説明

加硫ゴム組成物の製造方法

【課題】タイヤの分野において、未加硫ゴムの加工安定性の低下を抑制しつつ、加硫ゴムの粘弾性特性が改善された加硫ゴム組成物を製造する方法が求められていた。
【解決手段】S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸とゴム成分と充填剤と硫黄成分と加硫促進剤とを含有する加硫ゴム組成物の製造方法であり、下記の工程(A)〜(C)を含むことを特徴とする方法。(A):メディアン径(50%D)が10μm〜100μmであるS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸とゴム成分と充填剤とを混練する工程(B):工程(A)で得られた混練物と硫黄成分と加硫促進剤とを混練する工程(C):工程(B)で得られた混練物を熱処理する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫ゴム組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の要請から、自動車の燃費向上(すなわち、低燃費化)が求められている。そして、自動車用タイヤ(以下、タイヤと略称する)の分野において、該タイヤを構成する加硫ゴム組成物の粘弾性特性を改善させることにより、自動車の燃費が向上することが知られている(非特許文献1参照)。また、このような加硫ゴム組成物から構成されたタイヤを製造する際には、タイヤの成形に用いる未加硫ゴム組成物の加工安定性の低下をできるだけ抑制することも求められている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】日本ゴム協会編「ゴム技術入門」丸善株式会社、124頁
【非特許文献2】日本ゴム協会編「ゴム技術入門」丸善株式会社、69頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤの分野において、未加硫ゴム組成物の加工安定性の低下を抑制しつつ、粘弾性特性が改善された加硫ゴム組成物を製造する方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、このような状況下、鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸とゴム成分と充填剤と硫黄成分と加硫促進剤とを含有する加硫ゴム組成物の製造方法であり、下記の工程(A)〜(C)を含むことを特徴とする方法を提供するものである。
(A):メディアン径(50%D)が10μm〜100μmであるS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸からなる粒子とゴム成分と充填剤とを混練する工程
(B):工程(A)で得られた混練物と硫黄成分と加硫促進剤とを混練する工程
(C):工程(B)で得られた混練物を熱処理する工程
また、本発明は、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸からなる粒子のメディアン径(50%D)が10μm〜70μmであることを特徴とする上記記載の方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法によれば、未加硫ゴムの加工安定性の低下を抑制しつつ、加硫ゴムの粘弾性特性が改善された加硫ゴム組成物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】
本発明において「加工安定性の低下を抑制しつつ」とは、例えば、後述のような未加硫ゴムのスコーチタイム(t5)の改変を抑制すること等を挙げることができる。また「粘弾性特性を改善させる」とは、例えば、後述のような加硫ゴムの損失係数(tanδ)を改変させること等を挙げることができる。
【0009】
まず、本発明の工程(A)、すなわち、メディアン径(50%D)が10μm〜100μmであるS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸からなる粒子とゴム成分と充填剤とを混練する工程について説明する。
【0010】
本発明に用いるS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸は、下記式(1)
N−(CH−SSOH (1)
で示される化合物である。
【0011】
S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸は、例えば、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸の金属塩をプロトン酸で中和することにより製造することができる。S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸の金属塩は、例えば、3−ハロプロピルアミンとチオ硫酸ナトリウムとを反応させる方法;フタルイミドカリウム塩と1,3−ジハロプロパンとを反応させ、得られた化合物とチオ硫酸ナトリウムとを反応させ、次いで、得られた化合物を加水分解する方法;等の任意の公知の方法により製造することができる。
【0012】
上記のようにして得られたS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸は、例えば、濃縮、晶析等の操作により固体として単離することができる。単離されたS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸は、0.1%〜5%程度の水分を含むことがある。
【0013】
本発明に用いるS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸からなる粒子のメディアン径(50%D)は、通常10〜100μm、好ましくは10〜95μm、より好ましくは10〜70μm、さらに好ましくは20〜60μm、特に好ましくは30〜50μmの範囲である。かかるメディアン径は、レーザー回析法にて測定することができる。メディアン径が10μm以上であれば、未加硫ゴムの加工安定性の低下を抑制する傾向にあり、100μm以下であれば、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸の分散性がよく、加硫ゴムの粘弾性特性を改善させる傾向にあり、それぞれ好ましい。すなわち、メディアン径が上記の範囲であれば、未加硫ゴムの加工安定性と加硫ゴムの粘弾性特性とのバランスに優れる。
【0014】
単離されたS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のメディアン径が上記の範囲より小さい場合、例えば再結晶等により固体のメディアン径を大きくして単離すればよい。また、単離されたS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のメディアン径が上記の範囲より大きい場合、上記の範囲に入るように適宜粉砕や分級等すればよい。
