説明

動力伝達システムの潤滑油供給装置

【課題】ノイズを抑制すること。
【解決手段】ケース2に収容された複数の歯車からなる歯車群と、ケース2に収容され、歯車群におけるMG2リダクションギヤ6の回転中心として接続された第2モータ/ジェネレータ120の回転軸13と、回転軸13の外周面に開口を有し、この開口を介して潤滑油を貯留可能な複数の油溝13aと、ケース2における回転軸13よりも車両鉛直方向の上部に形成され、この回転軸13の回転と共に油溝13aから飛散した潤滑油を貯留する油受け部8と、を備え、各油溝13aは、回転軸13の周方向で隣り合う油溝13a同士の夫々の間隔が不均一になるように形成すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の動力伝達システムの潤滑油供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、エンジンの出力軸に連結される回転軸、第1モータ/ジェネレータの配設された回転軸及び第2モータ/ジェネレータの配設された回転軸を含む複数本の回転軸と、これら各回転軸上の歯車群と、を備えたハイブリッド車両における動力伝達システムが知られている。そして、この動力伝達システムにおいては、その回転軸等に潤滑油を供給する潤滑油供給装置が設けられている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、モータ/ジェネレータのロータと一体になって回転し、油貯留部の潤滑油の掻き上げを行う円環板状の掻き上げ部材について記載されている。その掻き上げ部材は、周方向にて交互に且つ放射状に形成された凹凸部を外縁部分に備えており、その凹凸部により成る凹溝で油貯留部の潤滑油の掻き上げを行う。その凹凸部は、凹凸が均等な間隔で配置されている。この特許文献1には、その凹溝を径方向に対して一方の周方向(掻き上げ部材の一方の回転方向)に向けて傾斜させたものが記載されている。
【0004】
尚、下記の特許文献2には、差動装置のリングギヤによって油貯留部の潤滑油を掻き上げる技術が記載されている。ここでは、そのリングギヤの回転軸の上方にモータ/ジェネレータの回転軸が配置されている。また、下記の特許文献3には、軸線に直交する円環板状のフランジを設けたデフケースであって、このフランジが円環の面上に軸線方向へと突出させた複数のスポークを有するものについて記載されている。そのスポークは、径方向に対して一方の周方向(デフケースの回転方向)に向けて傾斜させ、均等な間隔で放射状に複数配置されたものであり、油貯留部の潤滑油の掻き上げを行う。また、下記の特許文献4には、差動装置のファイナルドリブンギヤで油貯留部の潤滑油の掻き上げを行い、その掻き上げられた潤滑油をファイナルドリブンギヤよりも小径で且つ当該ファイナルドリブンギヤよりも回転軸が上側に位置する別のギヤで更に掻き上げる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−120417号公報
【特許文献2】特開2011−140994号公報
【特許文献3】特開2010−254186号公報
【特許文献4】特開2011−137493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、モータ/ジェネレータの小型化を図った場合には、そのモータ/ジェネレータの高回転化が必要になる。これが為、このモータ/ジェネレータの動力が伝わる歯車においては、モータ/ジェネレータが小型化される前よりも歯車同士の歯面当たり等によるノイズが高くなる可能性がある。特に、この場合には、その様な歯車によるノイズの発生が比較的少ない低車速においてノイズが顕著に表れる可能性が高い。
【0007】
そこで、本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、ノイズの抑制が可能な動力伝達システムの潤滑油供給装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為、本発明は、ケースに収容された複数の歯車からなる歯車群と、前記ケースに収容され、前記歯車群における第1歯車の回転中心として接続されたモータ/ジェネレータの回転軸と、該回転軸の外周面に開口を有し、該開口を介して潤滑油を貯留可能な複数の油溝と、前記ケースにおける前記回転軸よりも車両鉛直方向の上部に形成され、該回転軸の回転と共に前記油溝から飛散した潤滑油を貯留する油受け部と、を備え、前記各油溝は、前記回転軸の周方向で隣り合う油溝同士の夫々の間隔が不均一になるように形成したことを特徴としている。
