説明

動力伝達装置

【課題】横方向に配置されたチェーンのたるみによる振動や騒音の発生を防止し、チェーン寿命の低下を抑制する。
【解決手段】支持部材(オフセットフレーム)5の一端側に上下方向を向いて支持された駆動軸43と、支持部材5の他端側に上下方向を向いて支持された従動軸41と、駆動軸43に設けられた駆動スプロケット45と、従動軸41に設けられた従動スプロケット47と、両スプロケット45、47間の、上下方向に直交する面内に掛け回されたチェーン49を備え、チェーン49のうち、緩み側チェーン49bの幅方向内側に配設され、その内側面に接触する内側案内部51と、緩み側チェーン49bの幅方向外側に配設され、その外側面に接触する外側案内部61を有し、内側案内部51の上面を駆動スプロケット45の上面と従動スプロケット47の上面の少なくともいずれかよりも上方に位置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関し、特に、駆動軸と従動軸のそれぞれに設けられたスプロケット間にチェーンを横方向に掛け回してなる動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動軸からの駆動力を従動軸に伝達する手段として、チェーンを用いた動力伝達装置がある。この動力伝達装置は、駆動軸及び従動軸間にチェーンを掛け回して構成されるが、チェーンは自重によりたるむ虞があるので、チェーンを上下方向に延ばした状態で使用するのが好ましい。但し、駆動軸及び従動軸の位置関係より、チェーンが横方向に延びた状態で使用される動力伝達装置もある。
【0003】
このようなチェーンが横方向に延びる動力伝達装置は、例えば、農業用機械にも利用されている(特許文献1参照)。この農業用機械は、圃場に縦溝を掘削する溝掘機であり、トラクタの後部に装着される固定機枠と、固定機枠に着脱自在に装着されて横方向に延びる可動機枠と、可動機枠の先端部に固着されて下方へ延びる筒状の支持部と、支持部の下部に設けられた溝掘部と、固定機枠に設けられてトラクタからの駆動力を受ける入力ケースと、入力ケースに伝達されたトラクタからの駆動力を、固定機枠及び支持部を介して溝掘部に伝達するチェーン伝動機構を有してなる。
【0004】
支持部内には溝掘部に繋がって上下方向に延びる従動軸が内蔵される。従動軸の上端部は支持部から突出し、この突出した従動軸にチェーン伝動機構を構成する従動スプロケットが装着されている。入力ケースにはトラクタからの駆動力を受けて回転駆動する駆動軸が上下方向に延びる。チェーン伝動機構は、前述した従動軸、従動スプロケット、駆動軸、駆動軸に装着された駆動スプロケット及びこれらのスプロケット間に掛け回されたチェーンを有してなる。
【0005】
この農業用機械によれば、トラクタからの駆動力は、入力ケースに伝達されて駆動軸を回転駆動させる。駆動軸が回転駆動すると、駆動力は駆動スプロケット、チェーン及び従動スプロケットを介して従動軸に伝達されて従動軸が回転動する。その結果、溝掘部に動力が伝達されて、溝掘部が回転駆動して溝掘作業が行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平5−87201号公報(第2−3頁、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、チェーンは駆動スプロケット及び従動スプロケット間を横方向に延びた状態で掛け回されているので、駆動軸に駆動力が伝達されてチェーンが回転動すると、従動軸に動力を伝達する側の張り側チェーンには大きな張力が作用して緊張した状態になる。
一方、張り側チェーンと対向配置された緩み側チェーンは小さな張力が作用して非緊張状態になる。その結果、摩耗等によりチェーンが伸びると、緩み側チェーンのたるみが大きくなり、チェーンの回転動にともなって緩み側チェーンが横方向に膨らんで振動が発生したり、たるんだチェーンが動力伝達装置を覆うカバー部材に接触して騒音が発生したり、チェーンの寿命が短くなったりするという問題が生じる。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、チェーンが横方向に配置された動力伝達装置において、チェーンのたるみによる振動や騒音の発生を防止し、且つチェーン寿命低下を抑制することができる動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明に係わる動力伝達装置は、支持部材(例えば、実施形態におけるオフセットフレーム5)の一端側に配設され、上下方向に延びて回転動自在に支持された駆動軸と、支持部材の他端側に配設され、上下方向に延びて回転動自在に支持された従動軸と、駆動軸に設けられた駆動スプロケットと、従動軸に設けられた従動スプロケットと、駆動スプロケット及び従動スプロケット間の、前記上下方向に直交する面内に掛け回されたチェーンを有し、駆動軸を回転動させると、該駆動軸の駆動力を、チェーンを介して従動軸に伝達する動力伝達装置において、
