説明

動物の健康を向上するためにバチルス・ズブチリス株を使用する方法

本発明は、動物の健康を向上させるための方法であって、バチルス・ズブチリスQST713またはその変異体を含む組成物を該動物に投与することを含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、米国特許法第119条(e)により、2008年9月17日出願の米国特許仮出願第61/192,436号の優先権を主張するものである。前記の出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、プロバイオティクス、および動物の健康または動物の全身的な身体状態を向上させるその能力の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] バチルス属は、多数の内生胞子形成細菌を含み、中でも、農業および動物の栄養の分野において種々の用途がある。数種のバチルス株は、抗生物質に代わるものとして、動物用飼料中のプロバイオティクスとしての用途で現在流通している。こうしたプロバイオティクスは、胃腸の細菌叢を調節することによる動物の成長および飼料効率の改善を含め、動物の健康を向上させる。ヒトが消費するための動物製品中の残留抗生物質、および抗生物質への耐性の出現に対する懸念から、そのようなプロバイオティクスの使用は増加している。近年、プロバイオティクスとして使用するための胞子形成細菌をスクリーニングするための研究が行われている。多様な市販製品にはバチルス・ズブチリス株、バチルス・リケニフォルミス株およびバチルス・コアギュランス株が含有されているが、すべてのバチルス株が有効な飼料添加物であるわけではないことが、そうしたスクリーニングにより明らかになっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004] 本発明は、動物に投与されると当該動物の健康を向上させるバチルス・ズブチリス株を提供する。具体的には、本発明は、昆虫以外およびヒト以外の動物の健康を向上させ、または、当該動物の全身的な身体状態を改善するための方法であって、飼料または飲料水(経口強制栄養によらず)の中に(i)バチルス・ズブチリスQST713、(ii)(i)の変異体、(i)もしくは(ii)の無細胞調製物、または(i)もしくは(ii)の代謝産物を含む組成物を当該動物に与えることによる方法に関する。一実施形態では、本発明の組成物は、バチルス・ズブチリス713またはその変異体、および細菌により産生される代謝産物を含む。別の実施形態では、この組成物は、主に胞子フォームのバチルス・ズブチリスQST713を含む。
【0005】
[0005] 本発明のいくつかの実施形態では、この組成物は、動物の生涯にわたり、または動物の生涯の特定の段階もしくは部分の間、複数日にわたり飼料に入れて動物に投与される。例えば、いくつかの実施形態では、この組成物は、家畜の幼動物用飼料のみに加えて、または仕上げ飼料のみに加えて投与される。
【0006】
[0006] 本発明の方法は、動物の体重増加を向上させ、飼料利用効率を高め、罹病率を低下させ、耐病性を高め、生存率を高め、動物の免疫応答を高め、および健康な腸内微生物叢を維持するために使用できる。一実施形態では、本発明の方法は、治療目的での1クールの抗生物質の投与後、腸内微生物叢の健康なバランスの回復を補助するために使用される。
【0007】
[0007] 一実施形態では、本発明の組成物は、バチルス・ズブチリスQST713またはその変異体を含み、飼料1gもしくは飲料水1ml当たり約1×10CFU、または飼料1gもしくは飲料水1ml当たり約1×10CFU、または飼料1gもしくは飲料水1ml当たり約1×10CFU、または飼料1gもしくは飲料水1ml当たり約1×10CFU、または飼料1gもしくは飲料水1ml当たり約1×10CFU、または飼料1gもしくは飲料水1ml当たり約1×10CFU、または飼料1gもしくは飲料水1ml当たり約1×10CFU、または飼料1gもしくは飲料水1ml当たり約1×1010CFU、または飼料1gもしくは飲料水1ml当たり約1×1011CFUの比率で動物に投与される。
【0008】
[0008] 別の実施形態では、本発明の組成物は、動物の腸内の病原性細菌の増殖を低下させるのに有効な量で動物に投与または給餌される。そのような病原性細菌としては、クロストリジウム、リステリア、サルモネラ、カンピロバクター、大腸菌およびビブリオが挙げられる。関連して、本発明の方法は、動物の糞便中の病原性細菌排出物の量を減少させるために使用できる。本発明の方法は、乳酸菌など、動物の腸内の有益細菌の増殖を維持または増加させるためにも使用できる。病原性細菌を減少させ、および/または有益細菌を増加もしくは維持することにより、本発明の組成物は、健康な腸内微生物叢全体を維持することが可能である。
【0009】
[0009] 本発明の方法は、ヒト以外および昆虫以外のすべての動物に使用できる。本発明の方法が有効と考えられる動物としては、鳥類、ブタ、反芻動物、ペットおよび外来種動物、動物園の動物、水生動物、中でもウマが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、動物は、ブロイラーおよび卵用ニワトリなど、消費用または食物生産動物として飼育される家畜である。
【0010】
[0010] 本発明は、動物の健康を向上させまたは動物の身体状態を改善するように構成される組成物も提供する。したがって、本発明の組成物は、バチルス・ズブチリスQST713またはその変異体、その無細胞調製物またはその代謝産物、およびこれらの組成物を飼料添加物または飲料水用添加物として動物に与えるのに適したものとする担体を含むことができる。あるいは、バチルス・ズブチリスQST713またはその変異体、その無細胞調製物またはその代謝産物は、飼料タンパク質および/または飼料炭水化物などの動物用飼料原料と共に調合してもよい。そのような組合せは、標準的なペレット化工程により押し出されるペレットのフォームであってもよい。
【0011】
[0011] 本発明の組成物は、バチルス・ズブチリスQST713またはその変異体、QST713の無細胞調製物またはその変異体、ならびにQST713の代謝産物およびその変異体と、他のプロバイオティクスおよび/またはプレバイオティクスとの組合せも含む。
【0012】
[0012] 本発明は、ペレット化工程に先立ち、動物に与えると動物の健康を向上させるのに有効な量で、炭水化物およびタンパク質などの標準的な飼料成分にバチルス・ズブチリスQST713胞子を加えることを含む、直接投与型微生物を含有する動物用飼料を調製する方法も包含する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】[0013]クロストリジウムの多様な単離物に対する有効性についてのバチルス・ズブチリスQST713の無細胞調製物の試験結果を示すグラフである。
【図2】[0014]クロストリジウムの多様な単離物に対する有効性についてのバチルス・ズブチリスQST713の熱処理した無細胞調製物の試験結果を示すグラフである。
【図3】[0015]リステリアの多様な単離物に対する有効性についてのバチルス・ズブチリスQST713の無細胞調製物の試験結果を示すグラフである。
【図4】[0016]リステリアの多様な単離物に対する有効性についてのバチルス・ズブチリスQST713の熱処理した無細胞調製物の試験結果を示すグラフである。
