説明

動態医用画像生成システム

【課題】動態画像において、診断・治療が必要な領域の情報を医師に提供することで、不要な領域の診断を割愛させ、診断時間の短縮を図る。
【解決手段】診断支援情報生成システムによれば、診断用コンソール8の制御部81は、動態撮影により取得された複数のフレーム画像について、FPDにおける同一位置の検出素子が出力する信号値を示す画素を複数のフレーム画像間で互いに対応付け、互いに対応付けられた画素の信号値の変動幅が予め定められた基準範囲を超える領域を異常領域として抽出し、当該抽出された異常領域が識別可能に表示された少なくとも一のフレーム画像を表示部84に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動態医用画像生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像診断は静止画をベースとしていた。例えば、胸部の診断を行う場合、最大吸気位の静止画像(必要に応じて聴診器)に基づいて行なわれるのが常であった。これは一般的な施設における撮影設備が、X線管球、スクリーン/フィルム装置やCR(Computed
Radiography)装置で構成されていたことによる。胸部のダイナミックな機能を診断するには、透視装置やCT(Computed Tomography)等の高価な設備を使用するしかなく、X線管球を有するのみの一般的な設備の施設においては診断は困難であった。
【0003】
近年、動画対応のFPD(flat panel detector)の登場に伴い、人体の診断すべき部位に連続的なX線撮影を行い、その部位の動態を撮影して、当該部位の機能の解析を行う手法が提案され始めている(例えば、特許文献1、2参照)。また、動態撮影により得られた一連のフレーム画像に基づき、当該動態に係る機能、例えば、換気や血流機能に係る特徴量を生成して、診断支援情報とすることも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−312434号公報
【特許文献2】特開2009−148336号公報
【特許文献3】国際公開第2009/090894号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
動態撮影を行って診断に使用する場合、静止画に基づく診断に比べて情報量が増大するので診断精度を高めることが可能になる反面、診断に要する時間も増大しがちになる。一連のフレーム画像を視認するだけでも時間を要するし、関心領域毎に最低限1周期の画像を連続して追尾する必要があり、どこが関心領域か(どこが病変の有無の判断を必要とする領域か)を見極めるだけでも大幅に時間がかかる。特に、静止画ベースから動態撮影ベースへの移行期には時間延長が顕著になり、診断効率上、好ましいものではない。
また、特徴量の解析を14×17インチ(場合によっては17×17インチ)の画像の全領域に亘って行うには、相当の演算時間が必要となり、早期診断の観点から好ましくない。
【0006】
本発明の課題は、動態画像において、診断・治療が必要な領域の情報を医師に提供することで、不要な領域の診断を割愛させ、診断時間の短縮を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の動態医用画像生成システムは、
放射線源と、2次元状に配置された複数の検出素子を有する放射線検出器とを用いて、被写体の動態撮影を行い、複数のフレーム画像を取得する撮影手段と、
前記撮影手段により取得された複数のフレーム画像を表示する表示手段と、
を備える動態医用画像生成システムであって、
前記撮影手段により取得された複数のフレーム画像について、前記放射線検出器における同一位置の検出素子が出力する信号値を示す画素を前記複数のフレーム画像間で互いに
対応付け、前記互いに対応付けられた画素の信号値の変動幅が予め定められた基準範囲を超える領域を異常領域として抽出し、当該抽出された異常領域を前記表示手段に表示させる制御手段を備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記制御手段は、前記抽出された異常領域を、少なくとも1つのフレーム画像と重畳して表示する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記制御手段は、前記複数のフレーム画像のうち、撮影順が隣接するフレーム画像間で前記互いに対応する画素の信号値の差分値を算出し、前記算出された差分値が前記予め定められた基準範囲を超える領域を異常領域として抽出する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明において、
撮影部位を入力するための入力手段を備え、
前記制御手段は、前記入力手段により入力された撮影部位に応じて、前記基準範囲の下限を超える領域を異常領域として抽出するか、前記基準範囲の上限を超える領域を異常領域として抽出するか、又はその両方の領域を異常領域として抽出するかを選択する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、
前記制御手段は、前記入力手段により入力された撮影部位が肺である場合、前記基準範囲の下限を超える領域を異常領域として抽出する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、
前記制御手段は、前記入力手段により入力された撮影部位が肺である場合、前記複数のフレーム画像に対し、換気に伴う信号値変動成分を除去するローパスフィルタ処理、又は血流に伴う信号値変動成分を除去するハイパスフィルタ処理を施した後に、前記抽出を行う。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、
前記制御手段は、前記入力手段により入力された撮影部位が関節系である場合、前記基準範囲の下限を超える領域及び前記基準範囲の上限を超える領域を異常領域として抽出する。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れか一項に記載の発明において、
前記制御手段は、前記各フレーム画像を同一サイズの複数の画素ブロックに分割し、当該画素ブロック毎に画素の信号値の代表値を算出して当該代表値に画素ブロック内の信号値を置き換えるビニング処理を実行した後、前記放射線検出器における同一位置の検出素子の出力を示す画素ブロックを前記複数のフレーム画像間で互いに対応付け、当該互いに対応付けられた画素ブロックの信号値の変動幅が予め定められた基準範囲を超える領域を異常領域として抽出する。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8の何れか一項に記載の発明において、
前記制御手段は、前記抽出された異常領域に対し、前記被写体の動態に係る特徴量を算出し、算出結果を前記表示手段に表示出力させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、動態画像において、診断・治療が必要な領域の情報を医師に提供することで、不要な領域の診断を割愛させ、診断時間を短縮させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る診断支援情報生成システムの全体構成を示す図である。
【図2】ブッキー装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】撮影用コンソールの機能的構成を示すブロック図である。
【図4】撮影管理テーブルのデータ格納例を示す図である。
【図5】診断用コンソールの機能的構成を示すブロック図である。
【図6】FPDの機能的構成を示すブロック図である。
【図7】撮影用コンソールにより実行される撮影制御処理を示すフローチャートである。
【図8】診断用コンソールにより実行される動態表示制御処理を示すフローチャートである。
【図9】肩の動きを説明するための図である。
【図10】(a)は、画像全体に関心領域を設定した例を示す図であり、(b)は、直接X線領域と被写体の境界領域を関心領域に設定した例を示す図である。
【図11】図8のステップS102において診断用コンソールの表示部に表示される、異常領域が重畳されたフレーム画像の一例を示す図である。
【図12】図8のステップS106において診断用コンソールの表示部に表示される画面の一例を示す図である。
【図13】読影レポートに貼り付けられた、異常領域を示す図の一例を示す図である。
【図14】チェックボックスの代わりにコメント入力欄を表示した画面例を示す図である。
【図15】異常領域の拡大動画像及びチェックボックスと併せて異常領域の特徴量の数値を表示した画面例を示す図である。
【図16】対象画像と過去画像を並べて表示した画面例を示す図である。
【図17】対象画像と健常者画像を並べて表示した画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る動態医用画像生成システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の図示例のものに限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る診断支援情報生成システム100の全体構成例を示す図である。診断支援情報生成システム100は、本発明に係る動態医用画像生成システムの構成を含むものである。