前記チェーンのうち前記駆動軸の駆動力を前記従動軸に伝達する側の張り側チェーンと対向配置された緩み側チェーンの幅方向の内側に配設され、前記緩み側チェーンの内側面に接触する内側案内部と、
前記緩み側チェーンの幅方向の外側に配設され、該緩み側チェーンの外側面に接触し、前記内側案内部と共に前記緩み側チェーンの移動軌跡が張り側チェーン側に湾曲するように該緩み側チェーンの移動を案内する外側案内部を有し、
前記内側案内部の前記緩み側チェーン側の上面は前記駆動スプロケットの上面と前記従動スプロケットの上面の少なくともいずれかよりも上方に位置し、前記緩み側チェーンを構成する上側のプレートの下面に接触し、このプレートを上方へ押し上げていることを特徴とする。
前記内側案内部の下面と、前記緩み側チェーンを構成する下側のプレートの上面との間に空隙が存在していることもある(請求項2)。
【0010】
上記構成(請求項1、もしくは請求項2)の動力伝達装置によれば、緩み側チェーンの幅方向の外側及び内側に、緩み側チェーンの移動軌跡が張り側チェーン側に湾曲するように該緩み側チェーンの移動を案内する内側案内部及び外側案内部を有することで、緩み側チェーンは、内側案内部及び外側案内部間を通って、張り側チェーン側に湾曲して従動軸側に移動する。
このため、緩み側チェーンが駆動軸側から従動軸側へ移動する際の移動距離を長くすることができ、チェーンが伸びた場合でも、緩み側チェーンのたるみを抑制することができる。その結果、チェーンのたるみにより振動が発生したり、たるんだチェーンが動力伝達装置を覆うカバー等に接触して騒音が発生したりする事態を未然に防止することができるとともに、チェーン寿命の低下を抑制することができる。
【0011】
また上記構成(請求項1、もしくは請求項2)の動力伝達装置によれば、内側案内部の上面が、駆動スプロケットの上面と従動スプロケットの上面の少なくともいずれかよりも上方に位置することで、チェーンのたるみを小さくすることができ、その結果としてチェーンが駆動スプロケットの上面と従動スプロケットの上面に当接接触したときに発生する騒音を抑制することができる。
【0012】
上記構成(請求項1、もしくは請求項2)の動力伝達装置において、内側案内部及び外側案内部の少なくともいずれかは、緩み側チェーンの下方に配置され、平面視において緩み側チェーンと交差する方向に延びて緩み側チェーンの下方へのたるみを規制する下側たるみ規制部を有してもよい(請求項3)。
この場合、下側たるみ規制部の上面と前記緩み側チェーンの下端との間に空隙が確保されていることもある(請求項4)。
【0013】
上記構成(請求項3、もしくは請求項4)の動力伝達装置によれば、内側案内部及び外側案内部の少なくともいずれかに、緩み側チェーンの下方に配置されて平面視において緩み側チェーンと交差する方向に延びる下側たるみ規制部を有することで、緩み側チェーンの下方へのたるみを抑制することができる。このため、駆動スプロケット及び従動スプロケットにかみ合うチェーンが、これらのスプロケットから外れる事態を防止することができる。
【0014】
上記構成(請求項1乃至請求項4)の動力伝達装置において、外側案内部は、緩み側チェーンに接近動及び離反動自在に設けられるとともに、緩み側チェーン側に付勢されて緩み側チェーンを張り側チェーン側に付勢するチェーン付勢手段を有してもよい(請求項5)。
【0015】
上記構成(請求項5)の動力伝達装置によれば、外側案内部はチェーン付勢手段により付勢されて緩み側チェーンを張り側チェーン側に付勢することで、緩み側チェーンのたるみの大きさに拘らず、このたるみを確実に無くすことができる。
【0016】
上記構成(請求項5)の動力伝達装置において、外側案内部は、チェーン付勢手段の先端部に横方向に回動自在に支持されてもよい(請求項6)。
【0017】
上記構成(請求項6)の動力伝達装置によれば、外側案内部をチェーン付勢手段の先端部に横方向に回動自在に支持することで、緩み側チェーンのたるみの大きさに応じて、外側案内部がチェーン付勢手段の先端部に対して横方向に回動する。このため、緩み側チェーンのたるんだ大きさに応じて、外側案内部が回動して緩み側チェーンを緊張した状態にすることができる。このため、チェーンのたるみを確実に防止することができる。
【0018】
上記構成(請求項5)の動力伝達装置において、外側案内部は、チェーン付勢手段の先端部に横方向に回動自在に支持されると共に、該外側案内部自体がチェーン付勢手段に対して回動可能にしてもよい(請求項7)。
【0019】
