説明

加熱調理器

【課題】過熱水蒸気により被加熱物の脱脂,減塩を効率よく行い、被加熱物をおいしく焼き上げる。
【解決手段】調理庫26内の被加熱物を加熱する上・下ヒータ27a,27bと、焼き網33を載置した受け皿31とを備えた加熱調理器において、調理庫26のドア32の裏側に近い下ヒータ27bの前面部に焼き網33の横幅方向に沿った横長発熱部27b−1を設け、焼き網33の前面側横線材33aにタンク支持部材33dを固定し、タンク支持部材33dの上に横長発熱部27b−1に接近するように横長のスチームタンク41を取り出し自在に配置し、スチームタンク41の上面開口部41dをタンク蓋42で覆うタンク44にスチームタンク41内部の所定水位50より低く吸水口60aを備えるパイプ60を設け、吐出口60bをタンク44の側面41c外側で横長発熱部27b−1の上方に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚等の被加熱物を調理庫内に収納して上・下ヒータにより焼き上げる加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の加熱調理器においては、調理庫内に出し入れ自在に配置された受け皿に焼き網を載置し、該焼き網の上に魚等の被加熱物を載せ、それらを調理庫に収納して該調理庫の上下に設けた上・下ヒータにより加熱し、被加熱物を焼き上げるのが一般的である。
【0003】
このような加熱調理器においては、調理中に魚等の被加熱物から出る脂が受け皿に溜まり、調理庫内の温度が上昇すると溜まった脂による発煙や発火する恐れがあるため、それらを防ぐ目的で、受け皿に水を入れることが行われている。
【0004】
しかし、受け皿に水を入れるものでは、水が上・下ヒータによって熱せられて蒸発し、調理庫内に充満して焼き魚を湿っぽくし、味を低下させる問題がある。
【0005】
そこで、特許文献1に示すように、器体の下面と外側面に夫々吸気口と該吸気口に連なる冷却ファンを設け、該冷却ファンを駆動することによって、吸気口から受皿の下面に冷却空気を流通させ、受皿に溜まった脂の温度が発火点以下の温度に保持されるようにし、受皿に水を張らなくても調理できるようにしたものがある。
【0006】
一方、近年は、健康志向の高まりから脱脂,減塩を目的として、調理庫内で過熱水蒸気を発生させ、該過熱水蒸気によって被加熱物を加熱することが行われており、それらは特許文献2から4に記載されている。
【0007】
特許文献2に記載されたものは、調理室内に焼き網を載せる受け皿を収納し、該受け皿の後部側に水を入れる蒸気供給手段と、蒸気供給手段に入れた水を加熱する貯水部加熱手段を設け、調理室の後部の外側に調理室内に熱風を送風して循環させる第2の加熱手段を設け、前記蒸気供給手段によって発生した蒸気を第2の加熱手段によって更に加熱して過熱水蒸気にし、該過熱水蒸気と高温の空気を調理室に送り込んで調理物を加熱調理するものである。
【0008】
また、特許文献3に記載されたものは、受け皿に水を貯留し、該受け皿の下に設けたスチームヒータで受皿の水を加熱して蒸気を発生させ、発生した蒸気をロースター庫内のヒータの加熱によって過熱水蒸気とし、該過熱水蒸気を食品に当てて該食品に含まれる塩分や油脂分を効率よく除去しながら加熱調理を行うロースターである。
【0009】
さらに、特許文献4に記載されたものは、水を入れた受皿と焼き網との間に小孔群を有する蒸気抑制板を載置し、該蒸気抑制板によって下から熱を反射して加熱効率を高めるとともに、受皿内の水に対しては遮熱効果が働くようにし、水蒸気を蒸気抑制版に設けられた小孔群を介して徐々に排出することにより、調理物を水蒸気の影響を受けにくくして良好な状態に焼き上がるグリル調理器である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−164080号公報
【特許文献2】特開2008−307077号公報
【特許文献3】特開2007−20612号公報
【特許文献4】特開平2−13728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年の加熱調理器においては、上記したように、被加熱物の脱脂や減塩を目的として、調理庫内で発生した水蒸気をさらに加熱して過熱水蒸気とし、該過熱水蒸気によって調理物を加熱する調理方法が好まれている。
【0012】