【図5】[0017]サルモネラの多様な単離物に対する有効性についてのバチルス・ズブチリスQST713の無細胞調製物の試験結果を示すグラフである。
【図6】[0018]サルモネラの多様な単離物に対する有効性についてのバチルス・ズブチリスQST713の熱処理した無細胞調製物の試験結果を示すグラフである。
【図7】[0019]病原菌に対するQST713の有効性を試験するためにバチルス・ズブチリスQST713(縦)およびクロストリジウム・ペルフリンゲンスの多様な単離物(横)を交叉画線した寒天プレートを示す写真である。
【図8】[0020]病原菌に対するQST713の有効性を試験するためにバチルス・ズブチリスQST713(縦)およびカンピロバクター・ジェジュニの多様な単離物(横)を交叉画線した寒天プレートを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0021] 本明細書におけるすべての刊行物、特許および特許出願(一切の図面および補遺を含む)は、各個々の刊行物または特許出願が、参照により組み込まれると具体的かつ個々に示された場合と同程度に、参照により組み込まれる。
【0015】
[0022] 以下の説明には、本発明の理解に有用と考えられる情報が含まれる。本明細書に記載の情報の任意のものが本出願で特許請求される発明の先行技術もしくは関連するものであることも、具体的もしくは間接的に参照される任意の刊行物が先行技術であることも認めるものではない。
【0016】
[0023] 本発明は、バチルス・ズブチリス株QST713および/または、プロバイオティクスとして動物の健康を向上させるのに有効なその代謝産物の新規の使用に関する。プロバイオティクスは、有害細菌(クロストリジウムおよびカンピロバクターなど)の減少および有益細菌(ラクトバチルス属種およびビフィズス属菌など)の増加を含め、健康な腸内微生物叢を維持するために動物の健康用途において使用される。プロバイオティクスは病原性細菌と有益細菌との間の健康なバランスを維持するために好適であるが、その理由は、プロバイオティクスは、抗生物質とは異なり、細菌を無差別に破壊もしなければ、病原性細菌の抗生物質耐性株となることもないからである。プロバイオティクスが健康な腸内微生物叢を維持すると考えられる多くの機序がある:病原性細菌の競合排除、抗微生物物質の産生による病原性細菌の減少、有益な腸内微生物叢の増殖および生存率の向上、ならびに動物の全身性免疫応答の刺激。
【0017】
[0024] 本発明は、(i)バチルス・ズブチリスQST713、(ii)バチルス・ズブチリスQST713の変異体、(iii)(i)もしくは(ii)の無細胞調製物、または(iv)(i)もしくは(ii)の代謝産物を含む組成物を動物に投与することにより、動物の健康を向上させる方法を包含する。
【0018】
[0025] バチルス・ズブチリスQST713、その変異体、その上澄みおよびそのリポペプチド代謝産物、ならびに、植物の病原性細菌および昆虫を制御するためのその使用方法は、米国特許第6,060,051号、同第6,103,228号、同第6,291,426号、同第6,417,163号および同第6,638,910号に完全に記載されている。これらの特許においては、この株はAQ713と呼ばれている。バチルス・ズブチリスQST713は、1997年5月7日、「特許手続きのための微生物の寄託の国際認識に関するブダペスト条約」の条項の下、受入番号B21661でNRRLと共に寄託されている。本明細書においてQST713と言う場合はすべて、バチルス・ズブチリスQST713を指す。
【0019】
[0026] バチルス・ズブチリスQST713株は、驚くべきことに、この株を動物の健康の向上に好適なものとすることが見出されている一定の特性を有する。QST713の胞子は、低pHで生存可能であり、QST713の細胞は4.5程度の低pHで増殖する(促進的な栄養条件が前提)。加えて、それぞれ追って実施例8および4に記載のように、QST713は、高い塩条件下で少なくとも10日間増殖可能であり、動物用飼料のペレット化に必要な高温を生き抜くことができる。QST713は、さらに、実施例2に示すように、凝集または大量に増殖し、それにより病原性細菌を駆逐および減少させる能力も有する。何らかの特定の理論により限定されることを望むものではないが、バチルス・ズブチリスQST713は、抗菌性の代謝産物を産生し、病原菌より多い栄養分および結合空間を使用することにより病原菌と競合し、それにより、腸内の病原性細菌の有効な定着を防止することなどの多面的な作用様式により、動物の健康を向上させると考えられる。
【0020】
[0027] 本発明の一態様では、動物に投与される組成物は、QST713の同定特性をすべて有するバチルス・ズブチリスQST713の変異体を含む。そのような変異体は、QST713とのDNA配列同一性が、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%であってもよい。いくつかの実施形態では、変異体は、自然発生的な変異体である。自然発生的な変異体という用語は、変異原を意図的に使用しなくてもQST713から生じる変異体を指す。そのような自然発生的な変異体は、親が感受性を有する一定の抗生物質の存在下でバチルス・ズブチリス株を増殖させること、および生物活性の改善、またはこの出願においては、追って記載の動物の健康の兆候のうち1つまたは複数を向上させる能力の改善について任意の耐性変異体を試験することなど古典的な方法により得てもよい。自然発生的な変異体を同定する他の方法は、当業者には公知であろう。
【0021】
[0028] 本出願においてバチルス・ズブチリスQST713またはその変異体と言う場合はすべて、自然から単離され、ヒトにより、例えば、実験室内または工業条件下で増殖させられる、細菌を指す。
【0022】
[0029] バチルス・ズブチリスQST713細胞は、胞子(休眠状態である)として、栄養細胞(増殖中である)として、移行状態の細胞(増殖期から胞子形成期に移行中である)として、またはこうした種類の細胞のすべての組合せとして、本発明の組成物中に存在してもよい。いくつかの実施形態では、この組成物は主に胞子を含む。
【0023】
[0030] QST713の代謝産物またはその変異体としては、イツリン、スルファクチン、プリパスタチンおよびアグラスタチンなどのリポペプチド、ならびに、抗菌性を有する他の化合物が挙げられる。QST713のリポペプチド代謝産物は、米国特許第6,291,426号および同第6,638,910号に詳細に記載されている。
【0024】
[0031] 本発明の組成物は、米国特許第6,060,051号に記載の培地および他の方法を使用することによるなど当技術分野で周知の方法に従い、バチルス・ズブチリスQST713またはその変異体を培養することにより入手できる。従来の大規模な微生物培養法としては、液内発酵、固体発酵または液体表面培養が挙げられる。発酵の終わりに向かって栄養分は枯渇するので、バチルス・ズブチリスQST713細胞は増殖期から胞子形成期へ移行を開始することから、発酵の最終生成物は大部分、胞子、代謝産物および残留発酵培地である。胞子形成は、このバチルス・ズブチリスの自然なライフサイクルの一部であり、通常は、栄養制限に応答して細胞により開始される。発酵は、高濃度のバチルス・ズブチリスQST713のコロニー形成単位を入手し胞子形成を促進するように構成される。発酵の結果生じる培養培地中の細菌細胞、胞子および代謝産物は、直接使用するか、または遠心分離、接線流濾過、深層濾過および蒸発など従来の工業的方法により濃縮してもよい。いくつかの実施形態では、例えば透析濾過法により、濃縮した発酵ブロスを洗浄して、残留している発酵ブロスおよび代謝産物を除去する。
