説明

加熱調理器

【課題】調理物の加熱調理の途中に受け皿内の水が無くなった場合に加熱手段の出力を低下させたとしても、調理の仕上がりが悪くなることを回避し、調理の仕上がりを安定させる。
【解決手段】制御装置は、調理物の調理途中に受け皿内に水が無いと判別したときに(ステップS5にてNO)、加熱手段の出力を低下させる補正を行うとともに、調理物の調理の残り時間を延長する補正を行う(ステップS7)。制御装置は、受け皿内に水が無いと判別したときにおける調理開始からの経過時間に応じて、残り時間の延長量を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚などの調理物を加熱調理する構成の加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の加熱調理器を用いて魚などの調理物を焼く場合、調理物から滴下する油や水分を受けるための受け皿内に水を貯留した状態で調理を行う、いわゆる水有り調理がある。この水有り調理では、調理物を加熱するヒータ(加熱手段)の出力(火力)を強くできるので、調理物を短時間で焼くことができる利点がある。
【0003】
このような水有り調理を実行可能に構成された加熱調理器として、次のようなものが考えられている(例えば、特許文献1参照)。この加熱調理器は、受け皿の温度を検知するサーミスタを備えており、このサーミスタによる検知温度に基づいて受け皿内の水の有無を判別するようになっている。そして、受け皿内に水が無いことが検知されると、ヒータの出力を低下させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−50487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の加熱調理器によれば、受け皿内の水が無くなった場合には、ヒータの出力を低下させるので、調理物の発煙,発火などを防止することができ、水無し状態のままで加熱調理を継続することができる。しかしながら、ヒータの出力を低下させてしまうと、その分、調理物を加熱するための熱量が不足するようになり、調理の仕上がり(焼き加減などの調理具合)が不安定になるという難点がある。
【0006】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、調理物の加熱調理の途中に受け皿内の水が無くなった場合に加熱手段の出力を低下させたとしても、調理の仕上がりが悪くなることを回避することができ、しかも、調理の仕上がりを安定させることができる加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加熱調理器は、調理物を収容する加熱庫と、前記加熱庫内の前記調理物を加熱する加熱手段と、前記加熱庫内に配設され、水を貯留することが可能な受け皿と、前記加熱庫内の温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段による検知温度に基づいて、前記受け皿内の水の有無を判別する水有無判別手段と、前記調理物の調理開始からの経過時間を計測する時間計測手段と、前記調理物の調理途中に前記水有無判別手段が前記受け皿内に水が無いと判別したときに、前記加熱手段の出力を低下させる補正を行うとともに、前記調理物の調理の残り時間を延長する補正を行う補正手段とを備え、前記補正手段は、前記水有無判別手段が前記受け皿内に水が無いと判別したときに前記時間計測手段が計測している前記経過時間に応じて、前記残り時間の延長量を変化させることに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の加熱調理器によれば、調理物の加熱調理の途中に受け皿内の水が無くなった場合に、補正手段は、加熱手段の出力を低下させる補正を行う。これにより、調理物の発煙,発火などを防止することができ、水無し状態のままで加熱手段による加熱調理を継続することができる。また、補正手段は、加熱手段の出力を低下させるとともに、調理の残り時間を延長する補正を行う。これにより、加熱手段の出力を低下させたことに伴う熱量の不足を補うことができ、調理の仕上がりが悪くなることを回避することができる。さらに、補正手段は、受け皿内の水が無くなったときにおける調理の経過時間に応じて、残り時間の延長量を変化させる。これにより、調理時間が過度に延長されることがなく、調理の仕上がりを安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すものであり、制御装置による制御内容を示すフローチャート
【図2】グリル調理ユニットの構成を示す縦断正面図
【図3】電気的構成を示すブロック図
【図4】残時間補正テーブルを示す図
【図5】本発明の第2の実施形態を示す図4相当図
【図6】本発明の第3の実施形態を示す図3相当図
【図7】本発明の第4の実施形態を示す図4相当図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図1ないし図4を参照して説明する。
