説明

加熱調理器

【課題】調理プレートを広範囲にわたって均一且つ迅速に調理可能な温度に昇温して該温度に保持する加熱調理器を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は上記目的を達成するために、加熱体上に調理プレート2が配置された加熱調理器1において、前記加熱体と調理プレート2との間に、面方向の熱伝導率が鉛直方向の熱伝導率の2桁倍の熱伝導異方性を持つグラファイトシートを充填した加熱調理器を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリドル等の加熱調理器に関するものであり、特に調理プレートを広範囲にわたって均一且つ迅速に調理可能な温度に昇温して該温度に保持することが可能な加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、次のような加熱調理器における鋳込みヒータが知られている。この従来技術おける鋳込みヒータは、蛇行させた線状ヒータの外周にアルミニウムもしくはアルミニウム合金といった熱伝導性に優れた金属を鋳込んで断面積の大きな鋳込み部を形成し、さらに往復蛇行する鋳込み部の間に該鋳込み部を平面方向に延長して格子状の熱伝達面を形成している。そして、平面プレートの裏面に鋳込みヒータの鋳込み部及び熱伝達面を当接させ、線状ヒータを外部電源により発熱させる。線状ヒータの熱は鋳込みヒータの鋳込み部だけでなく熱伝達面にも伝わり、この鋳込み部と熱伝達面から平面プレートに伝わる。このようにして平面プレートを加熱ムラなく効率的に加熱するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の従来技術として、例えば、次のような加熱調理板(ホットプレート)が知られている。この従来技術は、単一のシーズヒータを鋳込んだアルミダイキャスト製で平板状の加熱板の上に、カーボン粉末を固めて焼成した調理プレートを載置した構成となっている。そしてシーズヒータに通電すると、加熱板の熱は調理プレートの下面に伝導し、カーボン自身の熱伝導性により調理プレートの全面に短時間で伝達する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−209756号公報
【特許文献2】特開平6−327568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の従来技術においては、線状ヒータの外周にアルミニウムを鋳込んで断面積を大とした鋳込みヒータを往復蛇行させ、さらに往復蛇行する鋳込み部の間に該鋳込み部を平面方向に延長して格子状の熱伝達面を形成し、これを加熱体としている。そして、この加熱体を平面プレートの裏面に直接接触させている。この場合、加熱体から平面プレートへの熱伝達経路としては加熱体との接触部によるものが殆どであり、往復蛇行させた形状の鋳込みヒータに依存することになる。このため、平面プレートの調理面の温度は、鋳込みヒータとの接触部付近の温度が高く、非接触部はこれよりも温度が低い状態となり、調理面全体の温度均一性に乏しい傾向が生じる。
【0006】
また、特許文献2に記載の従来技術においては、単一のシーズヒータを鋳込んだ平板状の加熱板をカーボン粉末を固めて焼成した調理プレートの裏面に直接接触させている。この場合、平板状の加熱板における単一のシーズヒータに反復通電して調理プレートに熱を加えるとき、熱応力変形等により加熱板と調理プレートとの間に空隙が発生し、この接触圧又は界面状況の変化により加熱板から調理プレートへの給熱状態の均一化が困難になることが多い。又、空隙を熱伝導率の高いシリコングリース等で充填しても熱変形に追従する圧縮・復元が困難なことと、長期間にわたり耐性のある充填材が見当たらないことより空隙等の変形が生じた場合に調理プレートの全面を短時間で調理可能な温度へ昇温するこ
とは難しい。
【0007】
さらに、調理プレートに冷凍肉、野菜等の冷温食材を載せた場合、該調理プレートの温度が低下してしまい、蓄熱不足になり、フルパワーで加熱してもなかなか十分な調理ができないこともある。こうした問題を解決するためには、調理プレートである金属等の熱応力による変形を防止すれば熱分布の不均一性は是正される可能性があるが、それには物理上非常に困難性が伴うと考えられる。
【0008】
そこで、調理プレートを広範囲にわたって均一且つ迅速に調理可能な温度に昇温して該温度に保持するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、加熱体上に調理プレートが配置された加熱調理器において、前記加熱体と前記調理プレートとの間に、面方向の熱伝導率が鉛直方向の熱伝導率の2桁倍の熱伝導異方性を持つグラファイトシートを充填した加熱調理器を提供する。
【0010】