【0025】
[0032] 発酵ブロスまたはブロス濃縮物は、噴霧乾燥、凍結乾燥、トレー乾燥、流動床乾燥、ドラム乾燥または蒸発など従来の乾燥の工程または方法を用いて、担体を加え、または加えずに乾燥させることができる。その結果生じる乾燥製品は、製粉または顆粒化によるなどさらに加工して、特定の粒子サイズまたは物理的な型を達成してもよい。追って記載の担体を、乾燥後に加えてもよい。
【0026】
[0033] QST713の発酵ブロスの無細胞調製物は、抽出、遠心分離および/または発酵ブロスの濾過など、当技術分野で公知の任意の手段により入手できる。当業者には、いわゆる無細胞調製物は、細胞を欠いていてはいけないのではなく、細胞を除去するために用いられる手法(例えば遠心分離の速度)により、ほぼ無細胞または本質的に無細胞であることは理解されよう。その結果得られる無細胞調製物は、乾燥させ、および/または動物へのその投与に役立つ成分と共に調合してもよい。発酵ブロスについて前記の濃縮法および乾燥法は、無細胞調製物にも適用可能である。
【0027】
[0034] QST713の代謝産物は、米国特許第6,060,051号に記載の方法により得ることができる。用語「代謝産物」は、本明細書中で使用する場合、半純粋および純粋もしくは本質的に純粋な代謝産物、またはバチルス・ズブチリスQST713から分離されていない代謝産物を指すことがある。QST713のリポペプチドおよび他の殺菌性の代謝産物は、600キロダルトン〜100ダルトンの間である。したがって、いくつかの実施形態では、無細胞調製物をQST713の発酵ブロスの遠心分離により作製した後、代謝産物を分子量カットオフに基づき異なる画分(分子量600kDa未満、500kDa未満、400kDa未満など)にグループ分けするサイズ排除濾過により精製してもよい。発酵ブロスの調合について前述した濃縮法および乾燥法は、代謝産物にも適用可能である。
【0028】
[0035] 本発明の組成物は、担体を含んでいてもよく、これは、細胞、無細胞調製物または代謝産物を含む組成物に加えて、回復、効率もしくは物性を改善し、および/または包装および投与に役立つ不活性な調合原料である。そのような担体は、個々に、または組み合わせて加えてもよい。いくつかの実施形態では、担体は、固化防止剤、酸化防止剤、増量剤および/または保護剤である。有用な担体の例としては、以下が挙げられる:多糖類(デンプン、マルトデキストリン、メチルセルロース、乳清タンパク質などのタンパク質、ペプチド、ゴム)、糖(乳糖、トレハロース、ショ糖)、脂質(レシチン、植物油、鉱油)、塩(塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、クエン酸ナトリウム)、およびシリケート(クレイ、非晶質シリカ、ヒュームド/沈降シリカ、シリケート塩)。動物用飼料添加物に適した担体は、毎年刊行されているAmerican Feed Control Officials,Inc.’s Official Publicationに記載されている。例えば、Official Publication of American Feed Control Officials、Sharon Krebs編、2006年版、ISBN 1−878341−18−9を参照のこと。いくつかの実施形態では、担体は、発酵ブロスの濃縮後、ならびに乾燥の間および/または後に加える。
【0029】
[0036] 組成物が飼料添加物として調合される実施形態では、(i)バチルス・ズブチリスQST713もしくはその変異体、(ii)QST713の無細胞調製物もしくはその変異体、(iii)QST713の代謝産物もしくはその変異体または(iv)調合された組成物中の細胞および代謝産物の組合せの重量ベース濃度(w/w)は、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%であってもよい。いくつかの実施形態では、例えば、濃縮調合ブロスが、洗浄され加熱を伴わずに乾燥されている(凍結乾燥によるなど)場合、最終組成物中のバチルス・ズブチリスQST713またはその変異体の濃度は、約90%〜約100%であってもよい。
【0030】
[0037] 本発明の組成物は、昆虫以外およびヒト以外の動物に投与/給餌して、動物の健康またはそのような動物の一般的な身体状態全体を改善するようにしてもよい。この組成物は、治療的および非治療的用途両方のために投与できる。有効量の組成物は、動物の健康を、この組成物を投与されていないが、それ以外は本発明の組成物を受けている動物が摂取しているものと同じ食餌(飼料および他の化合物を含め)を投与されている動物と比較して向上させるのに有効な量である。健康の向上の兆候には、以下のうち1つまたは複数が含まれる:体重増加の向上(動物の特定部分の重量の増加または体重全体の増加が含まれていてもよい)、腸内微生物叢の維持;飼料利用効率の向上、死亡リスクの低下、耐病性の向上、罹病率の低下、免疫応答の向上、下痢発生の減少、生産性の向上および/または病原菌排出の減少。したがって、前述の内容に従って、本出願の実施形態は、バチルス・ズブチリスQST713、バチルス・ズブチリスQST713の変異体、バチルス・ズブチリスQST713由来の無細胞調製物もしくはその変異体、またはQST713の代謝産物もしくはその変異体を含む組成物を動物に投与/給餌することによる、動物の体重の増加、腸内微生物叢の維持または飼料利用効率の向上などの非治療的方法を対象としている。
【0031】
[0038] 本発明の組成物が家畜に投与/給餌されるいくつかの実施形態では、この組成物は、家畜の成長成績を改善するために投与される。本明細書中で使用する場合、成長成績の改善は、本発明の組成物を投与されていない動物と比較した場合の、成長(体重もしくは体長)および/または飼料利用効率の向上、および/または死亡率の低下/生存率の向上を指す。本発明の一態様では、約1%〜約20%の間、または約1%〜約15%の間、または約1%〜約9%の間の体重増加が達成される。本発明の方法は、さらに、動物の飼料利用効率を、本発明の組成物を投与されていない動物と比較して増加させることもできる。飼料効率は、典型的には、体重増加に対する飼料消費の比率である飼料転換率を用いて評価される。この比率の低下が、飼料効率の向上に関連する。飼料効率は、約1%〜15%の間、約2%〜約10%の間、および約3%〜約8%の間で改善できる。本発明の方法は、さらに、死亡率を低下させることもできる。約1%〜約20%の間、または約2%〜17%の間、または約4%〜約13%の間、または約5%〜約10%の間の生存率改善が達成されることもある。成長の増加、飼料効率の改善および死亡率の低下は、動物畜産分野において公知の平均値と個々に比較して、または典型的には、一緒におよび/または類似条件下で飼育されており、そのうち数匹は本発明の組成物を摂取していないほぼ同年齢の家畜群の成長成績データの平均値と比較することにより、個別に定量してもよい。
【0032】