図2は、誘導加熱調理器(IHクッキングヒータ)に備えられたグリル調理ユニット1の構成を示す縦断正面図である。グリル調理ユニット1は、例えば魚などの調理物を焼くためのグリル機能を担うものである。なお、図示はしないが、誘導加熱調理器は、外郭を構成する筐体と、この筐体の上方に配置されたトッププレートとを備えており、このトッププレートが誘導加熱調理器の上面を構成している。誘導加熱調理器は、トッププレートの下方にて左右に並べて配設された2つの誘導加熱コイルを備えており、これら誘導加熱コイルによって、トッププレート上に載置された調理器具を誘導加熱することができる構成となっている。また、誘導加熱調理器の前面には、操作パネルと、グリル調理ユニット1の前面を構成するグリル庫用扉(図示せず)とが設けられている。使用者は、操作パネルを介して、調理に関する各種操作(加熱時間の設定操作、加熱温度の設定操作、調理モードの選択操作など)を行うことができるようになっている。
【0011】
次に、グリル調理ユニット1の構成について説明する。
図2に示すように、グリル調理ユニット1は、前面が開口した矩形箱状のグリル庫2(加熱庫に相当)の内部に、複数(この場合3つ)の上ヒータ3と、複数(この場合3つ)の下ヒータ4と、受け皿5と、グリル網台6と、グリル庫内用温度センサ7と、受け皿用温度センサ8(温度検知手段に相当)とを備えて構成されている。グリル庫2は、矩形箱状の外枠2aの内部に、前面が開口した矩形箱状の内枠2bが設けられた構成となっており、外枠2aと内枠2bとの間には空間が形成されている。グリル庫2(内枠2b)の前面開口部(調理物Fを出し入れするための開口部)は、上述したグリル庫用扉によって開閉されるようになっている。グリル庫2の左右両側部には、内方に突出する載置レール2cが設けられている。
【0012】
上ヒータ3は、グリル庫2内の上部に左右に並べて配設され、下ヒータ4は、グリル庫2内の下部に左右に並べて配設されている。これら上ヒータ3および下ヒータ4は、グリル庫2内に収容された調理物Fを加熱するための加熱手段を構成する。
【0013】
受け皿5は、グリル庫2内の底部に出し入れ可能に収納されている。この受け皿5は、矩形の浅底容器状をなし、内部に水を貯留できるようになっている。また、この受け皿5は、グリル庫2内において下ヒータ4の下方に配置され、調理物Fから滴下する油や水分を受けるようになっている。この受け皿5は、その縁部が載置レール2cに載置されて支持されるようになっている。この状態では、受け皿3は、グリル庫2の底部から僅かに浮いた状態(数mm程度浮いた状態)となる。
【0014】
グリル網台6は、線材を組み合わせて構成されたものであり、受け皿5の上部に出し入れ可能に載置される。このグリル網台6は、受け皿5内の底部に配置される脚部6aと、この脚部6aの上方に設けられて上ヒータ3と下ヒータ4との間に配置される棚状の載置部6bとを有していて、その載置部6b上に、魚などの調理物Fを載置できるようになっている。従って、載置部6b上に載置された調理物Fは、上ヒータ3と下ヒータ4との間に配置される。
【0015】
グリル庫内用温度センサ7は、グリル庫2内の右上部に設けられている。このグリル庫内用温度センサ7は、グリル庫2内の温度を直接検知するためのものである。この場合、グリル庫内用温度センサ7は、サーミスタで構成されている。
【0016】
受け皿用温度センサ8は、グリル庫2の底部の空間内(内枠2bの下面部分)に設けられている。この受け皿用温度センサ8は、グリル庫2の底部に配置される受け皿5の温度を検知するためのものである。この受け皿用温度センサ8は、内枠2bの底部を介して、グリル庫2内(特に、内枠2bと受け皿5との間に僅かに形成される空間部分)の温度を検知し、この検知温度から受け皿5内の温度を推定するものである。即ち、受け皿用温度センサ8は、グリル庫2内の温度に基づいて、受け皿5の温度を間接的に検知する。この受け皿用温度センサ8は、検知した受け皿5の温度(推定温度)に基づいて、当該受け皿5内の水の有無、即ち、受け皿5内に水が貯留されているか否かを検知するためのものである。この場合、受け皿用温度センサ8は、サーミスタで構成されている。
【0017】
次に、誘導加熱調理器の制御系の構成について図3を参照しながら説明する。図3は、本実施形態に係る電気的構成を示すブロック図である。制御装置9(水有無判別手段、補正手段に相当)は、マイクロコンピュータを主体として構成されており、グリル調理ユニット1を含む誘導加熱調理器の動作全般を制御するようになっている。
【0018】
制御装置9には、操作パネルに設けられた設定部10が接続されている。図示はしないが、この設定部10には、調理の加熱時間や加熱温度を設定するための各種設定キー、調理を開始するためのスタートキーなどが設けられている。また、設定部10には、主に魚を自動調理するための自動調理モードキーとして丸身キー、切り身キー、ひらきキー、つけ焼きキーが設けられている。
【0019】
丸身キーは、丸身の魚をまるごと自動で焼き上げる「丸身自動調理モード」を設定するためのキーである。切り身キーは、魚の切り身を自動で焼き上げる「切り身自動調理モード」を設定するためのキーである。ひらきキーは、魚のひらきを自動で焼き上げる「ひらき自動調理モード」を設定するためのキーである。つけ焼きキーは、例えば小魚などに味噌などの調味料をつけて焼き上げる「つけ焼き自動調理モード」を設定するためのキーである。また、設定部10には、その他の調理物(チキン、グラタン、焼きなすなど)を自動調理するための自動調理モードキーとしてグリルメニューキーが設けられている。
【0020】
また、制御装置9には、上述のグリル庫内用温度センサ7および受け皿用温度センサ8が接続されており、これらグリル庫内用温度センサ7および受け皿用温度センサ8からの温度検知信号がそれぞれ入力されるようになっている。また、制御装置9には、上述の上ヒータ3および下ヒータ4が接続されている。
【0021】
