説明

加硫ゴム積層体

【課題】未加硫エピクロルヒドリン系ゴム組成物層と未加硫フッ素ゴム組成物層を蒸気加硫・接着させて、十分な接着力を有する加硫ゴム積層体を提供すること。
【解決手段】(A)未加硫エピクロルヒドリン系ゴム組成物層と、(B)未加硫フッ素ゴム組成物層とが蒸気加熱・接着されてなる積層体において、前記(A)未加硫エピクロルヒドリン系ゴム組成物が以下(a)〜(e)を含有する積層体。
(a)エピクロルヒドリン系ゴム
(b)チオウレア誘導体
(c)1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7塩
(d)キノキサリン系加硫剤
(e)受酸剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素ゴムとエピクロルヒドリン系ゴムとが強固に接着されてなる加硫ゴム積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車からの排出ガス規制が非常に厳しくなっており、その中の一つであるガソリン蒸散規制は、米国を中心に益々強化されている。このような厳しい要求に対して、自動車用燃料ホースにおいても、耐熱老化性、耐候性、耐酸敗ガソリン性、耐アルコール含有ガソリン性、ガソリン不透過性等を併せ持つ燃料ホースの開発が進められている。その燃料ホース材料の一つとして、フッ素ゴムが挙げられる。しかし、高価であり、耐寒性にも問題があるために、内層にフッ素ゴムの薄層を用い、外層にエピクロルヒドリン系ゴムを用いる積層体が良く使用されている。
【0003】
しかし、上記のような異種ゴム組成物による積層ホースの場合、そのホース間の接着性がもっとも重要になってくる。フッ素ゴム層とエピクロルヒドリン系ゴム層の場合には、接着性が乏しいことが一般に知られており、そのためある種の添加剤をエピクロルヒドリン系ゴムに配合する等の手段が通常とられている(特許文献1〜4参照)。しかしながら実際のホース製造では、蒸気加硫されている場合が多く、蒸気加硫では期待した接着性が発揮できず、その改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−11180号公報
【特許文献2】特開平9−85898号公報
【特許文献3】特開平2−160867号公報
【特許文献4】特開2006−306053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、未加硫エピクロルヒドリン系ゴム組成物層と未加硫フッ素ゴム組成物層を加熱加硫・接着、特に蒸気加硫・接着させて、十分な接着力を有する加硫ゴム積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(A)未加硫エピクロルヒドリン系ゴム組成物層と、(B)未加硫フッ素ゴム組成物層が加熱加硫・接着されてなる積層体において、前記未加硫エピクロルヒドリン系ゴム組成物層が以下(a)〜(e)を含有する積層体であることを特徴とする。
(a)エピクロルヒドリン系ゴム
(b)チオウレア誘導体
(c)1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7塩
(d)キノキサリン系加硫剤
(e)受酸剤
【0007】
本発明は、(A)未加硫エピクロルヒドリン系ゴム組成物層と、(B)未加硫フッ素ゴム組成物層が蒸気加硫・接着されてなる積層体であることが好ましい。
【0008】
本発明では、前記(b)チオウレア誘導体が、前記(a)エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して、0.1〜5重量部であることが好ましく、前記(b)チオウレア誘導体は1,3−ビス(ジメチルアミノエチル)チオウレア,1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)チオウレア,1,3−ビス(ジプロピルアミノプロピル)チオウレア,1,3−ビス(ジメチルアミノブチル)チオウレア,1,3−ビス(ジシクロヘキシルアミノエチル)チオウレアから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0009】
本発明では、前記(c)1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7塩(以下DBU塩と略す)が、前記(a)エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して、0.2〜3重量部であることが好ましく、前記(c)DBU塩は、DBU−フェノール樹脂塩が好ましい。
【0010】
本発明では、前記(d)キノキサリン系加硫剤が、前記(a)エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して、0.5〜5重量部であることが好ましく、前記(d)キノキサリン系加硫剤は、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネートが好ましい。
【0011】
