説明

動力伝達装置

【課題】トルク伝達カップリングを設けながら無理のないコンパクト化が可能であり、プロペラ・シャフトの配置設計も容易にすることを可能とする。
【解決手段】分配ケース5に回転自在に支持され相互に平行に配置されてヘリカル・スパー・ギヤ25,26により連動可能な連結中空軸7及び伝達中間軸9と、分配ケース5に回転自在に支持され伝達中間軸9に交差して配置されリング・ギヤ27及びピニオン・ギヤ32により伝達中間軸9に対して連動しプロペラ・シャフトへ出力可能とした後輪側出力軸11とを備え、伝達中間軸9のヘリカル・スパー・ギヤ26を、連結中空軸7のヘリカル・スパー・ギヤ25に対して大径とし、ヘリカル・スパー・ギヤ26の内径側と伝達中間軸9との間に、ヘリカル・スパー・ギヤ26から伝達中間軸9への駆動力伝達を制御するトルク伝達カップリング93を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のトランスファ装置等に供される動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動力伝達装置の構造として、特許文献1に記載のような4輪駆動車の動力配分装置がある。
【0003】
この動力配分装置は、フロント・デファレンシャル装置への入力を後輪側へ配分出力するトランスファ装置であり、トランスファ・ケースにトランスファ軸とピニオン・シャフトと出力軸とが回転自在に支持されている。トランスファ軸に対してピニオン・シャフトは直交配置され、ピニオン・シャフトに対して出力軸は平行に配置されている。
【0004】
トランスファ軸及びピニオン・シャフト間は、直交噛合ギヤである第1の変向歯車及び第2の変向歯車の噛み合いにより駆動力伝達が行われる。ピニオン・シャフト及び出力軸間は、平行噛合ギヤである第1,第2の歯車の噛み合いにより駆動力伝達が行われる。第2の歯車に伝達された駆動力は、トルク伝達カップリングであるトランスファ・クラッチを介して出力軸に伝達され、出力軸からプロペラ・シャフトを介してリヤ・デファレンシャル装置へ伝達される。
【0005】
従って、トランスファ・クラッチにより後輪側への駆動力配分を、走行状態や運転状態等に応じて連続的に可変制御することができ、トランスファ・クラッチを出力軸上に配置することでコンパクトな構造にすることが可能となる。
【0006】
しかし、かかるトランスファ装置では、プロペラ・シャフトに結合される出力軸がピニオン・シャフトに対して車幅方向で平行に配置される構造であるため、プロペラ・シャフトを車幅方向の中央に配置する設計に困難を伴うという問題がある。
【0007】
出力軸をピニオン・シャフトの下側に配置すればプロペラ・シャフトを車幅方向の中央に配置する設計を容易にすることは可能であるが、プロペラ・シャフトの地上高が低くなり、最低地上高の確保に困難を伴うという問題を招く。
【0008】
また、トランスファ・クラッチが第2の歯車に併設されているため、装置のコンパクト化にも無理があった。
【特許文献1】特開2002−187446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、動力伝達装置にトルク伝達カップリングを設けてコンパクトではあるが、プロペラ・シャフトの配置設計に困難を伴い、装置のコンパクト化にも無理があった点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、トルク伝達カップリングを設けながら無理のないコンパクト化が可能であり、プロペラ・シャフトの配置設計も容易にするため、ケースに回転自在に支持され相互に平行に配置されて第1,第2の平行噛合ギヤにより連動可能な第1,第2の軸と、前記ケースに回転自在に支持され前記第2の軸に交差して配置され第1,第2の直交噛合ギヤにより第2の軸に対して連動しプロペラ・シャフトへ出力可能とした第3の軸とを備え、前記第2の軸の第2の平行噛合ギヤを、前記第1の軸の第1の平行噛合ギヤに対して大径とし、前記第2の平行噛合ギヤの内径側と第2の軸との間に、第2の平行噛合ギヤから第2の軸への駆