[0039] 腸内微生物叢の維持は、本発明の方法が適用されていない動物と比較して、公衆衛生上懸念される有害な病因性微生物を(その殺菌または増殖阻害により)減少させ、および/または、ラクトバチルスおよびビフィズス菌などの有益細菌を増加させることを意味する。何らかの特定の理論に拘束されることを望むものではないが、有益細菌の増加は、そのような細菌の増殖を刺激すること、または単純に、病原性細菌を選択的に減少させることにより、増殖し腸壁に結合するためのより多くの空間を有益細菌に与えることにより引き起こされることができると考えられる。本発明の方法により減少させることができる有害な病因性細菌としては、以下が挙げられる:クロストリジウム属種(ペルフリンゲンスおよびディフィシルなど)、リステリア属種(モンサイトゲネス(moncytogenes)、ゼーリゲリおよびウェルシメリなど)、サルモネラ属種(エンテリカ、アリゾネ、ティフィリウム、エンテリティディスおよびボングロリ(bonglori)など)、大腸菌、エンテロコッカス属種(フェカリスおよびフェシウムなど)、カンピロバクター、アエロモナス属種、黄色ブドウ球菌およびビブリオ属種。いくつかの実施形態では、有害な病因性微生物は、約0.5ログ、約1ログ、約2ログ、約3ログ、約4ログまたは約5ログ減少することがある。
【0033】
[0040] 前述の病原性細菌は、動物において多様な疾患を引き起こす。例えば、家禽においては、クロストリジウム・ペルフリンゲンスで汚染された飼料は、ニワトリにおける壊死性腸炎(または腸管壁内の壊死性病変)の激増に関係していた。興味深いことに、この細菌はニワトリの腸管内で通常見られるが、この細菌は、レベルの増加がこの疾患に関連しているとはいえ、壊死性腸炎を常に引き起こすわけではない。プロバイオティクスの使用によるこの病原菌の減少の結果、下記の実施例に示すように、健康が向上し体重が増加する。したがって、腸内での増殖能力を減少させることによりこれらの細菌を制御すると、そのような細菌により引き起こされる疾患の発生率が低下する。下記の表1には、多様な微生物と、こうした微生物が関連している疾患または状態が示してある。
【0034】
【表1】

【0035】
[0041] 健康な腸内微生物叢の維持、および、とりわけ前記の有害細菌のうち1つまたは複数の減少は、さらに、動物の糞便を介した病原菌排出の減少ももたらす。病原菌の量は、動物の糞便中の病原菌排出物の分析または試験中の動物の屠殺およびそうした動物の腸内の(有益および病原性)細菌集団の分析など、当業者に公知のいくつかの方法により定量できる。
【0036】
[0042] 本発明の方法は、病原性細菌の増殖の阻害および/または有益細菌の増殖の増加または維持により、治療量の抗生物質の投与後の正常な腸内バランスを回復するためにも使用できる。用語「治療量」は、動物の疾患状態を改善または反転させるのに十分な量を指す。
【0037】
[0043] 本発明の方法により得られる生産性の増加は、以下のいずれかを指す:より多くもしくはより高品質の卵、乳もしくは肉の生産、または離乳する仔の生産増加。
【0038】
[0044] 本発明の方法は、脊椎動物(哺乳動物および水生動物など)および甲殻類(エビなど)を含めた任意の動物に適用できるが、昆虫およびヒトを除く。本発明の組成物で治療できる哺乳動物としては、以下が挙げられる:家畜;ウマ(競走馬を含む)など、スポーツ、娯楽または作業に使用される動物;イヌ、ネコ、鳥および外来種を含めた、飼い馴らされた家庭用ペット;ならびに動物園の動物。家畜は、消費用に、または食物生産動物として飼育される動物を指す。一実施形態では、この方法は、家禽および猟鳥などの単胃動物に適用される。家禽としては、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ホロホロチョウ、ならびにダチョウおよびエミューなどの走鳥類を挙げることができる。猟鳥としては、ウズラ、チャッカー(chukkar)、キジ、ライチョウ、コーニッシュヘンおよびヤマウズラを挙げることができる。ニワトリは、肉用ニワトリを指し、屠殺用に飼育されているニワトリ(ブロイラーとも呼ばれる)、ならびにヒトの摂取用の卵を生産するために使用される卵用ニワトリを包含する。別の実施形態では、この方法は、ブタなどの哺乳動物に適用してもよい。また別の実施形態では、この方法は、ウシ、ヤギおよびヒツジなどの複胃動物(本明細書においては反芻動物とも呼ぶ)に適用してもよい。一実施形態では、本発明の組成物は、健康を向上させ、とりわけこうした動物における下痢の発生率を低下させるために複胃未発達動物に与えてもよい。複胃未発達動物は、出生時から生後約12週の年齢の範囲の反芻動物(仔ウシなど)である。本発明の組成物は、代用乳と共に複胃未発達動物に投与してもよい。代用乳は、複胃未発達動物の授乳期中に初乳の代わりにすることを意図した調合飼料を指す。
【0039】
[0045] 一態様では、本発明の組成物は、給餌に先立ち対象動物の飼料または飲料水に加えられる飼料添加物である。そのような場合、この組成物は、前述のように、炭酸カルシウムまたは乳清タンパク質などの担体と共に調合してもよい。本発明の一態様では、そのような担体は疎水性である。
【0040】
[0046] 別の態様では、バチルス・ズブチリスQST713、その変異体、QST713の無細胞調製物およびその変異体、ならびにQST713の代謝産物およびその変異体を含む組成物は、動物の成長を促進および維持するために必要な動物用飼料原料と組み合わせて調合できる。そのような動物用飼料原料としては、以下のうち1つまたは複数を挙げることができる:タンパク質、炭水化物、脂肪、ビタミン、ミネラル、抗コクシジウム剤、酸ベース製品、および/または抗生物質などの医薬。いくつかの実施形態では、前述のものなどの担体も存在すると考えられる。成長を促進および維持するために必要なタンパク質および炭水化物は、細菌の発酵工程から残存する可能性のある一切の残存性のタンパク質および/または炭水化物と区別するために、飼料タンパク質および飼料炭水化物と呼ぶものとする。
【0041】
[0047] 別の態様では、バチルス・ズブチリスQST713、その変異体、QST713の無細胞調製物およびその変異体、ならびにQST713の代謝産物およびその変異体を含む本発明の組成物は、動物の健康を向上させまたは動物の全身的な身体状態を改善するために動物に与えられる他のプロバイオティクス(バチルスの他の種および株など)をさらに包含してもよい。例示的な株としては、以下が挙げられる:KeminからCLOSTAT(登録商標)の商品名で販売されているバチルス・ズブチリスPB6(米国特許第7,247,299号に記載され、ATCC受入番号PTA−6737として寄託されているもの)、または、カルピスからCALSPORIN(登録商標)として販売されているバチルス・ズブチリスC−3102(米国特許第4,919,936号に記載され、日本の工業技術院発酵研究所、産業技術総合研究所と共にFERM BP−1096として寄託されているもの)、またはChr.HansenからBIOPLUS2B(登録商標)の商品名で販売されている、バチルス・リケニフォルミスとバチルス・ズブチリス胞子との混合物、バチルス・コアギュランス(米国特許第6,849,256号に記載の当該株を含む)、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・レンツス、バチルス・プミルス、バチルス・ラテロスポラスおよびバチルス・アレヴィ。バチルス以外の他のプロバイオティクス(サッカロミセス・セレヴィシエなど)も、本発明の組成物中で使用できる。そのような他のプロバイオティクスが本発明の組成物の一部として調合されない場合、プロバイオティクスは、本発明の組成物と共に(同時または異なる時点のいずれでもよい)投与してもよい。
