説明

加熱調理器

【課題】負荷量が変わっても同じあたための仕上がりを実現できる加熱調理器を提供すること。
【解決手段】マイクロ波発生手段1と、加熱室2と、加熱室内の蒸気量を測定する湿度センサと、非接触にて負荷の温度を検出する赤外線センサと、赤外線センサを可動させて加熱室内の測定範囲を変更することができる可動部と、赤外線センサの温度と測定位置の情報から加熱室内の負荷の量を判定する負荷量判定手段と、赤外線センサの検出した温度情報に基づきマイクロ波発生手段を制御する制御手段とを有し、制御手段は湿度センサの検出値から沸騰などを検出する閾値を負荷量判定手段の判定した負荷量にあわせて変更することにより、負荷量が変わっても同じあたための仕上がりを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭、レストラン及びオフィスなどで使用される加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器では、加熱室内の複数の位置の温度を計測するために赤外線センサを可動させて温度を計測することによって、どのような負荷であっても、また、どの位置に載置されても適切な温度に加熱する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、湿度センサを用いて、加熱室内の蒸気量の変化から沸騰などを検知する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−168457号公報
【特許文献2】特許第2752195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、負荷が少量の場合に赤外線センサが検知したい食品の温度ではなく容器の温度しか検知できない場合があり、そのような場合において、負荷が目標温度以上まで加熱されてしまうという課題を有していた。
【0006】
また、湿度センサを用いて沸騰などの仕上がりを検知しようとした場合には、負荷の量によって蒸気の発生する負荷温度や量が異なるため、バラツキが大きいという課題を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、負荷量が変わっても同じ仕上がりを実現し、少量の負荷を加熱したような場合であっても過加熱になることなく加熱を停止させることができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理器は、マイクロ波発生手段と、マイクロ波で加熱する負荷を収納する加熱室と、前記加熱室内の蒸気量を測定する湿度センサと、非接触にて負荷の温度を検出する赤外線センサと、前記赤外線センサを可動させて前記加熱室内の測定範囲を変更することができる可動部と、前記赤外線センサの温度と測定位置の情報から前記加熱室内の負荷の量を判定する負荷量判定手段と、前記赤外線センサの検出した温度情報に基づき前記マイクロ波発生手段を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は前記湿度センサの検出値から沸騰などを検出する閾値を前記負荷量判定手段の判定した負荷量にあわせて変更するとしたものである。
【0009】
これによって、
【発明の効果】
【0010】
本発明の加熱調理器は、少量の負荷を加熱したような場合であっても過加熱になることなく加熱を停止させることが可能であり、加熱の仕上がりを良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における加熱調理器の飲み物の量が多い場合と少ない場合における赤外線センサの視野を示す図
【図3】本発明の実施の形態1における加熱調理器の湿度センサの変化を示す図
【図4】本発明の実施の形態1における加熱調理器のマイクロ波の出力を示す図
【図5】本発明の実施の形態1における加熱調理器の負荷および加熱開始から所定時間経過後の赤外線センサが検出した温度分布を示す図
【図6】(A)本発明の実施の形態2における加熱調理器の赤外線センサの可動範囲を示す図(B)本発明の実施の形態2における加熱調理器の負荷の領域を示す図(C)本発明の実施の形態2における加熱調理器の赤外線センサの可動範囲を示す図
【図7】(A)本発明の実施の形態2における加熱調理器のマイクロ波出力を示すタイミングチャート(B)本発明の実施の形態2における加熱調理器の可動部の動作を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、マイクロ波発生手段と、マイクロ波で加熱する負荷を収納する加熱室と、前記加熱室内の蒸気量を測定する湿度センサと、非接触にて負荷の温度を検出する赤外線センサと、前記赤外線センサを可動させて前記加熱室内の測定範囲を変更することができる可動部と、前記赤外線センサの温度と測定位置の情報から前記加熱室内の負荷の量を判定する負荷量判定手段と、前記赤外線センサの検出した温度情報に基づき前記マイクロ波発生手段を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は前記湿度センサの検出値から沸騰などを検出する閾値を前記負荷量判定手段の判定した負荷量にあわせて変更する加熱調理器とすることによって、負荷の量に依らず安定した仕上がりを実現することができる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明の可動部は負荷量判定手段が負荷の存在を検出した範囲のみを可動させるとしたことにより、少量負荷の過加熱を防止することができる。