また、制御装置9には、例えば液晶ディスプレイ(LCD)で構成された表示部11(表示手段に相当)、および、ブザー12(報知手段に相当)が接続されている。この表示部11には、設定された加熱時間や加熱温度、選択された調理モードなどが表示されるようになっている。また、制御装置9には、タイマ回路13(時間計測手段)が接続されており、このタイマ回路13は、調理物Fの調理開始からの経過時間を計測するようになっている。
【0022】
このように構成された制御装置9は、設定部10からの操作信号、グリル庫内用温度センサ7および受け皿用温度センサ8からの温度検知信号、および、予め記憶されている制御プログラムに基づいて、上ヒータ3および下ヒータ4、表示部11、ブザー12の動作を制御するようになっている。これにより、制御装置9は、グリル調理ユニット1によるグリル調理を実行可能になっている。
【0023】
なお、グリル調理ユニット1によって実行可能なグリル調理(グリル機能)には、手動グリル調理と自動グリル調理がある。手動グリル調理は、使用者が設定部10を介して手動で設定した加熱時間や加熱温度に基づいてグリル調理を実行するものである。自動グリル調理は、予め設定された複数の自動調理モード(上述の丸身自動調理モード、つけ焼き自動調理モードなど)に基づいてグリル調理を実行するものである。
【0024】
上記構成のグリル調理ユニット1では、受け皿5内に水を貯留した状態で加熱調理を行う「水有り調理」と、受け皿5内に水を入れない状態で加熱調理を行う「水無し調理」とが実行可能である。
【0025】
水有り調理を行う場合、使用者は、受け皿5内に所定量の水を貯留するとともに、グリル網台6の載置部6b上に調理物Fを載せた状態で、これらをグリル庫2内に収納する。そして、グリル庫用扉を閉め、設定部10のキー操作を行い、スタートキーを操作する。水有り調理では、制御装置9は、上ヒータ3および下ヒータ4の通電(オン/オフ)の切り換えを同時に行うようになっている(水有りオン/オフシーケンス)。この場合、受け皿5内に水が貯留されているので、受け皿5の温度は100℃以上には上昇しない。
【0026】
一方、水無し調理を行う場合、使用者は、受け皿5内に水を入れずに、グリル網台6の載置部6b上に調理物Fを載せた状態で、これらをグリル庫2内に収納する。そして、グリル庫用扉を閉め、設定部10のキー操作を行い、スタートキーを操作する。水無し調理では、制御装置9は、調理開始時には上ヒータ3および下ヒータ4を同時に通電し、調理の途中からは上ヒータ3と下ヒータ4とを交互に通電するようになっている(水無しオン/オフシーケンス)。この場合、受け皿5内には水が貯留されていないので、受け皿5の温度は100℃以上に上昇する。制御装置9は、上ヒータ3と下ヒータ4とを交互に通電することによって、受け皿5の温度を240℃以下の所定温度(例えば200℃)に維持する。
【0027】
なお、2つのヒータ3,4を交互に通電する水無しオン/オフシーケンスでは、2つのヒータ3,4を同時に通電する水有りオン/オフシーケンスに比べ、調理物Fを加熱するための火力(出力)が低下する。
【0028】
次に、本実施形態の作用について図1を参照しながら説明する。なお、ここでは、上述した複数の自動調理モードのうち丸身自動調理モードを実行する場合について説明する。
設定部10を介して丸身自動調理モードが設定され、スタートキーが操作されると、制御装置9は、この制御を開始し、まず、上ヒータ3および下ヒータ4をともに通電し、その状態で、水有無判定時間(この場合、1分)が経過したか否かを判断する(ステップS1)。そして、水有無判定時間が経過すると(YES)、制御装置9は、受け皿5内の水の有無を判断する(ステップS2)。
【0029】
水の有無の判断は、受け皿用温度センサ8によって検知される受け皿5の温度(推定温度)に基づいて行われる。即ち、受け皿5内に水が入っている場合には、受け皿用温度センサ8による検知温度の上昇度合いは鈍く、逆に、受け皿5内に水が入っていない場合には、受け皿用温度センサ8による検知温度の上昇度合いが急になる。そのため、この検知温度の上昇度合いに基づいて、受け皿5内の水の有無を判定することができる。
【0030】
この場合、制御装置9は、この制御を開始後1分から3分(水有無判定時間経過後の2分間)における受け皿5の温度上昇量(上昇度合い)が所定量(80℃)以上である場合に、受け皿5内に水が無いと判別し、温度上昇量が所定量よりも少ない場合に、受け皿5内に水が有ると判別するようになっている(水有無判別手段)。
【0031】
受け皿5内に水が有ると判断した場合(ステップS2にてYES)、制御装置9は、ステップS3に移行して、上ヒータ3および下ヒータ4の通電シーケンス(通電態様)を水有りオン/オフシーケンスに設定するとともに、調理時間を、水有りで丸身の魚を調理する場合の調理時間(この場合、12分)に設定する。
【0032】
一方、受け皿5内に水が無いと判断した場合(ステップS2にてNO)、制御装置9は、ステップS4に移行して、上ヒータ3および下ヒータ4の通電シーケンス(通電態様)を水無しオン/オフシーケンスに設定するとともに、調理時間を、水無しで丸身の魚を調理する場合の調理時間(この場合、23分)に設定する。
【0033】
そして、制御装置9は、上記ステップS3またはステップS4にて設定した通電シーケンスおよび調理時間に基づいて、調理物Fの加熱調理を実行する。加熱調理が開始されると、当初受け皿5内に貯留されていた水が蒸発し、当該受け皿5内の水が無くなる場合がある(ドライアップ)。そこで、制御装置9は、この加熱調理の実行途中において、受け皿5内の水の有無を監視するようになっている(ステップS5)。