【0042】
[0048] 別の態様では、本発明の組成物は、以下を包含し、またはこれらと共に投与してもよい(同時または異なる時点のいずれでもよい):アミラーゼ、グルカナーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、グルカナーゼ、アミラーゼおよびペクチナーゼなど、飼料の消化を助ける酵素;抗体、サイトカイン、噴霧乾燥血漿などの免疫調節物質;インターロイキン、インターフェロン;および/または、フルクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イヌリン、オリゴフルクトース強化イヌリン、タガトースおよびポリデキストロースなどのオリゴ糖。
【0043】
[0049] この組成物がQST713またはその変異体を含む実施形態では、細菌は、飼料または飲料水に加えて、動物の健康を向上させるのに有効な量で動物に与えるべきである。一実施形態では、細菌は、飼料1グラムまたは飲料水1ml当たりバチルス・ズブチリス約1×10CFU〜飼料1グラムまたは飲料水1ml当たりバチルス・ズブチリス約1×1010の包含率で加えることができる。別の実施形態では、飼料1グラムまたは飲料水1ml当たりバチルス・ズブチリス約1×10CFU〜飼料1グラムまたは飲料水1ml当たりバチルス・ズブチリス約1×10を投与すべきである。また別の実施形態では、飼料1グラムまたは飲料水1ml当たりバチルス・ズブチリス約1×10CFU〜飼料1グラムまたは飲料水1ml当たりバチルス・ズブチリス約1×10を投与すべきである。また別の実施形態では、飼料1グラムまたは飲料水1ml当たりバチルス・ズブチリス約1×10CFU〜飼料1グラムまたは飲料水1ml当たりバチルス・ズブチリス約1×10を投与すべきである。いくつかの実施形態では、包含率は、飼料1グラムまたは飲料水1ml当たりバチルス・ズブチリス約1×10CFU、または、飼料1グラムもしくは飲料水1ml当たりバチルス・ズブチリス約1×10CFUもしくは約1×10CFUもしくは約1×10CFUもしくは約1×10CFUもしくは約1×10CFUもしくは約1×10CFUもしくは約1×1010CFUもしくは約1×1011CFUである。QST713またはその変異体を含有する組成物が飼料添加物として供給される実施形態では、そのような組成物は、動物用飼料または飲料水に加えられる際、前記の範囲に希釈可能なCFU数を有するべきである。
【0044】
[0050] バチルス・ズブチリスQST713またはその変異体、その無細胞調製物またはその代謝産物を含む組成物は、前述の方法において使用される組成物が動物用飼料ペレットの一部を形成するように、ペレット化工程に先立ち動物用飼料に加えることができる。この態様においては、細菌細胞が組成物中で使用される場合、こうした細胞は、典型的には、ペレット化工程に先立ち動物用飼料の他の成分に胞子フォームで加えられる。乾燥または半含水飼料の押出し加工など、当業者に公知の標準的なペレット化工程を用いてもよい。いくつかの実施形態では、ペレット化工程には、少なくとも約65℃の温度が含まれる。中でも、ペレット化温度は、約65℃〜約120℃の間である。さらに中でも、ペレット化温度は、約80℃〜約100℃の間である。また中でも、ペレット化温度は、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃または約100℃である。
【0045】
[0051] 本発明の組成物は、薬学上許容される担体と組み合わせて医薬品として経口投与することもできる。多様な動物にとっての最適な投与レベルは、中でも、この組成物が(i)腸内の病原性細菌を多様な用量で阻害もしくは減少させ、(ii)有益細菌のレベルを増加もしくは維持し、および/または(ii)動物の健康を多様な用量で向上させる能力を評価することにより、当業者が容易に決定できる。
【0046】
[0052] サケ、マス、エビおよび観賞魚などの水生動物の場合、一実施形態では、本発明の組成物は、魚用飼育水(魚用飼料ではなく、または魚用飼料に加えて)に、魚の健康を向上させるのに有効な量で加えてもよい。そのような有効量は、飼育水1ml当たりバチルス・ズブチリスQST713約10〜約1010CFUの間、または別の実施形態では、飼育水1ml当たりバチルス・ズブチリスQST713約10〜約10CFUの間、またはまた別の実施形態では、飼育水1ml当たりバチルス・ズブチリスQST713約10〜約10CFUの間であってもよい。
【0047】
[0053] 以下の実施例は、本発明の純粋な例証かつ非限定的な目的で記載するものである。
実施例
【実施例1】
【0048】
[0054] 動物の病原菌に対するQST713無細胞調製物の有効性のin vitro試験
Kirby−Bauerおよび最低阻害濃度(MIC)法を用いて、クロストリジウム(クロストリジウム・ペルフリンゲンスATCC13124、およびクロストリジウム・ペルフリンゲンスの2つの環境単離物)、リステリア(リステリア・モンサイトゲネスATCC19116および19111、リステリア・ゼーリゲリATCC35968およびリステリア・ウェルシメリATCC35897)、サルモネラ(サルモネラ・エンテリカATCC10398、サルモネラ・アリゾネATCC13314およびサルモネラ・ボンゴリATCC43975)および大腸菌に対する抗微生物活性について、QST713の無細胞調製物を試験した。
【0049】
[0055] 標的病原菌が増殖した培地に対応する培地中でQST713を増殖させ、下記の表1に示すように、15分間、3000rpm、23℃で培養物を遠心分離し、0.45μmのNalgeneフィルターユニットによりこれを濾過することにより、無細胞調製物を調製した。熱安定性について試験するため、Kirby−BauerおよびMIC試験のそれぞれに先立ち、無細胞調製物の一部を1時間かけて50℃に加熱した。
【0050】
【表2】

【0051】
[0056] Kirby−Bauer実験において、2mmの滅菌済濾紙のディスクを、QST713の上澄みに浸漬させ、滅菌済条件下で風乾した。次に、このディスクを標的病原菌の菌叢上に置き、一晩インキュベートし、阻害域を測定した。クロストリジウムおよびリステリアの標的について阻害域を観察した。
【0052】
[0057] MIC法において、ミクロ滴定プレートのウェルに、それぞれの標的病原菌75ulを播種し、1×10に希釈した。前記の無細胞調製物を、各ウェルに最終希釈率1:2、1:10および1:50で加えた。プレートを37℃、OD600で一晩インキュベートし、Wallachマイクロ滴定読取器で読み取った。無細胞調製物(熱処理したものと非熱処理のものとの両方)は、クロストリジウムおよびリステリアの標的に対して顕著に効果的であり、サルモネラおよび大腸菌の増殖を阻害したが、Kirby−Bauerプレート上のこれらの最後の2つの病原菌については、阻害域が観察されなかった。クロストリジウム、リステリアおよびサルモネラのデータを図1〜6に示す。
【実施例2】
【0053】
[0058] 多様な細菌に対するQST713の有効性のin vitro試験