しかし、上記した特許文献1に記載された魚焼き器は、受皿に水を入れないで魚を焼くため、焼き上がった魚が湿っぽくなることはないが、脱脂、減塩の効果はほとんど期待できない。
【0013】
また、特許文献2に記載された加熱調理器は、受け皿後部の蒸気供給手段で発生した水蒸気を、調理室の後部外側に設けた循環式の第2の加熱手段で加熱し、過熱水蒸気として加熱室内に循環させるため、受け皿後部の蒸気供給手段で発生した水蒸気によって第2の加熱手段で生成した過熱水蒸気や高温空気が冷やされてしまい、非効率である。
【0014】
また、特許文献3に記載されたロースターは、受け皿の外側底面に設けたスチームヒータによって受け皿内の水を加熱し、そこで発生した蒸気を魚焼き用のヒータによってさらに加熱して過熱水蒸気としているため、空気に比べて軽い過熱水蒸気はロースター庫内の上部に上昇し、食品を効率よく加熱することができないまま、ロースター庫の上部に設けられた開口より排気ダクトに排出され、非効率である。
【0015】
さらに、特許文献4に記載されたグリル調理器は、蒸気抑制板によって調理物は水蒸気の影響を受けにくくなるため、脱脂,減塩の効果はほとんど期待できない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、請求項1では、加熱調理器の本体内に配置され前面が開口した調理庫と、該調理庫の前面開口部を塞ぐドアと、前記調理庫内の上下に設けられ被加熱物を加熱する上・下ヒータと、該上・下ヒータの間に配置され前記被加熱物を載せる焼き網と、該焼き網を載置し、前記下ヒータの下方に配置した受け皿と、を備えた加熱調理器において、前記ドアの裏側に近い前記下ヒータの前面部に前記焼き網の横幅方向に沿った横長発熱部を設けるとともに、前記焼き網の前面側横線材に前記ドアの裏側に延びるタンク支持部材を固定し、該タンク支持部材の上に前記下ヒータの横長発熱部に接近するように金属製からなる横長のスチームタンクを取り出し自在に配置し、該スチームタンクの上面開口部を着脱自在のタンク蓋で覆い、前記スチームタンクと前記タンク蓋とでタンクを構成し、該タンクに前記スチームタンク内部の所定水位より低く吸水口を備えるパイプを設け、該パイプの吐出口を前記タンクの側面外側で前記下ヒータの前記横長発熱部の上方に設けるものである。
【0017】
請求項2では前記タンクの前記側面に蒸発部を設け、該蒸発部は前記パイプの前記吐出口の下方に設けるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1によれば、横長発熱部からタンク全体に熱が伝わり、タンク内の水が効率よく加熱されて、密閉されたタンク内の空気が膨張して水を押し出す圧力が加わり、前記パイプを通り吐出口から横長発熱部に水が滴下されて水蒸気を発生させる。そして、調理庫内に噴出された水蒸気を下ヒータで更に加熱して過熱水蒸気とし、調理開始の短時間後から過熱水蒸気を供給でき、被加熱物を加熱するため、被加熱物の脱脂,減塩を効率よく行うことができるとともに、調理物を湿っぽくしたり、味を低下させることなく焼き上げることができる。
【0019】
更にタンクのパイプから水が吐出しきった後、タンク底部の僅かな残水はタンクで加熱されて水蒸気を発生させ上・下ヒータで加熱されて過熱水蒸気となるのでタンクの水を全て使いきれる。
【0020】
また、タンクを専用に加熱するヒータを別途設ける必要がなく、現行の調理庫内のスペースを確保したまま、最低限のコストで過熱水蒸気の発生機構を提供することができる。
【0021】
さらに、タンクは、焼き網の前面側線材にタンク支持部材を固定し、該タンク支持部材の上に取り出し自在に配置したので、受け皿を調理庫から引き出し、上に持ち上げるだけで容易に調理庫から取り出すことができ、水入れ作業が容易であるとともに、掃除も容易である。
【0022】
請求項2によれば、横長発熱部で加熱されている蒸発部に吐出口から水が滴下されると瞬時に水蒸気を発生させる。そして、調理庫内に噴出された水蒸気を下ヒータでさらに加熱して過熱水蒸気とするため、調理開始の短時間後から大量の過熱水蒸気を供給できるため、被加熱物に付着して加熱することによって脱脂や減塩効果を効率的に行える。
【0023】
