動きアーチファクトが低減される電気生理学的測定
本発明は、フィードバック機構を与えることにより動きアーチファクトが抑制又は低減される電気生理学的信号1の容量測定のための装置2、4、5、6、7、及び方法に関連している。容量センサ電極1と体3との間の平均電圧が、動きによって生じる信号を低減する又はできる限り小さくするように制御される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には、電気生理学的測定のためのデバイス、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
EEG、EMG及びECGのような電気生理学的信号を測定する従来の電極は、接着剤を用いて患者の皮膚に取り付けられる。一般に、電極と体との良好なガルバニック接触を確実にするためにゲルが用いられる。接着剤及びゲルは、皮膚の炎症を引き起こし、連続的なモニタリングのためには不快である。
【0003】
そのような電極に対する代替物は、皮膚と電極との容量性カップリングが表面電位を測定するために用いられる容量センサである。そのような容量センサは、生物起源である電磁信号の容量測定のためのセンサシステム及び方法が説明されている国際特許出願公開WO2006/066566A2公報に開示されている。電気生理学的測定用の容量センサは、容量電極(capacitive electrode)と体又は皮膚との間の時間的に変化する距離のために動きアーチファクトに悩まされている。多くのアプリケーションでは、そのような動きアーチファクトが問題になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、動きアーチファクトが低減される容量センサを有する装置及び対応する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、体の少なくとも1つの電気生理学的信号を測定する装置であって、少なくとも1つの容量センサ電極と、動きによって生じる信号を低減する又はできる限り小さくするために上記少なくとも1つの容量センサ電極と上記体との間の平均電圧を制御する機構とを有する当該装置が与えられる。従って、測定される体の動きが生じた場合においても正確な信号の測定が実現される。
【0006】
上記体の近くに又は上記体とガルバニック接触して配された少なくとも1つの参照電極が設けられ得る。この参照電極は、測定の精度を高めるために参照電位の設定又は検出を可能にする。
【0007】
上記少なくとも1つの参照電極は、該参照電極の電位又は電気的状態を規定することを可能にする電圧源、電流源又は参照電位部に接続され得る。
【0008】
上記形態の1つ又はそれ以上によれば、電圧又は電流源は、センサ電極の測定条件の規定された設定を可能にするバッファ増幅器の入力部及びセンサ電極の少なくとも1つに結合され得る。
【0009】
上記形態の1つ又はそれ以上によれば、少なくとも2つのセンサ電極が、少なくとも1つの参照電極への差動増幅器の入力部に結合されていてもよい。従って、正確な差の測定が可能である。
【0010】
上記装置は、本質的に同じ電気生理学的信号を測定し、上記体に対して互いに異なる距離に配された及び/又は異なる平均電圧を供給される少なくとも2つ又は3つのセンサ電極を有していてもよい。この機構のために、上記平均電圧を規定された値に導くために信頼性の高いフィードバック信号が上記センサ電極の出力信号に基づいて生成される。上記規定された値は、或る規定値を有するか、又はオプションでゼロである。従って、動きによって生じる信号が低減される又はできる限り小さくなる。
【0011】
上記形態の1つ又はそれ以上によれば、バッファ増幅器の入力部に与えられる上記センサ電極の出力信号をバッファ増幅器の出力信号に変換し、上記バッファ増幅器の更なる入力部に与えられる信号により規定されるレベルに上記センサ電極の平均電圧を保持する少なくとも1つの当該バッファ増幅器が設けられている。この概念は、動きによって生じる信号の最小化を可能にする。
【0012】
動きによって生じる信号での信頼性の高い情報の獲得及びコロケーションを確実にするために、少なくとも3つのセンサ電極が三角形状又は同心円状に配されていてもよい。
【0013】
上記形態の1つ又はそれ以上によれば、少なくとも3つのセンサ電極が設けられていてもよく、上記センサ電極の1つはセンサ電極機構の中心に配され、他のセンサ電極は、環状又はマトリクス状の形式で配されたセグメントの形で中心の電極を取り囲んでいてもよい。この配置は、動きによって生じる信号の検出及び/又は排除を可能にする。
【0014】
他の形態では、上記装置は、全ての電極の上記セグメントが散在した形で分布している小さいセグメントの形式で配された少なくとも3つのセンサ電極を有している。そのような配置は、動きによって生じる信号の検出及び/又は排除を可能にする。
【0015】
本発明の他の観点によれば又は上記形態の1つ又はそれ以上によれば、装置は、上記センサ電極、上記参照電極又は上記センサ電極若しくは参照電極を支持する若しくは収容する支持体若しくはケースの少なくとも1つを振動させるオシレータ又はバイブレータを有していてもよい。生じる電極の動きは、動きによって生じる信号の検出及び補償を可能にし、従って、測定される電気生理学的信号に関する測定精度を高める。上記形態の1つ又はそれ以上によれば、この装置は、上記平均電圧を低減する又はできる限り小さくするためにフィードバック信号を生成する上記オシレータ又はバイブレータに結合されたフィードバックループ部を有していてもよい。
【0016】
これらの信号間の明らかな区別を可能にするために、上記オシレータ又はバイブレータの周波数が、測定される上記電気生理学的信号の生体電気周波数帯域外にあってもよい。
【0017】
上記機構に検出信号を発し、従って信号の測定精度に寄与する同期検出器が設けられていてもよい。
【0018】
上記形態の1つ又はそれ以上によれば、上記少なくとも1つのセンサ電極と上記体との間の平均電圧の指標を上記センサ電極の信号から抽出する抽出器が構成されていてもよく、当該装置は、補償信号を制御するために上記指標を用いる。この構造は、動きアーチファクトの効率的な補償及び従って最小化を可能にする。
【0019】
本発明の他の観点によれば又は上記形態の1つ又はそれ以上によれば、装置は、上記少なくとも1つのセンサ電極の少なくとも1つの出力信号のセンサ信号電力の推定値又はセンサ信号エントロピの推定値を決定し、上記平均電圧を規定された値にするために上記少なくとも1つのセンサ電極の上記少なくとも1つの出力信号に基づいてフィードバック信号を生成する推定器を有していてもよい。
【0020】
上記形態の任意の1つにおいて又は他の形態によれば、上記装置は、適応電力の最小化を与えるように構成されていてもよい。この電力の最小化は、動きによって生じる電力の指標となり、動きによって生じる電力を低減する。
【0021】
1つ又はそれ以上の形態によれば、装置は以下の、すなわち、
センサ信号電力P(t)の最小化を達成するために補償信号V∧AV(t1)を適合させる反復最適化アルゴリズムを用いることと、
により与えられる補償信号V∧AV(t1)を更新すること(ここで、収束速度及び定常状態におけるノイズを制御する適応定数αが与えられる。)と、
有限差分近似、すなわち、
によって勾配の推定値を得ることと、
局所勾配を決定する変調又はウォブリングを用いることと、
上記電力を決定するために、センサ信号をプレフィルタリングし、或る周波数帯域のみを用いることと、
適応シャノンエントロピの最小化を用いることと、
信号の確率質量関数p(x)により情報エントロピ、すなわち、
を決定することと、
確率質量関数の推定値p∧(x)から
を得ることと、
を得ることとの少なくとも1つ又はそれ以上のために任意の組み合わせで構成された手段を有していてもよい。
【0022】
上記形態の任意の1つにおいて、本発明の他の観点によれば又は上記若しくは下記の形態から独立した他の形態において、伝達関数Vo/Vbioを等化する等化器が設けられていてもよく、Voは、関心のある電気生理学的信号Vbioを受信するバッファ増幅器の出力信号であり、上記装置は、等化が達成されるように上記伝達関数Vo/Vbioを適応制御する。この手法は、優れた信号の測定を与える。
【0023】
上記形態の任意の1つにおいて、本発明の他の観点によれば又は上記若しくは下記の形態から独立した他の形態において、方法が、
容量性の生体信号の検知の上記バッファ入力容量を等化する目的のために少なくとも1つの参照電極を用いて参照信号Vrefを上記体に与えることと、
上記参照信号を上記関心のある信号において予想される最大周波数よりも大きい値に変調することと、
測定され、バッファリングされた上記参照信号から与えられた上記参照信号を差し引くことと、
結果として生じた上記信号を復調し、ローパスフィルタにかけ、増幅を制御するためにこの信号を用いることと
の少なくとも1つを有していてもよいし、上記装置がこれらのうちの少なくとも1つのために構成される手段を有していてもよい。従って、動きによって生じる信号の効果的な抑制が与えられる。
【0024】
上記形態の任意の1つにおいて又は他の形態において、フィードバック機構は、上記バッファ増幅器の利得を1倍にするために、該フィードバック機構内に積分器を有していてもよい。
【0025】
上記形態の任意の1つにおいて又は他の形態において、デジタル領域内に等化スキーム又は上記機能の他のものを実現するデジタル回路が設けられていてもよく、これは、高い効率及び良好なフレキシビリティを与える。
【0026】
本発明の他の観点によれば、上記形態の任意の1つにおいて又は上記若しくは下記の形態から独立した他の形態において、方法が、上記動きによって生じる信号をできる限り小さくするために上記体と電極との間の上記平均電圧を制御することと、上記センサ電極の容量の測定された変化を用いて上記入力信号を再構成することと、再構成された上記入力信号を処理することにより補償信号を引き出すこととのうちの少なくとも1つを有していてもよく、上記装置が、上記動きによって生じる信号をできる限り小さくするために上記体と電極との間の上記平均電圧を制御し、上記センサ電極の容量の測定された変化を用いて上記入力信号を再構成し、再構成された上記入力信号を処理することにより補償信号を引き出す制御器を有していてもよい。
【0027】
本発明の更なる観点によれば、体の少なくとも1つの電気生理学的信号を測定する方法であって、動きによって生じる信号を低減する又はできる限り小さくするために容量センサ電極と上記体との間の平均電圧を制御する機能を有する当該方法が与えられる。
【0028】
本発明の他の観点によれば、コンピュータプログラムが、動きによって生じる信号を低減する又はできる限り小さくするために容量センサ電極と体との間の平均電圧を制御するステップをコンピュータに実行させるプログラムコード手段を有していてもよい。
【0029】
本発明の1つ又はそれ以上の実施の形態は、上記特徴の任意の1つ若しくはそれ以上又は従属請求項の任意の1つ若しくはそれ以上とそれぞれの独立請求項との任意の組み合わせでもあり得ることを理解されたい。
【0030】
本発明の実施の形態の1つ又はそれ以上は、動きによって生じる信号が、皮膚と電極との間の電場及びその電場に沿った動き成分に比例するという見識に基づいている。
【0031】
1つ又はそれ以上の実施の形態は、動きによって生じる信号が低減される又はできる限り小さくされるように容量電極と体との間の平均電圧を制御するフィードバック機構を提案する。
【0032】
本発明のこれらの観点及び他の観点は、以下に説明する実施の形態から明らかであり、以下に説明する実施の形態を参照して明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】測定機構を説明する基本図を示している。
【図2】本発明に係る一実施の形態の図を模式的及び例示的に示している。
【図3】本発明に係る更なる実施の形態の図を模式的及び例示的に示している。
【図4】本発明に係る更なる実施の形態を示している。
【図5】本発明に係る更なる実施の形態を示している。
【図6】本発明に係る更なる実施の形態を示している。
【図7】本発明に係る更なる実施の形態を示している。
【図8】本発明に係る更なる実施の形態を示している。
【図9】本発明に係る更なる実施の形態を示している。
【図10】本発明に係る更なる実施の形態を示している。
【図11】本発明に係る更なる実施の形態を示している。
【図12】本発明に係る電極の配置の更なる実施の形態を説明している。
【図13】本発明に係る電極の配置の更なる実施の形態を説明している。
【図14】本発明に係る電極の配置の更なる実施の形態を説明している。
【図15】本発明に係る電極の配置の更なる実施の形態を説明している。
【図16】本発明に係る電極の配置の更なる実施の形態を説明している。
【図17】本発明に係る電極の配置の更なる実施の形態を説明している。
【図18】本発明に係る他の実施の形態を例示的に示している。
【図19】図18の実施の形態の観点を例示している。
【図20】図18の実施の形態の観点を例示している。
【図21】本発明に係る他の実施の形態を例示的に示している。
【図22】測定曲線を表している。
【図23】本発明に係る実施の形態の変形例を説明している。
【図24】本発明に係る実施の形態の変形例を説明している。
【図25】本発明に係る他の実施の形態のブロック図を例示的に示している。
【図26】電力曲線図を表している。
【図27】本発明に係る更なる実施の形態を説明している。
【図28】本発明に係る更なる実施の形態を説明している。
【図29】本発明に係る更なる実施の形態を説明している。
【図30】本発明に係る更なる実施の形態を説明している。
【図31】電圧比−時間図を表している。
【図32】電圧比−時間図を表している。
【図33】本発明の実施の形態に係る回路構成を示している。
【図34】本発明の実施の形態に係る回路構成を示している。
【図35】本発明の1つ又はそれ以上の実施の形態に係るデジタル設計を説明している。
【図36】本発明の一実施の形態に係るブロック図を示している。
【図37】本発明の実施の形態に係る回路構成を示している。
【図38】本発明の実施の形態に係る回路構成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
一般に、電気生理学的信号の非接触(容量)測定は、長時間の使用の間の皮膚の炎症、自由な動きから患者を制限すること及び患者に対して低い快適さを与えること、すなわち、患者がモニタリングされていることを意識するという欠点を克服することができる。
【0035】
以下に説明される1つ又はそれ以上の実施の形態による技術では、人間の組織がキャパシタプレートの1つの役割を果たし、センサのプレート電極が他のコンデンサプレートの役割を果たすキャパシタが効果的に形成される。容量の検出では、皮膚へのガルバニック接触は不要(すなわち、非接触検出)であり、それにより、良好な電気的接触を確立するために皮膚の準備及び導電性ゲルの付いた粘り気のあるパッチを必要としない。これは、明らかに有利であり、特に、長期にわたる測定が行われる必要がある場合に有利である。
【0036】
図1は、バッファ増幅器2を伴う容量センサ電極1の回路図の基本的な図を示している。このセンサは、患者の体若しくは皮膚3の近く又は患者の体若しくは皮膚3に接して配され、高インピーダンスバッファ増幅器2に接続された平行板コンデンサを有している。測定電極に接続されたバッファ2は、インピーダンスレベルが干渉に影響を及ぼされることなくケーブルを通して測定系に運ばれるようにインピーダンスレベルを高抵抗から低抵抗に変えることができる。
【0037】
図1では、式
Vac/Vdc=dac/ddc (1)
が当てはまる。Vdcはキャパシタ電極1、3間の平均電位差であり、Vacはバッファ増幅器2により検出される動きによって生じた電圧変化であり、ddcはキャパシタ電極1,3間の平均距離であり、dacはキャパシタ電極1、3間の動きによって生じた時間距離である。
【0038】
より複雑な構造の場合には、上記挙動はわずかに変化するが、本質的には同じである。
【0039】
電極1で実際に測定されるac信号Vmeasuredは、皮膚3における動きによって生じる信号Vacと所望の生体信号Vbioとを足したものである。所望の信号又は動きについての更なる情報が無い場合、これらの信号を分離することは容易ではない。
Vmeasured=Vac+Vbio (2)
【0040】
基本的には、異なる電位の2つの平行なキャパシタプレート間の電場においては、プレート間の動きによって生じる距離の変化が、電場及び距離の変化に比例して望ましくない信号を引き起こす。
【0041】
2つの平行なキャパシタプレートが等しい平均電位に保持されている場合、(外部ソースによる)電場は、この時プレートのほとんど外側にある。センス電極は、適切なシールド又はアクティブガードによりこれらの外的影響から遮蔽される。明らかに、例えば電源からの外的な電場は、アクティブガード及び接地遮蔽(grounded shielding)のようなよく知られている適切なシールド技術により遮蔽される。しかしながら、皮膚3と電極1との間の電場は、所望の信号結合に欠かせない部分であり、遮蔽されることができない。実施の形態の1つ又はそれ以上によれば、電場は、例えば電極と皮膚との間の平均電圧を制御することにより及び/又は動きが生じる空間において制御不可能な電荷を発生させる任意の絶縁材料若しくは電気的に浮いている導体を避けることにより制御される。
【0042】
皮膚と電極との電位差は、2つの表面の材料の違いからも生じる。これらの電位差は、真空中での仕事関数の差、電解質環境中におけるガルバニ電池電位及び空気中でのラビングされた電極に関する帯電列に関係がある。上記電位差は、材料及び表面の状態に依存し、仕事関数及び電解質電位については典型的にはボルトのオーダーである。空気中の表面については、非常に似た電位差が存在し、それらは、温度、湿度、コンタミネーション、酸化によって1ボルトの十分の幾らか変化する。人間の皮膚の場合には、表面電位は、多くの生理学的観点にも依存する。例えば、皮膚のナトリウム及びカリウムイオン密度は、水分補給(hydratation)及び伸び(stretching)に依存する。従って、体とセンス電極とが同じガルバニ電位にあるときであっても、電極−体間の距離の変化と組み合わせられて動きによって生じる信号を引き起こす皮膚と電極との間の大きな電場が依然として存在し得る。
【0043】
実施の形態の1つ又はそれ以上によれば、生じる動き信号をできる限り小さくするように体と電極との間の平均電圧を制御するメカニズム又は機能が与えられている。以下に説明される実施の形態に係る方法及びデバイスは、体と電極との間の電場を効果的に最小化し、従って、動きアーチファクトの根本的原因を取り除く。
【0044】
体3と電極1との間の平均電圧を制御するために、体3とガルバニック接触する参照電極4が設けられる。上記制御は、種々のやり方で達成されることができ、例えば図2ないし図11の回路図を参照されたい。
【0045】
図2は、参照電極4の電圧が参照電極4に接続された電圧源5によって制御される実施の形態である。この実施の形態では、電圧源5は、参照電極4とグランド又は参照電位部6との間に接続されている。抵抗7は、参照電位部6とバッファ2との間に接続されている。
【0046】
図3、図4は、センス電極1の電圧が電圧源又は電流源により制御される実施の形態を示している。図3では、電圧源8が抵抗7を介してセンス電極1に接続されている。この実施の形態では、参照電極4は、グランド又は参照電位部6に直接接続されている。電圧源8は、抵抗7の1つの端子とグランド又は参照電位部6との間に接続されている。抵抗7の他の端子は、バッファ2及びセンス電極1に接続されている。
【0047】
図4では、電流源9が、センス電極1の出力部とグランド又は参照電位部6との間に接続されている。この実施の形態では、抵抗7は、電流源9に並列接続されている。参照電極4は、グランド又は参照電位部6に直接接続されている。この実施の形態では、センス電極1の出力部は、通常、抵抗7の1つの端子、バッファ増幅器2の入力部及び電流源9の端子に接続されている。抵抗7の他の端子は、グランド又は参照電位部6に接続されている。
【0048】
バッファ増幅器2及び並列抵抗7の入力インピーダンスが極めて高いと、例えば、10ギガオーム又は50ギガオームよりも大きいと、例えば図4の電流源の解決策は、積分制御回路のように効果的に機能する。
【0049】
他の実施の形態では、最小化フィードバック機構において体3とセンス電極1との間の電圧を制御するために生じた動き信号を測定することができる任意の技術が用いられる。幾つかの例は、以下の通りである。動きが分からないとき、(例えば、所望の信号の周波数帯域外にある)自然の動きによって生じる信号(の全部又は一部)がセンス電極信号から分離されるようにセンス電極信号に対して後処理フィルタリング技術が適用され、この分離された信号が最小化スキームにおけるフィードバックのために用いられる。これは、最小化に向かう適切な方向を見出すための幾つかの段階的な又は変調されたフィードバック信号を含んでいる。これは、以下に述べられる実施の形態において更に説明される。