【0034】
ここで、受け皿5内に水が無い状態では、受け皿5の温度が上昇し100℃を超えるようになる。制御装置9は、受け皿用温度センサ8の温度検知信号に基づいて、加熱調理の途中に受け皿5の温度が100℃を超えたことを検知すると、受け皿5内に水が無いと判別する(ステップS5にてNO)。
【0035】
一方、受け皿5内に水がある状態では、受け皿5の温度が低下し100℃を下回るようになる。制御装置9は、受け皿用温度センサ8の温度検知信号に基づいて、加熱調理の途中に受け皿5の温度が100℃以下になったことを検知すると、受け皿5内に水が有ると判別する(ステップS5にてYES)。
【0036】
上記ステップS5において、受け皿5内に水が無いと判別した場合(NO)、制御装置9は、ステップS6にて、ブザー12を動作させて警告音を発する。これにより、制御装置9は、調理の残り時間を補正(後述のステップS7参照)する前に、使用者に受け皿5内の水が無くなったこと(水無し状態)を報知するとともに、受け皿5内に水を追加すること促すようになっている(報知手段)。
【0037】
次に、制御装置9は、ステップS7にて、上ヒータ3および下ヒータ4の通電シーケンス(通電態様)を水無しオン/オフシーケンスに切り換える。また、制御装置9は、調理の残り時間を再計算(再設定)する。このとき、制御装置9は、予め記憶してある残時間補正テーブルT1(図4参照)に基づいて、調理の残り時間を延長する補正を行うようになっている。この場合、制御装置9は、受け皿5内に水が無いと判別したとき(受け皿5内の水がドライアップしたとき)にタイマ回路13が計測している調理開始からの経過時間(ドライアップしたときの経過時間)に応じて、残り時間の延長量を変化させるようになっている(補正手段)。
【0038】
即ち、図4に示すように、例えば、ドライアップしたときの経過時間が3分であれば、当初設定された調理時間(12分)の残り時間(補正前の残り時間)は9分であるが、制御装置9は、残り時間(9分)を8分延長して17分に補正する。従って、補正後の総調理時間(調理開始から終了までの時間)は、20分となる。
【0039】
また、例えば、ドライアップしたときの経過時間が8分であれば、制御装置9は、残り時間(4分)を3分延長して7分に補正する。従って、補正後の総調理時間は15分となる。なお、ドライアップしたときの経過時間が11分であれば、制御装置9は、残り時間(1分)を延長せず、そのまま維持するようになっている。この場合、総調理時間は、当初設定された調理時間である12分となる。
【0040】
つまり、調理時間が12分である丸身自動調理において調理開始から10分が経過すれば、調理物F(丸身の魚)の加熱はほぼ完了していると推定される。従って、制御装置9は、調理開始から10分が経過するまでにドライアップが検知されなかった場合には、その後の1分間にドライアップが検知されたとしても、調理の残り時間を補正しないようになっている。なお、この残時間補正テーブルT1では、補正後の残り時間は、ドライアップしたときの経過時間が1分長くなるごとに2分ずつ短くなるようになっている。
【0041】
このように、制御装置9は、受け皿5内の水がドライアップしたとき(受け皿5内に水が無いと判別したとき)にタイマ回路13が計測している経過時間が長いほど、即ち、調理物Fの加熱が進行しているほど、調理の残り時間の延長量(補正量)を少なくするようになっている。従って、補正後の総調理時間は、ドライアップしたときの経過時間が短いほど長くなり、また、ドライアップしたときの経過時間が長いほど、当初設定された調理時間(この場合、12分)に近づくようになっている。
【0042】
上記ステップS7において調理の残り時間を補正すると、制御装置9は、ステップS8に移行して、補正後(再計算後)の調理の残り時間を表示部11に表示する(表示手段)。
【0043】
そして、制御装置9は、ステップS9に移行して、調理時間(当初設定された調理時間、あるいは、補正後の総調理時間)が経過したか否か、即ち、調理の残り時間が経過したか否かを監視する。調理時間が経過していなければ(ステップS9にてNO)、即ち、調理物Fの加熱調理の途中であれば、制御装置9は、ステップS5に戻り、再び受け皿5内の水の有無を判別する。つまり、制御装置9は、加熱調理の途中において、常に受け皿5内の水の有無(水有り状態/水無し状態)を判別し、その判別結果に応じて、調理の残り時間の補正を繰り返し行うようになっている。これにより、仮に適切な補正が行えなかった場合であっても、その後に、調理の残り時間を適切に補正することができる。調理時間が経過すると(ステップS9にてYES)、即ち、調理物Fの加熱調理が完了すると、制御装置9は、この制御を終了する。
【0044】
なお、上述の加熱調理の途中においては、受け皿5内の水が一旦ドライアップした後に、使用者が、例えばブザー報知(ステップS6参照)や残時間の表示(ステップS8)に応じて、受け皿5内に水を追加する場合がある。この場合、制御装置9は、ステップS5にて、受け皿5内に水が有ると判別する(YES)。
【0045】
加熱調理の途中において、受け皿5内に水が有ると判別した場合(ステップS5にてYES)、制御装置9は、ステップS10にて、上ヒータ3および下ヒータ4の通電シーケンス(通電態様)を水有りオン/オフシーケンスに切り換える。また、制御装置9は、調理の残り時間を再計算(再設定)する。このとき、制御装置9は、残時間補正テーブルT1(図4参照)に基づいて、調理の残り時間を補正前の時間に戻す補正(短縮する補正)を行うようになっている。
