説明

動物の組織または体液中の炎症性物質の量を減少させるための方法

炎症性物質を減少させる量の、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む組成物を、動物に経口投与することにより、動物の組織または体液中に上昇した濃度で存在する炎症性物質の量を減少させる方法。本発明方法は、口腔状態に関連する炎症を含めて、上昇した濃度の炎症性物質により起きる炎症を軽減するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の引照
[0001] 本出願は、米国仮特許出願No. 60/738,128(2005年11月18日出願)に基づく優先権を主張し、その開示内容を本明細書に援用する。
【0002】
発明の背景
発明の分野
[0002] 本発明は、一般に動物の組織または体液中の炎症性物質の量を減少させるための方法に関する。
【0003】
関連技術の記述
[0003] 炎症およびそれに関連する炎症性物質は、疾患または侵入病原体などの攻撃に対する動物の免疫応答の一部である。しかし、炎症(内部、外部または両方の可能性がある)が時には持続的に、かつ動物の健康に負の影響を及ぼすレベルで起きる。時には、持続的および/または上昇した炎症物質産生のため、炎症が身体組織に不利に作用して損傷を引き起こす場合がある。
【0004】
[0004] たとえば歯肉炎は口腔組織に関わる炎症反応であり、定住微生物による刺激(irritation、stimulation)の結果として起きる可能性がある。宿主免疫応答の幾つかの面を伴う一連の事象において、細菌毒素、たとえば細胞壁のリポ多糖(LPS)が、サイトカイン、プロスタノイド、プロテアーゼおよび/または反応性酸素種の産生を含む防御プロセスを刺激する場合がある。これらの物質は侵入微生物に対する防御において機能をもつが、それらは並行して硬組織および軟組織の破壊をも引き起こして最終的に歯牙欠損を生じる可能性がある。さらに、これらの物質の影響は口腔の局所環境に限定されず、このため炎症プロセス関連物質の負荷および組織破壊は全身に及ぶ。
【0005】
[0005] 栄養は動物の免疫機能の変異に重要な役割を果たすことができる。たとえば、研究者らは特定の脂肪酸(FA)が炎症および炎症性物質に与える可能性のある影響について評価を行った。
【0006】
[0006] 米国特許出願公開No. 20050043405には、骨関節炎(変形性関節症)のイヌにおいて、より正常に近い関節機能を回復させるための方法が開示されている。この方法は、EPAを少なくとも約0.2重量%の濃度で含む組成物をイヌに与えることを含む。この出願は、骨関節炎のイヌにおいてEPAが関節軟骨における変性プロセスの発現を阻止する作用をもち、これにより関節機能を改善すると主張している。この出願は、この効果がオメガ-3脂肪酸の抗炎症作用に付加されるとも述べている。骨関節炎における炎症の関与は少ないので、このことはイヌの骨関節炎においては重要性がより低い。
【0007】
[0007] 炎症および炎症性物質が組織損傷または疾患進行において果たす役割を理解することを目標とした研究が行われているにもかかわらず、炎症状態の効果的な管理は依然として難題である。多数の一般的な治療法があるが、残念ながらそれらの治療法は副作用を含めた欠点をもち、実際に有害であるかまたは状態を悪化させる場合がある。たとえばステロイドは炎症性化学物質の産生を減少させることにより炎症に対抗でき、喘息、炎症性腸疾患および炎症性関節炎を含めた状態にしばしば処方される。しかし、ステロイドはかなりの副作用をもつ可能性があり、また動物およびヒトの医薬中で最も頻繁に乱用される薬物のひとつである。したがって、炎症状態を管理するための新規または既存のものに代わる方法および組成物、特に炎症性物質の濃度を低下させるための方法および組成物がなお求められている。
【0008】
発明の概要
[0008] 本発明は、炎症性物質を減少させる量の、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む組成物を、動物に経口投与することにより、動物の組織または体液中に上昇した濃度で存在する炎症性物質の量を減少させる方法を提供する。1態様において、上昇した炎症性物質濃度は口腔状態に関連する。
【0009】
[0009] 本発明は、炎症性物質を減少させる量の、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む組成物を、動物に経口投与することにより、動物の局所生体液または組織中に上昇した濃度で存在する炎症性物質の量を減少させる方法をも提供する。
【0010】
[0010] 本発明はさらに、炎症性物質を減少させる量の、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む組成物を、動物に経口投与することにより、動物における口腔状態の二次症状である炎症状態を予防、軽減または治療するための方法を提供する。
【0011】
[0011] 本発明は、動物における口腔状態の二次症状である炎症状態の存在または不存在の評価を行い、そしてその評価に基づいて組成物を選択することにより、動物に投与する組成物を選択するための方法をも提供し、その際、その評価が炎症状態の存在を示す場合、選択する組成物は炎症性物質を減少させる量の、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む組成物である。
【0012】
[0012] 本発明は、動物の組織または体液中に上昇した濃度で存在する炎症性物質の量を減少させるのに有用な組成物および他の構成要素の組合わせを収容した、キットの形の製品を提供する。
【0013】
[0013] 本発明のさらに他の特色および利点は当業者に容易に認識されるであろう。
発明の詳細な記述
定義
[0014] 用語”動物”は、炎症反応を生じる可能性があるヒトまたは他の動物を意味し、鳥類、ウシ類、イヌ類、ウマ類、ネコ類、ヤギ類、ネズミ類、ヒツジ類およびブタ類の動物を含む。好ましくは、動物はイヌ類またはネコ類である。
【0014】
[0015] 用語”投与”は、動物に組成物を摂取させることを意味し、受動投与、すなわち食物などの組成物を摂取のために動物に供給することを含む。
[0016] 本明細書中の用語”炎症性物質(proinflammatory substance)”は、動物において産生される、直接もしくは間接的な炎症仲介物質である、または炎症仲介物質の産生に直接もしくは間接的に関わる、いずれかの物質を表わす。限定ではない炎症性物質の例を後記に述べる。
【0015】