【0050】
動きが他の手段により、例えば、アクチュエータによって生じる既知のモーションシステムから又は加速度計若しくは光センサ等のような分離した動きセンサから分かっていると、この既知の動きが、適切なフィードバック信号を得るためにセンス電極1からの信号と関連付けられる/多重される。平均の関連付け/多重の結果が、知らされるので、追加の変調をする必要なくフィードバック信号として直接用いられ得る。以下に述べられる実施の形態において例が与えられる。
【0051】
フィードバック回路自体は、測定電極1又は体の参照電極4に影響を与え、回路のグランド6は、体の参照電位部に選択されるか又は電極電位部若しくは他の電位部の近くに選択される。
【0052】
これらの実施の形態又は他の実施の形態では、体3と電極1との間の平均電圧が制御される。
【0053】
動きアーチファクトをできる限り小さくする体と電極との間の平均電圧が温度ドリフト及び電気化学的な表面変化に対しては専らゆっくりと変化するので、フィードバックループは相対的に遅い。体と電極との間の最適な平均電圧の場合、上記動きによって生じる信号は、広範囲の周波数に関して最小化される。フィードバックループは系の種々の他のゆっくりと変化するオフセットを自動的に補償することにも注意されたい。
【0054】
体と電極との間の平均電圧を制御するために、フィードバックシステムと体及び電極の両方とのガルバニック接続が必要とされる。しかしながら、フィードバックは相対的に遅く、漏れ電流のみが克服されなければならないので、当該ガルバニック接触に関する要求は、非常に穏やかである。例えば、わずかに導電性の媒質を介して専ら間接的に体3に触れている参照電極4でも十分である。極端であるが実際のケースは、例えば、テキスタイルの層を介して体3と明らかな容量的なつながりがあり、非常に不十分な導電性の接触のみを持つ相対的に大きい電極4である。不十分な導電性の接触は、相対的に遅いフィードバックに対して及びクリッピングを避けるには十分である。参照電極4の容量部分は、ここでは上述した形態と同じように動きアーチファクトを引き起こす。しかしながら、複数の容量センサが同じ参照電極に接続され、それらの複数の容量センサ間の電圧の差を専ら測定する場合は、参照電極4の動きによって生じる信号は同相信号である。この同相信号は、容量センサ内の更なる寄生性の影響が適宜に避けられるとき、差動又は計装用増幅器により容易に除去される。
【0055】
図5は、大きいコモン容量性参照電極11からの動きアーチファクトが差動又は計装用増幅器16により除去される実施の形態を示している。クリッピングを防止するために、参照電極11と皮膚3との非常にわずかなガルバニック伝導のみが必要とされる。図5の実施の形態は、上述したように接続された図4の構成要素を有するとともに、更に、第2のセンス電極12と、センス電極12の出力部とグランド又は参照電位部6との間に接続された電流源14を含んでいる。この実施の形態では、抵抗13が電流源14と並列に接続されている。参照電極11は、グランド又は参照電位部6と、抵抗7,13及び電流源9,14の端子とに直接接続されている。この実施の形態では、センス電極12の出力部は、通常、抵抗13の1つの端子、バッファ増幅器15の入力部及び電流源14の端子に接続されている。抵抗13の他の端子は、グランド又は参照電位部6に接続されている。バッファ2の出力部は差動増幅器16の非反転入力部に接続されているのに対して、バッファ15の出力部は差動増幅器16の反転入力部に接続されている。バッファ2,15の出力部と増幅器16の入力部との接続は、相互接続素子によって反転されても又は与えられてもよい。
【0056】
本発明の1つ又はそれ以上の実施の形態は、相対的に遅いフィードバックを用いるので、信号の品質を改善し、アーチファクトを除去しようとする多くの他の技術と組み合わせられ得る。例えば、標準的な動きアーチファクトフィルタリング技術は、種々の形で作用するので、本発明の実施の形態と組み合わせられ得る。
【0057】
上記方法の実施の形態は、所望の電気生理学的信号の伝達関数における任意の動きによって生じる変化が補償される又はされないように実行される。例えば、中和が、これらのタイプの動きアーチファクトを低減するために用いられ、本発明の実施の形態と組み合わせて用いられる。
【0058】
上述した若しくは以下に述べられる実施の形態又はより一般的にはDRL(driven−right−leg)システムのような同相(common mode)干渉を低減する生体信号増幅器に加えられる電気回路の利点は、電極1、12のような2つ又はそれ以上の測定電極間の望ましくない同相信号が低減されることである。実際の実現は、典型的には、体3と電極との間の平均電圧も設定する。本発明に係る1つ又はそれ以上の実施の形態のフィードバックは相対的に遅く、望ましくない同相信号は50Hz又は60Hzの送電網の周波数のような非常に高周波であるので、そのようなDRLシステム及び上記説明された実施の形態の利点は容易に組み合わせられる。
【0059】
以下に、共通に設けられた複合電極を用いる動きアーチファクトが低減される容量センサの実施の形態が説明される。
【0060】
上述したように、電気生理学的測定用の容量センサは、容量電極と体との間の変化する距離のために動きアーチファクトに悩まされる。これらのアートファクトは、大体の場合、皮膚と電極との間の平均電場の存在のためである。以下に述べられる又は上述した実施の形態の1つ又はそれ以上によれば、動きによって生じる信号が低減される又はできる限り小さくされるように容量電極と体との間の平均電圧を制御するために共通に設けられた複合電極からの測定信号を組み合わせることが提案される。
【0061】
共通に設けられた複合電極からの信号を組み合わせることにより、動きによって生じた信号に関して情報が得られる。2、3又はそれ以上の電極が用いられる。3電極解決策の特定の選択が、以下により詳細に説明される。実施の形態は、関連する測定回路及び電極についての詳細を与える。
【0062】
以下に説明される実施の形態では、極めて低い入力キャパシタンス、極めて高い入力キャパシタンス、低オフセットの要求に応じ、平均電極電圧を制御する回路素子が与えられる。更に、適切な信号の組み合わせのためのアナログ回路の一例が与えられる。
【0063】
加えて、実施の形態の1つ又はそれ以上に従って対称性の要求を満たすことができる幾つかの電極形状が示される。
【0064】
上述したように、図1に示されているバッファ増幅器2を伴う容量センサ電極1の基本的な回路図では、式
Vac/Vdc=dac/ddc (3)
が当てはまる。
【0065】
動きによって生じる信号Vacの基礎となる量Vdc、ddc及びdacは、実際の状況では本質的に未知数である。
【0066】
電極で実際に測定されるac信号Vmeasuredは、皮膚における動きによって生じた信号Vacと所望の生体信号Vbioとを足したものであり、これは、所望の信号又は動きについての更なる情報が無い場合、容易に分離されない。
Vmeasured=Vac+Vbio (4)
【0067】
実施の形態の1つ又はそれ以上によれば、本質的に同じ場所で皮膚の電位を測定する複数の電極を組み合わせる場合、それらの電極は本質的に同じVbioを共有するが、異なる平均電圧及び/又は異なる平均距離において、動きについての情報が得られ、動きアーチファクトが低減された信号を得るために適切なフィードバック信号が与えられる。
【0068】
実施の形態の1つ又はそれ以上によれば、3電極解決策が与えられる。この上記概念の変形例が、より詳細に説明される。本質的には同じ(未知数の)生体信号Vbioを感知し、本質的には同じ(未知数の)動きdacを経る3つの共通に設置された電極a,b及びcが用いられる。電極aは、(未知数の)平均距離d及び(未知数の)平均電圧Vにある。電極bは、平均距離d+Δd及び平均電圧V+ΔVにあり、電極cは、同じく平均距離d+Δdにあるが、平均電圧V−ΔVにある。静的形状パラメータΔd及び静的電圧差ΔVは既知である。生じた動き信号を式に当てはめると、3つの電極に関する以下の測定信号に達する。
Va=Vbio+Vdac/d (5)
Vb=Vbio+(V+ΔV)dac/(d+Δd) (6)
Vc=Vbio+(V−ΔV)dac/(d+Δd) (7)
【0069】
これらの測定信号を組み合わせることにより、未知数Vbio及びdacが取り除かれ、未知数Vとdとの有用な関係、例えば、
V=d(ΔV/Δd)(Vb+Vc−2Va)/(Vb−Vc) (8)
が築かれる。
【0070】
電極と皮膚との間の距離dは、既知ではないが、明らかに正でなければならない。
【0071】
従って、信号の組み合わせ
(Vb+Vc−2Va)/(Vb−Vc) (9)
は、未知数Vに比例し、比例定数が分からなくても、比例定数の符号は分かる。従って、この式は、未知数Vをゼロに向けて駆動するためにフィードバックスキームにおいて用いられる。これは、本質的には電極のための電場をゼロにして、順に電極の測定信号をVbioに等しくし、従って、動きアーチファクトをなくす。測定信号の他の関数も考えられる。
【0072】
3信号間の関係を明確にするために、更に、まず、回路が最適平均電圧V=0あたりにおいて平衡である状況が考えられる。このケースでは、電極aの測定信号Vaは、所望の生体信号Vbioを直接表し、電極b及びcの測定信号Vb及びVcは、+/−ΔVdac/(d+Δd)の電位差だけその周りに対称的にそれる。言い換えれば、電圧差Vb−VaとVa−Vcとは等しい。この時、3つの電極全ての平均電圧がV>0であるように上昇すると、電極bと電極aとの電圧差は
Vb−Va=dac(dΔV−VΔd)/d(d+Δd) (10)
となり、電極aと電極cとの電圧差は
Va−Vc=dac(dΔV+VΔd)/d(d+Δd) (11)
となる。
【0073】
明らかに、電極b及びcの信号はもはや電極aの周りに対称的ではなく、この効果は未知数の平均電圧Vをゼロに駆動するフィードバック信号を生成するために活用される。
【0074】
上述した関数以外にも、多くの他のフィードバックの可能性が存在する。例えば、Δd>0かつΔV>0であると、以下の関数、すなわち、
exp(Vb−Va)−exp(Va−Vc)=exp(dacΔV/(d+Δd))sinh(−dacVΔd/d(d+Δd)
が用いられ得る。
【0075】
上記式を素早く変化する動きdacの関数として扱うと、式中のsinh()関数は、ゼロのまわりに非対称であり、−Vに比例した傾きを持つ一方で、指数関数は、常に正の傾きを有する正である。従って、この関数の平均値は、V=0の望ましい状況に向けてシステムを駆動するために用いられる未知数Vと反対の符号を持つゼロではない値である。log(Vb−Va)−log(Va−Vc)又は(Vb−Va)2−(Va−Vc)2のような多くの他の非線形関数が同様の結果をもたらす。
【0076】
通常、ゼロではない(が未知数の)動きdacが存在する。動きが存在しない場合、動きアーチファクトは生じない。提案される3電極解決策は、3つの電極と測定値との十分な対称性を与える。すなわち、3つの測定系のオフセット及び利得は十分に等しく、測定値に及ぼす寄生の影響は低く、上記に規定された変数ΔV、V、Vbio、d、Δd及びdacは、3つの電極全てに関して十分に等しい値である。これは、全て、適切な電子的及び幾何学的設計により達成される。設計の電子的観点及び幾何学的観点の幾つかが、以下に説明される。上述した3電極解決策の変形例が考えられる。より多くの電極を追加することは、より多くの情報及びより正確なフィードバックを与える。
【0077】
2つの電極のみを用いる実施の形態は、できる限り小さい動きアーチファクトのため、この平均電圧を最適化するフィードバックを与える他の機構を改善するために用いられ得る。別の動き推定機構と組み合わせられた同じ距離にあるが、異なる平均電圧にある2つの共通に設けられた電極が、最適化に向けて正しい方向に平均電圧を駆動するために用いられる。同じ平均電圧にあるが、異なる距離にある2つの共通に設けられた電極は、動きアーチファクト信号の生体信号からの分離に役立つ。
【0078】
以下に、幾つかの回路図面が説明される。各センス電極に対して、容量的に感知される電極信号をできる限り忠実に信号に変換し、電極の平均電圧の制御を可能にもする回路20(図6)が与えられる。この機能は、「イン」ポート21に接続された電極の容量性信号を出力部23において出力信号Voutに忠実に変換する一方で、入力22により与えられるレベルVrefで電極の平均電圧を保持する電極バッファ増幅器を表す参照符号20によって図6に示されている。
【0079】
図7に、標準的な超高入力インピーダンス演算増幅器24を用いたこの機能の基本的な実現が示されている。図7の実施の形態は、単位(1倍)利得を伴う非常に高入力インピーダンスのバッファ増幅器24を用いて電極バッファ増幅器を簡単に実現している。参照電圧が、入力部22から抵抗26を介して入力部21にも接続された増幅器24の非反転入力部に供給される。増幅器24の出力23は、単位利得を与えるためにフィードバックループ25を介して該増幅器の反転入力部に直接フィードバックされる。
【0080】
図7の回路は、生体信号のフィルタリングがほとんどない高入力インピーダンス用の抵抗26の望ましい高いR1値と、増幅器の入力バイアス電流による望ましくないオフセットとの間のトレードオフを与える。
【0081】
図8は、入力段のオフセットを減少させ又は取り除き(積分器の入力電圧のオフセットのみを残す)、更に高く回路の入力インピーダンスのレベルを上げるメカニズムを与える追加の積分回路27,28を加えることによりこのトレードオフを大いに克服する実施の形態を示している。演算増幅器27は、積分器として機能するためにそのフィードバックループ内にキャパシタ28及び抵抗30を有している。出力部23は分圧器に接続されており、分圧器は接続点が増幅器27の反転入力部に接続されている直列接続された抵抗29、30を有する。入力部23は、更に、第2の分圧器に接続されており、第2の分圧器は、接続点が増幅器27の非反転入力部に接続されている、出力部23とVref入力部22との間に直列接続された抵抗31、32を有する。
【0082】
時定数R2×C1(構成要素29、28)は、オフセット補償のゆっくりとした積分を駆動し、抵抗30(R3)は、より高い周波数において相安定性を向上させる手段を与え、抵抗31に対する各抵抗の和の比(R5+R4)/R4は、回路の効果的な入力インピーダンスための倍率としての役割を果たす。
【0083】
実際には、これらの回路は、動きにより変化する皮膚−電極間の容量とともに回路の信号伝達関数において望ましくない動きアーチファクトを作り出す大きな入力容量を持っている。既に述べたように、これは既知のアクティブガード及び中和回路により低減され得る。
【0084】
図9は、能動的に結合された増幅器の電源レールのために入力容量が大きく低減される回路の一例の形の実施の形態を示している。図9は、増幅器の内部電源レールを単位利得出力部と能動的に結合することにより入力容量を効果的に取り除く可能性を示している。この技術は、外部の寄生容量(ここでは図示せず)に対する既知のアクティブガードとオプションで組み合わせられる。図9に示されている回路は、増幅器33の出力を該増幅器の反転入力部に直接接続する負のフィードバックループ34を有する単位利得増幅器33を使用している。この回路は、+15Vのレールから例えば+5Vの正の供給電圧を与える標準的な電力レギュレータ35と、−15Vのレールから例えば−5Vの負の供給電圧を与える標準的な電力レギュレータ37とを有している。レギュレータ35,37の+5V、−5Vの電圧出力は、それぞれのキャパシタ36、38により増幅器33の出力39に接続され、参照される。図示されている回路は、標準的な電力レギュレータを使用しているが、例えば、チャージポンプ、バッテリーのような浮動電源又は変圧器を用いた同じ基本的な考えを使用する他の回路も考えられる。この実施の形態及び他の実施の形態では、任意の寄生容量がアクティブシールドされるか、又は単位利得出力に能動的に結合される。
【0085】
図10は、3電極解決策を実現する一実施の形態の基本的な実現を説明する図を示している。電極40、42に対応する電極b及びcは、電極a(電極41)よりも皮膚からわずかに更に離れている。フィルタブロック43は、図6に示され、図6を参照して説明されたような回路20を介して電極a、b及びcから信号を受け取り、各電極40〜42の平均電圧についての適切なフィードバック信号を生成し、動きアーチファクトが大きく低減された出力信号44を生成する。
【0086】
フィルタブロック43及び3つのバッファ増幅器20は、デジタル回路を含む多くのやり方で実行され得る。
【0087】
図11は、3電極解決策に関して考えられるアナログフィルタの実現を具現化する実施の形態を示している。図11は、提案される3電極解決策の単純化されたアナログの実現を示している。ここでは、電流源51と、ダイオード46(D1)及び50(D2)と、演算増幅器47とが、電極40〜42に対する回路20のVref入力部に印加される+ΔV及び−ΔVの参照電圧を与え、キャパシタC1とともにダイオード48(D3)及び52(D4)が測定された電極信号から適切な非線形フィードバック機能を導き出す。非線形フィードバック回路の効果的な動きフィルタリング時定数は、電流源51により供給される電流で割られたキャパシタンス49(C1)に比例する。キャパシタンス49の一端子は、増幅器47の非反転入力部、ダイオード48のカソード及びダイオード52のアノードに接続されている。キャパシタンス49の他の端子は、電極41と結合された回路20の出力部及び出力部53に接続されている。ダイオード46,50は、増幅器47の出力部と電流源51との間に直列につながれている。ダイオード46のアノードは、電極40に結合された回路20のVref入力部に接続されている。ダイオード46のカソードは、電極41に結合された回路20のVref入力部に接続され、ダイオード50のカソードは、電極42に結合された回路20のVref入力部に接続されている。
【0088】
上述した及び以下に述べる共通に設けられた電極を用いる実施の形態に関して、提案される手法のオプションの特徴は、電極40〜42が、本質的に同じ生体信号Vbioを測定し、皮膚の表面と電極表面との間に本質的に同じ電気電位差Vを共有し、本質的に同じ動きdacを共有するとともに、電極b及びcが、皮膚から本質的に同じ共通の距離にあることである。講じる第1の手段は、電極40〜42を近くに組み立てることであり、皮膚表面においてそれらを位置決めする好適な機械的取り付けを与える。
【0089】
図12は、例えば三つ組(triplet)又は三角形の形に配された、同じ信号及び動きを経験する近くに共通に設けられた電極40〜42(a、b及びc)を示している。
【0090】
皮膚の湾曲、電極の傾斜及び皮膚の表面に沿った信号勾配に対して感受性を低くするために、より対称の電極アセンブリを用いることが有効であり、例えば、図13、14、15を参照されたい。図14、15の実施の形態では、電極b及びcのそれぞれが、複数の電極セグメントに分割されている。図14の実施の形態では、電極c,bのセグメントが、中心の電極aを取り囲む円に沿って交互に配されている。これらの複数の電極のセグメントは、当該電極用の信号バッファ増幅器に電気的に接続されている。図14の実施の形態は、電極bと電極cとの容量の対称性も維持するより対称な電極アセンブリを与える。電極bの種々のセグメントは電気的に接続されている。同じことが電極cについて当てはまる。
【0091】
図15の実施の形態では、電極b,cの電極セグメントは、中心の電極のaの周りにマトリクス状に配されており、4倍の対称性を示す。
【0092】
電気回路の適切な動作のために、ある最小の電気表面領域が必要とされる。電極の共通設置を更に優れたものにするために、上記領域を複数のより小さい電極セグメントに分割することが可能であり、図16及び図17を参照されたい。これは、皮膚及び信号の勾配に対する距離の小さい偏差の更に優れた平均化を与える。セグメント内の文字は、それぞれのセグメントが関係する電極を示している。図16,17の両方の実施の形態は、多数のより小さい電極にわたる平均化を与える。セグメント内の文字は、各セグメントに関連する電極を表している。図16はハニカム状の構造を示し、図17は電極セグメントが交互に配されたマトリクス状の配列を示している。
【0093】
明らかに、より多くの形状が同様に有利に可能である。3ではない異なる数の共通に設けられる電極を用いた他の解決策の場合、同様の推論がわずかに異なる電極のパターンをもたらす。
【0094】