図1に示す撮影室R1〜R3は、患者の身体の一部である被写体(すなわち患者の撮影部位)に放射線を照射して被写体の動態撮影又は静止画撮影を行うための室である。
動態撮影とは、被写体に対し、X線等の放射線をパルス的に連続照射して複数の画像を取得(即ち、連続撮影)することをいう。動態撮影では、例えば、呼吸運動に伴う肺の膨張及び収縮の形態変化、心臓の拍動、関節の動き等の、周期性(サイクル)を持つ被写体の動態を撮影する。この連続撮影により得られた一連の画像を動態画像と呼ぶ。また、動態画像を構成する複数の画像のそれぞれをフレーム画像と呼ぶ。
静止画撮影とは、従来のフィルム方式やCR方式と同様に撮影部位の濃度分解能に基づく診断に使用されるもので、被写体に対し、X線等の放射線を1回照射して一枚の静止画像を取得することをいう。
【0020】
撮影室R1は、単射及び連射が可能な放射線源3aが設けられた、被写体の動態撮影又は静止画撮影をするための室である。
撮影室R1には、例えば、立位撮影用のブッキー装置1と、臥位撮影用のブッキー装置2と、放射線源3aと、クレードル4と、撮影用コンソール5と、操作卓6と、アクセス
ポイントAPと、が備えられている。
【0021】
撮影室R2は、単射のみが可能な放射線源3b及びポータブル撮影用の放射線源3cが設けられた、被写体の静止画撮影をするための室である。
撮影室R2には、例えば、立位撮影用のブッキー装置1と、臥位撮影用のブッキー装置2と、放射線源3b、3cと、クレードル4と、撮影用コンソール5と、操作卓6と、アクセスポイントAPと、が設けられている。
【0022】
撮影室R3は、放射線源3bが設けられた、被写体の静止画撮影をするための室である。
撮影室R3には、例えば、立位撮影用のブッキー装置1と、臥位撮影用のブッキー装置2と、放射線源3bと、クレードル4と、撮影用コンソール5と、操作卓6と、アクセスポイントAPと、が設けられている。
【0023】
なお、各撮影室R1〜R3には前室Raと撮影実施室Rbが設けられ、前室Raに撮影用コンソール5及び操作卓6が備えられることで、撮影技師等の操作者の被曝を防止するようになっている。
【0024】
ブッキー装置1は、立位での撮影時にFPD9a又は9bを保持して撮影を行うための装置である。
図2に、ブッキー装置1の機能構成例を示す。図2に示すように、ブッキー装置1は、制御部11と、検出器装着部12と、通信I/F13と、駆動部14とを備えて構成されている。
【0025】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、R
AM(Random Access Memory)により構成される。制御部11のROMには、ブッキー装置1の各部を制御するための各種処理プログラムや処理に必要なデータ、当該ブッキー装置1の識別情報であるブッキーID等が記憶されている。CPUは、ROMに記憶されているプログラムとの協働によりブッキー装置1各部の動作を統括的に制御する。
例えば、制御部11は、検出器装着部12にFPD9a又は9bが装着されると、装着されたFPDにコネクター12bを介してFPDID(FPDの識別情報)の送信要求を行い、FPDIDが受信されると、自己の識別番号であるブッキーIDをFPDIDに対応付けて通信I/F13を介して撮影用コンソール5に送信する。また、受信されたFPDIDを一時的にRAMに記憶する。
また、例えば、制御部11は、検出器装着部12からFPDが抜き取られると、通信I/F13を介して撮影用コンソール5にFPDIDを送信し、当該FPDIDの(撮影管理テーブル521からの)消去要求を行う。
【0026】
検出器装着部12は、FPD(FPD9a又はFPD9b)を保持するための保持部12aと、保持部12aに装着されたFPDのコネクター94を接続するためのコネクター12bとを有する。コネクター12bは、保持部12aに装着されたFPDとの間でデータ送受信を行ったり、FPDに電力を供給したりする。
【0027】
通信I/F13は、アクセスポイントAPを介して撮影用コンソール5等の外部機器と通信ケーブルを介してデータ送受信を行うためのインターフェースである。
【0028】
駆動部14は、図示しないフットスイッチ等の操作に応じて検出器装着部12を垂直方向又は水平方向に移動させる。
【0029】
ブッキー装置2は、臥位での撮影時にFPD9a又は9bを保持して撮影を行うための
装置である。
ブッキー装置2は、制御部21と、検出器装着部22と、通信I/F23と、駆動部24とを備えて構成されている。制御部21、検出器装着部22、通信I/F23、駆動部24は、それぞれ上述の制御部11、検出器装着部12、通信I/F13、駆動部14と同様の構成であるので説明を援用する。更に、ブッキー装置2は、被写体を載置するための被写体台26を備える。
【0030】
放射線源3aは、単射及び連射(パルス照射)が可能な放射線発生装置である。放射線源3aは、例えば、撮影室R1、R3の天井から吊り下げられており、撮影時には撮影用コンソール5からの指示に基づいて起動され、図示しない駆動機構によりにより所定の位置、向きに調整されるようになっている。そして、放射線の照射方向を変えることで、立位用のブッキー装置1又は臥位用のブッキー装置2に装着されたFPD9a又は9bに対して放射線を照射することができるようになっている。また、放射線源3aは、撮影用コンソール5からの指示に従って放射線を1回又は連続して照射し、静止画撮影又は動態撮影を行う。
【0031】
放射線源3bは、単射のみが可能な放射線発生装置である。放射線源3bは、例えば、撮影室R2の天井から吊り下げられており、撮影時には撮影用コンソール5からの指示に基づいて起動され、図示しない駆動機構によりにより所定の位置、向きに調整されるようになっている。そして、放射線の照射方向を変えることで、立位用のブッキー装置1又は臥位用のブッキー装置2に装着されたFPD9a又は9bに対して放射線を照射することができるようになっている。また、放射線源3bは、撮影用コンソール5からの指示に従って放射線を1回照射し、静止画撮影を行う。
【0032】
放射線源3cは、移動可能なポータブル撮影用の放射線源である。放射線源3cは、単射のみが可能である。
【0033】
クレードル4は、装着されたFPDと接続するための図示しないコネクターを有し、FPDが装着されると、コネクターを介して装着されたFPDからFPDIDを取得して、撮影用コンソール5に通知する。
撮影用コンソール5は、当該FPDIDを取得すると、以後、当該FPDを自己の制御下におき、起動やスリープ遷移等を制御する。
なお、本実施の形態においては、FPDを撮影室内に持ち込んだ際及び持ち出す際にクレードル4に装着することで、FPDの撮影室への侵入及び持ち出しをクレードル4を介して撮影用コンソール5で検知できるようになっている。
なお、FPDの撮影室への侵入及び持ち出しは、上記のクレードル方式以外も採用可能で、例えば、WO2008/111355号公報に開示されているRFID方式等を用いることができる。
【0034】
撮影用コンソール5は、放射線源3a、3bやFPD9a、9bを制御することにより撮影を制御するための装置である。撮影用コンソール5は、LAN(Local Area Network)を介してHIS/RIS(Hospital Information System/ Radiology Information System)7、診断用コンソール8、サーバー装置10等に接続されており、HIS/RIS7から送信された撮影オーダー情報に基づいて、撮影用コンソール5が対応つけられている(設置されている)撮影室でそのオーダーの撮影が可能であるか否かを判断し、判断結果を表示する。そして、撮影が可能である場合、撮影用コンソール5は撮影に用いられる放射線源及びFPDを起動させる等の制御をして撮影を行わせる。
【0035】
図3に、撮影用コンソール5の要部構成例を示す。図3に示すように、撮影用コンソール5は、制御部51、記憶部52、入力部53、表示部54、通信I/F55、ネットワ
ーク通信部56等を備えて構成されており、各部はバス57により接続されている。
【0036】
制御部51は、CPU、RAM等により構成される。制御部51のCPUは、記憶部52に記憶されているシステムプログラムや処理プログラム等の各種プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行する。
例えば、制御部51は、通信I/F55を介してFPDID及びブッキーIDが受信されると、記憶部52の撮影管理テーブル521(図4参照)の受信されたブッキーIDに対応する領域にFPDIDを書き込む。また、制御部51は、通信I/F55を介してクレードル4からFPDIDが受信されると、記憶部52の撮影管理テーブル521のブッキーIDが対応付けられていない領域にFPDIDを書き込む。また、制御部51は、ブッキー装置1又は2を介して画像データが受信されると、画像受信時刻を撮影管理テーブル521の送信元のブッキー装置のブッキーIDに対応する領域に記憶させる。
【0037】
