説明

加熱調理器

【課題】安全弁に不具合が生じても、バーナの安全性を確保できる加熱調理器を提供する。
【解決手段】ビルトインコンロでは、標準バーナの加熱条件が予め設定された所定条件を満たした場合は、安全弁を強制的に閉弁することで、標準バーナの自動消火を行うことができる。強制閉弁させる条件として複数の加熱条件が設定されている。例えば、サーミスタの検知温度が異常高温に達した場合(S13:YES)は、安全弁を強制閉弁すると共に、流量調整部におけるガス流量を最小にする「絞り制御」を行う(S16)。これにより何らかの不具合で安全弁が閉弁しなかった場合、標準バーナの火力を最小にできるので、調理物の温度上昇を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器に関し、詳しくは、予め設定された加熱条件に基づき、バーナを自動消火できる加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バーナに燃料ガスを供給する供給管には、ガス供給を遮断する安全弁と、火力を調整するために、供給管内のガス流量を調整できる流量調整弁等が設けられている。このような機構を備えた加熱調理器において、例えば、天ぷら火災等を防止するために、バーナ等の加熱手段により加熱される調理鍋の底面温度を温度センサで検出し、その検出温度が設定温度に達した場合に、バーナを自動消火させるガス加熱調理器が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、コンロを所定時間作動させるためのタイマを設け、そのタイマに設定された時間に達すると、バーナを自動消火させる機能を備えた加熱調理器も知られている(例えば、特許文献2参照)。自動消火は、安全弁への通電をオフすることで閉弁され、ガス供給が遮断されることによってなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−97843号公報
【特許文献2】特開2009−2542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載の加熱調理器において、自動消火させる条件に達して通電がオフされたにも関わらず、万が一何らかの不具合を生じたことによって安全弁が閉弁しなかった場合は、燃焼が継続してしまい、調理物の温度が上昇し続けてしまうことが懸念された。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、安全弁に不具合が生じても、バーナの安全性を確保できる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る加熱調理器は、バーナと、当該バーナに燃料ガスを供給する供給管と、当該供給管に設けられ、前記供給管内のガス流路を開閉する安全弁と、前記供給管に設けられ、前記供給管内のガス流量を調整する流量調整部とを備えた加熱調理器であって、前記バーナによる加熱条件が予め設定された所定条件を満たすか否かを判断する判断手段と、当該判断手段によって前記所定条件を満たすと判断された場合に、前記安全弁を閉弁し、かつ前記ガス流量を絞る前記流量調整部の絞り制御を行う第1制御手段とを備えている。
【0007】
第1態様にかかる加熱調理器では、判断手段が、バーナによる加熱条件が予め設定された所定条件を満たすか否かを判断する。判断手段によって所定条件を満たすと判断された場合、第1制御手段が、安全弁を閉弁し、かつガス流量を絞る流量調整部の絞り制御を行う。これにより、万が一何らかの不具合によって安全弁が閉弁しなかった場合でも、ガス流量が絞られるので、バーナが燃焼中では、バーナの火力が確実に弱まるので、調理物の温度上昇を回避できる。また、失火した場合は、ガスが最大の流量で漏出するのを防止できるので、安全性の高いガス調理器を提供できる。
【0008】
また、第1態様において、前記バーナの点火を指示する点火指示手段と、当該点火指示手段によって前記点火の指示があった場合に、少なくとも前記バーナを点火させるために必要な点火火力を得るために前記ガス流路を開放する前記流量調整部の開放制御を行う第2制御手段とを備えているとよい。このように、点火指示手段によって点火の指示があった場合、第2制御手段が、点火火力を得るためにガス流路を開放する流量調整部の開放制御を行う。これにより、第1制御手段によって、ガス流量が絞られた状態で終わっても、再点火時ではガス流路が開放されるので、バーナを確実に点火できる。
