説明

加熱調理器

【課題】調理物を確認しながら均一に調理物を加熱してオーブン調理を行うことができる加熱調理器を提供する。
【解決手段】前方に開口するグリル庫4と、グリル庫4内を加熱するためのグリル庫4の両側に設けられる加熱手段と、グリル庫4の前開口部3を閉塞する開閉自在なグリル扉10を備える。グリル扉10にグリル庫4内を視認するための窓部14が設けられる。グリル庫4内に収納される熱伝導性の高い伝熱部材22を備える。伝熱部材22は、両加熱手段の夫々に対向する両側の側片28と、これら両側片28の下端間を接続し加熱手段で加熱された側片28から伝わる熱によって加熱される底片29と、両側片28及び底片29で囲まれて窓部14側に向かって開口する調理物収納空間31を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグリル庫を備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グリル庫を備えたガスこん炉等の加熱調理器にあっては、例えば特許文献1のようにグリル庫内のグリル焼き網に替えて調理物を入れた加熱容器を配置し、該加熱容器をグリル庫にて加熱し、これによって加熱容器内の調理物をオーブン調理できるようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−104545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のグリル庫を備えた加熱調理器にあっては、一般的にグリル庫の開口部を閉塞するグリル扉に透明な窓部を設けてあり、この窓部を透してグリル庫内の調理物を視認できるようにしてある。
【0005】
しかし、前記加熱容器によるオーブン調理にあっては、調理中に窓部を透してグリル庫内を見たとしても加熱容器内の調理物を視認することができない。このため調理物の焼き加減等を確認しながらオーブン調理することができず、調理物を美味しく調理することが難しかった。
【0006】
勿論、調理中にグリル扉を開いてグリル庫内の加熱容器を引き出せば、加熱容器内の調理物の様子を確認することはできるが、この場合は調理物の加熱が中断されると共にグリル庫内の温度が低下してしまい、加熱むら等が生じる恐れがある。
【0007】
本発明は上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、調理物を確認しながら均一に調理物を加熱してオーブン調理を行うことができる加熱調理器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の加熱調理器は、前方に開口するグリル庫4と、グリル庫4内を加熱するためのグリル庫4の両側に設けられる加熱手段と、グリル庫4の前開口部3を閉塞する開閉自在なグリル扉10を備え、グリル扉10にグリル庫4内を視認するための窓部14が設けられ、グリル庫4内に収納される熱伝導性の高い伝熱部材22を備え、該伝熱部材22は、前記両加熱手段の夫々に対向する両側の側片28と、これら両側片28の下端間を接続し前記加熱手段で加熱された側片28から伝わる熱によって加熱される底片29と、両側片28及び底片29で囲まれて前記窓部14側に向かって開口する調理物収納空間31を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記グリル庫4に接続される排気路7を備え、前記伝熱部材22に両側片28の上縁から外側方に向けて突出して前記グリル庫4の排気路7が接続される箇所よりも前方に配置される排気誘導片48が形成され、各排気誘導片48を前側程上方に向かって傾斜させることが好ましい。
【0010】
また、グリル庫4に収納される調理物載置用の載置皿23bを備え、前記各排気誘導片48に上方に突出する立上片49が形成され、各立上片49の上部に載置皿23bの対応する側縁部を支持する載置皿支持部が形成されることが好ましい。
【0011】
また、前記伝熱部材22の両側片28の下端部及び/又は底片29の両側端部に伝熱量調整用孔44が形成されることが好ましい。
【0012】
また、前記調理物収納空間31に収納される調理物載置用の収納皿23aを備え、前記伝熱部材22の底片29に、前記収納皿23aを載置するための上方に突出する多数の突起42が形成されることが好ましい。
【0013】