【0015】
S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸の使用量は、後述するゴム成分100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲が好ましい。より好ましくは0.4〜3重量部の範囲である。
【0016】
ゴム成分としては、天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、脱蛋白天然ゴムおよびその他の変性天然ゴムのほか、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム(NBR)、イソプレン・イソブチレン共重合ゴム(IIR)、エチレン・プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、ハロゲン化ブチルゴム(HR)等の各種の合成ゴムが例示されるが、天然ゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム等の高不飽和性ゴムが好ましく用いられる。特に好ましくは天然ゴムである。また、天然ゴムとスチレン・ブタジエン共重合ゴムの併用、天然ゴムとポリブタジエンゴムの併用等、数種のゴム成分を組み合わせることも有効である。
【0017】
天然ゴムの例としては、RSS#1、RSS#3、TSR20、SIR20等のグレードの天然ゴムを挙げることができる。エポキシ化天然ゴムとしては、エポキシ化度10〜60モル%のものが好ましく、例えばクンプーラン ガスリー社製ENR25やENR50が例示できる。脱蛋白天然ゴムとしては、総窒素含有率が0.3重量%以下である脱蛋白天然ゴムが好ましい。変性天然ゴムとしては天然ゴムにあらかじめ4−ビニルピリジン、N,N−ジアルキルアミノエチルアクリレート(例えばN,N−ジエチルアミノエチルアクリレート)、2−ヒドロキシアクリレート等を反応させた極性基を含有する変性天然ゴムが好ましく用いられる。
【0018】
SBRの例としては、日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<第四版>」の210〜211頁に記載されている乳化重合SBRおよび溶液重合SBRを挙げることができる。とりわけトレッド用ゴム成分としては溶液重合SBRが好ましく用いられ、更には日本ゼオン社製「ニッポール(登録商標)NS116」等の4,4’−ビス−(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンを用いて分子末端を変性した溶液重合SBR、JSR社製「SL574」等のハロゲン化スズ化合物を用いて分子末端を変性した溶液重合SBR、旭化成社製「E10」、「E15」等シラン変性溶液重合SBRの市販品や、ラクタム化合物、アミド化合物、尿素系化合物、N,N−ジアルキルアクリルアミド化合物、イソシアネート化合物、イミド化合物、アルコキシ基を有するシラン化合物(トリアルコキシシラン化合物等)、アミノシラン化合物のいずれかを単独で用いて、または、スズ化合物とアルコキシ基を有するシラン化合物や、アルキルアクリルアミド化合物とアルコキシ基を有するシラン化合物等、前記の異なった複数の化合物を2種以上用いて、それぞれ分子末端を変性して得られる分子末端に窒素、スズ、ケイ素のいずれか、またはそれら複数の元素を有する溶液重合SBRが、特に好ましく用いられる。また、乳化重合SBRおよび溶液重合SBRに重合後、プロセスオイルやアロマオイル等のオイルを添加した油展SBRは、トレッド用ゴム組成物等として好ましく用いることができる。
【0019】
BRの例としては、シス1,4結合が90%以上の高シスBRやシス結合が35%前後の低シスBR等の溶液重合BRが例示され、高ビニル含量の低シスBRは好ましく用いられる。更には日本ゼオン製「Nipol(登録商標)BR 1250H」等スズ変性BRや、4,4‘−ビス−(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、ハロゲン化スズ化合物、ラクタム化合物、アミド化合物、尿素系化合物、N,N−ジアルキルアクリルアミド化合物、イソシアネート化合物、イミド化合物、アルコキシ基を有するシラン化合物(トリアルコキシシラン化合物等)、アミノシラン化合物のいずれかを単独で用いて、または、スズ化合物とアルコキシ基を有するシラン化合物や、アルキルアクリルアミド化合物とアルコキシ基を有するシラン化合物等、前記の異なった複数の化合物を2種以上用いて、それぞれ分子末端を変性して得られる分子末端に窒素、スズ、ケイ素のいずれか、またはそれら複数の元素を有する溶液重合BRが、特に好ましく用いられる。これらBRは、トレッド用ゴム組成物やサイドウォール用ゴム組成物として好ましく用いることができ、通常はSBRおよび/または天然ゴムとのブレンドで使用される。ブレンド比率は、トレッド用ゴム組成物においては、総ゴム重量に対して、SBRおよび/または天然ゴムが60〜100重量%、BRは40〜0重量%が好ましく、サイドウォール用ゴム組成物においては、総ゴム重量に対して、SBRおよび/または天然ゴムが10〜70重量%、BRは90〜30重量%が好ましく、更には総ゴム重量に対し、天然ゴム40〜60重量%、BR60〜40重量%のブレンドが特に好ましい。この場合、変性SBRと非変性SBRとのブレンドや、変性BRと非変性BRとのブレンドも好ましい。
【0020】
タイヤを構成する加硫ゴム組成物には、通常、充填剤が含有される。充填剤としては、ゴム分野で通常使用されているカーボンブラック、シリカ、タルク、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化チタン等が例示されるが、カーボンブラック及びシリカが好ましく用いられ、更にはカーボンブラックが特に好ましく使用される。カーボンブラックとしては、例えば、日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<第四版>」の494頁に記載されるものが挙げられ、HAF(High Abrasion Furnace)、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate SAF)、FEF(Fast Extrusion Furnace)、MAF、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi-Reinforcing Furnace)等のカーボンブラックが好ましい。