また、例えば、制御部51は、所定時間毎にネットワーク通信部56を介してHIS/RIS7に問い合わせを行い、新たにHIS/RIS7で登録された撮影オーダー情報を取得する。
また、例えば、制御部51は、後述する撮影制御処理を実行し、HIS/RIS7から取得した撮影オーダー情報に基づいて、この撮影用コンソール5が設置されている撮影室でそのオーダーの撮影が可能であるか否かを判断し、判断結果を表示する。そして、撮影が可能である場合、撮影用コンソール5は撮影に用いられる放射線源及び撮影に用いられるFPDを制御して撮影を行わせる。
【0038】
記憶部52は、例えばHDD(Hard Disk Drive)や半導体の不揮発性メモリー等で構成されている。
【0039】
記憶部52には、各種のプログラム及びデータが記憶されている。
例えば、記憶部52には、各撮影室における撮影を管理するための撮影管理テーブル521が記憶されている。
図4に、撮影管理テーブル521のデータ格納例を示す。図4に示すように、撮影管理テーブル521には、「ブッキーID」、「管球タイプ」、「FPDID」、「画像受信時刻」等の項目が設けられている。「ブッキーID」、「管球タイプ」の領域には、当該撮影用コンソール5が設置されている撮影室に設けられているブッキー装置及び放射線源のタイプの情報が予め設定されている。ブッキーIDに対応付けられている「FPDID」の領域は、そのブッキーIDに装着されているFPDを管理するための領域であり、ブッキー装置からFPDID及びブッキーIDが受信された際に、受信されたFPDIDがブッキーIDに対応付けて格納される。また、ブッキーIDが対応付けられていない「FPDID」の領域は、撮影室に存在するFPDを管理するための領域であり、クレードル4からFPDIDが受信された際に、受信されたFPDIDが格納される。なお、ブッキー装置からFPDが抜き取られてFPDIDの消去要求が受信された場合には、制御部51により消去要求されたFPDIDのうち当該ブッキーIDに対応して格納されているFPDIDは消去される。また、ブッキーIDが対応付けられていない「FPDID」の領域に格納されているFPDIDがクレードル4から受信されると、制御部51によりそのFPDIDのFPDは撮影室から持ち出された(即ち、撮影室に存在しなくなった)と判断され、そのFPDIDは撮影管理テーブル521から消去される。また、「画像受信時刻」には、通信I/F55から画像データが受信された際に、その時刻が格納される。
【0040】
また、記憶部52には、画像データから患部を検出するための自動部位認識に基づく階調処理・周波数処理等の画像処理を行うためのプログラム等、各種のプログラムが記憶されているほか、撮影画像の画像データを部位毎の診断に適した画質に調整するための画像処理パラメーター(階調処理に用いる階調曲線を定義したルックアップテーブル、周波数
処理の強調度等)等が記憶されている。
【0041】
また、記憶部52には、撮影の種類(動態又は静止画)と撮影部位との組み合わせに対応付けて撮影条件(放射線照射条件及び画像読取条件)が記憶されている。放射線照射条件は、例えば、連続照射時のパルスレート、パルス幅、パルス間隔、1撮影あたりの撮影フレーム数、X線管電流の値、X線管電圧の値、フィルタ種、SID(Source to Image−receptor Distance)等である。パルスレートは、1秒あたりの放射線照射回数であり、後述するフレームレートと一致している。パルス幅は、放射線照射1回当たりの放射線照射時間である。パルス間隔は、連続撮影において、1回の放射線照射開始から次の放射線照射開始までの時間であり、後述するフレーム間隔と一致している。画像読取条件は、例えば、フレームレート、フレーム間隔、画素サイズ、画像サイズ(マトリックスサイズ)等である。フレームレートは、1秒あたりに取得するフレーム画像数であり、パルスレートと一致している。フレーム間隔は、連続撮影において、1回のフレーム画像の取得動作開始から次のフレーム画像の取得動作開始までの時間であり、パルス間隔と一致している。
【0042】
また、記憶部52には、診断支援情報生成システム100に登録されている各FPD9a、9bのFPDIDと、そのFPDで撮影可能な撮影の種類(動態、静止画)とが対応付けて記憶されている。また、記憶部52には、診断支援情報生成システム100に登録されている各ブッキー装置1、2のブッキーIDと、そのブッキー装置で撮影可能な体位(立位又は臥位)とが対応付けて記憶されている。
【0043】
また、記憶部52は、所定時間毎にHIS/RIS7から送信される撮影オーダー情報を記憶する。
【0044】
入力部53は、文字入力キー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードで押下操作されたキーの押下信号とマウスによる操作信号とを、入力信号として制御部51に出力する。
【0045】
表示部54は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等のモニターを備えて構成されており、制御部51から入力される表示信号の指示に従って、各種画面を表示する。
なお、表示部54の画面上に、透明電極を格子状に配置した感圧式(抵抗膜圧式)のタッチパネル(図示せず)を形成し、表示部54と入力部53とが一体に構成されるタッチスクリーンとしてもよい。この場合、タッチパネルは、手指やタッチペン等で押下された力点のXY座標を電圧値で検出し、検出された位置信号が操作信号として制御部51に出力されるように構成される。なお、表示部54は、一般的なPC(Personal Computer)
に用いられるモニターよりも高精細のものであってもよい。
【0046】
通信I/F55は、ブッキー装置1、ブッキー装置2、放射線源3a〜3c、FPD9a又は9bとアクセスポイントAPを介して接続し、無線、または有線によりデータ送受信を行うためのインターフェースである。本実施の形態において、通信I/F55はアクセスポイントAPを介して必要に応じてFPD9a、9bに対してポーリング信号を送信する。
【0047】
ネットワーク通信部56は、ネットワークインターフェース等により構成され、スイッチングハブを介して通信ネットワークNに接続された外部機器との間でデータの送受信を行う。
【0048】
操作卓6は、撮影室内の放射線源に接続され、放射線照射指示を入力するための入力装
置である。
【0049】
HIS/RIS7は、問診結果等に基づくオペレータによる登録操作に応じて撮影オーダー情報を生成する。撮影オーダー情報は、例えば被写体となる患者の氏名、性別、年齢、身長、体重等の患者情報や、撮影部位、撮影方向、体位(立位、臥位)、撮影方法等の撮影予約に関する情報等を含んでいる。なお、撮影オーダー情報はここに例示したものに限定されず、これ以外の情報を含んでいてもよいし、上記に例示した情報のうちの一部でもよい。
【0050】
診断用コンソール8は、撮影用コンソール5から静止画像、又は動態画像の一連のフレーム画像を取得し、取得した画像や取得した画像を解析して得られる特徴量を表示して医師が読影診断するためのコンピュータ装置である。
診断用コンソール8は、図5に示すように、CPU、RAM等により構成される制御部81と、後述する動態表示制御処理を実行するためのプログラムや各種特徴量を算出するためのプログラムを記憶する記憶部82と、キーボードやマウス等により構成される入力部83と、CRTやLCDにより構成される表示部84と、通信ネットワークNを介して撮影用コンソール5等の外部機器とデータ送受信を行うためのネットワーク通信部85と、を備えて構成される。
【0051】
FPD9aは、パルス照射撮影可能な動態撮影及び静止画撮影対応の放射線検出器である。
図6に、FPD9aの機能構成例を示す。図6に示すように、FPD9aは、制御部91、検出部92、記憶部93、コネクター94、バッテリー95、無線通信部96等を備えて構成され、各部はバス97により接続されている。
【0052】
制御部91は、CPU、RAM等により構成される。制御部91のCPUは、記憶部93に記憶されているシステムプログラムや処理プログラム等の各種プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行する。
例えば、制御部91は、コネクター94を介して接続されたブッキー装置1又は2からの要求に応じてFPD9aの識別情報であるFPDIDを記憶部93から読み出して要求元のブッキー装置に送信する。
また、例えば、制御部91は、撮影用コンソール5から入力された画像読取条件に基づいて検出部92のスイッチング部を制御して、各放射線検出素子(以下、検出素子)に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、検出部92に蓄積された電気信号を読み取ることにより、画像データ(静止画像又はフレーム画像)を生成する。そして、制御部91は、生成した画像データを、順次コネクター94及びブッキー装置1又は2を介して撮影用コンソール5に出力する。尚、撮影により取得された各フレーム画像は、一旦FPD9aの記憶部93に記憶され、全撮影終了後に、纏めてFPD9aから撮影用コンソール5に出力することとしても良い。