動力伝達を制御するトルク伝達カップリングを設けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の動力伝達装置では、ケースに回転自在に支持され相互に平行に配置されて第1,第2の平行噛合ギヤにより連動可能な第1,第2の軸と、前記ケースに回転自在に支持され前記第2の軸に交差して配置され第1,第2の直交噛合ギヤにより第2の軸に対して連動しプロペラ・シャフトへ出力可能とした第3の軸とを備え、前記第2の軸の第2の平行噛合ギヤを、前記第1の軸の第1の平行噛合ギヤに対して大径とし、前記第2の平行噛合ギヤの内径側と第2の軸との間に、第2の平行噛合ギヤから第2の軸への駆動力伝達を制御するトルク伝達カップリングを設けた。
【0012】
このため、第3の軸以外に車幅方向に軸が並設されることがなく、プロペラ・シャフトを車幅方向の中央に配置する設計が容易となる。
【0013】
また、トルク伝達カップリングを、相対的に大径にした第2の平行噛合ギヤの内径側と第2の軸との間に設けたので、装置を無理なくコンパクト化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
トルク伝達カップリングを設けて無理のないコンパクト化が可能であり、プロペラ・シャフトの配置設計も容易にするという目的を、第2の軸の第2の平行噛合ギヤを相対的に大径化してトルク伝達カップリングを配置し、第3の軸以外に車幅方向に軸が並設されることがないようにして実現した。
【実施例1】
【0015】
[動力伝達装置]
図1は、動力伝達装置のギヤを主体とした縦方向の断面図、図2は動力伝達装置の軸を主体として横方向の断面図である。
【0016】
図1、図2のように、動力伝達装置であるトランスファ装置1は、前輪側の一方の回転軸である車軸中間軸3の外周に配置される。動力伝達装置1のケースである分配ケース5は、固定側であるトランスミッション側のベル・ハウジングに後述の構成により付けられる。このトランスファ装置1は、連結中空軸7、伝達中間軸9、及び後輪側出力軸11の3軸構造となっている。連結中空軸7は第1の軸、伝達中間軸9は第2の軸、後輪側出力軸11は第3の軸を構成し、この順に順次高位に配置されている。
【0017】
分配ケース5は、連結中空軸7及び伝達中間軸9を回転自在に支持する第1のケース部分13と後輪側出力軸11を回転自在に支持する第2のケース部分15とからなっている。第1のケース部分13は、ケース本体16及びケース・カバー17からなっている。
【0018】
ケース本体16に合わせ面19が設けられ、この合わせ面19に本体側締結部20が連結中空軸7及び伝達中間軸9の軸心を囲むように設けられている。ケース・カバー17にも対応する合わせ面21及びカバー側締結部22が形成されている。ケース・カバー17の合わせ面21がケース本体16の合わせ面19に突き合わされて締結部20,22がボルトにより締結され、ケース本体16に対するケース・カバー17の固定が行われている。
【0019】
前記第1のケース部分13は、第1,第2の収容部23,24を形成するものであり、ケース本体16の外側には、上下の取付ブラケット部29,28が形成されている。この取付ブラケット部29,28には、ケース側取付締結部30が形成されている。
【0020】
取付ブラケット部29のケース側取付締結部30は、伝達中間軸9の軸心を跨ぐようにして上部に配置されている。
【0021】
このため、トルク伝達カップリング93及び大径のヘリカル・スパー・ギヤ25、リング・ギヤ27を取り付けた重量のある伝動中間軸9の部分で分配ケース5を支持させることができ、確実な支持により、音振動の抑制等を図ることができる。
【0022】
しかも、取付ブラケット部28のケース側取付締結部30は、一方が伝達中間軸9の軸心の下部側に配置され、取付ブラケット部28のケース側取付締結部30の双方が連結中空軸7の軸心を跨ぐようにして下部に配置されている。
【0023】
このため、重量のある伝動中間軸9側及び連結中空軸7を取付ブラケット部28により確実に支持し、音振動の抑制等を図ることができる。