この構成によれば、加熱体が発熱すると、グラファイトシートが加熱され、該グラファイトシートの温度上昇に伴い、その熱が上部の調理プレートに移動する。このときグラファイトシート自身の熱伝導異方性により当該グラファイトシート内で、その周辺に迅速に伝熱が行われる。そしてグラファイトシートがさらに加熱されると該グラファイトシートが全面にわたってほぼ均一に温度上昇し、温度上昇しつつ上方の調理プレート全体に熱を移動させる。この結果、該調理プレートが広範囲にわたって均一且つ迅速に調理可能な温度に昇温する。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記加熱体は、蛇行させたシーズヒータを鋳込んだアルミ鋳込みヒータである加熱調理器を提供する。
【0012】
この構成によれば、加熱体を加熱容量の大きいアルミ鋳込みヒータとしたことで、グラファイトシートが全面にわたって効率的に所要の温度に上昇し、調理プレートが広範囲にわたって迅速に調理可能な温度に昇温する。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記加熱体は、所要厚さのアルミニウム板の表面部に蛇行したシーズヒータの形状に対応した溝を凹設し、該溝に前記蛇行したシーズヒータを嵌合させるとともに前記溝と前記シーズヒータとの間隙部に熱伝セメントを充填して構成したアルミプレートヒータである加熱調理器を提供する。
【0014】
この構成によれば、アルミプレートヒータは上記アルミ鋳込みヒータと同様に加熱容量が大きく、調理プレートに対し前記アルミ鋳込みヒータとほぼ同様の加熱機能を生じさせることが可能となる。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、アルミ鋳込みヒータセルもしくはアルミプレートヒータセルのいずれか3個の組合わせで1つの加熱ゾーンを加熱するゾーン加熱体を構成し、上記加熱体は前記ゾーン加熱体の所要の複数個で構成するとともに複数の前記加熱ゾーンは各々個別に温度の設定・制御を行えるように構成した加熱調理器を提供する。
【0016】
この構成によれば、ゾーン加熱体を構成するヒータセルの3個を例えば三角結線することで、三相200VACの給電で発熱させることができて加熱容量の大きいゾーン加熱体
となる。また、それぞれゾーン加熱体で加熱される複数の加熱ゾーンを各別に温度の設定・制御を行えるようにしたことで、調理プレートを広範囲にわたって一層均一且つ迅速に調理可能な温度に昇温させることが可能となる。尚、アルミプレートヒータセル1個で、単相に対応した装置であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明は、加熱体と調理プレートとの間に熱伝導異方性を持つグラファイトシートを充填したことで、調理プレートを広範囲にわたって均一且つ迅速に調理可能な温度に昇温させて該温度に保持させることができるという利点がある。
【0018】
請求項2記載の発明は、アルミ鋳込みヒータは加熱容量が大きいことから、調理プレートを広範囲にわたって調理可能な温度に確実に昇温させることができるという利点がある。
【0019】
請求項3記載の発明は、上記アルミ鋳込みヒータと同様に、調理プレートを広範囲にわたって調理可能な温度に確実に昇温させることができるとともに該アルミ鋳込みヒータに比べてコスト低減を図ることができるという利点がある。
【0020】
請求項4記載の発明は、複数の加熱ゾーンを各別に温度の設定・制御を行えるようにしたことで、調理プレートを広範囲にわたって一層均一且つ迅速に調理可能な温度に昇温させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図は本発明の実施例に係る加熱調理器を示すものである。
【図1】実施例1の外観を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図。
【図2】実施例1において複数のゾーン加熱体からなるアルミ鋳込みヒータを示す平面図。
【図3】図2中のX−X線に沿う拡大断面図。
【図4】図2中の任意のゾーン加熱体におけるアルミ鋳込みヒータセルの結線例を示す図であり、(a)は1つのゾーン加熱体を3個のアルミ鋳込みヒータセルで構成した例を示す平面図、(b)3個のアルミ鋳込みヒータセルを三角結線した例を示す図。
【図5】実施例2におけるアルミプレートヒータの分解斜視図。
【図6】実施例2において熱特性評価用テストピースとして作製した加熱調理器における調理プレート面の測定定点例を示す図。
【図7】図6の熱特性評価用テストピースにおける調理プレート面の熱特性評価例を示す特性図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、調理プレートを広範囲にわたって均一且つ迅速に調理可能な温度に昇温して該温度に保持するという目的を達成するために、加熱体上に調理プレートが配置された加熱調理器において、前記加熱体と調理プレートとの間に、面方向の熱伝導率が鉛直方向の熱伝導率の2桁倍の熱伝導異方性を持つグラファイトシートを充填することにより実現した。