電極間容量はかなり大きく、複数の電極セグメントを用いると増大する傾向があることに注意されたい。そのような作用を避ける又は低減するために、電極は適切なアクティブガード方式を用いて互いに遮蔽される(ここでは図示せず)。電極が意図された皮膚領域のみに曝されるように外部電場もまた適切にガードされる。
【0095】
単独で実行されてもよいし、上述した実施の形態の1つ又はそれ以上と自由に組み合わせられてもよい本発明に係る実施の形態の1つ又はそれ以上によれば、容量性の生体電気感知における動きアーチファクトの減少は、振動プローブを用いて達成される。
【0096】
上述したように、例えば電気化学的電位差と増幅器のバイアスオフセットとによる皮膚−電極間の距離の変化と皮膚−電極の容量性カップリングを通したオフセット電圧(すなわち、電場)の存在との組み合わせは、電気生理学的測定においてアーチファクトを引き起こす。以下に説明される本発明に係る実施の形態では、フィードバック機構と組み合わせて振動容量性プローブを用いてオフセット電圧を補償することによりアーチファクトを著しく減少させる方法及びデバイスが提案される。
【0097】
上述した実施の形態では、動きによって生じる信号は、電極と皮膚との間の電場とこの電場に沿った動き成分との両方に比例する。上述したように、体と電極との間の平均電圧は、体と電極との間の電場及び従って動きによって生じる信号ができる限り小さくなるように能動的に制御され得る。体と電極との間の平均電圧を制御するために、参照電極が設けられる。小さく、ゆっくりと時間的に変化する電圧のみが制御される必要があるので、そのガルバニック接続に関する要求は非常に穏やかである。例えば、わずかに導電性の媒質を介して専ら間接的に体に触れている参照電極でも十分である。上記制御は、種々のやり方で実現されることができ、電極−体間の電圧降下を制御する種々の構成を説明する幾つかの例に関しては添付図面の図2ないし図4の回路図を参照されたい。以下の記載は、体と電極電界との容量性カップリングをどのようになくすかの解決策について説明する。
【0098】
上述したように、例えば電気化学的電位差と増幅器のバイアスオフセットとによる皮膚−電極間の距離の変化と皮膚−電極の容量性カップリングを通したオフセット電圧(すなわち、電場)の存在との組み合わせは、電気生理学的測定においてアーチファクトを引き起こす。この問題の詳細な説明が、容量の電気生理学的測定の模式図を示した図18によって与えられる。左から右に向かって、この図は、生体電気信号55(Vbio(t))、N(t)に従って時間的に変化する皮膚−電極間キャパシタンス57(Ce)、バッファ増幅器60の入力キャパシタンス54(Ci)、バイアス抵抗59(Rbias)、及びフィードバックループ61と、関連する出力Vout(t)とを伴うバッファ増幅器60を示している。DCは、入力キャパシタンス57(Ce)間のオフセット電圧を表している。
【0099】
この実施の形態では、入力キャパシタンスCiが既知の中和技術を用いて取り除かれると仮定している。図19に、センサの伝達関数及び周波数応答がそれぞれ示されている。図19において、容量センサの伝達関数は左側に示され、容量センサの周波数応答は右側に示されている。
【0100】
図20は、皮膚−電極のカップリングを通したオフセット電圧がない場合とある場合とをそれぞれ組み合わせた時間的に変化する皮膚−電極のカップリングの影響を示している。図20は、時間的に変化する皮膚−電極のカップリング(60Hz)でのシミュレーションされたセンサの出力電圧を示している。t=0sから200msまで生体電気信号(10mV/30Hz)が測定されている。200msを超えてから、50mVのオフセット電圧が加えられ、センサの読み出しにおいて明らかにアーチファクトを招いている。
【0101】
図21ないし図24に係る実施の形態では、同期検出器及びフィードバック機構と組み合わせて振動容量性プローブを用い、皮膚−電極間のキャパシタンス(すなわち、電場)間の電圧降下を補償することによってアーチファクトを著しく減少させる方法及びデバイスが提案される。この観点が、図21によってより詳細に説明される。図21は、動きアーチファクトの補償を伴う容量生体電気センサの一実施の形態を説明している。図21は、生体電気信号55(Vbio(t))、N(t)に従って時間的に変化する皮膚−電極間キャパシタンス57(Ce)、バッファ増幅器60の入力キャパシタンス54(Ci)、バイアス抵抗59(Rbias)、及びフィードバックループ61と、関連する出力Vout(t)とを伴うバッファ増幅器60を示している。
【0102】
動きアーチファクト信号S(t)は、自然動き信号(natural motion signal)N(t)のオフセット電圧DC倍に等しい。
S(t)=DC・N(t) (12)
【0103】
オフセット電圧を中和する、すなわち、強制的にDC=0にすることにより、動きアーチファクトが最小化される。この目的を達成するためにここで説明される方法及びデバイスは、以下の通りである。
【0104】
参照振動R(t)を容量性プローブ、例えば、電極1、12のようなセンサ電極に加えると、単位利得増幅器60の入力部に与えられる
S(t)=DC・(N(t)+R(t)) (13)
の動きアーチファクト信号がもたらされる。
【0105】
乗算器63において式(13)にライン62を介して与えられる参照振動R(t)を掛け合わせると、
M(t)=DC・(N(t)+R(t))・R(t)
=DC・N(t)・R(t)+DC・R(t)2 (14)
となる。好ましくは、R(t)は、R(t)=rcos(ωRt)と記述される正弦波であり、その結果、
M(t)=DC・N(t)・R(t)+1/2・DC・r2+1/2・DC・r2cos(2ωRt) (15)
である。
【0106】
オシレータ56により生成される上記振動の周波数ωRは、好ましくは生体電気周波数帯域外にある。式(15)の積分は、M(t)のAC部を平均する。次に、DCのゼロからのずれを表す積分器64のような積分器の出力信号が、参照電極、例えば電極4又は11を介して体にフィードバックされ、加算器58によって示されているように、DCから効果的に差し引かれる。代替として、積分器64の出力は、センス電極1、12等にフィードバックされる。ループの収束後、これは、オフセット電圧の中和(DC=0)及び従って動きアーチファクトの低減/除去をもたらす。
【0107】
図22によれば、シミュレーションの結果は、この動きアーチファクトを低減する技術の効果を明らかに示している。図22によれば、t=0sから0.2sまで生体電気信号(10mV/30Hz)が測定されている。t=0.2sにおいて、DC電圧(−50mV)及び自然振動(60Hz)が加えられ、これは明らかに動きアーチファクトを引き起こしている。t=0.6sにおいて、参照振動が与えられている。t=0.8sを超えてから、復調及びフィードバックループが作動し、これは明らかに動きアーチファクトの排除をもたらしている。すなわち、センサが動きを経験しているという事実にもかかわらず、生体電気信号のみを見ることができる。
【0108】
この観点に係る実施の形態は、上述したような積分器の使用に限定されるものではない。他のより理にかなったフィルタ/制御器、例えば、素早いループの収束と精度とを兼ね備えた適応帯域幅を持つ非線形制御器又はフィルタが考えられる。
【0109】
本発明のこの観点及び他の観点に係る実施の形態は、振動プローブの使用によって動きアートファクトのない生体電気信号を与える。
【0110】
電気生理学的信号からの動きによって生じる信号の統計的独立は、バネ又はカンチレバーのような弾性物体を介して筐体にセンサを機械的に取り付けることによって人工的に高められる。外部の動きによって刺激されると、結果として得られる質量−バネ系がその自然周波数において最初に周期的に振動(oscillate)する。結果として、センサ信号中の動きによって生じる信号は、先験的に知られている周波数範囲において生じ、振動の刺激が電気生理学的信号と関連しているにもかかわらず、周期的振動(oscillation)はない。
【0111】
実施の形態では、予め規定された基準に従う容量センサの振動が、種々のやり方で行われ得る。
【0112】
図23及び図24は、2つの考えられる実現を示している。本発明のこの観点は、これらの実施の形態に限定されないことに注意されたい。
【0113】
図23は、センサ又は参照電極68に取り付けられた振動素子70が矢印69の方向にセンサ又は参照電極68を直接機械的に動かす当該センサ67の実現を示している。振動素子70は電線71を介して動かされる。センサ67の出力信号は、ライン73を介してセンサ電極68及び出力部に接続されたバッファ増幅器72によって生成される。
【0114】
図24は、振動素子70がプローブカプセル、例えばセンサ67のケースの外側又は内側に取り付けられ、矢印69の方向にプローブカプセルを直接機械的に動かす他の実現を示している。振動素子70は電線71を介して動かされる。センサ67の出力信号は、ライン73を介してセンサ電極68及び出力部に接続されたバッファ増幅器72によって生成される。センサ67は筐体74内に配されている。
【0115】
図23及び図24では、電極68及びバッファ増幅器72の両方が、振動素子70からのクロストーク及び外部干渉を適切に遮蔽される。
【0116】
以下の技術、すなわち、エレクトレットを使用した動きによる電磁誘導、電磁気的な動き、(積層されたアクチュエータのデザイン及びバイモルフのデザインを含む)ピエゾ、熱膨張を使用した動きによる電磁誘導、空気圧及び電気活性ポリマは、例えば振動を生成するために用いられる。上記振動素子が大きい所望の動きを作り出すことができない場合、小さい振動を大きい振動に変換するスマートレバーシステムを用いることが可能である。また、共鳴中で振動素子を動作させることも、例えばエネルギー消費を低減するために有効である。
【0117】
以下において、適応混合最小化を用いる動きアーチファクトが低減される容量センサを有する実施の形態が説明される。これらの実施の形態は、個々の解決策として用いられ、オプションで、上記に又は以下に説明される又は示される他の実施の形態の一部又は全部と組み合わせられ得る。
【0118】
上述したように、容量センサにおける動きアーチファクトは、電極−体の平均電圧を制御することにより低減される。以下の実施の形態は、センス電極信号から直接的にこの電圧の指標を抽出し、補償信号を制御するために該指標を用いることを提案する。平均電圧は、温度ドリフト及び電気化学的な表面変化のために時間的に専らゆっくりと変化するので、この制御系は相対的にゆっくりとしたペースで動作する。実施の形態の1つ又はそれ以上に係る提案される後処理方法は、動きによって生じる信号及び関心のある電気生理学的信号の統計的独立を利用する。混合は、部分的に加法的であるので、一実施の形態では、用いられる指標は平均センサ信号電力は補償信号に等しく、補償信号は平均電力ができる限り小さくなるように制御される。
【0119】
上述したように、動きによって生じる信号は、電極と皮膚との間の電場及びこの電場に沿った動き成分の両方に比例する。この見識に基づいて、体と電極との間の電場及び従って動きによって生じる信号ができる限り小さくされるように体の電極との間の平均電圧を積極的に制御することが上記において提案されている。体と電極との間の平均電圧を制御するために、参照電極が設けられる。小さく、ゆっくりと時間的に変化する電圧のみが制御される必要があるので、そのガルバニック接続に関する要求は非常に穏やかである。例えば、わずかに導電性の媒質を介して専ら間接的に体に触れている参照電極でも十分である。上記制御は、種々のやり方で実現されることができ、幾つかの例に関しては電極−体間の電圧降下を制御する種々の構成を示した図2ないし図4及び更なる図の回路図を参照されたい。
【0120】
以下の実施の形態では、後処理方法によってセンス電極信号から直接的に抽出される体と電極との間の平均電圧の指標を用いることが提案される。この観点に係る実施の形態は、センサ信号は、電気生理学的信号と動きによって生じる信号との(部分的に加法)混合されたものにより構成されるという見識に基づいている。更に、関心のある電気生理学的信号及び動きによって生じる信号は、統計的に独立していると仮定され、これは少なくともECG及びEEG信号には妥当である。この指標は、動きアーチファクトの低減の有効性についてのフィードバックを得る手段を与え、平均電圧を能動的に制御するために用いられる。
【0121】
電気生理学的信号からの動きによって生じる信号の統計的独立は、バネ又はカンチレバーのような弾性物体を介して筐体にセンサを機械的に取り付けることによって人工的に高められる(例えば図21ないし図24を参照されたい。)。外部の動きによって刺激されると、結果として得られる質量−バネ系がその自然周波数において最初に周期的に振動する。結果として、センサ信号中の動きによって生じる信号は、先験的に知られている周波数範囲において生じ、振動の刺激が電気生理学的信号と関連しているにもかかわらず、周期的振動はない。
【0122】
図25のブロック図は、上記問題及び本発明に係る実施の形態の両方の原理を模式的に示している。体と電極との間の平均電圧が存在する場合、センサ78の伝達関数S(f)の時間変化は、S(f)VAVの形の動きアーチファクトを引き起こす。適応後処理ブロック81は、センサの出力信号80を解析し、体と電極との間の電場ができる限り小さくされ、動きによって生じる信号が低減されるように出力V∧AVを生成する。後処理ブロック81の出力V∧AVは加算器77に与えられる。加算器77は、検知された信号VBIOを平均電圧VAVに加算する加算器76の出力を更に受け取る。ブロック81を有するフィードバックループは、体と電極との間の平均電圧が温度ドリフト及び電気化学的な表面変化のために専らゆっくりと変化するので、フィードバックループは相対的に遅いことに注意されたい。体と電極との間の最適平均電圧の場合、動きによって生じる信号は広範囲の周波数に関して最小化される。フィードバックループは系の種々の他のゆっくりと変化するオフセットを自動的に補償することにも注意されたい。以下の実施の形態では、デジタル処理によって平均の電極−体間の電圧の指標を取り出すセンサ信号の解析についての種々の方法が提案される。その理由のために、センサ信号x(t)は適切にサンプリングされ、量子化されており、補償信号V∧AVがデジタル領域から制御され得ることが仮定される。
【0123】
オプションで、増加する動きアーチファクトを引き起こす動きによって生じる電気生理学的信号の伝達の変化(S(f)VBIO)は、この種の動きアーチファクトを低減するために中和を用いて補償される。これらの技術は、本発明の実現に従って以下に説明される実施の形態と組み合わせられ得る。
【0124】
実施の形態の1つ又はそれ以上によれば、適応電力最小化が与えられる。典型的には、少なくともECG及びEEG信号は経時的な持続性及び規則性を示し、平均信号電力は専ら非常に穏やかに変化する。センサ信号は、電気生理学的信号と動きによって生じる信号との加法混合により構成され、従って、DCのない信号の平均電力もまた体と電極との間の平均電圧の指標を与える。補償信号V∧AVが変化すると、平均信号電力対制御信号を示した図26に視覚化されているように、センサ信号の電力P及び従って動きによって生じる信号が最小化される或る値Pminが存在する。
【0125】
勾配降下のような反復最適化アルゴリズムは、センサ信号電力P(t)の最小化を達成するために補償信号を適合させる簡単な方法を提供する。補償信号V∧AVをt=t0からt=t1まで更新する典型的なスキームは、
(16)
により与えられる。ここで、適応定数αは、収束速度及び定常状態におけるノイズを制御する。任意の反復最適化アルゴリズムが適用され得るので、ここで示されている勾配降下法は、単に一例を成しているにすぎない。
【0126】
勾配の推定値を得る簡単な方法は、有限差分近似、すなわち、
(17)
によるものである。ここで、t0及びt1における補償信号の値は等しくないと仮定される。変調又はウォブリングに基づく他の方法もまた局所勾配を決定するために適用され得る。
【0127】
上記実施の形態では、センサ信号の平均電力が最小化の基準として用いられる。代替として、センサ信号はプレフィルタされることができ、電力が決定される或る周波数帯域が用いられる。実際のアプリケーションに依存して、この代替の手法は、電気生理学的信号と動きによって生じる信号とのより優れた分離を与え、方法のロバスト性を高める。
【0128】
1つ又はそれ以上の他の実施の形態によれば、適応シャノンエントロピの最小化が用いられる。シャノンエントロピは、信号の平均情報量を定量化する。センサ信号は、電気生理学的信号と動きによって生じる信号との加法混合により構成され、適応V∧AVによるエントロピの最小化は動きアーチファクトを低減する手段を与える。上記情報エントロピは、信号の確率質量関数p(x)により決定される。すなわち、
(18)
である。ここで、対数の底、例えばe、2又は10が、フィードバックの単なる利得係数であるエントロピの単位を決定する。実際には、データは離散的であり、H(x)は、典型的には確率質量関数の推定p∧(x)、例えばヒストグラムから得られ、従って、
(19)
である。
【0129】
エントロピが低いほど、信号はより予測可能であり、より少ない情報が含まれている。再度、補償信号を更新するために反復最適化、例えば、最急降下が適用され、勾配は、例えば有限差分近似により得られ、従って、
(20)
である。
【0130】
負エントロピ、非ガウス性(non-Gaussuanity)等のような他の情報理論的尺度に基づくアルゴリズムも、信号の独立成分の指標として用いられる。
【0131】
以下に、単独で又は上記若しくは下記において説明される若しくは示される他の実施の形態との任意の組み合わせで用いられる実施の形態が説明される。
【0132】
生体信号の容量の検知のための適応プローブの伝達等化が提案される。
【0133】
上述したように、動きによって生じるアーチファクトは、カップリング容量が被験体の動きにより生じる皮膚−電極間の距離の変化によって変化する場合に引き起こされ、これは測定される電気生理学的信号の劣化を招く。この問題は、測定が自由に動く被験体に対して行われるアプリケーションにおいてより大きくなる。
【0134】
図27は、人間の体84に接続され、容量センシング及びバッファリングを与える典型的なプローブ83の電気モデルを示している。インピーダンスレベルを高抵抗から低抵抗に変えるために、バッファ88(A1)が測定キャパシタ85Ceに接続されており、その結果、インピーダンスレベルは干渉に影響されることなく測定系までケーブル89を超えて運ばれる。このバッファ88は、先験的に知られていない入力キャパシタンス87を有している。しかしながら、上記バッファの入力キャパシタンス87は、測定キャパシタンスCeと同じオーダーである。従って、容量分割の結果として、バッファ88の出力信号Voは
Vo=Ce/(Ci+Ce)・Vbio (21)
により与えられる。ここで、Vbioは、関心のある電気生理学的信号である。動きの結果としてのCeの変化は、測定を低下させる伝達Vo/Vbioの変化を引き起こす。Ceに依存しない伝達は、能動的「シールディング」Ciにより、すなわち、Ciを実質的にゼロにすることにより得られ、これは1に等しい伝達関数Vo/Vbioをもたらす。これは、図28の実施の形態に示されるように行われる。
【0135】
図27の実施の形態は、フィードバック電流If86を与えることによりキャパシタ87(Ci)の「シールディング」を実現する。或る量の電流IfをCiを通って流れるノードに等しいバッファ入力ノードにフィードバックすることにより、CiはCeから分かるように実質的にゼロにされる。すなわち、Ciを通って流れる電流はCeによって全く供給されず、その結果、Ceを通って流れる電流は存在しないので、電圧降下はCeの両端に現れない。従って、伝達関数Vo/Vbioは効果的に1に等しい。
【0136】
正確な量の電流Ifのフィードバックは、シールドへのフィードバック電流Ciを制御する方法を説明した図28の回路を用いて達成される。ここでは、バッファ88の出力Voは、非反転増幅器90(A2)を用いて増幅され、その後、フィードバックキャパシタ91(Cf)を介してバッファ88の入力にフィードバックされる。
【0137】
必要とされるバッファ90(A2)の出力電圧Vfは、キャパシタ87,91の値及びバッファの利得が1に等しいという考え方から決定され、バッファ88の正の入力についての電圧はVoに等しい。従って、
Vo=Cf/(Ci+Cf)・Vf (22)
である。
【0138】
更に、バッファ90(A2)の出力信号は、バッファ90の出力部とグランド又は参照電位部94との間に直列に接続された制御可能な直列抵抗分割器92(R2),93(R1)に与えられる。バッファ90の出力信号は、
Vf=(R1+R2)/R1・Vo (23)
により与えられる。
【0139】
従って、R1は固定されていると仮定すると、ポテンショメータR2は
R2=R1(Ci+Cf)/Cf−R1
であるように調節されるべきである。
【0140】