上記構成(請求項7)の動力伝達装置によれば、外側案内部を、チェーン付勢手段の先端部に横方向に回動自在に支持すると共に、外側案内部自体もチェーン付勢手段に対して回動可能にすることで、緩み側チェーンのたるみの大きさに応じて、外側案内部がチェーン付勢手段の先端部に対して横方向に回動するとともに、外側案内部自身も回動する。
【0020】
このため、外側案内部は姿勢を変えずに、緩み側チェーンを張り側チェーン側に付勢することができる。その結果、外側案内部の側面全体で緩み側チェーンを付勢することができ、緩み側チェーンを広い面積で付勢することができる。従って、緩み側チェーンの一部に過大な負荷が作用してチェーン寿命を低下させる事態を未然に防止することができる。
また広い面積で緩み側チェーンは付勢されるので、付勢により張り側チェーン側に湾曲する緩み側チェーンの変形量を小さくすることができる。このため、緩み側チェーンが張り側チェーンと接触する事態を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係わる動力伝達装置によれば、緩み側チェーンの幅方向の外側及び内側に、緩み側チェーンの移動軌跡が張り側チェーン側に湾曲するように該緩み側チェーンの移動を案内する内側案内部及び外側案内部を設けることで、緩み側チェーンは、内側案内部及び外側案内部間を通って、張り側チェーン側に湾曲して従動軸側に移動する。このため、緩み側チェーンが駆動軸側から従動軸側へ移動する際の移動距離を長くすることができ、チェーンが伸びた場合でも、緩み側チェーンのたるみを抑制することができる。
その結果、チェーンのたるみにより振動が発生したり、たるんだチェーンが動力伝達装置を覆うカバー等に接触して騒音が発生したりする事態を未然に防止するとともに、チェーン寿命の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる動力伝達装置を搭載した畦塗り機の斜視図を示す。
【図2】この畦塗り機の平面図を示す。
【図3】オフセットフレームを示し、同図(a)は、オフセットフレームの平面図であり、同図(b)は図2のII−II矢視に相当するオフセットフレームの断面図である。
【図4】動力伝達装置の内部平面図を示す。
【図5】図4(a)のIV矢視に相当する部分の正面図である。
【図6】図3(b)のIII矢視に相当する部分の拡大図を示す。
【図7】動力伝達装置の内部平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図1から図7に基づいて説明する。本実施の形態は、農業用機械の畦塗り機を例にして、以下説明する。なお、説明の都合上、図1(斜視図)に示す矢印の方向を前後方向及び左右方向として以下説明する。先ず、本発明に係わる動力伝達装置を説明する前に、この動力伝達装置が搭載された畦塗り機を概説する。畦塗り機1は、図1に示すように、走行機体(図示せず)の後部に設けられた三点リンク連結機構(図示せず)に連結されて、走行機体の前進動に応じて畦塗り作業を行なうものである。
畦塗り機1は、左右方向に延びるヒッチフレーム2の前側に取り付けられて三点リンク連結機構に連結可能な畦塗り機側連結フレーム3と、ヒッチフレーム2の中央部に前端側が回動自在に取り付けられて後端側が左右方向に旋回動可能なオフセットフレーム5と、オフセットフレーム5の後端部に左右方向に回動可能に連結された作業部10を有してなる。
【0024】
ヒッチフレーム2の左右方向の中央下部には、図3(b)(断面図)に示すように、ギアボックス4が設けられている。ギアボックス4の入力軸4aには、走行機体のPTO軸(図示せず)から図1に示す畦塗り機側連結フレーム3の伝動軸(図示せず)を介して、動力が伝達される。オフセットフレーム5は内部が中空な箱状部材であり、オフセットフレーム5内には後述する動力伝達装置40が設けられている。
オフセットフレーム5は、図1に示すように、オフセットフレーム5及びヒッチフレーム2間に枢結された旋回シリンダ6の伸縮動作により左右方向に旋回動可能である。
【0025】
オフセットフレーム5の後端部内には、上下方向に延びる図3(b)に示す従動軸41が設けられ、この従動軸41の下部に下方へ延びる図3(b)に示す回動中心軸7が連結されている。オフセットフレーム5の後端部には、下方へ延びる回転軸ケース8が回動自在に取り付けられている。回転軸ケース8は、オフセットフレーム5の側部及び回転軸ケース8の側部間に枢結された回動シリンダ9の伸縮動作により回動可能である。
【0026】
回転軸ケース8の下部には、図2(平面図)に示すように、前述した作業部10が取り付けられている。作業部10は、圃場の周辺に沿って形成された旧畦の上部を切り崩す天場処理部11と、切り崩した土の土盛りを行なう前処理部21と、盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦部31を有してなる。