本発明によって、加熱調理器の過熱水蒸気を利用して健康志向の調理ができ、脱脂や減塩効果を高めることができる加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例における加熱調理器をシステムキッチンに収納した状態の斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の実施例1におけるタンクと下ヒータの位置関係を示す説明図である。
【図4】本発明の実施例1におけるタンクのパイプを示す説明図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】本発明の実施例1における加熱調理器の焼き網の斜視図である。
【図7】本発明の実施例2におけるタンクと下ヒータの位置関係を示す説明図である。
【図8】本発明の実施例2におけるタンクの蒸発部を示す説明図である。
【図9】図8のB−B断面図である。
【図10】本発明の実施例3におけるタンクの蒸発部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例を上記した図1から図9に従って説明する。
【0026】
尚、本実施例は、システムキッチンに嵌め込むビルトイン型でなく、キッチンに載置する据置型の加熱調理器であっても差し支えない。
【実施例1】
【0027】
図1,図2において、加熱調理器の本体2は、システムキッチン1の上面から落とし込んで設置され、設置後は本体2の後述するオーブン(ロースター)4と操作部パネル5がシステムキッチン1の前面部から操作できるようになっている。
【0028】
調理を行う際の調理鍋(図示せず)は、本体2の上面に配置された耐熱ガラス等からなるプレート3上に載置され、プレート3の周囲端面は、プレート枠14によって保護されている。
【0029】
上面操作部9と上面表示部10は、後記載置部6での調理に使用するもので、プレート3またはプレート枠14の上面手前に配置されている。
【0030】
プレート3には載置部6が描かれており、該載置部6に調理鍋を載置することにより調理可能となる。載置部6は、プレート3の上面手前の右に載置部右6a、左に載置部左6bが配置され、これら両載置部6a,6b間の奥(中央後部)に載置部中央6cが配置されている。そして、プレート3を挟んで各載置部6の下に位置するように、本体2内の上部に調理鍋を加熱するための加熱コイルユニット25が設置されている。
【0031】
本体2の内部には、上記した発熱部品である加熱コイルユニット25や、電子部品およびこれらの発熱部品を冷却するための冷却ファン(いずれも図示せず)が配置されている。
【0032】
本体2の後部上面には、前記冷却ファンの駆動によって外気を吸引する吸気口7と、発熱部品である加熱コイルユニット25や電子部品を冷却した後の廃熱を本体2外に排出する排気口8が設けられている。なお、排気口8からは、後述するオーブン4の廃熱も同時に排出される。
【0033】
オーブン4は魚や肉,ピザ等の被加熱物30を焼くためのもので、本体2の前面部の左側若しくは右側に配置されている。(本実施例では、本体2の左側に配置されている。)なお、オーブンは、呼び名としてロースター,グリルと呼ぶこともある。
【0034】
次にオーブン4の詳細について説明する。
【0035】
図2において、調理庫26は、前面が開口した箱型をしており、内部の上部と下部にはシーズヒータ等の発熱体よりなる上・下ヒータ27(上ヒータ27a,下ヒータ27b)が設置されている。
【0036】
上ヒータ27aは、図示しないが、調理庫26の前後方向又は横幅方向に沿って適宜蛇行しながら配置されている。下ヒータ27bは、図3に示すように調理庫26の前後方向に沿って蛇行しながら配置され、後述するドア32の裏側に近い前面部に、同じく後述する焼き網33の横幅方向に沿った横長発熱部27b−1を設けている。
【0037】
また、図2,図3において、調理庫26の前面開口部は、後述する受け皿31の前面に着脱自在に連結されるドア32によって塞がれており、該ドア32の表側にハンドル11が取り付けられ、裏側に受け皿31が取り付けられている。
【0038】
調理庫26の後方上部には、排気出口29が設けられ、該排気出口29は排気通路35を介して本体2の後部上面に開口した排気口8に連通している。
【0039】
また、排気出口29の入り口側には調理庫26内で発生する煙や臭いを浄化する空気浄化用の触媒34と、触媒34を加熱するための触媒ヒータ37が配置され、途中には煙や臭いを強制的に排気口8を通して本体2外に排出するための排気手段36が設けられている。なお、排気手段36は、排気ファン36aと排気モータ36bとで構成されている。