本発明では、前記(e)受酸剤が、金属化合物および/または無機マイクロポーラス・クリスタルが好ましく、さらに金属酸化物は酸化マグネシウムであり、無機マイクロポーラス・クリスタルの1種である合成ハイドロタルサイトがより好ましい。
【0012】
本発明では、前記(B)未加硫フッ素ゴム組成物層が、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロペン二元共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロペン三元共重合体などのフッ素ゴムが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により得られた加硫ゴム積層体は、特に蒸気加硫時の両加硫ゴム間における接着性が非常に優れており、接着面は強固である。従って、一方の面が耐酸敗ガソリン性、耐ガソリン透過性、耐アルコール含有ガソリン性等の要求される環境に晒され、他方の面が耐熱老化性、耐候性、耐ガソリン性等の要求される環境に晒されるような用途、例えば燃料ホース、フィラホース等の用途に極めて有効である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明における(A)未加硫エピクロルヒドリン系ゴム組成物は、少なくとも(a)エピクロルヒドリン系ゴム、(b)チオウレア誘導体、(c)DBU塩、(d)キノキサリン系加硫剤、(e)受酸剤を含有する。
【0015】
前記(A)未加硫エピクロルヒドリン系ゴム組成物における前記(a)エピクロルヒドリン系ゴムは、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体等のエピクロルヒドリン−アルキレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体のエピクロルヒドリン−アルキレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル多元共重合体等を挙げることができる。好ましくはエピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体であり、さらに好ましくはエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体である。
【0016】
エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、又はエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体の場合、それら共重合割合は、例えば、エピクロルヒドリンが5mol〜95mol%が好ましく、より好ましくは10mol%〜75mol%、さらに好ましくは10〜65mol%である。また、エチレンオキサイドは、好ましくは5mol%〜95mol%、より好ましくは25mol%〜90mol%、さらに好ましくは35mol%〜90mol%である。アリルグリシジルエーテルは、好ましくは0mol%〜10mol%、より好ましくは1mol%〜8mol%、さらに好ましくは1mol%〜7mol%である。これら単独重合体または共重合体の分子量は特に制限されないが、通常ムーニー粘度表示でML1+4(100℃)=30〜150程度である。
【0017】
本発明の前記(A)未加硫エピクロルヒドリン系ゴム組成物における前記(b)チオウレア誘導体としては、具体的には、1,3−ビス(ジメチルアミノエチル)チオウレア,1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)チオウレア,1,3−ビス(ジプロピルアミノプロピル)チオウレア,1,3−ビス(ジメチルアミノブチル)チオウレア,1,3−ビス(ジシクロヘキシルアミノエチル)チオウレア等が挙げられ、好ましくは1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)チオウレアが挙げられる。
【0018】
前記(b)チオウレア誘導体の配合量は、前記(a)エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0.1〜10重量部,好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部である。これらの範囲内であると、フッ素ゴムとの接着力が十分に得られ、加硫物の機械的物性が損なわれることもないため好ましい。
【0019】
本発明の前記(A)未加硫エピクロルヒドリン系ゴム組成物における前記(c)DBU塩としては、DBU−炭酸塩、DBU−ステアリン酸塩、DBU−2−エチルヘキシル酸塩、DBU−安息香酸塩、DBU−サリチル酸塩、DBU−3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩、DBU−フェノール樹脂塩、DBU−2−メルカプトベンゾチアゾール塩、DBU−2−メルカプトベンズイミダゾール塩等が挙げられ、好ましくは、DBU−フェノール樹脂塩が挙げられる。
【0020】