なお、FPD9aは、ブッキーに装填されない単体使用時には、バッテリー駆動及び無線通信する構成であるが、動態撮影の場合には、登録第4,561,730号公報に開示されているように、ブッキーを介した外部電力供給及び有線通信する構成に変更することが好ましい。これは、静止画撮影に比べ、データ転送容量や転送時間が圧倒的に増えるので、一のフレーム画像の転送中に他のフレーム画像の撮影(読取り)に対しノイズを与えないため、且つ、転送時間自体を短くするためであり、さらに、一連の撮影途中のバッテリー切れを防止するためである。
【0053】
検出部92は、例えば、ガラス基板等を有しており、基板上の所定位置に、放射線源3a〜3cの何れかから照射されて少なくとも被写体を透過した放射線をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の検出素子が二次元状に配列
されている。検出素子は、フォトダイオード等の半導体イメージセンサーにより構成される。各検出素子は、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部に接続され、スイッチング部により電気信号の蓄積及び読み出しが制御される。
なお、生成された静止画像又はフレーム画像を構成する各画素は、検出部92の各検出素子のそれぞれから出力された信号値(ここでは、濃度値と呼称する)を示す。
【0054】
記憶部93は、例えば半導体の不揮発性メモリー等で構成されている。記憶部93には、検出部92を制御するための各種プログラムや自己の識別情報であるFPDID等が記憶されている。また、記憶部93には、検出部92から出力された画像データが一時的に記憶される。
【0055】
コネクター94は、ブッキー装置1、2側のコネクターと接続し、ブッキー装置1又は2とのデータ送受信を行う。また、コネクター94は、ブッキー装置1又は2のコネクターから供給される電力を各機能部へ供給する。なお、バッテリー95を充電する構成としても良い。
【0056】
バッテリー95は、制御部91の制御に基づいて、FPD9aの各部に電力を供給する。バッテリー95としては、例えばニッカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の充電自在な電池等を適用することができる。
【0057】
FPD9bは、FPD9aと同様に、制御部91、検出部92、記憶部93、コネクター94、バッテリー95を備えて構成されるが、フレームレートの設定はできない。即ち、FPD9bは、静止画撮影のみが可能である。
また、単体での使用は勿論のこと、ブッキー装置に装填しても使用可能で、ブッキー装置に装填時には、コネクター接続により、バッテリー/無線方式から、有線/電力供給方式に切り替えることができる。従い、複数の患者を連続的に静止画撮影する場合に於いても、バッテリー切れを気にする必要がなくなる。
【0058】
サーバー装置10は、診断用コンソール8から送信された画像データや読影レポートを撮影オーダー情報及び撮影条件に対応付けて記憶するデータベースを備える。
【0059】
(撮影動作)
次に、診断支援情報生成システム100における撮影動作について説明する。
図7に、撮影用コンソール5において実行される撮影制御処理の流れを示す。図7の撮影制御処理は、撮影用コンソール5の制御部51と記憶部52に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0060】
まず、撮影技師等の操作者は、何れかの撮影室の撮影用コンソール5の入力部53を操作して撮影オーダー情報の一覧を表示する撮影オーダーリスト画面を表示部54に表示させる。そして、入力部53を操作することにより撮影オーダーリスト画面から撮影対象の撮影オーダー情報を指定する。
【0061】
撮影用コンソール5においては、入力部53により撮影対象の撮影オーダー情報が指定されると(ステップS1)、記憶部52の撮影管理テーブル521が参照され、当該撮影用コンソール5が設置されている撮影室で選択された撮影オーダー情報に基づく撮影が可能であるか否かが判断される(ステップS2)。例えば、撮影オーダー情報により動態撮影が指示されていた場合、撮影管理テーブル521が参照され、その撮影室に、連射が可能な管球タイプの放射線源及び動態撮影対応のFPDが存在し、かつ、そのFPDが使用中ではない場合(画像受信時刻から予め定められた時間経過している場合)に、動態撮影が可能であると判断される。
【0062】
当該撮影用コンソール5が設置されている撮影室において、選択された撮影オーダー情報に基づく撮影が可能であると判断されると(ステップS2;YES)、処理はステップS4に移行する。
【0063】
当該撮影室では選択された撮影オーダー情報に基づく撮影が不可能であると判断されると(ステップS2:NO)、表示部54に警告が表示される(ステップS3)。例えば、撮影オーダー情報により動態撮影が指示されているにもかかわらず、連射可能な管球が撮影室に存在していないと判断されると(図1の撮影室R2のような場合)、「この撮影室では撮影できません」等の警告が表示される。また、例えば、撮影オーダー情報により指定された体位を動態撮影するためのブッキー装置に動態撮影対応のFPD9aが装着されていないと判断されると、「立位(臥位)用のブッキー装置にFPD9aを装着してください」等の警告が表示される。そして、撮影制御処理は終了する。なお、撮影オーダー情報により指定された体位を動態撮影するためのブッキー装置に動態撮影対応のFPD9aが装着されていない場合、動態撮影対応のFPDを該当するブッキー装置に装着すれば、撮影管理テーブル521の内容は更新される。従って、撮影可能と判断され、処理はステップS4に移行する。
なお、この場合、一旦、撮影室内でFPDの入替操作を行って、再度撮影用コンソールまで戻り、再度ステップS1の処理から行わせ、確実性を高めるフローとしても良い。
【0064】
ステップS4においては、指定された撮影オーダー情報の撮影が可能な放射線源及びFPDが起動され、使用されるブッキー装置に応じて放射線源の向き及び位置が調整される。撮影技師により被写体に応じてFPDやブッキー装置の位置等が調整されると、それに応じて放射線源の向き及び位置が調整される(ステップS4)。また、記憶部52から撮影する部位や動態撮影か静止画撮影かの別に応じた放射線照射条件及び画像読取条件が読み出され、放射線源に放射線照射条件が設定されるとともに、ブッキー装置を介してFPDに画像読取条件が設定される(ステップS5)。動態撮影の結果を用いて解析を行う場合は、診断に使用し得る解析精度を確保するため、フレームレートが3.75枚/秒以上に設定される。ここで、操作者は、肺野の動態撮影の場合、安静呼吸の動態を撮影するために被験者に楽にするように指示し、安静呼吸を続けるよう促す。撮影準備が整った時点で、技師は前室へ移動し、操作卓6を操作して放射線照射指示を入力する。
【0065】
操作卓6からの放射線照射指示が入力されると(ステップS6;YES)、撮影に使用される放射線源及びFPDが制御され、撮影が行われる(ステップS7)。
動態撮影の場合は、ステップS5で設定されたパルス間隔で放射線源3aにより放射線が照射され、ステップS5で設定されたフレームレートでFPD9aによりフレーム画像が取得される。予め定められたフレーム画像数の撮影が終了すると、制御部51により放射線源3a及びFPD9aに撮影終了の指示が出力され、撮影動作が停止される。撮影されるフレーム画像数は、少なくとも動態1サイクルが撮影できる枚数である。撮影により取得されたフレーム画像はFPD9aからブッキー装置を介して順次撮影用コンソール5に入力される。また、オフセット補正用のダーク画像を読取り、撮影用コンソール5に入力することとしても良い。
静止画撮影の場合は、ステップS5で設定された条件で被写体の1枚の静止画像及びオフセット補正用の1または数枚のダーク画像が撮影される。撮影により取得された静止画像及びダーク画像は、FPDからブッキー装置を介して撮影用コンソール5に入力される。
【0066】
次いで、撮影により得られた画像に対して補正処理が行われ(ステップS8)、処理はステップS9に移行する。ステップS8の補正処理においては、上述のダーク画像を用いたオフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理、ラグ(残像)補正処理等の
補正処理が必要に応じて行われる。
本件発明者等は、動態解析においては、静止画のような個々の画素の絶対的出力値はあまり重要ではなく、個々の画素におけるフレーム間の相対的出力値(変動成分)に基づく特徴量の算出が基本となっているため、上記の補正処理の一部或いは全部を省略しても、補正処理を行った場合と略同等の解析結果を得ることが可能である知見を得た。従い、解析結果を得るまでの時間を短縮するため、一部或いは全部の補正処理を省略することできる。
【0067】
ステップS9においては、撮影により得られたフレーム画像又は静止画像が撮影オーダー情報と対応付けて記憶部52に記憶される(ステップS9)。撮影により得られた各フレーム画像には、撮影順を示す番号が付与され、撮影オーダー情報、撮影条件(放射線照射条件、画像読取条件等)とともに各画像のヘッダ情報等に記憶される。
【0068】