【0040】
調理庫26の前面側下部とドア32との間には空気取入口43が設けられ、前記排気手段36が駆動すると、空気取入口43から調理庫26内に外気が流入し、下記する受け皿31の下面を冷却しながら排気通路35側に流れる。
【0041】
受け皿31は、調理庫26内にその前面開口部から出し入れ自在に収納されており、前面左右にドア32を取り付けるための引掛部31bが設けられ、中に焼き網33が載置され、その上に魚等の被加熱物30を載せる。受け皿31には水を入れて調理することも可能である。
【0042】
図3,図6において、焼き網33は、所定の間隙を保持して後方から前方に向けて平行に並べた横線材33aと、後述するタンク44のパイプ60を逃げる段付き形状を備える横線材33eと、略U字状をなし、上部に該横線材33a,33eの両端を固定し、下部を受け皿31の内周段部に載置した一対のフレーム線材33bとで構成されており、前記U字状部間には、前記上部と下部の間隙を一定に保持するための保持線材33cが固定されている。
【0043】
図6において、33dはタンク支持部材で、線材を略コ字状に成形し、焼き網33の最前部の横線材33eとその次の横線材33aとに両端部を固定し、中間の略コ字状部をドア32の裏側に延ばし、延ばした両側の線材33d−1を皿状に湾曲させて後述するタンク44を支持できる形状にしている。なお、タンク支持部材33dの両端部を、最前部の横線材33eとその次の横線材33aとに固定するのは、タンク支持部材33dの強度を上げるためであり、最前部の横線材33eのみ、またはその隣の横線材33aのみに固定しても強度を保持できれば何ら問題はない。
【0044】
図3,図4,図5において、スチームタンク41は、ステンレス材等の耐熱金属板によって横長形状に絞り成形され、下部に30〜100cc程度の水を溜める水溜め部41aを有し、上端周縁部に外向きのフランジ部41bを形成し、外周面に変色防止と伝熱性向上を目的として耐熱性のある黒色系のフッ素樹脂やセラミック塗装が施されている。
【0045】
そして、このスチームタンク41は、ドア32の裏側で、フランジ部41bをタンク支持部材33dの線材33d−1上に載置し、下ヒータ27bの横長発熱部27b−1に接近させている。
【0046】
このとき、スチームタンク41は、下ヒータ27bの横長発熱部27b−1の温度が約600℃程度まで上昇することから直接接触させると変色する恐れがあり、4mm程度の隙間を保持して下ヒータ27bの横長発熱部27b−1に接近させており、また、横長形状のスチームタンク41と横長発熱部27b−1とは略同一長さに規制されている。
【0047】
タンク44のパイプ60はステンレス材等の耐熱金属で内径略5mm管を略逆L字状に湾曲して成形されている。吸水口60aはスチームタンク41の水溜め部41a内に、所定水位50より低く使用する水量の最低水位より低い位置まで底部に近接させ、且つ清掃性を考慮して底部41eの吸水口60aの真下に底部41eと略3mmの隙間を保って配置されている。吐出口60bは側面41cから突出してフランジ部41bの下で、所定水位50よりも高い位置に配置される。パイプ60はスチームタンク41の側面41cに貫通して圧入や溶接などにより固定される。
【0048】
また、パイプ60は複数あってもよく、複数各々に内径が異なってもよく、異形でもよい。また、パイプ60も前記の変色防止と伝熱性向上を目的として耐熱性のある黒色系のフッ素樹脂やセラミック塗装が施されていてもよい。尚、底部41eの吸水口60aの真下に、凹みや傾斜を設けることにより吸水口60aから吸上がらない残水の量を調整してもよい。
【0049】
スチームタンク41の上面にはタンク蓋42が取り外し自在に載置されている。これらスチームタンク41とタンク蓋42で密閉容器のタンク44を構成する。タンク蓋42は、耐熱性が良く、錆びないステンレス材で成形され、表面に変色防止と清掃性向上を目的として耐熱性のよいフッ素樹脂やセラミック塗装が施されている。
【0050】
パッキン61は、耐熱シリコン等の成形品で、タンク蓋42の内面に備えられる。タンク蓋42のパッキン61がスチームタンク41の上部開口部41dに当接して密閉する。
【0051】
また、タンク蓋42は、取り付け,取り外しが容易なように、焼き網33の上面よりも上部に位置しており、長手方向の略中央部に凸部42aを設ける。凸部42aに被加熱物30の一部が載ることにより、吐出口60bの閉塞防止である。タンク蓋42は、前後を逆にしてもスチームタンク41に取り付けられる。