【0024】
取付ブラケット部29,28がトランス・ミッション側のベル・ハウジングの取付部に突き合わされ、ケース側取付締結部30がベル・ハウジングの取付締結部にボルトなどにより締結されることでトランスファ装置1の分配ケース5がベル・ハウジングに取り付けられる。
【0025】
第1の収容部23は、連結中空軸7及び第1の平行噛合ギヤであるヘリカル・スパー・ギヤ25を収容する。第2の収容部24は、伝達中間軸9、第2の平行噛合ギヤであるヘリカル・スパー・ギヤ26、及び第1,第2の直交噛合ギヤであるリング・ギヤ27,ピニオン・ギヤ32を収容する。
【0026】
第1の収容部23には、ヘリカル・スパー・ギヤ25の軸方向一側において軸受支持部31及びシール支持部33がケース本体16に設けられ、ヘリカル・スパー・ギヤ25の他側において軸受支持部35及びシール支持部37がケース・カバー17に設けられている。
【0027】
軸受支持部31,35に、前記ヘリカル・スパー・ギヤ25を一体に設けた連結中空軸7が、ボール・ベアリング39,41により回転自在に支持されている。第1の収容部23のシール支持部33,37には、シールとしてオイル・シール43,45が取り付けられ、このオイル・シール43,45は、連結中空軸7外周に密接し、相対摺動可能となっている。オイル・シール45の軸方向外側においてシール支持部37にオイル・シール47が支持され、車軸中間軸3外周に相対摺動可能に密接している。
【0028】
連結中空軸7の一端側外周に形成された結合用のスプライン部49は、第1の収容部23の一端の開口51において、フロント・デファレンシャル装置のデフ・ケース側52にスプライン係合している。
【0029】
連結中空軸7の他端53内周側には、螺旋溝55が設けられている。
【0030】
前記第2の収容部24は、伝達中間軸9の一端側においてケース本体16に閉じ壁部57有し、伝達中間軸9の他端側においてケース・カバー17に閉じ壁部59有している。
【0031】
閉じ壁部57には、軸受支持部61が設けられ、閉じ壁部59には、軸受支持部63が設けられている。軸受支持部61,63に、伝達中間軸9の両端がテーパー・ローラー・ベアリング65,67を介して回転自在に支持されている。
【0032】
伝達中間軸9、トルク伝達カップリング93、及びリング・ギヤ27の詳細については、後述する。
【0033】
前記第2のケース部分15は、後輪側出力軸11を支持するものであり、軸支部69及び延長部71から成っている。
【0034】
第2のケース部分15は、第1のケース部分13の第2の収容部24の開口73に軸支部69の一端が嵌合して組み付けられ、図示しないボルトにより締結固定されている。
【0035】
軸支部69の一端部外周には、オー・リング75が取り付けられ、開口73内周に密接している。軸支部69の他端部には、延長部71が締結結合されている。軸支部69の他端部に、オー・リング77が支持され、延長部71の端面に密接している。延長部71には、オイル通路79が形成され、且つブリーザー・パイプ80が取り付けられている。
【0036】
この第2のケース部分15の軸支部69には、軸受支持部81,83が設けられ、延長部71には、シール支持部85が設けられている。
【0037】
軸受支持部81,83には、テーパー・ローラー・ベアリング86,87を介して後輪側出力軸11が回転自在に支持されている。テーパー・ローラー・ベアリング87は、後輪側出力軸11に螺合するナット89により締結され、テーパー・ローラー・ベアリング86,87にプリ・ロードが付与されている。
【0038】
シール支持部85には、オイル・シール91が取り付けられ、このオイル・シール91が後輪側出力軸11のスプライン92にスプライン結合されるフランジ部材に密接し、相対摺動可能となっている。シール支持部85の外周側には、ダスト・カバー93が取り付けられ、オイル・シール91の外周側を覆っている。
【0039】
後輪側出力軸11の一端部には、第2の直交噛合ギヤであるピニオン・ギヤ32が一体に設けられ、前記リング・ギヤ27に噛み合っている。
【0040】