[0017] 炎症性物質の”上昇した濃度”とは、動物の組織または体液中の濃度がその特定の組織または体液中のその特定の炎症性物質についての正常範囲より高いものを意味する。正常範囲の濃度は、健康な動物で一般にみられるものである。組織または体液中の炎症性物質を”減少させる”とは、その物質の濃度を上昇した濃度からより正常範囲に近接したレベルまたは正常範囲内のレベルに低下させることを意味する。
【0016】
[0018] 用語”血液”は、それに分散した細胞その他の成分を含む血管内流体を意味する。”血液”中の炎症性物質は、赤血球および白血球などの細胞の内側もしくは外側にある可能性があり、および/またはたとえば細胞膜と結合している可能性がある。
【0017】
[0019] 用語”局所生体液(local biofluid)”は、動物の身体内の、または身体に由来する、血液以外の流体を意味する。具体的には、限定ではないが、局所生体液には腸腔液、溝滲出液(crevicular fluid)(たとえば歯肉溝滲出液)、溝液(sulcus fluid)、乳汁、唾液、組織液、組織抽出液、滑液、リンパ液、粘液、羊水、膣液、脳脊髄液、尿および精液が含まれる。局所生体液は非細胞成分のほかに細胞を含む可能性があり、したがって”局所生体液”中の炎症性物質は細胞の内側もしくは外側にある可能性があり、および/またはたとえば細胞膜と結合している可能性がある。
【0018】
[0020] 本明細書中の”体液(body fluid)”はそれの最も広い意味で用いられ、その流体が血管の内または外のいずれに存在するかに関係なく、動物のいかなる流体をも表わす。したがって、血液および局所生体液は”体液”の例である。
【0019】
[0021] 用語”オメガ-3脂肪酸”は、多価不飽和脂肪酸系カルボン酸グループのメンバーを意味する。一般にオメガ-3脂肪酸はメチレンで中断された二重結合を含む12〜26個の炭素原子を含み、二重結合のひとつは脂肪酸分子のメチル末端から数えて第3と第4の炭素原子間にある。より生理的に重要なオメガ-3脂肪酸は、炭素18〜22個の長さおよび直鎖状のものである。具体的に、オメガ-3脂肪酸には、限定ではないがエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、α-リノレン酸(ALA)、およびその誘導体が含まれる。一般にオメガ-3脂肪酸は食物組成物中にトリグリセリドの成分として含有される。限定ではない他の誘導体の例には、オメガ-3脂肪酸の塩類およびエステル、たとえば分枝鎖もしくは非分枝鎖および/または飽和もしくは不飽和C1-C30アルキルおよびシクロアルキルエステル、特にC1-C6アルキルエステルが含まれる。
【0020】
[0022] 用語”口腔状態”は、口腔に影響を及ぼすいずれかの状態であって、動物の炎症における病因および/または増悪因子であるものを意味する。具体的に、口腔状態には、限定ではないが歯垢、歯肉炎、歯周炎、およびその組合わせが含まれる。
【0021】
本発明
[0023] 1態様において本発明は、動物の組織または体液中に上昇した濃度で存在する炎症性物質の量を減少させる方法を提供する。この方法は、炎症性物質を減少させる量の、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む組成物を、動物に経口投与することを含む。本発明は、オメガ-3脂肪酸が特にたとえば口によって食物成分として全身投与された場合に局所および全身の炎症性物質のインビボ濃度を低下させることができるという知見に基づく。その低下に伴って、これらの物質が関連する組織破壊は減少する。特定の理論に固執するわけではないが、オメガ-3脂肪酸は、炎症性酵素、たとえばシクロオキシゲナーゼに代替基質を供給し、これらの酵素の生成物を炎症反応の仲介における効力がより低い物質に切り換えることにより、炎症を軽減できると考えられる。たとえば、炎症仲介物質プロスタグランジンE2(PGE2)の産生は、オメガ-3脂肪酸がシクロオキシゲナーゼ-1(COX-1)およびシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の基質としてのアラキドン酸(AA)の代替となった場合、効力がより低いプロスタグランジンE3(PGE3)に有利な方へシフトする可能性がある。同様に化学誘引物質ロイコトリエンB4(LTB4)の産生は、基質がAAからオメガ-3脂肪酸に切り換えられた場合、効力がより低いロイコトリエンB5(LTB5)へシフトする可能性がある。
【0022】
[0024] ある態様において本発明は、上昇した炎症性物質の濃度が口腔状態に関連する場合に、動物の血液中に上昇した濃度で存在する炎症性物質の量を減少させる方法を提供する。この方法は、炎症性物質を減少させる量の、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む組成物を、動物に経口投与することを含む。
【0023】
[0025] 特定の態様において、動物は愛玩動物である。本明細書中の”愛玩動物”は、世話をする人がペットとして飼育しているいずれかの種の各動物、またはペットとして広く家畜化されてきた多様な種の各動物であり、イヌ(家犬、Canis familiaris)およびネコ(家猫、Felis domesticus)が含まれ、各動物が専らまたは部分的に愛玩のために飼育されているか否かに関係ない。したがって本明細書中の”愛玩動物”には、ペットのイヌおよびネコのほか、作業犬、げっ歯類防除のために飼育されている農場猫などが含まれる。1態様において、動物はイヌ類である。他の態様において、動物はネコ類である。
【0024】
[0026] 多様な炎症性物質が当業者に知られている。具体的に炎症性物質には、限定ではないが下記のものが含まれる:エイコサノイド、たとえばプロスタグランジン(たとえばPGE2)およびロイコトリエン(たとえばLTB4);気体(たとえば一酸化窒素(NO));酵素(たとえばホスホリパーゼ、誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)、COX-1およびCOX-2);ならびにサイトカイン、たとえばインターロイキン(たとえばIL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12およびIL-18)、腫瘍壊死因子ファミリーのメンバー(たとえばTNF-α、TNF-βおよびリンホトキシンβ)、インターフェロン(たとえばIFN-βおよびIFN-γ)、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、トランスフォーミング増殖因子(たとえばTGF-β1、TGF-β2およびTGF-β3、白血病阻害因子(LIF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、遊走阻止因子(MIF)、単球化学誘引タンパク質(MCP-1)、マクロファージ炎症性タンパク質(たとえばMIP-1α、MIP-1βおよびMIP-2)、およびRANTES。1態様において、炎症性物質はサイトカインまたは酵素である。他の態様において、炎症性物質はIL-6、iNOSおよびCOX-2よりなる群から選択される。