【0052】
また、スチームタンク41の代わりにタンク蓋42にパイプ60が固定されていてもよい。
【0053】
尚、ドア32と受け皿31が引掛部31bで固定される構成に限らず、ドア32がレール部材に着脱自在に固定される構成で、レール部材に受け皿31が着脱自在に載置される構成でもよい。その場合受け皿31に引掛部31bを持たない。
【0054】
本実施例は、以上の構成からなり、次に動作について、被加熱物30に鳥肉を例として、過熱水蒸気調理の動作を図1から図6によって具体的に説明する。
【0055】
まず、ドア32のハンドル11を手前に引いて受け皿31とともにタンク44を調理庫26の前面に露出させ、タンク支持部材33dの皿状の線材33d−1上に載置されているタンク44のタンク蓋42を開け、水溜め部41aに水約30cc供給する。タンク蓋42のパッキン61をスチームタンク41の上部開口部41dに嵌合してスチームタンク41にしっかり蓋をする。
【0056】
次に、焼き網33の上に下ごしらえをした鶏肉を載せる。
【0057】
調理開始時は、下ヒータ27bを最大定格の例えば1200Wで通電し、調理庫26及び鶏肉を温めると同時に、スチームタンク41内の水を加熱する。
【0058】
ドア32を閉じて調理を開始すると、排気手段36が駆動し、空気取入口43から受け皿31の下面に外気が流入して冷やされるので、受け皿31には水を入れなくても良い。
【0059】
また、調理時に鶏肉から発生する煙や臭いは、排気手段36によって触媒34を通して排気出口29から排気通路35を通って排気口8より本体2外に排出される。
【0060】
主に下ヒータ27bによって加熱開始から数分で鶏肉から脂が溶け出し始め、同時にスチームタンク41の水も横長発熱部27b−1からの熱によって加熱される。なお、一般に言われている肉の脂類が溶け出す温度は、鶏肉は30〜32℃、豚肉は33〜46℃、牛肉が40〜50℃である。
【0061】
加熱前は、パイプ60内の水面は、水溜め部41aの水面と同一高さにあるが、水が加熱されると、密閉されたタンク44内の空気が膨張して水を押し出す圧力が加わり、水の温度が約80℃になると吸水口60aから水がパイプ60内へ流れ、パイプ60内の水面は上昇し、吐出口60bに達して水が吐出される。パイプ60内の水が吸水口60aから吐出口60bまで充満されて搬送され始めると順次スチームタンク41内の水が吸水口60aから入り吐出口60bから吐出される。
【0062】
吐出口60bの直下に配置されている下ヒータ27bの横長発熱部27b−1に吐出口60bから吐出された水が当って水蒸気が発生する。発生した水蒸気は、調理庫26内で高温に加熱された下ヒータ27bに接触し、約200℃程度の過熱水蒸気となる。
【0063】
この過熱水蒸気は、排気手段36の作用により空気取入口43から取り入れた外気の流れに乗って、調理庫26の後方上部にある排気出口29に向かう中で鶏肉全体を過熱水蒸気で包んでいく。
【0064】
そして、鶏肉全体を包んだ過熱水蒸気は、鶏肉の表面全体で凝縮水滴になることによって発生する凝縮潜熱により、鶏肉を効率良く加熱する。
【0065】
また、鶏肉の周囲を一定の湿度で保持することで、鶏肉の表面で発生する凝縮潜熱による加熱が和らぎ、表面だけが著しく加熱されることなく鶏肉の内部も加熱されるようになる。
【0066】
そのため、鶏肉の表面と内部の温度差が緩和され、鶏肉の全体の温度を上昇させる。
【0067】
鶏肉の温度が上昇し、鶏肉に含まれる脂が溶ける温度に上昇すると脂が溶解し、さらに鶏肉の温度が上昇すると、たんぱく質の凝固によって鶏肉全体が縮み、鶏肉の内部で溶けた脂が表面に流出する。表面に流出した脂は鶏肉の表面に付着している水滴と一緒に受け皿31に滴下して鶏肉から余分な脂は排除される。一般に言われているたんぱく質が凝固する肉の熱変成が始まる温度は60〜70℃で、表面が硬くなる温度は約80℃である。この肉の熱変成が進み、表面が硬くなるまでに過熱水蒸気を供給して調理することにより、脱脂を効果的に行える。
【0068】
その後、鶏肉全体が加熱されるまで、下ヒータ27bを主体にして加熱を続け、一方でタンク44のパイプ60から水が吐出しきった後、タンク44底部41eの僅かな残水はタンク44で加熱されて水蒸気を発生させ上・下ヒータ27で加熱されて過熱水蒸気となる。加熱開始から所定時間経過後からは上ヒータ27aを入れ、焼き色等を調整したところで自動調理が終了となる。