タイヤトレッド用ゴム組成物にはCTAB(Cetyl Tri-methyl Ammonium Bromide)表面積40〜250m2/g、窒素吸着比表面積20〜200m2/g、粒子径10〜50nmのカーボンブラックが好ましく用いられ、CTAB表面積70〜180m2/gであるカーボンブラックが更に好ましく、その例としてはASTMの規格において、N110、N220、N234、N299、N326、N330、N330T、N339、N343、N351等である。またカーボンブラックの表面にシリカを0.1〜50重量%付着させた表面処理カーボンブラックも好ましい。更には、カーボンブラックとシリカの併用等、数種の充填剤を組み合わせることも有効であり、タイヤトレッド用ゴム組成物においてはカーボンブラック単独あるはカーボンブラックとシリカの両方を用いることが好ましい。カーカス、サイドウォール用ゴム組成物においてはCTAB表面積20〜60m2/g、粒子径40〜100nmのカーボンブラックが好ましく用いられ、その例としてはASTMの規格において、N330、N339、N343、N351,N550、N568、N582、N630、N642、N660、N662、N754、N762等である。かかる充填剤の使用量は特に限定されるものではないが、ゴム成分100重量部あたり5〜100重量部の範囲が好ましい。特に好ましくはカーボンブラックのみを充填剤として使用する場合にはゴム成分100重量部あたり30〜80重量部であり、トレッド部材用途においてカーボンブラックとシリカとを併用する場合にはゴム成分100重量部あたりカーボンブラック5〜60重量部である。
【0021】
シリカとしては、CTAB比表面積50〜180m/gのシリカや、窒素吸着比表面積50〜300m2/gのシリカが例示され、東ソー・シリカ(株)社製「AQ」、「AQ−N」、デグッサ社製「ウルトラジル(登録商標)VN3」、「ウルトラジル(登録商標)360」、「ウルトラジル(登録商標)7000」、ローディア社製「ゼオシル(登録商標)115GR」、「ゼオシル(登録商標)1115MP」、「ゼオシル(登録商標)1205MP」、「ゼオシル(登録商標)Z85MP」、日本シリカ社製「ニップシール(登録商標)AQ」等の市販品が好ましく用いられる。また、pHが6〜8であるシリカやナトリウムを0.2〜1.5重量%含むシリカ、真円度が1〜1.3の真球状シリカ、ジメチルシリコーンオイル等のシリコーンオイルやエトキシシリル基を含有する有機ケイ素化合物、エタノールやポリエチレングリコール等のアルコールで表面処理したシリカ、二種類以上の異なった窒素吸着比表面面積を有するシリカを配合することも好ましく用いられる。
【0022】
かかる充填剤の使用量は特に限定されるものではないが、乗用車用タイヤのトレッド用ゴム組成物にはシリカが好ましく用いられ、ゴム成分100重量部あたり、充填剤10〜120重量部の範囲が好ましい。またシリカを配合する場合、ゴム成分100重量部あたり、カーボンブラックを5〜50重量部配合することが好ましく、シリカ/カーボンブラックの配合比率は0.7/1〜1/0.1が特に好ましい。また通常充填剤としてシリカを用いる場合にはビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(デグッサ社製「Si−69」)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(デグッサ社製「Si−75」)、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、オクタンチオ酸S−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]エステル(ジェネラルエレクトロニックシリコンズ社製「NXTシラン」)、オクタンチオ酸S−[3−{(2−メチル−1,3−プロパンジアルコキシ)エトキシシリル}プロピル]エステル及びオクタンチオ酸S−[3−{(2−メチル−1,3−プロパンジアルコキシ)メチルシリル}プロピル]エステルフェニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシランおよび3−イソシアナートプロピルトリエトキシシランからなる群から選択される1種以上のシランカップリング剤等、シリカと結合可能なケイ素等の元素またはアルコシキシラン等の官能基を有する化合物を添加することが好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(デグッサ社製「Si−69」)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(デグッサ社製「Si−75」)、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン(ジェネラルエレクトロニックシリコンズ社製「NXTシラン」)が特に好ましい。更には充填剤としてシリカを用いる場合には、シリカ、シリカと結合可能なケイ素等の元素またはアルコシキシラン等の官能基を有する化合物に加えて、エタノール、ブタノール、オクタノール等の1価アルコールやエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ポリエーテルポリオール等の2価以上のアルコール、N−アルキルアミン、アミノ酸、分子末端がカルボキシル変性またはアミン変性された液状ポリブタジエン、等を配合することも好ましい。
【0023】
水酸化アルミニウムとしては、窒素吸着比表面積5〜250m2/gの水酸化アルミニウムや、DOP給油量50〜100ml/100gの水酸化アルミニウムが例示される。
【0024】
また、本工程において、上記のS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸、ゴム成分および充填剤以外に、酸化亜鉛やステアリン酸を配合し、混練することが好ましい。酸化亜鉛の使用量は、ゴム成分100重量部あたり1〜15重量部の範囲内であることが好ましく、3〜8重量部の範囲内であることがより好ましい。ステアリン酸の使用量は、ゴム成分100重量部あたり0.5〜10重量部の範囲内であることが好ましく、1〜5重量部の範囲内であることがより好ましい。
【0025】
本工程におけるS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸とゴム成分と充填剤との混練は、例えば、バンバリーミキサー等の混練装置を用いて行うことができる。かかる混練は、通常、発熱を伴い、混練終了時の混練物の温度が140℃〜180℃の範囲であることが好ましく、150℃〜170℃の範囲であることがより好ましい。混練終了時の混練物の温度が140℃以上であれば、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸と充填剤との反応が効率よく進行する傾向にあり、180℃以下であれば、ゴム成分の劣化やゲル化が抑制される傾向にあり、最終的に得られる加硫ゴムの粘弾性特性を改善させる点において、それぞれ好ましい。