また、前記突起42を底片29の左右方向の外側よりも中央側の密度が高くなるよう分布させることが好ましい。
【0014】
また、前記突起42を点接触で収納皿23aを支持するものとすることが好ましい。
【0015】
また、前記突起42上に突起42よりも熱伝導率が小さい熱抵抗体55が設けられることが好ましい。
【0016】
また、前記調理物収納空間31に収納される調理物載置用の収納皿23aを備え、前記伝熱部材22に収納皿23aを左右方向において位置決めする位置決め部45が形成され、位置決め部45で位置決めされた収納皿23aと両側片28との間に間隙47が形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明にあっては、グリル庫の両側に設けられた加熱手段にて伝熱部材の両側片を加熱することで、伝熱部材の両側片と該両側片からの伝熱により加熱される底片とで調理物収納空間に収納された調理物を加熱してオーブン調理を行うことができる。しかも、調理物収納空間は前方に位置するグリル扉の窓部に向かって開口するので、グリル扉の窓部を透して調理物収納空間に収納された調理物の焼き加減等を確認しながら前記オーブン調理を行うことができ、且つ、このとき調理物をグリル庫から出す必要もないので調理物を均一に加熱して仕上がりよく調理できる。
【0018】
また、伝熱部材に両側片の上縁から外側方に向けて突出してグリル庫の排気路が接続される箇所よりも前方に配置される排気誘導片が形成され、各排気誘導片を前側程上方に向かって傾斜させることで、オーブン調理時において側片に沿って上昇した加熱気体を排気誘導片に沿って前方向に誘導することができる。このため伝熱部材において排気が流れやすい方向である排気路が接続される箇所側と反対側に位置して加熱されにくい箇所となる前部を充分に加熱することができ、伝熱部材をより均一に加熱することができる。
【0019】
また、各排気誘導片に上方に突出する立上片が形成されると共に、立上片の上部に載置皿の側縁部を支持するための載置皿支持部が形成されることで、左右幅の大きい載置皿を伝熱部材で支持し、この載置皿に左右幅の大きいピザやお好み焼き等の調理物を支持し、これをオーブン調理することができる。また、各載置皿支持部で両側縁部が支持された載置皿の下面と各排気誘導片の上面との間に空所が形成されることで、伝熱部材は載置皿を高温に加熱された排気誘導片と接触させることなく支持することができ、載置皿に載せた調理物を輻射や対流によってより均一に加熱することができる。
【0020】
また、伝熱部材の両側片の下端部及び/又は底片の両側端部に伝熱量調整用孔が形成されることで、加熱された両側片から底片側に伝わる熱量を適度に抑えることができ、これにより調理物収納空間に収納された調理物を輻射や対流によってより均一に加熱することができる。
【0021】
また、伝熱部材の底片に収納皿を載置するための上方に突出する多数の突起が形成されることで、多数の突起上に収納皿を載置した状態で底片の上面と収納皿の下面との間に隙間を形成して収納皿と底片との接触面積を小さくすることができ、これにより底片から収納皿に伝わる熱量を抑え、輻射や対流によって収納皿に載せた調理物をより均一に加熱することができる。
【0022】
また、前記突起が底片の左右方向の外側よりも中央側の密度が高くなるよう分布することで、両側片に近く高温になりやすい底片の左右外側部分においては収納皿に伝わる熱量を抑えて過加熱を防止でき、また、側片から離れて低温になりやすい底片の左右中央部分にあっては収納皿に効率良く熱を伝えることができ、この結果、調理物をより均一に加熱することができる。
【0023】
また、前記突起を点接触で収納皿を支持するものとすることで、収納皿と底片の接触面積をさらに小さくすることができ、これによって底片から収納皿に伝わる熱量をさらに抑え、輻射や対流によって収納皿に載せた調理物をより均一に加熱することができる。
【0024】
また、前記突起上に突起よりも熱伝導率が小さい熱抵抗体が設けられることで、収納皿を突起上に熱抵抗体を介して載置することができ、これによって底片から収納皿に伝わる熱量をさらに抑え、輻射や対流によって収納皿に載せた調理物をより均一に加熱することができる。
【0025】