従って、分配ケース5(ケース)に回転自在に支持され相互に平行に配置されてヘリカル・スパー・ギヤ25,26(第1,第2の平行噛合ギヤ)により連動可能な連結中空軸7及び伝動中間軸9(第1,第2の軸)と、前記分配ケース5(ケース)に回転自在に支持され前記伝動中間軸9(第2の軸)に交差して配置されリング・ギヤ27及びピニオン・ギヤ32(第1,第2の直交噛合ギヤ)により伝動中間軸9(第2の軸)に対して連動しプロペラ・シャフトへ出力可能とした後輪側出力軸11(第3の軸)とを備えた構成となっている。
[トルク伝達カップリング]
前記伝動中間軸9のヘリカル・スパー・ギヤ26を、前記連結中空軸7のヘリカル・スパー・ギヤ25に対して大径とし、前記ヘリカル・スパー・ギヤ26の内径側と伝動中間軸9との間に、ヘリカル・スパー・ギヤ26から伝動中間軸9への駆動力伝達を制御するトルク伝達カップリング93を設けている。
【0041】
伝動中間軸9は、中間部に段付き状に形成されたクラッチ・ハブ部95が形成されている。クラッチ・ハブ部95は、スプラインで形成されている。クラッチ・ハブ部95の両側に、ケース嵌合軸部97,99が形成されている。ケース嵌合軸部97に隣接して、ギヤ結合スプライン101が形成されている。ケース嵌合軸部99及びギヤ結合スプライン101に隣接して支持軸部103,105が形成され、伝動中間軸9は、両端の支持軸部103,105が前記テーパー・ローラー・ベアリング65,67を介して第2の収容部24に回転自在に支持されている。
【0042】
リング・ギヤ27は、インナー・スプライン107が前記伝動中間軸9のギヤ結合スプライン101にスプライン結合されている。このリング・ギヤ27の背面には、回転支持部109が周回状に設けられている。本実施例において回転支持部109は、リング・ギヤ27のハイポイド・ギヤをギヤ加工する時の周回形状のつかみ部である。
【0043】
トルク伝達カップリング93は、カップリング・ケース111を備えている。カップリング・ケース111は、伝動中間軸9に対して相対回転可能となっている。カップリング・ケース111は、カップリング・ケース本体113及びカップリング・ケース・カバー115からなっている。カップリング・ケース本体113及びカップリング・ケース・カバー115間は、溶接などにより一体的に密に結合されている。
【0044】
カップリング・ケース本体113の外周部には、前記ヘリカル・スパー・ギヤ26が一体に形成され、前記連結中空軸7のヘリカル・スパー・ギヤ25に噛み合っている。カップリング・ケース本体113の内周部には、クラッチ・インナー・スプライン116が設けられている。カップリング・ケース本体113の側部には、回転受け部117が周回形状の凹部によって設けられている。回転受け部117は、リング・ギヤ27の回転支持部109にブッシュ119を介して相対回転自在に支持されている。
【0045】
カップリング・ケース本体113及びカップリング・ケース・カバー115の内周部には、シール部材として高温高圧に耐えるXリング121,123が支持されている。
【0046】
カップリング・ケース本体113及びカップリング・ケース・カバー115の内周部は、前記伝動中間軸9のケース嵌合軸部97,99に嵌合し、Xリング121,123が、ケース嵌合軸部97,99に密接している。カップリング・ケース・カバー115の内周側側部には、周回形状の回転受け部125が形成され、前記伝動中間軸9のケース嵌合軸部99にブッシュ127を介して回転自在に支持されている。
【0047】
こうして前記伝動中間軸9及びカップリング・ケース111間に、クラッチ・ハブ部95及びクラッチ・インナー・スプライン116を備えた密閉室129が形成される。クラッチ・ハブ部95には、クラッチ・インナー・プレートがスプライン係合する。クラッチ・インナー・スプライン116には、クラッチ・アウター・プレートがスプライン係合する。密閉室129にシリコン・オイルなどの粘性流体が封入される。こうして、前記トルク伝達カップリング93が構成されている。
[駆動力伝達]