【0026】
混練時間は、1分〜10分であることが好ましく、より好ましくは2分〜7分の範囲である。混練時間が1分以上であれば、ゴム成分への充填剤の分散が良好となる傾向にあり、10分以下であれば、ゴム成分の劣化やゲル化が抑制される傾向にあり、最終的に得られる加硫ゴムの粘弾性特性を改善させる点において、それぞれ好ましい。
【0027】
次に、本発明の工程(B)、すなわち、上記工程(A)で得られた混練物と硫黄成分と加硫促進剤とを混練する工程について説明する。本発明において「未加硫ゴム組成物」とは、本工程により得られるゴム組成物をいう。
【0028】
硫黄成分としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、及び高分散性硫黄等が挙げられる。通常は粉末硫黄が好ましく、ベルト用部材等の硫黄量が多いタイヤ部材に用いる場合には不溶性硫黄が好ましい。なお、上記硫黄成分にはS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸および加硫促進剤は含まれないものとする。硫黄成分の使用量は、ゴム成分100重量部あたり0.3〜5重量部の範囲内であることが好ましく、0.5〜3重量部の範囲内であることがより好ましい。
【0029】
加硫促進剤としては、ゴム工業便覧<第四版>(平成6年1月20日社団法人 日本ゴム協会発行)の412〜413ページに記載されているチアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が挙げられる。
【0030】
具体的には、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N,N−ジシクロへキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、ジフェニルグアニジン(DPG)が挙げられる。また、公知の加硫剤であるモルフォリンジスルフィドを用いることもできる。充填剤としてカーボンブラックを用いる場合には、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N,N−ジシクロへキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)のいずれかとジフェニルグアニジン(DPG)とを併用することが好ましく、充填剤としてシリカとカーボンブラックとを併用する場合には、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N,N−ジシクロへキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)のいずれかとジフェニルグアニジン(DPG)とを併用することが好ましい。なお、加硫促進剤にはS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸は含まれないものとする。
【0031】
硫黄成分と加硫促進剤との比率は特に制限されないが、重量比で硫黄成分/加硫促進剤=2/1〜1/2の範囲が好ましい。また天然ゴムを主とするゴム成分において耐熱性を向上させる方法である硫黄/加硫促進剤の比を1以下にする、いわゆるEV加硫は、耐熱性向上が特に必要な用途においては、本発明でも好ましく用いられる。
【0032】
本工程における上記工程(A)で得られた混練物と硫黄成分と加硫促進剤との混練は、例えば、オープンロールやバンバリーミキサー等の混練装置を用いて行うことができる。混練終了時の混練物の温度が30℃〜100℃の範囲であることが好ましく、50℃〜80℃の範囲であることがより好ましい。混練終了時の混練物の温度が30℃以上であれば、硫黄成分や加硫促進剤のゴム成分への分散性が向上する傾向にあり、100℃以下であれば、本工程で得られる未加硫ゴム組成物の加工安定性が低下しにくい傾向にあり、それぞれ好ましい。
【0033】
混練時間は、1分〜10分であることが好ましく、より好ましくは2分〜8分の範囲である。混練時間が1分以上であれば、硫黄成分や加硫促進剤のゴム成分への分散性が向上する傾向にあり、10分以下であれば、ゴム成分の劣化が抑制される傾向にあり、最終的に得られる加硫ゴムの粘弾性特性を改善させる点において、それぞれ好ましい。
【0034】
次に、本発明の工程(C)、すなわち、上記工程(B)で得られた混練物を熱処理する工程について説明する。本発明において「加硫ゴム組成物」とは、本工程により得られるゴム組成物をいう。
【0035】
本工程の熱処理は、一般に加硫と称されるものであり、通常、常圧下または加圧下で行われる。処理温度は、120℃〜180℃の範囲が好ましく、140℃〜170℃の範囲がより好ましい。
【0036】
処理時間は、例えば、JIS K 6300−2に準拠して上記工程(B)で得られた混練物の90%加硫時間(t(90))を求め、これよりも5分〜10分長い時間を設定することが好ましい。
【0037】
本発明の製造方法は、通常、工程(B)で得られた混練物を工程(C)の熱処理に供する前に、該混練物を特定の状態に加工する工程を含む。
【0038】
ここで、該混練物を「特定の状態に加工する工程」とは、例えばタイヤの分野においては、該混練物を、「スチールコードに被覆する工程」「カーカス繊維コードに被覆する工程」「トレッド用部材の形状に加工する工程」等が挙げられる。また、これらの工程によりそれぞれ得られるベルト、カーカス、インナーライナー、サイドウォール、トレッド(キャップトレッド又はアンダートレッド)等の各部材は、通常、その他の部材とともに、タイヤの分野で通常行われる方法により、さらにタイヤの形状に成型され、すなわち該混練物をタイヤに組み込む工程を経て、該混練物を含む生タイヤの状態で工程(C)の熱処理に供される。かかる熱処理は、通常、加圧下で行われる。本発明の製造方法により得られる加硫ゴム組成物は、かくして得られるタイヤの上記各部材を構成する加硫ゴム組成物を含む。
【0039】
このようにして得られるタイヤが装着された自動車の燃費は向上し、低燃費化が達成できる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例、試験例及び製造例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
製造例1:S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸
窒素置換された反応容器に3−クロロプロピルアミン塩酸塩100g(0.77mol)、水180mLおよびチオ硫酸ナトリウム五水和物200.4g(0.81mol)を仕込み、得られた混合物を浴温70〜80℃で5時間攪拌した。反応混合物を一晩放冷し、結晶をろ取した後、水、メタノールで洗浄した。得られた結晶を、50℃で4時間乾燥することにより、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸を得た。結晶の取得量は97.8gであった。
H−NMR(270.05MHz,DO)δppm:3.0−3.1(4H,m),2.0−2.1(2H,m)
【0042】
得られたS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のメディアン径(50%D)を、島津製作所製SALD−2000J型を用いてレーザー回折法により測定したところ、185μmであった。以下、かかるS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸を(A1)と称する。
<測定操作>
得られたS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸を下記の分散溶媒(トルエン)と分散剤(10重量%スルホこはく酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム/トルエン溶液)との混合溶液に室温で分散させ、得られた分散液に超音波を照射しながら、該分散液を5分間攪拌して試験液を得た。該試験液を回分セルに移し、1分後に測定した。(屈折率:1.70−0.20i)
【0043】
製造例2〜6
(A1)を粉砕し、表1記載のメディアン径(50%D)であるS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸(A2)〜(A6)をそれぞれ調製した。メディアン径は、製造例1記載の測定操作と同様にして測定した。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例1
<工程(A)>
バンバリーミキサー(東洋精機製600mlラボプラストミル)を用いて、天然ゴム(RSS#1)100重量部、HAF(旭カーボン社製、商品名「旭#70」)45重量部、ステアリン酸3重量部、酸化亜鉛5重量部、老化防止剤(N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン(6PPD):商品名「アンチゲン(登録商標)6C」住友化学株式会社製)1重量部および上記製造例3で得たS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸(A3、メディアン径29μm)0.4重量部を混練し、混練物を得た。該工程は、各種薬品及び充填剤投入後5分間、ミキサー設定温度120℃、ミキサー回転数50rpmで混練した。混練終了時の混練物の温度は163℃であった。
<工程(B)>
ロール設定温度60℃のオープンロール機で、工程(A)で得られた混練物と、加硫促進剤N−シクロへキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)1重量部と、硫黄2重量部とを混練配合し、未加硫ゴム組成物を得た。
<工程(C)>
工程(B)で得た未加硫ゴム組成物を145℃で熱処理することにより加硫ゴム組成物を得た。
【0046】
参考例1
実施例1において、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸を用いない以外は、実施例1と同様にして未加硫ゴム組成物および加硫ゴム組成物を得た。工程(A)の混練終了後の混練物の温度は162℃であった。
【0047】
試験例1
以下のとおり、実施例1の工程(B)で得られた未加硫ゴム組成物のスコーチタイム、90%加硫時間およびS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸の分散性、並びに、実施例1の工程(C)で得られた加硫ゴム組成物の動的粘弾性特性を測定した。
(1)スコーチタイム(t5)
JIS K 6300−1に準拠し、東洋精機製 ムーニー・ビスコメーター AM−3を用い、ロータ種 L、試験温度 125℃で測定した。
(2)90%加硫時間(t(90))
JIS K 6300−2に準拠し、東洋精機製 ロータレス・レオメーター RLR−4を用い、試験温度145℃、振幅角1度、振動数100cpmで測定した。
(3)S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸の分散性
未加硫ゴム組成物をシート化し、その断面を目視観察することにより、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸の未溶融物の有無を判定した。
(4)動的粘弾性特性(tanδ)
株式会社上島製作所製の粘弾性アナライザを用いて測定した。
条件:温度60℃
初期歪10%、動的歪2.5%、周波数10Hz
【0048】
実施例1の工程(B)で得られた未加硫ゴム組成物の90%加硫時間は9分であった。S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸の未溶融物は認められず、分散性は良好であった。参考例1で得た未加硫ゴム組成物を対照とした場合、実施例1の工程(B)で得られた未加硫ゴム組成物のスコーチタイムは26%短縮していた。また、参考例1で得た加硫ゴム組成物を対照とした場合、実施例1の工程(C)で得られた加硫ゴム組成物の動的粘弾性特性(60℃でのtanδ)は23%低下しており、未加硫ゴムの加工安定性の低下を抑制しつつ、加硫ゴムの粘弾性特性が改善された加硫ゴム組成物を製造することができた。
【0049】
実施例2
実施例1において、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸を製造例3で得た(A3)から製造例4で得た(A4、メディアン径41μm)に替えた以外は、実施例1と同様にして、未加硫ゴム組成物および加硫ゴム組成物を得た。工程(A)の混練終了後の混練物の温度は163℃であった。
【0050】
試験例2
試験例1と同様の測定を行ったところ、実施例2の工程(B)で得られた未加硫ゴム組成物の90%加硫時間は9分であった。S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸の未溶融物は認められず、分散性は良好であった。参考例1で得た未加硫ゴム組成物を対照とした場合、実施例2の工程(B)で得られた未加硫ゴム組成物のスコーチタイムは27%短縮していた。また、参考例1で得た加硫ゴム組成物を対照とした場合、実施例2の工程(C)で得られた加硫ゴム組成物の動的粘弾性特性(60℃でのtanδ)は24%低下しており、未加硫ゴムの加工安定性の低下を抑制しつつ、加硫ゴムの粘弾性特性が改善された加硫ゴム組成物を製造することができた。