この解決策は、バッファの入力容量の補償を与える。
【0141】
通常、先験的なCiは未知数である。以下に説明される解決策の場合、時間がかかり、従って費用のかかるプロセスである製造された各プローブに対するポテンショメータR2の調節をする必要がない。また、Ciは、例えば温度の関数としてプローブの動作中変化し、これは伝達関数Vo/Vbioに1からのずれを生じさせる。測定は、バッファの入力キャパシタンス(Ci)を通って流れる電流が正確に補償される場合又はその場合に限ってプローブの容量(Ce)に依存しない。この解決策は、他のやり方では伝達Vo/Vbioが1倍からずれると生じる測定のロバスト性及び精度の低下を回避し、結果として動きアーチファクトに対する感度が高まる。この理由のために、本発明のこれらの実施の形態の目的は、電子工学の特徴がドリフトする場合であっても等化が達成されるように伝達関数Vo/Vbioを自動的及び適応的に制御することである。
【0142】
図29は、本発明に係る一実施の形態を説明しており、伝達Vo/Vbioを等化するために使用されるフィードバック制御ループの模式的なブロック図を示している。図29の実施の形態では、フィードバック制御ループは、バッファ段の伝達を適応制御するように構成されている。図27、28において使用されている参照符号の説明が、図29の類似した参照符号に対して同じように当てはまる。この方法及びデバイスは、キャパシタ96(Cr)を介して体84に与えられるライン98上の参照信号Vrefを使用する。オプションで、キャパシタ96(Cr)の容量値は、キャパシタ85(Ce)の容量値よりも非常に大きく、例えば、5倍以上、オプションで10又は50倍以上であり、体を通るバッファの出力部への参照信号の伝達は、バッファの出力部への生体信号の伝達と本質的に等しい。実際のアプリケーションにおいては、例えば図2ないし図5のプローブ電極1は、局所的な生体信号の測定を可能にするサイズに典型的には制限されるのに対して、例えば参照電極プレート4は、任意のサイズであるので、この条件は容易に満たされる。上記参照信号は、生体信号の測定を干渉すべきではなく、従って、(任意の値である)設定値を規定するリファレンス100は、乗算器99によって関心のある信号において予想される最大周波数、例えば数百Hzを超えてうまく変調される。これらの2つの条件の下、参照信号の伝達の等化は、生体信号の伝達の等化をもたらす。参照信号を与えることは、容量性の生体信号検知のバッファ入力容量を等化する目的のために与えられることに注意されたい。
【0143】
等化は、図示されているフィードバック制御ループを用いて達成される。参照信号は、容量センサ96により拾い上げられ、理想的には1であるが、最初はそれよりも小さい係数で増幅される。与えられた参照信号は、その後、測定され、バッファリングされた参照信号から減算器101を用いて差し引かれ、その結果、合計の増幅が1よりも小さい場合、この引き算の結果は参照信号の幾つかを依然として含んでいる。この信号は、乗算器99に与えられる周波数と同じ周波数を用いて乗算器102により復調されて、ローパスフィルタにかけられ、1からの振幅のずれを示すDC信号が得られる。この信号は、振幅を制御するために最後に用いられる。その目的のために、得られたDC信号は、積分器103に与えられ、増幅器104により増幅され、その後、1倍に等しい増幅を設定するためにフィードバックキャパシタ91(Cf)を介してフィードバックされる信号の量を制御するために用いられる。積分器103の使用は、定常誤差がゼロであるまで制御ループがフィードバック電流を変化させ続けることを意味する。すなわち、バッファ増幅器88の出力部における信号は、与えられる参照信号に等しい。言い換えれば、その利得は1に等しい。関心のある信号、すなわちVbioは、この時、減算器101の出力部に存在する。変調信号は図29に示されているような正弦波に制限されるものではなく、スペクトル分布が興味のある信号のスペクトルからうまく分離される限りにおいては任意の波形である得ることに注意されたい。
【0144】
図30は、シミュレーション中に用いられた図29のブロックスキームを表す実際の回路を示している。ここでは、参照電圧V2は、関心のある信号Vbioに加えられるC7を介して体に与えられる。全信号がC4により表される容量センサを介してバッファU1に伝達される。その後、参照信号は、バッファ信号から差し引かれ、その結果は、参照信号との掛け算によりDCに復調される。その後、復調された信号は、ローパスフィルタリングされ、積分される。反転積分器(U2)の出力は、バッファの入力キャパシタンスC3をシールドするために、フィードバックキャパシタC2を介して入力部にフィードバックされる前にバッファの出力信号が増幅されるべきであるファクタを表している。
【0145】
図30に示されているような乗算器として変調及び復調が実現され得るが、スイッチを使用しても実現されることに注意されたい。
【0146】
極めて大きい抵抗R2は、任意の演算増幅器のバイアス電流にグランドへの経路を与える所謂ブリーダであることに注意されたい。抵抗R2は、回路の動作に影響を及ぼさず、実際の実現では省略され得る。
【0147】
上記シミュレーションでは、振幅1V及び周波数10kHzの参照信号が用いられた。生体信号は、0.1Vの振幅及び100Hzの周波数を持つように選択された。図31は、(図29の103に対応する)積分器の出力信号を示しており、明らかに、50ms以内に定常値に収束している。図32は、(図29の101に対応する)減算部の出力信号を示しており、これは、収束後、すなわち、正しい補償電流がフィードバックされた後、与えられたVbioに等しいべきである。実際には、まず最初に、信号中に存在する大きい参照信号成分があり、収束するとゼロに低減され、信号Vbioのみが残ることが分かる。
【0148】
Ceの変化が、t=0,05sにおいてスイッチU3を閉じることにより更にシミュレートされ、その時間においてCeが10pFから20pFまで変化している。減算の出力部における信号、すなわち、関心のある信号を示した図32から、上記関心のある信号はCeの変化に影響を及ぼされないことが分かる。
【0149】
明らかに、帯域幅及び利得は、収束及び追跡速度を決定するが、精密等化も決定する。具体的な設定は、プローブの設計及びアプリケーションの要求に対して変えられる。
【0150】
図33に示されている更なる実施の形態では、復調後に参照信号の減算が行われ、一定の値が差し引かれる。1Vの振幅を持つ参照信号の場合、復調が2倍の減衰を引き起こすので、引かれる値は0.5Vに等しいことに注意されたい。この場合、関心のある信号はバッファの出力に現れるが、この実施の形態では、10kHzにおいて参照成分を取り除くためにオプションで依然としてローパスフィルタにかけられる。
【0151】
図34に示されている他の実施の形態では、0.5Vの一定値を積分器U2の正の入力に与えることにより減算が行われる。この実施の形態は、離散的減算が必要とされないという利点を有している。図34では、ローパスフィルタR4,C8が、関心のある信号Vbioを得るためにバッファU1の出力信号をフィルタにかけるため更に使用される。
【0152】
更なる実施の形態では、等化方法のデジタル実現を示した図35に視覚化されているように等化スキームがデジタル領域において実現される。この図及び/又は他の図における同様の参照符号は、同様の構成要素を示している。上記参照信号は、デジタル制御系113により作られ、デジタル・アナログ変換器(DAC)110によって体84に与えられる。バッファ88の出力信号は、アナログ・デジタル変換器(ADC)111によりデジタル化され、制御ユニット113に送られる。その後、113のデジタル領域において復調、フィルタリング及び積分が行われる。フィードバック信号は、バッファの出力信号から推定され、DAC112を介して又は代替として乗算型DACを介してバッファの入力部に与えられる。
【0153】
上述した幾つかの実施の形態では、体と電極との間の電位及び従って動きによって生じる信号ができる限り小さくされるように体と電極との間の平均電圧を能動的に制御することが提案される。更に、感知電極信号から直接的にそのような電圧の指標を抽出し、補償信号を制御するためにその指標を用いることが提案される。提案される後処理方法は、動きによって生じる信号及び関心のある電気生理学的信号の統計的独立を利用する。混合は部分的に加法的であるので、用いられる指標は、オプションで平均センサ信号電力と等しく、補償信号は、平均電力ができる限り小さくされるように制御される。
【0154】
以下に説明される実施の形態では、動きによって生じる信号をできる限り小さくするために体と電極との間の平均電圧の能動的制御が提案される。補償信号を得る他のやり方が与えられる。これらの実施の形態では、電極の容量の測定された変化を用いて入力信号を再構成すること及び再構成される信号の更なる処理から補償信号を得ることが提案される。更に、電極キャパシタンスの変化は分かっているので、電気生理学的信号に対する時間的に変化するキャパシタンスの変調の影響が取り除かれる。負荷(R)、浮遊容量(Ci)のような容量検出回路のパラメータは、既知であるか又は推定され得る。
【0155】
図36の実施の形態では、生体信号VBIO及び信号VAVを加算する加算器120が設けられている。加算器120の出力信号VINは、更なる加算器122に供給される。更なる加算器122は、他の入力部においてフィードバック信号V∧AVを受け取り、その出力信号を更なる加算器123に供給する。加算器123の他の入力部は、信号発生器121により生成される信号を受け取る。加算器123の出力部は、時間的に変化する容量性カップリングを与えるブロック124に接続されている。バッファ増幅器125はブロック124の出力部に接続されており、出力信号Voを生成する。この出力信号Voは、Ce(t)を推定する推定回路127の入力部と、Vin及び加算器122の入力部にフィードバックされる補償信号を導き出す回路126の入力部に供給される。
【0156】
図37及び図38は、図36の2つの等価回路図を示している。これらの回路図は、本発明のこの実施の形態を説明するために用いられる。
【0157】
電極容量の変化(Ce(t))は、例えば既知の信号注入技術を用いることにより測定される。挿入電圧Vinsは、入力信号中の関心のある周波数よりも非常に大きい周波数Fcの搬送波であり得る。出力部において、この搬送波は、時間に依存するファクタCe(t)/(Ci+Ce(t))によって変調され、これはCe(t)の再構成を可能にする。時間的に変化する容量Ce(t)を推定するこの方法は、他の好適な方法によって置き換えられ得る。
【0158】
以下に、ブロック126において実現されるようなVin及び補償信号を導き出す方法が説明される。
【0159】
バッファ125により生成される図37、38の出力信号Voは、以下のように、すなわち、
(25)
のように入力信号Vinに関連している。式(1)は、以下のように書き換えられる。
(26)
【0160】
従って、Vo(t)、Ce(t)、R、Ci及びQinitが既知である場合、Vinは再構成され得る。
【0161】
Qinitは、例えば、1/Ce(t)の時間的に変化する部分とVin(t)との相関がゼロに等しい、すなわち、Tの好適な値について
(27)
と仮定することにより推定される。これは、Qinitの線形方程式をもたらす。この手順は、信号電力
ができる限り小さくなるようにQinitを選択することと等価である。
【0162】
その後、再構成されたVinの平均から補償信号が導き出される。
【0163】
DCオフセットはボルトのオーダーであり、測定される生体信号は典型的にはミリボルトのオーダーであることに注意されたい。これは、Qinitの上記の計算における小さい相対誤差が再構成された信号における大きい相対誤差を依然として与えることを意味する。能動的補償、すなわち、補償信号によるDCオフセットの低減が与えられるのはこのためである。
【0164】
本発明の実施の形態の用途は、電気生理学の分野(ECG、EMG、EEG、EOG、EHG、…)が調べられる又は測定される任意のアプリケーションを含んでいる。本明細書及び図面において開示されたセンサのような容量センサが適用され得るそのようなアプリケーションの任意の1つが、可能性のある候補である。容量センサが用いられる幾つかの例は、患者モニタ(主に、ECG)、EEG検出機器(臨床的)、脳コンピュータインターフェース(BCI)、赤ん坊の状態若しくは子宮活動を監視するセンサを含む妊婦帯、筋肉の過負荷若しくはRSIを防止するために筋肉の使用を監視するEMG検出機器、身体的活動/運動中にECG若しくはEMGを監視する機器又は電気生理学的信号に基づいて感情を読み取る機器である。容量センサは絶縁材料により測定される固有の性能を持っているので、例えば火傷の場合に包帯を介して測定する又は「スマートベッド」において電気生理学的信号を測定するような新たな可能性が生じる。
【0165】
実施の形態は、例えば、十分なロバスト性を有する容量センサをオプションで伴う患者モニタリングセクタにおいて適用される。更に、実施の形態は、体のバイタルサインのユーザにやさしい検査(例えば、ECG)が有効であるホームモニタリングの分野において用いられ得る。
【0166】
本発明に係る実施の形態は、電気生理学的信号(例えば、ECG、EMG、EEG等)の測定、特に非接触による測定が行われる医療・福祉機器、CE製品及び他のアプリケーションに適用される。一例として、例えば夜間に測定にプラットフォームを与えるスマートベッドのために実施の形態が用いられる。
【0167】
開示された実施の形態に対する他の変形例は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の研究から、特許請求された発明を実践する際に当業者によって理解され、もたらされ得る。
【0168】
特許請求の範囲において、「有する」という語は他の構成要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を排除するものではない。
【0169】
単一のユニット又はデバイスが、特許請求の範囲に列挙されている幾つかの要素の機能を果たし得る。互いに異なる従属請求項において幾つかの方策が列挙されているという単なる事実は、これらの方策の組み合わせが有利に用いられることができないことを示してはいない。
【0170】
幾つかの実施の形態又は従属請求項に挙げられている特徴は、どれでも任意の組み合わせで有利に組み合わせられ得る。
【0171】
本発明が図面及び上述の説明において詳細に図示及び記述されたが、そのような図示及び記述は、事例的又は例示的であり、限定的ではないと考えられるべきであり、本発明は開示された実施の形態に限定されるものではない。例えば、非生物学的信号のような他の信号を測定する実施の形態において本発明を機能させることが可能である。
【0172】
特許請求の範囲におけるいかなる参照符号もが、範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【0173】
1つ又は幾つかのユニット又はデバイスにより実行される計算、プロセス、ステップ及び決定は、単一のユニットにより又は任意の他の数の異なるユニットによって実行され得る。上述した方法に従う計算及び決定及び/又はシステム及び/又はデバイスの制御は、コンピュータプログラムのプログラムコード手段として及び/又は専用ハードウェアとして実現され得る。
【0174】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアとともに又は他のハードウェアの一部として与えられる光記憶媒体又はソリッドステート媒体のような適切な媒体に記憶/配布され得るが、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介してのような他の形態でも配信され得る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には、電気生理学的測定のためのデバイス、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
EEG、EMG及びECGのような電気生理学的信号を測定する従来の電極は、接着剤を用いて患者の皮膚に取り付けられる。一般に、電極と体との良好なガルバニック接触を確実にするためにゲルが用いられる。接着剤及びゲルは、皮膚の炎症を引き起こし、連続的なモニタリングのためには不快である。
【0003】
そのような電極に対する代替物は、皮膚と電極との容量性カップリングが表面電位を測定するために用いられる容量センサである。そのような容量センサは、生物起源である電磁信号の容量測定のためのセンサシステム及び方法が説明されている国際特許出願公開WO2006/066566A2公報に開示されている。電気生理学的測定用の容量センサは、容量電極(capacitive electrode)と体又は皮膚との間の時間的に変化する距離のために動きアーチファクトに悩まされている。多くのアプリケーションでは、そのような動きアーチファクトが問題になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、動きアーチファクトが低減される容量センサを有する装置及び対応する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、体の少なくとも1つの電気生理学的信号を測定する装置であって、少なくとも1つの容量センサ電極と、動きによって生じる信号を低減する又はできる限り小さくするために上記少なくとも1つの容量センサ電極と上記体との間の平均電圧を制御する機構とを有する当該装置が与えられる。従って、測定される体の動きが生じた場合においても正確な信号の測定が実現される。
【0006】
上記体の近くに又は上記体とガルバニック接触して配された少なくとも1つの参照電極が設けられ得る。この参照電極は、測定の精度を高めるために参照電位の設定又は検出を可能にする。
【0007】
上記少なくとも1つの参照電極は、該参照電極の電位又は電気的状態を規定することを可能にする電圧源、電流源又は参照電位部に接続され得る。
【0008】
上記形態の1つ又はそれ以上によれば、電圧又は電流源は、センサ電極の測定条件の規定された設定を可能にするバッファ増幅器の入力部及びセンサ電極の少なくとも1つに結合され得る。
【0009】
上記形態の1つ又はそれ以上によれば、少なくとも2つのセンサ電極が、少なくとも1つの参照電極への差動増幅器の入力部に結合されていてもよい。従って、正確な差の測定が可能である。
【0010】
上記装置は、本質的に同じ電気生理学的信号を測定し、上記体に対して互いに異なる距離に配された及び/又は異なる平均電圧を供給される少なくとも2つ又は3つのセンサ電極を有していてもよい。この機構のために、上記平均電圧を規定された値に導くために信頼性の高いフィードバック信号が上記センサ電極の出力信号に基づいて生成される。上記規定された値は、或る規定値を有するか、又はオプションでゼロである。従って、動きによって生じる信号が低減される又はできる限り小さくなる。
【0011】
上記形態の1つ又はそれ以上によれば、バッファ増幅器の入力部に与えられる上記センサ電極の出力信号をバッファ増幅器の出力信号に変換し、上記バッファ増幅器の更なる入力部に与えられる信号により規定されるレベルに上記センサ電極の平均電圧を保持する少なくとも1つの当該バッファ増幅器が設けられている。この概念は、動きによって生じる信号の最小化を可能にする。
【0012】
動きによって生じる信号での信頼性の高い情報の獲得及びコロケーションを確実にするために、少なくとも3つのセンサ電極が三角形状又は同心円状に配されていてもよい。
【0013】
上記形態の1つ又はそれ以上によれば、少なくとも3つのセンサ電極が設けられていてもよく、上記センサ電極の1つはセンサ電極機構の中心に配され、他のセンサ電極は、環状又はマトリクス状の形式で配されたセグメントの形で中心の電極を取り囲んでいてもよい。この配置は、動きによって生じる信号の検出及び/又は排除を可能にする。
【0014】
他の形態では、上記装置は、全ての電極の上記セグメントが散在した形で分布している小さいセグメントの形式で配された少なくとも3つのセンサ電極を有している。そのような配置は、動きによって生じる信号の検出及び/又は排除を可能にする。
【0015】
本発明の他の観点によれば又は上記形態の1つ又はそれ以上によれば、装置は、上記センサ電極、上記参照電極又は上記センサ電極若しくは参照電極を支持する若しくは収容する支持体若しくはケースの少なくとも1つを振動させるオシレータ又はバイブレータを有していてもよい。生じる電極の動きは、動きによって生じる信号の検出及び補償を可能にし、従って、測定される電気生理学的信号に関する測定精度を高める。上記形態の1つ又はそれ以上によれば、この装置は、上記平均電圧を低減する又はできる限り小さくするためにフィードバック信号を生成する上記オシレータ又はバイブレータに結合されたフィードバックループ部を有していてもよい。