また、伝熱部材に収納皿を左右方向において位置決めする位置決め部が形成され、位置決め部で位置決めされた収納皿と両側片との間に間隙が形成されるようにすることで、両側片から収納皿に伝わる熱量を抑えて、輻射や対流によって調理物をより均一に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態の一例の加熱調理器の側断面図である。
【図2】同上の正断面図である。
【図3】同上のグリル皿上に伝熱部材を載置固定した状態を示す平面図である。
【図4】同上の伝熱部材を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図、(d)は要部断面図である。
【図5】同上の収納皿を示し、(a)は平面図、(b)は側断面図、(c)は正断面図である。
【図6】同上の載置皿を示し、(a)は平面図、(b)は側断面図、(c)は正断面図である。
【図7】同上の伝熱部材に替えてグリル焼網をセットしたときの加熱調理器の正断面図である。
【図8】他例の突起を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態に示す加熱調理器1はガスこん炉であるが、IHクッキングヒータ等のその他の加熱調理器に本発明を適用してもよい。
【0028】
本実施形態の一例の加熱調理器1は略箱状の調理器本体2の上面に図示しないこん炉バーナーが設けられたガスこん炉であって、図1に示すように調理器本体2には調理器本体2の前面に形成された前開口部3から前方に開口するグリル庫4が設けられている。
【0029】
グリル庫4の内部には、加熱手段として、左右両側面に下火バーナー6が設けられ、また、天面に上火バーナー5が設けられている。グリル庫4内を加熱する加熱手段の熱源としてはガスの他に電気等のその他の熱源を用いてもよい。
【0030】
調理器本体2の後部にはグリル庫4の後方に位置する排気路7が設けられている。排気路7の上流端はグリル庫4の上部後端に接続され、下流端は調理器本体2の上面後端部に設けられた排気口8に接続されている。
【0031】
グリル庫4内において上下のバーナー5、6により発生した燃焼ガスは、排気路7を経由して上方に導かれ、排気口8に設けられたカバー9を通過して外部に排出される。排気路7の上部と下部にはそれぞれ図示しない温度センサが配設され、各部の排気温度上昇速度を検知して加熱制御を行えるようになっている。
【0032】
調理器本体2にはグリル庫4の前開口部3を閉塞するグリル扉10が設けられている。グリル扉10の下部には平面視略矩形枠状に形成された線材からなる後方に突出したグリル皿受け12が一体的に設けられている。
【0033】
グリル扉10の前面下部には取っ手13が設けられている。取っ手13を持ってグリル扉10を前方に引くことで、グリル庫4の前開口部3を開放すると共に該グリル扉10と共にグリル皿受け12をグリル庫4から前方にスライドして引き出すことができる。また、この状態からグリル扉10を前方に押してグリル扉10でグリル庫4の前開口部3を閉塞すれば、グリル皿受け12がグリル庫4内の所定位置に収納される。
【0034】
グリル扉10の中央には耐熱ガラス等からなる透明な窓部14が設けられている。これにより、調理器本体2の前方に居る使用者はグリル扉10で閉塞されたグリル庫4内を窓部14を透して視認できるようになっている。
【0035】
グリル皿受け12には汁受けとなるグリル皿15が載置固定される。固定されたグリル皿15はグリル皿受け12と共にグリル庫4から出し入れすることができる。
【0036】
グリル皿15は平面視略矩形状をして上方に開口する浅底の箱状部16と、箱状部16の上端開口縁から外側方へと連設されて外郭が平面視略矩形状となるフランジ部17と、フランジ部17の周縁から下方に垂下される垂下部18とからなる。
【0037】
グリル皿15をグリル皿受け12に取り付けるには、箱状部16を枠状のグリル皿受け12の内側に上方から挿入し、フランジ部17をグリル皿受け12上に載置し、垂下部18をグリル皿受け12の外周に沿って位置させる。
【0038】
グリル庫4では以下に示すグリル調理とオーブン調理を行えるようになっている。
【0039】
グリル調理を行う場合は、図7に示すように、グリル皿受け12にグリル皿15を載置固定すると共にグリル皿15上にグリル焼き網20を載置固定し、グリル焼き網20の上に魚等の調理物21を載せ、グリル扉10を閉じて、グリル皿受け12、グリル皿15、グリル焼き網20、及び調理物21をグリル庫4内に収納し、上下のバーナー5、6を用いて調理物21を加熱する。