【0046】
即ち、ドライアップしたときの経過時間が3分であって調理の残り時間を17分に延長した後に、受け皿5内に水が追加されて、水有り状態(受け皿5内に水が有る状態)を検知した場合には、制御装置9は、調理の残り時間を補正前の残り時間である9分に戻す補正を行う。また、ドライアップしたときの経過時間が6分であって調理の残り時間を11分に延長した後に、水有り状態を検知した場合には、制御装置9は、調理の残り時間を補正前の残り時間である6分に戻す補正を行う。なお、ドライアップしたときの経過時間が11分であって調理の残り時間を補正(延長)しなかった後に、水有り状態を検知した場合には、制御装置9は、調理の残り時間(1分)をそのまま維持するようになっている。
【0047】
上記ステップS10において、調理の残り時間を補正すると、制御装置9は、補正後(再計算後)の調理の残り時間を表示部11に表示し(ステップS8)、続いて、調理時間が経過したか否かを監視する(ステップS9)
【0048】
以上に説明したように本実施形態によれば、調理物Fの加熱調理の途中に受け皿5内の水が無くなった場合に、制御装置9は、上ヒータ3および下ヒータ4の出力を低下させる補正を行う。これにより、調理物Fの発煙,発火などを防止することができ、水無し状態のままで上ヒータ3および下ヒータ4による加熱調理を継続することができる。また、制御装置9は、上ヒータ3および下ヒータ4の出力を低下させるとともに、調理の残り時間を延長する補正を行う。これにより、上ヒータ3および下ヒータ4の出力を低下させたことに伴う熱量の不足を補うことができ、調理の仕上がりが悪くなることを回避することができる。さらに、制御装置9は、ドライアップしたとき(受け皿5内の水が無くなったとき)における調理の経過時間に応じて、残り時間の延長量を変化させる。即ち、制御装置9は、ドライアップしたときにおける調理の経過時間が長いほど、残り時間の延長量を少なくする。これにより、調理時間が過度に延長されることがなく、調理の仕上がりを安定させることができる。
【0049】
また、制御装置9は、残り時間を延長する補正を行った後において、受け皿5内に水が有ると判別した場合には、上ヒータ3および下ヒータ4の通電シーケンスを水有りオン/オフシーケンスに切り換えるとともに、残り時間を補正前の時間に戻す。これにより、水有り状態に適した加熱条件で加熱調理を継続することができ、水有り調理における調理の仕上がりを安定させることができる。
【0050】
また、グリル調理ユニット1は、制御装置9によって補正された調理の残り時間を表示する表示部11を備えているので、受け皿5内の水が無くなったことや、調理の残り時間に補正が掛けられたことを、使用者に認識させることが可能となる。
【0051】
また、グリル調理ユニット1は、制御装置9が受け皿5内に水が無いと判別したときに、当該受け皿5に水を追加すること促すための情報を報知するブザー12を備えているので、使用者は、このブザー12による警告音に応じて、受け皿5に水を追加することができる。また、受け皿5に水が追加された場合には、制御装置9は、水有り状態に適した加熱条件で加熱調理を継続するので、総調理時間が必要以上に延長されてしまうことを抑えることができ、調理物Fを極力短時間で加熱調理することができる。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図5を参照しながら説明する。図5に示す残時間補正テーブルT2は、グリル庫2内に収容された調理物Fの量(負荷量)が多い場合に制御装置9が参照するテーブルである。この残時間デーブルT2では、補正後の残り時間が、上述の残時間補正テーブルT1よりも2分ずつ長く設定されている。つまり、調理の残り時間の補正量(延長量)が大きく設定されている。従って、補正後の総調理時間も、上述の残時間デーブルT1よりも2分ずつ長くなっている。
【0053】
本実施形態では、グリル庫内用温度センサ7が負荷量判別用の温度検知手段として機能するようになっている。また、制御装置9は、負荷量判別手段として機能するようになっており、グリル庫内用温度センサ7による検知温度(グリル庫2内の温度)の上昇度合いに基づいて、グリル庫2内の調理物Fの量を負荷量として判別する。
【0054】
即ち、グリル庫2内に収容された調理物Fの量が多い場合には、グリル庫内用温度センサ7による検知温度の上昇度合いは鈍く、逆に、グリル庫2内に収容された調理物Fの量が少ない場合には、グリル庫内用温度センサ7による検知温度の上昇度合いが急になる。そのため、この検知温度の上昇度合いに基づいて、グリル庫2内の調理物Fの量(負荷量)を判定することができる。
【0055】
この場合、制御装置9は、調理開始から所定時間(例えば3分)が経過するまでに、グリル庫2内の温度上昇量(上昇度合い)が所定量(60℃)以上である場合に、負荷量が少ない(例えば丸身の魚では1〜3匹分の量)と判別し、温度上昇量が所定量よりも少ない場合に、負荷量が多い(丸身の魚では4,5匹分の量)と判別するようになっている。
【0056】
そして、制御装置9は、判別した負荷量に応じて、調理の残り時間の補正時における延長量(図1のステップS7参照)あるいは短縮量(ステップS10参照)を変化させるようになっている。即ち、制御装置9は、負荷量が少ないと判別した場合には、上述の残時間補正テーブルT1(図4参照)に基づいて、調理の残り時間の補正を行う。一方、負荷量が多いと判別した場合には、残時間補正テーブルT2(図5参照)に基づいて、調理の残り時間の補正を行う。