【実施例1】
【0023】
以下、本発明の好適な実施例1を図1乃至図4を参照して説明する。まず、本実施例に係る加熱調理器の構成を説明する。図1に示す本実施例の加熱調理器1は、加熱体として蛇行するシーズヒータを鋳込んだ後述するアルミ(アルミニウム)鋳込みヒータが用いられ、図示しない該アルミ鋳込みヒータ上に調理プレート2が配置されて構成されている。
該調理プレート2は、SS400の鋳製で縦、横、厚みがそれぞれ840×1310×15(mm)程度であり、かなり大形に形成されている。該調理プレート2の平面視内側の部位には、縦、横が600×1100(mm)程度の調理エリア2aが形成されている。尚、前記プレートはステンレス製であってもよい。又、該調理プレート2の左右両側部及び奥部(図1(a)の上側)にはステンレス製で適宜の高さを有する図示しない「はね止め板」が立設され、図1(a)の右下角部には図示しない「油落し切欠き部」が形成されている。また、調理器本体3における図1(b)の右側部には図示しない油缶が取付けられている。
【0024】
調理プレート2を加熱する前記アルミ鋳込みヒータは、次に述べるように、6個の加熱ゾーンにそれぞれ対応した6個のゾーン加熱体で構成され、図1(b)に示す調理器本体3の前面における操作パネル4には、該6個の加熱ゾーンのそれぞれに対応した加熱ゾーン別スイッチ5a〜5f、温度設定部6a〜6f、温度調節器7a〜7fと電源スイッチ8が設けられている。該操作パネル4部分の操作・設定により6個の加熱ゾーンは各々個別に温度の設定・制御を行うことも可能になっている。調理器本体3の背面部には、図1(c)に示すように、温度調節器7a〜7f等に給電するための単相100VAC電源線9a及び各加熱ゾーンのアルミ鋳込みヒータに給電するための三相200VAC電源線9bが接続されている。
【0025】
図2は、第1〜第6の前記6個の加熱ゾーン10〜15にそれぞれ対応した6個のゾーン加熱体10H〜15Hからなるアルミ鋳込みヒータを示している。第1〜第6の各ゾーン加熱体10H〜15Hは、三相200VACで加熱するため、それぞれ3個のアルミ鋳込みヒータセル(10a,10b,10c)〜(15a,15b,15c)の組合わせにより構成されている。各アルミ鋳込みヒータセル(例えば10a)は、厚みが20mm程度からなり、図3に示すように、複数のスタッドボルト16,…で調理プレート2の裏面側に取付けられている。
【0026】
又、図2及び図3に示す如く、各アルミ鋳込みヒータセル(10a,10b,10c)〜(15a,15b,15c)には、前記複数のスタッドボルト16,…の延在部を利用して断熱箱17が取付けられている。該断熱箱17の内底部には、各アルミ鋳込みヒータセル(10a,10b,10c)〜(15a,15b,15c)の裏面との間に適宜の空気層18を介してグラスウール等からなる断熱材19が詰め込まれている。各ゾーン加熱体10H〜15Hを構成している各アルミ鋳込みヒータセル(10a,10b,10c)〜(15a,15b,15c)のうち、中心に位置するアルミ鋳込みヒータセル(例えば11b)上のプレートには温度調節用センサ20が取付けられ、該温度調節用センサ20は熱電対補償導線20aを介して当該加熱ゾーン(例えば11)に対応した温度調節器7e(図1(b)参照)に接続されている。
【0027】
そして、全ゾーン加熱体10H〜15Hからなるアルミ鋳込みヒータと調理プレート2との間に、厚みが1.5mm程度で、鉛直方向の熱伝導率:面方向の熱伝導率が5:200程度の顕著な熱伝導異方性を持つ1枚のグラファイトシート21が充填されている。該グラファイトシート21は、耐熱温度が500℃以上で、圧縮復元率が高く、調理プレート2の変形に良く追従する。アルミ鋳込みヒータで加熱された該グラファイトシート21は、温度が上昇するに伴い熱を上部の調理プレート2に移動させるが、上記熱伝導異方性により調理プレート2に熱移動させるとともに、グラファイトシート21内でその周辺に迅速に伝熱する。さらにグラファイトシート21が加熱されると該グラファイトシート21が全面にわたって温度上昇し、温度上昇しつつ上方の調理プレート2全体に熱を移動させる。したがって、食材を載せる調理プレート2は均一に加熱されることになる。
【0028】
図4の(a),(b)は、任意のゾーン加熱体(例えば10H)における3個のアルミ
鋳込みヒータセル10a,10b,10cにそれぞれ鋳込まれている3個のシーズヒータ22a,22b,22cの結線態様を示している。該3個のシーズヒータ22a,22b,22cは給電ターミナル23同士の接続により、同図(b)に示すように三角結線され、温度調節器で所要の電力となるように調節された三相200VACが給電されて発熱する。
【0029】