【0016】
これらの信号間の明らかな区別を可能にするために、上記オシレータ又はバイブレータの周波数が、測定される上記電気生理学的信号の生体電気周波数帯域外にあってもよい。
【0017】
上記機構に検出信号を発し、従って信号の測定精度に寄与する同期検出器が設けられていてもよい。
【0018】
上記形態の1つ又はそれ以上によれば、上記少なくとも1つのセンサ電極と上記体との間の平均電圧の指標を上記センサ電極の信号から抽出する抽出器が構成されていてもよく、当該装置は、補償信号を制御するために上記指標を用いる。この構造は、動きアーチファクトの効率的な補償及び従って最小化を可能にする。
【0019】
本発明の他の観点によれば又は上記形態の1つ又はそれ以上によれば、装置は、上記少なくとも1つのセンサ電極の少なくとも1つの出力信号のセンサ信号電力の推定値又はセンサ信号エントロピの推定値を決定し、上記平均電圧を規定された値にするために上記少なくとも1つのセンサ電極の上記少なくとも1つの出力信号に基づいてフィードバック信号を生成する推定器を有していてもよい。
【0020】
上記形態の任意の1つにおいて又は他の形態によれば、上記装置は、適応電力の最小化を与えるように構成されていてもよい。この電力の最小化は、動きによって生じる電力の指標となり、動きによって生じる電力を低減する。
【0021】
1つ又はそれ以上の形態によれば、装置は以下の、すなわち、
センサ信号電力P(t)の最小化を達成するために補償信号V∧AV(t1)を適合させる反復最適化アルゴリズムを用いることと、
により与えられる補償信号V∧AV(t1)を更新すること(ここで、収束速度及び定常状態におけるノイズを制御する適応定数αが与えられる。)と、
有限差分近似、すなわち、
によって勾配の推定値を得ることと、
局所勾配を決定する変調又はウォブリングを用いることと、
上記電力を決定するために、センサ信号をプレフィルタリングし、或る周波数帯域のみを用いることと、
適応シャノンエントロピの最小化を用いることと、
信号の確率質量関数p(x)により情報エントロピ、すなわち、
を決定することと、
確率質量関数の推定値p∧(x)から
を得ることと、
を得ることとの少なくとも1つ又はそれ以上のために任意の組み合わせで構成された手段を有していてもよい。
【0022】
上記形態の任意の1つにおいて、本発明の他の観点によれば又は上記若しくは下記の形態から独立した他の形態において、伝達関数Vo/Vbioを等化する等化器が設けられていてもよく、Voは、関心のある電気生理学的信号Vbioを受信するバッファ増幅器の出力信号であり、上記装置は、等化が達成されるように上記伝達関数Vo/Vbioを適応制御する。この手法は、優れた信号の測定を与える。
【0023】
上記形態の任意の1つにおいて、本発明の他の観点によれば又は上記若しくは下記の形態から独立した他の形態において、方法が、
容量性の生体信号の検知の上記バッファ入力容量を等化する目的のために少なくとも1つの参照電極を用いて参照信号Vrefを上記体に与えることと、
上記参照信号を上記関心のある信号において予想される最大周波数よりも大きい値に変調することと、
測定され、バッファリングされた上記参照信号から与えられた上記参照信号を差し引くことと、
結果として生じた上記信号を復調し、ローパスフィルタにかけ、増幅を制御するためにこの信号を用いることと
の少なくとも1つを有していてもよいし、上記装置がこれらのうちの少なくとも1つのために構成される手段を有していてもよい。従って、動きによって生じる信号の効果的な抑制が与えられる。
【0024】
上記形態の任意の1つにおいて又は他の形態において、フィードバック機構は、上記バッファ増幅器の利得を1倍にするために、該フィードバック機構内に積分器を有していてもよい。
【0025】
上記形態の任意の1つにおいて又は他の形態において、デジタル領域内に等化スキーム又は上記機能の他のものを実現するデジタル回路が設けられていてもよく、これは、高い効率及び良好なフレキシビリティを与える。
【0026】
本発明の他の観点によれば、上記形態の任意の1つにおいて又は上記若しくは下記の形態から独立した他の形態において、方法が、上記動きによって生じる信号をできる限り小さくするために上記体と電極との間の上記平均電圧を制御することと、上記センサ電極の容量の測定された変化を用いて上記入力信号を再構成することと、再構成された上記入力信号を処理することにより補償信号を引き出すこととのうちの少なくとも1つを有していてもよく、上記装置が、上記動きによって生じる信号をできる限り小さくするために上記体と電極との間の上記平均電圧を制御し、上記センサ電極の容量の測定された変化を用いて上記入力信号を再構成し、再構成された上記入力信号を処理することにより補償信号を引き出す制御器を有していてもよい。
【0027】
本発明の更なる観点によれば、体の少なくとも1つの電気生理学的信号を測定する方法であって、動きによって生じる信号を低減する又はできる限り小さくするために容量センサ電極と上記体との間の平均電圧を制御する機能を有する当該方法が与えられる。
【0028】
本発明の他の観点によれば、コンピュータプログラムが、動きによって生じる信号を低減する又はできる限り小さくするために容量センサ電極と体との間の平均電圧を制御するステップをコンピュータに実行させるプログラムコード手段を有していてもよい。
【0029】
本発明の1つ又はそれ以上の実施の形態は、上記特徴の任意の1つ若しくはそれ以上又は従属請求項の任意の1つ若しくはそれ以上とそれぞれの独立請求項との任意の組み合わせでもあり得ることを理解されたい。
【0030】
本発明の実施の形態の1つ又はそれ以上は、動きによって生じる信号が、皮膚と電極との間の電場及びその電場に沿った動き成分に比例するという見識に基づいている。
【0031】
1つ又はそれ以上の実施の形態は、動きによって生じる信号が低減される又はできる限り小さくされるように容量電極と体との間の平均電圧を制御するフィードバック機構を提案する。
【0032】
本発明のこれらの観点及び他の観点は、以下に説明する実施の形態から明らかであり、以下に説明する実施の形態を参照して明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】測定機構を説明する基本図を示している。
【図2】本発明に係る一実施の形態の図を模式的及び例示的に示している。
【図3】本発明に係る更なる実施の形態の図を模式的及び例示的に示している。
【図4】本発明に係る更なる実施の形態を示している。
【図5】本発明に係る更なる実施の形態を示している。
【図6】本発明に係る更なる実施の形態を示している。
【図7】本発明に係る更なる実施の形態を示している。
【図8】本発明に係る更なる実施の形態を示している。
【図9】本発明に係る更なる実施の形態を示している。
【図10】本発明に係る更なる実施の形態を示している。
【図11】本発明に係る更なる実施の形態を示している。
【図12】本発明に係る電極の配置の更なる実施の形態を説明している。
【図13】本発明に係る電極の配置の更なる実施の形態を説明している。
【図14】本発明に係る電極の配置の更なる実施の形態を説明している。
【図15】本発明に係る電極の配置の更なる実施の形態を説明している。
【図16】本発明に係る電極の配置の更なる実施の形態を説明している。
【図17】本発明に係る電極の配置の更なる実施の形態を説明している。
【図18】本発明に係る他の実施の形態を例示的に示している。
【図19】図18の実施の形態の観点を例示している。
【図20】図18の実施の形態の観点を例示している。
【図21】本発明に係る他の実施の形態を例示的に示している。
【図22】測定曲線を表している。
【図23】本発明に係る実施の形態の変形例を説明している。
【図24】本発明に係る実施の形態の変形例を説明している。
【図25】本発明に係る他の実施の形態のブロック図を例示的に示している。
【図26】電力曲線図を表している。
【図27】本発明に係る更なる実施の形態を説明している。
【図28】本発明に係る更なる実施の形態を説明している。
【図29】本発明に係る更なる実施の形態を説明している。
【図30】本発明に係る更なる実施の形態を説明している。
【図31】電圧比−時間図を表している。
【図32】電圧比−時間図を表している。
【図33】本発明の実施の形態に係る回路構成を示している。
【図34】本発明の実施の形態に係る回路構成を示している。
【図35】本発明の1つ又はそれ以上の実施の形態に係るデジタル設計を説明している。
【図36】本発明の一実施の形態に係るブロック図を示している。
【図37】本発明の実施の形態に係る回路構成を示している。
【図38】本発明の実施の形態に係る回路構成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
一般に、電気生理学的信号の非接触(容量)測定は、長時間の使用の間の皮膚の炎症、自由な動きから患者を制限すること及び患者に対して低い快適さを与えること、すなわち、患者がモニタリングされていることを意識するという欠点を克服することができる。
【0035】
以下に説明される1つ又はそれ以上の実施の形態による技術では、人間の組織がキャパシタプレートの1つの役割を果たし、センサのプレート電極が他のコンデンサプレートの役割を果たすキャパシタが効果的に形成される。容量の検出では、皮膚へのガルバニック接触は不要(すなわち、非接触検出)であり、それにより、良好な電気的接触を確立するために皮膚の準備及び導電性ゲルの付いた粘り気のあるパッチを必要としない。これは、明らかに有利であり、特に、長期にわたる測定が行われる必要がある場合に有利である。
【0036】
図1は、バッファ増幅器2を伴う容量センサ電極1の回路図の基本的な図を示している。このセンサは、患者の体若しくは皮膚3の近く又は患者の体若しくは皮膚3に接して配され、高インピーダンスバッファ増幅器2に接続された平行板コンデンサを有している。測定電極に接続されたバッファ2は、インピーダンスレベルが干渉に影響を及ぼされることなくケーブルを通して測定系に運ばれるようにインピーダンスレベルを高抵抗から低抵抗に変えることができる。
【0037】
図1では、式
Vac/Vdc=dac/ddc (1)
が当てはまる。Vdcはキャパシタ電極1、3間の平均電位差であり、Vacはバッファ増幅器2により検出される動きによって生じた電圧変化であり、ddcはキャパシタ電極1,3間の平均距離であり、dacはキャパシタ電極1、3間の動きによって生じた時間距離である。
【0038】
より複雑な構造の場合には、上記挙動はわずかに変化するが、本質的には同じである。
【0039】
電極1で実際に測定されるac信号Vmeasuredは、皮膚3における動きによって生じる信号Vacと所望の生体信号Vbioとを足したものである。所望の信号又は動きについての更なる情報が無い場合、これらの信号を分離することは容易ではない。
Vmeasured=Vac+Vbio (2)
【0040】
基本的には、異なる電位の2つの平行なキャパシタプレート間の電場においては、プレート間の動きによって生じる距離の変化が、電場及び距離の変化に比例して望ましくない信号を引き起こす。
【0041】
2つの平行なキャパシタプレートが等しい平均電位に保持されている場合、(外部ソースによる)電場は、この時プレートのほとんど外側にある。センス電極は、適切なシールド又はアクティブガードによりこれらの外的影響から遮蔽される。明らかに、例えば電源からの外的な電場は、アクティブガード及び接地遮蔽(grounded shielding)のようなよく知られている適切なシールド技術により遮蔽される。しかしながら、皮膚3と電極1との間の電場は、所望の信号結合に欠かせない部分であり、遮蔽されることができない。実施の形態の1つ又はそれ以上によれば、電場は、例えば電極と皮膚との間の平均電圧を制御することにより及び/又は動きが生じる空間において制御不可能な電荷を発生させる任意の絶縁材料若しくは電気的に浮いている導体を避けることにより制御される。
【0042】
皮膚と電極との電位差は、2つの表面の材料の違いからも生じる。これらの電位差は、真空中での仕事関数の差、電解質環境中におけるガルバニ電池電位及び空気中でのラビングされた電極に関する帯電列に関係がある。上記電位差は、材料及び表面の状態に依存し、仕事関数及び電解質電位については典型的にはボルトのオーダーである。空気中の表面については、非常に似た電位差が存在し、それらは、温度、湿度、コンタミネーション、酸化によって1ボルトの十分の幾らか変化する。人間の皮膚の場合には、表面電位は、多くの生理学的観点にも依存する。例えば、皮膚のナトリウム及びカリウムイオン密度は、水分補給(hydratation)及び伸び(stretching)に依存する。従って、体とセンス電極とが同じガルバニ電位にあるときであっても、電極−体間の距離の変化と組み合わせられて動きによって生じる信号を引き起こす皮膚と電極との間の大きな電場が依然として存在し得る。
【0043】
実施の形態の1つ又はそれ以上によれば、生じる動き信号をできる限り小さくするように体と電極との間の平均電圧を制御するメカニズム又は機能が与えられている。以下に説明される実施の形態に係る方法及びデバイスは、体と電極との間の電場を効果的に最小化し、従って、動きアーチファクトの根本的原因を取り除く。
【0044】
体3と電極1との間の平均電圧を制御するために、体3とガルバニック接触する参照電極4が設けられる。上記制御は、種々のやり方で達成されることができ、例えば図2ないし図11の回路図を参照されたい。
【0045】
図2は、参照電極4の電圧が参照電極4に接続された電圧源5によって制御される実施の形態である。この実施の形態では、電圧源5は、参照電極4とグランド又は参照電位部6との間に接続されている。抵抗7は、参照電位部6とバッファ2との間に接続されている。
【0046】
図3、図4は、センス電極1の電圧が電圧源又は電流源により制御される実施の形態を示している。図3では、電圧源8が抵抗7を介してセンス電極1に接続されている。この実施の形態では、参照電極4は、グランド又は参照電位部6に直接接続されている。電圧源8は、抵抗7の1つの端子とグランド又は参照電位部6との間に接続されている。抵抗7の他の端子は、バッファ2及びセンス電極1に接続されている。
【0047】
図4では、電流源9が、センス電極1の出力部とグランド又は参照電位部6との間に接続されている。この実施の形態では、抵抗7は、電流源9に並列接続されている。参照電極4は、グランド又は参照電位部6に直接接続されている。この実施の形態では、センス電極1の出力部は、通常、抵抗7の1つの端子、バッファ増幅器2の入力部及び電流源9の端子に接続されている。抵抗7の他の端子は、グランド又は参照電位部6に接続されている。
【0048】
バッファ増幅器2及び並列抵抗7の入力インピーダンスが極めて高いと、例えば、10ギガオーム又は50ギガオームよりも大きいと、例えば図4の電流源の解決策は、積分制御回路のように効果的に機能する。
【0049】
他の実施の形態では、最小化フィードバック機構において体3とセンス電極1との間の電圧を制御するために生じた動き信号を測定することができる任意の技術が用いられる。幾つかの例は、以下の通りである。動きが分からないとき、(例えば、所望の信号の周波数帯域外にある)自然の動きによって生じる信号(の全部又は一部)がセンス電極信号から分離されるようにセンス電極信号に対して後処理フィルタリング技術が適用され、この分離された信号が最小化スキームにおけるフィードバックのために用いられる。これは、最小化に向かう適切な方向を見出すための幾つかの段階的な又は変調されたフィードバック信号を含んでいる。これは、以下に述べられる実施の形態において更に説明される。
【0050】
動きが他の手段により、例えば、アクチュエータによって生じる既知のモーションシステムから又は加速度計若しくは光センサ等のような分離した動きセンサから分かっていると、この既知の動きが、適切なフィードバック信号を得るためにセンス電極1からの信号と関連付けられる/多重される。平均の関連付け/多重の結果が、知らされるので、追加の変調をする必要なくフィードバック信号として直接用いられ得る。以下に述べられる実施の形態において例が与えられる。
【0051】
フィードバック回路自体は、測定電極1又は体の参照電極4に影響を与え、回路のグランド6は、体の参照電位部に選択されるか又は電極電位部若しくは他の電位部の近くに選択される。
【0052】
これらの実施の形態又は他の実施の形態では、体3と電極1との間の平均電圧が制御される。
【0053】
動きアーチファクトをできる限り小さくする体と電極との間の平均電圧が温度ドリフト及び電気化学的な表面変化に対しては専らゆっくりと変化するので、フィードバックループは相対的に遅い。体と電極との間の最適な平均電圧の場合、上記動きによって生じる信号は、広範囲の周波数に関して最小化される。フィードバックループは系の種々の他のゆっくりと変化するオフセットを自動的に補償することにも注意されたい。
【0054】
体と電極との間の平均電圧を制御するために、フィードバックシステムと体及び電極の両方とのガルバニック接続が必要とされる。しかしながら、フィードバックは相対的に遅く、漏れ電流のみが克服されなければならないので、当該ガルバニック接触に関する要求は、非常に穏やかである。例えば、わずかに導電性の媒質を介して専ら間接的に体3に触れている参照電極4でも十分である。極端であるが実際のケースは、例えば、テキスタイルの層を介して体3と明らかな容量的なつながりがあり、非常に不十分な導電性の接触のみを持つ相対的に大きい電極4である。不十分な導電性の接触は、相対的に遅いフィードバックに対して及びクリッピングを避けるには十分である。参照電極4の容量部分は、ここでは上述した形態と同じように動きアーチファクトを引き起こす。しかしながら、複数の容量センサが同じ参照電極に接続され、それらの複数の容量センサ間の電圧の差を専ら測定する場合は、参照電極4の動きによって生じる信号は同相信号である。この同相信号は、容量センサ内の更なる寄生性の影響が適宜に避けられるとき、差動又は計装用増幅器により容易に除去される。
【0055】
図5は、大きいコモン容量性参照電極11からの動きアーチファクトが差動又は計装用増幅器16により除去される実施の形態を示している。クリッピングを防止するために、参照電極11と皮膚3との非常にわずかなガルバニック伝導のみが必要とされる。図5の実施の形態は、上述したように接続された図4の構成要素を有するとともに、更に、第2のセンス電極12と、センス電極12の出力部とグランド又は参照電位部6との間に接続された電流源14を含んでいる。この実施の形態では、抵抗13が電流源14と並列に接続されている。参照電極11は、グランド又は参照電位部6と、抵抗7,13及び電流源9,14の端子とに直接接続されている。この実施の形態では、センス電極12の出力部は、通常、抵抗13の1つの端子、バッファ増幅器15の入力部及び電流源14の端子に接続されている。抵抗13の他の端子は、グランド又は参照電位部6に接続されている。バッファ2の出力部は差動増幅器16の非反転入力部に接続されているのに対して、バッファ15の出力部は差動増幅器16の反転入力部に接続されている。バッファ2,15の出力部と増幅器16の入力部との接続は、相互接続素子によって反転されても又は与えられてもよい。
【0056】
本発明の1つ又はそれ以上の実施の形態は、相対的に遅いフィードバックを用いるので、信号の品質を改善し、アーチファクトを除去しようとする多くの他の技術と組み合わせられ得る。例えば、標準的な動きアーチファクトフィルタリング技術は、種々の形で作用するので、本発明の実施の形態と組み合わせられ得る。
【0057】
上記方法の実施の形態は、所望の電気生理学的信号の伝達関数における任意の動きによって生じる変化が補償される又はされないように実行される。例えば、中和が、これらのタイプの動きアーチファクトを低減するために用いられ、本発明の実施の形態と組み合わせて用いられる。
【0058】
上述した若しくは以下に述べられる実施の形態又はより一般的にはDRL(driven−right−leg)システムのような同相(common mode)干渉を低減する生体信号増幅器に加えられる電気回路の利点は、電極1、12のような2つ又はそれ以上の測定電極間の望ましくない同相信号が低減されることである。実際の実現は、典型的には、体3と電極との間の平均電圧も設定する。本発明に係る1つ又はそれ以上の実施の形態のフィードバックは相対的に遅く、望ましくない同相信号は50Hz又は60Hzの送電網の周波数のような非常に高周波であるので、そのようなDRLシステム及び上記説明された実施の形態の利点は容易に組み合わせられる。
【0059】
以下に、共通に設けられた複合電極を用いる動きアーチファクトが低減される容量センサの実施の形態が説明される。
【0060】