【0009】
また、第1態様において、前記加熱条件は、前記バーナの加熱時間が予め設定された所定時間に達した場合に自動消火させるタイマ条件、前記バーナによって加熱される調理物の温度が所定温度に達した場合に異常過熱とみなして自動消火させる異常過熱条件、前記バーナの失火を検知した場合に自動消火させる失火条件のうち少なくとも何れかを含んでいるとよい。このように、加熱条件は、タイマ条件、異常過熱条件、失火条件のうち少なくとも何れかを含み、何れの条件においてもガス流量が絞られるので、安全性の高い加熱調理器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ビルトインコンロ1の斜視図である。
【図2】標準バーナ5のガス供給構造の概念図である。
【図3】ビルトインコンロ1の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】CPUによる加熱処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態であるビルトインコンロ1について、図面を参照して説明する。図1に示すビルトインコンロ1は、図示外のキッチンユニットのカウンタートップに形成された開口に、器具2が落とし込まれて係止することで、キッチンユニットに組み込まれるものである。
【0012】
はじめに、ビルトインコンロ1の構造について、図1を参照して概略的に説明する。ビルトインコンロ1の器具2の天面の左側には標準バーナ5が設けられ、右側には強火力バーナ6が設けられている。標準バーナ5と強火力バーナ6との間の後方には、とろ火用の奥バーナ7が設けられている。奥バーナ7の後方には、グリル排気口(図示外)が設けられている。グリル排気口には、排気カバー10,11が設置されている。これら構造を有する器具2の天面にはトッププレート3が設けられている。トッププレート3の上面には、標準バーナ5、強火力バーナ6および奥バーナ7をそれぞれ取り囲むようにして、調理鍋を載置するための五徳5A,6A,7Aが各々設置されている。
【0013】
器具2の中央内部には、グリルの本体であるグリル庫(図示外)が組み込まれている。グリル庫内には、グリルバーナ(図示外)が設けられている。器具2の正面中央には、グリル庫内を確認できるグリル窓13が設けられている。グリル窓13の下方には、グリル庫内から受皿(図示外)及び焼き網(図示外)を手前に引き出すためのグリル用取っ手14が設けられている。
【0014】
器具2の正面左側には、標準バーナ5を点火するための点火ボタン15が設けられ、その右隣りには、奥バーナ7を点火するための点火ボタン17が設けられている。器具2の正面右側には、強火力バーナ6を点火するための点火ボタン16が設けられ、その左隣りには、グリル庫内のグリルバーナ(図示外)を点火するための点火ボタン18が設けられている。点火ボタン15〜18には、これらボタンの操作によってオンオフされるコックスイッチ15A〜18A(図3参照)が各々内蔵されている。
【0015】
図1に示すように、点火ボタン15の直上には、標準バーナ5の火力を手動で調節するための火力調節レバー15Bが左右方向に回動可能に設けられている。点火ボタン17の直上には、奥バーナ7の火力を手動で調節するための火力調節レバー17Bが左右方向に回動可能に設けられている。点火ボタン16の直上には、強火力バーナ6の火力を手動で調節するための火力調節レバー16Bが同様に設けられている。点火ボタン18の直上には、グリルバーナの火力を手動で調節するための火力調節レバー18Bが同様に設けられている。点火ボタン15,17の下側には、タイマ時間の設定や、加熱温度の設定等を行うための操作パネル20が開閉可能に設けられている。点火ボタン16,18の下側には乾電池をセットする電池ボックス21が設けられている。
【0016】
標準バーナ5、強火力バーナ6、奥バーナ7およびグリルバーナ(図示外)には、点火電極をスパークさせて点火するためのイグナイタ27A〜27D(図3参照)と、各種バーナの着火及び失火を検知するための第1熱電対31〜第4熱電対34(図3参照)とが各々設けられている。
【0017】