【0057】
この残時間補正テーブルT2では、調理の残り時間の補正量(延長量)が、上述の残時間補正テーブルT1における補正量(延長量)よりも大きく設定されている。従って、例えば、ドライアップした時の経過時間が3分であれば、制御装置9は、残り時間(9分)を10分延長して19分に補正する。従って、補正後の総調理時間(調理開始から終了までの時間)は、22分となる。
【0058】
なお、負荷量が多い場合では、調理の最終段階に至ったとしても、調理物Fが十分に加熱されていないおそれがある。そのため、制御装置9は、ドライアップしたときの経過時間が11分である場合においても、残り時間(1分)を2分延長して3分に補正するようになっている。従って、補正後の総調理時間は14分となる。
【0059】
本実施形態によれば、制御装置9は、グリル庫内用温度センサ7による検知温度の上昇度合いに基づいて、グリル庫2内の調理物Fの量を負荷量として判別し、判別された負荷量に応じて、調理の残り時間の延長量を変化させる。これにより、グリル庫2内に収容された調理物Fの量に適した加熱条件で加熱調理を行うことができ、調理の仕上がりを安定させることができる。
【0060】
なお、グリル庫内用温度センサ7によって検知されるグリル庫2内の温度の上昇度合いではなく、受け皿用温度センサ8によって検知されるグリル庫2内の温度の上昇度合いに基づいて、負荷量を判別するようにしてもよい。また、受け皿用温度センサ8による検知温度から推定される受け皿5の温度の上昇度合いに基づいて、負荷量を判別するようにしてもよい。
【0061】
また、負荷量の判別は、多い場合と少ない場合の2つに限られるものではなく、例えば、やや多い場合、やや少ない場合などを加えて更にきめ細かく負荷量を判別するようにしてもよい。
【0062】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について図6を参照しながら説明する。図6は、本実施形態に係る電気的構成を示すブロック図である。
図6に示すように、制御装置9には、電圧測定回路31(電圧測定手段に相当)が接続されている。この電圧測定回路31は、上ヒータ3および下ヒータ4の通電量に基づいて、これら上ヒータ3および下ヒータ4の動作時における電圧(アクチュアル電圧)を測定するようになっている。
【0063】
ここで、誘導加熱調理器(グリル調理ユニット1)に供給される電圧は、定格(この場合、200V)よりも変動する場合があり、例えば、200V±10%(180V〜220V)の範囲で振れることがある。そこで、制御装置9は、調理物Fの加熱調理の途中、即ち、上ヒータ3および下ヒータ4の動作時(通電時)において、電圧測定回路31によって測定された電圧値に基づいて、次式によって、調理の残り時間の補正率Aを演算する。
A=Vt/Va
A:調理の残り時間の補正率
Vt:定格電圧
Va:測定された電圧(アクチュアル電圧)
【0064】
具体的には、例えば、測定された電圧Vaが195Vである場合、即ち、定格電圧Vt(200V)よりも小さい場合では、補正率Aは、
A=200/195
≒1.05(%)
である。この場合、制御装置9は、その時点(電圧の変動を検知した時点)における調理の残り時間の105%の時間を、新たな調理の残り時間として設定する。即ち、制御装置9は、調理の残り時間を5%延長する。
【0065】
一方、例えば、測定された電圧Vaが205Vである場合、即ち、定格電圧Vt(200V)よりも大きい場合では、補正率Aは、
A=200/205
≒0.95(%)
である。この場合、制御装置9は、その時点(電圧の変動を検知した時点)における調理の残り時間の95%の時間を、新たな調理の残り時間として設定する。即ち、制御装置9は、調理の残り時間を5%短縮する。
【0066】
本実施形態によれば、制御装置9は、電圧測定回路31によって測定された電圧に応じて、調理の残り時間の延長量を変化させる。このように、調理の残り時間を補正するためのパラメータとして電圧の振れも加えることにより、一層適切な加熱条件で加熱調理を行うことができ、調理の仕上がりを一層安定させることができる。
【0067】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について図7を参照しながら説明する。図7に示す残時間補正テーブルT3は、つけ焼き自動調理モードを行う場合に制御装置9が参照するテーブルである。
上述したように、誘導加熱調理器(グリル調理ユニット1)は、複数の自動調理モードを実行可能に構成されている。しかし、各自動調理モードは、それぞれ異なる調理物Fを加熱対象としていることから、各自動調理モードに適した加熱条件は、それぞれ異なっている。
【0068】
例えば、上述の丸身自動調理モードでは、丸身の魚をまるごと焼き上げるために、調理の開始から完了に至るまで、適切な火力(出力)を維持する必要がある。そのため、制御装置9は、調理の開始から完了に至るまで、調理条件の補正制御(ドライアップ時に、ヒータ3,4の出力を低下させる補正制御および残時間補正テーブルT1に基づき調理の残り時間を延長する補正制御、並びに、水追加時に、ヒータ3,4の出力を上昇させる補正制御および調理の残り時間を短縮する補正制御)を行うようになっている。
【0069】