【0009】
ここで、前記ケースは、車両鉛直方向の下部に潤滑油の油貯留部を有し、前記回転軸は、前記歯車群の中の前記油貯留部の潤滑油に一部が浸漬している第2歯車よりも車両鉛直方向の上方に配置し、前記油溝は、前記第2歯車で掻き上げた前記油貯留部の潤滑油が供給されるように配置することが望ましい。
【0010】
また、前記第2歯車は、前記ケースに収容された差動装置の歯車であることが望ましい。
【0011】
また、前記油溝は、前記回転軸の径方向に対して当該回転軸の回転方向に傾斜させることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る動力伝達システムの潤滑油供給装置は、回転軸の油溝に貯留されている潤滑油をケース上部の油受け部に供給することができ、その油受け部から動力伝達システムの被潤滑部に潤滑油を供給することができる。また、この潤滑油供給装置は、各油溝が回転軸に不均一な周方向の間隔で形成されており、周方向における回転軸の剛性が不均等になって、その回転軸の共振ピークをなますことができるので、歯車によるノイズを低減させることができる。つまり、この潤滑油供給装置は、被潤滑部の潤滑性能や冷却性能を確保又は向上させつつ、歯車によるノイズの低減が可能になる。従って、この潤滑油供給装置は、モータ/ジェネレータを高回転化させたとしても、その様な潤滑性能等を得つつ、歯車によるノイズを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明に係る潤滑装置と当該潤滑装置の適用される動力伝達システムの一例をエンジン側から観た概略図である。
【図2】図2は、動力伝達システムの一部と潤滑装置を示す図である。
【図3】図3は、図2のX−X線で切った回転軸の断面図であり、油溝の配置の一例を示す図である。
【図4】図4は、別形態のケースについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る動力伝達システムの潤滑油供給装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
[実施例]
本発明に係る動力伝達システムの潤滑油供給装置の実施例を図1から図4に基づいて説明する。本実施例の潤滑油供給装置は、車両の動力伝達システムに適用されるものである。
【0016】
最初に、図1及び図2に示す動力伝達システム1について説明する。尚、図1の矢印は、掻き上げられた潤滑油の飛散方向を示している。
【0017】
この動力伝達システム1は、機械動力源と電気動力源の双方が搭載された車両であって、機械動力源の動力のみを用いたエンジン走行モードと、電気動力源の動力のみを用いたEV走行モードと、機械動力源及び電気動力源の双方の動力を用いたハイブリッド走行モードと、を適宜切り替えて運転される所謂ハイブリッド車両で動力の伝達を行うものである。機械動力源とは、クランクシャフト(出力軸)から機械的な動力を出力する内燃機関や外燃機関等のエンジンである。電気動力源とは、モータ、力行駆動可能なジェネレータ又は力行及び回生の双方の駆動が可能なモータ/ジェネレータのことである。ここでは、2つのモータ/ジェネレータ(第1及び第2のモータ/ジェネレータ)を例に挙げて説明する。
【0018】
この動力伝達システム1は、中空のトランスアクスルケース(以下、「ケース」と云う。)2を備える。このケース2は、相互に開口端同士が固定されるエンジン側ハウジング2a、エクステンションハウジング2b及びエンドカバー2cを有している。そのエンジン側ハウジング2aは、図示しないが、図2の紙面右方にクラッチ等の収納室を有しており、その収納室の開口端にエンジンが取り付けられる。
【0019】
このケース2の内部には、複数の歯車からなる歯車群が収納されている。例えば、この内部には、カウンタドライブギヤ3、カウンタドリブンギヤ4、ドライブピニオンギヤ5、MG2リダクションギヤ(第1歯車)6が配設されている。
【0020】
カウンタドライブギヤ3は、カウンタドリブンギヤ4よりも車両前後方向の前側に配置され、インプットシャフト11に取り付けられる。そのインプットシャフト11は、エンジンの出力軸にクラッチ等を介して連結されたものである。また、このインプットシャフト11は、図示しない遊星歯車機構を介して図示しない第1モータ/ジェネレータ(MG1)の回転軸にも連結されている。従って、エンジンの出力トルクは、カウンタドライブギヤ3と第1モータ/ジェネレータとに分割して入力される。