図1に示すように、標準バーナ5には、五徳5A上に載置される調理鍋の鍋底温度を検出するためのサーミスタ23が設けられている。強火力バーナ6には、五徳6A上に載置される調理鍋の鍋底温度を検出するためのサーミスタ24が設けられている。奥バーナ7には、五徳7A上に載置される調理鍋の鍋底温度を検出するためのサーミスタ25が設けられている。グリル庫と排気通路との連通口付近には、グリル庫内の温度を検出するためのサーミスタ26(図3参照)が設けられている。
【0018】
標準バーナ5には、ガスを供給するための第1ガス供給管60(図2参照)が接続され、強火力バーナ6には第2ガス供給管(図示外)が接続され、奥バーナ7には第3ガス供給管(図示外)が接続され、グリルバーナ(図示外)には第4ガス供給管(図示外)が接続されている。第1ガス供給管60には、ガス流路を開閉する安全弁38(図3参照)が設けられている。また、第2ガス供給管には同様の安全弁39(図3参照)が設けられ、第3ガス供給管には安全弁40(図3参照)が設けられ、第4ガス供給管には安全弁41(図3参照)が設けられている。これら安全弁38〜41は、ガス供給を遮断して各種バーナを強制的に自動消火するためのマグネット式の電磁弁である。
【0019】
また、図2に示すように、標準バーナ5に燃料ガスを供給する第1ガス供給管60の安全弁38の下流側には分岐部61が設けられ、その下流側には合流部62が設けられている。その分岐部61と合流部62の間には分岐管63が介設されている。分岐管63には、ガス流路を開閉する流量調整弁28が設けられている。従って、第1ガス供給管60を流れる燃料ガスは、安全弁38を通過した後、分岐部61において2つの流路に分岐して流れる。そして、流量調整弁28を開弁すると、標準バーナ5に流れるガス量は最大となり、流量調整弁28を閉弁すると、分岐管63のガス流路が遮断されるので、標準バーナ5に流れるガス量は最小となる。なお、ガス流量を多段階で調整できるようにする場合は、分岐管をさらに複数設け、それら各分岐管に流量調整弁を各々設ければよい。各流量調整弁の開閉を各々制御することでガス流量を多段階で調整できる。
【0020】
そして、分岐部61から合流部62までの第1ガス供給管60及び分岐管63の部分、及び流量調整弁28が本発明の「流量調整部65」を構成している。流量調整部65では、例えば、サーミスタ23によって検出される標準バーナ5による加熱温度を、操作パネル20(図1,図3参照)で設定された所定温度の範囲内に維持するために、第1ガス供給管60におけるガス流量を調整し、標準バーナ5の火力を自動的に調整することができる(「ハイカット温調」という)。なお、合流部62の下流側には、上述した手動の火力調節レバー15Bが設けられている。
【0021】
なお、図示しないが、強火力バーナ6に燃料ガスを供給する第2ガス供給管にも、標準バーナ5と同様の「流量調整部」が設けられている。強火力バーナ6の流量調整部は、第2ガス供給管から分岐する流路を2つ以上設け、それら分岐管に流量調整弁を設けている。これら流量調整弁の開閉を各々制御することで、強火力バーナ6に流れるガス量を多段階に調整できるようになっている。流量調整弁の数はこれに限定されない。
【0022】
次に、ビルトインコンロ1の電気的構成について、図3を参照して説明する。ビルトインコンロ1は、電装基板70を備えている。電装基板70には、ビルトインコンロ1の燃焼動作を制御するマイコン制御回路50が設けられている。マイコン制御回路50は、図示しないCPU、各種制御プログラム、各種データの初期値等を記憶したROM、CPUの演算処理中に発生するデータ等を一時的に記憶するRAM、タイマ、不揮発性のフラッシュメモリ等を備えている。
【0023】
図3に示すように、マイコン制御回路50には、電池ボックス21(図1参照)に格納された乾電池の電圧を、電装基板70上の各種回路に供給する電源回路43と、コックスイッチ15A〜18Aからそれぞれ出力されるオンオフ信号を入力するスイッチ入力回路44と、操作パネル20との間で通信する操作パネル通信回路46と、イグナイタ27A〜27Dを駆動させるイグナイタ回路47と、図2に示す流量調整部65の流量調整弁28の駆動を制御するための流量調整弁回路48と、安全弁38〜41の駆動を制御するための安全弁回路49とが各々接続されている。
【0024】