これに対して、つけ焼き自動調理モードにおいては、調理の最初の段階では、調理物Fにつけた調味料(味噌)に焦げ目を付けるために、強火力(強出力)が必要である。しかし、調理の最終段階では、焦げ目を付けるほどの強火力を維持する必要がなく、また、調理物F(つけ焼き自動調理モードでは、小魚である場合が多い)も十分に加熱されていると推定される。従って、つけ焼き自動調理モードでは、調理の開始から完了に至るまで調理条件の補正制御を行う必要が無く、また、調理の残り時間を補正する場合も、その補正量は少なくてよい。従って、つけ焼き自動調理モードにおける調理の残り時間の補正を、例えば上述の残時間補正テーブルT1(図4参照)に基づいて行うと、調理物Fの仕上がりが悪くなり、不安定となるおそれがある。
【0070】
そこで、制御装置9は、つけ焼き自動調理モードにおいては、上述の残時間補正テーブルT1に代わる残時間補正テーブルT3(図7参照)に基づいて、調理の残り時間を補正するようになっている。
【0071】
即ち、例えば、ドライアップしたときの経過時間が3分であれば、当初設定された調理時間(水有りでつけ焼き自動調理モードを実行する場合の調理時間であり、この場合、9分)の残り時間は6分であるが、制御装置9は、残り時間(6分)を8分延長して14分に補正する。従って、補正後の総調理時間は17分となる。また、例えば、ドライアップしたときの経過時間が5分であれば、制御装置9は、残り時間(4分)を4分延長して8分に補正する。従って、補正後の総調理時間は13分となる。
【0072】
そして、ドライアップしたときの経過時間が7分であれば、制御装置9は、残り時間(2分)を延長せず、2分のまま維持するようになっている。この場合、総調理時間は、当初設定された調理時間である9分となる。また、ドライアップしたときの経過時間が8分の場合にも、制御装置9は、残り時間(1分)を延長せず、1分のまま維持するようになっている。この場合も、総調理時間は、当初設定された調理時間である9分となる。
【0073】
つまり、調理時間が9分であるつけ焼き自動調理において調理開始から7分が経過すれば、調理物F(小魚)の加熱はほぼ完了していると推定される。従って、制御装置9は、調理開始から7分が経過するまでにドライアップが検知されなかった場合には、その後の2分間にドライアップが検知されたとしても、調理の残り時間を補正しないようになっている。なお、この残時間補正テーブルT3では、補正後の残り時間は、ドライアップしたときの経過時間が1分長くなるごとに3分ずつ短くなるようになっている。
【0074】
このように、制御装置9は、ドライアップしたときの経過時間が長いほど、調理の残り時間の延長量(補正量)を少なくするようになっている。従って、補正後の総調理時間は、ドライアップしたときの経過時間が短いほど長くなり、また、ドライアップしたときの経過時間が長いほど、当初設定された調理時間(この場合、9分)に近づくようになっている。
【0075】
また、制御装置9は、調理の最初の段階では、ドライアップしたときの経過時間に応じて、調理の残り時間を延長する補正を行うが、調理の最終段階(この場合、調理開始後7分以降の段階)では、ドライアップしたとしても、調理の残り時間を補正せず、そのまま維持するようになっている。これにより、調理の最初の段階では、調理物Fにつけた調味料(味噌)に焦げ目を付けるために、調理の残り時間を延長して強火力(強出力)を維持し、調理の最終段階では、調理の残り時間を延長せず、低火力(低出力)で調理を続行するようになっている。
【0076】
本実施形態によれば、制御装置9は、実行される自動調理モードに応じて、残り時間の延長量を変化させる。これにより、実行する自動調理モードに適した加熱条件で加熱調理を行うことができ、調理の仕上がりを安定させることができる。
【0077】
なお、本実施形態では、つけ焼き自動調理モードにおいて参照する残時間補正テーブルT3を例示したが、その他の自動調理モード(魚を自動調理するための「切り身自動調理モード」や「ひらき自動調理モード」、あるいは、その他の調理物(チキン、グラタン、焼きなすなど)を自動調理するための自動調理モード)に対応する残時間補正テーブルをそれぞれ設けて、それぞれの自動調理モードに適した加熱条件で加熱調理を行うことが可能である。
【0078】
(その他の実施形態)
なお、本発明は、上述の各実施形態にのみ限定されるものではなく、例えば次のように変形または拡張することができる。
【0079】
誘導加熱調理器に備えられた2つの誘導加熱コイル(1つの誘導加熱コイルの消費電力は、例えば天ぷら調理において2000W)を同時に使用した場合、これら2つの誘導加熱コイルの総消費電力は4000Wである。一方、グリル調理ユニット1の上ヒータ3および下ヒータ4の消費電力をそれぞれ1200Wとすると、これら2つのヒータ3,4を同時に使用した場合、その総消費電力は2400Wである。そして、2つの誘導加熱コイルと、2つのヒータ3,4とを同時に使用した場合、グリル調理ユニット1を含む誘導加熱調理器全体の総消費電力は6400Wであり、誘導加熱調理器の定格消費電力である5800Wを超過してしまう。
【0080】
そこで、定格消費電力を超過してしまうような場合には、制御装置9は、2つのヒータ3,4を交互に通電したり、それぞれの通電時間を変更するようにするとよい。そして、2つのヒータ3,4を同時に通電(オン)しても定格消費電力を超過しないような場合には、強火力を確保できるので、調理の残り時間を短縮する補正を行うようにするとよい。また、2つのヒータ3,4を同時に通電(オン)すると定格消費電力を超過してしまうような場合には、これらヒータ3,4を交互に通電することに伴う火力の低下を補うために、調理の残り時間を延長する補正を行うようにするとよい。
【0081】
残時間補正テーブルT1,T2,T3の数値は、それぞれ適宜変更して実施することができる。