次いで、順次入力された画像が間引き処理され、表示部54に表示される(ステップS10)。ここでいう間引き処理は、各フレーム画像や静止画像の画素数を減らす処理を指す。例えば、所定の画素間隔毎の画素で構成された間引き画像を作成する処理(単純間引き処理と呼ぶ)と、フレーム画像を所定サイズ(同一サイズ)の画素ブロック単位、例えば、2mm×2mm角単位の小領域に分割し、各小領域内の画素の信号値の代表値(ここでは、平均信号値とする)を算出して小領域内の画素の信号値を算出された代表値に置き換えるビニング処理が含まれる。ビニング処理では、各小領域単位を一つの画素とみなして取り扱うことで、処理対象の画素数を低減することができる。ビニング処理では、動態画像の場合、各フレーム画像間の対応する各小領域は検出素子の同じ位置の出力を示す画素群からなるように分割が行われる。例えば、フレーム画像上の同一画素位置(0、0)を基点として2mm×2mm角で分割が行われる。なお、ビニング処理における各画素ブロックのサイズは、診断対象となる撮影部位に応じたサイズとすることが好ましい。また、後段で特徴量の算出を行う場合には、解析により算出される特徴量に応じたサイズとすることが好ましい。
【0069】
次いで、間引きされたフレーム画像が表示部54に表示される(ステップS11)。撮影技師は、表示された動態画像によりポジショニング等を確認し、撮影により診断に適した画像が取得された(撮影OK)か、再撮影が必要(撮影NG)か、を判断する。そして、入力部53を操作して、判断結果を入力する。尚、撮影により取得された各フレーム画像は、一旦FPD9aの記憶部93に記憶され、全撮影の終了後に纏めてFPD9aから撮影用コンソール5へ出力されるようにしても良い。
【0070】
入力部53の所定の操作により撮影NGを示す判断結果が入力されると(ステップS12;NO)、記憶部52に記憶された一連のフレーム画像が削除され(ステップS13)、本処理は終了する。なお、この場合、再撮影が行われることとなる。
入力部53の所定の操作により撮影OKを示す判断結果が入力されると(ステップS12;YES)、撮影された静止画像又はフレーム画像が必要に応じて画像処理され、ネットワーク通信部56を介して診断用コンソール8に送信される(ステップS14)。
【0071】
(表示・解析動作)
次に、診断支援情報生成システム100における表示・解析動作について説明する。
表示・解析動作は、診断用コンソール8により行われる。
診断用コンソール8においては、ネットワーク通信部85を介して撮影用コンソール5から静止画像が受信され、入力部83により当該画像の表示指示が入力されると、表示部84に受信された静止画像が表示され、医師の診断に供される。
一方、ネットワーク通信部85を介して撮影用コンソール5から動態画像の一連のフレーム画像が受信され、入力部83により表示が指示されると、制御部81と記憶部82に
記憶されているプログラムとの協働により図8に示す動態表示制御処理が実行される。
【0072】
以下、図8を参照して動態表示制御処理の流れについて説明する。
まず、一連のフレーム画像に基づいて、FPDの検出部92の検出素子の出力を示す画素の信号値の変動幅が予め定められた範囲を超える異常領域が抽出される(ステップS101)。
個々の画素単位で異常領域を抽出した場合、欠陥画素等により精度良く異常領域を抽出できない場合がある。また、処理に時間を要する。そこで、上述のビニング処理を施すことによって生成された、同一の信号値をもつ複数の画素ブロック(小領域)単位で異常領域の抽出を行うことが好ましい。本実施の形態においては、ビニング処理が行われていない場合、ビニング処理を行ってから異常領域の抽出を行うこととする。
【0073】
ここで、呼吸に伴う換気の場合、正常系では、息を吸い込むことにより肺胞領域が広がり、単位面積当たりのX線透過量が増え、FPDの出力値としては大きくなる(吸気期)。また、息を吐き出すことにより肺胞領域が小さくなり、単位面積当たりのX線透過量が減少し、FPDの出力値は小さくなる(呼気期)。このように、正常系では、一連の撮影に伴って、上記のような吸気期と呼気期の信号変化を繰り返すこととなるが、呼吸に伴う換気機能を喪失している領域は、FPDの各画素の出力値が変化しない、又は変化幅が所定の基準範囲より小さくなる。
同様に、肺血流の場合、正常系では、心臓の拍動に伴い、血液が拍動流として血管内を循環することになるので、単位面積当たりのX線透過量が低下し、FPDの出力値は低下する。このように、正常系では、一連の撮影に伴って、上記のような心臓の拍動に伴う信号変化を繰り返すこととなるが、血管が詰まり血流がない領域は、FPDの各画素の出力値が変化しない、又は変化幅が所定の基準範囲より小さくなる。
従って、胸部画像の場合、信号値の変化幅が所定の基準範囲より小さい領域が、診断・治療を必要としている異常領域であり、この異常領域に係る情報を医師に提供することで、不要な領域の診断を割愛させ、早期診断につなげることができることを本願発明者等は見出した。
【0074】
一方、肩、頚椎等の関節系を動態撮影した場合、正常系では単位時間当たりほぼ一定の角度で滑らかに関節が動く。例えば、肩の場合は、図9に示すG、S、A等の角度が単位時間当たり一定の角度ずつ滑らかに変化するように動く。これにより、関節付近の単位面積あたりのX線透過量(FPDの信号値)はほぼ一定の割合で変化する。異常の場合は、関節は滑らかな動きをせず、動きが非常にゆっくりになるか又は急激に動くので、関節付近の単位面積あたりのX線透過量(FPDの信号値)は変化が非常に小さくなるか又は急激に変化する。従って、関節を撮影した画像の場合、所定時間あたりの信号値の変化量、例えば、隣接するフレーム画像間で互いに対応する画素の信号値の差分値が所定の基準範囲を超えている領域(基準範囲より大きい場合及び小さい場合を含む)が、診断・治療を必要としている異常領域である。
【0075】
ステップS101においては、具体的に、まず、フレーム間差分処理が行われる。フレーム間差分処理においては、一連のフレーム画像の、同じ画素位置の画素により構成された小領域を互いに対応付け(即ち、FPDにおける同一位置の検出素子の出力を示す画素ブロック同士を互いに対応付け)、小領域毎に、隣接するフレーム画像間で信号値の差分値を算出する処理である。
【0076】
次いで、撮影時の被写体の体動の有無の判定が行われる。体動があった場合、被写体の一部ではなく、被写体全体が動くため、被写体の一部だけが動く場合に比べ、フレーム間差分値が大きく変化する領域が一気に増加する。とりわけ、直接X線領域と被写体の境界部分は信号値の勾配が急峻であり、体動によりフレーム間差分値が大きくなる。そこで、
体動判定においては、まず、図10(a)に示すように画像全体に、又は、図10(b)に示すように直接X線領域と被写体領域の境界領域を包含する領域に関心領域が設定される。次いで、関心領域のフレーム間差分値の絶対値の平均値が算出される。そして、算出された平均値が予め定められた閾値を超えている(閾値より大きい)か否かが判断され、超えていると判断した場合に、体動があると判定される。
なお、体動判定の手法は上記に限定されない。例えば、体動があると、その体動のあったタイミングだけ全体のフレーム間差分値が急激に大きくなる。そこで、あるフレーム間において、全画素(全小領域)のうち予め定められた割合(%)のフレーム間差分値の絶対値が予め定められた閾値を超えている場合、体動があると判定するようにしてもよい。
体動があると判定された場合は、ここで図8に示す動態表示制御処理を中断し、表示部84に体動があることを通知するための警告を表示し、再撮影を促すようにすることが好ましい。
【0077】
体動がないと判定された場合、異常領域の抽出が行われる。具体的には、まず、異常領域の抽出対象となる関心領域の抽出が行われ、抽出された関心領域内の上記小領域(画素ブロック)毎に、フレーム間差分値が予め定められた基準範囲(R1とする)を超えるか否かを判断し、超えている場合に、その小領域が異常領域として検出される。ここで、基準範囲R1の値は、撮影部位毎に予め定められおり、記憶部82に記憶されている。また、基準範囲R1を超えているとは、具体的には、(1)基準範囲R1の上限を超えるか(上限より大きいか)、又は(2)基準範囲R1の下限を超えるか(下限より小さいか)、或いは(3)(1)と(2)の両方の場合がある。(1)〜(3)のいずれを適用して基準範囲R1を超えているか否かを判断するかの情報についても、部位毎に記憶部82に予め記憶されている。なお、撮影部位は、図7のステップS1において撮影用コンソール5の入力部53により指定され、各フレーム画像のヘッダ情報として書き込まれている撮影オーダー情報により特定可能である。
【0078】
例えば、撮影部位が肺である場合、まず、基準となるフレーム画像(基準フレーム画像。ここでは、撮影順が一番のフレーム画像)から関心領域である肺野領域の抽出が行われる。肺野領域は、例えば、基準となるフレーム画像の各画素の信号値のヒストグラムから判別分析によって閾値を求め、この閾値より高信号の領域を肺野領域候補として1次抽出する。次いで、1次抽出された肺野領域候補の境界付近でエッジ検出を行い、境界付近の小領域でエッジが最大となる点を境界に沿って抽出すれば肺野領域の境界を抽出することができる。肺野領域が抽出されると、抽出された肺野領域の小領域毎に、フレーム間差分値(フレーム間差分値の絶対値の最小値又は平均値)が予め定められた基準範囲R1より小さいか否かが判断され、小さいと判断された小領域が異常領域として抽出される。