バチルス・ズブチリスQST713の粉末調合物を、以下の細菌の多様な環境単離物に対する有効性について試験した:クロストリジウム・ペルフリンゲンス、大腸菌、サモネラ(Samonella)・エンテリティディス、カンピロバクター・ジェジュニおよびリステリア・モノサイトゲネス。「発明を実施するための形態」において前述したように、バチルス・ズブチリスQST713を発酵させ、発酵ブロスを濃縮し乾燥させることにより、この粉末調合物を調製した。この調合物は、14.6%の濃縮乾燥ブロスおよび85.4%の不活性調合物(前述の候補から選択)を有し、1グラム当たりバチルス・ズブチリス最低およそ7.3×10CFU、および1グラム当たりバチルス・ズブチリス最高およそ1×1010CFUを含有していた。この調合物を、本明細書においては組成物1と呼ぶものとする。溶液が1ml当たりバチルス・ズブチリスおよそ1×10CFUを含有するように、調合粉末0.2グラムを滅菌済蒸留水1.8mlに加えることにより、組成物1のストック溶液を調製した。5%ヒツジ血液を加えたトリプチカーゼ大豆寒天に試験生物を画線し、寒天プレートを二分する単一の線の中で単一の寒天プレートそれぞれに最大4つの生物を画線した。この生物を一晩乾燥させた。次に、播種したプレートに、前述の調合済QST713の懸濁液を画線し、これを試験生物に垂直に塗布した。クロストリジウム・ペルフリンゲンスおよびカンピロバクター・ジェジュニの単離物をCampyガス雰囲気(10%CO2、5%O2、8%N2)中で41±2℃にて一晩インキュベートした。他の単離物(これらは好気性である)を36±2で一晩、Campyガスの不在下でインキュベートした。QST713は、クロストリジウム・ペルフリンゲンス、サルモネラ・エンテリティディス、カンピロバクター・ジェジュニおよびリステリア・モノサイトゲネスの単離物のいくつかを阻害したが、大腸菌は阻害しなかった。加えて、いくつかのケースでは、バチルス・ズブチリスQST713は、病原性細菌の攻撃的な競合的過剰増殖を示した。結果を下記の表にまとめる。表において報告した阻害域を、バチルス増殖体の端から試験生物の増殖体の開始部分までを測定した。加えて、クロストリジウム・ペルフリンゲンスおよびカンピロバクター・ジェジュニのプレートの写真を、図7および8にそれぞれ示す。
【0054】
【表3】

【実施例3】
【0055】
[0059] ブロイラーにおけるQST713のin vivo試験
組成物1をブロイラー鶏の幼動物用および仕上げ用飼料に加え、体重増加および飼料効率を観察した。252羽のJumbo Cornish Crossブロイラーの雛をランダムに4群に分け、下記に列挙する食餌の1つを与えた。
・基礎食のみ:対照
・基礎食+0.05%CALSPORIN(登録商標)(0.5g/kg、10CFU/g)(追って記載の表ではCSと表記)
・基礎食+0.05%組成物1(0.5g/kg、10CFU/g)(追って記載の表では組成物1−10と表記)
・基礎食+0.0005%組成物1(0.5mg/kg、10CFU/g)(追って記載の表では組成物1−10と表記)
以下の幼動物用飼料から成る基礎食を1〜22日目の間、以下の仕上げ飼料を22〜42日目の間。
【0056】
【表4】

【0057】
[0060] 下記の表5の結果から、組成物1は、10CFU/gレベルで鳥の体重増加を改善したことが示される。飼料効率は21〜42日目の期間にわたり、また成長期間全体(1〜42日目)にわたり、改善した。下記のチャートにおいては、ADGは1日の体重増加平均を指し、ADFIは1日の飼料摂取量平均を指す。
【0058】
【表5】

【実施例4】
【0059】
[0061] 飼料のペレット化工程におけるQST713の安定性
動物用飼料のペレット化工程中のバチルス・ズブチリスQST713の安定性を定量するため、組成物1を含有する動物用飼料ペレットを調製し、多様な温度で試料を試験した。対照飼料は、表6に示す原料を含有し、実験用飼料には8%組成物1を添加した。
【0060】
【表6】

【0061】
[0062] 原料をFobergミキサー中で周囲温度にて混合してから多様な標的温度に加熱し、これらの温度でこの混合物を約30秒間維持してから、5/32”×1 1/4”のペレット用金型を通して約2000ポンド/時間でペレット化した。ミキサー全体の異なる10箇所から10試料を採取した。標的温度の65℃、75℃、80℃および85℃で、同じ750ポンドのバッチ内でペレット試料を採取した。
【0062】
[0063] ミキサーの試料を希釈し、5分間置いて完全にぬらした。QST713細胞を回復させるため、ペレット試料を30分間リン酸緩衝液に浸した。希釈試料を平板培養し、コロニー形成単位を定量した。コロニー形成単位は、下記の表7に示すように、ミキサーからペレット化段階に向けわずかに減少した。
【0063】
【表7】

【実施例5】
【0064】
[0064] ブタにおけるQST713のin vivo試験
飼料ペレットフォームでのQST713を用いた試行を、養豚場における750匹のブタを用いて実行した。標準的な工程により、ペレット化に先立ち組成物1を飼料に加えた。標準的なペレット化工程の前後のQST713のCFUの試験は、前述の実施例4において得られた結果と一致し、QST713のCFUは、ペレット化後、劇的に減少しないことが示された。
【0065】
[0065] ブタ1匹当たりのおよその開始時体重は10ポンドであり、ブタが成長する目標はおよそ40ポンドであった。一切の抗生物質またはバチルスが含まれない標準的な食餌から成る対照処置食がおよそ250匹のブタに与えられた。別の250匹のブタは、標準的な食餌に加え、飼料1g当たり1×10CFUのバチルス・ズブチリスQST713を摂取した。3番目の群の250匹のブタには、飼料1グラム当たり1×10CFUのバチルス・ズブチリスQST713が与えられた。3番目の群において処分されたブタの数は、対照群と比較して顕著に減少した。処分の実行には、不健康またはサイズが不十分なブタには、治療的製品が与えられるようには給餌しないことまたは安楽死させることが含まれる。
【実施例6】
【0066】
[0066] 家禽におけるQST713のin vivo試験
飼料添加物として組成物1を用いた試行を、敷料床鶏舎1つ当たり50羽のブロイラー鶏、1処置当たり鶏舎6つを用いて実施した。家禽用の標準的な飼料(他のプロバイオティクスまたは抗生物質を含有しない)に、飼料1トン当たり組成物1が91グラム(およそ6.64×1011CFU/トン)の比率で組成物1を加えた。対照群の1つおよび組成物1を添加した飼料を投与された鳥の群に、試験の19日目、20日目および21日目にクロストリジウム・ペルフリンゲンスを接種した。試験期間を通して体重を記録し、これを下記の表8に示す。飼料効率を定量し、下記の表9に飼料転換率として報告した。飼料転換率は、死亡し取り除かれた鳥の体重で調節した。試験の22日目、各鶏舎から5羽の鳥を選別し、屠殺し、計量し、壊死性腸炎(NE)病変の存在程度について調べた。NEの評価付けは、0〜3の評価尺度(0は正常、3は最も重症)に基づくものであった。表8および9においては、異なる上付き文字を有するカラム内の平均値には有意差がある(P<.05)。SEMは、LSMEANSの標準誤差である。
【0067】
【表8】

【0068】
【表9】

【実施例7】
【0069】
[0067] 多様な試験についての組成物2の使用