さらに、マイコン制御回路50には、アナログ入力のための8つのアナログチャンネル(以下、アナログCHと呼ぶ)が設けられている。そのうちの4つのアナログCH1〜4(図示外)は熱電対のアナログ入力用に使用される。アナログCH1には、標準バーナ5の第1熱電対31から出力された熱起電力を増幅して入力する第1熱電対入力回路51が接続されている。アナログCH2には、強火力バーナ6の第2熱電対32から出力された熱起電力を増幅して入力する第2熱電対入力回路52が接続されている。アナログCH3には、奥バーナ7の第3熱電対33から出力された熱起電力を増幅して入力する第3熱電対入力回路53が接続されている。アナログCH4には、グリルバーナの第4熱電対34から出力された熱起電力を増幅して入力する第4熱電対入力回路54が接続されている。
【0025】
さらに、マイコン制御回路50には、サーミスタ23から出力されるアナログ信号を入力するサーミスタ入力回路56と、サーミスタ24から出力されるアナログ信号を入力するサーミスタ入力回路57と、サーミスタ25から出力されるアナログ信号を入力するサーミスタ入力回路58と、サーミスタ26から出力されるアナログ信号を入力するサーミスタ入力回路59とが各々接続されている。
【0026】
そして、上記構成からなるビルトインコンロ1では、マイコン制御回路50によって、各種バーナの加熱条件が、予め設定された所定条件を満たした場合は、安全弁38を強制的に閉弁することによって、そのバーナの自動消火を行う「強制閉弁機能」を備えている。強制閉弁させる条件として、複数の所定条件が設定されている。例えば、本実施形態の標準バーナ5には、以下の所定条件が設定されている。
・条件1:サーミスタ23で検出された温度が予め設定された温度を超えた場合(異常過熱条件)
・条件2:予め設定されたタイマ時間を経過した場合(タイマ条件)
・条件3:第1熱電対31によって標準バーナ5の失火を検知した場合(失火条件)
※これら条件1〜3の何れかを満たす場合は、標準バーナ5への燃料ガス供給を停止し、標準バーナ5が点火している場合は自動消火させる。
【0027】
そして、本実施形態では、上記各条件において、マイコン制御回路50が安全弁38を強制閉弁する際には、流量調整部65におけるガス流量を最小にする「絞り制御」を同時に行う。これにより、もし何らかの不具合で安全弁38が閉弁しなかった場合でも、標準バーナ5の火力を最小にできるので、調理物の温度上昇を回避できる。また、失火した場合でも、最大のガス流量でガスが漏出することを防止できる。そこで、標準バーナ5の点火から消火までの加熱動作の過程で、上述した条件1〜3を満たした場合のマイコン制御回路50による処理について、図4のフローチャートを参照して順に説明する。
【0028】
・条件1:異常過熱条件を満たした場合
まず、点火ボタン15が押下され、コックスイッチ15Aがオンされたか否かが判断される(S11)。押下されない間は(S11:NO)、S11に戻る。点火ボタン15が押下された場合(S11:YES)、安全弁38のコイルに、マグネット保持電流が流れて励磁される。これにより安全弁38が吸着開弁状態に保持される。そして、標準バーナ5には点火火力に必要なガス量が供給された状態で、イグナイタ27Aによる点火処理が実行される(S12)。標準バーナ5が点火されると、五徳5Aに載置された調理鍋内の被調理物が加熱され、調理が開始される。
【0029】
調理鍋の鍋底の温度はサーミスタ23によって検知される。そして、ビルトインコンロ1では、調理鍋内の油等の温度が高温になり過ぎないように、自動消火させるための異常温度が予め設定されている。そして、「所定条件」として「サーミスタ23によって検知された検知温度が異常温度に達したか否か」が判断される(S13)。異常温度に達していなければ(S13:NO)、調理鍋は安全であるので、そのまま加熱動作が続行される。そして、点火ボタン15が再度押下されない間は(S14:NO)、S13に戻り、異常温度に達したか否かの監視が引き続き行われる。点火ボタン15が再度押下され、コックスイッチ15Aがオフされた場合(S14:YES)、安全弁38が閉弁され(S:15)、標準バーナ5が消火される。標準バーナ5が消火されると、S11に戻る。
【0030】
一方、サーミスタ23による検知温度が異常温度に達した場合(S13:YES)、このまま加熱を継続すると火災の危険性があるので、安全弁38が強制閉弁されると共に、流量調整弁28を強制的に閉弁することで、流量調整部65においてガス流量を最小にする「絞り制御」が行われる(S16)。これにより、標準バーナ5は強制的に消火されるので、被調理物の加熱を中止することができる。そして、もし安全弁38が何らかの不具合で閉弁しなかった場合でも、標準バーナ5の火力が最小になっているので、加熱が継続してしまった場合でも調理物の温度上昇を回避できる。従って、ビルトインコンロ1の安全性を向上できる。