【0025】
[0027] 本発明は、いずれか特定のオメガ-3脂肪酸供給源に限定されない。具体的にオメガ-3脂肪酸の供給源には、限定ではないが、魚類(たとえばメンヘーデン(menhaden)、イワシ、ニシン、マグロ、サケ)、魚油、魚肉、植物油、藻類、藻類油、亜麻仁、亜麻仁油、カノラ(canola)、カノラ油、ダイズ、ダイズ油、クルミ、クルミ油、およびその混合物が含まれる。オメガ-3脂肪酸は化学合成によって得ることもできる。オメガ-3脂肪酸は、遊離酸の形で、または医薬的もしくは栄養的に許容できる塩として、製品に含有させることができる。この少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸は、高度に精製された、実質的に精製された、部分的に精製された、または精製されていない形であってよい。具体的なオメガ-3脂肪酸精製法は下記の参考文献に開示されている:USP No. 4,377,526、USP No. 4,792,418およびそれらに開示された参考文献、ならびに米国特許出願公開No. 2004/0236128およびそれに開示された参考文献。
【0026】
[0028] いずれかの供給源、たとえば魚油のオメガ-3脂肪酸含量は、当業者に既知の技術を用いて、または商業的な試験所により定量できる。1態様において、この少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸は、魚油、植物油およびその組合わせよりなる群から選択される供給源に由来する。本発明による有用な組成物においては、成分としてこの少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸の供給源を、すなわちオメガ-3脂肪酸成分をその供給源から抽出または精製せずに、含有させることができる。
【0027】
[0029] 他の観点において本発明は、動物の組織または身体中に上昇した濃度で存在する炎症性物質の量を減少させる方法を提供する。この方法は、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含むけれども他の1種類以上のオメガ-3脂肪酸を本質的に含まない組成物を動物に経口投与することを含む。たとえば、この組成物はEPAを含み、DHAおよび/またはALAを本質的に含まない。1種類以上のオメガ-3脂肪酸を”本質的に含まない”量とは、これらの特定のオメガ-3脂肪酸が組成物中に実質的に存在しないか、あるいは動物の組織または体液中に上昇した濃度で存在する炎症性物質を減少させるのにそれ自体では効果がない量で存在することを意味するものとする。たとえば、本明細書に記載する食物組成物は1種類以上のオメガ-3脂肪酸を本質的に含まなくてもよく、本質的に含まない量全体は、乾燥物質(DM)基準で約0.1重量%未満、約0.03重量%未満、約0.01重量%未満、約0.003重量%未満、または約0.001重量%未満の量である。
【0028】
[0030] 具体的に、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む組成物は食物組成物、サプリメント、おやつ(褒美(treat))または玩具であってよいが、サプリメント、おやつおよび玩具の一部(ただし全部ではない)はそれ自体が食物組成物であることを指摘する。少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む組成物は湿潤または乾燥組成物(たとえば湿潤または乾燥食物組成物)であってよく、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸が内部に取り込まれていてもよく、あるいはたとえば表面への吹付け、凝集、散粉または沈着によりいずれかの組成物構成要素の表面にあってもよい。
【0029】
[0031] 食物組成物は、一般に給食(給餌)により動物に投与される。動物が愛玩動物である場合、本発明方法に有用な食物組成物は一般に栄養的および/または官能特性的にそれらの動物への給餌に適合させたものである。このように適合させた食物組成物を本明細書中で”ペットフード”と呼ぶ。ペットフードは、イヌ類もしくはネコ類、またはその特定の下位集団、たとえば大型品種のイヌ、成体のイヌもしくはネコ、高齢のイヌもしくはネコ、老齢のイヌもしくはネコなどの特殊な栄養要求に、より特別に適合させたものであってもよい。
【0030】
[0032] 動物の食物組成物はその普通の栄養要求を満たすことができ、これは動物の種、年齢、性別、体重および他の要因に基づいて当業者が判定できる。ある態様において、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む食物組成物は、意図する受容動物にとって実質上、栄養的に完全な食物を提供する。”栄養的に完全な食物”は、その食物がその動物の食事の実質的にすべてを供給する場合に健康な動物の普通の健康を維持するのに十分な栄養素を含有する食物である。
【0031】
[0033] たとえばペットフード業界では、飼料を一般に”湿潤”または”乾燥”と分類する。湿潤飼料は比較的多量の水を含み、通常は缶内または空気が実質的または完全に排除された容器内に存在する。そのような飼料の例は”チャンク・アンド・グレービー(chunk and gravy)”、液状グレービーの存在下にある個別の固体粒子、またはローフ(loaf)タイプの物質であり、これは一般にそれの容器の形を受け入れる。乾燥飼料は一般にベーキングまたは押出された物質であり、後者は次いで通常はキブル(kibble)として知られる個別の造形部分に切断される。少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を、一般的な手段で容易に湿潤飼料に取り込ませることができる。乾燥飼料では、この少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を空気酸化から保護するためにカプセル化法を採用できる。さらに、抗酸化剤、およびパッケージングの窒素掃引を採用できる。これはUSP No. 4,895,725により例示され、特定の魚油のマイクロカプセル化が特に強調されている。