受け皿用温度センサ8は、受け皿5の温度を検知することができる位置に配設すればよく、例えば、グリル庫2の側面や後面において受け皿5と同程度の高さに位置させて配設してもよい。また、受け皿用温度センサ8は、例えば受け皿5に接触するように設け、当該受け皿5の温度を直接検知するように構成してもよい。
【0082】
グリル庫内用温度センサ7によって検知されるグリル庫2内の温度に基づいて、受け皿5の温度を推定し、この受け皿5の推定温度に基づいて、受け皿5内の水の有無を判別するようにしてもよい。
【0083】
水有無の判断をする際の水有無判定時間、温度上昇量などの数値は、適宜変更して実施することができる。また、水有無の判断は、水が有る場合と水が無い場合の2つに限られるものではなく、例えば、水が少し残っている場合などを加えて更にきめ細かく判別するようにしてもよい。
表示部11は、液晶ディスプレイ(LCD)で構成するのではなく、例えば、発光ダイオード(LED)を備えた表示器で構成してもよい。
【0084】
報知手段として、ブザー12ではなくスピーカを備え、受け皿5に水を追加すること促すための情報を警告音ではなく音声によって報知するようにしてもよい。また、報知手段による報知(ステップS6参照)を、調理の残り時間の補正後(ステップS7参照)に行うようにしてもよい。
本発明は、いわゆるグリル機能を備えた誘導加熱調理器のみならず、例えば、グリル機能を備えた電子レンジや、魚焼き専用の加熱調理器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
図面中、1はグリル調理ユニット、2はグリル庫(加熱庫)、3は上ヒータ(加熱手段)、4は下ヒータ(加熱手段)、5は受け皿、7はグリル庫内用温度センサ(温度検知手段)、8は受け皿用温度センサ(温度検知手段)、9は制御装置(水有無判別手段、補正手段、負荷量判別手段)、11は表示部(表示手段)、12はブザー(報知手段)、13はタイマ回路(時間計測手段)、31は電圧測定回路(電圧測定手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理物を収容する加熱庫と、
前記加熱庫内の前記調理物を加熱する加熱手段と、
前記加熱庫内に配設され、水を貯留することが可能な受け皿と、
前記加熱庫内の温度を検知する温度検知手段と、
前記温度検知手段による検知温度に基づいて、前記受け皿内の水の有無を判別する水有無判別手段と、
前記調理物の調理開始からの経過時間を計測する時間計測手段と、
前記調理物の調理途中に前記水有無判別手段が前記受け皿内に水が無いと判別したときに、前記加熱手段の出力を低下させる補正を行うとともに、前記調理物の調理の残り時間を延長する補正を行う補正手段とを備え、
前記補正手段は、前記水有無判別手段が前記受け皿内に水が無いと判別したときに前記時間計測手段が計測している前記経過時間に応じて、前記残り時間の延長量を変化させることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記補正手段は、前記水有無判別手段が前記受け皿内に水が無いと判別したときに前記時間計測手段が計測している前記経過時間が長いほど、前記残り時間の延長量を少なくすることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記温度検知手段による検知温度の上昇度合いに基づいて、前記加熱庫内の前記調理物の量を負荷量として判別する負荷量判別手段を備え、
前記補正手段は、前記負荷量判別手段によって判別された前記負荷量に応じて、前記残り時間の延長量を変化させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記加熱手段の動作時における電圧を測定する電圧測定手段を備え、
前記補正手段は、前記電圧測定手段によって測定された電圧に応じて、前記残り時間の延長量を変化させることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記補正手段は、前記残り時間を延長する補正を行った後において、前記水有無判別手段が前記受け皿内に水が有ると判別した場合に、前記残り時間を補正前の時間に戻すことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記補正手段によって補正された前記残り時間を表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記水有無判別手段が前記受け皿内に水が無いと判別したときに、前記受け皿に水を追加すること促すための情報を報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記調理物を自動で調理する複数の自動調理モードを実行可能に構成され、
前記補正手段は、実行される前記自動調理モードに応じて、前記残り時間の延長量を変化させることを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1項に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−284367(P2010−284367A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141073(P2009−141073)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】