上述したように、電気生理学的測定用の容量センサは、容量電極と体との間の変化する距離のために動きアーチファクトに悩まされる。これらのアートファクトは、大体の場合、皮膚と電極との間の平均電場の存在のためである。以下に述べられる又は上述した実施の形態の1つ又はそれ以上によれば、動きによって生じる信号が低減される又はできる限り小さくされるように容量電極と体との間の平均電圧を制御するために共通に設けられた複合電極からの測定信号を組み合わせることが提案される。
【0061】
共通に設けられた複合電極からの信号を組み合わせることにより、動きによって生じた信号に関して情報が得られる。2、3又はそれ以上の電極が用いられる。3電極解決策の特定の選択が、以下により詳細に説明される。実施の形態は、関連する測定回路及び電極についての詳細を与える。
【0062】
以下に説明される実施の形態では、極めて低い入力キャパシタンス、極めて高い入力キャパシタンス、低オフセットの要求に応じ、平均電極電圧を制御する回路素子が与えられる。更に、適切な信号の組み合わせのためのアナログ回路の一例が与えられる。
【0063】
加えて、実施の形態の1つ又はそれ以上に従って対称性の要求を満たすことができる幾つかの電極形状が示される。
【0064】
上述したように、図1に示されているバッファ増幅器2を伴う容量センサ電極1の基本的な回路図では、式
Vac/Vdc=dac/ddc (3)
が当てはまる。
【0065】
動きによって生じる信号Vacの基礎となる量Vdc、ddc及びdacは、実際の状況では本質的に未知数である。
【0066】
電極で実際に測定されるac信号Vmeasuredは、皮膚における動きによって生じた信号Vacと所望の生体信号Vbioとを足したものであり、これは、所望の信号又は動きについての更なる情報が無い場合、容易に分離されない。
Vmeasured=Vac+Vbio (4)
【0067】
実施の形態の1つ又はそれ以上によれば、本質的に同じ場所で皮膚の電位を測定する複数の電極を組み合わせる場合、それらの電極は本質的に同じVbioを共有するが、異なる平均電圧及び/又は異なる平均距離において、動きについての情報が得られ、動きアーチファクトが低減された信号を得るために適切なフィードバック信号が与えられる。
【0068】
実施の形態の1つ又はそれ以上によれば、3電極解決策が与えられる。この上記概念の変形例が、より詳細に説明される。本質的には同じ(未知数の)生体信号Vbioを感知し、本質的には同じ(未知数の)動きdacを経る3つの共通に設置された電極a,b及びcが用いられる。電極aは、(未知数の)平均距離d及び(未知数の)平均電圧Vにある。電極bは、平均距離d+Δd及び平均電圧V+ΔVにあり、電極cは、同じく平均距離d+Δdにあるが、平均電圧V−ΔVにある。静的形状パラメータΔd及び静的電圧差ΔVは既知である。生じた動き信号を式に当てはめると、3つの電極に関する以下の測定信号に達する。
Va=Vbio+Vdac/d (5)
Vb=Vbio+(V+ΔV)dac/(d+Δd) (6)
Vc=Vbio+(V−ΔV)dac/(d+Δd) (7)
【0069】
これらの測定信号を組み合わせることにより、未知数Vbio及びdacが取り除かれ、未知数Vとdとの有用な関係、例えば、
V=d(ΔV/Δd)(Vb+Vc−2Va)/(Vb−Vc) (8)
が築かれる。
【0070】
電極と皮膚との間の距離dは、既知ではないが、明らかに正でなければならない。
【0071】
従って、信号の組み合わせ
(Vb+Vc−2Va)/(Vb−Vc) (9)
は、未知数Vに比例し、比例定数が分からなくても、比例定数の符号は分かる。従って、この式は、未知数Vをゼロに向けて駆動するためにフィードバックスキームにおいて用いられる。これは、本質的には電極のための電場をゼロにして、順に電極の測定信号をVbioに等しくし、従って、動きアーチファクトをなくす。測定信号の他の関数も考えられる。
【0072】
3信号間の関係を明確にするために、更に、まず、回路が最適平均電圧V=0あたりにおいて平衡である状況が考えられる。このケースでは、電極aの測定信号Vaは、所望の生体信号Vbioを直接表し、電極b及びcの測定信号Vb及びVcは、+/−ΔVdac/(d+Δd)の電位差だけその周りに対称的にそれる。言い換えれば、電圧差Vb−VaとVa−Vcとは等しい。この時、3つの電極全ての平均電圧がV>0であるように上昇すると、電極bと電極aとの電圧差は
Vb−Va=dac(dΔV−VΔd)/d(d+Δd) (10)
となり、電極aと電極cとの電圧差は
Va−Vc=dac(dΔV+VΔd)/d(d+Δd) (11)
となる。
【0073】
明らかに、電極b及びcの信号はもはや電極aの周りに対称的ではなく、この効果は未知数の平均電圧Vをゼロに駆動するフィードバック信号を生成するために活用される。
【0074】
上述した関数以外にも、多くの他のフィードバックの可能性が存在する。例えば、Δd>0かつΔV>0であると、以下の関数、すなわち、
exp(Vb−Va)−exp(Va−Vc)=exp(dacΔV/(d+Δd))sinh(−dacVΔd/d(d+Δd)
が用いられ得る。
【0075】
上記式を素早く変化する動きdacの関数として扱うと、式中のsinh()関数は、ゼロのまわりに非対称であり、−Vに比例した傾きを持つ一方で、指数関数は、常に正の傾きを有する正である。従って、この関数の平均値は、V=0の望ましい状況に向けてシステムを駆動するために用いられる未知数Vと反対の符号を持つゼロではない値である。log(Vb−Va)−log(Va−Vc)又は(Vb−Va)2−(Va−Vc)2のような多くの他の非線形関数が同様の結果をもたらす。
【0076】
通常、ゼロではない(が未知数の)動きdacが存在する。動きが存在しない場合、動きアーチファクトは生じない。提案される3電極解決策は、3つの電極と測定値との十分な対称性を与える。すなわち、3つの測定系のオフセット及び利得は十分に等しく、測定値に及ぼす寄生の影響は低く、上記に規定された変数ΔV、V、Vbio、d、Δd及びdacは、3つの電極全てに関して十分に等しい値である。これは、全て、適切な電子的及び幾何学的設計により達成される。設計の電子的観点及び幾何学的観点の幾つかが、以下に説明される。上述した3電極解決策の変形例が考えられる。より多くの電極を追加することは、より多くの情報及びより正確なフィードバックを与える。
【0077】
2つの電極のみを用いる実施の形態は、できる限り小さい動きアーチファクトのため、この平均電圧を最適化するフィードバックを与える他の機構を改善するために用いられ得る。別の動き推定機構と組み合わせられた同じ距離にあるが、異なる平均電圧にある2つの共通に設けられた電極が、最適化に向けて正しい方向に平均電圧を駆動するために用いられる。同じ平均電圧にあるが、異なる距離にある2つの共通に設けられた電極は、動きアーチファクト信号の生体信号からの分離に役立つ。
【0078】
以下に、幾つかの回路図面が説明される。各センス電極に対して、容量的に感知される電極信号をできる限り忠実に信号に変換し、電極の平均電圧の制御を可能にもする回路20(図6)が与えられる。この機能は、「イン」ポート21に接続された電極の容量性信号を出力部23において出力信号Voutに忠実に変換する一方で、入力22により与えられるレベルVrefで電極の平均電圧を保持する電極バッファ増幅器を表す参照符号20によって図6に示されている。
【0079】
図7に、標準的な超高入力インピーダンス演算増幅器24を用いたこの機能の基本的な実現が示されている。図7の実施の形態は、単位(1倍)利得を伴う非常に高入力インピーダンスのバッファ増幅器24を用いて電極バッファ増幅器を簡単に実現している。参照電圧が、入力部22から抵抗26を介して入力部21にも接続された増幅器24の非反転入力部に供給される。増幅器24の出力23は、単位利得を与えるためにフィードバックループ25を介して該増幅器の反転入力部に直接フィードバックされる。
【0080】
図7の回路は、生体信号のフィルタリングがほとんどない高入力インピーダンス用の抵抗26の望ましい高いR1値と、増幅器の入力バイアス電流による望ましくないオフセットとの間のトレードオフを与える。
【0081】
図8は、入力段のオフセットを減少させ又は取り除き(積分器の入力電圧のオフセットのみを残す)、更に高く回路の入力インピーダンスのレベルを上げるメカニズムを与える追加の積分回路27,28を加えることによりこのトレードオフを大いに克服する実施の形態を示している。演算増幅器27は、積分器として機能するためにそのフィードバックループ内にキャパシタ28及び抵抗30を有している。出力部23は分圧器に接続されており、分圧器は接続点が増幅器27の反転入力部に接続されている直列接続された抵抗29、30を有する。入力部23は、更に、第2の分圧器に接続されており、第2の分圧器は、接続点が増幅器27の非反転入力部に接続されている、出力部23とVref入力部22との間に直列接続された抵抗31、32を有する。
【0082】
時定数R2×C1(構成要素29、28)は、オフセット補償のゆっくりとした積分を駆動し、抵抗30(R3)は、より高い周波数において相安定性を向上させる手段を与え、抵抗31に対する各抵抗の和の比(R5+R4)/R4は、回路の効果的な入力インピーダンスための倍率としての役割を果たす。
【0083】
実際には、これらの回路は、動きにより変化する皮膚−電極間の容量とともに回路の信号伝達関数において望ましくない動きアーチファクトを作り出す大きな入力容量を持っている。既に述べたように、これは既知のアクティブガード及び中和回路により低減され得る。
【0084】
図9は、能動的に結合された増幅器の電源レールのために入力容量が大きく低減される回路の一例の形の実施の形態を示している。図9は、増幅器の内部電源レールを単位利得出力部と能動的に結合することにより入力容量を効果的に取り除く可能性を示している。この技術は、外部の寄生容量(ここでは図示せず)に対する既知のアクティブガードとオプションで組み合わせられる。図9に示されている回路は、増幅器33の出力を該増幅器の反転入力部に直接接続する負のフィードバックループ34を有する単位利得増幅器33を使用している。この回路は、+15Vのレールから例えば+5Vの正の供給電圧を与える標準的な電力レギュレータ35と、−15Vのレールから例えば−5Vの負の供給電圧を与える標準的な電力レギュレータ37とを有している。レギュレータ35,37の+5V、−5Vの電圧出力は、それぞれのキャパシタ36、38により増幅器33の出力39に接続され、参照される。図示されている回路は、標準的な電力レギュレータを使用しているが、例えば、チャージポンプ、バッテリーのような浮動電源又は変圧器を用いた同じ基本的な考えを使用する他の回路も考えられる。この実施の形態及び他の実施の形態では、任意の寄生容量がアクティブシールドされるか、又は単位利得出力に能動的に結合される。
【0085】
図10は、3電極解決策を実現する一実施の形態の基本的な実現を説明する図を示している。電極40、42に対応する電極b及びcは、電極a(電極41)よりも皮膚からわずかに更に離れている。フィルタブロック43は、図6に示され、図6を参照して説明されたような回路20を介して電極a、b及びcから信号を受け取り、各電極40〜42の平均電圧についての適切なフィードバック信号を生成し、動きアーチファクトが大きく低減された出力信号44を生成する。
【0086】
フィルタブロック43及び3つのバッファ増幅器20は、デジタル回路を含む多くのやり方で実行され得る。
【0087】
図11は、3電極解決策に関して考えられるアナログフィルタの実現を具現化する実施の形態を示している。図11は、提案される3電極解決策の単純化されたアナログの実現を示している。ここでは、電流源51と、ダイオード46(D1)及び50(D2)と、演算増幅器47とが、電極40〜42に対する回路20のVref入力部に印加される+ΔV及び−ΔVの参照電圧を与え、キャパシタC1とともにダイオード48(D3)及び52(D4)が測定された電極信号から適切な非線形フィードバック機能を導き出す。非線形フィードバック回路の効果的な動きフィルタリング時定数は、電流源51により供給される電流で割られたキャパシタンス49(C1)に比例する。キャパシタンス49の一端子は、増幅器47の非反転入力部、ダイオード48のカソード及びダイオード52のアノードに接続されている。キャパシタンス49の他の端子は、電極41と結合された回路20の出力部及び出力部53に接続されている。ダイオード46,50は、増幅器47の出力部と電流源51との間に直列につながれている。ダイオード46のアノードは、電極40に結合された回路20のVref入力部に接続されている。ダイオード46のカソードは、電極41に結合された回路20のVref入力部に接続され、ダイオード50のカソードは、電極42に結合された回路20のVref入力部に接続されている。
【0088】
上述した及び以下に述べる共通に設けられた電極を用いる実施の形態に関して、提案される手法のオプションの特徴は、電極40〜42が、本質的に同じ生体信号Vbioを測定し、皮膚の表面と電極表面との間に本質的に同じ電気電位差Vを共有し、本質的に同じ動きdacを共有するとともに、電極b及びcが、皮膚から本質的に同じ共通の距離にあることである。講じる第1の手段は、電極40〜42を近くに組み立てることであり、皮膚表面においてそれらを位置決めする好適な機械的取り付けを与える。
【0089】
図12は、例えば三つ組(triplet)又は三角形の形に配された、同じ信号及び動きを経験する近くに共通に設けられた電極40〜42(a、b及びc)を示している。
【0090】
皮膚の湾曲、電極の傾斜及び皮膚の表面に沿った信号勾配に対して感受性を低くするために、より対称の電極アセンブリを用いることが有効であり、例えば、図13、14、15を参照されたい。図14、15の実施の形態では、電極b及びcのそれぞれが、複数の電極セグメントに分割されている。図14の実施の形態では、電極c,bのセグメントが、中心の電極aを取り囲む円に沿って交互に配されている。これらの複数の電極のセグメントは、当該電極用の信号バッファ増幅器に電気的に接続されている。図14の実施の形態は、電極bと電極cとの容量の対称性も維持するより対称な電極アセンブリを与える。電極bの種々のセグメントは電気的に接続されている。同じことが電極cについて当てはまる。
【0091】
図15の実施の形態では、電極b,cの電極セグメントは、中心の電極のaの周りにマトリクス状に配されており、4倍の対称性を示す。
【0092】
電気回路の適切な動作のために、ある最小の電気表面領域が必要とされる。電極の共通設置を更に優れたものにするために、上記領域を複数のより小さい電極セグメントに分割することが可能であり、図16及び図17を参照されたい。これは、皮膚及び信号の勾配に対する距離の小さい偏差の更に優れた平均化を与える。セグメント内の文字は、それぞれのセグメントが関係する電極を示している。図16,17の両方の実施の形態は、多数のより小さい電極にわたる平均化を与える。セグメント内の文字は、各セグメントに関連する電極を表している。図16はハニカム状の構造を示し、図17は電極セグメントが交互に配されたマトリクス状の配列を示している。
【0093】
明らかに、より多くの形状が同様に有利に可能である。3ではない異なる数の共通に設けられる電極を用いた他の解決策の場合、同様の推論がわずかに異なる電極のパターンをもたらす。
【0094】
電極間容量はかなり大きく、複数の電極セグメントを用いると増大する傾向があることに注意されたい。そのような作用を避ける又は低減するために、電極は適切なアクティブガード方式を用いて互いに遮蔽される(ここでは図示せず)。電極が意図された皮膚領域のみに曝されるように外部電場もまた適切にガードされる。
【0095】
単独で実行されてもよいし、上述した実施の形態の1つ又はそれ以上と自由に組み合わせられてもよい本発明に係る実施の形態の1つ又はそれ以上によれば、容量性の生体電気感知における動きアーチファクトの減少は、振動プローブを用いて達成される。
【0096】
上述したように、例えば電気化学的電位差と増幅器のバイアスオフセットとによる皮膚−電極間の距離の変化と皮膚−電極の容量性カップリングを通したオフセット電圧(すなわち、電場)の存在との組み合わせは、電気生理学的測定においてアーチファクトを引き起こす。以下に説明される本発明に係る実施の形態では、フィードバック機構と組み合わせて振動容量性プローブを用いてオフセット電圧を補償することによりアーチファクトを著しく減少させる方法及びデバイスが提案される。
【0097】
上述した実施の形態では、動きによって生じる信号は、電極と皮膚との間の電場とこの電場に沿った動き成分との両方に比例する。上述したように、体と電極との間の平均電圧は、体と電極との間の電場及び従って動きによって生じる信号ができる限り小さくなるように能動的に制御され得る。体と電極との間の平均電圧を制御するために、参照電極が設けられる。小さく、ゆっくりと時間的に変化する電圧のみが制御される必要があるので、そのガルバニック接続に関する要求は非常に穏やかである。例えば、わずかに導電性の媒質を介して専ら間接的に体に触れている参照電極でも十分である。上記制御は、種々のやり方で実現されることができ、電極−体間の電圧降下を制御する種々の構成を説明する幾つかの例に関しては添付図面の図2ないし図4の回路図を参照されたい。以下の記載は、体と電極電界との容量性カップリングをどのようになくすかの解決策について説明する。
【0098】
上述したように、例えば電気化学的電位差と増幅器のバイアスオフセットとによる皮膚−電極間の距離の変化と皮膚−電極の容量性カップリングを通したオフセット電圧(すなわち、電場)の存在との組み合わせは、電気生理学的測定においてアーチファクトを引き起こす。この問題の詳細な説明が、容量の電気生理学的測定の模式図を示した図18によって与えられる。左から右に向かって、この図は、生体電気信号55(Vbio(t))、N(t)に従って時間的に変化する皮膚−電極間キャパシタンス57(Ce)、バッファ増幅器60の入力キャパシタンス54(Ci)、バイアス抵抗59(Rbias)、及びフィードバックループ61と、関連する出力Vout(t)とを伴うバッファ増幅器60を示している。DCは、入力キャパシタンス57(Ce)間のオフセット電圧を表している。
【0099】
この実施の形態では、入力キャパシタンスCiが既知の中和技術を用いて取り除かれると仮定している。図19に、センサの伝達関数及び周波数応答がそれぞれ示されている。図19において、容量センサの伝達関数は左側に示され、容量センサの周波数応答は右側に示されている。
【0100】
図20は、皮膚−電極のカップリングを通したオフセット電圧がない場合とある場合とをそれぞれ組み合わせた時間的に変化する皮膚−電極のカップリングの影響を示している。図20は、時間的に変化する皮膚−電極のカップリング(60Hz)でのシミュレーションされたセンサの出力電圧を示している。t=0sから200msまで生体電気信号(10mV/30Hz)が測定されている。200msを超えてから、50mVのオフセット電圧が加えられ、センサの読み出しにおいて明らかにアーチファクトを招いている。
【0101】
図21ないし図24に係る実施の形態では、同期検出器及びフィードバック機構と組み合わせて振動容量性プローブを用い、皮膚−電極間のキャパシタンス(すなわち、電場)間の電圧降下を補償することによってアーチファクトを著しく減少させる方法及びデバイスが提案される。この観点が、図21によってより詳細に説明される。図21は、動きアーチファクトの補償を伴う容量生体電気センサの一実施の形態を説明している。図21は、生体電気信号55(Vbio(t))、N(t)に従って時間的に変化する皮膚−電極間キャパシタンス57(Ce)、バッファ増幅器60の入力キャパシタンス54(Ci)、バイアス抵抗59(Rbias)、及びフィードバックループ61と、関連する出力Vout(t)とを伴うバッファ増幅器60を示している。
【0102】
動きアーチファクト信号S(t)は、自然動き信号(natural motion signal)N(t)のオフセット電圧DC倍に等しい。
S(t)=DC・N(t) (12)
【0103】
オフセット電圧を中和する、すなわち、強制的にDC=0にすることにより、動きアーチファクトが最小化される。この目的を達成するためにここで説明される方法及びデバイスは、以下の通りである。
【0104】
参照振動R(t)を容量性プローブ、例えば、電極1、12のようなセンサ電極に加えると、単位利得増幅器60の入力部に与えられる
S(t)=DC・(N(t)+R(t)) (13)
の動きアーチファクト信号がもたらされる。
【0105】
乗算器63において式(13)にライン62を介して与えられる参照振動R(t)を掛け合わせると、
M(t)=DC・(N(t)+R(t))・R(t)
=DC・N(t)・R(t)+DC・R(t)2 (14)
となる。好ましくは、R(t)は、R(t)=rcos(ωRt)と記述される正弦波であり、その結果、