【0014】
第3の発明は、特に、第1の発明の可動部は、制御手段がマイクロ波発生手段を駆動している間に間欠動作するとしたことによって、可動部の耐久性を上げることができ、長期間使用できる加熱調理器を実現することができる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1に、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の断面図を示す。本実施の形態の加熱調理器は、マイクロ波発生手段1と、マイクロ波で加熱する負荷を収納する加熱室2と、加熱室2内の蒸気量を測定する湿度センサ3と、非接触にて負荷の温度を検出する赤外線センサ4と、赤外線センサ4を可動させて加熱室2内の測定範囲を変更することができる可動部5と、赤外線センサ4の温度情報から加熱室2内の負荷の量を判定する負荷量判定手段6と、赤外線センサ4の検出した温度情報に基づきマイクロ波発生手段1を制御する制御手段7とを有する。
【0017】
マイクロ波発生手段1は、通常マグネトロンを使用する場合が多いが、半導体式などであっても良い。マイクロ波発生手段1には、制御手段7からの指示に基づいて図示していないインバータ回路などから電力を供給することによってマイクロ波を発生させる。発生させるマイクロ波は、通常2450MHzであるがそれに限定するものではない。
【0018】
マイクロ波はアンテナを介して加熱室2内に導入されるが、アンテナを固定して負荷を
回転させるように回転台を設ける構成と、負荷は同じ位置に載置してアンテナを回転させるように構成する場合などがある。
【0019】
加熱室2は、アルミやSUSなどの金属で構成され、加熱室2内に負荷を載置し、マイクロ波発生手段1によって発生したマイクロ波を加熱室2内に導入することによって負荷は加熱される。
【0020】
加熱室2内にはマイクロ波が存在することになるが、負荷だけがマイクロ波によって加熱されるのが理想である。そのため、加熱室2を例えばガラスなどで構成した場合にはガラスがマイクロ波によって発熱してしまうため、加熱ロスとなる。
【0021】
したがって、加熱ロスを減らすためにはマイクロ波によって発熱せず、マイクロ波を反射するような金属であることが望ましい。但し、マイクロ波発生手段1から発生させたマイクロ波を加熱室2内に導入する必要があるため、通常はその部分のみを他の材質に変更している。
【0022】
湿度センサ3は、負荷から発生した蒸気などを検出するものである。湿度センサ3は加熱室2内に設置すると耐熱やノイズの発生といった問題が生じるため、排気口8内に設置される。湿度センサ3には相対湿度センサと絶対湿度センサがあるが、どちらであっても構わない。
【0023】
排気口8は、加熱室2内で発生した蒸気などを加熱室2外に放出するためのものであり、加熱室2には排気口8以外から蒸気などが漏れにくい構成となっている。そうすることによって、負荷から発生した蒸気などを湿度センサ3が検出できる。
【0024】
赤外線センサ4は、非接触で温度を検出するものであって、熱型のサーモパイルやボロメータ、あるいは量子型のフォトダイオードやフォトトランジスタなどがあるが、どのようなものであっても良い。
【0025】
特に、サーモパイルでは一つのパッケージ内に複数の素子を持ち、それぞれの素子が異なる位置の温度を検出することができるものも存在する。通常、そのような素子ではそれぞれの素子の温度を順番に取り出して利用される場合が多いがそれに限定するものではない。
【0026】
可動部5は、赤外線センサ4が取り付けられ、可動部5が可動することによって加熱室2内の異なる位置を赤外線センサ4によって測定することができるようにするものである。
【0027】
可動部5はステッピングモータを使用すると測定位置が定まるために適しているが、リニアモータ等であっても良い。
【0028】
また、位置決めのためにロータリーエンコーダーを使用しても良い。なお、可動部5は1次元的に赤外線センサ4を可動させても良いし、2次元的に可動させても良い。
【0029】
制御手段7は、マイクロ波発生手段1、赤外線センサ4、可動部5等が接続される。図示していない操作部によって使用者が加熱パターンや時間などを設定すると、制御手段7は図示していないインバータ回路を動作させてマイクロ波発生手段1に電力を供給し、マイクロ波発生手段1からマイクロ波を発生させる。
【0030】
制御手段7は可動部5を可動させ、赤外線センサ4によって加熱室2内に置かれた負荷
の温度を測定し、その結果に応じてマイクロ波発生手段1の動作状態を変更し、負荷を使用者が望む温度まで加熱した後にマイクロ波発生手段1の動作を停止させる等の制御を行う。制御手段7はマイコンやDSPやカスタムICなどが利用される場合が多いが、それに限定するものではない。