【0051】
実施例3
実施例1において、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸を製造例3で得た(A3)から製造例5で得た(A5メディアン径66μm)に替えた以外は、実施例1と同様にして、未加硫ゴム組成物および加硫ゴム組成物を得た。工程(A)の混練終了後の混練物の温度は162℃であった。
【0052】
試験例3
試験例1と同様の測定を行ったところ、実施例3の工程(B)で得られた未加硫ゴム組成物の90%加硫時間は9分であった。S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸の未溶融物は認められず、分散性は良好であった。参考例1で得た未加硫ゴム組成物を対照とした場合、実施例3の工程(B)で得られた未加硫ゴム組成物のスコーチタイムは27%短縮していた。また、参考例1で得た加硫ゴム組成物を対照とした場合、実施例3の工程(C)で得られた加硫ゴム組成物の動的粘弾性特性(60℃でのtanδ)は23%低下しており、未加硫ゴムの加工安定性の低下を抑制しつつ、加硫ゴムの粘弾性特性が改善された加硫ゴム組成物を製造することができた。
【0053】
実施例4
実施例1において、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸を製造例3で得た(A3)から製造例6で得た(A6メディアン径92μm)に替えた以外は、実施例1と同様にして、未加硫ゴム組成物および加硫ゴム組成物を得た。工程(A)の混練終了後の混練物の温度は166℃であった。
【0054】
試験例4
試験例1と同様の測定を行ったところ、実施例3の工程(B)で得られた未加硫ゴム組成物の90%加硫時間は10分であった。S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸の未溶融物は認められず、分散性は良好であった。参考例1で得た未加硫ゴム組成物を対照とした場合、実施例3の工程(B)で得られた未加硫ゴム組成物のスコーチタイムは19%短縮していた。また、参考例1で得た加硫ゴム組成物を対照とした場合、実施例3の工程(C)で得られた加硫ゴム組成物の動的粘弾性特性(60℃でのtanδ)は20%低下しており、未加硫ゴムの加工安定性の低下を抑制しつつ、加硫ゴムの粘弾性特性が改善された加硫ゴム組成物を製造することができた。
【0055】
比較参考例1
実施例1において、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸を製造例3で得た(A3)から製造例1で得た(A1、メディアン径185μm)に替えた以外は、実施例1と同様にして、未加硫ゴム組成物および加硫ゴム組成物を得た。工程(A)の混練終了後の混練物の温度は162℃であった。
【0056】
比較試験例1
試験例1と同様の測定を行ったところ、比較参考例1の工程(B)で得られた未加硫ゴム組成物の90%加硫時間は10分であった。S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸の未溶融物が認められ、分散性は不良であった。参考例1で得た未加硫ゴム組成物を対照とした場合、比較参考例1の工程(B)で得られた未加硫ゴム組成物のスコーチタイムは18%短縮していた。また、参考例1で得た加硫ゴム組成物を対照とした場合、比較参考例1の工程(C)で得られた加硫ゴム組成物の動的粘弾性特性(60℃でのtanδ)は15%しか低下しておらず、実施例1〜3と比較して、未加硫ゴムの加工安定性の低下を抑制できたが、加硫ゴムの粘弾性特性が改善は不十分であった。
【0057】
比較参考例2
実施例1において、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸を製造例3で得た(A3)から製造例2で得た(A2、メディアン径7μm)に替えた以外は、実施例1と同様にして、未加硫ゴム組成物および加硫ゴム組成物を得た。工程(A)の混練終了後の混練物の温度は164℃であった。
【0058】
比較試験例2
試験例1と同様の測定を行ったところ、比較参考例2の工程(B)で得られた未加硫ゴム組成物の90%加硫時間は9分であった。S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸の未溶融物が認められず、分散性は良好であった。参考例1で得た未加硫ゴム組成物を対照とした場合、比較参考例2の工程(B)で得られた未加硫ゴム組成物のスコーチタイムは30%短縮していた。また、参考例1で得た加硫ゴム組成物を対照とした場合、比較参考例2の工程(C)で得られた加硫ゴム組成物の動的粘弾性特性(60℃でのtanδ)は23%低下しており、実施例1〜3と比較して、加硫ゴムの粘弾性特性の改善は同等であったが、未加硫ゴムの加工安定性の低下の抑制が不十分であった。
【0059】
以上の結果を表2にまとめた。
加工安定性は、参考例1で得た未加硫ゴム組成物を対照とした場合のスコーチタイムの短縮が30%未満であれば○、30%以上であれば×と評価した。
粘弾性特性は、参考例1で得た加硫ゴム組成物を対照とした場合の動的粘弾性特性(60℃でのtanδ)の低下が20%以上であれば○、20%未満であれば×と評価した。
【0060】
【表2】

【0061】
表2から、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸からなる粒子のメディアン径(50%D)が10μm〜100μmの範囲であれば、未加硫ゴムの加工安定性と加硫ゴムの粘弾性特性とのバランスに優れることがわかる。
【0062】
実施例5
実施例1〜3それぞれの工程(B)で得た混練物で、黄銅メッキ処理が施されたスチールコードを被覆することにより、ベルトが得られる。得られるベルトを用いて、通常の製造方法に従い、生タイヤを成形し、得られた生タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、加硫タイヤが得られる。
【0063】
実施例6
実施例1〜3それぞれの工程(B)で得た混練物を押し出し加工し、トレッド用部材を得る。得られたトレッド用部材を用いて、通常の製造方法に従い、生タイヤを成形し、得られた生タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、加硫タイヤが得られる。
【0064】
実施例7
実施例1〜3それぞれの工程(B)で得た混練物を押し出し加工して、カーカス形状に応じた形状の混練物を調製し、ポリエステル製のカーカス繊維コードの上下に貼り付けることにより、カーカスが得られる。得られたカーカスを用いて、通常の製造方法に従い、生タイヤを成形し、得られた生タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、加硫タイヤが得られる。