【0027】
天場処理部11は、回転動自在な天場処理ロータ(図示せず)を有する。天場処理ロータは天場動力伝達ケース22を介して図1に示す回転軸ケース8に連結されて支持される。天場動力伝達ケース22内には図示しない動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構を介して図3(b)に示す回転中心軸7からの駆動力が天場処理ロータに伝達されるようになっている。
【0028】
前処理部21は、回転動自在な耕耘ロータ(図示せず)を有する。耕耘ロータは図示しない前処理動力伝達ケースを介して図1に示す回転軸ケース8に連結されて支持される。前処理動力伝達ケース内には図示しない動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構を介して図3(b)に示す回転中心軸7からの駆動力が耕耘ロータに伝達されるようになっている。
【0029】
整畦部31は、左右方向に延びて回転動自在に支持された回転軸(図示せず)に取り付けられた多面体ドラム32と、多面体ドラム32の右側端部に取り付けられて横方向に延びる円筒部33を有する。整畦部31は整畦動力伝達ケース35を介して回転軸ケース8に連結されて支持される。整畦動力伝達ケース35内には図示しない動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構を介して図3(b)に示す回転中心軸7からの駆動力が整畦部31に伝達されるようになっている。
【0030】
次に、本発明に係わる動力伝達装置について説明する。動力伝達装置40は、図3(b)に示すように、オフセットフレーム5の前端部内に配設されて上下方向に延びて回転動自在な駆動軸43と、駆動軸43の上下方向中間部に固着された駆動スプロケット45と、前述した従動軸41と、従動軸41の上下方向中間部に固着された従動スプロケット47と、駆動スプロケット45及び従動スプロケット47間に掛け回されたチェーン49と、チェーン49のうち駆動軸43の駆動力を従動軸41に伝達する図4(a)に示す張り側チェーン49aと対向配置された図4(a)に示す緩み側チェーン49bのたるみを防止するため、緩み側チェーン49bの移動を案内する内側案内部51及び外側案内部61を有してなる。
【0031】
駆動軸43はギアボックス4内に配設されたかさ歯車37、38を介して入力軸4aからの駆動力が伝達される。このため、走行機体からの駆動力は、入力軸4a、駆動軸43、駆動スプロケット45、チェーン49及び従動スプロケット47を介して従動軸41に伝達される。なお、駆動スプロケット45及び従動スプロケット47は、オフセットフレーム5が水平方向に延びているときに、それぞれが略同一の高さになるように配設されている。
【0032】
内側案内部51及び外側案内部61は、図4(a)(平面図)に示すように、オフセットフレーム5内の略中央部に配設されている。内側案内部51は、駆動スプロケット45と従動スプロケット47間に延びる緩み側チェーン49bの内側に設置されたブロック状部材であり、緩み側チェーン49b側には緩み側チェーン49bの内側面に摺接して前後方向に延びて緩み側チェーン49b側に凸状に湾曲する摺接面51aが形成されている。摺接面51aの位置は、緩み側チェーン49bが駆動スプロケット45及び従動スプロケット47間を直線状に延びたとしたときの緩み側チェーン49bの内側面の近傍位置である。
【0033】
内側案内部51には、緩み側チェーン49bが下方にたるむのを規制するため、緩み側チェーン49bの下方に配置されて平面視において緩み側チェーン49bと略直角に交差する方向に延びる下側たるみ規制部52が設けられている。なお、下側たるみ規制部52の延びる方向は、平面視において緩み側チェーン49bと交差する方向であればよく、直角に交差する方向に限るものではない。
下側たるみ規制部52は、図5に示すように、棒状部材であり、その先端部は緩み側チェーン49bの外側で上方へ屈曲して上方へ延びる。このため、緩み側チェーン49bは、図4(a)に示すように、駆動軸43が矢印A方向に回転駆動すると、緩み側チェーン49bの内側が摺接面51aに摺接して案内されて従動軸41側に移動する。
また緩み側チェーン49bは下側たるみ規制部52により下方へのたるみが規制される。このため、緩み側チェーン49bと駆動スプロケット45及び従動スプロケット47との上下位置関係は略一定の位置関係に維持される。このため、チェーン49がこれらのスプロケット45、47から外れる事態を未然に防止することができる。
【0034】