エンジンからトランス・ミッションを介してフロント・デファレンシャル装置に伝達された駆動力は、一方で左右サイド・ギヤから前輪車軸側へ出力され、他方でデフ・ケースから連結中空軸7へ伝達される。
【0048】
連結中空軸7からは、ヘリカル・スパー・ギヤ25,26の噛み合いを介してトルク伝達カップリング93のカップリング・ケース111に入力される。
【0049】
前輪がスリップするなどしてカップリング・ケース111と伝動中間軸9との間に差回転を生ずると差回転速度に応じてトルク伝達カップリング93のクラッチ・アウター・プレート及びクラッチ・インナー・プレート間に粘性流体の粘性抵抗が働き、カップリング・ケース111から伝動中間軸9へオン・デマンドで駆動力伝達が行われる。
【0050】
伝動中間軸9からは、リング・ギヤ27及びピニオン・ギヤ32の噛み合いにより後輪側出力軸11へ駆動力伝達が行われ、後輪側出力軸11からプロペラ・シャフトへ出力される。
【0051】
従って、リヤ・デファレンシャル装置から左右後輪側へ駆動力が伝達され、オン・デマンドの4輪駆動状態で走行することができる。
[潤滑等]
潤滑オイルは、分配ケース5内において伝達中間軸9の回転中心下方でヘリカル・スパー・ギヤ26の歯部が浸る高さ付近まで収容されている。
【0052】
前記動力伝達時に、リング・ギヤ27が回転すると潤滑オイルがリング・ギヤ27によって掻き上げられ、飛散した潤滑オイルにより各部を的確に潤滑することができる。
【0053】
また、潤滑オイルは、カップリング・ケース111から吸熱し、トルク伝達カップリング93の発熱を抑制し、適正なオン・デマンドの駆動力制御を行わせることができる。
[実施例の効果]
本発明実施例のトランスファ装置1では、分配ケース5に回転自在に支持され相互に平行に配置されてヘリカル・スパー・ギヤ25,26により連動可能な連結中空軸7及び伝達中間軸9と、前記分配ケース5に回転自在に支持され前記伝達中間軸9に交差して配置されリング・ギヤ27及びピニオン・ギヤ32により伝達中間軸9に対して連動しプロペラ・シャフトへ出力可能とした後輪側出力軸11とを備え、前記伝達中間軸9のヘリカル・スパー・ギヤ26を、前記連結中空軸7のヘリカル・スパー・ギヤ25に対して大径とし、前記ヘリカル・スパー・ギヤ26の内径側と伝達中間軸9との間に、ヘリカル・スパー・ギヤ26から伝達中間軸9への駆動力伝達を制御するトルク伝達カップリング93を設けた。
【0054】
このため、トルク伝達カップリング93を設けてオン・デマンドの4輪駆動走行を行わせることができながら、後輪側出力軸11以外に車幅方向に軸が並設されることがなく、プロペラ・シャフトを車幅方向の中央に配置する設計が容易となる。
【0055】
前記駆動力伝達に際し、ヘリカル・スパー・ギヤ26を、ヘリカル・スパー・ギヤ25に対して大径として両者間で減速を行うが、この減速に応じてリング・ギヤ27をピニオン・ギヤ32に対して大径とし、増速を行わせる。しかも、前記ヘリカル・スパー・ギヤ25,26間の減速比よりもリング・ギヤ27及びピニオン・ギヤ32間の増速比を大きくしている。従って、連結中空軸7への駆動力入力に対し後輪側出力軸11からの駆動力出力を適正に増速させることができる。
【0056】
リング・ギヤ27の大径化は、ヘリカル・スパー・ギヤ26の大径化に応じて行わせるため、スペース的にも問題はない。
【0057】
また、トルク伝達カップリング93をヘリカル・スパー・ギヤ25に対して相対的に大径にしたヘリカル・スパー・ギヤ26の内径側と伝達中間軸9との間に設けたので、装置を無理なくコンパクト化することができる。
【0058】
前記トルク伝達カップリング1は、前記伝達中間軸9に対して相対回転可能なカップリング・ケース111を備え、前記カップリング・ケース111の外周部に、前記ヘリカル・スパー・ギヤ26を設け、前記カップリング・ケース111の側部に、回転受け部117を設け、前記伝達中間軸9のリング・ギヤ27に、回転支持部109を設け、前記カップリング・ケース111の回転受け部117を、前記リング・ギヤ27の回転支持部109に相対回転自在に支持させた。
【0059】