【0040】
オーブン調理を行う場合は、図1及び図2に示すように、グリル皿受け12にグリル皿15を載置固定し、且つ、グリル皿15上に前記グリル焼き網20に替えて伝熱部材22を載置固定し、且つ、伝熱部材22にオーブン用皿23を介して図示しない調理物を載せ、グリル扉10を閉じて、これらグリル皿15、伝熱部材22、オーブン用皿23、及び調理物をグリル庫4内に収納し、上下のバーナー5、6を用いてオーブン用皿23に載せた調理物を加熱する。
【0041】
なお、上記のグリル調理時及びオーブン調理時には、上下のバーナー5、6のうち手動で選択されたいずれか一方又は両方を用いて調理物を加熱するようにしてもよいし、利用するバーナー5、6を自動で選択する又は自動で変更しつつ調理物を加熱するようにしてもよい。
【0042】
オーブン調理の際に用いられる伝熱部材22は熱伝導性の高い金属材料からなり、本例の伝熱部材22は板厚1.6mmの薄いアルミニウム板よりなる。なお、伝熱部材22は他の高熱伝導材料からなるものであってもよい。
【0043】
伝熱部材22は図4に示すように前後両方向及び上方に開口した略逆ハット状に左右対称に形成されている。伝熱部材22は下部の調理物収納部26と上部の皿保持部27で構成されている。
【0044】
調理物収納部26内にはオーブン用皿23として図5に示す平面視略矩形状の収納皿23aを収納可能となっている。収納皿23aはカップケーキや焼きプリン等の調理物を調理する際に用いられる。
【0045】
図4(c)に示すように、調理物収納部26は上方に開口する断面略凹字状に形成され、左右両側の対向する側片28と、これら両側片28の下端間を接続する底片29とで構成されている。
【0046】
図4(a)に示すように底片29は平面視で前後に長い略矩形状に形成されている。底片29の前端部は両側片28よりも前方に突出し、後端部は両側片28よりも後方に突出している。
【0047】
底片29の前縁部及び後縁部は、前載置部33、後載置部34を夫々構成し、これら前載置部33及び後載置部34はこの間の部位よりも一段高い位置に形成されている。
【0048】
前載置部33の前縁の左右方向の中央及び後載置部34の後縁の左右両側には下方に突出する差込片部35、36が一体に形成されている。図4(b)に示すように伝熱部材22の前端に設けられた差込片部35は鉛直下方に突出し、後端に設けられた各差込片部36は、後載置部34から鉛直下方に突出する鉛直部37と、鉛直部37の下端から後斜め下方に向けて突出する傾斜部38とで構成されている。
【0049】
一方、図3に示すように、グリル皿15の前縁及び後縁を構成するフランジ部17において各差込片部35、36に対応する箇所には、左右に長いスリットからなる差込孔39、40が形成されている。
【0050】
伝熱部材22をグリル皿15に固定するには、まず、伝熱部材22を若干後下がりに傾けた状態で後側の各差込片部36の傾斜部38を対応する差込孔40に上方から差し込む。続いて、伝熱部材22を下方に移動して、差込片部35を対応する差込孔39に差し込むと共に、各差込片部36の鉛直部37を対応する差込孔40に差し込み、前載置部33及び後載置部34を対応するグリル皿15の前縁及び後縁を構成するフランジ部17に載置する。
【0051】
このような方法で伝熱部材22をグリル皿15に取り付けることができるので、例えばグリル皿15を調理台等の上に置いてこのグリル皿15に前方から伝熱部材22を容易に取り付けることができる。また、上記により伝熱部材22は底片29をグリル皿15の底部から上方に浮かせた状態でグリル皿15に取り付けられる。
【0052】
調理物収納部26の内側には、両側片28と底片29で囲まれた、前方、後方、及び上方に開口する調理物収納空間31が形成されている。図1に示すように、調理物収納空間31には前記収納皿23a及びこれに載せた調理物を収納することができる。調理物収納空間31は前記オーブン調理時においてグリル扉10の窓部14側に向かって開口し、窓部14を透して調理物収納空間31に収納された調理物を視認できるようになっている。
【0053】
オーブン調理時においては、、図2に示すように調理物収納部26がグリル庫4の両側に設けられた対向する両下火バーナー6の間に配置され、両側片28が対向する下火バーナー6により加熱される。加熱された両側片28の熱は調理物収納空間31に向けて輻射され、これにより調理物収納部26内に配置された収納皿23a上の調理物が加熱される。