【0021】
カウンタドリブンギヤ4は、カウンタドライブギヤ3とMG2リダクションギヤ6とに噛み合わせた状態でカウンタシャフト12に取り付けられている。このカウンタドリブンギヤ4は、ドライブピニオンギヤ5と同軸上に配置され、このドライブピニオンギヤ5と一体になって回転する。
【0022】
そのドライブピニオンギヤ5は、後述するファイナルリングギヤ22に噛み合っている。このドライブピニオンギヤ5は、カウンタドライブギヤ3を介してカウンタドリブンギヤ4に入力されたエンジンの出力トルクをファイナルリングギヤ22に伝達する。また、このドライブピニオンギヤ5は、MG2リダクションギヤ6を介してカウンタドリブンギヤ4に入力された第2モータ/ジェネレータ(MG2)120の出力トルクをファイナルリングギヤ22に伝達する。
【0023】
MG2リダクションギヤ6は、カウンタドリブンギヤ4よりも車両前後方向の後側に配置されている。このMG2リダクションギヤ6は、第2モータ/ジェネレータ120の回転軸13に連結されており、この回転軸13と一体になって回転する。その回転軸13は、第2モータ/ジェネレータ120から軸線方向に突出させた状態で当該第2モータ/ジェネレータ120のロータ121に取り付けられている。尚、この回転軸13とロータ121は、一体になって回転する。このMG2リダクションギヤ6は、カウンタドリブンギヤ4よりも小径であり、第2モータ/ジェネレータ120の出力トルクをカウンタドリブンギヤ4に増幅して伝達する。
【0024】
更に、ケース2の内部には、差動装置20が配設されている。この差動装置20は、デフケース21の外周側に形成されたファイナルリングギヤ(第2歯車)22と、デフケース21内に配設された差動機構23と、を有する。ファイナルリングギヤ22は、ドライブピニオンギヤ5よりも車両前後方向の後側で且つ車両鉛直方向の下側に配置されており、そのドライブピニオンギヤ5を介してエンジンや第2モータ/ジェネレータ120の出力トルクが入力される。このファイナルリングギヤ22は、上述したカウンタドライブギヤ3等と共にケース2内の歯車群を成す。差動機構23は、ファイナルリングギヤ22を介して入力されたエンジン等の出力トルクを左右のドライブシャフト(駆動軸)に分配する。また、そのファイナルリングギヤ22は、MG2リダクションギヤ6よりも車両鉛直方向の下側に配置されている。
【0025】
また、ケース2の内部には、その車両鉛直方向の下部で且つファイナルリングギヤ22よりも車両鉛直方向の下方に、潤滑油(例えばATF)を貯留する油貯留部7が設けられている。ファイナルリングギヤ22は、その下側の一部を油貯留部7の潤滑油に浸漬させている。従って、油貯留部7の潤滑油は、ファイナルリングギヤ22の回転によって掻き上げられ、この動力伝達システム1の被潤滑部(他の歯車や回転軸、軸受、第1及び第2のモータ/ジェネレータ等)に対して直接又は間接的に供給される。その間接的な供給とは、例えば、ファイナルリングギヤ22で掻き上げられた潤滑油がケース2の内壁に当たり、その内壁から被潤滑部に滴下又は伝わって供給されることを云う。この動力伝達システム1においては、そのファイナルリングギヤ22や油貯留部7が潤滑油供給装置の構成要素となる。
【0026】
また、このケース2の内部には、その車両鉛直方向の上部に、ファイナルリングギヤ22で掻き上げられた潤滑油を受け止め、これを貯留する油受け部8が設けられている。この油受け部8は、ケース2の内壁面から突出させたリブ8aによって形成されている。
【0027】
ここで、ファイナルリングギヤ22は図1の紙面反時計回りに回転するので、油受け部8には、そのファイナルリングギヤ22で紙面右側から掻き上げられた潤滑油を導き入れる開口8bが紙面右側に形成されている。その掻き上げられた潤滑油は、カウンタドリブンギヤ4やMG2リダクションギヤ6等にも直接又は間接的に供給される。そして、そのMG2リダクションギヤ6は、図1の紙面反時計回りに回転するので、ファイナルリングギヤ22等から供給された潤滑油を紙面右側の部位等から車両鉛直方向の上方や当該上方で且つ車両前後方向の前側に掻き上げる。そこで、油受け部8の開口8bは、そのMG2リダクションギヤ6で掻き上げられた潤滑油についても受け止める位置に設ける。具体的には、MG2リダクションギヤ6よりも車両鉛直方向の上方で且つMG2リダクションギヤ6の紙面右側の端部よりも車両前後方向の前側に開口8bを設ける。これにより、この油受け部8には、MG2リダクションギヤ6の掻き上げた潤滑油も供給されることになり、ファイナルリングギヤ22で掻き上げられた潤滑油と共に多量の潤滑油が供給される。