このため、伝達中間軸9に対するカップリング・ケース111の支持を安定させることができ、駆動力伝達制御を的確に行わせることができる。
【0060】
前記リング・ギヤ27の回転支持部109は、リング・ギヤ27のハイポイド・ギヤのギヤ加工時のつかみ部である。
【0061】
このため、回転支持部109のための特別な部分の加工が不要となり、製造を容易に行わせることができる。
【0062】
前記分配ケース5を、前記伝動中間軸9の上部でベル・ハウジング側に支持させた。
【0063】
このため、トルク伝達カップリング93及び大径のヘリカル・スパー・ギヤ25、リング・ギヤ27を取り付けた重量のある伝動中間軸9の部分で分配ケース5を支持させることができ、確実な支持により、音振動の抑制等を図ることができる。
[その他]
トルク伝達カップリング93は、粘性流体を封入したビスカス・カップリング等のオン・デマンドタイプの他に、電磁クラッチ、油圧クラッチ等、オン・オフタイプのものを適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】トランスファ装置のギヤを主体とした縦方向の断面図である。(実施例1)
【図2】トランスファ装置の軸を主体として横方向の断面図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0065】
1 トランスファ装置(動力伝達装置)
5 分配ケース(ケース)
7 連結中空軸(第1の軸)
9 伝動中間軸(第2の軸)
11 後輪側出力軸(第3の軸)
25 ヘリカル・スパー・ギヤ(第1の平行噛合ギヤ)
26 ヘリカル・スパー・ギヤ(第2の平行噛合ギヤ)
27 リング・ギヤ(第1の直交噛合ギヤ)
32 ピニオン・ギヤ(第2の直交噛合ギヤ)
93 トルク伝達カップリング
109 回転支持部
113 カップリング・ケース
117 回転受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに回転自在に支持され相互に平行に配置されて第1,第2の平行噛合ギヤにより連動可能な第1,第2の軸と、
前記ケースに回転自在に支持され前記第2の軸に交差して配置され第1,第2の直交噛合ギヤにより第2の軸に対して連動しプロペラ・シャフトへ出力可能とした第3の軸とを備え、
前記第2の軸の第2の平行噛合ギヤを、前記第1の軸の第1の平行噛合ギヤに対して大径とし、
前記第2の平行噛合ギヤの内径側と第2の軸との間に、第2の平行噛合ギヤから第2の軸への駆動力伝達を制御するトルク伝達カップリングを設けた、
ことを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1記載の動力伝達装置であって、
前記トルク伝達カップリングは、前記第2の軸に対して相対回転可能なカップリング・ケースを備え、
前記カップリング・ケースの外周部に、前記第2の平行噛合ギヤを設け、
前記カップリング・ケースの側部に、回転受け部を設け、
前記第2の軸の第1の直交噛合ギヤに、回転支持部を設け、
前記カップリング・ケースの回転受け部を、前記第1の直交噛合ギヤの回転支持部に相対回転自在に支持させた、
ことを特徴とする動力伝達装置。
【請求項3】
請求項2記載の動力伝達装置であって、
前記前記第1の直交噛合ギヤの回転支持部は、ギヤ加工時のつかみ部である、
ことを特徴とする動力伝達装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の動力伝達装置であって、
前記ケースを、前記第2軸の上部で静止側に支持させた、
ことを特徴とする動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−275817(P2009−275817A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127644(P2008−127644)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000225050)GKN ドライブライン トルクテクノロジー株式会社 (409)
【Fターム(参考)】