バチルス・ズブチリスQST713の第2の調合物を用いて、成長成績の改善を試験するために試行を実施する。この粉末調合物は、この組成物が、細胞(主に胞子および数種の栄養細胞)から本質的に構成されるように、発酵させ、発酵ブロスを濃縮し、これを乾燥させ透析濾過工程により洗浄して、残存する発酵培地および代謝産物を除去することにより調製される(すべて前述のとおり)。この組成物は、14.6%の濃縮乾燥洗浄した培養物および85.4%の不活性調合物(「発明を実施するための形態」において前述した候補から選択)および1グラム当たり約1.0×1010CFUのバチルス・ズブチリスを含有し、本明細書においてはこれを組成物2と呼ぶものとする。実施例3〜6に記載の試行における組成物1を組成物2に置き換え、結果は、組成物1で達成されたものと同じであることが期待される。
【実施例8】
【0070】
[0068] 海水中でのQST713胞子の生存率
組成物1を試験して、海水およびNaCl中での生存率を定量した。人工的な海水を、10ppt、30ppt、50pptの3種類の濃度で、1つの濃度当たり25mlの試験管4本調製した。3種類の濃度のNaCl(1%、3%および5%)を加えて、栄養ブロスを、1つの濃度当たり25mlの試験管4本調製した。播種に先立ちオートクレーブすることにより、海水および栄養ブロスを両方とも滅菌した。組成物1の懸濁液0.5gをDI水10mlに溶解することにより作製した。この懸濁液のアリコット(0.5ml)を、3種類の濃度の海水およびブロスのそれぞれの中に播種した。試験管には10cfu/ml超(cfu=コロニー形成単位)が入っていると推定された。1%栄養ブロスおよび1%NaClの希釈ボトルを調製し(1ボトル当たり99ml)、オートクレーブすることにより滅菌した。製造者の使用説明書により栄養寒天を調製した;プレート計数試験用に15×100mmのプレート(1試験当たり1つのプレートプラス播種していない対照)を調製した。
【0071】
[0069] 28℃、震盪インキュベーター中で、125rpmを用いて14日間、試験管をインキュベートした。継代培養用の試料を0日目、2日目、10日目に採取した。0日目にすべての試験管を試験し、2日目および10日目には、最高濃度の海水およびNaClの2つのみを試験した。プレート計数は、0日目に元の試験管10μl(=10−2希釈まで)、2日目および10日目には1%栄養ブロス/1%NaCl中で調製された10−2および10−4の希釈物100μlを平板培養することにより得た。こうして得られた数は、実際には10−3および10−5レベルであった。プレートを28℃でインキュベートした。コロニーを24時間および48時間時点で観察した。
【0072】
[0070] Spectronic20D+装置、キュベットとしての12×75のフラクションコレクター用ポリスチレン試験管、および各試料の吸光度を測定することによる660波長を用いて、濁度測定値を得た。試験試料は、各試験管からの1:10希釈物を調製することにより0日目に作製した(1%生理食塩水4.5ml中0.5ml、2日目および10日目には10−2および10−4希釈物の24時間継代培養物5mlを試験することにより)。加えて、濁度測定値は、2日目の希釈物の8日目のインキュベーション時に得た。
【0073】
[0071] プレート培養物および濁度測定値の両方から、胞子は存続しており、少なくとも10日間は数がほとんどまたは全く減少しなかったことが示された。
【0074】
[0072] 培養プレートを24時間および48時間時点で読み取った。24時間時点では、10−3プレートは細菌が増殖してすべてコンフルエントな状態であった。10−5プレートの方が少なかったが、それでも1プレート当たり約1000コロニーを有した。48時間までには、すべてのプレートは非常にコンフルエントな増殖、したがって、元の試験管中では1ml当たり10cfu超を有した。この数は、0日目、2日目および10日目時点で維持された。さまざまな範囲の濃度の海水またはNaClで増殖させた培養物においては、差は観察されなかった。組成物1の培養物は、試験したすべての範囲において良好に増殖した。播種していない海水またはNaCl添加栄養ブロス中では、どの時点でも増殖しなかった。
【0075】
[0073] 濁度試験(吸光度測定値)でも同様の結果が得られたが、読取りはより困難であった。元の試験管は直接読み取ることができず、その理由は、そうした試験管は、特に最高濃度の海水で濁りすぎていたからである。1:10希釈物を使用して、0日目の測定値を得た。2日目および10日目の測定値は、培養プレートを播種するために用いた希釈物上のもので、希釈ボトルから得ることができた。2日目および10日目の推定数は1ml当たり10を超えたことから、生理食塩水の濃度による増殖への悪影響は、あったとしてもごくわずかであった。
【0076】
[0074] 組成物1を、3種類の濃度の人工海水(10ppt、30pptおよび50ppt)、ならびに、栄養ブロス中の3種類の濃度のNaCl(1%、3%および5%)における存続について試験した。プロバイオティクスは、すべての濃度において増殖し、少なくとも10日間は、1ml当たり10を超える多数で生存可能であった。海水中またはブロス中の塩の濃度は、胞子が発芽および増殖する能力に影響しなかった。
【実施例9】
【0077】
[0075] マスにおけるQST713のin vivo試験
約14グラムのニジマスを、それぞれ魚20尾ずつの2群に分ける。対照群には標準的な魚用飼料を与え、処置群には、魚用飼料と、飼料1グラム当たり1×10CFUのバチルス・ズブチリスQST713を投与する。処置群は、対照群と比較して体重の増加を示すことが期待される。
【実施例10】
【0078】
[0076] エビにおけるin vivo試験
ペナエダエ(Penaedae)科およびテナガエビ科のエビおよび中エビの公知の病原菌に対するQST713の阻害作用を定量するために、養殖エビから単離される3つの病原性細菌:腸炎ビブリオ菌、V.アルギノリティカスおよびV.ブルニイフィカス、ならびにエビ由来の病原性真菌フザリウム・ソラニに対して組成物1および2を試験する。調合粉末0.2グラムを滅菌済蒸留水1.8mlに加えることにより、各溶液が、1ml当たり約1×10CFUのバチルス・ズブチリスを含有するように、組成物1および組成物2のストック溶液を調製する。
【0079】
[0077] サブローデキストロース寒天上で増殖させたフザリウム・ソラニの5日培養物に由来する分生胞子(condiospores)を、滅菌済2%NaCl中に収集する。ビブリオは37℃のLuriaブロス培地上で増殖させる。海洋細菌の亜系は、Mueller Hinton寒天またはマリンブロス2216の培地上で30℃にて濃縮してから、1〜3%NaClを添加したトリプシン大豆ブロス(TSB)中で30℃にて培養する。腸炎ビブリオ株は、チオ硫酸塩・クエン酸塩・胆汁塩寒天上で42℃にて選択的に増殖させてから、3%NaClを添加したTSB上で30℃にて培養する。
【0080】
[0078] 試験生物、ビブリオおよびフザリウムを、それぞれ、寒天プレートを二分する単一の線の中で、単一の支持寒天プレートに画線する。この生物を一晩乾燥させる。次に、播種されたプレート2セットに、前述の組成物1の懸濁液または組成物2の懸濁液のいずれかを画線し、これを試験生物に垂直に塗布する。画線プレートを36℃±2で一晩インキュベートする。QST713は、病原性のビブリオおよびフザリウムの単離物のいくつかを阻害すると期待される。加えて、いくつかのケースでは、バチルス・ズブチリスQST713は、病原性細菌の攻撃的な競合的過剰増殖を示すことが期待される。