【0065】
実施例8
下記の工程(A)〜工程(C)により得られる加硫ゴム組成物は、キャップトレッド用として好適である。
<工程(A)>
バンバリーミキサー(東洋精機製600mlラボプラストミル)を用いて、スチレン・ブタジエン共重合ゴムSBR#1502(住友化学社製)100重量部、ISAF−HM(旭カーボン社製、商品名「旭#80」)45重量部、ステアリン酸2重量部、酸化亜鉛3重量部、製造例3で得たS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸(A3)1重量部、老化防止剤(N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン(6PPD):商品名「アンチゲン(登録商標)6C」住友化学株式会社製)1重量部およびワックス(日本精蝋製「OZOACE−0355」)2重量部を混練配合し、ゴム組成物を得る。該工程は、各種薬品及び充填剤投入後5分間、50rpmのミキサーの回転数で混練することにより実施し、その時のゴム温度は160〜175℃である。
<工程(B)>
オープンロール機で60〜80℃の温度にて、工程(A)により得られたゴム組成物と、加硫促進剤N−シクロへキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)3重量部および硫黄2重量部とを混練配合し、混練物を得る。
<工程(C)>
工程(B)で得られる混練物を145℃で熱処理することにより加硫ゴム組成物が得られる。
【0066】
実施例9
下記の工程(A)〜工程(C)により得られる加硫ゴム組成物は、アンダートレッド用として好適である。
<工程(A)>
バンバリーミキサー(東洋精機製600mlラボプラストミル)を用いて、スチレン・ブタジエン共重合ゴムSBR#1502(住友化学社製)100重量部、ISAF−HM(旭カーボン社製、商品名「旭#80」)35重量部、ステアリン酸2重量部、酸化亜鉛3重量部、製造例3で得たS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸(A3)1重量部、老化防止剤(N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン(6PPD):商品名「アンチゲン(登録商標)6C」住友化学株式会社製)1重量部およびワックス(日本精蝋製「OZOACE−0355」)2重量部を混練配合し、ゴム組成物を得る。該工程は、各種薬品及び充填剤投入後5分間、50rpmのミキサーの回転数で混練することにより実施し、その時のゴム温度は160〜175℃である。
<工程(B)>
オープンロール機で60〜80℃の温度にて、工程(A)により得られたゴム組成物と、加硫促進剤N−シクロへキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)2重量部、加硫促進剤ジフェニルグアニジン(DPG)0.5重量部、加硫促進剤ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)0.8重量部および硫黄1重量部とを混練配合し、混練物を得る。
<工程(C)>
工程(B)で得た混練物を145℃で熱処理することにより加硫ゴム組成物が得られる。
【0067】
実施例10
下記の工程(A)〜工程(C)により得られる加硫ゴム組成物は、ベルト用として好適である。
<工程(A)>
バンバリーミキサー(東洋精機製600mlラボプラストミル)を用いて、天然ゴム(RSS#1)100重量部、HAF(旭カーボン社製、商品名「旭#70」)45重量部、ステアリン酸3重量部、酸化亜鉛5重量部、製造例3で得たS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸(A3)1重量部、含水シリカ(東ソー・シリカ(株)社製「Nipsil(登録商標)AQ」10重量部、老化防止剤FR(松原産業社製「アンチオキシダントFR」)2重量部、レゾルシン2重量部およびナフテン酸コバルト2重量部を混練配合し、ゴム組成物を得る。該工程は、各種薬品及び充填剤投入後5分間、50rpmのミキサーの回転数で混練することにより実施し、その時のゴム温度は160〜175℃である。
<工程(B)>
オープンロール機で60〜80℃の温度にて、工程(A)により得られたゴム組成物と、加硫促進剤N,N−ジシクロへキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(DCBS)1重量部、硫黄6重量部およびメトキシ化メチロールメラミン樹脂(住友化学社製「スミカノール507AP」)3重量部とを混練配合し、混練物を得る。
<工程(C)>
工程(B)で得られる混練物を145℃で熱処理することにより加硫ゴム組成物が得られる。
【0068】
実施例11
下記の工程(A)〜工程(C)により得られる加硫ゴム組成物は、インナーライナー用として好適である。
<工程(A)>
バンバリーミキサー(東洋精機製600mlラボプラストミル)を用いて、ハロゲン化ブチルゴム(エクソンモービル社製「Br−IIR2255」)100重量部、GPF 60重量部、ステアリン酸1重量部、酸化亜鉛3重量部、製造例3で得たS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸(A3)1重量部およびパラフィンオイル(出光興産社製「ダイアナプロセスオイル」)10重量部を混練配合し、ゴム組成物を得る。該工程は、各種薬品及び充填剤投入後5分間、50rpmのミキサーの回転数で混練することにより実施し、その時のゴム温度は160〜175℃である。
<工程(B)>
オープンロール機で60〜80℃の温度にて、工程(A)により得られたゴム組成物と、老化防止剤(アニリンとアセトンの縮合物(TMDQ))1重量部、加硫促進剤ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)1重量部および硫黄2重量部とを混練配合し、混練物を得る。
<工程(C)>
工程(B)で得られる混練物を145℃で熱処理することにより加硫ゴム組成物が得られる。
【0069】
実施例12
下記の工程(A)〜工程(C)により得られる加硫ゴム組成物は、サイドウォール用として好適である。
<工程(A)>
バンバリーミキサー(東洋精機製600mlラボプラストミル)を用いて、天然ゴム(RSS#3)40重量部、ポリブタジエンゴム(宇部興産社製「BR150B」)60部、FEF50重量部、ステアリン酸2.5重量部、酸化亜鉛3重量部、製造例3で得たS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸(A3)1重量部、老化防止剤(N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン(6PPD):商品名「アンチゲン(登録商標)6C」住友化学株式会社製)2重量部、アロマチックオイル(コスモ石油社製「NC−140」)10重量部およびワックス(大内新興化学工業社製の「サンノック(登録商標)ワックス」)2重量部を混練配合し、ゴム組成物を得る。該工程は、各種薬品及び充填剤投入後5分間、50rpmのミキサーの回転数で混練することにより実施し、その時のゴム温度は160〜175℃である。