前記(c)DBU塩の配合量は、前記(a)エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0.1〜5重量部,好ましくは0.2〜3重量部である。これらの範囲であると、フッ素ゴムとの接着力が十分に得られ、また適当な加硫速度が得られるために、加工上の困難を生じることもなく好ましい。
【0021】
本発明の前記(A)未加硫エピクロルヒドリン系ゴム組成物における前記(d)キノキサリン系加硫剤としては、2,3−ジメルカプトキノキサリン、キノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、5,8−ジメチルキノキサリン−2,3−ジチカーボネート等が挙げられ、好ましくは6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネートである。
【0022】
前記(d)キノキサリン系加硫剤の配合量は、前記(a)エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0.1〜10重量部,好ましくは0.5〜5重量部である。さらに好ましくは1〜3重量部である。これらの範囲であれば、十分に架橋し、且つ加硫物が剛直になりすぎることなく、エピクロルヒドリン系ゴム加硫物として通常期待される物性が得られるため好ましい。
【0023】
本発明の前記(A)未加硫エピクロルヒドリン系ゴム組成物における前記(e)受酸剤としては、金属化合物および/または無機マイクロポーラス・クリスタルが挙げられる。このような金属化合物としては、周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期律表第IVA族金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸塩、三塩基性硫酸塩等が挙げられる。
【0024】
前記(e)受酸剤となる前記金属化合物の具体例としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸ナトリウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、亜鉛華、酸化錫、リサージ、鉛丹、鉛白、二塩基性フタル酸鉛、二塩基性炭酸鉛、塩基性ケイ酸鉛、ステアリン酸錫、塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜リン酸錫、塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛等を挙げることができる。特に好ましい受酸剤としては酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、消石灰、生石灰、炭酸ナトリウムが挙げられる。
【0025】
前記無機マイクロポーラス・クリスタルとは、結晶性の多孔体を言い、無定型の多孔体、例えばシリカゲル、アルミナ等とは明瞭に区別できるものである。このような無機マイクロポーラス・クリスタルの例としては、ゼオライト類、アルミノホスフェート型モレキュラーシーブ、層状ケイ酸塩、合成ハイドロタルサイト、チタン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。特に好ましい受酸剤としては、合成ハイドロタルサイトが挙げられる。
【0026】
前記ゼオライト類は、天然ゼオライトの外、A型、X型、Y型の合成ゼオライト、ソーダライト類、天然ないしは合成モルデナイト、ZSM−5などの各種ゼオライトおよびこれらの金属置換体であり、これらは単独で用いても2種以上の組み合わせで用いても良い。また金属置換体の金属はナトリウムであることが多い。ゼオライト類としては酸受容能が大きいものが好ましく、A型ゼオライトが好ましい。
【0027】
前記合成ハイドロタルサイトは下記一般式(1)
MgZnAl(OH)(2(X+Y)+3Z−2)CO・wHO(1)
[式中、xとy はそれぞれx+y=1〜10の関係を有する0〜10の実数、zは1〜5の実数、wは0〜10の実数をそれぞれ示す]で表わされる。一般式(1)で表されるハイドロタルサイト類の例として、
Mg4.5Al(OH)13CO・3.5H
Mg4.5Al(OH)13CO
MgAl(OH)12CO・3.5H
MgAl(OH)16CO・4H
MgAl(OH)14CO・4H
MgAl(OH)10CO・1.7H
MgZnAl(OH)12CO・3.5H
MgZnAl(OH)12CO
等を挙げることができる。
【0028】
本発明における前記(e)受酸剤として、保存安定性の観点から、酸化マグネシウムおよび/または合成ハイドロタルサイトがより好ましい。
【0029】
前記(e)受酸剤の配合量は、前記(a)エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して好ましくは0.2〜50重量部、更に好ましくは0.5〜50重量部、特に1〜20重量部である。この範囲内であると、十分に架橋し、且つ加硫物が剛直になりすぎることなく、エピクロルヒドリン系ゴム加硫物として通常期待される物性が得られるため好ましい。
【0030】