M(t)=DC・N(t)・R(t)+1/2・DC・r2+1/2・DC・r2cos(2ωRt) (15)
である。
【0106】
オシレータ56により生成される上記振動の周波数ωRは、好ましくは生体電気周波数帯域外にある。式(15)の積分は、M(t)のAC部を平均する。次に、DCのゼロからのずれを表す積分器64のような積分器の出力信号が、参照電極、例えば電極4又は11を介して体にフィードバックされ、加算器58によって示されているように、DCから効果的に差し引かれる。代替として、積分器64の出力は、センス電極1、12等にフィードバックされる。ループの収束後、これは、オフセット電圧の中和(DC=0)及び従って動きアーチファクトの低減/除去をもたらす。
【0107】
図22によれば、シミュレーションの結果は、この動きアーチファクトを低減する技術の効果を明らかに示している。図22によれば、t=0sから0.2sまで生体電気信号(10mV/30Hz)が測定されている。t=0.2sにおいて、DC電圧(−50mV)及び自然振動(60Hz)が加えられ、これは明らかに動きアーチファクトを引き起こしている。t=0.6sにおいて、参照振動が与えられている。t=0.8sを超えてから、復調及びフィードバックループが作動し、これは明らかに動きアーチファクトの排除をもたらしている。すなわち、センサが動きを経験しているという事実にもかかわらず、生体電気信号のみを見ることができる。
【0108】
この観点に係る実施の形態は、上述したような積分器の使用に限定されるものではない。他のより理にかなったフィルタ/制御器、例えば、素早いループの収束と精度とを兼ね備えた適応帯域幅を持つ非線形制御器又はフィルタが考えられる。
【0109】
本発明のこの観点及び他の観点に係る実施の形態は、振動プローブの使用によって動きアートファクトのない生体電気信号を与える。
【0110】
電気生理学的信号からの動きによって生じる信号の統計的独立は、バネ又はカンチレバーのような弾性物体を介して筐体にセンサを機械的に取り付けることによって人工的に高められる。外部の動きによって刺激されると、結果として得られる質量−バネ系がその自然周波数において最初に周期的に振動(oscillate)する。結果として、センサ信号中の動きによって生じる信号は、先験的に知られている周波数範囲において生じ、振動の刺激が電気生理学的信号と関連しているにもかかわらず、周期的振動(oscillation)はない。
【0111】
実施の形態では、予め規定された基準に従う容量センサの振動が、種々のやり方で行われ得る。
【0112】
図23及び図24は、2つの考えられる実現を示している。本発明のこの観点は、これらの実施の形態に限定されないことに注意されたい。
【0113】
図23は、センサ又は参照電極68に取り付けられた振動素子70が矢印69の方向にセンサ又は参照電極68を直接機械的に動かす当該センサ67の実現を示している。振動素子70は電線71を介して動かされる。センサ67の出力信号は、ライン73を介してセンサ電極68及び出力部に接続されたバッファ増幅器72によって生成される。
【0114】
図24は、振動素子70がプローブカプセル、例えばセンサ67のケースの外側又は内側に取り付けられ、矢印69の方向にプローブカプセルを直接機械的に動かす他の実現を示している。振動素子70は電線71を介して動かされる。センサ67の出力信号は、ライン73を介してセンサ電極68及び出力部に接続されたバッファ増幅器72によって生成される。センサ67は筐体74内に配されている。
【0115】
図23及び図24では、電極68及びバッファ増幅器72の両方が、振動素子70からのクロストーク及び外部干渉を適切に遮蔽される。
【0116】
以下の技術、すなわち、エレクトレットを使用した動きによる電磁誘導、電磁気的な動き、(積層されたアクチュエータのデザイン及びバイモルフのデザインを含む)ピエゾ、熱膨張を使用した動きによる電磁誘導、空気圧及び電気活性ポリマは、例えば振動を生成するために用いられる。上記振動素子が大きい所望の動きを作り出すことができない場合、小さい振動を大きい振動に変換するスマートレバーシステムを用いることが可能である。また、共鳴中で振動素子を動作させることも、例えばエネルギー消費を低減するために有効である。
【0117】
以下において、適応混合最小化を用いる動きアーチファクトが低減される容量センサを有する実施の形態が説明される。これらの実施の形態は、個々の解決策として用いられ、オプションで、上記に又は以下に説明される又は示される他の実施の形態の一部又は全部と組み合わせられ得る。
【0118】
上述したように、容量センサにおける動きアーチファクトは、電極−体の平均電圧を制御することにより低減される。以下の実施の形態は、センス電極信号から直接的にこの電圧の指標を抽出し、補償信号を制御するために該指標を用いることを提案する。平均電圧は、温度ドリフト及び電気化学的な表面変化のために時間的に専らゆっくりと変化するので、この制御系は相対的にゆっくりとしたペースで動作する。実施の形態の1つ又はそれ以上に係る提案される後処理方法は、動きによって生じる信号及び関心のある電気生理学的信号の統計的独立を利用する。混合は、部分的に加法的であるので、一実施の形態では、用いられる指標は平均センサ信号電力は補償信号に等しく、補償信号は平均電力ができる限り小さくなるように制御される。
【0119】
上述したように、動きによって生じる信号は、電極と皮膚との間の電場及びこの電場に沿った動き成分の両方に比例する。この見識に基づいて、体と電極との間の電場及び従って動きによって生じる信号ができる限り小さくされるように体の電極との間の平均電圧を積極的に制御することが上記において提案されている。体と電極との間の平均電圧を制御するために、参照電極が設けられる。小さく、ゆっくりと時間的に変化する電圧のみが制御される必要があるので、そのガルバニック接続に関する要求は非常に穏やかである。例えば、わずかに導電性の媒質を介して専ら間接的に体に触れている参照電極でも十分である。上記制御は、種々のやり方で実現されることができ、幾つかの例に関しては電極−体間の電圧降下を制御する種々の構成を示した図2ないし図4及び更なる図の回路図を参照されたい。
【0120】
以下の実施の形態では、後処理方法によってセンス電極信号から直接的に抽出される体と電極との間の平均電圧の指標を用いることが提案される。この観点に係る実施の形態は、センサ信号は、電気生理学的信号と動きによって生じる信号との(部分的に加法)混合されたものにより構成されるという見識に基づいている。更に、関心のある電気生理学的信号及び動きによって生じる信号は、統計的に独立していると仮定され、これは少なくともECG及びEEG信号には妥当である。この指標は、動きアーチファクトの低減の有効性についてのフィードバックを得る手段を与え、平均電圧を能動的に制御するために用いられる。
【0121】
電気生理学的信号からの動きによって生じる信号の統計的独立は、バネ又はカンチレバーのような弾性物体を介して筐体にセンサを機械的に取り付けることによって人工的に高められる(例えば図21ないし図24を参照されたい。)。外部の動きによって刺激されると、結果として得られる質量−バネ系がその自然周波数において最初に周期的に振動する。結果として、センサ信号中の動きによって生じる信号は、先験的に知られている周波数範囲において生じ、振動の刺激が電気生理学的信号と関連しているにもかかわらず、周期的振動はない。
【0122】
図25のブロック図は、上記問題及び本発明に係る実施の形態の両方の原理を模式的に示している。体と電極との間の平均電圧が存在する場合、センサ78の伝達関数S(f)の時間変化は、S(f)VAVの形の動きアーチファクトを引き起こす。適応後処理ブロック81は、センサの出力信号80を解析し、体と電極との間の電場ができる限り小さくされ、動きによって生じる信号が低減されるように出力V∧AVを生成する。後処理ブロック81の出力V∧AVは加算器77に与えられる。加算器77は、検知された信号VBIOを平均電圧VAVに加算する加算器76の出力を更に受け取る。ブロック81を有するフィードバックループは、体と電極との間の平均電圧が温度ドリフト及び電気化学的な表面変化のために専らゆっくりと変化するので、フィードバックループは相対的に遅いことに注意されたい。体と電極との間の最適平均電圧の場合、動きによって生じる信号は広範囲の周波数に関して最小化される。フィードバックループは系の種々の他のゆっくりと変化するオフセットを自動的に補償することにも注意されたい。以下の実施の形態では、デジタル処理によって平均の電極−体間の電圧の指標を取り出すセンサ信号の解析についての種々の方法が提案される。その理由のために、センサ信号x(t)は適切にサンプリングされ、量子化されており、補償信号V∧AVがデジタル領域から制御され得ることが仮定される。
【0123】
オプションで、増加する動きアーチファクトを引き起こす動きによって生じる電気生理学的信号の伝達の変化(S(f)VBIO)は、この種の動きアーチファクトを低減するために中和を用いて補償される。これらの技術は、本発明の実現に従って以下に説明される実施の形態と組み合わせられ得る。
【0124】
実施の形態の1つ又はそれ以上によれば、適応電力最小化が与えられる。典型的には、少なくともECG及びEEG信号は経時的な持続性及び規則性を示し、平均信号電力は専ら非常に穏やかに変化する。センサ信号は、電気生理学的信号と動きによって生じる信号との加法混合により構成され、従って、DCのない信号の平均電力もまた体と電極との間の平均電圧の指標を与える。補償信号V∧AVが変化すると、平均信号電力対制御信号を示した図26に視覚化されているように、センサ信号の電力P及び従って動きによって生じる信号が最小化される或る値Pminが存在する。
【0125】
勾配降下のような反復最適化アルゴリズムは、センサ信号電力P(t)の最小化を達成するために補償信号を適合させる簡単な方法を提供する。補償信号V∧AVをt=t0からt=t1まで更新する典型的なスキームは、
(16)
により与えられる。ここで、適応定数αは、収束速度及び定常状態におけるノイズを制御する。任意の反復最適化アルゴリズムが適用され得るので、ここで示されている勾配降下法は、単に一例を成しているにすぎない。
【0126】
勾配の推定値を得る簡単な方法は、有限差分近似、すなわち、
(17)
によるものである。ここで、t0及びt1における補償信号の値は等しくないと仮定される。変調又はウォブリングに基づく他の方法もまた局所勾配を決定するために適用され得る。
【0127】
上記実施の形態では、センサ信号の平均電力が最小化の基準として用いられる。代替として、センサ信号はプレフィルタされることができ、電力が決定される或る周波数帯域が用いられる。実際のアプリケーションに依存して、この代替の手法は、電気生理学的信号と動きによって生じる信号とのより優れた分離を与え、方法のロバスト性を高める。
【0128】
1つ又はそれ以上の他の実施の形態によれば、適応シャノンエントロピの最小化が用いられる。シャノンエントロピは、信号の平均情報量を定量化する。センサ信号は、電気生理学的信号と動きによって生じる信号との加法混合により構成され、適応V∧AVによるエントロピの最小化は動きアーチファクトを低減する手段を与える。上記情報エントロピは、信号の確率質量関数p(x)により決定される。すなわち、
(18)
である。ここで、対数の底、例えばe、2又は10が、フィードバックの単なる利得係数であるエントロピの単位を決定する。実際には、データは離散的であり、H(x)は、典型的には確率質量関数の推定p∧(x)、例えばヒストグラムから得られ、従って、
(19)
である。
【0129】
エントロピが低いほど、信号はより予測可能であり、より少ない情報が含まれている。再度、補償信号を更新するために反復最適化、例えば、最急降下が適用され、勾配は、例えば有限差分近似により得られ、従って、
(20)
である。
【0130】
負エントロピ、非ガウス性(non-Gaussuanity)等のような他の情報理論的尺度に基づくアルゴリズムも、信号の独立成分の指標として用いられる。
【0131】
以下に、単独で又は上記若しくは下記において説明される若しくは示される他の実施の形態との任意の組み合わせで用いられる実施の形態が説明される。
【0132】
生体信号の容量の検知のための適応プローブの伝達等化が提案される。
【0133】
上述したように、動きによって生じるアーチファクトは、カップリング容量が被験体の動きにより生じる皮膚−電極間の距離の変化によって変化する場合に引き起こされ、これは測定される電気生理学的信号の劣化を招く。この問題は、測定が自由に動く被験体に対して行われるアプリケーションにおいてより大きくなる。
【0134】
図27は、人間の体84に接続され、容量センシング及びバッファリングを与える典型的なプローブ83の電気モデルを示している。インピーダンスレベルを高抵抗から低抵抗に変えるために、バッファ88(A1)が測定キャパシタ85Ceに接続されており、その結果、インピーダンスレベルは干渉に影響されることなく測定系までケーブル89を超えて運ばれる。このバッファ88は、先験的に知られていない入力キャパシタンス87を有している。しかしながら、上記バッファの入力キャパシタンス87は、測定キャパシタンスCeと同じオーダーである。従って、容量分割の結果として、バッファ88の出力信号Voは
Vo=Ce/(Ci+Ce)・Vbio (21)
により与えられる。ここで、Vbioは、関心のある電気生理学的信号である。動きの結果としてのCeの変化は、測定を低下させる伝達Vo/Vbioの変化を引き起こす。Ceに依存しない伝達は、能動的「シールディング」Ciにより、すなわち、Ciを実質的にゼロにすることにより得られ、これは1に等しい伝達関数Vo/Vbioをもたらす。これは、図28の実施の形態に示されるように行われる。
【0135】
図27の実施の形態は、フィードバック電流If86を与えることによりキャパシタ87(Ci)の「シールディング」を実現する。或る量の電流IfをCiを通って流れるノードに等しいバッファ入力ノードにフィードバックすることにより、CiはCeから分かるように実質的にゼロにされる。すなわち、Ciを通って流れる電流はCeによって全く供給されず、その結果、Ceを通って流れる電流は存在しないので、電圧降下はCeの両端に現れない。従って、伝達関数Vo/Vbioは効果的に1に等しい。
【0136】
正確な量の電流Ifのフィードバックは、シールドへのフィードバック電流Ciを制御する方法を説明した図28の回路を用いて達成される。ここでは、バッファ88の出力Voは、非反転増幅器90(A2)を用いて増幅され、その後、フィードバックキャパシタ91(Cf)を介してバッファ88の入力にフィードバックされる。
【0137】
必要とされるバッファ90(A2)の出力電圧Vfは、キャパシタ87,91の値及びバッファの利得が1に等しいという考え方から決定され、バッファ88の正の入力についての電圧はVoに等しい。従って、
Vo=Cf/(Ci+Cf)・Vf (22)
である。
【0138】
更に、バッファ90(A2)の出力信号は、バッファ90の出力部とグランド又は参照電位部94との間に直列に接続された制御可能な直列抵抗分割器92(R2),93(R1)に与えられる。バッファ90の出力信号は、
Vf=(R1+R2)/R1・Vo (23)
により与えられる。
【0139】
従って、R1は固定されていると仮定すると、ポテンショメータR2は
R2=R1(Ci+Cf)/Cf−R1
であるように調節されるべきである。
【0140】
この解決策は、バッファの入力容量の補償を与える。
【0141】
通常、先験的なCiは未知数である。以下に説明される解決策の場合、時間がかかり、従って費用のかかるプロセスである製造された各プローブに対するポテンショメータR2の調節をする必要がない。また、Ciは、例えば温度の関数としてプローブの動作中変化し、これは伝達関数Vo/Vbioに1からのずれを生じさせる。測定は、バッファの入力キャパシタンス(Ci)を通って流れる電流が正確に補償される場合又はその場合に限ってプローブの容量(Ce)に依存しない。この解決策は、他のやり方では伝達Vo/Vbioが1倍からずれると生じる測定のロバスト性及び精度の低下を回避し、結果として動きアーチファクトに対する感度が高まる。この理由のために、本発明のこれらの実施の形態の目的は、電子工学の特徴がドリフトする場合であっても等化が達成されるように伝達関数Vo/Vbioを自動的及び適応的に制御することである。
【0142】
図29は、本発明に係る一実施の形態を説明しており、伝達Vo/Vbioを等化するために使用されるフィードバック制御ループの模式的なブロック図を示している。図29の実施の形態では、フィードバック制御ループは、バッファ段の伝達を適応制御するように構成されている。図27、28において使用されている参照符号の説明が、図29の類似した参照符号に対して同じように当てはまる。この方法及びデバイスは、キャパシタ96(Cr)を介して体84に与えられるライン98上の参照信号Vrefを使用する。オプションで、キャパシタ96(Cr)の容量値は、キャパシタ85(Ce)の容量値よりも非常に大きく、例えば、5倍以上、オプションで10又は50倍以上であり、体を通るバッファの出力部への参照信号の伝達は、バッファの出力部への生体信号の伝達と本質的に等しい。実際のアプリケーションにおいては、例えば図2ないし図5のプローブ電極1は、局所的な生体信号の測定を可能にするサイズに典型的には制限されるのに対して、例えば参照電極プレート4は、任意のサイズであるので、この条件は容易に満たされる。上記参照信号は、生体信号の測定を干渉すべきではなく、従って、(任意の値である)設定値を規定するリファレンス100は、乗算器99によって関心のある信号において予想される最大周波数、例えば数百Hzを超えてうまく変調される。これらの2つの条件の下、参照信号の伝達の等化は、生体信号の伝達の等化をもたらす。参照信号を与えることは、容量性の生体信号検知のバッファ入力容量を等化する目的のために与えられることに注意されたい。
【0143】
等化は、図示されているフィードバック制御ループを用いて達成される。参照信号は、容量センサ96により拾い上げられ、理想的には1であるが、最初はそれよりも小さい係数で増幅される。与えられた参照信号は、その後、測定され、バッファリングされた参照信号から減算器101を用いて差し引かれ、その結果、合計の増幅が1よりも小さい場合、この引き算の結果は参照信号の幾つかを依然として含んでいる。この信号は、乗算器99に与えられる周波数と同じ周波数を用いて乗算器102により復調されて、ローパスフィルタにかけられ、1からの振幅のずれを示すDC信号が得られる。この信号は、振幅を制御するために最後に用いられる。その目的のために、得られたDC信号は、積分器103に与えられ、増幅器104により増幅され、その後、1倍に等しい増幅を設定するためにフィードバックキャパシタ91(Cf)を介してフィードバックされる信号の量を制御するために用いられる。積分器103の使用は、定常誤差がゼロであるまで制御ループがフィードバック電流を変化させ続けることを意味する。すなわち、バッファ増幅器88の出力部における信号は、与えられる参照信号に等しい。言い換えれば、その利得は1に等しい。関心のある信号、すなわちVbioは、この時、減算器101の出力部に存在する。変調信号は図29に示されているような正弦波に制限されるものではなく、スペクトル分布が興味のある信号のスペクトルからうまく分離される限りにおいては任意の波形である得ることに注意されたい。
【0144】
図30は、シミュレーション中に用いられた図29のブロックスキームを表す実際の回路を示している。ここでは、参照電圧V2は、関心のある信号Vbioに加えられるC7を介して体に与えられる。全信号がC4により表される容量センサを介してバッファU1に伝達される。その後、参照信号は、バッファ信号から差し引かれ、その結果は、参照信号との掛け算によりDCに復調される。その後、復調された信号は、ローパスフィルタリングされ、積分される。反転積分器(U2)の出力は、バッファの入力キャパシタンスC3をシールドするために、フィードバックキャパシタC2を介して入力部にフィードバックされる前にバッファの出力信号が増幅されるべきであるファクタを表している。
【0145】
図30に示されているような乗算器として変調及び復調が実現され得るが、スイッチを使用しても実現されることに注意されたい。
【0146】
極めて大きい抵抗R2は、任意の演算増幅器のバイアス電流にグランドへの経路を与える所謂ブリーダであることに注意されたい。抵抗R2は、回路の動作に影響を及ぼさず、実際の実現では省略され得る。
【0147】
上記シミュレーションでは、振幅1V及び周波数10kHzの参照信号が用いられた。生体信号は、0.1Vの振幅及び100Hzの周波数を持つように選択された。図31は、(図29の103に対応する)積分器の出力信号を示しており、明らかに、50ms以内に定常値に収束している。図32は、(図29の101に対応する)減算部の出力信号を示しており、これは、収束後、すなわち、正しい補償電流がフィードバックされた後、与えられたVbioに等しいべきである。実際には、まず最初に、信号中に存在する大きい参照信号成分があり、収束するとゼロに低減され、信号Vbioのみが残ることが分かる。