<工程(B)>
オープンロール機で60〜80℃の温度にて、工程(A)により得られたゴム組成物と、加硫促進剤N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)0.75重量部および硫黄1.5重量部とを混練配合し、混練物を得る。
<工程(C)>
工程(B)で得られる混練物を145℃で熱処理することにより加硫ゴム組成物が得られる。
【0070】
実施例13
下記の工程(A)〜工程(C)により得られる加硫ゴム組成物は、カーカス用として好適である。
<工程(A)>
バンバリーミキサー(東洋精機製600mlラボプラストミル)を用いて、天然ゴム(TSR20)70重量部、スチレン・ブタジエン共重合ゴムSBR#1502(住友化学社製)30重量部、N339(三菱化学社製)60重量部、ステアリン酸2重量部、酸化亜鉛5重量部、プロセスオイル(出光興産社製「ダイアナプロセスPS32」)7重量部およびS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩1重量部を混練配合し、ゴム組成物を得る。該工程は、各種薬品及び充填剤投入後5分間、50rpmのミキサーの回転数で混練することにより実施し、その時のゴム温度は160〜175℃である。
<工程(B)>
オープンロール機で60〜80℃の温度にて、工程(A)により得られたゴム組成物と、加硫促進剤N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)1重量部、硫黄3重量部、老化防止剤(N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン(6PPD):商品名「アンチゲン(登録商標)6C」住友化学株式会社製)1重量部および老化防止剤(アニリンとアセトンの縮合物(TMDQ))1重量部とを混練配合し、混練物を得る。
<工程(C)>
工程(B)で得られる混練物を145℃で熱処理することにより加硫ゴム組成物が得られる。
【0071】
実施例14
下記の工程(A)〜工程(C)により得られる加硫ゴム組成物は、キャップトレッド用として好適である。
<工程(A)>
バンバリーミキサー(東洋精機製600mlラボプラストミル)を用いて、スチレン・ブタジエン共重合ゴムSBR#1500(JSR社製)100重量部、シリカ(商品名:「ウルトラシル(登録商標)VN3−G」デグッサ社製)78.4重量部、カーボンブラック(商品名「N−339」三菱化学社製)6.4重量部、シランカップリング剤(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド:商品名「Si−69」デグッサ社製)6.4重量部、プロセスオイル(商品名「NC−140」コスモ石油社製)47.6重量部、老化防止剤(N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン(6PPD):商品名「アンチゲン(登録商標)6C」住友化学株式会社製)1.5重量部、酸化亜鉛2重量部、ステアリン酸2重量部、および製造例3で得たS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸(A3)3重量部を混練配合し、ゴム組成物を得る。該工程は、70℃〜120℃の温度範囲で操作され、各種薬品及び充填剤投入後5分間、80rpmのミキサーの回転数で混練し、引き続き5分間、100rpmのミキサーの回転数で混練することにより実施する。
<工程(B)>
オープンロール機で30〜80℃の温度にて、工程(A)により得られるゴム組成物と、加硫促進剤N−シクロへキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)1重量部、加硫促進剤ジフェニルグアニジン(DPG)1重量部、ワックス(商品名「サンノック(登録商標)N」大内新興化学工業社製)1.5重量部および硫黄1.4重量部とを混練配合し、混練物を得る。
<工程(C)>
工程(B)で得られる混練物を160℃で熱処理することにより加硫ゴム組成物が得られる。
【0072】
実施例15
実施例12において、スチレン・ブタジエン共重合ゴムSBR#1500(JSR社製)に替えて溶液重合SBR(「アサプレン(登録商標)」旭化成ケミカルズ株式会社製)を用いる以外は実施例12と同様にして加硫ゴム組成物が得られる。この加硫ゴム組成物はキャップトレッドとして好適である。
【0073】
実施例16
実施例12において、スチレン・ブタジエン共重合ゴムSBR#1500(JSR社製)に替えてSBR#1712(JSR社製)を用い、プロセスオイルの使用量を21重量部に変更し、酸化亜鉛を仕込むタイミングを工程(B)に変更する以外は実施例12と同様にして加硫ゴム組成物が得られる。この加硫ゴム組成物はキャップトレッドとして好適である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の製造方法によれば、未加硫ゴムの加工安定性の低下を抑制しつつ、加硫ゴムの粘弾性特性が改善された加硫ゴム組成物を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸とゴム成分と充填剤と硫黄成分と加硫促進剤とを含有する加硫ゴム組成物の製造方法であり、下記の工程(A)〜(C)を含むことを特徴とする方法。
(A):メディアン径(50%D)が10μm〜100μmであるS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸からなる粒子とゴム成分と充填剤とを混練する工程
(B):工程(A)で得られた混練物と硫黄成分と加硫促進剤とを混練する工程
(C):工程(B)で得られた混練物を熱処理する工程
【請求項2】
S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸からなる粒子のメディアン径(50%D)が10μm〜70μmであることを特徴とする請求項1記載の方法。

【公開番号】特開2012−107232(P2012−107232A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236836(P2011−236836)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】