【0032】
[0034] 具体的に、1〜6歳のイヌ類の典型的な飼料は、乾燥物質基準で約23%のタンパク質、約15%の脂肪、約0.6%のリン、0.6%のカルシウムおよび約0.3%のナトリウムを含有する;より高齢のイヌ類、およびネコ類について、典型的な飼料はたとえば表1に示すものであってよい。
【0033】
【表1】

【0034】
[0035] 他の態様において、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む組成物はサプリメントの形である。サプリメントには、たとえば全体的な栄養バランスまたは性能を改善するために他の食料または食物と共に用いられる食料または食物が含まれる。サプリメントには、他の食料もしくは食物に対する補助食物として希釈せずに供給される組成物、別個に入手される動物用規定食の他の部分と共に自由選択して与えられる組成物、または動物の通常の食料もしくは食物で希釈および混合して完成した食料もしくは食物を調製する組成物を含めることができる。サプリメントは、たとえば散剤、液剤(ゲル剤を含む)、シロップ剤、丸剤、カプセル化組成物などを含めた多様な形態のものであってよい。
【0035】
[0036] 他の態様において、組成物はおやつの形で少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む。具体的にイヌ用おやつには、たとえばイヌ用の骨の形のドッグビスケットが含まれる。おやつは栄養性のものであってもよく、その場合、本発明組成物は1種類以上の栄養素を含み、たとえば前記に食物について記載した組成をもつことができ、あるいはそれらがオメガ-3脂肪酸を含有する以外は実質的に非栄養性のものであってもよい。少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸をおやつ上にコーティングするか、おやつ中に取り込ませることができ、または両方であってもよい。
【0036】
[0037] さらに他の態様において、組成物は玩具の形態中に少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む。玩具には、たとえば咀しゃく玩具が含まれる。具体的にイヌ用玩具には、たとえば人造の骨が含まれる。この少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸は、たとえば玩具の表面もしくは玩具構成部品の表面のコーティング中に存在するか、または一部もしくは全部を玩具全体に取り込ませることができ、あるいは両方であってもよい。本発明に従って改変するのに適切な具体的な玩具は、下記の参考文献に開示されている:USP No. 5,339,771およびそれに開示された参考文献、ならびにUSP No. 5,419,283およびそれに開示された参考文献。
【0037】
[0038] 用語”玩具”は、部分的に摂取できる玩具(たとえばプラスチック構成部品を含む玩具)および完全に摂取できる玩具(たとえば生皮および種々の人造の骨)の両方を意味する。さらに、玩具はヒト用であってもよく、またはヒト以外、特に愛玩動物、農場動物および動物園の動物、特にイヌ用もしくはネコ用であってもよいことを認識すべきである。本明細書の目的に関して、用語”おやつ”と”玩具”には互換性があるとみなすことができる。しかし、一般におやつは完全に食べることができ、本発明による玩具は食べられるコーティングをもつ。
【0038】
[0039] 少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸は、栄養食自体に、またはスナック、サプリメント、おやつ、玩具などの中に存在することができる。それは組成物の液体部分、たとえば水または他の流体中に存在してもよい。所望により、オメガ-3脂肪酸を栄養剤または医薬の剤形で、たとえばカプセル剤、錠剤、カプレット、注射剤などとして経口投与することができる。剤形中に、この少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸は粉末または液体、たとえばゲルとして存在することができる。通常の栄養剤用または医薬用キャリヤーのうちのいずれか、たとえば水、グルコース、ショ糖などを、オメガ-3脂肪酸と共に使用できる。
【0039】
[0040] 本発明組成物は、上昇した濃度で存在する炎症性物質を減少させるのに有効な頻度で、有効な期間、投与される。一般に本発明組成物を少なくとも1日1回投与するのが最も好都合であるが、ある状況ではより低い頻度、たとえば週2回または週1回の投与で有効な可能性がある。最大の有益性を得るためには、少なくとも1週間、たとえば少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも5カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも3年間、投与を続けるべきである。1態様においては、開始時点から実質的にその動物の生涯の残りの期間、投与を続ける。
【0040】
[0041] 開始の時期は動物の生涯のいずれの段階であってもよい(すなわち、投与開始について年齢の上限または下限はない)。たとえばイヌ類またはネコ類の愛玩動物の場合、動物が少なくとも約0.25歳、少なくとも約0.5歳、少なくとも約0.75歳、少なくとも約1歳、少なくとも約2歳、少なくとも約3歳、少なくとも約4歳、少なくとも約5歳、少なくとも約6歳、少なくとも約7歳、少なくとも約8歳、少なくとも約9歳、または少なくとも約10歳の時に投与を開始することができる。1態様においては、出生時またはその付近で投与を開始する。
【0041】
[0042] ある態様においては、全投与期間について単一組成物を動物に投与する。他の態様においては、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む異なる組成物を異なる時点で動物に投与する。たとえば個々のオメガ-3脂肪酸の選択および/または量を所望により投与期間にわたって変更でき、あるいは任意の時点で、または反復して、湿潤食物から乾燥食物に、またはその逆に、投与を切り替えることができる。
【0042】