外側案内部61は、内側案内部51よりも従動軸41側に配設されている。外側案内部61は、緩み側チェーン49bの外側に配置されたブロック状部材であり、緩み側チェーン49b側には緩み側チェーン49bの外側面に摺接して前後方向に延びて緩み側チェーン49b側に凸状に湾曲する摺接面61aが形成されている。外側案内部61には、これを緩み側チェーン49b側に付勢するチェーン付勢手段63が設けられている。
【0035】
チェーン付勢手段63は、オフセットフレーム5の側面5aに取り付けられた張力調整部材65と、一端側が張力調整部材65に掛止されて側面5aに沿って延びる引っ張りばね67と、引っ張りばね67の他端側を掛止して前後方向に回動自在に設けられたリンク部69を有してなる。
リンク部69は、引っ張りばね67の他端側を掛止するとともに、前後方向に回動自在に支持された第1リンク部材70と、第1リンク部材70の基部側に連結されて従動軸41側に延びて外側案内部61を着脱自在に固着する第2リンク部材71を有する。張力調整部材65は、オフセットフレーム5の側面5aに突設されたブラケット68の先端部に螺合して装着される。
このため、張力調整部材65のブラケット68に対する突出量Lを調整することで、外側案内部61が緩み側チェーン49bを付勢する力の大きさを調整することができる。即ち、張力調整部材65の突出量Lを小さくするほど、引っ張りばね67の伸長量が大きくなって、外側案内部61を介した緩み側チェーン49bの付勢力を大きくすることができる。
【0036】
このため、チェーン49が摩耗等により伸びて、緩み側チェーン49bがたるんだ場合でも、外側案内部61が緩み側チェーン49bを張り側チェーン49a側に常に付勢するように張力調整部材65の突出量Lを調整すると、図4(b)(平面図)に示すように、外側案内部61は、第1リンク部材70の回動支点70aを回動中心として横方向(図4(b)の下方向)に回動して、緩み側チェーン49bは外側案内部61により付勢されて張り側チェーン49a側に湾曲した状態になる。
このため、たるんだ緩み側チェーン49bを緊張した状態にすることができる。その結果、チェーン49のたるみが原因で振動が発生したり、たるんだチェーン49がオフセットフレーム5に接触して騒音が発生したりする事態を未然に防止することができるとともに、チェーン寿命の低下を抑制することができる。
【0037】
なお、張力調整部材65及び引っ張りばね67は、図3(a)に示すように、オフセットフレーム5の側部に設置されたカバー部材75により覆われている。ここで、チェーン付勢手段63の一部を構成する引っ張りばね67及び張力調整部材65は、オフセットフレーム5の側方位置にオフセットフレーム5に沿って配置されている。
このため、これらを覆うカバー部材75のオフセットフレーム5からの突出量を小さくすることができ、その結果として、オフセットフレーム5の大型化を抑制することができる。
【0038】
内側案内部51の上面51bは、図6(部分拡大図)に示すように、駆動スプロケット45がチェーン49に接触する上面45aよりも僅かに上方にずれた位置に配置されている。このため、チェーン49のたるみを小さくすることができ、その結果として騒音の発生を抑制することができる。
なお、内側案内部51の上面51bを図3(b)に示す従動スプロケット47の上面47aよりも僅かに上方に配置したり、図3(b)に示す外側案内部61の上面を従動スプロケット47の上面45aと駆動スプロケット45の上面47aの少なくともいずれかよりも僅かに上方に配置したりしてもよい。
【0039】
また、図7(a)(平面図)に示すように、外側案内部61はリンク部69の第2リンク部材71の先端部に外側案内部61自身が横方向に回動自在に支持されてもよい。このように外側案内部61も横方向に回動自在に設けると、緩み側チェーン49bにたるみが発生した場合、図7(b)(平面図)に示すように、外側案内部61は、第1リンク部材70の回動支点70aを回動中心として横方向(図7(b)の下方向)に回動するとともに、外側案内部61自身も第2リンク部材71の先端部の回動支点71aを回動中心として横方向に回動しながら、緩み側チェーン49bを張り側チェーン49a側に付勢する。このため、外側案内部61は姿勢を変えることなく、緩み側チェーン49bを付勢することができる。
従って、外側案内部61の摺接面61aは前後方向に延びた状態に維持されるので、緩み側チェーン49bを広い面積で付勢することができ、緩み側チェーン49bの一部に過大な負荷が作用してチェーン寿命を低下させる事態を未然に防止することができる。また広い面積で緩み側チェーン49bは付勢されるので、付勢により張り側チェーン49a側に湾曲する緩み側チェーン49bの変形量を小さくすることができる。このため、緩み側チェーン49bが張り側チェーン49aと接触する事態を未然に防止することができる。
【0040】