【0079】
ここで、胸部の動態画像において、呼吸換気に伴う信号値の変化幅は、血流に伴う信号値変化幅の約10倍となる。よって、精度良く異常領域を抽出するために、フレーム画像間で対応づけられた各小領域に対して、時間軸方向のフィルタリング処理を施してから異常領域の抽出を行なうことが好ましい。
例えば、呼吸換気の異常領域を抽出する場合には、血流等に伴う高周波数な信号変化を除去するために、異常領域の抽出前に、小領域毎の信号値の時間変化に対して、安静呼吸画像群ではカットオフ周波数0.7Hz、深呼吸画像群ではカットオフ周波数0.5Hzでローパスフィルタ処理を行うことが好ましい。
また、例えば、肺血流(血流)の異常領域を抽出する場合には、血流による信号値変化に対するノイズとなる、呼吸等に伴う低周波数な信号変化を除去するために、異常領域の抽出前に、小領域毎の信号値の時間変化に対して、安静呼吸画像群では低域カットオフ周波数0.7Hz、深呼吸画像群では低域カットオフ周波数0.5Hzでハイパスフィルタ処理を行うことが好ましい。若しくは、さらに高周波数のノイズ成分を除去するために2.5Hzの高域カットオフ周波数で高周波数も遮断するバンドパスフィルタによってフィ
ルタリングを行っても良い。
【0080】
また、例えば、撮影部位が肩である場合、まず、基準となるフレーム画像から関心領域である肩関節を包含する領域(例えば、図9に示す一点鎖線で囲まれた領域)の抽出が行われる。肩関節の領域は、例えば、テンプレートマッチング等により求めることができる。肩関節を包含する領域が抽出されると、抽出された領域内の上記小領域毎に、フレーム間差分値(フレーム間差分値の絶対値の平均値)が予め定められた基準範囲R1を超えている(大きいか又は小さい)か否かが判断され、基準領域R1を超えていると判断された小領域が異常領域として抽出される。他の関節系が撮影部位の場合についても同様である。
【0081】
異常領域が抽出されると、表示部84に基準となるフレーム画像が表示され、その基準フレーム画像上に異常領域を囲んだ枠が重畳して表示される(異常領域が識別可能に表示される)(ステップS102)。図11に、撮影部位が肺である場合における、ステップS102において表示部84に表示される異常領域が重畳されたフレーム画像の一例を示す。
【0082】
次いで、入力部83からの指示に応じて、表示部84に一連のフレーム画像が動態表示される(ステップS103)。即ち、一連のフレーム画像が表示部84に撮影順に順次表示される。
【0083】
このように、医師が動態表示で観察を行う前に、例えば、異常領域を囲んだ枠を重畳して表示する等により、予め異常領域を抽出して提示するので、医師はどの領域に注目して動態画像を観察したらよいかを予め知っておくことができる。よって、不要な領域の診断を割愛させ、早期診断につなげることができる。
【0084】
次いで、各異常領域が解析され、各異常領域の特徴量が算出される(ステップS104)。抽出された異常領域に対してのみ、特徴量を計算することで、特徴量の計算に要する時間を短縮することができる。
ステップS104で算出する特徴量は、撮影部位毎に異なる。ここでは、肺野の特徴量を算出する場合を例にとり説明する。なお、本願発明者等は、動態画像における特徴量の算出にあたってフレーム画像間での肺胞の位置合わせのためのワーピング処理は不要であることを見出し、特願2010−25965において出願を行っている。本処理においても、ワーピング処理を行わずに特徴量を算出する。
【0085】
肺野の特徴量としては、肺野における呼吸に伴う換気機能に係る特徴量と、肺野における血流機能に係る特徴量とがある。何れの特徴量を算出するかは、医師が入力部83により設定可能な構成としてもよいし、撮影オーダー情報に含まれる構成としてもよい。また、自動的に両方の特徴量を算出することとしてもよい。
【0086】
肺野の換気機能による局所的な信号変化を示す特徴量を算出する解析としては、例えば、下記の(1)〜(5)の項目が挙げられる。以下、各特徴量毎に、その算出方法の手順について簡単に説明する。
【0087】
(1)換気量の振幅
換気量の振幅は、まず、精度良く換気による信号変化を抽出するため、時間軸方向のローパスフィルタ処理(上述)を施し、次いで、呼吸1サイクル中の最大信号値(極大値)から最小信号値(極小値)を減算することにより求めることができる。
【0088】
(2)換気−フレーム間差分値
換気−フレーム間差分値は、時間軸方向のローパスフィルタ処理(上述)を施してから、上述のように、隣接するフレーム間で差分値を算出することにより求めることができる。
【0089】
(3)換気−気流速度
気流速度は、肺のやわらかさ(肺コンプライアンス)を示す特徴量である。気流速度は、時間軸方向のローパスフィルタ処理を施してから、上述のように、隣接するフレーム間で差分値を算出し、算出された差分値の代表値(例えば、フレーム間差分値の絶対値の最大値もしくは平均値)を算出することにより求めることができる。
【0090】
(4)吸気遅延時間
吸気遅延時間は、肺野全体の濃度変化又は横隔膜位置の変化を解析することにより安静呼気位のフレーム画像を抽出し、次いで、各異常領域毎に、時間軸方向のローパスフィルタ処理を施し、安静呼気位のフレーム画像から、吸気時において安静呼気位の信号値との差が所定の閾値以上となるまでの時間の算出することにより求めることができる。
【0091】
(5)吸気時間、呼気時間
吸気時間、呼気時間は、時間軸方向のローパスフィルタ処理を施した後、呼吸1サイクル中の最大信号値(極大値)、最小信号値(極小値)を算出し、最大信号値から最小信号値までの時間を呼気時間、最小信号値から最大信号値までの時間を呼気時間として算出することにより求めることができる。
【0092】
肺野内の血流による局所的な信号変化を示す特徴量を算出する解析としては、例えば、下記の(6)〜(9)が挙げられる。
【0093】
(6)血流量の振幅
血流量の振幅は、まず、精度良く血流による信号変化を抽出するため、時間軸方向のハイパスフィルタ処理(上述)を施し、次いで、呼吸1サイクル中の最大信号値(極大値)から最小信号値(極小値)を減算することにより求めることができる。
【0094】
(7)血流−フレーム間差分値
血流−フレーム間差分値は、時間軸方向のハイパスフィルタ処理(上述)を施してから、上述のように、隣接するフレーム間で差分値を算出することにより求めることができる。
【0095】
(8)心室収縮遅延時間
吸気遅延時間は、まず、時間軸方向のハイパスフィルタ処理を施し、心室領域の濃度変化又は心壁位置の変化を解析することにより心室拡張期の終わりに相当するフレーム画像を抽出し、各異常領域毎に、心室拡張期の終わりに相当するフレーム画像から、心室収縮期において心室拡張期の終わりの信号値との差が所定の閾値以上となるまでの時間を算出することにより求めることができる。
【0096】
(9)拍動信号波形と血流信号波形との相互相関係数
拍動信号波形と血流信号波形との相互相関係数は、まず、下記の拍動信号波形を取得し、次いで、拍動信号波形と各異常領域の血流信号波形に時間軸方向のハイパスフィルタ処理(上述)を施す。そして、血流信号波形を1フレーム間隔ずつずらしながら(時間軸方向にシフトさせながら)拍動信号波形との相互相関係数を算出し、最大の相互相関係数を取得することにより求めることができる。
拍動信号波形としては、以下の何れかを用いることができる。
(a)心臓領域(又は大動脈領域)にROI(関心領域)を定め、そのROIにおける
信号値の時間変化を示す波形
(b)(a)の波形を反転させた信号波形
(c)心電検知センサーより得られた心電信号波形
(d)心壁の動き(位置の変化)を示す信号波形
相互相関係数は、以下の[数1]により求めることができる。
【数1】

【0097】
異常領域の特徴量が算出されると、算出された特徴量が予め定められた基準範囲内にあるか否かが判断され、予め定められた基準範囲内にない(基準範囲外となる)異常領域がピックアップされる(ステップS105)。
上記の基準範囲は、特徴量毎に予め定められており、記憶部82に記憶されている。なお、各特徴量の基準範囲は、患者情報(年齢、性別、身長、体重、喫煙歴、結核罹患等)、他の検査結果や診断情報(血圧値等)、撮影条件(照射X線量、SID等)に応じて変化させるようにしてもよい。例えば、各情報の組合せに応じた基準範囲をテーブルとして記憶部82に記憶させておくようにしてもよい。また、各特徴量の基準範囲は、横隔膜から肺尖に向けた距離に応じて変化するようにしてもよい。
【0098】
次いで、表示部84に、ピックアップされた異常領域がマークされた基準フレーム画像が表示されるとともに、各異常領域の拡大動画像と正常、異常を医師が記入するためのチェックボックスが対応付けて表示される(ステップS106)。
図12に、ステップS106において表示される画面841の一例を示す。図12に示すように、画面841には、特徴量が基準範囲外の異常領域A1、B1、C1がマークで表示された基準フレーム画像841aと、各異常領域A1、B1、C1の拡大動画像a1
、b1、c1とそれぞれに対応するチェックボックスが表示されたチェックボックス欄841bと、が表示される。また、各チェックボックス欄841bには、拡大された異常領域において換気と血流の何れの特徴量が基準範囲外であったことを示す表示(例えば、「換気 要確認領域」「血流 要確認領域」)が表示される。
