源スイッチ8を入れ、操作手段9で設定温度を選択してスタートボタン11を押して加熱をスタートさせる。あるいは操作手段9で湯煎のメニューを選んだ場合は、記憶手段5のメニューごとに予め設定された加熱プログラムに従って湯煎温度と加熱時間が記憶されており、制御手段4が第2の加熱手段である加熱コイル14の出力を制御して湯煎加熱が行われる。
【0028】
例えば、離乳食のベビーフードでは設定温度を60℃にし、加熱時間すなわち60℃の保持時間を設定する。加熱開始から温度検知手段17で検出した温度値が60℃に到達した段階で第2の加熱手段である加熱コイル14の出力を弱めて60℃を保持するように制御される。
【0029】
温度検知手段17で60℃を検知した時点で電子音にて設定温度に到達したことを知らせる。
【0030】
使用者は温めたい食品を湯煎容器15内へ投入し、スタートボタン11を押すと、設定した加熱時間がカウントされる。そして、あらかじめ設定した加熱時間が経過すると調理終了の電子音が鳴り、第2の加熱手段である加熱コイル14の出力が停止して加熱終了となる。
【0031】
加熱終了後も湯煎容器15の持ち手部16は高温になっていないので素手で持って取り出し、湯を捨てることができる。
【0032】
そして湯煎終了後は湯煎容器15を湯煎容器収納部13に嵌合して蓋18をすることで、すっきり収納することができるとともに、天板2の上もきれいな状態に戻すことができる。
【0033】
なお、初めから水と食品を一緒に湯煎容器にいれて加熱した場合も上記のような制御行われる。
【0034】
また、加熱開始時ではなく、所定温度に湯が沸いて湯煎容器に食品を投入した後に加熱時間の設定を行うことも可能であり、食品が投入されるまでは所定の設定温度に湯は保持される。
【0035】
以上のように、本発明の実施の形態においては天板の一部に前記天板よりも下部に設けた湯煎容器収納部と湯煎容器収納部に嵌合する湯煎容器と湯煎容器と、湯煎容器の温度を検出する温度検知手段と、前記温度検知手段で検出された温度値に基づいて前記第2の加熱手段を制御する制御手段とを備えたことにより、湯煎や茹で加熱する場合の鍋の出し入れという煩雑な操作がなく簡便に行えかつ適温に被加熱物を加温することができる。
【0036】
また、湯煎終了後に湯を捨てた後、再び湯煎容器を収納部に戻して蓋をしておけば、天板上は平らで鍋などを置いておくことも可能となる。
【0037】
また、天板上に2つの鍋を並べて調理している際にさらにもう一つ鍋をおく場合、大きな鍋ではぶつかりあって加熱コイル上の適切な位置にそれぞれの鍋をおくことが困難となるが、鍋収納部を天板よりも低い位置に設けているので複数の鍋がぶつかることなく、加熱コイル上の適切な位置に鍋を載置して複数の鍋の調理を同時進行することができる。
【0038】
(実施の形態2)
図3は、本発明の第2の実施の形態における加熱調理器の構成概略図を示すものである。図4は、本発明の第2の実施の形態における加熱調理器の細部の構成概略図を示すものである。実施の形態2は湯煎容器収納部を加熱調理器本体に隣接した点が実施の形態1と異なる。
【0039】
以下、その相違点を中心に説明する。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0040】
図3において、加熱調理器本体1の横に湯煎容器収納部13を配し、湯煎容器収納部13には着脱自在の湯煎容器15が備えられ、湯煎容器15に接する様に温度検知手段17が設けられている。
【0041】
さらに、湯煎容器15内には図4に示すような調理籠19が装着されている。調理籠19は水から上げると自然と水きりができるように網状あるいは小さな孔が幾数個形成されている。
【0042】
以上のように構成された加熱調理器において、その動作、作用を説明する。
【0043】
湯煎容器15に水をいれて、湯煎容器収納部13に設置し、所定の温度と加熱時間を設定する。
【0044】
野菜などを下茹でする場合は95℃で例えば2分間設定する。所定の温度に到達したことを温度検知手段17で検知後、電子音が鳴り、切った野菜を入れた調理籠19を湯煎容器15に入れる。所定の加熱時間が経過した後に調理籠19を湯より引き上げ、水を切る

【0045】
茹で調理は下ごしらえとして頻繁に行う調理操作であるが、上記のように湯煎容器および湯煎容器収納部を加熱調理器本体の横に配設することにより、加熱調理器本体1の加熱コイル3を占領することなく、複数の加熱を同時進行させることができ、また、茹で加熱ごとに鍋を何回も取り出したりする面倒もなくなる。