【0028】
この油受け部8の潤滑油は、例えば図示しない油供給孔と油供給路を介して動力伝達システム1の被潤滑部に供給される。その油供給孔や油供給路は、例えばケース2の内壁面に形成される。また、この油受け部8の潤滑油は、走行中の加減速度や車両の傾き等によって開口8bからも被潤滑部に供給される。
【0029】
この様に、この動力伝達システム1においては、そのMG2リダクションギヤ6や油受け部8についても潤滑油供給装置の構成要素となる。従って、本実施例の潤滑油供給装置は、ファイナルリングギヤ22に加えてMG2リダクションギヤ6からも油受け部8に潤滑油を供給することができるので、油受け部8から動力伝達システム1の被潤滑部への潤滑油の供給量が増大し、その被潤滑部の潤滑性能や冷却性能を向上させることができる。
【0030】
更に、ファイナルリングギヤ22で掻き上げられた潤滑油は、そのMG2リダクションギヤ6が取り付けられている第2モータ/ジェネレータ120の回転軸13にも直接又は間接的に供給される。そして、その回転軸13に付着している潤滑油は、回転軸13の回転と共に車両鉛直方向の上方や当該上方で且つ車両前後方向の前側へと掻き上げられる。ここで、油受け部8の開口8bは、この回転軸13よりも車両鉛直方向の上方で且つ回転軸13の紙面右側の端部よりも車両前後方向の前側に設けられている。従って、その油受け部8には、回転軸13で掻き上げられた潤滑油も供給される。そこで、その供給量を増やすべく、その回転軸13には、図3に示すように、その外周面に開口を有する複数の油溝13aを当該回転軸13の周方向に複数形成する。油溝13aは、回転軸13の軸線方向にも複数形成してよい。
【0031】
その油溝13aには、回転軸13に供給された潤滑油が貯留される。そして、この油溝13aの潤滑油は、回転軸13の回転と共に飛散し、回転軸13の周囲の被潤滑部に供給される。また、その飛散した潤滑油の一部は、油受け部8にも供給される。この油溝13aによる潤滑油の供給性能を上げるべく、油溝13aは、回転軸13の径方向に対して当該回転軸13の回転方向に傾斜させ、貯留している潤滑油を開口から飛散させ易くしている。この様に、この動力伝達システム1においては、その油溝13aについても潤滑油供給装置の構成要素となっている。
【0032】
以上示したように、本実施例の潤滑油供給装置は、従来の様なファイナルリングギヤ22だけでなく、MG2リダクションギヤ6や第2モータ/ジェネレータ120の回転軸13の油溝13aによっても潤滑油を油受け部8に供給するので、その供給量を従来よりも増大させることができる。そして、これにより、この潤滑油供給装置は、油受け部8から動力伝達システム1の被潤滑部への潤滑油の供給量の増大が可能になるので、その被潤滑部の潤滑性能や冷却性能を向上させることができる。
【0033】
また、低車速域においては、ファイナルリングギヤ22の回転数が低くなるので、このファイナルリングギヤ22から油受け部8まで潤滑油が到達できなくなる可能性もある。しかしながら、本実施例の潤滑油供給装置は、MG2リダクションギヤ6や回転軸13の油溝13aからも油受け部8に潤滑油が供給されるので、ファイナルリングギヤ22からの潤滑油の供給量が低下する低車速域であっても、油受け部8の潤滑油の貯留量を確保でき、この油受け部8から被潤滑部に潤滑油を供給することができる。従って、この潤滑油供給装置は、従来は被潤滑部への潤滑油不足が懸念された低車速域であっても、その被潤滑部の潤滑性能や冷却性能を確保することができる。
【0034】
ここで、各油溝13aは、回転軸13に対して周方向に疎密を設けた状態で形成することが望ましい。つまり、各油溝13aは、回転軸13の周方向で隣り合う油溝13a同士の夫々の間隔が不均一になるように形成することが望ましい。例えば、回転軸13は、図3に示すように、周方向に間隔を開けて油溝13aが形成された部分(紙面上側)と、この部分よりも周方向の間隔を小さくして油溝13aが形成された部分(紙面下側)と、を有する。この様に、回転軸13は、周方向に疎密を設けて夫々の油溝13aを形成することで、周方向において剛性の不均等を生じさせ、周方向の曲げ剛性値を変化させることができる。これにより、この回転軸13は、曲げ共振周波数が回転位相毎にずれるので、共振ピークをなますことができる。従って、この回転軸13は、MG2リダクションギヤ6の噛み合い点動剛性を下げて、歯車によるノイズを低減させることができる。