【0031】
負荷量判定手段6は、加熱室2内の負荷の量を判定し、その結果は制御手段7に送信され、制御手段7はその負荷量に応じて制御方法を変更するものである。負荷量判定手段6と制御手段7は同一のものであっても良い。
【0032】
以上のように構成された加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0033】
使用者は図示していないドアを開け、加熱室2内に負荷を載置する。図1では、マイクロ波発生手段1によって発生したマイクロ波は回転するアンテナから加熱室2内に導入される。アンテナが回転するため、加熱室2内のマイクロ波は分布が時々刻々と変わり、加熱室2内のどこに負荷を載置しても加熱される。
【0034】
したがって、このような構成の加熱調理器では使用者は加熱室2内のどこに負荷を載置しても良いが、アンテナは固定して負荷を回転させる場合には、負荷を回転させるための回転台が存在するために、使用者は負荷を回転台上に載置する必要があるが、どちらの構成であっても構わない。
【0035】
使用者は図示していない操作部によって加熱方法を決定する。通常このような加熱調理器の場合、マイクロ波加熱、光ヒーター加熱、オーブン加熱などのいくつかの加熱方法が選択できる。
【0036】
本実施の形態では、マイクロ波で加熱する場合について説明する。また、出力や時間を使用者が設定して加熱する手動モードと、調理内容を選択するだけで自動で加熱を停止する自動モードなどが存在する。それらを使用者が選択し、ドアが閉じられていると加熱を開始させることができる。
【0037】
加熱が開始されると、制御手段7は可動部5によって赤外線センサ4を可動させ、赤外線センサ4は加熱室2内の温度を測定し、制御手段7がその温度情報を受けて制御内容を変更する。
【0038】
制御内容は、例えば飲み物のあたためを自動で行うコースを選択した場合、設定された温度になるまで加熱を継続し、設定された温度になるとマイクロ波発生手段1の動作を停止して加熱を終了する。
【0039】
このような構成の加熱調理器において、飲み物をあたためる場合について説明する。飲み物をあたためる際に使う容器としては、マグカップなどの背の高い容器である場合が多い。図2(A)は本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の飲み物の量が多い場合の赤外線センサの視野を示す図、図2(B)は本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の飲み物の量が少ない場合の赤外線センサの視野を示す図である。
【0040】
このような容器に飲み物を入れた際、飲み物の量が多い場合には図2(A)のように赤外線センサ4の視野に飲み物が入るため、飲み物の温度を測定することができる。一方、図2(B)のように、飲み物の量が少ない場合には飲み物は容器の影に隠れて赤外線センサ4の視野に入らず、赤外線センサ4は容器の温度しか測定することはできない。
【0041】
容器の温度は飲み物の温度よりも低いため、容器の温度が使用者の指定した仕上がり温
度になったときには、飲み物はそれ以上の温度になってしまっている。特に飲み物の量が少ない場合には、飲み物が過加熱となり火傷等の危険性があった。
【0042】
このように、赤外線センサ4で測定した温度は、実際の食品の温度か食品を入れた容器の温度であるかを判別することが困難であるため、本発明では赤外線センサ4を補助的に使用し、湿度センサ3で食品のあたためを精度良く検出できるようにするものである。
【0043】
ここで、図3を用いて、湿度センサ3について説明する。図3は本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の湿度センサの変化を示す図である。マイクロ波発生手段1を駆動して負荷を加熱すると、負荷に含まれる水分が加熱によって蒸気となって放出される。
【0044】
その放出される蒸気の量は、図3に示すように、低い温度では極少量(DT2−DT1)であるが、ある温度(約60℃前後)からその量は増加し、やがて沸騰に至り多量の蒸気を放出する(DT3−DT1)。このとき発生する蒸気の量(DT2−DT1、あるいは、DT3−DT1)は、負荷の量に依存する。
【0045】
そのため、湿度センサ3がDT2−DT1の蒸気量を検出した場合に加熱を停止したとすると、負荷量によって仕上がり温度が異なる。
【0046】
したがって、湿度センサ3を用いて負荷量に依らず同じ仕上がり温度にするためには、制御の判定閾値を負荷量に応じて変更する必要がある。
【0047】
本発明では、負荷量判定手段6によって負荷が少量であると判定した場合は、多量であると判定した場合よりも小さい値とすることによって、負荷量に依らず同じ仕上がり温度にすることができる。
【0048】
ここで、負荷量の判定方法について説明する。図4は本発明の第1の実施の形態における加熱調理器のマイクロ波の出力を示す図である。図4に示すように、同じ負荷で量の異なるものを同じ電力のマイクロ波で加熱した場合、被加熱物の温度がFT1からFT2まで加熱するのにかかる時間は、少量の場合はT1であるのに対して、多量の場合はT2となり、T1<T2である。また、T1とT2の関係は、ほぼその量に比例する。