本発明においては、通常これらの加硫剤と共に使用される公知の遅延剤を用いることができる。
【0031】
本発明に用いられる前記遅延剤としては、N−シクロヘキシルチオフタルイミド、無水フタル酸、有機亜鉛化合物、酸性シリカ等を挙げることができ、その配合量は、(a)エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0032】
また、本発明に用いられる前記(A)未加硫エピクロルヒドリン系ゴム組成物には、上記の受酸剤の他、当該技術分野において、通常使用される各種配合剤、例えば老化防止剤、充填剤、補強剤、可塑剤、加工助剤、顔料、難燃剤,滑剤等を任意に配合することができる。
【0033】
前記(B)未加硫フッ素ゴム組成物におけるフッ素ゴムとしては、高度にフッ素化された弾性共重合体がよく、例えばビニリデンフルオライドと他の共重合可能な含フッ素オレフィンとの共重合体を挙げることができる。含フッ素オレフィンとしては、ヘキサフルオロプロペン、ペンタフルオロプロペン、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、テトラフルオロエチレン、ビニルフルオライド、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が共重合成分として用いられる。
【0034】
好ましいフッ素ゴムの例としては、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロペン二元共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロペン三元共重合体のフッ素ゴムが挙げられる。
【0035】
前記(B)未加硫フッ素ゴム組成物には、目的に応じて公知の配合剤、例えば、加硫剤、加硫促進剤、安定剤、着色剤、可塑剤、補強剤等が添加される。
【0036】
本発明において積層体を製造する方法としては、同時押出成形、逐次押出成形により両ゴム組成物を積層せしめ、次いで蒸気加熱加硫もしくは蒸気加熱加硫成型する方法が挙げられる。また一方のゴム組成物を型くずれしない程度に弱く加熱加硫した後に両者を積層して十分に蒸気加熱加硫成型せしめる方法も採用できる。上記押出成形により積層された積層体を蒸気加熱加硫する以外の方法としては金型加熱、エアーバス、赤外線、マイクロウエーブ、被鉛加硫等の公知の方法が任意に採用できる。加硫に際しては、加熱温度は通常100〜200℃であり、加熱時間は温度によって異なるが0.5〜300分間の範囲が選ばれる。
【0037】
本発明の積層体を燃料油系ホースに適用する場合の態様としては、ホースの内層にフッ素ゴム、その外層にエピクロルヒドリン系ゴムを配した2層ホース、その外側に編組補強層を配した3層ホース、あるいは更にその外側にゴム層を配した4層構造のホース等を代表的に挙げることができる。上記3層ホース又は4層ホースに用いられる編組材料としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維、綿等の編組したものが通常用いられる。また上記4層ホースに用いられる最外層の材料としては、エピクロルヒドリン系ゴムのほか、エチレン−アクリレートゴム、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン等の耐熱老化性、耐候性、耐油性等のある合成ゴムが通常用いられる。
【0038】
以下において代表的な例を実施例として挙げるが、本発明はこれに限定されるものでない。
【0039】
実施例1〜6,比較例1、参考例1
(プレス加硫積層体)
表1に示されるエピクロルヒドリン系ゴム組成物をニーダーおよびオープンロールで混練し、厚さ2〜2.5mmのシート(i)を得た。一方、表2に示されるフッ素ゴム組成物を上記同様に混練して厚さ1〜1.5mmのシート(ii)を作製した。表3に示すように、上記シート(i)及びシート(ii)を貼り合わせ、160℃、20〜25kg/cm2
で30分間加圧し得られた、厚さ3.0〜4.0mmのシートを加硫ゴム積層体とする。
【0040】
(蒸気加硫積層体)
表4に示すように、上記シート(i)及びシート(ii)を貼り合わせ、80℃、無圧で4分間保持し、その後82kg/cm2で4分間加圧したものを、室温まで冷却して得られた未加硫積層体を160℃、30分間、蒸気加硫したものを蒸気加硫積層体とする。
【0041】
(接着性評価)
上記プレス加硫および蒸気加硫積層体を1.0×10cmの短冊状に切断して接着試験用試験片を作製し、25℃において50mm/minの引張速度でT剥離試験を行い、剥離強度(kN/m)を測定した。また、剥離状態を目視にて観察した。評価基準を以下に示す。またプレス加硫積層体、蒸気加硫積層体の試験結果を、それぞれ表3、表4に示す。
○:強固に接着しており、層間はゴム破壊を起こしている。
×:全く接着しておらず、界面での剥離が生じている。
【0042】
以下に実施例および比較例で用いた配合剤を示す。
*1 ダイソー株式会社製「エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル共重合(モル比48:48:4)」