[0043] オメガ-3脂肪酸の投与量は体重に基づいて調整でき、これにより動物の体格に関係なくいずれの動物にも適切なように適合させることができる。たとえば20 kgのイヌは1日当たり約275 g DMの食物を摂取すると予想できる。したがって、少なくとも約0.1重量%DM、たとえば約0.1〜約20重量%、約0.3〜約17重量%、約0.4〜約14重量%、約0.5〜約11重量%、約0.6〜約8重量%、約0.7〜約5重量%、約0.8〜約2重量%、または約0.9〜約1重量%DMのオメガ-3脂肪酸総量を含む食物組成物の投与は、それぞれ少なくとも約1.4 g/kg体重、たとえば1.4〜275、約4.1〜234、約5.5〜193、約6.9〜151、約8.3〜110、約9.6〜69、約11〜27.5、または約12.4〜約13.6 g/kg体重のオメガ-3脂肪酸総量をそのイヌに投与することになるであろう。
【0043】
[0044] 1態様においては、本発明方法により投与される食物組成物中にDM基準で少なくとも約0.1重量%のオメガ-3脂肪酸総量が存在する。たとえば、オメガ-3脂肪酸総量を通常の規定栄養食の一部として毎日供給することができ、あるいは同じ一日量を動物におやつまたはサプリメント中において供給することができる。さらに、有効量のオメガ-3脂肪酸が供給される限り、これらの方法の組合わせまたは他のいずれかの投与法を採用することができる。1態様において、この少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸はEPA、DHA、およびその組合わせよりなる群から選択される。
【0044】
[0045] 他の態様において本発明は、動物の局所生体液または組織中に上昇した濃度で存在する炎症性物質の量を減少させる方法であって、炎症性物質を減少させる量の、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む組成物を、動物に経口投与することを含む方法を提供する。
【0045】
[0046] 1態様において、動物はイヌ類またはネコ類である。他の態様において、動物は愛玩動物である。
[0047] 1態様において、炎症性物質は局所組織、たとえば歯肉組織中に上昇した濃度で存在する。他の態様において、炎症性物質は局所生体液、たとえば溝滲出液中に上昇した濃度で存在する。
【0046】
[0048] 特定の理論に固執するわけではないが、炎症性物質の作用は局所環境に限定されず、したがって炎症プロセスおよび組織破壊に関連する物質の全身負荷に関与すると考えられる。炎症性物質の濃度の減衰により炎症性物質の局所および全身負荷を低下させることができ、これにより動物の炎症状態に影響を与えることができる。
【0047】
[0049] 炎症状態は急性または慢性の可能性がある。本明細書中の用語”炎症状態”は、炎症性の状態、障害または疾患そのものだけでなく、炎症状態の結果として発現または進行するいずれかの状態、障害または疾患をも表わす。具体的には、限定ではないが炎症状態には下記のものが含まれる:歯肉炎、歯周炎、慢性関節リウマチ、滑液包炎、骨関節炎、全身性狼瘡、喘息、肝炎、気管支炎、急性痛風性関節炎、乾癬性関節炎、結腸炎、クローン病、アレルギー状態(たとえば気管支喘息、アレルギー性鼻炎、薬物誘発性皮膚炎、接触性およびアトピー性皮膚炎)、慢性皮膚状態(たとえば疱疹状皮膚炎、天疱瘡、重症乾癬および重症脂漏性皮膚炎)、眼のぶどう膜、虹彩、結膜および視神経の慢性アレルギー状態および炎症状態、急性冠動脈症候群(たとえば不安定狭心症、急性心筋梗塞、心臓性突然死、冠動脈斑破裂、血栓症)、炎症性腸疾患、ならびにその組合わせ。炎症状態、特に慢性状態は、他の状態、障害または疾患の発現または進行のリスク因子に関与するかまたはリスク因子である可能性があり、限定ではないがこれには癌、悪液質、心血管疾患、糖尿病、骨粗鬆症、および神経変性性障害、たとえばアルツハイマー病が含まれる。
【0048】
[0050] 1観点において本発明は、動物の炎症状態を予防する方法であって、炎症状態を予防する量の、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む組成物を、動物に経口投与することを含む方法を提供する。本明細書中で炎症状態を”予防する”という用語は、ある状態を発現する可能性を阻止または低下させることを表わす。
【0049】
[0051] 他の態様において本発明は、動物の炎症状態を軽減または治療する方法であって、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を体液中の炎症性物質の濃度の低下に有効なオメガ-3脂肪酸総量で含む組成物を、動物に投与することを含む方法を提供する。本明細書中の”軽減または治療する”という句は、炎症状態の重症度を低下させ、または炎症状態を排除することを含む。
【0050】
[0052] 他の態様において本発明は、動物に投与する組成物を選択するための方法であって、動物における口腔状態の二次症状である炎症状態の存在または不存在の評価を行い、そしてその評価に基づいて組成物を選択することを含み;その際、その評価が炎症状態の存在を示す場合、選択する組成物は炎症性物質を減少させる量の、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む組成物である方法を提供する。
【0051】
[0053] 1態様において、評価は動物がそのような炎症状態の症状を伴うかを判定することを含む。他の態様において、評価は動物の組織または体液中の炎症性物質の濃度を判定することを含む。たとえば、その濃度は動物から採取した体液試料を用いて判定することができる。具体的には、注射器を用いて動物から血液試料を採取し、その血液中またはその試料から得た血清中の炎症性物質の濃度を判定する。
【0052】
[0054] 炎症性物質の濃度は、体液試料において当技術分野で既知の標準アッセイ法により判定できる。一般にアッセイ法は、判定される炎症性物質のタイプ、および特定試料中のその物質の濃度の定量に対するそのアッセイ法の適性に基づいて選択できる。たとえば、ポリペプチド上の1以上のエピトープに対して反応性であるモノクローナル抗体を利用する市販のイムノアッセイ、または競合結合アッセイを、タンパク質である炎症性物質の血清中濃度の判定に使用できる。あるいは、そのような炎症性物質の濃度は、その物質のmRNAを発現する細胞であって体液試料中に存在する細胞のmRNA濃度を定量することにより判定できる。あるいは、炎症性物質の濃度はその物質の活性レベルを測定することにより判定できる。
【0053】
[0055] ある態様において、独立してエンザイムイムノアッセイ(EIA)、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイ(IFA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウェスタンブロットアッセイ、ノーザンブロット法、生化学的アッセイ、酵素アッセイおよび比色アッセイよりなる群から選択される1以上のアッセイ法を用いて濃度を判定する。多様な標識および結合方法が当業者に知られており、多様な生化学的アッセイ、核酸アッセイおよびアミノ酸アッセイに使用できる。