なお、各異常領域において、特徴量が基準範囲外となったタイミングや周期が特定できる場合は、特定されたタイミング、周期のみの動画像を表示することとしてもよい。
また、841aに表示される画像は、画像領域全体に対して、ピックアップされた異常領域がマークされた動画像であっても良い。
【0099】
このように、ステップS106においては、特徴量が基準範囲外となった異常領域毎に、医師の判定結果の入力が促されるので、疾患の見落としを低減することができる。また、特徴量が基準範囲外となった、疾患が疑われる領域(更には異常が疑われる症状の現れるタイミング、周期)に限定して動画像が表示されるので、医師の診断効率を向上させることができる。
【0100】
入力部83により、各チェックボックス欄841bからチェックが入力されると(ステップS107)、チェックボックスで異常と入力された領域がマークされた図を含む(貼り付けされた)読影レポートが生成される(ステップS108)。
図13に、読影レポートに貼り付けられた、異常領域を示す図の一例を示す。図13に示すように、例えば、基準フレーム画像の縮小画像上に異常領域がマークされ、かつ、どのような異常(例えば、換気、血流)であるかを示す吹き出しが表示された図が貼り付けられた読影レポートが生成される。なお、図13においては、基準フレーム画像の縮小画像上にマークや吹き出しを表示した例を示しているが、基準フレーム画像を2値化もしくは強いエッジ成分を線図化する等によりシェーマを作成し、シェーマ上にマークや吹き出しを表示することとしてもよい。
このように、異常と判定された領域がマークされた図を含む読影レポートが自動的に作成されるので、読影レポート作成の手間が低減される。
【0101】
次いで、動態画像のフレーム画像群と読影レポートがネットワーク通信部85によりサーバー装置10に送信され(ステップS109)、動態表示制御処理は終了する。
サーバー装置10においては、動態画像のフレーム画像群と読影レポートが撮影オーダー情報及び撮影条件に対応付けてデータベースに記憶される。
【0102】
ステップS106における表示としては、上記に限定されない。例えば、下記に挙げるような変形例を用いても良い。例えば、図14に示すように、特徴量が基準範囲を超えていると判断された異常領域に対して、チェックボックスの代わりにコメントを記入するためのテキストボックスを表示することとしてもよい。この場合、ステップS107において、医師は拡大表示された動画像を確認しながら入力部83によりコメントを入力するが、特に何もない(異常なし)の場合はコメントを入力しないようにし、ステップS108においては、コメントが入力された領域のみを含む読影レポートを生成することとしてもよい。
【0103】
また、図15に示すように、上述のチェックボックスやコメント入力用のコメントボックスに並列して、基準範囲外となった特徴量の値を表示することとしてもよい。又は、全特徴量の算出結果を表示した上で、基準範囲外となった特徴量の数値のみを異なる色やフォントで識別可能に表示することとしてもよい。このように、特徴量の数値を表示することにより、医師は、画像だけでなく特徴量の数値を参考にしながら、より精度の高い診断を下すことが可能となる。
【0104】
また、図16に示すように、ステップS106において表示を行う際には、今回撮影さ
れた診断対象の動態画像(対象画像)の基準フレーム画像と、同一患者の同一部位を過去に撮影した動態画像(過去画像)の基準フレーム画像を並列して表示し、過去画像の、対象画像に表示される異常領域A1に対応する領域D1にマークを表示するとともに、チェックボックス欄に、対象画像においてマークが表示された異常領域を拡大した動画像a1と、過去画像においてマークが表示された領域を拡大した動画像d1を並列して表示することとしてもよい。過去の動画像d1の開始フレームは、対象画像の動画像a1の開始フレームに最も近い位相のフレームとしてもよいし、若しくは、対象画像の動画像a1の開始フレームと一致する位相のフレームを、過去の動画像のフレーム画像間を補間することで生成してもよい。また、過去の動画像d1は、対象画像の動画像a1と同一時間間隔で表示してもよいし、対象画像の動画像a1と同一位相のフレーム画像が同じタイミングで表示されるようにしてもよい。同一位相で表示する場合は、対象画像の各フレームに最も近い位相のフレーム画像を抽出してもよいし、対象画像と同一位相となるフレーム画像を過去の動画像のフレーム画像間を補間することにより生成してもよい。
このように、対象画像と過去画像を並べて表示することで、医師は、対象画像だけでなく、過去画像を比較参照しながら観察を行うことができ、精度の高い診断を下すことが可能となる。とりわけ、疾患の進行度合いや回復度合いの把握が容易となる。
更に、別の例としては、過去に撮影したX線動態画像ではなく、過去のX線静止画像、もしくは、CT、MRI等の他のモダリティの過去画像を対象画像と並列して表示することとしてもよい。
【0105】
また、図17に示すように、ステップS106において表示を行う際には、今回撮影された診断対象の動態画像(対象画像)の基準フレーム画像と、健常者の同一部位を撮影した動態画像(健常者画像)もしくは類似症例画像の基準フレーム画像を並列して表示し、健常者画像もしくは類似症例画像の、対象画像に表示される異常領域A1に対応する領域E1にマークを表示するとともに、チェックボックス欄に、対象画像においてマークが表示された異常領域を拡大した動画像a1と、健常者画像もしくは類似症例画像においてマークが表示された領域を拡大した動画像e1を並列して表示することとしてもよい。動画像e1の開始フレームは、対象画像の動画像a1の開始フレームに最も近い位相のフレームとしてもよいし、若しくは、対象画像の動画像a1の開始クレームと一致する位相のフレームを、健常者画像もしくは類似症例画像のフレーム画像間を補間することで生成してもよい。また、動画像e1は、対象画像の動画像a1と同一時間間隔で表示してもよいし、対象画像の動画像a1と同一位相のフレーム画像が同じタイミングで表示されるようにしてもよい。同一位相で表示する場合は、対象画像の各フレームに最も近い位相のフレーム画像を抽出してもよいし、対象画像と同一位相となるフレーム画像を健常者画像もしくは類似症例画像のフレーム画像間を補間することにより生成してもよい。
このように、対象画像と健常者画像もしくは類似症例画像を並べて表示することで、医師は、対象画像だけでなく、健常者画像や類似症例画像を比較参照しながら観察を行うことができ、精度の高い診断を下すことが可能となる。健常者画像と比較することで、医師は、健常者との動作の違いから、正常/異常をより正確に診断できるようになる。また、類似症例画像と比較することで、医師は、類似症例の動きの一致度合いから、正常/異常をより正確に判断することが可能となる。
【0106】
並列表示する、健常者画像、類似症例画像としては、今注目している患者と、年齢、性別、体格(身長、体重)、臨床症状、画像上の特徴が似た患者の画像であることが好ましい。また、SIDやフレームレート等の撮影条件が一致した、若しくは、近い患者の画像であることが好ましい。健常者画像や類似症例画像は、例えば、予め患者情報や撮影条件を対応付けてサーバー装置10のデータベースに保存しておき、対象画像の表示時に、対象画像の患者情報、撮影条件の情報を検索パラメーターとして用いてデータベースの検索を行い、検索結果として評価値の高かったもの(一致もしくは近似する項目が多かったもの)から一定数の画像をリストアップし、表示部84に表示する。最終的には、そのリス
トアップされた画像群の中から適切であると思われるものを医師や技師などの専門家が入力部83により一つ選択し、それを対象画像と並列して表示する健常者画像や類似症例画像として用いることとすればよい。
また、サーバー装置10のデータベースに保存する各画像に、各特徴量の算出結果も対応付けて記憶しておき、類似症例画像を比較表示する場合は、対象画像と各特徴量の値、もしくは複数の特徴量の値に対する傾向が近似した画像を検索してリストアップ表示することとしてもよい。
【0107】
以上説明したように、診断支援情報生成システム100によれば、診断用コンソール8の制御部81は、動態撮影により取得された複数のフレーム画像について、FPDにおける同一位置の検出素子が出力する信号値を示す画素を複数のフレーム画像間で互いに対応付け、互いに対応付けられた画素の信号値の変動幅が予め定められた基準範囲を超える領域を異常領域として抽出し、当該抽出された異常領域を表示部84に表示させる。例えば、抽出された異常領域を、少なくとも1つのフレーム画像と重畳して表示させる。
従って、医師が動態表示で観察を行う前に、予め異常領域を抽出して提示するので、医師はどの領域に注目して動態画像を観察したらよいかを予め知って診断に臨むことができる。よって、不要な領域の診断を割愛させ、早期診断につなげることができる。
【0108】
例えば、制御部81は、複数のフレーム画像のうち、撮影順が隣接するフレーム画像間で互いに対応する画素の信号値の差分値を算出し、算出された差分値が予め定められた基準範囲を超える領域を異常領域として抽出する。従って、検出素子毎のバラツキを緩和して異常領域を精度良く抽出することができる。