なお、前述した実施の形態では、外側案内部61は緩み側チェーン49bに対して接近動及び離反動自在に設けられた例を示したが、外側案内部61をオフセットフレーム5に固着した状態で設置してもよい。この場合、外側案内部61の摺接面61aを内側案内部51の摺接面51aよりも張り側チェーン49a側に配置する。
このようにすると、緩み側チェーン49bは、内側案内部51と外側案内部61間を通ることで、緩み側チェーン49bを湾曲させた状態にすることができ、その結果として緩み側チェーン49bにたるみが発生した場合でも、緩み側チェーン49bを湾曲させることで、このたるみの一部又は全部を吸収することができる。
【符号の説明】
【0041】
5 オフセットフレーム(支持部材)
40 動力伝達装置
41 従動軸
43 駆動軸
45 駆動スプロケット
45a 上面
47 従動スプロケット
47a 上面
49 チェーン
49a 張り側チェーン
49b 緩み側チェーン
51 内側案内部
51a 上面
52 下側たるみ規制部
61 外側案内部
63 チェーン付勢手段
65 張力調整部材
67 引っ張りばね
69 リンク部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材の一端側に配設され、上下方向に延びて回転動自在に支持された駆動軸と、
前記支持部材の他端側に配設され、上下方向に延びて回転動自在に支持された従動軸と、
前記駆動軸に設けられた駆動スプロケットと、
前記従動軸に設けられた従動スプロケットと、
前記駆動スプロケット及び従動スプロケット間の、前記上下方向に直交する面内に掛け回されたチェーンを有し、
前記駆動軸を回転動させると、該駆動軸の駆動力を、前記チェーンを介して前記従動軸に伝達する動力伝達装置において、
前記チェーンのうち前記駆動軸の駆動力を前記従動軸に伝達する側の張り側チェーンと対向配置された緩み側チェーンの幅方向の内側に配設され、前記緩み側チェーンの内側面に接触する内側案内部と、
前記緩み側チェーンの幅方向の外側に配設され、該緩み側チェーンの外側面に接触し、前記内側案内部と共に前記緩み側チェーンの移動軌跡が張り側チェーン側に湾曲するように該緩み側チェーンの移動を案内する外側案内部を有し、
前記内側案内部の前記緩み側チェーン側の上面は前記駆動スプロケットの上面と前記従動スプロケットの上面の少なくともいずれかよりも上方に位置し、前記緩み側チェーンを構成する上側のプレートの下面に接触し、このプレートを上方へ押し上げていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記内側案内部の下面と、前記緩み側チェーンを構成する下側のプレートの上面との間に空隙が存在していることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記内側案内部及び前記外側案内部の少なくともいずれかは、前記緩み側チェーンの下方に配置され、平面視において該緩み側チェーンと交差する方向に延びて前記緩み側チェーンの下方へのたるみを規制する下側たるみ規制部を有することを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記下側たるみ規制部の上面と前記緩み側チェーンの下端との間に空隙が確保されていることを特徴とする請求項3に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記外側案内部は、前記緩み側チェーンに接近動及び離反動自在に設けられるとともに、前記緩み側チェーン側に付勢されて前記緩み側チェーンを前記張り側チェーン側に付勢するチェーン付勢手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記外側案内部は、前記チェーン付勢手段の先端部に横方向に回動自在に支持されることを特徴とする請求項5に記載の動力伝達装置。
【請求項7】
前記外側案内部は、前記チェーン付勢手段の先端部に横方向に回動自在に支持されると共に、該外側案内部自体が前記チェーン付勢手段に対して回動可能であることを特徴とする請求項5に記載の動力伝達装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−19424(P2010−19424A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239480(P2009−239480)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【分割の表示】特願2003−184435(P2003−184435)の分割
【原出願日】平成15年6月27日(2003.6.27)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】