【0035】
この様に、本実施例の潤滑油供給装置は、潤滑油の供給性能を向上させつつも、歯車によるノイズを低減させることができる。従って、この潤滑油供給装置は、第2モータ/ジェネレータ120の小型化を可能にする。つまり、第2モータ/ジェネレータ120を小型化した場合には、その小型化前と同等の動力伝達性能を得るべく、MG2リダクションギヤ6とカウンタドリブンギヤ4との間の減速比を大きくする必要があり、これに伴い第2モータ/ジェネレータ120の回転軸13が小型化前よりも高回転化してしまう。そして、その回転軸13の高回転化は、歯車によるノイズの発生が比較的少ない低車速においてノイズを顕著に発生させてしまう可能性がある。しかしながら、本実施例の潤滑油供給装置は、潤滑油の供給性能の向上だけでなく、歯車によるノイズの低減をも図ることができるので、第2モータ/ジェネレータ120を小型化しても、ノイズ(特に低車速域でのノイズ)の発生を抑えることができる。
【0036】
ところで、本実施例の潤滑油供給装置は、低車速域において、上述した様にファイナルリングギヤ22から油受け部8に潤滑油を供給できない可能性があるが、その供給不足をMG2リダクションギヤ6や第2モータ/ジェネレータ120の回転軸13の油溝13aから掻き上げられた潤滑油で補うことができる。これが為、これよりも車速が高い場合には、MG2リダクションギヤ6や回転軸13の油溝13aからの潤滑油だけで十分に油受け部8の潤滑油貯留量を満たすことができる。そこで、本実施例の潤滑油供給装置においては、ファイナルリングギヤ22から掻き上げられた潤滑油を主に動力伝達システム1の被潤滑部への直接又は間接的な供給に用いるようにし、MG2リダクションギヤ6と回転軸13の油溝13aとで掻き上げた潤滑油で油受け部8を満たすようにしてもよい。つまり、ここでは、ファイナルリングギヤ22から掻き上げられた潤滑油の油受け部8への供給量を上記の例示より減らしてもよく、また、この潤滑油が油受け部8に直接供給されなくてもよい。従って、この潤滑油供給装置は、潤滑油の供給性能を確保しつつ、図4に示すようにケース2Aを上記の例示のケース2よりもコンパクト化でき、且つ、その分だけケース剛性を高めることができるので、歯車によるノイズの低減が可能になる。
【符号の説明】
【0037】
1 動力伝達システム
2 ケース
3 カウンタドライブギヤ
4 カウンタドリブンギヤ
5 ドライブピニオンギヤ
6 MG2リダクションギヤ
7 油貯留部
8 油受け部
13 回転軸
13a 油溝
22 ファイナルリングギヤ
120 第2モータ/ジェネレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに収容された複数の歯車からなる歯車群と、
前記ケースに収容され、前記歯車群における第1歯車の回転中心として接続されたモータ/ジェネレータの回転軸と、
該回転軸の外周面に開口を有し、該開口を介して潤滑油を貯留可能な複数の油溝と、
前記ケースにおける前記回転軸よりも車両鉛直方向の上部に形成され、該回転軸の回転と共に前記油溝から飛散した潤滑油を貯留する油受け部と、
を備え、
前記各油溝は、前記回転軸の周方向で隣り合う油溝同士の夫々の間隔が不均一になるように形成したことを特徴とする動力伝達システムの潤滑油供給装置。
【請求項2】
前記ケースは、車両鉛直方向の下部に潤滑油の油貯留部を有し、
前記回転軸は、前記歯車群の中の前記油貯留部の潤滑油に一部が浸漬している第2歯車よりも車両鉛直方向の上方に配置し、
前記油溝は、前記第2歯車で掻き上げた前記油貯留部の潤滑油が供給されるように配置することを特徴とした請求項1記載の動力伝達システムの潤滑油供給装置。
【請求項3】
前記第2歯車は、前記ケースに収容された差動装置の歯車であることを特徴とした請求項2記載の動力伝達システムの潤滑油供給装置。
【請求項4】
前記油溝は、前記回転軸の径方向に対して当該回転軸の回転方向に傾斜させることを特徴とした請求項1,2又は3に記載の動力伝達システムの潤滑油供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−87916(P2013−87916A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231043(P2011−231043)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】