【0054】
図4に示すように底片29には調理物収納部26内に収納された収納皿23aを載置するための上方に突出する多数の突起42が形成されている。各突起42は前後方向及び左右方向に並べて設けられ、底片29全体において略均一に分布している。
【0055】
各突起42は同形同大であり、底片29の一部を上方に向けて略半球面状に突曲させることで形成され、その頂部を収納皿23aの下面と点接触で接触させて収納皿23aを点支持する。図2のように多数の突起42上に収納皿23aを載置した状態では、底片29の上面と収納皿23aの突起42で支持された部分以外の下面とが離間してこの間に隙間43が形成される。
【0056】
オーブン調理時において、図2のように両下火バーナー6よりも下方に配置される底片29は両下火バーナー6により加熱された側片28から伝わる熱により加熱される。加熱された底片29の熱は隙間43を介して収納皿23aに向けて輻射され、この輻射と隙間43を対流する加熱気体によって収納皿23aが下から加熱される。
【0057】
収納皿23aは底片29から突出する多数の突起42により支持されて底片29との接触面積が小さいため、底片29から収納皿23aに伝わる熱量を抑えることができる。このため底片29から収納皿23aに熱が直接伝わることによる調理物の過加熱を防止し、前記輻射や対流により調理物を均一に加熱できる。
【0058】
なお、本例では各突起42の形状は突端側程外郭が小さくなる球面状に形成したが、先端が尖った形状やピン状に形成し、これにより収納皿23aを点支持するものであってもよい。さらに、各突起42は収納皿23aを点接触で支持するものに限られず、面接触で収納皿23aを支持するものであってもよい。
【0059】
図4に示すように、調理物収納部26の両側片28の下端部及び底片29の左右方向の両側端部には伝熱量調整用孔44が形成されている。伝熱量調整用孔44は前後に長いスリット状の孔からなり、両側片28及び底片29の夫々において前後に複数並べて設けられている。
【0060】
各伝熱量調整用孔44は下火バーナー6によって加熱された両側片28から底片29の左右方向中央側に伝わる熱量を適度に抑えることができ、これにより収納皿23aに載置された調理物を前記輻射や対流によってより均一に加熱することができる。
【0061】
なお、伝熱量調整用孔44の寸法、形状、及び数等は底片29側へ伝わる伝熱量等に対応して適宜変更してもかまわない。また、図示例では、側片28と底片29に伝熱量調整用孔44を形成したが、いずれか一方にのみ伝熱量調整用孔44を形成してもよい。
【0062】
調理物収納部26の下端部の両側端部には位置決め部45が形成されている。位置決め部45は両側片28と底片29とでなす下部両側の角部54に前後に並べて複数形成されている。各位置決め部45は前後方向において隣接する伝熱量調整用孔44の間の部位に位置している。各位置決め部45は角部54に前後に離間して切除部46を形成し、両切除部46間の部位を調理物収納空間31側に向けて突曲させることで形成される。
【0063】
図2のように調理物収納空間31に収納された収納皿23aは左右両側の位置決め部45間に挿入された状態で底片29上に載置される。この状態では、収納皿23aの側端部が対応する位置決め部45に当接したとしても、両側片28における位置決め部45を形成していない部分と収納皿23aとが接触しないように設定されている。したがって、オーブン調理時においては収納皿23aと両側片28との間に常に間隙47を形成することができ、これにより、側片28からの輻射により調理物を適度に加温することができ、且つ、両側片28から収納皿23aに伝わる熱量を抑えて調理物の過加熱を防止することができる。
【0064】
伝熱部材22の皿保持部27には、収納皿23aとは別のオーブン用皿23として、平面略視矩形状の載置皿23bを保持させることができる。載置皿23bは収納皿23aよりも平面積が大きく、ピザやお好み焼き等の比較的扁平な調理物を調理する際に用いられる。
【0065】
なお、グリル皿15を介してグリル皿受け12に取り付けられた伝熱部材22は収納皿23aや載置皿23bをセットした状態のままグリル皿受け12と共にグリル庫4から出し入れできるようになっている。
【0066】