【0148】
Ceの変化が、t=0,05sにおいてスイッチU3を閉じることにより更にシミュレートされ、その時間においてCeが10pFから20pFまで変化している。減算の出力部における信号、すなわち、関心のある信号を示した図32から、上記関心のある信号はCeの変化に影響を及ぼされないことが分かる。
【0149】
明らかに、帯域幅及び利得は、収束及び追跡速度を決定するが、精密等化も決定する。具体的な設定は、プローブの設計及びアプリケーションの要求に対して変えられる。
【0150】
図33に示されている更なる実施の形態では、復調後に参照信号の減算が行われ、一定の値が差し引かれる。1Vの振幅を持つ参照信号の場合、復調が2倍の減衰を引き起こすので、引かれる値は0.5Vに等しいことに注意されたい。この場合、関心のある信号はバッファの出力に現れるが、この実施の形態では、10kHzにおいて参照成分を取り除くためにオプションで依然としてローパスフィルタにかけられる。
【0151】
図34に示されている他の実施の形態では、0.5Vの一定値を積分器U2の正の入力に与えることにより減算が行われる。この実施の形態は、離散的減算が必要とされないという利点を有している。図34では、ローパスフィルタR4,C8が、関心のある信号Vbioを得るためにバッファU1の出力信号をフィルタにかけるため更に使用される。
【0152】
更なる実施の形態では、等化方法のデジタル実現を示した図35に視覚化されているように等化スキームがデジタル領域において実現される。この図及び/又は他の図における同様の参照符号は、同様の構成要素を示している。上記参照信号は、デジタル制御系113により作られ、デジタル・アナログ変換器(DAC)110によって体84に与えられる。バッファ88の出力信号は、アナログ・デジタル変換器(ADC)111によりデジタル化され、制御ユニット113に送られる。その後、113のデジタル領域において復調、フィルタリング及び積分が行われる。フィードバック信号は、バッファの出力信号から推定され、DAC112を介して又は代替として乗算型DACを介してバッファの入力部に与えられる。
【0153】
上述した幾つかの実施の形態では、体と電極との間の電位及び従って動きによって生じる信号ができる限り小さくされるように体と電極との間の平均電圧を能動的に制御することが提案される。更に、感知電極信号から直接的にそのような電圧の指標を抽出し、補償信号を制御するためにその指標を用いることが提案される。提案される後処理方法は、動きによって生じる信号及び関心のある電気生理学的信号の統計的独立を利用する。混合は部分的に加法的であるので、用いられる指標は、オプションで平均センサ信号電力と等しく、補償信号は、平均電力ができる限り小さくされるように制御される。
【0154】
以下に説明される実施の形態では、動きによって生じる信号をできる限り小さくするために体と電極との間の平均電圧の能動的制御が提案される。補償信号を得る他のやり方が与えられる。これらの実施の形態では、電極の容量の測定された変化を用いて入力信号を再構成すること及び再構成される信号の更なる処理から補償信号を得ることが提案される。更に、電極キャパシタンスの変化は分かっているので、電気生理学的信号に対する時間的に変化するキャパシタンスの変調の影響が取り除かれる。負荷(R)、浮遊容量(Ci)のような容量検出回路のパラメータは、既知であるか又は推定され得る。
【0155】
図36の実施の形態では、生体信号VBIO及び信号VAVを加算する加算器120が設けられている。加算器120の出力信号VINは、更なる加算器122に供給される。更なる加算器122は、他の入力部においてフィードバック信号V∧AVを受け取り、その出力信号を更なる加算器123に供給する。加算器123の他の入力部は、信号発生器121により生成される信号を受け取る。加算器123の出力部は、時間的に変化する容量性カップリングを与えるブロック124に接続されている。バッファ増幅器125はブロック124の出力部に接続されており、出力信号Voを生成する。この出力信号Voは、Ce(t)を推定する推定回路127の入力部と、Vin及び加算器122の入力部にフィードバックされる補償信号を導き出す回路126の入力部に供給される。
【0156】
図37及び図38は、図36の2つの等価回路図を示している。これらの回路図は、本発明のこの実施の形態を説明するために用いられる。
【0157】
電極容量の変化(Ce(t))は、例えば既知の信号注入技術を用いることにより測定される。挿入電圧Vinsは、入力信号中の関心のある周波数よりも非常に大きい周波数Fcの搬送波であり得る。出力部において、この搬送波は、時間に依存するファクタCe(t)/(Ci+Ce(t))によって変調され、これはCe(t)の再構成を可能にする。時間的に変化する容量Ce(t)を推定するこの方法は、他の好適な方法によって置き換えられ得る。
【0158】
以下に、ブロック126において実現されるようなVin及び補償信号を導き出す方法が説明される。
【0159】
バッファ125により生成される図37、38の出力信号Voは、以下のように、すなわち、
(25)
のように入力信号Vinに関連している。式(1)は、以下のように書き換えられる。
(26)
【0160】
従って、Vo(t)、Ce(t)、R、Ci及びQinitが既知である場合、Vinは再構成され得る。
【0161】
Qinitは、例えば、1/Ce(t)の時間的に変化する部分とVin(t)との相関がゼロに等しい、すなわち、Tの好適な値について
(27)
と仮定することにより推定される。これは、Qinitの線形方程式をもたらす。この手順は、信号電力
ができる限り小さくなるようにQinitを選択することと等価である。
【0162】
その後、再構成されたVinの平均から補償信号が導き出される。
【0163】
DCオフセットはボルトのオーダーであり、測定される生体信号は典型的にはミリボルトのオーダーであることに注意されたい。これは、Qinitの上記の計算における小さい相対誤差が再構成された信号における大きい相対誤差を依然として与えることを意味する。能動的補償、すなわち、補償信号によるDCオフセットの低減が与えられるのはこのためである。
【0164】
本発明の実施の形態の用途は、電気生理学の分野(ECG、EMG、EEG、EOG、EHG、…)が調べられる又は測定される任意のアプリケーションを含んでいる。本明細書及び図面において開示されたセンサのような容量センサが適用され得るそのようなアプリケーションの任意の1つが、可能性のある候補である。容量センサが用いられる幾つかの例は、患者モニタ(主に、ECG)、EEG検出機器(臨床的)、脳コンピュータインターフェース(BCI)、赤ん坊の状態若しくは子宮活動を監視するセンサを含む妊婦帯、筋肉の過負荷若しくはRSIを防止するために筋肉の使用を監視するEMG検出機器、身体的活動/運動中にECG若しくはEMGを監視する機器又は電気生理学的信号に基づいて感情を読み取る機器である。容量センサは絶縁材料により測定される固有の性能を持っているので、例えば火傷の場合に包帯を介して測定する又は「スマートベッド」において電気生理学的信号を測定するような新たな可能性が生じる。
【0165】
実施の形態は、例えば、十分なロバスト性を有する容量センサをオプションで伴う患者モニタリングセクタにおいて適用される。更に、実施の形態は、体のバイタルサインのユーザにやさしい検査(例えば、ECG)が有効であるホームモニタリングの分野において用いられ得る。
【0166】
本発明に係る実施の形態は、電気生理学的信号(例えば、ECG、EMG、EEG等)の測定、特に非接触による測定が行われる医療・福祉機器、CE製品及び他のアプリケーションに適用される。一例として、例えば夜間に測定にプラットフォームを与えるスマートベッドのために実施の形態が用いられる。
【0167】
開示された実施の形態に対する他の変形例は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の研究から、特許請求された発明を実践する際に当業者によって理解され、もたらされ得る。
【0168】
特許請求の範囲において、「有する」という語は他の構成要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を排除するものではない。
【0169】
単一のユニット又はデバイスが、特許請求の範囲に列挙されている幾つかの要素の機能を果たし得る。互いに異なる従属請求項において幾つかの方策が列挙されているという単なる事実は、これらの方策の組み合わせが有利に用いられることができないことを示してはいない。
【0170】
幾つかの実施の形態又は従属請求項に挙げられている特徴は、どれでも任意の組み合わせで有利に組み合わせられ得る。
【0171】
本発明が図面及び上述の説明において詳細に図示及び記述されたが、そのような図示及び記述は、事例的又は例示的であり、限定的ではないと考えられるべきであり、本発明は開示された実施の形態に限定されるものではない。例えば、非生物学的信号のような他の信号を測定する実施の形態において本発明を機能させることが可能である。
【0172】
特許請求の範囲におけるいかなる参照符号もが、範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【0173】
1つ又は幾つかのユニット又はデバイスにより実行される計算、プロセス、ステップ及び決定は、単一のユニットにより又は任意の他の数の異なるユニットによって実行され得る。上述した方法に従う計算及び決定及び/又はシステム及び/又はデバイスの制御は、コンピュータプログラムのプログラムコード手段として及び/又は専用ハードウェアとして実現され得る。
【0174】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアとともに又は他のハードウェアの一部として与えられる光記憶媒体又はソリッドステート媒体のような適切な媒体に記憶/配布され得るが、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介してのような他の形態でも配信され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体の少なくとも1つの電気生理学的信号を測定する装置であって、
少なくとも1つの容量センサ電極と、
動きによって生じる信号を低減する又はできる限り小さくするために前記少なくとも1つの容量センサ電極と前記体との間の平均電圧を制御する機構と
を有する、当該装置。
【請求項2】
体の近くに又は体とガルバニック接触して配された少なくとも1つの参照電極を有し、前記少なくとも1つの参照電極が、電圧源、電流源又は参照電位部に接続された、請求項1記載の装置。
【請求項3】
差動増幅器の入力部に結合された少なくとも2つのセンサ電極を有する、請求項1記載の装置。
【請求項4】
本質的に同じ電気生理学的信号を測定し、体に対して互いに異なる距離に配された及び/又は異なる平均電圧を供給される少なくとも2つのセンサ電極を有し、前記平均電圧を規定された値に導くためにフィードバック信号が前記センサ電極の出力信号に基づいて生成される、請求項1記載の装置。
【請求項5】
バッファ増幅器の入力部に与えられる前記センサ電極の出力信号を前記バッファ増幅器の出力信号に変換し、前記バッファ増幅器の他の入力部に与えられる信号により規定されるレベルに前記センサ電極の平均電圧を保持する少なくとも1つの当該バッファ増幅器が設けられた、請求項1記載の装置。
【請求項6】
少なくとも3つのセンサ電極を有し、前記少なくとも3つのセンサ電極は、
三角形状に、
同心円状に、
全ての電極のセグメントが散在した形で分布している小さいセグメントの形式で、又は
環状若しくはマトリクス状の形式で配されたセグメントで
配された、請求項4記載の装置。
【請求項7】
前記センサ電極、参照電極又は前記センサ電極若しくは前記参照電極を支持する若しくは収容する支持体若しくはケースの少なくとも1つを振動させるオシレータ又はバイブレータと、前記平均電圧を低減する又はできる限り小さくするためにフィードバック信号を生成する前記オシレータ又はバイブレータに結合されたフィードバックループ部とを有する、請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記オシレータ又はバイブレータの周波数が、測定される前記電気生理学的信号の生体電気周波数帯域外にある、請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのセンサ電極と体との間の平均電圧の指標を前記センサ電極の信号から抽出する抽出器を有し、当該装置が、フィードバック信号を生成するために前記指標を用いる、請求項1記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つのセンサ電極の少なくとも1つの出力信号の電力の推定値又はエントロピの推定値を決定し、前記平均電圧を規定された値にするために前記少なくとも1つのセンサ電極の前記少なくとも1つの出力信号に基づいてフィードバック信号を生成する推定器を有する、請求項1記載の装置。
【請求項11】
伝達関数Vo/Vbioを等化する等化器を有し、Voは、関心のある電気生理学的信号Vbioを受信するバッファ増幅器の出力信号であり、当該装置は、等化が達成されるように前記伝達関数Vo/Vbioを適応制御する、請求項1記載の装置。
【請求項12】
容量性の生体信号の検知の前記バッファ入力容量を等化する目的のために少なくとも1つの参照電極を用いて参照信号(Vref)を体に与えることと、
前記参照信号を前記関心のある信号において予想される最大周波数よりも大きい値に変調することと、
測定され、バッファリングされた前記参照信号から与えられた前記参照信号を差し引くことと、
結果として生じた前記信号を復調し、ローパスフィルタにかけ、増幅を制御するためにこの信号を用いることと、
前記バッファ増幅器の利得を1倍にするフィードバック機構として実現される前記機構内に積分器を設けることと
の少なくとも1つのための手段を有する、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記動きによって生じる信号をできる限り小さくするために前記体と電極との間の前記平均電圧を制御し、前記センサ電極の容量の測定された変化を用いて前記入力信号を再構成し、再構成された前記入力信号を処理することによりフィードバック信号を生成する制御器を有する、請求項1記載の装置。
【請求項14】
体の少なくとも1つの電気生理学的信号を測定する方法であって、
動きによって生じる信号を低減する又はできる限り小さくするために容量センサ電極と体との間の平均電圧を制御することを有する、当該方法。
【請求項15】
動きによって生じる信号を低減する又はできる限り小さくするために容量センサ電極と体との間の平均電圧を制御するステップをコンピュータに実行させるプログラムコード手段を有する、コンピュータプログラム。
【請求項1】
体の少なくとも1つの電気生理学的信号を測定する装置であって、
少なくとも1つの容量センサ電極と、
動きによって生じる信号を低減する又はできる限り小さくするために前記少なくとも1つの容量センサ電極と前記体との間の平均電圧を制御する機構と
を有する、当該装置。
【請求項2】
体の近くに又は体とガルバニック接触して配された少なくとも1つの参照電極を有し、前記少なくとも1つの参照電極が、電圧源、電流源又は参照電位部に接続された、請求項1記載の装置。
【請求項3】
差動増幅器の入力部に結合された少なくとも2つのセンサ電極を有する、請求項1記載の装置。
【請求項4】
本質的に同じ電気生理学的信号を測定し、体に対して互いに異なる距離に配された及び/又は異なる平均電圧を供給される少なくとも2つのセンサ電極を有し、前記平均電圧を規定された値に導くためにフィードバック信号が前記センサ電極の出力信号に基づいて生成される、請求項1記載の装置。
【請求項5】
バッファ増幅器の入力部に与えられる前記センサ電極の出力信号を前記バッファ増幅器の出力信号に変換し、前記バッファ増幅器の他の入力部に与えられる信号により規定されるレベルに前記センサ電極の平均電圧を保持する少なくとも1つの当該バッファ増幅器が設けられた、請求項1記載の装置。
【請求項6】
少なくとも3つのセンサ電極を有し、前記少なくとも3つのセンサ電極は、
三角形状に、
同心円状に、
全ての電極のセグメントが散在した形で分布している小さいセグメントの形式で、又は
環状若しくはマトリクス状の形式で配されたセグメントで
配された、請求項4記載の装置。
【請求項7】
前記センサ電極、参照電極又は前記センサ電極若しくは前記参照電極を支持する若しくは収容する支持体若しくはケースの少なくとも1つを振動させるオシレータ又はバイブレータと、前記平均電圧を低減する又はできる限り小さくするためにフィードバック信号を生成する前記オシレータ又はバイブレータに結合されたフィードバックループ部とを有する、請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記オシレータ又はバイブレータの周波数が、測定される前記電気生理学的信号の生体電気周波数帯域外にある、請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのセンサ電極と体との間の平均電圧の指標を前記センサ電極の信号から抽出する抽出器を有し、当該装置が、フィードバック信号を生成するために前記指標を用いる、請求項1記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つのセンサ電極の少なくとも1つの出力信号の電力の推定値又はエントロピの推定値を決定し、前記平均電圧を規定された値にするために前記少なくとも1つのセンサ電極の前記少なくとも1つの出力信号に基づいてフィードバック信号を生成する推定器を有する、請求項1記載の装置。
【請求項11】
伝達関数Vo/Vbioを等化する等化器を有し、Voは、関心のある電気生理学的信号Vbioを受信するバッファ増幅器の出力信号であり、当該装置は、等化が達成されるように前記伝達関数Vo/Vbioを適応制御する、請求項1記載の装置。
【請求項12】
容量性の生体信号の検知の前記バッファ入力容量を等化する目的のために少なくとも1つの参照電極を用いて参照信号(Vref)を体に与えることと、
前記参照信号を前記関心のある信号において予想される最大周波数よりも大きい値に変調することと、
測定され、バッファリングされた前記参照信号から与えられた前記参照信号を差し引くことと、
結果として生じた前記信号を復調し、ローパスフィルタにかけ、増幅を制御するためにこの信号を用いることと、
前記バッファ増幅器の利得を1倍にするフィードバック機構として実現される前記機構内に積分器を設けることと
の少なくとも1つのための手段を有する、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記動きによって生じる信号をできる限り小さくするために前記体と電極との間の前記平均電圧を制御し、前記センサ電極の容量の測定された変化を用いて前記入力信号を再構成し、再構成された前記入力信号を処理することによりフィードバック信号を生成する制御器を有する、請求項1記載の装置。
【請求項14】
体の少なくとも1つの電気生理学的信号を測定する方法であって、
動きによって生じる信号を低減する又はできる限り小さくするために容量センサ電極と体との間の平均電圧を制御することを有する、当該方法。
【請求項15】
動きによって生じる信号を低減する又はできる限り小さくするために容量センサ電極と体との間の平均電圧を制御するステップをコンピュータに実行させるプログラムコード手段を有する、コンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【公表番号】特表2012−532731(P2012−532731A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520134(P2012−520134)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053089
【国際公開番号】WO2011/007292
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053089
【国際公開番号】WO2011/007292
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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