【0069】
この加熱中は、上・下ヒータ27によって調理庫26内の温度は300℃程度まで上昇する。
【0070】
終了時には、スチームタンク41の水溜め部41aに供給された水はほとんど使いきった状態となるので、調理後の食品が湿っぽくなることはない。
【0071】
調理後に、タンク44を掃除する場合には、ドア32のハンドル11を手前に引いて調理庫26から受け皿31を引き出し、火傷に注意してタンク44を手で持ち上げで外に取り出せばよい。
【0072】
なお、上記した本実施例においては、過熱水蒸気によって鶏肉の脱脂を行う調理について説明したが、塩鮭等の減塩もできることは言うまでもない。
【0073】
また、調理の際にスチームタンク41に入れる水は、被加熱物30の種類等によって30〜100cc程度給水するのがよい。
【実施例2】
【0074】
次に実施例2を説明する。実施例2は、吐出口60bから滴下する水を更に蒸発し易くした構成に係るものである。
【0075】
以下、実施例1と構造の異なる構造と作用について図7〜9により説明する。
【0076】
図7〜図9において、タンク44を構成するスチームタンク41の側面41cに備えるパイプ60の吐出口60bの下方に、一片を固定した蒸発部70を設ける。蒸発部70は、耐熱性のよいステンレ材等によって成形された横長皿状で、周囲を立ち上げた縁70aで囲まれる。蒸発部70は横長発熱部27b−1の上方に約4mmの隙間を保持して接近させて配置され、蒸発部70全体で平均すると約140℃に加熱されている。蒸発部70は、横長発熱部27b−1で加熱されていて、吐出口60bから滴下される水を受けて水蒸気を発生させるものである。
【0077】
蒸発部70の縁70a奥側に、係止部71を設け、焼き網33の最前部の横線材33eの隣の横線材33aに係止してもよい。
【0078】
蒸発部70の位置は、蒸発する部分の温度が約140℃のとき、水滴が最も速く蒸発する最適温度で、温度が低くても、高くても速やかに蒸発しない特性に基づいている。
【0079】
そして、短時間に吐出された水は順次蒸発部70で瞬時に水が蒸発し、水蒸気を発生させる。蒸発部70で発生した水蒸気は下ヒータ27bで更に加熱されて過熱水蒸気となる。
【0080】
そのため、タンク44から吐出された水を蒸発部70で残すことなく水蒸気を発生させ、調理開始の短時間後から大量の過熱水蒸気を供給できるため、被加熱物30に付着して加熱することによって脱脂や減塩効果を上げて効率的である。
【0081】
また、本発明の実施例ではスチームタンク41にパイプ60を固定した例を示したが、スチームタンク41の代わりにタンク蓋42にパイプ60が固定されていてもよい。
【実施例3】
【0082】
次に実施例3を説明する。実施例3も、実施例2と同様に、吐出口60bから滴下する水を更に蒸発し易くした構成に係るものである。
【0083】
以下、実施例2と構造の異なる部分について図10を用いて説明する。
【0084】
図10において、タンク44を構成するスチームタンク41の側面41cに備えるパイプ60の吐出口60bの下方に、一片を固定した蒸発部70を設ける。蒸発部70は横長発熱部27b−1の下方に約4mmの隙間を保持して接近させて配置され、蒸発部70全体で平均すると約140℃に加熱されている。
【0085】
蒸発部70が横長発熱部27b−1の下方に位置するため、焼き網33への着脱性を考慮して縁70a奥側は、図9に示すような係止部71を備えない。
【0086】
上記したように本実施例によれば、調理庫26内で、タンク44に所定水位50より低い吸水口60aとタンク44の側面41c外側に吐出口60bを備えるパイプ60を設け、吐出口60bを下ヒータ27bの横長発熱部27b−1の上方に設けたため、横長発熱部27b−1からタンク44全体に熱が伝わり、タンク44内の水が効率よく加熱されて、密閉されたタンク44内の空気が膨張して水を押し出す圧力が加わり、パイプ60を通り吐出口60bから横長発熱部27b−1に水が滴下されて水蒸気を発生させる。そして、調理庫26内に噴出された水蒸気を下ヒータ27bで更に加熱して過熱水蒸気とし、調理開始の短時間後から過熱水蒸気を供給でき、被加熱物を加熱するため、被加熱物の脱脂,減塩を効率よく行うことができるとともに、調理物を湿っぽくしたり、味を低下させたりすることなく焼き上げることができる。