【0049】
したがって、所定時間経過後の負荷の温度が所定温度以上の場合には少量の負荷であると負荷量判定手段6が検出する。
【0050】
ここで所定の時間は、赤外線センサ4を可動させる場合には可動にかかる時間以下に設定することはできないが、少量負荷であっても過加熱にならない時間である必要がある(例えば、15秒)。
【0051】
また、判定に必要な所定温度は、過加熱になる前の温度で、加熱の目標温度以下であることが望ましいが、負荷によって最適な温度が異なるため、例えば50℃などに設定する。
【0052】
さらに図5(A)は本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の負荷を示す図、図5(B)は本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の加熱開始から所定時間経過後の赤外線センサ4が検出した温度分布を示す図である。
【0053】
負荷がある位置は、温度が上昇する(b〜c)に対し、負荷がない位置(a〜b、c〜d)は温度が上昇しないため、負荷の大きさを検出することができる。これらの結果から、負荷量判定手段6は負荷の量を判定することができる。
【0054】
負荷量の判定方法としては、負荷を載置する載置部の下部に重量センサを設置し、載置部と負荷の重量を検出する方法であっても良い。このようにして測定された重量データには、載置部や負荷である食品を載せる容器などの重さ含まれるため、正確な負荷の重量とは言えない。
【0055】
しかし、載置部は一定の重さであるため差し引くことができ、容器の重さについては登録しておくことによって正確に本来加熱をしたい食品だけの重量を算出することが可能である。
【0056】
また、正確さでは劣るが、重量センサの測定した重量のうちの何割は容器の重量であると仮定して食品のみの重量を算出しても良い。その場合は、容器の重量を登録しておくといった手間を省くことができる。このようにして得られる食品の重量から、負荷量判定手段6は負荷の量を算出することができる。
【0057】
以上のようにして判定された負荷量が少量の場合、湿度センサの判定閾値を多量の場合よりも小さくすることによって、少量の負荷であっても過加熱となることを防止することのできる加熱調理器を提供することができる。
【0058】
(実施の形態2)
次に本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0059】
実施の形態1で説明したように、赤外線センサ4では負荷である食品の量に対して容器が大きい場合などは容器の影になって食品の温度を直接計測できない場合がある。その場合、従来は容器の温度から食品の温度を推定するしかなかった。
【0060】
一方、湿度センサ3は食品から出た蒸気を検出するため、容器の大きさに依存することなく検出することができる。よって、負荷から出る蒸気を直接検知する湿度センサ3を主とし、赤外線センサ4を副として使用することが考えられる。
【0061】
赤外線センサ4の使用例としては、赤外線センサ4の検出した温度が所定の温度(例えば、90℃)になった場合、湿度センサ3が判定閾値に到達していなかったとしても加熱を停止、あるいはマイクロ波発生手段1の出力を低下させるという安全機能を実現する等である。
【0062】
特に、赤外線センサ4の測定した温度が容器の温度であったとした場合、実際の負荷である食品はさらに高い温度になっていることが予想されるため、例え赤外線センサ4が容器の温度しか測定できていないとしても、湿度センサ3の故障等を考えるとバックアップの安全機能としてその検出した温度には意味があるといえる。
【0063】
したがって、赤外線センサ4の精度アップや耐久性の向上は、加熱調理器としての性能を高めることにつながる。
【0064】
図6(A)は本発明の第2の実施の形態における加熱調理器の赤外線センサの可動範囲を示す図(B)は本発明の第2の実施の形態における加熱調理器の負荷の領域を示す図(C)本発明の第2の実施の形態における加熱調理器の赤外線センサの負荷量に応じた可動範囲を示す図である。
【0065】
負荷は加熱室2内のどこに載置されているかがわからないため、可動部5は図6(A)
のように加熱室2内の全ての場所を赤外線センサ4が測定できるようにa〜dの範囲を可動させる。
【0066】
しかしながら、このように赤外線センサ4を可動させて検出位置を変更するため、同じ検出位置の温度は離散的にしか測定することができない。例えば、図6(A)のaの場所で赤外線センサ4が温度を測定すると、可動部5によって赤外線センサ4は測定位置を順次変更し、b、c、dの位置についても測定される。
【0067】
その後、可動部5は逆方向に赤外線センサ4を可動させ、d、c、bと順に温度が測定され、その後aの位置についても温度が測定される。つまり、aやdのような庫内の端については、a〜dに赤外線センサ4を可動させるのにかかる時間をtとすると、ほぼ2tの時間間隔でしか温度を測定することができない。
【0068】