図4に示すように、皿保持部27は、両側片28の上縁から外側方に向けて一体に突出する排気誘導片48と、各排気誘導片48の前縁、後縁、及び外側縁の夫々から上方に向けて突出する立上片49で構成されている。
【0067】
各排気誘導片48は全体が前側程上方に向かって傾斜しており、図2のようにオーブン調理時において対応する下火バーナー6と側片28の間に形成された空間50の上方に配置される。
【0068】
オーブン調理時においては、各下火バーナー6からの排気(加熱された気体)は側片28に当たった後、ドラフト力により側片28に沿って上昇し、この上昇は空間50の上方に配置される排気誘導片48によって妨げられる。
【0069】
ここで、仮に排気誘導片48が水平であれば、前記排気誘導片48の下面に当たった下火バーナー6からの排気は、グリル庫4の排気路7を接続した箇所、すなわち後方に向かって流れやすく、この結果、伝熱部材22の後部が前部に比べて高温に加熱されやすい。
【0070】
しかし、本例では、グリル庫4の排気路7を接続した箇所よりも前方に配置される各排気誘導片48を前側程上方に向かって傾斜させているため、下火バーナー6からの排気が各排気誘導片48の下面に当たったときには該排気は前方向に誘導される。このため伝熱部材22を前後方向において均一に加熱することができる。
【0071】
図4のように皿保持部27の各立上片49は、排気誘導片48の外縁から立ち上げた縦片部51と、縦片部51の上端から排気誘導片48と反対側に向けて突出する横片部52と、横片部52の突端部から立ち上げた縁片部53で構成されている。各立上片49の上部に形成された横片部52は載置皿23bの側端部を支持する載置皿支持部を構成する。
【0072】
すなわち、図2のように、各横片部52には、載置皿23bの対応する側縁部における前端部、後端部、及び外側端部の夫々が載置され、これにより載置皿23bはその両側縁部が皿保持部27によって支持されて伝熱部材22上に架け渡される。また、載置皿23bは全ての縁片部53で囲まれた領域内に挿入され、各縁片部53により水平方向の位置決めがなされる。
【0073】
オーブン調理時においては、載置皿23bは上火バーナー5に対向する位置に配置され、上火バーナー5によって載置皿23bに載せた調理物を加熱して焼き目を付けることができる。また、各横片部52で両側縁部が支持された載置皿23bの下面と各排気誘導片48の上面との間には空所32が形成され、前記載置皿23bは各排気誘導片48からの熱の輻射と、空所32を対流する加熱気体によっても加熱される。
【0074】
ここで、載置皿23bは高温に加熱される各排気誘導片48と接触させることなく支持することができるので、各排気誘導片48から直接熱が伝わることがなく、前記載置皿に載せた調理物を輻射や対流によってより均一に加熱することができる。
【0075】
なお、既述のオーブン調理では、収納皿23a及び載置皿23bの両方を伝熱部材22にセットしてもよいし、収納皿23a又は載置皿23bのいずれか一方のみを伝熱部材22にセットしてもよい。
【0076】
以上説明した加熱調理器1にあっては、両下火バーナー6にて加熱される伝熱部材22の両側片28と、該両側片28からの伝熱により加熱される底片29とで、調理物収納空間31に収納された調理物を加熱してオーブン調理を行うことができる。
【0077】
また、伝熱部材22の調理物収納空間31は前方に開口しているため、グリル扉10の窓部14を透して調理物収納空間31に収納された調理物の焼き加減等を確認しながらオーブン調理を行うことができる。
【0078】
また、既述のように伝熱部材22は高温に加熱される部位が収納皿23aや載置皿23bと直接接触しないようにすると共に、収納皿23aや載置皿23bとの接触面積を小さくする工夫がなされている。このため、調理物を輻射や対流を利用して均一に加熱することができ、また調理物が焦げ付いたり、不要な焦げ目ができたりすることも防止できる。
【0079】
ここで、上記例では、伝熱部材22の底片29に多数形成された突起42上に収納皿23aが直接載置されるようにしたが、図8に示すように各突起42の頂部上に伝熱部材22よりも熱伝導率の小さい熱抵抗体55を取り付け、調理物収納空間31に収納された収納皿23aが各突起42上に熱抵抗体55を介して載置されるようにしてもよい。このようにすると、各突起42から収納皿23aに伝わる熱量をさらに抑えて、前記輻射や対流によって調理物をより均一に加熱することができる。