【0054】
[0056] 炎症性物質の濃度は、特定の炎症性物質の標準濃度に対比した”実測(observed)”濃度であってもよい。たとえば、標準濃度は炎症状態を伴わないことが分かっている標準動物において判定することができる。標準動物(すなわち、炎症性物質の標準濃度の判定に用いる動物)は、一般に実測濃度を求める動物と同一種、場合により同一品種および/またはほぼ同年齢のものであろう。
【0055】
[0057] ある態様においては、組織または体液の試料を管理施設、たとえば動物病院の場で採取し、特定の炎症性物質の実測濃度をその管理施設の場で判定する。本明細書中で用語”管理施設の場(point of care facility)”は、健康管理専門家(たとえば医師、獣医、医療助手、医師助手、看護士など)が評価および診断のために動物を観察することができる場所を表わす。管理施設の場の例(限定ではない)には、動物が世話されている病院、医師または獣医のオフィス、動物病院のオフィス、動物の家庭、農場、畜舎および宿舎が含まれる。
【0056】
[0058] たとえば、健康管理専門家(たとえば医師または獣医)または動物の世話係が動物から試料を採取し;炎症性物質の実測濃度を判定し(たとえば試料をキットに付与することにより);結果を現場で読み取り;そしてその物質の濃度を判定する;あるいは場合により試料を二次施設へ送ることができる。本明細書中で用語”二次施設”は、臨床試料の評価を行う商業的な検査試験所などの試験所を表わす。たとえば炎症性物質の実測濃度を自身で判定するのではなく、他者が実施した結果を得ることができる。
【0057】
[0059] ある態様においては、試料を管理施設の場で採取し、炎症性物質の実測濃度を判定するために二次施設へ送る。特定の1態様において、二次施設は管理施設の場から離れた場所にある。本明細書中で用語”離れた場所(off site)”は、管理施設の場から離れた物理的位置を表わす。他の態様において、二次施設は管理施設を指令する組織以外の業務組織が指令する施設にある。
【0058】
[0060] ある態様においては、実測濃度と標準濃度の比較を管理施設の場または二次施設により実施する。ある態様においては、評価を管理施設の場で実施する。たとえば、健康管理専門家(たとえば医師または獣医)または動物の世話係が動物を評価し、そして(必要であれば)組成物を選択することができる。
【0059】
[0061] 他の観点において、本発明はオメガ-3脂肪酸を動物に投与するのに適切なキットを提供する。このキットは、適宜、単一パッケージ内の別個の容器中または仮想パッケージ内の別個の容器中に、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸、ならびに(1)動物が摂取するのに適切な1種類以上の成分、(2)オメガ-3脂肪酸と他のキット構成要素を組み合わせて、動物の組織または体液中に上昇した濃度で存在する炎症性物質の量を減少させるのに有用な組成物を調製する方法に関する指示、ならびに(3)オメガ-3脂肪酸および本発明の他の成分を特に動物に有益であるように使用する方法に関する指示のうち少なくとも1つを含む。キットが仮想パッケージを含む場合、キットは1以上の物理的キット構成要素と組み合わせた仮想環境における指示に限定される。キットは、オメガ-3脂肪酸および他の構成要素を、動物の組織または体液中に上昇した濃度で存在する炎症性物質の量を減少させるのに有用な組成物を調製するのに十分な量で収容する。一般に、動物が摂取する直前にオメガ-3脂肪酸と他の適切なキット構成要素を混合する。1態様において、キットは、1種類以上のオメガ-3脂肪酸を入れたパケットおよび動物が摂取する食物の容器を収容する。キットは追加品目、たとえばオメガ-3脂肪酸と成分を混合するための器具、または混合物を収容する器具、たとえば食物ボウルを含むことができる。他の態様においては、オメガ-3脂肪酸を、動物の良好な健康を促進する追加の栄養サプリメント、たとえばビタミンおよび無機質と混合する。
【0060】
[0062] 他の観点において本発明は、(1)動物の組織または体液中に上昇した濃度で存在する炎症性物質の量を減少させるためにオメガ-3脂肪酸を使用すること、(2)オメガ-3脂肪酸を本発明の他の成分と混合すること、(3)オメガ-3脂肪酸を単独で、または本発明の他の要素と組み合わせて、動物に投与すること、および(4)本発明のキットを動物の組織または体液中に上昇した濃度で存在する炎症性物質の量を減少させるために使用することのうち1以上に関する情報または指示を伝達するための手段であって、これらの情報または指示を収容した文書、ディジタル記憶媒体、光学記憶媒体、オーディオプレゼンテーションまたはビジュアルディスプレーを含む手段を提供する。特定の態様において、伝達手段はこれらの情報または指示を収容した文書、ディジタル記憶媒体、光学記憶媒体、オーディオプレゼンテーションまたはビジュアルディスプレーを含む。好ましくは、伝達手段はこれらの情報または指示を収容した表示されたウェブサイト、パンフレット、製品ラベル、パッケージ挿入物、広告またはビジュアルディスプレーである。有用な情報には、(1)オメガ-3脂肪酸および/または他の成分を組み合わせて投与するための方法および技術、ならびに(2)動物またはそれらの介護者に本発明およびそれの使用に関する質問がある場合に利用する連絡情報のうち1以上が含まれる。有用な指示には、混合量ならびに投与の量および頻度が含まれる。伝達手段は、本発明を使用することの有益性を指摘し、本発明を動物に投与するための承認された方法を伝達するのに有用である。
【0061】
[0063] 他の観点において本発明は、医薬の製造のための、本発明組成物の使用を提供する。他の観点において本発明は、動物の健康を維持および/または改善する医薬、たとえば動物の組織または体液中に上昇した濃度で存在する炎症性物質の量を減少させる医薬の製造のための、本発明組成物の使用を提供する。一般に医薬は、配合物または組成物を、動物に投与するのに適切な医薬の製造および医薬の配合に有用なことが当業者に知られている賦形剤、緩衝剤、結合剤、可塑剤、着色剤、希釈剤、圧縮剤、滑沢剤、着香剤、湿潤剤、および他の成分と混合することにより製造される。
【0062】