次に、上述のように構成された加熱調理器1の作用を説明する。加熱体を6個のゾーン加熱体10H〜15Hで構成し、該ゾーン加熱体10H〜15Hは、それぞれ三角結線された3個のアルミ鋳込みヒータセル(例えば10a,10b,10c)の組合わせで構成し、各ゾーン加熱体10H〜15Hに三相200VACを給電して発熱させるようにしたことで、加熱容量の大きい加熱体が実現される。
【0030】
そして、このような加熱体と調理プレート2との間に、鉛直方向の熱伝導率:面方向の熱伝導率が5:200程度の顕著な熱伝導異方性を持つグラファイトシート21を充填したことで、加熱体としての全ゾーン加熱体10H〜15Hが発熱すると、グラファイトシート21が加熱され、該グラファイトシート21の温度上昇に伴い、その熱が上部の調理プレート2に移動する。このときグラファイトシート21自身の顕著な熱伝導異方性により当該グラファイトシート21内で、その周辺に迅速に伝熱が行われる。グラファイトシート21がさらに加熱されると該グラファイトシート21が全面にわたってほぼ均一に温度上昇し、温度上昇しつつ上方の調理プレート2全体に熱を移動させる。この結果、該調理プレート2が広範囲にわたって均一且つ迅速に調理可能な温度に昇温する。
【0031】
また、各ゾーン加熱体10H〜15Hで加熱される6個の加熱ゾーン10〜15は各別に温度の設定・制御を行えるようにしたことで、調理プレート2を広範囲にわたって一層均一に調理可能な温度に昇温させることが可能となる。
【0032】
上述したように、本実施例1に係る加熱調理器1においては、加熱体と調理プレート2との間に、顕著な熱伝導異方性を持つグラファイトシート21を充填したことで、調理プレート2を広範囲にわたって均一且つ迅速に調理可能な温度に昇温させて該温度に保持することができる。
【0033】
加熱体を6個のゾーン加熱体10H〜15Hで構成し、該ゾーン加熱体10H〜15Hのそれぞれを三相200VACの給電で発熱させるようにしたことで、加熱容量の大きい加熱体を実現することができて、調理プレート2を広範囲にわたって調理可能な温度に確実に昇温させることができる。
【0034】
6個のゾーン加熱体10H〜15Hに対応した6個の加熱ゾーン10〜15を各別に温度の設定・制御を行えるようにしたことで、調理プレート2を広範囲にわたって一層均一に調理可能な温度に昇温させることができる。
【実施例2】
【0035】
本発明の実施例2を図5を参照して説明する。本実施例は、調理プレートの加熱体としてアルミ(アルミニウム)プレートヒータ27が用いられている。該アルミプレートヒータ27は、図5に分解して示すように、所要厚さのアルミニウム板24の表面部に蛇行したシーズヒータ25の形状に対応した溝26を凹設し、該溝26に前記蛇行したシーズヒータ25を嵌合させるとともに前記溝26と前記シーズヒータ25との間隙部に図示しない熱伝セメント(THERMON社製T−99)を充填して構成されている。
【0036】
本実施例における加熱体としてのアルミプレートヒータ27と、前記実施例1における加熱体としてのアルミ鋳込みヒータとを、同一環境で熱分布を測定したところ、その値の
差異は僅少であり、本実施例におけるアルミプレートヒータ27は、前記アルミ鋳込みヒータとほぼ同等の加熱機能を有していることが確認された。したがって、本実施例におけるアルミプレートヒータ27は、前記図2のゾーン加熱体を構成しているアルミ鋳込みヒータセルに代えて、アルミプレートヒータセルとして適用することが可能である。そして、本実施例の構成のアルミプレートヒータ27を適用した場合においても前記図1に示した加熱調理器を適切に構成しうるものである。
【0037】
図6は本実施例において熱特性評価用テストピースとして作製した加熱調理器における調理プレート面の測定定点例を示し、図7は該熱特性評価用テストピースにおける調理プレート面の熱特性評価例を示している。熱特性評価用テストピースとしての加熱調理器における調理プレートは、図6に示すように、縦、横がそれぞれ450×600(mm)程度であり、該調理プレートとアルミプレートヒータとの間には、前記図3に示したものと同様のグラファイトシートが充填され、アルミプレートヒータの裏面側には前記図3とほぼ同様の断熱構造が施されている。そして、調理プレート面には、図6に示す寸法例位置にCH1〜CH10の10個の測定定点が設定され、中心位置Cには図示しない温度調節センサが取付けられている。
【0038】
図7の熱特性評価結果を述べると、テストピースとしての加熱調理器は加熱開始から略45分後に10個の各測定定点CH1〜CH10は略一定の温度に昇温した。このときの10個の測定定点CH1〜CH10の平均温度は略261℃であり、該平均温度略261℃に対し各測定定点CH1〜CH10の温度のバラツキは略±13℃以内で、平均温度略261℃に対するバラツキの割合は略±5%であった。
【0039】