【0087】
更にタンク44のパイプ60から水が吐出しきった後、タンク44底部41eの僅かな残水はタンク44で加熱されて水蒸気を発生させ上・下ヒータ27で加熱されて過熱水蒸気となるのでタンク44の水を全て使いきれる。
【0088】
また、タンク44を専用に加熱するヒータを別途設ける必要がなく、現行の調理庫26内のスペースを確保したまま、最低限のコストで過熱水蒸気の発生機構を提供することができる。
【0089】
さらに、タンク44は、焼き網33の前面横線材33aにタンク支持部材33dを固定し、該タンク支持部材の上に取り出し自在に配置したので、受け皿31を調理庫26から引き出し、上に持ち上げるだけで容易に調理庫26から取り出すことができ、水入れ作業が容易であるとともに、掃除も容易である。
【0090】
また、タンク44の側面41cに蒸発部70を設け、該蒸発部70はパイプ60の吐出口60bの下方に設けるので、横長発熱部27b−1で加熱されている蒸発部70に吐出口60bから水が滴下されると瞬時に水蒸気を発生させる。そして、調理庫26内に噴出された水蒸気を上・下ヒータ27でさらに加熱して過熱水蒸気とするため、調理開始の短時間後から大量の過熱水蒸気を供給できるため、被加熱物に付着して加熱することによって脱脂や減塩効果を効率的に行える。
【0091】
本発明によって、加熱調理器の過熱水蒸気を利用して健康志向の調理ができ、脱脂や減塩効果を高めることができる加熱調理器を提供することができる。
【符号の説明】
【0092】
2 本体
26 調理庫
27 上・下ヒータ
27a 上ヒータ
27b 下ヒータ
27b−1 横長発熱部
30 被加熱物
31 受け皿
32 ドア
33 焼き網
33a 横線材
33d タンク支持部材
41 スチームタンク
41c 側面
41d 上面開口部
42 タンク蓋
44 タンク
50 所定水位
60 パイプ
60a 吸水口
60b 吐出口
70 蒸発部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理器の本体内に配置され前面開口部を有する調理庫と、
該調理庫の前面開口部を塞ぐドアと、
前記調理庫内の上下に設けられ被加熱物を加熱する上・下ヒータと、
該上・下ヒータの間に配置され前記被加熱物を載せる焼き網と、
該焼き網を載置し、前記下ヒータの下方に配置した受け皿と、を備えた加熱調理器において、
前記ドアの裏側に近い前記下ヒータの前面部に前記焼き網の横幅方向に沿った横長発熱部を設けるとともに、前記焼き網の前面側横線材に前記ドアの裏側に延びるタンク支持部材を固定し、
該タンク支持部材の上に前記下ヒータの横長発熱部に接近するように金属製からなる横長のスチームタンクを取り出し自在に配置し、該スチームタンクの上面開口部を着脱自在のタンク蓋で覆い、前記スチームタンクと前記タンク蓋とでタンクを構成し、該タンクに前記スチームタンク内部の所定水位より低く吸水口を備えるパイプを設け、該パイプの吐出口を前記タンクの側面外側で前記下ヒータの前記横長発熱部の上方に設けることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記タンクの前記側面に蒸発部を設け、該蒸発部は前記パイプの前記吐出口の下方に設けることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前面開口部を有する調理庫と、
該調理庫の前面開口部を塞ぐドアと、
前記調理庫内の下方に設けられた下ヒータと、
該下ヒータの上方に設けられた焼き網と、
前記下ヒータの下方に設けられた受け皿と、
前記焼き網の前面側に固定したタンク支持部材と、
該タンク支持部材に載置されるタンクと、
該タンク内部の水をタンクの外部に導くパイプと、を備えており、
前記パイプを介して前記タンクの外部に導かれた水を、前記下ヒータに滴下することで水蒸気を発生させることを特徴とした加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−217933(P2011−217933A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90015(P2010−90015)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】