【0031】
そして、点火ボタン15が再度押下され、コックスイッチ15Aがオフされた場合(S17:YES)、次回の点火時において、少なくとも点火に必要な火力を得るために、流量調整弁28が開弁され、流量調整部65におけるガス量が最大とされる(S18)。こうして、標準バーナ5が消火され、S11に戻る。なお、点火ボタン15が再度押下されない間は(S17:NO)、S17に戻って、処理が繰り返される。
【0032】
・条件2:タイマ条件を満たした場合
条件2を満たした場合においても、条件1と同じ処理が行われる。従って、ここでは、タイマ機能と、その条件2を満たした場合の処理についてのみ説明する。タイマ機能の一例として、標準バーナ5を所定時間作動させるために、操作パネル20で予め「タイマ時間」を設定し、点火してからの加熱時間が「タイマ時間」に達したら自動的に消火させる機能がある。この場合、マイコン制御回路50では、図4に示すように、点火処理が実行され(S12)、標準バーナ5の点火を第1熱電対31(図3参照)で検知したら、図示外のタイマで加熱時間が計測される。次いで、「所定条件」として、「加熱時間が予め設定されたタイマ時間に達したか否か」が判断される(S13)。
【0033】
まだ、タイマ時間に達していない場合は(S13:NO)、そのまま加熱動作が続行される。点火ボタン15が再度押下され、コックスイッチ15Aがオフされた場合(S14:YES)、安全弁38が閉弁され(S:15)、標準バーナ5が消火される。標準バーナ5が消火されると、S11に戻る。
【0034】
一方、加熱時間がタイマ時間に達した場合(S13:YES)、加熱を終了させなければならないので、安全弁38が強制閉弁されると共に、流量調整弁28を強制的に閉弁することで、流量調整部65においてガス流量を最小にする「絞り制御」が行われる(S16)。つまり、流量調整部65におけるガス量が最小とされる。これにより、標準バーナ5は強制的に消火されるので、被調理物の加熱を終了させることができる。そして、もし安全弁38が何らかの不具合で閉弁しなかった場合でも、標準バーナ5の火力が最小になっているので、加熱が継続してしまった場合でも調理物の温度上昇を回避できる。従って、ビルトインコンロ1の安全性を向上できる。
【0035】
・条件3:失火条件を満たした場合
条件3を満たした場合においても、条件1と同じ処理が行われる。従って、ここでは、点火時におけるマイコン制御回路50の処理を中心に説明する。図4に示すように、まず、標準バーナ5の点火ボタン15が押下され、コックスイッチ15Aがオンされた場合(S11:YES)、安全弁38のコイルに、マグネット保持電流が流れて励磁される。これにより安全弁38が吸着開弁状態に保持される。次いで、第1ガス供給管60を介して標準バーナ5にガスが供給され、イグナイタ27Aが駆動して標準バーナ5の点火動作が実行される(S12)。
【0036】
次いで、「所定条件」として、「標準バーナ5が失火したか否か」が判断される(S13)。標準バーナ5が着火されると、炎口に形成された燃焼炎によって第1熱電対31が加熱される。このとき第1熱電対31では熱起電力が発生する。発生した熱起電力は、第1熱電対入力回路51で増幅されてマイコン制御回路50のアナログCH1に入力される。マイコン制御回路50では、入力された熱起電力が所定レベル以上である場合は、燃焼状態が正常であると判断され(S13:NO)、そのまま加熱動作が続行される。点火ボタン15が再度押下され、コックスイッチ15Aがオフされた場合(S14:YES)、安全弁38が閉弁され(S15)、標準バーナ5が消火される。標準バーナ5が消火されると、S11に戻る。
【0037】