【0046】
また、蒸し物の場合、前記湯煎容器15の底から50mm高さに記された水位線まで水をいれる。前記調理籠19の深さも湯煎容器15の水位線よりも浮くように設計されており、水に浸かることはない。
【0047】
調理籠の中に蒸したい食品、例えば、野菜や肉まん、シューマイなどを入れる。肉まんの場合は加熱温度98℃、加熱時間15分を設定する。水温が98℃になったことを前記温度検知手段17で検知すると、電子音が鳴り、肉まんを入れた前記調理籠19を前記湯煎容器収納部13に備えられている前記湯煎容器15に入れて蓋をする。
【0048】
加熱時間が15分間経過した後に加熱終了が電子音で知らされる。加熱後、前記調理籠19を取り出すことで、蒸しあがった調理物を簡単に取り出すことができる。通常蒸し物をする場合、大きな蒸し器を出し、調理後には蒸し器を洗うなどの煩雑な操作をしなければならないが、本発明ではこれら面倒な操作なしに手軽に蒸し調理を行うことができる。
【0049】
なお、湯煎容器で行うのは湯煎のみではなく、煮物、煮込み加熱に使用しても問題なく、調理後のシチューでは50〜60℃で加熱することで焦がさずの保温することができる。さらに、肉や魚を調味料とともに耐熱性の袋に密封して70℃前後で加熱調理を行う低温調理を湯煎温度と加熱時間を設定することで自動調理することが可能となる。
【0050】
以上のように、本実施の形態においては湯煎容器収納部を前記天板のある加熱調理器本体に隣接するように設けたことにより、天板上を湯煎加熱のために占領することなく、複数の加熱調理を同時進行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明にかかる加熱調理器は、湯煎時の鍋を出す煩雑さもなく、湯温を最適な温度に保持して湯煎を行えるので、湯煎機能を搭載した家庭用の加熱調理器に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器の構成概略図
【図2】本発明の実施の形態1における加熱調理器の細部の構成概略図
【図3】本発明の実施の形態2における加熱調理器の構成概略図
【図4】本発明の実施の形態2における加熱調理器の細部の構成概略図
【図5】従来の加熱調理器の構成図
【符号の説明】
【0053】
1 加熱調理器本体
2 天板
3 加熱コイル(加熱手段)
4 制御手段
12 加熱容器
13 湯煎容器収納部
14 加熱コイル(第2の加熱手段)
15 湯煎容器
16 持ち手部
17 温度検知手段
18 蓋
19 調理籠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容した加熱容器を載置する天板と、前記加熱容器を加熱する加熱手段と、前記天板よりも下部に設けた湯煎容器収納部と、前記湯煎容器収納部に嵌合する湯煎容器と、前記湯煎容器を加熱する第2の加熱手段と、前記湯煎容器の温度を検出する温度検知手段と、前記温度検知手段で検出された温度値に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段とを備えた加熱調理器。
【請求項2】
前記加熱容器を載置する天板と、前記加熱容器を加熱する加熱手段からなる加熱調理器本体と、前記加熱調理器本体に隣接するように設けた湯煎容器収納部と、前記湯煎容器収納部に嵌合する湯煎容器と、前記湯煎容器を加熱する第2の加熱手段と、前記湯煎容器の温度を検出する温度検知手段と、前記温度検知手段で検出された温度値に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段とを備えた加熱調理器。
【請求項3】
前記湯煎容器の開口部の一部に持ち手部を設けた請求項1または2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記湯煎容器内に着脱自在の複数の水切り孔を有した調理籠を備えた請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記湯煎容器収納部の上を覆い、前記天板と一体化して平面になる蓋を備えた請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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