一方、庫内の中央ではほぼtの時間間隔で測定することができる。いずれにしても、時間t以上の間隔でしか同一位置の温度情報を取得することができない。そのため、他の位置を測定している時間t〜2tの間に、負荷の温度が目標温度以上まで加熱されてしまう。特に、少量の負荷の場合には昇温が早いため、そのオーバーシュートも大きくなる。
【0069】
本実施の形態では、負荷量判定手段6によって負荷を検出し、赤外線センサ4の測定する間隔を短くすることによって過加熱を防止する。具体的には、負荷が図6(B)のようなものであった場合、赤外線センサ4は図6(C)のようにb〜cの範囲だけを可動させればよい。
【0070】
換言すれば、a〜b、c〜dの範囲の温度検出、及び可動時間は省くことができる。よって、測定間隔を短縮し、負荷が判定温度に到達したかどうかを早く検出することがでるため、オーバーシュートを小さくすることができる。よって、目標温度に近い温度で加熱を停止でき、使用者に便益をもたらすものである。
【0071】
また、このように赤外線センサ4を可動部5によって可動させる場合、可動部5の耐久性が問題になる場合がある。可動部5としてはステッピングモータが使用される場合が多いが、その場合の寿命は軸受けの寿命にのみ依存する。したがって、可動時間を減らすことが可動部5の耐久性を上げることにつながる。
【0072】
本発明では食品のあたための仕上がりを検出するセンサとしては湿度センサ3が主であり、赤外線センサ4は負荷量の検出や非常時の停止といった副の内容となる。よって、赤外線センサ4の測定間隔を長くして耐久性を上げても、通常の仕上がりにはあまり影響しない。
【0073】
図7(A)は本発明の第2の実施の形態における加熱調理器のマイクロ波出力を示すタイミングチャート、図7(B)は本発明の第2の実施の形態における加熱調理器の可動部の動作を示すタイミングチャートである。使用者によって加熱開始の指示が入力される(図7のT3)と、制御手段7はインバータ回路から電力を供給し、マイクロ波発生手段1を駆動する。
【0074】
マイクロ波発生手段1から実際にマイクロ波が出力される時間T4になると、可動部5は赤外線センサ4を可動させて加熱室2内の温度を測定し、時間T5になると、可動部5は停止する。
【0075】
ここで、可動部5が動作する時間T4〜T5は、赤外線センサ4が加熱室2内を一巡する時間(図6のa〜d、あるいはd〜a)であっても良いし、1往復する時間(図6の例
えばa〜d〜a)であっても良い。
【0076】
また、負荷のある部分のみの可動(図6のb〜c)であっても良い。また、赤外線センサ4を最初に可動させるタイミングは、マイクロ波が実際に発生するよりも前(図7のT3〜T4)であっても良い。
【0077】
さらに、マイクロ波が実際に発生するよりも前(図7のT3〜T4)は加熱室2内を一巡するように可動(図6のa〜d、あるいはd〜a)し、負荷量が検出されると負荷のある部分のみの可動(図6のb〜c)としても良い。
【0078】
いずれにしても、時間T5〜T6、T7〜T8の間は赤外線センサ4を可動させるのを停止させることによって、可動部5の耐久性を上げることができ、故障する可能性が低く、また長期間使用することのできる加熱調理器とすることができるため、使用者に便益をもたらすものである。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上のように、本発明にかかる加熱調理器は、負荷量が変わっても同じ仕上がりを実現し、少量の負荷を加熱したような場合であっても過加熱になることなく加熱を停止させることが可能となるので、一般家庭などで使用される加熱調理器に有効である。
【符号の説明】
【0080】
1 マイクロ波発生手段
2 加熱室
3 湿度センサ
4 赤外線センサ
5 可動部
6 負荷量判定手段
7 制御手段
8 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波発生手段と、マイクロ波で加熱する負荷を収納する加熱室と、前記加熱室内の蒸気量を測定する湿度センサと、非接触にて負荷の温度を検出する赤外線センサと、前記赤外線センサを可動させて前記加熱室内の測定範囲を変更することができる可動部と、前記赤外線センサの温度と測定位置の情報から前記加熱室内の負荷の量を判定する負荷量判定手段と、前記赤外線センサの検出した温度情報に基づき前記マイクロ波発生手段を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は前記湿度センサの検出値から沸騰などを検出する閾値を前記負荷量判定手段の判定した負荷量にあわせて変更する加熱調理器。
【請求項2】
可動部は負荷量判定手段が負荷の存在を検出した範囲のみを可動させる請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
可動部は、制御手段がマイクロ波発生手段を駆動している間に間欠動作する請求項1に記載の加熱調理器。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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