[0064] 本明細書に記載する特定の方法、プロトコルおよび試薬は変更することができるので、本発明はそれらに限定されない。さらに、本明細書中で用いた用語は特定の態様を記述するためのものにすぎず、本発明の範囲を限定するためものではない。本明細書および特許請求の範囲で用いる単数形には、そうではないことが状況から明示されない限り、複数表示が含まれる。同様に、用語”含む(comprise、comprises、comprising)”は除外ではなく包括と解釈すべきである。
【0063】
[0065] 別途定義しない限り、本明細書中で用いるすべての技術用語および科学用語および頭字語は、本発明の分野の当業者が一般に理解しているものと同じ意味をもつ。本明細書に記載したものと類似または均等な方法および材料をいずれも本発明の実施に使用できるが、好ましい方法、器具および材料を本明細書に記載する。
【0064】
[0066] 本発明に使用できる配合物、プロセス、手法、操作、技術、物品、ならびに他の組成物および方法を記載および開示するために、本明細書中で述べたすべての特許、特許出願および刊行物を、法律が許す範囲で本明細書に援用する。ただし、本明細書中のいずれも、本発明が先の発明によるそのような開示に先行する資格がないと認めるものと解釈すべきでない。
【0065】
実施例
[0067] 以下の本発明の好ましい態様の例により本発明をさらに説明することができるが、これらの例は説明のために含まれるにすぎず、別途明示しない限り、本発明の範囲を限定するためのものではないことは理解されるであろう。
【0066】
実施例1
[0068] この例は、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を強化した飼料組成物が動物の体液中の炎症性物質の局所濃度および全身濃度をインビボで低下させることを示す。
【0067】
[0069] 40匹のビーグル犬を2グループ(すなわち対照グループおよび試験グループ)にランダムに帰属させ、それらの歯肉組織を最適健康状態にした(予防処置、毎日の歯みがき、毎日のクロルヘキシジンぬぐい)。1週間の間、対照グループには乾燥物質基準で<0.01重量%のEPAおよび最高0.01重量%のDHAを含有する飼料を与えた。第2グループ(試験グループ)には、対照グループと同じ飼料であるが、0.48〜0.59重量%のEPAおよび0.5〜0.61重量%のDHAを強化したものを与えた。イヌにそれらに帰属する飼料を12週間の残りの期間与え続けた。
【0068】
[0070] この1週間の後、イヌに再び予防処置を施し、次いで12週間、炎症、特に歯肉炎に関連するパラメーターをモニターした。これらのパラメーターは、歯垢、歯肉炎、溝滲出液(crevicular fluid (CF))容量、CF PGE2、CF LTB4、CF C-反応性タンパク質(CRP)、溝(sulcus)IL-1β mRNA、溝IL-6 mRNA、溝TNFα mRNA、溝iNOS mRNA、溝COX-2 mRNA、血清PGE2、血清LTB4、血清CRP、血液IL-1β mRNA、血液IL-6 mRNA、血液TNFα mRNA、血液iNOS mRNA、および血液COX-2 mRNAであった。歯垢は、炎症または炎症性物質が減少した場合にそれが単に歯垢の減少によるものではなくオメガ-3脂肪酸によるものであると判定しうる標準尺度として含まれた。mRNAおよびいずれか特定の分子の分析に用いた方法は、当業者に既知のルーティン方法であった。結果を表1に示す。
【0069】
【表2−1】

【0070】
【表2−2】

【0071】
[0071] 表1に示すように、対照グループと試験グループの間に歯垢蓄積における差はなかった。この結果は予想されたものであり、対照の有効性を確認した。さらに、歯肉炎評点またはCF容量において2グループ間に差はなかった。
【0072】
[0072] 表1に示すように、CF PGE2濃度(CF容量に対して正規化)は、オメガ-3脂肪酸強化飼料を与えたイヌの方が対照飼料を与えたイヌより大幅に低下した。試験終了時に、対照グループについてはCF PGE2濃度が38%低下し(ベースラインから)、一方、試験グループはベースラインから68%低下した。さらに試験終了時に、オメガ-3脂肪酸強化飼料を与えた動物は対照動物より平均52%少ないCF PGE2を有していた。
【0073】
[0073] さらに表1に示すように、経時的なCF LTB4濃度(CF容量に対して正規化)は、対照動物においてオメガ-3脂肪酸強化飼料を与えた動物と比較して差がなかった。このプロフィールは血清LTB4濃度に反映されている。さらに、CF CRP濃度(CF容量に対して正規化)は、対照動物とオメガ-3脂肪酸強化飼料を与えた動物において差がなかった。このプロフィールは血清CRP濃度に反映されていることを留意されたい。
【0074】
[0074] しかし、試験16日目に、対照グループと比較してオメガ-3脂肪酸強化飼料を与えたイヌは血清IL-6濃度が低下した。対照グループの動物はベースラインより平均225倍高いIL-6 mRNAを有し、オメガ-3脂肪酸強化飼料を与えた動物はベースラインより平均70倍高いIL-6 mRNAを有していた;すなわち69%の差。溝(sulcus)中にある細胞から採集したIL-6 mRNAの濃度は、同様な応答を示さなかった。
【0075】
[0075] さらに、オメガ-3脂肪酸強化飼料を与えた動物は、経時的に血清iNOS濃度の指向性低下を有していた。対照飼料を与えた動物はベースラインより平均17倍高いiNOS mRNAを有し、オメガ-3脂肪酸強化飼料を与えた動物はベースラインより平均8倍高いiNOS mRNAを有していた;すなわち56%の差。これに対し、溝(sulcus)中にある細胞から採集したiNOS mRNAの濃度は、同様な応答を示さなかった。
【0076】
[0076] 経時的な血清COX-2濃度に関して、結果は試験16日目にオメガ-3脂肪酸含有飼料がCOX-2の量を減少させたことを示した。対照飼料を与えた動物はベースラインより平均23倍高いCOX-2 mRNAを有し、オメガ-3脂肪酸強化飼料を与えた動物はベースラインより平均7倍高いCOX-2 mRNAを有していた;すなわち71%の差。溝(sulcus)中にある細胞から採集したCOX-2 mRNAの濃度は、同様な応答を示さなかった。
【0077】
[0077] これらの結果は、オメガ-3脂肪酸を強化した飼料組成物を与えた動物において炎症性物質の局所濃度および全身濃度が低下することを証明する。
[0078] 本明細書に記載した方法は当業者に周知の実験室的技術を使用し、その方法は、Sambrook, J., et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー(2001); Spector, D. L. et al. Cells: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー(1998);およびHampton R. et al., Serological Methods: A Laboratory Manual, APS Press, ミネソタ州セントポール(1990)などの実験室マニュアル中にみることができる。