【0081】
[0079] 別に定義しない限り、本明細書におけるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者により普通に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実行または試験においては、本明細書に記載のものと同様または等価の任意の方法および材料を使用できるが、本明細書には好ましい方法および材料を記載してある。引用するすべての刊行物、特許および特許公報は、あらゆる目的について参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0082】
[0080] 本明細書において論じられる刊行物は、本出願の出願日に先立ち、それらを開示するためにのみ記載するものである。本明細書に記載の一切は、先行発明があるという理由で本発明がそうした刊行物より以前のものであるとの権利を与えられていないと認めるものと解釈されるべきではない。
【0083】
[0081] 本発明をその具体的な実施形態と関連づけて説明してきたが、さらなる改変形が可能であること、ならびに本出願は、一般には、本発明の原理に従う本発明の一切の変形、使用または適応を網羅することを意図しており、これには、本発明が関係する当技術分野内の公知のまたは慣例的な実行の範囲内で生じるような、また本明細書で前述した本質的なフィーチャに適用できるような、また添付の特許請求の範囲内で後に続くような、本開示からの逸脱が含まれることは理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆虫以外およびヒト以外の動物の健康を向上させる方法であって、バチルス・ズブチリスQST713またはバチルス・ズブチリスQST713の変異体を含む組成物を、前記昆虫以外およびヒト以外の動物に投与することを含む方法。
【請求項2】
前記組成物が、前記バチルス・ズブチリスQST713を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、前記バチルス・ズブチリスQST713により産生される代謝産物をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、成長成績を改善するのに有効な量で家畜に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記量が、前記昆虫以外およびヒト以外の動物の飼料利用効率を向上させるのに有効である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記量が、前記昆虫以外およびヒト以外の動物の生存率を向上させるのに有効である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記量が、前記昆虫以外およびヒト以外の動物の体重増加を向上させるのに有効である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、健康な腸内微生物叢を維持するのに有効な量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、前記昆虫以外およびヒト以外の動物における病原性細菌の増殖を低下させるのに有効な量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記病原性細菌が、クロストリジウム属種、カンピロバクター属種、リステリア属種および大腸菌から成る群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記昆虫以外およびヒト以外の動物が家禽である、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記家禽がブロイラー鶏である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記家禽が卵用ニワトリである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記動物がブタである、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
前記動物が反芻動物である、請求項15に記載の方法。
【請求項16】
前記動物が複胃未発達動物である、請求項16に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が担体をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が動物用飼料と共に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記動物用飼料原料が飼料タンパク質を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記動物用飼料原料が飼料炭水化物をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が飲料水をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が、複胃未発達動物のための代用乳をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が、前記動物用飼料1グラム当たりバチルス・ズブチリスQST713約1×10CFUから、前記動物用飼料1グラム当たりバチルス・ズブチリスQST713約1×1010CFUの比率で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
昆虫以外およびヒト以外の動物の身体状態を改善するための組成物であって、(i)前記動物の成長を向上させるのに有効な量のバチルス・スブチルス(subtilus)QST713と(ii)少なくとも1つの動物用飼料原料とを含む組成物。
【請求項25】
前記動物用飼料原料が、飼料炭水化物および飼料タンパク質を含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記バチルス・ズブチリスQST713の前記有効量が、動物用飼料1グラム当たり約1×10CFUから、動物用飼料1グラム当たり約1×1010CFUである、請求項24に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−502920(P2012−502920A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527073(P2011−527073)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/057335
【国際公開番号】WO2010/033714
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(500281006)アグラクエスト インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】