【0080】
また、上記各例では多数の突起42を底片29全体において略均一に分布させたが、底片29の左右方向の外側よりも中央側の密度(単位面積当たりの突起42の数)が高くなるよう分布させてもよい。すなわち、左右に隣接する突起42の間隔を底片29の左右方向の外側よりも中央側の方が短くなるようにする。
【0081】
このようにすると両側片28に近く高温になりやすい底片29の左右外側部分においては収納皿23aに伝わる熱量を抑えて過加熱を防止でき、また、側片28から離れて低温になりやすい底片29の左右中央部分にあっては収納皿23aに効率良く熱を伝えることができ、この結果、収納皿23aをより均一に加熱することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 加熱調理器
3 前開口部
4 グリル庫
10 グリル扉
14 窓部
22 伝熱部材
28 側片
29 底片
31 調理物収納空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に開口するグリル庫と、グリル庫内を加熱するためのグリル庫の両側に設けられる
加熱手段と、グリル庫の前開口部を閉塞する開閉自在なグリル扉を備え、グリル扉にグリル庫内を視認するための窓部が設けられ、グリル庫内に収納される熱伝導性の高い伝熱部材を備え、該伝熱部材は、前記両加熱手段の夫々に対向する両側の側片と、これら両側片の下端間を接続し前記加熱手段で加熱された側片から伝わる熱によって加熱される底片と、両側片及び底片で囲まれて前記窓部側に向かって開口する調理物収納空間を備えることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記グリル庫に接続される排気路を備え、前記伝熱部材に両側片の上縁から外側方に向けて突出して前記グリル庫の排気路が接続される箇所よりも前方に配置される排気誘導片が形成され、各排気誘導片を前側程上方に向かって傾斜させることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
グリル庫に収納される調理物載置用の載置皿を備え、前記各排気誘導片に上方に突出する立上片が形成され、各立上片の上部に載置皿の対応する側縁部を支持する載置皿支持部が形成されることを特徴とする請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記伝熱部材の両側片の下端部及び/又は底片の両側端部に伝熱量調整用孔が形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記調理物収納空間に収納される調理物載置用の収納皿を備え、前記伝熱部材の底片に、前記収納皿を載置するための上方に突出する多数の突起が形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記突起を底片の左右方向の外側よりも中央側の密度が高くなるよう分布させることを特徴とする請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記突起を点接触で収納皿を支持するものとすることを特徴とする請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記突起上に突起よりも熱伝導率が小さい熱抵抗体が設けられることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記調理物収納空間に収納される調理物載置用の収納皿を備え、前記伝熱部材に収納皿を左右方向において位置決めする位置決め部が形成され、位置決め部で位置決めされた収納皿と両側片との間に間隙が形成されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−203620(P2010−203620A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46201(P2009−46201)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(301066992)株式会社ハーマンプロ (145)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】