【0078】
[0079] 本明細書には、本発明の代表的な好ましい態様を開示し、特定の用語を用いたが、それらは一般的に説明の意味で用いたにすぎず、限定のためのものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲に述べられている。明らかに、以上の教示からみて本発明の多数の改変および変更が可能である。したがって、特許請求の範囲の記載の範囲内で、具体的に記載した以外の形で本発明を実施できることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の組織または体液中に上昇した濃度で存在する炎症性物質の量を減少させる方法であって、炎症性物質を減少させる量の、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む組成物を、動物に経口投与することを含む方法。
【請求項2】
組成物が、乾燥物質基準で少なくとも約0.1重量%のオメガ-3脂肪酸を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
上昇した濃度が口腔状態に関連する、請求項1の方法。
【請求項4】
口腔状態が歯垢沈着を含む、請求項3の方法。
【請求項5】
動物が食肉目動物である、請求項1の方法。
【請求項6】
動物がイヌ類またはネコ類である、請求項1の方法。
【請求項7】
動物が愛玩動物である、請求項1の方法。
【請求項8】
炎症性物質がサイトカインまたは酵素である、請求項1の方法。
【請求項9】
炎症性物質が、IL-6、iNOSおよびCOX-2よりなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項10】
オメガ-3脂肪酸が、ALA、EPA、DHA、およびその組合わせよりなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項11】
組成物が、食物、おやつ、サプリメントまたは玩具の形態のものである、請求項1の方法。
【請求項12】
組成物が、乾燥物質基準で約0.1〜約20重量%の総オメガ-3脂肪酸を含む食物である、請求項11の方法。
【請求項13】
動物の局所生体液または組織中に上昇した濃度で存在する炎症性物質の量を減少させる方法であって、炎症性物質を減少させる量の、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む組成物を、動物に経口投与することを含む方法。
【請求項14】
組成物が、乾燥物質基準で少なくとも約0.1重量%のオメガ-3脂肪酸を含む、請求項13の方法。
【請求項15】
動物がイヌ類またはネコ類である、請求項13の方法。
【請求項16】
動物が愛玩動物である、請求項13の方法。
【請求項17】
炎症性物質が上昇した濃度で歯肉組織中に存在する、請求項13の方法。
【請求項18】
炎症性物質が上昇した濃度で溝滲出液中に存在する、請求項13の方法。
【請求項19】
動物における口腔状態の二次症状である炎症状態を予防、軽減または治療するための方法であって、炎症性物質を減少させる量の、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む組成物を、動物に経口投与することを含む方法。
【請求項20】
組成物が、乾燥物質基準で少なくとも約0.1重量%のオメガ-3脂肪酸を含む、請求項19の方法。
【請求項21】
動物に投与する組成物を選択するための方法であって、
動物における口腔状態の二次症状である炎症状態の存在または不存在の評価を行い;そして
その評価に基づいて組成物を選択する
ことを含み、その際、その評価が炎症状態の存在を示す場合、選択する組成物は炎症性物質を減少させる量の、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む組成物である方法。
【請求項22】
動物にオメガ-3脂肪酸を投与するのに適切なキットであって、適宜、単一パッケージ内の別個の容器中または仮想パッケージ内の別個の容器中に、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸、ならびに(1)動物が摂取するのに適切な1種類以上の成分、(2)オメガ-3脂肪酸と他のキット構成要素を組み合わせて、動物の組織または体液中に上昇した濃度で存在する炎症性物質の量を減少させるのに有用な組成物を調製する方法に関する指示、ならびに(3)オメガ-3脂肪酸および本発明の他の成分を使用する方法に関する指示のうち少なくとも1つを含むキット。
【請求項23】
(1)動物の組織または体液中に上昇した濃度で存在する炎症性物質の量を減少させるオメガ-3脂肪酸を使用すること、(2)オメガ-3脂肪酸を本発明の他の成分と混合すること、(3)オメガ-3脂肪酸を単独で、または本発明の他の要素と組み合わせて、動物に投与すること、および(4)本発明のキットを動物の組織または体液中に上昇した濃度で存在する炎症性物質の量を減少させるために使用することのうち1以上に関する情報または指示を伝達するための手段であって、これらの情報または指示を収容した文書、ディジタル記憶媒体、光学記憶媒体、オーディオプレゼンテーションまたはビジュアルディスプレーを含む手段。
【請求項24】
表示されたウェブサイト、パンフレット、製品ラベル、パッケージ挿入物、広告またはビジュアルディスプレーよりなる群から選択される、請求項23の手段。
【請求項25】
動物の組織または体液中に上昇した濃度で存在する炎症性物質の量を減少させる医薬の製造のための、少なくとも1種類のオメガ-3脂肪酸を含む組成物の使用。

【公表番号】特表2009−519899(P2009−519899A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541489(P2008−541489)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/061037
【国際公開番号】WO2007/062325
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(502329223)ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド (138)
【Fターム(参考)】