【0109】
また、制御部81は、撮影部位に応じて、基準範囲の下限を超える領域を異常領域として抽出するか、基準範囲の上限を超える領域を異常領域として抽出するか、又はその両方の領域を異常領域として抽出するかを選択するので、撮影部位の正常な動態に応じて異常領域を抽出することができる。
例えば、撮影部位が肺である場合、制御部81は、基準範囲の下限を超える領域を異常領域として抽出する。従って、呼吸に伴う換気機能を喪失している領域、血管が詰まり血流のない領域、これらの両方の重複領域を異常領域として抽出することができる。
また、撮影部位が肺である場合、複数のフレーム画像に対し、換気に伴う信号値変動成分を除去するローパスフィルタ処理、又は血流に伴う信号値変動成分を除去するハイパスフィルタ処理を施した後に、抽出を行うようにすることで、精度良く異常領域を抽出することが可能となる。
また、撮影部位が関節系である場合、基準範囲の下限を超える領域及び基準範囲の上限を超える領域を異常領域として抽出する。従って、関節の動きの悪い領域を精度良く異常領域として抽出することができる。
【0110】
また、制御部81は、各フレーム画像を同一サイズの複数の画素ブロックに分割し、当該画素ブロック毎に画素の信号値の代表値を算出して当該代表値に画素ブロック内の信号値を置き換えるビニング処理を実行した後、FPDにおける同一位置の検出素子の出力を示す画素ブロックを複数のフレーム画像間で互いに対応付け、当該互いに対応付けられた画素ブロックの信号値の変動幅が予め定められた基準範囲を超える領域を異常領域として抽出する。従って、欠陥画素の影響を緩和して精度良く異常領域を抽出することができる。
【0111】
また、制御部81は、抽出された異常領域に対し、被写体の動態に係る特徴量を算出し、算出結果を表示部84に表示出力させる。従って、異常領域の特徴量を医師に提供することができる。また、異常な領域のみに限定して特徴量の算出を行うので、特徴量を算出する際の処理時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0112】
なお、上記実施の形態は本発明の好適な一例であり、これに限定されない。
例えば、上記実施の形態においては、撮影用コンソール5において間引き処理を行うこととして説明したが、例えば、特許第4546174号のように、動態画像を撮影する撮影装置側(本実施形態ではFPD9a)でビニング処理や単純間引き処理を行い、処理済みのフレーム画像を撮影用コンソール5に送信することとしてもよい。このようにすれば、FPDと撮影用コンソールとの間での画像データの転送時間も短縮することができるので、更に好ましい。
【0113】
また、上記実施の形態においては、撮影用コンソール5から診断用コンソール8に撮影により得られた画像データを送信することとして説明したが、撮影用コンソール5からサーバー装置10に送信してデータベースへの格納を行った後、診断用コンソール8からサーバー装置10のデータベースに格納されている画像データを読み出して表示・解析を行うようにしてもよい。
【0114】
また、上記実施の形態においては、抽出された異常領域を、動態表示前に基準フレーム画像上に識別可能に表示することとして説明したが、動態表示する際にも異常領域を枠で囲む等して識別可能に表示することとしてもよい。
【0115】
また、上記実施の形態においては、互いに対応付けられた画素(画像ブロック)の信号値の変動幅を求める手段として、撮影順が隣接するフレーム画像間でフレーム間差分値を算出し、フレーム間差分値が予め定められた基準範囲を超える領域を異常領域として抽出することとして説明したが、これに限定されず、例えば、互いに対応する画素(画素ブロック)の信号値の最大値から最小値までの変動幅が予め定められた基準範囲を超える領域を異常領域として抽出することとしてもよい。
【0116】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてHDDや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0117】
その他、診断支援情報生成システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0118】
100 診断支援情報生成システム
1 ブッキー装置
11 制御部
12 検出器装着部
13 通信I/F
14 駆動部
15 バス
2 ブッキー装置
21 制御部
22 検出器装着部
23 通信I/F
24 駆動部
25 バス
3a 放射線源
3b 放射線源
3c 放射線源
4 クレードル
5 撮影用コンソール
51 制御部
52 記憶部
521 撮影管理テーブル
53 入力部
54 表示部
541 選択用画面
55 通信I/F
56 ネットワーク通信部
57 バス
8 診断用コンソール
81 制御部
82 記憶部
83 入力部
84 表示部
85 ネットワーク通信部
86 バス
9a FPD
9b FPD
91 制御部
92 検出部
93 記憶部
94 コネクター
95 バッテリー
96 無線通信部
97 バス
6 操作卓
7 HIS/RIS
10 サーバー装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源と、2次元状に配置された複数の検出素子を有する放射線検出器とを用いて、被写体の動態撮影を行い、複数のフレーム画像を取得する撮影手段と、
前記撮影手段により取得された複数のフレーム画像を表示する表示手段と、
を備える動態医用画像生成システムであって、
前記撮影手段により取得された複数のフレーム画像について、前記放射線検出器における同一位置の検出素子が出力する信号値を示す画素を前記複数のフレーム画像間で互いに対応付け、前記互いに対応付けられた画素の信号値の変動幅が予め定められた基準範囲を超える領域を異常領域として抽出し、当該抽出された異常領域を前記表示手段に表示させる制御手段を備える動態医用画像生成システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記抽出された異常領域を、少なくとも1つのフレーム画像と重畳して表示する請求項1に記載の動態医用画像生成システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記複数のフレーム画像のうち、撮影順が隣接するフレーム画像間で前記互いに対応する画素の信号値の差分値を算出し、前記算出された差分値が前記予め定められた基準範囲を超える領域を異常領域として抽出する請求項1又は2に記載の動態医用画像生成システム。
【請求項4】
撮影部位を入力するための入力手段を備え、
前記制御手段は、前記入力手段により入力された撮影部位に応じて、前記基準範囲の下限を超える領域を異常領域として抽出するか、前記基準範囲の上限を超える領域を異常領域として抽出するか、又はその両方の領域を異常領域として抽出するかを選択する請求項1〜3の何れか一項に記載の動態医用画像生成システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記入力手段により入力された撮影部位が肺である場合、前記基準範囲の下限を超える領域を異常領域として抽出する請求項4に記載の動態医用画像生成システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記入力手段により入力された撮影部位が肺である場合、前記複数のフレーム画像に対し、換気に伴う信号値変動成分を除去するローパスフィルタ処理、又は血流に伴う信号値変動成分を除去するハイパスフィルタ処理を施した後に、前記抽出を行う請求項5に記載の動態医用画像生成システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記入力手段により入力された撮影部位が関節系である場合、前記基準範囲の下限を超える領域及び前記基準範囲の上限を超える領域を異常領域として抽出する請求項4に記載の動態医用画像生成システム。
【請求項8】
前記制御手段は、前記各フレーム画像を同一サイズの複数の画素ブロックに分割し、当該画素ブロック毎に画素の信号値の代表値を算出して当該代表値に画素ブロック内の信号値を置き換えるビニング処理を実行した後、前記放射線検出器における同一位置の検出素子の出力を示す画素ブロックを前記複数のフレーム画像間で互いに対応付け、当該互いに対応付けられた画素ブロックの信号値の変動幅が予め定められた基準範囲を超える領域を異常領域として抽出する請求項1〜7の何れか一項に記載の動態医用画像生成システム。
【請求項9】
前記制御手段は、前記抽出された異常領域に対し、前記被写体の動態に係る特徴量を算出し、算出結果を前記表示手段に表示出力させる請求項1〜8の何れか一項に記載の動態医用画像生成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−81579(P2013−81579A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222647(P2011−222647)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】