*2 協和化学工業株式会社製「DHT-4A」
*3 ダイソー株式会社製「P−152」
*4 ダイソー株式会社製「ダイソネットXL−21S」
*5 デュポン社製 ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロペン−テトラフルオロエチレン三共重合体「バイトンB−50」
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
表3に示されるように、プレス加硫による接着においては、未加硫エピクロルヒドリン系ゴム組成物において(b)チオウレア誘導体を含有しない参考例1であっても両加硫ゴム間の接着面は強固であった。しかし、蒸気加硫による接着では、未加硫エピクロルヒドリン系ゴム組成物において(b)チオウレア誘導体を含有しない比較例1は接着しなかった。
一方、本発明の加硫ゴム積層体である実施例1〜6は、プレス加硫による接着だけではなく、蒸気加硫による接着においても、両加硫ゴム間の接着性が非常に優れており、接着面での剥離は生じておらず、接着面は強固である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の加硫ゴム積層体は以上のように構成されており、その積層体は両加硫ゴム間の接着性が非常に優れており、接着面は強固である。従って、一方の面が耐酸敗ガソリン性、耐ガソリン透過性、耐アルコール含有ガソリン性等の要求される環境に晒され、他方の面が耐老化性、耐候性、耐ガソリン性等の要求される環境に晒されるような用途、例えば燃料ホース、フィラホース等の用途に極めて有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)未加硫エピクロルヒドリン系ゴム組成物層と、(B)未加硫フッ素ゴム組成物層が加熱加硫・接着されてなる積層体において、前記(A)未加硫エピクロルヒドリン系ゴム組成物層が以下(a)〜(e)を含有する積層体。
(a)エピクロルヒドリン系ゴム
(b)チオウレア誘導体
(c) 1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7塩
(d)キノキサリン系加硫剤
(e)受酸剤
【請求項2】
(A)未加硫エピクロルヒドリン系ゴム組成物層と、(B)未加硫フッ素ゴム組成物層が蒸気加硫・接着されてなる積層体である請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
(b)チオウレア誘導体が、1,3−ビス(ジメチルアミノエチル)チオウレア,1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)チオウレア,1,3−ビス(ジプロピルアミノプロピル)チオウレア,1,3−ビス(ジメチルアミノブチル)チオウレア,1,3−ビス(ジシクロヘキシルアミノエチル)チオウレアから選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
(b)チオウレア誘導体が、(a)エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0.1〜5重量部である請求項1〜3に記載の積層体。
【請求項5】
(c)1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7塩が、(a)エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0.2〜3重量部である請求項1〜4に記載の積層体。
【請求項6】
(c) 1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7塩が、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7−フェノール樹脂塩である請求項1〜5に記載の積層体。
【請求項7】
(d)キノキサリン系加硫剤が、(a)エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0.5〜5重量部である請求項1〜6に記載の積層体。
【請求項8】
(d)キノキサリン系加硫剤が、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネートである請求項1〜7に記載の積層体。
【請求項9】
(e)受酸剤が、金属化合物および/または無機マイクロポーラス・クリスタルであることを特徴とする請求項1〜8に記載の積層体。
【請求項10】
(e)受酸剤が、酸化マグネシウムおよび/または合成ハイドロタルサイトである請求項1〜8に記載の積層体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の積層体を用いた積層ホース。


【公開番号】特開2011−5719(P2011−5719A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150723(P2009−150723)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】