これに対し、上記熱特性評価用テストピースとしての加熱調理器からグラファイトシートの装着のみを省略した比較例加熱調理器について、上記と同様の熱特性評価結果を行ったところ、加熱開始から各測定定点が略一定の温度に昇温するまでの時間は、上記とほぼ同じであったが、各測定定点の平均温度は略258℃であり、該平均温度略258℃に対し各測定定点の温度のバラツキは略±18℃以内で、平均温度258℃に対するバラツキの割合は略±7%であった。
【0040】
したがって、テストピースとしての加熱調理器と比較例加熱調理器の両熱特性評価結果を比較すると、テストピースとしての加熱調理器の平均温度に対する各測定定点の温度のバラツキは、比較例加熱調理器に比べて±5℃程度少なく、平均温度に対するバラツキの割合は、略±2%少なかった。
【0041】
なお、テストピースとしての加熱調理器の熱特性評価結果を示す図7において、中心位置Cからの距離がやや大きい測定定点CH3とCH10の2点の温度のバラツキがやや大きい。しかし、前記実施例1の加熱調理器について前記図1(b)を用いて述べたように、調理プレート面における6個の加熱ゾーンは各々個別にも温度の設定・制御を行うことが可能になっている。加熱体としてアルミプレートヒータを適用した本実施例2の加熱調理器についても、これと同様に調理プレート面に複数の加熱ゾーンを設定し、これらの加熱ゾーンを各々個別にも温度の設定・制御を行うことが可能である。この手法を上記測定定点CH3とCH10の2点について適用すると、テストピースとしての加熱調理器の熱特性評価結果において、平均温度に対し各測定定点CH1〜CH10の温度のバラツキは略±8℃以内で、平均温度に対するバラツキの割合は略±3%以下程度に抑えることが可能である。
【0042】
上述したように、本実施例における加熱体としてのアルミプレートヒータ27は、前記実施例1におけるアルミ鋳込みヒータと同様に、調理プレートを広範囲にわたって調理可能な温度に確実に昇温させることができるとともに該アルミ鋳込みヒータに比べて製造コ
ストを約30%程度低減させることができる。
【0043】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
調理プレートを広範囲にわたって均一且つ迅速に調理可能な温度に昇温して該温度に保持することが不可欠な加熱源としてガス、炭等の燃焼熱を用いたグリドルや、加熱源として電磁誘導による誘導加熱を用いたグリドル等にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 加熱調理器
2 調理プレート
3 調理器本体
4 操作パネル
5a〜5f 加熱ゾーン別スイッチ
6a〜6f 温度設定部
7a〜7f 温度調節器
8 電源スイッチ
9a 単相100VAC電源線
9b 三相200VAC電源線
10〜15 加熱ゾーン
10H〜15H ゾーン加熱体
10a〜15c アルミ鋳込みヒータセル
16 スタッドボルト
17 断熱箱
18 空気層
19 断熱材
20 温度調節用センサ
21 グラファイトシート
22a〜22c シーズヒータ
23 給電ターミナル
24 アルミニウム板
25 シーズヒータ
26 溝
27 アルミプレートヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱体上に調理プレートが配置された加熱調理器において、
前記加熱体と前記調理プレートとの間に、面方向の熱伝導率が鉛直方向の熱伝導率の2桁倍の熱伝導異方性を持つグラファイトシートを充填したことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
上記加熱体は、蛇行させたシーズヒータを鋳込んだアルミ鋳込みヒータであることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
上記加熱体は、所要厚さのアルミニウム板の表面部に蛇行したシーズヒータの形状に対応した溝を凹設し、該溝に前記蛇行したシーズヒータを嵌合させるとともに前記溝と前記蛇行したシーズヒータとの間隙部に熱伝セメントを充填して構成したアルミプレートヒータであることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項4】
アルミ鋳込みヒータセルもしくはアルミプレートヒータセルのいずれか3個の組合わせで1つの加熱ゾーンを加熱するゾーン加熱体を構成し、上記加熱体は前記ゾーン加熱体の所要の複数個で構成するとともに複数の前記加熱ゾーンは各々個別に温度の設定・制御を行えるように構成したことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−149666(P2011−149666A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13283(P2010−13283)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(592193535)タニコー株式会社 (46)
【Fターム(参考)】