一方、炎の立ち消えによって、熱起電力が所定レベル未満の場合、失火したと判断され(S13:YES)、吸着保持電流の供給を停止させ、安全弁38が強制閉弁されると共に、流量調整弁28を強制的に閉弁することで、流量調整部65においてガス流量を最小にする「絞り制御」が行われる(S16)。つまり、流量調整部65におけるガス量が最小となる。これにより標準バーナ5へのガス供給が遮断されて、第1熱電対31による立ち消え安全機能が働くようになっている。そして、もし安全弁38が何らかの不具合で閉弁しなかった場合でも、流量調整部65におけるガス量が最小となっているので、ガスが最大流量で標準バーナ5から漏れるのを防止できる。従って、ビルトインコンロ1の安全性を向上できる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態のビルトインコンロ1では、標準バーナ5の加熱条件が予め設定された所定条件を満たした場合は、安全弁38を強制的に閉弁することによって、そのバーナの自動消火を行う「強制閉弁機能」を備えている。強制閉弁させる条件として、複数の加熱条件が設定されている。例えば、サーミスタ23の検知温度が異常高温に達した場合は、安全弁38を強制閉弁すると共に、流量調整部65におけるガス流量を最小にする「絞り制御」を行う。これにより、もし何らかの不具合で安全弁38が閉弁しなかった場合、標準バーナ5の火力を最小にすることができるので、調理物の温度上昇を回避できる。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。例えば、なお、上記実施形態のS13の一例として挙げた所定条件は、他の条件であってもよい。例えば、バーナの消し忘れを防止するために、予め設定された燃焼時間に達したら安全弁を強制閉弁させる「消し忘れ消火機能」、「熱電対回路異常」、「サーミスタ断線異常」、「電池電圧低下異常」、「安全弁回路故障」等においても、安全弁38を強制的に閉弁させ、かつ流量調整部65の絞り制御を行うようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、「流量調整部65」において、流量調整弁28の開閉によって、第1ガス供給管60を流れるガス流量を調整したが、ステッピングモータで多段階的にガス流路を絞ることができる流量調整弁で調整してもよい。この場合、第1ガス供給管60を分岐させる必要はない。
【0041】
また、タイマ機能には、上記実施形態の他に、例えば、所定の加熱状態(例えば、沸騰状態)を検知してから所定時間後に消火させる機能や、ハイカット温調を開始してから所定時間後に消火させる機能等も含む。
【0042】
また、上記実施形態では、本発明をビルトインコンロに適用した場合について説明したが、その他にも、テーブルコンロ、給湯器、フライヤー等の各種加熱調理器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 ビルトインコンロ
5 標準バーナ
15 点火ボタン
15A コックスイッチ
15B 火力調節レバー
23 サーミスタ
27A イグナイタ
28 流量調整弁
31 第1熱電対
38 安全弁
50 マイコン制御回路
60 第1ガス供給管
61 分岐部
62 合流部
63 分岐管
65 流量調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナと、当該バーナに燃料ガスを供給する供給管と、当該供給管に設けられ、前記供給管内のガス流路を開閉する安全弁と、前記供給管に設けられ、前記供給管内のガス流量を調整する流量調整部とを備えた加熱調理器であって、
前記バーナによる加熱条件が予め設定された所定条件を満たすか否かを判断する判断手段と、
当該判断手段によって前記所定条件を満たすと判断された場合に、前記安全弁を閉弁し、かつ前記ガス流量を絞る前記流量調整部の絞り制御を行う第1制御手段と
を備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記バーナの点火を指示する点火指示手段と、
当該点火指示手段によって前記点火の指示があった場合に、少なくとも前記バーナを点火させるために必要な点火火力を得るために前記ガス流路を開放する前記流量調整部の開放制御を行う第2制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記加熱条件は、
前記バーナの加熱時間が予め設定された所定時間に達した場合に自動消火させるタイマ条件、前記バーナによって加熱される調理物の温度が所定温度に達した場合に異常過熱とみなして自動消火させる異常過熱条件、前記バーナが失火した失火条件のうち少なくとも何れかを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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